(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031084
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】パネルの製造方法及びパネルの検査方法
(51)【国際特許分類】
E04C 2/292 20060101AFI20250228BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20250228BHJP
E04C 2/34 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
E04C2/292
E04C2/26 V
E04C2/34 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137065
(22)【出願日】2023-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 龍樹
(72)【発明者】
【氏名】葛山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伊熊 健二
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162CB02
2E162CD01
2E162CD02
2E162CD03
(57)【要約】
【課題】残留ガスによる膨れ等の現象を予め把握可能な製造方法、及びこの現象を予め把握可能な検査方法を提供する。
【解決手段】パネル10の製造方法は、表面材12と裏面材13との間に形成される樹脂発泡体11を備えるパネル10を製造する方法である。パネル10の製造方法は、パネル10の樹脂発泡体11にガスを注入してパネル10の状態を検査する工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面材と第二の面材との間に形成される樹脂発泡体を備えるパネルの製造方法であって、
前記パネルの前記樹脂発泡体にガスを注入して前記パネルの状態を検査する工程を含む、パネルの製造方法。
【請求項2】
前記パネルは、建築用パネルである、請求項1に記載のパネルの製造方法。
【請求項3】
第一の面材と第二の面材との間に形成される樹脂発泡体を備えるパネルの検査方法であって、
前記パネルの前記樹脂発泡体にガスを注入して前記パネルの状態を検査する工程を含む、パネルの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネルの製造方法及びパネルの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、合成樹脂発泡体からなる芯材を表面材と裏面材とによって挟んだ構成のパネルが開示されている。特許文献1のパネルは、表面材と芯材との間に通気性を有する不織布を介在させてガス抜きを行う構成となっている。特許文献2のパネルは、表面材と芯材との間に、不織布層と接着剤層とを積層させたシートを介在させている。シートには、ガス抜きのために孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-117490号公報
【特許文献2】特開平10-37347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パネルの樹脂発泡体にガスが残留していると、パネルの使用中に例えば膨れ等の変形やそれに伴う表面材の剥離等の現象が観察される場合がある。
従来、残留ガスが存在することでパネルの使用中に起こり得る現象は、パネルの製造段階又は検査段階で予め把握できなかった。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、残留ガスによる膨れ等の現象を予め把握可能な製造方法、及びこの現象を予め把握可能な検査方法を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕第一の面材と第二の面材との間に形成される樹脂発泡体を備えるパネルの製造方法であって、
前記パネルの前記樹脂発泡体にガスを注入して前記パネルの状態を検査する工程を含む、パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、残留ガスによる膨れ等の現象を予め把握可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】加工前のニードルの先端側部分における形状の一例を示す平面図である。
