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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003241
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20241226BHJP
   G01R 15/18 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01R15/20 A
G01R15/20 B
G01R15/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023113337
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】595176098
【氏名又は名称】甲神電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅尚
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA02
2G025AB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被検出電流から発生する磁束を検出する電流センサにおいて、被検出電流が印加される導体をコイル状に形成して磁電変換素子が検出する磁束密度を大幅に増加させ、出力信号の増幅率を低減可能とする。
【解決手段】U字形状により空隙2Aを有する磁性体コア1Aと、空隙2Bを有する磁性体コア1Bの端面が対面して配置されることで、その端面間にコアギャップ5を形成し、被検出電流A1が印加される導体3で形成されるコイル部6A、6Bは、空隙2A、2Bを少なくとも1回以上貫通して配置され、1対の磁電変換素子が実装された基材を有する磁気センサ4は、1対の磁電変換素子がコアギャップのX方向の幅寸法と、磁性体コア1A、1BのY方向の厚み寸法と、磁性体コア1A、1BのZ方向の幅寸法内にあり、またZ方向に磁性体コア1A、1Bの端面間寸法の仮想的な中心線を挟んで対向して離間するように配置する。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出電流が印加される導体と、2つの端面をそれぞれ有する略U字型形状の第1及び第2の磁性体コアと、前記被検出電流から発生する磁束の所定の感磁軸方向の磁束密度をそれぞれ検出して前記磁束密度に応じた出力信号を出力する1対の磁電変換素子が実装される基材を有する磁気センサ、を備える電流センサであって、前記第1の磁性体コアは、前記略U字形状により形成される第1の空隙部と、前記2つの端面間寸法の仮想的な中心線である第1の中心線を有し、前記第2の磁性体コアは、前記略U字形状により形成される第2の空隙部と、前記2つの端面間寸法の仮想的な中心線である第2の中心線を有し、前記第1及び第2の磁性体コアは、前記2つの端面同士がそれぞれ対面する姿勢で配置され、対面する前記2つの端面同士の間には、それぞれコアギャップが形成されており、前記1対の磁電変換素子は前記基材に離間して実装され、その相対位置が固定されており、前記磁気センサは、前記1対の磁電変換素子が前記第1の中心線を挟んで対向する姿勢、尚かつ前記第2の中心線を挟んで対向する姿勢となるように配置されており、前記導体は、前記第1及び第2の空隙部をそれぞれ1回以上貫通し、尚かつ前記第1及び第2の空隙部を貫通する導体部における電流印加方向がすべて同一の方向となるように配置されることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
被検出電流が印加される導体と、2つの端面をそれぞれ有する略U字型形状の第1及び第2の磁性体コアと、前記被検出電流から発生する磁束の所定の感磁軸方向の磁束密度をそれぞれ検出して前記磁束密度に応じた出力信号を出力する1対の磁電変換素子が実装される基材を有する磁気センサ、を備える電流センサであって、前記第1の磁性体コアは、前記略U字形状により形成される第1の空隙部と、前記2つの端面間寸法の仮想的な中心線である第1の中心線を有し、前記第2の磁性体コアは、前記略U字形状により形成される第2の空隙部と、前記2つの端面間寸法の仮想的な中心線である第2の中心線を有し、前記第1及び第2の磁性体コアは、前記2つの端面同士がそれぞれ対面する姿勢で配置され、対面する前記2つの端面同士の間には、それぞれコアギャップが形成されており、前記1対の磁電変換素子は前記基材に離間して実装され、その相対位置が固定されており、前記磁気センサは、前記1対の磁電変換素子が前記第1の中心線を挟んで前記端面間寸法の延伸方向に対向する姿勢、尚かつ前記第2の中心線を挟んで前記端面間寸法の延伸方向に対向する姿勢となるように配置されており、前記導体は、前記第1の空隙部を1回以上貫通し、尚かつ前記第1の空隙部を貫通する導体部における電流印加方向がすべて同一の方向となるように配置されることを特徴とする電流センサ。
【請求項3】
前記磁気センサは、前記1対の磁電変換素子が前記第1及び第2の磁性体コアの前記端面間寸法及び厚み方向の寸法と、前記コアギャップの幅方向の寸法とで区切られた配置領域内に配置され、前記コアギャップの幅方向と水平な方向に前記感磁軸を有するように配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記磁気センサは、前記1対の磁電変換素子が前記コアギャップ内に配置され、前記コアギャップの幅方向と水平な方向に前記感磁軸を有するように配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記導体が導通した複数の導電体を組み合わせて構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記コアギャップの幅方向の寸法は、前記端面間寸法よりも小さい寸法値を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1及び第2の磁性体コアの厚み方向寸法は、3.0mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁電変換素子を用いた電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインバータなどで使用される電流センサにおいて、被検出電流が印加される導体をコイル形状に形成し、そのコイル形状部を流れる被検出電流から生じる磁束をホール素子などの磁電変換素子を用いて検出することで、被検出電流を正確に検出するコイル式電流センサが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、被検出電流が印加される導体を用いて2つのコイル形状を形成し、2つのコイルの中間にホール素子を配置することで、ホール素子の取付位置精度にばらつきがあっても検出感度があまり影響されないコイル式電流センサが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-221342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において示されたコイル式電流センサは、磁電変換素子は被検出電流が印加されることにより生じる磁束を導体から直接検出するため、磁電変換素子が検出できる磁束密度量は非常に小さく、磁電変換素子が検出した磁束密度量に応じて出力される出力信号も併せて小さくなることから出力信号の増幅率を高くする必要がある。
【0006】
特に被検出電流が低い電流値である場合は、その磁束密度量がさらに小さくなることから、その増幅率は非常に高く設定されることとなるが、出力信号の増幅率を高くすると、微量の磁束密度量の変化でも大きく影響を受けてしまうため、電流センサの外部磁界環境下において微量の磁束密度量を検出すると、その影響は大きくなってしまう。
【0007】
本発明では上記問題を鑑み、磁電変換素子が検出する磁束密度を増加させ、磁電変換素子が検出した磁束密度量に応じて出力される出力信号の増幅率を下げることが可能な電流センサ構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における電流センサは、被検出電流が印加される導体と、2つの端面をそれぞれ有する略U字型形状の第1及び第2の磁性体コアと、被検出電流から発生する磁束の所定の感磁軸方向の磁束密度をそれぞれ検出して磁束密度に応じた出力信号を出力する1対の磁電変換素子が実装される基材を有する磁気センサ、を備える電流センサであって、第1の磁性体コアは、略U字形状により形成される第1の空隙部と、前記2つの端面間寸法の仮想的な中心線である第1の中心線を有し、第2の磁性体コアは、略U字形状により形成される第2の空隙部と、2つの端面間寸法の仮想的な中心線である第2の中心線を有し、第1及び第2の磁性体コアは、2つの端面同士がそれぞれ対面する姿勢で配置され、対面する2つの端面同士の間には、それぞれコアギャップが形成されており、1対の磁電変換素子は基材に離間して実装され、その相対位置が固定されており、磁気センサは、1対の磁電変換素子が第1の中心線を挟んで対向する姿勢、尚かつ第2の中心線を挟んで対向する姿勢となるように配置されており、導体は、第1及び第2の空隙部をそれぞれ1回以上貫通し、尚かつ第1及び第2の空隙部を貫通する導体部における電流印加方向がすべて同一の方向となるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁電変換素子が検出する磁束密度を増加させ、磁電変換素子が検出した磁束密度量に応じて出力される出力信号の増幅率を下げることが可能な電流センサを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に関わる電流センサの概略図であり、図1(a)は電流センサの斜視図で、図1(b)は電流センサの平面視図で、図1(c)は電流センサの正面視図で、図1(d)は断面図である。
図2図1に示した電流センサの導体を変えた構成例を示す図であり、図2(a)、(b)、(c)は図1に示した電流センサの導体を変えた構成例を示す平面視図で、図2(d)は図1に示した電流センサの導体を変えた構成例を示す斜視図である。
図3図1に示した電流センサの磁性体コアを変えた構成例を示す平面視図である。
図4】本発明の実施の形態1に関わる電流センサに被検出電流を印加した場合の磁束経路を示す概略図である。
図5】本発明の実施の形態1に関わる電流センサの導体、磁電変換素子の配置変化の構成例を示す図である。
図6図5に示した構成例(a)、(b)、(c)、(d)において、被検出電流を印加した場合の、磁電変換素子が検出する磁束密度量と、その差動演算値を示す表である。
図7】本発明の実施の形態2に関わる電流センサの概略図であり、図7(a)は電流センサの斜視図で、図7(b)は電流センサの平面視図で、図7(c)は電流センサの正面視図で、図7(d)は断面図である。
図8図1に示した電流センサの導体を変えた構成例を示す図であり、図8(a)は電流センサの斜視図で、図8(b)は電流センサの平面視図である。
【発明を実施するための形態】
実施の形態1.
【0011】
図1は、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の概略図であり、図1(a)は実施の形態1に関わる電流センサ100の斜視図で、図1(b)は実施の形態1に関わる電流センサ100の平面視図で、図1(c)は実施の形態1に関わる電流センサ100の正面視図で、図1(d)は図1(c)における断面B-Bの断面図である。また本発明では特に説明しない場合、コアギャップの幅方向をX方向、コア厚み方向をY方向、X方向とY方向に垂直な方向をZ方向とし、図示矢印の方向を+(正)方向とし、実施の形態1については、各方向を同様に定義する。
【0012】
