(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032177
(43)【公開日】2025-03-11
(54)【発明の名称】ペロブスカイト太陽電池のための正孔導電性自己組織化単分子層
(51)【国際特許分類】
C07F 9/38 20060101AFI20250304BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20250304BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20250304BHJP
H10K 30/82 20230101ALI20250304BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20250304BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20250304BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20250304BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20250304BHJP
C07F 9/572 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C07F9/38 E
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/82
H10K30/86
H10K85/50
H10K71/12
H10K85/60
C07F9/572 A CSP
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024209433
(22)【出願日】2024-12-02
(62)【分割の表示】P 2020560151の分割
【原出願日】2019-04-25
(31)【優先権主張番号】18000405.3
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102018115379.1
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591157202
【氏名又は名称】ヘルムホルツ-ツェントルム ベルリン フュア マテリアリエン ウント エナギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz-Zentrum Berlin fuer Materialien und Energie GmbH
【住所又は居所原語表記】Hahn-Meitner-Platz 1,D-14109 Berlin,Germany
(71)【出願人】
【識別番号】517200382
【氏名又は名称】カウナス ユニバーシティ オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】マゴメドフ,アルティオム
(72)【発明者】
【氏名】アル-アショウリ,アムラン
(72)【発明者】
【氏名】カスパラビチウス,エルネスタス
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ゲタウティス,ビタウタス
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】マリナウスカス,タダス
(72)【発明者】
【氏名】ケーゲルマン,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】コーネン,エイケ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】湿式化学エッチングによって処理された高さ数μmのピラミッドを有する構造化シリコンなどの任意の構造化表面をコンフォーマルに重ね合わせることができるHTMを提供する。
【解決手段】HTMと機能する式(I)の化合物をTCO状に形成する。
式中、Lは連結断片、Aはアンカー基、HTF(正孔輸送断片)は正孔導電性断片である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラー分子FMと混合される、式(I)の少なくとも1種の分子からなる化合物であって、前記式は:
【化1】
で与えられ、式中、Lは連結断片であり、Aはアンカー基であり、かつHTFは以下の式II又はIIIのいずれか1つから選択される正孔伝導性断片であり、前記式は、
多環式Z-D-Z、(II)、
であり、式中、Z及びDは同素環式である、又はZ若しくはDの少なくとも1つはN、S、O、Siからなる群から選択されるヘテロ原子を含み、かつZはC
5又はC
6置換もしくは無置換の芳香族基であり、DはN又はC
5若しくはC
6環式基であり、環式基Dの2つの隣接する炭素原子は2つの芳香族基Zの1つにそれぞれ結合し、かつ環式基Dの2つの隣接する炭素原子は残りの芳香族基Zにそれぞれ結合して、トリシクロウンデカン誘導体、トリシクロトリデカン誘導体、又はトリシクロテトラデカン誘導体を形成する;又は
【化2】
であり、式中、Rは置換基であり、
かつFMはアンカー基、N個の炭素原子を有するアルキル鎖(Nは1~18の範囲であり)、及びメチル、ハロゲン、アミノ、臭化物、アンモニウム及び硫黄の官能基のうちの少なくとも1つの官能基から選択される少なくとも1種の分子であり、xは0.02~1の範囲であり、yは(1-x)である、
前記化合物。
【請求項2】
前記化合物は、DはC5又はC6ヘテロ芳香族基であり、ヘテロ原子はN、Si、S及び/又はOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、前記正孔輸送断片HTFは以下の式IV~XIV
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
又は
【化13】
のうちの1つから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、x=1であり、かつy=0であり、Aはホスホン酸基であり、かつLがC2であり、HTFは式(II)から選択され、式中、DはNであり、かつZはメトキシ基で置換されたC6環式芳香族基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、x=1であり、かつy=0であり、Aはホスホン酸基であり、かつLはC2であり、HTFは、式(II)から選択され、式中、DはNであり、かつZがC6環式芳香族基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
反転アーキテクチャのペロブスカイト太陽電池に使用するために、TCO基材上に自己組織化単分子層を形成する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
・ 酸化物層で被覆された基材を提供するステップ
・ 以下の式に従う化合物で基材をコーティングするステップであって、前記式は、
【化14】
であり、式中、Lは連結断片であり、Aはアンカー基であり、HTFは以下の式II又はIIIから選択される正孔伝導性断片であり、前記式は、
多環式Z-D-Z (II)、
であり、式中、Z及びDは同素環式である、又はZ若しくはDの少なくとも1つはN、S、O、Siからなる群から選択されるヘテロ原子を含み、かつZはC
5若しくはC
6置換又は無置換の芳香族基であり、DはN又はC
5若しくはC
6環式基であり、環式基Dの2つの隣接する炭素原子は2つの芳香族基Zの1つにそれぞれ結合し、環式基Dの2つの隣接する炭素原子が残りの芳香族基Zにそれぞれ結合して、トリシクロウンデカン、トリシクロトリデカン、又はトリシクロテトラデカン誘導体を形成する;又は
【化15】
であり、式中、Rは置換基であり、
かつFMは、アンカー基、N個の炭素原子を有するアルキル鎖(Nは1~18の範囲である)、及びメチル、ハロゲン、アミノ、臭化物、アンモニウム及び硫黄の官能基の少なくとも1つの官能基から選択される少なくとも1種の分子であり、xは0.02~1の範囲であり、yは(1-x)に等しく、溶媒及び化合物を含む溶液に基材を浸漬すること、又は溶液中の化合物を基材上にスピンさせることによって得られる前記分子である、前記ステップ、
を含む、前記方法。
【請求項7】
前記化合物はスピンコーティングされ、前記スピンコーティングは回転コーティングによって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6又は7のいずれか一項に記載の方法であって、
