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2025-31654受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031654
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20250228BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140151
(22)【出願日】2024-08-21
(31)【優先権主張番号】202311055744.9
(32)【優先日】2023-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521333678
【氏名又は名称】イースト チャイナ ジャオトン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】East China Jiaotong University
(74)【代理人】
【識別番号】100095706
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 克文
(72)【発明者】
【氏名】章 勇高
(72)【発明者】
【氏名】劉 尚海
(72)【発明者】
【氏名】劉 鵬
(72)【発明者】
【氏名】楊 偉偉
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】 本発明は、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムを提供する。
【解決手段】 インバータは前記LCL-S型共振補償ネットワークの入力端に接続され、LCL-S型共振補償ネットワークの出力端は、T型共振補償ネットワークとカスケード接続され、定電流充電モードになり、T型共振補償ネットワークは整流器に接続され、T型共振補償ネットワークにコンデンサCS2分岐回路を追加し、T型共振補償ネットワークのコンデンサCS1分岐回路にコンデンサCStを並列接続し、F型共振補償ネットワークの1つのコンデンサ分岐回路に等価になり、コンデンサCS2分岐回路はスイッチSと直列に接続され、コンデンサCStはスイッチSと直列に接続され、同時に、スイッチSとスイッチSをオンにして、T型共振補償ネットワークをF型共振補償ネットワークに変換し、定電圧充電モードに入る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムであって、インバータ、LCL-S型共振補償ネットワーク、T型共振補償ネットワーク、F型共振補償ネットワーク、整流器及び充電負荷を含み、
前記インバータは前記LCL-S型共振補償ネットワークの入力端に接続され、前記インバータは、前記LCL-S型共振補償ネットワークの入力励起として交流電圧源を出力するために使用され、
前記LCL-S型共振補償ネットワークの出力端は、前記T型共振補償ネットワークとカスケード接続され、定電流充電モードになり、前記T型共振補償ネットワークは前記整流器に接続され、
前記T型共振補償ネットワークにコンデンサCS2分岐回路を追加し、前記T型共振補償ネットワークのコンデンサCS1分岐回路にコンデンサCStを並列接続し、前記F型共振補償ネットワークの1つのコンデンサ分岐回路に等価になり、前記コンデンサCS2分岐回路はスイッチSと直列に接続され、前記コンデンサCStはスイッチSと直列に接続され、同時に、スイッチSとスイッチSをオンにして、前記T型共振補償ネットワークを前記F型共振補償ネットワークに変換し、定電圧充電モードになり、前記F型共振補償ネットワークは、前記整流器に接続され、前記整流器は、前記充電負荷に接続されることを特徴とする、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム。
【請求項2】
前記LCL-S型共振補償ネットワークは、具体的には、送信側補償ネットワーク及び受信側補償ネットワークを含み、
前記送信側補償ネットワークには、補償インダクタンスLP1、補償コンデンサC、送信コイルの自己インダクタンスLが含まれ、前記補償インダクタンスLP1の一端は前記インバータに接続され、前記補償インダクタンスLP1の他端は前記補償コンデンサCの一端及び前記送信コイルの自己インダクタンスLの一端にそれぞれ接続され、前記補償コンデンサCの他端は、前記インバータ及び前記送信コイルインダクタンスLの他端にそれぞれ接続され、
前記受信側補償ネットワークには、受信コイルの自己インダクタンスL及び補償コンデンサCが含まれ、前記受信コイルの自己インダクタンスLの一端は前記補償コンデンサCの一端に接続され、前記受信コイルの自己インダクタンスLの他端は、前記コンデンサCS2分岐回路、並列されたコンデンサCS1分岐回路、コンデンサCSt及び整流器に接続され、前記補償コンデンサCの他端は、前記スイッチS及び前記T型共振補償ネットワーク内のインダクタンスLS1の一端に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム。
【請求項3】
前記T型共振補償ネットワークは、具体的には、インダクタンスLS1、コンデンサCS1及びインダクタンスLS2を含み、
前記インダクタンスLS1の他端は、前記コンデンサCS1の一端及び前記インダクタンスLS2の一端に接続され、前記インダクタンスLS2の他端は、前記整流器に接続され、前記コンデンサCS1の他端は、前記受信コイルの自己インダクタンスLの他端に接続されることを特徴とする、請求項2に記載の受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム。
【請求項4】
前記F型共振補償ネットワークは、具体的には、
前記T型共振補償ネットワークに基づいて、前記インダクタンスLS1の他端、前記コンデンサCS1の一端及び前記インダクタンスLS2の一端はさらに、前記スイッチSに接続されることを特徴とする、請求項3に記載の受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム。
【請求項5】
