(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032688
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
B60R 1/08 20060101AFI20250305BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
B60R1/08 Z
G02B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138110
(22)【出願日】2023-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】舘 鋼次郎
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA07
(57)【要約】
【課題】入射面からの入射光を全反射により導光でき、射出部での所定のパターンの反射光と射出部のパターン構造との関係によるモアレを低減可能な光学部材を提供する。
【解決手段】導光体2は、外景光が入射する入射面2aと、入射面2aから入射した光の一部を外部に射出する射出部2bと、射出部2bと対向する平滑面2cを有してなり、光透過性材料により構成されている。射出部2bは、入射面2aに隣接する第1領域2baと、第1領域2baに隣接する第2領域2bbとを有する。第1領域2baは、平滑面2cのなす面と対向する複数の平坦面41~43が段差部5を隔てて異なる高さに配置された複数の階段状反射面4と、複数の突起状のプリズム部3とが交互に繰り返し配列されてなる。平坦面41~43および平滑面2cは、入射面2aから導光体2の内部に入射した入射光の一部を全反射により反射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、前記入射面から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、前記射出部と対向する平滑面(2c)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、
前記射出部は、前記入射面に隣接する第1領域(2ba)と、前記第1領域に隣接する第2領域(2bb)とを有してなり、
前記第1領域は、段差部(5、51、52)を隔てて異なる高さに位置し、前記平滑面のなす面と対向する複数の平坦面(41~43)を有する複数の階段状反射面(4)と、複数の突起状のプリズム部(3)とを有し、前記階段状反射面と前記プリズム部とが交互に繰り返し配列されてなり、
前記第2領域は、複数の前記プリズム部と、1つの平坦面である複数の平坦部(6)とを有し、前記プリズム部と前記平坦部とが交互に繰り返し配列されてなり、
前記平坦面、前記平坦部および前記平滑面は、前記入射面から前記導光体の内部に入射した入射光(L2)の一部を全反射により反射し、
前記プリズム部は、前記入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有する、光学部材。
【請求項2】
前記平坦部に対する法線方向に沿って、前記平坦部と前記平滑面とを繋ぐ方向を厚み方向(D1)とし、前記厚み方向のうち前記平滑面から前記平坦部に向かう方向を下とし、複数の前記平坦面の前記厚み方向における位置を高さ位置として、
前記階段状反射面は、複数の前記平坦面のうち前記終端面に近い前記平坦面ほど前記高さ位置が下である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記平坦部のなす平面上において、前記平坦部と前記プリズム部との配列方向に沿って、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)として、
前記第1領域は、複数の前記平坦面それぞれの前記導光方向における幅(S11~S13)が、隣接する前記プリズム部のピッチ間隔(PP1)の半分以下である、請求項1または2に記載の光学部材。
【請求項4】
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)および平坦面である複数の平坦部(6)を有し、前記から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、前記射出部と対向する平滑面(2c)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)と、
前記導光体の内部のうち前記射出部の近傍であって、少なくとも前記入射面から入射する入射光(L2)が直接入射する領域に配置され、段差部(8、81、82)を介してそれぞれ異なる高さに配置され、前記平滑面のなす平面と対向する複数の平坦面(71~73)を有し、前記導光体よりも低屈折率な複数の屈折率差層(7)と、を備え、
前記平坦面、前記平坦部および前記平滑面は、前記入射光の一部を全反射により反射し、
前記プリズム部は、前記入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有し、
複数の前記屈折率差層は、前記入射光のうち前記射出面に入射する光を遮らないように、互いに距離を隔てて配置されている、光学部材。
【請求項5】
前記平坦部に対する法線方向に沿って、前記平坦部と前記平滑面とを繋ぐ方向を厚み方向(D1)とし、前記厚み方向のうち前記平滑面から前記平坦部に向かう方向を下とし、複数の前記平坦面の前記厚み方向における位置を高さ位置として、
前記屈折率差層は、複数の前記平坦面のうち前記終端面に近い前記平坦面ほど前記高さ位置が下である、請求項4に記載の光学部材。
【請求項6】
前記平坦部のなす平面上において、前記平坦部と前記プリズム部との配列方向に沿って、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)として、
前記屈折率差層は、複数の前記平坦面それぞれの前記導光方向における幅(S21~S23)が、隣接する前記屈折率差層のピッチ間隔(P2)の半分以下である、請求項4に記載の光学部材。
【請求項7】
前記屈折率差層は、空気層である、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の光学部材。
【請求項8】
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)および平坦面である複数の平坦部(6)を有し、前記入射面から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、前記射出部と対向する分割反射部(2f)および平滑面(2c)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、