【
図6】検査治具において固定されたパネルにニードルを差し込む前の状態を示す側面図である。
【
図8】検査治具において固定されたパネルにニードルを差し込んだ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記パネルは、建築用パネルである、〔1〕に記載のパネルの製造方法。
〔3〕第一の面材と第二の面材との間に形成される樹脂発泡体を備えるパネルの検査方法であって、
前記パネルの前記樹脂発泡体にガスを注入して前記パネルの状態を検査する工程を含む、パネルの検査方法。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。
A.パネル10の製造方法
本開示のパネル10の製造方法は、第一の面材と第二の面材との間に形成される樹脂発泡体11を備えるパネル10の製造方法である。パネル10の樹脂発泡体11にガスを注入してパネルの状態を検査する工程を含む。
ここでは、まず、パネル10、ガスを注入するためのガス注入ユニット20、検査する工程に用いる検査治具40を説明し、続いて製造方法について説明する。
【0010】
1.パネル10
本実施形態のパネル10を、
図1に示す。パネル10は、建築用パネルであることが好ましい。パネル10は、例えば、建築物の外壁材、内壁材、屋根材、天井材、床材等である。パネル10は、
図1に示すように、樹脂発泡体11と、表面材12と、裏面材13と、を備えている。表面材12は、本開示の「第一の面材」に相当する。裏面材13は、本開示の「第二の面材」に相当する。樹脂発泡体11は、表面材12と裏面材13とによって挟まれている。
【0011】
樹脂発泡体11は、ポリイソシアヌレートフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム等によって構成されている。樹脂発泡体11は、断熱材、防火材、嵩上材等として機能する。樹脂発泡体11は、難燃剤等が含まれていてもよい。樹脂発泡体11は、例えば、
図1に示すように四角板状である。樹脂発泡体11の厚さは、例えば、20mm以上80mm以下である。
【0012】
例えば、樹脂発泡体11の内部には、原料の未反応成分や反応によって生じる余剰ガス成分(塩素、二酸化炭素、塩化メチレン、ホルムアルデヒド、水蒸気、水素等)等のガスが残留している可能性がある。
【0013】
表面材12及び裏面材13は、例えば、金属薄板である。表面材12及び裏面材13の材料は、例えば、JIS G3321に規定される溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン等である。表面材12及び裏面材13は、例えば、
図1に示すように四角板状である。表面材12及び裏面材13の厚さは、例えば、2mm以上10mm以下である。表面材12及び裏面材13は、樹脂発泡体11に対して、樹脂発泡体11の自己接着性を利用して接着されてもよく、別途設ける接着剤によって接着されていてもよい。また、表面材12及び裏面材13が接着剤によって樹脂発泡体11に接着される場合、樹脂発泡体11と接着剤との間にプライマー層を設けてもよい。
【0014】
尚、表面材12及び裏面材13のうちの少なくとも一方は、樹脂発泡体11の側面(厚さ方向に沿う面)の少なくとも一部を覆っていてもよい。
【0015】
尚、表面材12と裏面材13は、異なる構成であってもよい。例えば、表面材12と裏面材13は、異なる材料によって構成されていてもよい。また、パネル10において、表面材12と裏面材13とが区別されない構成(建築物の表側に配されるか裏側に配されるか区別されない構成)であってもよい。
【0016】
2.ガス注入ユニット20
本実施形態のガス注入ユニット20の一例を、
図2に示す。ガス注入ユニット20は、パネル10の樹脂発泡体11にガスを注入する装置である。
【0017】
ガス注入ユニット20の構成は、特に限定されない。ガス注入ユニット20は、例えば、
図2に示すように、ガスボンベ21と、レギュレータ22、ホース23と、T字継ぎ手24、圧力センサ25と、データロガー26と、ホース27と、ニードルアダプタ28と、ニードル30と、を有している。
【0018】
ガスボンベ21は、例えば、窒素ガス等の不活性ガスが貯留されている。レギュレータ22は、ガスボンベ21からニードル30に供給されるガス圧を調整する。ホース23の一端は、レギュレータ22に接続されている。ホース23の他端は、T字継ぎ手24の第1の受け口に接続されている。T字継ぎ手24の第2の受け口には、圧力センサ25につながる流路が接続されている。T字継ぎ手24の第3の受け口には、ホース27の一端が接続されている。ホース27の他端は、ニードルアダプタ28を介してニードル30の針基に接続されている。