前記充電負荷の両端のリアルタイム電圧Uを検出し、前記リアルタイム電圧Uが定電流・定電圧充電切り替えの閾値電圧Urefまで上昇すると、前記スイッチS及び前記スイッチSをオンにし、充電モードは定電流充電モードから定電圧充電モードに変わるが、前記充電負荷の両端のリアルタイム電圧は変化しないことを特徴とする、請求項4に記載の受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム。
【請求項6】
前記スイッチS及び前記スイッチSをオフにして前記定電流充電モードになり、
前記定電流充電モードで、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムの入力インピーダンスは
【数49】
であり、ここで、Zinは入力インピーダンス、U(ベクトル)はインバータ出力電圧、i(ベクトル)はインバータ出力電流、LP1は送信側補償インダクタンス、ωは共振角周波数、Mは相互インダクタンス、CS1は受信側補償コンデンサ、Cは送信側補償コンデンサ、Reqは整流器及び充電負荷の等価抵抗であることを特徴とする、請求項5に記載の受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム。
【請求項7】
前記スイッチS及び前記スイッチSをオンにして前記定電圧充電モードになり、
前記定電圧充電モードで、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムの入力インピーダンスは
【数50】
であり、ここで、Zinは入力インピーダンス、U(ベクトル)はインバータ出力電圧、i(ベクトル)はインバータ出力電流、LP1は送信側補償インダクタンス、LS1は受信側の第一補償インダクタンス、ωは共振角周波数、Mは相互インダクタンス、Cは送信側補償コンデンサ、LS2は受信側の第二補償インダクタンス、Reqは整流器及び充電負荷の等価抵抗であることを特徴とする、請求項5に記載の受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス充電の分野に関し、特に受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車のワイヤレス充電技術は、定電流・定電圧(Constant Current-Constant Voltage、CC-CV)を組み合わせた二段階充電方式が主流となっている。定電流充電モードから定電圧充電モードに迅速かつスムーズに切り替えるために、DC-DCコンバータ、周波数変換制御、位相シフト制御などの複雑な制御方法がよく使用される。しかしながら、これらの方法のほとんどは送信端と受信端の間の通信を必要とするため、システムの制御の困難さとコストが大幅に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、システム制御の困難さと高コストの問題を解決するために、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は以下の解決策を提供する。
【0005】
受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムであって、インバータ、LCL-S型共振補償ネットワーク、T型共振補償ネットワーク、F型共振補償ネットワーク、整流器及び充電負荷を含み、
前記インバータは前記LCL-S型共振補償ネットワークの入力端に接続され、前記インバータは、前記LCL-S型共振補償ネットワークの入力励起として交流電圧源を出力するために使用され、
前記LCL-S型共振補償ネットワークの出力端は、前記T型共振補償ネットワークとカスケード接続され、定電流充電モードになり、前記T型共振補償ネットワークは前記整流器に接続され、
前記T型共振補償ネットワークにコンデンサCS2分岐回路を追加し、前記T型共振補償ネットワークのコンデンサCS1分岐回路にコンデンサCStを並列接続し、前記F型共振補償ネットワークの1つのコンデンサ分岐回路に等価になり、前記コンデンサCS2分岐回路はスイッチSと直列に接続され、前記コンデンサCStはスイッチSと直列に接続され、同時に、スイッチSとスイッチSをオンにして、前記T型共振補償ネットワークを前記F型共振補償ネットワークに変換し、定電圧充電モードになり、前記F型共振補償ネットワークは、前記整流器に接続され、前記整流器は、前記充電負荷に接続される。
【0006】
任意選択的に、前記LCL-S型共振補償ネットワークは、具体的には、送信側補償ネットワーク及び受信側補償ネットワークを含み、
前記送信側補償ネットワークには、補償インダクタンスLP1、補償コンデンサC、送信コイルの自己インダクタンスLが含まれ、前記補償インダクタンスLP1の一端は前記インバータに接続され、前記補償インダクタンスLP1の他端は前記補償コンデンサCの一端及び前記送信コイルの自己インダクタンスLの一端にそれぞれ接続され、前記補償コンデンサCの他端は、前記インバータ及び前記送信コイルインダクタンスLの他端にそれぞれ接続され、
前記受信側補償ネットワークには、受信コイルの自己インダクタンスL及び補償コンデンサCが含まれ、前記受信コイルの自己インダクタンスLの一端は前記補償コンデンサCの一端に接続され、前記受信コイルの自己インダクタンスLの他端は、前記コンデンサCS2分岐回路、並列されたコンデンサCS1分岐回路、コンデンサCSt及び整流器に接続され、前記補償コンデンサCの他端は、前記スイッチS及び前記T型共振補償ネットワーク内のインダクタンスLS1の一端に接続される。
【0007】
任意選択的に、前記T型共振補償ネットワークは、具体的には、インダクタンスLS1、コンデンサCS1及びインダクタンスLS2を含み、
前記インダクタンスLS1の他端は、前記コンデンサCS1の一端及び前記インダクタンスLS2の一端に接続され、前記インダクタンスLS2の他端は、前記整流器に接続され、前記コンデンサCS1の他端は、前記受信コイルの自己インダクタンスLの他端に接続される。
【0008】
任意選択的に、前記F型共振補償ネットワークは、具体的には、
前記T型共振補償ネットワークに基づいて、前記インダクタンスLS1の他端、前記コンデンサCS1の一端及び前記インダクタンスLS2の一端はさらに、前記スイッチSに接続される。
