(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032550
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】リアサスペンション付き自転車
(51)【国際特許分類】
B62K 25/10 20060101AFI20250305BHJP
B62K 3/02 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
B62K25/10
B62K3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137872
(22)【出願日】2023-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】523327318
【氏名又は名称】HONBIKE R&D JAPAN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003546
【氏名又は名称】弁理士法人伊藤IP特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 慎司
【テーマコード(参考)】
3D014
【Fターム(参考)】
3D014DD03
3D014DF05
3D014DF12
3D014DF13
3D014DF32
3D014DF37
3D014DF40
(57)【要約】
【課題】リアサスペンション付き自転車において、プログレッシブなクッション特性を実現できる技術を提供する。
【解決手段】本開示のリアサスペンション付き自転車は、フレームと、サスペンションピボット9を介してフレームに揺動可能に取り付けられたスイングアーム10と、スイングアーム10に接続されたピボットリンク30と、フロントボディ6とピボットリンク30との間に接続され、ストローク速度に比例した減衰力を発生させるリアサスペンション13と、を備えた、自転車1において、ピボットリンク30は、3つのピボットマウントを有し、第1ピボットマウント31がスイングアーム10に枢動可能に結合され、第2ピボットマウント32がリアサスペンション13に枢動可能に結合され、第3ピボットマウント33がアーム40を介してフレームに枢動可能に結合される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートチューブ、ヘッドチューブ及びフロントボディで構成されたフレームと、
サスペンションピボットを介して前記フレームに揺動可能に取り付けられたスイングアームと、
前記スイングアームに接続されたピボットリンクと、
前記フロントボディと前記ピボットリンクとの間に接続され、ストローク速度に比例した減衰力を発生させるリア緩衝部と、
を備えた、自転車において、
前記ピボットリンクは、3つのピボットマウントを有し、第1ピボットマウントが前記スイングアームに枢動可能に結合され、第2ピボットマウントが前記リア緩衝部に枢動可能に結合され、第3ピボットマウントがアームを介して前記フレームに枢動可能に結合される、
リアサスペンション付き自転車。
【請求項2】
前記ピボットリンクは、
少なくとも3つの頂点を有し、前記3つのピボットマウントのうちの何れか1つが該頂点に配置される、
請求項1に記載のリアサスペンション付き自転車。
【請求項3】
前記ピボットリンクは、3つの頂点を有する3角に形成され、且つ前記第2ピボットマウントが、該3つの頂点のうち前記自転車の高さ方向における最も高い位置の頂点に配置され、
前記アームは、前記スイングアームを介して揺動可能に配置されたリアアクスルが所定の初期状態にあるとき、前記リア緩衝部のストローク方向の仮想線と該アームの長手方向の仮想線とが鋭角をなすように配置される、
請求項2に記載のリアサスペンション付き自転車。
【請求項4】
前記アームは、前記リアアクスルが上方にストロークするほど、前記リア緩衝部のストローク方向の仮想線と該アームの長手方向の仮想線とがなす角度が大きくなるように、前記フレームに設けられたアームピボットを中心に回転可能に構成される、
請求項3に記載のリアサスペンション付き自転車。
【請求項5】
前記ピボットリンクは、3つの頂点を有する3角に形成され、且つ前記第2ピボットマウントが、該3つの頂点のうち前記自転車の高さ方向における最も高い位置の頂点に配置され、
前記自転車は、
前記フレーム、前記スイングアーム及び前記アームの形状が保持されたまま、前記第2ピボットマウントが配置される頂点の位置が変更された前記ピボットリンクが用いられることで、ストローク量が異なる種々の前記リア緩衝部を搭載可能に構成される、
請求項2に記載のリアサスペンション付き自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログレッシブなクッション特性を実現し得るリアサスペンション付き自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マウンテンバイク等にリアサスペンション付きのフレームを用いることが知られている。そして、一般に、リアサスペンション付きの自転車は、1点ピボット式と多点ピボット式とに分けられ、いずれの方式においても、凹凸の激しい路面の走行時にリアサスペンションが作動することにより、起伏のある地形をスムーズに走行することを可能にしている。