・ 続いて、基材を熱アニールし、及び/又は洗浄する、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ハイブリッドペロブスカイト吸収層を用いた太陽電池は、電力変換効率(PCE)の20%という限界値を驚くほど短期間で超え、22.7%という記録的な効率を達成している(「NREL効率チャート」https://www.nrel.gov/pv/assets/images/efficiency-chart.png、2017年参照)。ペロブスカイト太陽電池(PSC)の公開記録の結果は(W.S.Yangら、Science2017、356、1376~1379)、透明導電性酸化物(TCO)基材上の電子伝導材料としてのTiO2(コンパクトでメソポーラスな層)を有するn-i-p構成(文献では「通常の(regular)」PSCと呼ばれることが多い)で得られたものである。正孔輸送材料(HTM)が第1にTCO上に堆積するp-i-n構成(文献では「反転」PSCと呼ばれることが多い)では、20%を超える効率も報告され(J.Zhaoら、Energy Environ.Sci.2016,9,3650-3656、及びM.Stolterfohtら、Sci.2017,10,1530-1539)、これにより競争力のある製品となっている。これらの結果はすべて、この急速に発展している分野でのより多くの研究を刺激するものである。
【背景技術】
【0002】
p-i-nのPSCは、より一般的なn-i-pアーキテクチャと比較し、いくつかの利点がある。第一には、TiO2の形成に必要な高温アニールを回避できる。第二に、それらは、特定の条件下でヒステリシスがなお検出することができる場合でさえ、はるかに低い顕著なヒステリシスを有することが知られており、その結果、実質的に「ヒステリシスのない」デバイスが得られる(J.H.Heoら、Energy Environ.Sci.2015,8,1602~1608)(D.Bryantら、J.Phys.Chem.Lett.2015,6,3190-3194及びP.Calado,Nat.Commun.2016,7,13831)。第三に、金の代わりに、はるかに安価な銅を金属接触層として使用することができる(J.Zhaoら、J.Huang、Energy Environ、Sci.2016、9、3650~3656)。次に、スピロ-OMeTAD(2,2′,7,7′-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン)のドーパントは安定性を低下させることが知られているため、電荷選択的接触にドーピングを必要とせず、長期的な安定性を向上させることができる。最後に、フロントコンタクトにおけるより低い寄生吸収に起因するp-i-n構成(K.A.Bushら、改良された安定性を有する23.6%効率のモノリシックペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池、Nature energy Vol.2,2017,17009_1-7)は、より高いタンデム効率ポテンシャルを可能にし、したがって、さらなる発展のための大きな可能性を有することが示されている。
【0003】
最近の論文(Stolterfohtら,Energy Environ Sci.2017,10(6),1530)では、HTM層の厚さの減少が充填率(FF)の増加をもたらすことが示された。しかし、膜が薄くなるにつれて、開回路電圧(Voc)が急激に低下する。これは、酸化インジウムスズ(ITO)の被覆が不完全である可能性があるためであり、結果としてペロブスカイトとITOの間で直接接触するためである。
【0004】
近年、TiO2の代わりにホスホン酸ベースの混合化C60/有機自己組織化単分子層(SAM)をn-i-p-PSCの電子導体として使用することに関するY.Houらのいくつかの研究がある(Y.Houら、Adv.Mater.Interfaces2017,4,1700007、及びY.Houら、Science2017,358,1192~1197)。同様に、P.Topolovsekら(J.Mater.Chem.A 2017,5,11882-11893)によってもシロキサン官能化C60のSAMもまた使用された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「NREL効率チャート」https://www.nrel.gov/pv/assets/images/efficiency-chart.png、2017年
【非特許文献2】W.S.Yangら、Science2017、356、1376~1379
【非特許文献3】J.Zhaoら、Energy Environ.Sci.2016,9,3650-3656、及びM.Stolterfohtら、Sci.2017,10,1530-1539
【非特許文献4】J.H.Heoら、Energy Environ.Sci.2015,8,1602~1608
【非特許文献5】D.Bryantら、J.Phys.Chem.Lett.2015,6,3190-3194及びP.Calado,Nat.Commun.2016,7,13831
【非特許文献6】J.Zhaoら、J.Huang、Energy Environ、Sci.2016、9、3650~3656
【非特許文献7】K.A.Bushら、改良された安定性を有する23.6%効率のモノリシックペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池、Nature energy Vol.2,2017,17009_1-7
【非特許文献8】Stolterfohtら,Energy Environ Sci.2017,10(6),1530
【非特許文献9】Y.Houら、Adv.Mater.Interfaces2017,4,1700007、及びY.Houら、Science2017,358,1192~1197
【非特許文献10】P.Topolovsekら、J.Mater.Chem.A 2017,5,11882-11893
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、対応する表面上の自己組織化のために構成される正孔伝導材料に起因して正孔輸送される、最小の厚さを有するTCO上の均一な形状の層に関する。さらに、寄生吸収の最小化、材料消費の低減、及びドーピング手順の回避は、特にスケーラブルな技術の提供に関連して解決すべき問題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
さらに、本発明は、ペロブスカイト処理に比較的耐性があり、太陽電池で一般的であるように湿式化学エッチングによって処理された高さ数μmのピラミッドを有する構造化シリコンなどの任意の構造化表面をコンフォーマルに重ね合わせることができるHTMを提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ホスホン酸官能化カルバゾール誘導体V1036の合成:a)1,2-ジブロモエタン(6.5ml/当量)、TBABr(0.3当量)、50% KOH水溶液(15当量)、72時間、60℃;b)亜リン酸トリエチル(3.6ml/当量)、18時間、165℃;c)4,4′-ジメトキシジフェニルアミン(3当量)、Pd(OAc)
2(0.3当量)、P(t-Bu)
3-BF
3(0.6当量)、NaOt-Bu(3当量)、無水トルエン(24.5ml/当量)、Ar、5時間、還流;d)(10当量)、無水ジオキサン(29.4ml/当量)、Ar、24時間、25°C;e)MeOH(19.6ml/当量)、H
2O(19.6ml/当量)、15時間、室温。
【
図2】A)V1036及びPTAA(ポリトリアリールアミン)の10
-4M THF溶液のUV/VIS吸収スペクトル;B)裸のITO基材、PTAAを有するITO、及び100%V1036のSAMを有するITOのUV/VIS吸収スペクトル。
【
図3】V1036のTGA加熱曲線。加熱速度10℃ min
-1。
【
図4】A)(a)V1036の1mM溶液、(b)V1036:C4(1:9)の1mM混合溶液、及び(c)C4の1mM溶液から調製したSi/ITO基材上の単分子層のFTIR吸収スペクトル。B)KBr錠剤における主質量V1036のFTIRスペクトル。
【
図5】A)(a)V1036の1mM溶液、(b)V1036:C4(1:9)の1mM混合溶液、(c)C4の1mM溶液から調製したSi/ITO基材上の単分子層の分光範囲1150~1300cm
-1、及びB)分光範囲1400~1600cm
-1でのFTIR吸収スペクトル。
【
図6】A)SAM組成物におけるV1036の割合に依存する接触角;B)100%C4のSAM;PTAA;100%V1036のSAMに対するペロブスカイト溶液の平衡接触角。
【
図7】PTAA及びSAMのHTMを有する最も強力なPSCのJ-V特性。
【
図8】A:PTAA及び10%V1036 90%C4のSAMのHTMを有する最も強力なPSCの順走査及び逆走査のJ-V特性。B:PTAA及び10%V1036 90%C4のSA-HTMの最も強力なPSCのEQE及び統合Jsc。挿入は、Jscの統計分布を示す。
【
図9】PTAA及び10%V1036 90%C4のSEMの上面及び断面図である。
【
図10】異なるHTM-SAM、V1036、PTAA、V1193及びV1194に適用された「トリプルカチオン」ペロブスカイト吸収体(Cs
5(MA
17FA
83Pb(I
83Br
17)
3)
95)の特性の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従って、本発明の一態様は、HTMとして機能する式(I)の少なくとも1つの分子からなる化合物を提供することからなる:
