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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003120
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】全固体電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/293 20210101AFI20241226BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241226BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M10/0562
H01M50/291
H01M50/211
H01M10/052
H01M10/0565
H01M4/38 Z
H01M4/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103610
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】青谷 幸一郎
【テーマコード(参考)】
5H029
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AL12
5H029AM11
5H029BJ04
5H029BJ06
5H040AA14
5H040AS07
5H040AT04
5H040AY08
5H040CC30
5H040NN00
5H040NN03
5H050AA14
5H050BA16
5H050CA01
5H050CB12
(57)【要約】
【課題】弾性体と電池セルとの間に生じる摩擦力を低減することができる全固体電池モジュールを提供すること。
【解決手段】全固体電池モジュール1は、少なくとも1つの電池セル2と、それぞれが電池セル2上に配置された少なくとも1つの弾性体3と、電池セル2と弾性体3との間に配置された摩擦力低減材5とを備える。電池セル2は、弾性体3を介して圧縮されるように加圧される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電池セルと、
それぞれが前記電池セル上に配置された少なくとも1つの弾性体と、
前記電池セルと前記弾性体との間に配置された摩擦力低減材と、
を備え、
前記電池セルは、前記弾性体を介して圧縮されるように加圧される、
全固体電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池モジュールであって、
前記電池セルは、負極活物質として、リチウム金属又はリチウム含有合金を有する、
全固体電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記電池セルは、
正極層、電解質層、及び負極層を有する電極積層体と、
前記電極積層体を収容する外装材とを有し、
前記摩擦力低減材は、前記外装材と前記弾性体との間に配置されている、
全固体電池モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の全固体電池モジュールであって、
前記摩擦力低減材は、シート状であり、
前記弾性体側から前記電池セルを見た場合に、前記摩擦力低減材の外周端は、前記電極積層体の外周端よりも外側に位置している、
全固体電池モジュール。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記摩擦力低減材は、前記電池セルに固定されている、
全固体電池モジュール。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記摩擦力低減材は、シート状であり、
前記弾性体側から前記電池セルを見た場合に、前記摩擦力低減材の外周端は、前記弾性体の外周端よりも外側に位置している、
全固体電池モジュール。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記電池セルは複数設けられており、
前記弾性体及び前記摩擦力低減材は、隣接する前記電池セル間に配置されている、
全固体電池モジュール。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
更に、
積層方向に沿って伸びるモジュールフレームを備え、
前記電池セル及び前記弾性体は、前記積層方向に沿って積層されており、
前記電池セルの端部は、前記電池セルが前記積層方向に垂直な方向にずれないように、前記モジュールフレームに連結されている、
