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特開2025-31584持続可能性目標に従ってインク画像を印刷するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031584
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】持続可能性目標に従ってインク画像を印刷するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20250228BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
B41J2/17 203
B41J2/165 203
B41J2/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024125639
(22)【出願日】2024-08-01
(31)【優先権主張番号】18/453,866
(32)【優先日】2023-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シーミット プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス ケイ.ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン エム.ルフェーブル
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ エイ.アルバレス
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー エス.コンデッロ
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056EA27
2C056EB27
2C056EB40
2C056EC08
2C056EC30
2C056EC53
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA46
2C056HA47
2C056JC13
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】インクジェットプリンタは、廃インク処理システムと加湿チャンバとを含み、印刷ヘッドメンテナンスステーションによって生成された廃インクを固体インク顔料粒子と溶媒流とに分離し、溶媒流を使用してインクジェットプリンタの印刷ヘッドにおけるインクジェットを動作状態に維持する。廃インク処理システムは、廃インクを金属塩と混合して、廃インクから固体インク顔料粒子を沈殿させる。顔料粒子の沈殿後に残っている溶媒流は加湿され、プロセス方向において1つおきの印刷ヘッドモジュール内の各印刷ヘッドの両側に位置付けられたエアバッフルに方向付けられる。
【効果】廃インクを処理し、溶媒流を使用してインクジェットプリンタの印刷ヘッドにおけるインクジェットの動作状態を維持するように既存のインクジェットプリンタを遡及的に修正するためのキットが提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
前記インクジェットプリンタ内の少なくとも1つの印刷ヘッドに対して少なくとも1つのパージサイクルを実施して、廃インクを生成するように構成された印刷ヘッドメンテナンスステーションと、
前記印刷ヘッドメンテナンスシステムに流体結合されて、前記印刷ヘッドメンテナンスステーションから前記廃インクを受容する廃インク処理システムであって、前記廃インクを固体インク顔料粒子と溶媒流とに分離するように構成されている廃インク処理システムと、
前記廃インク処理システムに流体結合されて、前記廃インク処理システムから前記溶媒流を受容する加湿チャンバであって、前記廃インク処理システムから受容した前記溶媒流を加湿し、加湿された溶媒流を前記インクジェットプリンタの印刷ゾーンに方向付けるように構成されている加湿チャンバと、を備える、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記廃インク処理システムが、
前記廃インクとの混合組成物を生成するように構成されている混合チャンバと、
前記混合チャンバに流体結合されて、前記混合組成物を受容し、固体インク顔料粒子が前記混合組成物から沈降して前記溶媒流を形成することを可能にする沈降タンクと、を更に備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記混合チャンバが、
回転して前記廃インクと金属塩を混合して、前記混合組成物を形成するように構成されている、前記混合チャンバ内の部材を更に備える、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記廃インク処理システムが、
前記廃インク処理システム内に選択的に設置されるように構成され、かつ前記固体インク顔料粒子を受容するように前記廃インク処理システム内に位置付けられている容器を更に備える、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記加湿チャンバが、
前記加湿チャンバ内にある体積の水を保持するように構成されたリザーバと、
前記体積の水を加熱するように構成されたヒータと、
給水を撹拌するように構成されたディフューザであって、加熱及び撹拌された給水が水蒸気を生成し、水蒸気が前記溶媒流と混合して加湿された溶媒流を生成する、ディフューザと、を更に備える、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ヒータが、対流ヒータ、電気抵抗ヒータ、赤外線ヒータ、及び誘導ヒータのうちの1つである、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記ディフューザが、超音波ディフューザである、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