【0019】
データロガー26は、例えば、圧力センサ25で検出される検出値(圧力値)を電気信号として受信し、デジタル処理して内部メモリに記憶させる。
【0020】
ニードル30は、パネル10の樹脂発泡体11に差し込まれ、ガスを注入する。
図3、
図4に、ニードル30の一例を示す。ニードル30は、
図3、
図4に示すように、針管31と、針先32と、を具備している。針先32は、閉塞され、開口が設けられていない。ニードル30は、差し込み方向の前方側から見たときに、後述するガス噴出孔34が視認されない構成である。針先32は、
図3に示すように、軸方向に対して傾斜していてもよい。針先32が傾斜していることで、ニードル30をパネル10に挿入し易くなる。尚。針先32は、軸方向に対して傾斜していなくてもよい。
【0021】
針管31における針先32の近傍の部分に、内側に凹む溝部33が設けられている。溝部33の後端(針先32とは反対側の端)には、ガス噴出孔34が設けられている。ガス噴出孔34は、ニードル30の軸方向に交差する(例えば、直交する)方向に貫通している。このような構成によって、ニードル30を樹脂発泡体11に差し込む際に、樹脂発泡体11がガス噴出孔34内に侵入しにくくなり、樹脂発泡体11によって閉塞され難くなる。
【0022】
ニードル30は、例えば、
図5に示すような一般的な形状のニードルに対して、ニッパー等によって加工して形成される。
図5に示す一般的な形状のニードルは、直管を斜め切削加工した形状であり、軸方向に対して傾斜する先端132に開口134が設けられている。例えば、
図5のニードルの先端132をニッパーで押し切ることによって、つぶれて脇(
図4のガス噴出孔34)からガスが出るような形となる。尚、ニードル30は、
図5とは異なる形状のニードル、例えば直管状のニードルから切削加工等を施して形成してもよい。
【0023】
3.検査治具40
本実施形態の検査治具40の一例を、
図6-
図8に示す。検査治具40は、パネル10、及びガス注入ユニット20の一部を固定する治具である。検査治具40は、
図6、
図7に示すように、パネル側固定部50と、ニードル側固定部60と、を備えている。
【0024】
パネル側固定部50は、
図6、
図7に示すように、パネル10を固定する。パネル側固定部50は、テーブル51と、第1側壁52と、第2側壁53と、調整部54と、を有している。
【0025】
テーブル51は、略直方体形状である。テーブル51の上面に、パネル10を平置き可能である。例えば、表面材12が上側になるようにパネル10を配置する。第1側壁52は、テーブル51の上面の一端側から立ち上がっている。第2側壁53は、テーブル51の上面において、第1側壁52と対向するように、第1側壁52とは反対側の端部から立ち上がっている。
【0026】
ここで、
図6、
図7に示すように、第1側壁52と第2側壁53の対向する方向をX軸方向と定義する。第2側壁53に対して第1側壁52の位置する方向を+X方向とし、反対方向を-X方向とする。
図7に示すように、水平面内でX軸方向と直交する方向をY軸方向と定義する。
図7における上方向を+Y方向とし、下方向を-Y方向とする。
図6に示すように、X軸方向とY軸方向とに直交する方向をZ軸方向(上下方向)と定義する。上方向を+Z方向とし、下方向を-Z方向とする。
【0027】
第2側壁53におけるY軸方向の中心には、壁厚方向に貫通する開口55が設けられている。調整部54は、第1側壁52をX軸方向に沿って移動させる機構である。調整部54は、例えば回転式のノブが設けられ、ノブの回転に応じて第1側壁52を移動させる。
【0028】
テーブル51の上面に平置きされたパネル10は、第1側壁52と第2側壁53とによって挟まれて固定される。第1側壁52は、パネル10の一側の側面(+X側の側面)に接触する。第2側壁53は、パネル10の他側の側面(-X側の側面)に接触する。
【0029】
ニードル側固定部60は、
図6、
図7に示すように、ニードル30を固定する。ニードル側固定部60は、パネル側固定部50の-X側の端部に隣接している。ニードル側固定部60は、台座61と、固定ユニット62と、を有している。
【0030】
台座61は、X軸方向に長い直方体形状である。台座61は、テーブル51の-X側の端部に固定されている。固定ユニット62は、台座61の上面においてX軸方向にスライド移動可能に固定されている。固定ユニット62は、ニードルアダプタ28及びホース27を固定している。ニードル30の軸方向は、X軸方向に沿っている。ニードル30の針先32は、第2側壁53の開口55とX軸方向で重なっている。台座61には、固定ユニット62をZ軸方向(上下方向)に移動可能な調整機構(図示略)が設けられている。
