(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031530
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】鉄塔基礎構造、鉄塔基礎の構築方法及び鉄塔基礎の構築に用いる治具
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20250228BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20250228BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/12 Z
E02D27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090896
(22)【出願日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2023135065
(32)【優先日】2023-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亜理
(72)【発明者】
【氏名】田邉 成
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA14
2D046CA03
2D046DA35
(57)【要約】
【課題】鉄塔の大型化等によって杭に作用する荷重が大きくなったときに、この荷重に対する杭の強度を確保することができる鉄塔基礎構造、鉄塔基礎の構築方法及び鉄塔基礎の構築に用いる治具を提供する。
【解決手段】鉄塔基礎10は、設置地盤26に埋設され、杭頭部28Aの一部が鉄塔12の高さ方向における最も下側の外側ピース32の内周側に設けられ、杭頭部28Aの上面28A1上に内側ピース30が配置された杭28を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材と、
前記脚材における前記鉄塔の高さ方向下側の下端部と一体的に設けられたプレキャストコンクリート製の内側ピースと、
前記内側ピースの外周側に当該内側ピースの外周面と間隔をあけて配置されると共に、当該内側ピース側からの圧力を支持可能とされ、前記高さ方向に複数連なって配置されたプレキャストコンクリート製の外側ピースと、
前記内側ピースと前記外側ピースとの間に介在し、かつ当該内側ピース及び当該外側ピースに密着状態で設けられたコンクリート製の介在部と、
設置地盤に埋設され、杭頭部の一部が前記高さ方向における最も下側の前記外側ピースの内周側に設けられ、当該杭頭部の上面上に前記内側ピースが配置された杭と、
を有する鉄塔基礎構造。
【請求項2】
前記外側ピースは、軸方向を前記高さ方向とされた円筒状とされており、
最も下側の前記外側ピースの内周面における前記上面の直上に当該外側ピースの径方向内側に開放されたボックス部が当該外側ピースの周方向に沿って複数配置されている、
請求項1に記載の鉄塔基礎構造。
【請求項3】
設置地盤に円筒状のスタンドパイプを打ち込んで当該スタンドパイプ内を掘削し、
前記スタンドパイプの内周側に円筒状のケーシングを打ち込んで当該ケーシング内を掘削し、
前記ケーシング内に鉄筋籠を配置し、
前記ケーシング内に第1生コンクリートを注入しつつ当該ケーシングを引き抜き、
円筒状とされたプレキャストコンクリート製の外側ピースの内周面における当該外側ピースの下端面から所定の間隔をあけた箇所に円板状の治具を配置し、
前記外側ピースを前記鉄筋籠の杭主筋と前記スタンドパイプとの間に位置するように前記第1生コンクリート上に配置し、
前記治具の下方側において前記外側ピースの内周側に第2生コンクリートを充填し、
前記スタンドパイプの内周面と前記外側ピースの外周面との間に第3生コンクリートを充填しつつ当該スタンドパイプを引き上げ、
前記第1生コンクリート及び前記第2生コンクリートの固化後のコンクリートから前記治具を除去して当該コンクリート上に鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材の下端部と一体に設けられたプレキャストコンクリート製の内側ピースを載置し、
前記内側ピースと前記外側ピースとの間に第4生コンクリートを打設する、
鉄塔基礎の構築方法。
【請求項4】
厚さ方向から見て外周が円形とされると共に中心部に第1貫通部が設けられた円板状の本体部と、
前記本体部の下面に取り外し可能に取り付けられ、複数の木板で構成されると共に、全体が前記厚さ方向から見て外周が前記本体部の外周よりも大きい円形とされると共に中心部に第1貫通部に収まる第2貫通部が設けられた円板状とされた接触板部と、
前記本体部の上面に当該本体部の周方向に沿って複数配置されると共に前記厚さ方向から見て先端部が前記接触板部の外周よりも当該本体部の径方向外側に位置する第1状態と、当該先端部が当該外周よりも当該径方向内側に位置する第2状態と、をとることが可能とされた可動部と、
を有する鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【請求項5】
前記可動部は、前記周方向を板厚方向とされかつ前記径方向に延在する板状とされると共に、前記先端部よりも当該径方向内側の部分における下方側の部分の厚さが下方に向かうに従って薄くなっており、
前記上面における前記第1貫通部側に設けられると共に前記第1状態において前記可動部が係止されることで当該可動部の前記径方向外側への変位を制限する第1係止部と、
前記上面における前記本体部の外周側に設けられると共に前記第1状態において前記可動部が前記周方向に揺動可能に係止される第2係止部と、
をさらに備えている、
請求項4に記載の鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【請求項6】
前記可動部は、前記周方向を板厚方向とされかつ前記径方向に延在する板状とされると共に、
前記可動部の前記径方向内側の内側端部における前記本体部と反対側の部分は、前記厚さ方向において当該本体部の反対側に延出された延出部とされており、当該延出部における前記径方向外側の周縁部は、前記周方向から見て当該径方向内側から当該径方向外側に向かって下り勾配となっている、
請求項4に記載の鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【請求項7】
前記上面における前記第1貫通部側に設けられると共に、前記第1状態において前記可動部の前記径方向外側への変位を制限し、かつ前記本体部に締結部材で取り付けられた内側制限部をさらに備えている、
請求項6に記載の鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【請求項8】
前記内側制限部は、
前記上面において前記可動部の前記周方向一方側と他方側とに配置されると共に当該上面から前記本体部と反対側に立ち上がった一対のベース部と、
前記可動部における前記本体部の反対側に配置されて一対の前記ベース部に挟持されると共に前記周方向の厚さが当該可動部における当該周方向の厚さよりも厚いスペーサ部と、
を備えている、
請求項7に記載の鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【請求項9】
前記スペーサ部は、前記ベース部に取り外し可能に取り付けられている、
請求項8に記載の鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【請求項10】
前記スペーサ部は、前記周方向から見て、前記可動部と反対側の周縁部が当該可動部と反対側に凸となる半円状とされると共に、当該可動部側の周縁部が当該可動部に沿うように延在する直線状とされている、
請求項8に記載の鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【請求項11】
前記可動部に取り外し可能に取り付けられ、前記内側制限部に当接されることで前記可動部の前記径方向内側への変位を制限する外側制限部をさらに備えている、
請求項7に記載の鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【請求項12】
前記内側端部に被係止部が設けられている、
