(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031571
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】視線追跡較正と視力検査の同時実行
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20250228BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A61B3/028
A61B3/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024116632
(22)【出願日】2024-07-22
(31)【優先権主張番号】18/455664
(32)【優先日】2023-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523017165
【氏名又は名称】ピクシーレイ オイ
【氏名又は名称原語表記】Pixieray Oy
【住所又は居所原語表記】Karamalmintie 2, 02630 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】へリン エミリア
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA21
4C316AA27
4C316FA01
4C316FZ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】視線追跡較正機能と視力検査機能を一緒に組み込んだ光学器具を提供する。
【解決手段】プロセッサ110は、(a)視標を含む画像をスクリーン112上に表示し;(b)ユーザ入力を取得し;(c)ユーザが視標をはっきりと見ることができたか否かを判定し;(d)はっきりと見ることができた場合、視標のサイズ、位置、及び/又は視標特徴、及び/又はユーザの目106の特徴の外観の情報を収集し;(e)はっきりと見ることができなかった場合にも視標のサイズ、位置、及び/又はユーザの目の外観の特徴の情報を収集し、更に当該視標よりも大きい視標を含む次の画像を使用して(a)~(e)を繰り返し、(f)収集した情報を処理して屈折力を決定し、同時に視線追跡手段を較正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視線追跡手段と;
少なくとも1つのプロセッサと;
を備える光学器具であって、前記プロセッサは、
(a)少なくとも1つの視標を表現するユーザ用画像をスクリーン上に表示することと;
(b)前記光学器具を使用している間に、ユーザが前記ユーザ用画像に表現されたユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを示す所定のユーザ入力を得ることと;
(c)前記所定のユーザ入力に基づいて、前記ユーザが前記ユーザ用画像に表現された前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを判定することと;
(d)前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたと判定した場合、前記ユーザがはっきりと見ることができた前記ユーザ用視標のサイズ、前記ユーザ用画像における前記ユーザ用視標及び/又は視標特徴の位置、前記ユーザが前記位置に表示されている前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたときの前記ユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報を収集することと;
(e)前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができなかったと判定した場合、
前記ユーザがはっきりと見ることができなかった前記ユーザ用視標のサイズ、前記ユーザ用画像における前記ユーザ用視標及び/又は視標特徴の位置、前記ユーザが前記位置に表示されている前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができなかったときの前記ユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報を収集し、
前記ユーザ用画像で表現された前記ユーザ用視標よりもサイズが大きい少なくとも1つの次の視標を表現する次の画像を用いてステップ(a)~(e)を繰り返すことと;
(f)前記収集した情報を処理して、前記ユーザに固有の1つ以上の屈折力を決定し、同時に視線追跡手段を較正することと;
を遂行するように構成される、光学器具。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができると判定した場合、別の次の画像を使用して前記(a)から前記(e)を繰り返すように構成され、前記別の次の画像は、前記ユーザ用画像に表現された視標よりもサイズが小さい少なくとも1つの別の次の視標を表現する、請求項1に記載の光学器具。
【請求項3】
先行する請求項のいずれかに記載の光学器具であって、片眼毎に能動光学要素を備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、
・ 前記能動光学要素を制御して、1つ以上の屈折力のうち少なくとも1つを生成し、
・ 前記(a)から前記(e)を繰り返し、
・ 新たに収集した情報を処理して、視線追跡手段を更に較正する、
ように構成される、光学器具。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記ユーザが与えられた視標をはっきりと見ることができないと判定した場合に、1つ以上の光学的度数のうちの少なくとも1つを調整するように構成される、請求項3に記載の光学器具。
【請求項5】
前記少なくとも1つの視標が、ランドルトC視標、スネレン視標、スローン視標、早期治療糖尿病網膜症研究(ETDRS)視標、HOTV文字、アレン図形、アルファベット文字、数字、記号、デザイン、自由形状のうちの少なくとも1つを含む、先行する請求項のいずれかに記載の光学器具。
【請求項6】
前記ユーザは、25センチメートルから750センチメートルの範囲にある所定の距離(D1)から前記スクリーンを見る、先行する請求項のいずれかに記載の光学器具。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つの入力手段を介して所定のユーザ入力が取得される、先行する請求項のいずれかに記載の光学器具。
【請求項8】
先行する請求項のいずれかに記載の光学器具であって、
・ 片目毎に提供される能動光学要素と;
・ 前記能動光学要素を保持するフレームと;
・ 前記フレームのテンプルに取り付けられ、所定のユーザ入力を提供するためにユーザが使用する少なくとも1つの入力手段と;
を備える、光学器具。
【請求項9】
先行する請求項のいずれかに記載の光学器具であって、片眼毎に能動光学要素を備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向、前記ユーザの注視点の少なくとも1つを決定し、
・ 前記ユーザの目の視線方向の輻輳角、前記ユーザの目の瞳孔間距離、前記ユーザの注視点の少なくとも1つに基づいて、前記ユーザが注視している光学的深度を決定し、
・ 前記ユーザが注視している光学的深度に基づいて、前記能動光学要素によって生成される1つ又は複数の屈折力の少なくとも1つを選択する、
ように構成される、光学器具。
【請求項10】
先行する請求項のいずれかに記載の光学器具と;
画像を表示するために使用されるスクリーンと;
ユーザ入力を得るために用いられる少なくとも1つの入力手段と;
を備えるシステム。
【請求項11】
前記スクリーンは、ユーザ又は医療専門家の装置のディスプレイ、プロジェクタの投影面のいずれかである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
視線追跡手段と少なくとも1つのプロセッサとを備える光学器具によって実施される方法であって、
(a)少なくとも1つの視標を表現するユーザ用画像をスクリーン上に表示することと;
(b)請求項1から9のいずれかに記載の光学器具を使用している間に、ユーザが前記ユーザ用画像に表現されたユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを示す所定のユーザ入力を得ることと;
(c)前記所定のユーザ入力に基づいて、前記ユーザが前記ユーザ用画像に表現された前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを判定することと;
(d)前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたと判定した場合、前記ユーザがはっきりと見ることができた前記ユーザ用視標のサイズ、前記ユーザ用画像における前記ユーザ用視標及び/又は視標特徴の位置、前記ユーザが前記位置に表示されている前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたときの前記ユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報を収集することと;
