(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003224
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6594 20110101AFI20241226BHJP
H01R 12/91 20110101ALN20241226BHJP
【FI】
H01R13/6594
H01R12/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103770
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英生
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB02
5E021FC21
5E021FC40
5E021LA09
5E021LA15
5E223AB26
5E223AB59
5E223AC50
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB31
5E223CB38
5E223DA05
5E223DB11
5E223DB25
5E223EB04
5E223EB12
5E223EB23
5E223EB32
(57)【要約】
【課題】異物の発生を抑制できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10が備えるシールド50,60は、一枚の板材から形成されるシールド体51を備える。シールド体51は、ハウジング30,40の外側に装着される。シールド体51は、取付対象物90の取付面91の面内方向に突出するキャリア切断部59を備える。キャリア切断部59の先端は、コネクタ10を取付面91に垂直な方向から見たときのコネクタ10の輪郭線よりも内側に位置する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象物に取り付けて使用されるコネクタであって、
少なくとも一つの端子から構成される端子部と、
前記端子部を保持するハウジングと、
前記端子部をシールドするシールドと、を備え、
前記シールドは、一枚の板材から形成されるシールド体を備え、
前記シールド体は、前記ハウジングの外側に装着され、
前記シールド体は、前記取付対象物の取付面の面内方向に突出するキャリア切断部を備え、
前記キャリア切断部の先端は、前記コネクタを前記取付面に垂直な方向から見たときの前記コネクタの輪郭線よりも内側に位置する、
コネクタ。
【請求項2】
前記シールド体は、
前記ハウジングの上面を覆う天板部と、
前記ハウジングの側面を覆う側板部と、を備え、
前記キャリア切断部は、前記天板部に形成される、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記側板部は、前記ハウジングの外周を隙間なく包囲する、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記シールド体は、前記側板部と前記キャリア切断部との間の通過空間であって、前記キャリア切断部とキャリアとを切り離すための治具を前記取付対象物の取付面に垂直な方向で通過させるための前記通過空間を備える、
請求項2又は請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングを備え、
前記固定ハウジングは、
前記取付対象物の取付面の面内方向である第一方向に延在する第一壁部と、
前記シールド体を保持するシールド体保持部と、を備え、
前記シールド体は、
前記側板部の一部として形成された第一シールド部であって、第一方向に延在する前記第一シールド部と、
前記シールド体保持部に保持される被保持部であって、前記天板部から曲部を介して下方向に延出する前記被保持部と、を備え、
前記被保持部は、前記第一シールド部の第一方向外側であって、前記キャリア切断部の第一方向内側に位置する、
請求項2又は請求項3に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シールド性能を備えるコネクタが開示されている。このコネクタは、取付対象物に取り付けて使用されるコネクタであって、少なくとも一つの端子から構成される端子部と、端子部を保持するハウジングと、端子部をシールドするシールドと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の第1の目的は、シールド性能に優れたコネクタを提供することである。
本開示の第2の目的は、異物の発生を抑制できるコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(第1の態様)
第1-1の態様に係るコネクタは、取付対象物に取り付けて使用されるコネクタであって、少なくとも一つの端子から構成される端子部と、前記端子部を保持するハウジングと、前記端子部をシールドするシールドと、を備え、前記シールドは、一枚の板材から形成されるシールド体を備え、前記シールド体は、本体部と、前記本体部に隣接し、前記本体部との間に隙間が形成される隣接部と、を備え、前記コネクタは、前記隙間を塞ぐ追加シールド部を更に備える。
【0006】
本態様では、コネクタは、端子部と、ハウジングと、シールドと、を備える。端子部は、少なくとも一つの端子から構成される。ハウジングは、端子部を保持する。シールドは、端子部をシールドする。
そして、シールドは、一枚の板材から形成されるシールド体を備える。シールド体は、本体部と、本体部に隣接する隣接部と、を備える。
このため、本体部とは別に設けられた隣接部を、ハウジングに保持される被保持部として機能させたり、取付対象物に接続する接続部を延出させる部分として機能させたりすることができる。
【0007】
ところで、本態様では、本体部と隣接部との間に隙間が形成される。この隙間は、シールド性能の低下を招きうる。
そこで、本態様では、コネクタは、上述の隙間を塞ぐ追加シールド部を更に備える。
このため、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0008】
なお、後述の実施形態では、追加シールド部が、シールド体の一部として設けられるが、本態様の追加シールド部はこれに限定されない。本態様の追加シールド部は、シールド体とは別体として設けられてもよい。
なお、後述の実施形態では、隣接部が、ハウジングに圧入されて保持される被保持部であるが、本態様の隣接部はこれに限定されない。本態様の隣接部は、圧入以外の方法によりハウジングに保持される被保持部であってもよい。また、本態様の隣接部は、ハウジングに保持される被保持部でなくてもよい。
なお、後述の実施形態では、隣接部が、接続部を延出させる部分であるが、本態様の隣接部はこれに限定されない。
なお、後述の実施形態では、シールドが、接続部を有するが、本態様のシールドはこれに限定されない。