【0009】
任意選択的に、前記充電負荷の両端のリアルタイム電圧Uを検出し、前記リアルタイム電圧Uが定電流・定電圧充電切り替えの閾値電圧Urefまで上昇すると、前記スイッチS及び前記スイッチSをオンにし、充電モードは定電流充電モードから定電圧充電モードに変わるが、前記充電負荷の両端のリアルタイム電圧は変化しない。
【0010】
任意選択的に、前記スイッチS及び前記スイッチSをオフにして前記定電流充電モードになり、
前記定電流充電モードで、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムの入力インピーダンスは
【数1】
であり、ここで、Zinは入力インピーダンス、UP(ベクトル)はインバータ出力電圧、iP(ベクトル)はインバータ出力電流、LP1は送信側補償インダクタンス、ωは共振角周波数、Mは相互インダクタンス、CS1は受信側補償コンデンサ、Cは送信側補償コンデンサ、Reqは整流器及び充電負荷の等価抵抗である。
【0011】
任意選択的に、前記スイッチS及び前記スイッチSをオンにして前記定電圧充電モードに入り、
前記定電圧充電モードで、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムの入力インピーダンスは
【数2】
であり、ここで、Zinは入力インピーダンス、UP(ベクトル)はインバータ出力電圧、iP(ベクトル)はインバータ出力電流、LP1は送信側補償インダクタンス、LS1は受信側の第一補償インダクタンス、ωは共振角周波数、Mは相互インダクタンス、Cは送信側補償コンデンサ、LS2は受信側の第二補償インダクタンス、Reqは整流器及び充電負荷の等価抵抗である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって提供される具体的な実施例によれば、本発明は、以下の技術的効果を開示する。本発明は、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムを提供し、切り替えスイッチを制御して受電側補償コンデンサのオン・オフを切り替えることにより、受信側共振補償回路のトポロジ構造を変更し、定電流モードから定電圧モードへの充電の切り替えを実現する。本発明は、定電流充電段階と定電圧充電段階の両方でゼロ位相角(Zero Phase Angle、ZPA)ZPA状態を維持することができ、無効電力の導入がほとんどなく、送信側と受信側との間の通信が不要なため、システム制御の難しさやコストが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施例または従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例に使用する必要がある図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な努力をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【0014】
図1】受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システム回路図である。
図2】LCL-S型共振補償ネットワーク回路図である。
図3】LCL-S型共振補償ネットワークの等価回路図である。そのうち、図3の(a)は第一LCL-S等価回路図であり、図3の(b)は第二LCL-S等価回路図であり、図3の(c)はLCL-S受信側の相互インダクタンス等価回路図である。
図4】T型共振補償ネットワーク回路図である。そのうち、図4の(a)は定電圧源によって励起されるT型共振補償ネットワーク回路図であり、図4の(b)は定電流源によって励起されるT型共振補償ネットワーク回路図である。
図5】F型共振補償ネットワーク回路図である。
図6】定電流トポロジ回路図である。
図7】定電圧トポロジ回路図である。
図8】LCL-S-T型定電流システムのトポロジ回路図である。
図9】LCL-S-T型定電流システムの等価回路図である。
図10】LCL-S-F型定電圧システムのトポロジ回路図である。
図11】LCL-S-F型定電圧システムの等価回路図である。
図12】スイッチ制御ロジック図である。
図13】LCL-S-(T/F)複合補償システムSIMULINK(登録商標)シミュレーションモデル図である。
図14】LCL-S-(T/F)型複合補償システムの実験プラットフォーム概略図である。
図15】定電流モードでのシミュレーション波形図である。そのうち、図15の(a)は、定電流モードで、R=12Ωの場合のインバータの出力電圧・電流シミュレーション波形図であり、図15の(b)は、定電流モードで、R=24Ωの場合のインバータの出力電圧・電流シミュレーション波形図であり、図15の(c)は、定電流モードで、R=12Ωの場合の負荷電流シミュレーション波形図であり、図15の(d)は、定電流モードで、R=24Ω場合の負荷電流シミュレーション波形図である。
図16】定電流モードでの実験波形図である。そのうち、図16の(a)は、定電流モードで、R=13.6Ωの場合のインバータの出力電圧・電流実験波形図であり、図16の(b)は、定電流モードで、R=24Ωの場合のインバータの出力電圧・電流実験波形図である。
図17】定電圧モードでのシミュレーション波形図である。そのうち、図17の(a)は、定電圧モードで、R=24Ωの場合のインバータの出力電圧・電流シミュレーション波形図であり、図17の(b)は、定電圧モードで、R=120Ωの場合のインバータの出力電圧・電流シミュレーション波形図であり、図17の(c)は、定電圧モードで、R=24Ωの場合の負荷電圧シミュレーション波形図であり、図17の(d)は、定電圧モードで、R=120Ωの場合の負荷電圧シミュレーション波形図である。
図18】定電圧モードでの実験波形図である。そのうち、図18の(a)は、定電圧モードで、R=24Ωの場合のインバータの出力電圧・電流実験波形図であり、図18の(b)は、定電圧モードで、R=65Ωの場合のインバータの出力電圧・電流実験波形図である。
図19】システムの充電電流と充電電圧が充電負荷によって変化する曲線図である。
