(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031673
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】太陽光発電装置の劣化抑制構造
(51)【国際特許分類】
H02S 40/00 20140101AFI20250228BHJP
H10K 30/50 20230101ALN20250228BHJP
H10K 30/40 20230101ALN20250228BHJP
【FI】
H02S40/00
H10K30/50
H10K30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141687
(22)【出願日】2024-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2023137293
(32)【優先日】2023-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】別所 毅隆
(72)【発明者】
【氏名】横田 生吹樹
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251XA32
(57)【要約】
【課題】太陽光発電装置の発電部に照射される光の量を少なくできることで、発電電気が消費されないことによる発電部の劣化を抑制可能な太陽光発電装置の劣化抑制構造を提供する。
【解決手段】本発明の劣化抑制構造1は、受光面4から入射した光が発電部5に照射されることで発電を行う太陽光発電装置2と、遮光部材3とを備える。遮光部材3は、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面から入射した光が発電部に照射されることで発電を行う太陽光発電装置と、
前記受光面に接した状態で少なくとも前記受光面を覆うように、前記太陽光発電装置に取り外し可能に取り付けられる遮光部材とを備える太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【請求項2】
前記遮光部材と前記受光面とを接着剤を介して25N/15mm以下の強度で接着することで、前記遮光部材が前記太陽光発電装置に取り外し可能に取り付けられる請求項1に記載の太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【請求項3】
前記遮光部材の空洞に前記太陽光発電装置を挿入することで、前記遮光部材が前記太陽光発電装置に取り外し可能に取り付けられる請求項1に記載の太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【請求項4】
受光面から入射した光が発電部に照射されることで発電を行う太陽光発電装置と、
前記受光面に接した状態で少なくとも前記発電部を覆うように配置される遮光部材とを備える、太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【請求項5】
前記遮光部材と前記受光面とを接着剤を介して25N/15mm以下の強度で接着することで、前記遮光部材が前記太陽光発電装置に取り付けられる請求項4に記載の太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【請求項6】
前記発電部には有機成分が含有される請求項1に記載の太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光面から入射した光が発電部に照射されることで発電を行う太陽光発電装置の劣化抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電装置を保管或いは輸送する際などに、太陽光発電装置の破損防止を主目的として太陽光発電装置を梱包体内に梱包することが行われており、特許文献1にはこの種の梱包体が開示されている。特許文献1の梱包体は、筐体部材と、仕切り部材と、筐蓋部材とを備える。筐体部材は、上方に向けて開口した箱状を呈する筐体本体部と、筐体本体部の底面部に設けられる第1緩衝部材とを備える。仕切り部材は、下方に向けて開口した箱状を呈する仕切り本体部と、仕切り本体部の仕切り板部(上面部)に設けられる第2緩衝部材とを備える。蓋部材は、下方に向けて開口した箱状を呈する。太陽光発電装置を梱包する際には、下段の太陽電池装置を第一緩衝部材上に載置することと、下段の太陽電池装置を仕切り部材で覆った状態にすることと、上段の太陽電池装置を第2緩衝部材上に載置することと、上段の太陽電池装置を蓋部材で覆った状態にすることとが、順次行われる。下段及び上段の太陽電池装置は、いずれも受光面が上方を向くように載置される。下段の太陽光発電装置の受光面と仕切り部材との間、及び上段の太陽光発電装置の受光面と蓋部材との間には、それぞれスペースが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1のように、太陽光発電装置を覆う部材と太陽光発電装置の受光面との間にスペースが存在する場合には、スペースを通過した光が太陽光発電装置の発電部に照射されることで、発電部が発電する虞がある。そしてこの場合には、発電電気が消費されないことで、発電部に負荷がかかり、太陽光発電装置の性能が低下する虞がある。特に、ペロブスカイト化合物を含む発電部のように、発電部に有機成分が多く含まれる場合には、発電部の耐久性が低いため、太陽光発電装置の性能が著しく低下する虞がある。また複数の発電部が直列に接続されたモノシリック構造体が太陽光発電装置に設けられる場合には、一部の発電部のみに光が照射された場合に、一部の発電部が劣化して、モノシリック構造体の全体で急激な電圧降下を生じる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、太陽光発電装置の発電部に照射される光の量を少なくできることで、発電電気が消費されないことによる発電部の劣化を抑制可能な太陽光発電装置の劣化抑制構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0007】
項1.受光面から入射した光が発電部に照射されることで発電を行う太陽光発電装置と、
前記受光面に接した状態で前記受光面を覆うように、前記太陽光発電装置に取り外し可能に取り付けられる遮光部材とを備える太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【0008】