前記分割反射部は、前記平滑面に隣接し、前記平滑面よりも前記入射面の側に位置するとともに、複数の前記平坦部のなす面と対向する複数の反射面(11~13)が段差部(14)を隔ててそれぞれ異なる高さに位置する複数の階段状反射面(10)が繰り返し配列されてなり、
前記反射面、前記平坦部および前記平滑面は、前記入射面から前記導光体の内部に入射した入射光(L2)の一部を全反射により反射し、
前記プリズム部は、前記入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有する、光学部材。
【請求項9】
前記平坦部に対する法線方向に沿って、前記平坦部と前記平滑面とを繋ぐ方向を厚み方向(D1)とし、前記厚み方向のうち前記平坦部から前記平滑面に向かう方向を上とし、複数の前記反射面の前記厚み方向における位置を高さ位置として、
前記階段状反射面は、複数の前記反射面のうち前記終端面に近い前記反射面ほど前記高さ位置が上である、請求項8に記載の光学部材。
【請求項10】
前記平坦部のなす平面上において、前記平坦部と前記プリズム部との配列方向に沿って、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)として、
前記階段状反射面は、複数の前記反射面それぞれの前記導光方向における幅(S31~S33)が、隣接する前記階段状反射面のピッチ間隔(P3)の半分以下である、請求項8に記載の光学部材。
【請求項11】
前記平坦部のなす平面上において、前記平坦部と前記プリズム部との配列方向に沿って、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)として、
前記分割反射部の前記導光方向における幅は、前記射出部のうち前記入射面からの入射光(L2)が直接入射する領域(2ba)の前記導光方向における幅以下である、請求項8ないし10のいずれか1つに記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入射面から入射した光の一部を内部で反射させ、入射した光およびその反射光を入射面とは異なる面から外部に射出する光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学部材は、例えば、遮光体に取り付けられ、当該遮光体により生じる死角領域からの外景光を内部に入射させ、内部で反射させ、外景光の入射面とは異なる面から当該外景光から射出することで死角領域を視認させる死角補助装置とされる。このような光学部材としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の光学部材は、透光性の導光体で構成され、導光体の入射面から入射した外光の一部が内部で全反射により導光されるとともに、入射面とは異なる射出部から外部に射出されることで、射出面側にいるユーザに死角の外景を視認させる。これにより、射出部側に導光体とは異なる反射性材料で構成されたハーフミラーが不要なハーフミラーレス構造となり、導光体内部における導光での外光の吸収による損失が低減される
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光学部材は、射出部が光を外部に射出する突起状の複数のプリズム部と複数の平坦部とを有し、入射面と終端面とを繋ぐ方向に沿ってプリズム部と平坦部とが交互に繰り返し配列されてなる。この光学部材は、射出部がプリズム部と平坦部とのパターン構造であることに起因し、射出部に到達した入射光が平坦部のパターンに応じた反射光が生じる。
【0006】
本発明者らがこの光学部材について鋭意検討した結果、射出部による所定のパターンの反射光が導光体内部で全反射により導光され、射出部への再到達時にパターンの間隔が変化し、射出部の構造パターンとの関係によりモアレが生じうることが新たに判明した。
【0007】
本開示は、上記の点に鑑み、入射面からの入射光を全反射により導光できる導光体により構成され、射出部での所定のパターンの反射光と射出部のパターン構造との関係によるモアレの発生を抑制可能な光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの観点によれば、光学部材は、外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、入射面から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、射出部と対向する平滑面(2c)と、入射面とは反対側に位置し、射出部と平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、射出部は、入射面に隣接する第1領域(2ba)と、第1領域に隣接する第2領域(2bb)とを有してなり、第1領域は、段差部(5、51、52)を隔てて異なる高さに位置し、平滑面のなす面と対向する複数の平坦面(41~43)を有する複数の階段状反射面(4)と、複数の突起状のプリズム部(3)とを有し、階段状反射面とプリズム部とが交互に繰り返し配列されてなり、第2領域は、複数のプリズム部と、1つの平坦面である複数の平坦部(6)とを有し、プリズム部と平坦部とが交互に繰り返し配列されてなり、平坦面、平坦部および平滑面は、入射面から導光体の内部に入射した入射光(L2)の一部を全反射により反射し、プリズム部は、入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有する。
【0009】
この光学部材は、入射面から入射した光が射出部の第1領域に配置された階段状反射面に入射し、階段状反射面を構成する複数の平坦面により分割して全反射により反射され、射出部の第2領域に導光される。これにより、この光学部材は、第2領域に到達した反射光のピッチ間隔と、第2領域におけるプリズム部と平坦部とのパターン間隔とが大きく異なる状態となり、第2領域におけるモアレの発生を低減することができる。
【0010】
