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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031522
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085144
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2023-0110629
(32)【優先日】2023-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ハン ソル
(72)【発明者】
【氏名】カン、スン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミン ゴー
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AE01
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC40
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】積層型電子部品の内部で発生する熱を効果的に放出して積層型電子部品の信頼性を改善する。
【解決手段】
本発明の一実施形態は、第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、及び上記容量形成部の上記第1方向に向かい合う両面上に配置されるカバー部を含む本体及び上記本体の外部に配置されて上記内部電極と連結される外部電極を含み、上記カバー部は、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有する第1誘電物質とCu、W、Ag、及びZnのうち1つ以上を含む第1金属を含み、上記カバー部の少なくとも一部の領域において、上記第1金属含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して2.0モル以上9.0モル以下である積層型電子部品を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、及び前記容量形成部の前記第1方向に向かい合う両面上に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体の外部に配置されて、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記カバー部は、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有する第1誘電物質とCu、W、Ag及びZnのうち1つ以上を含む第1金属を含み、
前記カバー部の少なくとも一部の領域において、前記第1金属の含有量は、Bサイト元素100モルに対して2.0モル以上9.0モル以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1金属はCuである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記カバー部の少なくとも一部の領域において、前記第1金属の含有量は、前記Bサイト元素100モルに対して6.0モル以下である、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記カバー部は、前記第1方向における前記Bサイト元素100モルに対する前記第1金属の含有量の標準偏差が3.0モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1誘電物質は、複数の誘電体結晶粒及び隣接する誘電体結晶粒間に配置される結晶粒界を含み、
前記第1金属の少なくとも一部は、前記複数の誘電体結晶粒に含まれる、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第1誘電物質は、複数の誘電体結晶粒及び隣接する誘電体結晶粒間に配置される結晶粒界を含み、
前記第1金属の少なくとも一部は、前記結晶粒界に存在する、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層は、前記第1誘電物質を含み、
Aサイト元素はCaを含み、
前記Bサイト元素はZrを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記第1誘電物質は、(Ca1-xSr)(Zr1-yTi)O(前記xの範囲は0≦x≦0.5、前記yの範囲は0≦y≦0.5)である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層は、Mnを含む第1副成分を含み、
前記誘電体層の少なくとも一部の領域において、前記第1副成分の含有量は、前記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層は、Yを含む第2副成分を含み、
前記誘電体層の少なくとも一部の領域において、前記第2副成分の含有量は、前記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層はSiを含む第3副成分を含み、
前記誘電体層の少なくとも一部の領域において、前記第3副成分の含有量は、前記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記誘電体層は前記第1金属を含まない、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記誘電体層は前記第1金属を含み、
前記誘電体層に含まれた第1金属の濃度は、前記カバー部に含まれた第1金属の濃度よりも低い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記本体は、前記第1方向に向かい合う第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面、前記第1面から前記第4面と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面を含み、
