(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031194
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】見守りシステム、見守り方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20250228BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】34
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137248
(22)【出願日】2023-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】518300744
【氏名又は名称】IT FORCE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】中山 朋子
(72)【発明者】
【氏名】服部 哲平
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC12
5L050CC12
(57)【要約】
【課題】広い範囲にわたって複数の見守り対象の動向を一括して把握して管理者に異常を知らせることができる見守りシステム、見守り方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】本発明の見守りシステム1は、見守り対象が個別に所持する無線タグ9と、管理者が所持し、所定の見守り情報を表示可能な表示部2cと音を出力可能な音出力部2eとを有するとともに、無線タグ9と無線通信可能な移動端末2と、各無線タグ9から定期的に移動端末2の側で取得される信号に基づいて、管理者と各見守り対象との間の距離を定期的に算出し、その距離に応じて各見守り対象を識別可能に移動端末2の表示部2cに表示させるとともに、距離が所定の設定距離を超えるときに警報音を移動端末2の音出力部2eから出力させる制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対的に移動する複数の見守り対象の集団を、該集団を引率して管理する管理者が見守るための見守りシステムであって、
前記見守り対象が個別に所持する無線タグと、
前記管理者が所持し、音又は振動を出力可能な出力部を有するとともに、前記無線タグと無線通信可能な移動端末と、
前記各無線タグから定期的に前記移動端末の側で取得される信号に基づいて、前記管理者と前記各見守り対象との間の距離を定期的に算出し、その距離が所定の設定距離を超えるときに警報音又は振動を前記移動端末の前記出力部から出力させる制御部と、
を備えることを特徴とする見守りシステム。
【請求項2】
前記移動端末は、所定の見守り情報を表示可能な表示部を更に有し、
前記制御部は、定期的に算出される前記距離に応じて前記各見守り対象を識別可能に前記移動端末の前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の設定距離を超えた見守り対象を前記管理者が特定できるように前記移動端末の前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項4】
前記無線タグが信号を定期的に発するビーコンタグであり、前記制御部は、前記移動端末側での前記信号の受信電波強度と前記ビーコンタグのバッテリ残量とに基づいて前記距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記管理者と前記見守り対象との間の離間状態をその距離に応じて複数の段階に分け、各見守り対象をこれらの複数の段階のうちのいずれの段階にいるかが特定できるように前記移動端末の前記表示部に識別表示することを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項6】
前記所定の見守り情報は、前記距離、前記ビーコンタグのバッテリ情報、前記管理者と前記見守り対象との間の前記離間状態を含むことを特徴とする請求項5に記載の見守りシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の見守り対象の全員に共通の前記設定距離を前記移動端末の前記表示部で設定できるようにすることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項8】
前記制御部は、それぞれの見守り対象ごとに個別に前記設定距離を前記移動端末の前記表示部で設定できるようにすることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項9】
前記制御部は、前記管理者が見守るべき前記見守り対象を前記移動端末の前記表示部で選択的に設定できるようにすることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項10】
前記制御部は、前記距離が前記所定の設定距離を超えるときに警告表示を前記移動端末の前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項11】
前記見守り対象の識別可能な表示は、前記各見守り対象に対応するアイコンを色分け表示することを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項12】
前記移動端末が前記制御部を有するとともにサーバと無線通信可能であり、前記制御部は、前記無線タグの情報及び前記見守り対象の情報を前記サーバから取得することによって前記管理者が見守るべき前記見守り対象及びその対応する無線タグを特定することを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項13】
所定のアルゴリズムにしたがってコンピュータで処理することにより、互いに相対的に移動する複数の見守り対象の集団を、該集団を引率して管理する管理者が見守れるようにする見守り方法において、
前記見守り対象に個別に無線タグを所持させるステップと、
前記無線タグと無線通信可能な移動端末を前記管理者に所持させるステップであって、前記移動端末が、音又は振動を出力可能な出力部を有する、ステップと、
前記各無線タグから定期的に前記移動端末の側で取得される信号に基づいて、前記管理者と前記各見守り対象との間の距離を定期的に算出する算出ステップと、
前記距離が所定の設定距離を超えるときに警報音又は振動を前記移動端末の前記出力部から出力させる出力ステップと、
を含むことを特徴とする見守り方法。
【請求項14】
前記移動端末は、所定の見守り情報を表示可能な表示部を更に有し、
定期的に算出される前記距離に応じて前記各見守り対象を識別可能に前記移動端末の前記表示部に表示させる識別表示ステップを更に含むことを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項15】
前記識別表示ステップは、前記所定の設定距離を超えた見守り対象を前記管理者が特定できるように前記移動端末の前記表示部に表示することを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項16】
前記無線タグが信号を定期的に発するビーコンタグであり、前記算出ステップは、前記移動端末側での前記信号の受信電波強度と前記ビーコンタグのバッテリ残量とに基づいて前記距離を算出することを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項17】
前記識別表示ステップは、前記管理者と前記見守り対象との間の離間状態をその距離に応じて複数の段階に分け、各見守り対象をこれらの複数の段階のうちのいずれの段階にいるかが特定できるように前記移動端末の前記表示部に識別表示することを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項18】
前記所定の見守り情報は、前記距離、前記ビーコンタグのバッテリ情報、前記管理者と前記見守り対象との間の前記離間状態を含むことを特徴とする請求項17に記載の見守り方法。
【請求項19】
前記複数の見守り対象の全員に共通の前記設定距離を前記移動端末の前記表示部で設定できるようにするステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項20】
それぞれの見守り対象ごとに個別に前記設定距離を前記移動端末の前記表示部で設定できるようにするステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項21】
前記管理者が見守るべき前記見守り対象を前記移動端末の前記表示部で選択的に設定できるようにするステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項22】
前記距離が前記所定の設定距離を超えるときに警告表示を前記移動端末の前記表示部に表示させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項23】
前記見守り対象の識別可能な表示は、前記各見守り対象に対応するアイコンを色分け表示することを特徴とする請求項13に記載の見守り方法。
【請求項24】
所定のアルゴリズムにしたがって処理することにより、互いに相対的に移動する複数の見守り対象の集団を、該集団を引率して管理する管理者が見守れるようにするコンピュータプログラムにおいて、
前記見守り対象に個別に無線タグを所持させるステップと、