【0003】
そして、クッション特性の設計自由度を高められる多点ピボット式のリアサスペンションにおいては、4つのリンクを備えた4バーリンク機構が用いられることがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、ピボットリンク、シートステー、チェーンステー、およびシートチューブによって提供される4つのリンクを備えた4バーリンク機構の自転車が開示されている。そして、この自転車は、スプリングマウント、ピボットマウント、およびスプリングマウントをピボットマウントに実質的に直接接続する補強支柱を確定するメインフレームを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0233046号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から知られている多点ピボット式のリアサスペンションによれば、クッション特性の設計自由度を高めることができるため、起伏のある地形でもよりスムーズに走行することができるようにも思われる。ここで、マウンテンバイク等の自転車は、起伏のある未舗装路だけでなく平坦な舗装路の走行に用いられることもあり、更に、フィールドに応じて様々な種類(クロスカントリー、トレイル、エンデューロ、ダウンヒル等)が開発されている。しかしながら、ユーザ視点から捉えると、1台の自転車で様々なフィールドに対応できることが望ましい。
【0007】
そこで、本開示人は、リアサスペンション付き自転車に対して、非線形なクッション特性を付与することで、良好な乗り心地で平坦な舗装路から起伏のある未舗装路まで走行できることを新たに見出した。なお、特許文献1に記載の技術は、リアサスペンション付き自転車において、フレームの横方向またはねじり剛性を向上させたフレームを提供するものであって、プログレッシブなクッション特性を実現するものではない。
【0008】
本開示の目的は、リアサスペンション付き自転車において、プログレッシブなクッション特性を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のリアサスペンション付き自転車は、シートチューブ、ヘッドチューブ及びフロントボディで構成されたフレームと、サスペンションピボットを介して前記フレームに揺動可能に取り付けられたスイングアームと、前記スイングアームに接続されたピボットリンクと、前記フロントボディと前記ピボットリンクとの間に接続され、ストローク速度に比例した減衰力を発生させるリア緩衝部と、を備えた、自転車において、前記ピボットリンクは、3つのピボットマウントを有し、第1ピボットマウントが前記スイングアームに枢動可能に結合され、第2ピボットマウントが前記リア緩衝部に枢動可能に結合され、第3ピボットマウントがアームを介して前記フレームに枢動可能に結合される。
【0010】
上記のリアサスペンション付き自転車では、ピボットリンクおよびアームによってプログレッシブなクッション特性が実現されることで、平坦な舗装路から起伏のある未舗装路まで良好な乗り心地で走行することが可能になる。詳しくは、自転車が平坦な舗装路を走行時には、リア緩衝部において反発力が比較的小さくなることになり、滑らかな乗り心地となる。一方で、自転車が起伏のある未舗装路を走行時には、リア緩衝部において反発力が比較的大きくなることになり、しっかりとした乗り心地となる。
【0011】
そして、上記のリアサスペンション付き自転車において、前記ピボットリンクは、少なくとも3つの頂点を有し、前記3つのピボットマウントのうちの何れか1つが該頂点に配置されてもよい。
【0012】
この場合、前記ピボットリンクは、3つの頂点を有する3角に形成され、且つ前記第2ピボットマウントが、該3つの頂点のうち前記自転車の高さ方向における最も高い位置の頂点に配置され、前記アームは、前記スイングアームを介して揺動可能に配置されたリアアクスルが所定の初期状態にあるとき、前記リア緩衝部のストローク方向の仮想線と該アームの長手方向の仮想線とが鋭角をなすように配置され得る。更に、前記アームは、前記リアアクスルが上方にストロークするほど、前記リア緩衝部のストローク方向の仮想線と該アームの長手方向の仮想線とがなす角度が大きくなるように、前記フレームに設けられたアームピボットを中心に回転可能に構成されてもよい。このような構成によれば、リアアクスルのストローク量が比較的小さいときには、リア緩衝部のストローク量が、リアアクスルのストローク量に対してほぼ線形に比例することになる。一方で、リアアクスルのストローク量が比較的大きいときには、リア緩衝部のストローク量が、リアアクスルのストローク量に対して非線形的に変化するようになり、リアアクスルのストローク量が大きくなるにつれて、リア緩衝部で発生する反発力および減衰力が次第に大きくなる。
【0013】
