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特開2025-3227情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003227
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A61B5/16 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103780
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 郷司
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PP05
4C038PS00
(57)【要約】
【課題】交感神経系の活動指標と副交感神経の活動指標との両方を用いることにより被験者の状態について精度が高い判別を可能とする情報処理装置を提供する。
【解決手段】この発明の一態様の情報処理装置1は、第1ユーザの拍動を示す生体データを取得する生体データ取得部111と、前記生体データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを生成するLFおよびHF算出部112と、前記複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値を、前記複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値で除した値を算出する統計処理部114と、前記算出された値に係る情報を出力する出力部115とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置であって、
生体データ取得部材を介して、第1ユーザの拍動を示す生体データを取得する生体データ取得部と、
前記生体データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを生成するLFおよびHF算出部と、
前記複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値を、前記複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値で除した値を算出する統計処理部と、
前記算出された値に係る情報を出力装置に出力する、あるいは、前記情報処理装置が備える出力器を用いて、前記算出された値に係る情報の出力を行う出力部と
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記算出された値に係る情報の出力として、前記算出された値と閾値との大小関係に応じた出力を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ばらつきの度合いを示す値は、標準偏差、変動係数、または分散のいずれかである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値は、前記複数の組み合わせのHFの対数スケールでのばらつきの度合いを示す値である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記生体データは、前記第1ユーザが睡眠中の時間期間におけるデータである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の情報処理装置と、
前記算出された値に係る情報を受信して当該情報に係る出力を行う出力装置、および、前記生体データ取得部材、の少なくとも一方と
を具備するシステム。
【請求項7】
請求項1、3から5のいずれかに記載の情報処理装置から前記算出された値に係る情報を受信する出力装置であって、
前記算出された値のデータを受信する受信部と
前記算出された値と閾値との大小関係に応じた出力を行う出力部と
を備える出力装置。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の情報処理装置の各部による処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載の情報処理装置の各部による処理をハードウェアプロセッサに実行させるためのプログラムを記憶する、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項10】
ハードウェアプロセッサおよび記憶媒体を備える装置が実行する情報処理方法であって、
生体データ取得部材を介して、第1ユーザの拍動を示す生体データを取得することと、
前記生体データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを生成することと、
前記複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値を、前記複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値で除した値を算出することと、
前記算出された値に係る情報を出力装置に出力する、あるいは、前記装置が備える出力器を用いて、前記算出された値に係る情報の出力を行うことと
を含む、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の状態に関する判定のために生体データを用いる技術が知られている。
例えば、心拍数自体または脈拍数自体の時間変化と体動とから被験者の睡眠状態を判定する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。例えば、心拍強度の分散値と脳波の周波数成分とから被験者の睡眠状態を判定する技術が知られている(例えば特許文献2を参照)。例えば、脳波と自律神経の副交感神経の活性度とを用いて被験者の睡眠感を判定する技術が知られている(例えば特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-34955号公報
【特許文献2】特許第5632986号公報
【特許文献3】特許第6553397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば睡眠には自律神経活動の全体が関与していると考えられ、特許文献1のように心拍数自体または脈拍数自体の時間変化と体動とのみを頼りとして睡眠状態を正確に判定することは非常に困難である。また、特許文献2および3のように脳波を用いる方法は、被験者に脳波測定のための装置を着用させて負担を強いることとなり、実環境では採用しにくい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、交感神経系の活動指標と副交感神経の活動指標との両方を用いることにより被験者の状態について精度が高い判別を可能とする、情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、以下の発明を含み得る。
[1] 情報処理装置であって、
生体データ取得部材を介して、第1ユーザの拍動を示す生体データを取得する生体データ取得部と、
前記生体データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを生成するLFおよびHF算出部と、
前記複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値を、前記複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値で除した値を算出する統計処理部と、
前記算出された値に係る情報を出力装置に出力する、あるいは、前記情報処理装置が備える出力器を用いて、前記算出された値に係る情報の出力を行う出力部と
を備える、情報処理装置。
[2] 前記出力部は、前記算出された値に係る情報の出力として、前記算出された値と閾値との大小関係に応じた出力を行う、[1]に記載の情報処理装置。
[3] 前記ばらつきの度合いを示す値は、標準偏差、変動係数、または分散のいずれかである、[1]または[2]に記載の情報処理装置。
[4] 前記複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値は、前記複数の組み合わせのHFの対数スケールでのばらつきの度合いを示す値である、[1]から[3]のいずれかに記載の情報処理装置。
[5] 前記生体データは、前記第1ユーザが睡眠中の時間期間におけるデータである、[1]から[4]のいずれかに記載の情報処理装置。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の情報処理装置と、
前記算出された値に係る情報を受信して当該情報に係る出力を行う出力装置、および、前記生体データ取得部材、の少なくとも一方と
を具備するシステム。
[7] [1]、[3]から[5]のいずれかに記載の情報処理装置から前記算出された値に係る情報を受信する出力装置であって、
前記算出された値のデータを受信する受信部と
前記算出された値と閾値との大小関係に応じた出力を行う出力部と
を備える出力装置。
[8] [1]から[5]のいずれかに記載の情報処理装置の各部による処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