なお、後述の実施形態では、追加シールド部が、本体部と隣接部との間の隙間を外側から塞ぐが、内側から塞いでもよい。
なお、後述の実施形態では、追加シールド部が重畳部を有するが、本態様の追加シールド部はこれに限定されない。追加シールド部が重畳部を備えず、追加シールド部と本体部(第一シールド部)との間に僅かな隙間が形成されていてもよい。
【0009】
第1-2の態様に係るコネクタは、第1-1の態様において、前記追加シールド部は、前記シールド体の一部として設けられる。
【0010】
本態様では、追加シールド部は、シールド体の一部として設けられる。
このため、追加シールド部がシールド体とは別体として設けられる態様と比較して、部品点数の増加を抑えることができる。
【0011】
第1-3の態様に係るコネクタは、第1-1又は第1-2の態様において、前記追加シールド部は、前記隣接部の両側に形成された2つの隙間の両方を塞ぐ。
【0012】
本態様では、追加シールド部は、隣接部の両側に形成された2つの隙間の両方を塞ぐ。
このため、追加シールド部が当該2つの隙間のうち片方しか塞がない態様と比較して、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0013】
第1-4の態様に係るコネクタは、第1-1又は第1-2の態様において、前記本体部は、前記取付対象物の取付面の面内方向である第一方向に延在する第一シールド部と、前記取付面の面内方向であって第一方向に垂直な方向である第二方向に延在する第二シールド部と、を備え、前記隙間として、前記第一シールド部と前記隣接部との間の第一隙間と、前記第二シールド部と前記隣接部との間の第二隙間と、が形成され、前記追加シールド部は、前記第一隙間及び前記第二隙間の両方を塞ぐ。
【0014】
本態様では、本体部は、第一シールド部と、第二シールド部と、を備える。第一シールド部は、第一方向に延在する。第二シールド部は、第二方向に延在する。
このため、本体部が第一シールド部及び第二シールド部の何れか片方しか備えない態様と比較して、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
また、上述の隙間として、第一シールド部と隣接部との間の第一隙間と、第二シールド部と隣接部との間の第二隙間と、が形成される。
そこで、本態様では、追加シールド部は、第一隙間及び第二隙間の両方を塞ぐ。
このため、追加シールド部が第一隙間及び第二隙間のうち片方しか塞がない態様と比較して、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0015】
第1-5の態様に係るコネクタは、第1-4の態様において、前記追加シールド部は、前記シールド体の一部として設けられ、前記隣接部の板厚方向は、前記第一シールド部の板厚方向と同一であり、前記追加シールド部は、前記第二シールド部から延出する。
【0016】
本態様では、追加シールド部は、シールド体の一部として設けられる。
このため、追加シールド部がシールド体とは別体として設けられる態様と比較して、部品点数の増加を抑えることができる。
また、本態様では、隣接部の板厚方向は、第一シールド部の板厚方向と同一である。そして、追加シールド部は、第二シールド部から延出する。
このため、シールド体の一部として設けられる追加シールド部を形成しやすい。
【0017】
第1-6の態様に係るコネクタは、第1-5の態様において、前記シールド体は、平板状の天板部であって、第一方向及び第二方向の両方に垂直な方向である第三方向に板厚方向を向ける前記天板部を備え、前記第一シールド部は、1つの曲部を介して前記天板部と接続され、前記隣接部は、1つの曲部を介して前記天板部と接続され、前記第二シールド部は、1つの曲部を介して前記天板部と接続される。
【0018】
本態様では、シールド体は、平板状の天板部を備える。天板部は、第三方向に板厚方向を向ける。
そして、第一シールド部は、1つの曲部を介して天板部と接続され、隣接部は、1つの曲部を介して天板部と接続され、第二シールド部は、1つの曲部を介して天板部と接続される。
このため、第一シールド部、隣接部及び第二シールド部のいずれもが、1つの曲部を介して天板部と接続されることとなる。その結果、シールド体の製造が容易になる。
【0019】
第1-7の態様に係るコネクタは、第1-1~第1-6の何れかの態様において、前記本体部は、第一方向に延在する第一シールド部を備え、前記ハウジングは、前記シールド体を保持するシールド体保持部を備え、前記隣接部は、圧入によって前記シールド体保持部に保持される被保持部であり、前記隣接部は、前記第一シールド部よりも第二方向内側に位置し、前記隙間として、前記第一シールド部と前記隣接部との間の第一隙間が形成され、前記追加シールド部は、前記第一隙間を塞ぐ。
【0020】
本態様では、本体部は、第一方向に延在する第一シールド部を備える。
ハウジングは、シールド体を保持するシールド体保持部を備える。隣接部は、圧入によってシールド体保持部に保持される被保持部である。
このため、隣接部をハウジングのシールド体保持部に保持させることで、シールド体をハウジングに取り付けることができる。
【0021】
ところで、圧入によって隣接部をハウジングのシールド体保持部に保持させる場合、シールド体保持部を隣接部の位置よりも第二方向外側に大きく形成する必要がある。シールド体保持部を第二方向外側に大きく形成することは、第二方向におけるコネクタの大型化に繋がる。
そこで、本態様では、隣接部は、第一シールド部よりも第二方向内側に位置する。
このため、例えば隣接部が第一シールド部と第二方向において同じ位置に位置する態様と比較して、ハウジングのシールド体保持部が第二方向外側に拡大することを抑制することができる。
【0022】
ところで、隣接部が第一シールド部よりも第二方向内側に位置すると、第一シールド部と隣接部との間の第一隙間が大きくなりやすい。
そこで、本態様では、追加シールド部は、第一隙間を塞ぐ。
このため、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0023】
なお、後述の実施形態では、シールド体が、隣接部(被保持部)から第二方向外側に延出する接続部(取付対象物の取付面に接続される部分)を備える。本態様では、隣接部が第一シールド部よりも第二方向内側に位置するので、第二方向におけるコネクタの大型化を避けながら接続部の第二方向寸法を大きくできる。しかし、本態様のシールド体は、上記接続部を備えなくてもよい。この場合、隣接部の下端の切断面が取付対象物の取付面に半田付けで接続されてもよい。また、隣接部と取付対象物とが接続されなくてもよい。
なお、後述の実施形態では、ハウジングが、固定ハウジングと可動ハウジングとを備えるが、本態様のハウジングはこれに限定されない。本態様のハウジングは、固定ハウジングのみを備え、可動ハウジングを備えなくてもよい。
【0024】