廃インクを前記印刷ヘッドメンテナンスステーションから前記廃棄物処理システムの前記混合チャンバに移動させるように構成された第1の空気圧デバイスと、
前記溶媒流を前記廃インク処理システムから前記加湿チャンバに移動させるように構成された第2の空気圧デバイスと、
前記加湿された溶媒流を前記加湿チャンバから前記インクジェットプリンタの前記印刷ゾーンに移動させるように構成された第3の空気圧デバイスと、
を更に備える、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記プロセス方向において少なくとも1つの印刷ヘッドの前側に位置付けられた第1のハウジングであって、前記加湿チャンバに流体結合されて、前記加湿された溶媒流の一部分を受容し、前記加湿された溶媒流の前記一部分を前記インクジェットプリンタの前記印刷ゾーンに方向付ける第1のハウジング、
を更に備える、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記プロセス方向に互いに続くように構成された複数の印刷ヘッドモジュールであって、前記プロセス方向に印刷ヘッドの構成を導く第1の印刷ヘッドモジュール内の全ての印刷ヘッドが、前記第1の印刷ヘッドモジュール内の全ての前記印刷ヘッドの両側に位置付けられた前記第1のハウジング及び第2のハウジングを有し、前記第2のハウジングが、前記加湿チャンバに流体結合されて、前記加湿された溶媒流の別の部分を受容し、前記加湿された溶媒流の前記別の部分を前記インクジェットプリンタの前記印刷ゾーンに方向付ける、複数の印刷ヘッドモジュールと、
前記プロセス方向において前記第1の印刷ヘッドモジュールに続く1つおきの印刷ヘッドモジュールであって、前記プロセス方向において前記第1の印刷ヘッドモジュールに続く前記1つおきの印刷ヘッドモジュール内の全ての前記印刷ヘッドの両側に位置付けられた前記第1のハウジング及び前記第2のハウジングを有する、1つおきの印刷ヘッドモジュールと、
を更に備える、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
インクジェットプリンタを動作させる方法であって、
前記インクジェットプリンタ内の少なくとも1つの印刷ヘッドに対して少なくとも1つのパージサイクルを実施して、廃インクを生成することと、
前記廃インクを固体インク顔料粒子と溶媒流とに分離することと、
前記溶媒流を加湿することと、
加湿された溶媒流を前記インクジェットプリンタの印刷ゾーンに方向付けることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記加湿された溶媒流を、前記少なくとも1つの印刷ヘッドの前縁に位置付けられた第1のハウジングの第1の開口部に方向付けることと、
前記第1のハウジングの少なくとも1つの第2の開口部を通して前記加湿された溶媒流を放出して、前記加湿された溶媒流を前記インクジェットプリンタの前記印刷ゾーンに方向付けることと、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記廃インクの前記固体インク顔料粒子と前記溶媒流とへの分離が、
前記廃インクを金属塩と混合して、前記廃インクから前記固体インク顔料粒子を沈殿させることによって、混合組成物を生成することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合組成物から沈殿する前記固体インク顔料粒子を容器に受容すること、
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記廃インクの前記金属塩チャンバとの前記混合することが、
アクチュエータを用いて部材を回転させて、前記金属塩を前記廃インクと混合し、前記混合組成物を形成することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記容器を選択的に除去して前記固体インク顔料粒子を廃棄すること、
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒流の加湿が、給水を加熱及び撹拌して、水蒸気を生成することと、
前記水蒸気を前記溶媒流と混合して、加湿された溶媒流を生成することと、を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記給水の前記加熱することが、
前記給水を対流ヒータ、電気抵抗ヒータ、赤外線ヒータ、及び誘導ヒータのうちの1つで加熱することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記給水の前記撹拌することが、
前記給水を超音波ディフューザで撹拌することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記加湿された溶媒流を、前記プロセス方向において前記少なくとも1つの印刷ヘッドの反対側に位置付けられた第2のハウジングに方向付けること、
を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
廃インクを溶媒流と固体インク顔料粒子とに分離し、前記溶媒流を使用して、インクジェットプリンタ内の印刷ヘッドにおけるインクジェットの動作状態を維持するのを助けるように、前記インクジェットプリンタを遡及的に修正するためのキットであって、
印刷ヘッドメンテナンスステーションから廃インクを出すように構成された交換廃インク容器と、
廃インク処理システムと、
加湿チャンバと、
3つの空気圧デバイスと、
プリンタ内の印刷ヘッドモジュールの数の半分の各印刷ヘッドに対してU字形クリップを有する2つのエアバッフルと、を備える、キット。
【請求項22】
前記廃インク処理システムが、