【化1】
式中、Lが連結断片であり、Aがアンカー基であり、HTFが下記の式II又はIIIから選択される正孔輸送断片であり、
多環式 Z-D-Z、 (II)
式中、Z及びDは複素環式である、又はZ若しくはDの少なくとも1つはN、S、O、Siの群から選択されるヘテロ原子を含み、ZはC
5若しくはC
6置換又は無置換の芳香族基であり、DはN又はC
5若しくはC
6芳香族基であり、芳香族基Dの2つの炭素原子がそれぞれ2つの芳香族基Zの1つに結合して、トリシクロウンデカン、トリシクロテトラデカン又はトリシクロテトラデカン誘導体を形成する;又は
【化2】
式中、Rは置換基である。
【0010】
電子の局在化により、本発明に従う化合物は正孔伝導材料として機能する。このためには、系全体で電子の局在化が可能な化合物が好ましい。特に、断片Dを介するZ断片間の非局在化が好ましい。したがって、Dは、好ましくは、芳香族断片及び/又は電子押し出し特性を有する元素であり、断片Zと連結している。特に、対称構造、すなわち、軸に沿ってミラーリング可能な化合物が好ましい。ミラーリングとは、図式的構造を指し、必ずしも実際の立体的な外観を指すものではない。
【0011】
鏡軸が成分Dを通ることで、2つのZ成分が等しくなる、又は逆になるようにすることが有利である。
【0012】
SAMを形成するためには、式(I)の分子を「フィラー分子」(FM)と呼ばれる他の分子と混合することができる。FMは、一般に、TCOの表面に結合可能なアンカー基(例えば、ホスホン酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸、シロキサン)、N個の炭素原子を含むアルキル鎖(N=1~18)、及び官能性のメチル基、ハロゲン基、アミノ基、臭化物基、アンモニウム基及び/又は硫黄基によって形成される分子又はその分子の混合物である。例としては、エチル又はブチルホスホン酸(「C2」又は「C4」)又は(アミノメチル)ホスホン酸が挙げられる。FMは、TCOとペロブスカイトとの間の電荷キャリア再結合を低減する不動態化剤として、及びTCOの濡れ性を改質する薬剤として作用する。しかし、FMのない調製は、HTF、L及びAの選択された割合で、かつまた不利な点がないように通常可能である。
【0013】
混合物中のHTMの割合xは、0.02~1の範囲である。フィラー分子の割合(FM)は、y=(1-x)で与えられる。式(I)のHTMにおいて、nは好ましくは1又は2に等しい。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、DはC5又はC6ヘテロ芳香族基であり、ヘテロ原子はN、Si、S及び/又はOである。
【0015】
さらなる好ましい実施形態では、正孔導電性断片(HTF)は、式IV~XIXで与えられるものの1つから選択される。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
又は
【化13】
【0016】
代替的又は追加的に、R基は、独立して、H;C1~C10アルキル;C2~C10アルケニル;C3~C20シクロアルキル;C3~C8ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミド、エステル、カルボン酸、ジアルコキシジフェニルアミン、カルバメート、尿素、ケトン、アルデヒド、シアノ、ニトロ、ハロゲン;(シクロアルキル)アルキル;及び(ヘテロシクロアルキル)アルキルからなる群から選択される。
【0017】
特に、R基は独立して水素から選択され、
【化14】
【化15】
式中、
点線は、Rが式II又はIIIのHTFに連結されている結合を表し;Xはハロゲン(F、Cl、Br、I)を表し;R’’’は水素、アルキル(C
1~C
12)を表し、及び/又はR’’は水素、アルキル、アルコキシ(-CH
3;-OCH
3)を表す。
【0018】
さらなる実施形態では、連結断片Lは、C
1~C
9アルキレン、C
4~C
20アリーレン、C
4~C
20ヘテロアリーレン、C
4~C
20アルキルアリーレン、C
4~C
20ヘテロアルキルアリーレンから選択される1つであり、ヘテロ原子は、O、N、S、Se、Siから選択され、前記アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキルアリーレン、ヘテロアルキルアリーレン、ヘテロアルキルアリーレンは、それらが3つ以上の炭素原子からなる場合、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、特に以下のいずれか1つから選択され、
【化16】
式中、
点線は、Lが式II又はIIIに従うHTFに連結される結合を表す。
【0019】
好ましい実施形態では、アンカー基A(ヘッド基)は、ホスホン酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸、シロキサン、特に以下のいずれか1つから選択され、
【化17】
式中、点線は、前記請求項のいずれか1つに従い、AがLに連結されている結合を表し、R’は好ましくは脂肪族である。
【0020】
本発明のさらなる態様は、本発明のステップを構成する正孔導電性材料を提供することである。
【0021】
本発明の別の態様は、光電気及び/又は光電子成分に関するものであり、これは、前述の実施形態の1つに従う組み合わせの発明のステップを含む。
【0022】
特に、光電気及び/又は光電子成分は正孔導電性材料を含み、正孔導電性材料は式II又はIIIの化合物を含む。
【0023】
好ましくは、光電気及び/又は光電子化学デバイスは、少なくとも1つの単分子層の形態において増感分子としての有機無機ペロブスカイトを含む固体太陽電池である固体光起電力デバイスである。
【0024】
本明細書でいう「ペロブスカイト」という用語は、「ペロブスカイト構造」を意味し、特にペロブスカイト材料であるCaTiO3を指すものではない。本明細書の目的のために、「ペロブスカイト」は、任意の材料を含み、好ましくは、酸化カルシウムチタンと同じ種類の結晶構造を有する任意の材料を指し、かつ2価のカチオンが2個の別々の1価カチオンで置換されている材料を指す。ペロブスカイト構造は、一般的な化学量論AMX3を有し、ここで、「A」及び「M」はカチオンであり、「X」はアニオンである。「A」及び「M」カチオンは異なる電荷を持つことができ、元のペロブスカイト鉱物(CaTiO3)では、Aカチオンは2価であり、Mカチオンは4価である。本発明の目的のために、ペロブスカイトの式は、本明細書の他で与えられる式に従って、同じであっても異なっていてもよい1個(1)、2個(2)、3個(3)又は4個(4)のカチオン、及び/又は1個又は2個(2)のアニオン及び/又は2個又は3個の正電荷を保持する金属原子を有する構造からなる。
【0025】
さらに、光電気及び/又は光電子化学デバイスの有機-無機ペロブスカイト層材料は、下記の式のいずれか1つのペロブスカイト構造を有することが好ましい:
A1A2A3A4MX3、A1A2A3MX3、A1A2MX4;A1MX3;A1A2N2/3X4;A1N2/3X3;BN2/3X4;A1
2NMX6;BMX4、式中、
- A1、A2、A3、A4は、独立して、1級、2級、3級又は4級の有機アンモニウム化合物から選択される有機一価カチオン又はその混合物のいずれかであり、N含有ヘテロ環及び環システムを含み、ここで、A及びA’は、独立して、1から60個の炭素原子及び1から20個のヘテロ原子(例えば、メチルアンモニウム又はホルムアミジニウム)又は無機カチオン(例えば、Na、K、Rb、Cs)を有している。
- Bは、1~60個の炭素原子を有し、2~20個のヘテロ原子を有し、かつ2個の正荷電窒素原子を有する1級、2級、3級又は4級の有機アンモニウム化合物から選択される有機2価カチオンである;
- Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、又はYb2+からなる群から選択される2価の金属カチオンである;
- Nは、Bi3+及びSb3+からなる群から選択される;及び
- Xは、独立して、Cl-、Br-、I-、NCS-、CN-及びNCO-から選択される。Xはまた、記載されるハロゲン化物/アニオンの混合物であってもよい。
【0026】
好ましい実施形態では、SAMを形成するための本発明による化合物は、以下のように特徴付けられる。式Iの部分xがx=1であり、このことからFM(フィラー分子)の部分yがy=0になる。アンカー基Aはホスホン酸基から形成され、LはC2である。正孔導電性断片HTFは、DがNであり、Zがメトキシ基で置換されたC6環式芳香族基である式(II)(Z-D-Z)から選択される。別の好ましい実施形態では、上記と同様であるが、Zがメトキシ基で置換されない。どちらのバージョンも、フィラー分子(FM)を使用せずに調製できるという点で特に共通しており、それらの特性と安定性とを損なうことがない。
【0027】
本発明のさらなる態様は、本発明のステップを、光電気及び/又は光電子デバイスにおける正孔導電性材料として使用することである。