[9] [1]から[5]のいずれかに記載の情報処理装置の各部による処理をハードウェアプロセッサに実行させるためのプログラムを記憶する、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
[10] ハードウェアプロセッサおよび記憶媒体を備える装置が実行する情報処理方法であって、
生体データ取得部材を介して、第1ユーザの拍動を示す生体データを取得することと、
前記生体データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを生成することと、
前記複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値を、前記複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値で除した値を算出することと、
前記算出された値に係る情報を出力装置に出力する、あるいは、前記装置が備える出力器を用いて、前記算出された値に係る情報の出力を行うことと
を含む、情報処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交感神経系の活動指標と副交感神経の活動指標との両方を用いることにより被験者の状態について精度が高い判別を可能とする、情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの構成の一例を示す。
図2図2は、第1実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る情報処理装置の制御部のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、図3に示した第1実施形態に係る情報処理装置の制御部のソフトウェア構成のうち、グラフデータ生成処理に関係する構成を説明するための図である。
図5図5は、図3に示した第1実施形態に係る情報処理装置の制御部のソフトウェア構成のうち、統計処理に関係する構成を説明するための図である。
図6図6は、第1実施形態に係る情報処理装置により実行される動作の一例のフローチャートを示す。
図7図7は、第1実施形態に係る情報処理装置において用いられる生体データとしての典型的な心電波形の一例である。
図8図8は、第1実施形態に係る情報処理装置により心電波形の周波数分析からLFおよびHFを求める概念の説明図である。
図9図9は、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。
図10図10は、睡眠例1の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。
図11図11は、睡眠例2の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。
図12図12は、睡眠例3の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。
図13図13は、睡眠例4の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。
図14図14は、睡眠例5の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。
図15図15は、第1実施形態に係る情報処理装置とともに用いられる出力装置の概略構成を示す。
図16図16は、他の実施形態に係る情報処理装置の概略構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照してこの発明に係る実施形態を説明する。
以下では、下記実施形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0010】
[第1実施形態]
(構成例)
(1)システム構成
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置1を含むシステムSYSの構成の一例を示す。システムSYSは、情報処理装置1に加えて、例えば、生体データ取得部材2、生体データ取得装置3、および出力装置4を含む。
【0011】
生体データ取得部材2は、例えば生体データ取得用電極である。生体データ取得装置3は、例えば、生体データ取得部材2を介して取得される電圧信号をアナログデジタル変換し、当該アナログデジタル変換後の信号を、通信ネットワークNWを介して外部装置に送信可能である。生体データ取得部材2および生体データ取得装置3の構成の詳細については後述する。
【0012】
情報処理装置1は、例えば計測機器およびパーソナルコンピュータ等である。出力装置4は、例えば、スマートフォン、携帯端末(例えばタブレット端末)、スマートウォッチ、ヘッドマウントディスプレイ、スマートグラス、スマートコンタクトレンズ、およびパーソナルコンピュータ等である。図1では、情報処理装置1と出力装置4とが通信ネットワークNWを介して接続される別個の装置であるものとして示されているが、本実施形態はこれに限定されない。情報処理装置1と出力装置4とを組み合わせたものが、単一の装置を構成していてもよい。例えば、情報処理装置1と出力装置4との組み合わせが、計測機器、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、移動端末(例えばタブレット端末)、スマートウォッチ、およびヘッドマウントディスプレイ等を構成していてもよい。同様に、生体データ取得部材2、生体データ取得装置3、情報処理装置1、および出力装置4のうちの2つ以上が、単一の装置を構成していてもよい。
【0013】
生体データ取得装置3は、生体データ取得部材2を介して、生体データ取得部材2が取り付けられたユーザ(以下、被験者とも称される。)の拍動を示す生体データを取得する。生体データ取得装置3は、通信ネットワークNWを介して生体データを情報処理装置1に送信する。情報処理装置1は、当該生体データを受け取り、当該生体データに基づいて、例えばグラフデータを生成する。
【0014】
情報処理装置1によるグラフデータの生成について説明する。情報処理装置1は、後述するように、LFおよびHF算出部112による制御の下、被験者の拍動間隔から周波数スペクトル変換を介して得たパワースペクトルを定積分してLFおよびHFを算出し、さらにLF/HFを算出する。情報処理装置1は、グラフデータ生成部113による制御の下、例えば、第1の軸にHFを取り、第1の軸と交差する第2の軸にLF/HFを取ったグラフに関係するグラフデータを生成する。情報処理装置1は、通信ネットワークNWを介して、当該グラフデータを出力装置4に送信可能である。
【0015】
出力装置4は、例えば、当該グラフデータを受信し、当該グラフデータに基づいて、上記の通り、第1の軸にHFを取り第2の軸にLF/HFを取ったグラフを表示する。当該表示により、被験者の自律神経の失調状態におけるプロットの把握が容易となる。より具体的には、グラフデータが例えば許容可能領域に係るデータを含むことにより、当該グラフに許容可能領域も表示され、これにより、被験者の自律神経の失調状態におけるプロットの把握が容易となる。
【0016】
情報処理装置1はさらに、統計処理部114による制御の下、HFとLF/HFとの複数の組み合わせについて、LF/HFのばらつきの度合いを示す値を、HFのばらつきの度合いを示す値で除した値を算出する。情報処理装置1は、例えば、通信ネットワークNWを介して、当該算出された値のデータを出力装置4に送信する。
【0017】
出力装置4は、例えば、当該算出された値のデータを受信し、当該値に基づく表示等を行う。これにより、被験者自身および/または監督者が、被験者が例えば睡眠中にストレス状態にあって熟眠できていない場合を判別することが可能となる。
【0018】
情報処理装置1は、上記算出された値に基づいて通知データを生成し、当該通知データを出力装置4に送信してもよい。出力装置4は、当該通知データを受信し、当該通知データに基づく警告の表示等の出力を行うことも可能である。これにより、被験者自身および/または監督者が、被験者が例えば睡眠中にストレス状態にあって熟眠できていない場合を判別することが可能となる。
【0019】
次に、生体データ、ならびに、生体データ取得部材2および生体データ取得装置3について、より詳細に説明する。
【0020】
生体データ取得装置3は、生体データ取得部材2を介して被験者の拍動を示す生体データを取得する。本明細書では、主に当該生体データが心電情報である場合を例に挙げて説明する。生体データ取得部材2としては、生体データ取得用電極が好ましく、生体接触型電極がより好ましい。生体データ取得装置3は、得られた心電情報を例えば情報処理装置1に送信可能であり、温度計、GPSによる位置情報、XYZ各軸への加速度センサ等が搭載されているものであってもよい。生体データ取得装置3は、心電情報を後述するRRI等の拍動間隔の情報に変換してもよいし、情報処理装置1において、心電情報をRRI等の拍動間隔の情報に変換してもよい。本明細書では、特に明示されない限り、当該変換の前の心電情報と、当該変換後のRRI等の拍動間隔の情報は、いずれも生体データと称されてもよい。
【0021】
生体データ取得部材2は、衣服型の(図示しない)生体情報測定装置に設けられた複数の生体データ取得用電極であることが好ましい。衣服型の生体情報測定装置としては、センシングウェア、ウェアラブル・スマート・デバイス等が挙げられる。生体データ取得装置3は、例えば、当該衣服型の生体情報測定装置を被験者に装着させて、当該生体情報測定装置に設けられた複数の生体接触型電極を介して経時的に電圧測定を行うことにより、心電情報を取得する。