前記無線タグと無線通信可能な移動端末を前記管理者に所持させるステップであって、前記移動端末が、音又は振動を出力可能な出力部を有する、ステップと、
前記各無線タグから定期的に前記移動端末の側で取得される信号に基づいて、前記管理者と前記各見守り対象との間の距離を定期的に算出する算出ステップと、
前記距離が所定の設定距離を超えるときに警報音又は振動を前記移動端末の前記出力部から出力させる出力ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項25】
前記移動端末は、所定の見守り情報を表示可能な表示部を更に有し、
定期的に算出される前記距離に応じて前記各見守り対象を識別可能に前記移動端末の前記表示部に表示させる識別表示ステップをコンピュータに更に実行させることを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
前記識別表示ステップは、前記所定の設定距離を超えた見守り対象を前記管理者が特定できるように前記移動端末の前記表示部に表示することを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
前記無線タグが信号を定期的に発するビーコンタグであり、前記算出ステップは、前記移動端末側での前記信号の受信電波強度と前記ビーコンタグのバッテリ残量とに基づいて前記距離を算出することを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項28】
前記識別表示ステップは、前記管理者と前記見守り対象との間の離間状態をその距離に応じて複数の段階に分け、各見守り対象をこれらの複数の段階のうちのいずれの段階にいるかが特定できるように前記移動端末の前記表示部に識別表示することを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項29】
前記所定の見守り情報は、前記距離、前記ビーコンタグのバッテリ情報、前記管理者と前記見守り対象との間の前記離間状態を含むことを特徴とする請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項30】
前記複数の見守り対象の全員に共通の前記設定距離を前記移動端末の前記表示部で設定できるようにするステップをさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項31】
それぞれの見守り対象ごとに個別に前記設定距離を前記移動端末の前記表示部で設定できるようにするステップをさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項32】
前記管理者が見守るべき前記見守り対象を前記移動端末の前記表示部で選択的に設定できるようにするステップをさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項33】
前記距離が前記所定の設定距離を超えるときに警告表示を前記移動端末の前記表示部に表示させるステップをさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項34】
前記見守り対象の識別可能な表示は、前記各見守り対象に対応するアイコンを色分け表示することを特徴とする請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに相対的に移動する複数の見守り対象の集団を、該集団を引率して管理する管理者が見守るための見守りシステム、見守り方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、徘徊や迷子による児童及び高齢者の行方不明、児童の置き去り等が益々問題となってきており、そのため、児童や高齢者等を見守るための様々な形態の見守りシステムが従来から数多く提案されてきている。
【0003】
例えば、そのような類のシステムの一例として、無線タグ及び位置情報取得機能を備えた携帯端末を生徒に所持させ、無線タグでの管理上で未登校である生徒について、生徒が所持する携帯端末の現在位置を取得し、携帯端末の現在位置が学校内にないことを確認した上で登校異常であると判断する登下校管理システムも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような様々なタイプの見守りシステムが存在する現状においても、例えば、公園にいるある保育園の児童が同じ公園にいる他の保育園のグループに間違ってついて行ってしまうなどといった、既存のシステムでは十分に対処できない様々な問題が残されている。このような問題は、一様に、従来のシステムが、狭い行動範囲でしか監視できなかったり、様々に移動する複数の人の動向を一括して監視できないことに起因する場合が多い。
【0006】
したがって、このような見守りの現状では、自由に移動する児童や高齢者を広い範囲で見守ることができ、外出先でもこれらの移動する複数人の動向を一括して把握して柔軟に対処できる見守りシステムが早急に求められている。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、広い範囲にわたって複数の見守り対象の動向を一括して把握して管理者に異常を知らせることができる見守りシステム、見守り方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、互いに相対的に移動する複数の見守り対象の集団を、該集団を引率して管理する管理者が見守るための見守りシステムであって、
前記見守り対象が個別に所持する無線タグと、
前記管理者が所持し、所定の見守り情報を表示可能な表示部と音又は振動を出力可能な出力部とを有するとともに、前記無線タグと無線通信可能な移動端末と、
前記各無線タグから定期的に前記移動端末の側で取得される信号に基づいて、前記管理者と前記各見守り対象との間の距離を定期的に算出し、その距離に応じて前記各見守り対象を識別可能に前記移動端末の表示部に表示させるとともに、前記距離が所定の設定距離を超えるときに警報音又は振動を前記移動端末の前記出力部から出力させる制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
このように、本発明に係る上記構成の見守りシステムは、見守り対象が個別に所持する無線タグと、管理者が所持し、所定の見守り情報を表示可能な表示部及び音又は振動を出力可能な出力部を有するとともに、無線タグと無線通信可能な移動端末とを備え、各無線タグから定期的に移動端末の側で取得される信号に基づいて、管理者と各見守り対象との間の距離を定期的に算出し、その距離に応じて各見守り対象を識別可能に移動端末の表示部に表示させるようにしている(各見守り対象の距離に応じた識別表示を可能にしている)ため、広い範囲にわたって複数の見守り対象の動向を一括して把握できるようになる。
【0010】
また、上記構成によれば、見守り対象と管理者との間の距離が所定の設定距離を超えるときに警報音又は振動を移動端末の出力部から出力させるようになっているため、見守り対象が管理者から離れすぎた異常時には、その旨を管理者に知らせて、注意を喚起することができる。特に、異常を音又は振動で管理者に知らせることにより、常に移動端末の表示部を見ているとは限らない管理者に対して確実に異常を知らせることができる。なお、この場合、所定の設定距離を超えた見守り対象を管理者が特定できるように移動端末の表示部に表示することが好ましい。また、警報音又は振動に加えて、警告表示を移動端末の表示部に表示させてもよい。
【0011】
また、上記構成において、無線タグは、アクティブ方式の無線タグであってもよく、特に、信号を定期的に発するビーコンタグ(BLEビーコン)であることが好ましい。一般に、ビーコンは、不特定多数に向けて信号(情報)を発信することができ、ビーコンからの距離が遠いほどその受信電波強度(RSSI)が弱くなるという特性があるため、制御部は、移動端末が受信するビーコンタグからの信号の受信電波強度に基づいて、互いに相対的に移動し得る管理者と見守り対象との間の距離を算出することができるようになる。算出方法の一例として、例えば、参照によりその全体が本願に組み込まれる特開2019-86344号公報の
図12に示されるような算出方式によって管理者と見守り対象との間の離間距離を算出することもできる。これに関し、
図17は、特開2019-86344号公報の
図12を示しているが、図示のように、ビーコンからの距離が短くなるほど、換言するとビーコンに近付くほど、実測値と、電波伝搬モデルにより導出される電波強度値との乖離が大きくなる傾向がある。すなわち、
図17に示した場合では、ビーコン付近の地点については、実際の電波強度を、一つの電波伝搬モデルにより適切に電波伝搬曲線を近似することができない。一般に、電波伝搬モデルをユーザの位置を測位するための測位のための装置に適用する場合、電波伝搬モデルにおいて電波強度の変化率が大きい、ビーコンから一定の範囲内の距離(ビーコン付近)に対して利用される。そのため、ビーコン付近における電波伝搬モデルの近似精度は、測位精度に多大な影響を与える。そこで、この算出方法では、電波伝搬モデルの近似精度が低下するビーコン付近の区間を複数の区間に分割し、分割した区間毎に、実測値を用いて導出されたモデル係数を用いた電波伝搬モデルを適用する。つまり、ビーコンからの距離に応じた区間を電波強度値の変化率が比較的大きい区間と、電波強度値の変化率が比較的小さい区間とに分割し、さらに電波強度値の変化率が比較的小さい区間内を複数の区間に分割し、区間毎に電波伝搬モデルに適用する空間伝搬係数の値を切り替える。