図1において、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、延在する先端に端面1a1を有する腕部1A1と、延在する先端に端面1a2を有する腕部1A2と、Y方向に厚み寸法T1と、Z方向に幅寸法W1と、Z方向に端面間の距離寸法である寸法W2と、寸法W2の仮想的な中心線である中心線CL1と、腕部1A1、1A2によりU字形状が形成されることで、その中央に形成される中空部に空隙2Aを有する磁性体コア1Aと、磁性体コア1Aと同形状であり、延在する先端に端面1b1を有する腕部1B1と、延在する先端に端面1b2を有する腕部1B2と、Z方向の端面間の距離寸法(磁性体コア1Aの寸法W2に相当する寸法)の仮想的な中心線である中心線CL2と、腕部1B1、1B2によりU字形状が形成されることで、その中央に形成される中空部に空隙2Bを有する、磁性体コア1Bと、電流印加面31から被検出電流A1が印加され、断面形状が円形状を有する導体3と、磁束を検出する検出素子である磁電変換素子M1と磁電変換素子M2が実装された基材4Bおよび磁電変換素子M1、M2が検出した磁束密度量に応じて、出力される出力信号を電流センサ100の外部に出力する端子であるリード4Lを有する磁気センサ4を有し、磁性体コア1A、1Bは、端面1a1と端面1b1が対面する姿勢、かつ端面1a2、1b2が対面する姿勢で配置され、それぞれ対面する端面間に形成され、X方向の幅寸法が寸法W3であるコアギャップ5が形成され、導体3は、空隙2AをY+方向からY-方向に3回貫通するように、腕部1A1の周囲を取り囲んでコイル部6Aを形成し、コイル部6Aは接続部7を経由した後に空隙2BをY+方向からY-方向に3回貫通するように、腕部1B2の周囲を取り囲んでコイル部6Bを形成するように配置され、磁気センサ4は、磁電変換素子M1、M2がX方向においてコアギャップ5のX方向の幅寸法である寸法W3の範囲と、Y方向において磁性体コア1A、1Bの厚み寸法である寸法T1の範囲と、Z方向において磁性体コア1A、1Bの幅寸法である寸法W1の範囲に重複する範囲にあり、またZ方向に中心線CL1を挟んで対向して離間し、尚且つZ方向に中心線CL2を挟んで対向して離間し、その感磁軸がX方向となる姿勢で配置され、導体3の電流印加面31から印加された被検出電流A1は、導体3が単一の材料で形成された導通した導体であることから、コイル部6A、接続部7、コイル部6Bの順に電流が流れ、空隙2Aを貫通する導体部である導体部3aと導体部3bと導体部3cに流れる図示しない電流はY-方向に流れ、空隙2Bを貫通する導体部である導体部3dと導体部3eと導体部3fに流れる図示しない電流はY-方向に流れることから、空隙部2A、2Bを貫通する導電部3a、3b、3c、3d、3e、3fを流れる電流方向がすべて同じ方向となるように構成される。
【0013】
また本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、図示しない樹脂筐体と、図示しないコネクタが実装された図示しないプリント基板を有し、プリント基板、磁性体コア1A、1B、導体3は樹脂筐体に固定されており、磁気センサ4はプリント基板にリード4Lを介して接続されている。
【0014】
磁気センサ4は、図示しないリード4Lの一部と、磁電変換素子M1、M2が実装された基材4Bを熱硬化性樹脂で内部に封止されたICなどの磁気検出装置であり、リード4Lと基材4Bは磁気センサ4の内部で図示しないダイボンドなどで接続されている。
【0015】
基材4Bは矩形形状の半導体チップであり、磁電変換素子M1、M2はそれぞれ離間して基材4Bに実装され、磁電変換素子M1、M2の相対位置を固定している。本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100では、基材4BはYZ平面上に平行な平面を有し、その平面上に磁電変換素子M1、M2がそれぞれZ方向に離間して実装されている。
【0016】
また基材4Bは図示しない検出手段を有しており、磁電変換素子M1、M2が検出した磁束密度量に応じてそれぞれ出力する出力信号を増幅し、増幅された2つの出力信号を差動演算して、その差動演算値を出力する図示しない差動演算部を有し、その差動演算値は磁気センサ4のリード4Lと、プリント基板と、コネクタを介して電流センサ100の外部に出力される。
【0017】
磁性体コア1A、1Bは磁性材料のケイ素鋼板、フェライト、パーマロイなどで単一もしくは複数の磁性材料で形成された積層コアや巻コア、鋳造コアであり、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100では、単一の磁性体で形成された同形状(U字断面積形状)で、端面1a1と端面1b1が対面する姿勢、かつ端面1a2、1b2が対面する姿勢で配置されている。
【0018】
導体3は断面形状に円形状を有し、非磁性材料の銅材もしくはアルミ材等の単一もしくは複数の導体を組み合わせて構成された導通した導体であり、コイル部6A、6Bはそれぞれ一定のピッチで腕部1A1、1B2の周囲を取り囲んで配置されている。
【0019】
磁電変換素子M1、M2は、ホール効果素子や磁気抵抗効果素子などであり、磁束を検出し出力を行うことができる検出素子であればその種類を問わない。また本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100では、2つの磁電変換素子(磁電変換素子M1、M2)を有する磁気センサ4を用いていることで、1つの磁電変換素子を有する磁気センサを2つ用いるよりも部品点数を削減効果があり、コストメリットがある。
【0020】
図2、3は別の形状の導体、磁性体コアを示すものであり、図2(a)(b)(c)は図1に示した電流センサ100の導体3を変化させた構成例を図1(b)に相当する図で示すもので、図2(d)は図1に示した電流センサ100の導体3を変化させた構成例を図1(a)に相当する図で示すもので、図3(a)(b)は図1に示した電流センサ100の磁性体コア1A、1Bを変化させた構成例を、図1(b)に相当する図で示すものである。
【0021】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、被検出電流が印加される導体3は、磁性体コア1Aの空隙2Aを貫通する導体部は導体部3a、3b、3cの3つで、磁性体コア1Bの空隙2Bを貫通する導体部は導体部3d、3e、3fの3つで、空隙2A、2Bを貫通する導体部の数は等しく構成されているが、空隙2A、2Bを貫通する導体部に流れる電流方向がすべて同じであればその限りではなく、図2(a)に示すように、導体3Aのコイル部6Cが空隙2Aを3回貫通した後、接続部7Aを経由した後に、コイル部6Dが空隙2Bを2回貫通するように構成されてもよく、空隙2A、2Bを貫通する導体部の数は1回以上であれば、同一でなくともよく、またその貫通する回数は問わない。
【0022】
空隙2A、2Bを導体が貫通する回数が多ければ多いほど、被検出電流を印加した際、検出素子の検出する磁束密度量が増加するため、例えば被検出電流を印加する導体の表面に絶縁処理を施して、導体同士が接触するように配置し、極力貫通回数を多くすることで、磁電変換素子が検出する磁束密度量を増加させ、磁電変換素子の出力する出力信号を大きくすることで、出力信号の増幅率を下げることが可能となる。