前記廃インク処理システムに流体結合し、前記廃インク処理システムから受容した前記廃インクを金属塩と混合することによって混合組成物を生成するように構成された混合チャンバと、
前記混合チャンバに流体結合されて、前記混合組成物を受容し、固体インク顔料が前記混合組成物から沈殿して溶媒流を形成することを可能にする沈降タンクと、
前記沈降タンク内の前記混合組成物から沈殿する前記固体インク顔料粒子を受容するように位置付けられた容器と、を更に備える、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記混合チャンバが、
回転して前記廃インクと前記金属塩を混合して、前記混合組成物を形成するように構成されている、前記混合チャンバ内の部材を更に備える、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記廃インク処理システムの前記容器が、前記廃インク処理システム内に選択的に設置されるように構成されている、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記加湿チャンバが、
前記加湿チャンバ内にある体積の液体を保持するように構成されたコンテナと、
前記コンテナを加熱するように構成されたヒータと、
前記コンテナ内の流体を撹拌するように構成されたディフューザであって、加熱及び撹拌された液体が液体蒸気を生成し、液体蒸気が前記溶媒流と組み合わさって加湿された溶媒流を生成する、ディフューザと、を更に備える、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記ヒータが、対流ヒータ、電気抵抗ヒータ、赤外線ヒータ、及び誘導ヒータのうちの1つである、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記ディフューザが、超音波ディフューザである、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
プログラムされた命令が記憶される非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記プログラムされた命令が、前記非一時的コンピュータ可読媒体に動作可能に接続されたコントローラによって実行されたときに、
廃インクを印刷ヘッドメンテナンスステーションから前記廃インク処理システムに方向付けるように第1の空気圧デバイスを動作させることと、
前記廃インクを前記固体インク顔料粒子と前記溶媒流とに分離するように前記廃インク処理システムを動作させることと、
前記溶媒流を前記加湿チャンバに方向付けるように第2の空気圧デバイスを動作させることと、
前記溶媒流を加湿するように前記加湿チャンバを動作させることと、
前記インクジェットプリンタ内の前記印刷ヘッドモジュールの数の半分の各印刷ヘッドの両側の前記U字形クリップによって保持された前記エアバッフル内に前記加湿された溶媒流を方向付けるように第3の空気圧デバイスを動作させることと、を行うためのものである、非一時的コンピュータ可読媒体を更に含む、
請求項27に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、媒体上にインク画像を生成するデバイスに関し、より詳細には、持続可能性目標に従ったインク画像の印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタとしても知られるインクジェット画像化デバイスは、印刷ヘッドから液体インクを噴射して、画像を画像受容表面上に形成する。印刷ヘッドは、アレイ状に配置された複数のインクジェットを含む。各インクジェットは、印刷ヘッドコントローラに結合された熱又は圧電アクチュエータを有する。印刷ヘッドコントローラは、画像を定義するデジタルデータコンテンツに対応する発射信号を生成する。印刷ヘッド内のアクチュエータは、ノズルに流体接続されたインクチャンバ内に膨張することによって発射信号に応答して、ノズルから画像受容表面上にインク液滴を噴射して、発射信号を生成するために使用されたデジタル画像コンテンツに対応するインク画像を形成する。画像受容表面は、通常、媒体材料の連続ウェブ又は一連の媒体シートである。
【0003】
色画像を生成するために使用されるインクジェットプリンタは、典型的には、複数の印刷ヘッドモジュールを含む。各印刷ヘッドモジュールは、典型的には、単一色のインクを噴射する1つ以上の印刷ヘッドを含む。典型的なインクジェットカラープリンタでは、4つの印刷ヘッドモジュールが、プロセス方向において位置決めされ、各印刷ヘッドモジュールが、異なる色のインクを噴射する。最も頻繁に使用される4つのインク色は、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックである。そのようなプリンタの一般的な名前は、CMYKカラープリンタである。一部のCMYKカラープリンタは、各色のインクを印刷する2つの印刷ヘッドモジュールを有する。同じ色のインクを印刷する印刷ヘッドモジュールは、クロスプロセス方向において隣接するインクジェット間の距離の2分の1だけ互いにオフセットされており、1インチ当たりの画素数を2倍にして、2つのモジュールにある印刷ヘッドによって噴射されるインクの色のラインの濃度を上昇させる。本文書で使用するとき、「プロセス方向」という用語は、プリンタ内の印刷ヘッドを通過するときの画像受容表面の移動の方向を意味し、「クロスプロセス方向」という用語は、画像受容表面の平面内でプロセス方向に対して垂直な方向を意味する。
【0004】