【0022】
生体データが示す拍動の間隔は、例えば心拍の間隔である。当該間隔の単位はmsであることが好ましい。心拍間隔は、心電図からR波とR波の間隔を読み取ること、あるいは、隣り合う心拍同士の間隔を計測することにより取得可能である。図7に示されるように、規則的に表れる高い急峻なピークがR波である。拍動の間隔およびその揺動には、精神神経の状態が反映されると言われている。
【0023】
生体データが示す拍動の間隔は、心電信号におけるR波と次のR波との間隔であるRR間隔(以下、「RRI」と記載する場合がある)であることが好ましい。RRIは信号のピークがはっきり出ることによりピーク位置の誤認識が起こりにくいため、拍動間隔の測定精度を高めることができる。また、情報処理装置1で行われる周波数スペクトル変換にはある一定期間の波数が必要であるが、拍動間隔の測定精度が高ければ短い時間、少ない波数でスペクトル変換が可能となり、リアルタイムに近い迅速な検出が可能となる。図7は、典型的な心電波形の一例である。
【0024】
拍動間隔を示す生体データとして、心電情報に基づく心拍間隔を示す生体データの代わりに、血流量の変化に係る脈波情報に基づく脈拍間隔を示す生体データが用いられてもよい。脈拍間隔は、隣り合う脈拍同士の間隔を計測することにより取得可能である。脈波は、生体データ取得部材2により、被験者の手首、手指等で取得することができる。手首装着型のセンサーにおいては、血管の太さ変化を光学的に読み取る方式が主流である。
心拍ないし脈拍の拍動間隔は、圧力センサや生体インピーダンスセンサ等を利用して取得することも可能である。睡眠中ないし、寝たきりのご老人のように寝台で過ごす時間が長い被験者の場合には、例えば寝台に仕込んだ圧力センサにより拍動間隔を取得することができる。また、椅子の臀部ないし背面に設置した圧力センサによって拍動間隔を取得することも可能である。
【0025】
生体データ取得部材2について、より詳細に説明する。
上述の通り、生体データ取得部材2として、皮膚接触型電極を用いることができる。皮膚接触型電極としては、導電性ファブリックを用いた電極を用いることができる。導電性ファブリックとして、少なくとも導電糸を含む繊維からなる織布、不織布、編物、刺繍糸、縫糸等が挙げられる。皮膚接触電極としては、伸縮性導体組成物を用いた電極を用いることもできる。
【0026】
(2)情報処理装置に係るハードウェア構成
図2は、第1実施形態に係る情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
情報処理装置1は、制御部11、プログラム記憶部12、データ記憶部13、入出力インタフェース(入出力I/F)14、およびバスBUSを含む。プログラム記憶部12、データ記憶部13、および入出力インタフェース14、の各々は、バスBUSを介して制御部11に接続される。
【0028】
制御部11は、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する。
【0029】
プログラム記憶部12は、記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせたものである。プログラム記憶部12は、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、本実施形態に係る各種制御処理の実行のために用いられるプログラムを格納する。プログラム記憶部12は、例えば、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、CD-ROM、DVDディスク、およびUSBメモリ等の可搬型の記録媒体により実現されてもよい。
【0030】
データ記憶部13は、記憶媒体として、例えば、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせたものである。データ記憶部13は、制御部11が有するハードウェアプロセッサの作業領域として使用され、データを一時的に保持し、バッファおよびキャッシュとして機能する。データ記憶部13は、例えば、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、CD-ROM、DVDディスク、およびUSBメモリ等の可搬型の記録媒体により実現されてもよい。
【0031】
入出力インタフェース14は、制御部11による制御の下、通信ネットワークNWにより定義される通信プロトコルを使用して、外部装置との間で伝送されるデータの送受信を行う。入出力インタフェース14は、例えば有線LANまたは無線LANに対応するインタフェースにより構成される。
【0032】
(3)情報処理装置に係るソフトウェア構成
図3は、第1実施形態に係る情報処理装置1の制御部11のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部11中に示される各種機能部は、一例にすぎず、図3に示されるように区別されている必要はない。単一のブロックとして示されている或る機能部が複数の単位に分割されて実現されてもよいし、異なる複数のブロックとして示されている機能部が或るまとまった単位で実現されてもよい。
【0033】
制御部11は、例えば、生体データ取得部111、LFおよびHF算出部112、グラフデータ生成部113、統計処理部114、データ出力部115、および通知データ生成部116を含む。グラフデータ生成部113は、例えば、回帰分析データ生成部1131および許容可能領域算出部1132を含む。制御部11が含む各機能部の処理機能は、制御部11が、プログラム記憶部12に格納されるプログラムを、制御部11のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。プログラム記憶部12に格納されるプログラムが用いられる場合の説明を行ったが、用いられるプログラムは、通信ネットワークNWを通して提供されるものであってもよい。
【0034】
入出力インタフェース14は、生体データ取得装置3から通信ネットワークNWを介して送信される生体データを受け取り、当該生体データを制御部11に入力する。入出力インタフェース14はまた、制御部11から出力されるデータを受け取り、制御部11からの指示にしたがって、当該データを出力装置4に通信ネットワークNWを介して送信する。
【0035】
データ記憶部13は、例えば、生体データ記憶部131、LFおよびHF記憶部132、回帰分析データ記憶部133、許容可能領域記憶部134、ばらつき度合い比率記憶部135、ならびに通知データ記憶部136を含む。これら各種記憶部は、情報処理装置1に含まれているものとして説明するが、これら記憶部のうち1つ以上が、例えばクラウドコンピューティング上に設けられていてもよい。
【0036】
生体データ記憶部131は、生体データを記憶する。LFおよびHF記憶部132は、LFとHFとの組み合わせのデータ、および/または、HFとLF/HFとの組み合わせのデータを記憶する。回帰分析データ記憶部133は、回帰分析データ生成部1131による処理で生成されるデータを記憶する。許容可能領域記憶部134は、許容可能領域算出部1132による処理で生成されるデータを記憶する。ばらつき度合い比率記憶部135は、統計処理部114による処理で生成されるデータを記憶する。通知データ記憶部136は、通知データを記憶する。
【0037】
生体データ取得部111は、入出力インタフェース14を介して、生体データ取得装置3から送信される生体データを取得する処理を実行する。LFおよびHF算出部112は、生体データに基づいてLFおよびHFの組み合わせのデータを生成する処理を実行する。LFおよびHF算出部112はさらに、LF/HFを算出し、HFとLF/HFとの組み合わせのデータを生成する処理を実行する。グラフデータ生成部113は、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータに基づいて、HFおよびLF/HFの複数の組み合わせのグラフ上へのプロットに関係するグラフデータを生成する処理を実行する。回帰分析データ生成部1131は、HFおよびLF/HFの複数の組み合わせのグラフ上へのそれぞれのプロットに基づく回帰直線を算出して当該回帰直線を示す回帰直線データを生成する処理を実行する。許容可能領域算出部1132は、当該回帰直線に基づいて許容可能領域に係るデータを生成する処理を実行する。回帰直線データおよび許容可能領域に係るデータは、上述したグラフデータに含まれ得る。統計処理部114は、HFとLF/HFとの複数の組み合わせについて、LF/HFのばらつきの度合いを示す値を、HFのばらつきの度合いを示す値で除した値を算出する処理を実行する。データ出力部115は、グラフデータおよび/または当該算出された値のデータを、入出力インタフェース14を介して、出力装置4に出力する処理を実行する。通知データ生成部116は、例えば、当該算出された値のデータに基づいて通知データを生成する。データ出力部115は、通知データも同様に出力装置4に出力する処理を実行する。
【0038】
図4は、第1実施形態に係る情報処理装置1の、グラフデータ生成処理に関係する構成を説明するための図である。
【0039】
先ず、第1時間期間における被験者の拍動を示すデータに関係する処理を説明する。図4では、当該処理に関係するデータの流れは破線で示されている。
【0040】
生体データ取得部111は、生体データ取得部材2および生体データ取得装置3を介して検出される、第1時間期間における被験者(以下、第1ユーザとも称され得る。)の拍動を示す生体データ(以下、第1データとも称され得る。)を、入出力インタフェース14を介して取得し、当該第1データを生体データ記憶部131に記憶させる処理を実行する。