請求項6に記載の鉄塔基礎の構築に用いる治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔基礎構造、鉄塔基礎の構築方法及び鉄塔基礎の構築に用いる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、鉄塔基礎構造に関する発明が記載されている。この鉄塔基礎構造では、設置地盤に埋設された杭における杭頭部の設置面上に基礎の一部を構成するプレキャストコンクリート製の部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、鉄塔の大型化等によって杭に作用する荷重が大きくなったときに、この荷重に対する杭の強度を確保するという観点においては改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、鉄塔の大型化等によって杭に作用する荷重が大きくなったときに、この荷重に対する杭の強度を確保することができる鉄塔基礎構造、鉄塔基礎の構築方法及び鉄塔基礎の構築に用いる治具を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る鉄塔基礎構造は、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材と、前記脚材における前記鉄塔の高さ方向下側の下端部と一体的に設けられたプレキャストコンクリート製の内側ピースと、前記内側ピースの外周側に当該内側ピースの外周面と間隔をあけて配置されると共に、当該内側ピース側からの圧力を支持可能とされ、前記高さ方向に複数連なって配置されたプレキャストコンクリート製の外側ピースと、前記内側ピースと前記外側ピースとの間に介在し、かつ当該内側ピース及び当該外側ピースに密着状態で設けられたコンクリート製の介在部と、設置地盤に埋設され、杭頭部の一部が前記高さ方向における最も下側の前記外側ピースの内周側に設けられ、当該杭頭部の上面上に前記内側ピースが配置された杭と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、プレキャストコンクリート製の内側ピースが、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における鉄塔の高さ方向(以下、単に高さ方向と称する)下側の下端部と一体的に設けられている。
【0008】
また、内側ピースの外周側に内側ピースの外周面と間隔をあけて、プレキャストコンクリート製の外側ピースが高さ方向に複数連なって配置されており、これらの外側ピースは、内側ピース側からの圧力を支持可能とされている。
【0009】
そして、内側ピースと外側ピースとの間には、内側ピース及び外側ピースと密着状態で設けられたコンクリート製の介在部が介在している。このため、鉄塔に懸架された電線等に起因する引き上げ荷重等が脚材を介して内側ピースに伝達すると、内側ピース側から外側ピース側に介在部を介して圧力が作用することとなる。そして、この圧力は、外側ピースによって支持することができるため、本態様では、鉄塔を安定した状態で支持することができる。
【0010】
ところで、本態様では、設置地盤に埋設された杭の杭頭部における上面上に内側ピースが配置されており、杭には、脚材を介して高さ方向上側からの荷重、すなわち押し込み荷重が作用する。そして、鉄塔が大型化すると、この押し込み荷重によって杭が圧縮されて杭がはらむといったことが考えられる。
【0011】
ここで、本態様では、杭頭部の一部が高さ方向における最も下側の外側ピースの内周側に設けられている。このため、杭に作用する押し込み荷重を外側ピースで支持し、この押し込み荷重が杭に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0012】
第2の態様に係る鉄塔基礎構造は、第1の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記外側ピースは、軸方向を前記高さ方向とされた円筒状とされており、最も下側の前記外側ピースの内周面における前記上面の直上に当該外側ピースの径方向内側に開放されたボックス部が当該外側ピースの周方向に沿って複数配置されている。
【0013】
第2の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、外側ピースが軸方向を高さ方向とされた円筒状とされている。また、高さ方向に複数連なって配置された外側ピースのうち最も下側の外側ピースの内周面における杭頭部の上面の直上に、外側ピースの径方向内側に開放されたボックス部が、この外側ピースの周方向に沿って複数配置されている。
【0014】
このため、杭頭部を構成するための生コンクリートを最も下側の外側ピースの内周側に注入するときにおいて、複数のボックス部を用いて、この生コンクリートを高さ方向上側から抑える治具等を支持することができる。その結果、杭頭部の上面を所定の位置に配置することが容易となる。
【0015】
第3の態様に係る鉄塔基礎の構築方法は、設置地盤に円筒状のスタンドパイプを打ち込んで当該スタンドパイプ内を掘削し、前記スタンドパイプの内周側に円筒状のケーシングを打ち込んで当該ケーシング内を掘削し、前記ケーシング内に鉄筋籠を配置し、前記ケーシング内に第1生コンクリートを注入しつつ当該ケーシングを引き抜き、円筒状とされたプレキャストコンクリート製の外側ピースの内周面における当該外側ピースの下端面から所定の間隔をあけた箇所に円板状の治具を配置し、前記外側ピースを前記鉄筋籠の杭主筋と前記スタンドパイプとの間に位置するように前記第1生コンクリート上に配置し、前記治具の下方側において前記外側ピースの内周側に第2生コンクリートを充填し、前記スタンドパイプの内周面と前記外側ピースの外周面との間に第3生コンクリートを充填しつつ当該スタンドパイプを引き上げ、前記第1生コンクリート及び前記第2生コンクリートの固化後のコンクリートから前記治具を除去して当該コンクリート上に鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材の下端部と一体に設けられたプレキャストコンクリート製の内側ピースを載置し、前記内側ピースと前記外側ピースとの間に第4生コンクリートを打設する。
【0016】
第3の態様に係る鉄塔基礎の構築方法によれば、設置地盤に打ち込まれたスタンドパイプの内周側に打ち込まれたケーシング内に注入された第1生コンクリートによって杭の主な部分が構成される。また、ケーシングを引き抜いた後に、外側ピースを、第1生コンクリートと一体化された鉄筋籠の杭主筋とスタンドパイプとの間に位置するように、第1生コンクリート上に配置する。このとき、外側ピースの内周面には、円板状の治具が配置されており、この治具は、第1生コンクリートの上面から所定の間隔をあけた箇所に配置される。そして、この治具の下方側において外側ピースの内周側に第2生コンクリートを充填することで、外側ピースの内周側に杭頭部の一部が構成される。
【0017】
また、スタンドパイプの内周面と外側ピースの外周面との間に第3生コンクリートを充填しつつスタンドパイプを引き上げることで、外側ピースの外周面と設置地盤との間の間詰が行われる。
【0018】
そして、第1生コンクリート及び第2生コンクリートが固化することで構成された杭頭部から治具を除去し、この杭頭部上に脚材の下端部と一体に設けられた内側ピースを載置し、内側ピースと外側ピースとの間に第4生コンクリートを打設することで、鉄塔基礎が構成される。
【0019】
上述の如く本態様に係る鉄塔基礎の構築方法によって構成された鉄塔基礎は、上述した第1の態様と同様の作用並びに効果を奏する。
【0020】
第4の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、厚さ方向から見て外周が円形とされると共に中心部に第1貫通部が設けられた円板状の本体部と、前記本体部の下面に取り外し可能に取り付けられ、複数の木板で構成されると共に、全体が前記厚さ方向から見て外周が前記本体部の外周よりも大きい円形とされると共に中心部に第1貫通部に収まる第2貫通部が設けられた円板状とされた接触板部と、前記本体部の上面に当該本体部の周方向に沿って複数配置されると共に前記厚さ方向から見て先端部が前記接触板部の外周よりも当該本体部の径方向外側に位置する第1状態と、当該先端部が当該外周よりも当該径方向内側に位置する第2状態と、をとることが可能とされた可動部と、を有している。
【0021】
第4の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具(以下、単に治具と称することがある)によれば、厚さ方向から見て外周が円形とされた円板状の本体部を備えており、この本体部の中心部には、第1貫通部が設けられている。また、この本体部の下面には、接触板部が取り外し可能に取り付けられている。
【0022】
接触板部は、全体が本体部の厚さ方向(以下、単に厚さ方向と称することがある)から見て外周が本体部の外周よりも大きい円形とされた円板状とされており、この接触板部の中心部には、第1貫通部に収まる第2貫通部が設けられている。
【0023】
一方、本体部の上面には、本体部の周方向(以下、単に周方向と称することがある)に沿って複数の可動部が配置されている。これらの可動部は、厚さ方向から見て先端部が接触板部の外周よりも本体部の径方向外側に位置する第1状態と、先端部が当該外周よりも本体部の径方向内側に位置する第2状態とをとることができる。なお、以下では、本体部の径方向を単に径方向と称することがある。
