(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031217
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20250228BHJP
A41B 11/02 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A41B11/00 Z
A41B11/00 J
A41B11/00 D
A41B11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137289
(22)【出願日】2023-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507109206
【氏名又は名称】株式会社JKトレーディング
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】城取 和明
(72)【発明者】
【氏名】金 正一
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA03
3B018AB06
3B018AB08
3B018AC01
3B018AC05
3B018AC07
3B018AD01
3B018GA01
(57)【要約】
【課題】爪先が破れたら爪先と踵とを逆に履いてフットカバーの廃棄を回避する。
【解決手段】このフットカバー100は左右共用であって、爪先部Aには爪先部Aを補強する爪先側の補強部140が設けられ、開口部OPの周縁に爪先側の滑り止め部130が設けられ、爪先部Aまたは踵部Cを上方にしてフットカバー100の左右いずれか一方を平面に載置した場合に、開口部OPを含めて左右上下に略対称で、爪先側の補強部140および爪先側の滑り止め部130を踵側の補強部140および踵側の滑り止め部130として上下に略対称に備え、爪先側の補強部140および爪先側の滑り止め部130を着用者の爪先方向から踵方向になるように履き替えても、足甲の被覆範囲が略同じで、爪先が踵側の補強部140により補強されるとともに踵からフットカバー100がずれることを爪先側の滑り止め部130により抑制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、
足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、
前記足底部以外を形成する少なくとも1枚の第1の伸縮性編地と、前記第1の伸縮性編地とは異なる伸縮性編地であって前記足底部を形成する第2の伸縮性編地とが接合されて、前記フットカバーが立体的な形状に形成され、
前記爪先部には前記爪先部を補強する爪先側の補強部が設けられるとともに、前記開口部における爪先側の一部に設けられた前記開口部の周縁に沿った形状の爪先側の滑り止め部が設けられ、
前記爪先部または前記踵部を上方にして前記フットカバーの左右いずれか一方を平面に載置した場合に、前記開口部を含めて左右上下に略対称で、前記爪先側の補強部および前記爪先側の滑り止め部を前記爪先側とは上下逆側の踵側にも踵側の補強部および踵側の滑り止め部として備え、
前記爪先側の補強部と前記踵側の補強部とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成され、
前記爪先側の滑り止め部と前記踵側の滑り止め部とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成され、
前記爪先側の補強部および前記爪先側の滑り止め部が着用者の爪先方向になるように着用しても着用者の踵方向になるように着用しても、前記フットカバーによる足甲の被覆範囲が略同じで、略同じ履き深さで前後兼用可能であることを特徴とする、フットカバー。
【請求項2】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、
足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、
前記足底部以外を形成する少なくとも1枚の第1の伸縮性編地と、前記第1の伸縮性編地とは異なる伸縮性編地であって前記足底部を形成する第2の伸縮性編地とが接合されて、前記フットカバーが立体的な形状に形成され、
前記爪先部には前記爪先部を補強する補強部が設けられるとともに、前記開口部における爪先側の一部に設けられた前記開口部の周縁に沿った形状の滑り止め部が設けられ、
前記爪先部または前記踵部を上方にして前記フットカバーの左右いずれか一方を平面に載置した場合に、前記開口部を含めないと左右上下に略対称で、前記フットカバーの上端から前記開口部の上端までの長さと前記フットカバーの下端から前記開口部の下端までの長さとが異なるために前記開口部を含めると左右に略対称で上下に非対称で、前記爪先側の補強部および前記爪先側の滑り止め部を前記爪先側とは上下逆側の踵側にも踵側の補強部および踵側の滑り止め部として備え、
前記爪先側の補強部と前記踵側の補強部とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成され、
前記爪先側の滑り止め部と前記踵側の滑り止め部とは形状が上下略対称であることに加えて同じ素材で構成され、
前記爪先側の補強部および前記爪先側の滑り止め部が着用者の爪先方向になるように着用した場合と着用者の踵方向になるように着用した場合とで、前記フットカバーによる足甲の被覆範囲を異ならせて、履き深さ変更可能に前後兼用可能であることを特徴とする、フットカバー。
【請求項3】
前記開口部の全周縁に前記開口部の周縁に沿った形状の滑り止めテープを備え、前記滑り止めテープのさらに肌側にテープ状の前記滑り止め部が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用すると靴(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用のパンプス等であってもパンプス程には履き口である甲部分が大きく開いていない靴等であっても)の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)フットカバーに関し、特に、フットカバーの先後(前後と同義であって、先および前が爪先側または爪先方向を、後が踵側または踵方向をそれぞれ示す)を爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)とともに歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できるフットカバーに関する。また、本発明は、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履くと(先端の穴の存在に関わらず爪先側を踵側に替えて履くと)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制でき、かつ、フットカバーにより足甲の被覆範囲を異ならせて履き深さ変更可能なフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