本開示の別の観点によれば、光学部材は、外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)および平坦面である複数の平坦部(6)を有し、入射面から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、射出部と対向する平滑面(2c)と、入射面とは反対側に位置し、射出部と平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)と、導光体の内部のうち射出部の近傍であって、少なくとも入射面から入射する入射光(L2)が直接入射する領域に配置され、段差部(8、81、82)を介してそれぞれ異なる高さに配置され、平滑面のなす平面と対向する複数の平坦面(71~73)を有し、導光体よりも低屈折率な複数の屈折率差層(7)と、を備え、平坦面、平坦部および平滑面は、入射光の一部を全反射により反射し、プリズム部は、入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有し、複数の屈折率差層は、入射光のうち射出面に入射する光を遮らないように、互いに距離を隔てて配置されている。
【0011】
この光学部材は、射出部の近傍であって、入射面から入射した光が直接入射する所定の領域に配置された屈折率差層に入射し、屈折率差層を構成する複数の平坦面により分割して全反射により反射され、射出部のうち屈折率差層が未配置の領域に導光される。これにより、この光学部材は、射出部のうち屈折率差層のない領域に到達した反射光のピッチ間隔と、当該領域におけるプリズム部と平坦部とのパターン間隔とが大きく異なる状態となり、当該領域におけるモアレの発生を低減することができる。
【0012】
本開示の別の観点によれば、光学部材は、外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)および平坦面である複数の平坦部(6)を有し、入射面から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、射出部と対向する分割反射部(2f)および平滑面(2c)と、入射面とは反対側に位置し、射出部と平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、分割反射部は、平滑面に隣接し、平滑面よりも入射面の側に位置するとともに、複数の平坦部のなす面と対向する複数の反射面(11~13)が段差部(14)を隔ててそれぞれ異なる高さに位置する複数の階段状反射面(10)が繰り返し配列されてなり、反射面、平坦部および平滑面は、入射面から導光体の内部に入射した入射光(L2)の一部を全反射により反射し、プリズム部は、入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有する。
【0013】
この光学部材は、射出部のうち入射面からの光が直接入射する領域で反射した光が到達する領域に形成された分割反射部に入射し、分割反射部を構成する複数の反射面により分割して全反射により反射され、射出部の次の領域に導光される。これにより、この光学部材は、射出部の次の領域に到達した反射光のピッチ間隔と、当該次の領域におけるプリズム部と平坦部とのパターン間隔とが大きく異なる状態となり、当該次の領域におけるモアレの発生を低減することができる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図2】
図1の光学部材における導光の説明図である。
【
図3】
図1のIII領域の拡大図であって、射出部の第1領域における導光の説明である。
【
図4】
図3に相当する図であって、射出部の第1領域におけるプリズム部のピッチ間隔、反射光のピッチ間隔および段差部の段差についての説明図である。
【
図5】段差平坦部を有しない比較例の光学部材における導光の説明図である。
【
図6】
図5の比較例の光学部材におけるモアレの発生についての説明図である。
【
図7】第2実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図8】
図7の光学部材における導光の説明図である。
【
図9】
図7のIX領域の拡大図であって、射出部の第1領域における導光の説明である。
【
図10】
図9に相当する図であって、射出部の第1領域における屈折率差層のピッチ間隔、反射光のピッチ間隔および段差部の段差についての説明図である。
【
図11】第2実施形態の光学部材の変形例を示す断面図である。
【
図12】第3実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図14】
図12のXIV領域の拡大図であって、射出部の第1領域における導光の説明である。
【
図15】
図14に相当する図であって、射出部の第1領域における屈折率差層のピッチ間隔、反射光のピッチ間隔および段差部の段差についての説明図である。
【
図16】第4実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図18】
図16のXVIII領域の拡大図であって、階段状の反射面における導光の説明である。
【
図19】
図18に相当する図であって、階段状の反射面の幅、段差部の段差および傾斜角度についての説明図である。
【
図20】他の実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図22】他の実施形態の光学部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
【0018】
〔基本構成〕
本実施形態の光学部材1は、例えば、ユーザの視界を遮り、死角を生じさせる部材や障害物等に取り付けられ、当該死角の領域の光景を当該ユーザに視認させる死角補助装置として用いられうる。光学部材1は、例えば、車載用途の場合には、搭載される車両のピラーなどの所定の遮光体に取り付けられ、当該ピラーにより死角になる領域からの外景光をユーザの側に導光し、死角領域の光景をユーザに視認させる。
【0019】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図1に示すように、入射面2aと、射出部2bと、平滑面2cと、傾斜面2dと、終端面2eとを有する導光体2で構成されている。
【0020】
以下、説明の便宜上、例えば
図1に示すように、光学部材1のうち後述する平坦部6または平滑面2cに対する法線方向に沿った方向であって、互いに対向する射出部2bと平滑面2cとを繋ぐ方向を「厚み方向D1」と称する。また、厚み方向D1に対して直交する方向であって、入射面2aから終端面2eに向かう方向、すなわち入射面2aから入射した光を導光する方向を「導光方向D2」と称する。なお、導光方向D2は、後述する複数のプリズム部3および平坦部6が繰り返し配列される方向に沿った方向であり、プリズム部3および平坦部6の延設方向に対して直交する方向であり、配列方向とも称されうる。
【0021】
光学部材1は、例えば
図2に示すように、導光体2の入射面2aから内部に入射した光の一部が射出部2bで反射され、射出部2bで反射した光が平滑面2cで反射され、射出部2b側に再度向かう構成となっている。光学部材1は、例えば、入射面2aから外光を導光体2の内部で導光させ、射出部2bから外部に射出することで、射出部2b側にいるユーザに遮光体による死角領域の外景を視認させる。