また、前記ピボットリンクは、3つの頂点を有する3角に形成され、且つ前記第2ピボットマウントが、該3つの頂点のうち前記自転車の高さ方向における最も高い位置の頂点に配置され、前記自転車は、前記フレーム、前記スイングアーム及び前記アームの形状が保持されたまま、前記第2ピボットマウントが配置される頂点の位置が変更された前記ピボットリンクが用いられることで、ストローク量が異なる種々の前記リア緩衝部を搭載可能に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示のリアサスペンション付き自転車によれば、プログレッシブなクッション特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態におけるリアサスペンション付き自転車の概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態におけるピボットリンクおよびアームの配置構造を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態におけるピボットリンクの詳細形状を例示する図である。
【
図4】リアアクスルが所定の初期状態にあるときのピボットリンクおよびアームの姿勢を示す図である。
【
図5】リアアクスルが所定のストローク状態にあるときのピボットリンクおよびアームの姿勢を示す図である。
【
図6】リアアクスルのストローク量とリアサスペンションのストローク量との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態におけるリアサスペンション付き自転車の概要について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態におけるリアサスペンション付き自転車の概略構成を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る自転車1は、サドル2を支持するシートチューブ3と、ハンドル4を支持するヘッドチューブ5と、フロントボディ6と、によって、構成されたフレームを備える。なお、フロントボディ6には、シートチューブ3の下部とヘッドチューブ5の下部とがそれぞれ接合される。なお、自転車1は、ヘッドチューブ5から前方斜め下向きに延びるフロントフォーク20を有し、このフロントフォーク20の下端部には、前輪21が回転自在に装着されている。
【0019】
そして、自転車1は、サスペンションピボット9を介して上記のフレームに揺動可能に取り付けられたスイングアーム10を備える。なお、このスイングアーム10には、後輪11を回転させるリアアクスル12が軸支される。また、自転車1は、上記のフレームに回転自在に取り付けられた駆動側回転部材7、および、駆動側回転部材7の回転軸の両端に連結され、先端にペダルが取り付けられるとともに駆動側回転部材7と一体に回転するクランク8を有している。
【0020】
更に、自転車1においては、上記のスイングアーム10に対して、後述するピボットリンク30が接続される。そして、フロントボディ6とピボットリンク30との間には、リアサスペンション13が接続される。
【0021】
リアサスペンション13は、シリンダが上側で該シリンダ内のピストンと共にストロークするピストンロッドが下側となるように配置されたダンパー(減衰装置)と、シリンダの上端部およびピストンロッドの下端部にそれぞれ設けられたフランジ部間に所定の初期荷重となるようにセットされたスプリングと、を有する。このようなリアサスペンション13は、ストローク速度に比例した減衰力を発生させることができる。
【0022】
そして、リアサスペンション13は、シリンダが配置された上方側がサスペンションマウント131を介してフロントボディ6に支持され、ピストンロッドが配置された下方側がヨーク132を介してピボットリンク30に接続される。
【0023】
ここで、マウンテンバイク等の自転車にリアサスペンションを搭載することで、起伏のある地形のスムーズな走行が可能になることが知られている。しかしながら、マウンテンバイク等の自転車は、起伏のある未舗装路だけでなく平坦な舗装路の走行に用いられることもあり、従来までの技術では、1台の自転車で様々なフィールドに対応させることが困難であった。
【0024】
そこで、本開示人は鋭意検討を行った結果、リアサスペンション付き自転車に対して、非線形なクッション特性を付与することで、良好な乗り心地で平坦な舗装路から起伏のある未舗装路まで走行できることを新たに見出した。
【0025】
そして、このようなプログレッシブなクッション特性は、ピボットリンク30およびアーム40によって実現される。
【0026】
詳しくは、本実施形態におけるリアサスペンション付き自転車において、ピボットリンク30は、3つのピボットマウントを有し、第1ピボットマウントがスイングアーム10に枢動可能に結合され、第2ピボットマウントがリアサスペンション13に枢動可能に結合され、第3ピボットマウントがアーム40を介してフレームに枢動可能に結合される。これについて、
図2に基づいて以下に説明する。
【0027】
図2は、本実施形態におけるピボットリンク30およびアーム40の配置構造を説明するための図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態におけるピボットリンク30は、3つの頂点を有する3角に形成される。そして、これら頂点のそれぞれに、上記の3つのピボットマウントのうちの何れか1つが配置される。
【0029】