項2.前記遮光部材と前記受光面とを接着剤を介して25N/15mm以下の強度で接着することで、前記遮光部材が前記太陽光発電装置に取り外し可能に取り付けられる項1に記載の太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【0009】
項3.前記遮光部材の空洞に前記太陽光発電装置を挿入することで、前記遮光部材が前記太陽光発電装置に取り外し可能に取り付けられる項1に記載の太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【0010】
項4.受光面から入射した光が発電部に照射されることで発電を行う太陽光発電装置と、
前記受光面に接した状態で少なくとも前記発電部を覆うように配置される遮光部材とを備える、太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【0011】
項5.前記遮光部材と前記受光面とを接着剤を介して25N/15mm以下の強度で接着することで、前記遮光部材が前記太陽光発電装置に取り付けられる項4に記載の太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【0012】
項6.前記発電部には有機成分が含有される項1乃至5のいずれかに記載の太陽光発電装置の劣化抑制構造。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽光発電装置の発電部に照射される光の量を少なくできることで、発電電気が消費されないことによる発電部の劣化を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は第一実施形態に係る太陽光発電装置の劣化抑制構造を示す斜視図であり、(B)は当該劣化抑制構造が備える遮光部材を太陽光発電装置から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図2】(A)は第一実施形態に係る劣化抑制構造の断面図である。(B)は(A)のa部分の拡大図である。(C)は(A)のA-A線に沿って発電部を切断した状態を示す断面図である。
【
図3】第一実施形態に係る劣化抑制構造を複数積み重ねた状態を示す断面図である。
【
図4】(A)は第二実施形態に係る太陽光発電装置の劣化抑制構造を示す斜視図であり、(B)は当該劣化抑制構造が備える遮光部材を太陽光発電装置から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図5】第二実施形態に係る劣化抑制構造を複数積み重ねた状態を示す断面図である。
【
図6】(A)は第二実施形態の変形例に係る太陽光発電装置の劣化抑制構造を示す斜視図であり、(B)は当該変形例に係る劣化抑制構造が備える遮光部材を太陽光発電装置から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】第二実施形態の変形例に係る劣化抑制構造を複数積み重ねた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1(A)は、第一実施形態に係る太陽光発電装置2の劣化抑制構造1を示す斜視図である。
図1(B)は、劣化抑制構造1が備える遮光部材3を太陽光発電装置2から取り外した状態を示す斜視図である。
図2(A)は、劣化抑制構造1の断面図である。
図2(B)は、
図2(A)のa部分の拡大図である。
図2(C)は、
図2(A)のA-A線に沿って発電部5を切断した状態を示す断面図である。
【0016】
第一実施形態に係る劣化抑制構造1は、太陽光発電装置2を保管或いは輸送する際などに、太陽光発電装置2の発電部5の劣化を抑制するために適用される。当該劣化抑制構造1は、太陽光発電装置2と、遮光部材3とを備える。太陽光発電装置2は、受光面4(
図1(B),
図2(A))から入射した光が発電部5(
図2(A))に照射されることで発電を行う。遮光部材3は、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられる。
【0017】
(太陽光発電装置2)
太陽光発電装置2は、シート状に形成される。本明細書でいう「シート状」は、その物体の厚さが、平面視における外縁の間の最大長さに対して、10%以下である形状を意味する。例えば平面視における形状が矩形状である場合、「平面視における外縁の間の最大長さ」は、対角線の長さを意味する。また、例えば平面視における形状が円形状である場合、「平面視における外縁の間の最大長さ」は、直径の長さを意味する。本明細書では、膜状、箔状、フィルム状等も、「シート状」に含まれる。
【0018】
太陽光発電装置2は、平面視略矩形状に形成されている。ただし、本発明では、太陽光発電装置2の形状としては、例えば、平面視略円形状、平面視楕円形状、平面視多角形状等であってもよく、特に制限はない。
【0019】
図2(A)に示すように、太陽光発電装置2は、発電部5と、バックシート6と、バリアシート7と、封止剤8と、封止縁材9と、を備える。バリアシート7は、受光面4を構成するものであって、太陽光発電装置2の厚さ方向において、バックシート6の反対側に配置される。発電部5は、バックシート6とバリアシート7との間に配置される。封止剤8は、バリアシート7とバックシート6との間における発電部5の周囲の空間に充填される。封止縁材9は、バックシート6の外周縁14とバリアシート7の外周縁15との間を封止する。
【0020】
太陽光発電装置2は、可撓性(対象物が撓み得る性質)を有する。本発明において、太陽光発電装置2が可撓性を有するとは、太陽光発電装置2が10MPa以上の曲げ強さを有すること、或いは、太陽光発電装置2が100MPa以上の曲げ弾性率を有することを意味する。太陽光発電装置2の曲げ強さは、より好ましくは20MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上である。また太陽光発電装置2の曲げ強さは、好ましくは200MPa以下であり、より好ましくは150MPa以下であり、より好ましくは50MPa以下である。また、太陽光発電装置2の曲げ弾性率は、より好ましくは500MPa以上である。また、太陽光発電装置2の曲げ弾性率は、好ましくは10000MPa以下であり、より好ましくは5000MPa以下である。太陽光発電装置2の可撓性を曲げ強さで評価する場合、曲げ弾性率は上記の範囲に含まれなくてもよい。太陽光発電装置2の可撓性を曲げ弾性率で評価する場合、曲げ強さは上記の範囲に含まれなくてもよい。太陽光発電装置2の曲げ強さ及び曲げ弾性率の測定方法は、JIS K 7171に準拠して測定される。このように、太陽光発電装置2が可撓性を有することで、設置面3の形状に対して追従することができ、なおかつ、設置された状態において、風等でバタつきにくい。