【0023】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、被検出電流が印加される導体3は、導体部3a、3b、3cが磁性体コア1Aの空隙2Aを貫通する際、コイル部6Aが腕部1A1の周囲を取り囲み、導体部3d、3e、3fが磁性体コア1Bの空隙2Bを貫通する際、コイル部6Bが腕部1B2の周囲を取り囲むように構成されているが、空隙2A、2Bを貫通する導体部に流れる電流方向がすべて同じであればその限りではなく、図2(b)に示すように、導体3Bのコイル部6Eが腕部1A1の周囲を取り囲むように配置され、接続部7Bを経由した後に、コイル部6Fが腕部1B1の周囲を取り囲むように構成されてもよく、また図2(c)に示すように、導体3Cのコイル部6Gが腕部1A1の周囲を取り囲むように配置され、接続部7Cを経由した後に、コイル部6Hが腕部1B1の周囲を取り囲むように配置され、接続部7Dを経由した後に、コイル部6Jが腕部1B2の周囲を取り囲むように配置され、接続部7Eを経由した後に、コイル部6Kが腕部1A2の周囲を取り囲むように構成されてもよく、それぞれの腕部を取り囲む箇所の数は問わない。
【0024】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、被検出電流が印加される導体3は断面形状に円形状を有し、導体部3a、3b、3cが磁性体コア1Aの空隙2Aを貫通する際、コイル部6Aが腕部1A1の周囲を取り囲み、導体部3d、3e、3fが磁性体コア1Bの空隙2Bを貫通する際、コイル部6Bが腕部1B2の周囲を取り囲むように構成されているが、空隙2A、2Bを貫通する導体部に流れる電流方向がすべて同じであればその限りではなく、図2(d)に示すように、導体が1回以上空隙2A、2Bを貫通すれば、導体3Dのように断面形状が矩形形状でもよい。
【0025】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、単一の磁性体で形成されたU字断面形状の同一形状の磁性体コアを2つ対面配置したが、その限りではなく、図3(a)に示すように、磁性体1Cと磁性体1Dで磁性体1Aaを形成するように複数の磁性体で形成されたU字形状の磁性体コアでも良い。また図3(b)に示すように、磁性体コア1Aと磁性体コア1Bは同形状でなくともよく、例えば磁性体コア1BはX方向に長い磁性体コア1Baでもよい。加えて、磁性体コアの形状は導体3の空隙2A、2Bを貫通する導体部に流れる電流方向が全て同じであれば、略U字形状を有していれば凸部や凹部等を有していてもよい。
【0026】
図2、3に示した導体と磁性体コアの構成は、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100における形状例であり、本発明の構成を限定する物ではない。
【0027】
前記のように構成された本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100において、導体3に被検出電流A1を電流印加面31から印加した場合の、電流から生じる磁束について説明する。図4は電流センサ100において、検出電流A1を電流印加面31から被検出電流A1を印加した場合の磁束経路を図1(d)B-B断面図に相当する図で示す概略図で、被検出電流A1を印加した際に磁性体コア1A、1Bとコアギャップ5を通過する磁束経路を示すものである。
【0028】
電流センサ100において、導体3に被検出電流A1を電流印加面31から印加した際、導体3は単一の材料で形成された導通した導体であることから、コイル部6A、接続部7、コイル部6Bの順に電流が流れる。この時、空隙2Aを貫通する導体部である導体部3a、3b、3cに流れる図示しない電流はY-方向に流れ、空隙2Bを貫通する導体部である導体部3e、3f、3gに流れる図示しない電流はY-方向に流れることから、空隙部2A、2Bを貫通する導電部3a、3b、3c、3d、3e、3fを流れる電流印加方向がすべて同じ方向であり、導電部3a、3b、3c、3d、3e、3fに流れる電流から生じた磁束は、磁性体コア1A、1Bに集磁され、集磁された磁束の大部分は磁束経路8のように磁性体コア1A、1B内を図示矢印方向に通過する。その際、コアギャップ5の磁束の経路は磁束8Aのような磁束経路を形成する。
【0029】
磁電変換素子M1、M2は磁束8Aを主に検出しており、検出した磁束密度量に応じて磁電変換素子M1、M2から出力された出力信号は増幅され、基材4Bの有する図示しない差動演算部で差動演算された後に、図示しないコネクタを介して外部に出力される。
【0030】
磁電変換素子M1、M2が検出する磁束8Aは、導体3に流れる被検出電流A1から生じた大部分の磁束を磁性体コア1A、1Bが集磁していることから、その磁束密度量は非常に大きく、従来技術で示されたコイル式電流センサのような導体から生じる磁束を直接検出する構成と比較すると、磁電変換素子M1、M2は非常に大きな磁束密度量を検出することが可能である。
【0031】
また図4において図示上側の磁束8AはX+方向であり、図示下側の磁束8Aは逆のX-方向であり、磁電変換素子M1、M2の感磁軸はX方向で、中心線CL1と中心線CL2を挟んで対向する姿勢でZ方向に離間して配置され、感磁極性はX+方向が+となる姿勢で配置されていることから、中心線CL1、CL2を境に図示上側と図示下側の磁束8Aの正負が逆転するため、磁電変換素子M1が検出するX方向の磁束密度量は正の値であり、磁電変換素子M2が検出するX方向の磁束密度量は負の値であり、磁電変換素子M1、M2の出力を差動演算すると、両者が加算されて出力される。従来技術と比較すると磁電変換素子M1、M2の検出する磁束密度量が大きいことから、出力信号の増幅率を下げることが可能であり、電流センサの外部磁界環境下において、磁電変換素子M1、M2が外部磁界による磁束を検出し、微小の出力信号が生じたとしてもその影響を受けにくくすることが可能である。
【0032】
