(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032599
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】車両のインストルメントパネル部構造
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20240101AFI20250305BHJP
B60K 35/50 20240101ALI20250305BHJP
【FI】
B60K37/00 D
B60K37/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137962
(22)【出願日】2023-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】阪本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尊彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴士
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA00
3D344AA05
3D344AB01
3D344AC07
3D344AC15
3D344AD11
(57)【要約】
【課題】空調用の空気吹き出し口部の見栄えをよくするとともに、空調用の空気吹き出し口部の一部がインストルメントパネル部の外表面における外表面における突起部になることの抑制などを、簡易な構成によって適切に行なうことが可能な車両のインストルメントパネル部構造を提供する。
【解決手段】車室1の前部に設けられたインストルメントパネル部2と、開口部30が車室1側を向いて開口するようにインストルメントパネル部2に設けられ、かつ開口部30の形成箇所から車両前方側に窪んだ凹状部31を有し、この凹状部31内に物品配置領域31aが設けられている物入れ部3と、インストルメントパネル部2に設けられている空調用の空気吹き出し口部4と、を備えている、車両のインストルメントパネル部構造Aであって、空調用の空気吹き出し口部4の少なくとも一部は、物入れ部3の凹状部31内に位置している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前部に設けられたインストルメントパネル部と、
開口部が前記車室側を向いて開口するように前記インストルメントパネル部に設けられ、かつ前記開口部の形成箇所から車両前方側に窪んだ凹状部を有し、この凹状部内に物品配置領域が設けられている物入れ部と、
前記インストルメントパネル部に設けられている空調用の空気吹き出し口部と、
を備えている、車両のインストルメントパネル部構造であって、
前記空調用の空気吹き出し口部の少なくとも一部は、前記物入れ部の前記凹状部内に位置していることを特徴とする、車両のインストルメントパネル部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のインストルメントパネル部構造であって、
前記空調用の空気吹き出し口部の全体が、前記物入れ部の前記凹状部内に位置している、車両のインストルメントパネル部構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両のインストルメントパネル部構造であって、
前記空調用の空気吹き出し口部に空調用空気を供給するための空調用ダクト部は、少なくとも一部が前記物品配置領域を形成する壁部に接近した配置に設けられており、
前記壁部のうち、前記空調用ダクト部に対向接近する箇所には、前記空調用ダクト部の周辺空気を前記凹状部内の前記物品配置領域に流入可能とする通気用孔部が設けられている、車両のインストルメントパネル部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両のインストルメントパネル部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネル部構造の具体例として、特許文献1,2に記載の構造がある。