素足にパンプス等の靴を履くことが、ファッションとして定着している。この場合、パンプスと足裏とが直接接していると、足に発生した汗により靴の中が蒸れてしまい不快感がある。
【0003】
そこで、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、着用時にパンプスから露出することのないよう(露出しにくくなるよう)履き口が大きくカットされた薄手のフットカバーが提案されている。このフットカバーを着用してパンプスを履けば、外観上、素足にパンプスを履いているように見え、足裏とパンプスとの間にはフットカバーが介しているため、汗によって靴の中が蒸れてしまうことを防止することができる。
【0004】
なお、このような足装着具を、本明細書ではフットカバーと記載するが、ソックスカバー、インナーソックス、ヌードソックス、カバーソックス等と記載される場合もある。
【0005】
このようなフットカバーには、着用時のずれ・脱げを防止するための滑り止め構造を有することが一般的である。従来の滑り止め構造は、(1)シリコーン等の樹脂・ゴムの貼付、(2)テープ状にカットした生地の貼付、(3)伸縮部の編成またはゴムの挿入、に大別できる。しかしながら、シリコーン等の樹脂を用いた滑り止め構造は、ずれ防止効果は高いが、履き口の全周に亘って設けた場合、成分によるかぶれ、肌への密着および動的圧力による炎症、汗等による肌荒れ等の原因になり得る。一方、テープ状にカットした生地の貼付、または弾性糸の挿入による滑り止め構造は、肌荒れ等を起こしにくいが、ずれ防止効果はシリコーン等の樹脂ほど高いとは言えない。また、いずれの場合においても、履き口の全周に亘って滑り止め構造を設けると、足への締め付けが強くなり着用感を損なう可能性がある。
【0006】
このような問題点に鑑みて、特開2021-155889号公報(特許文献1)は、肌に優しく、かつ効果的なずれ防止機能を有するフットカバーを開示する。この特許文献1に開示されたフットカバーは、足の足裏、爪先および踵のそれぞれの少なくとも一部を覆う本体部を含み、前記本体部に形成された履き口の周縁部の内側に滑り止め部が配置されたフットカバーであって、前記滑り止め部は、前記周縁部の前記爪先側に配置され、前記本体部よりも伸縮性が低い第1滑り止め部と、前記第1滑り止め部から分離して前記周縁部の前記踵側に配置され、前記第1滑り止め部よりも肌との摩擦が大きい第2滑り止め部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この特許文献1に開示されたフットカバーによると、第1滑り止め部と第2滑り止め部とは互いに分離して周縁部に配置されるので、履き口の全周に亘って摩擦が大きい滑り止め部を配置した場合において過度な締め付けが生じることに起因した特に皮膚が弱い爪先側の肌への負担が大きくなることを防止できる。そして、この特許文献1に開示されたフ
ットカバーでは、比較的皮膚が弱い(薄い)爪先側に肌への負担が小さい低伸縮性の第1滑り止め部(ナイロンのニット生地等)を配置し、比較的皮膚が強い(厚い)踵側に第1滑り止め部よりも肌との摩擦が大きい第2滑り止め部(帯状のシリコーン(特許文献1ではシリコンと記載)等の樹脂)を、第1滑り止め部から分離して配置している。これにより、皮膚が弱い爪先側の負担を軽減しつつ、効果的にずれ・脱げを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、このようなフットカバーの素材としては、一例ではあるもののパンティストッキング用の生地(ポリウレタン糸とナイロン糸とを含む編地)等の薄手の伸縮性編地が採用されることが多い。特許文献1においては比較的皮膚が弱い(薄い)爪先側と比較的皮膚が強い(厚い)踵側とに着目しているが、人体の足(足首から先の足指まで)における爪先側と踵側とを比較すると、爪先側には踵側に存在しない足指および足爪を備える。さらに、美観向上のために足爪を伸ばして着色したり加飾したりすることも夏季のトレンドとして流行している。このような足爪の存在により(足爪を伸ばさなくても踵に比較して爪先は薄く先端が尖っており)薄手のフットカバーを繰り返し履いたり洗濯したりすることによりフットカバーの爪先部が薄くなり破れやすいという欠点を必然的に備える。たとえば、多くのフットカバーでは左右共用(左足用と右足用とを区別することなく)であるために、右足に着用していたフットカバーの爪先側が破れると(穴が開くと)それを廃棄して同じ品番の未使用のフットカバーの左右いずれかを右足に着用すれば良いものの、爪先側が破れたり薄くなった(穴が開いたり穴が開けかけたりしている)フットカバーを廃棄したり、未使用の片方が余ったりしてしまう。これを回避するために、爪先側が破れた(穴が開いた)フットカバーの前後を逆にして(爪先側と踵側とを入れ替えて)着用すると踵側は靴を履くとその破れた穴は見えず、かつ、踵側は爪先よりも分厚く尖っおらず丸いために、その穴が拡大する可能性も低い。このため、爪先側が破れた(穴が開いた)フットカバーを廃棄せずに使用することは、主に石油を原料とする合成樹脂から製造される合成繊維を含むフットカバーを廃棄しないことに繋がり、以下に示す国際的な取り決めであるSDGsにとっても有益なことである。なお、フットカバーの左右一方の爪先側が破れると(穴が開くと)左右両方とも廃棄することは、このSDGsにとってさらに好ましくないことは明らかである。
【0010】
2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2030アジェンダ)は、国際社会全体が、物質的に豊かで便利な生活を享受している人間活動に伴い引き起こされる諸問題を喫緊の課題として認識し、協働して解決に取り組んで行くことを決意した画期的な合意である。この合意が採択されたことにより、国際社会の共通理念として「持続可能な開発」という考え方が深く浸透しつつある。この2030アジェンダの中核をなす「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals、SDGs)には17のゴールが設定されており、その中のゴール14(海洋)は、「持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続的に利用する」というものである。このようなゴール14(海洋)が設定されている背景として、不適切な廃棄物処理等により、世界の海洋汚染も深刻化していることがある。海洋汚染の原因の一つである海洋プラスチックごみには、漁具、食品・飲料の容器及び包装、たばこのライターやフィルター等が含まれており、海岸地域から発生したプラスチックごみのおおよそ1/3は不適切に廃棄されて海洋に流出して海洋プラスチックごみとなったと考えられている。陸域を発生源とする海洋ごみ、特にマイクロプラスチックの発生抑制および削減に寄与することを認識しつつ(海洋プラスチックごみは波の力や紫外線の影響で細かく砕かれて5mm以下のマイクロプラスチックとなる)、海洋ごみに対処することが再確認されている。なお、プラスチックごみが海洋ごみにならなかった場合であっても、プラスチッ
