(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031527
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】排泄物受入れ具
(51)【国際特許分類】
A47K 11/06 20060101AFI20250228BHJP
A61G 9/00 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A47K11/06
A61G9/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088525
(22)【出願日】2024-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2023135090
(32)【優先日】2023-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名 カタログ 発行年月日 令和6年2月10日 〔刊行物等〕 販売日 令和6年1月29日 販売した場所 さくら坂地区地区集会所内 大阪府南河内郡河南町さくら坂4丁目14-1 〔刊行物等〕 販売日 令和6年2月26日 販売した場所 高知県日高村社会福祉協議会事務所内及び日高村立日下小学校内 日高村社会福祉協議会事務所 高知県高岡郡日高村沖名5 日高村立日下小学校 高知県高岡郡日高村本郷89 〔刊行物等〕 販売日 令和6年3月3日 販売した場所 山崎 武志 宅 高知県高知市潮見台1-720 〔刊行物等〕 販売日 令和6年3月7日 販売した場所 東みよし町危機管理課 徳島県三好郡東みよし町加茂3360番地
(71)【出願人】
【識別番号】521397670
【氏名又は名称】ハンナ化粧品合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181571
【弁理士】
【氏名又は名称】栗本 博樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 智義
(72)【発明者】
【氏名】中山 聰子
【テーマコード(参考)】
2D036
4C341
【Fターム(参考)】
2D036HA54
2D036HA63
2D036HA68
4C341JK20
4C341JL03
(57)【要約】
【課題】男性用小便器若しくは人工肛門や人工膀胱を造設した人が用いる排泄器具として、容易に組み立てることができる個別に処理ができる汚物処理用の排泄物受入れ具。
【解決手段】等脚台形と、該等脚台形の上底を下辺とし、該等脚台形の脚以上の長さの左右の側辺を有する長方形を組合わせた外形で、その境界線の谷折れ線と、該境界の左右端から該谷折れ線を下底とする別の等脚台形の脚となる別の谷折れ線を有する展開図の薄板材組立てる立体で、前面板と背面板と側面板を備えた構造の排泄物の受入れ具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1等脚台形と、該第1等脚台形の上底を下辺とし、該第1等脚台形の左右の脚の長さ以上の長さの左右の側辺を有する長方形と、を含む外形を有し、前記上底を第1谷折れ線とし、前記第1等脚台形の上底を下底とし、前記第1等脚台形の下底の中央部の一部を上底とする第2等脚台形の右左の脚を第2谷折れ線とする展開図からなる薄板材について、前記第1谷折れ線を回転軸に90度を超える回転をして谷折りし、前記第2谷折れ線を回転軸に谷折りして第1等脚台形の左右の脚を前記長方形の左右の側辺若しくは前記長方形の内部に着接して組立てる立体であって、
前記長方形の部分の背面板と、
前記第2等脚台形の部分の前面板と、
前記第1等脚台形の左右のそれぞれの脚から前記第2等脚台形のそれぞれの右左の脚までの部分の側面板と、
前記背面板及び側面板に設けられた連結部と、
を備えた排泄物の受入れ具。
【請求項2】
