(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031668
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】溶接における溶け込み不良の検出方法及び関連装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20250228BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141031
(22)【出願日】2024-08-22
(31)【優先権主張番号】202311076857.7
(32)【優先日】2023-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524315927
【氏名又は名称】グァンジョウ ディリジン フォトニクス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジャンビャオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,デヨン
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA00
4E168BA02
4E168BA86
4E168BA87
4E168CA03
4E168CA05
4E168DA02
4E168EA17
4E168KA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レーザ加工分野に関し、溶接における溶け込み不良の検出方法及び関連装置を開示する。
【解決手段】産業用パーソナルコンピュータ(IPC)は、目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号を取得する。第1時間帯の開始時刻は、完全な目標溶接部が形成された時刻より早くない。IPCは、赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。特に薄板溶接中に生成された溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを検出することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接における溶け込み不良の検出方法であって、
目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号を取得することであって、前記第1時間帯の開始時刻は、完全な前記目標溶接部が形成された時刻より早くなく、前記目標溶接部は、薄板材料をレーザ加工することによって形成される、取得することと、
前記赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することと、
を含む、
ことを特徴とする溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項2】
前記赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項3】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線と前記赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、前記赤外光信号の上限値を取得することと、
前記赤外光信号の上限値に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することと、を含み、
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が前記赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ前記赤外光信号の上限値が上限閾値より大きい場合、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項4】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、前記基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、前記複数の第1点は前記複数の第3点に時間的に対応し、前記赤外光信号に対応する電気信号曲線と前記赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、前記赤外光信号の上限値を取得することは、
前記複数の第1点の各々によって表される振幅と、前記第1点に時間的に対応する第3点によって表される振幅との差分を計算することで、複数の差分を取得することと、
前記複数の差分のうちの最大値を前記赤外光信号の上限値として確定することと、
を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項5】
前記赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、前記基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、前記複数の第2点は前記複数の第3点に時間的に対応し、前記溶接における溶け込み不良の検出方法は、
前記複数の第3点の各々によって表される振幅と、前記第3点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分を計算することで、複数の差分を取得することと、
前記複数の差分のうちの最大値を前記上限閾値として確定することと、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項6】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線と前記赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、前記赤外光信号の上部局所面積を取得することであって、前記赤外光信号の上部局所面積は、前記赤外光信号に対応する電気信号曲線内の、振幅が前記基準上部エッジラインの振幅より大きい部分と、前記基準上部エッジラインとの間の領域の面積である、取得することと、
前記赤外光信号の上部局所面積に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することと、を含み、
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が前記赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ前記赤外光信号の上部局所面積が上部局所面積閾値より大きい場合、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項7】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線と前記赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、前記赤外光信号の上部局所面積を取得することは、
第1時刻及び第2時刻を確定することであって、前記第1時刻は前記第1時間帯の開始時刻であり、前記第2時刻は、前記赤外光信号に対応する電気信号曲線と前記基準上部エッジラインとが交差する時刻である、確定することと、
前記第1時刻と前記第2時刻との間の、前記赤外光信号に対応する電気信号曲線下の第1の積分面積を計算し、前記第1時刻と前記第2時刻との間の、前記基準上部エッジライン下の第2の積分面積を計算することと、
前記第1の積分面積と前記第2の積分面積との差分を、前記赤外光信号の上部局所面積として確定することと、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項8】
前記赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、前記赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、前記複数の第3点は前記複数の第2点に時間的に対応し、前記溶接における溶け込み不良の検出方法は、
前記赤外光信号の基準上部エッジラインから開始第3点及び終了第3点を確定することであって、前記開始第3点は開始第2点に時間的に対応する第3点であり、前記終了第3点は、表される振幅が時間的に対応する第2点によって表される振幅と同じである第3点であり、前記開始第2点は前記赤外光信号の基準ミドルライン内の1番目の第2点である、確定することと、
前記赤外光信号の基準上部エッジライン内の前記開始第3点と前記終了第3点との間の部分下の第3の積分面積を計算し、前記赤外光信号の基準ミドルライン内の、前記開始第3点に時間的に対応する第2点と前記終了第3点に時間的に対応する第2点との間の部分下の第4の積分面積を計算することと、
前記第3の積分面積と前記第4の積分面積との差分の半分を前記上部局所面積閾値として確定することと、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項9】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、前記赤外光信号のスロープを確定することと、
前記赤外光信号のスロープに基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することと、を含み、
前記赤外光信号のスロープがスロープ閾値より大きい場合、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項10】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、前記赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、前記赤外光信号のスロープを確定することは、
前記複数の第1点から開始第1点と終了第1点を確定することであって、前記開始第1点によって表される振幅は前記開始時刻に収集され、前記終了第1点は表される振幅が0である第1点である、確定することと、
前記開始第1点の収集時刻と前記終了第1点の収集時刻を確定することと、
前記開始第1点によって表される振幅と前記終了第1点によって表される振幅との間の第1差分を計算し、前記開始第1点の収集時刻と前記終了第1点の収集時刻との間の第2差分を計算し、前記第2差分に対する前記第1差分の比を計算することと、を含み、前記比は前記赤外光信号のスロープである、
ことを特徴とする請求項9に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項11】
前記赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、前記複数の第1点は前記複数の第2点に時間的に対応し、前記溶接における溶け込み不良の検出方法は、
前記複数の第2点から開始第2点と終了第2点を確定することであって、前記開始第2点は、前記赤外光信号の基準ミドルライン内の、前記開始第1点に時間的に対応する第2点であり、前記終了第2点は、前記赤外光信号の基準ミドルライン内の、前記終了第1点に時間的に対応する第2点である、確定することと、
前記開始第2点によって表される振幅と前記終了第2点によって表される振幅との間の第3差分を計算し、前記第2差分に対する前記第3差分の比を計算し、前記比の絶対値の2倍を前記スロープ閾値として確定することと、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項12】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、前記赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、
前記複数の第1点に基づいて前記赤外光信号の振幅の平均値を算出することであって、前記赤外光信号の振幅の平均値は、前記複数の第1点によって表される振幅の平均値である、算出することと、
前記赤外光信号の振幅の平均値に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することと、を含み、
前記赤外光信号の振幅の平均値が平均値閾値より大きい場合、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項13】
前記赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、前記溶接における溶け込み不良の検出方法は、
前記複数の第2点によって表される振幅の平均値を計算し、前記平均値の2倍を前記平均値閾値として確定すること、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項14】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線と前記赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、前記赤外光信号の平均オフセットを取得することと、
前記赤外光信号の平均オフセットに基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することと、を含み、
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が前記赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ前記赤外光信号の平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えた場合、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項15】
前記赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、前記基準ミドルラインは複数の第2点を含み、前記複数の第1点は前記複数の第2点に時間的に対応し、前記赤外光信号に対応する電気信号曲線と前記赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、前記赤外光信号の平均オフセットを取得することは、
前記複数の第1点の各々によって表される振幅と、各前記第1点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分の絶対値を計算することで、複数の差分の絶対値を取得することと、
取得された複数の差分の絶対値を合計して合計の結果を平均して、前記赤外光信号の平均オフセットを取得することと、
を含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項16】
