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特開2025-32639液体吐出ヘッド、制御装置、及び液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032639
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、制御装置、及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20250305BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 403
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138038
(22)【出願日】2023-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】324006865
【氏名又は名称】理想テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】横越 優子
(72)【発明者】
【氏名】原田 蒼太
(72)【発明者】
【氏名】ウォン メンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】小熊 実
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB58
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC53
2C056ED03
2C056FA04
2C057AF21
2C057AG45
2C057AM17
2C057AR08
2C057BA03
2C057BA14
2C057CA04
(57)【要約】
【課題】画像乱れを抑制することが可能な液体吐出ヘッド、制御装置、及び液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、アクチュエータと、駆動部と、を備える。
アクチュエータは圧力室の容積を変化させる。駆動部は、前記アクチュエータを駆動する。駆動部は、複数階調の吐出信号により前記アクチュエータを駆動する吐出動作を行うとともに、前記吐出動作の直前に、所定時間以上、非吐出時間がある場合、前記吐出動作における階調に応じて、前記非吐出時間に液体の吐出を伴わずに圧力振動させるプリカーサ信号により前記アクチュエータを駆動する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室の容積を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動する駆動部を備え、
前記駆動部は、複数階調の吐出信号により前記アクチュエータを駆動する吐出動作を行うとともに、前記吐出動作の直前に、所定時間以上、非吐出時間がある場合、前記吐出動作における階調に応じて、前記非吐出時間に液体の吐出を伴わずに圧力振動させるプリカーサ信号により前記アクチュエータを駆動する、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記駆動部は、液体吐出を伴う吐出対象の画素の形成タイミングにおいて、当該吐出対象の画素の階調数に応じた吐出信号を入力するとともに、
規定階調以上の吐出信号で駆動する吐出対象の画素の形成タイミングの直前に、非吐出となる画素が2以上連続した場合に、前記吐出対象の画素の2画素前または1画素前の画素の形成タイミングで、前記プリカーサ信号により前記アクチュエータを駆動する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記吐出信号の周波数は20kHzより大きい、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
圧力室の容積を変化させるアクチュエータを駆動する駆動部を備え、
前記駆動部は、液体吐出を伴う吐出対象画素の形成タイミングで、液体を吐出する吐出信号を、当該吐出対象画素の階調値に応じて、出力するとともに、
