(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003230
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】接触構造体
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241226BHJP
A01G 9/12 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A01G7/00 604D
A01G9/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103783
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】日向野 基
【テーマコード(参考)】
2B023
【Fターム(参考)】
2B023AD06
2B023AD11
(57)【要約】
【課題】 対象物に損傷又は刺激を付与する接触部の種類を種々のものに容易に交換可能な接触構造体を提供する。
【解決手段】 芯材2に対してカバー部材3を着脱可能である。カバー部材3の外面3aには、接触部32が一体に設けられている。この接触部32は、対象物に損傷又は刺激を付与するものである。よって、対象物に付与する損傷や刺激の程度によって、種々の形、硬さの接触部32を有するカバー部材3を予め製作しておくことにより、このカバー部材3を芯材2に装着するだけで、付与する損傷又は刺激の程度に見合った接触部32を簡易に芯材2の外側に設けることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な芯材と、
前記芯材とは別体に形成される一方、前記芯材の外面に嵌め合わせて使用され、かつ、外面に、対象物に接触し、前記対象物に損傷又は刺激を付与する接触部を備え、前記芯材に対して着脱可能なカバー部材と
を有する接触構造体。
【請求項2】
前記カバー部材は、
長手方向に沿ってスリットを有し、前記スリットを広げて前記芯材の長手方向に略直交する方向から前記芯材の外面に嵌め合わせられ、復元力により前記芯材の外面に密接する可撓性を有する請求項1記載の接触構造体。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記芯材の外周方向に相対的に位置ずれさせることができる請求項1記載の接触構造体。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記芯材の長さよりも短く形成され、前記芯材に対して複数着脱可能に設けられている請求項1記載の接触構造体。
【請求項5】
植物の茎葉に接触可能な位置に設けられ、前記接触部が前記茎葉を損傷させ、梢の伸長を抑制する梢管理に用いられる請求項1記載の接触構造体。
【請求項6】
植物の茎葉に接触可能な位置に設けられ、前記接触部が記茎葉を損傷させずに接触刺激を付与する柔軟性を有し、前記植物の徒長抑制に用いられる請求項1記載の接触構造体。
【請求項7】
植物の茎葉に接触可能な位置において、栽培されている複数株の前記植物の茎葉に接触するように、移動部材に連結されて移動可能に設けられている請求項5又は6記載の接触構造体。
【請求項8】
前記接触部が前記対象物の接触面を切削可能な硬度を有し、切削加工具として用いられる請求項1記載の接触構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に損傷又は刺激を付与する接触構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、ブドウの新梢管理装置として、ブドウ棚の葉面上を回転動作する接触棒を備えた装置が開示されている。この装置では、接触棒として、長さ1.5mのアルミニウム製の2種のパイプ(角パイプ(幅25×25mm、厚さ2mm)と丸パイプ(直径25mm、厚さ2mm))の回りに、面ファスナーを凸面(フック部)が外側となるように巻き付けて貼り付けたものが用いられている。また、ブドウ短鞘栽培用Y字棚の上面で接触棒が主枝に沿って平行に往復動する装置も開示されている。この装置で用いられている接触棒は、長さ1mのABS樹脂製のパイプ(直径30mm、厚さ2mm)であり、下面に面ファスナーを凸面(フック部)が外側になるようにして貼り付けたもので、2本の駆動ワイヤにより、所定の高さで往復動するように設けられている。
【0003】