また磁性体コア1A、1Bのコアギャップ5のX方向の幅寸法である寸法W3をZ方向の端面間の距離寸法である寸法W2よりも小さくすることで、磁電変換素子M1、M2の検出する磁束8Aの磁束密度量を大きくすることが可能である。寸法W2を寸法W3よりも小さくすると、コアギャップ5の磁気抵抗が小さくなるため、磁束経路8を形成していなかった磁束成分(図示しない磁性体コア1Aの端面1a1、1a2間と、磁性体コア1Aの端面1b1、1b2間に形成される磁束経路の磁束成分)が、磁束経路8に加わることで、磁束8Aがより大きくなる。これにより、磁電変換素子M1、M2の検出する磁束密度量を増加させることができる。よって、好適には寸法W3は寸法W2よりも小さな寸法値で形成することが望ましい。
【0033】
また電流センサ100の外側に磁束発生源を持つ外部磁界は近接する磁電変換素子M1、M2にとって同方同極性の磁束が主であり、磁電変換素子M1と磁電変換素子M2の出力を差動演算することで、両者は相殺され差動演算出力は小さくなる。また磁性体コア1A、1Bがシールドとなって、その出力は極めて小さくなり外部磁界の影響を抑制できるため、従来技術で示されたコイル式電流センサよりも外部磁界の影響をより受けにくい構成となっている。
【0034】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の検出する磁束密度量について、シミュレーションを用いて説明を行う。図5は本実施形態に関わる導体3と磁電変換素子M1、M2の配置の構成例を図1(d)B-B断面図に相当する図で示すもので、図5(a)は構成例(a)を示す図で、導体3が空隙2AをY+方向からY-方向に、3回貫通するように、腕部1A1の周囲を取り囲んでコイル部6Aを形成しており、空隙2Aを貫通する導体部において導体部3aと導体部3bと導体部3cを有し、コイル部6Aは接続部7を経由した後に空隙2BをY+方向からY-方向に3回貫通するように、腕部1B2の周囲を取り囲んでコイル部6Bを形成し、空隙2Bを貫通する導体部において導体部3dと導体部3eと導体部3fを有し、磁気センサ4は、磁電変換素子M1、M2が領域R(領域Rについては後述する。)内にあるように配置され、磁電変換素子M1、M2がZ方向に中心線CL1を挟んで対向して離間し、尚且つZ方向に中心線CL2を挟んで対向する姿勢で離間しており、磁電変換素子M1、M2はその感磁軸はX方向であるように配置された構成例であり、図5(b)は構成例(b)を示す図で、導体3Eが空隙2AをY+方向からY-方向に、2回貫通するように、腕部1A1の周囲を取り囲んでコイル部6Lを形成しており、空隙2Aを貫通する導体部において導体部3gと導体部3hを有し、コイル部6Lは接続部7Fを経由した後に空隙2BをY+方向からY-方向に2回貫通するように、腕部1B2の周囲を取り囲んでコイル部6Mを形成しており、空隙2Bを貫通する導体部において導体部3jと導体部3kを有し、磁気センサ4は、磁電変換素子M1、M2が領域R内にあるように配置され、磁電変換素子M1、M2がZ方向に中心線CL1を挟んで対向して離間し、尚且つZ方向に中心線CL2を挟んで対向する姿勢で離間しており、磁電変換素子M1、M2はその感磁軸はX方向であるように配置された構成例であり、図5(c)は構成例(c)を示す図で、導体3Fが空隙2AをY+方向からY-方向に、1回貫通するように、腕部1A1の周囲を取り囲んでコイル部6Nを形成しており、空隙2Aを貫通する導体部において導体部3mを有し、コイル部6Nは接続部7Gを経由した後に空隙2BをY+方向からY-方向に1回貫通するように、腕部1B2の周囲を取り囲んでコイル部6Pを形成しており、空隙2Bを貫通する導体部において導体部3nを有し、磁気センサ4は、磁電変換素子M1、M2が領域R内にあるように配置され、磁電変換素子M1、M2がZ方向に中心線CL1を挟んで対向して離間し、尚且つZ方向に中心線CL2を挟んで対向する姿勢で離間しており、磁電変換素子M1、M2はその感磁軸はX方向であるように配置された構成例であり、図5(d)は構成例(d)を示す図で、磁性体コア1A、1Bと導体3の構成は構成例(a)と同じ構成で、磁気センサ4Aの磁電変換素子M1と磁電変換素子M2の配置が、それぞれコアギャップ5内にあるように配置され、磁電変換素子M1、M2がZ方向に中心線CL1を挟んで対向して離間し、尚且つZ方向に中心線CL2を挟んで対向する姿勢で離間しており、磁電変換素子M1、M2はその感磁軸はX方向であるように配置された構成例であり、
また領域Rは、図5(a)(b)(c)に示すように、X方向においてコアギャップ5のX方向の幅寸法である寸法W3の範囲と、Y方向において磁性体コア1A、1Bの厚み寸法である寸法T1(図1(c)を参照。)の範囲と、Z方向において磁性体コア1A、1Bの端面間の距離寸法である寸法W2に重複する範囲である。
【0035】
図6図5に示した構成例(a)、(b)、(c)、(d)において、被検出電流に対する磁電変換素子M1、M2の検出する磁束密度量と、磁気センサ4がY方向に位置ずれした場合の磁電変換素子M1、M2の検出する磁束密度量の差動演算値の変動を示すものであり、図6(a)は構成例(a)、(b)、(c)、(d)において、被検出電流を印加した時の、磁電変換素子M1、M2の配置点におけるX+方向の磁束密度量をシミュレーションした数値と、両者の差分値である差動演算値を算出した表で、図6(b)は構成例(a)において、磁気センサ4がY方向に位置ずれした場合の差動演算値の変動率を、磁性体コア1A、1Bの厚み寸法T1(図1(c)を参照。)を変化させて比較したグラフを示すものである。(図6(b)の詳細については後述する。)また本シミュレーションは有限要素法電磁場解析ソフトを用いて行い、被検出電流を10Aとした。
【0036】
また、本シミュレーションにおいて、図5に示すようにZ方向の幅寸法W1は7.0mm、Z方向の端面間寸法W2は3.0mm、X方向の幅寸法W4は7.75mm、X方向の腕部1A1、1A2の延在寸法W5は5.75mm、腕部1A1のZ方向の幅寸法W6は2.0mm、コアギャップ5のX方向のコアギャップ幅寸法W3は1.5mm、磁性体コア1A、1BのY方向の厚み寸法T1(図1(c)を参照。)は3.0mmで、