前記外部電極は前記第3面及び前記第4面に配置され、
前記積層型電子部品の前記第2方向の最大大きさは3.2mm以上であり、前記第3方向の最大大きさは1.6mm以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
最近、電気自動車市場の拡大により、自動車高電圧バッテリ充電器(OBC)及びDC/DCコンバータなどの回路内における作動電圧が250V以上の高温及び高圧用積層セラミックキャパシタの使用が拡大している。
【0004】
上記水準の高温及び高圧環境では、積層セラミックキャパシタの誘電損失及び内部電極と外部電極に含まれた金属抵抗による自己発熱現象が現れるおそれがある。このような発熱現象は、誘電体層の劣化を加速させ、積層セラミックキャパシタの寿命を短縮させるため、積層セラミックキャパシタの放熱改善のための研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の様々な目的の一つは、積層型電子部品の内部で発生する熱を効果的に放出して積層型電子部品の信頼性を改善することである。
【0006】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、及び上記容量形成部の上記第1方向に向かい合う両面上に配置されるカバー部を含む本体及び上記本体の外部に配置されて、上記内部電極と連結される外部電極を含み、上記カバー部は、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有する第1誘電物質とCu、W、Ag、及びZnのうち1つ以上を含む第1金属を含み、上記カバー部の少なくとも一部の領域において、上記第1金属含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して2.0モル以上9.0モル以下の積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品の内部で発生する熱を効果的に放出して積層型電子部品の信頼性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
図2図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
図3図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
図4】本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
図5図2のK1領域拡大図である。
図6】積層型電子部品の発熱評価方法を概略的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0011】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0012】
図面において、第1方向は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0013】
[積層型電子部品]
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、図2は、図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示した断面図であり、図3は、図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示した断面図であり、図4は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、図5は、図2のK1領域拡大図である。
【0014】
以下、図1図5を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について説明する。また、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という)について説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、積層セラミックキャパシタに対する説明と矛盾しない限り、様々な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0015】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Ac、及びカバー部112、113を含む本体110と外部電極131、132を含むことができる。
【0016】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれた誘電物質粉末の収縮やエッジ部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0017】
本体110は、第1方向に向かい合う第1面1及び第2面2、上記第1面1、及び第2面2と連結され、第2方向に向かい合う第3面3及び第4面4、第1面1から第4面4と連結され、第3方向に向かい合う第5面5、及び第6面6を有することができる。
【0018】
本体110は、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Ac、及び容量形成部Acの第1方向に向かい合う両面上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0019】
容量形成部Acは、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで積層型電子部品100の容量を形成することができる。カバー部112、113は、容量形成部Acの第1方向に向かい合う両面上にそれぞれ配置される第1カバー部112及び第2カバー部113を含むことができる。カバー部112、113は、基本的に物理的または化学的ストレスによる容量形成部Acの損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、カバー部112、113は、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有する第1誘電物質と第1金属を含むことができる。上記Aサイト元素は、例えば、Caを含むことができ、上記Bサイト元素は、例えばZrを含むことができる。上記第1誘電物質は、例えば、(Ca1-xSr)(Zr1-yTi)O(上記xの範囲は0≦x≦0.5、上記yの範囲は0≦y≦0.5)であることができる。上記第1誘電物質に対する詳細な説明は後述する。