また、本発明に上記構成において、バッテリ残量が低下する前にバッテリを交換する場合には、離間距離の算出において、バッテリ残量を考慮しなくてもよい。バッテリ残量を考慮して離間距離を算出する場合には、例えば、バッテリ残量に応じたRSSI値の補正係数を予め算出した補正テーブルを内蔵し、測定RSSI値とバッテリ残量とから補正RSSI値を算出して離間距離を計算してもよい。バッテリ残量を考慮したRSSI値の補正はこの方法に限られず既知の補正方法を使用することが可能である。
【0012】
また、上記構成において、制御部は、管理者と見守り対象との間の離間状態をその距離に応じて複数の段階に分け、各見守り対象をこれらの複数の段階のうちのいずれの段階にいるかが特定できるように移動端末の表示部に識別表示することが好ましい。これによれば、管理者は、自身からの各見守り対象の離間状態を一見して段階的に把握することができ、その離間状態に応じて柔軟に対処することが可能となる。
【0013】
また、上記構成において、制御部は、複数の見守り対象の全員に共通の設定距離を移動端末の表示部で設定できる、あるいはそれぞれの見守り対象ごとに個別に設定距離を移動端末の表示部で設定できるようにすることが好ましい。特にそれぞれの見守り対象ごとに個別に設定距離を定めることができれば、見守り対象の性格などに起因する挙動の傾向に応じて柔軟に距離の警報閾値を設定し、見守り対象の特性や状況に即した個別の対応が可能となる。
【0014】
また、本発明は、前述した見守りシステムが実行する見守り方法、及び、該方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広い範囲にわたって複数の見守り対象の動向を一括して把握して管理者に異常を知らせることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る見守りシステムの概念図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る見守りシステムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る見守りシステムを構成するクラウドサーバ及び移動端末の各マスター及びテーブルに記憶される情報項目の一例を示すテーブルカラムを示す。
【
図4】(a)は、移動端末である携帯端末の電源をONにして、携帯端末に予めインストールされた見守りアプリケーション(コンピュータプログラム)を立ち上げた際に携帯端末の表示部に表示されるスタート画面の一例、(b)は、情報を無線タグとしてのビーコンタグ及びサーバから読み取っている状態を示す読み取り画面の一例、(c)は、見守り対象としての児童に関して検知及び算出された見守り情報が一覧表示された対象児童リスト選択画面の一例をそれぞれ示す。
【
図5】
図4の(c)の対象児童リスト選択画面において一部の児童を検知対象から排除するための「検知しない」ボタンを表示させた状態の画面の一例を示す。
【
図6】
図4の(c)の対象児童リスト選択画面において「スタート」ボタンをタッチした際に表示部に表示される見守り画面の一例を示す。
【
図7】(a)は、
図6(又は
図7の(b))に示される見守り画面において「ホーム」ボタンをタッチした際に表示部に表示されるホーム画面の一例、(b)は、
図6にも示した見守り画面、(c)は、
図6(又は
図7の(b))に示される見守り画面において「設定」ボタンをタッチした際に表示部に表示される設定画面の一例をそれぞれ示す。
【
図8】(a)は、
図6にも示した見守り画面、(b)は、見守り画面上に表示される任意の特定の児童(ここでは「鈴木花子」)に対応するアイコンをタッチする(押す)ことによって表示部に表示される児童詳細画面の一例、(c)は、(b)の児童詳細画面において「設定」ボタンをタッチした際に表示部に表示される児童個別設定画面の一例をそれぞれ示す。
【
図9】(a)は、
図8の(b)にも示した児童詳細画面、(b)は、(a)の児童詳細画面において「児童を探す」ボタンをタッチした際に表示部に表示される児童探し中画面の一例、(c)は、(b)の児童探し中画面において「完了」ボタンをタッチした際に表示部に表示される見守り画面(
図6、
図7の(b)、及び
図8の(a)と同様)の一例をそれぞれ示す。
【
図10】(a)は、任意の特定の児童(ここでは、「佐藤太郎」)に関して注意喚起距離範囲下限値(
図7の(c)の表示画面中の注意対象値)である第1の設定距離を超えた際に出現するポップアップ表示を伴うアラート画面の一例、(b)は、(a)のポップアップ表示において「確認」ボタンをタッチした際に表示部に表示される
図6、
図7の(b)、及び
図8の(a)にも示した見守り画面をそれぞれ示す。
【
図11】(a)は、任意の特定の児童(ここでは、「鈴木花子」)に関して注意喚起距離範囲下限値よりも大きい危険距離範囲下限値(
図7の(c)の表示画面中の警報対象値)である第2の設定距離を超えた際に出現するポップアップ表示を伴うアラート画面の一例、(b)は、(a)のポップアップ表示において「児童を探す」ボタンをタッチした際に表示部に出現するポップアップ表示を伴うアラート画面の一例、(c)は、(b)のポップアップ表示において「完了」ボタンをタッチした際に表示部に表示される見守り画面(
図6、
図7の(b)、及び
図8の(a)と同様)の一例をそれぞれ示す。
【
図13】見守りプログラムにおけるアルゴリズムの一例を示すフローチャートであり、具体的には、見守りアプリケーションを立ち上げて
図4及び
図5の表示画面に至るまでの制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】見守りプログラムにおけるアルゴリズムの一例を示すフローチャートであり、具体的には、注意喚起距離範囲下限値(注意対象値)及び危険距離範囲下限値(警報対象値)の設定を可能にする制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】見守りプログラムにおけるメインアルゴリズムの一例を示すフローチャートであり、具体的には、見守り開始から見守り終了までに至る制御部の一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】見守りプログラムにおけるアルゴリズムの一例を示すフローチャートであり、具体的には、ポップアップ表示を出現させるための制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17】RSSI値に基づく距離の算出原理の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の見守りシステムの一実施形態について説明する。
1.見守りシステムの概要
図1には、クラウドサーバ4と通信手段(ネットワーク)10を介して通信し、所定のアルゴリズムにしたがってコンピュータで処理することにより、互いに相対的に移動する複数の見守り対象6の集団を、該集団を引率して管理する管理者8が見守れるようにする見守りシステム1の一例が概念的に示されている。この見守りシステム1は、クラウドサーバ(以下、単にサーバと呼ぶ場合もある)4と、通信手段10を介してクラウドサーバ4と無線通信可能に接続される携帯端末(移動端末)2と、携帯端末2と無線通信可能な無線タグの一例としてビーコンタグ9とを少なくとも備える。
【0018】
なお、以下の実施形態では、見守り対象としての保育園の複数の児童(園児)6の集団を、該集団を引率して管理する管理者としての保育士8が見守る(監視する)例について説明するが、本発明は、保育園の児童及び保育士に限定されず、例えば介護施設の高齢者及び介護士など、他の集団とそれを管理する管理者に対しても同様に適用可能である。なお、集団は人間に限定されるものではなく動物にも適用可能である。
【0019】
移動端末としての携帯端末2は、管理者としての保育士8が携行(所持)する端末であり、例えばスマートフォンなどから成ることができる。また、携帯端末2は、有線あるいは無線、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信などの近距離無線通信規格によって、ビーコンタグ9と通信可能であるとともに、ネットワーク10を介してクラウドサーバ4とも通信可能である。さらに、携帯端末2は、所定の見守り情報を表示可能な表示部と、音又は振動を出力可能な音出力部(例えば、スピーカ)又は振動発生部とを有する。
【0020】
ビーコンタグ9は、見守り対象としての児童6が個別に携行(所持)する端末である。一般に、ビーコンは、不特定多数に向けて信号(情報)を発信することができ、ビーコンからの距離が遠いほどその受信電波強度(RSSI)が弱くなるという特性があるが、特に本実施形態のビーコン9は、定期的に(例えば0.9秒ごとに)信号(以下、場合によりビーコン信号ともいう)を発信するようにすることで、RSSI値に基づく児童6と保育士8との間の距離の定期的な算出(ビーコン9の位置の逐次検知)を可能にしている。なお、児童が個別に携行する無線タグは、このようなビーコンタグに限らず、例えばアクティブ方式の他の無線タグであってもよく、無線給電可能な環境であればパッシブ方式の無線タグであってもよい。
【0021】
また、
図1において通信手段10は、携帯端末2とサーバ4との間で情報のやり取りを行なうものであり、有線通信、無線通信のいずれであってもよい。そのような通信手段10としては、例えば、インターネット、有線ケーブルを用いた回線、有線電話回線、携帯電話回線、WiFi回線などが挙げられる。また、携帯端末2は入力装置を有する。この入力装置は、例えば、キーボードやマウス、あるいはタッチパネル等である。