全固体電池モジュール。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
更に、
エンドプレートを有し、
前記少なくとも1つの弾性体は、前記電池セルと前記エンドプレートとの間に配置された最外部弾性体を有し、
前記最外部弾性体は、シート状であり、
前記最外部弾性体は、
前記電池セル側を向く内面と、
前記内面の反対側の面である外面であって、前記内面とは異なる表面状態を有する外面と、を有し、
前記外面と前記エンドプレートとの間の摩擦係数は、前記内面を前記エンドプレートと接触させた場合における前記内面と前記エンドプレートとの間の摩擦係数よりも大きい
全固体電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池モジュールとして、少なくとも1つの電池セルと、その電池セル上に配置された弾性体とを有するものが知られている。接触抵抗低減のため、電池セルは、弾性体を介して圧縮されるように加圧される。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2015-53261号公報)には、電池ユニットが複数積層される全固体電池において、電池ユニットが所定の構成を有しており、各電池ユニットの間には、それぞれ放熱部材が介在されており、これらの放熱部材は、特定の構成を有する基層と、該基層を挟み込む、熱伝導性を有する一対の弾性体層とから構成されることを特徴とする全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-53261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
弾性体を介して電池セルが加圧される全固体電池モジュールにおいては、弾性体自体も圧縮される。圧縮された弾性体は、加圧方向に対して垂直な方向(以下、面方向という場合がある)に広がるように弾性的に歪む。ここで、弾性体に加わる力は、様々な理由により、変動する場合がある。例えば、電池セルは、充放電に伴い膨張収縮する場合がある。電池セルの膨張収縮に伴い、弾性体の圧縮量が変化し、面方向における変形量が変化する。面方向における変形量が変化する際に、電池セルと弾性体との間に摩擦力が生じる。摩擦力によって、電池セルが損傷する場合がある。特に、全固体電池モジュールは、所望の特性を得るために、高い加圧力が必要である。従って、摩擦力による影響が大きくなりやすく、電池セルの損傷が問題となりやすい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、弾性体と電池セルとの間に生じる摩擦力を低減することができる全固体電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明に係る全固体電池モジュールは、少なくとも1つの電池セルと、電池セル上に配置された弾性体と、電池セルと弾性体との間に配置された摩擦力低減材とを備える。電池セルは、弾性体を介して圧縮されるように加圧される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弾性体と電池セルとの間に生じる摩擦力を低減することができる全固体電池モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る全固体電池モジュールを示す概略図である。
図2図2は、参考例を示す概略図である。
図3図3は、第1の実施形態の一変形例を示す概略図である。
図4図4は、第1の実施形態の他の変形例を示す概略図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る全固体電池モジュールを示す概略図である。
図6図6は、第3の実施形態に係る全固体電池モジュールを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る全固体電池モジュールついて説明する。
【0011】