インクジェット、特に水性インクを噴射する印刷ヘッド内のインクジェットは、ノズル内のインクが乾燥するのを防止することを助けるために定期的に発射する必要がある。インクジェットがかなりの量のインクを噴射して、インク画像内に高い被覆面積を形成するので、印刷ヘッド内のノズルが乾燥することがある。印刷ヘッド上のフェースプレートの一部分における高い割合のインクジェットの動作は、フェースプレートに付着する傾向がある多数のサテライト液滴を生成する可能性がある。サテライト液滴は、ノズルから画像受容基材に移動するより大きな液滴から分離する小さなインク液滴である。フェースプレート上のこれらのサテライト液滴の蓄積は、フェースプレート内のノズルを詰まらせる可能性がある。追加的に、印刷ヘッド内のインクジェットが十分に頻繁に動作しない場合、例えば、低インク面積被覆画像部分が印刷されるときに、インクジェット内のインクが乾燥し、インクジェットを動作不能にする可能性がある。インクジェットの動作状態を維持するために、印刷ヘッドモジュールは、画像受容基材の経路に対向する位置から、印刷ヘッドがパージされる印刷ヘッドメンテナンスステーションに移動される。印刷ヘッドをパージするとは、加圧された気体又は液体が印刷ヘッド内のインク供給チャンバに加えられて、インクをチャンバからノズルに押し込み、そこでインクがノズルからフェースプレート上に噴射されることを意味する。次いで、1つ以上のワイパがフェースプレートを横切って移動して、パージされたインクをフェースプレートから廃インク容器に除去する。
【0005】
廃インクの処分は、環境問題を提示する可能性がある。最終的に輸送され、水性インクとして永続的に保管されるボトルに廃インクを送るのではなく、インクから水又は他の溶媒を蒸発させるのに十分な温度までインクを加熱することができる。この蒸発により、廃インクの体積を減少させ、固体はより環境に優しいように処分され得る。しかしながら、廃インクを加熱することは、印刷の主要な機能、すなわちインク画像生成に使用されないエネルギーを必要とする。その結果、インクジェットプリンタを動作させるエネルギーコストは、必要とされるよりも著しく高くなる可能性がある。したがって、インクジェットプリンタは、環境に悪影響を与えることなくインクジェットプリンタを動作させるコストを低減する方式で廃インクを処理することができることにより利益を得るであろう。
【発明の概要】
【0006】
カラーインクジェットプリンタは、環境に悪影響を与えることなくインクジェットプリンタを動作させるコストを低減する方式で廃インクを処理するように構成されている。カラーインクジェットプリンタは、インクジェットプリンタ内の少なくとも1つの印刷ヘッドに対して少なくとも1つのパージサイクルを実施して、廃インクを生成するように構成された印刷ヘッドメンテナンスステーションと、印刷ヘッドメンテナンスシステムに流体結合されて、印刷ヘッドメンテナンスステーションから廃インクを受容する廃インク処理システムであって、廃インクを固体インク顔料粒子と溶媒流とに分離するように構成されている、廃インク処理システムと、廃インク処理システムに流体結合されて、廃インク処理システムから溶媒流を受容する加湿チャンバであって、廃インク処理システムから受容した溶媒流を加湿し、加湿された溶媒流をインクジェットプリンタの印刷ゾーンに方向付けるように構成されている、加湿チャンバと、を備える。
【0007】
カラーインクジェットプリンタを動作させる方法は、環境に悪影響を与えることなくインクジェットプリンタを動作させるコストを低減する方式で廃インクを処理する。方法は、インクジェットプリンタ内の少なくとも1つの印刷ヘッドに対して少なくとも1つのパージサイクルを実施して、廃インクを生成することと、廃インクを固体インク顔料粒子と溶媒流とに分離することと、溶媒流を加湿することと、加湿された溶媒流をインクジェットプリンタの印刷ゾーンに方向付けることと、を含む。
【0008】
環境に悪影響を与えることなくインクジェットプリンタを動作させるコストを低減する方式で廃インクを処理するようにプリンタが動作することができるように、キットがカラーインクジェットプリンタに遡及的に設置され得る。キットは、印刷ヘッドメンテナンスステーションから廃インクを出すように構成された交換廃インク容器と、廃インク処理システムと、加湿チャンバと、3つの空気圧デバイスと、プリンタ内の印刷ヘッドモジュールの数の半分の各印刷ヘッドに対してU字形クリップを有する2つのエアバッフルと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
環境に悪影響を与えることなくインクジェットプリンタを動作させるコストを低減する方式でプリンタが廃インクを処理するようにインクジェントにプリンタに設置され得る、カラーインクジェットプリンタ、カラーインクジェットプリンタの動作方法、及びキットの前述の態様及び他の特徴は、添付の図面と関連して解釈され、以下の説明で説明される。
図1】環境に悪影響を与えることなくインクジェットプリンタを動作させるコストを低減する方式で廃インクを処理するカラーインクジェットプリンタの概略図である。
図2図1に示すプリンタの印刷ゾーンと、印刷ゾーンに隣接して位置付けられた印刷ヘッドメンテナンスステーションと、を示す。
図3】印刷ヘッドメンテナンスステーションから廃インクを受容し、処理システムから除去するように構成された容器に固体インク粒子が収集されるように固体インク顔料粒子から溶媒を分離する廃インク処理システムを示す。
図4図3の廃インク処理システムから溶媒流を受容し、図1のインクジェットプリンタの印刷ゾーンで使用するために溶媒流を処理する加湿チャンバを示す。
図5】処理された溶媒流が図2の印刷ゾーンに分散され得るように、図3の加湿チャンバに流体結合され、かつ図1のインクジェットプリンタの印刷ヘッドに追加され得るエアバッフルシステムを示す。
図6】エアバッフルが図4の加湿チャンバに結合され、かつ図1のインクジェットプリンタに設置され得る1つの方法を示す。
図7】3つの印刷ヘッドで構成された印刷ヘッドモジュールの実施形態を示し、各印刷ヘッドは、各印刷ヘッドの対向する面に取り付けられた一対のエアバッフルを有する。