非特許文献1では、このような接触棒を用いることにより、新梢の脇芽が延びた副梢の伸長を抑制することができる、と記されている。このような装置を用いない場合、副梢を葉2枚程度残して切り取る作業を副梢が伸びる度に繰り返す必要があった。これは果実の肥大促進や着色、食味の向上などのために有効な作業であるが、時期的に重なる果房管理を優先するため、十分な梢管理(直接的には副梢の伸長を抑制する副梢管理を行う作業であるが、新梢にも影響するため新梢管理とも言え、本明細書では、これらを踏まえて、単に「梢管理」と称する。)を行えなかったことに鑑みてなされたものである。非特許文献1に示された技術により、梢管理の省力化、自動化を図ることができる。
【0004】
特許文献1は、非特許文献1に開示の技術に基づいた特許出願であり、上記の技術に加えて、梨(幸水)について、アルミ角パイプに、鉄鋼用糸鋸刃、砥粒滑り止めシートを取り付けた例を開示している。その結果、新梢先端の欠損、萎縮、新葉の欠損、新梢の折れなどが認められ、新梢長さを抑制できたことが記載されている。
【0005】
特許文献2は、植毛ブラシ杆をエンドレスベルト間に架設し、育苗箱の上方を植毛ブラシ杆が移動するように設けた装置が開示されている。農作物の苗に接触することで刺激を付与し、徒長を抑制するものである。但し、苗の損傷を抑制するため、接触刺激を付与する部材としては、毛等の柔軟の素材が使用されている。また、特許文献3でも、植毛したブラシを用いて苗に接触刺激を付与し、徒長を抑制する接触刺激ブラシが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-97640号公報
【特許文献2】実公昭61-6749号公報
【特許文献3】特開昭58-141728号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ブドウ新梢管理装置の開発」、群馬県農業技術センター研究報告、第20号(2023);1~5、原昌生、柚木秀雄、田村晃一、中野葉子
【非特許文献2】株式会社ミネシマ ホームページ 製品名:「I-205M サンドペーパーホルダー 丸タイプ」 URL: https://mineshima.co.jp/item/i-205m
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1及び特許文献1の接触棒は、長尺なパイプ(断面角型又は丸形)の外面に、面ファスナー若しくは砥粒滑り止めシートを貼り付けるか、又は、鉄鋼用糸鋸刃を接着剤で固定している。
【0009】
しかしながら、面ファスナー、砥粒滑り止めシート及び鉄鋼用糸鋸刃のいずれも、長尺なパイプの外面に接着剤等を用いて直接貼り付けているため、摩耗等により機能が低下した場合、それを剥がす作業を行った後、新規なものに交換しなければならない。このため、剥離作業、新規なものの再貼付作業が必要となり、作業性が悪い。特に、非特許文献1や特許文献1に開示のように、ブドウ等の植物の茎葉に多少接触する程度の高所に設置する場合には、駆動ワイヤ等からパイプを取り外した上で、面ファスナー等の交換作業を行う必要があり、作業がより複雑で面倒である。
【0010】
また、接触対象となる植物の種類により茎葉の硬さも異なるなどの理由から、面ファスナー、砥粒滑り止めシート及び鉄鋼用糸鋸刃のうち、当該植物にとって適切な損傷を与えることができるものが異なる。このような場合、一度貼り付けて使用し始めたところ、例えば、植物への損傷が大きすぎたり、逆にほとんど損傷を与えられないなど、先端が摩耗等する前であっても、異なるものに交換する必要が生じる場合もあるが、非特許文献1や特許文献1に開示のものでは上記のようにその作業が煩雑で面倒である。
【0011】
特許文献2及び3のような、徒長抑制のために、柔軟な毛等の素材を用いる場合も同様である。徒長抑制は、育苗時に行うことも多く、選択を誤ると茎葉がより傷つきやすいことから、上記と同様に、茎葉の硬さに合わせて適切な素材を選択する必要がある。
【0012】
一方、非特許文献2に示されているように、紙やすりを巻き付ける棒状のホルダが知られている。紙やすりを巻き付けるだけで棒状やすりの代替として用いることができるが、紙やすりは、棒状のホルダに巻き付けて外れないようにロックして取り付けなければならず、装着性の点で改善の余地がある。もっとも非特許文献2のものは、持ち手を含めて全長50cm以下であり、しかも、紙やすりはその半分以下の長さの範囲に巻き付けられるに過ぎないため、その意味では作業負担はそれほどではない。しかし、対象物によっては、より長尺なホルダで、より広範囲に紙やすりを巻きつけて切削等の作業を行わなければならない場合もあり、その場合には、紙やすりを装着する作業が非常に面倒となる。