(e)前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができなかったと判定した場合、
前記ユーザがはっきりと見ることができなかった前記ユーザ用視標のサイズ、前記ユーザ用画像における前記ユーザ用視標及び/又は視標特徴の位置、前記ユーザが前記位置に表示されている前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができなかったときの前記ユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報を収集し、
前記ユーザ用画像で表現された前記ユーザ用視標よりもサイズが大きい少なくとも1つの次の視標を表現する次の画像を用いてステップ(a)~(e)を繰り返すことと;
(f)収集した情報を処理して、前記ユーザに固有の1つ以上の屈折力を決定し、同時に視線追跡手段を較正することと;
を含む、方法。
【請求項13】
前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができると判定した場合、別の次の画像を使用して前記(a)から前記(e)を繰り返すことを含み、前記別の次の画像は、前記ユーザ用画像に表現された視標よりもサイズが小さい少なくとも1つの別の次の視標を表現する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
・ 光学器具の能動光学要素を制御して、1つ又は複数の屈折力の少なくとも1つを生成することと;
・ 前記(a)から前記(e)を繰り返すことと;
・ 新たに収集した情報を処理して、視線追跡手段を更に較正することと;
を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記ユーザが与えられた視標をはっきりと見ることができないと判定した場合に、1つ以上の光学的度数のうちの少なくとも1つを調整することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
・ 視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向、ユーザの注視点の少なくとも1つを決定することと;
・ 前記ユーザの目の視線方向の輻輳角、前記ユーザの目の瞳孔間距離、前記ユーザの注視点の少なくとも1つに基づいて、前記ユーザが注視している光学的深度を決定することと;
・ 前記ユーザが注視している光学的深度に基づいて、前記光学器具の前記能動光学要素によって生成される1つ又は複数の屈折力の少なくとも1つを選択することと;
を含む、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示事項(以下、本開示という)は、視線追跡較正機能と視力検査機能を一緒に組み込んだ光学器具に関する。また本開示は、視線追跡較正機能と視力検査機能を一緒に組み込んだシステムに関する。更に本開示は、視線追跡較正機能と視力検査機能を一緒に組み込む方法に関する。
【背景】
【0002】
従来から眼の検査は目の健康維持や全身の健康維持に役立てられている。従来から、眼の検査においては、被験者から所定の距離に配置された、規格統一された視力表上に視標が表示され、被験者が判読できる視標の大きさが決定された。眼の検査を定期的に実施することは、視力の屈折誤差を特定すること、患者の眼が何らかの眼疾患に罹患しているかどうかを判定すること、未確認の眼疾患に罹患している患者の視力発達を支援すること、慢性疾患に罹患している患者の眼の健康を監視すること、何らかの眼疾患により眼の光学特性が変化した場合に眼の処方を更新すること、の少なくとも1つに役立つ。屈折異常は、ユーザが近視、遠視、乱視などを患っている場合に発生する。眼の状態の例としては、緑内障、白内障、糖尿病性網膜症などが挙げられる。目の健康に影響を及ぼす可能性のある慢性疾患の例としては、糖尿病や高血圧などがある。
【0003】
しかし、眼の検査を実施するための既存の技術及び装置には、これらの技術や装置に関連するいくつかの制限がある。従来、ユーザの視力を測定するための眼の検査は、様々なサイズの視標をスクリーン(例えば規格統一された視力表など)に表示し、ユーザに片眼で視標を読ませることによって実施されている。この検査は別の眼に切り替えて繰り返される。これは時間がかかり、ユーザにとって冗長である。また眼の検査は、ユーザの眼の眼球運動性をスクリーニングするためにも使用されている。これは、従来、視線追跡手段を用いて画面上の移動する較正ドットをトレースすることにより、ユーザの眼の眼筋の健康状態を判定することで行われてきた。しかし、眼球運動性のスクリーニングは、ユーザの眼について別個に、すなわち、ユーザの視力のスクリーニングとは別個に、行われる。更に、既存の技術及び装置では、ユーザが較正ドットをどの程度よく見ることができるかを考慮していないため、従来のレンダリングアルゴリズムを用いると、ユーザの目の誤ったレンダリングが生成されてしまう。それによって、視線追跡手段のための誤った較正データが生成されてしまう。
【0004】
これらの議論に鑑みると、前述の欠点を克服する必要性が存在する。
【摘要】
【0005】
本開示の目的は、視線追跡較正と視力検査を一緒に組み込み、ユーザの目の正確な評価を容易にするための光学器具、システム、及び方法を提供することである。本来、ユーザの目の正確な評価を行うには、反復的な操作が必要である。本開示の目的は、視力検査のための光学器具、システム、及び方法によって達成される。ただしこの方法は、添付の独立請求項に定義されるような同時視線追跡較正を組み込む。有利な特徴は、添付の従属請求項に記載されている。
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通じて、「備える」、「含む」、「有する」等の語句は、ある要素を含むが、当該要素だけしか含まないという意味ではない。明示的に開示されていない他の構成要素、アイテム、数又はステップも存在することを排除しない。更に、文脈上別段の定めがない限り、単数の表現は複数であることも包含する。特に、原文で不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈上他に必要とされない限り、単数形だけでなく複数形も想定している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態に従う光学器具及びこの光学器具を含むシステムのアーキテクチャを示すブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態に従う光学器具の概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態に従う、視線追跡較正と視力検査を同時に行う機能を組み込むシステムが使用されている環境を示す。
【
図4A】本開示の一実施形態による、例示的な視標と例示的な入力手段とを示す。
【
図4B】例示的な視標と例示的な入力手段とを用いて実施される、ユーザの眼の例示的な視力検査のフローを示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、視線追跡較正と視力検査を一緒に組み込む方法のステップを示すフローチャートである。
【実施形態の詳細説明】
【0007】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態及びそれらが実施され得る方法を例示する。本開示を実施するための形態をいくつか開示したが、当業者であれば、本開示を実施するための他の形態も実現可能であることを認識するであろう。
【0008】
第1の捉え方によれば、本開示は光学器具を提供する。この光学器具は、
視線追跡手段と;
少なくとも1つのプロセッサと;
を備え、前記プロセッサは、
(a)少なくとも1つの視標を表現するユーザ用画像をスクリーン上に表示することと;
(b)前記光学器具を使用している間に、ユーザが前記ユーザ用画像に表現されたユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを示す所定のユーザ入力を得ることと;
(c)前記所定のユーザ入力に基づいて、前記ユーザが前記ユーザ用画像に表現された前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを判定することと;
(d)前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたと判定した場合、前記ユーザがはっきりと見ることができた前記ユーザ用視標のサイズ、前記ユーザ用画像における前記ユーザ用視標及び/又は視標特徴の位置、前記ユーザが前記位置に表示されている前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたときの前記ユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報を収集することと;