【0028】
本発明の化合物を、反転アーキテクチャのペロブスカイト型太陽電池で使用するためにTCO上にSAMとして形成する方法は、2つの方法によって実現され、1つの方法は、以下のステップからなる。
【0029】
第一に、酸化物層、好ましくはTCOで被覆された基材を提供し、この基材は、溶媒及び以下の式に従う化合物を含む溶液中に浸漬され、
【化18】
式中、Lは連結断片であり、Aはアンカー基であり、HTFは下記式II又はIIIから選択される正孔伝導性断片であり、前記式は、
多環式Z-D-Z、(II)、
であり、式中、Z及びDは複素環式である、又はZ若しくはDの少なくとも1つはN、S、O、Siの群から選択されるヘテロ原子を含み、ZはC5若しくはC6置換又は無置換芳香族基であり、DはN又はC5若しくはC6芳香族基であり、芳香族基Dの2つの炭素原子はそれぞれ2つの芳香族基Zの1つに結合して、トリシクロウンデカン、トリシクロテトラデカン又はトリシクロテトラデカン誘導体を形成する;又は
【化19】
であり、式中、Rは置換基であり、
FMは、一般に、TCOの表面に結合することができるアンカー基(例えば、ホスホン酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸、シロキサン)、N個の炭素原子を有するアルキル鎖(N=1~18)、及び官能性のメチル基、ハロゲン基、アミノ基、臭化物基、アンモニウム基及び/又は硫黄基からなる分子又はその混合物であり、xは0.02~1の範囲であり、yは(1-x)に等しい。FMの例としては、エチル又はブチルホスホン酸(「C2」又は「C4」)又は(アミノメチル)ホスホン酸が挙げられる。溶液の溶媒として、化合物を溶解することができ、かつ表面の浸漬を保証することができる液体であれば、どのようなものでも選択することができる。溶液中の化合物の濃度は、好ましくは1リットル当たり0.01~100mMの範囲である。表面を浸漬してSAMを形成する時間は、少なくとも分子が酸化物表面に結合するのに十分な時間であることが好ましく、5分~50時間の範囲であることが好ましい。浸漬後、基材を溶媒から除去する。好ましい態様では、次いで、基材を熱的に加熱及び/又は洗浄する。
【0030】
代替的な方法では、本発明に従う化合物を、FMの有無にかかわらず、溶液中でスピンコーティングする(例えば、回転する)。選択されたHTM及び可能な基材のための最適な方法は、必要に応じて実験的に決定することができる。
【実施例0031】
ホスホン酸で官能化されたジメトキシジフェニルアミン置換カルバゾール(V1036)を合成した。ジメトキシジフェニルアミン置換カルバゾール断片は、通常のペロブスカイト太陽電池のためのいくつかの効率的なHTMに見出すことができ、カルバゾールの9位の活性の水素は、ホスホン酸アンカー基(ヘッド基)との官能化にさらに利用することができる。
【0032】
合成は、市販の材料から始めて、4つのステップの合成手順で行った(
図1参照)。第1のステップでは、3,6-ジブロモカルバゾールを1,2-ジブロモエタンでアルキル化して中間体化合物1を形成した。次のステップでは、アルブゾフ反応によりこの脂肪族臭化物をホスホン酸エチルエステル2に変換した。さらに、パラジウムによって触媒するBuchwald-Hartwigアミノ化反応を用いて、ジメトキシジフェニルアミン断片を導入し化合物3を得た。最後に、ブロモトリメチルシランでエステルを開裂してホスホン酸V1036を得た。合成した化合物の構造を
1H-及び
13C-NMR分光法で確認した。合成の方法のより詳細な説明は以下に記載される。
【0033】
反転PSCでは、光は最初にHTM層を通過するので、この層の寄生吸収を最小限に抑えることが重要である。V1036の光学特性は、10
-4MのTHF(テトラヒドロフラン)溶液中でUV/VIS分光法により調べた(
図2A)。ジメトキシジフェニルアミン3,6置換カルバゾール発色団系に特徴的なλ
max=304nmの強いπ-π
*吸収バンド、及び350~450nmの弱いn-π
*バンドを観測することができる。PTAAに比べて、V1036は吸収幅が広いが、単分子層の厚さがはるかに小さいため、ITO上に形成した場合には吸収が無視できる程度である(
図2B)。
【0034】
図3からわかるように、FMを含まない基材V1036は、343℃の温度(T
dec)で95%重量の減少を示し、光電子部品での実用化に適している。
【0035】
ITO表面でのSAM形成を確認するために、Si/ITO基材上の自己組織化単分子層のFTIR(フーリエ変換赤外分光法)スペクトルを作成し(
図4A)、KBr錠剤中に分散したV1036ベースの化合物のスペクトルと比較した(
図4B)。メタノールにおいて1mM V1036溶液(100% V1036)から調製したSAMのスペクトルは、1238及び1503cm
-1の2つの強いバンドを、1442、1461及び1485cm
-1付近の低い強度の成分と共に示す(
図4A、(a))。単分子層のスペクトルで観察されたすべての特徴は、V1036ベース化合物の赤外スペクトルで見える吸収バンドに近く、ITO基材の表面にV1036が存在していることを確認した。1503cm
-1の最も強いバンドは、カルバゾール構造の芳香環の原子価振動の面におけるC=Cに関連し、一部はp-メトキシフェニル基の原子価振動の平面におけるC=Cの寄与に関連する。C-N結合の原子価振動は1238cm
-1付近で強いバンドとして見ることができる。1438~1442及び1461~1466cm
-1付近の2つの中強度のバンドは、高い割合のメトキシ基の対称及び非対称CH
3変形振動を含む。1503cm
-1付近のバンドの積算吸収強度については、0.1mMのV1036及び0.9mMのC4をFMとして用いたメタノール溶液から調製したSAM(10%のV1036 90%のC4)では、相対強度が0.62まで低下し、100%のV1036のSAM(相対強度1.00)に比べてV1036化合物による表面被覆率が低下していることを示すことが測定された。明らかに、V1036化合物の表面被覆率の減少は、吸収剤溶液の組成から予想されるほど高くはなく、C4と比較してV1036のより高い表面親和性を示している。
【0036】
図5では、Si/ITO基材上のHTMのSAM(フィラー分子を有する及び有さないV1036)の振動和周波発生(VSFG)スペクトルを1150~1300cm
-1(A)及び1400~1600cm
-1(B)の範囲で示す。100%のV1036のSAMのスペクトルにおいて、約1237cm
-1(
図5A、(a))及び約1490cm
-1(
図5B、(a))にて2つのピークを同定した。これらの2つのバンドは、同じ単分子層のFTIRスペクトルで見られる2つの最も強い振動バンドに相当する(
図5A、(a))。Si/ITO基材は、実質的な非共振SFGシグナルを提供し、式(S1)からわかるように、これは共振シグナルと干渉し、スペクトルの歪みを引き起こす。この干渉のため、約1490cm
-1を中心とする共鳴の形状は、非対称ファノ型共鳴に似ており、FTIRスペクトル(約1503cm
-1)と比較して周波数がシフトしているように見える。
【0037】
10%のV1036 90%のC4のSAMのスペクトルでは、振動バンドは確認されなかった。期待されるVSFGの強度は、100%のV1036のSAMの強度よりも約100倍未満である必要がある。このような場合、LSFGシグナルは検出限界を下回るであろう。しかし、FTIRスペクトルは、混合SAMにおけるV1036の表面被覆率約0.62は、純粋なV1036のSAMの表面被覆率に相当することを示した。このような表面被覆を有する単分子層のVSFGシグナルはなお検出可能なはずであるが、シグナルは記録されなかった。この測定されたVSFGシグナルは、調査された分子の配向において非対称性に対して比例し、それに応じて表面の分子秩序について固有の情報を提供する。このことは、混合された溶液から調製された単分子層は、純粋なV1036溶液から調製された単分子層と比較して、より無秩序な構造をもたらすことを示している。
【0038】
SAMの表面エネルギーへの影響及び混合SAMの割合の変化の影響を調べるために、トリプルカチオンペロブスカイト溶液を試験液として用いて接触角測定を行った。
図6/表1に示すように、PTAA、100%のV1036のSAM、100%のC4のSAMの接触角は、それぞれ42.6°、26.3°、60.5°である。混合SAMでは接触角が徐々に変化しており、ITO表面上に2つの種が存在することが確認された。接触角の違いは材料の極性と相関しており、非極性脂肪族100%のC4のSAMではより大きな角度の値となり、官能性メトキシ基を持つ100%のV1036のSAMでは最も低い値となる。
【0039】
【0040】
エネルギー準位の良好な調整は、成分の効率的な動作のために重要な前提条件である。SAMがITO基材のエネルギー準位に与える影響を調べ、V1036の質量特性を調べるために、空気中において光電子分光法(PESA)によりイオン化ポテンシャル(Ip)を測定した(表2)。
【0041】