前記予め設定されたオフセット範囲は[-μ-4σ,μ+4σ]であり、μは、履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの平均値であり、σは、前記履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの標準偏差であり、前記第2時間帯の開始時刻は、前記溶け込み不良を有しない完全な溶接部が形成された時刻より早くない、
ことを特徴とする請求項14に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項17】
前記溶接における溶け込み不良の検出方法は、
前記目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定した場合、前記目標溶接部の位置情報を取得することと、
前記目標溶接部の位置情報をレーザ溶接システムに伝送し、前記レーザ溶接システムに、前記目標溶接部の位置情報に基づいて前記目標溶接部を再加工させることと、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項18】
前記溶接における溶け込み不良の検出方法は、
完全な前記目標溶接部が形成された後、前記目標溶接部によって生成された赤外光信号に対応する電気信号曲線の図を表示し、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かの結果を表示すること、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項19】
前記薄板材料の厚さは0.01mm~0.6mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法。
【請求項20】
取得ユニット、表示ユニット、及び確定ユニットを備える産業用パーソナルコンピュータ(IPC)であって、
前記取得ユニットは、目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号を取得するように構成されており、前記第1時間帯の開始時刻は、完全な前記目標溶接部が形成された時刻より早くなく、前記目標溶接部は、薄板材料をレーザ加工することによって形成され、
前記表示ユニットは、前記目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号を表示するように構成されており、
前記確定ユニットは、前記赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、前記目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定するように構成されている、
ことを特徴とする産業用パーソナルコンピュータ。
【請求項21】
産業用パーソナルコンピュータ(IPC)であって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサはメモリに接続されており、前記メモリはコンピュータプログラムを記憶するように構成されており、前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記コンピュータプログラムを実行することにより、前記IPCに請求項1~19のいずれか一項に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法を実行させる、
ことを特徴とする産業用パーソナルコンピュータ。
【請求項22】
レーザ加工制御システムであって、
レーザ溶接システム、マルチ光センサーモジュール、信号処理モジュール、及び産業用パーソナルコンピュータ(IPC)を含み、
前記IPCは、請求項1~19のいずれか一項に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法を実行するように構成されている、
ことを特徴とするレーザ加工制御システム。
【請求項23】
コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶されており、前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることにより、請求項1~19のいずれか一項に記載の溶接における溶け込み不良の検出方法が実行される、
ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、レーザ加工技術分野に関し、特に、溶接における溶け込み不良の検出方法及び関連装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、コミュニケーション及びコンシューマー・エレクトロニクス(computer、communication、consumer electronics、3C)分野では、金属薄板のレーザ溶接は、ボタン電池、携帯電話の電池、ノートパソコンの電池などの正極材料と負極材料とを接続する主な方式である。溶接の品質を確保するために、レーザ溶接の結果を分析し、検査する必要がある。溶接部の分析に溶接欠陥の識別が含まれる。
【0003】
3C分野でのレーザ溶接欠陥の識別は大きな課題である。現在では、上面図で目視検査のみで溶接部を検査することが多いが、通常、溶け込み不良(poor welding)の存在の有無を識別することができない。電極材料に溶け込み不良が存在する場合、動作中の電池の継続的且つ安定的な電気的接触を確保することができず、それは大きな課題である。従って、薄板のレーザ溶接中の溶け込み不良の検出が非常に重要である。
【発明の概要】
【0004】
本出願の実施形態は、溶接における溶け込み不良の検出方法及び関連装置を提供する。本出願の実施形態を利用すると、薄板の溶接中に生成された溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを判断することができる。
【0005】
本出願は、以下の技術案を用いて実現される。
【0006】
第一態様において、本出願の実施形態は、溶接における溶け込み不良の検出方法を提供する。当該方法は以下の内容を含む。産業用パーソナルコンピュータ(industrial personal computer、IPC)は、目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号(infrared light signal)に対応する電気信号を取得する。第1時間帯の開始時刻は、完全な目標溶接部が形成された時刻より早くない。IPCは、赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。目標溶接部は、薄板材料をレーザ加工することによって形成される。
【0007】
さらに、IPCは、目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号を表示するように構成されている。
【0008】
薄板材料は、厚さが予め設定された厚さより小さい材料である。一例では、薄板材料は、厚さが0.5mmより小さい材料である。
【0009】
薄板材料の溶接完了後、溶け込み不良を有する溶接部によって放射される赤外光のエネルギーと、溶け込み不良を有しない溶接部によって放射される赤外光のエネルギーとが異なるため、溶接完了後に溶接部によって放射される赤外光信号を検出することにより、当該溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。
【0010】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、IPCが赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは具体的に、赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することを含む。
【0011】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、以下の内容を含む。IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、赤外光信号の平均オフセットを取得する。IPCは、赤外光信号の平均オフセットに基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えた場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される。
【0012】
赤外光信号の平均オフセットは、赤外光信号の基準ミドルラインに対する、赤外光信号に対応する電気信号のオフセットと見なされることができる。
【0013】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第1点は複数の第2点に時間的に対応する。IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、赤外光信号の平均オフセットを取得することは、以下の内容を含む。IPCは、複数の第1点の各々によって表される振幅と、各第1点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分の絶対値を計算することで、複数の差分の絶対値を取得する。IPCは、取得された複数の差分の絶対値を合計して合計の結果を平均して、赤外光信号の平均オフセットを取得する。
【0014】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、予め設定されたオフセット範囲は [-μ-4σ,μ+4σ]であり、μは、履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの平均値であり、σは、履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの標準偏差である。第2時間帯の開始時刻は、溶け込み不良を有しない完全な溶接部が形成された時刻より早くない。
【0015】
履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの平均値と標準偏差に基づいて、予め設定されたオフセット範囲を確定し、さらに、当該予め設定されたオフセット範囲を利用して、溶け込み不良が存在するか否かの判断を行って、精確な判断結果を得ることができる。
【0016】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、以下の内容を含む。IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上限値を取得する。IPCは、赤外光信号の上限値に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の上限値が上限閾値より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0017】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、複数の第1点は複数の第3点に時間的に対応する。IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上限値を取得することは、以下の内容を含む。IPCは、複数の第1点の各々によって表される振幅と、その第1点に時間的に対応する第3点によって表される振幅との差分を計算することで、複数の差分を取得する。IPCは、複数の差分のうちの最大値を赤外光信号の上限値として確定する。
【0018】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、複数の第2点は複数の第3点に時間的に対応する。本実施形態の方法は以下の内容をさらに含む。IPCは、複数の第3点の各々によって表される振幅と、その第3点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分を計算することで、複数の差分を取得する。IPCは、複数の差分のうちの最大値を上限閾値として確定する。
【0019】
完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光のエネルギーは、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高い。それに応じて、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光信号の上限値は、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光信号の上限値より大きい。従って、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号の上限値と上限閾値とを比較して、目標溶接部によって生成された赤外光のエネルギーが、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高いか否かを確定することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。また、このような判定方式により得られる判定結果は精度が高い。
【0020】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、以下の内容を含む。IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上部局所面積を取得する。赤外光信号の上部局所面積は、赤外光信号に対応する電気信号曲線内の、振幅が基準上部エッジラインの振幅より大きい部分と、基準上部エッジラインとの間の領域の面積である。IPCは、赤外光信号の上部局所面積に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の上部局所面積が上部局所面積閾値より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0021】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上部局所面積を取得することは、以下の内容を含む。IPCは、第1時刻及び第2時刻を確定する。第1時刻は第1時間帯の開始時刻であり、第2時刻は、赤外光信号に対応する電気信号曲線と基準上部エッジラインとが交差する時刻である。IPCは、第1時刻と第2時刻との間の、赤外光信号に対応する電気信号曲線下の第1の積分面積を計算し、第1時刻と第2時刻との間の、基準上部エッジライン下の第2の積分面積を計算する。IPCは、第1の積分面積と第2の積分面積との差分を、赤外光信号の上部局所面積として確定する。