【0024】
このため、例えば、鉄塔基礎の構築中において鉄塔基礎の一部を構成するプレキャストコンクリート製かつ円筒状とされた基礎構成部材の内周側に治具を配置することができる。
【0025】
詳しくは、治具を第2状態として基礎構成部材の内周側に治具を挿入すると共に、治具を第1状態とすることで、例えば、基礎構成部材の内周面に設けられた凹部等に可動部の先端部を係止して、治具を基礎構成部材に対して位置決めすることができる。
【0026】
そして、第1貫通部及び第2貫通部からトレミー菅を挿入して杭を構成する生コンクリートを注入し、基礎構成部材の内側における治具よりも下方側に生コンクリートを充填することができる。
【0027】
このため、本態様に係る治具を用いて構成された鉄塔基礎では、杭の杭頭部が基礎構成部材で囲まれることとなる。また、生コンクリートが固化した後には、本体部を接触板部から取り外すると共に、杭頭部の上面に張り付いた接触板部を剥がすことで治具が除去される。そして、本態様では、接触板部が複数の木板で構成されているため、接触板部が一枚の鋼板等で構成されているような構成と比べて、接触板部を杭頭部から容易に除去することができる。
【0028】
第5の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、第4の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具において、前記可動部は、前記周方向を板厚方向とされかつ前記径方向に延在する板状とされると共に、前記先端部よりも当該径方向内側の部分における下方側の部分の厚さが下方に向かうに従って薄くなっており、前記上面における前記第1貫通部側に設けられると共に前記第1状態において前記可動部が係止されることで当該可動部の前記径方向外側への変位を制限する第1係止部と、前記上面における前記本体部の外周側に設けられると共に前記第1状態において前記可動部が前記周方向に揺動可能に係止される第2係止部と、をさらに備えている。
【0029】
第5の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具によれば、可動部が本体部の周方向を板厚方向とされると共に本体部の径方向に延在する板状とされている。また、可動部の先端部よりも径方向内側の部分における下方側の部分の厚さが下方に向かうに従って薄くなっている。
【0030】
一方、本体部の上面には、第1係止部と、第2係止部とが設けられている。第1係止部は、本体部の上面における第1貫通部側に設けられると共に、治具の第1状態において可動部が係止されることで、可動部における径方向外側への変位を制限することができる。
【0031】
また、第2係止部は、本体部の上面における本体部の外周側に設けられると共に、治具の第1状態において可動部が周方向に揺動可能に係止される。
【0032】
このため、本態様では、例えば、治具を第1状態として基礎構成部材の内周側に配置した状態において、基礎構成部材を杭上に配置するとき、杭主筋と可動部とが接触しても、可動部が周方向に揺動して、杭主筋をいなすことができる。
【0033】
第6の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、第4の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具において、前記可動部は、前記周方向を板厚方向とされかつ前記径方向に延在する板状とされると共に、前記可動部の前記径方向内側の内側端部における前記本体部と反対側の部分は、前記厚さ方向において当該本体部の反対側に延出された延出部とされており、当該延出部における前記径方向外側の周縁部は、前記周方向から見て当該径方向内側から当該径方向外側に向かって下り勾配となっている。
【0034】
第6の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具によれば、可動部が本体部の周方向を板厚方向(以下、単に板厚方向と称することがある)とされると共に本体部の径方向(以下、単に径方向と称することがある)に延在する板状とされている。また、可動部における径方向内側の内側端部において、本体部と反対側の部分が、本体部の厚さ方向において本体部の反対側に延出された延出部とされている。そして、延出部における径方向外側の周縁部は、周方向から見て当該径方向内側から当該径方向外側に向かって下り勾配となっている。
【0035】
このため、本態様では、例えば、治具の第1状態において、基礎構成部材の内周面に設けられた凹部等に可動部の先端部が強固に係止されているとき、延出部における径方向外側の周縁部にハンマー等で撃力を加えることで、可動部の先端部と凹部との係止状態を解除することができる。
【0036】
第7の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、第6の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具において、前記上面における前記第1貫通部側に設けられると共に、前記第1状態において前記可動部の前記径方向外側への変位を制限し、かつ前記本体部に締結部材で取り付けられた内側制限部をさらに備えている。
【0037】
第7の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具によれば、本体部の上面における第1貫通部側に内側制限部が設けられている。そして、この内側制限部は、可動部の径方向外側への変位を制限することができる。このため、本態様では、治具の第1状態において、可動部の先端部が必要以上に径方向外側に突出することを抑制することができる。
【0038】
ところで、本体部と内側制限部とを金属で構成して内側制限部が溶接によって本体部に取り付けられている場合、本体部が溶接時の熱等によって歪むことが考えられる。
【0039】
ここで、本態様では、内側制限部が、本体部に締結部材で取り付けられており、内側制限部を本体部に取り付けることで本体部が歪むことを抑制することができる。
【0040】
第8の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、第7の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具において、前記内側制限部は、前記上面において前記可動部の前記周方向一方側と他方側とに配置されると共に当該上面から前記本体部と反対側に立ち上がった一対のベース部と、前記可動部における前記本体部の反対側に配置されて一対の前記ベース部に挟持されると共に前記周方向の厚さが当該可動部における当該周方向の厚さよりも厚いスペーサ部と、を備えている。
【0041】
第8の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具によれば、内側制限部が、一対のベース部と、スペーサ部とを備えている。そして、一対のベース部は、本体部の上面において可動部の周方向一方側と他方側とに配置されると共に、この上面から本体部と反対側に立ち上がっている。
【0042】
一方、スペーサ部は、可動部における本体部の反対側に配置されて一対のベース部に挟持されると共に、周方向の厚さが可動部における周方向の厚さよりも厚くなっている。このため、周方向において可動部とベース部との間に隙間を確保することができ、その結果、治具の第1状態において、可動部の先端部における周方向の位置の調整を行うことができる。
【0043】
第9の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、第8の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具において、前記スペーサ部は、前記ベース部に取り外し可能に取り付けられている。
【0044】
第9の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具によれば、スペーサ部がベース部に取り外し可能に取り付けられており、スペーサ部をベース部から取り外すことで、厚さ方向において可動部における本体部と反対側が開放された状態となる。
【0045】
このため、例えば、治具の第1状態において、基礎構成部材の内周面に設けられた凹部等に可動部の先端部が固着した時等に、可動部を厚さ方向に動かすことで凹部から可動部を抜くことができる。
【0046】
第10の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、第8の態様又は第9の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具において、前記スペーサ部は、前記周方向から見て、前記可動部と反対側の周縁部が当該可動部と反対側に凸となる半円状とされると共に、当該可動部側の周縁部が当該可動部に沿うように延在する直線状とされている。