【0022】
以下、説明の便宜上、
図2に示すように、入射面2aに入射する外光を「外景光L1」と称し、入射面2aから導光体2の内部に入射した光を「入射光L2」と称し、導光体2の内部から外部に射出される光を「射出光L3」と称する。また、射出光L3のうち射出部2bの後述する第1領域2baから射出されたものを「第1射出光L31」、第2領域2bbから射出されたものを「第2射出光L32」、第3領域2bcから射出されたものを「第3射出光L33」、とそれぞれ称する。
【0023】
導光体2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の樹脂材料やガラスなどの光透過性材料からなる略板状の単一部材である。導光体2は、例えば、図示しない金型等を用いた公知の樹脂成型方法により形成される。導光体2は、入射面2aからの入射光L2の一部が射出部2bのプリズム部3に入射するとともに、入射光L2の残部が後述する平坦面41~43または平坦部6で反射し、この反射光が平滑面2cに向かう構成となっている。そして、導光体2は平坦面41~43または平坦部6で反射された入射光L2が平滑面2cや平坦部6で全反射し、内部で導光されるように設計されている。具体的には、導光体2は、その構成材料の屈折率をn0とし、入射光L2の平滑面2c、平坦面41~43および平坦部6に対する入射角度をφとして、導光体2の外部媒質が屈折率=1の空気層である場合、以下の(1)式を満たす設計となっている。なお、入射角度のφとは、平坦面41~43、平坦部6または平滑面2cに入射する入射光L2の進む方向と厚み方向D1とのなす角度であり、導光角φとも称されうる。
【0024】
sinφ>1/n0・・・(1)
これにより、導光体2は、導光体2とは異なる反射性材料で構成されたハーフミラーまたはミラーを有さずとも、入射光L2の一部が平坦部6と平滑面2cとの間で繰り返し反射され、入射光L2がプリズム部3の後述する射出面3aから外部に射出される。
【0025】
入射面2aは、外景光L1を内部に入射させる面である。入射面2aは、射出部2bに隣接するとともに、射出部2bおよび平滑面2cに交差する方向に延設された面となっている。入射面2aは、例えば、平滑面2c側に向かうにつれて終端面2eに近づくように傾斜するとともに、厚み方向D1とのなす角度である傾斜角度がψで傾斜した平坦面となっている。入射面2aは、傾斜角度ψが導光角φよりも小さくなっている。このとき、外景光L1の厚み方向D1に対する角度をθとして、屈折の条件よりψ<π/2-φであれば、入射光L2は、導光角φが外景光L1の角度θよりも大きくなる方向に屈折し、射出部2bのより広い範囲に導光されることとなる。角度θは、外景光L1の導光体2に対する入射角ともいえる。導光体2は、例えば、φが全反射角になるため、通常の透光性樹脂材料の屈折率が1.4以上であることから、n0・sinφ>1よりφ>45.3となり、φ>ψを満たす構造となっている。
【0026】
射出部2bは、入射面2aと隣接し、かつ交差する位置に形成されるとともに、例えば、構成が異なる第1領域2ba、第2領域2bbおよび第3領域2bcを有してなる。射出部2bは、入射光L2の一部を平滑面2c側に反射するとともに、入射光L2の一部を外部に射出する、いわば反射射出面となっている。
【0027】
第1領域2baは、例えば、断面視にて、三角形状の突起である複数のプリズム部3と、プリズム部3の間に配置される複数の階段状反射面4とを有し、これらが入射面2aから終端面2eに向かって交互に繰り返し配列されている。第1領域2baは、入射面2aからの入射光L2が直接入射する領域、すなわち入射面2aからの入射光L2が一度も反射することなく入射する領域である。
【0028】
複数のプリズム部3は、階段状反射面4よりも突出する突起物であって、例えば、平行配置されるとともに、本実施形態では、厚み方向D1における高さおよび導光方向D2における幅が略同一となっている。本明細書における「略同一」とは、完全に同一である場合に加えて、加工誤差などの不可避の要因によりわずかに差があるが、ほぼ同一である場合を含む。複数のプリズム部3は、例えば
図3に示すように、断面視にて、入射面2aと平行な面であって、入射光L2の一部を外部に射出する射出面3aと、射出面3aに隣接する他面3bとを有してなる。複数のプリズム部3は、例えば、射出面3aが入射面2aと平行、すなわち厚み方向D1に対する傾斜角度がψとされている。これにより、入射光L2のうち射出面3aに到達したものが、外景光L1と同じ角度θの射出光L3として外部に射出されることとなる。このため、射出部2b側に位置するユーザから見て、光学部材1を介しない外景と光学部材1により視認可能となった死角領域の外景との連続性が確保される。複数のプリズム部3は、例えば、導光方向D2において隣接するプリズム部3同士のピッチ間隔が、第1領域2ba、第2領域2bbおよび第3領域2bcで異なっている。以下、導光方向D2において隣接するプリズム部3同士のピッチ間隔を「プリズムピッチ」と称する。プリズムピッチは、例えば、領域2ba~2bcのそれぞれにおいて一定となっている。
【0029】
階段状反射面4は、例えば、平滑面2cに対して略平行な平坦な面である第1平坦面41、第2平坦面42、および第3平坦面43と、これらの間に配置される段差部5とを有してなる。本明細書における「略平行」とは、完全に平行な場合に加えて、加工誤差などにより不可避のわずかな差があるものの、ほぼ平行である場合を含む。
【0030】
以下、便宜上、段差部5のうち第1平坦面41と第2平坦面42とを繋ぐ段差部5を「第1段差部51」と称し、第2平坦面42と第3平坦面43とを繋ぐ段差部5を「第2段差部52」と称する。
【0031】
階段状反射面4は、例えば、入射面2a側から第1平坦面41、第1段差部51、第2平坦面42、第2段差部52、第3平坦面43の順に配列されてなる。階段状反射面4は、平坦面41~43が入射光L2を反射する反射面として機能する。階段状反射面4は、例えば、平坦面41~43が厚み方向D1における位置がそれぞれ異なるとともに、終端面2e側のプリズム部3に近い平坦面ほど導光体2から離れた位置となっている。なお、終端面2e側のプリズム部3とは、階段状反射面4に隣接する2つのプリズム部3のうち終端面2e側に位置するものをいう。
【0032】
以下、説明の便宜上、厚み方向D1における位置を「高さ位置」と称し、厚み方向D1に沿った方向であって、射出部2bから平滑面2cに向かう方向を「上」と称し、平滑面2cから射出部2bに向かう方向を「下」と称する。