図20】システムの充電効率と充電電力が充電負荷抵抗によって変化する曲線図である。
図21】スイッチ切り替え時のインバータの出力電圧、電流、負荷電圧出力波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施例における図面を参照して本発明の実施例における技術的解決策を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明した実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な努力なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲内に含まれる。
【0016】
本発明は、送信側と受信側との間の通信を必要とせず、システム制御の困難さとコストを低減する、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムを提供することを目的とする。
【0017】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより顕著で分かりやすくするために、以下に図面及び発明を実施するための形態を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明は、受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムを提供する。該受信側に可変コンデンサの可変トポロジ構造を備えたワイヤレス充電システムは、LCL-S-(T/F)型回路複合補償トポロジに基づく定電流・定電圧ワイヤレス電力伝送(Wireless Power Transfer、WPT)システムであり、インバータ、LCL-S型共振補償ネットワーク、T型共振補償ネットワーク、F型共振補償ネットワーク、整流器及び充電負荷を含む。前記インバータは前記LCL-S型共振補償ネットワークの入力端に接続され、前記インバータは、前記LCL-S型共振補償ネットワークの入力励起として交流電圧源を出力するために使用され、前記LCL-S型共振補償ネットワークの出力端は、前記T型共振補償ネットワークとカスケード接続され、定電流充電モードに入り、前記T型共振補償ネットワークは前記整流器に接続され、前記T型共振補償ネットワークにコンデンサCS2分岐回路を追加し、前記T型共振補償ネットワークのコンデンサCS1分岐回路にコンデンサCStを並列接続し、前記F型共振補償ネットワークの1つのコンデンサ分岐回路に等価になり、前記コンデンサCS2分岐回路はスイッチSと直列に接続され、前記コンデンサCStはスイッチSと直列に接続され、同時に、スイッチSとスイッチSをオンにして、前記T型共振補償ネットワークを前記F型共振補償ネットワークに変換し、定電圧充電モードに入り、前記F型共振補償ネットワークは、前記整流器に接続され、前記整流器は、前記充電負荷に接続される。
【0019】
実際の応用では、図2はLCL-S型共振補償ネットワーク回路図であり、図3はLCL-S型共振補償ネットワークの等価回路図であり、図2図3に示すように、UP(ベクトル)は角周波数ωのインバータ出力電圧であり、送信側補償ネットワークは、補償インダクタンスLP1、補償コンデンサC、送信コイルの自己インダクタンスLで構成される。受信側補償ネットワークは、受信コイルの自己インダクタンスL、補償コンデンサCで構成される。I(ベクトル)は送信コイルに流れる電流、Rは負荷抵抗、UR1(ベクトル)は負荷抵抗の両端の電圧、IR1(ベクトル)は負荷抵抗に流れる電流、Mは送信コイルと受信コイルとの間の相互インダクタンスを表し、LCL-S型共振補償回路のパラメータは次の関係を満たし、
【数3】
【数4】
システム動作周波数をωとすると、LCL-S型共振補償回路の受信側の入力インピーダンスは、
【数5】
であり、
図3の(a)は、送信側に反射される受信側インピーダンスの等価回路図であり、反射インピーダンスZrefは次のように求められる。
【数6】
ノートンの定理によれば、図3の(a)に示す回路図は、図3の(b)と等価になり、このとき、LP1とCは並列共振状態(図3の(b)の点線枠で示されている)にあり、外部等価インピーダンスは無限大であり、これは開回路に相当し、送信コイルに流れる電流は次のように求められる。
【数7】
図3の(c)は受信側での相互インダクタンス等価回路図であり、式(5)を式(6)に代入すると、受信コイルの誘導電圧は次のように求められる。
【数8】
このとき、LとCは直列共振状態(図3の(c)の点線枠で示されている)になり、外部インピーダンスは0に等価になり、これは短絡に相当し、このとき、受信コイルの誘導電圧は負荷抵抗の両端の電圧と等しくなり、負荷抵抗の両端の電圧は次のように求められる。
【数9】
また、図3の(a)から、システムの入力インピーダンスは次のように求められる。
【数10】
式(1)、(2)、(4)を式(8)に代入すると、システムの入力インピーダンスは次のように求められる。
【数11】
【0020】
式(7)から、負荷抵抗の両端の電圧は、高周波電圧源UP(ベクトル)、一次側コイルと二次側コイルとの間の相互インダクタンスM、及び一次側補償インダクタLP1にのみ関係しており、充電負荷Rとは関係ないことが分かり、つまり、LCL-S型共振補償回路は、定電圧源に相当する定電圧出力特性を示し、充電負荷の定電圧特性要求に応えることができる。かつ、式(9)から、システムの入力インピーダンスは純粋な抵抗性であり、電流と電圧はZPA特性を満たしていることがわかる。
【0021】
T型共振補償回路の出力特性は次のように解析される。
図4の(a)と(b)に示すように、T型共振補償回路はそれぞれ定電圧源U(ベクトル)と定電流源i(ベクトル)によって励起され、このうち、補償インダクタLS1、LS2と補償コンデンサCS1は、定電圧源によって励起されるT型補償ネットワークを形成し、補償インダクタLS1'、LS2'および補償コンデンサCS1'は、定電流源によって励起されるT型補償ネットワークを形成し、R及びR'は負荷抵抗であり、iR2(ベクトル)及びiR2'(ベクトル)負荷抵抗に流れる電流であり、UR2(ベクトル)は負荷抵抗R'の両端の電圧を表し、定電圧源と定電流源で励起されるT型共振補償回路のパラメータは次の関係を満たし、
