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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003121
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】全固体電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/474 20210101AFI20241226BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/48 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241226BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20241226BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M50/474
H01M10/0562
H01M50/293
H01M50/211
H01M50/48
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M10/052
H01M10/0565
H01M4/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103611
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】青谷 幸一郎
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H029
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS01
5H017HH00
5H021AA02
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE08
5H021HH00
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AL12
5H029AM11
5H029BJ04
5H029BJ06
5H040AA14
5H040AS07
5H040AT04
5H040AY08
5H040CC30
5H040NN00
5H050AA14
5H050BA16
5H050CA01
5H050CB12
(57)【要約】
【課題】電池セル上に弾性体が配置された全固体電池モジュールにおいて、電池セル内の集電箔が摩擦によって破れることを防ぐ。
【解決手段】全固体電池モジュールは、1つの電池セルと、電池セル上に配置された弾性体とを備える。電池セルは、最外層集電箔を有する電極積層体と、電極積層体を収容する、外装材と、外装材と最外層集電箔との間に配置された、摩擦力低減材と、有している。電池セルは、前記弾性体を介して圧縮されるように加圧される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電池セルと、
前記電池セル上に配置された弾性体と、
を備え、
前記電池セルは、
最外層として最外層集電箔を有する、電極積層体と、
前記電極積層体を収容する、外装材と、
前記弾性体と前記電極積層体との間に配置された摩擦力低減材であって、前記外装材と前記最外層集電箔との間に配置された、摩擦力低減材とを有しており、
前記電池セルは、前記弾性体を介して圧縮されるように加圧される、
全固体電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池モジュールであって、
前記電極積層体は、更に、負極活物質としてリチウム金属もしくはリチウム含有合金を含む負極層を有している、
全固体電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記摩擦力低減材は、前記外装材または前記最外層集電箔に固定されている、
全固体電池モジュール。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記摩擦力低減材は、シート状であり、
前記弾性体側から前記電池セルを見た場合に、前記摩擦力低減材の外周端は、前記最外層集電箔の外周端よりも外側に位置している、
全固体電池モジュール。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記摩擦力低減材は、シート状であり、
前記弾性体側から前記電池セルを見た場合に、前記摩擦力低減材の外周端は、前記弾性体の外周端よりも外側に位置している、
全固体電池モジュール。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記最外層集電箔は、
前記弾性体側を向く外面と、
前記外面の反対面である内面とを有し、
前記内面の表面状態と前記外面の表面状態とは異なっており、
前記外面と前記摩擦力低減材との間の摩擦係数は、前記内面と前記摩擦力低減材とを接触させた際の前記内面と前記摩擦力低減材との間の摩擦係数よりも小さい、
全固体電池モジュール。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、
前記電極積層体は、その外周部において、前記外装材に接着されている、
