(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032351
(43)【公開日】2025-03-11
(54)【発明の名称】NKG2D受容体を標的とする抗体可変ドメイン
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20250304BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250304BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250304BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250304BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250304BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250304BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250304BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250304BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250304BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250304BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20250304BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20250304BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K39/395 H
C07K16/28
C12N5/09
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024220384
(22)【出願日】2024-12-16
(62)【分割の表示】P 2020542863の分割
【原出願日】2019-02-08
(31)【優先権主張番号】62/628,161
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/716,259
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519288755
【氏名又は名称】ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ピー. チャン
(72)【発明者】
【氏名】アン エフ. チュン
(72)【発明者】
【氏名】アシャ グリンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ヘイニー
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー エム. ランディ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンカ プリンツ
(57)【要約】
【課題】NKG2D受容体を標的とする抗体可変ドメインの提供。
【解決手段】抗体軽鎖可変ドメインと対合して、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体を標的とする抗原結合部位を形成することができる抗体重鎖可変ドメインが、記載されている。NKG2D抗原結合部位を含むタンパク質、その薬学的組成物、及びがんの治療を含むその治療方法も、記載されている。NKG2Dに対する抗体は、治療剤の設計において重要な利点を提供することが確認されている。例えば、これらの抗体のいくつかは、ヒトNKG2D受容体に結合するだけでないが、受容体を刺激する能力、受容体への結合に関して天然のリガンドと競合する能力、及び/またはカニクイザルなどの他の種からのNKG2Dと交差反応する能力などのうちの1つ以上のさらなる利点を有する。これらの利点は、NKG2Dの親和性の範囲全体で達成され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月8日に出願された米国仮特許出願第62/628,161号(その開示はすべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)及び2018年8月8日に出願された米国仮特許出願第62/716,259号の利益及び優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、対合して、ナチュラルキラー細胞上のナチュラルキラー群2D(NKG2D)受容体を標的とする抗原結合部位を形成することができる抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインを有するタンパク質、そのようなタンパク質を含む薬学的組成物、ならびにがんの治療用を含むそのようなタンパク質及び薬学的組成物を使用する治療方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
がんは、この疾患を治療するために文献で報告された実質的な研究努力及び科学的進歩にもかかわらず、深刻な健康問題であり続けている。最も頻繁に診断されるがんには、前立腺癌、乳癌、及び肺癌が含まれる。前立腺癌は、男性において最も一般的ながんの形態である。乳癌は、依然として女性における主要な死因である。これらのがんの現行の治療選択肢は、すべての患者に有効というわけではなく、及び/または実質的な副作用がある。他の種類のがんも、既存の治療選択肢を使用して治療することは依然として困難である。
【0004】
がん免疫療法は、非常に特異的であり、患者自身の免疫系を使用してがん細胞の破壊を促進することができるため、望ましい。二重特異性T細胞誘導体などの融合タンパク質は、腫瘍細胞及びT細胞に結合して、腫瘍細胞の破壊を促進する、文献に記載されているがん免疫療法である。特定の腫瘍関連抗原及び特定の免疫細胞に結合する抗体は、文献に記載されている。例えば、WO2016/134371及びWO2015/095412を参照のこと。
【0005】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫系の構成要素であり、循環リンパ球の約15%を占める。NK細胞は、事実上すべての組織に浸潤し、腫瘍細胞をT細胞と区別するプライミングを必要することなく、腫瘍細胞を効果的に死滅させる能力によって元来特徴付けられていた。活性化されたNK細胞は、細胞傷害性T細胞と同様の方法で、すなわち、パーフォリン及びグランザイムを含む細胞傷害性顆粒を介して、ならびに死受容体経路を介して標的細胞を死滅させる。活性化されたNK細胞はまた、IFN-ガンマなどの炎症性サイトカイン、及び標的組織への他の白血球の動員を促進するケモカインも分泌する。
NK細胞は、それらの表面上にある様々な活性化及び抑制性受容体を通してシグナルに応答する。例えば、NK細胞が健康な自己細胞に遭遇するとき、それらの活性は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の活性化によって阻害される。あるいは、NK細胞ががん細胞に遭遇するとき、それらはそれらの活性化受容体(例えば、NKG2D、NCR、DNAM1)を介して活性化される。NK細胞はまた、それらの表面上のCD16受容体を通して一部の免疫グロブリンの定常領域によっても活性化される。活性化に対するNK細胞の全体的な感度は、刺激シグナル及び抑制シグナルの合計に依存する。NKG2Dは、NKG2Dが活性化受容体として機能する本質的にすべてのナチュラルキラー細胞によって発現されるII型膜貫通タンパク質である。NKG2Dを介してNK細胞機能を調節する機能は、悪性腫瘍を含む様々な治療状況で有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/134371号
【特許文献2】国際公開第2015/095412号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
NKG2Dに対する抗体は、治療剤の設計において重要な利点を提供することが確認されている。例えば、これらの抗体のいくつかは、ヒトNKG2D受容体に結合するだけでないが、受容体を刺激する能力、受容体への結合に関して天然のリガンドと競合する能力、及び/またはカニクイザルなどの他の種からのNKG2Dと交差反応する能力などのうちの1つ以上のさらなる利点を有する。これらの利点は、NKG2Dの親和性の範囲全体で達成され得る。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMHWVRQAPGQGLEWMGIINPSGGSTSYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGAPNYGDTTHDYYYMDVWGKGTTVTVSS(配列番号1、ADI-29379)と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインに関する。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号1と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号1の、第1の相補性決定領域1(「CDR1」)としてアミノ酸配列YTFTSYYMH(配列番号11)と、第2のCDR(「CDR2」)としてIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号12)と、第3のCDR(「CDR3」)としてARGAPNYGDTTHDYYYMDV(配列番号13)と、を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号1の、CDR1としてアミノ酸配列SYYMH(配列番号45)と、CDR2としてIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号12)と、CDR3としてGAPNYGDTTHDYYYMDV(配列番号68)と、を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARDTGEYYDTDDHGMDVWGQGTTVTVSS(配列番号3、ADI-29463)と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインに関する。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号3と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号3の、第1の相補性決定領域(「CDR1」)としてアミノ酸配列YTFTGYYMH(配列番号17)と、第2のCDR(「CDR2」)としてWINPNSGGTNYAQKFQG(配列番号18)と、第3のCDR(「CDR3」)としてARDTGEYYDTDDHGMDV(配列番号19)と、を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号3の、CDR1としてアミノ酸配列GYYMH(配列番号92)と、CDR2としてWINPNSGGTNYAQKFQG(配列番号18)と、CDR3としてDTGEYYDTDDHGMDV(配列番号69)と、を含む。
【0010】
本発明の別の態様は、アミノ酸配列EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDGGYYDSGAGDYWGQGTLVTVSS(配列番号5、ADI-27744)と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインに関する。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号5と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号5の、第1の相補性決定領域(「CDR1」)としてアミノ酸配列FTFSSYAMS(配列番号23)と、第2のCDR(「CDR2」)としてAISGSGGSTYYADSVKG(配列番号24)と、第3のCDR(「CDR3」)としてAKDGGYYDSGAGDY(配列番号25)と、を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号5の、CDR1としてアミノ酸配列SYAMS(配列番号47)と、CDR2としてAISGSGGSTYYADSVKG(配列番号24)と、CDR3としてDGGYYDSGAGDY(配列番号70)と、を含む。
【0011】
本発明の別の態様は、アミノ酸配列EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSSYSMNWVRQAPGKGLEWVSSISSSSSYIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGAPMGAAAGWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号7、ADI-27749)と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインに関する。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号7と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号7の、第1の相補性決定領域(「CDR1」)としてアミノ酸配列FTFSSYSMN(配列番号29)と、第2のCDR(「CDR2」)としてSISSSSSYIYYADSVKG(配列番号30)と、第3のCDR(「CDR3」)としてARGAPMGAAAGWFDP(配列番号31)と、を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号7の、CDR1としてアミノ酸配列SYSMN(配列番号48)と、CDR2としてSISSSSSYIYYADSVKG(配列番号30)と、CDR3としてGAPMGAAAGWFDP(配列番号71)と、を含む。
【0012】
本発明の別の態様は、アミノ酸配列EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSSYSMNWVRQAPGKGLEWVSSISSSSSYIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGAPIGAAAGWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号85、A49MI)と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインに関する。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号85と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号85の、CDR1としてアミノ酸配列FTFSSYSMN(配列番号29)と、CDR2としてSISSSSSYIYYADSVKG(配列番号30)と、CDR3としてARGAPIGAAAGWFDP(配列番号77)と、を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号85の、CDR1としてアミノ酸配列SYSMN(配列番号48)と、CDR2としてSISSSSSYIYYADSVKG(配列番号30)と、CDR3としてGAPIGAAAGWFDP(配列番号78)と、を含む。
【0013】
本発明の別の態様は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMHWVRQAPGQGLEWMGIINPSGGSTSYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGAGFAYGMDYYYMDVWGKGTTVTVSS(配列番号9、ADI-29378)と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインに関する。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号9と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号9の、第1の相補性決定領域(「CDR1」)としてアミノ酸配列YTFTSYYMH(配列番号35)と、第2のCDR(「CDR2」)としてIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号36)と、第3のCDR(「CDR3」)としてAREGAGFAYGMDYYYMDV(配列番号37)と、を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号9の、CDR1としてアミノ酸配列SYYMH(配列番号45)、CDR2としてIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号36)と、CDR3としてEGAGFAYGMDYYYMDV(配列番号72)と、を含む。
【0014】
本発明の抗体重鎖可変ドメインは、任意に、抗体定常領域、例えば、CH1ドメインを含むかまたは含まない、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含むIgG定常領域などの抗体定常領域と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列にカップリングされ得る。いくつかの実施形態において、定常領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域、またはIgG4定常領域などのヒト抗体定常領域と少なくとも90%同一である。いくつかの他の実施形態において、定常領域のアミノ酸配列は、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、またはウマなどの別の哺乳動物からの抗体定常領域と少なくとも90%同一である。1つ以上の変異体は、ヒトIgG1定常領域と比較して、例えば、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、及び/またはK439における定常領域に含まれ得る。例示的な置換基には、例えば、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、T350V、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、T394W、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、及びK439Eが含まれる。
【0015】
ある特定の実施形態において、ヒトIgG1定常領域のCH1に含まれ得る変異体は、アミノ酸V125、F126、P127、T135、T139、A140、F170、P171、及び/またはV173であり得る。ある特定の実施形態において、ヒトIgG1定常領域のCκに含まれ得る変異体は、アミノ酸E123、F116、S176、V163、S174、及び/またはT164であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される重鎖可変ドメインのうちの1つは、軽鎖可変ドメインと組み合わされて、NKG2Dに結合することができる抗原結合部位を形成する。例えば、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSSNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFAVYYCQQYDDWPFTFGGGTKVEIK(配列番号2、ADI-29379)と少なくとも90%同一である抗体軽鎖可変ドメインと対合することができる。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変ドメインは、配列番号2と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、第1の相補性決定領域(「CDR」)としてアミノ酸配列RASQSVSSNLA(配列番号14)と、第2のCDRとしてGASTRAT(配列番号15)と、第3のCDRとしてQQYDDWPFT(配列番号16)と、を含む。
【0017】