【0021】
(バックシート6)
バックシート6は、水蒸気に対するバリア性能、及び外力に対する保護性能を有する。バックシート6は、透光性があってもよいが、必ずしも透光性は必要ではない。
【0022】
本明細書でいう「透光性がある」とは、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、15%よりも大きいことを意味する。
【0023】
バックシート6は、可撓性を有する。バックシート6の縦弾性係数は、2400MPa以上であることが好ましく、より好ましくは3000MPa以上である。また、バックシート6の縦弾性係数は、4200MPa以下であることが好ましく、より好ましくは3100MPa以下である。バックシート6の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、ビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)等の合成樹脂が挙げられる。また、バックシート6の材料としては、合成樹脂のほか、例えば、天然樹脂、ゴム、金属、カーボン、パルプ等が用いられてもよい。
【0024】
バックシート6の厚さは、50μm以上であることが好ましく、より好ましくは、100μm以上である。また、バックシート6の厚さは、2000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、1000μm以下である。
【0025】
(発電部5)
発電部5は、光起電力効果を利用した光電変換素子である発電セル20を備える。本実施形態では、発電部5は、複数の発電セル20が太陽光発電装置2の面方向(例えば太陽光発電装置2の長手方向或い幅方向)に配置された光電変換ユニットから構成される。なお、発電部5は一つの発電セル20によって構成されてもよい。
【0026】
(発電セル20)
発電セル20は、透光性基材21と、透光性導電層22と、発電層23と、電極24と、を備える。透光性基材21、透光性導電層22、発電層23、及び電極24は、バリアシート7からバックシート6に向かう方向に沿って、この順で積層されている。すなわち、透光性基材21がバリアシート7に対向し、電極24がバックシート6に対向するように配置される。
【0027】
(透光性基材21)
透光性基材21は、透光性導電層22、発電層23、及び電極24を支持する。透光性基材21は、透光性を有する。透光性基材21の透光性は、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、10%よりも大きければよいが、好ましくは、50%以上であり、より好ましくは、80%以上である。本明細書では、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、80%以上であることを、「透明」であるとする。
【0028】
透光性基材21の材料としては、例えば、無機材料、有機材料、金属材料等が挙げられる。無機材料としては、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET; polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN; polyethylene naphthalene)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック、高分子フィルム等が挙げられる。金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、シリコン等が挙げられる。
【0029】
透光性基材21の厚さは、透光性導電層22、発電層23、及び電極24を支持することができれば、特に制限はなく、例えば、10μm以上300μm以下が挙げられる。
【0030】
透光性基材21は、発電セル20の製造過程で必要になる基材であり、必ずしも必要な構成ではない。透光性基材21は、例えば、太陽光発電装置2の製造途中にだけ利用されてもよく、製造後又は製造途中に取り除かれてもよい。なお、取り除かれる場合、透光性基材21に代えて、透光性を有さない基材を用いてもよい。
【0031】
(透光性導電層22)
透光性導電層22は、導電性を有する層であり、カソードとして機能する。透光性導電層22は、透光性を有する。透光性導電層22は、透明であることが好ましい。
【0032】
透光性導電層22としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO; Indium Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO; F-doped Tin Oxide)、ネサ膜等の透明な材料が挙げられる。透光性導電層22は、透光性基板の表面に対して、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法等により形成される。
【0033】
また、透光性導電層22としては、不透光性材料を用いつつ、光を透過可能なパターンを形成することで、透光性を有するように構成してもよい。不透光性材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、又はこれらを含む合金等が挙げられる。光を透過可能なパターンとしては、例えば、格子状、線状、波線状、ハニカム状、丸穴状等が挙げられる。
【0034】
透光性導電層22の厚さは、例えば、30nm以上300nm以下であることが好ましい。透光性導電層22の厚さが、30nm以上300nm以下であると、可撓性を高く保ちながら、良好な導電性を得ることができる。
【0035】
(発電層23)
発電層23は、光の照射によって光電変換を生じさせる層であり、光を吸収することで生成された励起子から、電子と正孔とを生じさせる。
図2(B)に示すように、発電層23は、正孔輸送層30と、光電変換層31と、電子輸送層32と、を備える。正孔輸送層30、光電変換層31、及び電子輸送層32は、透光性導電層22から電極24に向かう方向に沿って、この順で積層されている。
【0036】
(正孔輸送層30)