【0021】
上述したように、高温及び高圧環境で積層型電子部品100の自己発熱現象が発生する可能性があり、このような発熱現象は誘電体層111の劣化を加速させ、積層型電子部品100の寿命を短縮させるおそれがある。積層型電子部品100の内部で発生した熱は、上記第1誘電物質を主成分とする誘電体層111とカバー部112、113よりも比較的熱伝導率の高い金属を主成分とする内部電極121、122と外部電極131、132を介して積層型電子部品100の外部に放出することができるが、積層型電子部品100の外表面のうちカバー部112、113が占める面積は相当であるため、カバー部112、113を介した放熱を活性化させる必要がある。
【0022】
これによって、本発明の一実施形態では、積層型電子部品100の外表面の一部を構成するカバー部112、113が上記第1金属を含むことにより積層型電子部品100の内部で発生した熱がカバー部112、113を介しても放出されることができ、これによって積層型電子部品100の信頼性を向上させることができる。
【0023】
上記第1金属は、例えば、Cu、W、Ag及びZnのうち1つ以上であることができる。Cu、W、Ag及びZnは、金属元素の中でも熱伝導度に優れた金属元素であるため、積層型電子部品100の内部で発生した熱を効果的に放出することができる。より好ましくは、上記第1金属はCuであることができる。Cuは20℃で熱伝導率が約397W/(m・K)であり、金属元素のうち熱伝導率が2番目で高い元素であり、値段も安価であるため、第1金属はCuであることが好ましい。
【0024】
但し、上記第1金属は導体であるため、カバー部112、113に含まれた上記第1金属含有量が増加するほど、カバー部112、113の絶縁性が低下するおそれがあり、結果的に積層型電子部品100の絶縁抵抗を低下させたり、耐湿信頼性を低下させるおそれがある。
【0025】
これによって、本発明の一実施形態では、カバー部112、113の少なくとも一部の領域において、上記第1金属含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して2.0モル以上9.0モル以下であることが好ましいことができる。より好ましくは、カバー部112、113の少なくとも一部の領域において、上記第1金属含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して2.0モル以上6.0モル以下であることができる。カバー部112、113の少なくとも一部の領域において、上記第1金属含有量が上記Bサイト元素100モルに対して2.0モル未満である場合、本発明の熱放出効果が僅かであり、上記第1金属含有量が上記Bサイト元素100モルに対して9.0モル超過である場合、積層型電子部品100の絶縁抵抗が低下したり、積層型電子部品100の耐湿信頼性が低下することがある。
【0026】
カバー部112、113に含まれた上記第1金属含有量を測定する方法は、特に限定する必要はない。例えば、本体110の第3方向の中央で切断した第1方向及び第2方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージを得た後、カバー部112、113内の任意の領域に対するエネルギー分散型分光分析法(EDS)を介して上記Bサイト元素の含有量(at%)と上記第1金属含有量(at%)を測定することができ、これにより上記Bサイト元素100モルに対する上記第1金属含有量を測定することができる。また、カバー部112、113に含まれた上記第1金属含有量は、第1方向に等間隔の10個以上の地点で上記Bサイト元素100モルに対する上記第1金属のモル数を測定した後、測定したモル数を平均した値を意味することもできる。すなわち、カバー部112、113に含まれた上記第1金属の平均含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して2.0モル以上9.0モル以下であることができる。また、カバー部112、113に含まれた上記第1金属含有量は、当業界で一般的に用いられる測定法を用いて測定することもできる。
【0027】
一実施形態において、カバー部112、113は、第1方向における上記Bサイト元素100モルに対して上記第1金属含有量の標準偏差が3.0モル以下であることができる。すなわち、カバー部112、113内における上記第1金属含有量は、第1方向を基準に比較的均一であることができる。容量形成部Acで発生した熱をカバー部112、113の外表面を介して効果的に放出するためには、熱伝導率の高い上記第1金属が第1方向を基準に均一に分布していることが好ましいことができる。
【0028】
第1方向における上記Bサイト元素100モルに対して上記第1金属含有量の標準偏差を測定する方法の一例を説明する。例えば、本体110の第3方向の中央で切断した第1方向及び第2方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したイメージを得た後、カバー部112、113で第1方向に等間隔の10個以上の地点、20個以上の地点、または30個以上の地点をエネルギー分散型分光分析法(EDS)で分析することができる。このとき、各地点における上記Bサイト元素の含有量(at%)と第1金属含有量(at%)を測定することができ、これにより各地点における上記Bサイト元素100モルに対する上記第1金属のモル数を測定することができる。上記第1金属含有量の標準偏差は、上記各地点における第1金属のモル数の測定値の分散(variance)を求めた後、上記分散に平方根を取って得ることができる。
【0029】
図5を参照すると、上記第1誘電物質は、複数の誘電体結晶粒G及び隣接する誘電体結晶粒の間に配置される結晶粒界GBを含むことができる。このとき、上記第1金属の少なくとも一部は、複数の誘電体結晶粒Gに含まれることができる。例えば、Cu、W、Ag及びZnなどは、第1誘電物質のAサイト元素またはBサイト元素を置換することによって誘電体結晶粒Gに含まれることができる。