例えば、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFAVYYCQQDDYWPPTFGGGTKVEIK(配列番号4、ADI-29463)と少なくとも90%同一である抗体軽鎖可変ドメインと対合することができる。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変ドメインは、配列番号4と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、第1の相補性決定領域(「CDR」)としてアミノ酸配列RASQSVSSNLA(配列番号20)と、第2のCDRとしてGASTRAT(配列番号21)と、第3のCDRとしてQQDDYWPPT(配列番号22)と、を含む。
【0018】
例えば、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGIDSWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGVSYPRTFGGGTKVEIK(配列番号6、ADI-27744)と少なくとも90%同一である抗体軽鎖可変ドメインと対合することができる。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変ドメインは、配列番号6と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、第1の相補性決定領域(「CDR」)としてアミノ酸配列RASQGIDSWLA(配列番号26)と、第2のCDRとしてAASSLQS(配列番号27)と、第3のCDRとしてQQGVSYPRT(配列番号28)と、を含む。
【0019】
例えば、配列番号7または配列番号85のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGVSFPRTFGGGTKVEIK(配列番号8、ADI-27749)と少なくとも90%同一である抗体軽鎖可変ドメインと対合することができる。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変ドメインは、配列番号8と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、第1の相補性決定領域(「CDR」)としてアミノ酸配列RASQGISSWLA(配列番号32)と、第2のCDRとしてAASSLQS(配列番号33)と、第3のCDRとしてQQGVSFPRT(配列番号34)と、を含む。
【0020】
例えば、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である抗体重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSDNWPFTFGGGTKVEIK(配列番号10、ADI-29378)と少なくとも90%同一である抗体軽鎖可変ドメインと対合することができる。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変ドメインは、配列番号10と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変ドメインは、第1の相補性決定領域(「CDR」)としてアミノ酸配列RASQSVSSYLA(配列番号38)と、第2のCDRとしてDASNRAT(配列番号39)と、第3のCDRとしてQQSDNWPFT(配列番号40)と、を含む。
【0021】
重鎖可変ドメインを軽鎖可変ドメインと組み合わせて、NKG2Dに結合することができる抗原結合部位を形成するとき、抗原結合部位を様々な構造、例えば、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を有する典型的な抗体構造に含めて、NKG2Dに結合することができる一対の抗原結合部位、二重特異性、三重特異性、四重特異性、もしくは他の多特異性抗体、またはscFv(重鎖可変ドメインが軽鎖可変ドメインに連結されている)などのより小さな構造を形成することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明で開示されている任意のNKG2D抗原結合部位は、腫瘍関連抗原に結合する別個の抗原結合部位も含むタンパク質に含まれ、タンパク質がNK細胞及び腫瘍細胞と同時に相互作用することを可能にし得る。腫瘍関連抗原は、例えば、CD33、HER2、EpCAM、CD2、CD3、CD8、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD37、CD38、CD40、CD45RO、CD48、CD52、CD55、CD59、CD70、CD74、CD80、CD86、CD138、CD147、HLA-DR、CSAp、CA-125、TAG-72、EFGR/ERBB1、IGF1R、HER2、HER3、HER4、IGF-1R、c-Met、PDGFR、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、TNFR1、TNFR2、NGFR、TRAILR1、TRAILR2、Fas(CD95)、DR3、DR4、DR5、DR6、VEGF、PIGF、テネイシン、ED-Bフィブロネクチン、PSA、及びIL-6、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、またはPD1であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明で開示されている任意のNKG2D抗原結合部位は、腫瘍関連抗原部位及びCD16結合部位も含むタンパク質に含まれる。CD16結合部位は、さらなる抗原結合部位または抗体定常領域またはその一部、例えばIgG1定常領域(例えば、エフェクター活性またはCD16結合親和性に影響を与える1つ以上の変異を任意に含み得る)であり得る。
【0024】
本発明の別の態様は、患者における腫瘍細胞死を増強し、がんを治療する方法を提供する。この方法は、治療を必要とする患者に、治療有効量の本明細書に記載されるタンパク質を投与して、がんを治療することを含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン。
(項目2)
前記アミノ酸配列が、
配列番号48のアミノ酸配列によって表される相補性決定領域1(CDR1)配列と、
配列番号30のアミノ酸配列によって表される相補性決定領域2(CDR2)配列と、
配列番号44のアミノ酸配列によって表される相補性決定領域3(CDR3)配列と、を含む、項目1に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目3)
前記アミノ酸配列が、
配列番号29のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号31のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目1に記載
の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目4)
前記アミノ酸配列が、
配列番号48のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号71のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目1に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目5)
前記アミノ酸配列が、
配列番号29のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号77のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目1に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目6)
前記アミノ酸配列が、
配列番号48のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号78のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目1に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目7)
配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン。
(項目8)
前記アミノ酸配列が、
配列番号11のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号12のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号13のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目7に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目9)
前記アミノ酸配列が、
配列番号45のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号12のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号68のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目7に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目10)
配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン。
(項目11)
前記アミノ酸配列が、
配列番号17のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号18のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号19のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目10に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目12)
前記アミノ酸配列が、
配列番号46のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号18のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号69のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目10に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目13)
配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン。
(項目14)
前記アミノ酸配列が、
配列番号23のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号24のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号25のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目13に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目15)
前記アミノ酸配列が、
配列番号47のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号24のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号70のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目13に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目16)
配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン。
(項目17)
前記アミノ酸配列が、
配列番号35のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号36のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号37のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目16に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目18)
前記アミノ酸配列が、
配列番号45のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、
配列番号36のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、
配列番号72のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む、項目16に記載の抗体重鎖可変ドメイン。
(項目19)
項目1~18のいずれか一項に記載の抗体重鎖可変ドメインと、抗体定常領域と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と、を含む、抗体重鎖。
(項目20)
前記抗体定常領域が、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含むヒトIgG定常領域である、項目19に記載の抗体重鎖。
(項目21)
前記抗体定常領域が、CH1ドメインをさらに含むヒトIgG定常領域である、項目20に記載の抗体重鎖。
(項目22)
前記抗体定常領域が、IgG1定常領域と90%同一である、項目19~21のいずれか一項に記載の抗体重鎖。
(項目23)
前記抗体定常領域と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列が、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、もしくはK439、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目22に記載の抗体重鎖。
(項目24)
前記抗体定常領域と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列が、Q347E、Q34
7R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、及びK439E、またはこれらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目23に記載の抗体重鎖。
(項目25)
項目1~6のいずれか一項に記載の抗体重鎖可変ドメインと、配列番号8と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む、抗原結合部位。
(項目26)
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号32のアミノ酸配列と同一であるCDR1配列と、配列番号33のアミノ酸配列と同一であるCDR2配列と、配列番号34のアミノ酸配列と同一であるCDR3配列と、を含む、項目25に記載の抗原結合部位。
(項目27)
表面プラズモン共鳴で測定されるように、2~120nMのKDを有する、項目25または26に記載の抗原結合部位。
(項目28)
項目7~9のいずれか一項に記載の抗体重鎖可変ドメインと、配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む、抗原結合部位。
(項目29)
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号14のアミノ酸配列と同一であるCDR1配列と、配列番号15のアミノ酸配列と同一であるCDR2配列と、配列番号16のアミノ酸配列と同一であるCDR3配列と、を含む、項目28に記載の抗原結合部位。
(項目30)
表面プラズモン共鳴で測定されるように、5~500nMのKDを有する、項目28または29に記載の抗原結合部位。
(項目31)
項目10~12のいずれか一項に記載の抗体重鎖可変ドメインと、配列番号4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む、抗原結合部位。
(項目32)
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号20のアミノ酸配列と同一であるCDR1配列と、配列番号21のアミノ酸配列と同一であるCDR2配列と、配列番号22のアミノ酸配列と同一であるCDR3配列と、を含む、項目31に記載の抗原結合部位。
(項目33)
表面プラズモン共鳴で測定されるように、6~600nMのKDを有する、項目31または32に記載の抗原結合部位。
(項目34)
項目13~15のいずれか一項に記載の抗体重鎖可変ドメインと、配列番号6と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む、抗原結合部位。
(項目35)
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号26のアミノ酸配列と同一であるCDR1配列と、配列番号27のアミノ酸配列と同一であるCDR2配列と、配列番号28のアミノ酸配列と同一であるCDR3配列と、を含む、項目34に記載の抗原結合部位。
(項目36)
表面プラズモン共鳴で測定されるように、1~100nMのKDを有する、項目34または35に記載の抗原結合部位。
(項目37)
項目16~18のいずれか一項に記載の抗体重鎖可変ドメインと、配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む、抗原結合部位。
(項目38)
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号38のアミノ酸配列と同一であるCDR1配列と、配列番号39のアミノ酸配列と同一であるCDR2配列と、配列番号40のアミノ酸配列と同一であるCDR3配列と、を含む、項目37に記載の抗原結合部位。
(項目39)
表面プラズモン共鳴で測定されるように、6~600nMのKDを有する、項目37または38に記載の抗原結合部位。
(項目40)
NKG2Dに結合する、項目25~39のいずれか一項に記載の抗原結合部位と、さらなる抗原結合部位と、を含む、タンパク質。
(項目41)
前記さらなる抗原結合部位が、腫瘍関連抗原に結合する、項目40に記載のタンパク質。
(項目42)
前記腫瘍関連抗原が、CD33、HER2、EpCAM、CD2、CD19、CD20、CD30、CD38、CD40、CD52、CD70、EGFR/ERBB1、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、及びPD1からなる群から選択される、項目41に記載のタンパク質。
(項目43)
前記NKG2Dに結合する抗原結合部位が、第1の抗体重鎖可変ドメインを含み、前記さらなる抗原結合部位が、第2の抗体重鎖可変ドメインを含み、
前記第1の抗体重鎖可変ドメインが、第1の抗体定常領域をさらに含む第1のポリペプチドに存在し、前記第2の抗体重鎖可変ドメインが、第2の抗体定常領域をさらに含む第2のポリペプチドに存在する、項目40~42のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目44)
前記第1の抗体定常領域及び前記第2の抗体定常領域が、CD16に結合することができる複合体を形成する、項目43に記載のタンパク質。
(項目45)
前記第1の抗体定常領域及び前記第2の抗体定常領域が、それぞれ、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含む、項目43または44に記載のタンパク質。
(項目46)
前記第1の抗体定常領域及び前記第2の抗体定常領域が、それぞれ、CH1ドメインをさらに含む、項目43~45のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目47)
前記第1の抗体定常領域及び前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、それぞれ、ヒトIgG1定常領域と少なくとも90%同一である、項目43~46のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目48)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409
、T411、もしくはK439、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、