【数12】
【数13】
定電圧源をT型共振補償回路の励起源として使用する場合、キルヒホッフの電圧の法則(Kirchhoff's Voltage Law)から次の式が得られる。
【数14】
式(10)が満たされる条件の下で、負荷抵抗Rに流れる電流iR2(ベクトル)は次のように求められる。
【数15】
【0022】
式(13)から、定電圧源をT型共振補償回路の励起源として使用する場合、負荷端の出力電流iR2(ベクトル)は負荷Rの大きさに関係がないことがわかり、定電流出力特性を持ち、外部的には定電流源に相当する。
【0023】
図4の(b)に示すように、T型共振補償回路の励磁源として定電流源を使用した場合、KVLの法則より次の式が得られる
【数16】
式(11)を式(14)に代入すると、負荷抵抗R'の両端の電圧UR2(ベクトル)は次のように求められる。
【数17】
式(15)から、定電流源をT型共振補償回路の励起源として使用する場合、負荷電圧UR2(ベクトル)は負荷抵抗R'の大きさに関係なく、外部的には定電圧源に相当する定電圧出力特性を示す。
【0024】
また、定電圧源によって励起されるT型共振補償回路の入力インピーダンスは次のように求められる。
【数18】
式(10)を式(16)に代入すると、T型共振補償回路の入力インピーダンスは次のように求められる。
【数19】
同様に、定電流源によって励起されるT型共振補償回路の入力インピーダンスは次のように求められる。
【数20】
式(13)、(15)より、T型共振補償回路の入力が定電圧源の場合、外部的には定電流出力特性を示し、T型共振補償回路の入力が定電流源の場合、外部的には定電圧出力特性を示し、出力される電流と電圧は負荷抵抗の大きさには関係なく、充電負荷の定電流・定電圧出力特性の要件を満たす。また、式(17)および(18)から、システム入力インピーダンスは純粋な抵抗性であり、電流と電圧はZPA特性要件を満たしていることがわかる。
【0025】
F型共振補償回路の定電圧の出力特性は次のように解析される。
補償コンデンサCS2、CS3と補償インダクタLS1、LS2で構成されるF型共振補償回路を図5に示し、U(ベクトル)は交流電圧源、Rは負荷抵抗であり、UR3(ベクトル)は負荷抵抗の両端の電圧を表し、iR3(ベクトル)は負荷抵抗に流れる電流であり、キルヒホッフの電圧定理によれば、システム入力電圧U(ベクトル)と出力電圧UR3(ベクトル)の関係は次のように推定できる。
【数21】
【数22】
計算後、F型共振補償回路の入力インピーダンスは次のようになる。
【数23】
【数24】
式(21)からわかるように、Г=0およびΛ=0が満たされる場合、入力インピーダンスは純粋に抵抗性になり、
【数25】
が得られ、
式(23)を式(19)および(21)に代入すると、次のように簡略化できる。
【数26】
【数27】
式(24)から、システムの出力電圧はLS1とLS2の比にのみ関係し、負荷抵抗Rとは関係がないことがわかり、外部的には定電圧源に相当する定電圧出力特性を示し、充電負荷の定電圧出力特性の要求を満たす。かつ、式(25)から、システムの入力インピーダンスは純粋に抵抗性であり、電流と電圧はZPA特性要件を満たしていることがわかる。
【0026】
上記3種類の高次共振補償回路から、共振補償回路のパラメータが特定の共振条件を満たす場合、出力は定電流または定電圧特性を示すことがわかり、かつ3つの高次共振補償回路の入力インピーダンスはすべて純粋な抵抗であるため、表1が得られる。表1は、3つの高次共振補償回路の出力特性及び条件の表である。
【0027】
【表1】
【0028】
LCL-S型共振補償回路が入力励起として定電圧源を使用する場合、補償トポロジ回路パラメータLP1、C、L、L、Cが式(1)および(2)を満たす場合、システムは定電圧出力を持ち、システムはZPAを実現できることが分かる。
【0029】
T型共振補償回路が入力励起として定電圧源を使用する場合、共振補償回路パラメータLS1、LS2、CS1が式(10)を満たす場合、システムは定電流出力を持ち、システムはZPAを実現できる。T型共振補償回路が入力励起として定電流源を使用する場合、補償トポロジ回路のパラメータLS1'、LS2'、CS1'が式(11)を満たす場合、システムは定電圧出力を持ち、システムはZPAを実現できる。
【0030】
F型共振補償回路が入力励起として定電圧源を使用する場合、補償トポロジ回路のパラメータLS1、LS2、CS2、CS3が式(23)を満たす場合、システムは定電圧出力を持ち、システムはZPAを実現できる。
【0031】
上記LCL-S、T、F型共振補償回路の定電流・定電圧出力特性を基に、切り替えスイッチを制御することにより、受信側補償コンデンサのオン・オフを切り替えて、受信側共振補償回路のトポロジ構造を変更し、これにより、充電を定電流モードから定電圧モードに切り替えることを実現する。
【0032】
本発明のシステムは、無効電力をほとんど導入することなく、定電流充電段階と定電圧充電段階の両方でZPA状態を維持することができ、かつ、本発明は、送信側と受信側との間の通信を必要としないため、システムの制御の困難さとコストが軽減され、最後に、この方式の合理性と有効性がシミュレーションと実験によって検証される。
【0033】
本発明は、定電圧源U(ベクトル)を励起とするLCL-S型定電圧共振補償回路、定電圧源を励起とするT型定電流共振補償回路、F型定電圧共振補償回路をそれぞれ解析する。分析を通じて、LCL-S型共振補償回路の出力端とT型共振補償回路の入力端をカスケード接続すると、電気自動車の充電中の定電流出力要件を満たすことができ、LCL-S型共振補償回路の出力端とF型共振補償回路の入力端をカスケード接続すると、電気自動車の充電中の定電圧出力要件を満たすことができることを発見できる。
【0034】
図2に示すLCL-S型共振補償回路の負荷電圧UR1を、図4の(a)に示すT型共振補償回路の励起源として使用し、カスケード複合により図6に示す定電流トポロジ回路を形成し、図2に示すLCL-S型共振補償回路の負荷電圧UR1(ベクトル)を、F型共振補償回路の励起源として使用し、カスケード複合により図7に示す定電圧トポロジ回路を形成する。そのうち、Rは負荷抵抗であり、U(ベクトル)は高周波交流電圧源である。