【0041】
LFおよびHF算出部112は、生体データ記憶部131から当該第1データを読み出し、当該第1データに基づいて、当該第1時間期間に含まれる複数の時間期間の各々について、当該第1データが示す拍動間隔の変動の時系列情報から、周波数スペクトル変換を介してパワースペクトルを算出し、当該パワースペクトルに基づいてLFおよびHFを算出することにより、LFとHFとの複数の組み合わせを含むデータを生成し、当該データを、LFおよびHF記憶部132に記憶させる処理を実行し得る。LFおよびHF算出部112はさらに、LF/HFを算出し、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータ(以下、第2データとも称され得る。)を生成し、当該第2データをLFおよびHF記憶部132に記憶させる処理を実行してもよい。
【0042】
グラフデータ生成部113は、LFおよびHF記憶部132から当該第2データを読み出す処理を実行する。
【0043】
回帰分析データ生成部1131は、当該第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにプロットされる場合の当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出して当該回帰直線を示す回帰直線データを生成し、当該回帰直線データを回帰分析データ記憶部133に記憶させる処理を実行する。本明細書ではこのような回帰直線データが生成される場合について主に説明するが、回帰分析データ生成部1131は、回帰直線データの代わりに、例えば、LF/HFを変数としてHFの値が定まるような曲線の関数のデータを回帰分析により生成してもよい。
【0044】
許容可能領域算出部1132は、回帰分析データ記憶部133から当該回帰直線データを読み出す処理を実行する。続いて、許容可能領域算出部1132は、上記第2データに係る上述した複数のプロットについて、上記回帰直線を基準としたばらつきを表す統計量を算出する処理を実行する。続いて、許容可能領域算出部1132は、当該回帰直線および当該統計量に基づいて、当該回帰直線を基準とした許容可能な領域に係るデータ(以下、第3データとも称され得る。)を生成し、当該第3データを許容可能領域記憶部134に記憶させる処理を実行する。当該第3データは、例えば、上記回帰直線および上記統計量から算出される、許容可能領域の境界の1以上の直線を示すデータであってもよい。
【0045】
データ出力部115は、許容可能領域記憶部134から当該第3データを読み出し、当該第3データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する処理を実行する。当該出力により、出力装置4による第3データに基づく表示が可能となる。当該表示では、例えば、第3データが示す許容可能領域が表示される。データ出力部115はさらに、LFおよびHF記憶部132から上記第2データを読み出し、当該第2データを同様に出力装置4に出力する処理を実行してもよい。データ出力部115はさらに、回帰分析データ記憶部133から上記回帰直線データを読み出し、当該回帰直線データを同様に出力装置4に出力する処理を実行してもよい。このような第2データおよび/または回帰直線データの出力により、出力装置4による第2データおよび/または回帰直線データに基づく表示も可能となる。データ出力部115による第3データの出力処理、第2データの出力処理、回帰直線データの出力処理が実行される順番は、ここに記載したものに限定されず、少なくとも2つのデータの出力が並行して行われるものであってもよい。
【0046】
続いて、第2時間期間における被験者の拍動を示すデータに関係する処理を説明する。図4では、当該処理に関係するデータの流れは一点鎖線で示されている。第2時間期間は、例えば第1時間期間より後の時間期間であるが、本実施形態はこれに限定されない。第2時間期間が第1時間期間より前の時間期間であってもよいし、第2時間期間と第1時間期間とが少なくとも部分的に重なっていてもよい。
【0047】
生体データ取得部111は、生体データ取得部材2および生体データ取得装置3を介して検出される、第2時間期間における第1ユーザの拍動を示す生体データ(以下、第4データとも称され得る。)を、入出力インタフェース14を介して取得し、当該第4データを生体データ記憶部131に記憶させる処理を実行する。
【0048】
LFおよびHF算出部112は、生体データ記憶部131から当該第4データを読み出し、当該第4データに基づいて、当該第2時間期間に含まれる複数の時間期間の各々について、第1データについて説明したのと同様にLF、HF、およびLF/HFを算出することにより、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータ(以下、第5データとも称され得る。)を生成し、当該第5データを、LFおよびHF記憶部132に記憶させる処理を実行する。。
【0049】
データ出力部115は、LFおよびHF記憶部132から当該第5データを読み出し、当該第5データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する処理を実行する。当該出力により、出力装置4による第5データに基づく表示が可能となる。当該表示では、例えば、第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにプロットされたグラフが表示される。当該表示は、例えば、上述した第3データに基づく表示とともに行われる。
【0050】
図5は、第1実施形態に係る情報処理装置1の、統計処理に関係する構成を説明するための図である。
【0051】
統計処理部114は、LFおよびHF記憶部132から、或る時間期間における被験者(第1ユーザ)の拍動を示すデータに基づくHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを読み出す処理を実行する。当該読み出されるデータは、例えば、上述した第2データおよび/または第5データであってもよいし、第2データおよび/または第5データの一部であってもよいし、あるいは、上記で第2データおよび第5データについて説明したのと同様に、他の時間期間における第1ユーザの拍動を示すデータに基づいてLFおよびHF算出部112により生成される、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータであってもよい。統計処理部114は、当該読み出されたデータに基づいて、当該複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値と、当該複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値とを算出する処理を実行する。さらに、統計処理部114は、当該LF/HFのばらつきの度合いを示す値を、当該HFのばらつきの度合いを示す値で除した値(以下、ばらつき度合い比率とも称され得る。)を算出し、当該ばらつき度合い比率のデータをばらつき度合い比率記憶部135に記憶させる処理を実行する。
【0052】
統計処理部114は、上記複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値として、例えば、当該複数の組み合わせのHFの対数スケールでのばらつきの度合いを示す値を算出し、上記ばらつき度合い比率として、上記LF/HFのばらつきの度合いを示す値を、当該HFの対数スケールでのばらつきの度合いを示す値で除した値を算出する。当該HFの対数スケールでのばらつきの度合いを示す値としては、例えば、当該複数の組み合わせのHFの常用対数の値のばらつきの度合いを示す値が用いられる。常用対数の代わりに、10以外の数を底とする他の対数(自然対数等)が用いられてもよい。
【0053】
ばらつきの度合いを示す値としては、例えば標準偏差が用いられるが、本実施形態ではこれに限定されない。ばらつきの度合いを示す値として、変動係数、分散、平均偏差、範囲(例えば、Xbar-R管理図における最大値と最小値の差)、四分位範囲、平均絶対偏差、または離散エントロピー等が用いられてもよい。これらの中でも、標準偏差、変動係数、または分散が用いられることが好ましく、標準偏差が用いられることがより好ましい。これらの指標のうち同一の指標が、上述した、LF/HFのばらつきの度合いを示す値と、HFのばらつきの度合いを示す値との両方に用いられることが好ましい。具体的には、上述した、LF/HFのばらつきの度合いを示す値と、HFのばらつきの度合いを示す値との両方に、標準偏差、変動係数、分散、平均偏差、範囲(例えば、Xbar-R管理図における最大値と最小値の差)、四分位範囲、平均絶対偏差、または離散エントロピー等のうちのいずれかが用いられることが好ましく、標準偏差、変動係数、または分散のうちのいずれかが用いられることがより好ましく、標準偏差が用いられることがさらに好ましい。
【0054】
データ出力部115は、ばらつき度合い比率記憶部135から上記ばらつき度合い比率のデータを読み出し、当該データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する処理を実行する。当該出力により、出力装置4による、例えば、ばらつき度合い比率の画面表示および/または音声出力が可能となる。
【0055】