第1-8の態様に係るコネクタは、第1-1~第1~7の何れかの態様において、前記ハウジングは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して移動可能な可動ハウジングと、を備え、前記端子は、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、前記可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの移動を許容するための中間弾性部と、を備え、前記固定ハウジングは、前記取付対象物の取付面の面内方向である第一方向に延在すると共に、前記固定側被保持部を保持する第一壁部と、前記第一壁部と第一方向で接続されると共に、前記シールド体を保持するシールド体保持部と、を備え、前記第一壁部に対し、前記取付面の面内方向であって第一方向に垂直な方向である第二方向の内側の空間には、前記中間弾性部が配置され、前記隣接部は、圧入によって前記シールド体保持部に保持される被保持部であり、前記本体部は、第一方向に延在すると共に、前記第一壁部を第二方向の外側から覆う第一シールド部を備え、前記隣接部は、前記第一シールド部よりも第二方向の内側に位置し、前記隙間として、前記第一シールド部と前記隣接部との間の第一隙間が形成され、前記追加シールド部は、前記第一隙間を塞ぐ。
【0025】
本態様では、ハウジングは、取付対象物に固定される固定ハウジングと、固定ハウジングに対して移動可能な可動ハウジングと、を備える。端子は、固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、固定ハウジングに対する可動ハウジングの移動を許容するための中間弾性部と、を備える。
また、固定ハウジングは、第一方向に延在する第一壁部と、第一壁部と第一方向で接続されるシールド体保持部と、を備える。第一壁部は、端子の固定側被保持部を保持する。シールド体保持部は、シールド体を保持する。具体的には、シールド体の隣接部は、圧入によってシールド体保持部に保持される被保持部である。
第一壁部に対し第二方向の内側の空間には、中間弾性部が配置される。本体部は、第一方向に延在する第一シールド部を備える。第一シールド部は、第一壁部を第二方向の外側から覆う。
【0026】
ここで、本態様では、隣接部は、第一シールド部よりも第二方向の内側に位置する。
このため、端子の中間弾性部が配置される空間を確保しつつ、第二方向において隣接部が第一シールド部と同じ位置に位置する場合と比較して、コネクタの占有面積を小さくすることができる。
例えば、第一シールド部の位置を第二方向内側へ変更しようとすると、ハウジングの第一壁部の位置も第二方向内側へ変更する必要がある。そうすると、端子の中間弾性部が配置される空間が小さくなってしまう。本態様では、第一シールド部が隣接部よりも第二方向の外側に位置するので、端子の中間弾性部が配置される空間を確保することができる。
【0027】
ところで、隣接部が第一シールド部よりも第二方向内側に位置すると、第一シールド部と隣接部との間の第一隙間が大きくなりやすい。
そこで、本態様では、追加シールド部は、第一隙間を塞ぐ。
このため、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0028】
なお、後述の実施形態では、シールド体は、隣接部から第二方向の外側へ延出すると共に取付面に接続される接続部を備える。接続部の第二方向の寸法を確保することで、シールド体の取付対象物に対する接続強度を確保することができる。一方、接続部は、隣接部から第二方向の外側へ延出するので、接続部の第二方向の寸法が大きいと、コネクタの占有面積が大きくなるおそれがある。しかし、本態様では、隣接部は、第一シールド部よりも第二方向の内側に位置するので、コネクタの占有面積の拡大を抑えつつ、接続部の第二方向の寸法を確保することができる。
【0029】
(第2の態様)
第2-1の態様に係るコネクタは、取付対象物に取り付けて使用されるコネクタであって、少なくとも一つの端子から構成される端子部と、前記端子部を保持するハウジングと、前記端子部をシールドするシールドと、を備え、前記シールドは、一枚の板材から形成されるシールド体を備え、前記シールド体は、前記ハウジングの外側に装着され、前記シールド体は、前記取付対象物の取付面の面内方向に突出するキャリア切断部を備え、前記キャリア切断部の先端は、前記コネクタを前記取付面に垂直な方向から見たときの前記コネクタの輪郭線よりも内側に位置する。
【0030】
本態様では、コネクタは、端子部と、ハウジングと、シールドと、を備える。端子部は、少なくとも一つの端子から構成される。ハウジングは、端子部を保持する。シールドは、端子部をシールドする。シールドは、一枚の板材から形成されるシールド体を備える。
【0031】
また、本態様では、シールド体は、ハウジングの外側に装着される。シールド体は、取付対象物の取付面の面内方向に突出するキャリア切断部を備える。なお、キャリア切断部とは、シールド体を順送加工により製造する際にキャリアと接続されていた部分であって最終的に切断された部分を意味する。
ここで、仮に、キャリア切断部の先端が、コネクタを取付面に垂直な方向から見たときの当該コネクタの輪郭線上に位置すると(例えば特許文献1記載のコネクタ参照)、キャリア切断部の先端の切断面が、梱包材(キャリアテープやトレイ等)の壁面と接触してこれを損傷させ、異物が発生するおそれがある。具体的には、コネクタが梱包材に入れられて輸送される時、梱包材にコネクタを収容する時又は梱包材からコネクタを取り出す時に、キャリア切断部の先端の切断面が梱包材の壁面と接触するおそれがある。
そこで、本態様では、キャリア切断部の先端は、コネクタを取付面に垂直な方向から見たときのコネクタの輪郭線よりも内側に位置する。
このため、キャリア切断部の先端の切断面が梱包材の壁面と接触しにくくなる。その結果、異物の発生を抑制できる。
【0032】
なお、後述の実施形態では、コネクタが追加シールド部を備えるが、本態様のコネクタはこれに限定されない。例えば、後述の実施形態における追加シールドが省略された場合においても(
図7参照)、キャリア切断部の先端は、コネクタを取付面に垂直な方向から見たときのコネクタの輪郭線よりも内側に位置する。
なお、後述の実施形態では、シールド体が、固定側シールドの全体を構成するが、本態様のシールド体はこれに限定されない。例えば、本態様のシールド体は、他のシールド体と接合され、これにより固定側シールドが構成されてもよい。
【0033】
第2-2の態様に係るコネクタは、第2-1の態様において、前記シールド体は、前記ハウジングの上面を覆う天板部と、前記ハウジングの側面を覆う側板部と、を備え、前記キャリア切断部は、前記天板部に形成される。
【0034】
本態様では、シールド体は、ハウジングの上面を覆う天板部と、ハウジングの側面を覆う側板部と、を備える。
ここで、キャリア切断部は、天板部に形成される。
このため、側板部にキャリア切断部を形成しなくてよく、側板部の形状の自由度が高くなる。その結果、取付面に沿う方向からのシールド効果を高めることができる。
【0035】