本実施形態に係る全固体電池モジュールは、全固体電池のセル(電池セル)を他の部品と組み合わせてモジュール化したものである。なお、本明細書において、「全固体電池」とは、正極層、負極層、及び電解質層が実質的に固体により構成されている二次電池を指す。「全固体電池」は、各層が「実質的に」固体であるといえるものであればよく、少量であれば液体材料が含まれていてもよい。例えば、電解質として、固体電解質に加えて少量の液体電解質を用いた電池であったとしても、各層が実質的に固体であると言える場合には、本明細書における全固体電池に包含される。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る全固体電池モジュール1を示す概略図である。図1(a)には、全固体電池モジュール1の全体構成が示されており、図1(b)にはその一部の構成が示されている。図1(a)に示されるように、全固体電池モジュール1は、複数の電池セル2と、複数の弾性体3と、一対のエンドプレート4とを有している。複数の電池セル2と複数の弾性体3とは、積層方向において交互となるように積層されている。従って、各弾性体3は、各電池セル2上に配置されているといえる。複数の電池セル2及び複数の弾性体3は、圧縮された状態で、一対のエンドプレート4によって挟まれている。このような構成により、各電池セル2は、各弾性体3を介して圧縮されるように加圧されている。
【0013】
図1(b)に示されるように、電池セル2は、電極積層体6と、電極積層体6を収容する外装材7とを有している。外装材7の材質は特に限定されないが、例えば、アルミラミネートフィルムなどを用いることができる。図示していないが、電極積層体6は、正極層、電解質層、及び負極層を有している。図示していないが、外装材7内には、更に、電極積層体6に接続された集電箔等も配置されている。
【0014】
ここで、本実施形態においては、図1(b)に示されるように、電池セル2の外装材7と弾性体3との間に、摩擦力低減材5が配置されている。すなわち、積層方向において隣接する電池セル2間に、弾性体3と摩擦力低減材5とが配置されている。これにより、電池セル2の損傷が防止される。この点について、以下に、参考例を参照しつつ説明する。
【0015】
図2は、参考例を示す概略図である。参考例においては、摩擦力低減材5が設けられていない。すなわち、電池セル2上に弾性体3が直接配置されている。既述のように、全固体電池モジュール1においては、種々の理由により、弾性体3の圧縮量が変化する場合がある。例えば、電池セル2の厚みは、充放電に伴って変化する場合がある。電池セル2の厚みが増加すると、積層方向における弾性体3の圧縮量が増加する。積層方向における圧縮量が増えると、弾性体3は、面方向に広がるように歪む。図2には、圧縮量が小さい場合の弾性体3が弾性体3aとして示され、圧縮量が大きい場合の弾性体3が弾性体3bとして示されている。弾性体3の圧縮量が変化する際には、弾性体3が面方向に広がるから、摩擦力が生じる。この摩擦力によって、電池セル2が損傷する場合がある。例えば、外装材7にシワが発生する場合がある。あるいは、外装材7内に配置された集電箔が破れる場合がある。
【0016】
これに対して、本実施形態によれば、図1に示されるように、摩擦力低減材5が配置されているから、電池セル2と弾性体3との間に生じる摩擦力が低減される。これにより、電池セル2の損傷が防止される。
【0017】
以上が、本実施形態の概略である。
【0018】
なお、弾性体3の材質は特に限定されない。例えば、弾性体3としては、樹脂製のシートを用いることができる。樹脂製シートとしては、ゴム製シート、及び熱可塑性エラストマー製シート等を挙げることができる。
【0019】
摩擦力低減材5は、電池セル2と弾性体3との間に発生する摩擦力を低減することができる材料であればよく、特に限定されない。
【0020】
例えば、摩擦力低減材5として、シート材を用いることができる。この場合、摩擦力低減材5として、電池セル2と弾性体3との間の摩擦係数を低下させる材料を用いることができる。具体的には、電池セル2と弾性体3とが直接接する場合の電池セル2と弾性体3との間の摩擦係数よりも、摩擦力低減材5と弾性体3との間の摩擦係数の方が小さくなるような材料を用いることができる。
【0021】
なお、本明細書において、「摩擦係数」とは、動摩擦係数及び静摩擦係数の両方を意味する。例えば、境界Aにおける摩擦係数が境界Bにおける摩擦係数よりも大きいということは、動摩擦係数及び静摩擦係数の両方とも、境界Aの方が境界Bよりも大きいことを意味する。
【0022】
摩擦力低減材5として用いられるシート材として、例えば、PP(ポリプロピレン)シート、PE(ポリプロピレン)シート、PI(ポリイミド)シート、PC(ポリカーボネート)シート、およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート等の樹脂シートを挙げることができる。
【0023】
摩擦力低減材5がシート材である場合、摩擦力低減材5は、電池セル2(外装材7の外面)に固定されていることが好ましい。このような構成によれば、摩擦力低減材5が面方向においてずれることが防止される。摩擦力低減材5は、例えば、接着剤を介して外装材7の表面に固定することができる。
【0024】