図8に示すように、固定ユニット62が-X軸方向に移動することで、ニードル30は、開口55を通過して、パネル10の樹脂発泡体11に差し込まれる。
【0031】
4.パネル10の製造方法
本実施形態のパネル10の製造方法について説明する。
パネル10の製造方法は、形成工程と、検査工程と、を含むことが好ましい。形成工程は、樹脂発泡体11、表面材12、及び裏面材13が積層されたパネル10を形成する工程である。検査工程は、パネル10の樹脂発泡体11にガスを注入してパネル10の状態を検査する工程である。
【0032】
形成工程では、例えば連続生産法、バッチ式生産法等が用いられる。
連続生産法では、まず、原反から巻き戻して供給される下面材(裏面材13の基となる部材)上に原料組成物をミキサーより供給撒布する。原料組成物は、樹脂発泡体11がポリイソシアヌレートフォームである場合、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、難燃剤等の混合物である。次いで、上面材(表面材12の基となる部材)を原反から巻き戻して供給し、ニップロールにより原料組成物を上面材と下面材とになじませると共に厚さを均一化する。その後、発泡硬化させた後に、所定寸法に裁断することにより、樹脂発泡体11、表面材12、及び裏面材13が積層されたパネル10が形成される。尚、中間枠材(図示略)を備えるパネルとする場合には、裁断して得られるパネルと中間枠材とを接着させる。
【0033】
バッチ式生産法では、まず、上面材(表面材12の基となる部材)と下面材(裏面材13の基となる部材)との間に所定形状の枠材を配設して成形キャビティーを形成する。そして、この枠材の一つの中央部(通常は矩形の枠体の短辺中央部)に設けられた注入口から射出成形機にて原料組成物を成形キャビティーに注入して発泡硬化させる。これにより、周囲に枠材を接着させて一体化したパネル10(樹脂発泡体11、表面材12、及び裏面材13が積層されたパネル)が形成される。尚、中間枠材(図示略)を備えるパネルとする場合、中間枠材により区画された2つの成形空間にそれぞれ原料組成物が注入される。
【0034】
検査工程では、まず、
図6、
図7に示すように、パネル10及びニードル30を検査治具40に固定する。続いて、
図8に示すように、固定ユニット62を+X軸方向に移動させて、ニードル30を樹脂発泡体11の側面(厚さ方向に沿う面)に差し込む。例えば、ニードル30を樹脂発泡体11における表面材12の近傍位置に差し込む。これにより、樹脂発泡体11における表面材12側にガスを注入できる。尚、ニードル30の差し込み位置は、特に限定されず、樹脂発泡体11と面材(表面材12及び裏面材13)との間で剥離が発生し易そうな箇所等であってもよい。また、樹脂発泡体11と面材との間に接着剤層やプライマー層がある場合、例えば、接着剤層、プライマー層、これらの層と樹脂発泡体11との界面にニードル30を差し込んでもよい。尚、検査工程では、検査治具40を使用せずニードル30を手動でパネル10に差して検査を行ってもよい。
【0035】
続いて、パネル10の側面に泡形成液を塗布する。具体的には、パネル10(より具体的には、樹脂発泡体11)において、テーブル51の第1側壁52及び第2側壁53に接していない一対の側面(Y軸方向で背中合わせとなる一対の側面)に、泡形成液を塗布する。泡形成液は、例えば、石鹸水や洗剤の水溶液等の界面活性剤の水溶液である。泡形成液は、パネル10の側面からガスが漏れて膨らむことにより、泡が発生する程度の表面張力を有する液体である。
【0036】
続いて、ガスボンベ21からニードル30にガスを供給して、パネル10内にガスを注入する。例えば、レギュレータ22を操作して、ガスの注入圧を時間の経過に伴って高めていく。例えば、ガス圧を一定圧力高めてそのガス圧で一定時間維持するという工程を繰り返し行う。
【0037】
ガス圧を例えば断続的に上昇させる過程で、パネル10からのガスの漏れの発生(界面活性剤の水溶液の泡の発生)、剥離音や破壊音の発生の有無を確認する。そして、これらの現象が生じたときのガス圧、及びガス圧の上昇中か維持中かを確認する。尚、ガス圧の記録、及びガス圧の上昇中か維持中かの記録は、データロガー26に行わせてもよい。
【0038】
