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2025-31475GNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法
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  • -GNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031475
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】GNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/01 20240101AFI20250228BHJP
【FI】
G01V1/01 200
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015937
(22)【出願日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】202311078045.6
(32)【優先日】2023-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519274219
【氏名又は名称】太原理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】馮 増朝
(72)【発明者】
【氏名】沈 永星
(72)【発明者】
【氏名】趙 陽升
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105MM03
2G105NN02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、地震短期切迫予報の技術分野に関し、具体的には、GNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法に関する。
【解決手段】本発明は、異なるエリアの測定ステーションの変位協調係数を利用することにより、地震変形の前兆をより感度よく捉え、地震予測の正確性を向上させることができる。ターゲットエリアの絶対変形場情報を構築し、異常変形エリアの位置から地震の震源位置を判定し、さらに、異常エリア内のGNSS測定ステーションの変位シーケンスを利用し、多点変位協調係数計算式に基づいて、異常エリア内の毎日の変位協調係数の変化状況を算出し、変位協調係数の変化特徴と定量閾値分析を利用して、地震発生の時間を判断する。
これにより、地震が発生する位置及び時間についての短期切迫予報を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法であって、
ターゲットエリア内のn個のGNSS測定ステーションに対して、GNSS精密単独測位技術を利用して処理を行い、n個のGNSS測定ステーションの東向き変位シーケンスと北向き変位シーケンスとを取得し、地震短期切迫予報の原始データソースとするステップS1と、
過去のGNSS変位情報と汎化コモンモード誤差法とに基づいて原始データソースを処理し、ノイズが過大なGNSS測定ステーションを削除し、地震短期切迫予報の予測データソースを確定するステップS2と、
補間法に基づいて、ターゲットエリア内に不均一に分布している予測データソース計算点を均一に分布する計算点に変換し、ターゲットエリアの絶対変形場情報を構築するステップS3と、
毎日のターゲットエリアの絶対変形場情報を算出し、最大絶対変形値、最小絶対変形値及び平均絶対変形値に基づいて、時間スケール及び空間スケールにおいてターゲットエリア内の異常変形エリアを識別するステップS4と、
異常エリア内のGNSS測定ステーションの変位シーケンスを用いて、多点変位協調係数計算式に基づいて、異常エリア内の毎日の変位協調係数DCCを算出するステップS5と、
異常エリアの変位協調係数の変化特性及び閾値分析に基づいて、変位協調係数の急増現象が発生し、且つ、その値が閾値を超えた場合に、地震の発生時間と場所範囲について短期切迫予報するステップS6と、
を含むことを特徴とするGNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法。
【請求項2】
前記ステップS1におけるターゲットエリアの長さ及び幅は300km~500kmである
ことを特徴とする請求項1に記載のGNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法。
【請求項3】
