IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社聖の特許一覧

<>
  • 特開-手足保護具 図1
  • 特開-手足保護具 図2
  • 特開-手足保護具 図3
  • 特開-手足保護具 図4
  • 特開-手足保護具 図5
  • 特開-手足保護具 図6
  • 特開-手足保護具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003242
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】手足保護具
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A41D13/05 162
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023114082
(22)【出願日】2023-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】523260358
【氏名又は名称】株式会社聖
(72)【発明者】
【氏名】玉川 玲子
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA12
3B211AB08
3B211AC04
3B211AC17
3B211AC22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】要介護者等の下腿又は上肢の損傷と痛みを防止すること、また、要介護者等の下腿又は上肢への取付け作業が比較的簡単に行えると共に、下腿又は上肢の装着部分の太さに追従して適度な締め付け力により取付けが可能な手足保護具を提供する。
【解決手段】表布及び裏布からなる袋体と、前記袋体の内部に収納可能な軟質ポリウレタンフォームと、から成る手足保護具本体と、前記手足保護具本体を下腿又は上肢に巻付けた状態で保持する結束ベルトと、から構成される手足保護具であって、前記各結束ベルトは、その一端が前記手足保護具本体の巻き終り端部から突出して取付けられており、各結束ベルトの他端部の表面には、前記凸面ファスナーの約2倍の長さの凹面ファスナーが縫合されており、前記各結束ベルトは、その他端部を前記手足保護具本体の巻き始め端部から内側にずらした位置に配置されていることを特徴とするものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ長方形を成した表布及び裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなした衝撃吸収部材と、から成る手足保護具本体と、
前記手足保護具本体を下腿又は上肢に巻付けた状態で保持する結束ベルトと、から構成される手足保護具であって、
前記表布及び裏布には、袋体の長方形の長辺方向に伸縮可能な伸縮生地が用いられており、
前記袋体は、その長方形の長辺の長さが、装着者の下腿部分の外周長より長く、かつ、前記下腿部分全体を覆った状態で重なり部を形成する長さとなっており、
前記袋体は、その長方形の短辺の長さが装着者の部分下腿の高さ寸法に相当する長さとなっており、
前記手足保護具本体には、前記袋体における一方の長辺と他方の長辺との間であって、長辺縁部に平行な位置に前記結束ベルトが設置されており、
前記結束ベルトは、その長手方向に伸縮可能な素材により構成されており、その長さは、前記袋体の長辺方向の長さとほぼ同等な長さに構成されており、
前記結束ベルトは、前記袋体の表布の表面に、袋体を構成する表布と裏布及び衝撃吸収部材と一体に縫合されており、
前記結束ベルトは、その一端が前記手足保護具本体の巻き終り端部から突出して取付けられており、当該突出部の裏面には凸面ファスナーが縫合されており、
前記結束ベルトの他端部の表面には、前記凸面ファスナーの約2倍程度の長さの凹面ファスナーが縫合されており、
前記凸面ファスナー取付け部と前記凹面ファスナー取付け部との間には、前記凸面ファスナーの長さの約2倍程度の間隔を設けて構成されており、
前記結束ベルトは、その他端部を前記手足保護具本体の巻き始め端部から内側にずらした位置に配置されている
ことを特徴とする手足保護具。
【請求項2】
請求項1に記載の手足保護具において、
前記衝撃吸収材を、軟質ポリウレタンフォームにより構成した
ことを特徴とする手足保護具。
【請求項3】
請求項1に記載の手足保護具において、