【0047】
第10の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具によれば、周方向から見て、スペーサ部における可動部と反対側の周縁部が、可動部と反対側に凸となる半円状とされている。このため、この周縁部が可動部と反対側に凸となる矩形波状とされているような構成に比べて、例えば、治具の第1状態において、ハンマー等の工具で可動部に撃力を加える作業を行うときに、この作業がスペーサ部で阻害されることを抑制することができる。
【0048】
また、周方向から見て、スペーサ部における可動部側の周縁部が、可動部に沿うように延在する直線状とされている。このため、スペーサ部における可動部との接触面積を広くして、スペーサ部が可動部との接触によって損傷することを抑制することができる。
【0049】
第11の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、第7の態様~第10の態様の何れか1態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具において、前記可動部に取り外し可能に取り付けられ、前記内側制限部に当接されることで前記可動部の前記径方向内側への変位を制限する外側制限部をさらに備えている。
【0050】
第11の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具によれば、外側制限部が可動部に取り外し可能に取り付けられており、この外側制限部が内側制限部に当接されることで可動部の径方向内側への変位を制限することができる。
【0051】
このため、本態様では、治具の第1状態において、可動部が径方向内側に変位することを制限することができる。また、外側制限部を可動部から取り外すことで可動部の径方向内側への変位が可能となり、治具を第2状態にすることができる。
【0052】
第12の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具は、第6の態様~第11の態様の何れか1態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具において、前記内側端部に被係止部が設けられている。
【0053】
第12の態様に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具によれば、可動部の内側端部に被係止部が設けられており、この被係止部に治具や工具等を係止させるができる。このため、本態様では、例えば、治具の第1状態において、基礎構成部材の内周面に設けられた凹部等に可動部の先端部が強固に係止されているとき、可動部の被係止部に係止された治具や工具等を介して可動部を径方向内側に引っ張ることができる。
【発明の効果】
【0054】
以上説明したように、本発明に係る鉄塔基礎構造、鉄塔基礎の構築方法及び鉄塔基礎の構築に用いる治具は、鉄塔の大型化等によって杭に作用する荷重が大きくなったときに、この荷重に対する杭の強度を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の外側ピースの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の外側ピースの構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された鉄塔の構成を模式的に示す側面図である。
【
図5】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第1工程を模式的に示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第2工程を模式的に示す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第3工程を模式的に示す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第4工程を模式的に示す断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第5工程を模式的に示す断面図である。
【
図10】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第6工程を模式的に示す断面図である。
【
図11】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築時に用いる治具の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図12】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築時に用いる治具の一部を構成する可動部の構成を模式的に示す側面図である。
【
図13】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築時に用いる治具の一部を構成する第1係止部並びにその周辺部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図14】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築時に用いる治具の一部を構成する第2係止部並びにその周辺部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図15】第1実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築時に用いる治具の一部を構成する可動部の先端部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図16】第2実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築時に用いる治具の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図17】第2実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築時に用いる治具の一部を構成する可動部の構成を模式的に示す側面図である。
【
図18】第2実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築時に用いる治具の一部を構成する可動部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図19】第2実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第5工程を模式的に示す断面図である。
【
図20】第2実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第7工程の一部を模式的に示す断面図である。
【
図21】第2実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の杭の構築工程における第7工程の一部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図15を用いて、本発明の第1実施形態に係る鉄塔基礎構造、鉄塔基礎の構築方法(施工方法)及び鉄塔基礎の構築に用いる治具について説明する。
【0057】
図4に示されるように、本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された「鉄塔基礎10(以下、単に基礎10と称する)」を備えた「鉄塔12」は、複数の主柱材14、複数の水平材16、複数の斜材18及び主柱材14と斜材18とに架け渡された複数の主柱材用補助材20を含んで構成されており、4本の鉄骨脚部22を備えている。なお、以下では、特にことわりのない限り、鉄塔12の高さ方向を単に高さ方向と称することとする。また、鉄塔12の高さ方向は、鉛直方向と一致している。
【0058】
図1に示されるように、基礎10は、鉄骨脚部22の一部を構成する「脚材24」を「設置地盤26」に対して支持しており、「杭28」、「内側ピース30」、「外側ピース32」及び「介在部34」を含んで構成されている。
【0059】
杭28は、
図10にも示されるように、設置地盤26に埋設されており、コンクリートで構成された高さ方向に延びる円柱状の本体部36と、主な部分が本体部36に埋設された「鉄筋籠38」とを含んで構成されている。鉄筋籠38は、高さ方向に延在すると共に高さ方向から見て杭28の軸心を中心とする円周上に複数配置された「杭主筋40」と、高さ方向から見て複数の杭主筋40を囲む円環状とされると共に高さ方向に複数配置された帯筋42とを備えている。
【0060】