クごみは燃やす(焼却廃棄する)ときに温室効果ガスを排出したり、プラスチックの原料が採掘量に限りがある石油資源であったりすることも、2030アジェンダの観点から好ましくない。このような点から、爪先側が破れた(穴が開いた)フットカバーを即座に廃棄することは、主に石油を原料とする合成樹脂から製造される合成繊維を含むために、SDGsにとって好ましくない。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されたフットカバーは、比較的皮膚が弱い(薄い)爪先側に肌への負担が小さい低伸縮性の第1滑り止め部(ナイロンのニット生地等)を配置し比較的皮膚が強い(厚い)踵側に第1滑り止め部よりも肌との摩擦が大きい第2滑り止め部(帯状のシリコーン等の樹脂)を第1滑り止め部から分離して配置していることにより、皮膚が弱い爪先側の負担を軽減しつつ、効果的にずれ・脱げを防止しているために、爪先側が破れた(穴が開いた)フットカバーの前後(先後、爪先/踵)を逆にして(爪先側と踵側とを入れ替えて)着用することは、皮膚が弱い爪先側の負担を軽減できず、かつ、効果的にずれ・脱げを防止することができないために、不可能であり、爪先側が破れた(穴が開いた)特許文献1に開示されたフットカバーは廃棄せざるを得ない。
【0012】
本願出願人は、この特許文献1に開示されたフットカバーの問題点に鑑みて、さらに、主に石油を原料とする合成樹脂から製造される合成繊維を含むフットカバーの製造販売メーカーとして国際的な取り決めであるSDGsに貢献すべく、鋭意研究するに至ったのである。
【0013】
本発明は、従来技術に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できるフットカバーを提供することである。また、本発明の別の目的とするところは、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履くと(先端の穴の存在に関わらず爪先側を踵側に替えて履くと)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制でき、かつ、フットカバーにより足甲の被覆範囲を異ならせて履き深さ変更可能なフットカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るフットカバーは以下の技術的手段を講じている。
【0015】
すなわち、本発明のある局面に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、前記足底部以外を形成する少なくとも1枚の第1の伸縮性編地と、前記第1の伸縮性編地とは異なる伸縮性編地であって前記足底部を形成する第2の伸縮性編地とが接合されて、前記フットカバーが立体的な形状に形成され、前記爪先部には前記爪先部を補強する爪先側の補強部が設けられるとともに、前記開口部における爪先側の一部に設けられた前記開口部の周縁に沿った形状の爪先側の滑り止め部が設けられ、前記爪先部または前記踵部を上方にして前記フットカバーの左右いずれか一方を平面に載置した場合に、前記開口部を含めて左右上下に略対称で、前記爪先側の補強部および前記爪先側の滑り止め部を前記爪先側とは上下逆側の踵側にも踵側の補強部および踵側の滑り止め部として備え、前記爪先側の補強部と前記踵側の補強部とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成され、前記爪先側の滑り止め部と前記踵側の滑り止め部とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成され、前記爪先側の補強部および前記爪先側の滑り止め部が着用者の爪先方向になるように着用しても着用者の踵方向になるように着用しても、前記フットカバーによる足甲の被覆範囲が略同じで、略同じ履き深さで前後(先後)兼用可能であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の別の局面に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上
下反対側に設け、前記足底部以外を形成する少なくとも1枚の第1の伸縮性編地と、前記第1の伸縮性編地とは異なる伸縮性編地であって前記足底部を形成する第2の伸縮性編地とが接合されて、前記フットカバーが立体的な形状に形成され、前記爪先部には前記爪先部を補強する補強部が設けられるとともに、前記開口部における爪先側の一部に設けられた前記開口部の周縁に沿った形状の滑り止め部が設けられ、前記爪先部または前記踵部を上方にして前記フットカバーの左右いずれか一方を平面に載置した場合に、前記開口部を含めないと左右上下に略対称で、前記フットカバーの上端から前記開口部の上端までの長さと前記フットカバーの下端から前記開口部の下端までの長さとが異なるために前記開口部を含めると左右に略対称で上下に非対称で、前記爪先側の補強部および前記爪先側の滑り止め部を前記爪先側とは上下逆側の踵側にも踵側の補強部および踵側の滑り止め部として備え、前記爪先側の補強部と前記踵側の補強部とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成され、前記爪先側の滑り止め部と前記踵側の滑り止め部とは形状が上下略対称であることに加えて同じ素材で構成され、前記爪先側の補強部および前記爪先側の滑り止め部が着用者の爪先方向になるように着用した場合と着用者の踵方向になるように着用した場合とで、前記フットカバーによる足甲の被覆範囲を異ならせて、履き深さ変更可能に前後(先後)兼用可能であることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記開口部の全周縁に前記開口部の周縁に沿った形状の滑り止めテープを備え、前記滑り止めテープのさらに肌側にテープ状の前記滑り止め部が設けられているように構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るフットカバーによると、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できるフットカバーを提供することができる。また、本発明に係るフットカバーによると、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履くと(先端の穴の存在に関わらず爪先側を踵側に替えて履くと)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制でき、かつ、フットカバーによる足甲の被覆範囲を異ならせて履き深さ変更可能なフットカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るフットカバー100を着用した状態を斜め上から見た全体斜視図である。
【
図2】
図1に示すフットカバー100の仮想的な着用状態を示す(A)上面図、(B)底面図である。
【
図3】
図1に示すフットカバー100の展開図(2枚の型紙の平面図)である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係るフットカバー200を着用した状態を斜め上から見た全体斜視図であって(A)爪先浅履き状態、(B)爪先深履き状態である。