【0022】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第3点は複数の第2点に時間的に対応する。本実施形態の方法は以下の内容をさらに含む。IPCは、赤外光信号の基準上部エッジラインから開始第3点及び終了第3点を確定する。開始第3点は開始第2点に時間的に対応する第3点であり、終了第3点は、表される振幅が時間的に対応する第2点によって表される振幅と同じである第3点であり、開始第2点は、赤外光信号に対応する基準ミドルラインに含まれる複数の第2点内の時間的に1番目の第2点である。IPCは、赤外光信号の基準上部エッジライン内の開始第3点と終了第3点との間の部分下の第3の積分面積を計算し、赤外光信号の基準ミドルライン内の、開始第3点に時間的に対応する第2点と終了第3点に時間的に対応する第2点との間の部分下の第4の積分面積を計算する。IPCは、第3の積分面積と第4の積分面積との差分の半分を上部局所面積閾値として確定する。
【0023】
完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光のエネルギーは、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高い。それに応じて、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光信号の上部局所面積は、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光信号の上部局所面積より大きい。従って、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号の上部局所面積と上部局所面積閾値とを比較して、目標溶接部によって生成された赤外光のエネルギーが、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高いか否かを確定することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。また、このような判定方式により得られる判定結果は精度が高い。
【0024】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、以下の内容を含む。IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、赤外光信号のスロープを確定する。IPCは、赤外光信号のスロープに基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号のスロープがスロープ閾値より大きい場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される。
【0025】
選択的に、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含む。IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、赤外光信号のスロープを確定することは、以下の内容を含む。IPCは、複数の第1点から開始第1点と終了第1点を確定する。開始第1点によって表される振幅は第1時間帯の開始時刻に収集される。終了第1点は、表される振幅が0である第1点である。IPCは、開始第1点の収集時刻と終了第1点の収集時刻を確定する。IPCは、開始第1点によって表される振幅と終了第1点によって表される振幅との間の第1差分を計算し、開始第1点の収集時刻と終了第1点の収集時刻との間の第2差分を計算し、第2差分に対する第1差分の比を計算し、その比を赤外光信号のスロープとして確定する。
【0026】
選択的に、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第1点は複数の第2点に時間的に対応する。本実施形態の方法は以下の内容をさらに含む。IPCは、複数の第2点から開始第2点と終了第2点を確定する。開始第2点は、赤外光信号の基準ミドルライン内の、開始第1点に時間的に対応する第2点であり、終了第2点は、赤外光信号の基準ミドルライン内の、終了第1点に時間的に対応する第2点である。IPCは、開始第2点によって表される振幅と終了第2点によって表される振幅との間の第3差分を計算し、第2差分に対する第3差分の比を計算し、その比の絶対値の2倍をスロープ閾値として確定する。
【0027】
完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光のエネルギーは、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高い。それに応じて、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光信号のスロープの絶対値は、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光信号のスロープの絶対値より大きい。従って、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号のスロープの絶対値とスロープ閾値とを比較して、目標溶接部によって生成された赤外光のエネルギーが、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高いか否かを確定することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。また、このような判定方式により得られる判定結果は精度が高い。
【0028】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含む。IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、以下の内容を含む。IPCは、複数の第1点に基づいて赤外光信号の振幅の平均値を算出する。赤外光信号の振幅の平均値は、複数の第1点によって表される振幅の平均値である。IPCは、赤外光信号の振幅の平均値に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号の振幅の平均値が平均値閾値より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0029】
選択的に、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含む。平均値閾値は、複数の第2点によって表される振幅の平均値の2倍である。
【0030】
完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光のエネルギーは、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高い。それに応じて、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光信号の振幅の平均値は、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光信号の振幅の平均値より大きい。従って、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号の振幅の平均値と平均値閾値とを比較して、目標溶接部によって生成された赤外光のエネルギーが、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高いか否かを確定することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。また、このような判定方式により得られる判定結果は精度が高い。
【0031】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、本実施形態の方法は以下の内容をさらに含む。目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定した場合、IPCは目標溶接部の位置情報を取得する。IPCは、目標溶接部の位置情報をレーザ溶接システムに伝送し、レーザ溶接システムに、目標溶接部の位置情報に基づいて目標溶接部を再加工させる。
【0032】
目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定した場合、レーザ溶接システムが目標溶接部を再加工することで、目標溶接部に溶け込み不良が存在するという状況を減少し、目標溶接部の品質を確保することができる。
【0033】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、本実施形態の方法は以下の内容をさらに含む。完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号に対応する電気信号曲線の図を表示し、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かの結果を表示する。
【0034】
目標溶接部によって生成された赤外光信号に対応する電気信号曲線の図を表示し、且つ目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かの結果を表示することで、作業員に加工中の加工品質を知らせることができる。
【0035】
第二態様において、本出願の実施形態はIPCを提供する。IPCは、取得ユニット、確定ユニット、トランシーバーユニット、及び表示ユニットを備える。取得ユニット、確定ユニット、トランシーバーユニット、及び表示ユニットは、第一態様のいずれかに係る方法を実現するように構成されている。
【0036】
第三態様において、本出願の実施形態はIPCを提供する。IPCは、プロセッサを備える。プロセッサはメモリに接続されており、メモリはコンピュータプログラムを記憶するように構成されており、プロセッサは、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、IPCに第一態様のいずれかに係る方法を実行させる。
【0037】
第四態様において、本出願の実施形態は、レーザ加工制御システムを提供する。レーザ加工制御システムは、レーザ溶接システム(laser welding system)、マルチ光センサーモジュール、信号処理モジュール、及びIPCを含む。IPCは、第一態様のいずれかに係る方法を実行するように構成されている。
【0038】
第五態様において、本出願の実施形態は、コンピュータ可読記憶媒体を提供する。コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶されており、コンピュータプログラムはコンピュータに、第一態様のいずれかに係る方法を実行させる。
【0039】
第六態様において、本出願の実施形態は、コンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含む。コンピュータは、第一態様に記載の方法を実行するように動作可能である。
【0040】
理解できるように、上記第二態様、第三態様に記載のIPC、第四態様に記載のレーザ加工制御システム、第五態様に記載のコンピュータ可読記憶媒体、又は第六態様に記載のコンピュータプログラム製品はいずれも、第一態様のいずれかに係る方法を実現するために用いられる。従って、それらの達成し得る有益な効果については、対応する方法における有益な効果を参照することができ、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明の実施形態又は既存技術における技術案をより明確に説明するために、以下、本発明の実施形態に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明される図面は本発明のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な努力なしに、これらの図面によって他の図面を得ることができる。
【
図1】
図1は、本出願の実施形態に係るレーザ溶接における溶け込み不良の検出システムのアーキテクチャを示す概略図である。
【
図2】
図2は、本出願の実施形態に係る溶接における溶け込み不良の検出方法を示すフローチャートである。
【
図3a】
図3aは、溶接後の検出の時間シーケンス図である。
【
図3b】
図3bは、溶接プロセスを示す概略図である。
【
図4a】
図4aは、本出願の実施形態に係る平均オフセットの計算結果を示す概略図である。
【
図4b】
図4bは、本出願の実施形態に係る赤外光信号の上部局所面積を示す概略図である。
【
図4c】
図4cは、本出願の実施形態に係る赤外光信号のスロープを示す概略図である。
【
図4d】
図4dは、本出願の実施形態に係る検出結果を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本出願の実施形態に係る産業用パーソナルコンピュータ(IPC)の構造を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本出願の実施形態に係る別のIPCの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本出願の実施形態の図面を参照しながら本出願の実施形態の技術案を明晰に、全面的に説明する。明らかに、説明される実施形態は、本発明の一部の実施形態のみであり、全ての実施形態ではない。本発明における実施形態に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得ることができるすべての他の実施形態は、皆本発明の保護範囲に属する。
【0043】
本出願の実施形態に使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではなく、特定の実施形態を説明するという目的のみに用いられる。本出願の実施形態、図面及び特許請求の範囲に使用される単数形の「1つの」、「一」、及び「当該」は、文脈が他の意味を明確に示さない限り、複数形を含むことも意図される。なお、本明細書に使用される用語「及び/又は」は単に関連対象の関連関係を説明するものであり、3種類の関係が存在することを示す。例えば、A及び/又はBの場合は、Aのみが存在すること、AとBが同時に存在すること、Bのみが存在することという3つの状況を示す。また、本明細書では、符号「/」は一般的に前後の関連対象が「又は」の関係にあることを示す。なお、本出願の実施形態に使用される「第1」、「第2」などの用語は、ただ異なる部分を区別するために用いられ、いかなる順序、数量や重要性を表さない。同様に、「1つ」又は「一」などの用語は、数の限定を表すものではなく、少なくとも1つ存在することを表す。本出願の実施形態に係る「複数」は、2つ以上を意味する。
【0044】
図1を参照すると、
図1は、本出願の実施形態に係るレーザ溶接における溶け込み不良の検出システムのアーキテクチャを示す概略図である。
図1に示すように、当該システムは、レーザ溶接システム、マルチ光センサーモジュール(multi-optical sensor module)4、信号処理モジュール6、及び産業用パーソナルコンピュータ(IPC)8を含む。