これらの文献に記載された構造においては、車室の前部に位置するインストルメントパネル部に、空調用の空気吹き出し口部、および物入れ部が設けられている。物入れ部に物品を配置させた状態においては、空調用の空気吹き出し口部から吹き出される空気を前記物品に作用させることが可能とされている。このため、空調用の空気吹き出しを利用して物品の冷却または暖めが可能であり、合理的である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、空調用の空気吹き出し口部は、略全体がインストルメントパネル部の外表面に露出した状態に設けられている。このため、空調用の空気吹き出し口部のバリなどが丸見え状態となり、見栄えが余りよくない。また、空調用の空気吹き出し口部の構成部材の一部(エッジ部など)が、インストルメントパネル部の外表面における突起部となる虞がある。前記突起部の存在は、車両の前突時などにおける乗員保護の観点からすると望ましいものではない。前記突起部ができる限り発生しないようにするには、空調用の空気吹き出し口部の設計・製作に大きな注意を払う必要があり、製造コスト・生産性の面で不利を生じる。
さらに、特許文献1においては、物入れ部に配置された物品に空調用の空気を作用させるための構造として、所定の開閉ドアを利用している。したがって、全体構造が複雑であり、生産性に劣り、製造コストが高い。
一方、特許文献2においては、空調用の空気吹き出し口部の前に物品が位置するため、特許文献1と比較すると、全体構造を簡易にすることが可能である。ところが、この特許文献2においては、空調用の空気吹き出し口部から吹き出された空気が物品に当たることによって、この空気の流れが乱され、本来意図する箇所に空気を効率よく送風させることが困難となる虞がある。また、空調用の空気吹き出し口部の前に物品が位置する様は、余り見栄えが良いものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07-186779号公報
【特許文献2】特開2012-153222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、空調用の空気吹き出し口部の見栄えをよくするとともに、空調用の空気吹き出し口部の一部がインストルメントパネル部の外表面における突起部になることの抑制などを、簡易な構成によって適切に行なうことが可能な車両のインストルメントパネル部構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される車両のインストルメントパネル部構造は、車室の前部に設けられたインストルメントパネル部と、開口部が前記車室側を向いて開口するように前記インストルメントパネル部に設けられ、かつ前記開口部の形成箇所から車両前方側に窪んだ凹状部を有し、この凹状部内に物品配置領域が設けられている物入れ部と、前記インストルメントパネル部に設けられている空調用の空気吹き出し口部と、を備えている、車両のインストルメントパネル部構造であって、前記空調用の空気吹き出し口部の少なくとも一部は、前記物入れ部の前記凹状部内に位置していることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
空調用の空気吹き出し口部は、少なくとも一部が物入れ部の凹状部内に位置しているため、空調用の空気吹き出し口部の全体がインストルメントパネル部の外表面に露出することを回避し、たとえば空調用の空気吹き出し口部のバリが目立った状態にはならないようにできる。このため、見栄えをよくすることができる。
また、空調用の空気吹き出し口部のうち、物入れ部の凹状部に位置する部分については、インストルメントパネル部の外表面に直接的には露出しない。このため、空調用の空気吹き出し口部の一部(エッジ部など)がインストルメントパネル部の外表面における突起部となる虞を少なくすることができる。その結果、車両の前突時などにおける乗員保護性能をよくすることが可能となる。
背景技術の欄において述べたとおり、前記突起部ができる限り発生しないようにするには、空調用の空気吹き出し口部の設計・製作に大きな注意を払う必要があるが、本発明においてはそのような必要性を少なくすることが可能である。したがって、製造コスト・生産性の面で有利となる。
さらに重要な効果として、本発明において、空調用の空気吹き出し口部から空気吹き出しがなされて車室への送風が行なわれるときには、空気吹き出しによる吸引負圧が物入れ部の凹状部内の物品配置領域に作用する。その結果、凹状部内の物品配置領域に存在する空気を車室内側に排出させることが可能となり、物品配置領域にたとえば熱気などが籠もることを抑制することが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記空調用の空気吹き出し口部の全体が、前記物入れ部の前記凹状部内に位置している。
【0011】