ガス圧が一定値に達した後、そのガス圧で一定時間維持する。その後、レギュレータ22を閉じて、ニードル30側のガス圧が十分に下がった後に、パネル10からニードル30を抜く。そして、表面材12及び裏面材13を樹脂発泡体11から剥がして、パネル10の内部状態を確認する。
【0039】
例えば、ガス圧が比較的低い状態で、パネル10からのガス漏れが生じた場合、パネル10内にガスが存在していても外側へ抜ける流路があり、パネル10の膨れ等の不具合が生じにくいことが推測できる。また、ガス圧が比較的高い状態で、パネル10の膨れ等の不具合が生じない場合、及び破壊が生じない場合には、樹脂発泡体11と第1側壁52及び第2側壁53との十分な接着が得られていることが推測できる。また、ガス圧が比較的低い状態で、パネル10に界面剥離が生じる場合には、ボイド等を起点に剥がれが生じ易いことが推測できる。
【0040】
5.パネル10の製造方法の効果
本開示のパネル10の製造方法は、表面材12(第一の面材)と裏面材13(第二の面材)との間に形成される樹脂発泡体11を備えるパネル10を製造する方法である。この製造方法は、パネル10の樹脂発泡体11にガスを注入してパネル10の状態を検査する工程を含む。
このような構成によって、樹脂発泡体11に注入されるガスによって生じるパネル10の状態を観察できる。このように、樹脂発泡体11に元々貯留されている残留ガスとみなした注入ガスによる現象を観察できるため、パネル10における残留ガスによる現象を予め把握できる。特に、樹脂発泡体11と面材(表面材12及び裏面材13)との間の剥離によるパネル10の膨らみのし易さを把握することができる。
また、このような製造方法を用いることで、膨れ等の変形が発生しにくいパネル10を提供することが可能となる。
【0041】
上記検査工程では、従来の加湿熱促進試験等で懸念される温度依存によるガスの膨張効果、面材のゆがみ、接着強度などの影響が少なく、これらの懸念を考慮する必要がない。
【0042】
尚、パネル10の膨らみ対策として、目視にて確認できるガス流路の形成が考えられる。この場合には、ガス流路を目視で確認可能なサイズに大きくする必要ある。これに対して、本開示の上記検査工程では、気体の拡散によってガス流路の有無を確認するため、ガス流路が微細であっても十分に確認可能である。
【0043】
本開示のパネル10は、建築用パネルであることが好ましい。
本開示のパネル10の製造方法において、樹脂発泡体11内で流動し得る注入ガスを用いた検査を行うことによって、気体の拡散性を利用できるから、パネル10の状態を比較的広い範囲で観察できる。そのため、このパネル10の製造方法は、比較的大きなサイズが想定される建築用パネルに有効に適用できる。
建築用パネルは、一枚が比較的大きく、従来のように加湿熱促進試験等で再現試験を行う場合、装置が大掛かりになる上、再現性に疑義が生じ易かった。また、剥離試験等で剥離のし易さを指標として用いる場合、不具合の発生箇所の樹脂発泡体と面材との接着力は、環境温度、受ける荷重等の様々な要因で変化してしまう。また、建築用パネルの広い面内において、剥離強度は一様でないため、不具合が生じそうな箇所を全て測定する必要があった。
本開示のパネル10の製造方法では、樹脂発泡体11内のガスの流れを利用することで、比較的広い範囲で残留ガスによる現象を把握でき、建築用パネルにおいても容易に不具合等の発生し易さを把握できる。
【0044】
B.パネル10の検査方法
本開示のパネル10の検査方法は、第一の面材と第二の面材との間に形成される樹脂発泡体11を備えるパネル10の検査方法である。パネル10の樹脂発泡体11にガスを注入してパネル10の状態を検査する工程を含む。
この検査方法では、「A.パネル10の製造方法」の欄における「パネル10」、「ガスを注入するためのガス注入ユニット20」、「検査する工程に用いる検査治具40」の記載、及び「パネルの状態を検査する工程」に関する記載をそのまま適用し、その記載は省略する。
【実施例0045】
次に、実施例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。実験例1-3は、いずれも実施例である。
1.パネルの製造
上記実施形態の製造方法を用いて、実験例1-3の各パネルを製造した。実験例1-3のパネルは、いずれも、板面のサイズが600mm×1200mmであった。実験例1-3のパネルは、同じ製品(パネル)においてロットが異なっていた。
【0046】
実験例1-3のパネルの構成を以下に示す。
・樹脂発泡体:ポリイソシアヌレートフォーム
・表面材:JIS G3321に規定される溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、厚さは0.5mm
