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特開2025-31098糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031098
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチ
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
A01K89/01 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137083
(22)【出願日】2023-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BH01
2B108BH08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オシレート機構とトルク検出部を用いた場合でも、往復運動時に発生する摺動摩擦を低減することを可能とする糸巻き装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、釣竿に固定可能であり、該釣竿の延伸方向に概略平行な中心軸回りに釣糸を巻き取り可能なスプール3と、釣糸を案内する案内部を有し、該スプール3の周囲を回転可能なロータ5と、該案内手段を回転操作する操作部と、該案内部による案内可能・不能を切替える切替え部と、該ロータ5の回転に伴い、該スプール3の中心軸方向を往復運動する往復部材と、該往復部材と該スプール3との間に生じるトルクを検出するトルク検出部8と、を備えるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に固定可能な糸巻き装置であって、
該釣竿の延伸方向に概略平行な中心軸回りに釣糸を巻き取り可能なスプールと、
釣糸を案内する案内部を有し、該スプールの周囲を回転可能なロータと、
該案内手段を回転操作する操作部と、
該案内部による案内可能・不能を切替える切替え部と、
該ロータの回転に伴い、該スプールの中心軸方向を往復運動する往復部材と、
該往復部材と該スプールとの間に生じるトルクを検出するトルク検出部と、
を備えることを特徴とする糸巻き装置。
【請求項2】
前記トルク検出部は、前記往復部材に配置される、請求項1に記載の糸巻き装置。
【請求項3】
リール本体を備え、該リール本体に固定された給電部と、
該給電部から前記トルク検出部に通電を行う可撓性ケーブルと、
をさらに有する、請求項1に記載の糸巻き装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の糸巻き装置が、魚釣用リールである、魚釣用リール。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の糸巻き装置が、ウィンチである、ウィンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力を検出可能な糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リール等の糸巻き装置では、糸の張力を検出することで、糸フケ発生の有無を検知して糸絡みを未然に防止したり、魚信の有無を検知することで魚釣りを効率的に行うことができるようにしている。従来より、糸の張力を検出するための方法として、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、魚釣用リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-169130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、魚釣用リールは、スプールへの釣糸の巻き取りに応じて、釣糸とスプールの相対位置関係を軸方向に往復移動させることで、釣糸を均等に巻きとるオシレート機構と呼ばれるものを備えることが多い。しかしながら、このような魚釣用リールにおいて、オシレート機構を用いた場合、オシレート機構と共に軸方向に往復運動を行う支持軸部と、魚釣用リール本体に固定されるトルク検出部との間に余分な摺動摩擦が発生してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オシレート機構とトルク検出部を用いた場合でも、往復運動時に発生する摺動摩擦を低減することを可能とする糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、釣竿に固定可能であり、該釣竿の延伸方向に概略平行な中心軸回りに釣糸を巻き取り可能なスプールと、釣糸を案内する案内部を有し、該スプールの周囲を回転可能なロータと、該案内手段を回転操作する操作部と、該案内部による案内可能・不能を切替える切替え部と、該ロータの回転に伴い、該スプールの中心軸方向を往復運動する往復部材と、該往復部材と該スプールとの間に生じるトルクを検出するトルク検出部と、を備えるように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、前記トルク検出部は、前記往復部材に配置される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、リール本体を備え、該リール本体に固定された給電部と、該給電部から前記トルク検出部に通電を行う可撓性ケーブルと、をさらに有するように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、魚釣用リールは上記いずれかの糸巻き装置である。