前記結束ベルトは、前記袋体における一方の長辺縁部と他方の長辺縁部との間であって、短辺長の1/4の位置で、かつ、長辺縁部に平行な位置にそれぞれ設置されている
ことを特徴とする手足保護具。
【請求項4】
ほぼ長方形を成した表布及び裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなした衝撃吸収部材と、から成る手足保護具本体と、
前記手足保護具本体を下腿又は上肢に巻付けた状態で保持する結束ベルトと、から構成される手足保護具であって、
前記表布及び裏布には、袋体の長方形の長辺方向に伸縮可能な伸縮生地が用いられており、
前記袋体は、その長方形の長辺の長さが、装着者の下腿部分の外周長より長く、かつ、前記下腿部分全体を覆った状態で重なり部を形成する長さとなっており、
前記袋体は、その長方形の短辺の長さが装着者の下腿部分の高さ寸法に相当する長さとなっており、
前記手足保護具本体には、前記袋体における一方の長辺と他方の長辺との間であって、長辺縁部に平行な位置に前記結束ベルトが2本設置されており、
前記各結束ベルトは、その長手方向に伸縮可能な素材により構成されており、
その長さは、前記袋体の長辺方向の長さとほぼ同等な長さに構成されており、
前記各結束ベルトは、前記袋体の表布の表面に、袋体を構成する表布と裏布及び衝撃吸収部材と一体に縫合されており、
前記各結束ベルトは、その一端が前記手足保護具本体の巻き終り端部から突出して取付けられており、
当該突出部の裏面には凹面ファスナーが縫合されており、
前記各結束ベルトの他端部の表面には、前記凹面ファスナーの約2倍の長さの凸面ファスナーが縫合されており、
前記凹面ファスナー取付け部と前記凸面ファスナー取付け部との間には、前記凹面ファスナーの長さの約2倍程度の間隔を設けて構成されており、
前記各結束ベルトは、その他端部を前記手足保護具本体の巻き始め端部から内側にずらした位置に配置されている
ことを特徴とする手足保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介護者や、上肢又は下肢を負傷した怪我人等の車椅子利用者が、車椅子への乗車時又は降車時に、或いは、日常生活における上肢又は下肢の保護のために、上肢又は下肢に装着する手足保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子利用者が車椅子に乗車する際、或いは、車椅子から降車する際には、介護者等が同車椅子利用者の介添えを行うのが一般的である。この車椅子への乗車又は降車時においては、車椅子利用者の下肢に相当する膝から足首までの間の所謂、下腿や、上肢に相当する前腕又は上腕を、車椅子を構成する各部材に衝突させることがある。よって、車椅子利用者の前記下肢又は上肢に打ち身等を生じさせ、車椅子利用者自身も相当な痛みを感じることが予想される。
【0003】
車椅子乗降時に、車椅子利用者の下肢又は上肢を車椅子構成部材に衝突させずに介助するには、時間と労力を要する作業となる。したがって、車椅子利用者の下肢又は上肢に介護用プロテクターを装着することが考えられている。その一例として特許文献1には、被介護者の肘から手首間又は膝から足首間の部位に巻き付けて使用する介護用プロテクターであって、合成樹脂等の非透水性素材からなる表布と、柔軟性且つ緩衝性を有し、装着される被介護者の足又は腕の汗を吸収可能な吸汗性素材からなる裏布と、これら表布と裏布との間に配置された中間布とを有した構造が開示されている。
【0004】
前記表布と裏布と中間布は平面略台形状に形成されると共に、これらをキルティング縫いすることによって離間しないよう一体連結し、車椅子の装着部材に当接する被介護者の腕又は足の何れかの部位に、前記平面略台形状の上辺長幅側を上方肘又は膝側とし、下辺短幅側を下方手首又は足首側として巻き付けるとともに、前記表布と裏布に対向配置された雌雄面ファスナーの係着及び解除によって着脱するものが記載されている。
【0005】
前記介護用プロテクターは、表布と裏布と中間布の素材自体及びそれらの縫合構造について、伸縮性を発揮できる構造とはなっていない。また、雌雄面ファスナーの大きさや設置位置についても、複数の異なる被介護者における装着部分の個人差に対応した構造となっていない。したがって、この介護用プロテクターを使用する場合、装着者の装着部分の大きさに合わせてそのサイズを決定し、準備する必要がある。
【0006】
