(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031589
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】外部部品を製造するべく基板を3次元装飾する方法
(51)【国際特許分類】
G04B 45/00 20060101AFI20250228BHJP
G04B 37/22 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G04B45/00 D
G04B37/22 V
G04B37/22 J
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024128648
(22)【出願日】2024-08-05
(31)【優先権主張番号】23192986.0
(32)【優先日】2023-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】524293371
【氏名又は名称】コマデュール ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ル ブードゥイル、 ダミアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板の表面上に隆起した装飾物を備える外部部品の製造方法を提供する。
【解決手段】外部部品10を3次元装飾する方法であって、セラミック基材11の外面110上に少なくとも一つのエナメルベース層を堆積するステップと、ベース層によって覆われた基板11を焼成するステップと、一以上のブラインドキャビティを生成するように、ベース層を所定の装飾パターンでエッチングするステップと、セラミック材料及び/又は金属材料の装飾層をベース層12及びキャビティに堆積させ、装飾要素130を形成し、キャビティを充填するステップであって、装飾層の材料は、その融点が、ベース層を構成する材料のガラス転移温度未満となるように選択される、ステップと、装飾層に表面加工をしてベース層に堆積された層のすべてを除去するステップと、ベース層全体を除去するべく基板11、ベース層及び装飾層に摩擦仕上げをするステップとを含む。
【選択図】
図1f
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部部品(10)を製造するべく基板(11)を3次元装飾する方法であって、
・セラミック基材(11)の外面(110)上に少なくとも一つのエナメルベース層(12)を堆積するステップと、
・前記ベース層(12)によって覆われた前記基板(11)を焼成するステップと、
前記基板(11)によって形成された底部と前記ベース層(12)によって形成された開口との間に延びる一以上のブラインドキャビティ(120)を生成するように、前記ベース層(12)を所定の装飾パターンでエッチングするステップと、
・セラミック材料及び/又は金属材料の装飾層(13)を前記ベース層(12)及び前記キャビティ(120)に堆積させ、装飾要素(130)を形成し、前記キャビティ(120)を充填するステップであって、前記装飾層(13)の材料は、その融点が、前記ベース層(12)を構成する材料のガラス転移温度未満となるように選択される、ステップと、
・前記装飾層(13)に表面加工をして前記ベース層に堆積された前記層のすべてを除去するステップと、
・前記ベース層(12)全体を除去するべく前記基板(11)、前記ベース層(12)及び前記装飾層(13)に摩擦仕上げをするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ベース層(12)には、前記焼成するステップの後に表面加工がされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装飾層(13)は、前記キャビティ(120)におけるその厚さが、前記方法の最後に前記装飾要素(130)の厚さ以上となるように堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベース層(12)はホウケイ酸塩エナメルから作られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ベース層(12)はホウケイ酸ナトリウムエナメルから作られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記焼成するステップの間、前記ベース層(12)によって覆われた前記基板(11)がさらされる温度が、500℃から1500℃の間であり、好ましくは実質的に1000℃に等しい、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計、宝飾品又はファッションアイテムの装飾に関し、特に外部部品の製造に関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、外部部品を製造するべく基板を3次元装飾する方法に関する。この方法は、有利なことに、時計製造、宝飾品、又は革製品、眼鏡、筆記具若しくは携帯用電子デバイスのようなファッションアイテムの分野における任意の外部部品に適用することができる。
【背景技術】
【0003】
時計製造の分野において、文字盤、プレート、ブリッジ、歯車トレイン、振動おもり、ベゼル、中間部、ブレスレットのリンク、又はブレスレットのクラスプのような外部部品を形成するべく、基板の表面上に隆起した装飾物を製造する方法が多数存在する。
【0004】
これらの方法の中には、基板上にマスクを生成するものがあり、マスクは、その輪郭が所望の装飾要素の形状に対応する複数の開口を含む。これらの開口は、装飾要素を構成する材料によって充填され、その後、マスクが除去される。
【0005】
この方法は簡単であるが、一定数の欠点を有する。詳しくは、いくつかの場合において、マスクが基板の表面に密着していないかもしれず、これは、装飾の製造公差を満たす上で問題になり得る。
【0006】