(e)前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができなかったと判定した場合、前記ユーザがはっきりと見ることができなかった前記ユーザ用視標のサイズ、前記ユーザ用画像における前記ユーザ用視標及び/又は視標特徴の位置、前記ユーザが前記位置に表示されている前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができなかったときの前記ユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報を収集し、前記ユーザ用画像で表現された前記ユーザ用視標よりもサイズが大きい少なくとも1つの次の視標を表現する次の画像を用いてステップ(a)~(e)を繰り返すことと;
(f)前記収集した情報を処理して、前記ユーザに固有の1つ以上の屈折力を決定し、同時に視線追跡手段を較正することと;
を遂行するように構成される。
【0009】
前述の光学器具には、視線追跡手段の較正と視力検査が同時に組み込まれている。ここでは、様々な位置で様々な大きさの視標をスクリーン上を表示し、ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができるかどうかに関する情報を収集し、様々な位置でユーザ用視標を見るときのユーザの目の動きを決定する。この情報を用いて、ユーザに固有の1つ又は複数の屈折力を動的に決定すると同時に、視線追跡手段を動的に較正し、ユーザの目の動きと視標の対応する位置との間の正確なマッピングを確立する。これにより、較正プロセスがシンプルかつ効率的になる。次いで、前記光学器具(又は別の光学器具)の能動光学要素で1つ又は複数の屈折力の少なくとも1つを生成することにより、1つ又は複数の屈折力を使用して、ユーザの視覚体験を改善することができる。有益なことに、前記能動光学要素は、例えば、眼鏡、サングラス、スマート眼鏡、ヘッドマウントディスプレイなどの様々なタイプの光学器具に容易に実装することができる。上述した特徴の相乗効果として、視力検査と視線追跡手段の較正が同時に行われるため、必要な処理リソース、時間、コストが削減される。ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができた場合、又はユーザ用視標をはっきりと見ることができなかった場合の、ユーザ用視標と当該ユーザ用視標を見たときのユーザの眼に関する情報を収集し、眼の性能を解析する。また、視力検査を繰り返す際に、視標の大きさを変化させることで、ユーザの視力の程度を知ることができる。これにより、1つ又は複数の屈折力を正確かつ精密に決定することができる。
【0010】
第2の捉え方によれば、本開示はシステムを提供する。このシステムは、
第1の捉え方に係る光学器具と;
画像を表示するために使用されるスクリーンと;
ユーザ入力を得るために用いられる少なくとも1つの入力手段と;
を備える。
【0011】
このシステムには、視線追跡手段の較正と視力検査を同時に行う機能が組み込まれている。このシステムにおいて、視標を表現する画像がスクリーン上に表示され、ユーザは、ユーザ用視標をはっきりと見ることができるか否かに基づいて、前記入力手段を用いて入力を提供する。前述した特徴の相乗効果として、光学器具を使用しながら、このデータを使用して、視力検査と視線追跡手段の較正を同時に行うことができる。スクリーンや少なくとも1つの入力手段は、当該技術分野において周知であり、その構成に追加の時間やコストを必要としない。
【0012】
第3の捉え方によれば、本開示は、視線追跡手段と少なくとも1つのプロセッサとを含む光学器具によって実施される方法を提供する。この方法は、
(a)少なくとも1つの視標を表現するユーザ用画像をスクリーン上に表示することと;
(b)第1の捉え方に従う光学器具を使用している間に、ユーザが前記ユーザ用画像に表現されたユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを示す所定のユーザ入力を得ることと;
(c)前記所定のユーザ入力に基づいて、前記ユーザが前記ユーザ用画像に表現された前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを判定することと;
(d)前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたと判定した場合、前記ユーザがはっきりと見ることができた前記ユーザ用視標のサイズ、前記ユーザ用画像における前記ユーザ用視標及び/又は視標特徴の位置、前記ユーザが前記位置に表示されている前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができたときの前記ユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報を収集することと;
(e)前記ユーザが前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができなかったと判定した場合、
前記ユーザがはっきりと見ることができなかった前記ユーザ用視標のサイズ、前記ユーザ用画像における前記ユーザ用視標及び/又は視標特徴の位置、前記ユーザが前記位置に表示されている前記ユーザ用視標をはっきりと見ることができなかったときの前記ユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報を収集し、
前記ユーザ用画像で表現された前記ユーザ用視標よりもサイズが大きい少なくとも1つの次の視標を表現する次の画像を用いてステップ(a)~(e)を繰り返すことと;
(f)収集した情報を処理して、前記ユーザに固有の1つ以上の屈折力を決定し、同時に視線追跡手段を較正することと;
を含む。
【0013】
前述の方法は、視線追跡手段の較正と視力検査を同時に行うものである。画面上の様々な位置に様々なサイズの視標を表示することは、ユーザが見ることができる視標のサイズに関する情報を収集することを可能とし、また、異なる位置で前記視標を見るときにユーザの眼がどのように柔軟に動くかを決定することを可能とする。この情報は、ユーザに表示される様々な視標のそれぞれについて、視線追跡手段を較正するために使用することができる。上述した特徴の相乗効果として、視力検査と視線追跡手段の較正が同時に行われるため、必要な処理リソース、時間、コストが削減される。ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができた場合、又はユーザ用視標をはっきりと見ることができなかった場合の、ユーザ用視標と当該ユーザ用視標を見たときのユーザの眼に関する情報を収集し、眼の性能を分析する。ユーザに様々なサイズの視標を表示して上記方法のステップを繰り返すことにより、ユーザの視力の程度を決定することができる。これにより、1つ又は複数の屈折力を正確かつ精密に決定することができる。従って、本明細書で説明する方法は、簡単で、安定性が高く、高速で、信頼性が高く、実施が容易である。
【0014】
本開示全体を通じて、「光学器具」という用語は、視力検査と前述の較正を一緒に行うためにユーザが使用する機器を指す。いくつかの実装形態では、光学器具は、ユーザの目の上に装着されるウェアラブル器具であってもよい。このような光学器具の例としては、眼鏡、サングラス、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイなどが挙げられるが、これらに限定されない。他の実装形態では、光学器具はウェアラブルでない器具であってもよい。一例として、このような実装形態では、光学器具は、ユーザの前に置かれるテーブルの上に配置されることがある。
【0015】
光学器具がウェアラブルである実装形態では、光学器具は、方眼ごとに能動光学要素を備えてもよい。本開示全体を通じて、「能動光学要素」という用語は、制御可能な1つ以上の光学パラメータを有する光学要素を指す。これらの光学パラメータは、例えば能動的に(すなわち動的に)調整可能であってもよい。
【0016】
本開示全体を通して、「視線追跡手段」という用語は、光学器具のユーザの視線方向を検出すること、光学器具のユーザの視線方向を追跡すること、ユーザが光学器具を使用するときのユーザの眼の特徴を監視すること、の少なくとも1つのために採用される特別な装置を指す。ユーザの眼の特徴には、ユーザの眼の瞳孔の形状、瞳孔の大きさ、ユーザの眼の表面へと現実の環境から発せられる光の角膜反射、角膜反射に対する瞳孔の相対位置、ユーザの眼の角に対する瞳孔の相対位置のうちの少なくとも1つを含んでもよい。視線追跡は、作動中の光学器具がユーザに使用されているときに実行される。
【0017】