次に、足の保温を目的とした防寒用カバーが特許文献2に示されている。本防寒用カバーのカバー本体は、表面が撥水性若しくは防水性部材よりなり、裏面が中綿を有するキルティング加工を施された2重構造よりなる布片より構成されており、前記布片自体は伸縮性を発揮できない構成となっている。この布片に対して周方向に伸縮性部材を逢着して伸縮部を形成すると記載されているが、その具体構造が開示されていない。よって、カバー本体が伸縮性を発揮できるか不明である。本防寒用カバーにおいては、装着者の足が何らかの硬い物に衝突した際に保護する機能が発揮できるかも不明である。
【0007】
更に、防寒用として作られた足巻で、足の下肢部を衣類の上から巻いて温めるようした防寒用足巻が特許文献3に示されている。本防寒用足巻においては、締めつけて温める点を強調すれば、表地と裏地に、弾力性のある織布を用いることが記載されているものの、その具体的な素材及び構造が示されていない。また、実施例として示された表地の素材としては、パイル状の織布が例示されているが、パイル状の織布は、伸縮性を有した素材とは言えないものである。
【特許文献1】特許第4009957号公報
【特許文献2】実用新案登録第3057664号公報
【特許文献3】実開昭58-163513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、要介護者等の下肢又は上肢に対して、例えば車椅子構成部材等の硬い物が衝突した際の衝撃を和らげることにより、要介護者等の下肢又は上肢の損傷と痛みを防止すること、また、要介護者等の下肢又は上肢への取付け作業が比較的簡単に行えると共に、下肢又は上肢の装着部分の太さに追従して適度な締め付け力により取付けが可能な手足保護具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ほぼ長方形を成した表布及び裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなした衝撃吸収部材と、から成る手足保護具本体と、前記手足保護具本体を下腿又は上肢に巻付けた状態で保持する結束ベルトと、から構成される手足保護具であって、前記表布及び裏布には、袋体の長方形の長辺方向に伸縮可能な伸縮生地が用いられており、前記袋体は、その長方形の長辺の長さが、装着者の脹脛部分の外周長より長く、かつ、前記下腿部分全体を覆った状態で重なり部を形成する長さとなっており、前記袋体は、その長方形の短辺の長さが装着者の下腿部分の高さ寸法に相当する長さとなっており、前記手足保護具本体は、前記袋体における一方の長辺と他方の長辺との間であって、長辺縁部に平行な位置に前記結束ベルトが設置されており、前記各結束ベルトは、その長手方向に伸縮可能な素材により構成されており、その長さは、前記袋体の長辺方向の長さとほぼ同等な長さに構成されており、前記各結束ベルトは、前記袋体の表布の表面に、袋体を構成する表布と裏布及び衝撃吸収部材と一体に縫合されており、前記結束ベルトは、その一端が前記手足保護具本体の巻き終り端部から突出して取付けられており、当該突出部の裏面には凸面ファスナーが縫合されており、前記結束ベルトの他端部の表面には、前記凸面ファスナーの約2倍の長さの凹面ファスナーが縫合されており、前記凸面ファスナー取付け部と前記凹面ファスナー取付け部との間には、前記凸面ファスナーの長さの約2倍程度の間隔を設けて構成されており、前記各結束ベルトは、その他端部を前記手足保護具本体の巻き始め端部から内側にずらした位置に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手足保護具本体を構成する軟質ポリウレタンフォーム(以下、単に「ウレタン」と言う。)からなる衝撃吸収部材によって、装着者の下腿又は上肢が例えば車椅子を構成する部材に衝突した際の衝撃を吸収して当該部分の損傷を防止し、且つ、痛みを軽減することができる。また、手足保護具本体及び各結束ベルトが手足保護具の長辺方向に伸縮可能な構造であり、当該手足保護具本体を下腿又は上肢に装着した状態でそれぞれの太さに対応した状態で締付け力を前記結束ベルトにより調整可能であり、装着作業が簡単に行える。前記結束ベルトは、それ自体が伸縮性を有しており、装着部分の外周長に追従して装着が可能であり、脱落等の不具合を防止することができる。