【0045】
レーザ溶接システムは、レーザ1、光ファイバー2及びレーザ加工ヘッド3を含む。レーザ1は光ファイバー2を介してレーザ加工ヘッド3に接続されている。マルチ光センサーモジュール4は、レーザ加工ヘッド3に同軸に取り付けられている。マルチ光センサーモジュール4は第1信号線5を介して信号処理モジュール6に接続されており、信号処理モジュール6は第2信号線7を介してIPC8に接続されており、IPC8は第3信号線12を介してレーザ溶接システムに接続されている。
【0046】
本実施形態では、レーザ1によって生成されたレーザ光は、光ファイバ2を介してレーザ加工ヘッド3に伝送され、次に、レーザ加工ヘッド3を介して加工待ちの金属材料である上部板材10に入射する。上部板材10はレーザ光を吸収した後、溶融し凝固して溶接部9を形成する。溶接後に溶接部9によって放射された赤外光は、レーザ加工ヘッド3を介してマルチ光センサーモジュール4に伝送される。マルチ光センサーモジュール4は、溶接後に溶接部9によって放射された赤外光を受信し、赤外光信号を電気信号に変換することができる。当該電気信号は、第1信号線5を介して信号処理モジュール6に伝送される。信号が処理された後、処理された信号は第2信号線7を介してIPC8に伝送される。IPC8は、受信した信号を処理して識別し、溶接部9に溶け込み不良が存在するか否かを判定する。
【0047】
選択的に、溶接部9に溶け込み不良が存在すると判定した場合、溶接部9の位置情報を確定し、第3信号線12を介して溶接部9の位置情報をレーザ溶接システムに伝送し、レーザ溶接システムを制御して溶接部9に対して補修溶接を行うようにする。
【0048】
なお、薄板溶接では、溶け込み不良の現象が発生する場合、溶接の溶融プール(molten pool)の露出部分のボリュームは基本的に大きく変化せず、溶接中(即ち、溶接プロセス中)に溶接の溶融プールから放出される赤外光信号は大きく変化しないため、溶接中に溶接の溶融プールから放出される赤外光信号に基づいて溶け込み不良という欠陥を識別することはできない。換言すれば、溶接中に溶接の溶融プールが上部板材を完全に透過せず、溶接中に下部板材11に伝わる溶接部の熱量が少ない。溶接後(溶接プロセス終了後)、上部板材10の溶接部の初期蓄積熱量が著しく増加する。従って、本出願の技術案において、溶接後に溶接部9によって放射された赤外光信号に基づいて、溶接部9に溶け込み不良が存在するか否かを判定する。換言すれば、溶接後に放射される赤外光信号を溶け込み不良の特性として利用して、溶接部9に溶け込み不良という欠陥が存在するか否かを判定する。
【0049】
なお、本出願における薄板材料とは、厚さが予め設定された厚さより小さい材料である。薄板材料は、厚さが予め設定された厚さより小さい材料であり、厚さが0.01mm~0.6mmであることができる。一例では、薄板材料は、厚さが0.5mmより小さい材料を指すことができる。薄板溶接中に、上部板材10は薄板材料である。レーザ加工中に、まずレーザが薄板材料に照射され、薄板材料と下部の溶接材料とが溶融した後、一体に溶接される。
【0050】
異なる材料の薄板に対応する予め設定された厚さは異なっていてもよい。例えば、放熱性能の良い薄板材料に対応する予め設定された厚さは、放熱性能の悪い薄板材料に対応する予め設定された厚さより大きい。例えば、銅の薄板は0.15mm~0.6mmの範囲内の予め設定された厚さに対応し、好ましい厚さが0.25mmであることができる。アルミニウムの薄板は0.15mm~0.6mmの範囲内の予め設定された厚さに対応し、好ましい厚さが0.2mmであることができる。ステンレスの薄板は0.1mm~0.5mmの範囲内の予め設定された厚さに対応し、好ましい厚さが0.15mmであることができる。
【0051】
レーザ付加加工(laser additive machining)中に、最上層の薄板材料は上部クラッド層(upper cladding layer)であることができる。付加加工中に不十分な溶融で形成された溶け込み不良を検出するために、薄板材料に対応する予め設定された厚さは0.01mm~0.2mmである。同様に、異なる材料の上部クラッド層に対応する好ましい予め設定された厚さは異なっている。
【0052】
本出願の技術案を紹介する前に、本出願の関連用語を説明する。
【0053】
赤外光信号の包絡線は、溶け込み不良のない溶接部又は合格溶接部が形成された後に生成した赤外光信号に対応する電気信号曲線(electrical-signal-curve)の包絡線である。ここでいう合格溶接部とは、溶け込み不良のない溶接部と比べて、一定の相違があるが許容できる溶接部のことである。
【0054】
赤外光信号の基準ラインは、溶け込み不良のない溶接部又は合格溶接部が形成された後に生成した赤外光信号の振幅範囲(amplitude range)である。ここでいう合格溶接部とは、溶け込み不良のない溶接部と比べて、一定の相違があるが許容できる溶接部のことである。
【0055】
赤外光信号の基準上部エッジライン(upper base edge-line)は、赤外光信号の包絡線の上部エッジラインである。赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、又は、赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点からなる。包絡線の上部エッジラインは、1つの溶接時点で、複数のワークピースに対応する位置に形成された溶け込み不良のない溶接部又は合格溶接部によって生成された赤外光信号の振幅範囲の上部境界線であると理解されることもできる。
【0056】
赤外光信号の基準下部エッジライン(lower base edge-line)は、赤外光信号の包絡線の下部エッジラインである。包絡線の下部エッジラインは、1つの溶接時点で、複数のワークピースに対応する位置に形成された溶け込み不良のない溶接部又は合格溶接部によって生成された赤外光信号の振幅範囲の下部境界線であると理解されることもできる。
【0057】
赤外光信号の基準ミドルライン(base midline)は、赤外光信号の基準上部エッジラインと赤外光信号の基準下部エッジラインとのミドルラインである。赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、又は、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点からなる。選択的に、赤外光信号の基準ミドルラインは、以下の方式に基づいて得られることもできる。
【0058】
複数回の履歴溶接における、溶け込み不良のない複数の溶接部又は複数の合格溶接部の、異なる遅延時点での振幅を統計し、複数の同じ遅延時点に対応する振幅平均値を計算し、異なる遅延時点に対応する振幅平均値に基づいて赤外光信号の基準ミドルラインを得る。
【0059】
赤外光信号の平均オフセットは、赤外光信号の基準ミドルラインに対する、溶接中の赤外光信号のオフセットを指す。以下のように理解されることができる。赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第1点は複数の第2点に時間的に対応する。赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、赤外光信号の平均オフセットを取得することは、以下の内容を含む。複数の第1点の各々によって表される振幅と、各第1点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分の絶対値を計算することで、複数の差分の絶対値を取得する。取得された複数の差分の絶対値を合計して合計の結果を平均して、赤外光信号の平均オフセットを取得する。
【0060】
レーザ加工の応用において、赤外放射信号は、波長が1250nm~1700nmの範囲内にある赤外放射信号に対応する。可視光放射信号は、波長が400nm~700nmの範囲内にある可視光放射信号に対応する。レーザ加工反射信号は、実際のレーザ加工中の加工レーザ反射信号に対応し、例えば、加工レーザは915nm、1064nm、1080nmなどの波長を有する。加工レーザ光の波長は実際に利用されるレーザの波長に関連する。いくつかの利用環境では、赤外放射信号の波長の適切な範囲を1250nm~1700nmの範囲外に広げることができる。いくつかの利用環境では、可視光放射信号の波長の適切な範囲を400nm~700nmの範囲外に広げることができる。
【0061】
以下、本出願の技術案の具体的な実施形態について具体的に説明する。
【0062】
図2を参照すると、
図2は、本出願の実施形態に係る溶接における溶け込み不良の検出方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、当該方法は以下の内容を含む。
【0063】
S201:IPCは、目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号を取得する。
【0064】
第1時間帯の開始時刻は、完全な目標溶接部が形成された時刻より早くない。目標溶接部は、薄板材料をレーザ加工することによって形成される。
【0065】
なお、本出願における完全な目標溶接部は、目標溶接部に溶け込み不良がないことを意味するのではなく、1回の加工後に形成される溶接部を意味する。
【0066】
図3aに示すように、時刻t1は溶接欠陥検出(Welding Defect Detection、WDD)システムが動作し始める時刻であり、t2はWDDシステムが動作を停止する時刻であり、t3はレーザがレーザ光を放出し始める時刻であり、t4はレーザがレーザ光の放出を停止する時刻である。目標溶接部は、t3~t4の時間帯にレーザが加工されるワークピース(例えば、上部板材10と下部板材11)に対して動作することで形成されたものである。時刻t5は、目標溶接部によって放射される赤外光の光強度(light intensity)が光強度閾値より小さくなり始める時刻であり、当該光強度閾値は0であってもよい。上記完全な目標溶接部が形成された時刻は、時刻t4である。選択的に、第1時間帯は時間帯t4~t5に含まれる。
【0067】
レーザ加工は連続的なプロセスであることを理解すべきである。レーザによるレーザ光の放出は非連続的であり、ある時間帯にレーザはレーザ光を放出し、次の時間帯にレーザはレーザ光を放出しない。レーザによるレーザ光の放出とレーザ光の非放出は、レーザのレーザ光放出信号によって制御される。
図3bに示すように、溶接部1、溶接部2、溶接部3、溶接部4は、レーザが薄板を4回加工することで生成される。時刻T1から時刻T2までの時間帯はレーザがレーザ光を放出する時間帯であり、この時間帯に溶接部1が生成され、完全な溶接部1が形成された時刻は時刻T2である。時刻T3から時刻T4までの時間帯はレーザがレーザ光を放出する時間帯であり、この時間帯に溶接部2が生成され、完全な溶接部2が形成された時刻は時刻T4である。時刻T5から時刻T6までの時間帯はレーザがレーザ光を放出する時間帯であり、この時間帯に溶接部3が生成され、完全な溶接部3が形成された時刻は時刻T6である。時刻T7から時刻T8までの時間帯はレーザがレーザ光を放出する時間帯であり、この時間帯に溶接部4が生成され、完全な溶接部4が形成された時刻は時刻T8である。
【0068】
溶接中に、溶接部によって放射された赤外光信号は、マルチ光センサーモジュールによって受信され且つ電気信号に変換され、次に、IPCに伝送される。選択的に、マルチ光センサーモジュールが当該電気信号をIPCに伝送する前に、即ち、IPCが当該電気信号を利用して溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを判断する前に、マルチ光センサーモジュールは、当該電気信号を処理する。この処理にはフィルタリングなどが含まれるが、これに限定されない。それによって、電気信号の振幅を大きくし、電気信号内のノイズを低減することができる。
【0069】
選択的に、IPCは、受信した電気信号を利用して、溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを判断する前に、受信した電気信号を処理することができる。この処理にはフィルタリングなどが含まれるが、これらに限定されない。次に、IPCは処理された電気信号を利用して、溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを判断する。
【0070】
S202:IPCは、赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。
【0071】
可能な一実施形態では、IPCが赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することは、以下の内容を含む。赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、赤外光信号の平均オフセットを取得する。赤外光信号の平均オフセットに基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えた場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される。
【0072】
赤外光信号の基準ミドルラインは、赤外光信号の基準上部エッジラインと赤外光信号の基準下部エッジラインとのミドルラインである。赤外光信号の基準上部エッジラインと赤外光信号の基準下部エッジラインとのミドルラインは、複数回の履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の溶接部によって溶接後に生成された赤外光信号に対応する電気信号の包絡線である。溶け込み不良を有しない複数の溶接部は、同じ加工工程を利用して同じ加工材料に対してレーザ加工を行うことによって生成される。
【0073】
なお、赤外光信号に対応する電気信号は複数の点からなるため、赤外光信号に対応する基準上部エッジライン及び基準下部エッジラインも複数の点からなると見なされることができる。赤外光信号に対応する基準上部エッジライン内の1番目の点、及び赤外光信号に対応する基準下部エッジライン内の1番目の点は、複数回の履歴レーザ加工中に完全な溶接部が形成された時刻に収集されたものであると見なされることができる。赤外光信号に対応する基準ミドルラインは複数の点からなると見なされることもできる。赤外光信号に対応する基準ミドルライン内の各点に対応する振幅は、赤外光信号に対応する基準上部エッジライン内の、その点に時間的に対応する点に対応する振幅と、赤外光信号に対応する基準下部エッジライン内の、その点に時間的に対応する点に対応する振幅との平均値である。
【0074】
