(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003164
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】鉄塔における作業員昇降装置及び当該装置を用いた昇降方法
(51)【国際特許分類】
E04G 3/28 20060101AFI20241226BHJP
E04G 1/36 20060101ALI20241226BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20241226BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
E04G3/28 301H
E04G1/36 302B
E04G3/24 301C
E04G3/24 302C
E04G5/00 301E
E04G5/00 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103682
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】505272618
【氏名又は名称】株式会社タワーライン・ソリューション
(71)【出願人】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(71)【出願人】
【識別番号】594014579
【氏名又は名称】ヒカリ興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 広樹
(72)【発明者】
【氏名】米窪 航也
(72)【発明者】
【氏名】橋口 健
【テーマコード(参考)】
2E003
【Fターム(参考)】
2E003AA01
2E003AB01
2E003AC01
2E003CB00
2E003DA05
2E003DA06
2E003EB03
2E003EB06
(57)【要約】
【課題】鉄塔に簡単に移動昇降式の作業員搭載用足場を取り付け、これにより作業員の鉄塔への昇降を容易かつ安全に行う。
【解決手段】送電鉄塔Tに沿って支持マスト1が設けられ、当該支持マスト1の上下方向に沿ってラック3が設けられ、当該支持マスト1をレールとして支持マスト1に沿って移動自在かつ支持マスト1に常時保持される昇降用足場2が設けられ、当該昇降用足場2に駆動モータ14が設けられ、当該駆動モータ14の回転軸に取り付けられたピニオンギヤ15が前記支持マスト1のラック3に歯合され、前記昇降用足場2のデッキ6の周囲に囲いが設けられた。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔に沿って支持マストが設けられ、当該支持マストの上下方向に沿ってラックが設けられ、当該支持マストをレールとして支持マストに沿って移動自在かつ支持マストに常時保持される昇降用足場が設けられ、当該昇降用足場に駆動モータが設けられ、当該駆動モータの回転軸に取り付けられたピニオンギヤが前記支持マストのラックに歯合され、前記昇降用足場のデッキの周囲に囲いが設けられたことを特徴とする、鉄塔における作業員昇降装置。
【請求項2】
前記駆動モータの電源は商用電源とし、地上部、鉄塔の所定箇所及び昇降用足場の複数個所に前記駆動モータの操作盤を夫々設けたことを特徴とする、請求項1に記載の鉄塔における作業員昇降装置。
【請求項3】
前記昇降用足場に作業員搭乗部が設けられ、当該作業員搭乗部の開口部を除く側面及び天井部分が金網状のネットガードで被われている囲いであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄塔における作業員昇降装置。
【請求項4】
前記作業員搭乗部の開口部の人の腰部の高さに開閉自在な遮断棒が設けられ、当該遮断棒を閉じた状態でのみ前記駆動モータが作動可能な状態となることを特徴とする、請求項3に記載の鉄塔における作業員昇降装置。
【請求項5】
前記作業員搭乗部に開閉扉及び当該開閉扉の内側から昇降用足場の外側に突出自在なガイドステップが設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の鉄塔における作業員昇降装置。
【請求項6】