【
図5】
図4に示すフットカバー200の(爪先浅履き状態での)仮想的な着用状態を示す(A)上面図、(B)底面図である。
【
図6】
図4に示すフットカバー200の(爪先深履き状態での)仮想的な着用状態を示す(A)上面図、(B)底面図である。
【
図7】
図4に示すフットカバー200の展開図(2枚の型紙の平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、本発明の実施の形態に係るフットカバー(第1の実施の形態に係るフットカバー100および第2の実施の形態に係るフットカバー200)を、フットカバー100を着用した状態を斜め上から見た全体斜視図である
図1、そのフットカバー100の仮想的な着用状態を示す上面図である
図2(A)および底面図である
図2(B)、フットカバー100の展開図(2枚の型紙の平面図)を示す
図3、ならびに、フットカバー200を着用した状態を斜め上から見た全体斜視図であって爪先浅履き状態を示す
図4(A)および爪先深履き状態を示す
図4(B)、フットカバー200の爪先浅履き状態での仮想
的な着用状態を示す上面図である
図5(A)および底面図である
図5(B)、フットカバー200の爪先深履き状態での仮想的な着用状態を示す上面図である
図6(A)および底面図である
図6(B)、フットカバー200の展開図(2枚の型紙の平面図)を示す
図7、を参照して詳しく説明する。なお、
図6は
図5を上下反転させた図である。
【0021】
ここで、フットカバー100とフットカバー200との相違点は、フットカバー100の第1の伸縮性編地104が、フットカバー200においては第1の伸縮性編地204に置換されている点である。この相違点を踏まえて、これらの第1の実施の形態に係るフットカバー100および第2の実施の形態に係るフットカバー200に共通する事項について以下においてまず説明する。なお、第1の実施の形態に係るフットカバー100と第2の実施の形態に係るフットカバー200とで同じ構造については同じ符号を付している。<2つの実施の形態に共通する事項>
一般的にフットカバーの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴を備えたものであれば、どのようなフットカバーの構造であっても、フットカバーを構成する生地の種類、生地の型紙およびその生地の接合方法がどのようなものであっても基本的には構わない。そのため、以下に示すフットカバーの構造自体および接合方法は単なる例示でしかない。なお、実施の形態において符号を付していないフットカバーとはフットカバー100およびフットカバー200を意味しており、実施の形態において符号を付していないフットカバーについての説明はフットカバー100およびフットカバー200に共通する事項である。
【0022】
なお、このフットカバーを形成する生地は、ベア天(ベア天竺:天竺編み(平編み)に、裸糸(ベア糸)のポリウレタン糸を編み込んだ編地)、トリコット(経編み機の一種であるトリコット機で編んだ経編みの生地)、パンティストッキング用の生地(ポリウレタン糸とナイロン糸とを含む編地)等が好ましく用いられる。特に、これらの中でもベア天は、(1)伸縮性にすぐれている点、(2)形状安定性がよく洗濯後の形状変化が少ない点、(3)風合いが柔らかくフィット感にすぐれている点、(4)シワや折り目がつきにくい点、(5)多孔性の構造なので通気性がある点、(6)綿を含む場合には肌触りおよび吸湿性がよい点、でフットカバーに好ましい。また、本実施の形態において、単に生地と記載した場合には編地を含む生地を意味するものである。
【0023】
図1および
図4に示すように、フットカバー100とフットカバー200とに共通する事項(構造についての事項)として、これらのフットカバー100とフットカバー200は、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部D、側辺部B、踵部Cおよび爪先を覆う爪先部Aで形成され、足を出し入れするための開口部OPを、足底部Dに対して上下反対側に設け、足底部D以外を形成する少なくとも1枚の第1の伸縮性編地(フットカバー100では第1の伸縮性編地104であってフットカバー200では第1の伸縮性編地204であって以下同じ)と、第1の伸縮性編地104とは異なる伸縮性編地であって足底部Dを形成する第2の伸縮性編地102とが接合されて、フットカバー100およびフットカバー200が立体的な形状に形成されている。なお、爪先部Aはフットカバーの着用者である人体の足の爪先を被覆するフットカバーの部分(部位)であって踵部Cは人体の足の踵を被覆するフットカバーの部分(部位)であって、本発明に係るフットカバーは先後(前後)兼用可能(爪先側と踵側とを入れ替えて着用しても、すなわち、フットカバーの先後(前後)を入れ替えて着用しても入れ替える前後で何ら変わりなくフットカバーとして同じ機能を発現することが可能であるという意味であり以下においてこの括弧書きは省略)であるために、爪先部Aおよび踵部Cは、
図3における上部104Uにより形成されたり下部104Dにより形成されたり、
図7における上部204Uにより形成されたり下部204Dにより形成されたりする。留意すべきは、フットカバー100においては
図3に示す上部104Uで爪先部Aが形成されても下部104Dで爪先部Aが形成されても爪先の履き深さ(爪先履き深さと記載する場合がある)は同じ(略同じ)になるが、フットカバー200においては
図7に示す上部204Uで爪先部Aが形成された場合と下部204Dで爪先部Aが形成された場合とでは爪先の履き深さは同じ(略同じ)にならず、上部204Uにより爪先部Aが形成さ
れると(
図4~
図6に示す被覆長さL(1)側を着用者の爪先方向として着用すると)が爪先浅履きになり、下部204Dにより爪先部Aが形成されると(
図4~
図6に示す被覆長さL(2)側を着用者の爪先方向として着用すると)爪先深履きになる点である。なお、爪先深履きは爪先浅履きに比較してフットカバーによる足甲の被覆範囲が広く(被覆長さが長く)なるという意味である(
図1における被覆長さL(1)=
図4(A)における被覆長さL(1)<
図4(B)における被覆長さL(2))。
【0024】
これらのフットカバー100およびフットカバー200は、着用すると靴(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用のパンプス等であってもパンプス程には履き口である甲部分が大きく開いていない靴等であっても)の靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)ことを特徴とする。また、限定されるものではないが、これらのフットカバー100およびフットカバー200は、左右共用であって、左右共用であるために左右を履き間違いすることがない点および左右を履き分けする必要がない点で好ましい。
【0025】
ここで、
図1および
図4は、着用者の足Fにフットカバー100およびフットカバー200を実際に着用している状態を示している。また、
図2、
図5および