実施形態によっては、視線追跡手段は、センサを有するコンタクトレンズ、ユーザの目の機能を監視するカメラの少なくとも1つによって実装される。このような視線追跡手段は本願の技術分野において周知である。視線追跡手段は、視線追跡データを収集し、視線追跡データを少なくとも1つのプロセッサに送信するように構成される。光学機器を使用している間、ユーザの視線や目の特徴は変化し続けるので、視線追跡データは、視線追跡手段によって、光学器具の操作中、繰り返し収集されることが理解されよう。最新の視線追跡データ(視線方向及びユーザの目の特徴を示すデータ)は、ユーザの視力を効率的にチェックするために、光学器具の能動光学要素を正確な方法で適応的に制御することを可能にする。実施形態によっては、視線追跡手段がカメラとして実装される場合、視線追跡データはユーザの目の画像の形式である。実施形態によっては、視線追跡手段がセンサを有するコンタクトレンズによって実施される場合、視線追跡データはセンサから収集されたセンサデータである。
【0018】
前記少なくとも1つのプロセッサは、視線追跡手段及び実施形態によっては能動光学要素に通信可能に結合されていることが理解されよう。前記少なくとも1つのプロセッサは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又はコントローラのいずれか1つとして実装され得る。一例として、前記少なくとも1つのプロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)チップ又は縮小命令セットコンピュータ(RISC)チップとして実装され得る。
【0019】
前記ユーザ用画像は、特定の位置における少なくとも一つの視標の視覚的表現である。言い換えれば、前記ユーザ用画像は、少なくとも1つの視標の形状情報及び/又は色情報を含み、実施形態によっては前記少なくとも1つの視標に関連する他の属性(例えば、深度情報、輝度情報、透明度情報など)を含む。実施形態によっては、前記ユーザ用画像は可視光画像である。ここで、前記可視光画像は、赤緑青(RGB)スペクトルを用いて構成される。実施形態によっては、前記ユーザ用画像は高品質(すなわち高解像度)画像である。前記ユーザ用画像は、JPEG形式、JPG形式、PNG形式などであり得る。前記ユーザ用画像は、少なくとも1つの視標を正確に認識し識別する能力を評価するためにユーザに表示される。
【0020】
本開示を通じて、「視標(optotype)」という用語は、標準化された数字、標準化されたアルファベット文字、及び/又は標準化された記号を指し、ユーザの視力検査に使用される前記ユーザ用画像内において特定のサイズ及び特定の位置を有し、様々な医療専門家、病院、及び/又は光学器具によって視力検査が実施されたとしても、一貫性を保つことを可能にする。ここで、ユーザの視力を決定するために、少なくとも1つの視標の特定のサイズが使用され、少なくとも1つの視標の特定の位置は、少なくとも1つの視標を追跡するユーザの目の能力を評価し、視線追跡手段を較正するために使用される。ここで、スクリーンが(後述するように)ユーザから所定の距離にあるとき、少なくとも1つの視標の特定のサイズは、ユーザが正確に識別できる少なくとも1つの視標の視覚的細部の特定のレベルに対応する。この視覚的細部の特定のレベルは、予め定義された距離と、正常な視力を有する(すなわち目の状態に問題を有していない)別のユーザがスクリーン上に表示された少なくとも1つの視標をはっきりと見ることができる距離との間の比率の形で表すことができる。更に、少なくとも1つの視標の特定の位置又は視標特徴の特定の位置は、当該少なくとも1つの視標が表示されるスクリーンの少なくとも1つの角に対する相対的な位置、及び/又は前記少なくとも1つの視標の全体に対する前記視標特徴の相対的な位置に対応する。ここで、「視標特徴」という用語は、ユーザに提供される視標内に存在し、ユーザの視力を決定するためにユーザが明確に見る必要のある、識別可能な隙間及び/又は識別可能なマークを指す。前記少なくとも1つの視標は、視認性を高めるために、背景に対して高いコントラストを有することが理解されよう。標準化された数字である少なくとも1つの視標の例としては、少なくとも1桁の数字、10進数表記、及び一連の数字が挙げられる。なお、これらに限定されるものではない。前記少なくとも1つの視標が標準化されたアルファベット文字である例としては、E、C、H、O、N、D、A、Tが挙げられるが、これらに限定されない。前記少なくとも1つの視標が標準化された記号である例としては、リング、円、四角、十字、三角、菱形、星が挙げられるが、これらに限定されない。前記少なくとも1つの視標は、医療従事者及び/又はユーザによって動的に選択することができる。
【0021】
実施形態によっては、前記少なくとも1つの視標は、ランドルトC視標、スネレン視標、スローン視標、早期治療糖尿病網膜症研究(ETDRS)視標、HOTV文字、アレン図形、アルファベット文字(例えば、標準化されたアルファベット文字など)、数字(例えば標準化された数字など)、記号(例えば標準化された記号など)、デザイン、自由形状のうちの少なくとも1つを含む。ランドルトC視標は、特定の位置(例えば、上の位置、下の位置、左の位置、右の位置など)に視標特徴(すなわち、あらかじめ定義された隙間)があるリングを有する。有益なことに、ランドルトC視標は、ユーザが数字及び/又はアルファベット文字に慣れていない場合、ユーザが数字及び/又はアルファベット文字を区別できない場合、個人が認知障害又は視覚障害を持つ場合の少なくとも1つに使用できる。スネレン視標、ETDRS視標及びHOTV視標は、大文字の標準化された数字及び/又は標準化されたアルファベット文字を有する。これらの標準化された数字及び/又は標準化されたアルファベットは、行及び列に配置され、その大きさは上から下に小さくなっている。ETDRS視標は、特定の画数と、標準化された数字及び/又は標準化されたアルファベット文字の間の標準化された間隔とから構成される。ETDRS視標は、例えば糖尿病性網膜症のように、眼の状態に問題を抱えている表示される。HOTV文字は、標準化されたアルファベット文字H、O、T、Vのみから構成される。アレン図形は、標準化された数字及び/又は標準化されたアルファベット文字を読めない又は認識できないユーザが容易に認識できるように設計された、標準化された形状から構成される。デザインは、標準化されたアルファベット文字、標準化された数字、標準化された記号、装飾模様のうち少なくとも1つを有し、医療専門家がユーザの病歴に基づいて作成することも、あらかじめデザインしておくこともできる。自由形状はユニークで明確なパターンである。有益なことに、自由形状は、ユーザが標準化されたアルファベット文字、標準化された数字、標準化された記号を認識できない場合に使用される。
【0022】
前記少なくとも1つのプロセッサは、スクリーンと通信可能に結合される。ここで、「スクリーン」という用語は、ユーザ用画像が表示される物理的な面(例えば、壁、投影スクリーンなど)又はモニタ(例えば、テレビモニタ、コンピュータモニタ、スマートフォンのディスプレイなど)を指す。実施形態によっては、スクリーンは表示装置と一体化されており、前記少なくとも1つのプロセッサは表示装置と通信可能に結合されている。このような実施形態では、スクリーンは、表示装置のハードウェア及び/又はソフトウェア要素に直接結合される。このような表示装置の例としては、携帯電話、タブレット、ファブレット、コンピュータ、ラップトップ、パーソナルデジタルアシスタント、スマートウォッチ、及びテレビが挙げられるが、これらに限定されない。別の実装形態では、スクリーンは表示装置とは別体であり、前記少なくとも1つのプロセッサは、有線方式及び/又は無線方式で表示装置と通信可能に結合される。そのような実装形態では、スクリーンは、表示装置のハードウェア及びソフトウェア構成要素に間接的に結合される。このような表示装置の例としては、プロジェクタ、外部モニタのディスプレイなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
実施形態によっては、ユーザは、25センチメートルから750センチメートルの範囲にある所定の距離(D1)から画面を見る。この所定の距離(D1)は、25、50、65、85、160、320、480、640、又は700センチメートルから40、55、75、95、190、380、570、690、又は750センチメートルの範囲にある。ユーザから所定の距離にスクリーンを配置することの技術的利点は、ユーザの視力検査を実施することによる測定値を、別々のユーザ及び視力チェックの異なるセッション間で標準化できることである。ある実施例では、近見視力についてユーザの視力を決定するために、所定の距離(D1)は35cmから40cmの範囲にある。別の例では、中間視力の視力を判定するために、所定の距離(D1)は50センチメートルから75センチメートルの範囲にある。
【0024】
本開示全体を通して、「所定のユーザ入力」という用語は、光学器具の使用中、ユーザ用画像がユーザに視認され、ユーザ用視標を明瞭かつ正確に知覚する際に、ユーザから提供される応答及び/又はフィードバックを指す。「所定のユーザ入力」は、後述するように、少なくとも1つの入力手段を介して提供され、少なくとも1つのプロセッサにより受信される。くとも1つのプロセッサによって受信された後に、実施形態によっては、所定のユーザ入力は、音声メッセージ、テキストメッセージ、触覚フィードバック、タッチフィードバック、ジェスチャ、動作、及び同様の形態でユーザによって提供される。