【0011】
本発明の一実施形態に係るウィンチにおいて、ウィンチは上記いずれかの糸巻き装置である。
【発明の効果】
【0012】
上記実施形態によれば、オシレート機構とトルク検出部を用いた場合でも、往復運動時に発生する摺動摩擦を低減することができる糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のオシレート機構7を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のトルク検出部(トルク検出手段)8としてひずみゲージを用いた態様説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1においてウォームシャフト方式を用いた態様を説明する図である。
図5】(a)は、オシレート部材72が軸方向最前方方向にある状態の本発明の一実施形態に係るオシレート機構とトルクセンサの構成に関する概念図であり、(b)は、オシレート部材72が軸方向最後方にある場合の本発明の一実施形態に係るオシレート機構とトルクセンサの構成に関する概念図である。
図6】(a)は、オシレート部材192が軸方向最前方にある状態の従来公知のオシレート機構とトルクセンサの構成に関する概念図であり、(b)は、オシレート部材192が軸方向最後方にある場合の従来公知のオシレート機構とトルクセンサの構成に関する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る糸巻き装置の実施形態について、魚釣用リールの場合を例として、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0015】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の構成について説明する。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、一般的にスピニングリールやスピンキャストリール、クローズドフェイスリールと呼ばれる種類のリールであり、釣糸放出・固定の際にスプールが回転しない種類のリールである。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、釣糸(図示しない)を巻回可能なスプール3と、リール本体4と、リール本体4に対して回転可能に支持されるロータ5と、ロータ5を操作する操作部(例えば、ハンドルであるが図示しない)と、ロータの回転に応じて往復運動をするオシレート機構7と、トルクを検出するトルク検出部(トルク検出手段)8とから構成される。以下では、ロータの回転軸方向を「軸方向」と定義し、ロータが回転する方向を「回転方向」と定義する。
【0017】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、リール本体4(メインフレーム)を介して図示しない釣竿に固定可能である。その際、スプール3の中心軸が、釣竿の延伸方向と概略平行(必要に応じて5度程度傾けることが多い)になるように支持される。
【0018】
スプール3は、概略円筒状に形成され、外周部に釣糸を巻回可能に構成されている。また、ロータ5は、スプール3の中心軸を回転中心として回転可能に支持される。ロータ5にはラインガイド51が保持され、ロータ5が回転するとラインガイド51に案内された釣糸がスプール3の周囲を回転する。これにより、釣糸2をスプール3に巻回可能にされる。
【0019】
ラインガイド51は、ユーザの操作により釣糸の案内可能状態と案内不能状態を切り替えることができる。スピニングリールの場合、ロータ5に対して回転可能に支持されたベールアーム52の先にラインガイド51を保持し、ベールアーム52の回転位置を切り替えることで釣糸の案内可能状態と案内不能状態の切替えを実現している。
【0020】
ベールアーム52を案内側へ回転させると、ラインガイド51によって釣糸を案内可能な状態になり、ロータ5の回転によって釣糸を巻回可能となる。他方で、ベールアーム52を開放側へ回転させると、ラインガイド51によって釣糸を案内不能な状態になり、釣糸に外力を加えると釣糸は軸方向に放出可能となる。ユーザは、これらを切り替えることで、釣糸の放出量を所望の長さにすることができる。
【0021】