【0022】
このような構成の本実施形態の見守りシステム1では、保育士8が携帯端末2の電源をONにして、携帯端末2に予めインストールされた見守りアプリケーション(コンピュータプログラム)を立ち上げると、複数の児童6が個別に所持する各ビーコンタグ6の検知が開始される。このとき、アプリケーション(言い換えると、システム1の制御部)は、ビーコンタグ6のIDを基にクラウドサーバ4からビーコンタグの情報(及び児童の情報)を取得する(クラウドサーバ4には、ビーコンタグの情報と児童の情報とが紐付けされて登録されている)とともに、例えば0.9秒ごとにビーコンタグ9が発信しているビーコン信号を受信し、所定の見守り情報を携帯端末の表示部に表示させる(すなわち、受信したビーコン(児童)のみを見守りの対象とする)。また、同じビーコンタグ9から信号を受信し続けている間は、信号の検知時間、ビーコンタグ9に内蔵されたバッテリの残量、RSSI(携帯端末2側で受信するビーコン信号の受信電波強度)値が更新され続ける。
【0023】
また、アプリケーション(システム1の制御部)は、各ビーコンタグ9から定期的に携帯端末2の側で取得されるビーコン信号に基づいて、保育士8と児童6との間の距離を定期的に算出し、その算出した距離に応じて児童6(本実施形態では、後述するように、児童6に対応するアイコン又はテキスト情報)を識別可能に携帯端末2の表示部に表示させる(各児童6の距離に応じた識別表示を可能にする)とともに、前記距離が所定の設定距離(危険範囲であるアラート対象範囲)を超えるとき(児童6及び児童6に所持されるビーコンタグ9が保育士8から所定の設定距離以上離れるとき)に、言い換えると、アプリケーションで設定された安全範囲内で一定時間ビーコン信号を検知できなかった場合に、警報音又は振動を携帯端末2の音出力部又は振動発生部から出力させる。
【0024】
なお、本実施形態では、見守りのために必要な各種データをクラウドサーバ4と携帯端末2との間でやりとりする例について説明するが、サーバ4を介すことなく、携帯端末2それ単独でのみ後述する見守り処理(見守り方法)を実行するようになっていても構わない。また、システム1という形態ではなく、そのような見守り処理を実行するためのコンピュータプログラムが格納されたコンピュータプログラムプロダクト(記録媒体)として存在していてもよい。
【0025】
2.見守りシステムの構成
図2には、
図1の見守りシステム1の個々の要素の概略的な構成がブロック図で示される。図示のように、ビーコンタグ9は、携帯端末2との間の通信を可能にするブルートゥース通信部9aと、ブルートゥース通信部9aの動作を制御する制御部(CPU)9bと、図示しない電源としてのバッテリとを有する。制御部9bは、ブルートゥース通信部9aを介してビーコン信号を定期的に(本実施形態では、0.9秒ごとに)発信するような動作制御を行なう。
【0026】
また、携帯端末2は、本実施形態ではスマートフォンから成り、ビーコンタグ9との間の通信を可能にするブルートゥース通信部2aと、通信手段10との間の通信を可能にするHTTP通信部6bと、表示部としてのタッチディスプレイ2cと、ビーコンタグ9を検知するためのソフトウェア2dと、警報音(アラート音)を含む音声を出力するサウンドスピーカ2eと、見守りのために必要な各種データを記憶する記憶部(メモリ)2fと、これらの各構成要素の動作を制御する制御部(CPU)2gとを有する。記憶部2fは、見守り対象となる児童6のリストであるアラート対象児童リスト(テーブル)2faと、追跡ログリスト(テーブル)2fbとを少なくとも記憶する。なお、サウンドスピーカ2eに代えて又は加えて、図示しない振動発生部が設けられてもよい。
【0027】
クラウドサーバ4は、通信手段10との間の通信を可能にするHTTP通信部4aと、見守りのために必要な各種データを少なくとも含むデータベース4bと、これらの各構成要素の動作を制御する制御部(CPU)4cとを有する。データベース4bは、児童6の情報を記憶する児童情報マスター4baと、ビーコンタグ9の情報を記憶するデバイス(ビーコンタグ)情報マスター4bbとを少なくとも含む。なお、データベース4bに対する情報の登録(記憶)は、例えば、管理者8である保育士が、パーソナルコンピュータ等からサーバ4にアクセスして入力することにより行なわれてもよい。
【0028】
ここで、前述したように、各ビーコンタグ9から定期的に携帯端末2の側で取得される信号に基づいて、保育士8と児童6との間の距離を定期的に算出し、その距離に応じて各児童を識別可能に携帯端末2のタッチディスプレイ2cに表示させるとともに、前記距離が所定の設定距離を超えるときに警報音を携帯端末2のサウンドスピーカ2eから出力させる見守りシステム1の制御部は、携帯端末2の制御部2g及びサーバ4の制御部4cの一方により又は両方が協働することにより構成されてもよく、あるいは、携帯端末2やサーバ4とは別個のものであってもよく、更にはアプリケーションプログラムであってもよい。
【0029】
図3には、携帯端末2の記憶部2fにおける各テーブル2fa,2fb及びクラウドサーバ4のデータベース4bにおける各マスター4ba,4bbにそれぞれ含まれる情報の一例が示される。図示のように、携帯端末2の記憶部2fにおけるアラート対象児童テーブル2faに含まれる情報としては、例えば、見守り対象である児童6の名前(漢字及び仮名)、デバイスであるビーコンタグ9のデバイスMACアドレス(Media Access Control address)(ID)、最新のRSSI値、ビーコン信号の最新の受信日時、ビーコンタグ9のバッテリ残量、児童6の顔写真URL、児童6と管理者である保育士8との間の距離(m)、後述する注意喚起距離範囲下限値(m)及び危険距離範囲下限値(m)などを挙げることができる。また、児童6と保育士8との間の距離は、RSSI値とバッテリ残量とに基づいて算出される。また、携帯端末2の記憶部2fにおける追跡ログテーブル2fbに含まれる情報としては、例えば、デバイスMACアドレス、RSSI値、ビーコン信号の受信日時、ビーコンタグ9のバッテリ残量などを挙げることができる。見守りアプリケーションの立ち上げによってビーコンタグ9から携帯端末2で受信される前述の各種情報が追跡情報として追跡ログテーブル2fbに蓄積されていき、この追跡ログテーブル2fbからアラート対象児童テーブル2faに最新の情報が読み取られることになる。なお、追跡ログテーブル2fbに蓄積されていく蓄積情報は、見守りアプリケーションの終了時に全て消去されてもよい。また、顔写真に加えて又は代えて、図形(動物、植物など)であってもよい
【0030】
また、クラウドサーバ4のデータベース4bにおける児童情報マスター4baは、保育園に所属する各児童6に関する情報を記憶するものであり、これに含まれる情報としては、例えば、児童6の名前(漢字及び仮名)、児童6が利用中のビーコンタグ9のデバイスMACアドレス(ID)、児童6の生年月日、保育園における児童6の所属クラス、児童6の顔写真ファイル名などを挙げることができる。また、クラウドサーバ4のデータベース4bにおけるビーコンタグ情報マスター4bbは、保育園で所有する各ビーコンタグ9に関する情報を記憶するものであり、これに含まれる情報としては、例えば、ビーコンタグ9の製品名、ID、デバイスMACアドレス(ID)、ビーコンタグ9の現在の状態を示すステータス(未使用状態、使用中状態、故障中状態、紛失中状態、破棄済み状態)、ビーコンタグ9の利用開始日、ビーコンタグ9の最新バッテリ残量などを挙げることができる。ステータスは、例えば、保育士8がパーソナルコンピュータ等からサーバ4にアクセスして入力してもよい。最新バッテリ残量は、見守りシステム1の携帯端末2に記録された情報や、園内の他のビーコンタグ受信機による受信情報により更新される。
【0031】
3.携帯端末側の表示形態及びシステム制御部の処理
図4の(a)は、移動端末である携帯端末2の電源をONにして、携帯端末2に予めインストールされた見守りアプリケーション(コンピュータプログラム)を立ち上げた際に携帯端末2の表示部であるタッチディスプレイ2cに表示されるスタート画面の一例である。この例では、アプリケーション名である「きっずなび」という表示20がタッチディスプレイ2c上に出現するとともに、その下側に「おでかけ開始」ボタン21が表示される。ここで、保育士8が「おでかけ開始」ボタン21をタッチすると、一例として
図4の(b)に示されるように、タッチディスプレイ2cの表示は、携帯端末2が、携帯端末2が受信可能な情報をビーコンタグ9及びサーバ4から情報を読み取っている状態を示す読み取り画面に切り替わる。この読み取り画面では、その画面のほぼ中央に、アプリケーション名である「きっずなび」という表示20と共に、「児童を探しています・・・」というテキスト表示22が出現する。
【0032】
図4の(b)に示される読み取り画面から所定時間が経過して、情報が完全に読み取られると、一例として
図4の(c)に示されるように、タッチディスプレイ2cの表示は、児童6に関して検知及び算出された見守り情報が一覧表示された対象児童リスト選択画面に切り替わる。対象児童リスト選択画面のこの例では、それぞれの児童6ごとに、児童名、その児童6と保育士8との間の離間距離、その児童6が所持するビーコンタグ9のバッテリ残量、その児童6と保育士8との間の離間状態(ステータス)(言い換えると、後述する3つの段階)といった見守り情報が横一列に表示され、このような横一列の表示が、見守られるべき児童6の全てに関して、所定の順序で縦に並べて一覧表示される。ここで、距離は、メートル(M)単位で表示され、バッテリ残量は、満充電を100%として表示される。なお、ここで離間距離は前述のように受信電波強度(RSSI)に基づいて算出される。また、ここで表示される児童はそのビーコンタグ9の受信電波強度(RSSI)が所定の閾値(ビーコンの受信システムによる受信限界値)の範囲内のもののみが表示されるものとする。これは極めて微弱な受信電波強度の場合、距離の算出された距離に大きな誤差を含み信頼性に欠けるためである。