なお、後述の実施形態では、ハウジングが、固定ハウジングだけでなく、可動ハウジングをも備えるが、本態様のハウジングはこれに限定されない。本態様のハウジングは、固定ハウジングのみを備えてもよい。換言すると、本態様のコネクタは、可動コネクタでなくてもよい。
なお、後述の実施形態では、シールド体の天板部が、取付対象物に固定される固定ハウジングの上面を覆う。しかし、本態様のシールド体の天板部は、これに限定されず、可動ハウジングの上面を覆ってもよい。
【0036】
第2-3の態様に係るコネクタは、第2-2態様において、前記側板部は、前記ハウジングの外周を隙間なく包囲する。
【0037】
本態様では、側板部は、ハウジングの外周を隙間なく包囲する。
このため、側板部がハウジングの外周を隙間なく包囲しない態様と比較して、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0038】
第2-4の態様に係るコネクタは、第2-2又は第2-3の態様において、前記シールド体は、前記側板部と前記キャリア切断部との間の通過空間であって、前記キャリア切断部とキャリアとを切り離すための治具を前記取付対象物の取付面に垂直な方向で通過させるための前記通過空間を備える。
【0039】
本態様では、シールド体は、側板部とキャリア切断部との間の通過空間を備える。通過空間は、キャリア切断部とキャリアとを切り離すための治具を取付対象物の取付面に垂直な方向で通過させるための空間である。
このため、通過空間にキャリア切断部とキャリアとを切り離すための治具を通すことができる。また、この通過空間の分だけキャリア切断部の先端を側板部から遠ざけることができる。その結果、キャリア切断部の先端の切断面が梱包材の壁面と接触することをより一層抑制できる。
【0040】
第2-5の態様に係るコネクタは、第2-2~第2~4の何れかの態様において、前記ハウジングは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングを備え、前記固定ハウジングは、前記取付対象物の取付面の面内方向である第一方向に延在する第一壁部と、前記シールド体を保持するシールド体保持部と、を備え、前記シールド体は、前記側板部の一部として形成された第一シールド部であって、前記第一壁部を前記取付面の面内方向であって第一方向に垂直な方向である第二方向の外側から覆う前記第一シールド部と、前記シールド体保持部に保持される被保持部であって、前記天板部から曲部を介して下方向に延出する前記被保持部と、を備え、前記被保持部は、前記第一シールド部の第一方向外側であって、前記キャリア切断部の第一方向内側に位置する。
【0041】
本態様では、ハウジングは、取付対象物に固定される固定ハウジングを備える。固定ハウジングは、第一方向に延在する第一壁部と、シールド体を保持するシールド体保持部と、を備える。一方、シールド体は、側板部の一部として形成された第一シールド部と、シールド体保持部に保持される被保持部と、を備える。第一シールド部は、第一壁部を第二方向の外側から覆う。被保持部は、天板部から曲部を介して下方向に延出する。
このため、第一シールド部によってシールド性能を高め、かつシールド体を固定ハウジングに取り付けることができる。
【0042】
ところで、固定ハウジングのシールド体保持部は、シールド体を保持する部分であるから、ある程度の強度を必要とする。具体的には、シールド体保持部が被保持部を適切に保持するためには、シールド体保持部を被保持部よりも第一方向内側及び第一方向外側の両方に大きく形成する必要がある。そのため、シールド体保持部を固定ハウジングのどの位置に形成するかは、固定ハウジングの全体寸法に影響を与えうる。
そこで、本態様では、被保持部は、第一シールド部の第一方向外側であって、キャリア切断部の第一方向内側に位置する。
このため、固定ハウジングが第一方向で大型化しにくい。なぜなら、固定ハウジングのうち、キャリア切断部が配置される付近の部分をシールド体保持部又はシールド体保持部を第一方向外側から補強する部分として機能させることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図4】一対の第一端子及び一対の第二端子の斜視図である。
【
図5】固定ハウジング及び固定側シールドの斜視図である。
【
図7】
図6において追加シールド部を省略した斜視図である。
【
図9】固定側シールド体の製造工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本開示に係るコネクタの好適な実施形態について説明する。
【0045】
なお、各図に示す矢印X方向をコネクタ前後方向前側、矢印Y方向をコネクタ幅方向一方側、矢印Z方向をコネクタ上下方向上側として説明する。以下、単に前後方向、幅方向、上下方向というときは、コネクタ前後方向、コネクタ幅方向、コネクタ上下方向を意味する。但し、コネクタの使用状態における姿勢を限定するものではない。
本実施形態では、コネクタ前後方向が「第一方向」に相当し、コネクタ幅方向が「第二方向」に相当し、コネクタ上下方向が「第三方向」に相当する。
また、第一方向内側とは、第一方向のうちコネクタの中心に近づく方向を意味し、第一方向外側とは、第一方向のうちコネクタの中心から離れる方向を意味する。第二方向内側、第二方向外側等もこれと同様である。
【0046】
図1に示すように、コネクタ10は、端子部20と、端子部20を保持するハウジング30,40と、端子部20をシールドするシールド50,60と、を備える。
【0047】
(端子部20)
端子部20は、少なくとも一つの端子20A,20B(
図4参照)から構成される。本実施形態では、端子部20は、複数の端子20A,20Bから構成される。
具体的には、端子部20は、第一端子部20Aと、第二端子部20Bと、を備える。
第一端子部20Aは、少なくとも一つ(本実施形態では複数)の第一端子20Aから構成される。
第二端子部20Bは、少なくとも一つ(本実施形態では複数)の第二端子20Bから構成される。
【0048】
更に具体的には、第一端子部20Aは、幅方向一方側において前後方向に配列された複数の第一端子20Aと、幅方向他方側において前後方向に配列された複数の第一端子20Aと、から構成される。幅方向一方側の第一端子20Aと、幅方向他方側の第一端子20Aとで一対の第一端子20Aが構成され、当該一対の第一端子20Aが前後方向を配列方向として複数配列されると捉えることもできる。一対の第一端子20Aは、後述する接続部21及び接触部25のうち、接続部21を幅方向外側、接触部25を幅方向内側に向けた姿勢で、配置される(
図4参照)。
第一端子部20Aは、例えば信号伝送用に用いられる。
【0049】
第二端子部20Bは、第一端子部20Aに対して前側に配置された少なくとも一つ(本実施形態では2つ)の第二端子20Bと、第一端子部20Aに対して後側に配置された少なくとも一つ(本実施形態では2つ)の第二端子20Bと、から構成される。
第二端子部20Bは、例えば電源用に用いられる。
【0050】