可能な一実施形態において、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第1点は複数の第2点に時間的に対応する。IPCが赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、赤外光信号の平均オフセットを取得することは、以下の内容を含む。IPCは、複数の第1点の各々によって表される振幅と、各第1点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分の絶対値を計算することで、複数の差分の絶対値を取得する。IPCは、取得された複数の差分の絶対値を合計して合計の結果を平均して、赤外光信号の平均オフセットを取得する。
【0075】
一例では、
図4aに示すように、赤外光信号に対応する電気信号曲線は、a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8という8つの第1点を含み、赤外光信号に対応する基準ミドルラインは、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8という8つの第2点を含むと仮定する。8つの第1点と8つの第2点とは時間的に1つずつ対応する。IPCは、8つの第1点の各々によって表される振幅と、8つの第1点に時間的に対応する8つの第2点の各々によって表される振幅との差分の絶対値をそれぞれ計算して8つの絶対値を取得し、次に、8つの絶対値を合計して合計の結果を平均して、得られた結果を赤外光信号の平均オフセットとする。
【0076】
赤外光信号の平均オフセットを取得した後、IPCは、赤外光信号の平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えているか否かを判定する。赤外光信号の平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えた場合、IPCは目標溶接部に溶け込み不良が存在すると判定する。赤外光信号の平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えていない場合、IPCは目標溶接部に溶け込み不良が存在しないと判定する。
【0077】
別の可能な実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第1点は複数の第2点に時間的に対応する。IPCは、複数の第1点の各々によって表される振幅と、各第1点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分を算出する。IPCは、算出された差分から0より大きい差分を取得し、0より大きい差分を合計して合計の結果を平均して、赤外光信号の上部平均オフセット(upper average offset)を取得する。IPCは、赤外光信号の上部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えているか否かを判定する。赤外光信号の上部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えた場合、IPCは目標溶接部に溶け込み不良が存在すると判定する。赤外光信号の上部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えていない場合、IPCは目標溶接部に溶け込み不良が存在しないと判定する。なお、赤外光信号の上部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えているか否かの判定は、具体的に、赤外光信号の上部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲の上限より大きいか否かの判定を意味する。赤外光信号の上部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲の上限より大きい場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると判定される。
【0078】
溶け込み不良を有する溶接部によって溶接後に放射される熱量は、溶け込み不良を有しない溶接部によって溶接後に放射される熱量より大きいため、上記0より大きい差分は、溶接後に溶接部によって放射される熱量をよりよく表現することができる。従って、0より大きい差分に基づいて、溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを判定する場合、より精確な結果を得ることができる。
【0079】
別の可能な実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第1点は複数の第2点に時間的に対応する。IPCは、複数の第1点の各々によって表される振幅と、各第1点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分を算出する。IPCは、算出された差分から0より小さい差分を取得し、0より小さい差分を合計して合計の結果を平均して、赤外光信号の下部平均オフセット(lower average offset)を取得する。IPCは、赤外光信号の下部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えているか否かを判定する。赤外光信号の下部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えた場合、IPCは目標溶接部に溶け込み不良が存在すると判定する。赤外光信号の下部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えていない場合、IPCは目標溶接部に溶け込み不良が存在しないと判定する。なお、赤外光信号の下部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えているか否かの判定は、具体的に、赤外光信号の下部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲の下限より小さいか否かの判定を意味する。赤外光信号の下部平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲の下限より小さい場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると判定される。
【0080】
選択可能な一実施形態では、予め設定されたオフセット範囲は[-μ-4σ,μ+4σ]である。μは、履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの平均値であり、σは、履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの標準偏差(standard deviation)である。第2時間帯の開始時刻は、溶け込み不良を有しない完全な溶接部が形成された時刻より早くない。
【0081】
なお、履歴レーザ加工中に完全な溶接部が形成された時刻は、一回の加工中にレーザが動作を停止する時刻である。第2時間帯の開始時刻は、レーザが動作を停止する時刻より早くない。換言すれば、IPCは、履歴レーザ加工中に形成された、溶け込み不良を有しない複数の溶接部によって溶接後に放射される赤外光信号に対応する電気信号を取得し、溶け込み不良を有しない複数の溶接部によって溶接後に放射される赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの平均値μと標準偏差σを算出する。
【0082】
選択的に、第1時間帯の開始時刻と完全な目標溶接部が形成された時刻との差分は、第2時間帯の開始時刻と履歴レーザ加工中に完全な溶接部が形成された時刻との差分以上である。
【0083】
なお、第1時間帯の開始時刻と完全な目標溶接部が形成された時刻との差分を、第2時間帯の開始時刻と履歴レーザ加工中に完全な溶接部が形成された時刻との差分より大きく設定する理由は以下の通りである。完全な溶接部が形成された後、溶接部によって放射される熱量が徐々に減少する。完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有しない2つの溶接部について、同じ時刻に、溶け込み不良を有しない1つの溶接部によって放射される熱量と溶け込み不良を有しないもう1つの溶接部によって放射される熱量とが同じであり、又は、両者の差分が小さい。溶け込み不良を有する1つの溶接部と溶け込み不良を有しない1つの溶接部について、同じ時刻に、溶け込み不良を有する溶接部によって放射される熱量は、溶け込み不良を有しない溶接部によって放射される熱量より高い。さらに、以下の状況もある。完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって第3時刻に放射される熱量は、溶け込み不良を有しない溶接部によって第4時刻に放射される熱量より高く、第3時刻は第4時刻より遅い。換言すれば、1つの溶接部Aについて、溶接部Aによって第3時刻に放射される熱量は、溶け込み不良を有しない溶接部によって第4時刻に放射される熱量より高い場合、溶接部Aに溶け込み不良が存在することが表される。
【0084】
従って、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを検出する際に、目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号を取得し、第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号と、履歴レーザ加工中に形成された、溶け込み不良を有しない複数の溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均及び分散(expectation and variance)とを比較することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。それによって、溶け込み不良の検出精度を向上させることができる。
【0085】
また、完全な溶接部が形成された後、溶接部によって放射される熱量が徐々に減少するため、取得された目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の振幅は、目標溶接部によって第1時間帯の前に生成された赤外光信号に対応する電気信号の振幅より小さい。従って、IPCにとって、処理する振幅の値が小さくなり、処理速度が比較的速くなるため、溶け込み不良検出の効率を向上させることができる。
【0086】
可能な一実施形態では、IPCは以下の方式に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定することもできる。
【0087】
方式1では、IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上限値を取得する。IPCは、赤外光信号の上限値に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の上限値が上限閾値(upper limit-threshold)より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0088】
赤外光信号の基準上部エッジラインは、履歴溶接中に溶け込み不良を有しない完全な溶接部が形成された後に生成された赤外光信号に対応する電気信号に基づいて得られた包絡線の上部エッジラインである。
【0089】
一例において、以下のように赤外光信号の上限値を取得する。
【0090】
赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、又は、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点からなる。赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、又は、赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点からなる。複数の第1点は複数の第3点に時間的に対応する。IPCは、複数の第1点の各々によって表される振幅と、当該第1点に時間的に対応する第3点によって表される振幅との差分を計算する。このように、IPCは、複数の差分を取得し、複数の差分のうちの最大値を赤外光信号の上限値として確定する。
【0091】
一例において、以下のように上限閾値を取得する。
【0092】
赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、又は、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点からなる。複数の第2点は複数の第3点に時間的に対応する。IPCは、複数の第3点の各々によって表される振幅と、当該第3点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分を計算する。このように、IPCは、複数の差分を取得し、複数の差分のうちの最大値を赤外光信号の上限閾値として確定する。
【0093】
完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光のエネルギーは、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高い。それに応じて、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光信号の上限値は、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光信号の上限値より大きい。従って、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号の上限値と上限閾値とを比較して、目標溶接部によって生成された赤外光のエネルギーが、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高いか否かを確定することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。
【0094】
方式2では、IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上部局所面積(upper local-area)を取得する。赤外光信号の上部局所面積は、赤外光信号に対応する電気信号曲線内の、振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きい部分と、赤外光信号の基準上部エッジラインとの間の領域の面積である。IPCは、赤外光信号の上部局所面積に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の上部局所面積が上部局所面積閾値より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0095】
一例において、以下のように赤外光信号の上部局所面積を取得する。
【0096】