・裏面材:JIS G3321に規定される溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、厚さは0.5mm
【0047】
検査工程は、上記実施形態と同様の工程を用いた。具体的には、表面材が上側になるようにパネルを検査治具に固定した。ニードルを樹脂発泡体における表面材の近傍位置
図8参照)に位置するように、表面材に沿わせて差し込んだ。実験例1-3のいずれも、ニードルの樹脂発泡体への差し込み長さは20cmであった。続いて、ニードルからパネル内にガスを注入した。レギュレータを操作して、ガス圧を0MPaから高めていった。具体的には、ガス圧を0.05MPa高めて10秒維持する工程を繰り返し行った。ガス圧が0.7MPaに達した後、そのガス圧で30秒維持した。その後、レギュレータを閉じて、ニードル側のガス圧が十分に下がった後に、パネルからニードルを抜いた。そして、表面材及び裏面材を樹脂発泡体から剥がして、パネルの内部状態を確認した。
【0048】
各実験例1-3の検査工程の結果を表1に示す。表1中、「ガス漏れ発見」の「発見時のガス圧力」の欄において、値の変化が記載してある場合、昇圧中にガス漏れが発見されており、昇圧直前の維持圧から次の目標維持圧への変化を表している。「剥がれ音、破壊音」の「発生時のガス圧力」の欄についても、同様である。1つの値のみが記載してある場合、ガス漏れ発見時の維持圧を表している。
【0049】
【0050】
・膨れ発生のリスク
各実験例1-3の検査工程の結果に基づいて、膨れ発生のリスクを評価した。評価基準は以下のとおりとし、結果を表1に示す。尚、下記の評価は、結果の良好な順に「C」「B」「A」とされている。
「A」:膨れ発生のリスクが高い
「B」:膨れ発生のリスクが中程度
「C」:膨れ発生のリスクが低い
【0051】
・膨れ発生時の膨れの大きさの予想
各実験例1-3の検査工程の結果に基づいて、膨れ発生時の膨れの大きさを予想した。予想の基準は以下のとおりとし、結果を表1に示す。尚、下記の評価は、結果の良好な順に「C」「B」「A」とされている。
「A」:膨れ発生時の膨れが大きい
「B」:膨れ発生時の膨れが中程度
「C」:膨れ発生時の膨れが小さい
【0052】
2.検査工程の結果
実験例1では、ガス圧を0.00MPaから0.05MPaへ昇圧しているときに、ガス漏れが発見されている。このようにガス圧が比較的低い状態でガス漏れが生じるため、樹脂発泡体内に予め残留ガスが存在していても外側へ抜ける流路があり、パネルの膨れ等の不具合が生じ難いことが推測できる。そのため、検査工程ではパネルの剥がれや破壊が生じず、パネルの膨れ発生のリスクが低いことを把握できる。
【0053】
実験例2では、ガス圧を0.2MPaまで高めるまでガス漏れが発見されていない。また、ガス圧を0.20MPaから0.25MPaへ昇圧しているときに、剥がれ音がして、内部観察で界面剥離(樹脂発泡体と面材との剥離)が観察されている。そのため、ガス圧を0.20MPaから0.25MPaへ昇圧しているときに、界面剥離が生じたことが推測される。このように比較的低いガス圧で界面剥離が生じていることから、パネルの膨れ発生のリスクが高いことを把握できる。
【0054】
実験例3では、ガス圧を高めてもガス漏れが発見されていない。また、ガス圧を0.45MPaから0.50MPaへ昇圧しているときに、パネルの破壊音がして、内部観察でパネルの材料破壊(樹脂発泡体等の破壊)が観察されている。そのため、ガス圧を0.45MPaから0.50MPaへ昇圧しているときに、材料破壊が生じたことが推測される。このように比較的高いガス圧で材料破壊が生じていることから、樹脂発泡体と面材との接着強度が強い等の要因によって、パネルの膨れ発生のリスクが実験例2よりも低いことを把握できる。尚、実験例2に比べて、樹脂発泡体にガスの逃げ道がないことから、膨れ発生時の膨れが大きくなることが推測される。
【0055】
3.実施例の効果
以上の実施例によれば、樹脂発泡体に注入されるガスによって生じるパネルの状態を観察できた。樹脂発泡体と面材(表面材及び裏面材)との間の剥離によるパネルの膨らみのし易さを把握することができた。本開示の検査工程をパネルの製造方法に用いることで、膨れ等の現象が発生する可能性のあるパネルが市場に供給されることを未然に防ぐことが可能となる。
【0056】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、本開示の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。