液体吐出を伴わない非吐出対象画素の形成タイミングにおいて、直後の規定数以内の対象画素に、液体吐出を伴う吐出対象画素を含む場合、前記吐出対象画素の階調値に応じて、吐出を伴わないプリカーサ信号を、出力する、制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド、制御装置、及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置として、インクジェットプリンタに搭載するインクジェットヘッドが知られている。インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドからインクの液滴を吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。インクジェットヘッドは、圧電式のアクチュエータで圧力室の容積を変えることによって、圧力室に連通するノズルからインクの液滴を吐出する。アクチュエータの動作は、アクチュエータに入力する駆動波形によって制御する。
【0003】
このような液体吐出装置において、吐出波形の前に、液体を吐出しない振動波形を付与するプリカーサ動作を行うことで、画像乱れを抑制することがあるが、高周波域では画像乱れを抑制することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-212661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、画像乱れを抑制することが可能な液体吐出ヘッド、制御装置、及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる液体吐出ヘッドはアクチュエータと、駆動部と、を備える。アクチュエータは圧力室の容積を変化させる。駆動部は、前記アクチュエータを駆動する。駆動部は、複数階調の吐出信号により前記アクチュエータを駆動する吐出動作を行うとともに、前記吐出動作の直前に、所定時間以上、非吐出時間がある場合、前記吐出動作における階調に応じて、前記非吐出時間に液体の吐出を伴わずに圧力振動させるプリカーサ信号により前記アクチュエータを駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す説明図。
図2】同液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図。
図3】同液体吐出ヘッドの構成の一部を示す断面図。
図4】実施例1、実施例2及び比較例の画素と波形パターンの対応を示す説明図。
図5】実施例1、実施例2及び比較例の印字特性を示す説明図。
図6】第1の実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド10及び液体吐出装置100について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る液体吐出装置100の構成を示すブロック図である。図2は、液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図、図3は液体吐出ヘッドのアクチュエータの構成を示す断面図である。図4は実施例1、実施例2、及び比較例の画素と波形パターンの対応を示す説明図である。図5は実施例1、実施例2及び比較例の印字特性を示す説明図である。図6液体吐出装置100の構成を示す説明図である。なお、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0009】
図1に示すように、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド10と、液体供給部21と、搬送部22と、操作部25と、表示部26と、制御部30と、を備える。
【0010】
液体吐出装置100は、図6に示すように、液体吐出ヘッド10に対向する印刷位置を通る所定の搬送路に沿って、吐出対象物である用紙等の媒体を搬送しながら、液体吐出ヘッド10からインク等の液体を吐出することで、用紙等の媒体に画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0011】
液体吐出ヘッド10は、例えばシェアモードシェアードウォール式のインクジェットヘッドである。液体吐出ヘッド10は、インクを循環させない非循環式のヘッドであってもよく、また、インクを循環させる循環式のヘッドであってもよい。本実施形態において、液体吐出ヘッド10は、非循環式のヘッドの例を用いて説明する。
【0012】
例えば液体吐出ヘッド10は、ノズルに連通する複数の圧電素子を有するアクチュエータ11と、アクチュエータ11を駆動する駆動部としての駆動回路12と、を備える。
【0013】