通知データ生成部116は、ばらつき度合い比率記憶部135から上記ばらつき度合い比率のデータを読み出し、当該データに基づいて、例えば、当該ばらつき度合い比率が閾値を超える場合に通知データを生成し、当該通知データを通知データ記憶部136に記憶させる処理を実行する。通知データとしては、通知データに基づくユーザへのリアルタイムな警告のための単純な通知信号でもよい。上述した、LF/HFのばらつきの度合いを示す値と、HFのばらつきの度合いを示す値との両方に標準偏差が用いられ、HFおよびLFの単位としてmsが用いられる場合、当該閾値は、9.00以上であることが好ましく、10.00以上であることがより好ましく、11.00以上であることがさらに好ましく、12.00以上であることがさらに好ましく、一方、17.00以下であることが好ましく、16.00以下であることがより好ましく、15.00以下であることがさらに好ましく、14.00以下であることがさらに好ましい。この場合の当該閾値としては、例えば13.00が用いられる。。
【0056】
本明細書では、通知データが、ばらつき度合い比率が或る閾値を超える場合に生成されるものとして主に説明するが、本実施形態はこれに限定されない。通知データとしては、ばらつき度合い比率が或る閾値以下の場合にロー(L)レベル、ばらつき度合い比率が当該閾値を超える場合にハイ(H)レベルを示すように、当該閾値との大小関係を2値で示すものが用いられてもよい。さらに、2以上の閾値が用いられて、2以上の閾値の各々との大小関係を示すような通知データが用いられてもよい。
【0057】
データ出力部115は、通知データ記憶部136から通知データを読み出し、当該通知データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する処理を実行する。当該出力により、出力装置4による通知データに基づく出力が可能となる。当該出力は、例えば、警告の画面表示、振動、音声出力、および/または発熱等により実現される。上述したいずれの場合の通知データが用いられても、当該出力は、ばらつき度合い比率と或る閾値との大小関係に応じた出力となる。
【0058】
このように、データ出力部115は、ばらつき度合い比率のデータおよび/または通知データという、算出されたばらつき度合い比率に係る情報を出力装置4に出力する処理を実行する。
【0059】
(動作例)
以上のように構成された情報処理装置1の動作例を説明する。
(1)全体動作フロー
図6は、情報処理装置1により実行される動作の一例のフローチャートを示す図である。以下で説明する動作は一例に過ぎず、本実施形態に係る動作はこれに限定されるものではない。
【0060】
当該動作に先立ち、生体データ取得装置3が生体データ取得部材2を介して或る時間期間における被験者(第1ユーザ)の拍動を示す生体データを取得する。当該生体データは、例えば、第1ユーザが睡眠中の時間期間におけるデータである。生体データ取得装置3は、(図示しない)出力部による制御の下、当該生体データを、通信ネットワークNWを介して情報処理装置1に送信する。当該送信に応じて、図6のフローチャートに示される動作が開始される。
【0061】
情報処理装置1の制御部11は、生体データ取得部111による制御の下、当該時間期間における第1ユーザの拍動を示す生体データを取得する(ST01)。
【0062】
続いて、制御部11は、LFおよびHF算出部112による制御の下、当該生体データに基づいて、当該時間期間に含まれる複数の時間期間の各々について、当該生体データが示す拍動間隔の変動の時系列情報から、周波数スペクトル変換を介してパワースペクトルを算出し、当該パワースペクトルに基づいてLFおよびHFを算出し、さらにLF/HFを算出することにより、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを生成する(ST02)。なお、ST02の動作は、ST01の動作と、少なくとも一部が並行して行われてもよい。
【0063】
続いて、制御部11は、統計処理部114による制御の下、当該複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値と、当該複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値とを算出し、さらに、当該LF/HFのばらつきの度合いを示す値を、当該HFのばらつきの度合いを示す値で除した値である、ばらつき度合い比率を算出する(ST03)。
【0064】
続いて、制御部11は、通知データ生成部116による制御の下、ばらつき度合い比率が閾値を超えているか否かを判定する(ST04)。ばらつき度合い比率が閾値を超えていると判定された場合、制御部11は、通知データ生成部116による制御の下、通知データを生成する(ST05)。一方、ばらつき度合い比率が閾値を超えていないと判定された場合、制御部11は、通知データを生成せず、ST01以降の動作を再度実行する。上記生体データが、第1ユーザが睡眠中の時間期間におけるデータである場合、制御部11は、このように通知データを生成するか否かの判定処理を行うことにより、第1ユーザが熟眠できているのか、あるいは、安眠できていなかったかの、第1ユーザの睡眠安定度の判定を行うことになる。
【0065】
ST05の動作に続いて、制御部11は、データ出力部115による制御の下、当該通知データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する(ST06)。
【0066】
上記では、図6に示されるフローについて説明したが、本実施形態はこれに限定されない。ST06の動作に続いて、ST01以降の動作が再度実行されてもよい。この場合、再度実行されるST01の動作は、上述したST02~ST06の動作と少なくとも一部が並行して実行されてもよい。
【0067】
以下、図6に示すフローに関連して説明した動作の詳細を説明する。
【0068】
(2)LFおよびHF算出処理
ST02の動作において制御部11がLFおよびHF算出部112による制御の下で実行するLFおよびHF算出処理を、より詳細に説明する。以下の説明は、LFおよびHF算出部112による制御の下で実行するLFおよびHF算出処理について一般的に成り立つ。
【0069】
図7は、拍動間隔を示す生体データとしての典型的な心電波形の一例を示す。拍動間隔の一例である、R波と次のR波との間隔であるRRIが示されている。
【0070】
LFは、例えば拍動間隔から周波数スペクトル変換を介して得たパワースペクトルを周波数Lf1からLf2まで定積分することにより算出することができる。HFは、当該パワースペクトルを周波数Hf1からHf2まで定積分することにより算出することができる。Lf1、Lf2、Hf1、およびHf2は、Hf1>Lf1およびHf2>Lf2の関係を満たすものである。
【0071】
より詳細には、LFは、時間信号fである拍動間隔を周波数スペクトル変換したもの(周波数スペクトルF)を二乗することにより得られるパワースペクトルF2(第1のパワースペクトル)を周波数Lf1からLf2まで定積分することにより求めてもよい。HFは、上記パワースペクトルF2(第1のパワースペクトル)を周波数Hf1(>Lf1)からHf2(>Lf2)まで定積分することにより求めてもよい。
【0072】
第1のパワースペクトルF2を用いて計算されるLF、HFの単位としては、ms2が挙げられる。周波数スペクトル変換の方法としては、例えば高速フーリエ変換(FFT)、ウェーブレット解析、および最大エントロピー法等を用いることができる。なお、本明細書においては、FFTを用いた場合を例として説明するが、他の方法を用いることも可能である。
【0073】
例えば、拍動間隔をスプライン補間しサンプリング間隔Δtで再サンプリングした拍動間隔RRIkの離散フーリエ変換Gkは、以下の式(I)で表され、パワースペクトルF2(第1のパワースペクトル)(単位:ms2/Hz)は、以下の式(II)で表される。ここで、kは時系列、Nはデータ数を表し、Sは任意のスケールであり、一般にパワースペクトラムではS=1である。
【0074】
【数1】
【0075】
【数2】
【0076】
他方、LFおよびHFの値として、拍動間隔を周波数スペクトル変換した値から得たパワースペクトルF(第2のパワースペクトル)(単位:ms)を所定の区間で定積分したものを用いてもよい。このように、パワースペクトルとして拍動間隔を周波数スペクトル変換した値を用いれば、より簡便にLFおよびHFの値を算出することができる。第2のパワースペクトルFを用いて計算されるLF、HFの単位は無次元量であることが好ましい。パワースペクトルF(第2のパワースペクトル)は、以下の式(III)で表される。
【0077】
【数3】
【0078】
LF、HFの算出方法について、パワースペクトル積分の説明図である図8を参照しながら説明する。図8に示されるグラフでは、縦軸はパワースペクトル密度(単位:ms2/Hz)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。LFは、パワースペクトル(例えば第1のパワースペクトルF2)を例えば0.04Hz(Lf1)から0.15Hz(Lf2)まで定積分した値であり、図8において斜線によりハッチングがされている部分の面積である。ここで、Lf1<Lf2である。一方、HFは、パワースペクトル(例えば第1のパワースペクトルF2)を例えば0.15Hz(Hf1)から0.4Hz(Hf2)まで定積分した値であり、図8において縦線によりハッチングがされている部分の面積である。ここで、Hf1<Hf2である。図8では、Lf2とHf1がいずれも0.15Hzと等しくなるように積分範囲を設定したが、Lf1<Hf1およびLf2<Hf2の関係を満たしていれば、Lf2とHf1は同一の値であっても異なる値でもよい。ここでは、パワースペクトル積分の方法を、第1のパワースペクトルF2を用いて説明したが、第2のパワースペクトルFによる定積分も同様に行うことができる。