【0013】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、対象物に対して損傷又は刺激を付与する接触部を外面に備えるカバー部材を長尺な芯材に対して着脱可能とすることで、対象物に損傷又は刺激を付与する接触部の種類を種々のものに容易に交換可能な接触構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するため、本発明では、
長尺な芯材と、
前記芯材とは別体に形成される一方、前記芯材の外面に嵌め合わせて使用され、かつ、外面に、対象物に接触し、前記対象物に損傷又は刺激を付与する接触部を備え、前記芯材に対して着脱可能なカバー部材と
を有する接触構造体を提供する。
【0015】
前記カバー部材は、
長手方向に沿ってスリットを有し、前記スリットを広げて前記芯材の長手方向に略直交する方向から前記芯材の外面に嵌め合わせられ、復元力により前記芯材の外面に密接する可撓性を有することが好ましい。
前記カバー部材は、前記芯材の外周方向に相対的に位置ずれさせることができることが好ましい。
前記カバー部材は、前記芯材の長さよりも短く形成され、前記芯材に対して複数着脱可能に設けることもできる。
【0016】
植物の茎葉に接触可能な位置に設けられ、前記接触部が前記茎葉を損傷させ、梢の伸長を抑制する梢管理に用いることが好ましい。
植物の茎葉に接触可能な位置に設けられ、前記接触部が記茎葉を損傷させずに接触刺激を付与する柔軟性を有し、前記植物の徒長抑制に用いることも好ましい。
植物の茎葉に接触可能な位置において、栽培されている複数株の前記植物の茎葉に接触するように、移動部材に連結されて移動可能に設けることができる。
【0017】
また、前記接触部が前記対象物の接触面を切削可能な硬度を有し、切削加工具として用いることも好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接触構造体は、芯材に対してカバー部材を着脱可能である。カバー部材の外面には、接触部が一体に設けられている。この接触部は、対象物に損傷又は刺激を付与するものである。よって、対象物に付与する損傷や刺激の程度によって、種々の形、硬さの接触部を有するカバー部材を予め製作しておくことにより、このカバー部材を芯材に装着するだけで、付与する損傷又は刺激の程度に見合った接触部を簡易に芯材の外側に設けることができる。よって、従来のように、芯材に相当するパイプ材等の周囲に面ファスナー等を貼着したり、鉄鋼用糸鋸刃を接着したりる必要がなく、交換作業がきわめて容易である。また、カバー部材として、長手方向にスリットを有するものを用いることが好ましく、その場合には、カバー部材を取り外す際には、スリットを広げれば容易に外すことができ、装着の際には、スリットを広げて芯材の外周に位置させれば、その復元力により、芯材の外面に密接し、装着される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態に係る接触構造体を用いた鞘管理装置の概略構成を示した平面図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態で用いた接触構造体の斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2に示した接触構造体の分解斜視図であり、
図3(b)は、カバー部材の断面図である。
【
図4】
図4(a)は、カバー部材の他の態様を示す斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)の断面図である。
【
図5】
図5(a)は、カバー部材のさらに他の態様を示す斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の断面図である。
【
図6】
図6(a)は、接触構造体の他の態様を示す斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、さらに詳細に説明する。
図1は、副鞘の伸長を抑制するための鞘伸長抑制装置100の概略構成を示した図であり、この鞘伸長抑制装置100に本実施形態の接触構造体1が用いられている。なお、
図1に示した鞘新葉抑制装置100は、特許文献1に示された新梢伸長抑制装置と同様の構成である。
【0021】