全固体電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池モジュールとして、少なくとも1つの電池セルと、その電池セル上に配置された弾性体とを有するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2015-53261号公報)には、電池ユニットが複数積層される全固体電池において、電池ユニットが所定の構成を有しており、各電池ユニットの間には、それぞれ放熱部材が介在されており、これらの放熱部材は、特定の構成を有する基層と、該基層を挟み込む、熱伝導性を有する一対の弾性体層とから構成されることを特徴とする全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-53261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全固体電池モジュールでは、接触抵抗低減のため、電池セルが加圧されている必要がある。電池セル上に弾性体が設けられた全固体電池モジュールでは、弾性体を介して電池セルが加圧される。この際、弾性体は圧縮される。圧縮された弾性体は、歪む。具体的には、弾性体は、加圧方向に対して垂直な方向(以下、面方向という場合がある)に広がるように歪む。
【0006】
弾性体の圧縮量は、変動する場合がある。例えば、電池セルは、充放電に伴い膨張収縮する場合がある。電池セルの膨張収縮に伴い、弾性体の圧縮量が変化することがある。その結果、弾性体における電池セルとの接触面の大きさも変化する。
【0007】
ところで、本発明者は、電池セルとして、電極積層体と、電極積層体を収容するフィルム状の外装材とを有するものを使用した全固体電池モジュールを検討している。更に、電極積層体として、最外層に集電箔が設けられたものを検討している。ここで、本発明者は、このような構成を採用すると、弾性体の圧縮量が変化した際に、最外層の集電箔が破れることがあることが判った。
【0008】
そこで、本発明の目的は、電池セル上に弾性体が配置された全固体電池モジュールにおいて、電池セル内の集電箔が摩擦によって破れることを防ぐことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明に係る全固体電池モジュールは、少なくとも1つの電池セルと、電池セル上に配置された弾性体とを備える。電池セルは、最外層として最外層集電箔を有する、電極積層体と、電極積層体を収容する、外装材と、弾性体と電極積層体との間に配置された摩擦力低減材であって、外装材と電極積層体との間に配置された、摩擦力低減材と、を有している。電池セルは、弾性体を介して圧縮されるように加圧される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池セル上に弾性体が配置された全固体電池モジュールにおいて、電池セル内の集電箔が摩擦によって破れることを防ぐことができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態に係る全固体電池モジュールを示す概略断面図である。
図2図2は、全固体電池モジュールの一部の構成を示す図である。
図3図3は、参考例を示す概略図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態の一変形例を示す概略図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態の一変形例を示す概略図である。
図5図5は、第1の実施形態の一変形例を示す概略図である。
図6図6は、第1の実施形態の一変形例を示す概略図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る全固体電池モジュールを示す概略断面図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る全固体電池モジュール1を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る全固体電池モジュールについて説明する。
【0013】
本実施形態に係る全固体電池モジュールは、全固体電池のセル(電池セル)を他の部品と組み合わせてモジュール化したものである。なお、本明細書において、「全固体電池」とは、正極層、負極層、及び電解質層が実質的に固体により構成されている二次電池を指す。「全固体電池」は、各層が「実質的に」固体であるといえるものであればよく、少量であれば液体材料が含まれていてもよい。例えば、電解質として、固体電解質に加えて少量の液体電解質を用いた電池であったとしても、各層が実質的に固体であると言える場合には、本明細書における全固体電池に包含される。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る全固体電池モジュール1を示す概略断面図である。図1に示されるように、全固体電池モジュール1は、複数の電池セル2と、複数の弾性体3と、一対のエンドプレート4とを有している。複数の電池セル2と複数の弾性体3とは、積層方向において交互となるように積層されている。複数の電池セル2及び複数の弾性体3は、圧縮された状態で、一対のエンドプレート4によって挟まれている。このような構成により、各電池セル2は、各弾性体3を介して圧縮されるように加圧されている。