他の欠点は、この方法では、装飾要素の堆積によりマスクが損傷を受けることがないように求められることである。この場合、製造公差が尊重されず、基板及び装飾が損傷を受けることなくマスクを除去することが求められる。すなわち、この方法は、基板及び装飾を作るべく使用され得る材料について、自由度が極めて小さい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は上述した欠点を、装飾の製造公差が尊重されることと、装飾要素が堆積されているときにマスクが所定位置に保持されることとを保証し、マスクが除去されているときに基板及び装飾の完全性が尊重されることも保証するソリューションを提供することによって克服する。
【0008】
この目的に向けて、本発明は、外部部品を製造するべく基板を3次元装飾する方法に関する。この方法は、
・セラミック基板の外面上に少なくとも一つのエナメルベース層を堆積するステップと、
・ベース層によって覆われた基板を焼成するステップと、
・基板によって形成された底部とベース層によって形成された開口との間に延びる一以上のブラインドキャビティを生成するように、ベース層を所定の装飾パターンでエッチングするステップと、
・セラミック材料及び/又は金属材料の装飾層をベース層及びキャビティに堆積させ、装飾要素を形成し、前記キャビティを充填するステップと、
・装飾層に表面加工をしてベース層に堆積された前記層のすべてを除去するステップと、
・ベース層全体を除去するべく基板、ベース層及び装飾層に摩擦仕上げをするステップと
を含む。
【0009】
特定の実装例において、本発明は、単独で、又は技術的に可能な任意の組み合わせに応じて、以下の特徴のうち一以上をさらに含み得る。
【0010】
特定の実装例において、ベース層には、焼成するステップの後に表面加工がされる。
【0011】
特定の実装例において、装飾層は、キャビティにおけるその厚さが、方法の最後における装飾要素の厚さ以上となるように堆積される。
【0012】
特定の実装例において、ベース層は、ホウケイ酸エナメルから作られる。
【0013】
特定の実装例において、ベース層は、ホウケイ酸ナトリウムエナメルから作られる。
【0014】
特定の実装例において、焼成するステップの間、ベース層によって覆われた基板がさらされる温度が、摂氏500℃から1500℃の間であり、好ましくは実質的に1000℃に等しい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の他の特徴及び利点が、添付図面を参照する以下の詳細な説明から明らかになる。この説明は、例示により与えられ、決して限定とはならない。
【0016】
【
図1a】
図1aから
図1fは、本発明の好ましい実施例に係る外部部品を製造するべく基板を装飾する方法を実行することに関与するステップの断面図を概略的に示す。
【
図1b】
図1aから
図1fは、本発明の好ましい実施例に係る外部部品を製造するべく基板を装飾する方法を実行することに関与するステップの断面図を概略的に示す。
【
図1c】
図1aから
図1fは、本発明の好ましい実施例に係る外部部品を製造するべく基板を装飾する方法を実行することに関与するステップの断面図を概略的に示す。
【
図1d】
図1aから
図1fは、本発明の好ましい実施例に係る外部部品を製造するべく基板を装飾する方法を実行することに関与するステップの断面図を概略的に示す。
【
図1e】
図1aから
図1fは、本発明の好ましい実施例に係る外部部品を製造するべく基板を装飾する方法を実行することに関与するステップの断面図を概略的に示す。
【
図1f】
図1aから
図1fは、本発明の好ましい実施例に係る外部部品を製造するべく基板を装飾する方法を実行することに関与するステップの断面図を概略的に示す。
【0017】
明確性を目的として図面が必ずしも縮尺どおりには描かれないことに留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、
図1aから
図1fまでに連続して示されるように、外部部品10を製造するべく基板11を3次元装飾する方法に関する。
【0019】
方法は最初に、
図1aに示されるように、少なくとも一つのエナメルベース層12をセラミック基材11の外面110に堆積するステップを含む。外面110は、ひとたび外部部品10の製造が完了するとユーザにとって可視となることが意図される。好ましくは、ベース層12は、外面110の全体にわたって堆積される。
【0020】
本発明の好ましい実装例において、ベース層12は、以下に詳述される理由により、ホウケイ酸塩エナメル、詳しくはホウケイ酸ナトリウムエナメル、から作られる。ベース層12は、ディップコーティング、スプレー、又はブラッシングによって塗布され得る。本明細書において、言語の理由により、かつ、読みやすさのために、ベース層12を参照するときに単数形が使用されるが、ベース層12は、複数の層の積層体から構成されてよい。
【0021】
有利には、基板11は、ジルコニア、アルミナ、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(頭字語「YAG」としても知られる)のような任意の高密度セラミック、サファイア、又はこれらの元素の混合物から作られる。
【0022】
ベース層12及び基板11はその後、摂氏500度から1500度の間の温度、好ましくは摂氏1000度にあるオーブンにおいて焼成され、ベース層12の溶融、及び基板11への化学的接着が引き起こされる。その組成のおかげで、このステップの後においてのベース層12の基板11への接着が保証される。
【0023】
ベース層12は、その可視表面を平坦にしてその厚さを均一にするべく、焼成するステップの後に表面加工がされるのが好ましい。詳しくは、
図1aに誇張して示されるように、ベース層12は厚さが変化しやすい。特に、ベース層12の表面が、ベース層12の焼成中に生じる表面張力現象に起因して、連続した窪み及び膨らみを有し得るので、ベース層12の厚さは、その層の濡れ性に起因して、その周辺よりも外面110の中心が大きくなり得る。さらに、外面110が水平に延びていない場合、すなわち傾斜を形成している場合、ベース層12は、焼成中に傾斜の方向に流れやすくなり得るので、重力の影響下で、かつ、その高温粘性ゆえに、過剰な厚さが生じる。
【0024】