前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、D401、F405、Y407、K409、T411、もしくはK439、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目49)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、位置T366のIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366、L368、もしくはY407、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目50)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366、L368、もしくはY407、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366位のIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目51)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、E357、K360、Q362、S364、L368、K370、T394、D401、F405、もしくはT411、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Y349、E357、S364、L368、K370、T394、D401、F405、もしくはT411、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目52)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Y349、E357、S364、L368、K370、T394、D401、F405、もしくはT411、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、E357、K360、Q362、S364、L368、K370、T394、D401、F405、もしくはT411、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目53)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、L351、D399、S400、もしくはY407、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366、N390、K392、K409、もしくはT411、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目54)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366、N390、K392、K409、もしくはT411、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、L351、D399、S400、もしくはY407、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目55)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Q347、Y349、K360、もしくはK409、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Q347、E357、D399、もしくはF405、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目56)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Q347、E357、D399、もしくはF405、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Y349、K360、Q347、もしくはK409、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目57)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、K370、K392、K409、もしくはK439、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、D356、E357、もしくはD399、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目58)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、D356、E357、もしくはD399、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、K370、K392、K409、もしくはK439、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目59)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、L351、E356、T366、もしくはD399、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Y349、L351、L368、K392、もしくはK409、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目60)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Y349、L351、L368、K392、もしくはK409、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、L351、E356、T366、もしくはD399、またはこれらの任意の組み合わせにおけるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目61)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、S354C置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Y349C置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目62)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、Y349C置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、S354C置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目63)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、K360E及びK409W置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、O347R、D399V、及びF405T置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目64)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、O347R、D399V、及びF405T置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、K360E及びK409W置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目65)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366W置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366S、T
368A、及びY407V置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目66)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366S、T368A、及びY407V置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T366W置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目67)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T350V、L351Y、F405A、及びY407V置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T350V、T366L、K392L、及びT394W置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目68)
前記第1の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T350V、T366L、K392L、及びT394W置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、前記第2の抗体定常領域のアミノ酸配列が、T350V、L351Y、F405A、及びY407V置換基によるIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる、項目47に記載のタンパク質。
(項目69)
前記タンパク質が、CD16に結合することができる抗原結合部位をさらに含む、項目40~42のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目70)
配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、を含む抗体を有するヒト及び/またはカニクイザルNKG2Dへの結合を競合する抗原結合部位を含む、タンパク質。
(項目71)
配列番号85のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、を含む抗体を有するヒト及び/またはカニクイザルNKG2Dへの結合を競合する抗原結合部位を含む、タンパク質。
(項目72)
配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、を含む抗体を有するヒト及び/またはカニクイザルNKG2Dへの結合を競合する抗原結合部位を含む、タンパク質。
(項目73)
配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、を含む抗体を有するヒト及び/またはカニクイザルNKG2Dへの結合を競合する抗原結合部位を含む、タンパク質。
(項目74)
配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、を含む抗体を有するヒト及び/またはカニクイザルNKG2Dへの結合を競合する抗原結合部位を含む、タンパク質。
(項目75)
配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、を含む抗体を有するヒト及び/またはカニクイザルNKG2Dへの結合を競合する抗原結合部位を含む、タンパク質。
(項目76)
項目40~75のいずれか一項に記載のタンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む、製剤。
(項目77)
項目40~75のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする1つ以上の核酸を含む、細胞。
(項目78)
腫瘍細胞死を増強する方法であって、腫瘍及びナチュラルキラー細胞を項目40~75のいずれか一項に記載のタンパク質に曝露することを含む、方法。
(項目79)
がんを治療する方法であって、項目40~75のいずれか一項に記載のタンパク質または項目76に記載の製剤を、患者に投与することを含む、方法。
(項目80)
前記がんが、急性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、B細胞リンパ腫、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫食道癌、ユーイング肉腫、濾胞性リンパ腫、胃癌、消化管癌、消化管間質腫瘍、膠芽細胞腫、頭頸部癌、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、腎細胞癌、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、及び膵臓癌、前立腺癌、肉腫、小細胞肺癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、骨髄由来サプレッサー細胞が浸潤したがん、細胞外マトリックス沈着を伴うがん、高レベルの反応性間質を伴うがん、及び血管新生を伴うがんからなる群から選択される、項目79に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】NKG2D結合ドメイン(右アーム)、腫瘍関連抗原結合ドメイン(左アーム)、及びCD16に結合するFcドメインまたはその一部を含む多重特異性結合タンパク質の略図である。
【
図2】NKG2D結合ドメインまたは腫瘍関連抗原結合ドメインを含む多重特異性結合タンパク質の表示であり、これらのいずれか1つは、scFv形式、及びCD16に結合するFcドメインまたはその一部であり得る。
【
図3】
図3A~
図3Fは、表面プラズモン共鳴によって測定されたNKG2D結合ドメインのNKG2D結合親和性のプロファイルである。
図3Aは、表面プラズモン共鳴によって測定されたNKG2D結合ドメインADI-27744のNKG2D結合親和性であり、
図3Bは、表面プラズモン共鳴によって測定されたNKG2D結合ドメインADI-29379のNKG2D結合親和性であり、
図3Cは、表面プラズモン共鳴によって測定されたNKG2D結合ドメインADI-27749のNKG2D結合親和性であり、
図3Dは、表面プラズモン共鳴によって測定されたNKG2D結合ドメインADI-29463のNKG2D結合親和性であり、
図3Eは、表面プラズモン共鳴によって測定されたNKG2D結合ドメインADI-29378のNKG2D結合親和性である。
【
図4】
図4A~
図4Hは、表面プラズモン共鳴によって測定されたNKG2D結合ドメインADI-27744(A44)及びULBP6または他のNKG2D抗体による競合的NKG2D結合のプロファイルである。
図4Aは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてULBP6が注入されたADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体のプロファイルを示す。
図4Bは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入されたULBP6のプロファイルを示す。
図4Cは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてULBP6が注入されたMSモノクローナル抗体のプロファイルを示す。
図4Dは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入されたMSのプロファイルを示す。
図4Eは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入された1D11のプロファイルを示す。
図4Fは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入されたMAB139のプロファイルを示す。
図4Gは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いて、ADI-27749(A49)を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入されたADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体のプロファイルを示す。
図4Hは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてF47を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入されたADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体のプロファイルを示す。
【
図5】EL4細胞で発現されたNKG2DへのCD33を標的としたTriNKETの結合プロファイルを示す線グラフである。
【
図6】EL4細胞で発現されたNKG2DへのHER2を標的としたTriNKETの結合プロファイルを示す線グラフである。
【
図7】Mv4-11細胞で発現されたCD33へのCD33を標的としたTriNKETの結合プロファイルを示す棒グラフである。
【
図8】786-O細胞で発現されたHER2へのHER2を標的としたTriNKETの結合プロファイルを示す棒グラフである。
【
図9】NCI-H661細胞で発現されたHER2へのHER2を標的としたTriNKETの結合プロファイルを示す棒グラフである。
【
図10】HER2を標的とするTriNKETが、HER2を発現するNCI-H661細胞と共培養されたヒトNK細胞の活性化を媒介することを示す棒グラフである。
【
図11】HER2を標的とするTriNKETが、HER2を発現するSkBr-3細胞と共培養されたヒトNK細胞の活性化を媒介することを示す棒グラフである。
【
図12】CD33を標的とするTriNKETが、CD33を発現するヒトAML Mv4-11細胞と共培養されたヒトNK細胞の活性化を媒介することを示す棒グラフである。
【
図13】CD33を標的とするTriNKETが、CD33を発現するMolm-13がん細胞に対する休止したNK細胞の細胞毒性を可能にすることを示す線グラフである。
【
図14】CD33を標的とするTriNKETが、CD33を発現するMolm-13がん細胞に対する活性化されたNK細胞の細胞毒性を可能にすることを示す線グラフである。
【
図15】HER2を標的とするTriNKETが、HER2を発現する786-Oがん細胞に対する休止したNK細胞の細胞毒性を可能にすることを示す棒グラフである。
【
図16】HER2を標的とするTriNKETが、HER2を発現する786-Oがん細胞に対する活性化されたNK細胞の細胞毒性を可能にすることを示す棒グラフである。
【
図17】IgG様の形状を維持する三官能性二重特異性抗体である、トリオマブ形態のTriNKETの略図である。このキメラは、2つの親抗体に由来する、それぞれ、1つの軽鎖と1つの重鎖がある2つの半抗体からなる。トリオマブ形態は、1/2のラット抗体及び1/2のマウス抗体を含むヘテロ二量体構築物である。
【
図18】ノブイントゥーホール(KIH)技術を含む、KiH共通軽鎖(LC)形態のTriNKETの略図である。KiHは、標的1及び標的2に結合する2つのFabと、ヘテロ二量化変異によって安定化されたFcと、を含むヘテロ二量体である。KiH形態のTriNKETは、2つの異なる重鎖と、両方のHCと対合する共通の軽鎖と、を含む、標的1及び標的2に結合する2つのfabを有するヘテロ二量体構築物である。
【
図19】柔軟な天然に生じるリンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせて、4価のIgG様の分子を生成する、デュアル可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))の形態のTriNKETの略図である。DVD-Ig(商標)は、可変ドメインを標的とする抗原2が、Fabを標的とする抗原1の可変ドメインのN末端に融合しているホモ二量体のコンストラクトであり、構築物は、正常のFcを含む。
【
図20】Fcに融合した標的1及び標的2に結合する2つのFabを含むヘテロ二量体構築物である、直交Fabインターフェース(Ortho-Fab)形態のTriNKETの略図である。LC-HC対合は、直交インターフェースによって確保される。ヘテロ二量化は、Fcの変異によって確保される。
【
図21】ツーインワンのIg形式でのTrinKETの略図である。
【
図22】Fcに融合した標的1及び標的2に結合する2つの異なるFabを含むヘテロ二量体構築物である、ES形態のTriNKETの略図である。ヘテロ二量化は、Fcの変異を静電気ステアリングによって確保される。