請求項1の排泄物の受入れ具に係る展開図の第1等脚台形の左右の脚と下底の交点間を、複数の直線又は単数若しくは複数の曲線で連続する下端辺の外形を含み、前記第2等脚台形の右左の脚が該下端辺に至る第2谷折れ線とする展開図の薄板材について、前記第1谷折れ線を回転軸に90度を超える回転をして谷折りし、前記下端辺に至る第2谷折れ線を回転軸に谷折りして第1等脚台形の左右の脚を前記長方形の左右の側辺若しくは前記長方形の内部に着接して組立てる立体であって、
前記長方形の部分の背面板と、
前記下端辺における前記下端辺に至る右左の第2谷折れ線間と、前記第1谷折れ線と、前記右左の第2谷折れ線と、に囲まれた部分の前面板と、
前記第1等脚台形の左右のそれぞれの脚と前記下端辺に至るそれぞれの右左の第2谷折れ線間の部分の側面板と、
前記背面板及び側面板に設けられた連結部と、
を備えた排泄物の受入れ具。
【請求項3】
前記背面板及び側面板に設けられた連結部が前記薄板材の一部である請求項1若しくは請求項2の排泄物の受入れ具。
【請求項4】
前記第1等脚台形の脚と下底との内角が45度を超え90度未満である請求項1若しくは請求項2の排泄物の受入れ具。
【請求項5】
請求項1若しくは請求項2の排泄物の受入れ具に係る展開図を含む薄板材であって、排泄物の受入れ具を組み立てるための薄板材。
【請求項6】
前記第1谷折れ線が形成する内側の下端部に袋体外面が沿う形態で袋体を設置し、背面板の正面側並びに前面板及び側面板の全てを前記袋体で覆う請求項1若しくは請求項2の排泄物の受入れ具。
【請求項7】
前記薄板材が段ボール、厚紙若しくは合成樹脂を素材とする請求項1若しくは請求項2の排泄物の受入れ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体の前方で排泄物を受入れる非水洗の排泄物の処理具であり、組立て式で簡易な排泄物処理に関するものである。災害用に備蓄され、被災時に避難場所等に用意され、保管、輸送、設置が容易で、衛生的で管理者の負担を最小限にする簡易小便器して利用することができる。
【背景技術】
【0002】
小便用の簡易組立てトイレとしては、衝立版と小便器とホースとタンクから構成される組立式簡易小便器がある(例えば、特開2015-142635)。しかしながら、このような簡易小便器は、タンクに収容された汚物を管理者等が処理する必要があり、管理者負担が大きく、衛生上にも課題がある。
【0003】
組立や設置が容易な組立式小便器として、尿受け部と壁面部が折り畳み可能なシート状の展開図で組立てできる発明が提案されている(特開2018-202109)。小便器を組立て後に漏斗部で小便器全体を覆い排水ホースに連通し、マンホールに排出されるものである。
【0004】
折りたたんで携帯でき、使用後吸収剤によってパック状にできる使い捨ての子供用小便器の形状に関する発明がある(特表2007-520238)。
上記2件の発明は、展開図による組立て方法を示し、便器の形状としても共通点を有する。折畳みの容易さはあるが、組立てのための面若しくは辺の着接に展開図等とは異なる別材料を必要とするなど、組立ては簡易とはいえない。また、使用時の尿の排出に対する受け具としても合理的な形状とはいえず、製造のために要する材料に無駄が生じている。
【0005】
男性用小便器の形状に関して、小便の放出方向の広がりへの対応でき、小便の飛散防止及び小便のたれ防止に資する形状でなければならない。そのためには、便器の正面の先端部が股間の下に設置され、たれ受けとなり、左右の両翼に一定の高さと広がりを有するリムがあるのが望ましい。また、たれ受けとリムの高さに関しては、身長による個人差に合わせるのが望ましい。
上記特開2015-142635提案の便器の正面の先端部の尖った形状は、接近性は高く、たれ受けとして、良好ではあるが左右の両翼のリムがないため放出の広がりに対応できず、また飛散が防止できない。
上記特開2018-202109及び特表2007-520238の小便器については、左右両翼にリムはあるが、正面の対人側の左右方向の辺が接近性を阻み、たれ受けとして機能していない。