【0079】
LFの積分範囲は、少なくとも0.1Hzを含み、Lf1<0.1<Lf2であることが好ましい。また、Lf1は0.01Hz以上であることが好ましく、0.04Hz以上であることがより好ましい。Lf2は0.13Hz以上であることがより好ましく、0.14Hz以上であることが更に好ましく、また、0.16Hz以下であることが好ましく、0.15Hz以下であることがより好ましい。
【0080】
HFの積分範囲は、少なくとも0.3Hzを含み、Hf1<0.3<Hf2であることが好ましい。Hf1は0.14Hz以上であることが好ましく、0.15Hz以上であることがより好ましく、また、0.17Hz以下であってもよく、0.16Hz以下であってもよい。Hf2は0.38Hz以上であることが好ましく、0.39Hz以上であることがより好ましく、また、0.41Hz以下であることが好ましく、0.4Hz以下であることがより好ましい。
【0081】
このようなLFおよびHFの算出に用いられる例えば心電情報である生体データについて説明する。
生体データ取得部材2を介して取得された生体データは、生体データ記憶部131に記憶される。詳細には、まずLFおよびHF算出部112で、周波数スペクトル変換を行うためには、ある程度の時間が必要である。心拍は概ね1Hz前後の低周波信号であり、その拍動間隔の揺らぎとして仮に0.017Hzまでを扱う場合には1/0.017=約60秒間のデータが最低限必要となる。したがってリアルタイムで周波数スペクトル変換を行うことは原理的には困難である。一方、所定の時間間隔Aで過去に遡って、生体データ記憶部131に記憶されたデータから任意の時間幅Bのデータを抽出して移動平均的に周波数スペクトル変換を行っていけば、疑似的なリアルタイムの周波数スペクトル変換が可能となる。所定の時間間隔Aは、好ましくは5秒以上60秒以下、より好ましくは10秒以上20秒以下である。上記任意の時間幅Bは、好ましくは1分間以上10分間以下、より好ましくは1分間以上5分間以下、更に好ましくは1分間以上3分間以下である。これにより10秒程度~5分程度の遅れで疑似リアルタイム的に周波数スペクトル変換が可能となる。
【0082】
後述する母集団データに係るLFとHFとの各組み合わせ(HF1,LF1),(HF2,LF2)・・・,(HFn,LFn)は、被験者の正常時に取得した心電情報から導かれた所定の時間幅のHFとLFの集合であることが好ましい。所定の時間幅は、好ましくは180秒以下、より好ましくは30秒以下、更に好ましくは10秒以下である。
【0083】
母集団データに係る心電情報を取得した後に、自律神経活動をチェックするために新たに取得する心電情報に係る、すなわち、後述する標本集団データに係る、LF、HFの値は、それぞれ、所定の時間幅で得られた心拍変動RRIから移動平均的に算出された値であることが好ましい。所定の時間幅は、好ましくは300秒間以下、より好ましくは180秒以下、更に好ましくは60秒以下である。
【0084】
(3)グラフデータ生成処理
ST02の動作に関係して、制御部11がグラフデータ生成部113等による制御の下で実行してもよいグラフデータ生成処理を詳細に説明する。例えば、第1時間期間における被験者(第1ユーザ)の拍動を示す生体データに基づいて生成されるHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータ(以下、母集団データとも称され得る。)について、次に説明する処理が行われる。
【0085】
第1時間期間における生体データは、例えば、予め、普段の生活や慣れた作業、通常の仕事のルーチンをこなしている状態や休憩している状態の被験者の正常時の心電情報が生体データ取得部材2を介して取得されるようにしたものである。当該生体データに基づく母集団データの、次に説明する複数のプロットを基準にして、新たに取得した心電情報に係るプロットが、母集団データのプロットから有意に外れた領域に位置した場合に自律神経失調状態に至ったと判断することができる。
【0086】
図9は、以下に説明するグラフデータ生成処理の一例として、第1実施形態に係る情報処理装置1により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。元になったデータは、発表会にてプレゼンテーションを行った被験者の、発表前後を含む午後約半日間のデータである。
【0087】
(3-1)HFおよびLF/HFのプロット
制御部11がグラフデータ生成部113による制御の下で実行し得る、母集団データに基づく、HFおよびLF/HFの複数の組み合わせをそれぞれグラフにプロットする処理を、先ず説明する。
【0088】
制御部11は、グラフデータ生成部113による制御の下、第1の軸にHFを取り、第1の軸と交差する第2の軸にLF/HFを取ったグラフに関係するグラフデータを生成する。当該グラフは、例えば、XY二次元座標系において、X軸にLF/HFを取り、Y軸にHFを取ったグラフであることが好ましい。一方、当該グラフは、X軸にHFを取り、Y軸にLF/HFを取ったグラフであってもよい。また、当該グラフにおいて、第1の軸と第2の軸は必ずしも直交している必要は無い。また、当該グラフは、HFおよびLF/HFの他に加速度およびRRI等の第3成分の値をZ軸にとったXYZ三次元座標系のものであってもよい。
【0089】
例えば、X軸にLF/HFを取り、Y軸にHFを取ったグラフでは、被験者の自律神経が正常に働いている場合、LF/HFが小さくHFが大きい側の領域(図9に示されるグラフの左上領域に対応)がリラックス状態であり、LF/HFが大きくHFが小さい側の領域(図9に示されるグラフの右下領域に対応)が緊張状態やストレスを感じている状態であると解釈できる。一方、左下領域や右上領域は、自律神経が正常に働いていない状態、すなわち自律神経失調状態であると解釈できる。
【0090】
第1の軸がHFを対数スケールで示すようなグラフデータを生成することが好ましい。このために、制御部11は、例えば、グラフデータ生成部113による制御の下、LFおよびHF記憶部132に記憶されるHFに基づいて、そのHFの対数(log(HF))を算出する。健康な人の正常時であってもHFの値の変動は激しいため、第1の軸がHFを対数スケールで示すようにすることにより、グラフを確認し易くすることができる。また、統計処理もしやすくなる。対数の底は特に限定されず、自然対数でも10を底とする対数(常用対数)でも良い。便宜上、以下では常用対数を用いて説明する。図9では、X軸がLF/HFの大きさを示しY軸がHFの常用対数の大きさを示すように、X軸にLF/HFを取りY軸にHFを取ったグラフにおいて、HFおよびLF/HFの複数の組み合わせがプロットされる様子が示されている。
【0091】
(3-2)回帰分析データ生成処理および許容可能領域算出処理
制御部11がグラフデータ生成部113による制御の下で実行し得る回帰分析データ生成処理および許容可能領域算出処理を説明する。制御部11は、次のように算出される回帰直線および/または許容可能領域に係るデータ(第3データ)を、データ出力部115による制御の下、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力可能である。
【0092】
制御部11は、回帰分析データ生成部1131による制御の下、第1時間期間における被験者の拍動間隔に基づいて算出されたHFの対数とLF/HFとがそれぞれプロットされたグラフにおいて、当該複数のプロットから最小二乗法により回帰直線を算出する。制御部11は、許容可能領域算出部1132による制御の下、上記複数のプロットと回帰直線とのHFの対数の差異に係るばらつきを表す統計量を算出する。制御部11は、許容可能領域1132による制御の下、回帰直線とばらつきを表す統計量から許容可能領域を算出することが好ましい。これにより、母集団データに基づく許容可能領域を設定することができる。なお、第1の軸がHFを対数スケールで示すものとせずに、HFとLF/HFとをグラフにプロットし、当該グラフにおいて、母集団データに基づく許容可能領域を設定してもよい。
【0093】
ばらつきを表す統計量として、平均偏差、分散、標準偏差、変動係数、範囲(Xbar-R管理図における最大値と最小値の差)、四分位範囲、平均絶対偏差、および離散エントロピー等を例示することができる。ばらつきを表す統計量として、標準偏差を用いることが好ましい。標準偏差を用いることにより、許容可能領域の信頼度が向上する。以下では、ばらつきを表す統計量として、上記複数のプロットと回帰直線との第1の軸方向での距離の標準偏差σが用いられる場合について説明する。
【0094】
上記許容可能領域は、上述したグラフにおける第1の直線と第2の直線の間の領域であり、第1の直線は、回帰直線を標準偏差σの3倍の値である3σだけ第1の軸の正の方向に平行移動させた直線であり、第2の直線は、回帰直線を3σだけ第1の軸の負の方向に平行移動させた直線であることが好ましい。このように99.7%許容可能領域とすることにより、母集団データに基づく許容可能領域の信頼度が向上する。なお、第1の軸がHFを対数スケールで示すものとはせずに、HFとLF/HFとをグラフにプロットして母集団データの99.7%許容可能領域を設定してもよい。また、同様に標準偏差σの2倍の値である2σ等を用いて、95.4%許容可能領域等を設定してもよい。図9において、このような回帰直線および許容可能領域が表示されるグラフの例が示される。図9中、回帰直線は符号RL、第1の直線は符号L1、第2の直線は符号L2で示す。図9に示す第1の直線L1と第2の直線L2の間の領域は99.7%許容可能領域である。