ユーザは、ハンドル(図示しない)を操作することで、ロータ5を回転させることができる。ハンドル(図示しない)とロータ5との間には、ギヤやプーリー等の伝達手段を設けることで、回転トルクを伝達するようにしている。ハンドル(図示しない)やロータ5の回転軸に、図示しないラチェットやワンウェイクラッチ等の逆転防止手段を設けることで、意図しない釣糸の放出を防止するようにするとよい。
【0022】
次に、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1におけるオシレート機構とトルク検出部について説明する。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、一般的な魚釣用リールと同様、オシレート機構7を有する。図2は、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1におけるオシレート機構7を説明するためのものであり、一部の構成部品のみを表示した斜視図である。
【0023】
オシレート機構7は、釣糸をスプール3に巻回する際、釣糸を軸方向に均等に巻き付けるために、スプール3を軸方向に往復運動させる機構である。オシレート機構7は、スプール3を支持するメインシャフト71と、ハンドル操作に応じて軸方向に往復運動するオシレート部材72と、ハンドル回転を軸方向の往復運動に変換する変換機構とから構成される。
【0024】
図2に示す通り、変換機構は、ハンドル(図示しない)に設けられたギヤ61と連動するオシレートギヤ74と、オシレート部材72に設けられたS字カム73とによって構成される。メインシャフト71およびオシレート部材72は、それぞれリール本体4に対して、軸方向に移動可能に支持される。
【0025】
ハンドル(図示しない)を回転操作すると、ギヤ61はロータ5に取り付けられたピニオンギヤ51を回動させるとともに、オシレートギヤ74を回動させる。オシレートギヤ74にはS字カム73と連動するフォロワーピン(図示しない)が設けられる。S字カム73は、フォロワーピン(図示しない)によって軸方向の位置が決まり、ギヤ61の回転運動に従って軸方向に直進往復運動を行う。メインシャフト71は、オシレート部材72に対して回転可能に軸支され、軸方向には一体に保持される。
【0026】
また、メインシャフト71は、スプール3を保持するように構成される。これにより、スプール3に生じる回転トルクがメインシャフト71にも発生する。必要に応じて、スプール3とメインシャフト71の間には、公知のドラグ機構を設けてもよい。例えば、ドラグ機構を用いる場合、所定以上のトルクが発生すると、スプール3はメインシャフト71に対して空転する。これにより、釣糸に所定以上の張力が働くことを回避することがで、釣糸の破断を防止又は低減することができる。発生したトルクが所定値以下の場合は、スプール3に生じるトルクはそのままメインシャフト71に伝達される。
【0027】
スプール3に生じるトルクは、釣糸の張力に釣糸の巻取り径を乗じたものである。従って、釣糸の巻取り径が既知の場合、メインシャフト71に生じるトルクを検出することにより、釣糸の張力を算出することができる。釣糸のスプール3への巻取り径は、位置センサを用いることで直接糸面までの距離を測定する方法や、ロータ5の回転数移動量を測定することで糸巻き径の変化量を算出する方法等、従来公知の種々の手段が利用可能である。釣糸の張力を算出することで、糸フケ発生の有無を検知して糸絡みを未然に防止したり、釣糸に過度な張力が働発生することを検出して釣糸の破断を防止したり、魚信の有無を検知したり、釣りの動作を自動的に判別したりすることが可能となる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、オシレート部材72にはトルク検出部(トルク検出手段)8が保持される。トルク検出部8は、オシレート部材72とメインシャフト71の間に生じるトルクに応じた電気信号を出力することができる。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、トルク検出部8は、位置センサ81と、被検出部82と、トーションばね83と、回転部84と、基板85と、ケーブル86とから構成される。
【0029】
メインシャフト71は、前述のように、オシレート部材72に対して回転可能に支持され、軸方向に一体に保持される。メインシャフト71には、被検出部82と、回転部84とが固定される。位置センサ81は、オシレート部材72に保持され、オシレート部材72に対するメインシャフト71の相対角度に応じた信号を出力することができる。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、位置センサ81としてホール素子等の磁気センサを用い、メインシャフト71に固定した永久磁石からなる被検出部82の磁場を検出することで、角度位置を検出する。被検出部82は、径方向に着磁することで、回転位置によって磁場が変化する。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、トルク検出手段8は、非接触方式が望ましく、これにより余計な摺動抵抗の発生を回避することができ、トルク検出の正確性が向上する。非接触式の位置検出手段には、上記例のように磁気式のセンサ以外にも、光学式や静電容量式等が考えられる。