なお、前記軟質ウレタンフォームについては、広くマットレス等に使用されており、本手足保護具には、かたさ区分が「かため」或いは「ふつう」のものを使用することが考えられる。本手足保護具の使用状況において、前記軟質ウレタンフォームのかたさを適宜選択することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】 本発明による手足保護具の一実施例における表布側から見た正面図である。
図2図1に示した手足保護具の一実施例における裏布側から見た正面図である。
図3】 本発明による手足保護具の一実施例における手足保護具本体の外周縁部分の拡大断面図である。
図4】 本発明による手足保護具の一実施例における結束ベルトの縫合部分の拡大断面図である。
図5】 本発明による手足保護具の一実施例における太い物への装着状態を示した斜視図及び結束ベルトの状態を示す模式図であり、(a)は図5の手足保護具における結束ベルトのみを模式的に示した図である。
図6】 本発明による手足保護具の一実施例における細い物への装着状態を示した斜視図及び結束ベルトの状態を示す模式図であり、(b)は図6の手足保護具における結束ベルトのみを模式的に示した図である。
図7図5に示した手足保護具を装着者の脹脛部分に装着した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0012】
:手足保護具本体、1S:巻き始め端部、1E:巻き終り端部、:結束ベルト、2S:他端部、2E:一端部、10:袋体、11:表布、12:裏布、14:ウレタン、15:あて布
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の手足保護具の一実施例を図1乃至図7により説明する。手足保護具本体は、図1及び図2に示すように、長方形に形成されている。長方形の4ヶ所の角部分は、円弧状に形成されている。この手足保護具本体を構成する袋体10は、図3にその縁部断面形状を示すように、表布11と裏布12とを外周部分に約1cm程度の縫い代を設けてミシンで縫合し、その表布11と裏布12を裏返して、内部にウレタン14を挿入して構成されている。ウレタン14は、袋体10の内部に収納可能な大きさの長方形に構成されており、その厚さは、約1cmに構成された特注品であり本実施例における衝撃吸収部材の一例である。本実施例で使用したウレタン14は、スポンジ専門店ソフトプレン社製、商品名「やわらかいウレタンスポンジ」、JIS規格密度(kg/35±3)硬さ(N)122.6±29.4であり同社製品中2番目に軟らかい物である。
【0014】
裏返した前記表布11と裏布12の外周部分は表布11の折り返し部および裏布12の折り返し部を重ねた状態で縫合した構成となっている。なお、袋体10を構成して、それを裏返し、且つ、内部にウレタン14を挿入する際には、前記袋体10の外周の一部には、約10cm程度の未縫合部が形成されており、同未縫合部で裏返し作業及びウレタン14の挿入作業を行う。前記未縫合部分は、手縫いにより表布11と裏布12を縫合し、その後、外周全体の縫合作業を行う。
【0015】
このようにして製作された手足保護具本体の一例は、図1及び図2に示すように、全体が長方形に構成されている。手足保護具本体の長辺の長さは、約48cmであり、短辺の長さは、約24.5cmに構成されている。この手足保護具本体の大きさは、装着者の臑及び脹脛とからなる下腿の直径が最大で約13cm程度を想定した場合の大きさとなっている。また、手足保護具本体の短辺の長さは、装着者の膝から足首までの長さが約24.5cm程度と想定して構成されている。これらの長辺及び短辺の長さ等の寸法、或いは、後述する結束ベルト等の各部の寸法については、利用者の体格によって最適な長さが異なるため、手足保護具本体及び結束ベルトのこれらの寸法を大きいサイズ:L、中程度のサイズ:M、小さいサイズ:Sのように、利用者の体格に合わせて選択可能に構成することも考えられる。
【0016】
手足保護具本体には、2本の結束ベルトが取付けられている。この各結束ベルトの取付け位置は、手足保護具本体の両側長辺部縁から内側に向かって、手足保護具本体の短辺部長さの1/4に相当する位置に設置されている。手足保護具本体における短辺方向の中央位置で二分割した範囲のちょうど中間位置にそれぞれ結束ベルトが配置されることになる。したがって、手足保護具本体の上半分及び下半分をそれぞれの結束ベルトにより固定することができる。
【0017】