【0025】
実施形態によっては、所定のユーザ入力は、少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つの入力手段を介して取得される。実施形態によっては、少なくとも1つの入力手段は、有線方式及び/又は無線方式で少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合される。少なくとも1つの入力手段は、タッチセンサ、ボタン、キーボード、マウス、XRコントローラ、オーディオセンサ、リモートコントローラ、物理スライダー、マイクロフォン、レコーダのうちの少なくとも1つを有しうる。一例として、入力手段は、スマートフォンのタッチセンサ面として実装することができる。この場合、スマートフォンのプロセッサは、ユーザが所定のユーザ入力を提供することができるユーザインターフェースをユーザに提供するためのソフトウェアアプリケーションを実行するように構成される。これら少なくとも1つの入力手段は、ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができるときに、ユーザが所定の入力を提供することを可能にすることによって、光学器具を使用するユーザに柔軟性を提供する。これら少なくとも1つの入力手段を少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合する技術的効果は、分析、解釈、実行されるアクションの少なくとも1つのために、所定のユーザ入力が少なくとも1つのプロセッサに正確に送信されることである。
【0026】
第1の例では、光学器具が使用されているとき、ユーザ用画像がスクリーン上に表示されることがある。ユーザ用画像は、ランドルトC視標を表現してもよい。ユーザは、300cmの所定の距離からスクリーンを見てもよい。ユーザは、少なくとも1つの入力手段を用いて入力を提供することができ、ここで当該少なくとも1つの入力手段は、ランドルトC視標内の上位置、下位置、左位置、及び右位置にそれぞれ配置される視標特徴に対応し得る4つのボタン、すなわち、上方向ボタン、下方向ボタン、左方向ボタン、及び右方向ボタンを含むリモートコントローラであってもよい。ユーザ用画像において、視標はランドルトC視標内の左位置に配置されているとしよう。ある例では、ユーザがランドルトC視標内の右の位置にある視標をはっきりと見ることができず、所定のユーザ入力は、上方向ボタンを押すことにより提供されうる。あるいは、別の例では、ユーザがランドルトC視標内の左の位置にある視標をはっきりと見ることができず、ユーザは、所定のユーザ入力を、リモートコントローラの左方向ボタンを押すことによって提供するかもしれない。
【0027】
実施形態によっては、前記光学器具は、
・ 片目毎に提供される能動光学要素と;
・ 片目毎の前記能動光学要素を保持するフレームと;
・ 前記フレームのテンプルに取り付けられ、所定のユーザ入力を提供するためにユーザが使用する少なくとも1つの入力手段と;
を備える。
【0028】
前記フレームは、前記能動光学要素が前記フレームに対して固定的に配置されるように設計される。光学器具が眼鏡として実装される或る例において、フレームは2つの能動光学要素を保持してもよく、第1の能動光学要素はユーザの第1の眼のために用いられ、第2の能動光学要素はユーザの第2の眼のために用いられる。フレームの材料は、プラスチック、金属、ポリマーなどであり得る。フレームは軽量で、人間工学的に設計され、使いやすいものであってもよい。
【0029】
フレームのテンプルに取り付けられる少なくとも1つの入力手段は、フレームのテンプルに取り付けられる物理的なスライダー又はボタンによって所定のユーザ入力を提供することにより、光学器具を使用するユーザに柔軟性を提供する。少なくとも1つの入力手段をフレームのテンプルに取り付ける技術的な利点は、ユーザの手を自由にし、ユーザが周囲の環境と便利に相互作用できるようにすることである。例えば、少なくとも1つの入力手段は、フレームのテンプルに取り付けられた2つの物理的スライダーとしてもよい。ここで、第1の物理スライダーをフレームの第1のテンプルに取り付け、第2の物理スライダーをフレームの第2のテンプルに取り付けてもよい。第1の物理スライダーは、ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができる場合に使用され、第2の物理スライダーは、ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができない場合に使用されてもよい。
【0030】
少なくとも1つのプロセッサは、ユーザから得られた所定のユーザ入力の形式に基づいて、少なくとも1つの処理アルゴリズムを用いて所定のユーザ入力を処理するように構成される。技術的な効果は所定のユーザ入力が検証されることである。つまり、ユーザがユーザ用視標を正しく識別できたかどうかが判定される。少なくとも1つの処理アルゴリズムの例としては、トークン化アルゴリズム、名前付き固有表現認識(Named Entity Recognition)、テキスト分類アルゴリズム、信号処理アルゴリズム、自然言語処理、サポートベクターマシン、及びディープニューラルネットワークを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0031】
少なくとも1つのプロセッサが、ユーザがユーザ用画像をはっきりと見ることができると判断するように構成されている場合、その時点の、ユーザ用画像に表現されたユーザ用視標のサイズに関する情報が収集される。情報を収集する技術的な利点は、ユーザの視力のレベルを評価するのに役立ち、更にユーザの視力の定量的な尺度を提供することである。ここで視力は、ユーザ用視標のサイズに基づいて定量的に測定され、ユーザ用視標が提示される所定の距離と、ユーザが明確に見ることができるユーザ用視標のサイズとの比の形で測定される。実施形態によっては、前記ユーザ用視標のサイズは、ユーザ用視標の長さ、高さ、幅、間隔の少なくとも1つを含む。ユーザ用視標のサイズは、ユーザの目の鋭敏さに対応し、様々な視力レベルで視力を評価することを可能にする。様座なレベルの視力検査は、視標の大きさを漸増又は漸減することによって達成され、視力の正確な評価が可能になる。この正確な評価は、様々な視力レベルにおけるユーザの視力の小さな変化を区別する場合に有益である。
【0032】
ユーザがユーザ用画像に表現されたユーザ用視標をはっきりと見ることができるとき、ユーザの眼の特徴の外観がユーザ用視標に対して変化する。このような特徴は、ユーザの目の瞳孔の位置、ユーザの目の瞳孔の形状、ユーザの目のまぶたの張力、ユーザの目の開き具合、眉毛の上げ具合、ユーザの目の細め具合の少なくとも1つを含んでもよい。ユーザの目の特徴を示す情報は、光学器具がユーザによって使用される際に、視線追跡手段を用いて収集される。このような視線追跡手段については既に詳細に説明されている。視線追跡手段は、ユーザの目の特徴の外観を示す情報を収集し、その情報を少なくとも1つのプロセッサに送信するように構成される。ユーザが光学器具を使用する間、ユーザの目の特徴の外観は変化し続けるので、前記情報は、光学器具の動作中、視線追跡手段によって繰り返し収集されることが理解されよう。
【0033】
ユーザがユーザ用画像をはっきりと見ることができない場合に収集される情報は、ユーザがユーザ用画像をはっきりと見ることができる場合に収集される情報とは明らかに異なる。前記情報を収集することの技術的利点は、その後、視線追跡手段によって収集された情報の助けを借りて、光学器具が、ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができない時を認識することができ、それに応じて、視力検査を繰り返すようにユーザに気付かせることができることである。ここで、前記情報は、上述した方法と同様の方法で収集される。
【0034】
ユーザがユーザ用画像をはっきりと見ることができない場合、視力検査が継続され、少なくとも1つのプロセッサは、次の画像をユーザに表示するように構成される。ここで、少なくとも1つの次の視標は、前に提供された視標とは異なるサイズ、異なるスクリーン上の位置、異なる視標特徴のうちの少なくとも1つであり得る。前記次の画像は、特定の位置にある少なくとも1つの次の視標を視覚的に表現したものである。はじめに提供された画像と同様に、次の画像も可視光画像である。次の画像は高画質(すなわち高解像度)画像である。次の画像は、JPEG形式、JPG形式、PNG形式などであり得る。
【0035】
ここで、前に提供された指標よりも大きい少なくとも1つの次の視標を表示する技術的効果は、ユーザがはっきりと見ることができる視標の最大サイズを決定することである。ここで、少なくとも1つの次の視標の大きさは、適応アルゴリズムを用いて動的に視標のサイズを増加させること、ユーザの視力を決定する人(例えば、医療従事者など)によって手動で視標サイズを増加させること、関数又は規則を用いて少なくとも1つのプロセッサによって視標サイズを段階的に増加させること、のいずれか1つによって、はじめに提供された視標のサイズよりも大きくされる。ここで、前記適応アルゴリズムは、与えられたユーザ入力に基づいて、次の画像における少なくとも1つの次の視標の適切なサイズを決定するために使用される。