例えば液体吐出ヘッド10は、液体を吐出する複数のノズル111と、ノズルに連通する複数の圧力室112及び、複数の圧力室112に連通する共通室を含む流路を有する。液体吐出ヘッド10の流路は液体供給部21に接続され、液体供給部から液体吐出ヘッド10の流路にインクが供給される。
【0014】
アクチュエータ11は、例えば圧電部材で板状に構成されたアクチュエータプレートであり、複数の圧電素子115と、圧電素子115に形成される電極116と、を備える。例えば複数の圧電素子115間に溝状の圧力室112が形成される。アクチュエータ11は、各圧力室112に対応して設けられる圧電素子115の電極116に電圧が印加されて圧電素子115が変形することで、圧力室112の容積を増減させてインクをノズル111から噴射させる。
【0015】
駆動回路12は、駆動電圧を圧電体の電極に印加することでアクチュエータ11を駆動する。駆動回路12は、圧電素子115を動作させるための制御信号及び駆動信号を生成する。駆動回路12は、液体吐出装置100の制御部30から入力された画像信号に従い、液体を吐出させるタイミング及び液体を吐出させる圧電素子115を選択するなどの制御のための制御信号を生成する。また、駆動回路12は、制御信号に従って圧電素子115の電極116に印加する電圧、すなわち駆動信号(電気信号)を生成する。駆動回路12が圧電素子115に駆動信号を印加すると、圧電素子115は圧力室112の容積を変化させるように駆動する。すなわち、アクチュエータ11は、制御部30による制御によって駆動制御可能に構成される。
【0016】
図1に示すように、駆動回路12は、データバッファ13、デコーダ14、ドライバ15を備える。データバッファ13は、駆動制御に必要な情報を記憶するメモリの一例である。データバッファ13は、印字データや画像データを記憶する。一例としてデータバッファ13は、印字データをアクチュエータ11の圧電素子毎に時系列に保存する。例えばデータバッファ13は、印字データや画像データとして、複数の画素の階調値や、アクチュエータを駆動して各画素それぞれを記録媒体に形成する形成タイミングを含む各種情報を記憶する。デコーダ14は、圧電素子毎に、データバッファ13に保存された印字データに基づいて、ドライバ15を制御する。ドライバ15は、デコーダ14の制御に基づき、各圧電素子115を動作させる駆動信号を出力する。駆動信号は、各圧電素子115の電極116に印加する電圧である。
【0017】
本実施形態において、駆動回路12は、制御部30から入力された画像信号に基づき、各圧電素子に、所定の波形パターンを生成し、出力する。すなわち所定の波形パターンにて、液体吐出部の各ノズル111に対応する複数の駆動素子をそれぞれ駆動する。例えば駆動回路12は、複数のドロップ波形を組み合わせた複数のマルチ波形パターンにより、液体吐出部を駆動する。
【0018】
例えば駆動回路12は、液体吐出を伴う吐出対象画素の形成タイミングで、液体を吐出する吐出信号を、吐出対象画素の階調値に応じて、出力する。例えば駆動回路12は、複数階調の吐出信号により圧電素子115を駆動する吐出動作を行う。
【0019】
また、駆動回路12は、液体吐出を伴わない非吐出対象画素の形成タイミングであって、直後の規定数以内に特定階調値で形成タイミングとなる対象画素に、液体吐出を伴う吐出対象画素を含む場合、吐出を伴わない振動信号を、吐出対象画素の階調に応じて、出力する。本実施形態では一例として、例えば規定数は2周期以上、あるいは2画素以上であり、特定階調値は2階調以上の場合に、プリカーサ振動信号を出力する。
【0020】
つまり、インク吐出を伴わない画素であって同画素の直後から規定数以内に特定の階調で形成タイミングが到来する画素にインク吐出を伴うものが含まれる画素の形成タイミングで、インクの吐出を伴わずにノズルを振動させるための振動信号を、当該インク吐出を伴う画素の階調値に応じて、出力する。
すなわち、ある圧力室112を形成する圧電素子115を駆動する駆動波形において、特定階調以上の吐出信号を印可する吐出動作の直前に、規定画素数以上、吐出を伴わない非吐出画素がある場合、吐出動作における階調に応じて、吐出信号の前の非吐出画素の形成タイミングで、液体の吐出を伴わずに圧力振動させるプリカーサ信号を印可し、圧電素子115をプリカーサ駆動する。言い換えると、ある圧力室112を形成する圧電素子115を駆動する駆動波形において、特定階調以上の吐出信号を印可する吐出動作の直前に、所定時間以上、吐出を伴わない非吐出時間がある場合、吐出動作における階調に応じて、吐出信号の前の非吐出時間に、液体の吐出を伴わずに圧力振動させるプリカーサ信号を印可し、圧電素子115をプリカーサ駆動する。