具体的には、リアサスペンション13に枢動可能に結合される第2ピボットマウント32が、上記の3つの頂点のうち自転車1の高さ方向における最も高い位置の頂点に配置される。そして、スイングアーム10に枢動可能に結合される第1ピボットマウント31は、残りの2つの頂点のうちの後輪11側の頂点に配置され、アーム40を介してフレームに枢動可能に結合される第3ピボットマウント33は、残りの2つの頂点のうちの前輪21側の頂点に配置される。
【0030】
なお、本実施形態におけるピボットリンク30は、自転車1の幅方向に左右対称に形成され、自転車1の側方視における3角形状が左右夫々に形成されている。ここで、
図3は、本実施形態におけるピボットリンク30の詳細形状を例示する図であって、
図3に示すように、第2ピボットマウント32および第3ピボットマウント33が、左右夫々に配置される。そして、各第3ピボットマウント33にアーム40が接続されることで、ピボットリンク30は、2本のアーム40を介してフレームに接続されることになる。また、各第2ピボットマウント32には、ブリッジ状のヨーク132が接続される。ここで、左右夫々に形成された、自転車1の側方視における3角形状は、第1ピボットマウント31の部分で剛体結合され、該第1ピボットマウント31に対して、左右夫々のスイングアーム10が枢動可能に結合される。
【0031】
次に、ピボットリンク30およびアーム40によって実現されるプログレッシブなクッション特性について、
図4から
図6に基づいて説明する。
【0032】
図4は、リアアクスル12が所定の初期状態にあるときのピボットリンク30およびアーム40の姿勢を示す図である。
【0033】
ここで、上記の初期状態とは、例えば、自転車1が停車中のときのように、リアアクスル12が上下にストロークしていない状態であって、この場合、
図4(a)に示すように、リアサスペンション13も伸長した状態にある。
【0034】
そして、リアアクスル12がこのような初期状態にあるとき、アーム40は、リアサスペンション13のストローク方向と鋭角をなしている。ここで、
図4(b)は、自転車1が有する各ピボットの位置関係を表す図であって、第1ピボットマウント31、第2ピボットマウント32、および第3ピボットマウント33によって、ピボットリンク30の3角形状が表現され得る。また、スイングアーム10は、サスペンションピボット9、およびリアマウント点121によって表現され得る。更に、
図4(b)には、リアサスペンション13のストローク方向の仮想線L1、およびアーム40の長手方向の仮想線L2が示される。なお、アーム40の長手方向の仮想線L2は、第3ピボットマウント33と、フレームに対してアーム40を枢動可能に支持するアームピボット41と、を結ぶ線である。
【0035】
そうすると、リアアクスル12が初期状態にあるとき、アーム40は、リアサスペンション13のストローク方向の仮想線L1と該アーム40の長手方向の仮想線L2とが鋭角をなすように配置されることになる。
【0036】
一方で、
図5は、リアアクスル12が所定のストローク状態にあるときのピボットリンク30およびアーム40の姿勢を示す図である。
【0037】
ここで、上記のストローク状態とは、例えば、自転車1が凹凸の激しい路面を走行しているときのように、リアアクスル12が上方に大きくストロークした状態であって、この場合、
図5(a)に示すように、リアサスペンション13もストロークした状態(縮んだ状態)にある。
【0038】
そして、リアアクスル12がこのようなストローク状態にあるとき、アーム40は、リアサスペンション13のストローク方向と鈍角をなしている。ここで、
図5(b)は、自転車1が有する各ピボットの位置関係を表す図であって、リアアクスル12が初期状態にある
図4(b)と比較して、アーム40の長手方向の仮想線L2がアームピボット41を中心として回転していることが判る。その結果、リアサスペンション13のストローク方向の仮想線L1とアーム40の長手方向の仮想線L2とが鈍角をなすことになる。
【0039】
このように、アーム40は、リアアクスル12が上方にストロークするほど、リアサスペンション13のストローク方向の仮想線L1と該アーム40の長手方向の仮想線L2とがなす角度が大きくなるように、フレームに設けられたアームピボット41を中心に回転可能に構成される。
【0040】
そして、上記を、アーム40の長手方向の仮想線L2における、アームピボット41と、仮想線L1との交点と、の間の線分(以下、「アーム回転半径」と称する場合もある。)に着目して捉えることで、プログレッシブなクッション特性を説明することができる。
【0041】
ここで、
図6は、リアアクスル12のストローク量とリアサスペンション13のストローク量との関係を例示する図である。
【0042】
本実施形態の自転車1では、リアアクスル12が初期状態にあるときの仮想線L1と仮想線L2とがなす角度が、90°に近い鋭角とされている。そして、リアアクスル12が初期状態から上方にストロークしていくと、仮想線L1と仮想線L2とがなす角度は、90°に近い鋭角から90°に近い鈍角に大きくなっていく。このとき、上記角度が90°近傍で変化していることになるため、上記のアーム回転半径は、ほぼ一定の長さとなる。そうすると、
図6に示す低ストローク側比例特性に表されるように、リアサスペンション13のストローク量は、リアアクスル12のストローク量に対してほぼ線形に比例することになる。
【0043】