第1時刻及び第2時刻を確定する。第1時刻は第1時間帯の開始時刻であり、第2時刻は、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとが交差する時刻である。赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、又は、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点からなる。赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、又は、赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点からなる。複数の第1点は複数の第3点に時間的に対応する。第2時刻は、第1点によって表される振幅と、当該第1点に時間的に対応する第3点によって表される振幅とが同じである時刻である。IPCは、第1時刻と第2時刻との間の、赤外光信号に対応する電気信号曲線下の第1の積分面積(first integral area)を計算し、第1時刻と第2時刻との間の、赤外光信号の基準上部エッジライン下の第2の積分面積を計算する。
図4bに示すように、IPCは、第1の積分面積と第2の積分面積との差分を、赤外光信号の上部局所面積として確定する。
【0097】
一例において、以下のように上部局所面積閾値を取得する。
【0098】
赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、又は、赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点からなる。赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、又は、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点からなる。IPCは、赤外光信号の基準上部エッジラインから開始第3点及び終了第3点を確定する。開始第3点は開始第2点に時間的に対応する第3点である。終了第3点は、表される振幅が時間的に対応する第2点によって表される振幅と同じである第3点である。開始第2点は赤外光信号の基準ミドルライン内の1番目の第2点である。IPCは、赤外光信号の基準上部エッジライン内の開始第3点と終了第3点との間の部分下の第3の積分面積を計算し、赤外光信号の基準ミドルライン内の、開始第3点に時間的に対応する第2点と終了第3点に時間的に対応する第2点との間の部分下の第4の積分面積を計算する。IPCは、第3の積分面積と第4の積分面積との差分の半分を上部局所面積閾値として確定する。
【0099】
完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光のエネルギーは、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高い。それに応じて、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光信号の上部局所面積は、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光信号の上部局所面積より大きい。従って、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号の上部局所面積と上部局所面積閾値とを比較して、目標溶接部によって生成された赤外光のエネルギーが、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高いか否かを確定することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。
【0100】
方式3では、IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、赤外光信号のスロープ(slope)を確定する。赤外光信号のスロープに基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号のスロープがスロープ閾値より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0101】
さらに、赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号のスロープがスロープ閾値より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0102】
一例において、以下のように赤外光信号のスロープを取得する。
【0103】
IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線から開始第1点と終了第1点を確定する。開始第1点によって表される振幅は第1時間帯の開始時刻に収集される。終了第1点は、表される振幅が0である第1点である。
図4cに示すように、IPCは、開始第1点の収集時刻と終了第1点の収集時刻を確定する。IPCは、開始第1点によって表される振幅と終了第1点によって表される振幅との間の第1差分を計算し、開始第1点の収集時刻と終了第1点の収集時刻との間の第2差分を計算し、第2差分に対する第1差分の比を計算する。その比は赤外光信号のスロープである。
【0104】
なお、振幅が0であることは、目標溶接部の温度と作業環境温度との差分が、予め設定された温度値より小さいことを意味する。例えば、振幅が0であることは、目標溶接部の温度と作業環境温度とが同じであることを意味する。
【0105】
一例において、以下のようにスロープ閾値を取得する。
【0106】
IPCは、赤外光信号の基準ミドルラインから開始第2点と終了第2点を確定する。開始第2点は、赤外光信号の基準ミドルライン内の、開始第1点に時間的に対応する第2点である。終了第2点は、赤外光信号の基準ミドルライン内の、終了第1点に時間的に対応する第2点である。IPCは、開始第2点によって表される振幅と終了第2点によって表される振幅との間の第3差分を計算し、IPCは、第2差分に対する第3差分の比を計算し、その比の絶対値の2倍をスロープ閾値として確定する。
【0107】
完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光のエネルギーは、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高い。それに応じて、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光信号のスロープの絶対値は、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光信号のスロープの絶対値より大きい。従って、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号のスロープの絶対値とスロープ閾値とを比較して、目標溶接部によって生成された赤外光のエネルギーが、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高いか否かを確定することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。
【0108】
方式4では、IPCは、赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて赤外光信号の振幅の平均値を算出し、赤外光信号の振幅の平均値に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。赤外光信号の振幅の平均値が平均値閾値より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0109】
さらに、赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ、赤外光信号の振幅の平均値が平均値閾値より大きい場合、IPCは、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0110】
一例において、以下のように平均値閾値を確定する。
【0111】
IPCは、赤外光信号の基準ミドルラインに含まれる複数の第2点によって表される振幅の平均値を計算し、当該平均値の2倍を平均値閾値として確定する。
【0112】
完全な溶接部が形成された後、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光のエネルギーは、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高い。それに応じて、溶け込み不良を有する溶接部によって生成された赤外光信号の振幅の平均値は、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光信号の振幅の平均値より大きい。従って、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号の振幅の平均値と平均値閾値とを比較して、目標溶接部によって生成された赤外光のエネルギーが、溶け込み不良を有しない溶接部によって生成された赤外光のエネルギーより高いか否かを確定することにより、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定する。
【0113】
可能な一実施形態では、本実施形態の方法は以下の内容をさらに含む。IPCは、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号に対応する電気信号曲線の図を表示し、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かの結果を表示する。
【0114】
図4dは、本出願の実施形態に係る検出結果を示す概略図である。
図4dに示すように、IPCは、溶接後に目標溶接部によって生成された赤外光信号に対応する電気信号及び当該赤外光信号の基準ミドルラインを表示し、また、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを示す。
【0115】
溶接後に目標溶接部によって生成された赤外光信号に対応する電気信号曲線の図、及び目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かの結果を表示することにより、作業員はレーザ加工の結果、即ち、レーザ加工後の溶接部に溶け込み不良が存在するか否かをリアルタイムに観察することができる。
【0116】
S203:目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定した場合、IPCは、目標溶接部の位置情報を取得する。
【0117】
目標溶接部の位置情報は、目標溶接部のシリアル番号によって表されることができる。なお、レーザ加工は連続的なプロセスであり、得られる溶接部も連続的であるため、溶接部の位置は溶接部のシリアル番号によって表されてもよい。
【0118】
IPCは、目標溶接部の位置情報を取得した後、目標溶接部の位置情報をレーザ溶接システムに伝送する。それによって、レーザ溶接システムは目標溶接部の位置情報に基づいて目標溶接部を再加工して、溶け込み不良を除去する。
【0119】
可能な一実施形態において、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する際に、IPCは、加工中に目標溶接部が生成された際にレーザ加工ヘッドと加工材料(即ち、上記上部板材10)との間の距離をレーザ溶接システムから取得する。その距離は加工距離と呼ばれ得る。IPCは、加工距離と予め設定された距離とを比較する。加工距離が予め設定された距離と異なる場合、加工距離の変化によりデフォーカス量が変化するため、目標溶接部に溶け込み不良が存在することを示し、従って溶け込み不良の発生を招く。IPCは、レーザ溶接システムに指示情報を送信し、レーザ溶接システムにレーザ加工ヘッドと板材との間の距離を調整するよう指示する。調整後の距離は予め設定された距離と同じである。予め設定された距離は、加工中に生成される溶接部に溶け込み不良が存在しないように手動で設定されたレーザ加工ヘッドと加工材料との間の距離である。
【0120】
選択的に、加工距離が予め設定された距離と同じである場合、溶け込み不良が発生する原因がデフォーカス量ではないことを示す。IPCは、加工中のレーザ加工ヘッド内のレンズの温度を取得する。なお、レンズが汚れている場合、レンズの温度が上昇するため、レンズの温度が、汚れていないレンズの温度より高いか否かを確定することで、レンズが汚れているか否かを確定する。レンズの温度が汚れていないレンズの温度より高いと確定した場合、IPCは、レーザ加工ヘッド内のレンズが汚れていることを作業員に注意するように、作業員に警告情報を送信する。
【0121】
選択的に、加工距離が予め設定された距離と同じである場合、溶け込み不良が発生する原因がデフォーカス量ではないことを示す。IPCはレーザ溶接システムに指示情報を送信し、レーザ溶接システムにレーザのパワーを上げるよう指示する。
【0122】
上記調整が完了した後、IPCは目標溶接部の位置情報をレーザ溶接システムに送信する。それによって、レーザ溶接システムは目標溶接部の位置情報に基づいて、目標溶接部を再加工して、溶け込み不良を除去する。
【0123】
上記から分かるように、本出願の解決案において、レーザ加工中、マルチ光センサーモジュールは、溶接後に溶接部によって生成された赤外光信号を取得する。その後、赤外光信号に基づいて、溶接部に溶け込み不良が存在するか否かが判定される。既存技術と比べて、本出願の解決案は非接触且つリアルタイムの特性を有し、本出願の解決案を利用して工業生産中に全数検査が行われることができる。また、本出願の解決案を利用して、溶け込み不良という欠陥を検出することができる。目標溶接部の位置情報を取得した後、目標溶接部が存在する位置情報をレーザ溶接システムに伝送する。それによって、レーザ溶接システムは目標溶接部を再加工して、自動的に補修溶接を行うことができる。
【0124】
図5を参照すると、
図5は、本出願の実施形態に係る産業用パーソナルコンピュータ(IPC)の構造を示す概略図である。
図5に示すように、IPC500は、取得ユニット501及び確定ユニット502を備える。取得ユニット501は、目標溶接部によって第1時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号を取得するように構成されており、第1時間帯の開始時刻は、完全な目標溶接部が形成された時刻より早くなく、目標溶接部は、薄板材料をレーザ加工することによって形成される。確定ユニット502は、赤外光信号に対応する電気信号に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定するように構成されている。
【0125】
可能な一実施形態では、確定ユニット502は、赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定するように構成されている。