【0006】
次に、折り畳んだ状態或いは平面状の展開図から組立てる立体形状の構造に関して、安定性の観点からは、立体形状の隣接する2つの平面の角度が安定的に維持されていなければならない。この点に関して、特開2015-142635の発明は、衝立版を利用して平面上の厚紙等の薄板に折線を設けて小便器を組立てたものであるが、一つの連結辺に対して複数の折れ部を有する平面の組合せを有するものであり、折れ部を挟む平面間の角度を薄板部材のみによって維持されなければならず、組立てる立体形状としては極めて不安定である。
特表2007-520238の発明に関しては、板紙の組立て後の立体形状として安定した形状であるが、左右6箇所の連結辺は、容易な組立ての大きな支障となっている。また、特開2018-202109の発明に関しては、連結辺を2個所として容易に組立てを実現したが、折れ部によって所定の角度で互いに隣接する2つの平面に関しては、提案する展開図から組立てる立体形状としては、フラップ部の上部に支持若しくは張力が作用しない自由端部を有し、安定した立体形状ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-142635号公報
【特許文献2】特開2018-202109号公報
【特許文献3】特表2007-520238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、組立て式の排泄物の処理具として、保管、輸送が容易であり、安定した立体形状を確保でき、材料として用いる薄板材の面積の必要最小限を求めるものである。経済的で管理者の負担を最小限にする安価で衛生的な排泄物の処理具を提案する。体の前方で処理をする排泄物を対象として、具体的には、男性用小便器若しくは腹部などに排泄のための人工肛門や人工膀胱を造設した人が用いる排泄物の処理具として利用できるものを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1等脚台形と、該第1等脚台形の上底を下辺とし、該第1等脚台形の左右の脚の長さ以上の長さの左右の側辺を有する長方形と、を含む外形を有し、前記上底を第1谷折れ線とし、前記第1等脚台形の上底を下底とし、前記第1等脚台形の下底の中央部の一部を上底とする第2等脚台形の右左の脚を第2谷折れ線とする展開図からなる薄板材について、前記第1谷折れ線を回転軸に90度を超える回転をして谷折りし、前記第2谷折れ線を回転軸に谷折りして第1等脚台形の左右の脚を前記長方形の左右の側辺若しくは前記長方形の内部に着接して組立てる立体であって、
前記長方形の部分の背面板と、
前記第2等脚台形の部分の前面板と、
前記第1等脚台形の左右のそれぞれの脚から前記第2等脚台形のそれぞれの右左の脚までの部分の側面板と、
前記背面板及び側面板に設けられた連結部と、
を備えた排泄物の受入れ具。
【発明の効果】
【0010】
被災地における簡易な非水洗小便器として、安価で、保管がきわめて容易で、段ボールや厚紙等薄板材を組立てた受入れ具に対して、ポリ袋の覆設後使用するなど、使用時の負担が比較的少なく、全体をポリ袋で覆うため衛生的で、使用時の凝固剤の使用によって容易に自己責任で汚物処理でき、管理者負担を軽減できる。被災地等における男性小便用に特化することによって、トイレでの男女共用の混雑の解消を図ることができる。
また、腹部などに排泄のための人工肛門や人工膀胱を造設した人が用いる排泄器具として利用でき、従来家庭における便器での排泄処理が困難な人や介助者の負担を軽減できる。
受入れ具の形状ついて、従来型と比較して、排泄物の放出方向の広がりへの対応でき、排泄物の飛散防止及びたれ防止に資する形状として、便器の正面の先端部が股間の下におけるたれ受けとなり、左右の両翼に一定の高さと広がりを有するリムがあり、たれ受けとリムの高さに関しては、身長による個人差に合わせることができる。これらの機能を備えながら、構造上の安定性を備え、平板材の材料を必要最小限としている。それらを次の数1以下によって、説明する。