【0021】
具体例として駆動回路12は、4階調までのマルチドロップ駆動において、例えば階調が3階調(2ドロップ)の吐出波形、または4階調(3ドロップ)の吐出波形の直前に、1階調(0ドロップ)の非吐出波形を2周期以上有している場合には、1階調の非吐出波形の位置に、吐出を伴わない振動波形であるプリカーサ波形を配置する。一方、駆動回路12は、2階調(1ドロップ)の吐出波形の前に1階調を2周期以上有している場合には、プリカーサ波形は配置せず、非吐出波形のままとする。
【0022】
液体供給部21は、液体吐出ヘッド10の流路の一次側に接続され、液体吐出ヘッド10の流路に液体を供給する。例えば液体供給部21は、液体を貯留するタンクと、タンクと液体吐出ヘッド10の流路とを接続する接続流路と、タンクの液体を液体吐出ヘッド10に送る送液ポンプと、を備える。
【0023】
搬送部22は、所定の搬送路に沿って、用紙などの媒体を搬送し、印刷位置に供給する。搬送部22は、例えば搬送経路に沿って配置される複数の搬送ローラや搬送ガイドを備える。搬送部22は、媒体を液体吐出ヘッド10に相対移動可能に支持する。
【0024】
操作部25は、例えば電源キー、用紙フィードキー、エラー解除キー等のファンクションキーを備える。
【0025】
表示部26は、画像印刷装置の種々の状態を表示可能なディスプレイを有する。
【0026】
制御部30は、例えば、制御基板であり、プロセッサ31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、画像メモリ34、及び入出力ポートであるI/Oポート35、を備える。
【0027】
プロセッサ31は、コントローラであるCPU(Central Processing Unit)等の処理回路である。プロセッサ31は、コンピュータの中枢部分に相当する。プロセッサ31は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムに従って、プリンタとしての各種の機能を実現するべく各部を制御する。例えばプロセッサ31は、液体吐出装置100に設けられる液体吐出ヘッド10、液体供給部21、搬送部22の動作を制御する。また、プロセッサ31は、印刷時に、画像メモリ34に保存された印字データを描画順に駆動回路12に送信する。
【0028】
ROM32は、上記コンピュータの読み出し専用の主記憶部分に相当する。ROM32は、上記のオペレーティングシステムやアプリケーションプログラムを記憶する。ROM32は、プロセッサ31が各部を制御するための処理を実行する上で必要なデータを記憶する場合もある。
【0029】
RAM33は、上記コンピュータの書換え自在な主記憶部分に相当する。RAM33は、プロセッサ31が処理を実行する上で必要なデータを記憶する。またRAM33は、プロセッサ31によって情報が適宜書き換えられるワークエリアとしても利用される。ワークエリアは、印刷データが展開される画像メモリを含んでいてもよい。
【0030】
画像メモリ34は、例えば外部接続機器200からの印字データを記憶する。
【0031】
I/Oポート35は、外部接続機器200からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部である。外部接続機器200からの印字データは、I/Oポート35を通じて制御部30へ送信され、画像メモリ34に保存される。
【0032】
このように構成された液体吐出装置100において、制御部30が液体吐出ヘッド10に信号を入力すると、駆動回路12は制御部30からの信号に応じて駆動電圧を複数の圧電素子115に印加することで、複数の圧電素子115に電位差を生じさせ選択的に変形させ、圧力室112の容積を増減することでノズル111から液体を吐出させる。例えば拡張要素となる電圧を印加すると、圧電素子115が変形して対応する圧力室112の容積が増加して圧力が減少し、当該圧力室112に共通室のインクが流入する。そして圧力室112の容積が増加した状態で、圧電素子115の電極116に逆電位の駆動電圧を印加すると、圧電素子115が変形して圧力室112の容積が減少し、圧力が増加する。このため、圧力室112の中のインクが加圧され、ノズル111から吐出される。
【0033】
駆動波形の波形データは、例えば駆動回路12内のメモリなどに格納される。いずれの駆動波形をアクチュエータ11に入力するかは、制御基板から送られてくる階調データに基づいて駆動回路12のドライバICが選択する。