【0030】
但し、本発明がこれに限定されるものではなく、上記第1金属含有量が増加して上記第1金属が誘電体結晶粒Gに過固溶すると、上記第1金属の少なくとも一部は結晶粒界GBに存在することができる。
【0031】
カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、カバー部112、113の平均厚さtcは、600μm以下、400μm以下、200μm以下、100μm又は20μm以下であることができる。カバー部112、113の平均厚さtcは、例えば、5μm以上、20μm以上、100μm以上、200μm以上、又は500μm以上であることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。ここで、カバー部112、113の平均厚さは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0032】
カバー部112、113の平均厚さtcは、カバー部112、113の第1方向への平均大きさを意味することができ、本体110の第3方向の中央から切断した第1方向及び第2方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したイメージにおいて、第2方向に等間隔の5地点で測定したカバー部の第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0033】
本体110の容量形成部Acは、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0034】
誘電体層111は、上記第1誘電物質を含むことができる。上記Aサイト元素は、例えばCaを含むことができ、上記Bサイト元素は、例えばZrを含むことができる。すなわち、誘電体層111に含まれた上記第1誘電物質は、例えば、(Ca1-xSr)(Zr1-yTi)O(上記xの範囲は0≦x≦0.5、上記yの範囲は0≦y≦0.5)であることができる。誘電体層111は、上記第1誘電物質を主成分として含むことができる。
【0035】
誘電体層111に適用される誘電物質としてチタン酸バリウム(BaTiO)などの強誘電体を用いる場合、常温で高い誘電率を有するが、高温及び高圧環境で電歪クラックが発生したり、静電容量が減少するという問題点が発生することがある。
【0036】
一方、常誘電体であるCaZrO系ペロブスカイト化合物は、誘電率の温度変化が小さく、誘電損失が小さいという特徴がある。すなわち、誘電体層111に含まれた第1誘電物質としてCaZrO系化合物を用いることにより、静電容量の温度変化率と誘電損失を低くして積層型電子部品の高温信頼性を確保することができる。すなわち、カバー部112、113が上記第1金属を含み、誘電体層111が上記第1誘電物質を含む場合、高温及び高圧での放熱特性及び電気的特性に優れた積層型電子部品100を得ることができる。
【0037】
誘電体層111はその他の副成分を含むことができる。例えば、誘電体層111は、Mn、V、Cr、Fe、Ni及びCoのうち1つ以上を含む第1副成分を含むことができる。例えば、誘電体層111は、Mnを含む第1副成分を含むことができ、第1副成分はMnであることができる。上記第1副成分は、耐還元性を付与し、微細構造の緻密化を向上させ、高温寿命を維持する役割を果たすことができる。
【0038】
上記第1副成分の含有量は特に限定する必要はないが、誘電体層111の少なくとも一部の領域において、上記第1副成分の含有量は上記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下であることができる。上記第1副成分の含有量が上記Bサイト元素100モルに対して0.1モル未満であると耐還元性及び信頼性が低下することがあり、2.0モル超過であると焼成温度増加及び高温耐電圧低下等の副効果が発生することがある。
【0039】
誘電体層111は、例えば、Y、Dy、Ho、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Er及びZrのうち1つ以上を含む第2副成分を含むことができる。例えば、誘電体層111は、Yを含む第2副成分を含むことができ、第2副成分はYであることができる。上記第2副成分は、粒成長制御及び誘電体結晶粒の分布を均一化することによって信頼性を向上させる役割を果たすことができる。
【0040】
第2副成分の含有量は特に限定する必要はないが、誘電体層111の少なくとも一部の領域において、上記第2副成分の含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下であることができる。
【0041】
誘電体層111は、例えば、Siを含む第3副成分を含むことができる。上記第3副成分は、焼結温度を下げて焼結性を促進させる役割を果たすことができる。
【0042】
第3副成分の含有量は特に限定する必要はないが、誘電体層111の少なくとも一部の領域において、上記第3副成分の含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下であることができる。上記第3副成分の含有量が上記Bサイト元素100モルに対して0.1モル未満であると誘電体層の緻密性が低下することがあり、2.0モル超過であると2次相生成により耐電圧特性が低下することがある。
【0043】
一方、カバー部112、113も上記第1副成分~第3副成分を含むことが好ましいことができる。また、カバー部112、113の少なくとも一部の領域において、上記第1副成分の含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下であることができ、上記第2副成分の含有量は上記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下であることができ、上記第3副成分の含有量は、上記Bサイト元素100モルに対して0.1モル以上2.0モル以下であることができる。
【0044】