図8】プリンタの廃棄物処理システム及び加湿チャンバを動作させるための流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で開示したプリンタ及びプリンタの動作方法のための環境、並びにプリンタ及びプリンタの動作方法の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号が、同様の要素を指定するために図面を通じて使用されている。本明細書で使用するとき、「プリンタ」という単語は、インク液滴を異なる種類の媒体上に噴射してインク画像を形成する任意の装置を包含する。
【0011】
図1は、印刷ヘッドメンテナンスステーションによって生成された廃インクを処理し、溶媒流をプリンタの印刷ゾーンに再循環させて、プリンタの印刷ヘッドにおけるノズル不良を軽減する高速カラーインクジェットプリンタ10を描写する。例示されるように、プリンタ10は、媒体シート供給部S又はSのうちの1つから取り出された媒体シートの表面上にインク画像を直接形成するプリンタであり、シートSは、アクチュエータ40のうちの1つ以上を動作させるコントローラ80によってプリンタ10を通って移動され、アクチュエータ40は、コンベヤ52のローラ又は少なくとも1つの駆動ローラに動作可能に接続されており、コンベヤ52は、プリンタの印刷ゾーンPZ(図2に示す)を通過する媒体搬送部42の一部分を備える。一実施形態では、各印刷ヘッドモジュールは、プリンタによって印刷され得るクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅に対応する幅を有するたった1つの印刷ヘッドを有する。他の実施形態では、印刷ヘッドモジュールは、複数の印刷ヘッドを有し、各印刷ヘッドが、プリンタが印刷することができるクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅未満の幅を有する。これらのモジュールでは、印刷ヘッドは、単一の印刷ヘッドよりも広い媒体が印刷されることを可能にするずらされた印刷ヘッドのアレイ状に配置されている。追加的に、モジュール内、又はモジュール間の印刷ヘッドはまた、印刷ヘッドによってクロスプロセス方向に吐出された液滴の密度が、クロスプロセス方向において、印刷ヘッド内のインクジェット間の最小の間隔よりも大きくなり得るように組み合わせることができる。プリンタ10は、2つのみの媒体シート供給部を伴って描写されているが、プリンタは、各々が異なる種類又はサイズの媒体を含む、3つ以上のシート供給部で構成することができる。
【0012】
図1のプリンタ10における印刷ゾーンPZを図2に示す。印刷ゾーンPZは、シートがプロセス方向において通過する最初のインクジェットから、シートがプロセス方向において通過する最後のインクジェットまでの距離と等しいプロセス方向における長さを有し、クロスプロセス方向において互いに真向かいにある、印刷ゾーンの両側の最も外側にあるインクジェット間の最大距離である幅を有する。図2に示す各印刷ヘッドモジュール34A、34B、34C、及び34Dは、それぞれ、印刷ヘッドキャリアプレート316A、316B、316C、及び316Dのうちの1つに装着された3つの印刷ヘッド204を有する。印刷ゾーンPZに隣接して、4つの印刷ヘッドメンテナンスステーション(printhead maintenance station、PHM)32がある。周期的に、又は印刷ヘッドモジュールのうちの1つの印刷ヘッドにおける動作不能インクジェットの数が所定の閾値を超えることを画像品質メトリックが示すときに、印刷動作は停止され、少なくとも、動作不能インクジェットの数が過剰である印刷ヘッドが位置する印刷ヘッドモジュールは、印刷ゾーンPZから、隣接する印刷ヘッドメンテナンスステーション32に対向する位置に移動される。印刷ヘッドメンテナンスステーションは、既知の方式で印刷ヘッドにおけるノズルを通してインクをパージするように動作する。1つ以上の印刷ヘッドに対して実施される1つ以上のパージサイクルによって生成される廃インクは、印刷ヘッドメンテナンスステーションにおける容器内に収集される。この廃インクは、ポンプ208又は何らかの他のタイプの空気圧デバイスによって廃棄処理システム304に移動される。廃棄物処理システム304は、廃インク中の溶媒を固体インク顔料粒子から分離し、そのため、印刷ヘッドメンテナンスステーション32の全てから受容された廃インクからの固体インク顔料粒子が、除去のためにシステム304の単一の容器に収集され得、溶媒流が、以下でより詳細に説明するように、更なる処理のために加湿チャンバ308に方向付けられる。本文書で使用するとき、「印刷ゾーン」という用語は、インクジェットプリンタの印刷ヘッドに対向する媒体搬送部の領域を意味する。
【0013】
図1を更に参照すると、印刷された画像は、印刷ゾーンPZを出て、インク画像がシートS上に印刷された後に画像乾燥機30の下を通過する。画像乾燥機30は、インク画像を加熱してインク画像をシートS上に少なくとも部分的に定着させるために、赤外線ヒータ、加熱空気ブロワ、空気リターン、又はこれらの構成要素の組み合わせを含むことができる。赤外線ヒータは、シートSの表面上の印刷された画像に赤外線熱を加えて、インク中の水又は溶媒を蒸発させる。加熱空気送風機は、扇風機、又は他の加圧空気源を使用して、インク上に加熱空気を方向付けて、インクからの水又は溶媒の蒸発を補う。次いで、空気が収集され、空気戻りによって排気されて、プリンタ内の他の構成要素との乾燥機空気流の干渉を低減する。
【0014】
コントローラ80は、アクチュエータ40のうちの少なくとも1つを動作させて、位置88において枢動部材を回転させ、シートを容器56又は戻り経路72のいずれかに方向付ける。シートSは、ローラの回転によって、戻り経路72に沿って、印刷ヘッドを通過するプロセス方向の移動方向とは反対の方向に移動される。枢動部材82は、コントローラ80によって動作して、シートを戻り経路72の湾曲部分に沿って、シートが両面印刷のために裏返されるようにインバータ76に入れるか、又は戻り経路72の直線部分に沿って方向付ける。シートが直線部分を辿るときに、インバータ76はバイパスされ、先に印刷されたシートの側が再び印刷され得る。コントローラは、アクチュエータ40のうちの1つを動作させて、枢動部材82を時計回りに動かしてシートをインバータ76に方向付け、反時計回りに動かしてインバータを迂回させる。基材が反転されているか否かにかかわらず、コントローラ80が別のアクチュエータ40を動作させて枢動部材86を回転させ、戻り経路72からジョブストリームにシートSが入ることを提供するときに、基材は、媒体搬送部42によって運ばれているジョブストリームにマージする。