【0030】
また、回転部84は、メインシャフト71に固定され、オシレート部材72に対して所定の範囲内(例えば、0°から60°の角度範囲内)で回転可能に支持される。トーションばね83は、回転部84を介して、メインシャフト71とオシレート部材72の間に、回転方向の復元力を発生させる。メインシャフト71に回転トルクが生じると、そのトルク量に応じた所定の角度位置がつり合いの位置となる。従って、位置センサ81によりこのつり合いの位置を検出することで、メインシャフト71とオシレート部材72の間に生じるトルクを算出することができる。
【0031】
また、メインシャフト71とオシレート部材72の間に所定以上のトルクが生じた場合、回転部材84がオシレート部材72により回転を規制される。これにより、所定以上のトルクが生じた場合に当該トルクの検出は不能となるものの、装置の破壊を防止したり、被検出部82が位置センサ81の検出範囲外の位置に移動することを回避することができる。
【0032】
基板85は、位置センサ81の出力信号を処理する。必要に応じてCPU等の演算回路やメモリ等の記憶部(記憶手段)、通信部(通信手段)等を備え、位置センサ81によって取得した情報の演算、記憶、出力等を行う。また、図示しない電池等から給電を受け、その電力を位置センサ81に供給する。外部との通信や給電のために、基板85は、リール本体4に固定することが望ましい。
【0033】
ケーブル86は、位置センサ81と基板85を電気的に接続する。リール本体4に固定した基板85とオシレート部材72に保持される位置センサ81は、軸方向に相対移動するため、ケーブル86は可撓性のある材料から構成するのが望ましく、フレキシブルプリント基板や、リード線を複数束ねたものが用いられる。リード線は、屈曲しやすいような線径や材料のものを用いるとよい。
【0034】
なお、トルク検出部8の構成については、上記で説明したようなばねと位置センサを組み合わせる方式以外にも、メインシャフト71とオシレート部材72の間のトルクを検出する方法であれば、同様の効果を実現できる。例えば、オシレート部材72とメインシャフト71とを回転方向で連結し、メインシャフト71又はオシレート部材72の一部にひずみゲージを設けるようにしてもよい。これにより、メインシャフト71とオシレート部材72の間に発生するトルクに応じた電気信号を取得することができる。
【0035】
以下の説明では、便宜上、メインシャフト71とオシレート部材72の間のねじれトルクを受ける部分を、ねじれ部材と呼ぶことにする。ばねと位置センサを組み合わせた例では、トーションばね83がねじれ部材に該当し、ひずみゲージを用いた例では、ひずみゲージが貼付される部材(メインシャフト71又はオシレート部材72の一部)がねじれ部材に該当する。
【0036】
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のトルク検出部(トルク検出手段)8としてひずみゲージを用いた態様について説明する。図3に示すように、メインシャフト71は、オシレート部材172に対して、片持ち梁184によって支持されることで、軸方向に連結している。そして、釣糸2に張力が生じると、メインシャフト71はオシレート部材172に対して、ねじり方向のトルクを受ける。このトルクを、片持ち梁184に設けたひずみゲージ181によって検出することができる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のトルク検出部(トルク検出手段)8としてひずみゲージを用いた場合、ねじれ部材として剛性の高いものを用いることができる。これにより、検出可能なトルクを大容量化することができる。また、応答性の早い検出手段とすることができる。また、摩擦の影響を受けにくくなるため、ヒステリシス性が少なく線形性のよい検出手段とすることができる。
他方で、ひずみゲージを用いる場合、トーションばねと位置センサを用いる場合と比較して、ひずみゲージ自身の発熱等によって生じる温度ドリフトへの影響が必要、消費電力が高い、定格容量以上のトルクが加わったときに生じる塑性変形への対策が施しにくい等のデメリットがあるため、目的に応じて使い分けるとよい。上記態様以外にも、メインシャフトに直接ひずみゲージを貼付する等、オシレート部材172とスプール3の間に生じるトルクを検出する方法であれば、同様の効果を実現できる。
【0038】
なお、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1におけるオシレート機構は、上記態様に限らず、その他の従来公知のオシレート機構を用いてもよい。具体的には、ハンドルの回転に応じて渦巻きらせん状(ハート形状)のカムを回転させるハートカムと呼ばれる方式や、Fターム2B108BH07に分類されるウォームシャフト方式と呼ばれる方式を用いても、本発明の一実施形態に係る態様と同様の効果を実現できる。