そして、杭28の「杭頭部28A」には、コンクリートやモルタルによって杭頭処理が施されており、その「上面28A1」は、均されて平面状とされている。また、杭主筋40の一部は、上面28A1に対して高さ方向上側に延出した状態となっている。なお、杭28の構築工程については後述する。
【0061】
図1に戻り、内側ピース30は、脚材24における高さ方向下側の「下端部24A」と一体的に設けられて杭28の上面28A1上に直接又は部材を介して載置されている。この内側ピース30は、プレキャストコンクリート製とされており、高さ方向に延びる角柱状に構成されている。
【0062】
より詳しくは、内側ピース30は、その「外周面30A」に複数の凹部44が設けられている。この凹部44は、高さ方向から見て外周面30Aの周方向に沿う環状に形成されており、高さ方向に複数配置されている。なお、内側ピース30は、高さ方向から見て杭主筋40が配置される上記円周の内側に配置されている。
【0063】
一方、脚材24は、山形鋼で構成された本体部46と、平型鋼で構成された基部48とが、溶接等による図示しない接合部で接合されることでその主な部分が構成されている。より詳しくは、本体部46には、その延在方向に沿って山形鋼で構成された複数の支圧板50が、図示しない取付部材で取り付けられている。
【0064】
外側ピース32は、プレキャストコンクリート製とされており、
図2及び
図3にも示されるように、軸方向を高さ方向とされた円筒状に構成されている。そして、外側ピース32は、高さ方向から見て杭主筋40及び脚材24を囲むように配置されると共に、高さ方向に複数(本実施形態では、一例として2つ)連なって配置されている。なお、以下では、特に断りのない限り、高さ方向から見て、外側ピース32の「外周面32C」を基準として脚材24に近づく方向を径方向内側と称し、脚材24から離れる方向を径方向外側と称し、外周面32Cに沿う方向を周方向と称することとする。
【0065】
この外側ピース32の内部には、高さ方向から見て円環状に延びるフープ筋52が、高さ方向に複数配置されている。これにより、外側ピース32は、その内周側からの圧力を支持することが可能とされている。なお、これらのフープ筋52は、高さ方向に延在する図示しない縦筋で連結されている。また、フープ筋52は、スパイラル筋とされていてもよい。
【0066】
また、外側ピース32の「内周面32A」には、複数の凹部54が設けられている。この凹部54は、高さ方向から見て内周面32Aの周方向に沿う環状に形成されており、高さ方向に複数配置されている。また、凹部54は、内周面30Aの周方向から見た断面形状が、脚材24側に拡幅された等脚台形状とされている。
【0067】
介在部34は、内側ピース30と外側ピース32との間にコンクリートが充填されることで構成されており、内側ピース30及び外側ピース32と密着状態とされている。そして、内側ピース30の凹部44及び外側ピース32の凹部54にコンクリートが充填されることで、介在部34の外側ピース32側及び内側ピース30側には、突起部56が形成された状態となっている。
【0068】
また、本実施形態では、外側ピース32の外周面32Cと設置地盤26の坑壁26Aとの間にコンクリートが打設されることで、間詰部59が形成されている。
【0069】
そして、本実施形態では、
図3に示されるように、外側ピース32の「下端面32B」から所定の間隔をあけた位置にある凹部54に鋼製の「ボックス部58」が埋め込まれている。詳しくは、ボックス部58は、一例として、径方向内側に開放された直方体状とされており、周方向に等間隔で複数(一例として6つ)配置されている。
【0070】
また、ボックス部58は、その上端部が、外側ピース32の内周面32Aにおけるボックス部58が配置された凹部54の高さ方向上側の凸部、すなわち凹部54間の部分における下端部に位置している。
【0071】
これらのボックス部58は、後述するように、鉄塔基礎の構築に用いる治具の位置決めに用いられる。そして、本実施形態では、この治具を用いることで杭28を構成するコンクリートの一部が、高さ方向における最も下側の外側ピース32の内周側に充填され、杭頭部28Aの一部が高さ方向における最も下側の外側ピース32の内周側に設けられている。また、ボックス部58は、杭頭部28Aの上面28A1の直上に配置されている。
【0072】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0073】
本実施形態では、
図1に示されるように、プレキャストコンクリート製の内側ピース30が、鉄塔12の鉄骨脚部22の一部を構成する脚材24における高さ方向下側の下端部24Aと一体的に設けられている。
【0074】
また、内側ピース30の外周側に内側ピース30の外周面30Aと間隔をあけて、プレキャストコンクリート製の外側ピース32が高さ方向に複数連なって配置されており、これらの外側ピース32は、内側ピース30側からの圧力を支持可能とされている。
【0075】
そして、内側ピース30と外側ピース32との間には、内側ピース30及び外側ピース32と密着状態で設けられたコンクリート製の介在部34が介在している。このため、鉄塔12に懸架された電線等に起因する引き上げ荷重等が脚材24を介して内側ピース30に伝達すると、内側ピース30側から外側ピース32側に介在部34を介して圧力が作用することとなる。そして、この圧力は、外側ピース32によって支持することができるため、本実施形態では、鉄塔12を安定した状態で支持することができる。
【0076】
ところで、本実施形態では、設置地盤26に埋設された杭28の杭頭部28Aにおける上面28A1上に内側ピース30が配置されており、杭28には、脚材24を介して高さ方向上側からの荷重、すなわち押し込み荷重が作用する。そして、鉄塔12が大型化すると、この押し込み荷重によって杭28が圧縮された杭28がはらむといったことが考えられる。
【0077】
ここで、本実施形態では、杭頭部28Aの一部が高さ方向における最も下側の外側ピース32の内周側に設けられている。このため、杭28に作用する押し込み荷重を外側ピース32で支持し、この押し込み荷重が杭28に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、
図2にも示されるように、外側ピース32が軸方向を高さ方向とされた円筒状とされている。また、
図3に示されるように、高さ方向に複数連なって配置された外側ピース32のうち最も下側の外側ピース32の内周面32Aにおける杭頭部28Aの上面28A1の直上に、外側ピース32の径方向内側に開放されたボックス部58が、この外側ピース32の周方向に沿って複数配置されている。
【0079】
このため、杭頭部28Aを構成するための生コンクリートを最も下側の外側ピース32の内周側に注入するときにおいて、複数のボックス部58を用いて、この生コンクリートを高さ方向上側から抑える治具等を支持することができる。その結果、杭頭部28Aの上面28A1を所定の位置に配置することが容易となる。
【0080】
次に、
図5~
図10を主に用いて、本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎10の構築方法の手順の一例を杭28の構築方法を主として示すこととする。
【0081】
図5に示される第1工程では、設置地盤26に円筒状の「スタンドパイプ60」を打ち込んで、スタンドパイプ60内を図示しないハンマグラブ等で掘削する。なお、スタンドパイプ60の地表面26Bからの設置深さY[m]は、以下の式(A)で求められる。
【0082】
【数1】
ここで、
X:地下水位[m]
Z:外側ピースの設置面の深さ[m]
ρ
C:コンクリートの重量密度[tf/m
3]
ρ
W:水の重量密度[tf/m
3]
【0083】
また、本実施形態では、スタンドパイプ60の設置深さY並びに設置深さYに関する各種値は、一例として、以下の表に示される値となっている。
【0084】
【0085】
次に、
図6に示される第2工程では、スタンドパイプ60の内周側において、スタンドパイプ60よりも直径が小さい円筒状の「ケーシング62」の打ち込みと、ケーシング62内の掘削とを繰り返す。そして、高さ方向に連なったケーシング62において最も深い位置にあるケーシング62の先端部が、設定された杭先端深さまで達したところでケーシング62内に鉄筋籠38を設置する。
【0086】
次に、
図7に示される第3工程では、トレミー管64をケーシング62内の最深部まで挿入してケーシング62内に第1生コンクリートとしての「生コンクリート66」を注入する。このとき、生コンクリート66の注入量に応じてケーシング62及びトレミー管64を引き上げる。そして、注入された生コンクリート66の表面が所定の位置に達したところで、生コンクリート66の表面の表面部分すなわちスライム66Aを、バキューム装置等を用いて除去する。
【0087】
次に、