前記ステップS1におけるターゲットエリア内のn個のGNSS測定ステーションは、隣接する測定ステーションの間隔が10~50kmであり、対応するGNSS測定ステーションの変位時間シーケンス長さが2年以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のGNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法。
【請求項4】
前記ステップS5における毎日の多点変位協調係数DCCの計算式は、
であり、
ことを特徴とする請求項1に記載のGNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法。
【請求項5】
前記S6における閾値定量分析は、異なる種類の地震について、DCCの閾値範囲が[0.9±0.2]である
ことを特徴とする請求項1に記載のGNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震短期切迫予報の技術分野に関し、具体的には、GNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震予測は未だ解決されていない重要な科学的課題であり、特に短期切迫予報は現在世界的な難題となっている。数十年の模索を経て、世界中の地震専門家は、地質構造、地殻運動などを研究することにより、地震に対する地震計測学、地殻変動学、電磁気学、地下流体学、補助観測などの学科と観測システムを構築した。地震の形成において、特に地震発生前に、地震範囲内のエリアは岩層内部の複雑な応力の作用を受けて、局所化現象が現れて微小な裂け目が発生し、これによって地球表面の明らかな不均一な変形が引き起こされる。GNSS変位データを利用し、地球の大地変形を非接触であらゆる天候で観測することを実現することができる。したがって、GNSS変位データを利用して地震前兆異常認識及び地震発生の短期切迫予報方法を提供することにより、地震予報のコストの低減と地震予報の正確性の向上を図ることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題を解決するために、GNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかるGNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法は、具体的には、
ターゲットエリア内のn個のGNSS測定ステーションに対して、GNSS精密単独測位技術を利用して処理を行い、n個のGNSS測定ステーションの東向き変位シーケンスと北向き変位シーケンスとを取得し、地震短期切迫予報の原始データソースとするステップS1と、
過去のGNSS変位情報と汎化コモンモード誤差法とに基づいて原始データソースを処理し、ノイズが過大なGNSS測定ステーションを削除し、地震短期切迫予報の予測データソースを確定するステップS2と、
補間法に基づいて、ターゲットエリア内に不均一に分布している予測データソース計算点を均一に分布する計算点に変換し、ターゲットエリアの絶対変形場情報を構築するステップS3と、
毎日のターゲットエリアの絶対変形場情報を算出し、最大絶対変形値、最小絶対変形値及び平均絶対変形値に基づいて、時間スケール及び空間スケールにおいてターゲットエリア内の異常変形エリアを識別するステップS4と、
異常エリア内のGNSS測定ステーションの変位シーケンスを用いて、多点変位協調係数計算式に基づいて、異常エリア内の毎日の変位協調係数DCCを算出するステップS5と、
異常エリアの変位協調係数の変化特性及び閾値分析に基づいて、変位協調係数の急増現象が発生し、且つ、その値が閾値を超えた場合に、地震の発生時間と場所範囲について短期切迫予報するステップS6と、を含む。
【0005】
さらに、前記ステップS1におけるターゲットエリアの長さ及び幅は300km~500kmである。
【0006】
さらに、前記ステップS1におけるターゲットエリア内のn個のGNSS測定ステーションは、隣接する測定ステーションの間隔が10~50kmであり、対応するGNSS測定ステーションの変位時間シーケンス長さが2年以上である。
【0007】
さらに、前記ステップS5における毎日の多点変位協調係数DCCの計算式は、以下のようになる。
【0008】
【0009】
さらに、前記S6における閾値分析は、異なる種類の地震について、DCCの閾値範囲が[0.9±0.2]である。
【0010】
本発明の技術案を適用すれば、以下の有益効果が得られる。
【0011】