【0039】
次に、図4を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1においてウォームシャフト方式を用いた態様について説明する。図4に示すように、メインシャフト71とオシレート部材272は、それぞれリール本体(図示しない)に対して、軸方向に移動可能に支持される。
【0040】
ハンドル(図示しない)を回転操作すると、ギヤ61はロータ5に取り付けられたピニオンギヤ51を回動させる。ウォームギヤ274はピニオンギヤ51と噛み合うことで、ギヤ61の回転に応じて回転運動をする。ウォームギヤ274には、右巻きの螺旋カムと左巻きの螺旋カムが連続的に形成され、これらのカムに、オシレート部材272に設けられたフォロワー273が連動する。このようにして、オシレート部材272の軸方向の位置が決まり、ギヤ61の回転運動に従って、オシレート部材272が軸方向に直進往復運動を行う。
【0041】
また、メインシャフト71は、オシレート部材272に対して、片持ち梁284によって支持されることで、軸方向に連結している。そして、釣糸に張力が発生すると、メインシャフト71はオシレート部材272に対して、ねじり方向のトルクを受ける。このトルクを、片持ち梁284に設けたひずみゲージ281によって検出することができる。
【0042】
いずれの方式においても、ハンドル回転に応じて軸方向に往復運動し、その運動をメインシャフト71に伝達するオシレート部材が存在するため、オシレート部材とメインシャフトの間に生じるねじり方向のトルクを電気信号として検出することで、上述の態様と同様の効果を実現できる。
【0043】
次に、図5及び図6を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1による技術的効果について、従来公知のトルク検出部(トルク検出手段)と比較して説明する。図5は、本発明の一実施形態に係るオシレート機構とトルク検出部(トルク検出手段)の構成に関する概念図であり、図5(a)は、オシレート部材72が軸方向最前方方向にある状態、図5(b)は、オシレート部材72が軸方向最後方にある場合である。また、図6は、従来公知のオシレート機構とトルク検出部(トルク検出手段)の構成に関する概念図であり、図6(a)は、オシレート部材172が軸方向最前方にある状態、図6(b)は、オシレート部材172が軸方向最後方にある場合である。
【0044】
まず、図6を用いて、従来公知のトルク検出部(トルク検出手段)の構成について説明する。従来公知のトルク検出部(トルク検出手段)を有する魚釣用リールは、図6に示すように、魚釣用リール本体104と、メインシャフト171と、オシレート部材172と、トルク検出部(トルク検出手段)181と、ねじれ部材183と、基板185と、ケーブル186とから構成される。なお、上述の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。オシレート部材172は、魚釣用リール本体104に対して、軸方向に往復運動をする。メインシャフト171は、オシレート部材172に対して回転可能に支持され、軸方向には一体に動く。
【0045】
ねじれ部材183は、リール本体104に対して所定範囲内に回転可能に支持される。また、メインシャフト171にはDカット形状で篏合する等の方法で、回転方向に一体に移動し、軸方向には摺動する。トルク検出センサ181は、上述の位置センサ81と同様、ねじれ部材183に生じるトルクに応じた電気信号を出力し、ケーブル186を介して基板185に当該出力情報を伝達する。
【0046】
これに対して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、摺動抵抗を低減させることができる。より詳細には、上述の従来の魚釣用リール100では、オシレート部材172が軸方向に往復運動する際、ねじれ部材183とメインシャフト171は、軸方向に相対移動するため、これらの部材の間には摺動抵抗が発生してしまう。この摺動抵抗は、特に、メインシャフト171にトルクが発生した際に大きくなり、最終的には熱エネルギーに変換されることとなる。この摺動抵抗は、ユーザがハンドルを回転させるときの負荷増加に繋がり、引いてはユーザに違和感を与えたり、機構全体としての効率低下に繋がることとなる。これに対して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、メインシャフト71とねじれ部材83は、軸方向に一体で移動することとなるため、摺動抵抗が発生しない。このようにして、ユーザに違和感を与えることを回避でき、機構全体としての効率向上を実現することが可能となる。
【0047】