図8に示される第4工程では、最後のケーシング62をゆっくりと引き抜き、スタンドパイプ60における高さ方向下側の部分の内側に生コンクリート66を充填する。このとき、必要に応じて、スタンドパイプ60内にさらに生コンクリート66注入し、スタンドパイプ60の先端から生コンクリート66の表面までの生コンクリート66の圧力と、スタンドパイプ60の先端深さから地下水位Xまでの地下水の水圧とが平衡状態となるようにする。このとき、スタンドパイプ60内の水を抜水してもよい。
【0088】
なお、上述したようにスタンドパイプ60の設置深さYを設定した理由は、本工程において、スタンドパイプ60内の水を除去したときの生コンクリート66への地下水の浸入を抑制するためである。
【0089】
次に、
図9に示される第5工程では、生コンクリート66の表面の位置が予め設定された外側ピース32の据付位置(設置位置)であるか否かを確認する。このとき、この表面の位置が据付位置にない場合には、この表面の位置が据付位置となるように生コンクリート66の追加や除去等の処理を行う。そして、下側の外側ピース32の内周面32Aにおける下端面32Bから所定の間隔をあけた箇所に円板状の「治具68」を配置して、この外側ピース32を杭主筋40と、スタンドパイプ60との間に位置するように、生コンクリート66上に配置する。そして、この外側ピース32の上側に上側の外側ピース32を配置する。
【0090】
ここで、本実施形態に係る鉄塔基礎の構築に用いる治具68の構成の一例について説明することとする。
【0091】
図11に示されるように、治具68は、鋼製の「本体部70」と、コンクリート型枠用合板で構成された「接触板部72」と、複数の「可動部74」とを備えている。詳しくは、本体部70は、外周が円形とされた円板状とされると共に、その板厚方向から見て中心部に第1貫通部としての「貫通部76」が設けられている。
【0092】
接触板部72は、全体が、本体部70の厚さ方向から見て外周が本体部70の外周よりも大きい円形とされると共に、中心部に貫通部76に収まる第2貫通部としての「貫通部78」が設けられた円板状とされている。また、接触板部72は、その厚さ方向から見て、その中心を通りかつ当該中心において直交する2本の直線に沿って分割されており、換言すれば、接触板部72は、4枚の略扇形状のコンクリート型枠用合板で構成されている。
【0093】
なお、貫通部78は、トレミー管64が挿通可能な大きさとされている。また、接触板部72は、図示しないボルト等の取付部材によって、本体部70の下面に取り外し可能に取り付けられている。
【0094】
一方、可動部74は、
図12にも示されるように、本体部70の上面70Aに本体部70の周方向に等間隔で複数(一例として6つ)配置されている。この可動部74は、その主な部分を構成するメインプレート80と、ストッパプレート82とを含んで構成されている。
【0095】
メインプレート80は、板厚方向を本体部70の周方向とされると共に、本体部70の径方向に延在する矩形の板状とされている。より詳しくは、
図15にも示されるように、メインプレート80における本体部70の外周側の「先端部80A」よりも本体部70の径方向内側の部分における下方側の部分は、その厚さが下方に向かうにしたがって薄くなっており、この部分の下端部は、メインプレート80の延在方向から見て下方側に凸とされた曲面状とされている。なお、以下では、この部分を先細り部80Cと称することとする。
【0096】
一方、ストッパプレート82は、板厚方向を本体部70の径方向とされると共に、本体部70の厚さ方向に延在する矩形の板状とされており、メインプレート80における本体部70の貫通部76側の基端部80Bに溶接等による図示しない接合部で接合されている。なお、ストッパプレート82の長さは、
図13に示されるように、メインプレート80における本体部70の厚さ方向の長さよりも僅かに長い長さに設定されると共に、ストッパプレート82の幅は、メインプレート80の厚さの3倍程度の長さに設定されている。
【0097】
図11に戻り、可動部74は、それぞれ、第1係止部としての「係止プレート84」及び第2係止部としての「係止プレート86」に係止されている。詳しくは、係止プレート84は、本体部70の上面における貫通部76側に配置されており、板厚方向を本体部70の径方向とされた矩形の板状とされている。なお、係止プレート84の厚さは、メインプレート80の上縁部における基端部80B側の部分に設けられたスリット部88に嵌合可能な厚さに設定されている(
図12参照)。
【0098】
また、
図13に示されるように、係止プレート84には、本体部70の径方向から見て本体部70の厚さ方向を長手方向とされた矩形状の貫通部90が形成されている。この貫通部90は、メインプレート80が挿通可能かつストッパプレート82が挿通不可能な大きさに設定されており、貫通部90には、本体部70の貫通部76側からメインプレート80が挿通されている。
【0099】
図11に戻り、係止プレート86は、本体部70の上面における本体部70の外周側に配置されており、板厚方向を本体部70の径方向とされた矩形の板状とされている。
【0100】
また、
図14に示されるように、係止プレート86には、本体部70の径方向から見て本体部70の厚さ方向を長手方向とされると共に当該厚さ方向と直交する方向の長さが杭主筋40の直径の2倍程度とされた矩形状の貫通部92が形成されている。そして、貫通部92には、本体部70の貫通部76側からメインプレート80が挿通されている。
【0101】
上記のように構成された治具68では、可動部74が、本体部70の厚さ方向から見て、メインプレート80の先端部80Aが接触板部72の外周よりも本体部70の径方向外側に位置する第1状態と、先端部80Aが当該外周よりも当該径方向内側に位置する第2状態とをとることが可能となっている。
【0102】
また、第1状態等において、可動部74のストッパプレート82が係止プレート84に係止されることで、可動部74の本体部70の径方向外側への変位が制限されるようになっている。さらに、第1状態において、可動部74のメインプレート80が、係止プレート86に、本体部70の周方向に揺動可能に係止されるようになっている。
【0103】
このため、本実施形態では、治具68を第2状態として外側ピース32の内周側に挿入すると共に、治具68を第1状態とすることで、外側ピース32の内周面32Aに設けられたボックス部58に可動部74の先端部80Aを係止して、治具68を外側ピース32に対して位置決めすることができる。
【0104】
なお、本実施形態では、ボックス部58の上端部が、外側ピース32の内周面32Aにおけるボックス部58が配置された凹部54の高さ方向上側の凸部における下端部に位置している。このため、高さ方向上側から見て、ボックス部58の位置の確認が容易となる。また、治具68のメインプレート80における先端部80Aの掛かり代を確保し、生コンクリート94によって作用する圧力を治具68で支持し易くすることができる。
【0105】
また、本実施形態では、治具68を第1状態として外側ピース32の内周側に配置した状態において、外側ピース32を生コンクリート66上に配置するとき、杭主筋40と可動部74の先細り部80Cとが接触しても、
図15に示されるように、可動部74が本体部70の周方向に揺動して、杭主筋40をいなすことができる。
【0106】
鉄塔基礎構造の構築方法の説明に戻り、
図9に示されるように、第5工程では、外側ピース32を生コンクリート66上に配置した後に、治具68の貫通部78にトレミー管64を挿入して治具68の下方側において外側ピース32の内周側に第2生コンクリートとしての「生コンクリート94」を充填し、トレミー管64引き抜く。
【0107】
次に、
図10に示される第6工程では、スタンドパイプ60の内周面と外側ピース32の外周面32Cとの間に第3生コンクリートとしての「生コンクリート96」を充填しつつ、スタンドパイプ60を引き上げる。
【0108】
次に、
図1及び
図10を参照して第7工程について説明すると、第7工程では、生コンクリート66及び生コンクリート94の固化後のコンクリートすなわち杭28の本体部36の表面から治具68を除去し、杭28の上面28A1上に内側ピース30を載置すると共に、脚材24が所定の位置に配置されるように内側ピース30を位置決めする。さらに、内側ピース30と外側ピース32との間に生コンクリートを充填して介在部34を形成する。なお、介在部34の形成に用いられる生コンクリートは、本実施形態において第4生コンクリートとして機能している。
【0109】
なお、本実施形態では、治具68の接触板部72が複数のコンクリート型枠用合板で構成されているため、接触板部72が一枚の鋼板等で構成されているような構成と比べて、接触板部72を杭頭部28Aから容易に除去することができる。
【0110】
