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  • 特開-細胞外液収集具 図1
  • 特開-細胞外液収集具 図2
  • 特開-細胞外液収集具 図3
  • 特開-細胞外液収集具 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032043
(43)【公開日】2025-03-10
(54)【発明の名称】細胞外液収集具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/02 20060101AFI20250303BHJP
【FI】
A61F2/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137642
(22)【出願日】2023-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】507186551
【氏名又は名称】株式会社三井メディカルジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】三井 桂子
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097BB01
4C097BB08
(57)【要約】
【課題】リンパ浮腫の抑制に効果のある器具を提供する。
【解決手段】本発明の細胞外液収集具1は、体内に留置されて使用される。体内に留置されることにより、細胞外液が取り込み部から管部10内に取り込まれ、その後、接続部12を介して静脈へと流れていく。何らかの要因により体内に滞留しているリンパ液を主とする細胞外液をこのようにして静脈に流入させることができるため、リンパ浮腫を抑制することができる。リンパ管静脈吻合術を行う際に本発明の細胞外液収集具1を体内に留置させれば、漏出状態が継続している細胞外液を収集しリンパ浮腫を抑制できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも脂肪分を除去する機能を備え、細胞外液を収集する収集部と、
静脈への接続部と
を有し、体内に留置されて使用される細胞外液収集具。
【請求項2】
前記収集部が、
管部と、前記管部に設けられ、前記少なくとも脂肪分を除去する機能を備えた細胞外液の取り込み部とを有し、
前記接続部が、前記管部に設けられている
請求項1記載の細胞外液収集具。
【請求項3】
前記体内から前記取り込み部に流入する前記細胞外液の逆流を防止するための逆止弁を有する
請求項2記載の細胞外液収集具。
【請求項4】
前記収集部が、前記少なくとも脂肪分を除去する機能を備えた面状部材からなり、
前記面状部材の周縁部が、前記接続部を構成し、
前記周縁部が、静脈に形成された接続用開口の周囲に接続される
請求項1記載の細胞外液収集具。
【請求項5】
前記収集部が、周壁部が前記少なくとも脂肪分を除去する機能を備えた袋状部材からなり、
前記袋状部材の開口縁部が、前記接続部を構成し、
前記開口縁部が、静脈に形成された接続用開口の周囲に接続される
請求項1記載の細胞外液収集具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンパ液等の細胞外液を収集して静脈に流入させる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の手術における転移予防等のため、リンパ節の切除が行われる。リンパ節が切除されると、リンパ液の流れが悪くなり四肢に溜まり、リンパ浮腫を引き起こす。リンパ浮腫はこれ以外にも様々な要因により引き起こされるが、一旦発症すると完治が困難といわれている。その一方、近年、治療法の一つとしてリンパ管を静脈に吻合させるリンパ管静脈吻合術が行われている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「リンパ浮腫の外科的治療」第188~191頁、編集:光嶋勲、発行所:株式会社ぱーそん書房、平成29年9月1日、第1版発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リンパ管を静脈に吻合することにより、漏れていたリンパ液が静脈に流れ、リンパ浮腫を改善できる。しかしながら、リンパ管径は、0.1~1.0mm程度が一般であり、このような細径の管をやはり細径の静脈に吻合するには相当の熟練を要する。また、リンパ液が漏出しているリンパ管が多数の場合、それらの全てを静脈に吻合することも極めて困難であり、リンパ管静脈吻合術を行っても、リンパ浮腫の改善の程度は専ら術者の熟練に依拠するのが現状である。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、リンパ管から漏出し体内に滞留しているリンパ液を主とする細胞外液を収集して静脈に送り、リンパ浮腫を抑制できる細胞外液収集具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、