【0015】
図2は、全固体電池モジュール1の一部の構成を示す図であり、図1における領域Aの拡大図である。図2に示されるように、弾性体3は、電池セル2上に配置されている。電池セル2は、電極積層体5、外装材6、及び摩擦力低減材7を有している。
【0016】
外装材6は、電極積層体5を収容する部材である。外装材6は、例えば、アルミラミネートフィルム等により構成される。
【0017】
電極積層体5は、二次電池としての機能を実現する部分である。図示していないが、電極積層体5は、正極層、負極層、電解質層、及び集電箔(正極集電箔及び負極集電箔)が積層方向に沿って積層された構成を有している。なお、電極積層体5は、複数のユニットを有し、それぞれのユニットが正極層、負極層、電解質層、及び集電箔(正極集電箔及び負極集電箔)を含んでいてもよい。ただし、電極積層体5の最外層は、集電箔となっている。以下、電極積層体5の最外層を構成する集電箔が、最外層集電箔8と称される。
【0018】
摩擦力低減材7は、弾性体3と電極積層体5との間であって、外装材6と電極積層体5との間に配置されている。すなわち、摩擦力低減材7は、外装材6と最外層集電箔8との間に配置されている。
【0019】
本実施形態によれば、摩擦力低減材7によって、最外層集電箔8の破れが防止される。この点について、以下に、参考例を参照しつつ説明する。
【0020】
図3は、参考例を示す概略図である。参考例においては、摩擦力低減材7が設けられていない。すなわち、電池セル2において、外装材6と最外層集電箔8とが接している(図3においては見やすさの為、両者がわずかに離れている)。既述のように、全固体電池モジュール1においては、種々の理由により、弾性体3の圧縮量が変化する場合がある。例えば、電池セル2の厚み(電極積層体5の厚み)は、充放電に伴って変化する場合がある。電池セル2の厚みが増加すると、積層方向における弾性体3の圧縮量が増加する。その結果、弾性体3は、面方向に広がるように歪む。図3には、圧縮量が小さい場合の弾性体3が弾性体3aとして示され、圧縮量が大きい場合の弾性体3が弾性体3bとして示されている。弾性体3の歪み量が変化する際に、外装材6が弾性体3によって面方向に引っ張れる。その結果、外装材6と最外層集電箔8との間に摩擦力が生じる。この摩擦力によって、最外層集電箔8が破れる場合がある。
【0021】
これに対して、本実施形態によれば、図2に示されるように、摩擦力低減材7が配置されているから、外装材6と最外層集電箔8との間に生じる摩擦力が低減される。これにより、最外層集電箔8の破れが防止される。
【0022】
以上が本実施形態に係る全固体電池モジュール1の概略である。
【0023】
なお、弾性体3の材質は特に限定されない。例えば、弾性体3としては、樹脂製のシートを用いることができる。樹脂製シートとしては、ゴム製シート、及び熱可塑性エラストマー製シート等を挙げることができる。
【0024】
また、電極積層体5の構成は特に限定されるものではない。ただし、電極積層体5は、好ましくは、負極活物質として、リチウム金属又はリチウム含有合金を含む。すなわち、電極積層体5の負極層には、負極活物質として、リチウム金属又はリチウム含有合金が含まれていることが好ましい。このような構成を有する電極積層体5は、充放電に伴い、厚みが大きく変化する。具体的には、充電状態では厚みが大きくなり、放電状態では厚みが小さくなる。その結果、充放電に伴って、弾性体3の圧縮量が大きく変化し、大きな摩擦力が繰り返し発生する。よって、最外層集電箔8の破れが問題となりやすい。そのため、本実施形態に従って摩擦力を低減することの価値が大きくなる。
【0025】
摩擦力低減材7は、外装材6と最外層集電箔8との間に発生する摩擦力を低減することができる材料であればよく、特に限定されない。
【0026】
例えば、摩擦力低減材7として、シート材を用いることができる。この場合、摩擦力低減材7として、外装材6と最外層集電箔8との間の摩擦係数を低下させる材料を用いることができる。具体的には、下記(1)及び/又は(2)の関係が成り立つようなシート材を、摩擦力低減材7として用いることができる。
【0027】
(1)「外装材6-最外層集電箔8間の摩擦係数A」>「外装材6-摩擦力低減材7間の摩擦係数B」
(2)「外装材6-最外層集電箔8間の摩擦係数A」>「最外層集電箔8-摩擦力低減材7間の摩擦係数C」
【0028】
なお、上記(1)及び(2)において、「外装材6-最外層集電箔8間の摩擦係数A」とは、仮に外装材6と最外層集電箔8とを直接接触させた場合における両者の間の摩擦係数を意味する。
【0029】
また、本明細書において、「摩擦係数」とは、動摩擦係数及び静摩擦係数の両方を意味する。例えば、境界Aにおける摩擦係数が境界Bにおける摩擦係数よりも大きいということは、動摩擦係数及び静摩擦係数の両方とも、境界Aの方が境界Bよりも大きいことを意味する。
【0030】
摩擦力低減材7として用いられるシート材として、例えば、PP(ポリプロピレン)シート、PE(ポリプロピレン)シート、PI(ポリイミド)シート、PC(ポリカーボネート)シート、およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート等の樹脂シートを挙げることができる。
【0031】
摩擦力低減材7がシート材である場合、そのシート材は、位置ずれ防止のため、外装材6又は最外層集電箔8に固定されていることが好ましい。この点について、図4A及び図4Bを参照して詳述する。