以上、説明したように、本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎10、鉄塔基礎の構築方法及び鉄塔基礎の構築に用いる治具68によれば、鉄塔12の大型化等によって杭28に作用する荷重が大きくなったときに、この荷重に対する杭28の強度を確保することができる。
【0111】
<第2実施形態>
以下、
図16~
図21を用いて、本発明の第2実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された「鉄塔基礎100(以下、単に基礎100と称する)」並びに基礎100の構築に用いられる「治具102」について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0112】
本実施形態に係る基礎100(
図21参照)は、基本的に第1実施形態に係る基礎10と同様の構成とされているものの、本実施形態に係る治具102の構成は、第1実施形態に係る治具68と大きく異なっており、これに伴い基礎100の構成も基礎10から一部変更されている。したがって、以下では、治具102の構成を中心に説明していくこととする。
【0113】
図16に示されるように、治具102は、本体部70と、「接触板部104」と、複数の「可動部106」と、それぞれの可動部106に対して設けられた「内側制限部108」とを備えている。
【0114】
接触板部104は、本体部70の厚さ方向から見て、中心角が120度程度に設定された扇形状とされてコンクリート型枠用合板で構成された板材110が、本体部70の周方向に3枚かつ本体部70の厚さ方向に複数枚重なって配置されることで構成されている。なお、板材110は、発泡スチロール等で構成されていてもよい。
【0115】
また、本体部70及び板材110には、図示しない貫通部が複数形成されており、これらの貫通部に接触板部104の高さ方向下側から通しボルト112が挿通されて、ボルト112に本体部70の高さ方向上側からナット114が締結されることで、本体部70と接触板部104とが一体化されている。
【0116】
また、上記のように構成された接触板部104は、全体が、本体部70の厚さ方向から見て外周が本体部70の外周よりも大きい円形とされると共に、中心部に貫通部76に収まるトレミー管64が挿通可能な大きさとされた第2貫通部としての「貫通部116」が設けられた円盤状とされている。
【0117】
可動部106は、本体部70の上面70Aに本体部70の周方向に等間隔で複数(一例として6つ)配置されている。この可動部106は、全体的には板厚方向を本体部70の周方向とされると共に、本体部70の径方向に延在する矩形の板状とされている。
【0118】
より詳しくは、
図17にも示されるように、可動部106における本体部70の径方向内側の「内側端部106A」における高さ方向上側(本体部70と反対側)の部分は、高さ方向上側に延出された「延出部106B」とされている。
【0119】
この延出部106Bは、本体部70の周方向から見て高さ方向上側から高さ方向下側に向かうに従って拡幅された三角形状とされている。そして、本体部70の周方向から見て、延出部106Bにおける本体部70の径方向外側の「周縁部106B1」が、本体部70の径方向内側から当該径方向外側に向かって下り勾配となっている。
【0120】
なお、可動部106における本体部70の径方向外側の「先端部106C」における高さ方向下側の周縁部は、メインプレート80と同様に、可動部106における先端部106Cの当該径方向内側の部分の高さ方向下側の周縁部よりも高さ方向上側に位置している。
【0121】
また、可動部106の内側端部106Aには、本体部70の周方向に貫通された被係止部としての「貫通部118」が形成されている。なお、可動部106の内側端部106Aには、貫通部118の代わりにスタッドボルト等を設けてもよい。
【0122】
一方、内側制限部108は、
図18にも示されるように、一対の「ベース部120」と、「スペーサ部122」とを備えている。
【0123】
詳しくは、ベース部120は、可動部106における本体部70の周方向一方側と他方側とのそれぞれに配置されている。このベース部120は、鋼材で構成されており、本体部70の上面70Aに沿うように配置されると共に板厚方向を高さ方向とされた板状の固定片部120Aと、固定片部120Aの可動部106側の周縁部から高さ方向上側に延出された立上り片部120Bとを含んで構成されている。すなわち、立上り片部120Bは、本体部70の上面70Aに対して、本体部70と反対側に立ち上がった状態となっている。なお、立上り片部120Bの高さ方向上側の周縁部は、高さ方向上側に凸となる半円状とされている。
【0124】
また、固定片部120Aには、貫通部124が形成されており、本体部70には、本体部70の径方向において、本体部70の貫通部76と本体部70の外周縁部70Bとの中間部に貫通部124に対応する貫通部126が形成されている。
【0125】
そして、貫通部124及び貫通部126に本体部70の高さ方向下側から締結部材としての「ボルト128」が挿通されて、ボルト128に固定片部120Aの高さ方向上側から締結部材としての「ナット130」が締結されることで、ベース部120が本体部70に取り付けられている。なお、ベース部120の本体部70への取り付けには、リベット等を用いてもよい。
【0126】
スペーサ部122は、可動部106における高さ方向上側(可動部106における本体部70の反対側に)配置されて一対の立上り片部120Bに挟持されている。また、スペーサ部122は、本体部70の周方向の厚さが可動部106における当該周方向の厚さよりも厚い、より具体的には、可動部106の厚さの2~3倍程度の厚さの鋼材で構成されている。
【0127】
このスペーサ部122は、本体部70の周方向から見て、高さ方向上側(可動部106と反対側)の「周縁部122A」が高さ方向上側に凸となる半円状とされている。また、本体部70の周方向から見て、スペーサ部122における本体部70の径方向外側の周縁部122B及び径方向内側の周縁部122Cが高さ方向に延在する直線状とされている。
【0128】
そして、本体部70の周方向から見て、スペーサ部122における高さ方向下側の「周縁部122D」が本体部70の径方向(可動部106の延在方向)に沿うように延在する直線状とされている。すなわち、スペーサ部122における本体部70の周方向から見た形状は、所謂かまぼこ型とされている。
【0129】
上記のように構成されたスペーサ部122は、本体部70の周方向から見て、その中央部に本体部70の周方向に貫通された貫通部132が形成されており、立上り片部120Bには、貫通部132に対応する貫通部134が形成されている。
【0130】
そして、スペーサ部122は、本体部70の周方向から見て、スペーサ部122の周縁部122Aと、立上り片部120Bの高さ方向上側の周縁部とが一致した状態で配置されている。そして、貫通部132及び貫通部134に、本体部70の周方向一方の立上り片部120Bの当該周方向一方側からボルト136が挿通されて、ボルト136に当該周方向他方の立上り片部120Bの当該周方向他方側からナット138が締結されることで、スペーサ部122が一対のベース部120に取り付けられている。
【0131】
また、可動部106における内側制限部108に対して本体部70の径方向外側の部分には、貫通部140が形成されている。そして、貫通部140に可動部106における本体部70の周方向一方側からボルト142が挿通されて、ボルト142に可動部106における当該周方向他方側からナット144が締結されている。
【0132】
なお、ボルト142及びナット144は、本体部70の径方向から見てベース部120と一部が重なった状態となっており、可動部106が当該径方向内側に変位するとボルト142及びナット144がベース部120に当接するようになっている。そして、以下では、ボルト142及びナット144の集合体を「外側制限部146」と称することとする。
【0133】
上記のように構成された治具102では、治具68と同様に、可動部106が、本体部70の厚さ方向から見て、先端部106Cが接触板部104の外周よりも本体部70の径方向外側に位置する第1状態と、先端部106Cが当該外周よりも当該径方向内側に位置する第2状態とをとることが可能となっている。
【0134】
また、
図16に示されるように、本体部70の上面70Aにおける複数箇所には、治具102の移動に用いられるアイナット148が設けられている。
【0135】
一方、基礎100は、
図21に示されるように、基礎100の構築において治具102を使用するにあたって、杭主筋40が主に杭28に埋設された下側配筋部40Aと、介在部34(
図21には図示せず)に埋設された上側配筋部40Bとに分割されると共に、これらが継手部150で連結されている。
【0136】
詳しくは、下側配筋部40A及び上側配筋部40Bは、ねじ節鉄筋で構成されており、杭頭部28Aの上面28A1の直上において連結されている。すなわち、下側配筋部40Aの高さ方向上側の端部40A1は、