【0036】
実施形態によっては、少なくとも1つのプロセッサは、ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができると判定した場合、別の次の画像を使用してステップ(a)から(e)を繰り返すように構成される。別の次の画像は、前の画像に表された視標よりもサイズが小さい少なくとも1つの別の次の視標を表現する。前に提供された指標よりも小さい少なくとも1つの次の視標を表示する技術的効果は、ユーザがはっきりと見ることができる視標の最小サイズを決定することである。少なくとも一つの別の次の視標のサイズは、提供される視標のサイズを大きくするための上述の手法と似たやり方で、前に提供された視標のサイズよりも小さくされる。
【0037】
いくつかの実装形態では、決定される1つ以上の屈折力は単一の屈折力からなる。他の実装形態では、決定される1つ以上の屈折力は複数の屈折力からなる。能動光学要素の異なる領域で、複数の屈折力が同時に生成され得る。例えば、提供される視標よりも小さいサイズの少なくとも1つの他の次の視標に焦点を合わせること(ユーザの必要性に応じて、負の屈折力又はゼロの屈折力を使用する)を可能とすると共に、提供される視標よりも大きいサイズの少なくとも1つの次の視標に焦点を合わせること(ユーザの必要性に応じて、ゼロの屈折力又は正の屈折力を使用する)を可能にするためである。実施形態によっては、この点で、前記1つ以上の屈折力は、正の屈折力、負の屈折力、ゼロ屈折力のうちの少なくとも1つである。ここで、正の屈折力は、提供された視標よりも大きい少なくとも1つの次の視標の読み取り又は焦点合わせに使用される。負の屈折力は、提供された視標よりも小さい少なくとも1つの別の次の視標の読み取り又は焦点合わせに使用される。ゼロ屈折力は、ユーザが近視でなく、遠くの物体に焦点を合わせる必要がある場合や、遠視や老眼でなく、近くの物体に焦点を合わせる必要がある場合に使用される。
【0038】
同時に、少なくとも1つのプロセッサは、処理された収集情報に基づいて較正技術を採用することにより、視線追跡手段を較正するように構成される。特に、視線追跡手段の較正パラメータが、収集された情報を用いて推定される。次に、これらの較正パラメータが、視線追跡手段の歪みを補正するために使用される。ここで、上記較正パラメータは、収集された情報と視線追跡手段との間の数学的関係を記述する。実施形態によっては、較正パラメータを決定するとき、少なくとも1つのプロセッサは、様々な関数、規則、及び/又は数式を用いる。このような関数、規則、数式は、当該技術分野において周知である。
【0039】
実施形態によっては、前記光学器具は、片眼毎に能動光学要素を備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、
・ 能動光学要素を制御して、1つ以上の屈折力のうち少なくとも1つを生成し、
・ ステップ(a)から(e)を繰り返し、
・ 新たに収集した情報を処理して、視線追跡手段を更に較正する、
ように構成される。
【0040】
このような方法で視線追跡手段を更に較正することの技術的効果は、視線追跡手段が、生成された1つ又は複数の屈折力の少なくとも1つに基づいて、ユーザの眼の光学的特性の変動を考慮することが保証されることである。更に、ステップ(a)~(e)を繰り返すことによって、視線追跡手段の較正の精度が検証され得る。この点に関して、前記少なくとも1つのプロセッサは、ユーザがユーザ用視標を表現するユーザ用画像をどの程度はっきりと見ることができるかに基づいて、能動光学要素を制御するための制御信号を生成するように構成される。この制御信号は、電圧信号及び/又は電流信号であり得る。それぞれの能動光学要素の駆動信号は異なっていてもよいことが理解されよう。前記少なくとも1つのプロセッサは、収集された情報を処理する時に、決定した1つ以上の屈折力のうちの少なくとも1つを生成する。所与の屈折力(即ち、1つ以上の屈折力のうちの少なくとも1つ)の生成が、視線追跡手段の較正と適合するかどうか、及びその逆かどうかを検証するために、視力検査が、ユーザ用画像をユーザに表示することによって繰り返される。このような適合は、ユーザがユーザ用画像においてユーザ用視標をはっきりと見ることができ、前記ユーザ用視標を見る際に困難又はぼやけを経験しない場合に、適合していると判定される。第1の実施例を引き続き参照すると、ユーザがユーザ用画像においてユーザ用視標をはっきりと見ることができない場合、少なくとも1つのプロセッサは、能動光学要素を制御して、+1.5ディオプターの屈折力を生成するように構成してもよい。視力検査は繰り返されてもよく、これにより、収集されてもよい新しい情報が生成されてもよい。この新しい情報は、視線追跡手段の較正に使用されてもよい。生成された+1.5ディオプターの屈折力が視線追跡手段の較正と適合することを確認するために、視力検査を更に繰り返してもよい。
【0041】
実施形態によっては、前記少なくとも1つのプロセッサは、新たに収集された情報を処理するように構成される。ここで、与えられた視標をユーザがはっきりと見ることができた場合、前記新たに収集された情報は、ユーザがはっきりと見ることができた視標のサイズ、ユーザに与えられた画像における視標及び/又は視標特徴の位置、ユーザが前記位置に表示されている視標をはっきりと見ることができたときのユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す。あるいは、与えられた視標をユーザがはっきりと見ることができなかった場合、前記新たに収集された情報は、ユーザがはっきりと見ることができなかった視標のサイズ、ユーザに与えられた画像における視標及び/又は視標特徴の位置、ユーザが前記位置に表示されている視標をはっきりと見ることができなかったときのユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す。
【0042】
その後、前記少なくとも1つのプロセッサは、処理された前記新たに収集された情報を使って較正技術を用いることにより、前記視線追跡手段を更に較正するように構成されてもよい。特に、前記視線追跡手段の他の較正パラメータが、前記新たに収集された情報を用いて推定される。そして、これらの他の較正パラメータは、視線追跡手段の歪みを更に補正するために使用される。
【0043】
実施形態によっては、前記少なくとも1つのプロセッサは、ユーザが与えられた視標をはっきりと見ることができないと判定した場合に、1つ以上の光学的度数のうちの少なくとも1つを調整するように構成される。前記1つ又は複数の光学的度数のうちの少なくとも1つを調整することの技術的効果は、ユーザの視力が正確な方法で確実に矯正されることであり、これにより、ユーザは、より鮮明でシャープな視力を体験することができ、及び/又は、眼精疲労の軽減を体験することができる。上記のように光学的度数を生成した後でも、ユーザは与えられた視標を見ることが困難な場合がある。しかし、与えられた屈折力は、ユーザが与えられた視標をはっきりと見るために要求される屈折力(1つ以上の屈折力の少なくとも1つにある)に近いものではある可能性がある。そこで、与えられた屈折力よりも多くの屈折力が必要な場合、屈折力の絶対値を増加させる。あるいは、与えられた屈折力よりも少ない屈折力しか必要としない場合、屈折力の絶対値を減少させる。第1の実施例を引き続き参照すると、ユーザが屈折力+1.5ディオプターの光学器具を使用するときに、ステップ(a)から(e)が繰り返され、前記少なくとも1つのプロセッサは、ユーザが次の視標をまだはっきりと見ることができないと判断する場合がある。そこで、屈折力を+/-0.5ディオプターだけ調整してもよい。例えば能動光学要素の屈折力を+2.0ディオプターまで増加させる。
【0044】
実施形態によっては、光学器具は、片眼毎に能動光学要素を備える。そして前記少なくとも1つのプロセッサは、
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向、前記ユーザの注視点の少なくとも1つを決定し、
・ 前記ユーザの目の視線方向の輻輳角、前記ユーザの目の瞳孔間距離、前記ユーザの注視点の少なくとも1つに基づいて、前記ユーザが注視している光学的深度を決定し、
・ 前記ユーザが注視している光学的深度に基づいて、前記能動光学要素によって生成される1つ又は複数の屈折力の少なくとも1つを選択する、
ように構成される。
【0045】
これに関して、「視線方向」という用語は、ユーザの目が注視している方向を表す。「視線方向」は視線ベクトルによって表されてもよい。「注視点」とは、実世界環境において、ユーザの視線が集中している点である。「注視点」は、実世界環境におけるユーザの関心点である。実施形態によっては、注視点は、ユーザの2つの目の注視方向を、これらの注視方向が収束する実世界環境内の対応する点にマッピングすることによって決定される。実施形態によっては、視線追跡データを処理するとき、前記少なくとも1つのプロセッサは、画像処理アルゴリズム、特徴抽出アルゴリズム、データ処理アルゴリズムのうちの少なくとも1つを用いるように構成される。他の適切なアルゴリズムを採用することもできる。