正孔輸送層30は、光電変換層31で発生した正孔を、透光性導電層22へ抽出し、かつ光電変換層31で発生した電子が、透光性導電層22へ移動するのを妨げる。正孔輸送層30の材料としては、例えば、金属酸化物を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化セシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。また、その他、デラフォサイト型化合物半導体(CuGaO2)、酸化銅、チオシアン酸銅(CuSCN)、五酸化バナジウム(V2O5)、酸化グラフェン等が用いられてもよい。また、正孔輸送層30の材料として、p型有機半導体又はp型無機半導体を用いることもできる。
【0037】
正孔輸送層30の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、10nm以上500nm以下であり、更に好ましくは、10nm以上50nm以下である。正孔輸送層30の厚さが、1nm以上1000nm以下であれば、正孔の輸送が実現できる。
【0038】
(光電変換層31)
光電変換層31(光活性層)は、吸収した光を光電変換する層である。光電変換層31の材料としては、吸収した光を光電変換することができれば特に制限はなく、例えば、アモルファスシリコン、ペロブスカイト、非シリコン系材料(半導体材料CIGS)等が用いられる。また、光電変換層31は、これらを複合したタンデム型の積層構造としてもよい。非シリコン系材料が用いられた光電変換層31は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)を含む半導体材料CIGSが用いられており、光電変換層の厚さを薄くしやすい。
【0039】
以下では、発電部5に有機成分が含まれる場合の例として、有機成分を含有するペロブスカイト化合物が発電部5の光電変換層13に含まれる場合を説明する。ペロブスカイト化合物を含む光電変換層31は、入射光の角度に対する発電効率の依存性(以下、入射角依存性という場合がある)が比較的低いという利点がある。これにより、本実施形態では、より高い発電効率を得ることができる。
【0040】
ペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト結晶構造体及びこれに類似する結晶を有する構造体である。ペロブスカイト結晶構造体は、組成式 ABX3で表される。この組成式において、例えば、Aは有機カチオン、Bは金属カチオン、Xはハロゲンアニオンを示す。ただし、Aサイト、Bサイト及びXサイトはこれに限定されない。
【0041】
Aサイトを構成する有機カチオンの有機基としては、特に制限はなく、例えば、アルキルアンモニウム誘導体、ホルムアミジニウム誘導体等が挙げられる。Aサイトを構成する有機カチオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0042】
Bサイトを構成する金属カチオンの金属としては、特に制限はなく、例えば、Cu、Ni、Mn、Fe、Co、Pd、Ge、Sn、Pb、Eu等が挙げられる。Bサイトを構成する金属カチオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0043】
Xサイトを構成するハロゲンアニオンのハロゲンには、特に制限はなく、例えば、F、Cl、Br、I等が挙げられる。Xサイトを構成するハロゲンアニオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0044】
光電変換層31の厚さは、例えば、1nm以上1000000nm以下が好ましく、より好ましくは、100nm以上50000nm以下であり、更に好ましくは、300nm以上1000nm以下である。光電変換層31の厚さが、1nm以上1000000nm以下であると、光電変換効率が向上する。
【0045】
(電子輸送層32)
電子輸送層32は、光電変換層31で発生した電子を電極24へ抽出し、かつ光電変換層31で発生した正孔が、電極24へ移動するのを妨げる。電子輸送層32としては、例えば、ハロゲン化合物又は金属酸化物のいずれかを含むことが好ましい。
【0046】
ハロゲン化合物としては、例えば、ハロゲン化リチウム(LiF、LiCl、LiBr、LiI)、ハロゲン化ナトリウム(NaF、NaCl、NaBr、NaI)等が挙げられる。金属酸化物を構成する元素としては、チタン、モリブデン、バナジウム、亜鉛、ニッケル、リチウム、カリウム、セシウム、アルミニウム、ニオブ、スズ、バリウム等が挙げられる。また、電子輸送層32の材料として、n型有機半導体又はn型無機半導体を用いることもできる。
【0047】
電子輸送層32の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、10nm以上500nm以下であり、更に好ましくは、10nm以上50nm以下である。電子輸送層32の厚さが、1nm以上1000nm以下であれば、電子の輸送が実現できる。
【0048】
(電極24)
電極24は導電性を有し、アノードとして機能する。電極24は、光電変換層31によって生じた光電変換に応じて、光電変換層31から電子を取り出すことができる。電極24は、透光性を有していてもよいし、不透光性材料で構成されてもよい。電極24の材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、又はこれらを含む合金等が挙げられる。
【0049】
(バリアシート7)
バリアシート7は、透光性を有するものであって、上述したように受光面4を構成する。バリアシート7は、透明であることが好ましい。バリアシート7は、水蒸気に対するバリア性能、及び外力に対する保護性能を有する。
【0050】
バリアシート7は、可撓性を有する。バリアシート7に用いられる材料としては、縦弾性係数が100Pa以上10000MPa以下であることが好ましく、より好ましくは、1000MPa以上5000MPa以下である。バリアシート7の材料として、具体的には、例えば、プラスチックフィルム、ビニルフィルム等が挙げられる。
【0051】
バリアシート7の厚さは、50μm以上であることが好ましく、より好ましくは、100μm以上である。また、バリアシート7の厚さは、2000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、1000μm以下である。バリアシート7の厚さが50μm以上2000μm以下であることにより、太陽光発電装置2の曲げ強さを、50MPa以上150MPa以下に設定しやすい。
【0052】