【0033】
階段状反射面4は、例えば、第1平坦面41の高さ位置が平坦部6と略同一であり、第1平坦面41、第2平坦面42、第3平坦面43の順に高さ位置が徐々に下となる階段状の構成となっている。階段状反射面4は、入射光L2を反射した反射光が第2領域2bbに到達したとき、当該反射光のピッチ間隔と、第2領域2bbのプリズム部3と平坦部6との構造ピッチとの差に起因するモアレの発生を抑制するために設けられる。この詳細については後述する。
【0034】
第2領域2bbは、例えば、複数のプリズム部3と複数の平坦部6とを有し、これらが入射面2aから終端面2eに向かって交互に繰り返し配列されている。複数の平坦部6は、例えば、平滑面2cと対向し、かつ平滑面2cに対して略平行で配置された平坦な面である。複数の平坦部6は、例えば、同一平面上に配置されている。複数の平坦部6は、入射面2aからの入射光L2が臨界角以上の角度で入射するため、全反射により入射光L2を平滑面2c側に反射する反射面として機能する。第2領域2bbは、例えば、第1領域2baにおけるプリズムピッチをPP1として、プリズムピッチがPP1よりも小さいPP2となっている。言い換えると、第2領域2bbは、隣接するプリズム部3間の入射光L2を反射する部位の導光方向D2における幅が、第1領域2baよりも小さくなっている。
【0035】
第3領域2bcは、複数のプリズム部3のみで構成され、これらが導光方向D2に沿って繰り返し配列されてなる。第3領域2bcは、入射光L2を平滑面2c側に反射する部位を有しておらず、到達した入射光L2を外部に射出する射出領域となっている。
【0036】
射出部2bは、例えば、上記のように、入射光L2の導光方向D2における反射幅と外部に射出する部位の同方向における幅との比率が異なる領域2ba~2bcで構成されることで、射出光L31~L33の光量を略均一することが可能となっている。ここでいう「略均一」とは、完全に同一である場合に加えて、加工誤差などの不可避の要因によりわずかに差があるが、ほぼ同一である場合を含む。なお、本明細書では、射出部2bを構成する領域の数が3つである場合を代表例として説明するが、これに限定されるものではなく、領域の数については適宜変更されうる。
【0037】
傾斜面2dは、入射面2aと平滑面2cとを繋ぐ面であって、例えば、平滑面2cに近づくほど終端面2eに近くなるように、厚み方向D1に対して傾斜角度ξで傾斜するとともに、平滑面2cよりも突出した面となっている。言い換えると、入射面2aおよび傾斜面2dは、断面視にて、1つの大きな突起状のプリズム部を構成している。つまり、導光体2は、入射面2aと傾斜面2dとのなす1つのプリズム部の厚み方向D1における高さが、射出部2bの平坦部6から平滑面2cまでの高さTよりも大きい構成となっている。これにより、導光体2は、入射面2aからの入射光L2が最初に到達する射出部2bにおける領域を広くできる。
【0038】
終端面2eは、射出部2bと平滑面2cとを繋ぐ面である。終端面2eは、例えば、1つの平坦面とされる。終端面2eは、その傾斜については任意であるが、例えば、射出部2bのうち最も終端面2eに近いプリズム部3の射出面3aとともに1つの平坦面をなし、導光方向D2における最後の射出面として機能する構成であってもよい。
【0039】
なお、導光体2のうち厚み方向D1および導光方向D2のなす平面に対して直交する方向の両端に位置し、入射面2a、射出部2b、平滑面2c、傾斜面2dおよび終端面2eを繋ぐ側面は、光学的に寄与しない面であり、形状や構成等については任意である。
【0040】
以上が、光学部材1の基本的な構成である。
【0041】
〔階段状反射面〕
次に、階段状反射面4の詳細およびその効果について、図面を参照して説明する。
【0042】
図3~
図5では、光学部材1および後述する比較例の光学部材における導光を分かり易くするため、断面を示すものではないが、光学部材の内部に進入した光にハッチングを施すとともに、入射光L2およびその反射光の進行方向を白抜き矢印で示している。
【0043】
階段状反射面4は、例えば
図3に示すように、段差部5を隔てて配置された3つの平坦面41~43で入射した入射光L2を反射する。言い換えると、階段状反射面4は、複数の平坦面で入射光L2を分割して反射し、反射光のピッチをプリズムピッチPP1の半分以下にする。
【0044】
以下、説明の便宜上、入射光L2のうち第1平坦面41で反射したものを「第1反射光L21」、第2平坦面42で反射したものを「第2反射光L22」、第3平坦面43で反射したものを「第3反射光L23」と称する。
【0045】
階段状反射面4は、例えば、第1段差部51および第2段差部52が平坦な傾斜面とされ、傾斜面の厚み方向D1に対する傾斜角度が略同一となっている。段差部51、52は、厚み方向D1に対する傾斜角度をηとして、傾斜角度ηが入射光L2の導光角φ以下、すなわちη≦φを満たすことが好ましい。これにより、導光角φの入射光L2が段差部51、52で遮られることなく、第2平坦面42および第3平坦面43に到達し、段差部51、52における意図しない反射を抑制しつつ、光線の損失を防止することができる。
【0046】
なお、段差部51、52は、入射光L2のうち第2平坦面42および第3平坦面43に向かう光を妨げなければよく、平面形状に限られず、湾曲した曲面形状や平面部分と曲面部分とを有する形状などの任意の形状とされうる。
【0047】
階段状反射面4は、例えば、入射光L2を平坦面41~43で分割して反射することで、反射光L21~L23のピッチ間隔P11~P13を、それぞれプリズムピッチPP1の半分以下にする。ここでピッチ間隔P11とは、例えば
図4に示すように、第1反射光L21と第2反射光L22との導光方向D2におけるピッチである。ピッチ間隔P12とは、第2反射光L22と第3反射光L23との導光方向D2におけるピッチである。ピッチ間隔P13とは、第3反射光L23と、当該第3反射光L23を生じさせる第3平坦面43に隣接する他の階段状反射面4における第1反射光L21との導光方向D2におけるピッチである。階段状反射面4は、入射光L2をプリズムピッチPP1とは大きく異なるピッチ間隔P11~P13の反射光L21~L23に分割することで、第2領域2bbでモアレが発生することを抑制する。
【0048】
ここで、例えば
図5に示すように、階段状反射面4を有しない比較例の光学部材におけるモアレの発生について説明する。
【0049】