図20にも示されるように、上面28A1の直上に位置している。
【0137】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0138】
本実施形態では、
図17に示されるように、可動部106が本体部70の周方向を板厚方向とされると共に本体部70の径方向に延在する板状とされている。また、可動部106における本体部70の径方向内側の内側端部106Aにおいて、本体部70と反対側の部分が、本体部70の厚さ方向において本体部70の反対側に延出された延出部106Bとされている。そして、延出部106Bにおける本体部70の径方向外側の周縁部106B1は、本体部70の周方向から見て当該径方向内側から当該径方向外側に向かって下り勾配となっている。
【0139】
このため、本実施形態では、例えば、治具102の第1状態において、外側ピース32の内周面32Aに設けられたボックス部58(
図3参照)に可動部106の先端部106Cが強固に係止されているとき、延出部106Bにおける本体部70の径方向外側の周縁部106B1にハンマー等で撃力を加えることで、可動部106の先端部106Cとボックス部58との係止状態を解除することができる。
【0140】
また、本実施形態では、本体部70の上面70Aにおける貫通部76側に内側制限部108が設けられている。そして、この内側制限部108は、可動部106における本体部70の径方向外側への変位を制限することができる。このため、本実施形態では、治具102の第1状態において、可動部106の先端部106Cが必要以上に本体部70の径方向外側に突出することを抑制することができる。
【0141】
ところで、本体部70と内側制限部108とを金属で構成して内側制限部108が溶接によって本体部70に取り付けられている場合、本体部70が溶接時の熱等によって歪むことが考えられる。
【0142】
ここで、本実施形態では、内側制限部108が、本体部70にボルト128及びナット130で取り付けられており、内側制限部108を本体部70に取り付けることで本体部70が歪むことを抑制することができる。
【0143】
また、本実施形態では、
図18にも示されるように、内側制限部108が、一対のベース部120と、スペーサ部122とを備えている。そして、一対のベース部120は、本体部70の上面70Aにおいて可動部106における本体部70の周方向一方側と他方側とに配置されると共に、この上面70Aから本体部70と反対側に立ち上がっている。
【0144】
一方、スペーサ部122は、可動部106における本体部70の反対側に配置されて一対のベース部120に挟持されると共に、本体部70の周方向の厚さが可動部106における当該周方向の厚さよりも厚くなっている。このため、本体部70の周方向において可動部106とベース部120との間に隙間を確保することができ、その結果、治具102の第1状態において、可動部106の先端部106Cにおける当該周方向の位置の調整を行うことができる。
【0145】
また、本実施形態では、スペーサ部122がベース部120に取り外し可能に取り付けられており、スペーサ部122をベース部120から取り外すことで、本体部70の厚さ方向において可動部106における本体部70と反対側が開放された状態となる。
【0146】
このため、例えば、治具102の第1状態において、ボックス部58に可動部106の先端部106Cが固着した時等に、可動部106を本体部70の厚さ方向に動かすことでボックス部58から可動部を抜くことができる。
【0147】
また、本実施形態では、本体部70の周方向から見て、スペーサ部122における可動部106と反対側の周縁部122Aが、可動部106と反対側に凸となる半円状とされている。このため、この周縁部122Aが可動部106と反対側に凸となる矩形波状とされているような構成に比べて、例えば、治具102の第1状態において、ハンマー等の工具で可動部106の延出部106Bに撃力を加える作業を行うときに、この作業がスペーサ部122で阻害されることを抑制することができる。
【0148】
また、本体部70の周方向から見て、スペーサ部122における可動部106側の周縁部122Dが、可動部106に沿うように延在する直線状とされている。このため、スペーサ部122における可動部106との接触面積を広くして、スペーサ部122が可動部106との接触によって損傷することを抑制することができる。
【0149】
また、本実施形態では、外側制限部146が可動部106に取り外し可能に取り付けられており、この外側制限部146が内側制限部108に当接されることで可動部106における本体部70の径方向内側への変位を制限することができる。
【0150】
このため、本実施形態では、治具102の第1状態において、可動部106が本体部70の径方向内側に変位することを制限することができる。また、外側制限部146を可動部106から取り外すことで可動部106における本体部70の径方向内側への変位が可能となり、治具102を第2状態にすることができる。
【0151】
加えて、本実施形態では、可動部106の内側端部106Aに本体部70の周方向に貫通された貫通部118が形成されており、この貫通部118にシャックル等の一部を挿通させることができる。このため、本態様では、例えば、治具の第1状態において、ボックス部58に可動部106の先端部106Cが強固に係止されているとき、可動部106の貫通部118に係止されたシャックル等を介して可動部106を本体部70の径方向内側に引っ張ることができる。
【0152】
また、本実施形態では、
図19に示されるように、杭主筋40が下側配筋部40Aと上側配筋部40Bとに分割されており、上記第4工程において、杭主筋40の下側配筋部40Aのみが生コンクリート66に埋没した状態とすることができる。このため、最後のケーシング62を引き抜くときに、杭主筋40の一部によって生コンクリート66の流動が阻害されることを抑制し、スタンドパイプ60の内側に生コンクリート66を円滑に充填することができる。
【0153】
そして、本実施形態では、基礎100の構築時に治具102を用いることで、基礎10の構築工程に対して、第5工程並びに第7工程の一部が変更されている。
【0154】
具体的には、本実施形態の第5工程では、治具102を外側ピース32に対して設置した後に、下側配筋部40Aの頭部に付着した生コンクリート66の一部等をウェス等で拭き取る。なお、このとき、本体部70の径方向から見て、下側配筋部40Aの頭部と接触板部104とが重なった状態となっている。
【0155】
そして、治具102の貫通部116にトレミー管64を挿入して治具102の下方側において外側ピース32の内周側に生コンクリート94を充填し、トレミー管64引き抜く。
【0156】
一方、本実施形態の第7工程では、
図20及び
図21に示されるように、生コンクリート66及び生コンクリート94の固化後に治具102を除去し、杭28の上面28A1上に内側ピース30を載置する。そして、下側配筋部40Aに継手部150を介して上側配筋部40Bを連結して、内側ピース30と外側ピース32との間に生コンクリートを充填して介在部34を形成する。
【0157】
そして、本実施形態では、基礎100の構築工程を上記のようにすることで、内側ピース30の位置決め作業が杭主筋40で阻害されることを抑制することができる。
【0158】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、外側ピース32が高さ方向に2つ配置されていたが、脚材24の設置位置をより深い位置にする場合には、適宜外側ピース32を追加してもよい。
【0159】
(2) また、上述した実施形態に係る基礎10及び基礎100の構築方法の各工程は、上述のものに限られるものではない。すなわち、基礎10を構築可能な限りにおいて、各工程の一部を入れ替えたり、設置地盤26の状態等に応じて一部の工程を省略してもよい。
【符号の説明】
【0160】
10 鉄塔基礎
12 鉄塔
24 脚材
24A 下端部
26 設置地盤
28 杭
28A 杭頭部
28A1 上面
30 内側ピース
30A 外周面
32 外側ピース
32A 内周面
32B 下端面
32C 外周面
34 介在部
38 鉄筋籠
40 杭主筋
58 ボックス部
60 スタンドパイプ
62 ケーシング
66 生コンクリート(第1生コンクリート)
68 治具
70 本体部
72 接触板部
74 可動部
76 貫通部(第1貫通部)
78 貫通部(第2貫通部)
80A 先端部
84 係止プレート(第1係止部)
86 係止プレート(第2係止部)
94 生コンクリート(第2生コンクリート)
96 生コンクリート(第3生コンクリート)
100 鉄塔基礎
102 治具
104 接触板部
108 内側制限部
116 貫通部(第2貫通部)
118 貫通部(被係止部)
120 ベース部
122 スペーサ部
122A 周縁部
122D 周縁部
128 ボルト(締結部材)
130 ナット(締結部材)
146 外側制限部