(封止剤8)
封止剤8は、発電層23に対して、発電層23の周囲から浸水するのを妨げる。封止剤8は、透光性を有しており、好ましくは、透明である。なお、封止剤8は、必ずしも発電部5の全てを覆う必要はない。例えば、発電部5の一部が封止剤8から露出した場合、当該露出した部分を封止縁材9等で覆ってもよい。
【0053】
封止剤8の材料としては、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリオレフィン、ブチルゴム、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、SBS樹脂、SIBS樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0054】
封止剤8の横弾性率は、好ましくは0.01MPa以上500MPa以下であり,より好ましくは0.05MPa以上250MPa以下であり、更に好ましくは0.1MPa以上100MPa以下である。このようにすることで、バックシート6とバリアシート7の温度差で生じる熱伸縮に追随して、封止剤8が面方向に変形する。これにより、バックシート6とバリアシート7とが、熱伸縮により発生するせん断応力により、封止剤8から剥離することを抑制できる。本願でいう「横弾性率」は、例えば、引張り試験法により得た縦弾性係数及びポアソン比から算出した値である。
【0055】
また封止剤8は、別の観点から、粘度で規定することもできる。封止剤8の粘度は、11000mPa・S以上700000mPa・S以下であることが好ましく、より好ましくは、26000mPa・S以上450000mPa・S以下であり、更に好ましくは、40000mPa・S以上110000mPa・S以下である。
【0056】
この場合の封止剤8の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ブチルゴム、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂等が挙げられる。本明細書でいう「粘度」は、JIS Z8803の回転粘度計法に準拠し、環境温度23℃で測定を行った値である。
【0057】
封止剤8を介してバックシート6とバリアシート7は接着されているが、その接着強度はピール試験にて、0.1N/10mm以上10N/10mm以下であることが好ましい。特に、曲げた状態で施工される場合は、太陽光発電装置2に生じるせん断応力はより大きくなるため、ピール試験における上記範囲の接着強度を採用することで、長期間剥離を効果的に抑制することができる。ピール試験は、JIS Z 0237に準拠して行われる。
【0058】
剥離抑制の効果を高める観点より、封止剤8の厚さとしては、10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上が挙げられる。一方、封止剤8の厚さとしては、300μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下であり、更に好ましくは100μm以下である。封止剤8の厚さを10μm以上とすることで、熱伸縮時のせん断応力の逃げしろを十分に確保することができる。封止剤8の厚さを、300μm以下とすることで、太陽光発電装置2の重量を軽量化できるため、施工性・作業性を向上することができる。
【0059】
(封止縁材9)
封止縁材9は、バックシート6とバリアシート7との間に発電部5及び封止剤8が配置された状態で、バックシート6の外周縁14とバリアシート7の外周縁15との間を封止する。
図2(A)に示すように、封止縁材9は、第1接着部40と、第2接着部41と、第1接着部40と第2接着部41とをつなぐ封着部42と、を備える。第1接着部40は、バリアシート7の表面(
図2(A)では上面)に接着される。第2接着部41は、バックシート6の裏面(
図2(A)では下面)に接着される。第1接着部40、封着部42、及び第2接着部41は、一体に形成されている。
【0060】
封止縁材9の材料としては、例えば、ブチルゴム、シリコーンゴム等からなるテープ材が挙げられる。
【0061】
なお、本実施形態において、封止縁材9は、必ずしも必要ではない。例えば、封止縁材9に代えて、バリアシート7の縁部をバックシート6側に折り曲げ、折り曲げた先端をバックシート6に接合してもよい。これにより、封止縁材9は不要となる。
【0062】
(太陽光発電装置2の作用)
上記の太陽光発電装置2によれば、受光面4から入射した光が発電部5に照射されると、発電層23の光電変換層31が光を吸収して光電変換を行うことで、光電変換層31で電子と正孔とが生じる。当該電子が電子輸送層32を介して電極24(アノード)へ抽出され、正孔が正孔輸送層30を介して透光性導電層22(カソード)へ抽出されることで、透光性導電層22から電極24へと電流が流れる(すなわち発電が行われる)。
【0063】
発電部5を構成する光電変換ユニットでは、各発電セル20の電極24(アノード)に延長部24aが設けられる(
図2(C))。当該電極24の延長部24aは透光性導電層22(カソード)側へ延びる。隣り合う2つの発電セル20,20では、一方のセル20の電極24の延長部24aが、他方のセル20の透光性導電層22に接合される。この接合により、太陽光発電装置2に光が照射される間では、発電部5(光電変換ユニット)の一方側端にある透光性導電層22Aから、発電部5の他方側端にある電極24Aへと電流が流れる(
図2(C)では電流の流れを矢印で示している)。当該電流は、図示しない配電線を介して取り出される。
【0064】
発電部5を上記の光電変換ユニットから構成することで、一部の発電セル20で不具合が生じても、発電部5からの電気取り出し量を安定化させることができる。
【0065】
なお各発電セル20の電極24(アノード)に延長部24aを設けることの代わりに、各発電セル20の透光性導電層22(カソード)に、電極24(アノード)側へ延びる延長部を設けてもよい。この場合、隣り合う2つの発電セル20,20では、一方のセル70の透光性導電層22の延長部が、他方のセル70の電極24に接合される。このようにしても上記と同様の効果が得られる。
【0066】
また発電部5に透光性基材21を設ける場合には、発電部5の製造を容易にする観点から、
図2(C)に示すように、各発電セル20の透光性導電層22、発電層23及び電極24を、共通の透光性基材21に支持させることが好ましい。
【0067】
また発電部5が一つの発電セル20によって構成される場合には、電極24から透光性導電層22へと流れる電流が配電線を介して取り出される。