以下、第一端子20Aと第二端子20Bとに共通する構成について説明する。第一端子20Aと第二端子20Bとを区別しないときは、単に端子20という。
【0051】
図4に示すように、端子20は、接続部21と、固定側被保持部22と、中間弾性部23と、可動側被保持部24と、接触部25と、を備える。
【0052】
接続部21は、取付対象物90に接続される。具体的には、接続部21は、取付対象物90の取付面91(
図3参照)に半田付けで接続される。
固定側被保持部22は、固定ハウジング30に保持される。固定側被保持部22は、上方向を圧入方向として固定ハウジング30に圧入される。
中間弾性部23は、弾性変形可能に構成される。
可動側被保持部24は、可動ハウジング40に保持される。可動側被保持部24は、上方向を圧入方向として可動ハウジング40に圧入される。
接触部25は、接続対象物(相手コネクタが有する端子)に接触する。接触部25は、可動側被保持部24に対して弾性変位可能に構成される。
【0053】
次に、第一端子20A及び第二端子20Bのぞれぞれの構成について説明する。
【0054】
図4に示すように、第一端子20Aは、コネクタ前後方向に垂直な平面の面内方向に板厚方向を向ける端子である。第一端子20Aは、所謂、曲げ端子である。
第二端子20Bは、その大部分において、コネクタ前後方向に板厚方向を向ける端子である。第二端子20Bは、所謂、抜き端子である。但し、第二端子20Bは、その接触部25に曲部を有する。第二端子20Bの固定側被保持部22は、上方向に突出する形状を有する。
第一端子20Aの接触部25は、接続対象物に対し、幅方向外側から接触する。
第二端子20Bの接触部25は、接続対象物に対し、前後方向内側から接触する。
【0055】
(ハウジング30,40)
図1に示すように、ハウジング30,40は、固定ハウジング30と、可動ハウジング40と、を備える。
固定ハウジング30は、取付対象物90に固定される。可動ハウジング40は、固定ハウジング30に対して移動可能に構成される。具体的には、可動ハウジング40は、端子部20を構成する少なくとも一つの端子20を介して固定ハウジング30及び取付対象物90に浮遊状態で支持される。
固定ハウジング30及び可動ハウジング40は、共に合成樹脂の成型品である。
【0056】
(固定ハウジング30)
図5に示すように、固定ハウジング30は、端子部20を保持する端子保持部31を有する。
端子保持部31の数は、2つである。固定ハウジング30は、第一方向である前後方向に延在する第一壁部31を備える。第一壁部31が端子保持部31として機能する。
【0057】
固定ハウジング30は、固定側シールド体51を保持するシールド体保持部32を備える。
シールド体保持部32の数は、複数(4つ)である。シールド体保持部32は、端子保持部31である第一壁部31と前後方向で接続される。一つの端子保持部31に対し、前後方向外側に一対のシールド体保持部32が設けられる。第一壁部31及び一対のシールド体保持部32は、第一方向である前後方向に延びる一つの壁部を構成する。
シールド体保持部32には、固定側シールド体51の被保持部55が圧入されるための圧入溝が形成される。圧入溝は、シールド体保持部32の側面(幅方向外側面)に形成される。なお、シールド体保持部32の側面は、端子保持部31の側面と面一である。
シールド体保持部32の上面は、端子保持部31の上面と面一である。
【0058】
なお、図示は省略するが、シールド体保持部32は、可動側シールド体61の固定側部65(
図1参照)をも保持する。
【0059】
固定ハウジング30は、第二方向である幅方向に延在する第二壁部33を備える。
第二壁部33は、幅方向一方側のシールド体保持部32と、幅方向他方側のシールド体保持部32とを幅方向に連結する。
第二壁部33は、可動ハウジング40の一部に当接することで可動ハウジング40の上方向の移動範囲を制限する制限部33として機能する。
第二壁部33の上面は、シールド体保持部32の上面と面一である。
【0060】
(可動ハウジング40)
可動ハウジング40は、端子20の可動側被保持部24を保持する。また、可動ハウジング40は、接続対象物である相手コネクタのハウジングと嵌合可能に構成される。
可動ハウジング40は、当該可動ハウジング40の上方向の移動範囲を規制するための一対の突出部41を有する。突出部41は、固定ハウジング30の第二壁部33に当接することで、可動ハウジング40の上方向の移動範囲を制限する。
【0061】
(シールド50,60)
図1に示すように、シールド50,60は、固定側シールド50と、可動側シールド60と、を備える。固定側シールド50は、固定ハウジング30に装着され、可動側シールド60は、可動ハウジング40に装着される。
【0062】
(固定側シールド50)
固定側シールド50は、一枚の板材から形成された固定側シールド体51のみを備える。
固定側シールド体51は、固定ハウジング30に対して上側から被せられるようにして、固定ハウジング30に装着される。
【0063】
図5に示すように、固定側シールド体51は、固定ハウジング30の上面を覆う天板部52と、固定ハウジング30の側面を覆う側板部53,54,57と、を備える。
天板部52は、平板状であり、板厚方向を上下方向に向ける。天板部52は、第一壁部31の上面を覆う部分と、第二壁部33の上面を覆う部分と、シールド体保持部32の上面を覆う部分と、を有する。天板部52は、枠状に形成される。
側板部53,54,57は、板厚方向をXY平面の面内方向に向ける。側板部53,54,57は、固定ハウジング30の外周を隙間なく包囲する。
側板部53,54,57の詳細については、後述する。
【0064】
固定側シールド体51は、固定ハウジング30に保持される被保持部55を備える。
被保持部55の数は、複数(例えば4つ)である。
被保持部55には、板幅方向である前後方向の両側に圧入突起が形成される。図示は省略するが、被保持部55の内側面(コネクタ幅方向内側の面)には、可動側シールド体61の固定側部65が幅方向内側から接触する。
【0065】
固定側シールド体51は、取付対象物90に接続される接続部56を有する。
接続部56の数は、複数(例えば4つ)である。
接続部56は、被保持部55の下方から幅方向外側へ延出され、板厚方向を上下方向に向ける。接続部56は、半田付けによって取付対象物90の取付面91に接続される。
【0066】
(可動側シールド60)
図1に示すように、可動側シールド60は、一枚の板材から形成された可動側シールド体61を2つ備える。一対の可動側シールド体61は、互いに同様の構造を有する。
【0067】
可動側シールド体61は、可動ハウジング40を覆う可動側シールド部62を備える。
可動側シールド部62は、可動ハウジング40を幅方向外側から覆う。可動側シールド部62の下端は、固定ハウジング30の第一壁部31の上面よりも下側に位置する(
図3参照)。
【0068】
可動側シールド体61は、可動ハウジング40に保持される前後一対の可動側被保持部63を有する。
【0069】
可動側シールド体61は、前後一対のシールドバネ部64を備える。