【0095】
(3-3)標本集団データに基づくグラフ関連処理
上述したように生成されるグラフデータは次に説明するように利用可能である。
例えば、第2時間期間における第1ユーザの拍動を示す生体データ(第4データ)に基づいて生成されるHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータ(以下、標本集団データとも称され得る。)が用いられる。第2時間期間は、第1時間期間より例えば後の測定期間である。
【0096】
制御部11は、第2時間期間中に測定した被験者の拍動間隔に基づいてLFおよびHF算出部112が算出したHFの対数とLF/HFのプロットのデータ(第5データ)を、データ出力部115による制御の下、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力可能である。出力装置4は、例えば、許容可能領域とこれらプロットを表示可能であり、被験者、指導者、医師等は、プロットが許容可能領域の範囲外となったことを確認することにより被験者が自律神経失調状態に至ったことを知ることができる。これにより、被験者が極度の自律神経失調状態に至ったことに気付かずに作業や訓練等を継続して悪化する危険を回避することができる。図9では、このようなプロットが実線で結ばれて示されている。
【0097】
出力装置4は、視覚化してグラフを表示することが好ましい。出力装置4は、視覚化して自律神経失調状態である旨の警告の出力を行ってもよい。当該出力は、画面表示、振動、音声出力、および/または発熱等により可能とされる。なお、情報処理装置1において、グラフはコンピュータ等の機械装置内で数式的な仮想平面、仮想空間上で作成してもよく、必ずしも視覚化して表示する必要は無い。情報処理装置1では、グラフは人工知能(AI)等により作成されてもよい。
【0098】
(効果)
情報処理装置1によると、生体データ取得部材を介して或る時間期間における被験者(第1ユーザ)の拍動を示す生体データが取得され、当該時間期間に含まれる複数の時間期間の各々について、当該生体データが示す拍動間隔の変動の時系列情報からHFおよびLF/HFが算出されて、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータが生成される。続いて、情報処理装置1により、当該複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値を、当該複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値で除した値(ばらつき度合い比率)が算出される。ばらつき度合い比率のデータは、例えば、情報処理装置1により出力装置4に出力される。これにより、出力装置4による、例えば、ばらつき度合い比率の表示等が可能となる。さらに、情報処理装置1によると、例えば、ばらつき度合い比率が閾値を超えていると判定された場合に通知データが生成され、通知データが出力装置4に出力される。これにより、出力装置4による、例えば、警告の表示等が可能となる。
【0099】
HFは副交感神経系の活動指標であり、LF/HFは交感神経系の活動指標であることが一般的に知られている。被験者がストレス状態にあるときには、交感神経系の活動指標のLF/HFは大きくなり、副交感神経系の活動指標のHFは小さくなることが知られている。この際には、LF/HFのばらつきの度合いは、HFのばらつきの度合いと比較して大きくなると考えられ、ゆえに、上記ばらつき度合い比率も大きくなると考えられる。したがって、ばらつき度合い比率の表示等を確認することにより、および/または、警告の表示等により、被験者自身および/または監督者が、被験者が例えば睡眠中にストレス状態にあって熟眠できていない場合を判別することが可能となる。
【0100】
ここで、年齢および/または性別等が異なると、あるいは、年齢および性別が同一であっても被験者によって、普段からLF/HFのばらつきの度合い、およびHFのばらつきの度合いが大きかったり小さかったりする。ゆえに、ストレス状態にある被験者のLF/HFのばらつきの度合い自体も、ならびに、ストレス状態にある被験者のHFのばらつきの度合い自体も、被験者によって大きかったり小さかったりする。このような個人差のため、LF/HFのばらつきの度合いのみに基づいて上述したような判別を行う場合、あるいは、HFのばらつきの度合いのみに基づいて上述したような判別を行う場合には、判別の精度は低いものとなってしまう。一方、上述した、LF/HFのばらつきの度合いを示す値をHFのばらつきの度合いを示す値で除した値(ばらつき度合い比率)という規格化された値に基づく判別では、このような個人差が排除されて判別の精度が高くなるものと考えられる。
【実施例0101】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0102】
以下の通り、生体データ取得部材としての皮膚接触型電極を備える衣服型の生体情報測定装置と、生体データ取得装置と、情報処理装置と、出力装置とを含むシステムを準備し、各グラフの作成を行った。
【0103】
衣服型の生体情報測定装置として、男性用には東洋紡株式会社製COCOMIサイクリングアンダーシャツを用い、女性用には東洋紡株式会社製COCOMIシームレスブラを用いた。衣服型の生体情報測定装置に取り付けられる生体データ取得装置として、ユニオンツール株式会社製myBeat心電計WHS-1を用いた。myBeat心電計には時計機能、心電位測定機能、温度測定機能、xyz三軸の加速度測定機能、および、それらのデータを記憶する機能が備わっている。
【0104】
次に説明する睡眠例1~5の実験を行った。実験結果は表1に示す。
(a)睡眠例1
被験者である健康な21歳の一般男性(表1では被験者IDがAとして示されている。)に衣服型の生体情報測定装置を着用させ、当該生体情報測定装置を用いて、被験者の睡眠中の時間期間における心電情報を取得した。心電情報の取得の際のサンプリングレートは1kHzとした。取得された心電情報の信号の周波数スペクトルは、ほぼ1Hz程度以下の領域であるため、この程度のサンプリングレートでも問題は無かった。
【0105】
得られた心電情報は、生体情報測定装置に取り付けられた生体データ取得装置から、情報処理装置としてのコンピュータ(解析機)に送信され、解析機のLFおよびHF算出部を用いて、心電情報から得られた拍動間隔(RRI)データを周波数スペクトル変換し、得られたパワースペクトルを定積分してLFおよびHFを算出した。ここで、RRIの単位としてはmsを用い、パワースペクトルとしては、縦軸が単位ms/Hzで表されるパワースペクトル密度を示し横軸が単位Hzで表される周波数を示すものを用いた。LFおよびHFの算出では、当該パワースペクトルにおける、0.01Hzから0.15Hzまでの積分値をLF、0.15Hzから0.40Hzまでの積分値をHFとして扱った。LFおよびHFの単位としてはmsを用いた。このように、過去3分間に得られた拍動間隔を用いて1分毎に周波数スペクトル変換行ってLFおよびHFを算出した。解析機のLFおよびHF算出部を用いて、HFとLFとの組み合わせ毎に、LF/HFを算出して、HFとLF/HFとの組み合わせを求めた。
【0106】
次に、解析機の統計処理部を用いて、HFとLF/HFとの複数の組み合わせについて、当該複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値と、当該複数の組み合わせのHFのばらつきの度合いを示す値とを算出した。当該複数の組み合わせのLF/HFのばらつきの度合いを示す値としては、LF/HFの標準偏差を算出した。当該HFのばらつきの度合いを示す値としては、HFの常用対数の値の標準偏差を算出した。表1に、LF/HFの標準偏差、HFの常用対数の値の標準偏差、これらの算出に先立ち解析機により算出されたLF/HFの平均値、HFの常用対数の値の平均値を示した。
【0107】
次に、解析機の統計処理部を用いて、LF/HFのばらつきの度合いを示す値を、HFのばらつきの度合いを示す値で除した値として、LF/HFの標準偏差をHFの常用対数の値の標準偏差で除した値(ばらつき度合い比率)を算出した。表1に、ばらつき度合い比率を睡眠指数として示した。参考のため、表1には、上記の心電情報に基づいて算出される心拍数の平均値と標準偏差を、単位をBPMで示した。
【0108】
次に、解析機の通知データ生成部を用いて、ばらつき度合い比率の7.40が閾値を超えているか否かを判定した。閾値としては13.00を用いた。ばらつき度合い比率の7.40が閾値としての13.00を超えていないと判定されたため、解析機の通知データ生成部は通知データを生成しなかった。
【0109】
図10は、睡眠例1の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。図10では、図9と同様に、X軸がLF/HFの大きさを示しY軸がHFの常用対数の大きさを示すグラフにおいて、HFおよびLF/HFの複数の組み合わせがプロットされる様子が示されている。図10の例では、参考のため、第1データとして被験者が日常活動中の時間期間における心電情報を用いて、当該心電情報に基づく母集団データのプロットが×で示され、これらのプロットに基づく、上述した回帰直線および99.7%許容可能領域が表示されている。ばらつき度合い比率の算出に用いられた、被験者の睡眠中の時間期間における心電情報に基づくHFおよびLF/HFの複数の組み合わせに対応するプロットが、図10では〇で示されている。