請求項5に記載の作業員昇降装置において、操作盤の操作により昇降用足場の駆動モータを回転させて前記昇降用足場を地上位置に下げ、作業員は当該昇降用足場のデッキに乗り、遮断棒を開けて作業員搭乗部に入り、遮断棒を閉じ、作業員搭乗部に設けられた操作盤を操作して前記駆動モータを回転駆動させ、これにより昇降用足場を支持マストに沿って上昇させ、送電鉄塔の所望の位置で前記操作盤を操作して前記昇降用足場の移動を止め、前記遮断棒を開けてその状態で係止し、その後作業員搭乗部の開閉扉を開け、ガイドステップの先端を作業員搭乗部から昇降用足場の外方に突出させ、作業員が当該ガイドステップを踏んで送電鉄塔の斜材に乗り移り送電鉄塔の上部に上がり、作業員が送電鉄塔の上部から下方に降りる際は前記手順と逆の手順で降りることを特徴とする、鉄塔における作業員の昇降方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電線等の鉄塔における作業員の昇降装置及び当該昇降装置を用いた昇降方法に関するもので、昇降装置は鉄塔の補修等の作業期間にのみ簡単に設置し、作業が終了した際は鉄塔から速やかに取り外すことができるものである。
【背景技術】
【0002】
送電線等の鉄塔では、鉄塔に導入又は導出する送電線や碍子、その他の部材の保守、点検、取り替え等の作業が定期的又は非定期に行われている。その際、作業員は地上から鉄塔の高所に昇降して作業しなければならない。そのため、特許文献1に示すように、鉄塔の主柱に沿って一定間隔で昇降用ボルトが設けられており、作業員はこれらの昇降用ボルトに手や足を掛けて高さのある鉄塔の上部まで昇ったり降りたりしている。
【0003】
従って、作業員は昇降用ボルトから手や足を外さないように注意しながら昇降すると共に手足に力を入れながら体重をかけて昇降するため体力を要するものである。
【0004】
そこで、作業員の自力による鉄塔の昇降を補助するための種々の補助具が開発されている。
【0005】
特許文献2のものはその1例で、鉄塔の主柱に沿って予め設けられた安全器装着用のロープに係合し、牽引ロープを介して作業員を引きながら上昇する鉄塔昇降補助装置であって、電源用バッテリーを保持し、このバッテリー駆動のモータにより回転する駆動ローラを有する本体と、この本体に対して相対移動自在に係合し、前記駆動ローラと対向して前記ロープを挟持する押圧ローラを有する可動枠と、前記駆動ローラと押圧ローラとの間隔を可変とするために、前記本体と可動枠との相対位置を調整すべく、本体と可動枠との間を接続するトルク調整ボルトと、前記本体と前記牽引ロープとの間に介設され、牽引ロープに所定範囲の負荷がかかった時に前記駆動モータに給電するように動作する負荷センサとを具備したものである。
【0006】
この装置の場合は、作業員の体重により牽引ロープに負荷がかかった時に駆動モータが回転し、駆動ローラが回転して安全器装着用のロープに沿って昇降補助装置が上昇し、当該昇降補助装置に繋がった牽引ロープに作業員は引っ張られて上昇する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013―36163号公報
【特許文献2】特許第4114181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2のものは、作業員の体重等とともに、登攀に対する労力を機械で補っているため、鉄塔を素手のみでよじ登る方法と比べれば作業員の労力を減少させているが、鉄塔への昇降は作業員自身が直接よじ登るため、依然として足をすべらしたり、手を外したりする危険があり、作業員は鉄塔の昇降に相当の注意を要する。
【0009】
そこで、この発明は上述の課題を解決するため、鉄塔に簡単に移動昇降式の作業員搭載用足場を取り付け、これにより作業員の鉄塔への昇降を容易かつ安全に行うことができる装置及び当該装置を用いた昇降方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、鉄塔に沿って支持マストが設けられ、当該支持マストの上下方向に沿ってラックが設けられ、当該支持マストをレールとして支持マストに沿って移動自在かつ支持マストに常時保持される昇降用足場が設けられ、当該昇降用足場に駆動モータが設けられ、当該駆動モータの回転軸に取り付けられたピニオンギヤが前記支持マストのラックに歯合され、前記昇降用足場のデッキの周囲に囲いが設けられた、鉄塔における作業員昇降装置とした。
【0011】
また、請求項2の発明は、前記駆動モータの電源は商用電源とし、地上部、鉄塔の所定箇所及び昇降用足場の複数個所に前記駆動モータの操作盤を夫々設けた、請求項1に記載の鉄塔における作業員昇降装置とした。
【0012】
請求項3の発明は、前記昇降用足場に作業員搭乗部が設けられ、当該作業員搭乗部の開口部を除く側面及び天井部分が金網状のネットガードで被われている囲いである、請求項1又は2に記載の鉄塔における作業員昇降装置とした。
【0013】
また、請求項4の発明は、前記作業員搭乗部の開口部の人の腰部の高さに開閉自在な遮断棒が設けられ、当該遮断棒を閉じた状態でのみ前記駆動モータが作動可能な状態となる、請求項3に記載の鉄塔における作業員昇降装置とした。
【0014】