前後一対のシールドバネ部64は、前後一対の可動側被保持部63からそれぞれ延出される。
【0070】
可動側シールド体61は、前後一対の固定側部65を備える。
固定側部65は、固定ハウジング30のシールド体保持部32に保持されると共に、固定側シールド体51に弾性的に接触する。これにより、可動側シールド体61と固定側シールド体51とが電気的に接続される。具体的には、固定側部65は、固定側シールド体51の被保持部55に対し、幅方向内側から接触する。
【0071】
(固定側シールド体51の詳細)
次に、「シールド体」としての固定側シールド体51について詳細に説明する。
【0072】
図5に示すように、固定側シールド体51は、幅方向一対の第一シールド部53を備える。
第一シールド部53は、固定ハウジング30の第一壁部31を幅方向外側から覆う。第一シールド部53は、側板部53,54,57の一部を構成する。
第一シールド部53は、平板状であり、板厚方向を幅方向に向ける。第一シールド部53は、第一端子20Aの固定側被保持部22を幅方向外側から覆う部分と、第二端子20Bの固定側被保持部22を幅方向外側から覆う部分と、を有する。
第一シールド部53は、第一曲部58aを介して天板部52と接続される。第一曲部58aは、前後方向に延びる。
【0073】
固定側シールド体51は、前後一対の第二シールド部54を備える。
第二シールド部54は、固定ハウジング30の第二壁部33を前後方向外側から覆う。第二シールド部54は、側板部53,54,57の一部を構成する。
第二シールド部54は、平板状であり、板厚方向を前後方向に向ける。
第二シールド部54は、第二曲部58bを介して天板部52と接続される。第二曲部58bは、幅方向に延びる。
【0074】
固定側シールド体51は、複数(本実施形態では4つ)の追加シールド部57を備える。
追加シールド部57は、固定ハウジング30のシールド体保持部32を幅方向外側から覆う。追加シールド部57は、側板部53,54,57の一部を構成する。
追加シールド部57の詳細については後述する。
【0075】
図7に示すように、被保持部55及び接続部56は、補強部55,56を構成する。
補強部55,56は、被保持部55において固定ハウジング30に保持され、接続部56において取付対象物90と接続される。これにより、補強部55,56は、取付対象物90に対するコネクタ10の取付強度を補強する。
【0076】
被保持部55は、第一シールド部53に対して前後方向外側(第一方向外側)に隣接する。第一シールド部53と被保持部55との間には、第一隙間G1が形成される(
図7参照)。
被保持部55は、第二シールド部54に対して前後方向内側(第一方向内側)に隣接する。第二シールド部54と被保持部55との間には、第二隙間G2が形成される。
【0077】
被保持部55は、第三曲部58cを介して天板部52と接続される。第三曲部58cは、前後方向に延びる。
幅方向の位置に関し、第三曲部58cは、第一曲部58aよりも幅方向内側(第二方向内側)に位置する。これにより、幅方向の位置に関し、被保持部55は、第一シールド部53よりも幅方向内側に位置する。
幅方向の位置に関し、第三曲部58cが第一曲部58aよりも幅方向内側(第二方向内側)に位置することで、第三曲部58cが第一曲部58aと幅方向で同じ位置に位置する場合と比較して、被保持部55及び接続部56を幅方向内側に配置することができる。これにより、コネクタ10の小型化が図られる。
【0078】
図6に示すように、追加シールド部57は、第二シールド部54から幅方向外側(第二方向外側)に延出する。追加シールド部57は、第一隙間G1及び第二隙間G2の両方を覆う。
【0079】
追加シールド部57は、曲部57aと、本体部57bと、を備える。
本体部57bは、曲部57aを介して第二シールド部54と接続される。本体部57bは、平板状であり、板厚方向を幅方向に向ける。
【0080】
追加シールド部57は、重畳部57cを備える。
重畳部57cは、板厚方向を幅方向に向け、第一シールド部53の一部と幅方向で重なるように配置される。重畳部57cは、第一シールド部53の一部に対し、幅方向外側に配置される。重畳部57cは、第一シールド部53と接触する。重畳部57cは、第一シールド部53に対し、単に接触していてもよいが、接合されてもよい。これにより、第一シールド部53と追加シールド部57とが重畳部57cの箇所において電気的に接続される。
【0081】
重畳部57cは、段差部を介して本体部57bと接続される。
これにより、幅方向の位置に関し、本体部57bは、重畳部57cよりも幅方向内側(第二方向内側)に位置する。このため、本体部57bが重畳部57cと幅方向で同じ位置に位置する場合と比較して、本体部57bを幅方向内側に配置することができる。その結果、接続部56の外観検査を容易にすることができる。
【0082】
図9に示すように、固定側シールド体51は、順送加工により作られる。
図5、
図9に示すように、キャリア切断部59は、複数形成される。キャリア切断部59の数は、4つである。
具体的には、複数のキャリア切断部59は、すべて、天板部52に形成される。複数のキャリア切断部59は、天板部52から幅方向一方側に突出する複数(2つ)のキャリア切断部59と、天板部52から幅方向他方側に突出する複数(2つ)のキャリア切断部59と、を備える。
【0083】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0084】
本実施形態では、
図1に示すように、コネクタ10は、端子部20と、ハウジング30,40と、シールド50,60と、を備える。端子部20は、少なくとも一つの端子20から構成される。ハウジング30,40は、端子部20を保持する。シールド50,60は、端子部20をシールドする。
そして、シールド50,60は、一枚の板材から形成されるシールド体51を備える。
図6、
図7に示すように、シールド体51は、本体部53,54と、本体部53,54に隣接する隣接部55と、を備える。
このため、本体部53,54とは別に設けられた隣接部55を、ハウジング30,40に保持される被保持部55として機能させたり、取付対象物90に接続する接続部56を延出させる部分として機能させたりすることができる。
【0085】
ところで、本実施形態では、
図7に示すように、本体部53,54と隣接部55との間に隙間Gが形成される。この隙間Gは、シールド性能の低下を招きうる。
そこで、本実施形態では、
図6に示すように、コネクタ10は、上述の隙間Gを塞ぐ追加シールド部57を更に備える。
このため、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0086】
また、本実施形態では、
図6に示すように、追加シールド部57は、シールド体51の一部として設けられる。
このため、追加シールド部57がシールド体51とは別体として設けられる態様と比較して、部品点数の増加を抑えることができる。
【0087】
また、本実施形態では、
図6、