【0034】
例えば駆動回路12で生成する駆動波形は、液体を吐出するドロップ波形を、階調に応じて繰り返して1ドットを形成するマルチドロップ波形である。一例として1サイクルの駆動周期内での吐出回数が3ドロップまでとして、例えば1サイクルの駆動周期内にインクを1~4までの階調数で駆動する例を示す。各ドロップ波形は、それぞれ拡張パルス(拡張要素)と収縮パルス(収縮要素)を含む吐出波形である。
【0035】
例えば図4は実施例1,実施例2及び比較例について(a)~(d)の4パターンの画像エリアについて各画素に対応する駆動パターンを示す説明図である。例えば複数の画素が縦横にマトリクス状に配列された画像エリアを示す。
【0036】
例えば本実施形態では、各画素の1印刷周期に最大3つのドロップ波形(要素)を有するマルチドロップ駆動の駆動波形であり、4階調(0,1drop,2drop,3drop)の画像で、規定数が2画素で、特定階調が2drop,3dropの場合を例示する。
【0037】
本実施形態において、1印刷周期は3ドロップ分の印刷周期として3周期を有し、各ドロップ波形の周期的な長さは等しい。これらの駆動波形は、それぞれ、複数階調の吐出波形部PA、PD、液体を吐出させない非吐出波形部PB、及び液体を吐出せず振動させるプリカーサ波形部PCとの組み合わせで構成される。なお、各階調における駆動波形は同じドロップ波形を複数組み合わせてもよく、あるいは複数の異なるドロップ波形を組み合わせてもよい。
【0038】
本実施形態において、駆動回路12は、印字データにおいて、規定階調以上のドロップ波形を有する吐出波形部PAの直前で規定時間以上非吐出となる場合には、規定階調以上の吐出の直前にプリカーサ駆動を行う。すなわち、2ドロップ波形及び3ドロップ波形の直前が非吐出波形である場合に、2ドロップまたは3ドロップの吐出用の波形を印可する前の所定のタイミングで、吐出を伴わない振動波形を印加する。言い換えると、駆動回路12は、印字パターンに応じて、所定の非吐出タイミングの後に、規定階調以上の吐出タイミングが来る場合には、吐出タイミングに先だって、吐出させずに振動を付与する、駆動波形を生成する。
【0039】
本実施形態にかかる駆動パターンの例について、図4を参照して説明する。図4はある画像エリアの画素に対応するセルを示しており、縦横のセルは、それぞれ、例えば各画素に対応している。図4は、縦軸に時間をとった場合の画像形成タイミングに対応している。すなわち、図4の画像エリアにそれぞれ5列または5列に並ぶ複数の縦のラインは、縦方向に時間をとった波形の配列パターンを示す。
【0040】
実施例1においては、例えば3階調または4階調の吐出波形で駆動する第2吐出波形部PAのセルと、1階調の非吐出波形部PBの余白セルと、プリカーサ駆動を行うプリカーサ波形部PCのセルと、が所定のパターンで配列されている。
【0041】
すなわち、実施例1の画像エリアは、基準階調である2階調以上の吐出波形である第2吐出波形部PAを有している。また、実施例1の駆動波形は、基準階調の第2吐出波形部PAの前に、規定数としての例えば2以上の非吐出波形部PBを有している。そして、この連続する非吐出波形部(非吐出波形セル)PBのうち、ドロップ波形部PAの1つ手前のセルに、プリカーサ波形部PCが配置されている。
【0042】
すなわち、駆動回路12は、図4においてそれぞれ矩形状の画像を上から下に印字するとき、画素が3・4階調で形成されていて、空白が2画素続いた場合は、3・4階調での形成画素の1画素前にプリカーサ動作を行うようなコントロールを行う。
【0043】
例えば比較例においては、2階調で駆動される第1吐出波形部PDのセルと1階調の非吐出波形部PBに対応する余白のセルとが所定のパターンで配列される。比較例においては、プリカーサ駆動は行われない。
【0044】
実施例2において、例えば3階調または4階調の吐出波形で駆動する第2吐出波形部PAのセルと、1階調の非吐出波形部PBのセルと、プリカーサ駆動を行うプリカーサ波形部PCのセルと、が所定のパターンで配列されている。
【0045】
すなわち、実施例2の駆動波形は、基準階調である3階調以上の吐出波形であるドロップ波形部PAを有している。また、実施例2の駆動波形は、基準階調のドロップ波形部PAの前に、規定数としての例えば2以上の非吐出波形部PBを有している。そして、この連続する非吐出波形部PBのセルのうち、第2吐出波形部PAの2つ手前のセルに、プリカーサ波形部PCが配置されている。
【0046】