【
図23】Fabアーム交換形態のTriNKET:重鎖及び付着した軽鎖(半分子)を別の分子からの重軽鎖対と交換することによってFabアームを交換し、二重特異性抗体をもたらす抗体の略図である。Fabアーム交換形態(cFae)は、標的1及び2に結合する2つのFabと、ヘテロ二量化変異によって安定化されたFcと、を含むヘテロ二量体である。
【
図24】標的1及び標的2に結合する2つのFabと、ヘテロ二量化変異によって安定化されたFcと、を含むヘテロ二量体である、SEED Body形態のTriNKETの略図である。
【
図25】ロイシンジッパーが2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するために使用される、LuZ-Y形態のTriNKETの略図である。LuZ-Y形態は、Fcに融合した標的1及び2に結合する2つの異なるscFabを含むヘテロ二量体である。ヘテロ二量体化は、FcのC末端に融合したロイシンジッパーモチーフによって確保される。
【
図26】Cov-X-Body形態でのTriNKETの略図である。
【
図27】
図27A~
図27Bは、ヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である
Kλ-Body形態のTriNKETの略図であり、Fab1を標的とする抗原1は、カッパLCを含むが、第2のFabを標的とする抗原2は、ラムダLCを含む。
図27Aは、
Kλ-Bodyの1つの形態の例示的な略図であり、
図27Bは、もう一方の
Kλ-Bodyの例示的な略図である。
【
図28】標的1に結合するFabと、Fcに融合した標的2に結合するscFabと、を含むOasc-Fabヘテロ二量体構築物である。ヘテロ二量化は、Fcの変異によって確保される。
【
図29】抗原1及び抗原2に結合する2つの異なるFabと、ヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcと、を含むヘテロ二量体構築物である、DuetMabである。Fab1及びFab2には、正確なLC及びHCの対合を確保する特異的なS-S架橋が含まれる。
【
図30】ヘテロ二量体化によって安定化されたFcに融合した標的1及び標的2に結合する2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、CrossmAbである。CLドメイン及びCH1ドメイン、ならびにVHドメイン及びVLドメインが入れ替わり、例えば、CH1は、VLとインラインで融合し、一方、CLは、VHとインラインで融合する。
【
図31】抗原2に結合するFabが、抗原1に結合するFabのHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit-Igである。この構築物は、野生型Fcを含む。
【
図32】SPRによって試験されるように、ヒトNKG2DへのTriNKET A*及びTriNKET Aの結合を示す一連の線グラフである。上部のパネルは動的適合を表し、下部のパネルは定常状態の親和性適合を表す。
【
図33】標的細胞に対するNK細胞の細胞毒性の媒介において、TriNKET A及びTriNKET A*の効力を示す線グラフである。
【
図34】標的細胞に対するNK細胞の細胞毒性の媒介において、TriNKET A及びTriNKET A*の効力を示す線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、対合して、ナチュラルキラー細胞上のナチュラルキラー群2D(NKG2D)受容体を標的とする抗原結合部位を形成することができる抗体重鎖ドメイン及び軽鎖可変ドメインを有するタンパク質、そのようなタンパク質を含む薬学的組成物、ならびにがんの治療用を含むそのようなタンパク質及び薬学的組成物を使用する治療方法を提供する。本発明の種々の態様が下記の章に記載されるが、しかしながら、ある特定の章に説明される本発明の態様は、いずれの特定の章にも限定されるものではない。
【0027】
本発明の理解を促進するために、多数の用語及び語句を下記に定義する。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「a」及び「an」という用語は、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り複数形を含む。
【0029】
本明細書で使用する場合、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書に記載される方法及び組成物によって治療される生物を指す。そのような生物は、好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)を含み、より好ましくはヒトを含む。
【0030】
本明細書で使用する場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分を指す。ヒト抗体において、抗原結合部位は、重(「H」)鎖及び軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と呼ばれる、重鎖及び軽鎖のV領域内の3つの高度に多岐にわたる伸展が、「フレームワーク領域」または「FR」として知られるより保存された隣接伸展間に挿入される。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリン内の超可変領域間、及びそれに隣接して天然に見出されるアミノ酸配列を指す。ヒト抗体分子内で、軽鎖の3つの超可変領域及び重鎖の3つの超可変領域は、三次元空間において互いに相対的に配置されて、抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、結合した抗原のこの三次元表面に対して相補的であり、重鎖及び軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。ラクダや軟骨魚などの特定の動物では、抗原結合部位は、「単一ドメイン抗体」を提供する単一の抗体鎖によって形成される。抗原結合部位は、単一のポリペプチドにおける軽鎖可変ドメインに重鎖可変ドメインを接続するためにペプチドリンカーを使用して、無傷の抗体、抗原結合表面を保持する抗体の抗原結合断片、またはscFvなどの組換えポリペプチドに存在し得る。
【0031】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、本発明の化合物)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、適用、または投薬において投与することができ、特定の処方または投与経路に限定されることを意図しない。本明細書で使用されるとき、用語「治療する」は、病態、疾患、障害などの改善をもたらす、例えば、低下、低減、調節、改良、もしくは排除などの任意の効果、またはそれらの症状の改良を含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、「薬学的組成物」という用語は、活性薬剤と、その組成物をインビボまたはエキソビボの治療的使用に本質的に好適にする不活性または活性な担体との組み合わせを指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、乳剤(例えば、油/水または水/油乳剤など)、ならびに様々な種類の湿潤剤などの、標準の薬学的担体のいずれかを指す。また、組成物は、安定剤および防腐剤を含むことができる。担体、安定化剤、及び保存剤の例については、例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照のこと。
【0034】
この説明を通して、組成物が特定の構成要素を有する、含む、もしくは備えると説明されるか、またはプロセス及び方法が特定のステップを有する、含む、もしくは備えると説明される場合、それに加えて、記載される構成要素から本質的になるか、もしくはそれからなる本発明の組成物が存在すること、ならびに記載されるプロセスステップから本質的になるか、もしくはそれからなる本発明によるプロセス及び方法が存在することが企図される。
【0035】
一般的に、パーセンテージを指定する組成物は、特に指定のない限り、重量による。さらに、変数が定義を伴わない場合、変数の以前の定義が制御する。
NKG2D抗原結合部位
【0036】
本発明は、NKG2Dに結合する抗原結合部位、及びそのような抗原結合部位を作製するために使用することができる抗原重鎖可変ドメインを提供する。
【0037】
NKG2D受容体に結合して作動することができる抗原結合部位を形成するためにそれらが対合する抗体重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインが同定され、以下の表1に提供される。特に明記しない限り、表1に提供されているCDR配列は、Kabatの下で決定される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0038】
上記の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列の1つ以上の利点の1つは、ヒト及びカニクイザルのNKG2Dに結合して受容体を刺激し、受容体への結合について天然リガンドと競合することができることである。NKG2Dに結合し、これらの特性の1つ以上を共有するさらなる抗原結合部位も特に有用であり、当該技術分野で公知の結合競合アッセイによって同定することができる。例えば、さらなる抗原結合部位は、ヒト及び任意にカニクイザルNKG2Dの両方に結合するために、ADI-29379、ADI-29463、ADI-27744、ADI-27749、またはADI-29378との競合によって同定することができる。
【0039】
上記の抗体重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメイン配列を含むNKG2D結合部位の別の利点は、それらが高い親和性を有するNKG2Dに結合することができることである。いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位は、0.1~1000nMのKDを有するNKG2Dに結合する。いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位は、1~500nMのKDを有するNKG2Dに結合する。いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位は、5~100nMのKDを有するNKG2Dに結合する。いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位は、10~62nMのKDを有するNKG2Dに結合する。
【0040】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号2と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号11または配列番号91のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号12のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号13または配列番号68のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号14のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号15のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号16のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0041】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号4と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号17または配列番号92のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号18のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号19または配列番号69のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号20のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号21のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号22のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0042】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号6と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号23または配列番号93のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号24のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号25または配列番号70のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号26のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号27のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号28のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0043】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号8と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号29または配列番号94のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号31または配列番号71のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号32のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号33のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号34のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0044】
重鎖可変ドメインのCDR3にある、配列番号7の102位のアミノ酸残基Mは、変異させることができる。ある特定の実施形態において、M102は、非荷電残基で置換されている。ある特定の実施形態において、M102は、疎水性残基(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、またはTrp)で置換されている。ある特定の実施形態において、M102は、極性残基(Ser、Thr、Cys、Asn、Gln、またはTyr)で置換されている。ある特定の実施形態において、M102は、Leu、Ile、Val、Gln、またはPheで置換されている。
【0045】
したがって、ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号8と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号29または配列番号94のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号73または配列番号74のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号32のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号33のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号34のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0046】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号84のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号8と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号84のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号29または配列番号94のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号75または配列番号76のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号32のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号33のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号34のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0047】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号85のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号8と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号85のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号29または配列番号94のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号77または配列番号78のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号32のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号33のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号34のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0048】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号86のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号8と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号86のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号29または配列番号94のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号79または配列番号80のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号32のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号33のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号34のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0049】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号8と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号29または配列番号94のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号30のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号81または配列番号82のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号32のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号33のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号34のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0050】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号10と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態において、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号35または配列番号91のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号36のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号37または配列番号72のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。ある特定の実施形態において、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位は、配列番号38のアミノ酸配列によって表されるCDR1配列と、配列番号39のアミノ酸配列によって表されるCDR2配列と、配列番号40のアミノ酸配列によって表されるCDR3配列と、を含む。