結束ベルトは、それ自体が伸縮性を有する素材から構成され、内部にゴム紐を内蔵しており、その長手方向に引っ張ると伸びて、収縮する反力を生じる構成となっている。結束ベルトの全長は、手足保護具本体の長辺長さよりも僅かに短く、約46cmに構成されている。この結束ベルトの一端部2Eを手足保護具本体の巻き終り端部1Eから約9cm程度突出させて取付けている。この結束ベルトの他端部2Sは、手足保護具本体の巻き始め端部1Sより約11cm内側の部分に縫合して取付けられている。この11cm幅の部分が最も太い下腿に巻かれた際に、手足保護具本体の巻き始め端部1Sと巻き終り端部1Eとが重なり会う部分となる。結束ベルトは、手足保護具本体の表布11の外表面に配置され、表布11、ウレタン14、裏布12と一体に縫合されている。
【0018】
結束ベルトには、手足保護具本体から突出した一端部2Eの裏面に凸面ファスナー21(例えば、開口鉤等を有する面ファスナー)が縫合して取付けられている。この凸面ファスナー21の幅は、結束ベルトとほぼ同じ幅に構成され、長さは一端部2Eの突出長さ、即ち、約9cmに構成されている。結束ベルトの他端部2Sには、凹面ファスナー22(例えば、ループ等を有する面ファスナー)がその表面に縫合して取付けられている。この凹面ファスナー22の幅は、結束ベルトとほぼ同じ幅に構成されている。また、この凹面ファスナー22の長さは、前記凸面ファスナー21の2倍で約18cmとなっている。結束ベルトにおける凸面ファスナー21及び凹面ファスナー22を取付けた部分は、凸面ファスナー21と凹面ファスナー22がそれぞれ伸縮しない素材から構成されていることから、伸縮しない構成となっている。一方、結束ベルトにおける凸面ファスナー21と凹面ファスナー22との間で、結束ベルト素材のみで構成されている部分であって、凸面ファスナー21の全長の約2倍の範囲については、伸縮性を有した構造となっている。
【0019】
結束ベルトの手足保護具本体への取付構造について、図4により説明する。表布11、ウレタン14、裏布12が重なった手足保護具本体に、結束ベルトを表布11の表面側に重ねた状態で、ミシンによる平縫いによって縫合している。この構造においては、表布11及び裏布12の各表面側は、縫合時の締付け力により、ウレタン14が凹んで縫合線部分が窪み部Xを形成した状態となっている。このような構造においては、平縫いによって図4に示すように上下の縫い糸の間にウレタン14を挟んで縫合していることから、縫い糸が厚さ方向に蛇行した状態であり、結束ベルト及び手足保護具本体がその長手方向に伸縮可能に構成されている。即ち、結束ベルト及び手足保護具本体がその長辺方向に伸縮性を有し、且つ、前記平縫いにより縫合されていることから、縫合された両部材が長辺方向に伸縮可能な構造を形成することができる。更に、結束ベルトの収縮力により、手足保護具本体の外側から所定の締付け力で締付けることによって装着時の追従性と安定性を確保している。
【0020】
本発明による手足保護具の一実施例の要介護者への使用状況について説明する。要介護者を車椅子に乗車させる際には、まず、手足保護具本を下腿に巻き始め端部1Sから巻き始め、巻き終り端部1Eを前記巻き始め端部1Sに重ねた状態で、各結束ベルトの一端部2Eの凸面ファスナー21を他端部2Sの凹面ファスナー22に取付ける。この時、結束ベルトの一端部2Eをその長手方向に引っ張って、張力をかけて取付ける。このように結束ベルト2の張力を利用して、手足保護具本体を下腿或いは上肢にしっかりと装着することができる。また、結束ベルトの凸面ファスナー21を設置した一端部2Eは、手足保護具本体1から突き出た構造となっていることから、当該一端部2Eを持って凹面ファスナー22へ簡単に取付けることができる。即ち、特許文献1の介護用プロテクターの裏面に面ファスナーを設置した構造に比べて凸面ファスナー21を確実に凹面ファスナー22に取付ける事が出でき、作業性を向上させることができる。
【0021】
要介護者に前記手足保護具を装着した後、車椅子に乗車させることになる。この乗車動作時に、要介護者の下腿や上肢が車椅子の構成部材に衝突しても、その衝撃を前記手足保護具が吸収して、要介護者の下腿或いは上肢等の損傷及び痛みを緩和することができる。
また、本発明による手足保護具は、手足保護具本体の長辺部の長さが装着者の下腿の外周長さよりも長く構成されていることから、確実に下腿を保護することができる。更に、結束ベルトにおいて、凸面ファスナー21を取付けた一端部2Eと、凹面ファスナー22を取付けた他端部2Sとの間に、結束ベルトのみからなる伸縮可能な部分を構成していることから、手足保護具本体1を太い下腿部又は細い上肢に巻いて取付けることができる。即ち、結束ベルト自体の伸縮性を確保し、且つ、太さの異なる下腿或いは上肢等に巻き付けた状態で固定可能な構造となっている。