【0015】
図1に更に示されるように、二重経路72に方向転換されなかった印刷された媒体シートSは、媒体搬送部によって、これらのシートが収集されるシート容器56に運ばれる。印刷されたシートが容器56に到達する前に、これらのシートは、光学センサ84Bを通り過ぎる。光学センサ84Bは、印刷されたシートの画像データを生成し、この画像データは、コントローラ80によって分析されて、印刷ジョブの媒体シート上の印刷された画像における縞を検出する。追加的に、テストパターン画像が印刷されたシートが、印刷ジョブ中に間隔を置いて挿入される。光学センサ84Bによって生成されたこれらのテストパターン画像の画像データは、コントローラ80によって分析されて、存在する場合、テストパターンにインクを吐出するように動作された、どのインクジェットが実際にインクを吐出したかを判定し、インクジェットがインク液滴を噴射した場合、インク液滴が適切な質量でその意図された位置に降着したかどうかを判定する。噴射すると想定されたインク液滴を吐出しないか、又は正しい質量を有していない液滴を吐出するか、若しくは誤った位置に降着する任意のインクジェットは、本明細書では動作不能インクジェットと呼ばれる。コントローラは、コントローラ80に動作可能に接続されたデータベース92に、動作不能インクジェットを識別するデータを記憶することができる。テストパターンが印刷されたこれらのシートは、ランタイムミッシングインクジェット(run-time missing inkjet、RTMJ)シートと呼ばれることがあり、これらのシートは、印刷ジョブの出力から廃棄される。ユーザは、ユーザインターフェース50を動作させて、動作不能なインクジェットの数及び動作不能なインクジェットが位置する印刷ヘッドを識別するインターフェース上に表示されるレポートを取得することができる。反転されず、枢動部材86の動作によってジョブストリームにマージされるシートの場合、光学センサ84Aは、印刷された面の画像データを生成し、コントローラ80は、その画像データを使用して、シートを位置合わせし、印刷ヘッド内のイジェクタを動作させて、先に印刷されたシート面上に画像を更に印刷する。光学センサ84A及び84Bは、デジタルカメラ、LED及び光検出器のアレイ、又は通過表面の画像データを生成するように構成された他のデバイスであり得る。図1は、シート容器56に収集されている印刷されたシートを示しているが、これらのシートは、媒体シートの折り畳み、丁合、綴じ、及びステープル留めなどの作業を実施する他の処理ステーション(図示せず)に方向付けられ得る。
【0016】
機械又はプリンタ10の様々なサブシステム、構成要素及び機能の動作及び制御は、コントローラ又は電子サブシステム(electronic subsystem、ESS)80の助けを借りて実施される。ESS又はコントローラ80は、印刷ヘッドモジュール34A~34D(したがって印刷ヘッド)、アクチュエータ40、及び乾燥機30の構成要素に動作可能に接続されている。ESS又はコントローラ80は、例えば、電子データ記憶装置を伴う中央処理装置(central processor unit、CPU)、及びディスプレイ又はユーザインターフェース(user interface、UI)50を有する自己完結型コンピュータである。ESS又はコントローラ80は、例えば、センサ入力及び制御回路、並びに画素配置及び制御回路を含む。追加的に、CPUは、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続(図示せず)などの画像入力源と、印刷ヘッドモジュール34A~34Dとの間の画像データの流れを読み出し、捕捉し、準備し、かつ管理する。したがって、ESS又はコントローラ80は、印刷プロセスを含む他の全ての機械サブシステム及び機能を動作及び制御するための主要なマルチタスクプロセッサである。
【0017】
コントローラ80は、プログラム命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサで実装することができる。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられた非一時的なコンピュータ可読媒体内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、以下に説明される動作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供され得るか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供され得る。回路の各々は、別個のプロセッサで実装することができるか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装することができる。代替的に、回路は、超大規模集積(very large scale integrated、VLSI)回路内に提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に説明される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。
【0018】