導体3、3E、3Fの断面形状はΦ1.0mmの円形状であり、コイル部6A、6N、6Lは腕部1A1と1.0mmの離間距離を有して1.5mmピッチでスパイラル形状を有し、また端面1a1、1a2から導電部3a、3g、3mまでのX方向の離間距離の寸法W7は4.0mmとなる位置にあり、コイル部6B、6M、6Pは腕部1B2と1.0mmの離間距離を有して1.5mmピッチでスパイラル形状を有し、また端面1b1、1b2から導電部3f、3k、3nまでのX方向の離間距離の寸法W8は4.0mmとなる位置にあるように構成されている。また磁電変換素子M1、M2は寸法W3と寸法T1の中心線上に配置されており、図5(a)(b)(c)において、磁電変換素子M1、M2のZ方向の離間距離Mp1は2.6mmであり、図5(d)において磁電変換素子M1、M2のZ方向の離間距離Mp2は5.0mm(コアギャップ5の中心位置)であるように構成され、被検出電流A1(図1(a)を参照。)を電流印加面31(図1(a)を参照。)から10A印加した。また磁性体コア1A、1Bはケイ素鋼板の材料設定で、導体3、3E、3Fは銅材の材料設定とし、周辺空気の比透磁率は1.0で、磁気センサ4、4Aとリード4Lは一般的に非磁性の材料が用いられるため、シミュレーションでは周辺空気と同じく比透磁率は1.0として、磁電変換素子M1、M2の配置点におけるX+方向の磁束密度量をシミュレーションした。
【0037】
構成例(a)は導体3が空隙2Aを導体部3a、3b、3cにより3回貫通し、空隙部2Bを導体部3d、3e、3fが3回貫通し、被検出電流A1が電流印加面31から印加された際、導体部3a、3b、3cに流れる図示しない電流はY-方向で、導体部3d、3e、3fを流れる図示しない電流はY-方向であり、導体部3a、3b、3c、3d、3e、3fに流れる図示しない電流方向は全て同じ方向となるように構成されており、磁電変換素子M1の検出するX方向の磁束密度量は17.5mTで、磁電変換素子M2の検出するX方向の磁束密度量は-15.9mTで、その差動演算値は33.4mTである。
【0038】
構成例(b)は導体3Eが空隙2Aを導体部3g、3hにより2回貫通し、空隙部2Bを導体部3j、3kが2回貫通し、被検出電流A1が電流印加面31から印加された際、導体部3g、3hに流れる図示しない電流はY-方向で、導体部3j、3kを流れる図示しない電流はY-方向であり、導体部3g、3h、3j、3kに流れる図示しない電流方向は全て同じ方向となるように構成されており、磁電変換素子M1の検出するX方向の磁束密度量は11.5mTで、磁電変換素子M2の検出するX方向の磁束密度量は-10.4mTで、その差動演算値は21.9mTあり、構成例(a)と比較して、空隙2A、2Bを導体部3Eが貫通する回数が少ないことから、磁電変換素子M1、M2の検出するX方向の磁束密度量は減少している。
【0039】
構成例(c)は導体3Fが空隙2Aを導体部3mにより1回貫通し、空隙部2Bを導体部3nが1回貫通し、被検出電流A1が電流印加面31から印加された際、導体部3mに流れる図示しない電流はY-方向で、導体部3nを流れる図示しない電流はY-方向であり、導体部3m、3nに流れる図示しない電流方向は全て同じ方向となるように構成されており、磁電変換素子M1の検出するX方向の磁束密度量は5.7mTで、磁電変換素子M2の検出するX方向の磁束密度量は-5.2mTで、その差動演算値は10.9mTあり、構成例(b)と比較して、空隙2A、2Bを導体部3Fが貫通する回数が少ないことから、磁電変換素子M1、M2の検出するX方向の磁束密度量は更に減少している。
【0040】
構成例(d)は、導体3が空隙2Aを導体部3a、3b、3cにより3回貫通し、空隙部2Bを導体部3d、3e、3fが3回貫通し、被検出電流A1が電流印加面31から印加された際、導体部3a、3b、3cに流れる図示しない電流はY-方向で、導体部3d、3e、3fを流れる図示しない電流はY-方向であり、導体部3a、3b、3c、3d、3e、3fに流れる図示しない電流方向は全て同じ方向となるように構成されており、磁電変換素子M1の検出するX方向の磁束密度量は25.7mTで、磁電変換素子M2の検出するX方向の磁束密度量は-23.4mTで、その差動演算値は49.1mTある。この時、構成例(d)は磁電変換素子M1、M2がそれぞれ図示上側と、図示下側のコアギャップ5に配置されていることから、構成例(a)よりも大きな磁束密度量を検出することが可能である。これは、領域Rを通る磁束8Aと、コアギャップ5を通る磁束8Aを比較すると、コアギャップ5の方が、磁気抵抗が小さくなるため、コアギャップ5を通る磁束8A成分の方が大きくなることに起因している。
【0041】
従来技術で示されたコイル式電流センサにおいては、構成例(a)と同様のコイル部(3回ターン)を2つ構成して、そのコイル部間に磁電変換素子を配置し、同じ被検出電流を印加しても、磁電変換素子が検出できる磁束密度量は大きく見積もっても5.0mT以下であり、電流センサ100が如何に大きな磁束密度量が検出できるかは一目瞭然である。
【0042】
また構成例(a)、(b)、(c)に示したように、空隙部2A、2Bを貫通する導体部が多ければ多いほど磁電変換素子M1、M2が検出する磁束密度量を大きくすることが可能であり、電流センサ設計に必要な磁束密度量を、設計者の任意に設計することが可能である。
【0043】
また構成例(d)に示したように、磁電変換素子M1、M2が、それぞれコアギャップ5に近づくほど磁電変換素子M1、M2が検出する磁束密度量は大きくすることが可能であり、電流センサ設計に必要な磁束密度量を、設計者の任意に設計することが可能である。
【0044】
また本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、その使用環境下において、
図示しない樹脂筐体の膨張収縮などで磁気センサ4に位置ずれが生じ、それに伴い磁電変換素子M1、M2の位置ずれが生じて、磁電変換素子M1、M2がそれぞれ検出する磁束8AのX方向の磁束密度量が変動しても、その差動演算値は変動がおこりづらく、測定誤差が生じにくい特徴を有する。
【0045】
例えば、電流センサ100において磁気センサ4がZ+方向に位置ずれが生じた場合、磁電変換素子M1、M2は、基材4Bに実装されて磁気センサ4の内部に構成されていることから、磁電変換素子M1、M2同士の相対位置が固定されているため、Z+方向に同じ距離だけ位置ずれが生じる。この時、図6に示した構成例(a)、(d)でのシミュレーション結果でも示したように、磁電変換素子M1、M2がコアギャップ5に近づくほど磁束密度量が増加することから、磁電変換素子M1は図示上側のコアギャップ5に近づくため、磁電変換素子M1の検出する図示上側の磁束8AのX方向の磁束密度量は増加する。しかしながら、磁電変換素子M2は図示下側のコアギャップ5から距離が遠ざかるため、磁電変換素子M2の検出する図示下側の磁束8AのX方向の磁束密度量は減少する。よって、磁電変換素子M1、M2がそれぞれ検出した磁束密度量の変動量は差動演算により相殺されるため、測定誤差を小さくすることが可能である。(磁気センサ4がZ-方向に位置ずれした場合も同様である。)