【0011】
【0012】
数1は、長方形と該長方形の下辺を上底とする第1等脚台形とからなる同じ外形を有する2つの展開図について、該第1等脚台形内の谷折れ線の位置が異なる2つの立体の組立て後の形状を示すものである。数1(1)は、薄板材の展開図を示している。前記第1等脚台形の左右の脚は、上底の左右端と下底を結ぶ垂線から外側にθの角度を有するものであり、前記垂線から内側にαの角度を回転させた谷折れ線cを有する展開図と前記垂線のaを谷折れ線とする2つの展開図を一つの図で表現している。前記谷折れ線cは、請求項1の第2等脚台形の右左の脚にあたるものである。
前記展開図に対して、(2-1)及び(3-1)は、第1谷折れ線を回転軸に内側へ回転させ、同時にc若しくはaの谷折れ線の何れかを回転軸に内側へ谷折りし、前記第1等脚台形の左右の脚を前記長方形の側辺に着接した場合の図を示すものである。(2-1)斜視図及び(2-2)右側面図は、谷折れ線c位置で谷折りしたものであり、(3-1)斜視図及び(3-2)右側面図は、谷折れ線a位置で谷折りしたものである。
数1(2-1)に示す通り、(α+θ)は、収容部として排泄物を収容するためには、90度未満でなければならない。式(2-2)は、側面図における角度βを表すものでβ≦α+θであり、Acosとは、アークコサインのことであり、cosの逆関数である。式(2-2)のAは、(2-1)の右斜め45度の細点線で示す面積であり、本発明の排泄物受入れ具の受入れ口の面積を表している。また、Vは、(2-1)及び(2-2)の左斜め45度の細点線で示す体積であり、排泄物受入れ具の収容部の収容量を表している。一方で、(3-1)に示すaを谷折れ線とするポケット部は、三角柱の形状であり、(3-2)の側面図においては、β=θとなり、ポケット部の入り口の面積At及び収容部の収容量Vtは、式(3-2)で求められる。
【0013】
数1(3-1)は、従来型の排泄物の受入れ具について簡易で安定性のある構造を有する形状とした上で、本発明である数1(2-1)とを比較するためのものである。
数1(2-1)に示す第1等脚台形の下底の一部でcの谷折れ線間(数1(1)のl’×2)の辺は、男性用小便器の場合、使用者が排泄する際に最も近い位置に存するものであり、排泄器具の中央位置を明らかにするとともに辺を短くすることによって、股間の下への設置を可能とするなど、使用者の器具への接近を容易にしている。また、上記第1等脚台形の下底のcの谷折れ線間以外の部分を側面板の上辺にすることによって、側面板は、使用者から放射状に広がり、背面板に対して鋭角な平面となり、側面板がリムの役割として、排泄物の飛散を抑えることができる。
更に、同じ面積の薄板材から得られる立体の形状として、数1に示す式(2-2)及び式(3-2)で求められた排泄部受入れ具の受入れ口の面積、収容部の容量の比較から、(2-1)で示す立体形状が排泄物を収容する器具として無駄のない合理的な形状であり、材料である薄板材料についても削減することができる。
具体的な受入れ口の面積及び収容量に関する詳細は、後述する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、背面板の長方形の側辺に、側面板の端辺を連結した排泄物の受入れ具本体及び材料の展開図の説明図である。(実施例1)
【
図2】
図2は、背面板の長方形の内部に、側面板の端辺を着接した排泄物の受入れ具本体及び材料の展開図の説明図である。(実施例2)
【
図3】
図3は、排泄物受入れ具に用いる薄板材の連結部の説明図である。(実施例1)
【
図4】
図4は、排泄物受入れ具に用いる薄板材の連結部の説明図である。(実施例1及び実施例2)
【
図5】
図5は、排泄物受入れ具に用いる薄板材の連結部の説明図である。(実施例1及び実施例2)
【
図6】
図6は、排泄物受入れ具を小便用の簡易な組立てトイレとしての使用の説明図である。(実施例3)