【0051】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号6と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位を提供し、これは、NKG2Dへの抗NKG2D抗体MS、1D11、及びMAB139の結合を遮断しない。
【0052】
実施形態において、本発明は、配列番号7、83、84、85、86、または87のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号8と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位は、NKG2Dへの、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号6と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位の結合を遮断しない。
【0053】
ある特定の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインと、配列番号6と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメインと、を含む抗原結合部位は、MS、1D11、MAB139、ADI-27749、及びF47結合エピトープ(複数可)とは異なるNKG2D上の特異エピトープに結合する。
【0054】
抗体及び多重特異性結合タンパク質
本発明のいくつかの実施形態において、抗体重鎖可変ドメインを本明細書に記載される軽鎖可変ドメインと対合することによって形成されるNKG2D抗原結合部位は、無傷の抗体、多重特異的結合タンパク質、または多重特異的結合抗体などのより大きなタンパク質に含めることができる。例えば、NKG2D結合部位は、第2の成分、例えば、第2の抗原結合部位と組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、第2の抗原結合部位は、1つ以上の腫瘍関連抗原、例えば、CD33、HER2、EpCAM、CD2、CD3、CD8、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD45RO、CD48、CD52、CD55、CD59、CD70、CD74、CD80、CD86、CD138、CD147、HLA-DR、CSAp、CA-125、TAG-72、EFGR/ERBB1、IGF1R、HER3、HER4、IGF-1R、c-Met、PDGFR、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、TNFR1、TNFR2、NGFR、TRAILR1、TRAILR2、Fas(CD95)、DR3、DR4、DR5、DR6、VEGF、PIGF、テネイシン、ED-Bフィブロネクチン、PSA、及びIL-6、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、またはPD1に結合する。NKG2D及びがん細胞の腫瘍関連抗原への多重特異性タンパク質の結合は、がん細胞をナチュラルキラー細胞に近づけ、ナチュラルキラー細胞による直接的な、または間接的ながん細胞の破壊を促進する。
【0055】
いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位及び腫瘍関連抗原結合部位に加えて、多重特異性結合タンパク質は、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、マスト細胞、及び濾胞樹状細胞を含む、白血球の表面上のFc受容体である、CD16に結合するドメインをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、CD16結合ドメインは、抗体Fc領域またはその一部を含むことができる。いくつかの実施形態において、CD16に結合するドメインは、CH1ドメインの有無にかかわらず抗体Fc領域の、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗体Fc領域は、ヒト及び/または他の哺乳類の免疫グロブリンのFc領域に由来する。Fc領域内で、CD16の結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインによって媒介されることが知られている。例えば、ヒトIgG1内で、CD16との相互作用は、CH2ドメインにおけるアミノ酸残基Asp265-Glu269、Asn297-Thr299、Ala327-Ile332、Leu234-Ser239、及び炭水化物残基N-アセチル-D-グルコサミンによって媒介される(Sondermann et al,Nature,406(6793):267-273を参照のこと)。既知のドメイン及びアミノ酸残基に基づいて、いくつかの実施形態において、変異は、CD16に対する結合親和性を増強または減少させるために、CD16結合ドメイン内で選択され得る。選択方法は、ファージディスプレイライブラリーまたは酵母表面ディスプレイcDNAライブラリーなどの、当該技術分野で周知の方法である。当業者による相互作用の既知の三次元構造に基づいて、適切な選択方法を設計することもできる。
【0056】
本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質は、様々な形式をとることができる。例えば、1つの形式は、第1の免疫グロブリン重鎖、第1の免疫グロブリン軽鎖、第2の免疫グロブリン重鎖、及び第2の免疫グロブリン軽鎖を含むヘテロ二量体の多重特異性抗体である。第1の免疫グロブリン重鎖には、第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメイン、第1の重鎖可変ドメイン、及び任意に第1のCH1重鎖ドメインが含まれる。第1の免疫グロブリン軽鎖には、第1の軽鎖可変ドメイン及び第1の軽鎖定常ドメインが含まれる。第1の免疫グロブリン軽鎖は、第1の免疫グロブリン重鎖と一緒になって、NKG2Dに結合する抗原結合部位を形成する。第2の免疫グロブリン重鎖には、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、及び任意に第2のCH1重鎖ドメインが含まれる。第2の免疫グロブリン軽鎖には、第2の軽鎖可変ドメイン及び第2の軽鎖定常ドメインが含まれる。第2の免疫グロブリン軽鎖は、第2の免疫グロブリン重鎖と一緒になって、腫瘍抗原に結合する抗原結合部位を形成する。第1のFcドメイン及び第2のFcドメインは共に、CD16に結合することができる(
図1)。
【0057】
別の例示的な形式は、第1の免疫グロブリン重鎖、第2の免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含むヘテロ二量体の多重特異性抗体を含む。第1の免疫グロブリン重鎖には、リンカーまたは抗体ヒンジを介して、NKG2Dに対合し、結合する重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインからなる一本鎖可変断片(scFv)に融合した第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインが含まれる。第2の免疫グロブリン重鎖には、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメイン、第2の重鎖可変ドメイン、及び任意にCH1重鎖ドメインが含まれる。免疫グロブリン軽鎖には、軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインが含まれる。第2の免疫グロブリン重鎖は、免疫グロブリン軽鎖と対合し、腫瘍関連抗原に結合する。第1のFcドメイン及び第2のFcドメインは共に、CD16に結合することができる(
図2)。多重特異的結合タンパク質のさらなる形式は、本明細書に記載されるNKG2D結合断片の様々な形式を組み合わせることによって考案することができる。
【0058】
1つ以上のさらなる結合モチーフは、任意にリンカー配列を介して、定常領域CH3ドメインのC末端に融合させ得る。ある特定の実施形態において、抗原結合部位は、一本鎖またはジスルフィド安定化可変領域(scFv)であり得るか、または四価分子または三価分子を形成し得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、多重特異性結合タンパク質は、IgG様の形状を維持する三官能性二重特異性抗体である、トリオマブ形態である。このキメラは、2つの親抗体に由来する、それぞれ、1つの軽鎖と1つの重鎖がある2つの半抗体からなる。トリオマブ形態は、1/2のラット抗体及び1/2のマウス抗体を含むヘテロ二量体構築物である。
【0060】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、ノブイントゥーホール(KIH)技術を含む、KiH共通軽鎖(LC)形態である。KIHは、ヘテロ二量体化を促進するために各重鎖に「ノブ」または「ホール」を作製するためにCH3ドメインを操作することを含む。「ノブイントゥーホール(KiH)」Fc技術の背後にある概念は、小さな残基をかさ高い残基(つまり、EU番号のT366WCH3A)で置き換えることによって、1つのCH3ドメイン(CH3A)に「ノブ」を導入することであった。「ノブ」に対応するために、相補的な「ホール」表面は、その他のCH3ドメイン(CH3B)に、ノブに最も近い隣接残基を小さいもの(すなわち、T366S/L368A/Y407VCH3B)で置き換えることによって作製された。「ホール」変異は、構造化ガイド付きファージライブラリスクリーニングによって最適化された(Atwell S,Ridgway JB,Wells JA,Carter P.Stable heterodimers from remodeling the domain interface of a homodimer using a phage display library.J Mol Biol(1997)270(1):26-35)。KiH FcバリアントのX線結晶構造(Elliott JM,Ultsch M,Lee J,Tong R,Takeda K,Spiess C,et al.,Antiparallel conformation of knob and hole aglycosylated half-antibody homodimers is mediated by a CH2-CH3 hydrophobic interaction.J Mol Biol(2014)426(9):1947-57、Mimoto F,Kadono S,Katada H,Igawa T,Kamikawa T,Hattori K.Crystal structure of a novel asymmetrically engineered Fc variant
with improved affinity for FcgammaRs.Mol Immunol(2014)58(1):132-8)は、ヘテロ二量化が、CH3ドメイン間のコアインターフェースでの立体的相補性によって駆動される疎水性相互作用によって熱力学的に支持されるのに対し、ノブ-ノブ及びホール-ホールインターフェースは、それぞれ、立体障害と好ましい相互作用の中断のためにホモ二量化を支持しないことを示した。
【0061】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、柔軟な天然に生じるリンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせて、4価のIgG様の分子を生成する、デュアル可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))の形態にある。DVD-Ig(商標)は、可変ドメインを標的とする抗原2が、Fabを標的とする抗原1の可変ドメインのN末端に融合しているホモ二量体構築物であり、構築物は、正常のFcを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、Fcに融合した標的1及び標的2に結合する2つのFabを含むヘテロ二量体構築物である、直交Fabインターフェース(Ortho-Fab)形態にある。LC-HC対合は、直交インターフェースによって確保される。ヘテロ二量化は、Fcの変異によって確保される。ortho-Fab IgGアプローチ(Lewis SM,Wu X,Pustilnik A,Sereno A,Huang F,Rick HL,et al.Generation of bispecific IgG antibodies by structure-based design of an orthogonal Fab interface.Nat.Biotechnol.(2014)32(2):191-8)において、構造ベースの地域設計では、LC及びHCVH-CH1のインターフェースに、他のFabにいかなる変更を加えることなく、1つのFabのみに相補的な変異を導入する。
【0063】
いくつかの実施形態において、多重特異性結合タンパク質は、ツーインワン(2-in-1)Ig形式である。いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、Fcに融合した標的1及び標的2に結合する2つの異なるFabを含むヘテロ二量体構築物である、ES形態にある。ヘテロ二量化は、Fcの変異を静電気ステアリングによって確保される。
【0064】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、ヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物であるKλ-Body形態にあり、Fab1を標的とする抗原1は、カッパLCを含むが、第2のFabを標的とする抗原2は、ラムダLCを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、Fabアーム交換形態(重鎖及び付着した軽鎖(半分子)を別の分子からの重軽鎖対と交換することによってFabアームを交換し、二重特異性抗体をもたらす抗体)にある。Fabアーム交換形態(cFae)は、標的1及び標的2に結合する2つのFabと、ヘテロ二量化変異によって安定化されたFcと、を含むヘテロ二量体である。
【0066】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、標的1及び標的2に結合する2つのFabと、ヘテロ二量化変異によって安定化されたFcと、を含むヘテロ二量体である、SEED Body形態にある。鎖交換組換えドメイン(SEED)プラットフォームは、天然に存在する抗体の治療用途を拡大する機能である非対称の二重特異性抗体様分子を生成するように設計された。このタンパク質組換えプラットフォームは、保存されたCH3ドメイン内の免疫グロブリンの構造的に関連した配列の交換に基づいている。SEED設計は、AG及びGAのSEED CH3ドメインのホモ二量体化を回避しつつ、AG/GAヘテロ二量体の効率的な生成を可能にする。(Muda M.et al.,Protein Eng.Des.Sel.(2011,24(5):447-54))。
【0067】
いくつかの実施形態において、多重特異性結合タンパク質は、ロイシンジッパーが2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するために使用される、LuZ-Y形態にある。(Wranik,BJ.et al.,J.Biol.Chem.(2012),287:43331-9)。LuZ-Y形態は、Fcに融合した標的1及び標的2に結合する2つの異なるscFabを含むヘテロ二量体である。ヘテロ二量体化は、FcのC末端に融合したロイシンジッパーモチーフによって確保される。
【0068】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、Cov-X-Body形態にある(二重特異性CovX-Bodiesでは、2つの異なるペプチドを、分岐アゼチジノンリンカーを用いて結合し、部位特異的に緩やかな条件下で足場抗体に融合する。ファーマコフォアが機能活性に関与するのに対し、抗体足場は、長い半減期及びIg様の分布を与える。ファーマコフォアを、化学的に最適化するか、または他のファーマコフォアで置き換えることにより、最適化された、または独自の二重特異性抗体を生成することができる。(Doppalapudi VR et al.,PNAS(2010),107(52);22611-22616)。
【0069】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、標的1に結合するFabと、Fcに融合した標的2に結合するscFabと、を含むOasc-Fabヘテロ二量体構築物にある。ヘテロ二量化は、Fcの変異によって確保される。
【0070】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、抗原1及び抗原2に結合する2つの異なるFabと、ヘテロ二量化変異によって安定化されたFcと、を含むDuetMab形式にある。Fab1及びFab2には、正確なLC及びHCの対合を確保する特異的なS-S架橋が含まれる。
【0071】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、ヘテロ二量体化によって安定化されたFcに融合した標的1及び標的2に結合する2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、CrossmAb形式にある。CLドメイン及びCH1ドメイン、ならびにVHドメイン及びVLドメインが入れ替わり、例えば、CH1は、VLとインラインで融合し、一方、CLは、VHとインラインで融合する。
【0072】
いくつかの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、抗原2に結合するFabが、抗原1に結合するFabのHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、CrossmAb形式にある。この構築物は、野生型を含む。
【0073】
ヘテロ二量体抗体重鎖
ヘテロ二量体抗体重鎖のアセンブリは、同じ細胞で2つの異なる抗体重鎖配列を発現させることによって達成することができ、これにより、各抗体重鎖のホモ二量体のアセンブリならびにヘテロ二量体のアセンブリをもたらし得る。本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質内のヘテロ二量体重鎖の優先的なアセンブリは、アミノ酸置換の異なる対を、第1の重鎖ポリペプチド内の第1のCH3ドメイン及び第2の重鎖ポリペプチド内の第2のCH3ドメインに組み込むことによって促進することができ、US13/494870、US16/028850、US11/533709、US12/875015、US13/289934、US14/773418、US12/811207、US13/866756、US14/647480、US14/830336に示されるように、これらの2つの鎖は互いに選択的にヘテロ二量体化することができる。いくつかの実施形態において、多重特異性結合タンパク質は、ヒトIgG1のFcドメインを含む。2つの重鎖のヘテロ二量体化を促進するために、ヒトIgG1 Fcドメインの対内のアミノ酸置換の様々な例を、以下に示す。アミノ酸置換の各位置は、Kabatと同様にEUインデックスに従って番号が付けられている。
【0074】