【0032】
図4Aは、本実施形態の一変形例を示す概略図である。この変形例においては、摩擦力低減材7が、接着層9を介して外装材6に接着されている。すなわち、摩擦力低減材7が、外装材6に対して固定されている。このような構成によれば、摩擦力低減材7の位置ずれが防止される。
【0033】
図4Bは、本実施形態の他の一変形例を示す概略図である。この変形例においては、摩擦力低減材7が、接着層9を介して最外層集電箔8に接着されている。すなわち、摩擦力低減材7が、最外層集電箔8に対して固定されている。このような構成によっても、摩擦力低減材7の位置ずれが防止される。
【0034】
なお、摩擦力低減材7は、必ずしもシート材でなくてもよい。例えば、摩擦力低減材7は、潤滑油等の潤滑剤を含む潤滑剤層により実現することもできる。潤滑剤は、外装材6の内面に塗布されていてもよいし、最外層集電箔8上に塗布されていてもよい。潤滑剤としては、潤滑剤を欠く場合における外装材6-最外層集電箔8間の摩擦係数よりも、潤滑剤を設けた場合の外装材6-最外層集電箔8間の摩擦係数の方が小さくなるようなものが用いられる。
【0035】
潤滑剤としては、難燃性作動液が好ましく用いられる。難燃性作動液としては、例えば、リン酸エステル系作動液、脂肪酸エステル系作動液、水-グリコール系作動液、及びエマルション系作動液を挙げることができる。
【0036】
続いて、摩擦力低減材7のサイズについて説明する。
【0037】
図5は、本実施形態の一変形例を示す概略図である。この変形例は、摩擦力低減材7のサイズに関する変形例である。この変形例においては、摩擦力低減材7がシート材である。弾性体3側から電池セル2を見た場合(積層方向に沿って見た場合)に、摩擦力低減材7のサイズは、最外層集電箔8のサイズよりも大きい。具体的には、積層方向に沿って見た場合に、摩擦力低減材7の外周端aが、最外層集電箔8の外周端bよりも外側に位置している。
【0038】
図5に示す変形例によれば、摩擦力による最外層集電箔8の損傷がより確実に防止される。仮に、摩擦力低減材7の外周端aの方が最外層集電箔8の外周端bよりも内側に位置していると、摩擦力低減材7よりも外側の部分で、最外層集電箔8に大きな摩擦力が発生する可能性がある。そのため、最外層集電箔8が損傷する可能性がある。これに対して、図5に示す変形例によれば、最外層集電箔8の全領域が摩擦力低減材7により覆われるから、最外層集電箔8の損傷がより確実に防止される。
【0039】
続いて、摩擦力低減材7のサイズに関する他の変形例について説明する。図6は、本実施形態の他の一変形例を示す概略図である。この変形例においては、摩擦力低減材7のサイズと弾性体3のサイズの関係が特定されている。具体的には、摩擦力低減材7は、シート状である。そして、弾性体3側から電池セル2を見た場合(積層方向に沿って見た場合)に、摩擦力低減材7の外周端aは、弾性体3の外周端cよりも外側に位置している。このような構成によれば、積層方向に沿って見た場合に、弾性体3が摩擦力低減材7よりも外側に位置しない。従って、摩擦力低減材7よりも外側で最外層集電箔8に大きな摩擦力が生じることが妨げられ、最外層集電箔8の損傷がより確実に防止される。
【0040】
なお、図6には、圧縮量が最小である場合の弾性体3が弾性体3aとして示され、圧縮量が最大である場合の弾性体3が弾性体3bとして示されている。図6に示されるように、弾性体3が最も圧縮された状態(弾性体3b)が特定できる場合には、摩擦力低減材7の外周端aは、弾性体3が最も圧縮された場合の弾性体3bの外周端cよりも外側に位置していることが好ましい。例えば、負極活物質としてリチウム金属又はリチウム含有合金が含まれる電極積層体5を用いた場合、完全充電時に電池セル2(電極積層体5)の厚みが最大となり、弾性体3の圧縮量が最大となる。このような場合、摩擦力低減材7の外周端aは、完全充電時における弾性体3bの外周端cよりも外側に位置していることが好ましい。このような構成を採用すれば、摩擦力低減材7の外周端aが、常に、弾性体3の外周端cよりも外側に位置する。従って、摩擦力低減材7よりも外側で最外層集電箔8に大きな摩擦力が生じることが、常に防止される。
【0041】
以上、第1の実施形態について説明した。
【0042】
なお、本実施形態では、電池セル2及び弾性体3がそれぞれ複数設けられている場合について説明した。ただし、電池セル2及び弾性体3は必ずしも複数設けられている必要はない。すなわち、全固体電池モジュール1には、少なくとも1つの電池セル2と、少なくとも1つの弾性体3とが設けられてればよい。
【0043】
本実施形態に係る全固体電池モジュール1の用途は特に限定されない。例えば、全固体電池モジュール1は、電気自動車(EV)用とすることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係る全固体電池モジュール1を示す概略断面図である。なお、第1の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態においては、最外層集電箔8の表面状態が工夫されている。具体的には、最外層集電箔8は、弾性体3側(外側)を向く外面aと、外面aの反対面である内面bとを有している。ここで、内面bの表面状態と外面aの表面状態とは異なっている。外面aの表面状態は、内面bに比べて、より滑りやすくなっている。より具体的には、外面aと摩擦力低減材7との間の摩擦係数は、内面bと摩擦力低減材7とを接触させた場合の内面bと摩擦力低減材7との間の摩擦係数よりも、小さい。