すなわち、駆動回路12は、図4においてそれぞれ矩形状の画像を上から下に印字するとき、実施例2においては、画素が3.4階調で形成されていて、空白が2画素続いた場合は、3.4階調での形成画素の2画素前にプリカーサ動作を行うようなコントロールを行う。
【0047】
つまり、これらの制御は、複数回の吐出波形で液体を吐出させるマルチドロップ波形であり、3または4階調の吐出タイミングの前に、2以上の非吐出タイミングがある場合に、1つ前または2つ前のタイミングで、プリカーサ波形を配する制御である。すなわち、実施例1の駆動波形、実施例2の駆動波形は、液体の吐出を伴う吐出波形部PAと、液体を吐出させない波形である非吐出波形部PBと、液体を吐出しない振動波形であるプリカーサ波形部PCと、を有する。
【0048】
すなわち、本実施形態においては、駆動装置の一例としての駆動回路12は、印字データとして、3階調以上の吐出波形部PAがあり、かつ、当該3階調以上の吐出波形部PAの直前の規定数以内に、空白、すなわち1階調の非吐出波形部PBが2つ以上連続している場合に、当該空白のうち、吐出波形部PAの直前または2つ前のタイミングで、プリカーサ駆動を行うプリカーサ波形部PCを出力する。すなわち、液体吐出ヘッド10は、空白が2列以上で3または4階調の場合に1画素前にプリカーサを実行するか、空白が2列以上で3または4階調の場合に2画素前にプリカーサを実行する。
【0049】
一例として吐出波形部PAは、基準となる吐出ドロップ波形を、階調に応じて0回から3回のいずれかの回数繰り返すマルチドロップ波形である。例えば吐出ドロップ波形は、圧力室112を拡張する第1拡張パルスと圧力室112を収縮する第1収縮パルスと、を備える波形である。第1拡張パルスでは、中間電圧である第1電圧から、中間電圧よりも低い第2電圧まで電圧を下げ、第2電圧を所定時間継続した後、第1電圧に戻す。そして、第1電圧を所定時間継続した後、第1収縮パルスとして第1電圧よりも高い第3電圧を所定時間印加し、第1電圧に戻す。吐出ドロップ波形は、拡張パルスで吐出を行い、収縮パルスで振動を抑える波形である。
【0050】
吐出波形部PAによる吐出動作として、第1拡張パルスにより、所定時間の間第2電圧を印加すると、圧電素子115の所定方向に電界が生じ、圧電素子115が変形する。この圧電素子115の変形によって圧力室112の容積が拡張することで内部のインク圧が低下し、ノズル111の開口のメニスカスは、圧力室112側に大きく引き込まれる。そして圧力室112(インク室)内のインク圧力の振動が開始し、90度位相がずれたインクの流速の振動が発生する。
【0051】
拡張パルスで拡張後、第1電圧に戻すと、圧力室112は元の形状に戻る。そして、第1電圧を所定時間保持すると、メニスカスが前進してインク吐出を開始する。そして、第1電圧を所定時間保持した後、さらに、収縮パルスの電圧を印加することで、再びアクチュエータ11の圧電素子115を変形させ圧力室112の容積を収縮させてインク圧を高めることによって、圧力室112内の圧力及び流速の振動を抑えることができる。この吐出波形をn回繰り返すことで、nドロップのインク滴が吐出される。
【0052】
例えばプリカーサ波形部PCは、吐出波形よりも拡張パルスが長い、あるいは電位差が小さく、液体を吐出せずに振動を付与する波形である。つまり、プリカーサ波形部PCは、吐出波形部PAと比較して、インクの流速振動が発生する際に液体を吐出させない振動波形である。なお、例えばプリカーサ波形部PCは、収縮要素のみの波形としてもよいし、拡張要素と収縮要素を順に備える波形であってもよい。例えば各拡張時間を長くすることにより液体を吐出しない波形であってもよい。
【0053】
図5は、実施例1の波形と、実施例2の波形と、プリカーサ動作を行わない比較例の波形による、印字状態を示す説明図である。図5によれば、比較例では特に高周波帯域において画像の乱れが発生しており、実施例1や実施例2の波形の印字状態の方が画像の乱れを抑制できることがわかる。
【0054】
本実施形態にかかる液体吐出ヘッド10及び液体吐出装置100によれば、必要な階調においてプリカーサ動作を行うことで、電力負荷を低減しつつ、印刷範囲の画像乱れを抑制することができる。すなわち、プリカーサ動作を特定の階調時のみとすることで、電力負荷を低減でき、アクチュエータの発熱量を抑えることができる。また、図5に示すように、20kHzを超える周波数においても圧力振動を安定させ、画像乱れを抑制でき、良好な印字性能を実現できる。また、上記実施形態によれば、液体吐出ヘッド10に設けられる駆動回路12でプリカーサ動作を行う駆動信号を生成するため、液体吐出ヘッド10自体でプリカーサ動作を伴う制御を完結できる。