1つのシナリオでは、第1のポリペプチドのアミノ酸置換により、元のアミノ酸がアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)、及び少なくとも1つのアミノから選択されたより大きなアミノ酸で置き換えられ、第2のポリペプチドの酸置換により、元のアミノ酸(複数可)が、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、またはバリン(V)から選択されるより小さいアミノ酸(複数可)で置き換えられ、それによりアミノ酸置換(隆起)は、より小さいアミノ酸置換(空洞)の表面に適合する。例えば、一方のポリペプチドは、T366W置換を含むことができ、他方は、T366S、L368A、及びY407Vを含む3つの置換を含むことができる。
【0075】
あるいは、アミノ酸置換は、表2に示される以下の一連の置換から選択され得る。
【表2】
【0076】
あるいは、アミノ酸置換は、表3に示される以下の一連の置換から選択され得る。
【表3】
【0077】
あるいは、アミノ酸置換は、表4に示される以下の一連の置換から選択され得る。
【表4】
【0078】
あるいは、各ポリペプチド鎖における少なくとも1つのアミノ酸置換は、表5から選択され得る。
【表5】
【0079】
あるいは、少なくとも1つのアミノ酸置換は、表6中の以下の一連の置換から選択され得、第1のポリペプチド列に示されている位置(複数可)は、既知の負に帯電したアミノ酸で置き換えられ、第2のポリペプチド列に示されている位置(複数可)は、既知の正に帯電したアミノ酸で置き換えられている。
【表6】
【0080】
あるいは、少なくとも1つのアミノ酸置換は、表7中の以下の一連の置換から選択され得、第1のポリペプチド列に示されている位置(複数可)は、既知の正に帯電したアミノ酸で置き換えられ、第2のポリペプチド列に示されている位置(複数可)は、既知の負に帯電したアミノ酸で置き換えられている。
【表7】
【0081】
あるいは、アミノ酸置換は、表8に示される以下の一連の置換から選択され得る。
【表8】
【0082】
あるいは、または加えて、多重特異性結合タンパク質内のヘテロ二量体重鎖の構造的安定性は、第1または第2のポリペプチド鎖のいずれかにS354Cを導入し、2つのポリペプチドの境界内に人工ジスルフィド架橋を形成する反対側のポリペプチド鎖にY349Cを導入することによって増加することができる。
【0083】
上記の多重特異性結合タンパク質は、当業者に周知の組換えDNA技術を用いて作製することができる。例えば、第1の免疫グロブリン重鎖をコードする第1の核酸配列は、第1の発現ベクターにクローン化され得、第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列は、第2の発現ベクターにクローン化され得、第1の免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列は、第3の発現ベクターにクローン化され得、第2の免疫グロブリン軽鎖をコードする第4の核酸配列は、第4の発現ベクターにクローン化され得、第1、第2、第3、及び第4の発現ベクターを、一緒に安定して宿主細胞にトランスフェクトして、多量体タンパク質を産生され得る。
【0084】
多重特異性結合タンパク質の最高の収量を達成するために、第1、第2、第3、及び第4の発現ベクターの異なる比率を探索して、宿主細胞へのトランスフェクションに最適な比率を決定することができる。トランスフェクション後、限界希釈法、ELISA、FACS、顕微鏡法、またはClonepixなどの当該技術分野で既知の方法を使用して、細胞バンク生成のために単一クローンを単離することができる。
【0085】
クローンは、バイオリアクターのスケールアップに適した条件下で培養し、多重特異性タンパク質の発現を維持することができる。多重特異性結合タンパク質は、遠心分離、デプスフィルター、細胞溶解、ホモジナイゼーション、凍結融解、親和性精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィー、及び混合モードクロマトグラフィーを含む当該技術分野で既知の方法を使用して、単離または精製され得る。
【0086】
本明細書に記載されるNKG2D結合部位と競合する抗原結合部位を含むタンパク質
ある特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるNKG2D結合部位と競合して、NKG2Dに結合する抗原結合部位を含むタンパク質を提供する。本明細書に記載されるNKG2D結合部位は、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列、配列番号7及び配列番号8のアミノ酸配列、配列番号9及び配列番号10のアミノ酸配列、配列番号83及び配列番号8のアミノ酸配列、配列番号84及び配列番号8のアミノ酸配列、配列番号85及び配列番号8のアミノ酸配列、配列番号86及び配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号87及び配列番号8のアミノ酸配列を含む。これらのNKG2D結合部位は、表面プラズモン共鳴によってマッピングされたNKG2D上の異なるエピトープに結合することができる。例えば、実施例2に示すように、ADI-27744は、NKG2D上の、ADI-27749及び他の既存のNKG2D抗体とは異なるエピトープに結合する。
【0087】
いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位と競合するタンパク質の抗原結合部位は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を含む。いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位と競合するタンパク質の抗原結合部位は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を含む。いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位と競合するタンパク質の抗原結合部位は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を含む。いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位と競合するタンパク質の抗原結合部位は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を含む。いくつかの実施形態において、NKG2D結合部位と競合するタンパク質の抗原結合部位は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるNKG2D結合部位と競合する抗原結合部位を含むタンパク質は、腫瘍関連抗原及び/またはCD16結合部位に結合する第2の抗原結合部位をさらに含む。いくつかの実施形態において、CD16結合部位は、CD16に結合することができる抗体定常領域またはその一部である。いくつかの実施形態において、CD16結合部位は、ヒトIgG1 Fcドメインを含む。
【0089】
タンパク質を発現するための細胞
一態様において、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有するNKG2D結合部位、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有するNKG2D結合部位、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有するNKG2D結合部位、配列番号7、83、84、85、86、または87のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有するNKG2D結合部位、または配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有するNKG2D結合部位、を含むタンパク質をコードする1つ以上の核酸を含む細胞を提供する。
【0090】
治療への適用
本発明は、本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質及び/または本明細書に記載される薬学的組成物を使用して、腫瘍細胞死を増強する及び/またはがんを治療するための方法を提供する。この方法は、様々ながんを治療するために使用され得る。治療されるがんのタイプは、タンパク質が結合するがん細胞のタイプと一致することが望ましい。治療方法のさらなる態様及び実施形態を、以下に説明する。
【0091】
薬学的組成物
一態様では、本開示はまた、本明細書に記載されるNKG2D結合部位または本明細書に記載されるNKG2D結合部位と競合するNKG2D結合部位と、薬学的に許容される担体と、を含む有効量のタンパク質を含む薬学的組成物を特徴とする。
【0092】
ある特定の実施形態において、製剤は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位を含むタンパク質を含む。ある特定の実施形態において、製剤は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位を含むタンパク質を含む。ある特定の実施形態において、製剤は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位を含むタンパク質を含む。ある特定の実施形態において、製剤は、配列番号7、83、84、85、86、または87のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位を含むタンパク質を含む。ある特定の実施形態において、製剤は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位を含むタンパク質を含む。
【0093】
組成物は、様々な薬物送達システムで使用するために製剤化され得る。1つ以上の生理学的に許容される賦形剤または担体には、適切な製剤のための組成物が含まれ得る。本開示での使用に適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.,1985に見出される。薬剤送達のための方法の簡潔な論評については、例えば、Langer(Science 249:1527-1533)1990を参照されたい。
【0094】
例えば、本開示は、製剤を形成する緩衝溶液中に治療有効量のタンパク質を含む水性薬学的製剤中に存在し得る。水性担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌性水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌食塩水溶液、リンゲル液、またはデキストローズ溶液が含まれる。ある特定の実施形態において、本明細書に開示されるタンパク質を含む水性製剤が、pH緩衝溶液中に調製される。調製物のpHは、典型的には3~11、より好ましくは5~9または6~8、最も好ましくは7~8、例えば7~7.5であろう。上記のpHの中間の範囲もまた、本開示の一部であることが意図される。例えば、上限及び/または下限として、任意の上記の値の組み合わせを用いた値の範囲が含まれることが意図される。この範囲内でpHを制御する緩衝液の例には、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸、ヒスチジン、クエン酸塩、及び他の有機酸緩衝液が含まれる。ある特定の実施形態において、緩衝液系は、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、及び/またはリン酸二水素ナトリウム二水和物を含む。ある特定の実施形態において、緩衝液系は、約1.3mg/ml(例えば、1.305mg/ml)のクエン酸、約0.3mg/ml(例えば、0.305mg/ml)のクエン酸ナトリウム、約1.5mg/ml(例えば、1.53mg/ml)のリン酸二ナトリウム二水和物、約0.9mg/ml(例えば、0.86)のリン酸二水素ナトリウム二水和物、及び約6.2mg/ml(例えば、6.165mg/ml)の塩化ナトリウムを含む。ある特定の実施形態において、緩衝液系は、1~1.5mg/mlのクエン酸、0.25~0.5mg/mlのクエン酸ナトリウム、1.25~1.75mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、0.7~1.1mg/mlのリン酸二水素ナトリウム二水和物、及び6.0~6.4mg/mlの塩化ナトリウムを含む。液体製剤のpHは、薬学的に許容される酸及び/または塩基の添加によって設定され得る。ある特定の実施形態において、薬学的に許容される酸は、塩酸であり得る。ある特定の実施形態において、塩基は、水酸化ナトリウムであり得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、製剤は、薬学的に許容され(ヒトへの投与について安全かつ非毒性である)、液体製剤の調製物に有用である、水性担体を含む。例示的な担体は、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌性水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌食塩水溶液、リンゲル液、またはデキストローズ溶液を含む。
【0096】
等張化剤として機能し、抗体を安定化させることができるポリオールも、製剤に含まれ得る。このポリオールを、製剤の所望の等張性に対して変化し得る量で製剤に添加する。ある特定の実施形態において、水性製剤は、等張であり得る。添加するポリオールの量を、ポリオールの分子量に対して変化することもできる。例えば、二糖(例えば、トレハロース)と比較して、より少量の単糖(例えば、マンニトール)を添加することができる。ある特定の実施形態において、等張化剤として製剤に使用することができるポリオールは、マンニトールである。ある特定の実施形態において、マンニトール濃度は、約5~約20mg/mlであり得る。ある特定の実施形態において、マンニトール濃度は、約7.5~15mg/mlであり得る。ある特定の実施形態において、マンニトール濃度は、約10~14mg/mlであり得る。ある特定の実施形態において、マンニトール濃度は、約12mg/mlであり得る。ある特定の実施形態において、ポリオールソルビトールは、製剤に含まれ得る。
【0097】
洗剤または界面活性剤も、製剤に添加され得る。例示的な洗剤としては、非イオン性洗剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80など)またはポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)が挙げられる。添加する洗剤の量は、それが製剤化抗体の凝集を低減させ、及び/または製剤中の微粒子の形成を最小限に抑え、及び/または吸着を低減させるような量である。ある特定の実施形態において、製剤は、ポリソルベートである界面活性剤を含み得る。ある特定の実施形態において、製剤は、洗剤ポリソルベート80またはTween 80を含み得る。Tween 80は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを記載するために使用される用語である(Fiedler,Lexikon der Hifsstoffe,Editio Cantor
Verlag Aulendorf,4th edi.,1996を参照のこと)。ある特定の実施形態において、製剤は、約0.1~約10mg/mLのポリソルベート80、または約0.5mg/mL~約5mg/mLのポリソルベート80を含み得る。ある特定の実施形態において、約0.1%のポリソルベート80が、製剤に添加され得る。
【0098】
ある特定の実施形態において、本開示の液体製剤は、安定化レベルの糖と組み合わせて10mg/mLの濃縮溶液として調製され得る。ある特定の実施形態において、液体製剤は、水性担体中で調製され得る。ある特定の実施形態において、安定剤は、静脈内投与に望ましくないかまたは不適当な粘度をもたらし得る量以下で添加され得る。ある特定の実施形態において、糖は、二糖、例えばスクロースであり得る。ある特定の実施形態において、液体製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、及び防腐剤のうちの1つ以上を含み得、細菌作用を低減するために本明細書中の製剤に添加される。防腐剤の添加は、例えば、複数回使用(複数回用量)製剤の製造を容易にし得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、本開示は、マンニトール、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、水、及び水酸化ナトリウムと組み合わせた、本開示のタンパク質を含む保存期間が延長された製剤を提供する。
【0100】
脱アミドは、発酵、収穫/細胞浄化、精製、薬物物質/薬物製品の保管中、及びサンプル分析中に発生し得るペプチド及びタンパク質の一般的な製品バリアントである。脱アミド化は、加水分解を受けることができるスクシンイミド中間体を形成するタンパク質からのNH3の損失である。スクシンイミド中間体は、親ペプチドから17Daの質量減少をもたらす。その後の加水分解により、18uの質量が増加する。スクシンイミド中間体の単離は、水性条件下で不安定であるために困難である。したがって、脱アミド化は、通常、1uの質量の増加する場合に、検出可能である。アスパラギンの脱アミド化は、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸のいずれかをもたらす。脱アミド化の速度に影響を与えるパラメータには、pH、温度、溶媒の誘電率、イオン強度、一次配列、局所的なポリペプチドの立体構造、及び三次構造が含まれる。ペプチド鎖のAsnに隣接するアミノ酸残基は、脱アミド率に影響する。タンパク質配列のAsnに続くGly及びSerは、脱アミド化に対する感受性が高くなる。ある特定の実施形態において、本開示の液体製剤は、タンパク質産物の脱アミノ化を防ぐために、pH及び湿度の条件下で保存され得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、製剤は、凍結乾燥させた製剤である。ある特定の実施形態において、製剤は、凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))され、約12~60バイアルに含まれる。ある特定の実施形態において、製剤は、凍結乾燥されており、45mgの凍結乾燥製剤が、1つのバイアルに含まれていてもよい。ある特定の実施形態において、約40mg~約100mgの凍結乾燥製剤が、1つのバイアルに含まれる。ある特定の実施形態において、12、27、または45バイアルからの凍結乾燥製剤を組み合わせて、静脈内薬物製剤中のタンパク質の治療用量を得る。製剤は、液体製剤であってよい。いくつかの実施形態において、液体製剤は、約250mg/バイアル~約1000mg/バイアルとして保存される。ある特定の実施形態において、液体製剤は、約600mg/バイアルとして保存される。ある特定の実施形態において、液体製剤は、約250mg/バイアルとして保存される。
【0102】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥製剤は、本明細書に記載されるタンパク質及び凍結保護剤を含む。凍結保護剤は、糖、例えば二糖類であり得る。ある特定の実施形態において、凍結保護剤は、スクロースまたはマルトースであり得る。凍結乾燥された製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、増量剤、及び/または防腐剤のうちの1つ以上も含み得る。凍結乾燥製剤の安定化に有用なスクロースまたはマルトースの量は、タンパク質対スクロースまたはマルトースの重量比が少なくとも1:2であり得る。ある特定の実施形態において、タンパク質対スクロースまたはマルトースの重量比は、1:2~1:5であり得る。
【0103】
ある特定の実施形態において、凍結乾燥前の製剤のpHは、薬学的に許容される酸及び/または塩基の添加によって設定され得る。ある特定の実施形態において、薬学的に許容される酸は、塩酸であり得る。ある特定の実施形態において、薬学的に許容される塩基は、水酸化ナトリウムであり得る。凍結乾燥前に、本開示のタンパク質を含む溶液のpHは、6~8の間で調整され得る。ある特定の実施形態において、凍結乾燥された薬物製品のpH範囲は、7~8であり得る。
【0104】
ある特定の実施形態において、「増量剤」を付加してもよい。「増量剤」は、凍結乾燥混合物に質量を付加して、凍結乾燥ケーキの物理的構造に貢献する(例えば、開放気孔構造を維持する本質的に均質な凍結乾燥ケーキの製造を容易にする)化合物である。例示的な増量剤には、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコール、及びソルビトールが含まれる。本発明の凍結乾燥製剤は、そのような増量剤を含み得る。