動作中、生成される画像の画像コンテンツデータは、印刷ヘッドモジュール34A~34Dに出力される印刷ヘッド制御信号の処理及び生成のための、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかからコントローラ80に送信される。画像コンテンツデータとともに、コントローラは、媒体の重量、媒体の寸法、印刷速度、媒体の種類、各シートの各面上に生成されるインク領域被覆率、各シートの各面上に生成される画像の位置、媒体の色、繊維状媒体の媒体繊維配向、印刷ゾーンの温度及び湿度、媒体の含水量、並びに媒体の製造業者を特定する印刷ジョブパラメータを受信する。本文書で使用するとき、「印刷ジョブパラメータ」という用語は、印刷ジョブのための非画像コンテンツデータを意味し、「画像コンテンツデータ」という用語は、媒体シート上に印刷されるインク画像を特定するデジタルデータを意味する。
【0019】
更に詳細には、図1は、加湿チャンバ308から加湿された溶媒流を受容し、加湿された溶媒流を印刷ゾーンに方向付けるエアバッフル36を含み、そのため、媒体搬送部42及び媒体搬送部によって運ばれているシートSが、印刷ゾーンを通して加湿溶媒流を引っ張って、印刷ゾーンの湿度を増加させる。増加された湿度は、印刷ヘッドのフェースプレート上のインク及び印刷ヘッドのノズル内のインクの乾燥を弱めるのに役立ち、印刷ヘッドにおけるインクジェットの動作状態を長くする。
【0020】
図3は、廃インク処理システム304を描写する。廃インク318は、ポンプ208(図2)などの空気圧デバイスによって生成される空気圧によって混合チャンバ320内に移動される。アクチュエータ40によって回転させられる部材324は、入ってくる廃インクを、別のポート328を通して受容された金属塩と混合する。入ってくる廃インク及び金属塩の正圧は、金属塩及び廃インクの混合組成物332を沈降タンク336に押し込み、そこで金属塩と廃インクとの凝集相互作用が溶媒流340を形成し、廃インクから固体インク顔料粒子344を沈殿させる。これらの粒子344は、沈降タンク336から除去されるように構成された容器352内に落下し、そのため、固体インク顔料粒子を容器から空にすることができる。空気圧源が排出ポート348に流体結合されて、溶媒流340を沈降タンク336から除去することができる。廃インクと混合された金属塩は、廃インクの溶媒と相互作用して廃インクから固体インク顔料粒子を沈殿させる任意の好適な金属塩であってよい。このような金属塩の例としては、水性インクのための塩化マグネシウム及び塩化カルシウムである。ナトリウム、カリウム、バリウム及びアルミニウムの他の金属塩を使用して顔料粒子を沈殿させることができる。空気圧源は、ファン、真空などであり得る。沈降タンクは、混合チャンバの外部の金属塩の供給から金属塩を受容するものとして説明してきたが、金属塩の床を混合チャンバ内に載置し、時々新しくすることができる。本文書で使用するとき、「廃インク処理システム」という用語は、廃インクを溶媒流と固体インク顔料粒子とに分離するように構成されている1つ以上の構成要素を意味し、「廃インク」という用語は、印刷されたインク画像の一部分を形成するために使用されない、印刷ヘッドから除去されたインクを意味する。本文書で使用するとき、「溶媒流」という用語は、廃インク処理システムによってインク中の固体インク顔料粒子から液体溶媒が分離された後のインク中の液体溶媒を意味する。本文書で使用するとき、沈降タンクという用語は、金属塩と混合された廃インクから固体インク顔料粒子が沈殿する、廃インク処理システム内の部分的に囲まれた体積を意味する。本文書で使用するとき、「混合チャンバ」という用語は、金属塩が廃インクと混合される部分的に囲まれた体積を意味する。
【0021】
図4は、溶媒流344を印刷ゾーンPZでの使用に好適なものにする加湿チャンバ308を描写する。チャンバ308は、ヒータ404と、ディフューザ408と、を含む。溶媒流344は、チャンバ308内の給水412の上方の空間に入る。ヒータ404及びディフューザ408それぞれによる水の加熱及び撹拌は、溶媒流と混合する水蒸気を生成する。この加湿された溶媒流は、それぞれファン又は真空などの空気圧デバイス416によって、バッフル36に流体接続された排出ポート420に流体結合された導管内に押し込まれるか又は引き出される。本文書で使用するとき、「加湿チャンバ」という用語は、水蒸気を生成し、水蒸気を溶媒流と混合するように構成されている1つ以上の構成要素を意味する。本文書で使用するとき、「空気圧デバイス」という用語は、導管を通して流体を押し込むか又は引き出すように構成されているデバイスを意味する。ヒータ404は、対流ヒータ、電気抵抗ヒータ、赤外線ヒータ、誘導ヒータなどであってもよい。ディフューザは、超音波又は機械的撹拌デバイスであってもよい。
【0022】
図5は、プロセス方向Pにおいて印刷ヘッド204の前縁(leading edge)に取り付けられたエアバッフル36を示しており、そのため、加湿チャンバ308から受容された加湿溶媒流344は、媒体搬送部42及び搬送部によって搬送される媒体シートSの方へ方向付けられる。本文書で使用するとき、「エアバッフル」という用語は、ある体積の空気を囲み、空気が構造体の一端の少なくとも1つの開口部から構造体の他端の少なくとも1つの他の開口部に流れることを可能にするように構成されている構造体を意味する。媒体シートの移動及び媒体搬送部は、印刷ヘッドの環境に水及び溶媒蒸気を注入するために、印刷ヘッドを通過して加湿された溶媒流を運ぶ。水及び溶媒蒸気は、印刷ヘッドのノズルにおける、及び印刷ヘッドのフェースプレート上のインクが乾燥しないようにするのに役立つ。したがって、印刷ヘッドの動作状態が拡張される。
【0023】