また、請求項5の発明は、前記作業員搭乗部に開閉扉及び当該開閉扉の内側から昇降用足場の外側に突出自在なガイドステップが設けられている、請求項4に記載の鉄塔における作業員昇降装置とした。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載の作業員昇降装置において、操作盤の操作により昇降用足場の駆動モータを回転させて前記昇降用足場を地上位置に下げ、作業員は当該昇降用足場のデッキに乗り、遮断棒を開けて作業員搭乗部に入り、遮断棒を閉じ、作業員搭乗部に設けられた操作盤を操作して前記駆動モータを回転駆動させ、これにより昇降用足場を支持マストに沿って上昇させ、送電鉄塔の所望の位置で前記操作盤を操作して前記昇降用足場の移動を止め、前記遮断棒を開けてその状態で係止し、その後作業員搭乗部の開閉扉を開け、ガイドステップの先端を作業員搭乗部から昇降用足場の外方に突出させ、作業員が当該ガイドステップを踏んで送電鉄塔の斜材に乗り移り送電鉄塔の上部に上がり、作業員が送電鉄塔の上部から下方に降りる際は前記手順と逆の手順で降りる、鉄塔における作業員の昇降方法とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、作業員の鉄塔の昇降が容易に行え、鉄塔作業における作業員の労力を軽減することができる。また、作業員が乗る昇降用足場は囲いで被われているほぼ水平なデッキであり、当該昇降用足場が支持マストに沿って上下するため、作業員の昇降時の安全性が確保できる。また、この発明の作業員昇降装置は鉄塔に支持マストを取り付けるだけの設置作業のため、装置の鉄塔への取り付け、取り外しが容易であり、鉄塔の高所作業の際にのみこの発明の作業員昇降装置を取り付けることができる。
【0017】
また、請求項2の発明によれば、昇降用足場の駆動モータの操作が、地上部、鉄塔の所定箇所及び昇降用足場の複数個所に配設した操作盤により行うことができるため、通常のエレベータと同様に種々の箇所から昇降用足場に乗ることができ便利である。
【0018】
また、請求項3の発明によれば、昇降用足場の作業員搭乗部の周囲及び天井部がネットガードで被われているため、当該箇所に乗る作業員は外部を視認することができるとともに上方や側方からの落下物から保護され、また、作業員が昇降用足場から墜落する恐れもなく、安全に昇降できる。
【0019】
また、請求項4の発明によれば、昇降用足場の作業員搭乗部の開口部に遮断棒を設けて、当該遮断棒が閉じていないと操作盤が操作できない構成となっているため、作業員の安全性が確保される。
【0020】
また、請求項5の発明によれば、鉄塔の所望箇所で昇降用足場から鉄塔に作業員が乗り移る際、鉄塔と昇降用足場との間が空いていてもガイドステップを張り出すことにより前記間隙がなくなるか、狭くなるため、作業員は昇降用足場から鉄塔に、又は鉄塔から昇降用足場に安全に乗り移ることができる。
【0021】
また、請求項6の発明によれば、当該手順を踏むことにより、作業員は安全かつ容易に鉄塔の昇降ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置を鉄塔に取り付けた正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の一部を鉄塔に取り付けた、拡大一部側面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置に用いる支持マストの平面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置に用いる支持マストの一部正面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置に用いる支持マストを鉄塔に取り付けた一部正面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置に用いる支持マストを鉄塔に取り付けた一部平面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場を支持マストに取り付けた状態の正面図である。
【
図8】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場を支持マストに取り付けた状態の平面図である。
【
図9】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場を支持マストに取り付けた状態の側面図である。
【
図10】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場を支持マストに取り付けた状態の昇降用足場の拡大横断面図である。
【
図11】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場と支持マウトの係合状態を示す一部拡大平面図である。