図6は、フットカバー100の(実際に着用している現実の着用状態ではなく)仮想的な着用状態を平面的に平面図(上面図、底面図)で示している。仮想的な着用状態で図示する理由は、たとえば左右一方のフットカバーについて、
図2(A)、
図2(B)、
図5(B)および
図6(B)において左右上下(略)対称であり、
図5(A)および
図6(A)において左右(略)対称であることを、容易に理解するためであって、すなわち、これら3図である
図2、
図5および
図6において左右上下(略)対称である点および上下(略)対称である点を容易に理解するためである。これらのフットカバー100およびフットカバー200は、伸縮性編地で形成されているために、このように着用状態を想定して仮想的に図示しない場合(フットカバー単体を単に平面に載置した場合)には伸縮性編地が縮んだ状態となり、フットカバーの特徴的な形状を理解することが困難なため、これら3図は着用状態を想定して仮想的な平面図で示している。
【0026】
特に、仮想的な着用状態を平面図(上面図)として示す
図2(A)、
図5(A)および
図6(A)においては、これらのフットカバー100およびフットカバー200の特徴(左右共用のフットカバーの一方について爪先側または踵側を上方にして平面に載置した場合に開口部OPを含めないとフットカバーの外観形状は上下対称)を容易に理解できるように、これらのフットカバー100およびフットカバー200を実際に足Fに着用している状態とは異なる仮想的な着用状態としてフットカバーが上下対称であるように描いている。すなわち、実際にフットカバーを足Fに着用している(仮想的ではない)状態では、踵から足首にかけて足Fが略垂直に立ち上がるために、これらのフットカバー100およびフットカバー200を着用すると踵部Cは踵および足首に沿って略垂直に立ち上がるので、開口部OPを含めないフットカバー自体の外観形状も、開口部OPも滑り止め部130も補強部140も上下対称に見えないことを回避するために、これらの図は仮想的な着用状態としている。
【0027】
また、
図1に示すフットカバー100の爪先部Aにおける被覆長さL(1)は
図2(A)に示すフットカバー100の上端から開口部OPの上端までの被覆長さL(1)に対応するが、
図1が着用状態を示す斜視図であって
図2が仮想的な着用状態を示す平面図(上面図、底面図)であるために、厳密には
図1における被覆長さL(1)が
図2(A)における被覆長さL(1)に完全に一致するとは限らず、同じく、
図4(A)に示すフットカバー200の爪先部Aにおける被覆長さL(1)は
図5(A)におけるフットカバー200の上端から開口部OPの上端までの被覆長さL(1)に対応し、
図4(B)におけるフットカバー200の爪先部Aにおける被覆長さL(2)は
図5(A)におけるフットカバー200の下端から開口部OPの下端までの被覆長さL(2)に対応するが、
図4が着用状態を示す斜視図であって
図5が仮想的な着用状態を示す平面図(上面図、底面図)であるために、厳密には
図4における被覆長さL(2)が
図5(A)における長さL(2)に完全に一致するとは限らない。
【0028】
さらに、
図1に示すフットカバー100および
図4(B)に示すフットカバー200の踵部Cにおける被覆高さH(1)は
図2(A)に示すフットカバー100および
図6(A)に示すフットカバー200の下端から開口部OPの下端までの被覆長さL(1)に対応し、
図4(A)に示すフットカバー200の踵部Cにおける被覆高さH(2)は
図5(A)に示すフットカバー200の下端から開口部OPの下端までの被覆長さL(2)に対応するが、
図4が着用状態を示す斜視図であって
図5が仮想的な着用状態を示す平面図(上面図、底面図)であるために、厳密には
図4における被覆高さH(2)が
図5(A)における被覆長さL(2)に完全に一致するとは限らない。
【0029】
さらに、
図3および
図6はフットカバーの展開図であっていわゆる型紙を示すために、
図3と
図7とに示すLL(1)および
図7に示すLL(2)は、それぞれ、これらの2図以外に示す被覆長さL(1)および被覆長さL(2)に対応するが、縫合前後で平面形状から立体形状になって寸法が変化するために、それぞれ一致しない(L(1)≠LL(1)、L(2)≠LL(2)、ただし、L(1)<L(2)かつLL(1)<LL(2))。
【0030】
さらに、上述したように、これらのフットカバー100およびフットカバー200は、伸縮性編地で形成されているために生地(編地)が柔らかく伸び縮みするために、左右対称および上下対称が数学的な完全対称に限定して理解することは適切ではない。このようなフットカバーが属する技術の分野における通常の知識を有する当業者にとって、フットカバーの形状を数学的に限定する場合には「略」、「等」を付すことにより、より現実に即したものになることは技術常識であって、かつ、このように「略」、「等」を付しても発明を十分に理解できるものであることも技術常識であって、「略」、「等」を付すことにより明確性を欠くことにはならない。
<第1の実施の形態>
以下において、本発明の第1の実施の形態に係るフットカバー100について、
図1~
図3を参照して詳しく説明する。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ事項は第2の実施の形態に係るフットカバー200について繰り返して説明しないために、以下の第1の実施の形態には第2の実施の形態を説明する部分を含む。
【0031】
図1~
図3に示すように、このフットカバー100において、特徴的であるのは、爪先部Aにはこの爪先部Aを補強する補強部140が設けられるとともに、開口部OPにおける爪先側の一部に設けられた開口部OPの周縁に沿った形状の滑り止め部130が設けられている。滑り止め部130は、これらの図には一例として、シリコーン樹脂製の細幅テープを図示しているが、このような素材、形状および位置に限定されるものではなく、たとえば、細幅以外の形状であっても構わないし(帯状等)シリコーン樹脂をドット状に貼付したものであっても構わない。また、補強部140は、これらの図には一例として、足指先を(左右方向から包むのではなく)表裏方向に覆う(包む)、足肌に直接触れる面を備えた伸縮性編地を図示しているが、このような素材、形状および位置に限定されるものではない。
【0032】
そして、
図2に示すように、爪先部Aまたは踵部Cを上方にして左右共用のフットカバー100の左右いずれか一方を平面に載置した場合に、フットカバー100は開口部OP(の位置)を含めて左右上下に略対称(すなわち点対称)で(特に留意すべきはフットカバー100の上端から開口部OPの上端までの長さL(1)とフットカバー100の下端から開口部OPの下端までの長さL(1)とが(略)同じ)、爪先側の補強部140および爪先側の滑り止め部130を爪先側(
図3に示す上部104U側)とは上下逆側の踵側(
図3に示す下部104D側)にも踵側の補強部140および踵側の滑り止め部130として備えている。
図2および
図3に示すように、爪先側の補強部140と踵側の補強部140とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成されている。さらに、爪先側の滑り止め部130と踵側の滑り止め部130とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成されている。