一方、誘電体層111は上記第1金属を含まないことが好ましい。カバー部112、113に含まれた上記第1金属は、積層型電子部品100の電気的特性に大きな影響を与えずに積層型電子部品100の放熱特性を改善することができるが、誘電体層111が導体である上記第1金属を含む場合、積層型電子部品100の絶縁抵抗を低下させたり、ショート不良などを誘発することがある。
【0045】
これにより、誘電体層111が上記第1金属を含む場合には、誘電体層111に含まれた第1金属の濃度は、カバー部112、113に含まれた第1金属の濃度よりも低いことが好ましい。
【0046】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置されることができ、例えば、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122が誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。第1内部電極121と第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0047】
第1内部電極121は、第4面4と離隔し、第3面3に向かって延びるように配置されることができる。第2内部電極122は、第3面3と離隔し、第4面4に向かって延びるように配置されることができる。
【0048】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、特に限定する必要はないが、例えば、Ni、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、W、Ti及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0049】
一方、内部電極121、122は、例えば、Niを主成分として含むことができる。ここで、主成分とは、内部電極121、122を構成する成分のうち50at%以上の成分を意味する。但し、誘電体層111がCaZrO系化合物を主成分として含む場合、内部電極121、122がNiを主成分として含むと、誘電体層111と内部電極121、122を同時に焼成するとき、CaZrO系化合物を還元させて誘電特性が低下することがある。これにより、一実施形態において、内部電極121、122は、Niに比べて耐酸化性に優れたCuを主成分として含むことができる。内部電極121、122がCuを主成分として含む場合、CaZrO系化合物の還元を容易に防止することができる。
【0050】
誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はないが、例えば1.0μm以上50.0μm以下であることができる。内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はないが、例えば0.5μm以上3.0μm以下であることができる。一実施形態において、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の平均厚さの2倍よりも大きいことができる。すなわち、td>2×teを満たすことができる。高電圧電装用電子部品の場合、高電圧環境下での絶縁破壊電圧の低下を防ぐために、誘電体層111の平均厚さを内部電極121、122の平均厚さの2倍よりもさらに大きくすることで絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0051】
誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは、それぞれ誘電体層111及び内部電極121、122の第1方向の大きさを意味する。誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的には、誘電体層111の平均厚さtdは、1つの誘電体層111の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。また、内部電極121、122の平均厚さteは、1つの内部電極121、122の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30地点は容量形成部Acで指定されることができる。一方、このような平均値測定をそれぞれ10個の誘電体層111及び10個の内部電極121、122について実施した後、平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteをさらに一般化することができる。
【0052】
本体110は、容量形成部Acの第3方向に向かい合う両面上にそれぞれ配置される第1マージン部114及び第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、本体110を第1方向及び第3方向に切った断面で内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0053】
マージン部114、115は、内部電極121、122を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。一実施形態において、マージン部114、115は上記第1金属を含まないことができる。マージン部114、115は、カバー部112、113に比べて誘電体層111及び内部電極121、122に大きな影響を与えることができる。したがって、マージン部114、115が導体である上記第1金属を含む場合、積層型電子部品100の絶縁抵抗を低下させたり、ショート不良などを引き起こすことがある。マージン部114、115が上記第1金属を含む場合には、マージン部114、115に含まれた第1金属の濃度は、カバー部112、113に含まれた第1金属の濃度よりも低いことが好ましい。
【0054】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いて内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することにより形成されたものであることができる。または、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極121、122が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの第3方向に向かい合う両面上に積層することにより、マージン部114、115を形成することもできる。