あるいは、摩擦力低減材5は、潤滑油等の潤滑剤を含む潤滑剤層により実現することもできる。潤滑剤は、弾性体3に塗布されていてもよいし、電池セル2(外装材7)上に塗布されていてもよい。潤滑剤としては、潤滑剤を欠く場合における電池セル2と弾性体3との間の摩擦係数よりも、潤滑剤を塗布した場合の電池セル2と弾性体3との間の摩擦係数の方が小さくなるようなものが用いられる。
【0025】
潤滑剤としては、難燃性作動液が好ましく用いられる。難燃性作動液としては、例えば、リン酸エステル系作動液、脂肪酸エステル系作動液、水-グリコール系作動液、及びエマルション系作動液を挙げることができる。
【0026】
続いて、電池セル2の構成について説明する。電池セル2の構成は特に限定されるものではない。ただし、電池セル2は、好ましくは、負極活物質として、リチウム金属又はリチウム含有合金を含む。すなわち、電極積層体6の負極層には、負極活物質として、リチウム金属又はリチウム含有合金が含まれていることが好ましい。このような電池セル2は、充放電に伴い、厚みが大きく変化する。具体的には、充電状態では厚みが大きくなり、放電状態では厚みが小さくなる。その結果、充放電に伴って、弾性体3の圧縮量が大きく変化する。その結果、大きな摩擦力が繰り返し発生する。よって、電池セル2の破損が問題となりやすい。このような電池セル2を有する全固体電池モジュール1においては、本実施形態に従って摩擦力を低減することの価値が大きくなる。
【0027】
続いて、摩擦力低減材5のサイズについて説明する。
【0028】
図3は、本実施形態の一変形例を示す概略図である。本変形例は、摩擦力低減材5のサイズに関する変形例である。なお、見やすさの為、図3においては、電池セル2と摩擦力低減材5とが離されて描かれている。
【0029】
本変形例においては、摩擦力低減材5がシート材である。弾性体3側から電池セル2を見た場合(積層方向に沿って見た場合)に、摩擦力低減材5のサイズは、電極積層体6のサイズよりも大きい。具体的には、積層方向に沿って見た場合の摩擦力低減材5の外周端aは、電極積層体6の外周端bよりも外側に位置している。
【0030】
図3に示す変形例によれば、摩擦力による電池セル2の損傷がより確実に防止される。電池セル2のうち、弾性体3との間で高い摩擦力が発生する部分は、ある程度の厚みを有する部分であり、具体的には電極積層体6が設けられた部分である。仮に、摩擦力低減材5の外周端aの方が電極積層体6の外周端bよりも内側に位置していると、電極積層体6が摩擦力低減材5からはみ出した部分で、電池セル2に大きな摩擦力が発生する可能性がある。そのため、電池セル2が損傷する可能性がある。これに対して、図3に示す変形例によれば、電極積層体6が全体的に摩擦力低減材5により覆われるから、摩擦力低減材5の外側において大きな摩擦力が発生しない。よって、電池セル2の損傷をより確実に防止される。
【0031】
なお、電極積層体6とは、正極層、電解質層、及び負極層を有する部分である。正極層、電解質層、及び負極層のサイズが異なっている場合、「電極積層体6の外周端b」とは、正極層、電解質層、及び負極層の外周端のうち、最も外側に位置する外周端を意味する。
【0032】
続いて、他の変形例について説明する。図4は、本実施形態の他の変形例を示す概略図である。この変形例においては、摩擦力低減材5のサイズと弾性体3のサイズの関係が特定されている。具体的には、摩擦力低減材5は、シート状である。そして、弾性体3側から電池セル2を見た場合(積層方向に沿って見た場合)に、摩擦力低減材5の外周端aは、弾性体3の外周端bよりも外側に位置している。このような構成によれば、積層方向に沿って見た場合に、弾性体3が摩擦力低減材5の外側にはみ出さない。従って、摩擦力低減材5からはみ出した部分で電池セル2に大きな摩擦力が生じることが防止され、電池セル2の損傷がより確実に防止される。
【0033】
なお、図4には、圧縮量が最小である場合の弾性体3が弾性体3aとして示され、圧縮量が最大である場合の弾性体3が弾性体3bとして示されている。図4に示されるように、弾性体3が最も圧縮された状態が特定できる場合には、摩擦力低減材5の外周端aは、最も圧縮された場合の弾性体3bの外周端bよりも、外側に位置していることが好ましい。例えば、負極活物質としてリチウム金属又はリチウム含有合金が含まれる電池セル2においては、完全充電時に電池セル2の厚みが最大となり、弾性体3の圧縮量が最大となる。このような場合、摩擦力低減材5の外周端aは、完全充電時における弾性体3bの外周端bよりも外側に位置していることが好ましい。このような構成を採用すれば、摩擦力低減材5の外周端aが、常に、弾性体3の外周端bよりも外側に位置する。従って、弾性体3が摩擦力低減材5からはみ出た部分で電池セル2に大きな摩擦力が生じることが、常に防止される。