【0033】
このような構成としたフットカバー100は、爪先側(
図3に示す上部104U側)の補強部140および爪先側の滑り止め部130が着用者の爪先方向になるように着用者が
着用しても着用者の踵方向になるように着用者が着用しても、フットカバー100による足甲の被覆範囲が(略)同じであり(履き深さが(略)同じであり)、前後兼用可能である。なお、
図2(B)および
図3(A)に示すように、このフットカバー100の足底部Dおよびこの足底部Dを形成する第2の伸縮性編地102は、上述した通り上下左右対称であることに加えて、爪先側から踵側へ亘る土踏まずの両側部分は、互いに接近する方向へ緩やかに凹んだ円弧状(ピーナッツ状)に形成されている。このような形状により、足底部Dを足Fの足裏に十分に密着(フィット)させてずれにくく脱げにくくするとともに、左右共用を可能、かつ、前後(先後)兼用を可能にしている。なお、このフットカバー100の足底部Dおよびこの足底部Dを形成する第2の伸縮性編地102は、このような形状に限定されるものではなく、足Fの形状に合わせて、かつ、上下左右対称である形状であれば他の形状であっても構わない。
【0034】
このような特徴を備えたフットカバー100は、爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)とともに歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できる。
【0035】
薄手のフットカバーを繰り返し履いたり洗濯したりすることにより薄くなり破れやすい欠点を有し、多くのフットカバーでは左右共用(左足用と右足用とを区別することなく)であるために、右足に着用していたフットカバーの爪先側が破れると(穴が開くと)それを廃棄して同じ品番の未使用のフットカバーの左右いずれかを右足に着用すれば良いものの、爪先側が破れた(穴が開いた)フットカバーを廃棄したり、未使用の片方が余ったりしてしまうことになる。しかしながら、このフットカバー100は、爪先側が破れたり薄くなった(穴が開いたり穴が開けかけたりしている)左右一方または左右両方のフットカバー100の前後(先後、爪先/踵)を逆にして(爪先側と踵側とを入れ替えて)着用すると、上述した構成により、以下に示す作用効果を発現できる。上述したように、爪先部Aまたは踵部Cを上方にしてフットカバーを平面に載置した場合に、フットカバー100は開口部OPを含めて左右上下に略対称(すなわち点対称)で、爪先側の補強部140および爪先側の滑り止め部130を爪先側とは上下逆側の踵側にも踵側の補強部140および踵側の滑り止め部130として備えている。
図2および
図3に示すように、爪先側の補強部140と踵側の補強部140とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成されている。さらに、爪先側の滑り止め部130と踵側の滑り止め部130とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成されている。このため、爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)とともに歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できる。すなわち、爪先側と踵側とを入れ替えて履き替えても、一例であるが上下方向で爪先を包み込んだ伸縮性編地で形成された補強部140は爪先部Aを補強し続けることができ、一例であるがシリコーン樹脂製の細幅テープで形成された滑り止め部130は踵における滑り止め効果が最も発現できる位置(たとえば距骨下関節近傍の高さ位置)で踵からフットカバー100がずれることを抑制し続けることができる(このとき爪先として使用していた際に空いた穴は滑り止め部130によるフットカバー100のずれの抑制に影響を与えない)。特に、フットカバー100においては、開口部OPの爪先部A側にも踵部C側にも開口部OPの周縁に沿った(開口部OPの全周ではない)形状の滑り止め部130が存在するために、開口部OPの全周に滑り止め部130が設けられているわけではないので締め付けすぎることなく、いずれか一方にしか存在しないフットカバーよりもずれにくく脱げにくい。その結果、主に石油を原料とする合成樹脂から製造される合成繊維を含むフットカバーを廃棄しないことに繋がり、国際的な取り決めであるSDGsにとっても有益になる。
【0036】
また、開口部OPの全周縁(の肌側)に、開口部OPの周縁に沿った形状の滑り止めテープ120(ここでは伸縮性細幅編地であるがその他の素材およびその他の形状であって
も構わない)を備え、この滑り止めテープ120のさらに肌側にテープ状の滑り止め部130を設けることも好ましい。このような滑り止めテープ120を開口部OPの全周縁(の肌側)に設けると、フットカバー100を履くときに開口部OPが(滑り止めテープ120の素材が伸縮性細幅編地である場合において特に)容易に大きく広げることができフットカバー100を着用しやすく、フットカバー100の着用後はフットカバー100が足Fからずれにくく脱げにくくなる。また、このような開口部OPの全周に設ける滑り止めテープ120の素材としてシリコーン樹脂等でない素材を採用することにより、足肌(皮膚)への影響も少なくできる。なお、この滑り止めテープ120は、開口部OPの全周縁の肌側(内側)ではなく靴側(外側)に備えるようにして、足肌に滑り止めテープ120が直接触れないようにしても構わない。
【0037】
なお、第1の伸縮性編地104と第2の伸縮性編地102とは底縫合線110にて縫合されているが、これに代えて、第1の伸縮性編地104の生地縁と第2の伸縮性編地102の生地縁とを突き合わせて接着テープで接合して、無縫製のフットカバーとすることも好ましい。ここで、縫合以外の接合(ここでは接着)には、熱圧着によるもの、熱溶着によるもの、熱融着によるもの等を含み、代表的には熱融着接着剤が片面に塗布された接着テープ(たとえば踵接着テープ)が用いられる。
【0038】
また、このフットカバー100は、側辺部B、踵部Cおよび爪先部Aを形成する第1の伸縮性編地104と、足底部Dを形成する第2の伸縮性編地102とが接合されて立体的な形状に形成されている。これらの第1の伸縮性編地104および第2の伸縮性編地102として、生地縁が解けてこない端縁処理が不要な生地(いわゆるきりっぱなし生地、フリーカット生地)で構成することも好ましい。
【0039】
このフットカバー100は、
図3の展開図(型紙に略同じ)に示すように、爪先部Aと側辺部Bと踵部Cとが(すなわちこのフットカバー100の足底部D以外が)所定の周縁形状で開口部OPを備えた1枚の生地である第1の伸縮性編地104により構成され、足底部Dが所定の周縁形状(概略的には足裏形状に略等しい形状)を備えた1枚の生地である第2の伸縮性編地102により構成されている。すなわち、足底部D以外が第1の伸縮性編地104により構成され、足底部Dが第2の伸縮性編地102により構成されている。なお、生地は2枚でなく3枚(以上)であっても構わない。