【0126】
可能な一実施形態では、確定ユニット502は、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、赤外光信号の平均オフセットを取得し、赤外光信号の平均オフセットに基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定するように構成されている。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の平均オフセットが予め設定されたオフセット範囲を超えた場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される。
【0127】
可能な一実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第1点は複数の第2点に時間的に対応する。赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準ミドルラインとに基づいて、赤外光信号の平均オフセットを取得することについて、確定ユニット502は、複数の第1点の各々によって表される振幅と、各第1点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分の絶対値を計算することで、複数の差分の絶対値を取得し、取得された複数の差分の絶対値を合計して合計の結果を平均して、赤外光信号の平均オフセットを取得するように構成されている。
【0128】
可能な一実施形態では、予め設定されたオフセット範囲は [-μ-4σ,μ+4σ]であり、μは、履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの平均値であり、σは、履歴レーザ加工中に得られた、溶け込み不良を有しない複数の完全な溶接部によって第2時間帯に生成された赤外光信号に対応する電気信号の平均オフセットの標準偏差である。第2時間帯の開始時刻は、溶け込み不良を有しない完全な溶接部が形成された時刻より早くない。
【0129】
可能な一実施形態では、確定ユニット502は、具体的に、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上限値を取得し、赤外光信号の上限値に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定するように構成されている。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の上限値が上限閾値より大きい場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される。
【0130】
可能な一実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含み、基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、複数の第1点は複数の第3点に時間的に対応する。赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上限値を取得することについて、確定ユニット502は、具体的に、複数の第1点の各々によって表される振幅と、その第1点に時間的に対応する第3点によって表される振幅との差分を計算することで、複数の差分を取得し、複数の差分のうちの最大値を赤外光信号の上限値として確定するように構成されている。
【0131】
可能な一実施形態では、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、複数の第2点は複数の第3点に時間的に対応する。確定ユニット502はさらに、複数の第3点の各々によって表される振幅と、その第3点に時間的に対応する第2点によって表される振幅との差分を計算することで、複数の差分を取得し、複数の差分のうちの最大値を上限閾値として確定するように構成されている。
【0132】
可能な一実施形態では、確定ユニット502は、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上部局所面積を取得するように構成されており、赤外光信号の上部局所面積は、赤外光信号に対応する電気信号曲線内の、振幅が基準上部エッジラインの振幅より大きい部分と、基準上部エッジラインとの間の領域の面積である。確定ユニット502は、赤外光信号の上部局所面積に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定するように構成されている。赤外光信号に対応する電気信号曲線の振幅が赤外光信号の基準上部エッジラインの振幅より大きく、且つ赤外光信号の上部局所面積が上部局所面積閾値より大きい場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される。
【0133】
可能な一実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線と赤外光信号の基準上部エッジラインとに基づいて、赤外光信号の上部局所面積を取得することについて、
確定ユニット502は、第1時刻及び第2時刻を確定するように構成されており、第1時刻は第1時間帯の開始時刻であり、第2時刻は、赤外光信号に対応する電気信号曲線と基準上部エッジラインとが交差する時刻である。確定ユニット502は、第1時刻と第2時刻との間の、赤外光信号に対応する電気信号曲線下の第1の積分面積を計算し、第1時刻と第2時刻との間の、基準上部エッジライン下の第2の積分面積を計算し、第1の積分面積と第2の積分面積との差分を赤外光信号の上部局所面積として確定するように構成されている。
【0134】
可能な一実施形態では、赤外光信号の基準上部エッジラインは複数の第3点を含み、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第3点は複数の第2点に時間的に対応する。確定ユニット502は、さらに、赤外光信号の基準上部エッジラインから開始第3点及び終了第3点を確定するように構成されており、開始第3点は開始第2点に時間的に対応する第3点であり、終了第3点は、表される振幅が時間的に対応する第2点によって表される振幅と同じである第3点であり、開始第2点は赤外光信号の基準ミドルライン内の1番目の第2点である。確定ユニット502は、さらに、赤外光信号の基準上部エッジライン内の開始第3点と終了第3点との間の部分下の第3の積分面積を計算し、赤外光信号の基準ミドルライン内の、開始第3点に時間的に対応する第2点と終了第3点に時間的に対応する第2点との間の部分下の第4の積分面積を計算し、第3の積分面積と第4の積分面積との差分の半分を上部局所面積閾値として確定するように構成されている。
【0135】
可能な一実施形態では、確定ユニット502は、赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、赤外光信号のスロープを確定し、赤外光信号のスロープに基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定するように構成されている。赤外光信号のスロープがスロープ閾値より大きい場合、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定される。
【0136】
選択的に、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含む。赤外光信号に対応する電気信号曲線に基づいて、赤外光信号のスロープを確定することについて、確定ユニット502は、複数の第1点から開始第1点と終了第1点を確定するように構成されており、開始第1点によって表される振幅は第1時間帯の開始時刻に収集され、終了第1点は、表される振幅が0である第1点である。確定ユニット502は、開始第1点の収集時刻と終了第1点の収集時刻を確定し、開始第1点によって表される振幅と終了第1点によって表される振幅との間の第1差分を計算し、開始第1点の収集時刻と終了第1点の収集時刻との間の第2差分を計算し、第2差分に対する第1差分の比を計算し、その比を赤外光信号のスロープとして確定するように構成されている。
【0137】
選択的に、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含み、複数の第1点は複数の第2点に時間的に対応する。確定ユニット502はさらに、複数の第2点から開始第2点と終了第2点を確定するように構成されており、開始第2点は、赤外光信号の基準ミドルライン内の、開始第1点に時間的に対応する第2点であり、終了第2点は、赤外光信号の基準ミドルライン内の、終了第1点に時間的に対応する第2点である。確定ユニット502はさらに、開始第2点によって表される振幅と終了第2点によって表される振幅との間の第3差分を計算し、第2差分に対する第3差分の比を計算し、その比の絶対値の2倍をスロープ閾値として確定するように構成されている。
【0138】
第一態様と組み合わせて、可能な一実施形態では、赤外光信号に対応する電気信号曲線は複数の第1点を含む。確定ユニット502は、複数の第1点に基づいて赤外光信号の振幅の平均値を算出するように構成されており、赤外光信号の振幅の平均値は、複数の第1点によって表される振幅の平均値である。確定ユニット502は、赤外光信号の振幅の平均値に基づいて、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かを確定するように構成されている。赤外光信号の振幅の平均値が平均値閾値より大きい場合、確定ユニット502は、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定する。
【0139】
選択的に、赤外光信号の基準ミドルラインは複数の第2点を含む。平均値閾値は、複数の第2点によって表される振幅の平均値の2倍である。
【0140】
可能な一実施形態では、取得ユニット501は、目標溶接部に溶け込み不良が存在すると確定した場合、目標溶接部の位置情報を取得するように構成されている。
【0141】
IPC500はトランシーバーユニット503をさらに備える。トランシーバーユニット503は、目標溶接部の位置情報をレーザ溶接システムに伝送し、レーザ溶接システムに、目標溶接部の位置情報に基づいて目標溶接部を再加工させるように構成されている。
【0142】
可能な一実施形態では、IPC500は表示ユニット504をさらに備える。表示ユニット504は、完全な目標溶接部が形成された後、目標溶接部によって生成された赤外光信号に対応する電気信号曲線の図を表示し、目標溶接部に溶け込み不良が存在するか否かの結果を表示するように構成されている。
【0143】
なお、上記各ユニット(取得ユニット501、確定ユニット502、トランシーバーユニット503、及び表示ユニット504)は、上記方法の関連ステップを実行するために用いられる。例えば、取得ユニット501はS201の関連内容を実行するために用いられ、確定ユニット502はS202の関連内容を実行するために用いられ、トランシーバーユニット503及び表示ユニット504はS203の関連内容を実行するために用いられる。IPC500内の各ユニットもしくはモジュールは、それぞれもしくは全部で1つもしくはいくつかの他のユニット又はモジュールに統合されてもよく、又は、そのうちのある(いくつかの)ユニットもしくはモジュールはさらに機能上でより小さい複数のユニットもしくはモジュールに分割されてもよい。それによって、本発明の実施形態の技術効果の実現に影響を与えず同様の操作が実現されることができる。上記ユニットもしくはモジュールは、ロジック機能に基づいて分割される。実際の応用では、1つのユニット(もしくはモジュール)の機能は、複数のユニット(もしくはモジュール)によって実現されることができ、又は、複数のユニット(もしくはモジュール)の機能は、1つのユニット(もしくはモジュール)によって実現されることができる。
【0144】
上記方法実施形態及び装置実施形態の説明に基づいて、
図6を参照すると、
図6は、本出願の実施形態に係る別のIPC600の構造を示す概略図である。
図6に示すIPC600(IPC600は具体的にコンピュータ装置であってもよい)は、メモリ601、プロセッサ602、通信インターフェース603、及びバス604を備える。メモリ601、プロセッサ602、及び通信インターフェース603は、バス604を介して互いに通信可能に接続されている。
【0145】
メモリ601は、読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)、静的記憶装置(static storage device)、動的記憶装置(dynamic storage device)、又は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)であることができる。
【0146】
メモリ601は、プログラムを記憶することができる。メモリ601に記憶されたプログラムがプロセッサ602によって実行されると、プロセッサ602及び通信インターフェース603は、本出願の実施形態の溶接における溶け込み不良の検出方法の様々なステップを実行するために用いられる。
【0147】
プロセッサ602としては、汎用の中央処理装置(central processing unit、CPU)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、グラフィックスプロセッシングユニット(graphics processing unit、GPU)、又は、1つもしくは複数の集積回路が用いられることができる。プロセッサ602は、関連プログラムを実行するために用いられ、本出願の実施形態に係るIPC600内のユニットによって実行される機能を実現し、又は本出願の方法実施形態の溶接における溶け込み不良の検出方法を実行するようにする。
【0148】
プロセッサ602は、信号処理能力を有する集積回路チップであることができる。実施プロセスにおいて、本出願の溶接における溶け込み不良の検出方法の各ステップは、プロセッサ602内のハードウェア形態の集積論理回路(integrated logic circuit)又はソフトウェア形態の命令によって完成されることができる。上記プロセッサ602は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、ASIC、フィールドプログラム可能なゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)又は他のプログラム可能なロジックデバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタロジックデバイス、ディスクリートハードウェアコンポーネントであることができる。プロセッサ602は、本出願の実施形態に開示された様々な方法、ステップ及び論理ブロック図を実現又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサ又は任意の通常のプロセッサなどであることができる。本出願の実施形態に開示された方法のステップは、直接にハードウェア復号化プロセッサによって実行及び完成されることができ、又は復号化プロセッサにおけるハードウェア及びソフトウェアモジュールの組み合わせによって実行及び完成されることができる。ソフトウェアモジュールは、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ、プログラム可能な読み取り専用メモリ、又は電気的に消去可能なプログラム可能なメモリ、レジスタなど本技術分野におけるマチュアな記憶媒体に位置することができる。当該記憶媒体はメモリ601に位置する。プロセッサ602は、メモリ601における情報を読み取り、そのハードウェアと合わせて本出願の実施形態に係るIPC500内のユニットによって実行される機能を実現し、又は本出願の方法実施形態の溶接における溶け込み不良の検出方法を実行する。