【0022】
次に、本発明による前記手足保護具の装着状態について、図5乃至図7により説明する。図5は、本手足保護具を最も太い下腿等に巻いた状態の手足保護具のみを示した図である。また、図5の(a)は、図5に示した手足保護具における結束ベルトのみを模式的に示した図であり、2本の線で結束ベルトを示し、黒太線で凸面ファスナー又は凹面ファスナーの設置部を示している。図示した手足保護具により形成された筒状部分の外周長さは、約47cmであり、内周長さは、約40cm、内径が約13cmである。また、軸方向の長さは、約24.5cmである。この手足保護具の上部中間位置及び下部中間位置に設置された各結束ベルトの凸面ファスナー21と凹面ファスナー22の締結状況は、図5(a)に図示したように、凸面ファスナー21が凹面ファスナー22の他端部2S側に締結されている。この状態において、結束ベルトによって形成されたリング状部分の周長は、凸面ファスナー21取付部分、面ファスナーを設置していない部分及び凹面ファスナー取付部分の約半分となっている。このリング状部分の周長は、最終的に凸面ファスナー21と凹面ファスナー22との締結部分の重なり度合いによって微調整されることになる。図5に示した手足保護具を装着者の下腿に設置された状態が図7である。
【0023】
本発明による前記手足保護具を肘から手首の間の最も細い部分に巻いた状態を図6に示している。この状態においては、手足保護具本体は、一部において3重に重ねた状態となっている。図示した手足保護具により形成された筒状部分の外周長さは、約35cm、内周長さは、約19cm、内径が約6cmである。各結束ベルトの凸面ファスナー21と凹面ファスナー22の締結状況は、図6(b)に第5図(a)と同様な記載方法により図示したように、凸面ファスナー21が凹面ファスナー22の他端部2Sの反対側に近い位置に締結されている。このように結束ベルトによってリング状に形成された部分の周長は、凸面ファスナー21と凹面ファスナー22に相当する長さに構成されている。このように本発明の前記手足保護具によれば、各結束ベルトの凸面ファスナー21と凹面ファスナー22との締結位置を、面ファスナーを設けていない部分を利用して広範囲に変化させることにより、巻く対象物の外周長即ち外周部分の長さに対応させて簡単に装着することができる。
【0024】
本発明による手足保護具を利用する際の状況を想定して、市販されている各種商品との対比状況を説明する。要介護者が車椅子に乗車する際に、必要があればすぐに着用しなければならない。レッグウォーマーやサポーターでは、着脱時にズボンや靴を脱ぐ必要があるため、時間が掛かり介護者の負担が増加する。また、要介護者が自力で着脱できる場合もあるが、同様に時間を要することが想定される。また、臥床時にはそれらが肌に密着しているため、時には外していないと下肢や上肢が蒸れる場合があるため常用することが好ましくない。本発明による手足保護具の場合には、直接下腿或いは上肢に装着する或いはズボン等の衣服の上からでも、靴やズボン等を脱ぐことなく即座に、且つ、短時間に装着することができる。さらに、取外しも簡単である。
【0025】
要介護者は、体が弱っている場合が多く、普通に日常生活を過ごす状況において移動時の転倒や転落、又は、打撲などにより負傷する機会が多いことが予想される。予防的に本発明による手足保護具を装着することにより、下腿や上肢の負傷を軽減することができる。体温調整が難しい要介護者の場合は、寒い時期やエアコンがよく効いて冷え切った室内でも、本発明による手足保護具を着用することで保温効果を維持することができる。昔から頭寒足温で健康になると言われている。
【0026】
小児を自転車のリアチャイルドシートに座らせる昇降車時に、本発明による手足保護具を装着しておくことにより、動きの激しい小児の露出した手足の負傷を防止できる。また、寒い時期に自分で訴えることが難しい小児であっても、乗車中に下腿や前腕の保温を行える。前記手足保護具は、着脱が容易であるため、急いでいるときでも即座に利用することができる。
【0027】
寒い時期における屋外での作業時(スポーツ等を含む)にズボンや厚手の靴下の上から着用可能な本発明による手足保護具を靴やズボンを脱ぐことなく容易に、且つ、即座に利用できるため、保温に適している。エアコンで冷えた室内での事務作業や仕事(夜勤等)であっても、必要ないときには、すぐに外すことが可能であるため、人の目を気にすることなく利用することができる。