ITO上に2mg/mlのトルエンを回転塗布したPTAA膜では、5.18eVのIp値が得られ、これは以前に報告された5.16eVに近い値である。基質V1036は5.04eVのIpを示しており、これは、この発色団に特徴的な値である。ITO上に形成された100%のV1036のSAMについては、4.98eVの値が得られ、これは基質の値とよく一致している。10%のV1036 90%のC4の組成の混合SAMは、5.09eVの値を示した。混合SAMはわずかに高いIp値を与えるが、その変化は0.1eVの範囲内であり、それに応じてデバイスの性能に大きな影響を与えることはないはずであると推測できる。
【0042】
【0043】
形成されたSAMがHTMとして機能することができるかどうかを調べるために、ITO/HTM/ペロブスカイト/C60/BCP/Cuアーキテクチャのp-i-n-PSCデバイス(BCP:Bathocuproin)を構築した。全てのデバイスにトリプルカチオンペロブスカイトを使用し、対照HTMとしてドーパント無しのPTAAの薄層を使用した。
【0044】
第一に、V1036とブチルホスホン酸(C4)との比率がデバイスの性能に与える影響を調べた。
図7から分かるように、10%のV1036を用いたSAMでは、最も高い結果の17.8%のPCEが達成された。PTAAを用いた対照デバイスは、18.4%のPCEであり、わずかに高い効率を示した。
【0045】
異なるパラメータの変動についてのより良い洞察を得るために、統計データを表3に示す。ここで見られるとおり、Jscはわずかに変化し、平均的にはPTAAに対して、SAMのHTMは非常に近いか、あるいはわずかに優れている。これは、SAMのHTM層による寄生吸収がより低いことによって説明できる。SAMの平均FFはPTAAのそれよりもわずかに低く(76.3%)、25%のV1036 75%のC4のSAMでは最大である71.2%に達し、最良値はPTAAの値に非常に近い。V1036がより高いレベルでは、ペロブスカイトとITOが直接接触している可能性により、Vocの減少が観察された。この仮定は、主にVocの強力な減少により、裸のITOを有するHTM無しのデバイスが非常に低い性能を示したという事実によって裏付けられる。
【0046】
表3.J/Vスキャンから抽出された平均PSC性能パラメータであり、(カッコ内では)最良のデバイスの性能パラメータ及び標準誤差を含む。統計は、異なるHTMの異なる基材における9~20個の電池に基づいている。
【0047】
【0048】
p-i-n-PSCでは無視できる程度のヒステリシスしか観測されないことが知られている。SAM-HTMの場合、10%V1036 90%C4のSAMを有する最良のデバイスは、PTAAを有する対照デバイスよりもわずかに強いヒステリシスを示しただけであった(
図8A)。
【0049】
フィラー分子としての脂肪族ホスホン酸の長さがデバイスの全体的な性能に与える影響を調べるために、エチルホスホン酸(C2)及びn-ヘキシルホスホン酸(C6)を次いで試験した。10%V1036 90%C6のSAMでは、濡れ性が悪いため、ペロブスカイト膜はほとんど形成することができなかった。C2のフィラーを使用したデバイスは、Voc及びJscが減少したため、性能がわずかに低下した。したがって、C4は、V1036と組み合わせたフィラー分子の好ましい長さの一つである。
【0050】
最良のデバイスの特性をさらに調べるために、外部量子効率(external quantum efficiency)(EQE)測定を行った。
図8Bから、SAMの厚さが非常に小さいために、電流の流れにおいて小さいゲインを達成することができることがわかる。これは、以前にUV/VIS吸収測定で示したように、HTMの吸収が減少したためである(
図2)。EQEデータを統合して得られたJsc値は、J/Vスキャンで得られたJsc値とほぼ一致している。
【0051】
SAMによってペロブスカイトの形態の違いがあるかどうかを確認するために、SEM(走査型電子顕微鏡)による調査を実施した。SEM(
図9)の上面及び断面像からわかるように、SAMはペロブスカイトの形態に多くの変化をもたらさず、結晶粒は対照成分のものと同様であった。
【0052】
合成及び特性評価の方法における更なる情報
化学物質はSigma-Aldrich社及びTCI Europe社から調達し、さらなる洗浄をせずに、受領したとおりに使用した。1H及び13CのNMRスペクトルを、Bruker Avance III(400MHz)分光計において室温で記録した。すべてのデータは、δ(ppm)の化学シフトとして得られる。反応生成物の過程は、ALUGRAM SIL G/UV254プレート上のTLCでモニターし、UV光を用いて進展した。カラムクロマトグラフィーにはシリカゲル(グレード9385、230~400メッシュ、60Å、Aldrich)を使用した。元素分析は、Exeter Analytical CE-440元素分析装置、モデル440C/H/N/を用いて行った。熱重量分析(TGA)は、Q50熱重量分析装置(TA Instruments)を用いて、窒素雰囲気下で10Kmin-1の走査速度で行った。融点を測定するために、電熱MEL-TEMPキャピラリー溶融装置を使用した。UV/VISスペクトルは、島津製作所製UV-3600分光計を用いて記録した。
【0053】
接触角は、Kruss社製の落下形状解析システムDSA25を用いて測定した。
【0054】
FTIR及びVSFG測定については、ITOをSi基材上に成膜し、上述の方法に従ってSAMでさらに官能化した。
【0055】
単分子層のFTIRスペクトルを、液体窒素冷却MCT狭帯域検出器を備えたFTIR分光計Vertex80v(Bruker,Inc.ドイツ)を使用して透過モードで記録した。スペクトルは、4cm-1の分解能で512回のインターフェログラムスキャンから得られ、最終的なスペクトルは2つのスペクトルを平均して決定された。参照試料として、厚さ30nmのITO層を有するブランクSi基材を使用した。測定中は試料室と分光計は排気された。スペクトルはバックグラウンド減算の多項式関数により補正した。実験データには平滑化法を適用しなかった。バンドのパラメータは、ソフトウェアGRAMS/AI8.0(Thermo Electron Corp)を用いて、ガウスのローレンツィアン形状の構成要素に実験の輪郭をフィットさせることにより決定した。
【0056】
V1036ベースライン試料の赤外スペクトルは、室温検出器DLATGSを備えたALPHA FTIR分光計(Bruker,Inc,ドイツ)において透過モードで記録された。スペクトル分解能は4cm-1とした。スペクトルは、124回のインターフェログラムスキャンから得られた。試料をKBr錠剤に分散した。
【0057】
VSFGスペクトルは、以前の研究で詳細に記載したEkspla PL2143A20から市販のVSFGシステムを用いて取得した。簡潔には、Nd:YAGレーザーは、約28psのパルス長及び20kHzの繰り返し速度で1064nmにて、パルスを生成する。レーザー出力の一部は、光学パラメトリックジェネレーター(EKSPLA PG401VIR/DFG)をポンピングして、赤外線パルス(ωIR)を生成するために使用され、これは、通常のエネルギーが60~200μJの1000cm-1~4000cm-1の範囲で調整できる。レーザー出力の第2の高調波(532nm)は、和周波発生のための可視光(VIS)として使用される(ωSF)。この和周波は、赤外パルス及び可視パルスが試料表面で時空間的に重なったときに発生する。本研究での全てのスペクトルは、偏光組み合わせssp(s-SFG、s-VIS、p-IR)を用いて記録された。可視光線の強度は、試料への損傷を避けるために減衰させた(約30μJ)。生成された和周波光はモノクロメーターでフィルタリングされ、光電子増倍管(PMT)で検出される。
【0058】
測定されたVSFG強度は次式に比例し、
【数1】
式中、A
NRは非共振振幅、A
rqはq番目の振動の共振振幅、φは共振寄与と非共振寄与の間の位相であり、ωqとΓqはそれぞれq番目の振動の周波数及び幅である。
【0059】
V1036、ITO上のPTAA、ITO上のSA-HTMの固体イオン化電位(Ip)を空気中で電子光電子放出法により測定した[14-16]。V1036ベースの基材のイオン化電位測定用試料は、材料をTHFに溶解して調製し、約0.5μm厚のメチルメタクリレートとメタクリル酸との共重合体接着剤層をプレコーティングしたAl板に塗布した。層厚は約0.5~1μmであった。ITO上のPTAA層は、PSC形成に用いられたプロセスと同様に、回転コーティングにより形成した。上記のプロセスを経て、SAM-HTMを形成した。
【0060】
通常、光電子分光実験は真空中で行われ、高真空はこれらの測定のための主要な要件の一つである。真空度が十分に高くない場合、試料表面の酸化及びガス吸着が測定結果に影響するであろう。しかし、本研究の場合は、調査対象の有機材料は酸素に対して十分に安定しており、空気中での測定が可能である。試料には重水素ランプを備えた石英モノクロメーターの単色光を照射した。入射光の出力は(2~5)10-8Wである。試料基材には-300Vの負電圧を適用した。4.5×15mm2の照明用スリットを有する対向電極を試料表面から8mmの距離に配置した。光電流測定用のオープン入力モードで動作するBK2-16型エレクトロメーターの入力にこの対向電極を接続した。照明時に10-15~10-12Aの強い光電流が回路内に流れた。光電流Iは、入射光光子エネルギーhνに強く依存している。I0.5=f(hν)依存性をプロットした。一般に、光電流の入射量子光エネルギーへの依存性は、閾値付近でのI0.5とhνとの間の線形関係によってよく記述される。この依存性の線形部分をhν軸に外挿し、交点での光子エネルギーとしてIp値を決定した。