【0035】
図6に示す定電流トポロジ回路を図7に示す定電圧トポロジ回路に切り替えるには、CS2分岐回路を追加し、CS3と等価になるようにCS1分岐回路にCStを並列接続する必要がある。本明細書で採用した方法は、スイッチSとCS2を直列に接続してCS2分岐回路を追加し、スイッチSとCStを直列に接続してCSt分岐回路を追加し、スイッチをオンにするように制御することにより、受信端の補償トポロジがT型からF型に変わり、それによってシステムが定電流モードから定電圧モードに切り替わることである。
【0036】
図1に示すように、送信側は単相フルブリッジ高周波インバータ回路を採用しており、単相インバータ回路はスイッチング管Q、Q、Q、Qで構成されている。i(ベクトル)とU(ベクトル)はインバータ出力電流とインバータ出力電圧を表し、送信側LCL共振補償ネットワークパラメータはLP1、C、Lで構成され、Mはコイルの相互インダクタンスであり、L、Cはそれぞれ受信コイルの自己インダクタンス、受信側補償コンデンサを表し、受信側のT型共振補償ネットワークパラメータはLS1、LS2、CS1で構成され、受信側のF型共振補償ネットワークパラメータはLS1、LS2、CS1、CSt、CS2で構成され、i(ベクトル)とU(ベクトル)はそれぞれ整流器の入力電流と入力電圧であり、受信側整流器には単相制御不能整流回路を採用し、ブリッジアームはダイオードD、D、D、Dで構成され、Zinはシステムの入力インピーダンスを表す。Cはフィルタコンデンサ、IとUはそれぞれシステムの出力電流と出力電圧、Rは充電負荷の等価抵抗である。
【0037】
インバータ出力電圧の基本波実効値Uとインバータ入力直流電圧Eの関係は、
【数28】
であり、
整流器の入力電圧および入力電流と、充電負荷の充電電圧Uおよび充電電流Iの関係は、
【数29】
【数30】
であり、
そのうち、U、Iはそれぞれ整流器入力電圧と電流の基本波実効値を表す。
【0038】
インバータの移相角をπとすると、整流関連回路の等価抵抗Rrecとバッテリーの等価内部抵抗Rの関係は、
【数31】
であり、
したがって、整流器と負荷回路の等価合計抵抗は、
【数32】
であり、
スイッチSおよびSがオフにした状態のとき、システム回路は図6に示す回路と等価であり、システムトポロジ回路はLCL-SとT型共振補償回路で構成され、ワイヤレス充電システムは定電流充電モードになる。システムトポロジ回路を図8に示す。
【0039】
制御電圧源は、送信コイルと受信コイルの相互インダクタンス電圧を表すために使用され、Reqは、整流器関連回路の内部抵抗と充電負荷の内部抵抗Rの等価抵抗であり、その相互インダクタンス等価回路を図9に示す。
【0040】
図9によれば、その回路のKVL方程式は次のようにリストできる。
【数33】
LCL-S型共振補償回路の解析から、LCL-S-T型定電流補償トポロジ回路パラメータLP1、C、Lは式(1)を満たし、L、Cは式(2)を満たす必要があることがわかり、すなわち、送信側補償インダクタンスLP1、送信コイルの自己インダクタンスL、補償コンデンサCが共振し、受信コイルの自己インダクタンスLは補償コンデンサCと共振する。T型共振補償回路の解析から、LCL-S-T型定電流補償トポロジ回路パラメータLS1、CS1、LS2は式(10)を満たす必要があることがわかり、すなわち、受信側補償インダクタLS1、LS2は補償コンデンサCS1と共振する。
【0041】
式(1)、(2)、(10)を式(31)に代入すると、定電流モードでシステムの等価抵抗Reqに流れる電流は次のように求められる。
【数34】
式(32)から、システムの角周波数ω、相互インダクタンスM、送信側補償インダクタンスLP1、インバータ出力電圧U(ベクトル)、受信側補償コンデンサCS1が変化しない場合、図9に示すように、トポロジ回路の出力電流は一定である。システム出力電流は等価抵抗Reqの大きさとは関係がなく、外部出力は定電流源に相当し、充電負荷の定電流出力特性の要件を満たすことができる。
【0042】
等価抵抗Reqに流れる電流i(ベクトル)とインバータ入力交流電圧U(ベクトル)を求めると、システムの定電流利得Giは次のように求められる。
【数35】
それ以外に、インバータの出力電流i(ベクトル)は式(31)より求められ、次式に代入すると図9に示す定電流等価回路の入力インピーダンスも求められる。
【数36】
式(34)から、定電流モードでは、システムの入力インピーダンスは純粋な抵抗性であり、システムには無効電力入力がないことがわかり、これにより、電流と電圧のZPA特性が実現され、システムの充電効率が改善される。
【0043】
充電負荷の両端の電圧が定電流・定電圧の切り替えの閾値電圧まで上昇すると、スイッチS、Sがオンにした状態にあり、コンデンサCS2、CStがシステムに接続され、システムは定電圧充電モードになり、システムトポロジ回路はLCL-SとF型共振補償回路で構成される。システムトポロジ回路を図10に示す。
【0044】
そのうち、補償コンデンサCS2、CS3、CS1、CStは次の関係を満たす。
【数37】
制御電圧源は、送信コイルと受信コイルの相互インダクタンス電圧を表すために使用され、iS1(ベクトル)をLS1分岐回路に流れる電流に設定する。Reqは、整流器関連回路の内部抵抗と充電負荷の内部抵抗Rの等価抵抗であり、その相互インダクタンス等価回路を図11に示す。
【0045】
図11によれば、その回路のKVL方程式は次のようにリストできる。
【数38】
LCL-S型共振補償回路の解析から、LCL-S-F型定電圧補償トポロジ回路パラメータLP1、C、Lは式(1)を満たし、L、Cは式(2)を満たす必要があることがわかり、すなわち、送信側補償インダクタンスLP1、送信コイルの自己インダクタンスL、補償コンデンサCが共振し、受信コイルの自己インダクタンスLは補償コンデンサCと共振する。F型共振補償回路の解析から、LCL-S-F型定電圧補償トポロジ回路パラメータLS1、LS2、CS2、CS3は式(23)を満たす必要があることがわかる。
【0046】
式(1)、(2)、(23)を式(36)に代入すると、定電圧モードでのシステムの等価抵抗Req両端電圧の大きさは次のように求められる。