【0055】
マージン部114、115の平均厚さtmは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、マージン部114、115の平均厚さtmは500μm以下、400μm以下、100μm以下、50μm以下、または20μm以下であることができる。ここで、マージン部114、115の平均厚さは、第1マージン部114及び第2マージン部115のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0056】
マージン部114、115の平均厚さは、マージン部114、115の第3方向の平均大きさを意味することができ、本体110の第1方向及び第3方向の断面で等間隔の5地点で測定した第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0057】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができ、第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6の一部上に延びることができる。外部電極131、132は、第1内部電極121と連結される第1外部電極131及び第2内部電極122と連結される第2外部電極132を含むことができる。
【0058】
外部電極131、132は、第3面3及び第4面4に配置されて、内部電極121、122と連結される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に配置されるめっき層131b、132bを含むことができる。具体的には、第1外部電極131は、第3面3に配置されて第1内部電極121と連結される第1電極層131a及び第1電極層131a上に配置される第1めっき層131bを含み、第2外部電極132は第4面4に配置されて第2内部電極122と連結される第2電極層132a及び第2電極層132a上に配置される第2めっき層132bを含むことができる。
【0059】
電極層131a、132aは金属及びガラスを含むことができる。電極層131a、132aに含まれた金属は、電気的連結性を確保する役割を果たし、ガラスは本体110との結合力を向上させる役割を果たすことができる。
【0060】
電極層131a、132aに含まれた金属は、電気導電性を有するものであれば、如何なる物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができる。例えば、電極層131a、132aに含まれた金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上であることができる。
【0061】
一方、電極層131a、132aは、金属及びガラスを含む1層のみで構成されることができるが、本発明がこれに制限されるものではなく、電極層131a、132aは多層構造を有することができる。
【0062】
例えば、電極層131a、132aは、金属及びガラスを含む第1層及び上記第1層上に配置され、金属及び樹脂を含む第2層を含むことができる。電極層131a、132aが第2層を含むことにより、積層型電子部品100の反り強度を改善することができる。
【0063】
上記第2層に含まれる金属は特に制限されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上を含むことができる。
【0064】
上記第2層に含まれる金属は、球状粉末及びフレーク状粉末のうち1つ以上を含むことができる。すなわち、上記第2層に含まれる金属は、フレーク状粉末のみで構成されるか、球状粉末のみで構成されることができ、フレーク状粉末と球状粉末が混合した形態であることもできる。ここで、球状粉末は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粉末は、平らでありながら細長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であることができる。上記球状粉末及びフレーク状粉末の長軸と短軸の長さは、積層型電子部品の第3方向の中央部で切断した第1及び第2方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0065】
上記第2層に含まれる樹脂は、接合性確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。上記樹脂は、接合性及び衝撃吸収性を有し、金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば、特に制限されず、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、エチルセルロース(Ethyl Cellulose)等から選択された1種以上を含むことができる。
【0066】
また、上記第2層は、複数の金属粒子、金属間化合物及び樹脂を含むことができる。上記金属間化合物を含むことにより、上記第1層との電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0067】
このとき、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0068】
一実施形態において、上記第2層はSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuなどの高融点の金属粒子を毛細管現象によって濡らし、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAgSn、NiSn、CuSn、CuSnなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に関与していないAg、NiまたはCuは金属粒子の形態で残るようになる。