このような構成によれば、空調用の空気吹き出し口部のエッジなどがインストルメントパネル部の外表面に露出することが徹底して防止される。したがって、見栄えをよくし、またインストルメントパネル部や空調用の空気吹き出し口部の製造コストを低減するなどの上で一層有利である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記空調用の空気吹き出し口部に空調用空気を供給するための空調用ダクト部は、少なくとも一部が前記物品配置領域を形成する壁部に接近した配置に設けられており、前記壁部のうち、前記空調用ダクト部に対向接近する箇所には、前記空調用ダクト部の周辺空気を前記凹状部内の前記物品配置領域に流入可能とする通気用孔部が設けられている。
【0013】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、空調用の空気吹き出し口部から空気吹き出しがなされて車室への送風が行なわれるときには、空調用ダクト部の周辺空気が前記通気用孔部を介して物入れ部の凹状部内の物品配置領域に流入する。このため、物品配置領域に存在する空気の入れ替えが促進される。
第2に、空調用ダクト部の周辺空気は、空調用ダクト部によってたとえば冷却(または
加熱)された状態にある。このため、周辺空気を凹状部内の物品配置領域に流入させることにより、この周辺空気を利用して物品の冷却(または加熱)が可能となる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る車両のインストルメントパネル部構造の一例を示す要部概略斜視図である。
【
図3】
図1および
図2に示す構造に用いられている物品収納ボックスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1および
図2に示す車両のインストルメントパネル部構造Aは、車室1の前部に設けられたインストルメントパネル部2、物入れ部3、および空調用の空気吹き出し口部4を備えている。
【0018】
インストルメントパネル部2は、樹脂製などのインストルメントパネル20を用いて構成されているが、このインストルメントパネル20に付属して取付けられた他のパネル類なども含む。このインストルメントパネル部2は、センタークラスタ部Cを有している。このセンタークラスタ部Cは、車幅方向の略中央部に位置し、かつ傾斜または非傾斜で上下高さ方向に起立した態様のパネル21(インストルメントパネル20の一部、またはこれに代わるパネル)を有している。
【0019】
物入れ部3は、スマートフォンなどの所望の物品9を収容するための部分であり、センタークラスタ部Cに設けられている。この物入れ部3は、開口部30が車室1側を向いて開口しており、かつ開口部30の形成箇所から車両前方側に窪んだ凹状部31を有している。凹状部31は、換言すると、センタークラスタ部Cのパネル21よりも車両前方側に窪んだ部分である。
【0020】
物入れ部3は、
図3に示す物品収納ボックスBを用いて構成されている。物品収納ボックスBは、ボックス本体部材50、上蓋部材51(薄墨部分)、および取付け枠52(網点模様部分)が組み合わされて構成されている。
物品収納ボックスBは、上壁部55a、左右両側壁部55b、底壁部55c、および車両前方側奥部に位置する奥壁部55dを有しており、かつこれらによって囲まれた凹状の空間部としての物品配置領域31aを形成している。この物品配置領域31aは、物入れ部3の凹状部31内の一部の領域である。また、物品配置領域31aの手前側部分(車室1側)の上縁部52aと下縁部50aとの間には、物品配置領域31aに連通する開口部53が形成されている。
【0021】
図2によく表われているように、底壁部55c上には、スマートフォン用のコードレスタイプの充電器6が設置されている。物入れ部3内(凹状部31内)に物品9としてスマートフォンを差し入れると、このスマートフォンは充電器6上に載せられ、充電可能である。底壁部55cには、充電器6の配線用などの開口部56が設けられている。
【0022】
物品収納ボックスBは、その開口部53がセンタークラスタ部Cの開口部30に一致するように位置合わせされた状態で、センタークラスタ部Cのパネル21の裏面側(車両前
方側)に取付けられている。この取付けは、取付け枠52の上部、およびボックス本体部材50の下縁部50a左右両側部分を、パネル21の被取付け部70,71に固定連結することにより図られている。この固定連結手段として、図面では、ネジ体79が用いられているが、これに限定されず、たとえば係合クリップなどの他の固定手段であってもよい。
【0023】
空調用の空気吹き出し口部4は、
図1に示すように、たとえば左右2つに分かれた配置に設けられており、
図2に示すような縦ルーバ41や横ルーバ42が設けられている。この空調用の空気吹き出し口部4は、空調用ダクト部8に差し込み連結されたたとえば短筒状のハウジング部材40を用いて構成されている。ハウジング部材40の終端開口部およびその付近が、空調用の空気吹き出し口部4である。