【0046】
また、磁気センサ4がX方向に位置ずれが生じた場合、磁電変換素子M1、M2は、基材4Bに実装されて磁気センサ4の内部に構成されていることから、磁電変換素子M1、M2同士の相対位置が固定されているため、X方向に同じ距離だけ位置ずれが生じる。しかしながら、磁電変換素子M1、M2の検出する磁束8AはX方向に磁束経路を形成しているためX方向の磁束密度量の変動量は少なく、位置ずれによる測定誤差は少ない。(X+方向、X-方向どちらに位置ずれを生じても測定誤差は少ない。)
【0047】
また、磁気センサ4がY方向に位置ずれが生じた場合、磁電変換素子M1、M2は、基材4Bに実装されて磁気センサ4の内部に構成されていることから、磁電変換素子M1、M2同士の相対位置が固定されているため、Y方向に同じ距離だけ位置ずれが生じる。この時、磁電変換素子M1、M2の検出する磁束8AのX方向の磁束密度量は変動するが、磁性体コア1A、1BのY方向の厚み寸法T1(図1(b)を参照。)を大きくすることで、その変動量を小さくすることが可能であり、設計者の任意に磁束密度量の変動量を制御することが可能である。
【0048】
図6(b)は構成例(a)において、寸法T1を3.0mm(構成例(a)の寸法値)、2.0mm、1.0mmに変化させ、磁気センサ4がY方向に±0.5mmの位置ずれを生じた場合の差動演算値の変動率を示すグラフで、グラフの横軸方向を磁気センサ4のY方向への位置ずれ量とし、縦軸方向を差動演算値の変動率としてシミュレーション結果をプロットしたグラフである。変動率の算出はそれぞれの寸法T1寸法値において、(位置ずれを生じた際の磁電変換素子M1、M2の検出するX方向の磁束密度量の差動演算値)/(位置ずれを生じていない場合の磁電変換素子M1、M2の検出するX方向の磁束密度量の差動演算値)×100-100で算出した。
【0048】
図6(b)に示すように、寸法T1が3.0mmでは磁気センサ4が±0.5mmの位置ずれを生じた場合でもその変動率は1.0%以下であるが、寸法T1が2.0mmでは約4.0%変動し、寸法T1が1.0mmでは約13%変動している。この変動した磁束密度量は電流センサ100の出力する出力信号がそのまま変動することから、極力小さいことが求められており、変動率が1.0%以下であればその誤差は許容できるものと考えることから、寸法T1は、3.0mmは必要である。
【0049】
よって電流センサ100は磁気センサ4がX方向、Z方向に位置ずれを生じた場合においても、磁電変換素子M1、M2が基材4Bに実装されて、相対位置が固定されていることから差動演算値の変動が起こりづらい特徴を有し、また磁性体コア1A、1BのY方向の厚み寸法T1を3.0mm以上とすることで、測定誤差が少なく安定した電流検出が可能な電流センサを提供することができる。
【0050】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は導体3が空隙2A、2Bを少なくとも1回以上貫通するように構成されているが、空隙2Aまたは空隙2Bのいずれかを1回以上貫通するように構成されていれば電流検出自体は可能である。
【0051】
図7は、本発明の実施の形態2に関わる電流センサ200の概略図であり、図7(a)は実施の形態2に関わる電流センサ200の斜視図で、図7(b)は実施の形態1に関わる電流センサ200の平面視図で、図1(c)は実施の形態1に関わる電流センサ200の正面視図で、図7(d)は図7(c)における断面C-Cの断面図である。
【0052】
本発明の実施の形態2に関わる電流センサ200は、延在する先端に端面1a1を有する腕部1A1と、延在する先端に端面1a2を有する腕部1A2と、Y方向に厚み寸法T1と、Z方向に幅寸法W1と、Z方向に端面間の距離寸法である寸法W2と、寸法W2の仮想的な中心線である中心線CL1と、腕部1A1、1A2によりU字形状が形成されることで、その中央に形成される中空部に空隙2Aを有する磁性体コア1Aと、磁性体コア1Aと同形状であり、延在する先端に端面1b1を有する腕部1B1と、延在する先端に端面1b2を有する腕部1B2と、Z方向の端面間の距離寸法(磁性体コア1Aの寸法W2に相当する寸法)の仮想的な中心線である中心線CL2と、腕部1B1、1B2によりU字形状が形成されることで、その中央に形成される中空部に空隙2Bを有する、磁性体コア1Bと、電流印加面32から被検出電流A2が印加され、断面形状が円形状を有する導体3Gと、磁束を検出する検出素子である磁電変換素子M1と磁電変換素子M2とを有し、磁電変換素子M1、M2が検出した磁束密度量に応じて、出力される出力信号を外部に出力する端子であるリード4Lを有する磁気センサ4を有し、磁性体コア1A、1Bは、端面1a1と端面1b1が対面する姿勢、かつ端面1a2、1b2が対面する姿勢で配置され、それぞれ対面する端面間に形成され、X方向の幅寸法が寸法W3であるコアギャップ5が形成され、導体3Gは、空隙2AをY+方向からY-方向に3回貫通するように、腕部1A1の周囲を取り囲んでコイル部6Qを形成し、磁気センサ4は、磁電変換素子M1、M2がX方向においてコアギャップ5のX方向の幅寸法である寸法W3の範囲と、Y方向において磁性体コア1A、1Bの厚み寸法である寸法T1の範囲と、Z方向において磁性体コア1A、1Bの幅寸法である寸法W1の範囲に重複する範囲にあり、またZ方向に中心線CL1を挟んで対向して離間し、尚且つZ方向に中心線CL2を挟んで対向して離間し、その感磁軸がX方向となる姿勢で配置され、導体3Gの電流印加面32から印加された被検出電流A2は、導体3が単一の材料で形成された導通した導体であることから、空隙2Aを貫通する導体部である導体部3pと導体部3qと導体部3rに流れる図示しない電流はY-方向に流れ、空隙部2Aを貫通する導電部3p、3q、3rを流れる電流方向がすべて同じ方向となるように構成される。
【0053】
また本発明の実施の形態2に関わる電流センサ200は図示しない樹脂筐体と、図示しないコネクタが実装された図示しないプリント基板を有し、プリント基板、磁性体コア1A、1B、導体3は樹脂筐体に固定されており、磁気センサ4はプリント基板にリード4Lを介して接続されている。