【0069】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち1つ以上を含み、上記金属間化合物は、AgSn、NiSn、CuSn及びCuSnのうち1つ以上を含むことができる。
【0070】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させることができる。めっき層131b、132bの種類は、特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及び/またはこれを含む合金などを含むめっき層であることができ、複数の層から形成されることもできる。めっき層131b、132bは、例えば、ニッケル(Ni)めっき層またはスズ(Sn)めっき層であることができ、ニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層が順次形成された形態であることもできる。また、めっき層131b、132bは、複数のニッケル(Ni)めっき層及び/または複数のスズ(Sn)めっき層を含むこともできる。
【0071】
図面では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0072】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。但し、本発明の一実施形態は、高温及び高圧用積層型電子部品の高温信頼性を向上させることができ、特に、積層型電子部品100のサイズが3216(長さ×幅、3.2mm×1.6mm)以上の場合、本発明の高温及び高圧での放熱特性及び電気的特性の改善効果がより顕著になることができる。すなわち、積層型電子部品100の第2方向の最大大きさは3.2mm以上であり、積層型電子部品100の第3方向の最大大きさが1.6mm以上である場合、本発明による信頼性向上の効果がより顕著になることができる。
【0073】
以下、上述した積層型電子部品100の製造方法の一例について説明する。
【0074】
まず、誘電体層111を形成するための第1誘電物質粉末を準備する。第1誘電物質粉末は、例えば、(Ca1-xSr)(Zr1-yTi)O(上記xの範囲は0≦x≦0.5、上記yの範囲は0≦y≦0.5)である場合がある。上記第1誘電物質粉末は、固相反応法、水熱合成法、共沈法、アルカリ加水分解法などの公知の方法で合成することができる。
【0075】
上記第1誘電物質粉末とは別に、副成分粉末を準備する。副成分粉末は、例えば、第1~第3副成分粉末を含むことができる。第1副成分粉末は、Mn、V、Cr、Fe、Ni及びCoのうち1つ以上を含む酸化物または炭酸塩を含むことができる。第2副成分粉末は、Y、Dy、Ho、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Er及びZrのうち1つ以上を含む酸化物または炭酸塩を含むことができる。第3副成分粉末は、Siを含む酸化物または炭酸塩を含むことができる。
【0076】
次に、準備された上記第1誘電物質粉末と副成分粉末とエタノール等の有機溶剤及びポリビニルブチラール等のバインダーを混合して誘電体層用スラリーを製造することができ、上記誘電体層用スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して誘電体層用グリーンシートを設ける。
【0077】
次に、誘電体層用グリーンシート上に所定の厚さで金属粉末、バインダーなどを含む内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷することで内部電極パターンを形成する。この後、内部電極パターンが印刷された誘電体層用グリーンシートをキャリアフィルムから剥離した後、所定の層数だけ内部電極パターンが印刷された誘電体層用グリーンシートを積層して積層体を形成する。
【0078】
一方、カバー部用スラリーは、誘電体層用スラリーに上記第1金属粉末をさらに添加することにより得ることができる。上記第1金属粉末は、Cu、W、Ag及びZnのうち1つ以上を含み、カバー部用スラリーに含まれた第1金属粉末の含有量は、例えば、第1誘電物質粉末100重量部に対して1.1重量部~3.3重量部であることができる。上記カバー部用スラリーをキャリアフィルム上に塗布及び乾燥してカバー部用グリーンシートを設けた後、上記積層体の第1方向の上部及び下部に積層することができる。
【0079】
この後、上記積層体を所定のチップサイズを有するように切断することができる。切断されたチップに含まれたバインダーなどは、好ましくは脱バインダー工程を介して除去されることができる。脱バインダー工程の条件は、使用したバインダーの種類によって異なることができ、特に制限されない。例えば、脱バインダー工程は、180℃以上450℃以下、0.5時間以上24時間以下の間で進行されることができる。
【0080】
脱バインダー処理されたチップを1100℃以上1300℃以下の温度で焼成して誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Acとカバー部112、113を含む本体110を形成することができる。
【0081】
次に、外部電極131、132を形成する。電極層131a、132aは、本体110の第3面3及び第4面4を金属粉末及びガラスを含む導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することにより電極層131a、132aを形成することができる。このとき、焼成温度は、例えば700℃~900℃であることができる。
【0082】
一方、電極層131a、132aが金属及びガラスを含む第1層及び上記第1層上に配置され、導電性金属及び樹脂を含む第2層を含む場合、上記第2層は金属粉末及び樹脂を含む導電性樹脂組成物を上記第1層上に塗布及び乾燥した後、250℃~550℃の温度で硬化熱処理することにより形成されることができる。
【0083】
(実験例)
<サンプル製作>
まず、誘電体層111を形成するための第1誘電物質粉末に第1副成分としてMn、第2副成分としてY、第3副成分としてSiを添加した後、上記第1誘電物質を有機溶剤及びバインダーと混合して誘電体層用スラリーを製造した。
【0084】