【0033】
また、ステータス(後述する3つの段階)は、児童6と保育士8との間の現在の離間距離が、その距離に関して保育士8が任意に設定できる設定値に対してどのような状態にあるかを示し、その状態の違いを識別できるように例えば色分けして表示される。具体的には、設定値は、一例として、警報音がサウンドスピーカ2eから出力される危険距離範囲下限値(警報対象値)、保育士8に注意を促す警告表示がタッチディスプレイ2cに表示される注意喚起距離範囲下限値(注意対象値)を含む。危険距離範囲下限値は、保育士8による児童6の見守りが困難な危険距離範囲の下限値として保育士8が設定する値であり、この危険距離範囲(その下限値を超える範囲)に児童6が一定時間いると、ステータスが例えば赤色の丸表示(なお、図では、便宜上、赤色の丸表示が太線の円形枠として示されている)となり、後述するように警報音が出力されて及び警告表示(アラート画面)が出される。一方、注意喚起距離範囲下限値は、危険距離範囲に向けて保育士8から離れそうな児童6を事前に把握できる注意喚起距離範囲の下限値として保育士8が設定する値であり、この注意喚起距離範囲(その下限値を超える範囲)に児童6が一定時間(例えば3秒)継続していると、ステータスが例えば黄色の丸表示(なお、図では、便宜上、黄色の丸表示が点線の円形枠として示されている)となり、後述するように警告表示(アラート画面)が出される。なお、危険距離範囲及び注意喚起距離範囲にいない(すなわち、保育士8から注意喚起距離範囲下限値未満の距離範囲内にいる)児童に関しては、テータスが例えば緑色の丸表示(なお、図では、便宜上、円形枠を伴わない丸表示として示されている)となり、警報音も警告表示も出力されない。なお、ステータスは、このような色分け表示ではなく、文字で表示されてもよい。
【0034】
また、このような一覧表示部25の上側には、例えば「下記の児童を検知しました」というテキスト表示24が出され、一覧表示部25の下側には、「やり直す」ボタン26、「スタート」ボタン27、「設定」ボタン28が例えば横一列に表示される。「やり直し」ボタン26をタッチすると、タッチディスプレイ2cの表示は、前述した
図4の(b)に示される読み込み画面に戻り、ビーコンタグ9の検知が再開される。また、「スタート」ボタン27をタッチすると、児童の見守りが開始され、タッチディスプレイ2cの表示は、
図6に示される後述する見守り画面に遷移する。また、「設定」ボタン28をタッチすると、タッチディスプレイ2cの表示は、前述した危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値の設定を可能にする
図7の(c)に示される後述する設定画面に遷移する。
【0035】
図5は、
図4の(c)の対象児童リスト選択画面において一部の児童を検知対象から排除するための「検知しない」ボタンを表示させた状態の画面の一例を示す。対象児童リスト選択画面に表示されるべき児童6、すなわち、携帯端末2を所持する保育士8が見守るべき全ての児童6は、外出(おでかけ)前に保育者8が予めパーソナルコンピュータ等からサーバ4にアクセスして入力しておく(あるいは既に登録しておく)が、何らかの事情で見守り対象から児童6を削除したい場合、あるいは、一覧表示部25に紛れ込んだ例えば違うクラスの児童6を削除したい場合には、例えばその児童6の児童名の表示を指でタッチして左(右でもよい)にスライドさせることによって
図4の(c)の通常の対象児童リスト選択画面の右側に隠れていた
図5に示される「検知しない」ボタン29及び「設定」ボタン30を表示させることができる。「検知しない」ボタン29をタッチすると、対応する児童6が今回の検知対象リストから外れ、今後検知されなくなる。「検知しない」ボタン29の右側に並んで表示される「設定」ボタン30をタッチすると、
図8の(c)に示される後述する児童個別設定画面に遷移する。このように、見守りシステム1の制御部は、保育士8が見守るべき児童6を携帯端末2のタッチディスプレイ2cで選択的に設定できるようにする。
【0036】
図13には、見守りアプリケーションを立ち上げることによって制御部が
図4及び
図5の一連の表示画面に関連して行なう処理の流れを示すフローチャートである。図示のように、制御部は、「おでかけ開始」ボタン21(
図4の(a)参照)の入力を待ち(ステップS1)、「おでかけ開始」ボタン21がタッチされる(入力される)と、ビーコンタグ9の検知を開始する(ステップS2)。これにより、検知対象の児童6が所持するビーコンタグ9を検出し(ステップS3)、ビーコンタグ9のIDを基にクラウドサーバ4からビーコンタグ9の情報(及び紐付けされた児童6の情報)を取得する(ステップS4;これにより、保育士8が見守るべき児童及びその対応するビーコンタグ9を特定する)とともに、ビーコンタグ9からビーコンタグ9のバッテリ情報とRSSI情報とを定期的に取得して、各児童6と保育士8との間の離間距離(m)を定期的に算出する(ステップS5)。この時点で取得された情報をもとにアラート児童対象テーブル2faが作成される。その後、「対象児童リスト選択画面」(
図4の(c)参照)に児童情報(見守り情報)を表示し(ステップS6)、前述したように、検知対象児童の全体設定を行なえるようにする(ステップS7)とともに、対象児童を選択及び個別設定(
図5参照)できるようにする(ステップS8)。この選択・決定に基づきアラート児童対象テーブル2faは更新される。そして、「スタート」ボタン27の入力がされたら(ステップS9)、見守りが開始される(児童検知のフローチャートが終了する)
【0037】
図6は、
図4の(c)の対象児童リスト選択画面において「スタート」ボタン27をタッチした際にタッチディスプレイ2cに表示される見守り画面の一例を示す。図示のように、この見守り画面では、前述したように定期的に算出される保育士8と児童6との間の離間距離に応じて検知対象児童6が識別可能に表示されている。具体的には、見守りシステム1の制御部は、所定の設定距離を超えた児童6、すなわち、危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値を超えた児童6を保育士8が特定できるように携帯端末2のタッチディスプレイ2cに表示する。さらに、本実施形態において、制御部は、保育士8と児童6との間の離間状態をその距離に応じて複数の段階に分け、各児童6をこれらの複数の段階のうちのいずれの段階にいるかが特定できるように携帯端末2のタッチディスプレイ2cに識別表示する。以下、これについて具体的に説明する。
【0038】
本実施形態において、見守りシステム1の制御部は、後述する設定画面において保育士8により設定される前述した危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値に基づき、保育士8と児童6との間の離間状態を、前述した危険距離範囲下限値によって規定される危険距離範囲に対応する危険段階と、前述した注意喚起距離範囲下限値によって規定される注意喚起距離範囲に対応する注意段階と、保育士8が児童6を確実に見守れる安全距離範囲(保育士8から注意喚起距離範囲下限値未満の距離範囲)に対応する安全段階とに分ける。これらの3つの段階は前述したステータスに対応する。また、制御部は、タッチディスプレイ2cの表示画面において、閉じられた破線の表示ラインLによって、その内側に、児童6を検知可能な検知領域R1を画定するとともに、表示ラインLの外側に、検知停止中領域R2と、閾値対象外領域R3とを画定する。そして、制御部は、例えば携帯端末2のタッチディスプレイ2cの表示画面の下側に、当該携帯端末2を所持する保育士8の位置を示すアイコン30を表示するとともに、このアイコン30を起点に表示ラインLがその左右の延在線L1により表示画面の上側に向けて所定の幅で左右に広がって表示画面の所定の上側位置で閉じるように検知領域R1を画定する。この場合、検知領域R1の上側境界を規定する表示ラインLの上側境界線L2の更に上側に矩形の閾値対象外領域R3が画定されるとともに、検知領域R1の左右両側に検知停止中領域R2が画定される。
【0039】
また、このような領域R1,R2,R3の設定状態において、見守りシステム1の制御部は、さらに、検知領域R1内に、各検知対象児童6に対応するそれぞれのアイコン32A,32B,32C,32Dを、保育士8のアイコン30に対し、保育士8と児童6との間の現在の実際の離間距離(前述したように定期的に算出する離間距離)に応じた相対的位置で表示する。ここで、児童6のアイコンは、一例として、クラウドサーバ4から取得した児童情報に含まれる児童6の顔写真を伴う円形状のアイコンであり、見守りシステム1の制御部は、各児童6が危険段階、注意段階、安全段階のどの段階にいるのかを特定できるように児童6のアイコンを色分け表示する。なお、アイコンは顔写真に限らず、図形(動物、植物など)であってもよい。
【0040】
具体的には、
図4の(c)の対象児童リスト選択画面において危険段階(危険距離範囲下限値を超えた位置)にいたステータスが赤色の丸表示(