【数39】
式(37)から、システム出力電圧は等価抵抗Reqの大きさとは関係がないことがわかり、外部出力は定電圧源に相当し、充電負荷の定電圧特性の要件を満たすことができる。
【0047】
等価抵抗Req両端に流れる電圧U(ベクトル)とインバータ出力交流電圧U(ベクトル)を求めると、システムの定電流利得Gvは次のように求められる。
【数40】
それ以外に、インバータ出力電流i(ベクトル)は式(36)から求められ、次式に代入すると図11に示す定電圧システムの等価回路の入力インピーダンスも求められる。
【数41】
式(39)から、定電圧モードでは、システムの入力インピーダンスは純粋な抵抗性であり、システムは単位力率で動作し、システムには無効電力入力がないことがわかり、これにより、電流と電圧のZPA特性が実現され、システムの充電効率が改善される。
【0048】
負荷の充電電流をI、充電電圧をU、インバータの直流入力電圧をE、システムの共振角周波数をω、送信コイルの自己インダクタンスをL、受信コイルの自己インダクタンスをL、送信コイルと受信コイルとの間の相互インダクタンスをMとする。
【0049】
式(1)と(2)から、LP1、C、Cの値は次のように求められる。
【数42】
式(26)、(28)を式(33)に代入すると、補償インダクタンスCS1の値は次のように求められる。
【数43】
式(41)を式(10)に代入すると、LS1とLS2の値は次のように求められる。
【数44】
【数45】
式(42)、(43)を式(23)に代入すると、CS2、CS3の値は次のように求められる。
【数46】
【数47】
式(35)より、CS1+CSt=CS3であることがわかり、式(41)、(45)を次の式に代入すると、CStの値は次のように求められる。
【数48】
充電負荷の定電流充電段階から定電圧段階への自動切り替えは、充電負荷の両端のリアルタイム電圧Uを検出することによって実現され、システムが定電流充電モードの場合、充電負荷の等価抵抗の増加により、充電負荷の両端の電圧は上昇し続け、充電負荷の両端の電圧が定電流・定電圧充電切り替え閾値電圧Urefまで上昇すると、充電モードが定電流充電から定電圧充電に切り替わり、充電負荷の両端の電圧はほとんど変化しない。具体的なスイッチ制御ロジックのブロック図を図12に示す。
【0050】
システムシミュレーションと実験プラットフォームは次のように設計されている。
図1に従って、図13に示すLCL-S-(T/F)型複合補償トポロジ回路のシミュレーションモデルが構築される。
【0051】
提案した理論的解決策の実現可能性を検証するために、Simulink(登録商標)シミュレーションソフトウェアを使用してシミュレーションモデルを構築して検証すると同時に、LCL-S型とT/F型複合接続の補償トポロジ回路を使用して定電流・定電圧出力を実現するWPTシステムの実験検証を行う。充電電流1A、充電電圧24Vのワイヤレス充電システム実験プラットフォームを構築し、実験プラットフォームを図14に示す。コントローラのメイン制御チップにはTI会社製TMS320F28335プロセッサが使用されており、インバータはモデルIRG7PH42UD1で構成される単相フルブリッジインバータ回路であり、受信端の整流器には、SCS240AE2ファーストリカバリダイオードで構成されたフルブリッジ制御不能整流回路が使用され、送信コイルと受信コイルは高周波のリッツ線が巻かれてることによって形成される。補償コンデンサにはポリプロピレンフィルムコンデンサを使用し、補償インダクタはリッツ線とEE65磁気コアで巻かれることによって形成される。実験では、バッテリー充電中の内部抵抗の変化をシミュレートするために、スライド式レオスタットが使用される。ワイヤレス充電システム実験プラットフォームの具体的なパラメータを表2に示し、表2は実験システムのパラメータ表である。
【0052】
【表2】
【0053】
シミュレーションと実験結果は次のように分析される。
【0054】
まず、Simulinkシミュレーションソフトウェアで図8に示す定電流モードシミュレーションモデルを構築し、定電流充電段階をシミュレーションして検証する。図15に、定電流充電モードで充電負荷Rがそれぞれ12Ωと24Ωのときのインバータ出力と負荷充電電流のシミュレーション波形を示す。図15の(a)~(d)から、インバータ出力電流と電圧は同位相を維持し、システム出力電流は基本的に1Aに維持されることがわかる。
【0055】
同時に、同じ実験パラメータ設定の下で、定電流充電モードの実験的検証を行うための実験プラットフォームを構築する。実験では、抵抗負荷の抵抗を徐々に増加させて充電中のバッテリーの抵抗変化プロセスをシミュレートし、負荷抵抗の変化範囲は5Ω~24Ωである。
【0056】
図16は、定電流モードでのインバータと充電負荷出力の実験波形を示し、図16の(a)と(b)から、インバータの出力電圧と出力電流は基本的に同位相を維持しており、システムは単位力率入力特性を維持することがわかる。定電流モードで、充電負荷抵抗が13.6Ωの場合、充電電流は1.01Aであり、充電負荷抵抗が24Ωの場合、充電電流は1.004A、電流変化率は0.59%となり、充電電流は充電負荷の影響をほとんど受けず、充電電流は1Aに維持され、システムシミュレーションと実験結果は基本的に一致している。
【0057】
負荷電圧が定格切り替え電圧24Vに達すると、スイッチング動作は補償トポロジ切り替えを実行し、定電流充電段階を定電圧充電段階に変換し、システムは24Vの電圧を出力し、充電負荷を定電圧で充電し、出力電流がカットオフ電流まで低下すると、充電が終了する。
【0058】
まず、Simulinkシミュレーションソフトウェアで図10に示す定電圧モードシミュレーションモデルを構築し、定電圧充電段階をシミュレーションおよび検証する。図17に定電圧充電モードで充電負荷Rがそれぞれ24Ω、120Ωの場合のインバータ出力と負荷充電電圧のシミュレーション波形を示す。図17の(a)~(d)から、インバータ出力電流と電圧は同位相を維持し、システム出力電圧は基本的に約24Vに維持されることがわかる。
【0059】
同時に、同じ実験パラメータ設定の下で、定電圧充電モードの実験的検証を行うための実験プラットフォームを構築する。実験では、抵抗負荷の抵抗を増加させて充電中のバッテリーの抵抗変化プロセスをシミュレートし、負荷抵抗の変化範囲は24Ω~120Ωである。