図7に示すように、追加シールド部57は、隣接部55の両側に形成された2つの隙間Gの両方を塞ぐ。
このため、追加シールド部57が当該2つの隙間Gのうち片方しか塞がない態様と比較して、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0088】
また、本実施形態では、
図6、
図7に示すように、本体部53,54は、第一シールド部53と、第二シールド部54と、を備える。第一シールド部53は、第一方向(±X方向)に延在する。第二シールド部54は、第二方向(±Y方向)に延在する。
このため、本体部が第一シールド部53及び第二シールド部54の何れか片方しか備えない態様と比較して、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
また、
図7に示すように、上述の隙間Gとして、第一シールド部53と隣接部55との間の第一隙間G1と、第二シールド部54と隣接部55との間の第二隙間G2と、が形成される。
そこで、本実施形態では、
図6に示すように、追加シールド部57は、第一隙間G1及び第二隙間G2の両方を塞ぐ。
このため、追加シールド部57が第一隙間G1及び第二隙間G2のうち片方しか塞がない態様と比較して、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0089】
また、本実施形態では、
図7に示すように、隣接部55の板厚方向は、第一シールド部53の板厚方向と同一である。そして、追加シールド部57は、第二シールド部54から延出する。
このため、シールド体51の一部として設けられる追加シールド部57を形成しやすい。
【0090】
また、本実施形態では、
図5に示すように、シールド体51は、平板状の天板部52を備える。天板部は、第三方向(±Z方向)に板厚方向を向ける。
そして、第一シールド部53は、1つの曲部58aを介して天板部52と接続され、隣接部55は、1つの曲部58cを介して天板部52と接続され、第二シールド部54は、1つの曲部58bを介して天板部52と接続される。
このため、第一シールド部53、隣接部55及び第二シールド部54のいずれもが、1つの曲部58aを介して天板部52と接続されることとなる。その結果、シールド体51の製造が容易になる。
【0091】
また、本実施形態では、
図5に示すように、ハウジング30,40は、シールド体51を保持するシールド体保持部32を備える。隣接部55は、圧入によってシールド体保持部32に保持される被保持部55である。
このため、隣接部55をハウジング30,40のシールド体保持部32に保持させることで、シールド体51をハウジング30,40に取り付けることができる。
【0092】
ところで、圧入によって隣接部55をハウジング30,40のシールド体保持部32に保持させる場合、シールド体保持部32を隣接部55の位置よりも第二方向外側に大きく形成する必要がある。シールド体保持部32を第二方向外側に大きく形成することは、第二方向におけるコネクタ10の大型化に繋がる。
そこで、本実施形態では、
図6、
図7に示すように、隣接部55は、第一シールド部53よりも第二方向内側に位置する。
このため、例えば隣接部55が第一シールド部53と第二方向において同じ位置に位置する態様と比較して、ハウジング30,40のシールド体保持部32が第二方向外側に拡大することを抑制することができる。
特に、本実施形態では、シールド体保持部32の側面(第二方向外側面)は、第一壁部31の側面と面一であり、第一壁部31の側面(第二方向外側面)よりも外側に膨出していない。
このため、ハウジング30,40を第二方向において小型化できる。
【0093】
ところで、
図7に示すように、隣接部55が第一シールド部53よりも第二方向内側に位置すると、第一シールド部53と隣接部55との間の第一隙間G1が大きくなりやすい。
そこで、本実施形態では、追加シールド部57は、第一隙間G1を塞ぐ。
このため、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
特に、本実施形態では、シールド体51が、隣接部55(被保持部55)から第二方向外側に延出する接続部56(取付対象物90の取付面91に接続される部分)を備える。本実施形態では、隣接部55が第一シールド部53よりも第二方向内側に位置するので、第二方向におけるコネクタ10の大型化を避けながら接続部56の第二方向寸法を大きくできる。
【0094】
また、本実施形態では、
図3に示すように、ハウジング30,40は、取付対象物に固定される固定ハウジング30と、固定ハウジング30に対して移動可能な可動ハウジング40と、を備える。端子20は、固定ハウジング30に保持される固定側被保持部22と、可動ハウジング40に保持される可動側被保持部24と、固定ハウジング30に対する可動ハウジング40の移動を許容するための中間弾性部23と、を備える。
図5に示すように、固定ハウジング30は、第一方向に延在する第一壁部31と、第一壁部31と第一方向で接続されるシールド体保持部32と、を備える。第一壁部31は、固定側被保持部22を保持する。シールド体保持部32は、シールド体51を保持する。具体的には、隣接部55は、圧入によってシールド体保持部32に保持される被保持部55である。
図3に示すように、第一壁部31に対し第二方向の内側の空間には、中間弾性部23が配置される。本体部53,54は、第一方向に延在する第一シールド部53を備える。第一シールド部53は、第一壁部31を第二方向の外側から覆う。
ここで、本実施形態では、隣接部55は、第一シールド部53よりも第二方向の内側に位置する。
このため、端子20の中間弾性部23が配置される空間を確保しつつ、第二方向において隣接部55が第一シールド部53と同じ位置に位置する場合と比較して、コネクタの占有面積(取付対象物90の取付面91上における占有面積)を小さくすることができる。
例えば、第一シールド部53の位置を第二方向内側へ変更しようとすると、ハウジングの第一壁部31の位置も第二方向内側へ変更する必要がある。そうすると、端子20の中間弾性部23が配置される空間が小さくなってしまう。本実施形態では、第一シールド部53が隣接部55よりも第二方向の外側に位置するので、端子20の中間弾性部23が配置される空間を確保することができる。
【0095】
(第2の観点)
次に、本実施形態の作用効果を第2の観点から説明する。
【0096】
本実施形態では、
図1に示すように、コネクタ10は、端子部20と、ハウジング30,40と、シールド50,60と、を備える。端子部20は、少なくとも一つの端子20から構成される。ハウジング30,40は、端子部20を保持する。シールド50,60は、端子部20をシールドする。シールド50,60は、一枚の板材から形成されるシールド体51を備える。
【0097】
また、本実施形態では、
図2に示すように、シールド体51は、ハウジング30,40の外側に装着される。シールド体51は、取付対象物90の取付面91の面内方向に突出するキャリア切断部59を備える。なお、キャリア切断部59とは、シールド体51を順送加工により製造する際にキャリア80(