鞘伸長抑制装置100は、特許文献1に示されているように、ブドウ、梨、キウイフルーツ、スモモ、サクランボ、リンゴなどの果実栽培において、上方に配置される。具体的には、これらの果樹の主に副鞘が伸長する付近の高さに設けられる棚線111上に、接触構造体1が配置される。モータによって回転する駆動プーリ112に駆動ワイヤ113を巻き付け、モータの回転を正転方向及び逆転方向に制御して、駆動ワイヤ113を往復動させる。接触構造体1は、この駆動ワイヤ113に連結され、駆動ワイヤ113の動作に伴って、棚線111上を往復動する。接触構造体1は、この往復動している間に、副鞘に接触し、副鞘を傷付け、その伸長を抑制する。特許文献1では、上記のように、パイプの外面に面ファスナーのフック側を外側にして巻き付けたり、鉄鋼用糸鋸刃を接着により固定したりしているが、本実施形態の接触構造体1は、
図2に示したように、芯材2とカバー部材3の組み合わせから構成される。
【0022】
芯材2は、
図2及び
図3(a)に示したように、一度の動作でできるだけ広範囲の副鞘に傷つけることができるように、長尺なものが採用される。長さは限定されるものではないが、取り扱いやすさや重量等との関係から、50~800cmの範囲のものが好ましく、200~600cmの範囲のものがより好ましい。芯材2は、中実、中空いずれであってもよく、また、断面円形、断面角形、断面D形、断面異形等のいずれであってもよい。材質も、アルミニウム、鉄等の金属製に限らず、合成樹脂製であってもよい。太さも限定されるものではなく、鞘伸長抑制装置100用としては、断面方向の最大寸法(例えば、断面円形の場合には直径、断面四角形の場合には対角線の長さ)で10~50mmのものが好ましい。これらの寸法は、鞘伸長抑制装置100に用いる場合に適する寸法であり、接触構造体1の用途によって種々の寸法のものを用いることができる。なお、本実施形態では、
図3(a)に示したように、中空の断面変形のパイプ(いわゆる「丸パイプ」)を用いている。
【0023】
カバー部材3は、
図2及び
図3(a)、(b)に示したように、芯材2とは別体に形成されたもので、芯材2に対して容易に装着できる構成となっている。具体的には、カバー部材3は、芯材2の外面2aに嵌め合わされる形状を有しており、芯材2とほぼ同じ長さで形成される。芯材2よりも短い長さでもよいが、あまり短くなると、植物へ損傷を与えられる範囲が狭くなるため、芯材2の全長に対して1/2以上であることが好ましい。但し、芯材2の全長に対して1/2未満の長さとし、この短尺なカバー部材3を芯材2に複数着脱可能に配置した構造とすることもできる。
【0024】
カバー部材3は、芯材2の外面2aに嵌め合わせるため、内面3bの形状は芯材2の外面形状とほぼ同形状(断面円形、断面角形、断面異形等)に形成され、長手方向に沿ってスリット31を有している。また、スリット31は、押し広げられて内部に芯材2を位置させた後、復元力の作用により、芯材2の外面2aに密接する可撓性を有している。素材は、このような機能を有していれば限定されるものではなく、ステンレス等の金属、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を用いることができる。スリット31の幅(カバー部材3の外周方向に沿ったスリット31の幅(
図3(b)の符号D))は制限されるものではないが、接触構造体1の使用中に、内部に位置する芯材2がカバー部材3から離脱しない程度とする必要がある。
【0025】
カバー部材3の外面3aには、外面3aに対して外方に突出する接触部32が設けられている。この接触部32が対象物に接触することで、対象物に損傷又は刺激を付与する。接触部32としては、角部や鋭端部を含むことが好ましい。角部や鋭端部を有する場合には、対象物に損傷を与えやすくなる。対象物への損傷を抑制し、対象物に接触してい刺激を付与するだけであれば、例えば丸みを帯た先端面を備えた突起から構成することができる。本実施形態のように、鞘管理に用いる場合には、茎葉に接触してそれらに傷を付与できるように、角部を有していたり、比較的鋭利な先端部(鋭端部)を有している構成とすることが好ましく、さらには、植物の茎葉よりも硬いことが好ましい。
【0026】
本実施形態では、
図3(b)に示したように、接触部32として、外面3aを境界とした断面形状が略四角形で、先端面が平坦で、その両脇に角部32aを有する形状としている。この接触部32は、カバー部材3の長手方向に、その全長に亘って連なるように一体成形され、外周方向には、スリット31が形成されている範囲を除き、5箇所形成されている。
【0027】
本実施形態の接触構造体1は、芯材2(外径:19.1mm、内径:17.1mmの鋼管)の外面2aに対して、カバー部材3(外径:25mm、内径:18mm、スリット31の外周方向に沿った幅D:10mm、接触部32の幅:2mm、接触部32の外面3aからの高さ:2.5mm)のスリット31を広げて芯材2の長手方向に略直交する方向から芯材2の外面2aに嵌め合わせて使用される。芯材2に嵌め合わせると、カバー部材3はその可撓性によりスリット31の幅が狭くなる方向に復元力が作用し、芯材2の外面2aに密接する。これにより、カバー部材3は芯材2から容易には離脱しない状態となり、接触構造体1が形成される。接触構造体1は、