【
図12】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場と支持マストの係合状態を示す拡大背面斜視図である。
【
図13】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場の支持マストに対する移動伝達構造を示す拡大背面斜視図である。
【
図14】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場の一部縦断面図である。
【
図15】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場の扉を開けた状態の側面図である。
【
図16】この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置の昇降用足場の扉を開けて、ガイドステップを外方に突出させた状態の拡大一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1の作業員昇降装置Aを
図1~
図15に基づいて説明する。
【0024】
この作業員昇降装置Aは、
図1及び
図2に示すように、送電鉄塔Tに取り付ける支持マスト1と当該支持マスト1に沿って移動自在かつ支持マスト1に常時保持される昇降用足場2とから構成されている。なお、
図1では説明のため昇降用足場2が上下に2台描かれているが、通常作動時は1台である。
【0025】
前記支持マスト1は、
図3及び
図4に示すように、平面視三角形状で、三本の支柱1aを梁材等1bで接続して構成されている。また、当該支持マスト1の正面側には、当該支持マスト1の上下方向に沿って一側に歯が並んだラック3が設けられっている。
【0026】
この支持マスト1は前記送電鉄塔Tの上下方向に沿って取り付けられる。この取付は、
図5及び
図6に示すように、送電鉄塔Tの斜材T1に固定した固定金具4及び固定金具4から他の部材を介して伸びたステー材5の一端を支持マスト1の梁材等1bに固定して取り付けられている。
【0027】
前記昇降用足場2は、
図7~
図16に示すように、作業員が乗るほぼ四辺形の水平なデッキ6が設けられ、このデッキ6の中央部6aの、
図8における上辺(正面と反対側の辺)に矩形の切り込み部6bが設けられ、当該切り込み部6bの内周縁からデッキ6の下方に断面コの字型の駆動部支持枠体7が、また、デッキ6の前記切り込み部6の内周縁から上方に向けて前記駆動部支持枠体7の延長線上に支持マスト囲い枠体8が夫々、前記支持マスト1を囲うように設けられている。
【0028】
また、前記デッキ6の中央部6aを挟んだデッキ6の両側には作業員搭乗部9、9が夫々設けられ、これらの各作業員搭乗部9の四隅に支柱10が立設され、これらの支柱10の回りを、
図10に示すように、横断面コの字型に各作業員搭載部9を被うように金網状のネットガード11が張られ、当該ネットガード11の開口部11aを夫々前記中央部6aに向けている。また、各作業員搭載部9を囲う4本の支柱10の上にも上面を塞ぐ金網状のネットガード12が張られている。
【0029】
これにより作業員が当該デッキ6に載って各作業員搭載部9に入ると、開口部11aを除き、ネットガード11及び12に囲まれ、作業員の脱落防止や外部の落下物から保護される構成となっている。
【0030】
また、前記昇降用足場2は上述のように支持マスト1に沿って上下移動自在に支持される構成となっており、その構成は、
図11及び
図12に示す。前記デッキ6の切り込み部6bの下方に設けた前記駆動部支持枠体7の両側の側面の上下に夫々一対のガイドローラ13が設けられ、各対のガイドローラ13が前記支持マスト1の2本の支柱1aを夫々挟持している。そしてこの構造により昇降用足場2が支持マスト1に対して、各対のガイドローラ13を回転させながら移動可能である。
【0031】
また、前記駆動部支持枠体7の正面板に複数の駆動モータ14が支持され(
図7参照)、その一端を支持マスト1側に突出させ(
図11参照)、
図13に示すように、一端から突出した回転軸に固定したピニオンギヤ15が前記支持マスト1のラック3に夫々歯合しており、また、前記駆動部支持枠体7の正面板から突出した複数の押えローラ16が前記ラック3の歯と反対端を押圧し、常時ラック3に前記ピニオンギヤ15が噛み合う構成となっている。
【0032】
前記駆動モータ14は操作盤(図示省略)により駆動する構成となっており、操作盤は地上、送電鉄塔Tの一定間隔の複数の高さ及び昇降用足場2に夫々設けられており、いずれかの操作盤を操作すると昇降用足場2の駆動モータ14が回転し、これによりピニオンギヤ15が回転してラック3に沿って昇降用足場2が移動する構成となっている。