この空調用の空気吹き出し口部4は、その全体が物入れ部3の凹状部31内に位置するように取付けられている。この取付けは、たとえばパネル21の裏面側の被取付け部72に上部を固定連結し、かつ物品収納ボックスBの上縁部52aに下部を固定連結することにより図られている。
【0024】
空調用ダクト部8は、空調用の空気吹き出し口部4に空調用空気を供給するためのダクト部であり、少なくともその一部が物入れ部3(物品収納ボックスB)の上壁部55aに接近した配置に設けられている。上壁部55aのうち、空調用ダクト部8に対向接近する箇所には、空調用ダクト部8の周辺空気を凹状部31内の物品配置領域31aに流入可能とする少なくとも1つの通気用孔部57が設けられている。
この通気用孔部57は、好ましくは、
図3の物品収納ボックスBの上蓋部材51と取付け枠52の連結箇所に設けられている。より具体的には、上蓋部材51および取付け枠52の上壁部55aを形成する部分は、それらの一端部どうしが突き合わせ状態に連結されており、それら一端部の双方または一方に切欠き凹部が形成されている。この切欠き凹部が通気用孔部57とされている。ただし、これに代えて、上壁部55aの適当な箇所に一般的な貫通孔を設け、これを通気用孔部57としてもよい。
【0025】
次に、前記した車両のインストルメントパネル部構造Aの作用について説明する。
【0026】
空調用の空気吹き出し口部4は、その全体が物入れ部3の凹状部31内に位置している。このため、空調用の空気吹き出し口部4がインストルメントパネル部2の外表面に目立つ状態で露出しないようにし、見栄えをよくすることが可能である。
また、空調用の空気吹き出し口部4の一部(エッジ部など)が、インストルメントパネル部2の外表面における突起部となる虞をなくすことも可能である。前記突起部は、車両の前突時などにおける乗員保護性能を高める上で余り好ましい部位とは言えないが、本実施形態によれば、前記突起部が生じないようにすることが可能である。
このようなことから、空調用の空気吹き出し口部の設計・製作に際し、バリなどが極力発生しないように配慮する必要性が少なくなる。その結果、生産性を高め、製造コストの低減を図ることが可能である。
【0027】
空調用の空気吹き出し口部4から空気吹き出しがなされて車室1への送風が行なわれる際には、空気吹き出しによる吸引負圧が物入れ部3の凹状部31内の物品配置領域31a内に作用する。その結果、物品配置領域31aの空気を開口部30から車室1内側に流れさせ、物品配置領域31aにおける空気滞留状態を解消することができる。
とくに、本実施形態においては、通気用孔部57が設けられているため、空調用の空気吹き出し口部4から空気吹き出しがなされているときには、空調用ダクト部8の周辺空気が通気用孔部57を介して凹状部31内の物品配置領域31aに流入する。このため、物品配置領域31aに存在する空気の入れ替えはより促進される。また、空調用ダクト部8の周辺空気は、空調用ダクト部8によって冷却(または加熱)された状態にある。このた
め、前記周辺空気を物品配置領域31aに導くことにより、この周辺空気を利用して物品9の冷却(または加熱)が可能となる。
【0028】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両のインストルメントパネル部構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0029】
上述の実施形態においては、空調用の空気吹き出し口部の全部が物入れ部の凹状部内に配置されているが、本発明はこれに限定されない。空調用の空気吹き出し口部の少なくとも一部が、物入れ部の凹状部内に配置された構成とすることもできる。
また、空調用の空気吹き出し口部は、物入れ部の凹状部内の上部に配置されることに代えて、たとえば物入れ部の凹状部の横部、または下部などに配置されていてもよい。
【0030】
物入れ部は、センタークラスタ部とは異なる箇所に設けた構成とすることもできる。
上述の実施形態においては、ワイヤレスタイプの充電器が取付けられているが、これに代えて、たとえばインストルメントパネル部に別途設けられたUSBを利用して充電されているスマートフォンを物入れ部の凹状部に配置可能な構成とすることもできる。
物入れ部に収容される物品の種類は限定されない。
【符号の説明】
【0031】
A 車両のインストルメントパネル部構造
1 車室
2 インストルメントパネル部
3 物入れ部
30 開口部
31 凹状部
31a 物品配置領域
4 空調用の空気吹き出し口部
57 通気用孔部
8 空調用ダクト部
9 物品