少なくとも脂肪分を除去する機能を備え、細胞外液を収集する収集部と、
静脈への接続部と
を有し、体内に留置されて使用される細胞外液収集具
を提供する。
【0007】
前記収集部が、
管部と、前記管部に設けられ、前記少なくとも脂肪分を除去する機能を備えた細胞外液の取り込み部とを有し、
前記接続部が、前記管部に設けられている
構成とすることができる。
この場合、前記体内から前記取り込み部に流入する前記細胞外液の逆流を防止するための逆止弁を有することが好ましい。
【0008】
前記収集部が、前記少なくとも脂肪分を除去する機能を備えた面状部材からなり、
前記面状部材の周縁部が、前記接続部を構成し、
前記周縁部が、静脈に形成された接続用開口の周囲に接続される
構成とすることができる。
【0009】
前記収集部が、周壁部が前記少なくとも脂肪分を除去する機能を備えた袋状部材からなり、
前記袋状部材の開口縁部が、前記接続部を構成し、
前記開口縁部が、静脈に形成された接続用開口の周囲に接続される
構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の細胞外液収集具は、体内に留置されて使用される。体内に留置されることにより、細胞外液が収集部から取り込まれて静脈へと流れていく。これにより、何らかの要因により体内に滞留しているリンパ液を主とする細胞外液は静脈に流入することになり、リンパ浮腫を抑制することができる。リンパ管静脈吻合術を行う際に本発明の細胞外液収集具を体内に留置させれば、漏出状態が継続している細胞外液を収集しリンパ浮腫を抑制できる。その意味で、本発明の細胞外液収集具はリンパ管静脈吻合術を補う手段として適している。一方、リンパ管静脈吻合術に代わるリンパ浮腫抑制手段としても適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)は、本発明の一の実施形態にかかる細胞外液収集具の外観を示した側面図であり、図1(b)は、その一部切り欠き断面図である。
図2図2(a)は、逆止弁を設けた態様の一部切り欠き断面図であり、図2(b)は、図2(a)のA部拡大図である。
図3図3は、本発明の一の実施形態にかかる細胞外液収集具を体内に配置した状態を示す模式図である。
図4図4(a)は、本発明の他の実施形態にかかる細胞外液収集具を説明するための図であり、図4(b)は、本発明のさらに他の実施形態にかかる細胞外液収集具を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1(a),(b)は、本発明の一の実施形態にかかる細胞外液収集具1を説明するための図であり、これらの図に示したように、本実施形態の細胞外液収集具1は、管部10、取り込み部11及び接続部12を有して構成される。管部10及び取り込み部11が、少なくとも脂肪分をろ過作用などによって除去する機能を備え、細胞外液を収集する収集部1Aに相当する。管部10は、例えば、太さ1~20mm程度で、長さ10~150mm程度とすることができる。これらの太さや長さは、上肢、下肢など配置する部位、体格等に応じて適宜に決定できる。管部10を構成する材料としては、生体適合性がよいこと、生体内で劣化しにくいこと等を考慮して決定されるが、人工血管材料として用いられるポリエステル繊維からなる布、PTFE、生体材料、合成高分子材料等を採用することができる。
【0013】
取り込み部11は、本実施形態では、管部10の長手方向の一方の端部付近に形成された複数の開口11aを有して構成されている。本実施形態では、管部10の長手方向端面及び周面にこれらの開口11aを形成している。但し、開口11aの形成数は任意であり、1箇所であってもよいし、2箇所であってもよいし、4箇所以上の多数の小さな孔から構成されるものであってもよい。開口面積や形状も任意であり、統一的なものであってもよいし、開口11aによって異なる形状としてもよい。
【0014】
また、開口11aより管部10内に取り込んだ細胞外液が逆流しないように、図2(a),(b)に示したように、管部10内に逆止弁13を設けることも可能である。
【0015】
取り込み部11は、このような開口11aを備えた構造に限定されず、取り込み部11の周面や端面自体を網状としたり、半透膜を用いて構成したりすることができる。また、取り込み部11は、管部10の一方の端部付近のみに形成されているのではなく、管部10の長手方向に沿って複数箇所形成されている構造とすることができる。さらには、管部10の全長の全てが網状ないしは半透膜から形成された構造とし、全ての部位が取り込み部11となっている構成とすることもできる。
【0016】