【0033】
また、前記支持マスト1は、図示は省略したが、複数に分割されており、送電鉄塔Tに取り付ける際、現場で継ぎ足して1本にするものである。その継ぎ足しの際に前記昇降用足場2を支持マスト1に装着させることができる。また、
図7に示すように、支持マスト1の基部には車輪付きベース17を設けており、設置後に当該ベース17からアウトリガー17aを張り出して水平に安定して設置することができる。
【0034】
また、前記昇降用足場2の各作業員搭乗部9の開口部11aには、
図14に示すように、人の腰の高さ箇所に開閉自在な遮断棒18が設けられ、作業員が前記作業員搭乗部9に載って、当該遮断棒18を閉めてその自由端を受け部19に嵌めないと、前記駆動モータ14が作動しない構成となっている。これにより遮断棒18を開けたまま昇降用足場2が動くことはなく、安全性を高めている。
【0035】
また、前記各作業員搭乗部9の背面、すなわち送電鉄塔Tに面している面には、
図15及び
図16に示すように、観音扉20が設けられており、その内側のデッキ6の外縁には開閉自在なガイドステップ21が設けられ、前記観音扉20をデッキ6の外側に開けると、前記ガイドステップ21をデッキ6の外方に突出させることができる。これにより昇降足場2に乗っている作業員が送電鉄塔Tの斜材T1等に乗り移る際、デッキ6と前記斜材T1等の間隔があいていても、当該ガイドステップ21に足を掛けて容易に送電鉄塔Tに移動することができる。なお、上記観音扉20は前記作業員搭乗部9の背面に設けられており、
図7の右側の前記作業員搭乗部9の観音扉20は説明上正面に記載している。
【0036】
また、前記昇降用足場2のデッキ6の中央部6aの前面には、
図7に示すように、手摺状の昇降用扉22が設けられている。従って、作業員は昇降用足場2に乗る際は、まず、中央部6aの昇降用扉22を開けてデッキ6に乗り、その後左右どちらかの遮断棒18を開けて一方の作業員搭乗部9に入る構成となっている。また、昇降用足場2のデッキ6の下部には、前記駆動部支持枠体7箇所を除いて断面三角形状の補強フレーム23が設けられている。
【0037】
以上の構成から成る作業員昇降装置Aを用いて地上から作業員が送電鉄塔Tの上部に上るには、地上に配設した操作盤を操作して前記昇降用足場2を地上位置に下げ、作業員は当該昇降用足場2の昇降用扉22を開けてデッキ6の中央部6aに乗り、遮断棒18を開けて作業員搭乗部9に入り、遮断棒18を閉じる。なお、作業員が当該昇降用足場2に乗る際、
図2に示す移動式階段24を用いてデッキ6に乗ることもできる。
【0038】
そして、作業員搭乗部9に設けられた操作盤を操作して前記駆動モータ14を回転駆動させる。これにより昇降用足場2は支持マスト1に沿って上昇し、送電鉄塔Tの所望の位置で前記操作盤を操作して前記昇降用足場2の移動を止め、前記遮断棒18を開けてその状態で係止し、その後作業員搭乗部9の観音扉20を開け、ガイドステップ21を倒して作業員搭乗部9のデッキ6から外方に突出させ、作業員が当該ガイドステップ21を踏んで送電鉄塔Tの斜材T1等に乗り移り送電鉄塔Tの上部に上がる。
【0039】
また、当該送電鉄塔Tの上部から下方に降りる際は、前記手順と逆の手順で降りる。作業員が送電鉄塔Tの高所から昇降用足場2に乗る際は前記ガイドステップ21を使って作業員搭乗部9のデッキ6に乗り込み、ガイドステップ21を畳んで観音扉20を閉め、遮断棒18を閉める。その後、作業員搭乗部9の操作盤により駆動モータ14を駆動させて昇降用足場2を降下させる。
【0040】
なお、前記駆動モータ14の電源は商用電源を用いるが、発電機によるものでもよい。また、上記実施の形態例では、昇降用足場2に各作業員搭乗部9を設けてネットガード11,12で被っているが、当該作業員搭乗部9を設けず、デッキ6の周囲に柵又は囲いを設けただけのものでもよい。
【0041】
また、前記作業員搭乗部9の背面に設けた観音扉20は他の方式の扉でもよい。また、上記実施の形態例では送電鉄塔Tにこの発明の作業員昇降装置Aを使用する例であるが、この発明の適用対象は送電鉄塔Tに限らず、他の鉄塔でも使用できる。
【符号の説明】
【0042】
A 作業員昇降装置 T 送電鉄塔
T1 斜材
1 支持マスト 1a 支柱
1b 梁材等 2 昇降用足場
3 ラック 4 固定金具
5 ステー材 6 デッキ
6a 中央部 6b 切り込み部
7 駆動部支持枠体 8 支持マスト囲い枠体
9 作業員搭乗部 10 支柱
11 ネットガード 11a 開口部
12 ネットガード 13 ガイドローラ
14 駆動モータ 15 ピニオンギヤ
16 押えローラ 17 車輪付きベース
17a アウトリガー 18 遮断棒
19 受け部 20 観音扉
21 ガイドステップ 22 昇降用扉
23 補強フレーム 24 移動式階段