【0040】
そして、
図3の両矢示で示すように2枚の伸縮性性編地を接近させて、2枚の伸縮性性編地が底縫合線110で縫合されてフットカバー100が立体的な形状を備える。なお、
図3における2枚の型紙において4箇所ずつ設けられた小さな三角形状の突起は接合(縫合、接着)時の目印に過ぎない。
【0041】
さらに、足底部Dにおいて、足Fが接する側と反対側(パンプスを履いたときにパンプスの内底に接する側)には、シリコーン樹脂等の薄いシートで形成された足底部滑り止め(図示せず)を設けることも好ましい。これにより、パンプスの内底との密着性を高めてパンプス内におけるフットカバー100の位置がずれることを防止できる。なお、この足底部滑り止めは、本発明に係るフットカバーにおいて必須の構成ではない。
【0042】
なお、このフットカバー100において、このフットカバー100を形成する、足底部D以外を形成する第1の伸縮性編地104、足底部Dを形成する第2の伸縮性編地102と、補強部140を構成する伸縮性編地、および、滑り止めテープ120を構成する伸縮性細幅編地とが同じ共生地で形成されていても構わない。すなわち、シリコーン樹脂製の細幅テープを一例に挙げた滑り止め部130および底縫合線110を形成する縫糸(またはこのフットカバー100を無縫製とするための接着テープ)を除いて、このフットカバー100は、全て同じ伸縮性編地で形成されていても構わない。ここで、このフットカバー100において、滑り止めテープ120を構成する伸縮性細幅編地は、熱プレス装置により加熱することにより伸縮性細幅編地に塗布された接着剤が溶融して第1の伸縮性編地104の開口部OPの周縁に熱接着して接合されている。
【0043】
また、フットカバー100において、このフットカバー100を形成する足底部D以外を形成する第1の伸縮性編地104、足底部Dを形成する第2の伸縮性編地102、補強部140を構成する伸縮性編地、および、滑り止めテープ120を構成する伸縮性細幅編
地とが、上述したように全て同じ共生地でなく、少なくとも1つが異なる編地で形成されていても構わない。
【0044】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバー100によると、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できるフットカバーを提供することができる。
<第2の実施の形態>
以下において、本発明の第2の実施の形態に係るフットカバー200について
図4~
図7を参照して詳しく説明する。フットカバー100とフットカバー200との相違点は、フットカバー100の第1の伸縮性編地104が、フットカバー200においては第1の伸縮性編地204に置換されている点である。この相違点を中心にフットカバー200について説明するが、この相違点以外は第1の実施の形態と同じであるために、上述した説明と重複する部分についてはこの第2の実施の形態においては繰り返して説明しない。
【0045】
そして、
図5および
図6に示すように、爪先部Aまたは踵部Cを上方にして左右共用のフットカバー200の左右いずれか一方を平面に載置した場合に、フットカバー200は開口部OP(の位置)を含めないと左右上下に略対称で、フットカバーの上端から開口部OPの上端までの長さL(1)とフットカバーの下端から開口部OPの下端までの長さL(2)とが異なるために開口部OPを含めると左右に略対称で上下に非対称で、爪先側の補強部140および爪先側の滑り止め部130を爪先側(
図7に示す上部204U側)とは上下逆側の踵側(
図3に示す下部204D側)にも踵側の補強部140および踵側の滑り止め部130として備えている。
図5~
図7に示すように、爪先側の補強部140と踵側の補強部140とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成されている。さらに、爪先側の滑り止め部130と踵側の滑り止め部130とは形状が上下略対称であることに加えて同じ素材で構成されている。すなわち、本実施の形態に係るフットカバー200はフットカバー100と異なり、
図4~
図7に示すようにL(1)≠L(2)のため開口部OP(の位置)を含めるとフットカバー200は上下略対称でなく、L(1)≠L(2)であっても補強部140の形状および位置は左右上下略対称であって、L(1)≠L(2)のため滑り止め部130の位置は上下略対称でない。
【0046】
このような構成としたフットカバー200は、爪先側の補強部140および爪先側の滑り止め部130が着用者の爪先方向になるように着用者が着用した場合と着用者の踵方向になるように着用者が着用した場合とで、フットカバーにより足甲の被覆範囲を異ならせて、履き深さ変更可能に前後兼用可能である。
【0047】
このような特徴を備えたフットカバー200は、爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴の存在に関係なく爪先側を踵側に替えて履いても)、靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)とともに歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できる。
【0048】
上述した第1の実施の形態に係る左右共用のフットカバー100と同じく、左右共用のフットカバー200においても、爪先側が破れたり薄くなった(穴が開いたり穴が開けかけたりしている)一方または両方のフットカバー200の前後(先後、爪先/踵)を逆にして(爪先側と踵側とを入れ替えて)着用すると、上述した構成により、以下に示す作用効果を発現できる。上述したように、爪先部Aまたは踵部Cを上方にしてフットカバーを平面に載置した場合に、フットカバー200は開口部OPを含めないと左右上下に略対称で、フットカバーの上端から開口部OPの上端までの長さL(1)とフットカバーの下端から開口部OPの下端までの長さL(2)とが異なるために開口部OPを含めると左右に略対称で上下に非対称で、爪先側の補強部140および爪先側の滑り止め部130を爪先側とは上下逆側の踵側にも踵側の補強部140および踵側の滑り止め部130として備えている。
図5~
図7に示すように、爪先側の補強部140と踵側の補強部140とは形状および位置が左右上下略対称であることに加えて同じ素材で構成されている。さらに、爪
先側の滑り止め部130と踵側の滑り止め部130とは形状が上下略対称であることに加えて同じ素材で構成されている。このため、爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、爪先履き深さが変更されてしまうものの、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できる。すなわち、爪先側と踵側とを入れ替えて履き替えても、一例であるが上下方向で爪先を包み込んだ伸縮性編地で形成された補強部140は爪先部Aを補強し続けることができ、一例であるがシリコーン樹脂製の細幅テープで形成された滑り止め部130は踵における滑り止め効果が最も発現できる位置(たとえば距骨下関節近傍の高さ位置)で踵からフットカバー100がずれることを抑制し続けることができる(このとき爪先として使用していた際に空いた穴が存在するととしても滑り止め部130によるフットカバー200のずれの抑制に影響を与えない)。なお、フットカバー100と異なり、フットカバー200については、