【0149】
通信インターフェース603としては、例えば、トランシーバーなどのようなトランシーバー装置が使用されるが、これに限定されない。通信インターフェース603は、IPC600と他の装置又は通信ネットワークとの間の通信を可能にする。例えば、通信インターフェース603を介してデータを取得することができる。
【0150】
バス604は、IPC600の各コンポーネント(例えば、メモリ601、プロセッサ602、通信インターフェース603)の間で情報を転送するために用いられる接続経路を含むことができる。
【0151】
なお、
図6に示すIPC600は、メモリ、プロセッサ、及び通信インターフェースのみを図示しているが、具体的な実施形態において、当業者であれば、IPC600が正常な動作に必要な他のコンポーネントも備えることを理解すべきである。同時に、当業者であれば、具体的なニーズに応じて、IPC600が、他の付加的な機能を実現するための他のハードウェアコンポーネントも備え得ることを理解すべきである。さらに、当業者であれば、IPC600が、本出願の実施形態を実施するために必要なコンポーネントのみを備えることもでき、
図6に示すコンポーネントのすべてを備える必要はないことを理解すべきである。
【0152】
本出願の実施形態は、チップをさらに提供する。チップは、プロセッサとデータインタフェースを含む。プロセッサは、データインタフェースを介して、メモリに記憶された命令を読み出して、溶接における溶け込み不良の検出方法を実行する。
【0153】
選択的に、一実施形態として、チップはメモリをさらに含み得る。メモリに命令が記憶されている。プロセッサは、メモリに記憶された命令を実行するために用いられる。命令が実行された場合、プロセッサは、溶接における溶け込み不良の検出方法を実行するために用いられる。
【0154】
本出願の実施形態は、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供する。当該コンピュータ可読記憶媒体に命令が記憶されており、命令がコンピュータ又はプロセッサで実行される場合、コンピュータ又はプロセッサに上記いずれかの方法の1つ又は複数のステップを実行させる。
【0155】
本出願の実施形態は、命令を含むコンピュータプログラム製品をさらに提供する。当該コンピュータプログラム製品は、コンピュータ又はプロセッサで実行される場合、コンピュータ又はプロセッサに上記いずれかの方法の1つ又は複数のステップを実行させる。
【0156】
本明細書の開示に記載されている様々な例示的な論理ブロック図、モジュール、及びアルゴリズムステップと合わせて説明される機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組合せによって実現されることができる、ということは当業者に認識されることができる。ソフトウェアによって実現される場合に、様々な例示的な論理ブロック図、モジュール、及びステップで説明される機能は、1つもしくは複数の命令又はコードとして、コンピュータ可読媒体に記憶され、又は、コンピュータ可読媒体を介して伝送されることができ、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行され得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読記憶媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、有形媒体に対応し、例として、データ記憶媒体、又は、あるところから別のところへのコンピュータプログラムの伝送を容易にする任意の媒体(例えば、通信プロトコルに基づいて)を含む通信媒体が挙げられる。このように、コンピュータ可読媒体は大体、(1)非一時的な有形のピュータ可読記憶媒体、又は(2)信号もしくはキャリアなどの通信媒体に対応し得る。データ記憶媒体は、本出願に記載の技術を実施するための命令、コード、及び/又はデータ構造を検索するために、1つもしくは複数のコンピュータ又は1つもしくは複数のプロセッサによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であってもよい。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体を含むことができる。
【0157】
限定的ではない例として、このようなコンピュータ可読記憶媒体は、RAM、ROM、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(electrically erasable programmable ROM、EEPROM)、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(compact disk ROM、CD-ROM)又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、フラッシュメモリ、又は、命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶し且つコンピュータによってアクセス可能な他の任意の媒体を含むことができる。また、いかなる接続をコンピュータ可読媒体と適切に呼ぶことができる。例として、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア(twisted pair)、デジタル加入者線(digital subscriber line、DSL)、又は、赤外線、ラジオ、マイクロ波などの無線技術を利用して、ウェブサイト、サーバ又は他のリモートソースから命令を伝送する場合、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、DSL、又は、赤外線、ラジオ、マイクロ波などの無線技術は媒体の定義に含まれる。しかしながら、コンピュータ可読記憶媒体及びデータ記憶媒体は、接続、キャリア、信号、又は他の一時的な媒体を含まず、実際に非一時的な有形記憶媒体を対象とする。本明細書で使用されている磁気ディスク及び光ディスクは、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(digital versatile disc、DVD)、及びブルーレイディスクを含み、磁気ディスクは通常、磁気的にデータを再生し、光ディスクはレーザを使用して光学的にデータを再生する。上記の組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0158】
命令は、例えば、1つ又は複数のDSP、汎用マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、又は他の等価集積回路(equivalent integrated circuit)又はディスクリートロジック回路などの1つ又は複数のプロセッサによって実行されることができる。従って、本明細書で使用される「プロセッサ」という用語は、上記構造のいずれか1つ、又は本明細書で説明される技術を実施するのに適した任意の他の構造を指すことができる。さらに、いくつかの態様において、本明細書に記載されている様々な例示的な論理ブロック図、モジュール、及びステップにて説明される機能は、エンコーディング及びデコーディングに用いられるように構成された専用のハードウェア及び/又はソフトウェアモジュール内に提供されることができ、又は集積エンコーダー・デコーダーに組み込まれることもできる。また、上記技術は、1つもしくは複数の回路又は論理素子に完全に実現されることができる。
【0159】
本出願の技術は、無線携帯電話、集積回路(IC)、又は1セットのIC(例えば、チップセット)を含む様々な装置又は機器に実施され得る。本出願では、様々なコンポーネント、モジュール、又はユニットを用いて、開示した技術を実行するように構成されたデバイスの機能を強調する。必ずしも異なるハードウェアユニットによって実現されるとは限らない。実際、上述したように、様々なユニットは、コーデックのハードウェアユニットにおいて適切なソフトウェア及び/又はファームウェアと組み合わせられてもよく、又は、相互運用可能なハードウェアユニット(上述した1つ又は複数のプロセッサを含む)で提供されてもよい。
【0160】
当業者であれば、説明の便宜上及び簡潔さのために、上記システム、装置、及びユニットの具体的な動作プロセスについては、前述の方法実施形態における対応するステップのプロセスの具体的な説明を参照することができ、本明細書では繰り返さないことが明確に理解され得る。
【0161】
なお、本出願の説明では、特に説明がない限り、符号「/」は前後の関連対象が「又は」の関係にあることを示す。例えば、A/BはA又はBを示し、A、Bは単数であってもよく複数であってもよい。また、本出願の説明では、特に説明がない限り、「複数」は2つ以上を意味する。「以下の少なくとも1項(個)」又はその類似表現は、これら項の任意の組み合わせを意味し、単項(個)又は複数項(個)の任意の組み合わせを含む。例えば、a、b、又はcのうちの少なくとも1つ(個)は、a、b、c、aとb、aとc、bとc、aとbとcを示すことができる。a、b、cの各々は単数であってもよく複数であってもよい。また、本出願の実施形態の技術案の明確な説明を容易にするために、本出願の実施形態では、「第1」、「第2」などの用語を利用して、基本的同じ機能及び役割を有する同一又は類似のものを区別する。当業者であれば、「第1」、「第2」などの用語は、数や実行順序を限定するものではなく、「第1」、「第2」などの用語も、必ず異なると限定するとは限らない。また、本出願の実施形態において、「例示的な」又は「例えば」などの用語は、「例として、例証、説明」を意味する。本出願の実施形態において、「例えば」又は「例示的」に説明されるいかなる実施形態又は設計案は他の実施形態又は設計案より優れていると解釈されるべきではない。的確に言えば、「例示的な」又は「例えば」などの用語の使用は、理解を容易にするために、関連概念を具体的な方式で提示することを意図している。
【0162】
本出願に係るいくつかの実施形態において、開示されるシステム、装置、方法は、他の形態により実現され得ると理解されるべきである。例えば、ユニットの分割はロジック機能の分割に過ぎず、実際に実現される場合に、別の分割形態を有してもよい。例えば、複数のユニット又はコンポーネントを組み合わせ、又は別のシステムに集積させ、又はその若干の特徴を無視し、又は実行しなくてもよい。示される又は検討される相互間の結合や直接結合や通信接続は、いくつかのインタフェース、装置、又はユニットによる間接結合や通信接続であってもよく、電気、機械又は他の形態であってもよい。
【0163】
分離コンポーネントとして記載されたユニットは、物理的に分離してもよく、分離しなくてもよい。ユニットとして表示されるコンポーネントは、物理的なユニットであってもよく、物理的なユニットではなくてもよい。即ち、一つの場所に位置してもよく、複数のネットワークユニットに配置されてもよい。実際のニーズに応じて一部又は全部のユニットを選択して本実施形態の技術案の目的を実現することができる。
【0164】
上記実施形態の全部又は一部はソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせによって実現されることができる。ソフトウェアによって実現される場合、上記実施形態の全部又は一部は、コンピュータプログラム製品の形式で実現されることができる。当該コンピュータプログラム製品は、一つ又は複数のコンピュータ命令を含む。コンピュータプログラム命令がコンピュータでロードされて実行されるとき、本出願の実施形態に記載のプロセス又は機能の全部又は一部が生成される。当該コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、コンピュータネットワーク又は他のプログラム可能な装置であることができる。当該コンピュータ命令は、コンピュータ可読記憶媒体に記憶され、又は当該コンピュータ可読記憶媒体を介して伝送されることができる。当該コンピュータ命令は、一つのウェブサイト、コンピュータ、サーバ又はデータセンターから有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバー、DSLなど)又は無線(例えば、赤外線、ラジオ、マイクロ波など)で別のウェブサイト、コンピュータ、サーバ又はデータセンターに伝送されることができる。当該コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータがアクセスできる任意の利用可能な媒体であることができ、又はサーバ、データセンターなどのような一つ又は複数の利用可能な媒体が統合されたデータ記憶装置であることができる。利用可能な媒体は、ROM、RAM、磁気媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ、磁気ディスク)、光学媒体(例えば、DVD)、又は半導体媒体(例えば、ソリッドステートディスク(solid state disk、SSD))などであることができる。
【0165】
上記は、ただ本出願の実施形態の具体的な実施形態であり、本出願の実施形態の保護範囲はそれに限定されない。本出願の実施形態に開示された技術範囲内のいかなる変更又は置換は全て本出願の実施形態の保護範囲内に含まれるべきである。従って、本出願の実施形態の保護範囲は特許請求の保護範囲によって決められるべきである。
【0166】
上述した装置実施形態はただ例示的なものであり、分離コンポーネントとして記載されたユニット及びモジュールは、物理的に分離してもよく、分離しなくてもよい。また、実際のニーズに応じて一部又は全部のユニット及びモジュールを選択して本実施形態の技術案の目的を実現することができる。当業者は創造的な努力なしに理解し実施することができる。
【0167】
上記は本出願の具体的な実施形態に過ぎず、当業者は、本出願の原理から逸脱しない限り、いくつかの改善と潤色を行うこともできる。これらの改善と潤色も本出願の保護範囲に属すべきである。