【0061】
レーザー構造化酸化インジウムスズ(ITO)ガラス基材(25×25mm、15Ωsq-1、Automatic Research GmbH社製試料)を、2%のムカソル溶液、脱イオン水、アセトン及びイソプロパノールで連続的に15分間、超音波浴中で洗浄した。その後、試料を窒素銃で乾燥し、HTM成膜の直前に基材は、UVオゾンクリーナー(FHR Anlagenbau)で15分間処理した。
【0062】
他のすべての手順は、窒素で満たされたグローブボックス中で行われた。
【0063】
HTMのSAMは、UVオゾンで処理したITO基材を、対応するホスホン酸分子をイソプロパノールに溶解した1mM/L溶液に20時間浸漬し、次いで100℃で1時間アニーリングした後、イソプロパノール及びクロロベンゼンで洗浄することにより得られた。単分子層の品質を向上させ、太陽電池デバイスの性能への影響を調べるために、純粋なV1036のSAMに加えて、V1036及びn-ブチルホスホン酸(C4)を異なる比率で混合したものを調査した。
【0064】
PTAA対照デバイスには、PTAA(Sigma Aldrich)を無水トルエンの2mg mL-1溶液により、4,000rpm(5秒加速)で30秒間回転コーティングし、100℃の加熱プレート上で10分間アニーリングした。
【0065】
わずかに修正した近年公開された方法に従い、トリプルカチオンCs0.05(MA0.17FA0.83)0.95Pb(I0.83Br0.17)3ペロブスカイト膜を形成した。第一に、60℃で一晩振とうすることにより、PbBr2及びPbI2をDMF:DMSO(体積比4:1)に公称濃度1.5Mまで溶解した。次に、PbBr2及びPbI2のストック溶液をそれぞれMABr粉末及びFAI粉末に添加し、最終濃度1.24MのMAPbBr3溶液及びFAPbI3溶液を得た。鉛とそれぞれのカチオンのモル比は、両方の溶液で1.09:1.00(9%過剰鉛)であった。次いで、MAPbBr3溶液及びFAPbI3溶液を1:5の体積比で混合した。最後に、DMSO中の1.5M CsI溶液により5:95の体積比でセシウムカチオンを添加した。この最終的なペロブスカイト溶液を、準最適である濡れ性特性を有する基質のために、5:95の体積比でDMF:DMSO(4:1)を添加することにより、わずかに希釈した。
【0066】
前駆溶液を、以下のプログラム:4,000rpm(5秒加速)で35秒(総時間-40秒)において、回転コーティングによりHTM層の上に堆積する。25秒後、500μlの酢酸エチルを回転基材上に流した。回転コーティングプログラムの後、ペロブスカイトコーティングされた試料を100℃の加熱プレート上で60分間アニーリングする。
【0067】
ペロブスカイト上に23nmのC60及び8nmのBCPを、1E-6mbarを下回るベース圧力で約0.1~0.3Å/sの蒸発速度で熱蒸着(Mbraun ProVap 3G)によって堆積した。最後に、80~100nmのCuを、デバイス構造を完成させるために0.3~1Å/sの速度で蒸着した。活性領域は、ITO及び金属電極の重なりで定義され、0.16cm2である。
【0068】
合成の経路
V1036用
【化20】
3,6-ジブロモ-9-(2-ブロモエチル)-9H-カルバゾール(1)
出発化合物3,6-ジブロモカルバゾール(2g、6.15mmol)を1,2-ジブロモエタン(40mL)に溶解し、次いで50%のKOH水溶液と共にテトラブチルアンモニウムブロマイド(0.198g、0.62mmol)を加えた(1.72mL、30.77mmol)。反応液を、24時間ごとに0.198gのテトラブチルアンモニウムブロマイド及び1.72mlの50%KOH水溶液を添加して、60℃で3日間撹拌した(TLC、アセトン:n-ヘキサン、1:24、v:v)。反応終了後、ジクロロメタンによる抽出を行った。有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。未精製物をアセトン:n-ヘキサン、3:22、v:vを溶離液とするカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色結晶物質-化合物1(Tm=153~155℃)の2・4g(90%)を得た。
【0069】
分析:C14H10NBr3、%の計算:C 38.93;H 2.33;N 3.24;検出,%: C 38.78;H 2.42;N 3.11
【0070】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8,07 (d, J=1,8Hz, 2H);7,54 (dd, J=8,7, 1,9Hz, 2H), 7,25 (d, J=8,7Hz, 2H);4,59 (t, J=7,2Hz, 2H);3,62 (t, J=7,2Hz, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 138.83;129.28;123.65;123.38;112.71;110.16;44.75;27.94。
【0071】
【化21】
ジエチル[2-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]ホスホネート(2)
化合物1(2.4g,5.55mmol)を亜リン酸トリエチル(20ml)に溶解し、反応混合物を還流下で18時間加熱した。反応終了後(TLC、アセトン:n-ヘキサン、2:3、体積:体積)、溶媒を減圧下で留去した。未精製物をアセトン:n-ヘキサン、7:18、体積:体積を溶離液とするカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色結晶性物質-化合物2(Tm=118~119℃)を得た。
【0072】
分析: C18H20NBr2O3P, %の計算: C 44.20;H 4.12;N 2.86;検出, %: C 44.09;H 4.26;N 3.02。
【0073】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.11 (d, J=1.8Hz, 2H);7.56 (dd, J=8.7, 1.9Hz, 2H);7.30 (d, J=8.7Hz, 2H);4.60 - 4.49 (m, 2H);4.04 (dq, J=14.2, 7.1Hz, 4H);2.28 - 2.16 (m, 2H);1.24 (t, J=7.1Hz, 6H)。
【0074】
13CNMR (100 MHz, CDCl3) δ 138.65;129.25;123.71;123.37;112.50;110.30;62.01;61.94;37.26;37.24;25.88;24.50;16.37;16.31。
【0075】
【化22】
ジエチル(2-{3,6-ビス[ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-カルバゾール-9-イル}エチル)ホスホネート(3)
無水トルエン(50mL)中の化合物2(1g,2.04mmol)及び4,4’-ジメトキシジフェニルアミン(1.37g,6.13mmol)の溶液に20分間アルゴンを流した。続いて、酢酸パラジウム(II)(0.137g,0.613mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウム-テトラフルオロボラート(0.35g,1.23mmol)及びナトリウム-tert-ブトキシド(0.59g,6.13mmol)を加え、アルゴン雰囲気下で還流下において5時間加熱した。反応終了後(TLC,アセトン:n-ヘキサン,2:3,体積:体積)、反応混合物をセライトでろ過した。溶媒を減圧下で留去し、未精製物をアセトン:n-ヘキサン、7:18、体積:体積を溶離液として用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、1g(62.5%)の緑色粉末-化合物3を得た。
【0076】
分析:C46H48N3O7P,%の計算: C 70.30;H 6.16;N 5.35,検出,%: C 70.14;H 6.29;N 5.56。
【0077】
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.64 (d, J=2.2Hz, 2H), 7.46 (d, J=8.7Hz, 2H), 7.11 (dd, J=8.7, 2.2Hz, 2H), 6.86 - 6,74 (m, 16H), 4.56 - 4.44 (m, 2H), 3.92 (p, J=7.2Hz, 4H), 3.67 (s, 12H), 2.33 - 2.20 (m, 2H), 1.12 (t, J=7.0Hz, 6H).