【0110】
(b)睡眠例2、3
睡眠例2および3では各々、被験者が健康な35歳の一般女性(表1では被験者IDがBとして示されている。)であること以外は、睡眠例1と同様に実験を行った。睡眠例2および3の各々について、表1に、LF/HFの標準偏差、HFの常用対数の値の標準偏差、これらの算出に先立ち解析機により算出されたLF/HFの平均値、およびHFの常用対数の値の平均値を示し、ばらつき度合い比率を睡眠指数として示し、参考のため、心拍数の平均値と標準偏差も、単位をBPMで示した。睡眠例2では、ばらつき度合い比率の8.76が閾値としての13.00を超えていないと判定されたため、解析機の通知データ生成部は通知データを生成しなかった。睡眠例3においても、ばらつき度合い比率の7.69が閾値としての13.00を超えていないと判定されたため、解析機の通知データ生成部は通知データを生成しなかった。図11は、睡眠例2の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を、図10と同様に示す。図12は、睡眠例3の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を、図10と同様に示す。
【0111】
(c)睡眠例4、5
睡眠例4および5では各々、被験者が健康な64歳の一般男性(表1では被験者IDがCとして示されている。)であること以外は、睡眠例1と同様に実験を行った。睡眠例4および5の各々について、表1に、LF/HFの標準偏差、HFの常用対数の値の標準偏差、これらの算出に先立ち解析機により算出されたLF/HFの平均値、およびHFの常用対数の値の平均値を示し、ばらつき度合い比率を睡眠指数として示し、参考のため、心拍数の平均値と標準偏差も、単位をBPMで示した。睡眠例4では、ばらつき度合い比率の17.24が閾値としての13.00を超えていると判定されたため、解析機の通知データ生成部は通知データを生成した。睡眠例5においても、ばらつき度合い比率の21.87が閾値としての13.00を超えていると判定されたため、解析機の通知データ生成部は通知データを生成した。これら通知データに基づいて、睡眠例4および5では、出力装置において警告の画面表示がされた。図13は、睡眠例4の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を、図10と同様に示す。図14は、睡眠例5の場合の、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を、図10と同様に示す。図13および図14の例では、図10図11、および図12の例と比較して、〇で示されているプロットについて、LF/HFの大きさを示すX軸方向へのばらつきが大きい一方で、HFの常用対数の大きさを示すY軸方向へのばらつきが小さいことが分かる。これは、ばらつき度合い比率が大きくなったことと整合している。
【0112】
【表1】
【0113】
上述したように、睡眠例1、2、および3では、ばらつき度合い比率が閾値としての13.00を超えていないと判定されて通知データは生成されなかった。睡眠例1、2、および3の各々において、表1に示されるように、被験者による自己申告では、心電情報が取得されていた睡眠中に熟眠できていたことが分かった。一方、上述したように、睡眠例4および5では、ばらつき度合い比率が閾値としての13.00を超えていると判定されて通知データが生成され、出力装置において警告の画面表示がされた。睡眠例4および5の各々において、表1に示されるように、被験者による自己申告では、心電情報が取得されていた睡眠中に安眠できなかったことが判明した。このように、睡眠例1~5では、被験者が安眠できていなかった場合に限り出力装置において警告の画面表示がされていたことが分かる。
【0114】
以上より、ばらつき度合い比率および/または通知データによれば、被験者自身が熟眠できていたのか否かを事後的に客観的に判別すること、ならびに、被験者が熟眠できているのか否かを監督者が客観的に判別することが可能となる。これにより、例えば、被験者が実際には疲労回復できていない際に自身または監督者が気付かずに被験者による作業や訓練等を継続させて被験者の健康障害が発生してしまうことを予防することが可能となる。
【0115】
[他の実施形態]
第1実施形態では、主に情報処理装置1の構成および動作について説明した。情報処理装置1とともに用いられる出力装置4についても説明する。
【0116】
図15は、出力装置4の概略構成を示す。出力装置4は、ハードウェア構成として、制御部41、プログラム記憶部42、データ記憶部43、入出力インタフェース(入出力I/F)44、および出力器45を含む。制御部41、プログラム記憶部42、データ記憶部43、入出力インタフェース44はそれぞれ、ハードウェア構成としては、第1実施形態で情報処理装置1の制御部11、プログラム記憶部12、データ記憶部13、入出力インタフェース14について説明したのと同様なため、ここではハードウェア構成の説明は省略する。出力器45は、例えば表示画面であるが、必ずしも限定されない。
【0117】
制御部41は、ソフトウェア構成として、受信部411および出力部415を含む。制御部41は、ソフトウェア構成として、通知データ生成部416を含んでもよい。データ記憶部43は、例えば、ばらつき度合い比率記憶部435を含む。データ記憶部43は、通知データ記憶部436を含んでもよい。
【0118】
受信部411は、入出力インタフェース44を介して、情報処理装置1からばらつき度合い比率のデータを受信し、当該データをばらつき度合い比率記憶部435に記憶させる処理を実行する。出力部415は、ばらつき度合い比率記憶部435から当該データを読み出し、当該データに基づき、出力器45において、上述したような表示等を行う処理を実行する。
【0119】
通知データ生成部416は、第1実施形態において通知データ生成部116が実行するとして説明したのと同様に、ばらつき度合い比率記憶部435からばらつき度合い比率のデータを読み出して通知データを生成し、当該通知データを通知データ記憶部436に記憶させる処理を実行する。出力部415は、通知データ記憶部436から通知データを読み出し、当該通知データに基づいて、出力器45において、上述したような、ばらつき度合い比率と或る閾値との大小関係に応じた出力を行う。
【0120】
出力装置4が通知データ生成部416を含まない場合、受信部411が、入出力インタフェースを介して、情報処理装置1から通知データを受信し、出力部415が当該通知データに基づいて、出力器45において、上述したような、ばらつき度合い比率と或る閾値との大小関係に応じた出力を行う。
【0121】
第1実施形態では、情報処理装置が通信ネットワークを介して出力装置に各種データを送信するものとして説明した。情報処理装置が例えば被験者への出力が可能な出力器を含む場合、当該情報処理装置が、当該出力器を用いて、このような各種データに基づいて、上記では出力装置により行われると説明した出力を行ってもよい。このような場合の情報処理装置の構成例を、当該情報処理装置および当該出力器をそれぞれ情報処理装置1aおよび出力器15aとして図16に示した。出力器15aは、例えば表示画面であるが、必ずしもこれに限定されない。出力器15aは、ばらつき度合い比率のデータに基づいて、出力装置4について説明したような出力を行ってもよい。出力器15aは、通知データに基づいて、出力装置4について説明したような出力を行ってもよい。このように、情報処理装置1aは、出力器15aを用いて、算出されたばらつき度合いの比率に係る情報の出力を行うことが可能である。
【0122】
以上、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる
実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1,1a…情報処理装置、11…制御部、111…生体データ取得部、112…LFおよびHF算出部、113…グラフデータ生成部、1131…回帰分析データ生成部、1132…許容可能領域算出部、114…統計処理部、115…データ出力部、116…通知データ生成部、12…プログラム記憶部、13…データ記憶部、131…生体データ記憶部、132…LFおよびHF記憶部、133…回帰分析データ記憶部、134…許容可能領域記憶部、135…ばらつき度合い比率記憶部、136…通知データ記憶部、14…入出力インタフェース、15a…出力器、2…生体データ取得部材、3…生体データ取得装置、4…出力装置、41…制御部、411…受信部、415…出力部、416…通知データ生成部、42…プログラム記憶部、43…データ記憶部、435…ばらつき度合い比率記憶部、436…通知データ記憶部、44…入出力インタフェース、45…出力器、SYS…システム、NW…通信ネットワーク、BUS…バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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図14
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図16