【0060】
図18は、定電圧モードでのインバータと充電負荷出力の実験波形を示し、図18の(a)~(b)から、U(ベクトル)とi(ベクトル)波形と基本的に同位相を維持し、システムは単位力率入力特性を維持し、システムのZPA状態を維持できることがわかる。充電負荷が24Ωの場合、充電電圧は24Vであり、充電負荷が65Ωの場合、充電電圧は26Vであり、電圧変化率は7.69%であり、充電電圧が若干変動するのは、前回の解析ではシステムの内部抵抗が考慮されず、補償部品のパラメータと理論上の計算値に誤差が存在したためである。
【0061】
それ以外に、定電流モードでは、充電負荷の等価抵抗が徐々に増加するため、システムの入力インピーダンスは減少し続け、インバータの出力電流は徐々に増加し、これは、式(34)の理論分析の正しさを検証した。定電圧モードでは、充電負荷の等価抵抗が徐々に増加するプロセスで、システムの入力インピーダンスは増加し続け、インバータの出力電流は徐々に減少し、これは、式(39)の理論分析の正しさを検証した。
図19は、充電負荷に応じて変化するシステムの充電電流と充電電圧を示す曲線図であり、充電負荷の値は5~120Ωである。図19から、定電流モードでは充電電流が初期の1.01Aから1Aに低下し、充電電流は基本的に1Aで安定していることがわかり、定電圧モードでは、充電電圧は初期の24Vから27Vまで上昇し、充電電圧が若干上昇するが、これは、以前の理論的導出では、システム内のインダクタンスやコンデンサなどの補償部品やコイルの内部抵抗が考慮されていないためで、これによりシステムの直流電源出力値が理論値よりも大きくなり、その結果、充電電圧と充電電流はシステムの内部抵抗の影響を受けてある程度変動するが、充電電圧と充電電流は充電負荷の充電ニーズを満たすことができる。
【0062】
図20は、システムの充電効率と充電電力が充電負荷抵抗によって変化する曲線図である。定電流・定電圧充電プロセス全体を通じて、システムの充電効率は最初の42%から78%に増加し、最終的には44%に低下して充電が完了し、充電電力は、定電流・定電圧の切り替え点で最大値24Wに達する。(ここでの充電効率とは、DC-DC充電効率、つまり充電負荷出力電力とインバータ入力電力の比を指す)。
【0063】
図21は、スイッチSおよびSがオフ状態からオン状態に切り替わったときの、インバータの出力電圧U(ベクトル)、出力電流i(ベクトル)、および充電負荷の両端の電圧Uの波形を示し、インバータ出力波形を見ると、インバータ出力電圧振幅はほとんど変化せず、インバータ出力電流振幅がわずかに増加していることがわかる。充電負荷の両端の電圧は切り替え前後でわずかに変動するが、非常に短時間で素早く安定状態に戻るため、定電流充電モードから定電圧充電モードへの高速かつ安定した切り替えが実現できる。
【0064】
本発明は、LCL-S、T、F型共振補償回路を複合的に再構成し、LCL-S-(T/F)型定電流・定電圧複合補償トポロジを導出する。そして、受信側のスイッチ切り替えを制御して補償コンデンサを切り替えることにより、この新型の定電流・定電圧複合補償トポロジの理論解析が完了し、次に、MATLAB(登録商標)/SIMULINKシミュレーションソフトウェアを使用して、提案された理論的解決手段のシミュレーションモデルを構築し、検証し、最後に、LCL-S型とT/F型共振補償回路をカスケード接続した複合トポロジ回路を使用して定電流・定電圧出力を実現するWPTシステムを実験的に検証し、充電電圧Uと充電電流Iがそれぞれ24V、1Aのワイヤレス充電実験プラットフォームを構築する。定電流充電段階では、充電負荷抵抗が13.6Ωから24Ωに増加すると、システム充電電流は1.01Aから1.004Aに低下し、電流変化率は0.59%になり、システムの充電電流は基本的に1Aを維持し、定電圧充電段階では、充電負荷抵抗が24Ωから65Ωに増加すると、システム充電電圧は24Vから26Vに上昇し、電圧変化率は7.69%になり、システムの充電電圧はわずかに増加するが、依然として定電圧出力に対する充電負荷の要件を満たす。充電プロセス全体におけるシステムの最大充電効率は78%であり、実験では、抵抗負荷の抵抗を徐々に増加させることにより、充電プロセス中のバッテリーの抵抗の変化プロセスをシミュレートする。実験結果は、インバータの出力電圧と出力電流が基本的に同位相を維持しており、システムがZPA特性を実現でき、無効電力の導入がほぼゼロであることを証明している。かつ、定電流・定電圧の充電段階では、システムの出力電流と出力電圧は基本的に不変を維持し、電気自動車の充電時の定電流または定電圧出力の要件を満たし、期待される結果が得られる。
【0065】
本明細書における各実施例は段階的に説明されており、各実施例が主に説明することはいずれも他の実施例との相違点であり、各実施例間で同一または類似の部分は、互いに参照すればよい。
【0066】
本明細書において具体的な例を応用して本発明の原理及び実施態様を説明し、以上の実施例の説明は本発明の方法及びその核となる考え方を理解するためにのみ使用され、同時に、当業者にとって、本発明の思想に従って、発明を実施するための形態および応用範囲に変更がある。要約すると、本明細書の内容は本発明への制限であると理解すべきではない。
【符号の説明】
【0067】
ref 反射インピーダンス
in 入力インピーダンス
eq 整流器及び充電負荷の等価抵抗
(ベクトル) インバータの出力電圧
(ベクトル) インバータの出力電流
(ベクトル) 整流器の入力電圧
(ベクトル) 整流器の入力電流
充電負荷電圧
充電負荷電流
rec 整流器の等価抵抗
充電負荷の等価抵抗
定電流利得
定電圧利得
ref 定電流・定電圧切り替えの閾値電圧
f 共振周波数
d エアギャプ距離
M 相互インダクタンス
ω 共振角周波数
λ 力率
K 結合係数
CCVS(ベクトル) 受信コイルの相互インダクタンス電圧
P 充電電力
η 充電効率
送信コイルの自己インダクタンス
受信コイルの自己インダクタンス
E 直流入力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21