【0078】
13CNMR (101 MHz, DMSO) δ 154.16, 142.08, 140.25, 136.67, 124.39, 123.67, 122.90, 116.94, 114.60, 110.28, 61.20, 61.14, 55.15, 28.62, 16.13, 16.07。
【0079】
【化23】
(2-{3,6-ビス[ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-カルバゾール-9-イル}エチル)ホスホン酸(V1036)
化合物3(0.4g,0.51mmol)をアルゴン下の乾燥1,4-ジオキサン(15ml)に溶解した。その後、ブロムトリメチルシラン(0.67ml、5.08mmol)を滴下添加した。反応物を、アルゴン雰囲気下、25℃で24時間保持した。次いで、溶媒を減圧下で留去し、固体残渣をメタノール(10mL)に溶解し、溶液が不透明になるまで蒸留水を滴下添加し(10mL)、次いで15時間撹拌した。生成物を濾取し、水で洗浄して、0.321g(86%)の緑色粉末-化合物V1036を得た。
【0080】
分析 C42H40N3O7P,%の計算:C 69.13;H 5.52;N 5.76;検出,%: C 68.89;H 5.38;N 5.53。
【0081】
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.64 (s, 2H), 7.42 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.11 (d, J=8.6Hz, 2H), 6.87 - 6.74 (m, 16H), 4.50 - 4.44 (m, 2H), 3.67 (s, 12H), 2.11 - 1.96 (m, 2H)。
【0082】
13CNMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 154.16;142.09;140.22;136.66;124.60;123.66;122.88;117.15;114.63;110.01;66.36;55.16。
【0083】
本発明の範囲内の第1の付加化合物の合成経路:
【化24】
テトラエチル-[(2,7-ジブロモ-9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジ(エタン-2,1-ジイル)]ビス(ホスホネート)(4)
2,7-ジブロモフルオレン(1g、3.08mmol)を1,4-ジオキサン(30mL)に溶解し、ジエチル-2-ブロモエチルホスホネート(1.55mL、9.25mmol)を滴下添加し、10分ごとに3部のtert-ブトキシドナトリウム(1.18g、12.34mmol)を添加した。1時間ごとに20℃ずつ昇温して反応混合物を3時間撹拌する(30℃から70℃)。反応終了後(TLCアセトン:n-ヘキサン、7:18、体積:体積)、ジエチルエーテルによる抽出を行った。有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。未精製物をアセトン:n-ヘキサン、7:18、体積:体積を溶離液として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.25g(62%)の白色結晶物質-化合物4をを得た。
【0084】
分析 C25H34Br2O6P2,%の計算:C 46.03;H 5.25,検出,%: C 45.87;H 5.12。
【0085】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.53 (s, 2H);7.52 (d, J=1.6Hz, 2H);7.46 (d, J=1.3Hz, 2H);4.08 - 3.87 (m, 8H);2.32 - 2.20 (m, 4H);1.26 (t, J=7.1Hz, 12H);1.02 - 0.88 (m, 4H)。
【0086】
13CNMR (175 MHz, CDCl3) δ 138.64;129.24;123.70;123.35;112.49;110.29;61.99;61.95;37.24;37.24;25.59;24.80;16.36;16.33。
【0087】
【化25】
テトラエチル-[{2,7-ビス[ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-フルオレン-9,9-ジイル}ジ(エタン-2,1-ジイル)]ビス(ホスホネート)(5)。
無水トルエン(50mL)中の化合物4(1g,1.53mmol)及び4,4’-ジメトキシジフェニルアミン(1.05g,4.59mmol)の溶液にアルゴンを20分間流した。次いで酢酸パラジウム(II)(0.10g,0.46mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウム-テトラフルオロボラート(0.28g,0.95mmol)及びナトリウム-tert-ブトキシド(0.44g,4.59mmol)を加え、溶液を6時間、アルゴン雰囲気下で還流下にて加熱した。反応終了後(TLC,アセトン:n-ヘキサン,2:3,体積:体積)、反応混合物をセライトでろ過した。溶媒を減圧下で除去し、未精製の生成物をアセトン:n-ヘキサン、7:18、体積:体積を溶離液として使用してカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色固体0.9g(62%)-化合物5を得た。
【0088】
分析 C53H62N2O10P2,%の計算:C 67.08;H 6.58;N 2.95, 検出, %: C 67.31;H 7.09;N 2.79。
【0089】
1HNMR (700 MHz, CDCl3) δ 7.30 (dd, J=16.8, 9.4Hz, 2H);7.26 (s, 1H);7.24 - 6.71 (m, 19H);3.96 (p, J=7.2Hz, 8H);3.80 (s, J=14.1Hz, 12H);1.99 (dd, J=16.6, 7.2Hz, 4H);1.25 (t, J=7.1Hz, 12H);1.13 - 1.05 (m, 4H)
【0090】
13CNMR (100 MHz, CDCl3) δ 155.85;146.59;141.60;141.04;127.85;126.38;122.47;120.62;119.17;114.76;61.44;61.41;61.37;55.48;54.85;54.75;54.64;32.23;32.21;29.70;20.84;20.04;16.45;16.41
【0091】
【化26】
[{2,7-ビス[ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-フルオレン-9,9-ジイル}ジ(エタン-2,1-ジイル)]ビス(ホスホン酸)(6)
化合物5(0.88g、0.93mmol)をアルゴン下で乾燥1,4-ジオキサン(20mL)に溶解した。次にブロムトリメチルシラン(1.96mL、14.88mmol)を滴下添加した。反応物を、アルゴン雰囲気下で、25℃にて20時間保持した。溶媒を減圧下で留去し、固体残渣をメタノール(10ml)に溶解し、溶液が不透明になるまで蒸留水を滴下添加し(20mL)、次いで3時間撹拌した。生成物を濾取し、水で洗浄し、0.230g(80%)の赤みを帯びた粉末-化合物6を得た。
【0092】
分析 C45H46N2O10P2,%の計算:C 64.59;H 5.54;N 3.35,検出, %: C 64.56;H 5.67;N 3.48
【0093】
1HNMR (400 MHz, d8-THF) δ 7.34 (d, J=8.3Hz, 2H);7.19 (d, J=1.2Hz, 2H);7.02 (d, J=8.9Hz, 8H);6.80 (d, J=8.9Hz, 8H);6.74 (dd, J=8.2, 1.7Hz, 2H);3.71 (s, J=11.7Hz, 12H);2.09 (d, J=7.5Hz, 4H);0.99 - 0.85 (m, 4H)
【0094】
13CNMR (100 MHz, d8-THF) δ 155.78;148.68;147.61;141.09;134.71;125.67;120.66;118.88;115.96;114.59;54.65, 31.70;28.37
【0095】
本発明の範囲内の第2の更なる化合物V1193の合成経路
【化27】
9-(2-ブロモエチル)-3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール(7)
3,6-ジメトキシカルバゾール(0.534g、2.35mmol)を1,2-ジブロモエタン(8ml)の水溶液(6.9ml)に溶解し、KOHの50%水溶液を加えたテトラブチルアンモニウムブロマイド(0.08g、0.25mmol)を加えた。この溶液を70℃で20時間、完了するまで撹拌した(TLC、アセトン:n-ヘキサン、3:22、v:v)。反応終了後、酢酸エチルで抽出を行った。得られた有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。得られた原料生成物を、溶離液としてアセトン:n-ヘキサン、1:49、v:vを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、0.352g(60%)の結晶性白色物-化合物7を得た。
【0096】
分析 C16H16O2NBr,%の計算:C 57.50;H 4.83;N 4.19;検出, %: C 57.39;H 4.86;N 4.15
【0097】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.51 (d, J=2.5Hz, 2H), 7.29 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.10 (dd, J=8.8, 2.5Hz, 2H), 4.62 (t, J=7.5Hz, 2H), 3.93 (s, 6H), 3.62 (t, J=7.5Hz, 2H)
【0098】
13CNMR (101 MHz, CDCl3) δ 153.85, 135.65, 123.39, 115.30, 109.41, 103.45, 56.27, 45.07, 28.55
【0099】
【化28】
ジエチル[2-(3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]ホスホネート(8)
化合物10(0.316g、0.95mmol)を亜リン酸トリエチル(2.7ml)に溶解し、還流下で18時間加熱した。反応終了後(TLC、アセトン:n-ヘキサン、1:4、体積:体積)、溶媒を減圧下で留去した。粗生成物をアセトン:n-ヘキサン、1:1、v:vを溶離液としてカラムクロマトグラフィーで精製し、0.353g(95%)の透明液体-化合物8を得た。
【0100】
分析C20H26NO5P,%の計算:C 61.37;H 6.70;N 3.58;検出, %: C 61.32;H 6.73;N 3.55.