【0028】
バイクの乗車時に本発明による手足保護具を利用することで、簡易な下腿や上肢の負傷防止と保温が可能である。しかしながら、全ての事故の負傷の予防ができるとは言い難い。従来のこの種のプロテクター等はつなぎの下に着用するため、ブーツやズボンを脱いで着用する必要があり着脱に時間が掛かっていたが、本発明による手足保護具は着脱が即座にできる
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形を成した表布及び裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなし、且つ、前記袋体内部に収納された衝撃吸収部材と、から成る手足保護具本体と、
前記手足保護具本体を下腿又は上肢に巻付けた状態で保持する結束ベルトと、から構成される手足保護具であって、
前記表布及び裏布には、袋体の長方形の長辺方向に伸縮可能な生地が用いられており、
前記袋体の長方形の長辺部は、装着者の下腿部分の外周全体を覆うと共に、袋体の巻き始め端部の外側に巻き終り端部が重なった状態で装着され、
前記袋体の長方形の短辺部は、装着者の下腿部分全体を覆った状態で装着され、
前記手足保護具本体には、前記袋体における一方の長辺と他方の長辺との間であって、長辺縁部に平行な位置に前記結束ベルトが設置されており、
前記結束ベルトは、その長手方向に伸縮可能な素材により構成されており、その長さは、前記袋体の長辺方向の長さと同等な長さに構成されており、
前記結束ベルトは、前記袋体の表布の表面に、袋体を構成する表布と裏布及び衝撃吸収部材と一体に縫合されており、
前記結束ベルトは、その一端が前記手足保護具本体の巻き終り端部から突出して取付けられており、当該突出部の裏面には凸面ファスナーが縫合されており、
前記結束ベルトの他端部の表面には、前記凸面ファスナーの2倍の長さの凹面ファスナーが縫合されており、
前記結束ベルトは、前記凸面ファスナー取付け部と前記凹面ファスナー取付け部との間に、前記凸面ファスナーの長さの2倍の間隔を設けて構成されており、
前記結束ベルトは、その他端部を前記手足保護具本体の巻き始め端部から内側にずらした位置に配置されている
ことを特徴とする手足保護具。
【請求項2】
請求項1に記載の手足保護具において、
前記衝撃吸収部材を、軟質ポリウレタンフォームにより構成した
ことを特徴とする手足保護具。
【請求項3】
請求項1に記載の手足保護具において、
前記結束ベルトは、前記袋体における一方の長辺縁部と他方の長辺縁部との間であって、各長辺縁部から短辺長の1/4の位置で、かつ、長辺縁部に平行な位置にそれぞれ設置されている
ことを特徴とする手足保護具。
【請求項4】
長方形を成した表布及び裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなし、且つ、前記袋体内部に収納された衝撃吸収部材と、から成る手足保護具本体と、
前記手足保護具本体を下腿又は上肢に巻付けた状態で保持する結束ベルトと、から構成される手足保護具であって、
前記表布及び裏布には、袋体の長方形の長辺方向に伸縮可能な生地が用いられており、
前記袋体の長方形の長辺部は、装着者の下腿部分の外周全体を覆うと共に、袋体の巻き始め端部の外側に巻き終り端部が重なった状態で装着され、
前記袋体の長方形の短辺部は、装着者の下腿部分全体を覆った状態で装着され、
前記手足保護具本体には、前記袋体における一方の長辺と他方の長辺との間であって、長辺縁部に平行な位置に前記結束ベルトが2本設置されており、
前記各結束ベルトは、その長手方向に伸縮可能な素材により構成されており、その長さは、前記袋体の長辺方向の長さと同等な長さに構成されており、
前記各結束ベルトは、前記袋体の表布の表面に、袋体を構成する表布と裏布及び衝撃吸収部材と一体に縫合されており、
前記各結束ベルトは、その一端が前記手足保護具本体の巻き終り端部から突出して取付けられており、当該突出部の裏面にはそれぞれ凸面ファスナーが縫合されており、
前記各結束ベルトの他端部の表面には、前記凸面ファスナー2倍の長さの凹面ファスナーが縫合されており、
前記各結束ベルトは、前記凸面ファスナー取付け部前記凹面ファスナー取付け部との間に前記凸面ファスナーの長さの2倍の間隔を設けて構成されており、
前記各結束ベルトは、その他端部を前記手足保護具本体の巻き始め端部から内側にずらした位置に配置されている