【0068】
なお太陽光発電装置2には、複数の発電部5が含まれていてもよい。この場合、複数の発電部5は、太陽光発電装置2の面方向に配置されて、直列又は並列に電気的に接続される。
【0069】
発電部5が光電変換ユニットから構成される場合には、複数の発電部5を直列に接続するために、隣り合う2つの発電部5,5において、一方の発電部5の端にある透光性導電層22Aと、他方の発電部5の端にある電極24Aとを、配電線を介して接続することが行われる。複数の発電部5を並列に接続する場合には、隣り合う2つの発電部5,5の端にある透光性導電層22A,22A同士と、上記隣り合う2つの発電部5,5の端にある電極24A,24A同士とを、それぞれ配電線を介して接続することが行われる。
【0070】
また発電部5が一つの発電セル20から構成される場合には、複数の発電部5を直列に接続するために、隣り合う2つの発電部5,5において、一方の発電部5の透光性導電層22と、他方の発電部5の電極24とを配電線を介して接続することが行われる。複数の発電部5を並列に接続する場合には、隣り合う2つの発電部5,5の透光性導電層22,22同士と、上記隣り合う2つの発電部5,5の電極24,24同士とを、それぞれ配電線を介して接続することが行われる。
【0071】
なお発電部5が、上記の光電変換ユニット及び一つの発電セル20のいずれから構成される場合においても、隣り合う発電部5,5の間の距離は、0mm超であればよく、好ましくは2mm以上であり、より好ましくは10mm以上であり、更に好ましくは、15mm以上である。また、隣り合う発電部5,5の間の距離は、100mm以下が好ましく、より好ましくは50mm以下であり、更に好ましくは、20mm以下である。
【0072】
(遮光部材3)
遮光部材3は、樹脂、繊維、或いは紙から形成されるシート材であり、遮光性を有する。上記の樹脂として、例えば、PET、PE、EVOH、EVA等の軟質系樹脂や、PP、PE等の硬質樹脂が挙げられる。上記の繊維の材料として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、或いは樹脂繊維からなる織物や不織布等があげられる。上記の紙の材料として、例えば、セルロース、植物繊維、合成樹脂繊維があげられる。遮光部材3の可視光または紫外線光の透過率は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。上記の透過率は、太陽光発電シートに含む材質により適宜選定すればよい。上記の透過率の値を、可視光及び紫外線光のいずれに対する値とするかについては、材料が劣化しやすい光に対する値にすることが好ましい。また、太陽光発電装置2への光の入射を最小化するという観点より、遮光部材3の色を黒色にすることが好ましい。なお、遮光部材3の色を光沢のある色としてもよい。このようにしても、反射により太陽光発電装置2への光の入射を最小化できる。
【0073】
本実施形態では、太陽光発電装置2が平面視略矩形状に形成されていることで、遮光部材3も平面視略矩形状に形成されているが、遮光部材3は、太陽光発電装置2の形状に応じて任意の形状に形成され得る。例えば、太陽光発電装置2が、平面視略円形状、平面視楕円形状、或いは平面視多角形状に形成される場合には、遮光部材3も、平面視略円形状、平面視楕円形状、或いは平面視多角形状に形成され得る。
【0074】
遮光部材3の一方の表面には接着剤50が塗布されており、遮光部材3と受光面4とは接着剤50を介して25N/15mm以下の強度で接着される。この強度以下とするとこで輸送時の固定状態を維持しつつ、設置現場で手作業ではがすことができる。手作業での作業のやりやすさを向上させるため、より好ましくは20N/15mm以下、さらに好ましくは15N/15mmとすることで、より剥がしやすくしてもよい。輸送時の固定状態を維持するためには、0N/15mm以上であれば良く、より好ましくは0.01N/15mm以上、さらに好ましくは0.1N/15mmであればよい。この接着強度は、JIS Z 0237に準拠したピール試験で測定される。上記の接着剤50を介する受光面4及び遮光部材3の接着によって、遮光部材3は、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられる。
【0075】
なお本発明において、遮光部材が受光面4に接するとは、幾何学的に厳密な接触状態を意味するものではない。遮光部材と受光面4との間に接着剤の厚さに相当する間隔がある状態や、遮光部材の撓み等によって、遮光部材が受光面4の一部の範囲に接するものの、遮光部材が受光面4の他の範囲に接していない状態は、遮光部材が受光面4に接することに包含される。
【0076】
また上記の「遮光部材3が、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられる」ことには、「遮光部材3が、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に着脱自在に取り付けられる場合(すなわち「太陽光発電装置2への遮光部材3の取り付け及び太陽光発電装置2からの遮光部材3の取り外し」を複数回繰り返すことができる場合)」と、「太陽光発電装置2から遮光部材3を一旦取り外した後では遮光部材3を再度太陽光発電装置2に取り付けることができない場合(すなわち「太陽光発電装置2への遮光部材3の取り付け及び太陽光発電装置2からの遮光部材3の取り外し」が1回のみ可能とされる場合)」とが包含される。
【0077】
太陽光発電装置2を保管或いは運搬する際には、発電部5で発生する電流を配電線を介して取り出せない状況(すなわち発電電気を消費できない状況)で、遮光部材3を受光面4に接着することが行われる。この際には、例えば
図3に示すように遮光部材3を受光面4に接着した太陽光発電装置2を複数積み重ねることが行われる(すなわち劣化抑制構造1を複数積み重ねることが行われる)。或いは、遮光部材3を受光面4に接着した太陽光発電装置2を巻くことが行われる(すなわち劣化抑制構造1を巻くことが行われる)。太陽光発電装置2を、発電場所に設置する際には、太陽光発電装置2から遮光部材3を剥離することで、遮光部材3が太陽光発電装置2から取り外されて、発電部5で発生する電流を配電線を介して取り出せる状況(発電電気を消費できる状況)とされる。
【0078】