比較例の光学部材は、射出部が断面視にて三角形状の突起である複数のプリズム部100と平坦面である複数の平坦部101とが交互に繰り返し配列されてなり、プリズム部100のプリズムピッチが射出部の全域で一定である点で光学部材1と相違する。言い換えると、比較例の光学部材は、射出部におけるプリズム部と平坦部との構造ピッチが全域で同一となっている。比較例の光学部材は、入射光L2の一部を平坦部101で図示しない反対側の平滑面側に全反射し、入射光L2の一部をプリズム部100の射出面100aから外部に射出する。入射光L2のうち平坦部101で反射されたものを反射光Lr1として、反射光Lr1は、導光方向D2におけるピッチ間隔PLr1がプリズム部100のプリズムピッチPP0と一致する。
【0050】
この反射光Lr1は、比較例の光学部材の内部で導光され、再び射出部に到達するが、射出部に再び到達するまで距離があるため、反射光Lr1のピッチ間隔PLr1が小さく変化してしまう。比較例の光学部材の射出部において、入射光L2が最初に到達する領域を第1領域とし、当該射出部のうち第1領域で反射した入射光L2が2回目に到達する領域を第2領域として、ピッチ間隔PLr1は、第1領域よりも第2領域のほうが小さくなる。
【0051】
一方、比較例の光学部材では、射出部の全域においてプリズムピッチPP0が一定であるため、第2領域においては、プリズムピッチPP0とピッチ間隔P
Lr1との間にわずかにズレが生じてしまう。このため、比較例の光学部材は、例えば
図6に示すように、第2領域における反射光の光線パターンと、プリズム部100と平坦部101との構造パターンとの間にわずかにズレが生じ、モアレが発生しうる。モアレが生じると、射出部において視認させる光景の視認性が低下してしまうため、比較例の光学部材は、死角領域の光景の視認性が低下しうる。
【0052】
なお、
図6では、光線パターンの明暗および構造パターンの明暗を白と黒のパターンで示している。
図6では、光線パターンおよび構造パターンの「明」とは射出光L3が射出される部位に相当し、「明」のパターンを白で示している。
図6では、光線パターンおよび構造パターンの「暗」とは射出光L3が射出されない部位に相当し、「暗」のパターンを黒で示している。
図6は、射出部の平坦部101に対する法線方向から見たときの明暗パターンを示した図である。
【0053】
モアレは、反射光Lr1のピッチ間隔PLr1とプリズムピッチPP0との差が所定以下である場合に強く発生し、この差が大きくなると、モアレの周期が細かくなって目立ちにくくなる。また、モアレは、ピッチ間隔PLr1とプリズムピッチPP0とが一致するか、あるいは整数倍の関係であれば発生しない。そこで、モアレを低減するために、比較例の光学部材において、第1領域のプリズムピッチPP0を第2領域よりも十分に小さくすることが考えられる。
【0054】
しかしながら、この場合、プリズム部100のサイズ、ひいては射出面100aの面積が小さくなってしまい、第1領域における射出光L3は、射出面100aの小面積化に起因する回折影響が大きくなってしまう。このため、第1領域のプリズムピッチPP0を単に小さくした場合には、モアレを低減できるものの、第1領域で視認させる光景のボケが大きくなり、死角領域の光景の視認性が低下してしまう。
【0055】
これに対して、本実施形態の光学部材1は、射出部2bの第1領域2baに複数の階段状反射面4が配置され、入射光L2を複数の反射光L21~L23に分割する構成となっている。このため、反射光L21~L23は、ピッチ間隔P11~P13がプリズムピッチPP1と大きく異なるものとなり、ひいては第2領域2bbに到達したときのピッチ間隔P11~P13がプリズムピッチPP2との差が大きくなる。その結果、光学部材1は、第2領域2bbにおけるモアレの発生を抑制することができる。
【0056】
また、光学部材1は、階段状反射面4を有し、終端面2eに近い平坦面ほど高さ位置がより下側になる構成であることで、プリズム部3の射出面3aの面積が大きく確保される。このため、光学部材1は、射出光L3が射出面3aの面積に起因する回折の影響が小さくなり、射出部2bにて視認させる光景の視認性低下を抑制することができる。
【0057】
なお、
図4に示すように、反射光L21~L23の導光方向D2における幅をそれぞれS11、S12、S13とし、段差部51、52の厚み方向D1における幅をD31、D32とする。このとき、ピッチ間隔P11、P12は、第1領域2baにおいては、以下の(2)式、(3)式で表される。
【0058】
P11=S11+2×D31×tanφ・・・(2)
P12=S12+2×D32×tanφ・・・(3)
本明細書では、階段状反射面4が3つの平坦面を有した構成である場合を代表例として説明するが、これに限定されるものではなく、段差部の数をm(m:2以上の整数)とし、平坦面の数をm+1として、mについては、適宜変更されうる。例えば、階段状反射面4のうち入射面2a側から数えてm番目の第m平坦面4mでの反射光を第m反射光L2mとし、(m+1)番目の第(m+1)平坦面4(m+1)での反射光を第(m+1)反射光L2(m+1)とする。そして、第m反射光L2m、第(m+1)反射光L2(m+1)の導光方向D2における幅をそれぞれS1m、S1(m+1)とし、入射面2a側から数えてm番目の段差部5mの厚み方向D1における幅をD3mとする。このとき、第m反射光L2mと第(m+1)反射光L2(m+1)とのピッチ間隔P1mは、第1領域2baにおいては、以下の(4)式で表される。
【0059】
P1m=S1m+2×D3m×tanφ・・・(4)
なお、ピッチ間隔P11~P1mは、モアレ低減の観点から、それぞれプリズムピッチPP1の半分以下であればよく、略同一である必要はないが、略同一にした場合には射出光L3の光量が略均一化にすることができる効果も得られる。これは、ピッチ間隔P11~P1mが略同一の場合、第2領域2bbに向かう第1反射光L21~第m反射光L2mが略等間隔、すなわち光量が略同一となり、第2領域2bb、第3領域2bcで射出される光量のバラツキが低減されるためである。ピッチ間隔P11~P1mを略同一にする場合、階段状反射面4は、例えば、第1段差部51~第m段差部5mの幅D31~D3mが略同一、かつ第1平坦面41~第(m+1)平坦面4(m+1)の幅S11~S1(m+1)が略同一とされる。
【0060】
また、階段状反射面4の段差部5およびプリズム部3の他面3bは、光学的に寄与しない面であるため、射出部2b側からの外光が導光体2の内部に入射しないように、図示しない遮光膜で覆われていてもよい。
【0061】
本実施形態によれば、射出部2bのうち入射面2aからの入射光L2が直接入射する第1領域2baがプリズム部3と階段状反射面4とが交互に繰り返し配列され、入射光L2の一部が複数の平坦面41~43で分割して反射される光学部材1となる。この光学部材1は、入射光L2の一部が複数の反射光L21~L23に分割され、反射光L21~L23のピッチ間隔P11~P13がプリズム部3のプリズムピッチPP1から大きくはずれた状態となる。このため、光学部材1は、反射光L21~L23のピッチ間隔P11~P13と第2領域2bbのプリズムピッチPP2とが大きくずれ、モアレを低減することが可能となる。