【0046】
「光学的深度」という用語は、上記関心点とユーザが使用する光学器具との間の光学的距離を指す。実施形態によっては、前記少なくとも1つのプロセッサは、ユーザの2つの目それぞれの視線方向がスクリーンの特定の部分に収束するときに、光学的深度を決定するように構成される。従って、「輻輳角」とは、スクリーンの任意の部分を注視するときに、ユーザの目の視線方向によって減算される角度である。実施形態によっては、前記少なくとも1つのプロセッサは、ユーザの瞳孔間距離を計算するために三角測量を使用するように構成される。ここで、ユーザの目の瞳孔間距離は、平均瞳孔間距離とすることができる。ユーザの眼の注視方向の輻輳角、ユーザの眼の瞳孔間距離、ユーザの注視点が、少なくとも1つのプロセッサに既に知られている場合、ユーザが注視している光学的深度は、例えば、少なくとも1つの数学的技法を用いて、少なくとも1つのプロセッサによって容易に決定され得ることが理解されるであろう。前記少なくとも1つの数学的技法は、三角測量技法、幾何学に基づく技法、三角法に基づく技法のうちの少なくとも1つであり得る。視線方向の収束に基づいて、視線収束距離を決定することは、当該技術分野において周知である。
【0047】
ここで、前記1つ又は複数の屈折力のうちの少なくとも1つは、既に上述したように、負の屈折力、ゼロ屈折力、又は正の屈折力であり得る。更に、この点で、前記1つ以上の屈折力は、それぞれ異なる光学深度に対応するそれぞれ異なる屈折力である。1つ以上の屈折力のうちの少なくとも1つが、ユーザが見ている光学的深度に基づいて、前記1つ以上の屈折力の中から選択される。前記1つ以上の屈折力は、異なる光学的深度のそれぞれに対して前記ユーザに対して規定され得る。片方の眼のために選択される1つ又は複数の屈折力のうちの少なくとも1つは、ユーザのもう一方の眼のために選択される1つ又は複数の屈折力のうちの少なくとも1つと同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
本開示はまた、前述のような、第2の捉え方に関する。前述の第1の捉え方に関して上に開示された様々な実施形態及び変形例は、第2の捉え方にも準用される。
【0049】
実施形態によっては、前記スクリーンは、ユーザ又は医療専門家の装置のディスプレイ、プロジェクタの投影面のいずれかである。ここで、「装置」という用語は、光学器具の使用時に、ユーザ用視標を表すユーザ用画像を表示するように動作可能な通信装置を意味する。スクリーンの技術的効果は、ユーザ用視標を表現するユーザ用画像をユーザに動的に提示することを可能にすることである。このような動的提示により、ユーザ又は医療専門家は、視力検査中にユーザ用視標のサイズを変更することや、位置を変更すること、向きを変更すること、の少なくとも1つを行うことができる。スクリーンがユーザの装置のディスプレイである場合、その装置はユーザ自身が所有し、使用することを意味する。この点で、ユーザは任意に、ユーザ用画像を見るためにディスプレイと対話し、ユーザが画像に表現されたユーザ用視標をはっきりと見ることができたかどうかを伝えるために所定のユーザ入力を提供する。スクリーンが医療専門家のディスプレイである場合、その装置は医療専門家に属することを意味する。このような医療専門家の例としては、眼科専門医、眼科医、検眼医などが挙げられるが、これらに限定されない。本装置は、任意に、ユーザの視力検査、診断検査、又はユーザの視力に関連する医療情報を表示するために使用される。装置の例としては、ラップトップ、コンピュータ、タブレット、ファブレット、携帯電話、スマートフォン、スマートウォッチなどが挙げられるが、これらに限定されない。ディスプレイの例としては、テレビディスプレイ、モニタ、ラップトップ画面、スマートウォッチディスプレイなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
プロジェクタは、光源から出射された光線を用いて、ユーザ用視標を表すユーザ用画像を投影面に投影するために用いられる。ここで、投影面は、光学器具の使用時に、ユーザ用視標を表すユーザ用画像を表示するために使用される。投影面の材質は、光線を反射又は拡散させて、所定の像を正確に形成できるようなものでなければならない。
【0051】
第2の例では、視線追跡較正機能と視力検査機能を一緒に組み込むためのシステムが使用される例示的な環境があり得る。この環境は、システム及びユーザを含んでもよい。この環境において、システムは、ユーザの視力チェックを実施し、同時に視線追跡較正を実施するために使用される。このシステムは、光学器具(例えば、眼鏡など)、スクリーン(例えば、テレビジョンディスプレイなど)、及び少なくとも1つの入力手段(例えば、リモートコントローラなど)を備えてもよい。ユーザは、検査実施時に、例えば300cmの所定の距離D1からテレビジョンディスプレイを見てもよい。視力検査中、ユーザ用画像がテレビジョンディスプレイ上に表示されてもよく、ユーザ用画像はユーザ用視標(例えば記号など)を表現してもよい。所定のユーザ入力が、リモートコントローラを使用してユーザによって提供されてもよい。この所定のユーザ入力は、ユーザが眼鏡を使用している間、ユーザに提供された画像に表現され得る記号を明確に見ることができるかどうかを示してもよい。その後、提供されたユーザ入力に基づいて、ユーザが前記ユーザ用画像に表現されてもよい前記記号を明確に見ることができるかどうかが決定されてもよい。
【0052】
本開示はまた、前述のような、第3の捉え方に関する。前述の第1の捉え方に関して上に開示された様々な実施形態及び変形例は、第3の捉え方にも準用される。
【0053】
実施形態によっては、ユーザがユーザ用視標をはっきりと見ることができると判定され場合、別の次の画像を使用してステップ(a)から(e)を繰り返す。ここで別の次の画像は、前の画像に表された視標よりもサイズが小さい少なくとも1つの別の次の視標を表現する。
【0054】
実施形態によっては、前記方法は、
・ 光学器具の能動光学要素を制御して、1つ又は複数の屈折力の少なくとも1つを生成することと;
・ ステップ(a)から(e)を繰り返すことと;
・ 新たに収集した情報を処理して、視線追跡手段を更に較正することと;
を含む。
【0055】
実施形態によっては、前記方法は、ユーザが与えられた視標をはっきりと見ることができないと判定された場合に、1つ以上の光学的度数のうちの少なくとも1つを調整することを含む。
【0056】
実施形態によっては、前記方法は更に、
・ 視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向、ユーザの注視点の少なくとも1つを決定することと;
・ 前記ユーザの目の視線方向の輻輳角、前記ユーザの目の瞳孔間距離、前記ユーザの注視点の少なくとも1つに基づいて、前記ユーザが注視している光学的深度を決定することと;
・ 前記ユーザが注視している光学的深度に基づいて、前記光学器具の前記能動光学要素によって生成される1つ又は複数の屈折力の少なくとも1つを選択することと;
を含む。
[図面の詳細説明]
【0057】
図1を参照すると、本開示の一実施形態による、光学器具102及び光学器具102を含むシステム100のアーキテクチャのブロック図が示されている。光学器具102は、視線追跡手段108と、少なくとも1つのプロセッサ(プロセッサ110として描かれている)とを備える。実施形態によっては、光学器具102は、眼106ごとに、能動光学要素104も備える。プロセッサ110は、能動光学要素104及び視線追跡手段108に通信可能に結合されている。プロセッサ110は、前述の第1の捉え方に関して説明してきたような様々な処理を実行するように構成される。
【0058】
システム100は、光学器具102とは別にスクリーン112も備える。実施形態によっては、光学器具102が使用されているとき、ユーザはスクリーン112を所定の距離D1から見る。システム100は、少なくとも1つの入力手段(入力手段114として描かれている)を更に備える。プロセッサ110は入力手段114と通信可能に結合されている。
【0059】
図1は単なる例示であり、本願の特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。例えば、視線追跡手段108は、片眼ごとに別個の視線追跡手段として実装され得る。
【0060】