図1に示した鞘伸長抑制装置100の棚線111上に、上記のように駆動ワイヤ113に連結されて所定間隔毎に複数配設される。駆動プーリ112がモータにより回転駆動すると、駆動ワイヤ113が棚線111上を往復動し、その間に、カバー部材3に設けた接触部32が植物の茎葉に接触する。接触部32の角部32aが茎葉に接触することにより副鞘に傷がつけられ、副鞘の伸長抑制を図ることができる。
【0028】
使用により、接触部32の角部32aが摩耗した場合、あるいは、カバー部材3が経年劣化した場合には、新たなカバー部材3に取り替える必要がある。この際、本実施形態によれば、スリット31を介して、芯材2の長手方向に略直交する方向にカバー部材3を着脱できるため、カバー部材3の交換が容易である。特に、例えば、カバー部材3よりも芯材2が長く、その両端部がカバー部材3の両端部から突出している構成の場合、棚線111や駆動ワイヤ113を、芯材2のうち、カバー部材3の両端部から突出している範囲に係合するように設ければ、芯材2を棚線111上に位置させかつ駆動ワイヤ113を係合させたままでも、カバー部材3のみをスリット31を介して取り外し、新たなカバー部材3を棚線111上に位置する芯材2にスリット31を介してそのまま取り付けることもできる。
【0029】
また、使用により、例えば、最も下部付近に位置する接触部32の列のみの摩耗が進んでいる場合には、カバー部材3を芯材2に対して外周方向に回転させて位置ずれさせ、それほど摩耗の進んでいない接触部32の列を最も下部に配置させ、引き続き使用することもできる。本実施形態では、カバー部材3を芯材2に対して貼着させずに嵌め合わせているだけであるため、このような対応が可能である。なお、芯材2の断面形状が円形か若しくは円形に近い形状でない場合には、カバー部材3を芯材2に対して相対回転させにくくなるため、このような使用を予定する場合には、芯材2の断面形状は円形かそれに近い形状とすることが好ましい。一方、芯材2の断面形状が角形等でカバー部材3を回転させにくい場合には、カバー部材3を一旦取り外し、摩耗の進んでいない接触部32の列が最も下部となる角度にして再装着することもできる。この場合でも、本実施形態では、カバー部材3の長手方向にスリット31が形成されているため、着脱作業が容易である。
【0030】
図4~
図5は、接触構造体1に用いるカバー部材の他の形態を示した図である。
図4に示したカバー部材3Aは、接触部320が、長手方向の全長に亘って一体成形されたベース部321と金属製の帯状部材322を有している。ベース部321自体の幅方向の略中央部に長手方向に沿って配置用スリット321aが形成されており、この配置用スリット321aに、金属製の帯状部材322が差し込まれて配置されている。金属製の帯状部材322は、ベース部321のスリット321aから先端が突出している。これにより、鞘伸長抑制装置100に用いた場合には、金属製の帯状部材322が茎葉に接触し、茎葉を傷つけ、副鞘の伸長が抑制される。金属製の帯状部材322としては、先端面が平坦なもの、先端が尖った刃状のもの、糸鋸刃のようなもの等であってもよい。
【0031】
図5に示したカバー部材3Bは、接触部3200が、長手方向の全長に亘って一体成形されたベース部3210とローレット加工された金属製丸棒3220とを有している。ベース部3210は、相互に所定間隔をおいた一対の縦壁部3211,3211を備えて構成され、一対の縦壁部3211,3211間に、ローレット加工された金属製丸棒が挿入配置される。ローレット加工された面は、角部や鋭端部が複数箇所に形成されているため、それらが対象物である茎葉に接触することにより、上記と同様に副鞘の伸長抑制を行うことができる。
【0032】
なお、茎葉を傷つける機能を有する接触構造体1は、上記に限定されるものではない。例えば、
図6(a),(b)に示したように、紙やすり、布やすり、面ファスナー等の接触部32として機能する砥粒面やフック面を有する部材(接触部形成部材)32Aを、砥粒面やフック面が外側になるように、カバー部材3Cの外面3aに接着等により予め巻き付けた構成とすることができる。なお、
図6(a),(b)は、接触部形成部材32Aとして、クラレファスニング社製、「マジックテープ(登録商標)A8693Y.71」を貼着しており、カバー部材3Cはこの接触部形成部材32Aを貼着した状態で、外径:23.8mm、内径:18mm、スリット31の外周方向に沿った幅D:10mmの寸法であった。また、接触部形成部材32Aとしては、砥粒やケイ酸粒子等が配合された塗料や樹脂を直接カバー部材3Cの外面3aに塗布して形成することもできる。