【
図7】
図7は、曲線部を有する排泄物受入れ具の説明図である。(実施例4)
【
図8】
図8は、排泄物受入れ具の製造方法に関する説明図である。(実施例1若しくは実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、排泄物の処理具とは、排泄物の受入れ具を含め、該受入れ具を覆設する袋体、排泄物を凝固する凝固剤などを含めた概念である。
特許請求の範囲では、展開図について2つの等脚台形を記載しているが、等脚台形とは、上底と、該上底に水平で、該上底より辺長が長い下底と、該下底の左右の両端と前記上底の左右の両端とを結ぶ左右の2つの脚とからなり、該左右の脚の下底と形成する内角が等しい形状である。数1におけるθ及びαに関して、前記第1等脚台形の脚が下底と形成する内角は、(π/2-θ)であり、第2等脚台形の内角は、(π/2-α)である。上底及び下底は、上下の位置的な関係を示すものではない。また、第2等脚台形に関しては、前記数1(1)の展開図上のl´=0即ち上底の長さが0を含む概念である。
請求項に記載する展開図とは、立体を切り開いて一つの平面上に広げた図であり、逆に組み立てることによって前記立体を形成することができるものでもある。外形を形成する切り取線と表側を内側にして折るための折り目である谷折れ線と逆に外側にして折るための折り目である山折れ線からなる。切取り線を実線、谷折れ線を破線、山折れ線を一点鎖線によって、それぞれ表現する。
本願特許請求の範囲に示すように展開図で現す薄板材で組み立てる場合、組立てに不可欠な請求項に記載する背面板及び側面板に設けられる連結部は、のり代を設けて接着剤で着接する方法、接着のための粘着テープ、ステープラ、鳩目を用いたものなど、種々のものがあるが、薄板材の一部を連結部とするものについての
図3~
図5の連結部の説明図以外の図面では、省略する。
薄板材とは、上記展開図での組立て可能な材料であり、材質としては、段ボール、厚紙等の紙材、合成樹脂材、金属板を含むが、繰り返しの使用の観点から折れ線部に関して、容易に変形でき、変形後力を除く若しくは力を加えることによって、容易に元の形状に戻るものでなければならない。
【実施例0016】
図1は、本発明の実施例であって、
図1(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)は、それぞれ平面図、正面図、底面図、左側面図、右側面図及び背面図の六面図を表すものである。
図1(7)は、展開
図2である。
図1(7)の展開図に関して、lの第1谷折れ線24を上底とし、c、d、及びeで形成する直線を下底とし、b、fを左右の脚とする台形を第1等脚台形21と呼ぶ。dを上底とし、lを下底として、第2谷折れ線n、m25を右左の脚とする台形を第2等脚台形23と呼ぶ。また、第1谷折れ線であるlを下辺、切取り線hを上辺とし、切取り線a及びgを左右の側辺として長方形が形成されている。
【0017】
前記展開
図2と前記六面図で示す立体との関係を説明する。前記展開図の第1谷折れ線24を回転軸に90度以上を超える回転をして谷折りし、同時に第2等脚台形23の左右の脚n、mを谷折りし、第1等脚台形の脚b、fをそれぞれ長方形22の左右の側辺a、gに着接して組み立てた立体が前記六面図に示すものである。
図1(2)の正面図は、本発明の排泄物受入れ具の使用者の方向からの図であり、前面板11の上辺となる展開図のdが使用者に最も近い位置の辺である。正面図で長方形となる背面板の左右の側辺と着接する左右の側面板12によって、前面板と背面板13を連結する。該前面板の上辺と展開図のc及びeで現される左右の側面板上辺と背面板13で形成される面は排泄物の受入れ口となり、斜め上方からの面積が大きくなっている。左右の側面図は
図1(4)及び(5)に示すとおりであり、前面板と背面板のなす傾きによって、側面板との間に排泄物の収容部15が構成されていることが理解できる。
本排泄物の受入れ具の形状に関して、数2のよって更に詳細に示す。