【0101】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.52 (d, J=2.5Hz, 2H), 7.30 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.10 (dd, J=8.8, 2.5Hz, 2H), 4.60 - 4.49 (m, 2H), 4.09 - 4.03 (m, 4H), 3.93 (s, 6H), 2.29 - 2.15 (m, 2H), 1.28 (t, J=7.1Hz, 6H)
【0102】
13CNMR (101 MHz, CDCl3) δ 153.67, 135.46, 123.37, 115.20, 109.49, 103.46, 62.02, 61.96, 56.28, 37.31, 26.15, 24.79, 16.56, 16.50
【0103】
【化29】
2-(3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]ホスホン酸(V1193)
化合物11(0.335g、0.86mmol)をアルゴン雰囲気下で、無水1,4-ジオキサン(25ml)に溶解した。次いでブロムトリメチルシラン(1.12ml)を滴下添加した。反応物を、アルゴン雰囲気下で、25℃にて24時間保持した。この溶液を減圧下で留去し、固体残渣をメタノール(15ml)に溶解し、溶液が不透明になるまで蒸留水(30ml)を加え、15時間撹拌した。生成物を濾過し、水で洗浄した結果、0.230g(80%)のベージュ色の固体-V1193を得た。
【0104】
分析 C16H18NO5P,%の計算:C 57.32;H 5.41;N 4.18,検出, %: C 57.19;H 5.53;N 4.11
【0105】
1HNMR (400 MHz, MeOD) δ 7.57 (d, J=2.5Hz, 2H), 7.34 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.05 (dd, J=8.8, 2.5Hz, 2H), 4.58 - 4.48 (m, 2H), 3.87 (s, 6H), 2.20 - 2.06 (m, 2H)
【0106】
13CNMR (101 MHz, MeOD) δ 154.97, 136.71, 124.61, 116.03, 110.37, 104.29, 62.39, 56.46, 38.47
【0107】
本発明の範囲内の第3の更なる化合物V1194の合成経路は、3,6-ジメトキシカルバゾールの代わりに9H-カルバゾールが使用される違いを有するV1193の合成経路(上記参照)から誘導される。
【0108】
所望の生成物の好ましい実施例は、以下のとおり配合することができる:
【化30】
式中、HTFは正孔導電性断片であり、L-接続断片、A-アンカー基、n=1~2
A- ホスホン酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸、シロキサン等、
【化31】
R’- 水素、C1~C9アルキル基、
L- C
1~C
9アルキレン、C
4~C
20アリーレン、C
4~C
20ヘテロアリーレン、C
4~C
20アルキルアリーレン、C
4~C
20ヘテロアルキルアリーレン、ここで、ヘテロ原子は、O、N、S、Se、Siから選択され、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキルアリーレン、ヘテロアルキルアリーレンは、それらが3個以上の炭素原子からなる場合、直鎖状、分岐状、又は環状であり得、
例えば:
【化32】
HTF:
【化33】
R:
水素
【化34】
X - ハロゲン(F、Cl、Br、I)
R’’’:水素、アルキル(C1~C12)
R’’:水素、アルキル、アルコキシ(-CH
3;-OCH
3)
【0109】
V1036並びに混合されたV1036とn-ブチルホスホン酸(C4)のSAMは、UVオゾンで処理したITO基材を、イソプロパノールに溶解したホスホン酸分子の1mM溶液中に20時間浸漬し、続いて100℃で1時間アニールし、イソプロパノール及びクロロベンゼンで洗浄することにより形成された。大気中の酸素による悪影響の可能性を排除するために、すべての手順は、窒素で満たされたグローブボックス内で実行された。
【0110】
溶液中のV1193をITO基材上で回転させ、次いで100℃で10分間アニールした。この場合、洗浄は任意である。V1193は、
図10から分かるとおり、V1036を改良した特性を示している。
【0111】
図10では、効率のパラメータを%で示し(▲,左の外側の縦座標に対する値、誤差バー付き)、準フェルミ準位分割(QFLS)をeVで示し(●,左の内側の縦座標に対する値)、開路電圧VOCをVoltで示し(★,内側の縦座標に対する値、誤差バー付き)を示し、「トリプルカチオン」ペロブスカイト吸収体(Cs
5(MA
17FA
83Pb(I
83Br
17)
3)
95)のフォトルミネッセンス寿命をμsで示し(バー,右の縦座標に対する値)、様々なHTM-SAM、V1036、V1193、V1194に対してプロットし、PTAAとの比較も図示される。データは成分分析から得られた。測定されたパラメータは、太陽に相当する照度(AM1.5g標準)で測定された。バーは、最大の測定されたフォトルミネッセンス寿命を示す。曲線の実線との間の領域は、(3個のV1036試料、8個のV1193試料、9個のV1194試料から)測定されたQFLSの最大値と最小値を示す。開回路電圧Voc及び効率の誤差バーは、38個のV1036電池、56個のPTAA電池、42個のV1193電池、40個のV1194電池の測定値の標準偏差を示す。効率、Voc、フォトルミネッセンス(PL)寿命及びQFLSの間には明確な相関関係を見ることができる。V1193及びV1194のSAMは、PL寿命、QFLS及びデバイス性能において、高効率反転ペロブスカイト太陽電池の現在の標準であるPTAAを上回った。V1036の値はPTAAの値に近い。点線は参考としてガラス上のPL寿命を示している。図には含まれていないが、有利な本発明のHTM-SAMは、PTAAよりも著しく安価である。
【0112】
本論文では、全体の効率が約18%以上有する、p-i-nアーキテクチャのPSCデバイスに使用可能な正孔導電型SAMを初めて規定した。さらに、基材層への(共有結合的)結合により、これらのSAMによって形成された層は、ペロブスカイト処理に耐性があり、任意のテクスチャ化酸化物表面を潜在的にコンフォーマルに覆うことができる。このように、これらの分子は、構造化シリコンウェーハ上にモノリシックなペロブスカイト/シリコン太陽電池を直接集積するのに最適である。
【0113】
さらに、上述した断片に基づいて、新しいHTMを拡張して、基材ベースのペロブスカイト核生成及び不動態化制御のためのモデルシステムとして機能し得る。
【0114】
本プロジェクトの研究は、PerTPVプロジェクトの贈与契約(Grant Agreement)番号763977の下、Horizon 2020 EU資金援助プログラムの資金援助を受けた。
【0115】
略語一覧
【0116】