また、上記したものに限らず、カバー部材3としては、外面3aを直接ローレット加工したり、バーリング加工して凹凸を形成し、それらを接触部32とすることもできる。いずれにしても、芯材2とは別体のカバー部材3に接触部32が形成されるため、カバー部材3を芯材2に対して着脱すれば容易に交換できる。
【0033】
また、上記実施形態では、カバー部材3として長手方向全長に亘ってスリット31が形成されたものを用い、このスリット31を介して芯材2に着脱し、スリット31の復元力を利用して芯材2に密接させており、着脱がきわめて簡易である。但し、このようなスリット31の復元力が作用しない構成、例えば、スリット31の幅Dが大きく、嵌め合わせただけでは芯材2から容易に離脱してしまうものであってもよく、この場合には、芯材2及びカバー部材3の対向部に、相互に嵌合し合う留め具や溝部(図示せず)を設けて固定する構成とすることができる。また、スリット31を有しない筒状のカバー部材3とすることもでき、この場合には、芯材2に対して長手方向端部からカバー部材3を装着する。但し、芯材2及びカバー部材3がいずれも長尺であるため、長手方向端部からの挿入操作が行いにくい場合もあり、上記実施形態のようにスリット31を有する構成とすることが好ましい。
【0034】
さらに、上記においては、接触構造体1を鞘伸長抑制装置100に適用した例を用いて説明しているが、本発明の接触構造体1はこれに限定されるものではなく、例えば、植物の徒長抑制の用途や切削加工具の用途に用いることもできる。
【0035】
植物の苗の徒長抑制に用いる場合には、カバー部材3として、例えば先端面が断面円弧状となり、角部や鋭端部を有していない丸みのある突起からなる接触部32を有するものを用いることができる。また、特許文献2及び3に示されているように、柔軟な毛、ゴムあるいは合成樹脂等からなる細い線状物を接触部32としてカバー部材3の外面3aに設けた構成とすることもできる。毛の場合には、カバー部材3の外面3aに接着等により固着して予め設けておくことができる。ゴムや合成樹脂等から構成する場合には、カバー部材3と一体成形することもできる。
【0036】
この場合も、芯材2に対してカバー部材3を、長手方向に略直交する方向に容易に着脱可能であり、接触部3の摩耗、劣化等により交換作業が容易である。苗の徒長抑制に用いる場合も、上記と同様に、苗の上方に棚線と駆動ワイヤを設け、それらに接触構造体1を移動可能に支持させれば、容易に接触刺激を付与することができる。
【0037】
切削加工具の用途に用いる場合は、カバー部材3として、角部、鋭端部及び突起等の少なくとも一つを含み、対象物の接触面を切削可能な硬度を有する接触部32を有する構成とする。例えば、上記実施形態でも説明したように、カバー部材3の外面3aをローレット加工し、それにより形成された角部や鋭端部を接触部32とすることができる。カバー部材3の外面3aに紙やすりや布製やすりを巻き付けて固着し、それらの砥粒を接触部32とすることもできる。非特許文献2に示した紙やすりを巻き付けるタイプのものは、巻き付け作業が必要であったが、本実施形態によれば、カバー部材3に予め紙やすりが固着されているため、芯材2に対してカバー部材3を装着すれば、紙やすりの砥粒からなる接触部32が、カバー部材3の外面3aに位置することになり、切削加工具としての棒状やすりを容易に準備できる。カバー部材3の外面3aに糸鋸刃等を接着等により固定し、これを接触部32とすることもできる。
【0038】
切削加工具としての接触構造体1は、非特許文献2に示されているように、従来は持ち手も含む全長で50cm程度で、切削加工部分は、それを下回る長さの範囲であったが、本実施形態によれば、切削加工部となる接触部32が、カバー部材3に予め一体に設けられているため、接触構造体1として用いる際には、カバー部材3を芯材2に嵌め合わせるだけでよい。よって、切削加工部分(接触部32が設けられている範囲)の長さを、従来よりも長くしても、切削加工部分を取り付けにくくなるということもない。そのため、切削加工部分の範囲の長さを50cm以上有する長尺な接触構造体1とすることができ、切削範囲が広い場合でも、従来の短尺なものと比較して効率よく切削加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 接触構造体
2 芯材
2a (芯材の)外面
3 カバー部材
3a (カバー部材の)外面
3b (カバー部材の)内面
31 スリット
32,320,3200 接触部
100 鞘管理装置