【0034】
本実施形態では、電池セル2及び弾性体3がそれぞれ複数設けられている場合について説明した。ただし、電池セル2及び弾性体3は必ずしも複数設けられている必要はない。全固体電池モジュール1には、少なくとも1つの電池セル2と、少なくとも1つの弾性体3とが設けられてればよい。
【0035】
本実施形態に係る全固体電池モジュール1の用途は特に限定されない。例えば、全固体電池モジュール1は、電気自動車(EV)用とすることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係る全固体電池モジュール1を示す概略断面図である。なお、第1の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0037】
摩擦力低減材5を設けると、摩擦力が低減する結果、電池セル2が面方向にずれやすくなる。そこで、本実施形態においては、面方向における電池セル2の位置ずれが防止されるように、工夫がなされている。
【0038】
具体的には、図5に示されるように、モジュールフレーム8が追加されている。モジュールフレーム8は、積層方向に沿って伸びている。モジュールフレーム8は、一対のエンドプレート4に固定されている。
【0039】
モジュールフレーム8は、電池セル2の位置ずれを防止するために設けられている。すなわち、各電池セル2部は、その端部において、各電池セル2が面方向にずれないように、モジュールフレーム8に連結されている。
【0040】
モジュールフレーム8と電池セル2の端部との間の連結の態様は、特に限定されない。電池セル2の端部に、貫通孔を有する枠材(図示せず)が設けられる。また、モジュールフレーム8として、柱状の部材が用いられる。そして、その枠材の貫通孔を通るように、モジュールフレーム8が配置される。このような構成により、電池セル2が積層方向に垂直な方向にずれないように、電池セル2をモジュールフレーム8に連結することができる。
【0041】
本実施形態によれば、摩擦力低減材5が設けられているにもかかわらず、電池セル2の位置ずれを防止できる。その結果、摩擦力低減材5として、電池セル2と弾性体3との間の摩擦係数がより小さくなるような材料を使用しやすくなる。
【0042】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0043】
図6は、本実施形態に係る全固体電池モジュール1を示す概略である。図6には、全固体電池モジュール1の全体的な構成と、一部の拡大図が示されている。
【0044】
本実施形態においても、第2の実施形態と同様に、電池セル2の位置ずれを防止するための工夫がなされている。本実施形態では、電池セル2とエンドプレート4との間に配置された弾性体3の構成が工夫されている。すなわち、積層方向における最外部に配置された弾性体3の構成が工夫されている。以下、積層方向における最外部に配置された弾性体3が、「最外部弾性体3A」と称される。
【0045】
最外部弾性体3Aは、シート状である。最外部弾性体3Aは、電池セル2側を向く内面aと、その反対側の面である外面bとを有する。内面aと外面bとは、異なる表面状態を有している。
【0046】
具体的には、外面bとエンドプレート4との間の摩擦係数は、内面aをエンドプレート4と接触させた場合における内面aとエンドプレート4との間の摩擦係数よりも大きい。
【0047】
本実施形態によれば、電池セル2の面方向における位置ずれを防止することができる。すなわち、最外部弾性体3Aのうち、電池セル2側を向く内面aは、摩擦力低減のために、滑りやすい表面状態であることが好ましい。一方で、外面bも内面aと同じく滑りやすい表面状態を有していると、エンドプレート4に対して最外部弾性体3Aの位置がずれやすくなる。これに対して、本実施形態によれば、外面bとエンドプレート4との間の摩擦係数が、内面aをエンドプレート4に接触させた場合の摩擦係数よりも大きいから、エンドプレート4に対する最外部弾性体3Aの位置ずれを防止できる。これにより、摩擦力低減材5として、電池セル2と弾性体3との間の摩擦係数がより小さくなるような材料を使用することが可能となる。
【0048】
なお、内面aと外面bの表面状態は、例えば、表面粗さによって異ならせることができる。好適には、外面bの表面粗さは、内面aの表面粗さよりも大きい。このような構成により、内面aは滑りやすい表面状態となり、外面bは滑りにくい表面状態となる。
【0049】
以上、本発明について第1~第3の実施形態を挙げて説明した。以下に、本発明の代表的な構成を、その効果と共に付記として要約する。
【0050】
(付記1)