【0046】
本発明によれば、摩擦力低減材7と外面aとの間の摩擦係数がより小さくなっているから、最外層集電箔8に加わる摩擦力がより低減される。これにより、最外層集電箔8の破れをより確実に防止できる。
【0047】
なお、最外層集電箔8の内面bと外面aの表面状態は、例えば、表面粗さを変えることによって、異ならせることができる。好適には、外面aの表面粗さは、内面bの表面粗さよりも小さい。このような構成により、外面aの表面状態を、内面bに比べて滑りやすい表面状態にすることができる。その結果、摩擦力低減材7と外面aとの間の摩擦係数を、内面bと摩擦力低減材7とを接触させた際の摩擦係数よりも小さくすることができる。
【0048】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態について説明する。図8は、本実施形態に係る全固体電池モジュール1を示す概略断面図である。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0049】
本変形例では、図8に示されるように、電極積層体5が、その外周部(積層方向における上下面における外周部)において、外装材6に接着されている(図8の接着部10参照)。このような構成によれば、電極積層体5が外装材6に対して固定される。従って、電極積層体5の外装材6に対する位置ずれが抑制される。
【0050】
以上、本発明について第1~第3の実施形態を挙げて説明した。以下に、本発明の代表的な構成を、その効果と共に付記として要約する。
【0051】
(付記1)
少なくとも1つの電池セル2と、電池セル2上に配置された弾性体3とを備え、電池セル2は、最外層として最外層集電箔8を有する、電極積層体5と、電極積層体5を収容する、外装材6と、弾性体3と電極積層体5との間に配置された摩擦力低減材7であって、外装材6と最外層集電箔8との間に配置された、摩擦力低減材7と、有しており、電池セル2は、弾性体3を介して圧縮されるように加圧される、全固体電池モジュール。この構成によれば、摩擦力低減材7によって、外装材6と最外層集電箔8との間の摩擦力が低減されるから、最外層集電箔8の破れが防止される。
【0052】
(付記2)
付記1に記載の全固体電池モジュールであって、電極積層体5は、更に、負極活物質としてリチウム金属もしくはリチウム含有合金を含む負極層を有している、電池モジュール。このような構成によれば、電極積層体5は、充放電に伴い、厚みが大きく変化する。弾性体3の変形量が繰り返し大きく変化するため、通常であれば、最外層集電箔8の破れが問題となりやすいが、本発明によれば、摩擦力低減材7によって摩擦力を低減することができる。
【0053】
(付記3)
付記1又は2に記載の全固体電池モジュールであって、摩擦力低減材7は、外装材6または最外層集電箔8に固定されている、全固体電池モジュール。このような構成によれば、摩擦力低減材7の位置ずれが防止される。
【0054】
(付記4)
付記1~3のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、摩擦力低減材7は、シート状であり、弾性体3側から電池セル2を見た場合に、摩擦力低減材7の外周端aは、最外層集電箔8の外周端bよりも外側に位置している、全固体電池モジュール。このような構成によれば、摩擦力低減材7の外側で最外層集電箔8に大きな摩擦力が生じることが防止される。最外層集電箔8の破れがより確実に防止される。
【0055】
(付記5)
付記1~4のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、摩擦力低減材7は、シート状であり、弾性体3側から電池セル2を見た場合に、摩擦力低減材7の外周端は、弾性体3の外周端よりも外側に位置している、全固体電池モジュール。このような構成によれば、摩擦力低減材7の外側で最外層集電箔8に大きな摩擦力が生じることが防止される。最外層集電箔8の破れがより確実に防止される。
【0056】
(付記6)
付記1~5のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、最外層集電箔8は、弾性体3側を向く外面aと、外面aの反対面である内面bとを有し、内面bの表面状態と外面aの表面状態とは異なっており、外面aと摩擦力低減材7との間の摩擦係数は、内面bと摩擦力低減材7とを接触させた場合の内面bと摩擦力低減材7との間の摩擦係数よりも小さい、全固体電池モジュール。このような構成によれば、外面が内面と同じ表面状態を有している場合に比べて、摩擦力がより生じ難い。最外層集電箔8の破れがより確実に防止される。
【0057】
(付記7)
付記1~6のいずれかに記載の全固体電池モジュールであって、電極積層体5は、その外周部において、外装材6に接着されている、全固体電池モジュール。このような構成によれば、電極積層体5の位置ずれが防止される。
【符号の説明】
【0058】
1・・・全固体電池モジュール、2・・・電池セル、3・・・弾性体、4・・・エンドプレート、5・・・電極積層体、6・・・外装材、7・・・摩擦力低減材、8・・・最外層集電箔、9・・・接着層、10・・・接着部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8