図2を参照すると、本開示の実施形態に従う光学器具200の概略図が図示されている。図示されるように、光学器具200は眼鏡として実装される。光学器具200は、視線追跡手段204と、少なくとも1つのプロセッサ(プロセッサ206として描かれている)と、右目用の能動光学要素202A及び左目用の能動光学要素202Bを保持するために採用されたフレーム208と、フレーム208に取り付けられた少なくとも1つの入力手段(入力手段210として描かれている)とを備える。実施形態によっては、光学器具200は、片眼毎に、能動光学要素(右眼用の能動光学要素202A及び左眼用の能動光学要素202Bとして描かれている)も備える。プロセッサ206は、能動光学要素202A,202B及び視線追跡手段204と通信可能に結合されている。入力手段210は、例えば、物理的なスライダー又はボタンとして実装することができる。入力手段210は、所定のユーザ入力を提供するためにユーザによって使用され得る。例示的なシナリオでは、ユーザの眼の視力チェックのために、スクリーン上に、ユーザに提供される画像が表示されてもよい。この画像はユーザに提供される視標を表現する。入力手段210は、光学器具200を使用している間に、ユーザが画像に表現された視標をはっきりと見ることができるか否かを示すために、ユーザによって使用され得る。
【0061】
図2は単なる例示であり、本願の特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。光学器具200の具体的な実装形態は、一例として提供されるものであり、能動光学要素の数又はタイプ、視線追跡手段の構成要素の数又はタイプ、入力手段の数又はタイプを限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。
【0062】
図3を参照すると、本開示の実施形態に従って、視線追跡較正と視力検査を同時に組み込んだシステムが使用されている環境300が図示されている。環境300は、システム、及びユーザ302を含む。この環境300において、ユーザの眼の視力を評価するためのテストが実施される。システムは、(視線追跡較正と視力検査を同時に行う際にユーザ302が使用する)光学器具と、スクリーン304と、少なくとも1つの入力手段(入力手段306として描かれている)とを備える。スクリーン304は、ユーザ302の装置308のディスプレイとして描かれている。ユーザ302は、視力検査中に、予め定義された距離D1(例えば、300センチメートルなど)から、スクリーン304を見る。視力検査中、ユーザに提供される画像310がスクリーン304上に表示される。画像310は少なくとも1つの視標(ユーザに提供される視標312として描かれ、視標312は記号として描かれている)を表現する。所定のユーザ入力が、入力手段306を用いてユーザ302によって提供される。ここで所定のユーザ入力は、ユーザ302が、光学器具を使用している間に、画像310に表された視標312をはっきりと見ることができるか否かを示す。ユーザ302が視標312をはっきりと見ることができるかできないかを判定する際、ユーザがはっきりと見ることができるかできないかのいずれかである視標312のサイズ、画像310における視標312の位置、ユーザが前記位置に表示されている視標312をはっきりと見ることができるかできないかのいずれかであるときのユーザの目の特徴の外観を示す情報が収集される。本システムを用いて視力検査を実施する際に得られたこの情報に基づいて、視線追跡手段を較正し、同時にユーザに固有の1つ又は屈折力を決定する。
【0063】
図3は単なる例示であり、本願の特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。
【0064】
図4Aを参照すると、例示的な視標(様々な向きの視標402Aとして描かれている)及び例示的な入力手段(リモートコントローラ404として描かれている)が示されている。
図4Bを参照すると、本開示の実施形態に従って、ユーザに提供される視標402A及びリモートコントローラ404を使用して、ユーザの眼の例示的な視力検査が実施されるフローが示されている。
【0065】
図4A及び
図4Bの両方において、視標402Aは、視標特徴(所定の隙間406として描かれている)を有するランドルトC視標として描かれている。入力手段404は、4つのボタン、すなわち、上方向ボタンA(上矢印で示す)、下方向ボタンB(下矢印で示す)、左方向ボタンC(左矢印で示す)、右方向ボタンD(右矢印で示す)を有する。これらは、視標402Aにおける視標特徴406のそれぞれの位置に対応している。従って、上方向ボタンAは、視標402Aにおける、視標特徴406の上側の位置に対応し、下方向ボタンBは、視標特徴406の下側の位置に対応し、左方向ボタンCは、視標特徴406の左側の位置に対応し、右方向ボタンDは、視標特徴406の右側の位置に対応する。視力検査を行う場合、ユーザは光学器具を使用しながら視標402Aを見る。
【0066】
図4Bでは、ユーザに提供される画像408Aがユーザに表示される。画像408Aは、ユーザに提供される視標402Aを表現する。ユーザは、入力手段404を用いて入力を提供する。この入力は、ユーザが見た視標特徴406の位置に対応する。ある例では、ユーザは、上方向ボタンAを押すことによって所定のユーザ入力を提供する。このユーザ入力に基づいて、ユーザは画像408Aに表現された視標402Aをはっきりと見ることができないと(決定ボックス410を用いて示されるように)判定される。ユーザが視標402Aをはっきりと見ることができないと判定されると、ユーザがはっきりと見ることができなかった視標402Aのサイズ、画像408Aにおける視標402A及び/又は視標特徴406の位置、ユーザが前記位置に表示されている視標402Aをはっきりと見ることができなかったときのユーザの眼の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報が収集される。同時に、次の画像408Bを画面に表示することによって視力検査が繰り返される。次の画像408Bは、画像408Aで表現された視標402Aのサイズよりもサイズが大きい少なくとも1つの次の視標(次の視標402Bとして描かれる)を表現する。
【0067】
別の例では、ユーザは右方向ボタンDを押すことによって所定のユーザ入力を提供する。このユーザ入力に基づいて、ユーザは画像408Aに表現された視標402Aをはっきりと見ることができると(決定ボックス410を用いて示されるように)決定される。ユーザが視標402Aをはっきりと見ることができると判定されると、ユーザがはっきりと見ることができた視標402Aのサイズ、画像408Aにおける視標402A及び/又は視標特徴406の位置、ユーザが前記位置に表示されている視標402Aをはっきりと見ることができたときのユーザの眼の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報が収集される。そして視力検査は、画面上に別の次の画像408Cを表示することによって繰り返される。次の画像408Cは、画像408Aに表現された視標402Aのサイズよりもサイズが小さい少なくとも1つの他の次の視標(次の視標402Cとして描かれる)を表す。
【0068】
図4A~Bは単なる例示であり、本願の特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。
【0069】
図5を参照すると、視線追跡手段と少なくとも1つのプロセッサとを備える光学器具によって実施される方法のステップを示すフローチャートが図示されている。本開示の実施形態によれば、本方法は、以下を備える。ステップ502において、ユーザに提供される画像がスクリーン上に表示される。この画像は少なくとも1つの視標を表現する。ステップ504で、光学器具を使用しながら、ユーザが前記画像に表現された、ユーザに提供される視標をはっきりと見ることができるかどうかを示すユーザ入力が得られる。ステップ506で、得られたユーザ入力に基づいて、前記画像に表現された前記視標をユーザがはっきりと見ることができたかどうかが判定される。ユーザが所与の視標をはっきりと見ることができたと判定されると、ステップ508において、ユーザがはっきりと見ることができた前記視標の大きさ、前記画像における前記視標及び/又は視標特徴の位置、ユーザが前記位置に表示されていた前記視標をはっきりと見ることができたときのユーザの眼の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報が収集される。ユーザが所与の視標をはっきりと見ることができなかったと判定された場合、ステップ510において、ユーザがはっきりと見ることができなかった前記視標のサイズ、前記画像における前記視標及び/又は視標特徴の位置、前記位置に表示される前記視標をはっきりと見ることができなかったときのユーザの目の特徴の外観、の少なくとも1つを示す情報が収集される。また、ユーザが所与の視標をはっきりと見ることができなかった場合、前記画像に表現された前記指標よりもサイズが大きい少なくとも1つの次の視標を用いて、ステップ502、504及び506が繰り返される。ステップ512では、収集された情報が処理され、ユーザに固有の1つ以上の屈折力を決定し、同時に視線追跡手段を較正する。
【0070】
上述のステップは単なる例示であって、代替的なステップも含むことができる。すなわち、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、1つ又は複数のステップを加えたり、1つ又は複数のステップを除いたり、1つ又は複数のステップを別の順序で実行したりすることができる。
【外国語明細書】