【0062】
(1)光学部材1は、本実施形態では、階段状反射面4が平坦面41~43のうち終端面2e側のプリズム部3に近い平坦面ほど厚み方向D1における位置が下となる構成となっている。これにより、光学部材1は、プリズム部3の射出面3aの面積を所定以上に確保でき、第1領域2baにおける射出光L3の回折影響を低減することができる。つまり、この光学部材1は、プリズム部3と全反射による反射面との周期的な構造に起因するモアレを低減しつつ、死角領域の光景の視認性を確保することが可能となっている。
【0063】
(第2実施形態)
第2実施形態の光学部材1について、
図7~
図10を参照して説明する。
【0064】
図9、
図10では、
図3と同様の目的で、断面を示すものではないが、光学部材1における入射光L2およびその反射光L21~L23にハッチングを施すとともに、これらの光の進行方向を白抜き矢印で示している。
【0065】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図7に示すように、射出部2bの構成が変更されている点および導光体2の内部に屈折率差層7を有する点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0066】
射出部2bは、本実施形態では、例えば、第1領域2baが第2領域2bbと同様にプリズム部3と平坦部6とが交互に繰り返し配列されてなる。第1領域2baは、プリズム部3のプリズムピッチPP1が第2領域2bbのプリズムピッチPP2よりも大きい。第1領域2baは、本実施形態では、導光体2の内部であって、射出部2b側の平坦部6の近傍に導光体2よりも低屈折率の屈折率差層7が形成されている。複数の平坦部6のうち第1領域2baに位置するものは、内部での反射面として機能させる必要がないため、射出部2b側からの外光が内部に侵入することを防ぐため、図示しない遮光膜で覆われていてもよい。
【0067】
光学部材1は、例えば
図8に示すように、入射光L2の一部が第1領域2baの導光体2と屈折率差層7との界面で全反射により平滑面2c側に反射され、残部が屈折率差層7の隙間を通り、プリズム部3の射出面3aから外部に射出される。屈折率差層7に入射した入射光L2は、後述する屈折率差層7の平坦面71~73で分割して反射される。屈折率差層7で反射された入射光L2は、第1実施形態と同様に、平滑面2cで全反射され、その後、第2領域2bbまたは第3領域2bcに導光され、プリズム部3から外部に射出される。
【0068】
屈折率差層7は、例えば、導光体2よりも相対的に屈折率が低い屈折率n
1(<n
0)の低屈折率材料、あるいは空気層で構成される。これにより、屈折率差層7は、sinφ>n
1/n
0またはsinφ>1/n
0の全反射条件を満たし、平坦面71~73に入射する入射光L2が反射される。屈折率差層7は、例えば
図9に示すように、平滑面2cに対して略平行な複数の平坦面71~73と、平坦面の間を繋ぐ段差部8とを有してなる。屈折率差層7は、例えば、射出部2bとは反対側の面が入射面2a側から順に、第1平坦面71、第1段差部81、第2平坦面72、第2段差部82、第3平坦面73となっている。屈折率差層7は、例えば、高さ位置が異なる複数の平坦面71~73を有してなるが、第1領域2baにおける射出面3aの面積確保の観点から、終端面2eに近い平坦面ほど高さ位置が下となる、すなわち射出部2bに近づく構成とされることが好ましい。
【0069】
導光体2は、本実施形態では、例えば、図示しない金型を用い、平滑面2c側から屈折率差層7の平坦面71~73および段差部81、82となる面までの部分を成型した後、異なる金型を用いて残部を成型するなどの樹脂成型方法により製造することができる。
【0070】
第1平坦面71は、例えば、屈折率差層7の複数の平坦面の中で高さ位置が最も上であり、入射光L2の一部を第1反射光L21として全反射により反射する反射面である。第2平坦面72は、例えば、高さ位置が第1平坦面71と第3平坦面73との間にあり、入射光L2の一部を第2反射光L22として全反射により反射する反射面である。第3平坦面73は、例えば、屈折率差層7の複数の平坦面の中で高さ位置が最も下であり、入射光L2の一部を第3反射光L23として全反射により反射する反射面である。平坦面71~73は、導光方向D2において段差部8を隔てて配置されており、入射光L2を複数に分割して平滑面2c側に反射する役割を果たす。
【0071】
第1段差部81および第2段差部82は、例えば、平面形状とされ、厚み方向D1に対して傾斜角度ηで傾斜した傾斜面となっている。傾斜角度ηは、入射光L2が第2平坦面72および第3平坦面73に入射する際の妨げとならないように、入射光L2の導光角φ以下、すなわちη≦φを満たすことが好ましい。
【0072】
なお、屈折率差層7のうち平坦面71~73および段差部81、82以外の部分については、入射光L2のうちプリズム部3の射出面3aに向かう光を妨げなければ、その形状やサイズ等については任意である。また、屈折率差層7は、入射光L2の導光角をφとして、例えば、プリズム部3の射出面3aを通り、厚み方向D1に対する角度がφの仮想直線上に位置しないように配置される。また、屈折率差層7は、導光体2内での意図しない反射を生じさせたり、他の屈折率差層7で生じる反射光L21~L23の妨げとなったりしないように、平坦部6からの厚み方向D1における距離が所定以下となる位置に配置される。さらに、屈折率差層7は、例えば、段差部の数をk(k:1以上の整数)、平坦面の数をk+1として、kについては任意である。
【0073】
ここで、例えば
図10に示すように、反射光L21、L22のピッチ間隔をP21とし、反射光L22、L23のピッチ間隔をP22とする。また、第3反射光L23とこの第3反射光L23を生じさせる屈折率差層7に隣接する屈折率差層7の第1反射光L21とのピッチ間隔をP23とする。このとき、ピッチ間隔P21~P23は、隣接する屈折率差層7の導光方向D2におけるピッチ間隔をP2として、いずれもP2の半分以下とされる。これにより、光学部材1は、反射光L21~L23が第2領域2bbに到達したときのピッチ間隔P21~P23とプリズムピッチPP2とが大きく異なる状態となり、モアレを低減する効果が得られる。
【0074】
また、
図9に示すように反射光L21~L23の導光方向D2における幅をそれぞれS21、S22、S23とし、
図10に示すように段差部81、82の厚み方向D1における幅をそれぞれD41、D42とする。このとき、ピッチ間隔P21、P22は、第1領域2baでは、以下の(5)式、(6)式で表される。