【0105】
ある特定の実施形態において、凍結乾燥タンパク質製品は、水性担体で構成される。目的とする水性担体は、本明細書において、薬学的に許容され(例えば、ヒトへの投与について安全かつ非毒性である)、凍結乾燥後、液体製剤の調製に有用である。例示的な希釈剤には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌性水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌食塩水溶液、リンゲル液、またはデキストローズ溶液が含まれる。ある特定の実施形態において、本開示の凍結乾燥製剤は、注射用滅菌水、USP(SWFI)、または0.9%塩化ナトリウム注射、USPのいずれかで再構成される。再構成中、凍結乾燥粉末は、溶液に溶解する。ある特定の実施形態において、本開示の凍結乾燥タンパク質製品は、注射用に約4.5mLの水で構成され、0.9%生理食塩水(塩化ナトリウム溶液)で希釈される。
【0106】
タンパク質組成物は、従来の滅菌技法によって滅菌され得るか、または滅菌濾過されてもよい。結果として生じる水溶液は、そのままで使用するためにパッケージ化されても、凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌水性担体と混合される。固体形態での結果として生じる組成物は、複数の単回用量単位で包装されてもよく、それぞれ、固定量の上述した薬剤(複数可)を含有する。固体形態の組成物はまた、可変量用の容器にパッケージ化することもできる。
【0107】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性であることなく、特定の患者、組成物、及び投与様式に関して所望の治療的応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように、変化され得る。
【0108】
特定の投与量は、患者ごとに均一な投与量、例えば50~5000mgのタンパク質にすることができる。あるいは、患者の投与量は、患者のおおよその体重または表面積に合わせることができる。適切な投薬量を決定する際の他の因子には、治療または予防される疾患または状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに患者の年齢、性別及び医学的状態が含まれ得る。治療のための適切な投薬量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、特に本明細書に開示される投薬量情報及びアッセイに照らして、当業者によって日常的に行われる。投薬量はまた、適切な用量応答データと併せて使用される投薬量を決定するための既知のアッセイの使用を通じて決定され得る。個々の患者の投薬量は、疾患の進行を観察しながら調整することができる。患者の標的可能な構築物または複合体の血中濃度を測定して、有効濃度に到達または有効濃度を維持するために投薬量を調整する必要があるかどうかを確認することができる。ファーマコゲノミックス(Pharmacogenomics)を用いて、どの標的可能な構築物及び/または複合体ならびにその投薬量が、所定の個人に最も有効と思われるかを決定することができる(Schmitz et al.,Clinica Chimica Acta 308:43-53,2001、Steimer et al.,Clinica Chimica Acta 308:33-41,2001)。
【0109】
一般に、体重に基づく投薬量は、約0.01μg~約100mg/kg体重、例えば、約0.01μg~約100mg/kg体重、約0.01μg~約50mg/kg体重、約0.01μg~約10mg/kg体重、約0.01μg~約1mg/kg体重、約0.01μg~約100μg/kg体重、約0.01μg~約50μg/kg体重、約0.01μg~約10μg/kg体重、約0.01μg~約1μg/kg体重、約0.01μg~約0.1μg/kg体重、約0.1μg~約100mg/kg体重、約0.1μg~約50mg/kg体重、約0.1μg~約10mg/kg体重、約0.1μg~約1mg/kg体重、約0.1μg~約100μg/kg体重、約0.1μg~約10μg/kg体重、約0.1μg~約1μg/kg体重、約1μg~約100mg/kg体重、約1μg~約50mg/kg体重、約1μg~約10mg/kg体重、約1μg~約1mg/kg体重、約1μg~約100μg/kg体重、約1μg~約50μg/kg体重、約1μg~約10μg/kg体重、約10μg~約100mg/kg体重、約10μg~約50mg/kg体重、約10μg~約10mg/kg体重、約10μg~約1mg/kg体重、約10μg~約100μg/kg体重、約10μg~約50μg/kg体重、約50μg~約100mg/kg体重、約50μg~約50mg/kg体重、約50μg~約10mg/kg体重、約50μg~約1mg/kg体重、約50μg~約100μg/kg体重、約100μg~約100mg/kg体重、約100μg~約50mg/kg体重、約100μg~約10mg/kg体重、約100μg~約1mg/kg体重、約1mg~約100mg/kg体重、約1mg~約50mg/kg体重、約1mg~約10mg/kg体重、約10mg~約100mg/kg体重、約10mg~約50mg/kg体重、約50mg~約100mg/kg体重である。投薬は、毎日、毎週、毎月、もしくは毎年、または2~20年ごとに1回または複数回行うことができる。当業者は、体液または組織における標的可能な構築物または複合体の測定された滞留時間及び濃度に基づいて、投薬の反復速度を容易に予測することができる。本発明の投与は、カテーテルによる灌流または直接的な病巣内注射による、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、くも膜下腔内、腔内投与であり得る。これは、1日1回以上、1週間に1回以上、1月に1回以上、および1年に1回以上投与してもよい。
【0110】
腫瘍細胞死の増強及びがん治療
本発明は、患者における腫瘍細胞死を増強し、及び/またはがんを治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、腫瘍及びナチュラルキラー細胞を、本明細書に開示される多重特異性結合タンパク質に曝露することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、治療を必要とする患者に、治療有効量の本明細書に記載されるタンパク質及びまたはその所望の製剤を投与することを含む。これらの実施形態において、多重特異的結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位、配列番号7、83、84、85、86、または87のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位、あるいは配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、を有する抗原結合部位を含み得る。
【0111】
治療されるがんのタイプは、本明細書に開示されている多重特異的結合タンパク質が結合するがん細胞のタイプと一致することが望ましい。上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するがん、例えば、EpCAMを発現する結腸癌の治療は、EpCAM及びNKG2Dに結合する本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質を使用して治療されることが望ましい。
【0112】
いくつかの実施形態において、治療される患者は、CD33、HER2、CD2、CD19、CD20、CD30、CD38、CD40、CD52、CD70、EGFR/ERBB1、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、CEA、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、及びPD1のうちの1つ以上を発現するがん細胞を含む。いくつかの実施形態において、治療される患者は、固形癌、例えば、脳癌、膀胱癌、乳癌、肺癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、白血病、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、精巣癌、または子宮癌を有する。さらに他の実施形態において、がんは、血管新生腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭癌、耳下腺癌、胆道癌、甲状腺癌、末端性黒子性黒色腫、光線性角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管癌、肛門癌、直腸肛門癌(anorectum cancer)、星状細胞腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆管癌、骨癌、骨髄癌、気管支癌、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫、絨毛神経叢乳頭腫/癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織癌、嚢胞腺腫、消化器系癌、十二指腸癌、内分泌系癌、内胚葉性洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞癌、上衣癌、上皮細胞癌、ユーイング肉腫、眼及び眼窩癌、女性生殖器癌、限局性結節性過形成、胆嚢癌、胃前庭癌、胃底癌、ガストリノーマ、神経膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓癌、血管芽腫、血管内皮腫、血管腫、肝細胞腺腫、肝細胞腺腫症、肝胆道癌、肝細胞癌、ホジキン病、回腸癌、インスリノーマ、上皮内新生物(intaepithelial neoplasia)、上皮内扁平上皮新生物(interepithelial squamous cell neoplasia)、肝内胆管癌、浸潤性扁平上皮癌、空腸癌、関節癌、カポジ肉腫、骨盤内の癌、大細胞癌、大腸癌、平滑筋肉腫、悪性黒子型黒色腫、リンパ腫、男性生殖器癌、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄様上皮腫、髄膜癌、中皮癌、転移性癌、口内癌、粘膜表皮癌、多発性骨髄腫、筋癌、鼻道癌、神経系癌、神経上皮腺癌結節性黒色腫、非上皮性皮膚癌、非ホジキンリンパ腫、オート麦細胞癌、乏突起神経膠癌、口腔癌、骨肉腫、乳頭漿液性腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸癌、腎細胞癌、呼吸器系癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞癌、小腸癌、平滑筋癌、軟部組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎癌、扁平上皮癌、横紋筋癌、中皮癌、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌癌、未分化癌、尿管癌、尿道癌、膀胱癌、泌尿器系癌、子宮頸癌、子宮体部癌、ブドウ膜黒色腫、膣癌、いぼ状癌、VIPoma、外陰癌、高分化癌、またはウィルムス腫瘍である。
【0113】
いくつかの実施形態において、治療される患者は、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫を有する。ある特定の実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、または原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫である。ある特定の他の実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、T細胞リンパ腫、例えば、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性天然キラー/T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、または末梢T細胞リンパ腫である。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるタンパク質は、がんに罹患している患者を治療するために追加の治療剤と組み合わせて使用される。がんを治療する際の併用療法の一部として使用され得る例示的な治療剤には、例えば、放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボクオン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリックス、レトロゾール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、チマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、エリプチニウムアセテート、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチナート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフール、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イホスファミド、プレドニムスチン、ピシバニール、レバミソール、テニポシド、インプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、ホルメスタン、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-2アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキン・ディフティトックス、インターロイキン-2、および黄体形成ホルモン(luteinizing hormone)放出因子、ならびにその同族受容体に対する異なる結合を示し得、血清半減期を増加または減少させる前述の薬剤のバリエーションが含まれる。
【0115】
がんを治療する際の併用療法の一部として使用され得る追加のクラスの薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、(i)細胞傷害性T-リンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H4、及び(vii)TIM3のうちの1つ以上を阻害する薬剤を含む。CTLA4阻害剤のイピリムマブは、黒色腫に治療に対し、米国食品医薬品局によって承認されている。
【0116】
がんを治療する際の併用療法の一部として使用され得るさらなる他の薬剤は、非チェックポイント標的を標的とするモノクローナル抗体薬剤(例えば、ハーセプチン)及び非細胞毒性薬剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)である。
【0117】
抗癌剤のさらに他のカテゴリーには、例えば、(i)ALK阻害剤、ATR阻害剤、A2Aアンタゴニスト、塩基除去修復阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、ブルトンチロシンキナーゼ阻害剤、CDC7阻害剤、CHK1阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、DNA-PK阻害剤、DNA-PK及びmTORの両方の阻害剤、DNMT1阻害剤、DNMT1阻害剤と2-クロロ-デオキシアデノシン、HDAC阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、IDO阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、MELK阻害剤、MTH1阻害剤、PARP阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、PARP1及びDHODHの両方の阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、及びWEE1阻害剤から選択される阻害剤、(ii)OX40、CD137、CD40、GITR、CD27、HVEM、TNFRSF25、またはICOSのアゴニスト、ならびに(iii)IL-12、IL-15、GM-CSF、及びG-CSFが含まれる。
【0118】
本発明のタンパク質はまた、原発性病変の外科的除去の補助として使用され得る。
【0119】
タンパク質及び追加の治療剤の量ならびに投与の相対的なタイミングが、所望の組み合わされた治療効果を達成するために選択され得る。例えば、そのような投与を必要とする患者に併用療法を投与する場合、組み合わせ中の治療剤、または治療剤を含む薬学的組成物(複数可)は、例えば、連続して、同時に(concurrently)、一緒に、同時に(simultaneously)、任意の順序で投与され得る。さらに、例えば、本明細書に記載されるタンパク質は、追加の治療剤(複数可)がその予防的または治療的効果を発揮する時間の間に投与することができ、またはその逆も可能である。
【0120】
上記の説明は、本発明の複数の態様及び実施形態を説明している。本特許出願は、態様及び実施形態のすべての組み合わせ及び順列を明確に企図する。
【実施例0121】
ここに概して説明される本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、それらは、単に本発明のある特定の態様及び実施形態の例示の目的のために含まれ、本発明を限定することを意図するものではない。
【0122】
実施例1-様々なNKG2D結合ドメインの結合親和性
様々なNKG2D結合ドメインの反応速度及び親和性を、Biacore 8K装置(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴によって評価した。抗ヒトFc抗体は、標準的なアミンカップリング化学を使用してCM5チップ上に固定化した。様々なNKG2D結合ドメインを含むヒトモノクローナル抗体が約100RUの密度で抗ヒトFcチップ上に捕捉された。0.411~100nMの可溶性マウスFc-ヒトNKG2D二量体を含む溶液を、37℃で、30μl/分で捕捉されたNKG2D抗体及び制御表面上に注入した。表面は、10mMのグリシン、pH1.8を迅速に注入することによって、サイクル間で再生された。運動速度定数を得るために、二重参照データを、Biacore 8K Evaluationソフトウェア(GE Healthcare)を用いた1:1の相互作用モデルに適合した。平衡結合定数K
Dは、解離定数k
d及び結合定数k
aの比(k
d/k
a)によって決定された。表9及び
図3に示すように、NKG2Dに対するNKG2D結合ドメインの結合親和性は、10~62nMの範囲内にある。
【表9】
【0123】
実施例2-ADI-27744クローンの結合エピトープビニング
ADI-27744(A44)NKG2D結合ドメインのビニングは、Biacore
8K装置を用いた表面プラズモン共鳴によって、一連の抗体及びULBP6(NKG2D天然リガンド)に対して行われた。簡単に言うと、マウスFc-ヒトNKG2Dは、約100RUの密度でCM5チップ上に固定化された抗マウスFc抗体を使用して捕捉された。これに続いて、25℃で、30μl/分、ADI-27744、ADI-27749、F47(以下に列挙された配列)、または1D11(市販のモノクローナルNKG2D抗体)、ULBP6(以下に列挙された配列)、MS(Novo NordiskからのNKG2D抗体、以下に列挙された配列)、及びMAB139(R&D systemからのNKG2D抗体、クローン149810)を含む、NKG2Dモノクローナル抗体を含む、抗体を連続的に注入した。Biacore 8K評価ソフトウェアを、すべてのデータ分析に対して使用した。
【表10】
【0124】
ULBPアミノ酸配列番号67
RRDDPHSLCYDITVIPKFRPGPRWCAVQGQVDEKTFLHYDCGNKTVTPVSPLGKKLNVTMAWKAQNPVLREVVDILTEQLLDIQLENYTPKEPLTLQARMSCEQKAEGHSSGSWQFSIDGQTFLLFDSEKRMWTTVHPGARKMKEKWENDKDVAMSFHYISMGDCIGWLEDFLMGMDSTLEPSAGAPLAMSSG
【0125】
図4Aは、ADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体が固定化されたNKG2D上に注入され、続いてULBP6が注入されたプロファイルを示す。