少なくとも1つの電池セル2と、それぞれが電池セル2上に配置された少なくとも1つの弾性体3と、電池セル2と弾性体3との間に配置された摩擦力低減材5とを備え、電池セル2は、弾性体3を介して圧縮されるように加圧される、全固体電池モジュール1。このような構成によれば、電池セル2と弾性体3との間に生じる摩擦力が低減される。従って、摩擦力による電池セル2の損傷が防止できる。
【0051】
(付記2)
付記1に記載の全固体電池モジュールであって、電池セル2は、負極活物質として、リチウム金属又はリチウム含有合金を有する、全固体電池モジュール1。このような構成を有する場合、充放電に伴う電池セル2の厚みの変化が大きくなる。そのため、一般的には、弾性体3の圧縮量が変化しやすく、摩擦力が発生しやすくなる。そのため、摩擦力低減材5を設けることの価値が大きいといえる。
【0052】
(付記3)
付記1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、電池セル2は、正極層、電解質層、及び負極層を有する電極積層体6と、電極積層体6を収容する外装材7とを有し、摩擦力低減材5は、外装材7と弾性体3との間に配置されている、全固体電池モジュール。このような構成によれば、外装材7と弾性体3との間の摩擦による外装材7の損傷(シワの発生)が防止できる。
【0053】
(付記4)
付記3に記載の全固体電池モジュールであって、摩擦力低減材5は、シート状であり、弾性体3側から電池セル2を見た場合に、摩擦力低減材5の外周端aは、電極積層体6の外周端bよりも外側に位置している、全固体電池モジュール。このような構成によれば、電極積層体6が摩擦力低減材5からはみ出た部分で大きな摩擦力が生じることが防止される。電池セル2の破損がより確実に防止される。
【0054】
(付記5)
付記1~4のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、摩擦力低減材5は、電池セル2に固定されている、全固体電池モジュール。このような構成によれば、摩擦力低減材5の位置ずれを防止できる。
【0055】
(付記6)
付記1~5のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、摩擦力低減材5は、シート状であり、弾性体3側から電池セル2を見た場合に、摩擦力低減材5の外周端aは、弾性体3の外周端bよりも外側に位置している、全固体電池モジュール。このような構成によれば、摩擦力低減材5の外側において電池セル2に大きな摩擦力が生じることが防止される。電池セる2の破損がより確実に防止される。
【0056】
(付記7)
付記1~6のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、電池セル2は複数設けられており、弾性体3及び摩擦力低減材5は、隣接する電池セル2間に配置されている、
全固体電池モジュール。このような構成によれば、複数の電池セル2を有する全固体電池モジュールにおいて、摩擦による各電池セル2の破損を防止できる。
【0057】
(付記8)
付記1~7のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、更に、積層方向に沿って伸びるモジュールフレーム8を備え、電池セル2及び弾性体3は、積層方向に沿って積層されており、電池セル2の端部は、電池セル2が積層方向に垂直な方向にずれないように、モジュールフレーム8に連結されている、全固体電池モジュール。このような構成によれば、電池セル2の位置ずれが防止される。
【0058】
(付記9)
付記1~8のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、更に、エンドプレート4を有し、少なくとも1つの弾性体3は、電池セル2とエンドプレート4との間に配置された最外部弾性体3Aを有し、最外部弾性体3Aは、シート状であり、最外部弾性体3Aは、電池セル2側を向く内面aと、内面aの反対側の面である外面bであって、内面aとは異なる表面状態を有する外面bと、を有し、外面bとエンドプレート4との間の摩擦係数は、内面aをエンドプレート4と接触させた場合における内面aとエンドプレート4との間の摩擦係数よりも大きい、全固体電池モジュール。このような構成によれば、最外部弾性体3Aの位置ずれが防止される。
【符号の説明】
【0059】
1・・・全固体電池モジュール、2・・・電池セル、3・・・弾性体、4・・・エンドプレート、5・・・摩擦力低減材、6・・・電極積層体、7・・・外装材、8・・・モジュールフレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6