取り込み部11は、細胞外液を取り込むことができるだけでなく、取り込む際に、血液中に積極的に混入させることが好ましくない物質、少なくとも脂肪分をろ過作用などにより除去する機能を備えている必要がある。このような機能を付与する構成は任意であり、上記のように網状としたり半透膜を用いたりすることが挙げられる。また、旭化成メディカル(株)、東レ・メディカル(株)などから提供され、血液透析、血液濾過、血液交換などで用いられている中空糸膜を用いたフィルタをこの取り込み部11内に配置したり、取り込み部11に接続して用いたり、あるいは、取り込み部11自体をこのようなフィルタから構成したりすることで、脂肪分等の不純物を除去する機能をより高めた構成とすることもできる。
【0017】
接続部12は、管部10の他方側の端部に設けられる。接続部12は、静脈に接続可能で、管部10内に取り込んだ細胞外液を静脈に流すことができる限り、その長さ、太さ等は限定されるものではない。管部10より細径であってもよいし、管部10と同じ径であってもよい。また、材質も、生体適合性などの体内に埋設する際の要件を満たすものであればよい。材質としては、管部10と同様に人工血管材料として用いられているものが好ましい。
【0018】
接続部12の静脈への接合は、リンパ管静脈吻合術時におけるリンパ管を静脈に吻合する際と同様に、静脈の端部、周面のいずれでも可能である。接続部12が人工血管材料から形成されている場合、静脈には吻合により接続するが、例えば、体内留置可能な生体適合性等の要件を満たす合成樹脂製の針状部材を接続部12として用い、これを静脈の周面に刺して接続することもできる。
【0019】
接続部12は、管部10と同じ材料で形成されている場合、相対的に太い管部10に対して相対的に細い接続部12を該管部10の先端に取り付けて一体化させるのではなく、管部10の先端付近を徐々に細くなる形状として、その部分を接続部12とすることもできる。
【0020】
本実施形態によれば、例えば、下肢に埋設する場合、図3に示したように、取り込み部11を上側として、管部10を略U字状に曲げ、接続部12を静脈に接続する。この際、好ましくは、管部10、取り込み部11及び接続部12内には生理食塩水等を呼び水として満たしておく。取り込み部11を上側とすることにより、重力によって細胞外液を収集しやすくなる。取り込み部11に収集された細胞外液は管部10内を通過して接続部12に至り、該接続部12に接続された静脈内に取り込まれ、静脈内の血流中に流入する。
【0021】
本実施形態の細胞外液収集具1によれば、リンパ節切除等に起因して細胞外液の漏出が生じても、あるいは、リンパ管静脈吻合術を行ったにも拘わらず細胞外液の漏出が引き続き生じてても、それらは取り込み部11を通じて管部10内に取り込まれ、接続部12を介して静脈血流中に流入される。その結果、細胞外液の漏出によるリンパ浮腫を効率的に抑制できる。
【0022】
また、取り込み部11の上記の脂肪分等を除去する機能は、細菌の血流中への混入を防ぐこともできるため、蜂窩織炎などの細菌感染による重症化の抑制にも貢献できる。一方、腹水貯留が生じた場合には、腹水を静脈内に流入させ、改善する効果も期待できる。
【0023】
図4(a)は、本発明の他の実施形態にかかる細胞外液収集具100を説明するための図である。本実施形態の細胞外液収集具100は、収集部100Aが、脂肪分等を除去する機能を備えた面状部材101から構成される。ここでいう面状部材101は、二次元の薄膜状のメッシュ状のものや半透膜等を指し、メッシュの開口径や素材等が脂肪分等を除去するのに適するように調製されたものである。収集部100Aを構成する面状部材101の周縁部101aが静脈との接続部を構成し、この周縁部101aが静脈に接続される。具体的には、静脈を構成する血管に形成された接続用開口を塞ぐように面状部材101が重ねられ、周縁部101aが縫合等により血管に固定される。
【0024】
本実施形態では、細胞外液は、面状部材101を通過する際に脂肪分等が除去され、静脈内に流入する。それにより、上記実施形態と同様に、細胞外液の漏出によるリンパ浮腫を抑制できる。
【0025】
図4(b)は、本発明のさらに他の実施形態にかかる細胞外液収集具110を説明するための図である。本実施形態の細胞外液収集具110は、収集部110Aが、周壁部111bが脂肪分等を除去する機能を備えた袋状部材111から構成される。袋状部材111の開口縁部111aが静脈に接続される接続部を構成する。袋状部材111の開口部111cが静脈に形成した接続用開口を塞ぐよう配置され、開口縁部111aが血管に縫合等により固定される。袋状部材111の周壁部111bは、図4(a)の面状部材101と同様に、メッシュ状や半透膜等から構成される。本実施形態によれば、袋状部材111の周壁部111bの外部から内部へと細胞外液が流入するが、その際に脂肪分等が除去される。その後、開口縁部111aに取り囲まれた開口部111cを経て静脈内に流入し、上記実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【符号の説明】
【0026】
1 細胞外液収集具
10 管部
11 取り込み部
12 接続部
図1
図2
図3
図4