【0055】
なお、本発明の実施形態は上述した構成に限定されない。
【0056】
例えば上記実施形態においては、液体吐出ヘッド10に設けられたドライバICを有する駆動回路12がプリカーサ動作を行わせる駆動信号を生成する駆動部として機能する例を示したがこれに限られるものではない。例えば液体吐出ヘッド10に接続された制御部30や外部端末等の制御装置において、プリカーサ制御を行ってもよい。すなわち、制御装置側にて、印字データの規定階調以上の吐出波形の直前に非吐出タイミングがある場合に、階調に応じて、非吐出タイミングで液体の吐出を伴わない振動を付与するように制御する、プリカーサ制御を行ってもよい。
また、図4に示す各実施例では、所定の画像エリアに、3,4階調の吐出波形部PAで駆動されるセルが所定のパターンで配置され、比較例では2階調の吐出波形部PDで駆動されるセルが所定のパターンで配置される例を示したが、これに限られるものではない。例えば一つの画像エリアに、3,4階調の吐出波形部PAと2階調の吐出波形部PDとが混在していてもよい。この場合、3,4階調の吐出波形部PAの直前、1画素または2画素前の非吐出波形部PBのタイミングでプリカーサ波形が印可され、2階調の吐出波形部PDの直前に2画素連続で非吐出セルがあっても、吐出波形部PDの前にはプリカーサ駆動は行わず、非吐出波形のままの駆動となる。また、駆動周期を3分割に分けて駆動する場合などでは、特定階調以上でプリカーサ波形を印可する場合であっても、ある特定の周期パターンのみプリカーサ波形を駆動する画素を配してもよい。また、各セルが画素に対応し、画素毎に駆動する例を示したが、これに限られるものではない。例えば画素とは異なる単位で、駆動してもよい。例えば特定階調以上で吐出駆動する対象の圧電素子115を駆動する吐出波形の周期毎に、直前の2周期が非吐出となる場合に、1周期前、あるいは2周期前のタイミングで、プリカーサ駆動させてもよい。
【0057】
例えば上記実施形態は、3ドロップを吐出する駆動波形で説明したがこれに限られず、例えば4ドロップ以上吐出する駆動波形であってもよい。ドロップ波形は1種類に限らず、複数種類以上で組み合わせてもよい。各要素のパルス幅、電圧値によって吐出体積を異ならせることも可能である。
【0058】
また、各圧電素子115に印加する電圧値は各種条件に応じて適宜調整可能である。例えば隣接する圧電素子115の一方を接地して他方に電圧を印加することで電位差を発生してもよく、あるいは両方に電圧をそれぞれ印加して電位差を発生させてもよい。
【0059】
駆動波形は、引き打ちに限らず、押し打ちや押し引き打ちの波形としてもよい。
例えば、液体吐出ヘッド10の構成は上記の例に限られるものではなく、他のタイプのヘッドに用いてもよい。例えば静電気で振動板を変形させてインクを吐出する構造、あるいはヒーターなどの熱エネルギーを利用してノズルからインクを吐出する発熱素子型の構造などであってもよい。これらの場合、当該振動板又はヒーターなどが圧力室112の内部に圧力振動を与えるためのアクチュエータとなる。
【0060】
液体吐出装置100は、画像形成媒体に、インクによる二次元の画像を形成するインクジェットプリンタを例示したがこれに限られるものではなく、例えば、3Dプリンタ、産業用の製造機械、又は医療用機械などであっても良い。液体吐出装置が3Dプリンタ、産業用の製造機械、又は医療用機械などであってもよく、例えば、素材となる物質又は素材を固めるためのバインダーなどをインクジェットヘッドから吐出させることで、立体物を形成するものであってもよい。
【0061】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、必要な階調においてプリカーサ動作を行うことで、電力負荷を低減しつつ、印刷範囲の画像乱れを抑制することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10…液体吐出ヘッド、11…アクチュエータ、12…駆動回路、13…データバッファ、14…デコーダ、15…ドライバ、21…液体供給部、22…搬送部、25…操作部、26…表示部、30…制御部、31…プロセッサ、32…ROM、33…RAM、34…画像メモリ、35…I/Oポート、100…液体吐出装置、111…ノズル、112…圧力室、115…圧電素子、116…電極、200…外部接続機器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6