図4の(c)では、便宜上、赤色の丸表示が太線の円形枠として示される)の「鈴木花子」という名前の児童6のアイコン32Dは、画面下側に位置される保育士8のアイコン30から実際の算出された離間距離に対応する度合いだけ最も上側に離れた危険段階の位置で、この児童6の顔写真を伴う赤色の円形アイコン(
図6では、便宜上、児童6の顔写真を太線の円形枠で囲んだアイコン)として検知領域R1内に表示される。また、
図4の(c)の対象児童リスト選択画面において注意段階(注意喚起距離範囲下限値を超えて危険距離範囲下限値内の位置)にいたステータスが黄色の丸表示(
図4の(c)では、便宜上、黄色の丸表示が点線の円形枠として示される)の「佐藤太郎」という名前の児童6のアイコン32Cは、画面下側に位置される保育士8のアイコン30から実際の算出された離間距離に対応する度合いだけ上側に離れた注意段階の位置で、この児童6の顔写真を伴う黄色の円形アイコン(
図6では、便宜上、児童6の顔写真を点線の円形枠で囲んだアイコン)として検知領域R1内に表示される。さらに、
図4の(c)の対象児童リスト選択画面において保育士8から安全段階(注意喚起距離範囲下限値内の位置)にいたステータスが緑色の丸表示(
図4の(c)では、便宜上、円形枠を伴わない丸表示として示される)の「斎藤卓也」及び「小林裕子」という名前の各児童6のアイコン32A,32Bは、画面下側に位置される保育士8のアイコン30から実際の算出された離間距離に対応する度合いだけ上側に離れた画面下側の安全段階の位置で、これらの児童6の顔写真を伴う緑色の円形アイコン(
図6では、便宜上、児童6の顔写真を伴う枠なしの円形アイコン)として検知領域R1内に表示される。いずれの場合にも、各アイコン32A,32B,32C,32Dの下側にその児童6の名前が付記される。なお、アイコンの色(背景色)によって各段階を識別表示するのではなく、アイコンの枠(例えば円形枠)の色によって各段階を識別表示してもよい。
【0041】
なお、
図6では、閾値対象外領域R3に児童6のアイコンが表示されていないが、この閾値対象外領域R3には、システム1の性能上検知できない(システム1の側には検知されず、したがってRSSI値を測定できない)距離範囲に児童6が位置した場合に、その児童6のアイコンが表示される。また、検知停止中領域R2には、検知する必要がない(検知を停止している)児童6のアイコンが表示される。
図6では、ビーコンタグ9のバッテリ残量が少なくなって検知精度が極めて悪くなった「鈴木誠也」という名前の児童6のアイコン32Eが、児童6の顔写真を伴うグレーのフィルタがかかったような円形アイコン(
図6では、便宜上、児童6の顔写真を細線の円形枠で囲んだアイコン)として検知停止中領域R2内に表示される。この場合も、他のアイコンと同様に、アイコンの下側に児童名の付記を伴う。なお、検知停止中領域R2にアイコンを移動させる方法については後述する(
図8(b)の「検知停止」ボタン71)。
【0042】
このような離間距離に応じた各児童6のアイコン識別表示においては、同じ離間距離の児童のアイコンが重ならないように配置する。また、同じ離間距離の児童が複数人存在することにより児童を重ならないように表示しにくい場合には、児童の名前を付記しないようにして、アイコンを小さく表示してもよい。
【0043】
また、このように、本実施形態では、保育士8と児童6との間の離間状態の3つの段階、すなわち、危険段階(危険距離範囲下限値を超えた位置にいる状態)、注意段階(注意喚起距離範囲下限値を超えて危険距離範囲下限値内にいる状態)、安全段階(注意喚起距離範囲下限値内にいる状態)を、検知領域R1内に相対的位置関係を成して配置されるアイコンの色によって識別表示している。注意喚起距離範囲下限値と危険距離範囲下限値は児童6毎に個別にアラート対象児童テーブル2faで設定されているため、同じ離間距離にいる児童であっても、異なる色のアイコンで表示され得る。
また、危険段階、注意段階、安全段階の各段階をアイコンの色分けによってではなく検知領域R1の背景色によって識別できるようにしてもよい。そのような変形例が
図12に示される。図示のように、この見守り画面の表示形態例では、後述する設定画面において保育士8により設定される前述した危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値に基づき、検知領域R1の背景色が3つに色分けされている。具体的には、検知領域R1は、安全段階(保育士8から注意喚起距離範囲下限値内の距離範囲)に対応する緑色の背景色を伴う安全ゾーンR11と、注意段階(保育士8から注意喚起距離範囲下限値を超えて危険距離範囲下限値内の注意喚起距離範囲)に対応する黄色の背景色を伴う注意ゾーンR12と、危険段階(保育士8から危険距離範囲下限値を超えた位置にいる状態)に対応する危険ゾーンR13とに区分され、これらのゾーンR11,R12,R13には、児童6の顔写真のみから成るアイコン32A,32B,32C,32Dが前述した対応する相対的位置に表示されている。すなわち、
図6と同様の相対的配置関係を成して、安全ゾーンR11内に「小林裕子」及び「斎藤卓也」という名前の児童6のアイコン32A,32Bが位置され、注意ゾーンR12内に「佐藤太郎」という名前の児童6のアイコン32Cが位置され、危険ゾーンR13内に「鈴木花子」という名前の児童6のアイコン32Dが位置される。なお、この場合、検知停止中領域R2に表示される「鈴木誠也」という名前の児童6のアイコン32Eは、児童6の顔写真を伴うグレーのフィルタがかかったような円形アイコン(
図6では、便宜上、児童6の顔写真を細線の円形枠で囲んだアイコン)のままである。各児童6のアイコンの表示位置は、各児童6ごとに定められた注意喚起距離範囲下限値と危険距離範囲下限値に基づいて、まず、どのゾーンに表示されるかが決定され、安全ゾーンR11にいると判定された場合は、次いで、注意喚起距離範囲下限値と離間距離に基づいて保育士のアイコン30からの相対的位置を決定する。したがって、ゾーンR11で並んで表示されていても各児童6ごとに定められた注意喚起距離範囲下限値が異なればそれぞれの離間距離は異なることになる。
【0044】
また、この
図12に示される変形例では、移動速度の変化量の絶対値が所定値よりも大きい児童6に関し、その移動方向及び移動速度を表わすベクトル表示50(移動方向がベクトルの方向(近づいているか、遠ざかっているか)、変化量がベクトルの長さで表わす)を対応するアイコンに付設させてもよい。例えば、ビーコン9の間隔が0.9秒とすれば2.7秒間(3回分)の移動量が3メートルを超えた場合にベクトル表示50を行なうことで、注意喚起を促す。この場合、保育士8にベクトル表示された携帯端末2の画面を見ることを促すために携帯端末2を振動させたり音による注意を促すのが好ましい。また、画面上のアイコンにベクトル表示50をする代わりに、単に「鈴木花子さんが遠ざかっています」との音声をスピーカーから出力させてもよい。
【0045】
また、
図6(
図12)に示される見守り画面において、表示画面の下側には、「ホーム」ボタン40、「みまもり」ボタン41、「設定」ボタン42がそれぞれ表示される。ここで、このような見守り画面(
図7の(b)も参照)の「設定」ボタン42をタッチすると、タッチディスプレイ2cの表示は、危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値の設定を可能にする
図7の(c)に示される設定画面に遷移する。また、「ホーム」ボタン40をタッチすると、
図7の(a)に示されるホーム画面に遷移する。
【0046】
図7の(a)に示されるホーム画面には、そのほぼ中央に、「終了」ボタン52が表示される。この「終了」ボタン52をタッチすると、見守りアプリケーションが終了する。また、ホーム画面の下側には、「閉じる」ボタン53も表示され、このボタン53をタッチすると、前の画面に戻る。また、このホーム画面から「みまもり」ボタン41をタッチすると、
図7の(b)に示される見守り画面に戻る。
【0047】
図7の(c)に示される設定画面では、見守り対象である児童6の全員に共通の危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値(設定距離)を設定できるようになっている。具体的には、この設定画面(言い換えると、デフォルト設定画面)には、危険距離範囲下限値(警報対象値)設定部60と、注意喚起距離範囲下限値(注意対象値)設定部62とが設けられる。危険距離範囲下限値設定部60は、一例として、直線状の数値バー60aと、移動ポインタ60bとを有する。数値バー60aは、この例では、左端が最小値(0m)、右端が最大値(例えば70m)に設定され、左端から右端の方へ向かうにしたがって距離を表わす数値(メートル)が連続的に増大するようになっている。ここで、最大値は、理想状態で満充電されたビーコンタグを検出可能な最小RSSI値に対応した距離を設定するのが好ましい。ここでは最大値として70mが設定されている。そして、移動ポインタ60bを指でタッチして数値バー60aに沿って左右に移動させることにより、危険距離範囲下限値が変化し、数値バー60a上の所定の位置に移動ポインタ60bを位置させると、その位置に対応する数値(
図7(c)では50m)が危険距離範囲の下限値として設定され、移動ポインタ60bよりも右側の数値バー60aの全体が危険距離範囲を示す赤色のバー(図では、便宜上、太線のバーとして示される)63として表示される。
【0048】