図4Bは、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入されたULBP6のプロファイルを示す。これらの結果は、ADI-27744抗原結合部位を含むNKG2Dモノクローナル抗体が、NKG2DへのULBP6の結合を遮断しないことを示す、つまり、ADI-27744は、ULBP6からNKG2Dの異なるエピトープに結合する。
【0126】
図4Cは、MSモノクローナル抗体が、NKG2D上に注入され、続いてULBP6が注入されたというプロファイルを示す。MSモノクローナル抗体は、NKG2Dへの結合からULBP6を遮断する。
図4D~
図4Fは、MS、1D11、またはMAB139が、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入されたというプロファイルを示す。
図4G~
図4Hは、ADI-27744を含むNKG2Dモノクローナル抗体が、固定化されたNKG2D上に注入され、続いてADI-27749またはF47を含むNKG2Dモノクローナル抗体が注入されたというプロファイルを示す。ADI-27744は、NKG2Dへの、MS、1D11、及びMAB139の結合を遮断しない。ADI-27749及びF47は、NKG2DへのADI-27744の結合を遮断しない。これらの結果は、ADI-27744が、MS、1D11、MAB139、ADI-27749、及びF47結合エピトープ(複数可)とは異なる、NKG2D上の固有のエピトープに結合することを示す。
【0127】
実施例3-三重特異性結合タンパク質はNKG2Dに結合する
EL4マウスリンパ腫細胞株は、ヒトNKG2Dを発現するように遺伝子操作された。
図1に示すように、NKG2D結合ドメイン、腫瘍関連抗原結合ドメイン(CD33またはHER2結合ドメインなど)、及びCD16に結合するFcドメインをそれぞれ含む三重特異性結合タンパク質(TriNKET)は、EL4細胞上で発現された細胞外NKG2Dに対するそれらの親和性について試験された。NKG2Dへの多重特異性結合タンパク質の結合は、フルオロフォア結合された抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出された。細胞を、フローサイトメトリーによって分析し、親EL4細胞と比較したNKG2D発現細胞の平均蛍光強度(MFI)を使用して、バックグラウンドに対する倍数(fold-over-background)(FOB)を計算した。
【0128】
試験されたTriNKETには、CD33-TriNKET-A44(ADI-27744及びCD33結合ドメイン)、CD33-TriNKET-A49(ADI-27749及びCD33結合ドメイン)、CD33-TriNKET-F63(ADI-29463及びCD33結合ドメイン)、HER2-TriNKET-A44(ADI-27744及びCD33結合ドメイン)、HER2-TriNKET-A49(ADI-27749及びHER2結合ドメイン)、HER2-TriNKET-F63(ADI-29463及びHER結合ドメイン)、ならびにHER2-TriNKET-E79(ADI-29379及びHER2結合ドメイン)が含まれる。HER2結合ドメインは、トラスツズマブの重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインと、からなる。CD33結合ドメインは、以下に列挙された重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインと、からなる。
配列番号49
【化1】
配列番号50
【化2】
【0129】
すべてのTriNKETは、EL4細胞のNKG2Dに結合するが、親和性は異なる。CD33-TriNKET-A44は、HER2-TriNKET-A44と同じ結合プロファイルを示し、CD33-TriNKET-A49は、HER2-TriNKET-A49と同じ結合プロファイルを示し、CD33-TriNKET-F63は、HER2-TriNKET-F63と同じ結合プロファイルを示す。各クローンに対するNKG2D結合親和性は、ヒト及びマウスNKG2Dを発現する細胞間で類似していた(
図5~6)。
【0130】
実施例4-三重特異性結合タンパク質はヒト腫瘍抗原に結合する
三重特異性結合タンパク質は、CD33に結合する
CD33を発現するヒトAML細胞株MV4-11を使用して、腫瘍関連抗原へのTriNKETの結合をアッセイした。TriNKET及び親CD33モノクローナル抗体を、細胞とインキュベートし、フルオロフォア結合された抗ヒトIgG二次抗体を使用して、結合を検出した。細胞を、フローサイトメトリーによって分析し、二次抗体対照に対して正規化されたTriNKET及び親モノクローナルCD33抗体からの平均蛍光強度(MFI)を使用して、バックグラウンドに対する倍数(FOB)を計算した。
【0131】
CD33-TriNKET-A44、CD33-TriNKET-A49、及びCD33-TriNKET-F63は、親CD33抗体と比較して、CD33に匹敵するレベルの結合を示す(
図7)。
【0132】
三重特異性結合タンパク質は、HER2に結合する
HER2を発現するヒトがん細胞株を使用して、腫瘍関連抗原へのTriNKETの結合をアッセイした。腎細胞がん細胞株786-Oは、低レベルのHER2を発現し、ヒト肺がん細胞株NCI-H661は、中程度のレベルのHER2を発現する。TriNKET及び任意に親HER2モノクローナル抗体(トラスツズマブ)を、細胞とインキュベートし、フルオロフォア結合された抗ヒトIgG二次抗体を使用して、結合を検出した。細胞を、フローサイトメトリーによって分析し、二次抗体対照に対して正規化されたTriNKET及びトラスツズマブからの平均蛍光強度(MFI)を使用して、バックグラウンドに対する倍数(FOB)を計算した。
【0133】
HER2-TriNKET-A44、HER2-TriNKET-A49、及びHER2-TriNKET-F63は、トラスツズマブと比較して、786-O細胞で発現されたHER2に匹敵するレベルの結合を示す(
図8)。HER2-TriNKET-E79によってNCI-H661細胞で発現されたHER2への結合が、示される(
図9)。
【0134】
実施例5-三重特異性結合タンパク質は、NK細胞を活性化する
末梢血単核細胞(PBMC)は、密度勾配遠心分離を使用して、ヒト末梢血バフィーコートから単離された。NK細胞(CD3-CD56+)は、PBMCからの磁気ビーズを用いた陰性選択を使用して単離され、単離されたNK細胞の純度は、通常、90%超であった。単離されたNK細胞は、活性化のために100ng/mLのIL-2を含む培地で培養されたか、またはサイトカインなしで一晩休止した。IL-2で活性化されたNK細胞は、活性化後の24~48時間以内に使用された。
【0135】
腫瘍抗原を発現しているヒトがん細胞を採取し、2×106細胞/mLで培養培地に再懸濁した。腫瘍抗原を標的とするモノクローナル抗体またはTriNKETを、培養培地で希釈した。活性化されたNK細胞を回収、洗浄し、2×106細胞/mLで培養培地に再懸濁した。次いで、がん細胞を、IL-2の存在下で、モノクローナル抗体/TriNKET及び活性化されたNK細胞と混合した。ブレフェルジンA及びモネンシンも、混合培養に加えて、細胞内サイトカイン染色のために細胞外へのタンパク質輸送を遮断した。フルオロフォア結合された抗CD107aを混合培養物に加え、この培養物を4時間インキュベートした後、CD3、CD56、IFN-ガンマに対するフルオロフォア結合された抗体を使用したFACS分析用にサンプルを準備した。CD107a及びIFN-ガンマ染色は、NK細胞の活性化を評価するために、CD3-CD56+細胞で分析された。CD107a/IFN-ガンマの二重陽性細胞の増加は、1つの受容体ではなく2つの活性化受容体が関与することにより、より良好なNK細胞の活性化を示す。
【0136】
TriNKETは、CD107a脱顆粒及びIFN-ガンマ産生の増加によって示されるように、HER2を発現するNCI-H661細胞(
図10)及びSkBr-3細胞(
図11)と共培養されたヒトNK細胞の活性化をそれぞれ媒介する。モノクローナル抗体のトラスツズマブと比較して、TriNKETは、ヒトがん細胞の存在下で、ヒトNK細胞の優れた活性化を示す。
【0137】
TriNKETは、CD107a脱顆粒及びIFN-ガンマ産生の増加によって示されるように、CD33を発現するヒトAML Mv4-11細胞と共培養されたヒトNK細胞の活性化をそれぞれ媒介する(
図12)。モノクローナル抗CD33抗体と比較して、TriNKETは、ヒトがん細胞の存在下で、ヒトNK細胞の優れた活性化を示す。
【0138】
実施例6-三重特異性結合タンパク質は、標的がん細胞の細胞毒性を可能にする
末梢血単核細胞(PBMC)は、密度勾配遠心分離を使用して、ヒト末梢血バフィーコートから単離された。NK細胞(CD3-CD56+)は、PBMCからの磁気ビーズを用いた陰性選択を使用して単離され、単離されたNK細胞の純度は、通常、90%超であった。単離されたNK細胞は、活性化のために100ng/mLのIL-2を含む培地で培養されたか、またはサイトカインなしで一晩休止した。IL-2で活性化されたまたは休止したNK細胞を、細胞毒性アッセイで翌日に使用した。
【0139】
TriNKETの存在下で、ヒトNK細胞ががん細胞を溶解する能力を試験するために、Promega(G1780)のcytoTox 96非放射性細胞毒性アッセイを、製造業者の指示に従って使用した。簡潔に言えば、腫瘍抗原を発現するヒトがん細胞を採取し、1-2×105細胞/mLで培養培地に再懸濁した。休止した及び/または活性化されたNK細胞を採取し、洗浄し、105-2.0×106細胞/mLでがん細胞の培養培地と同じ培養培地に再懸濁した。96ウェルプレートの各ウェルで、50μlのがん細胞懸濁液を、がん細胞で発現した腫瘍抗原を標的とするTriNKETを用いてまたは用いずに、50μlのNK細胞懸濁液と混合した。37℃で、5% CO2で、3時間15分インキュベーションした後、10倍の溶解緩衝液を、がん細胞のみを含むウェル、最大溶解用の培地のみを含むウェル、及び陰性試薬対照にそれぞれ添加した。次いで、プレートを、さらに45分間インキュベーターに戻し、合計4時間のインキュベーションに到達した。次いで、細胞をペレット化し、培養上清を、新しい96ウェルプレートに移し、基質と混合して開発した。新しいプレートを、室温で30分間インキュベートし、SpectraMax i3xで492nmの吸光度を読み取った。がん細胞の特異的溶解の割合は、以下のように計算された:特異的溶解(%)=((実験的溶解-NK細胞のみからの自然溶解-がん細胞のみからの自然溶解)/(最大溶解-陰性試薬対照))*100%
【0140】
TriNKETは、CD33陽性Molm-13ヒトAML細胞株に対するヒトNK細胞の細胞毒性を媒介する。
図13に示すように、休止したヒトNK細胞を、Molm-13がん細胞と混合し、TriNKETは、休止したヒトNK細胞の細胞毒性活性を、がん細胞に対する用量応答性マナー(manor)で増強することができる。点線は、TriNKETを用いずに、休止したNK細胞の細胞毒性活性を示す。
図14に示すように、休止したヒトNK細胞を、Molm-13がん細胞と混合し、TriNKETは、活性化されたヒトNK細胞の細胞毒性活性を、がん細胞に対する用量応答性マナー(manor)でさらに増強する。
【0141】
TriNKETは、HER2陽性786-Oヒト腎細胞がん細胞株に対するヒトNK細胞の細胞毒性を媒介する。
図15に示すように、休止したヒトNK細胞を、786-Oがん細胞と混合し、TriNKETは、休止したヒトNK細胞の細胞毒性活性を、がん細胞に対する用量応答性マナー(manor)で増強することができる(各TriNKETを、アッセイにおいて5、1、0.2μg/mlで添加し、これらの結果を、
図15~16中の各TriNKETにおいて左から右への3つの列に表す)。点線は、TriNKETの不存在下で、786-O細胞に対する休止したNK細胞の細胞毒性活性を示す。
図16に示すように、活性化されたヒトNK細胞を、786-O細胞と混合され、TriNKETは、活性化されたヒトNK細胞の細胞毒性活性を、がん細胞に対する用量応答性マナーでさらに増強する。点線は、TriNKETの不存在下で、786-O細胞に対する活性化されたNK細胞の細胞毒性活性を示す。
【0142】
実施例7-ADI-27749のバリアント及びバリアントを含むTriNKET
上記のように、ADI-27749(A49)は、とりわけ、GAPMGAAAGWFDP(配列番号71)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む。配列番号7の102位の(すなわち、このCDR3配列の4位の)Metは、Gln、Leu、Ile、Phe、またはValによって置き換えられ、それにより、表1に提供される対応する重鎖可変領域、軽鎖可変領域、及びCDR配列を有する、NKG2D抗体A49MQ、A49ML、A49MI、A49MF、及びA49MVがそれぞれ生成され得る。
【0143】
これらの変異が疎水性に及ぼす影響は、avg_pro_patch_cdr_hydのパラメータ設定を使用したMOE2018.01プログラムを使用して分析された。タンパク質ビルダーモジュールを使用して、残基を変異させ、すべての残基をつなぎ合わせた後、Fab全体を最小限に抑えた。動的特定サンプリングは、BIOMOEのlowMDプロトコルを使用して実行された。表11に示すように、これらの変異は、A49 Fabの予測される疎水性に実質的な悪影響を与えなかった。
【表11】
【0144】
A49を含むTriNKET(「TriNKET A」)、及びMetのためにIle、Leu、Val、Gln、またはPheの置換を有する変異形態のTriNKET A(「TriNKET A*」)の疎水性は、分析疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって試験された。TriNKETのそれぞれを、第1の腫瘍抗原にも結合した。表12に示すように、TriNKET A*の保持時間は、TriNKET Aの保持時間と同様であった。
【表12】
【0145】
TriNKET A及びTriNKET A*の熱安定性は、20mMのヒスチジン、260mMのスクロース、及び0.005%PS-80の示差走査熱量分析(DSC)によってpH6.0で検査された。T
mの値を、表13に示し、T
mは、個々のドメインの中点遷移温度である。M102突然変異は、2つの最も安定した遷移(T
m3及びT
m4)のT
m値に、TriNKET Aと比較して、それらを0.6及び0.7℃低くシフトすることによって小さな影響を及ぼした。以前の遷移(T
m1及びT
m2)は影響を受けなかった。したがって、M102変異は、TriNKET Aの全体的な熱安定性にわずかな影響しか与えなかった。
【表13】
【0146】
ヒトNKG2D及びマウスFcの融合タンパク質へのTriNKET A及びTriNKET A*の結合(「mFc-hNKG2D」)は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって特徴付けられた。平衡親和性データを得るために、定常状態親和性適合及び速度論適合の2つの異なる適合を使用した(
図32)。速度定数及び平衡親和定数が計算され、TriNKET A*に対して2つの独立した実験からのデータ、及びTriNKET Aに対して3つの独立した実験からのデータを、平均化した。
【表14】
【0147】
表14に示すように、親和性適合及び速度論適合の両方から得られた平衡親和性定数(KD)は、複製間で非常に類似しており、測定されたパラメータにおいて高い信頼性があることを示唆している。M102バリアントは、TriNKET Aと比較して、ヒトNKG2Dに対する親和性が2分の1未満である。TriNKET A*のKDは、(6.87±0.16)×10-7Mであったが、TriNKET AのKDは、(4.87±0.83)×10-7M(親和性適合から計算)であった。KDが速度論適合から計算されたとき、親和性における類似した違いが観察された。TriNKET A*に結合するNKG2Dの化学量論は、0.85±0.12であり、TriNKET Aに対する1.01±0.11と同様であり、各NKG2D二量体がTriNKET A*の1つの分子に結合することを確認した。これは、M102変異が、ヒトNKG2DへのA49を含有するTriNKETの結合にわずかな影響しか与えなかったことを示唆している。
【0148】
最後に、M102変異がTriNKETの効力に及ぼす影響を、細胞毒性アッセイで評価した。簡潔に言えば、CD16a(158V)の高親和性バリアントを発現するKHYG-1細胞は、レトロウイルスの形質導入によって生成された。形質導入後、ピューロマイシンを含有する増殖培地で細胞を選択して、KHYG-1-CD16V細胞の選択した集団を生成した。選択された集団は、10ng/mLのヒトIL-2を含む培地で維持された。細胞毒性アッセイでエフェクターとして使用するためのKHYG-1-CD16V細胞を調製するために、細胞を、培養物から採取し、ペレット化し、IL-2を含まない培養培地中で3回洗浄し、IL-2を含まない培養物に再懸濁し、24時間休止した。
【0149】
対象となる標的を発現するヒトがん細胞株を、培養物から採取した。細胞を、HBSで洗浄し、BATDA試薬(Perkin Elmer C136-100)で標識するために、106細胞/mLで増殖培地に再懸濁した。標的細胞の標識については製造業者の指示に従った。標識後、細胞を、HBSで3回洗浄し、培養培地中で0.5×105細胞/mLで再懸濁した。100μlのBATDA標識細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。
【0150】
TriNKETを、培養培地中で段階的に希釈し、50μlの希釈したTriNKETを、各ウェルに添加した。休止したNK細胞を、培養物から採取し、洗浄し、培養培地中で1.0×106細胞/mLで再懸濁した。50μlのNK細胞を、プレートの各ウェルに添加して、10:1の望ましいE:Tの比を得、各ウェルで合計200μlの培養物を作製した。プレートを、37℃で、5% CO2で2~3時間インキュベートした。
【0151】
培養後、プレートをインキュベーターから取り出し、200×gで5分間遠心分離することによって、細胞をペレット化した。20μlの培養上清を、製造業者から提供された無菌のマイクロプレートに移した。NK細胞を用いないで単独でインキュベートした標識細胞の上清を使用して、TDAの自然放出を測定した。1% Triton-Xでインキュベートした標識細胞からの上清を使用して、標的細胞の最大溶解を測定した。2~3時間のインキュベーション前の標識細胞からの上清を使用して、バックグラウンドを測定し、品質管理を目的とした。
【0152】
200μlの室温ユーロピウム溶液(Perkin Elmer C135-100)を、培養上清を含む各ウェルに添加した。プレートを光から保護し、プレートシェーカーで、250rpmで15分間インキュベートした。SpectraMax i3X機器を使用して蛍光を測定した。蛍光レベルは、標的細胞の溶解を表した。特異的溶解(%)の値は次のように計算された:特異的溶解(%)=((実験的放出-自然放出)/(最大放出-自然放出))×100%。
【0153】
TriNKET A及びTriNKET A*の活性を測定するために、第1の腫瘍抗原を発現する細胞株を、標的細胞として選択した。TriNKET Aの2つの異なるロットを、比較のために使用した。特異的溶解(%)の値は、
図33にプロットし、EC50及び特異的溶解の最大の割合(%)を、表15に要約した。TriNKET A*のEC50及び特異的溶解の最大の割合(%)は、TriNKET Aのものと同様であり、これにより、M102変異がTriNKET Aの生物学的活性に影響を与えなかったことを示唆した。
【表15】
【0154】
TriNKET活性におけるM102変異の影響の欠如が、腫瘍抗原特異的ではなかったことを確認するために、第2の異なる腫瘍抗原に結合する、TriNKET A及びTriNKET A*を構築した。2つのTriNKETの活性を、標的細胞として第2の腫瘍抗原を発現する細胞株、及びエフェクター細胞としてKHYG-1-CD16V細胞を用いた細胞毒性アッセイで比較した。
図34に示すように、TriNKET A*は、TriNKET Aと同等の活性を示した。
【0155】
参照による組み込み
本明細書において参照される特許文献及び科学論文の各々のすべての開示は、あらゆる目的のために参照により援用される。
【0156】
等価物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される本発明を限定するものではなく、あらゆる点において例示的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の記載によってではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び等価の範囲内に入るすべての変更は、それに含まれることが意図される。