図9参照)と接続されていた部分であって最終的に切断された部分を意味する。
ここで、仮に、キャリア切断部の先端が、コネクタを取付面に垂直な方向から見たときの当該コネクタの輪郭線上に位置すると(例えば特許文献1記載のコネクタ参照)、キャリア切断部の先端の切断面が、梱包材(キャリアテープやトレイ等)の壁面と接触してこれを損傷させ、異物が発生するおそれがある。具体的には、コネクタが梱包材に入れられて輸送される時、梱包材にコネクタを収容する時又は梱包材からコネクタを取り出す時に、キャリア切断部の先端の切断面が梱包材の壁面と接触するおそれがある。
そこで、本実施形態では、
図8に示すように、キャリア切断部59の先端は、コネクタ10を取付面91に垂直な方向から見たときのコネクタ10の輪郭線よりも内側に位置する。
このため、キャリア切断部59の先端の切断面が梱包材の壁面と接触しにくくなる。その結果、異物の発生を抑制できる。
【0098】
また、本実施形態では、
図1に示すように、ハウジング30,40は、取付対象物90に固定される固定ハウジング30を備える。一方、
図5に示すように、シールド体51は、固定ハウジング30の上面を覆う天板部52と、固定ハウジング30の側面を覆う側板部53,54,57と、を備える。
ここで、キャリア切断部59は、天板部52に形成される。
このため、側板部53,54,57にキャリア切断部59を形成しなくてよく、側板部53,54,57の形状の自由度が高くなる。その結果、取付面91に沿う方向からのシールド効果を高めることができる。
【0099】
また、本実施形態では、
図5に示すように、側板部53,54,57は、固定ハウジング30の外周を隙間なく包囲する。
このため、側板部53,54,57が固定ハウジング30の外周を隙間なく包囲しない態様と比較して、シールド性能に優れたコネクタを実現できる。
【0100】
また、本実施形態では、
図8に示すように、シールド体51は、側板部53,54,57とキャリア切断部59との間の通過空間TSを備える。通過空間TSは、キャリア切断部59とキャリア80とを切り離すための治具を取付対象物90の取付面91に垂直な方向(±Z方向)で通過させるための空間である。
このため、通過空間TSにキャリア切断部59とキャリア80とを切り離すための治具を通すことができる。また、この通過空間TSの分だけキャリア切断部59の先端を側板部53,54,57から遠ざけることができる。その結果、キャリア切断部59の先端の切断面が梱包材の壁面と接触することをより一層抑制できる。
【0101】
また、本実施形態では、
図5に示すように、固定ハウジング30は、第一方向に延在する第一壁部31と、シールド体51を保持するシールド体保持部32と、を備える。一方、シールド体51は、側板部53,54,57の一部として形成された第一シールド部53と、シールド体保持部32に保持される被保持部55と、を備える。第一シールド部53は、第一壁部31を第二方向の外側から覆う。被保持部55は、天板部52から曲部58cを介して下方向に延出する。
このため、第一シールド部53によってシールド性能を高め、かつシールド体51を固定ハウジング30に取り付けることができる。
【0102】
ところで、固定ハウジング30のシールド体保持部32は、シールド体51を保持する部分であるから、ある程度の強度を必要とする。具体的には、シールド体保持部32が被保持部55を適切に保持するためには、シールド体保持部32を被保持部55よりも第一方向内側及び第一方向外側の両方に大きく形成する必要がある。そのため、シールド体保持部32を固定ハウジング30のどの位置に形成するかは、固定ハウジング30の全体寸法に影響を与えうる。
そこで、本実施形態では、
図6に示すように、被保持部55は、第一シールド部53の第一方向外側であって、キャリア切断部59の第一方向内側に位置する。
このため、固定ハウジング30が第一方向で大型化しにくい。なぜなら、固定ハウジング30のうち、キャリア切断部59が配置される付近の部分(
図8参照)をシールド体保持部32又はシールド体保持部32を第一方向外側から補強する部分として機能させることができるからである。
【0103】
〔上記実施形態の補足説明〕
以上、本開示のコネクタの好適な実施形態について説明したが、本開示はこれに限定されない。以下の説明は、念のための補足である。
【0104】
上記実施形態では、シールド体としての固定側シールド体51が、固定側シールド50の全体を構成するが、本開示のシールド体はこれに限定されない。本開示のシールド体は、固定側シールドの一部を構成してもよい。換言すると、固定側シールドは、固定側シールド体51以外のシールド体を備えてもよい。
【0105】
上記実施形態では、コネクタ10が可動コネクタであるが、本開示のコネクタはこれに限定されない。
【0106】
上記実施形態では、端子部20が、第一端子部20Aと第二端子部20Bとを備えるが、本開示の端子部はこれに限定されない。
【0107】
上記実施形態では、固定ハウジング30が一体に形成されるが、本開示の固定ハウジングはこれに限定されない。例えば、固定ハウジングは、幅方向に分割された一対の壁部から構成されてもよい。換言すると、本開示の固定ハウジングは、第二壁部を備えなくてもよい。
【0108】
上記実施形態では、第一シールド部53と追加シールド部57とが重畳部57cの箇所において電気的に接続されるが、本開示の重畳部はこれに限定されない。重畳部は、第一シールド部53の一部と幅方向で重なるように配置されつつも、第一シールド部53と接触していなくてもよい。
【0109】
上記実施形態では、追加シールド部57が、概ね、第一方向に延在するが、本開示の追加シールド部はこれに限定されない。
例えば、上記実施形態では、平板状の本体部57bが板厚方向を幅方向(第二方向)に向け、前後方向(第一方向)に延在する。これに代えて、平板状の本体部57bが第一方向に対して傾斜する方向(第一方向内側に向かうに従い第二方向外側に広がる方向)に延在するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0110】
10 コネクタ
20 端子(端子部)
22 固定側被保持部
23 中間弾性部
24 可動側被保持部
30,40 ハウジング
30 固定ハウジング
31 第一壁部(端子保持部)
32 シールド体保持部
40 可動ハウジング
50,60 シールド
50 固定側シールド
51 固定側シールド体(シールド体)
52 天板部
53,54,57 側板部
53,54 本体部
53 第一シールド部
54 第二シールド部
55 被保持部(隣接部)
56 接続部
57 追加シールド部
57a 曲部
57b 本体部
57c 重畳部
58a 第一曲部(曲部)
58b 第二曲部(曲部)
58c 第三曲部(曲部)
59 キャリア切断部
80 キャリア
90 取付対象物
91 取付面
G 隙間
G1 第一隙間
G2 第二隙間
TS 通過空間