また、注意喚起距離範囲下限値設定部62も、危険距離範囲下限値設定部60と同様に、直線状の数値バー62aと、移動ポインタ62bとを有する。この数値バー62aも、左端が最小値、右端が最大値に設定され、左端から右端の方へ向かうにしたがって距離を表わす数値(メートル)が連続的に増大するようになっており、危険距離範囲下限値設定部60で既に設定された危険距離範囲下限値を反映するべく、設定された危険距離範囲下限値に対応する数値バー62aの部分が既に危険距離範囲を示す赤色のバー63として表示されてしまっている。そして、この赤色のバー63よりも左側で移動ポインタ62bを指でタッチして数値バー62aに沿って左右に移動させることにより、注意喚起距離範囲下限値が変化し、数値バー62a上の所定の位置に移動ポインタ62bを位置させると、その位置に対応する数値(
図7(c)では40m)が注意喚起距離範囲の下限値として設定され、移動ポインタ62bよりも右側の数値バー62aのうち赤色のバー63を除く部分が注意喚起距離範囲を示す黄色のバー(図では、便宜上、破線のバーとして示される)64として表示される。
【0049】
以上のようにして設定された注意喚起距離範囲下限値及び危険距離範囲下限値は、設定画面の危険距離範囲下限値設定部60及び注意喚起距離範囲下限値設定部62の下側に表示される「設定」ボタン66押すことによって確定し、「取消」ボタン65を押すことによって取り消される(元の設定値に戻される)。ここで設定された注意喚起距離範囲下限値(注意対象値)並びに危険距離範囲下限値(警報対象値)は、アラート対象児童テーブル2faの各対象児童の注意喚起距離範囲下限値(m)、危険距離範囲下限値(m)として格納される。
【0050】
後述する児童個別設定画面(
図8の(c)参照)で個別設定された児童6を除き、ここで設定された危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値に基づき、前述した危険段階、注意段階、安全段階が制御部により規定される。なお、設定画面は、
図7の(c)に示される設定画面形態に限定されず、例えば、児童6を引率していく外出先(目的地)の地図をタッチディスプレイ2c上に表示し、この地図上を保育士8が指でなぞって範囲を画定することによって設定距離範囲(前述した危険距離範囲、注意喚起距離範囲)を規定するようにしてもよい。なお、この設定画面から「みまもり」ボタン41をタッチすると、
図7の(b)に示される見守り画面に戻る。
【0051】
以上のような注意喚起距離範囲下限値及び危険距離範囲下限値の設定を可能にする制御部の処理の流れが
図14に示される。図示のように、この処理では、「設定」ボタン42の入力がある(ステップS10)と、危険距離範囲下限値設定部60で危険距離範囲下限値の変更を可能にする(ステップS11)とともに、注意喚起距離範囲下限値設定部62で注意喚起距離範囲下限値の設定を可能にし(ステップS12)、「設定」ボタン66又は「取消」ボタン65の入力の有無を検知することによってそれぞれの値の設定または取消が判断される(ステップS13)。そして、「設定」ボタン66が押された場合には、アラート対象児童テーブル2faの各対象児童の注意喚起距離範囲下限値(m)、危険距離範囲下限値(m)の更新が行われる(ステップS14)。一方、「取消」ボタン65が押された場合には、元の設定されていた危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値に戻される(ステップS15)。
【0052】
また、前述した見守り画面(
図8の(a)も参照)において検知領域R1内に配置された任意の特定の児童6のアイコンをタッチする(押す)と、
図8の(b)に示されるように、そのタッチした児童6に対応する児童詳細画面70がタッチディスプレイ2c上にポップアップ表示される。
図8の(b)では、安全段階にいる「斎藤卓也」という名前の児童6のアイコン32Bをタッチしたことにより、この児童6の児童詳細画面70が表示されている。この児童詳細画面70上には、「検知停止」ボタン71、「児童を探す」ボタン72、「設定ボタン」73がそれぞれ表示される。なお、これらのボタンの下側に表示される「閉じる」ボタン74をタッチすると、前の画面に戻る。なお検知停止中領域R2の「鈴木誠也」という名前の児童6のアイコン32Eをタッチすると「検知停止」ボタン71の位置に「検知開始」ボタンが表示される。「検知開始」ボタンをタッチすると、児童6の検知が再開される。
【0053】
このような「斎藤卓也」の児童詳細画面70において「設定」ボタン73がタッチされると、タッチディスプレイ2cの表示は、危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値の個別設定を可能にする
図8の(c)に示される児童個別設定画面に遷移する。この児童個別設定画面では、それぞれの児童6ごとに(ここでは、「斎藤卓也」という名前の児童6に関して)個別に危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値(設定距離)を設定できるようになっている。なお、具体的な設定形態は
図7の(c)に示される前述した設定画面の場合と同じであるため、その説明を省略する。なお、ここで個別設定された注意対象値並びに警報対象値は、アラート対象児童テーブル2faの対象児童「斎藤卓也」の注意喚起距離範囲下限値(m)、危険距離範囲下限値(m)として格納される。
【0054】
このような個別設定がなされると、個別設定に係る児童6に関しては、その設定された警報対象値及び注意対象値が、デフォルト設定である前述した全ての児童6に共通の危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値に優先する。すなわち、個別設定に係る児童6に関しては、その個別設定された危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値に基づき、前述した危険段階、注意段階、安全段階に関する識別表示がなされる。これにより、例えば、年少組に属する児童と年長組に属する児童に対してそれぞれ異なる危険距離範囲下限値及び注意喚起距離範囲下限値を設定することができ、効率的な見守りが可能となる。
【0055】
また、児童詳細画面70において、「検知停止」ボタン71がタッチされると、その児童詳細画面70に対応する児童6の検知が停止され、その児童6のアイコンが検知停止中領域R2内に配置される(例えば、
図8の(a)のアイコン32E参照)。例えば、見守り中に児童を見守り対象から除く必要性が生じた場合に備えて「検知停止」ボタン71が用意されている。
【0056】
次に、保育士8が「斎藤卓也」を画面上で安全段階にいることを確認できているとしても、何らかの障害物などにより視覚的に確認できない場合、「斎藤卓也」を探しに行くことが考えられる。この場合、児童詳細画面70(
図9の(a)も参照)において、その児童詳細画面70に対応する児童6を保育士8が探すべく「児童を探す」ボタン72をタッチすると、
図9の(b)に示されるように、現在児童を探していることを報知するポップアップ表示80が表示画面に出現する。
図9の(a)に示される「斎藤卓也」という名前の児童6の児童詳細画面70で「児童を探す」ボタン72をタッチしたこの例では、
図9の(b)において、「斎藤卓也さんを探しています」というテキストを伴うポップアップ表示80が出現する。このとき、図示のように、背景の見守り画面が暗くなってもよい。また、このポップアップ表示80には、「児童を探す」ボタン72を押した日時、すなわち、この児童6の最終検知の日時も表示され、また、警報音の出力が停止されたことを報知する「アラート停止中」というテキストも含まれる。すなわち、実際に、このポップアップ表示80が出現すると、警報音の出力又は警告表示がある場合にはそれが一時的に停止される。これは、保育士8が特定の児童6を探して動き回ると、保育士8が1つの場所にとどまる場合と比べて、児童6と保育士8との間の離間距離(保育士8に対する児童6の相対的位置)が大きく変動してしまい、複数の児童6に関して警報音が同時に出力されて収拾がつかなくなるような事態も生じ得るからである。すなわち、「アラート停止中」では他の児童6のステータスが注意段階、危険段階になっても後述するアラートは出力しないように制御される。なお、警報音の停止中、保育士8が児童6を探し回っている最中に、システム1の制御部は、その探している児童6と保育士8との間の離間距離に基づき、保育士8がその児童6に近づいていること又はその児童6から離れていることを報知する音声をスピーカ2eから出力させてもよい。あるいは、画面上に保育士8がその児童6に近づいていること又はその児童6から離れていることを通知する表示を出力してもよいし、ビープ音やバイブレーションの周期を変動(近づいている場合は周期を短くし、遠ざかっている場合には周期を長くする)するようにしてもよい。なお、ポップアップ表示80において、「完了」ボタン82がタッチされると、その時点での保育士8と各児童との距離を再計算して、
図9の(c)に示される見守り画面を表示する状態に戻る。
【0057】
次に、見守り中の保育士8と児童6の間の離間距離に応じた注意喚起表示や警告表示について説明する。前述したように、本実施形態の目守りシステム1では、見守り中に保育士8と児童6との間の距離が所定の設定距離(具体的には、注意喚起距離範囲下限値)を超えるときに警告表示がタッチディスプレイ2cに表示されるとともに、保育士8と児童6との間の距離が所定の設定距離(具体的には、危険距離範囲下限値)を超えるときに警報音がスピーカ2eから出力されるようになっている。
【0058】
具体的には、任意の特定の児童6に関して保育士8との間の距離が注意喚起距離範囲下限値を超えると、