【0054】
磁気センサ4は、図示しないリード4Lの一部と基材4Bを熱硬化性樹脂で内部に封止された磁気検出装置であり、リード4Lと基材4Bは磁気センサ4の内部で図示しないダイボンドなどで接続されている。
【0055】
基材4Bは矩形形状の半導体チップであり、磁電変換素子M1、M2はそれぞれ離間して基材4Bに実装され、磁電変換素子M1、M2の相対位置を固定している。本発明の実施の形態1に関わる電流センサ200では、基材4BはYZ平面上に平行な平面を有し、その平面上に磁電変換素子M1、M2がそれぞれZ方向に離間して実装されている。
【0056】
また基材4Bは図示しない検出手段を有しており、磁電変換素子M1、M2が検出した磁束密度量に応じてそれぞれ出力する出力信号を増幅し、増幅された2つの出力信号を差動演算して、その差動演算値を出力する図示しない差動演算部を有し、その差動演算値は磁気センサ4のリード4Lと、プリント基板と、コネクタを介して電流センサ200の外部に出力される。
【0057】
本発明の実施の形態2に関わる電流センサ200のように、空隙2A、2Bのいずれかを1回以上貫通していれば、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100よりは、磁電変換素子M1、M2の検出する磁束密度量は小さくなるものの、電流検出は可能であるため、設計者が必要とする磁束密度量を、磁電変換素子M1、M2が検出できるのであれば、電流センサ200のように空隙2A、2Bのいずれかを1回以上貫通して構成されていてもよく、その空隙2Aまたは2Bを導体部が貫通する回数が多ければ多いほど、磁電変換素子M1、M2が検出する磁束密度量を増やすことが可能で、磁電変換素子M1、M2が検出した磁束密度量に応じて出力された出力信号の増幅率を下げることが可能である。
【0058】
また、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100では、被検出電流が印加される導体がそれぞれ単一の材料で構成され、導通した導体を用いているが、その限りではなく、被検出電流が印加される導体が複数の導体、複数の材料で構成されていてもよい。
【0059】
図8は本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の別の形状の導体の構成例を示すものであり、図8(a)は図1に示した電流センサ100の導体3を変化させた斜視図で、図8(b)は平面視図である。
【0060】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、被検出電流が印加される導体3は、単一の材料で構成された導通した導体を用いているがその限りではなく、図8(a)(b)に示すように、被検出電流A3が印加される導体が、プリント板9上に銅箔で形成された基板パターンであり電流印加面33を有する導体部3Hと、同じくプリント板9上に銅箔で形成された基板パターンである導体部3Kと、導体部3Mと、空隙2Aを3回貫通するコイル部6Rを形成する導体3Jと、空隙2Bを3回貫通するコイル部6Sを形成する導体3Lの複数の導体で形成され、導体3Jは導体端末において導体3H、3Kと導電材料形成されたハンダ10で接合され、また導体3Lは導体端末において、導体3K、3Mと導電材料で形成されたハンダ10で接合するように形成され、導体3H、3J、3K、3L、3Mが全て導通していれば複数の導体で形成されてもよい。(この時、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100と同様に、被検出電流A3が電流印加面33から印加された際、導体3H、導体3J、導体3K、導体3L、導体3Mの順に印加した被検出電流A3が流れ、空隙2A、2Bにおいて、コイル部6R、6Sが貫通する導体部の電流方向が同一となるように形成されている。)
【0061】
また図8では、被検出電流A3が印加される導体をコイル部6R、6Sと、プリント板9の導体部3H、3K、3Mの複数の導体で構成した構成例を示したが、コイル部も複数の導体で形成しても構成でもよい。
【0062】
図8に示した導体の構成は、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100における形状例であり、本発明の構成を限定する物ではなく、図8に示した構成例は電流センサ100を用いて示したが、本発明の実施の形態2に関わる電流センサ200でも同様である。
【符号の説明】
【0063】
1A 磁性体コア
1Aa 磁性体コア
1B 磁性体コア
1Ba 磁性体コア
1C 磁性体コア
1D 磁性体コア
1a1 端面
1a2 端面
1A1 腕部
1A2 腕部
1B1 腕部
1B2 腕部
1b1 端面
1b2 端面
2A 空隙
2B 空隙
3 導体
31 電流印加面
32 電流印加面
33 電流印加面
3A 導体
3B 導体
3C 導体
3D 導体
3E 導体
3F 導体
3G 導体
3H 導体
3J 導体
3K 導体
3L 導体
3M 導体
3a 導体
3b 導体
3c 導体
3d 導体
3e 導体
3f 導体
3g 導体
3h 導体
3j 導体
3k 導体
3m 導体
3n 導体
3p 導体
3q 導体
3r 導体
4 磁気センサ
4A 磁気センサ
4B 基材
4L リード
5 コアギャップ
6A コイル部
6B コイル部
6C コイル部
6D コイル部
6E コイル部
6F コイル部
6G コイル部
6H コイル部
6J コイル部
6K コイル部
6L コイル部
6M コイル部
6N コイル部
6P コイル部
6Q コイル部
6R コイル部
6S コイル部
7 接続部
7A 接続部
7B 接続部
7C 接続部
7D 接続部
7E 接続部
7F 接続部
7G 接続部
8 磁束経路
8A 磁束
9 プリント板
10 ハンダ
A1 被検出電流
A2 被検出電流
A3 被検出電流
CL1 中心線
CL2 中心線
T1 寸法
M1 磁電変換素子
M2 磁電変換素子
Mp1 寸法
Mp2 寸法
W1 寸法
W2 寸法
W3 寸法
W4 寸法
W5 寸法
W6 寸法
W7 寸法
W8 寸法
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図8