図4(B)および
図6に示すように爪先深履きした場合と比較して
図4(A)および
図5に示すように爪先浅履きした場合には踵側が深履きになるものの、そのような爪先浅履きであっても爪先深履きであっても滑り止め部130は踵における滑り止め効果が最も発現できる位置(たとえば距骨下関節近傍の高さ位置)になるように、両方の滑り止め部130の位置を(開口部OPの形状(
図7における開口部OPの上下方向の長さであって結果的にLL(2))を変更する等を含めて)決定することが好ましい。また、フットカバー200においてもフットカバー100と同じく、開口部OPの爪先部A側にも踵部C側にも開口部OPの周縁に沿った(開口部OPの全周ではない)形状の滑り止め部130が存在するために、開口部OPの全周に滑り止め部130が設けられているわけではないので締め付けすぎることなく、いずれか一方にしか存在しないフットカバーよりもずれにくく脱げにくい。その結果、主に石油を原料とする合成樹脂から製造される合成繊維を含むフットカバーを廃棄しないことに繋がり、国際的な取り決めであるSDGsにとっても有益になる。
【0049】
さらに、第1の実施の形態に係るフットカバー100とは異なり、本実施の形態に係るフットカバー200においては、爪先側が破れたり薄くなった(穴が開いたり穴が開けかけたりしている)一方または両方のフットカバー200の前後(先後、爪先/踵)を逆にして(爪先側と踵側とを入れ替えて)着用することとは関係なく、爪先側と踵側とを入れ替えて履くと、爪先履き深さを変更することができる。
図4(A)および
図5に示す爪先浅履き状態と
図4(B)および
図6に示す爪先深履き状態とを、左右共用の1組のフットカバー200で切り替えて使用することができる。すなわち、パンプス等の履き口である甲部分が大きく開いている靴を履く場合には爪先浅履き状態を採用して、爪先深履き状態を採用すると履き口である甲部分が大きく開いていない靴(履口の狭い靴)を履く場合または爪先から足甲にかけての被覆度を増加させたりルームソックスとして着用したりする場合に好都合である。
【0050】
また、上述した第1の実施の形態と同じく、開口部OPの全周縁に開口部OPの周縁に沿った形状の滑り止めテープ120(ここでは伸縮性細幅編地であるがその他の素材およびその他の形状であっても構わない)を備え、この滑り止めテープ120のさらに肌側にテープ状の滑り止め部130を設けることも好ましい。
【0051】
このフットカバー100は、
図7の展開図(型紙に略同じ)に示すように、爪先部Aと側辺部Bと踵部Cとが(すなわちこのフットカバー100の足底部D以外が)所定の周縁形状で開口部OPを備えた1枚の生地である第1の伸縮性編地204により構成され、足底部Dが所定の周縁形状(概略的には足裏形状に略等しい形状)を備えた1枚の生地である第2の伸縮性編地102により構成されている。すなわち、足底部D以外が第1の伸縮性編地204により構成され、足底部Dが第2の伸縮性編地102により構成されている。なお、生地は2枚でなく3枚(以上)であっても構わない。
【0052】
そして、
図7の両矢示で示すように2枚の伸縮性性編地を接近させて、2枚の伸縮性性編地が底縫合線110で縫合されてフットカバー200が立体的な形状を備える。なお、
図7における2枚の型紙において4箇所ずつ設けられた小さな三角形状の突起は接合(縫合、接着)時の目印に過ぎない。
【0053】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバー200によると、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履くと(先端の穴の存在に関わらず爪先側を踵側に替えて履くと)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制でき、かつ、フットカバーにより足甲の被覆範囲を異ならせて履き深さ変更可能なフットカバーを提供することができる。
<2つの実施の形態の作用効果>
以上のようにして、上述した第1の実施の形態に係るフットカバーによると、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制できるフットカバーを提供することができる。また、上述した第2の実施の形態に係るフットカバーによると、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履くと(先端の穴の存在に関わらず爪先側を踵側に替えて履くと)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制でき、かつ、フットカバーにより足甲の被覆範囲を異ならせて履き深さ変更可能なフットカバーを提供することができる。特に、第1の実施の形態に係るフットカバーであっても第2の実施の形態に係るフットカバーであっても、爪先側と踵側とを入れ替えて着用しても、すなわち、フットカバーの先後(前後)を入れ替えて着用しても入れ替える前後で何ら変わりなくフットカバーとして同じ機能を発現(第2の実施の形態に係るフットカバーにおいては爪先履き深さを変更可能な機能をさらに発現)することが可能である点で極めて好ましい。
【0054】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、素足で履くフットカバーに好適であり、爪先側と踵側とを入れ替えて履いても(限定されるものではないが先端に穴が開いた爪先側を踵側に替えて履いても)、靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)とともに歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制でき、また、フットカバーの爪先側と踵側とを入れ替えて履くと(先端の穴の存在に関わらず爪先側を踵側に替えて履くと)、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを抑制でき、かつ、フットカバーにより足甲の被覆範囲を異ならせて履き深さ変更可能である点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0056】
A 爪先部
B 側辺部
C 踵部
D 足底部
F 足
OP 開口部
100 (第1の実施の形態に係る)フットカバー
102 第2の伸縮性編地(足底部Dを構成)
104 第1の伸縮性編地(爪先部A、側辺部Bおよび踵部Cを構成)
110 底縫合線
120 滑り止めテープ(開口部OP全周上縁に設けられた伸縮性細幅生地)
130 滑り止め部(距骨下関節近傍の高さ位置に設けられたシリコーン樹脂製の細幅テープ)
140 補強部(足指先を表裏方向に覆う伸縮性生地)
200 (第2の実施の形態に係る)フットカバー
204 第1の伸縮性編地(爪先部A、側辺部Bおよび踵部Cを構成)