上記誘電体層用スラリーをキャリアフィルム上に塗布及び乾燥して誘電体層用グリーンシートを設け、誘電体層用グリーンシート上に所定の厚さでNi粉末、バインダー等を含む内部電極用導電性ペーストを印刷して内部電極パターンを形成した。この後、内部電極パターンが印刷された誘電体層用グリーンシートをキャリアフィルムから剥離した後、所定の層数だけ積層して積層体を形成した。
【0085】
次に、誘電体層用スラリーにCu粉末をさらに添加したカバー部用スラリーをキャリアフィルム上に塗布及び乾燥してカバー部用グリーンシートを設け、上記積層体の第1方向の上部及び下部に上記カバー部用グリーンシートを積層した後、上記積層体を所定のチップサイズを有するように切断し、脱バインダー工程及び焼成工程を行って本体110を形成した。
【0086】
次に、Cu粉末及びガラスを含む導電性ペーストに本体110をディッピング(dipping)した後、焼成することにより電極層131a、132aを形成し、上記電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成されためっき層131b、132bを形成してサンプルチップを設けた。
【0087】
下記表1の試料番号1~7は同様の方法で製造されるが、カバー部用スラリーに含まれたCu粉末の含有量のみを第1誘電物質粉末100重量部に対して0~3.7重量部の間の範囲で変更した。
【0088】
次に、サンプルチップの本体110の第3方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面を加速電圧:10kV、電流:60A、Working distance:8.5mm測定条件の走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージを得た後、カバー部の第2方向の中央領域に配置された第1方向に等間隔の10地点に対するエネルギー分散型分光分析法(EDS)を行った。上記10地点に対する上記Bサイト元素100モルに対するCuの含有量を測定した後、上記10地点のCu含有量の平均値を下記表1に記載した。
【0089】
<発熱評価>
図6は、積層型電子部品の発熱評価方法を概略的に示した模式図である。図6のように、積層型電子部品100をプリント回路基板200に実装した後、積層型電子部品100が実装されたプリント回路基板200をホットプレート300上に設けた。Power supply(keysight E36234A)、oscilloscope(Keysight DSOX1204A)、source meter(keysight 34972A)を用いて測定条件(周波数:100kHz、温度:105℃、電圧:630V)を印加し、熱画像カメラ400を用いて積層型電子部品100の自己温度変化を測定した。
【0090】
下記表1に記載された△Tは、各試料番号当たり5個のサンプルチップで自己温度変化を測定した後、その平均値を記載したものである。
【0091】
<耐湿信頼性及びIR評価>
各試料番号当たり合計320個のサンプルチップをプリント回路基板に実装した後、温度85℃、相対湿度85%の条件で630Vの電圧を48時間印加した後、IR(Insulation resistance)値が初期IR値の10%以下に落ちた場合を不良と判定した。下記表1には、試料番号当たりのサンプルチップの総個数のうち不良であるサンプルチップの割合を記載した。
【0092】
IR値は、IR測定器(VITREK QTPro II-950)設備を用いて測定し、電圧630V、測定時間60秒条件で測定した。
【0093】
【表1】
【0094】
上記表1を参照すると、試料番号1は、カバー部がCuなどの第1金属を含んでいないため、サンプルチップの温度変化が過度に大きいことを確認することができる。試料番号2もカバー部がBサイト元素100モルに対して2.0モル未満のCuを含んでおり、サンプルチップの温度変化が依然として大きく、試料番号1と試料番号2との間のサンプルチップ温度変化の差は0.3℃に過ぎないことが確認できる。
【0095】
一方、試料番号7はカバー部がBサイト元素100モルに対して10モルのCuを含んでおり、サンプルチップの温度変化は低いが、IRが過度に低下し、これにより耐湿不良が発生することが確認できる。
【0096】
一方、試料番号3~6はカバー部がBサイト元素100モルに対して2モル~9モルのCuを含んでおり、サンプルチップの自己温度変化は下げながらもIR値が良好であることが確認できる。特に、試料番号2と試料番号3との間のサンプルチップ温度変化の差は2.0℃に達することが確認できる。
【0097】
また、試料番号3~5はカバー部がBサイト元素100モルに対して2モル~6モルのCuを含んでおり、サンプルチップの自己温度変化は下げながらもIRが200GΩ以上を維持することが確認できる。
【0098】
本発明は、上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲によって限定しようとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属するといえる。
【0099】
また、「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明された事項が他の一実施形態で説明されていなくても、他の一実施形態でその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連した説明であると理解することができる。
【0100】
さらに、第1、第2などの表現は、ある構成要素と他の構成要素を区分するために用いられるものであって、該当構成要素の順序及び/または重要度などを限定しない。場合によっては、権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名されることもでき、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されることもできる。
【符号の説明】
【0101】
100 積層型電子部品
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層
200 プリント回路基板
300 ホットプレート
400 熱画像カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6