図10の(a)に示されるように、タッチディスプレイ2cは、見守り画面内に黄色(前述した離間状態の色分けに対応した色)の枠85aにより取り囲まれた注意喚起としてのポップアップ表示85が出現するアラート画面となる。児童が注意喚起距離範囲と安全距離範囲を短時間の間に行き来する場合はアラート画面が頻出して煩わしいため、注意喚起距離範囲内に一定時間(例えば3秒)以上継続している場合にポップアップ表示85を行うのが好ましい。見守り画面において「佐藤太郎」という名前の児童6が保育士8から注意喚起距離範囲下限値(第1の設定距離)を超える距離だけ離れて注意喚起距離範囲に移動した(注意段階の離間状態に達した)この例では、「注意!佐藤太郎さんが離れそうです」というテキストを伴うポップアップ表示85が出現する。また、このポップアップ表示85には、この児童6が注意喚起距離範囲に突入した日時、すなわち、この児童6の最終検知の日時も表示される。なお、ポップアップ表示85において、「確認」ボタン86がタッチされると、
図10の(b)に示される見守り画面に戻る。
【0059】
また、任意の特定の児童6に関して保育士8との間の距離が危険距離範囲下限値(第2の設定距離)を超えると(より具体的には、例えば、児童6が危険距離範囲下限値により規定される危険距離範囲内に侵入したとき)、
図11の(a)に示されるように、タッチディスプレイ2cは、見守り画面内に赤色(前述した離間状態の色分けに対応した色)の枠90aにより取り囲まれた警告表示としてのポップアップ表示90が出現するアラート画面となる。このとき、同時に、スピーカ2eから警報音も出力される。見守り画面において「鈴木花子」という名前の児童6が保育士8から危険距離範囲下限値(第2の設定距離)を超える距離だけ離れて危険距離範囲に移動した(危険段階の離間状態に達した)この例では、「要確認!鈴木花子さんを見失いそうです」というテキストを伴うポップアップ表示90が出現する。また、このポップアップ表示90には、この児童6が危険距離範囲に突入した日時、すなわち、この児童6の最終検知の日時も表示される。
【0060】
また、このポップアップ表示90において、保育士8が「鈴木花子」という名前の児童6の無事を確認して「異常なし」ボタン93を押すと、
図11の(c)に示される見守り画面に戻る。一方、このポップアップ表示90において、「児童を探す」ボタン94を押すと、「探し中!鈴木花子さんを探しています」というテキストを伴う赤色の枠92aにより取り囲まれたポップアップ表示92が出現する。このとき、図示のように、背景の見守り画面が暗くなってもよい。また、このポップアップ表示92には、「児童を探す」ボタン94を押した日時、すなわち、この児童6の最終検知の日時も表示され、また、警報音の出力が停止されたことを報知する「アラート停止中」というテキストも含まれる。すなわち、実際に、このポップアップ表示92が出現すると、児童6が危険距離範囲下限値を超えて保育士8から離間した際のスピーカ2eからの警報音の出力が一時的に停止される。これは、前述したが、保育士8が特定の児童6を探して動き回ると、保育士8が1つの場所にとどまる場合と比べて、児童6と保育士8との間の離間距離(保育士8に対する児童6の相対的位置)が大きく変動してしまい、「鈴木花子」という名前の児童6の警報音に加えて他の児童6に関しても警報音が同時に出力されて収拾がつかなくなるような事態も生じ得るからである。警報音の停止中、保育士8が児童6を探し回っている最中に、システム1の制御部は、その探している児童6と保育士8との間の離間距離に基づき、保育士8がその児童6に近づいていること又はその児童6から離れていることを報知する音声をスピーカ2eから出力させてもよい。あるいは、画面上に保育士8がその児童6に近づいていること又はその児童6から離れていることを通知する表示を出力しても良いし、ビープ音やバイブレーションの周期を変動(近づいている場合は周期を短くし、遠ざかっている場合には周期を長くする)するようにしてもよい。なお、ポップアップ表示92において、「完了」ボタン95がタッチされると、
図11の(c)に示される見守り画面に戻る。
【0061】
図15は、見守りプログラムにおけるメインアルゴリズムの一例を示すフローチャートであり、具体的には、前述した見守り開始から見守り終了までに至る制御部の一連の処理の流れを示している。この一連の処理は、見守り対象である児童6に個別にビーコンタグ9を所持させるとともに、携帯端末2を管理者である保育士8に所持させることを前提に行なわれる。続いて、図示のように、「スタート」ボタン27(
図4の(c)参照)の入力がされると(ステップS20)、例えば
図6に示される見守り画面がタッチディスプレイ2cに表示される(ステップS21)。このとき、ビーコンタグ9の受信を行ない(ステップS22)、その受信データが追跡ログテーブル2fb(
図2及び
図3参照)に保存される(ステップS23)とともに、ビーコンタグ9におけるRSSI値及びバッテリ残量に基づいて児童6と保育士8との間の離間距離が選出される(算出ステップS24)。その後、アラート対象児童テーブル2fa(
図2及び
図3参照)の受信日時、バッテリ残量、RSSI値及び離間距離が更新され(ステップS25)、座標処理によって見守り画面(
図6等参照)に表示する児童6のアイコンの位置が決定される(ステップS26)。
【0062】
その後、検知した児童6と保育士8との間の距離が安全距離範囲(保育士8から注意喚起距離範囲下限値未満の距離範囲(安全範囲))内であるかどうかが判定され(ステップS27)、その判定結果がYESの場合、見守り画面における児童6のアイコンの背景色(アイコンの色)が緑色に設定される(識別表示ステップS29)。一方、ステップS27における判定結果がNOの場合、検知した児童6と保育士8との間の距離が注意喚起距離範囲(保育士8から注意喚起距離範囲下限値以上危険距離範囲下限値未満の距離範囲(注意対象範囲))内であるかどうかが判定され(ステップS28)、その判定結果がYESの場合、見守り画面における児童6のアイコンの背景色(アイコンの色)が黄色に設定される(識別表示ステップS30)。一方、ステップS28における判定結果がNOの場合、見守り画面における児童6のアイコンの背景色(アイコンの色)が赤色に設定される(識別表示ステップS31)。
【0063】
ステップS29,S30,S31の後、見守り画面に児童6の写真及び名前が表示される(ステップS32)。その後、児童6と保育士8との間の離間距離に基づき前述したポップアップ表示(例えば、ポップアップ表示80,85,90,92など)が必要かどうかが判定され(ステップS33)、その判定結果がYESの場合、ポップアップ処理が行なわれ(ステップS34)、判定結果がNOの場合、ポップアップ処理は行われない。なお、ステップS22からステップ34までの一連の処理は、終了ボタン52(
図7の(a)参照)の入力があるまで繰り返される。終了ボタン52が入力された場合、アプリケーションを終了するが、終了前に各児童のアラート対象児童テーブル2faのバッテリ残量データでビーコンタグ情報マスタ4bbの対応するビーコンの「最新バッテリ残量」が更新される。
【0064】
前記したポップアップ処理34の流れが
図16に示されている。このポップアップ処理では、まず最初に、児童6と保育士8との間の離間距離に基づき警報処理が必要かどうかが判定される(ステップS34a)。この判定結果がYESの場合、危険距離範囲下限値に関する処理である警報対象値処理が開始され、判定結果がNOの場合、注意喚起距離範囲下限値に関する処置である注意対象値処理が開始される。
【0065】
警報対象値処理は、任意の特定の児童6に関して保育士8との間の距離が危険距離範囲下限値を超えるときに行なわれる処理であり、この処理では、タッチディスプレイ2c上に前述したポップアップ表示(要確認ポップアップ画面)90(
図11の(a)参照)を出現させる(ステップS34b)。また、同時に、スピーカ2eから警報音(アラート音)を出力させる(警報音出力ステップS34c)。その後、「異常なし」ボタン93又は「児童を探す」ボタン94(
図11の(a)参照)の入力があるかどうかが判定され(ステップS34d)、「異常なし」ボタン93の入力がある場合には、警報音の出力が停止される(ステップS34e)。一方、「児童を探す」ボタン94の入力がある場合には、警報音の出力が停止される(ステップS34f)とともに、アラート機能が停止され(ステップS34g)、タッチディスプレイ2c上に前述したポップアップ表示(探し中画面)92(
図11の(b)参照)を出現させる(ステップS34h)。その後、「完了」ボタン95(
図11の(b)参照)の入力がある(ステップS34i)と、アラート機能が再開され(ステップS34j)、ポップアップ表示92が閉じられる(ステップS34k)。
【0066】
一方、ステップS34aにおける判定結果がNOの場合に行なわれる注意対象値処理は、任意の特定の児童6に関して保育士8との間の距離が注意喚起距離範囲下限値を超えるときに行なわれる処理であり、この処理では、タッチディスプレイ2c上に前述したポップアップ表示(注意ポップアップ画面)85(
図10の(a)参照)を出現させる(ステップS34l)。その後、「確認」ボタン86(
図11の(a)参照)の入力がある(ステップS34m)と、ポップアップ表示85が閉じられる(ステップS34n)。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含むことができる。例えば、前述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 見守りシステム
2 携帯端末(移動端末)
2c タッチディスプレイ(表示部)
2e サウンドスピーカ(音出力部)
4 サーバ
9 ビーコンタグ(無線タグ)
2g,4c 制御部