ことを特徴とする手足保護具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、長方形を成した表布及び裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなし、且つ、前記袋体内部に収納された衝撃吸収部材と、から成る手足保護具本体と、前記手足保護具本体を下腿又は上肢に巻付けた状態で保持する結束ベルトと、から構成される手足保護具であって、前記表布及び裏布には、袋体の長方形の長辺方向に伸縮可能な生地が用いられており、前記袋体の長方形の長辺部は、装着者の下腿部分の外周全体を覆うと共に、袋体の巻き始め端部の外側に巻き終り端部が重なった状態で装着され、前記袋体の長方形の短辺部は、装着者の下腿部分全体を覆った状態で装着され、前記手足保護具本体には、前記袋体における一方の長辺と他方の長辺との間であって、長辺縁部に平行な位置に前記結束ベルトが設置されており、前記結束ベルトは、その長手方向に伸縮可能な素材により構成されており、その長さは、前記袋体の長辺方向の長さと同等な長さに構成されており、前記結束ベルトは、前記袋体の表布の表面に、袋体を構成する表布と裏布及び衝撃吸収部材と一体に縫合されており、前記結束ベルトは、その一端が前記手足保護具本体の巻き終り端部から突出して取付けられており、当該突出部の裏面には凸面ファスナーが縫合されており、前記結束ベルトの他端部の表面には、前記凸面ファスナーの2倍の長さの凹面ファスナーが縫合されており、前記結束ベルトは、前記凸面ファスナー取付け部と前記凹面ファスナー取付け部との間に、前記凸面ファスナーの長さの2倍の間隔を設けて構成されており、前記結束ベルトは、その他端部を前記手足保護具本体の巻き始め端部から内側にずらした位置に配置されていることを特徴とする手足保護具である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明による手足保護具の一実施例の要介護者への使用状況について説明する。要介護者を車椅子に乗車させる際には、まず、手足保護具本体を下腿に巻き始め端部1Sから巻き始め、巻き終り端部1Eを前記巻き始め端部1Sに重ねた状態で、各結束ベルトの一端部2Eの凸面ファスナー21を他端部2Sの凹面ファスナー22に取付ける。この時、結束ベルトの一端部2Eをその長手方向に引っ張って、張力をかけて取付ける。このように結束ベルト2の張力を利用して、手足保護具本体を下腿或いは上肢にしっかりと装着することができる。また、結束ベルトの凸面ファスナー21を設置した一端部2Eは、手足保護具本体1から突き出た構造となっていることから、当該一端部2Eを持って凹面ファスナー22へ簡単に取付けることができる。即ち、特許文献1の介護用プロテクターの裏面に面ファスナーを設置した構造に比べて凸面ファスナー21を確実に凹面ファスナー22に取付ける事ができ、作業性を向上させることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
次に、本発明による前記手足保護具の装着状態について、図5乃至図7により説明する。図5は、本手足保護具を最も太い下肢等に巻いた状態の手足保護具のみを示した図である。また、図5の(a)は、図5に示した手足保護具における結束ベルトの状態を模式的に示した図であり、2本の線で手足保護具を示し、黒太線で凸面ファスナー又は凹面ファスナーの設置部を示している。図示した手足保護具により形成された筒状部分の外周長さは、約47cmであり、内周長さは、約40cm、内径が約13cmである。また、軸方向の長さは、約24.5cmである。この手足保護具の上部中間位置及び下部中間位置に設置された各結束ベルトの凸面ファスナー21と凹面ファスナー22の締結状況は、図5(a)に図示したように、凸面ファスナー21が凹面ファスナー22の他端部2S側に締結されている。この状態において、結束ベルトによって形成されたリング状部分の周長は、凸面ファスナー21取付部分、面ファスナーを設置していない部分及び凹面ファスナー取付部分の約半分となっている。このリング状部分の周長は、最終的に凸面ファスナー21と凹面ファスナー22との締結部分の重なり度合いによって微調整されることになる。図5に示した手足保護具を装着者の下腿に設置された状態が図7である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2