本発明は、GNSS変位情報に基づいて地震前兆異常を識別し、地震を予測する方法を提案し、異なるエリアの測定ステーションの変位協調係数により、地震変形の前兆をより感度よく捉え、地震予測の正確性を向上させることができる。ターゲットエリアの絶対変形場情報を構築し、異常変形エリアの位置から地震の震源位置を判定し、さらに、異常エリア内のGNSS測定ステーションの変位シーケンスを利用し、多点変位協調係数計算式に基づいて、異常エリア内の毎日の変位協調係数の変化状況を算出し、変位協調係数の変化特徴と定量閾値分析を利用して、地震発生の時間を判断することにより、地震の発生時間と場所範囲について短期切迫予報する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかるGNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本実施形態にかかるGNSS変位情報に基づく地震前兆異常識別及び地震短期切迫予報方法は、
ターゲットエリア内のn個のGNSS測定ステーションに対して、GNSS精密単独測位技術を利用して処理を行い、n個のGNSS測定ステーションの東向き変位シーケンスと北向き変位シーケンスとを取得し、地震短期切迫予報の原始データソースとするステップS1と、
過去のGNSS変位情報と汎化コモンモード誤差法とに基づいて原始データソースを処理し、ノイズが過大なGNSS測定ステーションを削除し、地震短期切迫予報の予測データソースを確定するステップS2と、
補間法に基づいて、ターゲットエリア内に不均一に分布している予測データソース計算点を均一に分布する計算点に変換し、ターゲットエリアの絶対変形場情報を構築するステップS3と、
毎日のターゲットエリアの絶対変形場情報を算出し、最大絶対変形値、最小絶対変形値及び平均絶対変形値に基づいて、時間スケール及び空間スケールにおいてターゲットエリア内の異常変形エリアを識別するステップS4と、
異常エリア内のGNSS測定ステーションの変位シーケンスを用いて、多点変位協調係数計算式に基づいて、異常エリア内の毎日の変位協調係数DCCを算出するステップS5と、
異常エリアの変位協調係数の変化特性及び閾値分析に基づいて、変位協調係数の急増現象が発生し、且つ、その値が閾値を超えた場合に、地震の発生時間と場所範囲について短期切迫予報するステップS6と、を含む。
【0014】
本実施例のステップS1において、既存の地震及び地質資料を分析し、その上で、地震予報の研究ターゲットエリアを特定し、該エリアの長さ及び幅は通常300km~600kmである。同時に、ターゲットエリア内のn個のGNSSステーションは、隣接する測定ステーションの間隔が10~50kmである。対応するGNSS測定ステーションの変位時間シーケンス長さは2年以上である。
【0015】
ステップS2において、ターゲットエリアの既存の地震、地質情報及び過去のGNSS変位情報に基づいて、コモンモード誤差法を用いて原始変位を処理し、地震短期切迫予報の予測データソースを確定する。
【0016】
ステップS3において、ステップS2において確定された地震短期切迫予報の予測データソースに基づいて、毎日の測定ステーションの東向き変位及び北向き変位を用いて測定ステーションの絶対変形値を算出してから、補間法によりターゲットエリアの絶対変形場情報を構築する。
【0017】
ステップS4において、ターゲットエリアの絶対変形場情報をリアルタイムに分析し、地震が発生していない場合に、絶対変形場のバックグラウンド値を確定する。さらに、ターゲットエリア内の異なる位置の最大絶対変形値、最小絶対変形値及び平均絶対変形値に基づいて、異常変形エリアを特定する。地震変形異常エリアの絶対変形値は通常、絶対変形場バックグラウンド値の300%~500%よりも大きい。
【0018】
前記ステップS5において、毎日の多点変位協調係数DCCにかかる計算式は、以下のようになる。
【0019】
【0020】
異常エリア内の毎日の多点変位協調係数の変化状況を取得する。
【0021】
ステップS6において、異常エリア内の毎日の多点変位協調係数をリアルタイムに観測して分析する。異常エリア内で変形が著しくない場合、変位協調係数は小幅で滑らかに変動するように変化し、変位協調係数値は通常0.01~0.3の間である。地震の発生が差し迫って、異常エリア内の変形が著しい場合、変位協調係数は急増する。地震発生前の前兆閾値は、大量の地震事例の統計的計算によれば、[0.9±0.2]である。GNSS情報を利用して、測定ステーションの変位変化をリアルタイムに観測し、測定ステーションの変位協調係数に急増現象が発生し且つ閾値が超えられた場合に、地震の短期切迫予測を行う。
【0022】
本発明は、GNSS変位情報に基づいて地震前兆異常を識別し、地震を予測する方法であり、異なるエリアの測定ステーションの変位協調係数を利用することにより、地震変形の前兆をより感度よく捉え、地震予測の正確性を向上させることができる。絶対変形場情報を構築し、異常変形エリアの位置から地震の震源位置を判定し、さらに、異常エリア内のGNSS測定ステーションの変位シーケンスを利用し、多点変位協調係数計算式に基づいて、異常エリア内の毎日の変位協調係数の変化状況を算出し、変位協調係数の変化特徴と定量閾値分析を利用して、地震についての短期切迫予報を実現する。
図1