【0018】
【0019】
数2の展開図に示す角度θは、第1等脚台形の上底から下底への垂線と脚との間の角度であり、αは、第2等脚台形の脚と該第2等脚台形の上底から下底への垂線との角度である。aは、第1等脚台形の上底からの垂線を示す補助線であり、bは、第1等脚台形の脚を示し、cは、第2等脚台形の脚を示している。a、b、cは、数式として表現する場合、それぞれの長さを示すものとする。lは、背面板の幅の1/2の長さを示し、(l’×2)は、前面板の上辺の長さであり、通常は使用者に最も近い位置の辺となる。数2(1)のhは、「側面図」に示すように前面板の上辺の高さであり、数1(2)のβは、「側面図」に示す背面板と前面板のなす内角を示している。前記hは、数2の「高さを求める補助図」から求められ、式(1)に示すh=a×cos(θ+α)/cosαは、辺cが鉛直の辺である辺bとなす角度が(θ+α)であり、展開図よりcをa/cosαに置き換えることによって求められる。数2の「側面図」より、該hが求められることによって、数2式(2)に示すように、鉛直の辺b及び斜辺aよりβが求められる。式(3)のAは、数2の「側面図」及び「受入れ口の面積を求める補助図」に示す面積であり、排泄物の受入れ具として重要な要素である。「受入れ口の面積を求める補助図」の等脚台形の上底と下底の長さと、それらの間隔を「側面図」から求めたものより得られる。また、式(4)のVは、数2の「側面図」及び「平面図」に示す体積であり、排泄物の受入れ具として前記の面積と同様に重要な要素であり、「平面図」に示す等脚台形の面積と高さhの積の1/2より求めたものである。次に、数3によって、数1に示した2つの立体の収容部容量であるVとVtに関する比較を行う。
【0020】
【0021】
数3は、数1及び数2に基づいて、本発明の排泄物受入れ具である数1(2-1)に示す立体と数1(3-1)に示す立体について、収容部の収容量に関する優位性を示しうる範囲を求めたものである。数3に示すように、
V=(l+l’)/4×a2×sin(2×β)
Vt=l/2×a2×sin(2×θ)
としたうえで、サイン曲線の性質より90°を超えると減少することより、β>θを勘案したとき、θ<45°でなければ、V>Vtになり得ないとしている。従って、収容部容量に関しては、θは45°未満が本発明の優位性を発揮できる条件となる。
【0022】
同じ切取り線の外形を有する展開図によって組立てられる2つの立体形状に関して、数1で受入れ口面積と収容部容量を示しているが、具体の数値計算例によって、本発明に係る立体形状の優位性を示す。表1及び表2は、数1のa=0.3m、l=0.3mで、θを最大45度とし、αを最大45°とした場合の数値計算例である。表1は、受入れ口の面積であり、表2は収容部容量を示すものである。
【0023】
【0024】
表1の受入れ口面積の計算例について、θとαの組合せによる受入れ口面積の計算結果を示すもので、αは、横方向に0度から45度までで、θは縦方向に5度から45度までのそれぞれ5度刻みで計算結果を示している。αが0度の場合、数1のAtを示すものであり、数1の(3-1)に示す立体形状である。αが45度の場合、本例a=0.3m、l=0.3mにおいては、数1のl’は、0となり、前面板の上辺の長さが0の状態である。θは5度~45度の5度毎の計算例を示している。この計算結果をグラフにしたものが表2のグラフである。グラフに示すようにθの値毎に2点鎖線、1点鎖線、破線、実線と線の太さの違いで表現している。θの増大によって、側面板の上辺が長くなり、受入れ口面積は、大きくなる。一方で、αに関しては、概ね15度から35度の範囲にピークを有する山形になっており、θが5度では、概ねαが30度から35度の位置でピークになり、約422cm2になっている。θが15度では、概ねαが30度の位置でピークになり、約790cm2になっている。θが25度では、概ねαが25度の位置でピークになり、約1115cm2になっている。θが35度では、概ねαが20度から25度の位置でピークになっている。即ち、受入れ口面積について、θが大きくなるほど最大値となるαの値が小さくなっている。本例の場合、概ねθ30度以下では、αの値に関わらず、数1の(2-1)に示す本発明の立体形状は、数1の(3-1)に示す立体形状(α=0)の受入れ口面積を超える結果となっている。