また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、魚釣用リールの小型化を実現することが可能となる。これにつき、図5図6を比較しながら説明する。図5、6に示すように、オシレート部材の後端部は、図5(a)及び図6(a)のF地点からオシレータ機構のストロークSだけ軸方向後方にある図5(b)及び図6(b)のR地点へ移動する。図6に示すように、従来の魚釣用リール100において、ねじれ部材183は、オシレート部材172との干渉を避けるために、R地点より後方に配置する必要がある。また、図6(a)の状態でメインシャフト171とねじれ部材183を嵌合させるためには、最小嵌合量をWとすると、メインシャフト171はF地点より後方にS+W以上延伸していなければならない。従って、図6(b)の状態では、メインシャフト171はR地点より後方にS+W以上飛び出すこととなる。すなわち、魚釣用リール本体はこの長さをカバーできるだけの大きさが必要になる。
【0048】
これに対して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、図5に示すように、ねじれ部材83とメインシャフト71は、軸方向には相対移動せず、常に接触して配置可能である。従って、図5(b)の場合でも、メインシャフトはR地点から最小嵌合幅Wだけ飛び出していれば十分である。このようにして、魚釣用リール本体1は、従来の場合と比べてSだけ軸方向後方に短く小型化できることとなる。すなわち、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、オシレータ機構の移動量Sが大きい程、小型化の効果がより大きくなる。
【0049】
その他、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、下記の技術的効果も得られる。釣糸に張力が発生し、スプール3にトルクが生じると、一般的に魚釣用リール内の様々な箇所に応力が生じる。例えば、釣糸を案内するラインガイド51や、それを保持するロータ5、あるいは、メインフレーム4の釣竿取り付け部(リールフット部)等は、釣糸の張力に応じた応力が生じる。ひずみゲージ等の検出手段を用いてこれらの応力を検出することで、釣糸への張力を測定することは可能である。しかしながら、ロータ5やラインガイド51に検出手段を設ける場合は、検出手段はリール本体に対して無限回転をする。このため、検出手段への給電や、検出手段からの信号を出力するために、無線等の手段を用いる必要が生じてしまう。また、リールフット部等、ユーザが手に触れる部分に検出手段を設けた場合やユーザがリール本体を触った場合等、スプール3へのトルクが生じない場合でもひずみが生じるため、釣糸の張力を検出するのが難しくなってしまう。また、ロータ5の一部等、特定の部位では、スプール3に生じるトルクが同じでも、オシレータ機構の位置によって、応力が変化してしまうことがある。これに対して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のように、メインシャフト71とオシレート部材72の間のねじりトルクを検出することで、通常のリール操作をしている限り、スプール3へのトルク以外の方法では信号を検出することが少ないため、スプール3のトルクを精度良く検出することができる。
また、オシレータ機構の位置に依らずに、スプール3のトルクを検出することができる。
【0050】
なお、図5図6を比較して分かるように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、トルク検出手段は魚釣用リール本体に対して軸方向に往復運動を行う。他方で、トルク検出手段に給電するための電池や、トルク検出手段の出力する信号を処理するための演算回路を有する基板は、大きさ等の制約から、魚釣用リール本体に保持させることが望ましい。このようなことから、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、基板とトルク検出手段の間を、フレキシブルプリント基板やリード線等の可撓性を有するケーブルを用いて電気的に接続することが望ましい。トルク検出部は、限られた範囲内での往復運動を行うため、可撓性を有するケーブルの長さを十分長くしておけば、移動範囲の全領域において、基板からの給電及び信号の出力を安定して行うことができる。この際、特に屈曲部においてケーブルは繰り返し応力を受けるため、最小曲げ半径を大きく取る等、ケーブルの破断を回避する対策を設けるとよい。
【0051】
上述した本発明のいずれの実施形態に係る魚釣用リール1は、糸巻き装置に適用可能である。また、上述した本発明のいずれの実施形態に係る魚釣用リール1は、ウィンチに適用可能である。
【0052】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 魚釣用リール
3 スプール
4 リール本体
5 ロータ
7 オシレート機構
8 トルク検出部(トルク検出手段)
71 メインシャフト
72 オシレート部材
74 オシレートギヤ
81 位置センサ
82 被検出部
84 回転部
85 基板
86 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6