なお太陽光発電装置2への遮光部材3の固定性を高める観点から、遮光部材3は、可撓性を有することが好ましく、太陽光発電装置2と同等の可撓性を有することがより好ましい。なお太陽電池装置からの遮光部材3の取り外し性を向上させる観点から、遮光部材3と太陽光発電装置2との可撓性に差があってもよい。また太陽光発電装置2を保管或いは運搬する際に劣化抑制構造1を巻かない場合には、遮光部材3の線膨張係数はバリアシート7の線膨張係数と同等であることが好ましい。劣化抑制構造1を巻く場合には、遮光部材3の線膨張係数は、バリアシート7の線膨張係数よりも小さいことが好ましい。
【0079】
(作用効果)
本実施形態の劣化抑制構造1によれば、遮光部材3が受光面4に接着されることで、遮光部材3が受光面4に接した状態で受光面4を覆うものとなるため、発電部5に照射される光の量を少なく抑えることができる。このため、発電電気が消費されないことにより発電部5が劣化することを抑制可能である(例えば、発電部5に有機成分が含まれる場合や、複数の発電部5が直列に接続される場合でも、発電部5の劣化を抑制できる)。したがって、太陽光発電装置2の品質を維持した状態で、太陽光発電装置2の使用を開始できる。
【0080】
また本実施形態の劣化抑制構造1によれば、接着剤50によって遮光部材3と受光面4とを接着することで、遮光部材3の構造を複雑にすることなく、遮光部材3を太陽光発電装置2に取り付けることができる。このため遮光部材3の製造コストを安価に抑えることができる。
【0081】
<第二実施形態>
次に本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明では、第一実施形態と相違する点について説明し、第一実施形態と共通する点については同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
図4(A)は、第二実施形態に係る太陽光発電装置2の劣化抑制構造60を示す斜視図である。
図4(B)は、劣化抑制構造60が備える遮光部材61を太陽光発電装置2から取り外した状態を示す斜視図である。
【0083】
第二実施形態に係る劣化抑制構造60は、太陽光発電装置2と、遮光部材61とを備える。遮光部材61は、一端に開口62のある空洞63を有した箱状を呈する。遮光部材61は、遮光性及び定形性を有する材料から形成されており、当該遮光部材61の材料として、樹脂、繊維があげられる。上記の樹脂として、PP、PE、PC、PET等の硬質樹脂が挙げられ、また遮光部材61の材料とする樹脂は繊維強化されていてもよい。上記の繊維としては、紙繊維が挙げられ、セルロース繊維材料又は植物繊維材料を含む段ボール等を遮光部材61を形成するために使用できる。上記の材料は複合的に使用されていてもよい。
【0084】
第二実施形態に係る劣化抑制構造60では、太陽光発電装置2を受光面4と平行な方向に移動させることで、太陽光発電装置2を遮光部材61の空洞63に挿入することが可能であり、この挿入によって、遮光部材61は、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられる。図示例では、遮光部材61が、矩形の底壁64の外周をなす四辺からそれぞれ側壁65が延びた箱状を呈することで、遮光部材61が上記の空洞63を有するものとされているが、本発明は遮光部材61の形状を、図示例の形状に限定するものではない。
【0085】
なお上記の「遮光部材61が、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられる」ことには、「遮光部材61が、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に着脱自在に取り付けられる場合(すなわち「太陽光発電装置2への遮光部材61の取り付け及び太陽光発電装置2からの遮光部材61の取り外し」を複数回繰り返すことができる場合)」と、「太陽光発電装置2から遮光部材61を一旦取り外した後では遮光部材61を再度太陽光発電装置2に取り付けることができない場合(すなわち「太陽光発電装置2への遮光部材61の取り付け及び太陽光発電装置2からの遮光部材61の取り外し」が1回のみ可能とされる場合)」とが包含される。
【0086】
太陽光発電装置2を保管或いは運搬する際には、発電部5で発生する電流を配電線を介して取り出せない状況(すなわち発電電気を消費できない状況)で、太陽光発電装置2を遮光部材61の空洞63に挿入することが行われる。この際には、例えば
図5に示すように太陽光発電装置2を空洞63に挿入した遮光部材61を複数積み重ねることが行われる(すなわち劣化抑制構造60を複数積み重ねることが行われる)。太陽光発電装置2を発電場所に設置する際には、太陽光発電装置2を空洞63から出すことで、遮光部材61が太陽光発電装置2から取り外されて、発電部5で発生する電流を配電線を介して取り出せる状況(発電電気を消費できる状況)とされる。
【0087】
上述した劣化抑制構造60によれば、空洞63への太陽光発電装置2の挿入によって、遮光部材61が、受光面4に接した状態で受光面4を覆うものとなるので、太陽光発電装置2の発電部5に照射される光の量を少なく抑えることができる。このため、発電電気が消費されないことにより発電部5が劣化することを抑制可能である。
【0088】
第二実施形態に係る劣化抑制構造は、
図6に示すように変更できる。
図6に示す劣化抑制構造70は、太陽光発電装置2と、遮光部材71とを備える。遮光部材71は、一端に開口73のある空洞74を有した袋状を呈する。当該遮光部材71は、遮光性及び可撓性を有する一対のシート材72,72から構成される。シート材72,72はそれぞれ矩形を呈する。シート材72,72を重ね合わせた状態で、シート材72,72の3辺同士が接合されることで、遮光部材71は、上記の空洞74を有したものとされる。シート材72,72は、それぞれPET、EVOH、EVA等の軟質樹脂や、セルロース繊維、植物繊維等の紙繊維や、化学繊維、樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の不織布、織物等から形成される。上記のシート材72,72の接合は、溶着、或いは接着剤の使用によって行わせる。
【0089】
劣化抑制構造70では、太陽光発電装置2を受光面4と平行な方向に移動させることで太陽光発電装置2を遮光部材71の空洞74に挿入することができ、この挿入によって、遮光部材71は、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられる。太陽光発電装置2を保管或いは運搬する際には、発電電気を消費できない状況で、例えば