ベース層12は、好ましくは、機械的摩耗によって、例えばグラインディング又はサンディングによって、表面加工がされる。このステップの結果が、概略的に
図1bに示される。
【0025】
ベース層12はその後、所定の装飾パターンに応じてエッチングされる。詳しくは、このエッチングステップの目的は、以下に詳述されるように、隆起した装飾要素130を収容するべくベース層12に一以上のブラインドキャビティ120を生成することにある。キャビティ120は、
図1cに示されるように、基板11によって形成された底部とベース層12によって形成された開口との間に延びる。表面加工ステップにより、キャビティ120の製造公差を制御することが可能となる。表面加工ステップの後に、ベース層12の可視表面が計画される。
【0026】
有利なことに、キャビティ120は、
図1cから
図1fに示されるように、基板11の中へと延びてよい。この特徴は、基板11内の装飾要素130の接着性をさらに高める。
【0027】
好ましくは、エッチングステップは、レーザーによって行われるが、任意の適切な技術的ソリューションによって、例えば機械加工によって、行われてもよい。
【0028】
装飾層13がその後、
図1dに示されるように、ベース層12の上に、及びビティ120の中に堆積される。かかる装飾層13は、装飾層13に対して想定される材料に応じて、スプレー、プレス、熱及びプラズマ溶射、又はスリップ堆積によって堆積されてよい。詳しくは、装飾層13は、セラミック材料、例えば、ホウケイ酸塩エナメル若しくは長石のようなエナメルから作られてよく、及び/又は金属材料から作られてよい。本明細書において、「金属材料」という用語は、任意の金属合金、任意の純金属、又は任意の金属複合材を指す。
【0029】
装飾層13を構成する材料は、有利には、ベース層12を構成する材料のガラス転移温度よりも低い融点を有するので、装飾層13が堆積されているときにベース層12が損傷を受けることがない。一例として、ベース層12を構成する材料の融点は、摂氏600度未満である。
【0030】
装飾層13は、キャビティ120におけるその厚さが、この方法の最後における装飾要素130の所望厚さ以上となるように堆積される。
【0031】
装飾層13が堆積された後に表面加工ステップが行われ、
図1eに示されるように、ベース層12上に堆積された前記装飾層13のすべてが除去される。かかる表面加工作業は、有利には、機械的摩耗、例えばグラインディング又はサンディングによって行われる。
【0032】
ひとたび装飾層13がキャビティ120の中にのみ存在するようになると、摩擦仕上げステップが行われてベース層12全体が除去され、外部部品10が形成される。有利なことに、ベース層12の材料のおかげで、このベース層は、研磨要素が基材11の外部表面110への又は装飾層13の残部により形成された装飾要素130への、制御不能な損傷を引き起こすことなく、摩擦仕上げステップによって非常に容易かつ迅速に除去される。
【0033】
図1fは、この外部部品10と、装飾要素130に対する摩擦仕上げステップの潜在的効果とを概略的に示す。詳しくは、装飾要素130の鋭いエッジが、摩擦仕上げステップの間に引き起こされる摩耗によって丸められる。
【0034】
装飾層13の材料は、犠牲的であるベース層12よりも良好に、摩擦仕上げステップに耐えるように選択される。
【0035】
一般的に、上記で考慮された実装例及び実施形態は、非限定的な例として説明されており、それゆえ他の代替例も可能であること留意すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部部品(10)を製造するべく基板(11)を3次元装飾する方法であって、
・セラミック基材(11)の外面(110)上に少なくとも一つのエナメルベース層(12)を堆積するステップと、
・前記エナメルベース層(12)によって覆われた前記基板(11)を焼成するステップと、
前記基板(11)によって形成された底部と前記エナメルベース層(12)によって形成された開口との間に延びる一以上のブラインドキャビティ(120)を生成するように、前記エナメルベース層(12)を所定の装飾パターンでエッチングするステップと、
・セラミック材料及び/又は金属材料の装飾層(13)を前記エナメルベース層(12)及び前記ブラインドキャビティ(120)に堆積させ、装飾要素(130)を形成し、前記ブラインドキャビティ(120)を充填するステップであって、前記装飾層(13)の材料は、その融点が、前記エナメルベース層(12)を構成する材料のガラス転移温度未満となるように選択される、ステップと、
・前記装飾層(13)に表面加工をして前記エナメルベース層に堆積された前記装飾層(13)のすべてを除去するステップと、
・前記エナメルベース層(12)全体を除去するべく前記基板(11)、前記エナメルベース層(12)及び前記装飾層(13)に摩擦仕上げをするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記エナメルベース層(12)には、前記焼成するステップの後に表面加工がされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装飾層(13)は、前記ブラインドキャビティ(120)におけるその厚さが、前記方法の最後に前記装飾要素(130)の厚さ以上となるように堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エナメルベース層(12)はホウケイ酸塩エナメルから作られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エナメルベース層(12)はホウケイ酸ナトリウムエナメルから作られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記焼成するステップの間、前記エナメルベース層(12)によって覆われた前記基板(11)がさらされる温度が、500℃から1500℃の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記焼成するステップの間、前記エナメルベース層(12)によって覆われた前記基板(11)がさらされる温度が1000℃に等しい、請求項6に記載の方法。
【外国語明細書】