一方で、リアアクスル12のストローク量が更に増大していくと、仮想線L1と仮想線L2とがなす角度は、90°に近い鈍角から大きくなっていくことになる。そうすると、上記のアーム回転半径は、仮想線L1と仮想線L2とがなす角度が増大するにしたがって漸増することになり、
図6に示す高ストローク側比例特性に表されるように、リアサスペンション13のストローク量は、リアアクスル12のストローク量に対して非線形的に変化するようになる。
【0044】
つまり、上述したピボットリンク30およびアーム40の配置構造によれば、リアサスペンション13のストローク量の変化が、リアアクスル12のストローク量が小さい低ストローク側よりもリアアクスル12のストローク量が大きい高ストローク側で大きくなる結果、リアアクスル12のストローク量が大きくなるにつれて、リアサスペンション13で発生する反発力が次第に大きくなることになる。また、リアアクスル12のストローク量が大きい高ストローク側におけるリアサスペンション13のピストンのストローク速度が、リアアクスル12のストローク量が小さい低ストローク側におけるリアサスペンション13のピストンのストローク速度よりも大きくなる結果、リアアクスル12のストローク量が大きくなるにつれて、リアサスペンション13で発生する減衰力も次第に大きくなることになる。
【0045】
そして、このようにして、ピボットリンク30およびアーム40によってプログレッシブなクッション特性が実現されることで、平坦な舗装路から起伏のある未舗装路まで良好な乗り心地で走行することが可能になる。詳しくは、自転車1が平坦な舗装路を走行時には、リアアクスル12のストローク量の変化が比較的小さくなるため(この場合、リアサスペンション13のストローク特性は、上記の
図6に示した低ストローク側比例特性となる。)、リアサスペンション13において、反発力が比較的小さくなることになり、滑らかな乗り心地となる。一方で、自転車1が起伏のある未舗装路を走行時には、リアアクスル12のストローク量の変化が比較的大きくなるため(この場合、リアサスペンション13のストローク特性は、上記の
図6に示した高ストローク側比例特性となる。)、リアサスペンション13において、反発力が比較的大きくなることになり、しっかりとした乗り心地となる。
【0046】
以上に述べた自転車1によれば、プログレッシブなクッション特性を好適に実現することができる。
【0047】
<第2実施形態>
第2実施形態におけるリアサスペンション付き自転車について、以下に説明する。なお、本実施形態に係る自転車1の構造は、上記の第1実施形態の説明で述べたものと同様であって、本実施形態に係る自転車1では、リアサスペンション13およびピボットリンク30が組として取替え可能に構成される。
【0048】
マウンテンバイク等の自転車では、従来から、フィールドに応じて様々な種類(クロスカントリー、トレイル、エンデューロ、ダウンヒル等)が開発されていて、これら自転車では、クッション特性が異なっている傾向にある。ここで、異なるクッション特性を実現するためには、ストローク量が異なるリア緩衝部を使い分けることが考えられるが、従来の自転車では、リア緩衝部の変更(ストローク量の変更)がフレームやスイングアームに対する取付け諸元に影響を及ぼすため、リア緩衝部の変更に伴ってこれらも変更せざるを得なかった。
【0049】
そこで、本実施形態に係る自転車1では、フレーム、スイングアーム10及びアーム40の形状が保持されたまま、第2ピボットマウント32が配置される頂点の位置が変更されたピボットリンク30が用いられることで、ストローク量が異なる種々のリアサスペンション13を搭載可能に構成される。
【0050】
つまり、上記の自転車1では、3つの頂点を有する3角に形成され、これら頂点のそれぞれに3つのピボットマウント(第1ピボットマウント31、第2ピボットマウント32、第3ピボットマウント33)のうちの何れか1つが配置されるピボットリンク30を備えることで、リアサスペンション13のクッション特性に合わせた取付け諸元を有するピボットリンク30をリアサスペンション13と組として用いることができる。これによれば、リアサスペンション13の変更がフレームやスイングアーム10に対する取付け諸元に影響を与えることなく、つまり、フレーム、スイングアーム10及びアーム40の形状が保持されたまま、ストローク量が異なる種々のリアサスペンション13を搭載することが可能になる。
【0051】
以上に述べた自転車1によれば、プログレッシブなクッション特性を実現し得るリアサスペンション付き自転車において、1台の自転車で様々なフィールドにより好適に対応させることが可能になる。
【0052】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、上記の実施形態で説明した自転車1は、電動アシストマウンテンバイク(eMTB)であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1・・・・・自転車
6・・・・・フロントボディ
9・・・・・サスペンションピボット
10・・・・スイングアーム
12・・・・リアアクスル
13・・・・リアサスペンション
30・・・・ピボットリンク
31・・・・第1ピボットマウント
32・・・・第2ピボットマウント
33・・・・第3ピボットマウント
40・・・・アーム