図7に示すように太陽光発電装置2を空洞74に挿入した遮光部材71を複数積み重ねることが行われる(すなわち劣化抑制構造70を複数積み重ねることが行われる)。太陽光発電装置2を発電場所に設置する際には、太陽光発電装置2を空洞74から出して、遮光部材71を太陽光発電装置2から取り外して、発電電気を消費できる状況とされる。上記の劣化抑制構造70によっても、
図4,
図5に示す劣化抑制構造60と同様の効果が得られる。
【0090】
なお上記の「遮光部材71が、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられる」ことには、「遮光部材71が、受光面4に接した状態で受光面4を覆うように、太陽光発電装置2に着脱自在に取り付けられる場合(すなわち「太陽光発電装置2への遮光部材71の取り付け及び太陽光発電装置2からの遮光部材71の取り外し」を複数回繰り返すことができる場合)」と、「太陽光発電装置2から遮光部材71を一旦取り外した後では遮光部材71を再度太陽光発電装置2に取り付けることができない場合(すなわち「太陽光発電装置2への遮光部材71の取り付け及び太陽光発電装置2からの遮光部材71の取り外し」が1回のみ可能とされる場合)」とが包含される。
【0091】
なお上記の劣化抑制構造60,70では、遮光部材61,71の可視光または紫外線光の透過率は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。上記の透過率は、太陽光発電シートに含む材質により適宜選定すればよい。上記の透過率を、可視光及び紫外線光のいずれに対する値とするかについては、材料が劣化しやすい光に対する値とすることが好ましい。また、太陽光発電装置2への光の入射を最小化するという観点より、遮光部材61,71の色を黒色にすることが好ましい。なお、遮光部材61,71の色を光沢のある色としてもよい。このようにしても、反射により太陽光発電装置2への光の入射を最小化できる。
【0092】
また上記では、箱状を呈する遮光部材61が遮光性及び定形性を有する材料から形成される例を示したが、遮光部材61は遮光性及び可撓性を有する材料から形成されてもよい。この場合、遮光部材61は、PET、EVOH、EVA等の軟質樹脂や、セルロース繊維、植物繊維等の紙繊維や、化学繊維、樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の不織布、織物等から形成される。
【0093】
また上記では、袋状を呈する遮光部材71を構成するシート材72,72が遮光性及び可撓性を有する材料から形成される例を示したが、遮光部材71を構成するシート材72,72は遮光性及び定形性を有する材料から形成されてもよい。この場合、シート材72の材料として、樹脂、繊維を使用できる。上記の樹脂として、PP、PE、PC、PET等の硬質樹脂が挙げられ、また遮光部材71の材料とする樹脂は繊維強化されていてもよい。上記の繊維としては、紙繊維が挙げられ、セルロース繊維材料又は植物繊維材料を含む段ボール等をシート材72を形成するために使用できる。上記の材料は複合的に使用されていてもよい。
【0094】
なお遮光部材61,71を可撓性を有する材料から形成される場合には、例えば、空洞63,74の横断面を太陽光発電装置2の横断面よりも若干小さくして、空洞63,74を拡径させながら空洞63,74への太陽光発電装置2の挿入を行うようにすることが好ましい。このようにすれば、遮光部材61,71を受光面4に密着させることができるので、太陽光発電装置2の発電部5に照射される光の量をより一層少なく抑えることができる。特に太陽光発電装置2の受光面4と遮光部材61,71の密着性は高い方が好ましい。また空洞部63、74の横断面を太陽光発電装置2の横断面より少し大きくしておき、太陽光発電装置2を挿入したうえで加熱や余剰空間の空気を吸引することで、太陽光発電装置2の受光面4と遮光部材61,71とを密着させてもよい。
【0095】
また第二実施形態に係る遮光部材の形状は、
図4~
図7に示す遮光部材61,71の形状に限定されず、太陽光発電装置2を空洞に嵌合させることで、受光面4に接した状態で受光面4を覆うことが可能な様々な形状に変更され得る。例えば、第二実施形態に係る遮光部材の空洞は、太陽光発電装置2を受光面4と垂直な方向に移動させることで、太陽光発電装置2を嵌合可能なものであってもよい。この場合でも、上記の嵌合に伴い、遮光部材を受光面4に接した状態で受光面4を覆うものとすることで、発電部5に照射される光の量を少なく抑えることができる。
【0096】
また、遮光部材71を構成するシート材72、72が一体とされる場合であっても、シート材72、72の接合部の接合強度をシート材72の母材強度に対して相対的に低くしておくことで、遮光部材71の取り外しの際に上記の接合部よりシート材72、72が切り離されるようにしておいてもよい。そのようにすることで、遮光部材71の取り外しが容易となり、施工時の施工速度を向上させることができる。上記の「強度」は、弾性率、せん断強度、剥離強度等であってもよく、取り外しの形態に応じて、上記の「強度」として、弾性率、せん断強度、及び剥離強度のいずれを採用するかが適宜判断される。
【0097】
また本発明の太陽光発電装置2の劣化抑制構造は、「受光面4から入射した光が発電部5に照射されることで発電を行う太陽光発電装置2と、受光面4に接した状態で少なくとも発電部5を覆うように配置される遮光部材とを備えるもの」とされ得る。上記の「遮光部材が、受光面4に接した状態で、少なくとも発電部5を覆うように配置される」ことは、「遮光部材が受光面4に接した状態で、遮光部材が、太陽光発電装置2の厚さ方向において、少なくとも発電部5の全体と対向すること」を意味する。本発明の劣化抑制構造が以上のようにしても、遮光部材の遮光によって発電部5に照射される光の量を少なく抑えることができるので、発電電気が消費されないことにより発電部5が劣化することを抑制可能である。また上記の場合には、例えば、遮光部材と受光面4とを接着剤を介して25N/15mm以下の強度で接着することで、遮光部材が太陽光発電装置2に取り付けられる。なお本発明は、上記の遮光部材を太陽光発電装置2に取り付ける方法を上記の方法に限定するものではなく、例えば、遮光部材の空洞に太陽光発電装置2を挿入することで、上記の遮光部材が太陽光発電装置2に取り外し可能に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1,60,70 劣化抑制構造
2 太陽光発電装置
3,61,71 遮光部材
4 受光面
5 発電部
64,73 開口
65,74 空洞