図6は、加湿チャンバ308に結合されたエアバッフルがプリンタに設置され得る1つの方法を示す。各印刷ヘッドモジュール内の各印刷ヘッドの前面(leading face)に単一のバッフルを取り付けるのではなく、U字形クリップ604を使用して、エアバッフル36A及び36Bを1つおきの印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドの両面に固定する。バッフル36A及び36Bは、U字形クリップを位置付けることによって設置され、そのため、クリップの2つの脚部がエアバッフルを印刷ヘッドに対して付勢する。エアバッフルを印刷ヘッドの両側に固定する他の手段が使用され得る。エアバッフル36A及び36Bは、加湿チャンバ308の排出口に空気結合されて、加湿された溶媒流をプリンタの印刷ゾーンに方向付ける。一実施形態において、加湿された溶媒流は、1メートル/秒でエアバッフルを出る。この出口速度は、一実施形態における1300mm/秒の媒体搬送速度に十分に対応する。もちろん、出て行く空気の速度は、他のプリンタの実施形態における媒体搬送速度に対応するように変動することができる。図7は、3つの印刷ヘッド204で構成された印刷ヘッドモジュール34Aの実施形態を示しており、各印刷ヘッドは、各印刷ヘッドの対向面に取り付けられた一対のエアバッフル36A及び36Bを有する。矢印Pは、印刷ヘッドアセンブリ34Aを通過する媒体のプロセス方向を示す。図1の1つおきの印刷ヘッドモジュール、すなわちモジュール34Cが同様に構成されている。
【0024】
プリンタ内の印刷ヘッドのうちの少なくともいくつかに対してエアバッフルが構成されている、インクジェットプリンタの廃インク処理システム及び加湿チャンバを動作させるためのプロセス800が、図8に示される。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを操作して、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を動作させてタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ80は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素とで実装され得、これらは各々、本明細書に説明される1つ以上のタスク又は機能を実施するように構成されている。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が説明される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0025】
図8のプロセス800は、少なくとも1つの印刷ヘッドモジュール内の少なくとも1つの印刷ヘッドに対して少なくとも1つのパージサイクルが実施された後に、少なくとも1つの印刷ヘッドモジュールのその印刷位置への戻りを検出することによって開始する(ブロック804)。印刷ヘッドメンテナンスステーションの廃インク容器と廃インク処理システムの混合チャンバへの入口との間の空気圧デバイス208が作動されて、廃インクを印刷ヘッドメンテナンスステーションから廃インク処理システムの混合チャンバへ排出する(ブロック808)。圧力デバイスを動作させて金属塩を混合チャンバ内の廃インク内に移動させ、混合部材を回転させるアクチュエータを作動させる(ブロック812)。廃インクから固体インク顔料粒子を凝固させるのに十分な所定の期間が経過した後(ブロック816)に、空気圧デバイスが作動されて、得られた溶媒流を沈降タンクから加湿チャンバに移動させる(ブロック820)。溶媒流に水蒸気を注入するために、加湿チャンバの水プール内のヒータ及びディフューザが作動される(ブロック824)。別の所定の期間の経過後(ブロック828)に、空気圧デバイスが作動されて、加湿された溶媒流を、印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドに取り付けられたエアバッフル内に移動させる(ブロック832)。廃インクから生成された加湿された溶媒流が印刷ゾーンに方向付けられることを可能にするのに十分な期間の経過後(ブロック836)に、廃インク処理システム及び加湿チャンバ内で作動されたデバイスが停止される(840)。
【0026】
図8に関して上述したようなプリンタを動作させるためにプリンタを改造するために、印刷ヘッドメンテナンスステーションのための交換廃インク容器、廃インク処理システム、加湿チャンバ、金属塩の供給、3つの空気圧デバイスを含有するキットが、プリンタ内の印刷ヘッドモジュールの半分の各印刷ヘッドに対してU字形クリップを有する2つのバッフルとともに提供される。印刷ヘッドメンテナンスステーションの廃棄物容器が除去され、交換廃棄インク容器がその場所に設置される。交換廃インク容器は出口ポートを有する。廃インク処理システム及び加湿チャンバが設置された後に、空気圧デバイスを有する導管が、印刷ヘッドメンテナンスステーションの交換廃インク容器を廃インク処理システムに接続するために設置され、空気圧デバイスを有する導管が、廃インク処理システムを加湿デバイスに接続するために設置される。プロセス方向における第1の印刷ヘッドモジュール内の各印刷ヘッド及びその後の1つおきの印刷ヘッドモジュール内の各印刷ヘッドに対して、バッフルが、それらのモジュール内の印刷ヘッドの各側面上に位置付けられ、U字形クリップが、クリップの各脚部が各バッフルの外部表面に対して静置して、バッフルを各印刷ヘッドに対して圧縮するように位置付けられる。各バッフルは、空気圧デバイスを有する導管によって加湿チャンバの出口ポートに流体接続されている。プログラムされた命令が記憶される非一時的コンピュータ可読媒体は、コントローラに動作可能に接続されており、そのため、コントローラは、印刷ヘッドメンテナンス動作が終了したときを判定するための命令を実行し、廃インク処理システム及び加湿チャンバを動作させて、印刷ゾーン環境に加湿された溶媒流を注入することができる。
【0027】
上で開示されるもの並びに他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に望ましく組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の「特許請求の範囲」によって包含されることも意図される、様々な現在予期されない代替、修正、変形、又は改善が、後に当業者によって行われ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】