【0025】
【0026】
表2は、表1と同じ条件で、収容部容量(体積)を算出するものである。αが0度の比較においては、θは、大なるほど、容量は大きくなる。表2の算出値をグラフに示している。これによると、同じθでの値の最大の収容部体積について、θ5度では、概ねα30度の位置がピークで約5.9リットルになり、θ10度では、概ねα25度の位置がピークで約8リットルになり、θ15度では、概ねα20度の位置がピークで約9.4リットルになっている。このように、θが大きくなるに従い、収容部体積の最大値のαが小さくなるのは、前記の受入れ口面積と同じ傾向である。θ45度では、αが0度において最大値となっているため、収容部容量の点のみを勘案すると、本発明にかかる立体形状の優位性はない。このことは、数3の検討結果を示すものである。
【0027】
上記検討は、本願の組立て立体形状に関して、組立てが容易で安定した立体形状を確保でき、前面板の上辺の長さが短くなり、側面板の上辺が長くなることによって、利用者の排泄物受入れ具への接近を容易にし、排泄物の放出飛散防止に繋がる。このような定性的な利点に対して、具体的な定量的評価を同じ面積の材料から得られる従来型の組立て形状と比較するものである。
表1及び表2に関して、θ35度以下においては、αの設定によって、連結部を除いて同じ外形の展開図から組立てられる数1(3-1)の組立て形状と比較して、本発明に係る数1(2-1)の形状は、受入れ部の面積及び収容部の収容量の何れにおいても、数値的優位性を有する結果となっている。同じ面積の薄板材から得られる組立て式の受入れ具として、極めて効率的であると言える。また、一定のθに対して、αの設定による形状の自由度は高く、使用者に最も近い前面板の前面辺の長さ、受入れ口面積若しくは収容部の容量などの要素を勘案して最適な設定が可能となっている。このように、本発明は、組立て式の小便器として、単なる従来形状から特定の形状を採用したものではなく、新たに第2等脚台形の概念を導入し、その脚の内角を設定によって、小便器としての最適を求めることを可能にするもので、従来発明と比較した極めて有利な効果を有するものである。
【0028】
次に、
図1(7)に示す展開
図2を基に、請求項3に記載する連結部が前記薄板材の一部であり、該薄板材のみで組立てが可能な排泄物受入れ具について、
図1(1)から(6)に示す立体形状にするための連結部を示す。
図3は、側面板端辺部にT型連結部51、背面板側辺部にT型受入れ部52を設けるものであり、請求項に記載する連結部は、
図3(6)に示すように上記T型連結部及びT型受入れ部を包括する概念である。このことは、他の連結構造に関しても同様である。
図3(6)の展開図に対して、背面板の側辺部に設けられたT型受入れ部の拡大図を
図3(1)に示し、側面板の端辺部に設けられたT型連結部の拡大図を
図3(2)に示す。抜取りの切取り線で表現される背面板のT型受入れ部に対して、T型連結部は、側面材にT型の突起部となっている。T型受入れ部とT型連結部のウェブは略同じ幅を有し、T型連結部のフランジの幅を受入れ部より大きくすることによって、互いのウェブから連結部を受入れ部に嵌入することができ、フランジ部によって係止することが可能となっている。嵌入時には
図3(4-1)の状態であるが、図上の矢印に示すように90度の回転が可能で、同じ平面上まで回転したものが
図3(4-2)の状態で、その際の平面からの拡大図を
図3(3)に示している。
図3(4-1)に示すよう概ね直角に近い状態で連結して組み立てて、
図1に示す立体構造とすることができる。薄板材の平面的な掛合に利用した例が後述の
図6の例である。