【0075】
P21=S21+2×D41×tanφ・・・(5)
P22=S22+2×D42×tanφ・・・(6)
なお、ピッチ間隔P21~P23は、略同一である必要はないが、略同一である場合には射出光L3の光量が略均一化にすることができる効果も得られる。
【0076】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、本実施形態の光学部材1は、導光体2の内部に屈折率差層7を有し、第1領域2baにおいては屈折率差層7の平坦面71~73が反射面として機能する構成であるため、第1領域2baの平坦部6を図示しない遮光膜で覆うことが可能である。このため、本実施形態の光学部材1は、第1領域2baにおいて、射出部2bからの外光の侵入による影響を低減することが可能になる効果も得られる。
【0077】
(第2実施形態の変形例)
光学部材1は、例えば
図11に示すように、導光体2が基部21とプリズムシート22とにより構成され、これらが透明接着層23により接着された構成であってもよい。
【0078】
基部21は、例えば、入射面2aの一部、平滑面2c、傾斜面2d、および終端面2eの一部と、屈折率差層7を構成する空洞部211とを有する。プリズムシート22は、例えば、入射面2aの残部、射出部2b、および終端面2eの残部と、基部21と対向する平面部221とを有し、平面部221が透明接着層23を介して基部21に接着されている。基部21およびプリズムシート22は、例えば、図示しない金型を用いた任意の樹脂成型法によりそれぞれ別個形成される。透明接着層23は、例えば、OCAやOCRなどの光学接着剤で構成され、基部21およびプリズムシート22の構成材料と同じ屈折率とされる。なお、OCA、OCRとは、それぞれ、Optical Clear Adhesive、Optical Clear Resinの略称である。また、この場合、屈折率差層7は、例えば、空洞部211に存在する空気層で構成されるが、基部21よりも低屈折率の材料を空洞部211に充填して構成されてもよい。
【0079】
本変形例によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、複数の部材で導光体2を構成することで、製造が容易となる効果も得られる。
【0080】
(第3実施形態)
第3実施形態の光学部材1について、
図12~
図15を参照して説明する。
【0081】
図14、
図15では、
図3と同様の目的で、断面を示すものではないが、光学部材1における入射光L2およびその反射光L21~L23にハッチングを施すとともに、これらの光の進行方向を白抜き矢印で示している。
【0082】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図12に示すように、射出部2bの第1領域2baが射出面9aを有する複数の突起部9が繰り返し配列されてなり、導光体2の内部であって、突起部9内に屈折率差層7が形成されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。また、屈折率差層7の構成は、基本的に、上記第2実施形態と同様であるため、本実施形態では、相違点について主に説明する。
【0083】
屈折率差層7は、本実施形態では、例えば、一部または全部が突起部9内に形成されている。屈折率差層7は、例えば、平坦面71~73と段差部81、82とを有し、第1平坦面71が第2領域2bbの平坦部6と同じ高さ位置になるように形成される。屈折率差層7は、例えば、平坦面71~73のうち終端面2eに近い平坦面ほど高さ位置が下、すなわち射出部2bに近づく構成とされる。屈折率差層7は、例えば、入射光L2の導光角をφとして、突起部9の射出面9aを通り、厚み方向D1に対して角度φで傾斜した仮想直線上に位置しないように配置される。
【0084】
突起部9は、断面視にて、例えば
図12に示すように、台形形状とされ、終端面2e側に位置する傾斜面が入射面2aに対して平行な射出面9aとなっている。複数の突起部9は、第1領域2baにおいて導光方向D2に沿って繰り返し配列され、互いに平行配置されている。
【0085】
なお、複数の突起部9は、射出面9aを有し、隣接する突起部9の射出面9aからの射出光L3を妨げない形状であればよく、台形形状に限られず、射出面9a以外の部分の形状については任意である。また、複数の突起部9は、射出部2b側からの外光が導光体2に侵入することを防ぐため、射出面9a以外の部分が図示しない遮光膜で覆われてもよい。
【0086】
光学部材1は、本実施形態では、例えば
図13や
図14に示すように、第1領域2baにおいては、入射面2aからの入射光L2の一部を屈折率差層7の複数の平坦面71~73で分割して反射しつつ、残部を突起部9の射出面9aから外部に射出する。第1領域2baでは、入射光L2の一部は、平坦面71~73で第1反射光L21、第2反射光L22、第3反射光L23に分割されて平滑面2cに反射される。そして、光学部材1は、第2領域2bb、第3領域2bcでは、上記第1実施形態と同様に、入射光L2の一部を平滑面2cおよび平坦部6で反射し、残部をプリズム部3から外部に射出する。
【0087】
なお、本実施形態では、
図15に示すように、反射光L21~L23の導光方向D2におけるピッチ間隔P21~P23は、上記第2実施形態と同様に、略同一である必要はない。射出部2bでの射出光L3の光量の略均一化の観点から略同一であると好ましい。この場合、反射光L21~L23の導光方向D2における幅S21~S23や段差部81、82の傾斜角度ηおよび厚み方向D1の幅D41、D42、並びに屈折率差層7の導光方向D2におけるピッチ間隔P2は、上記第2実施形態と同様の設計とされる。
【0088】
本実施形態によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、射出面9a以外の部分における形状や構成の自由度が高い複数の突起部9を備えることで、上記第2実施形態よりも製造コストを低減する効果も期待される。
【0089】
(第4実施形態)
第4実施形態の光学部材1について、
図16~
図19を参照して説明する。
【0090】
図18、
図19では、
図3と同様の目的で、断面を示すものではないが、光学部材1における入射光L2およびその反射光L21~L23にハッチングを施すとともに、これらの光の進行方向を白抜き矢印で示している。
【0091】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図16に示すように、射出部2bの第1領域2baが第2領域2bbと同様の構成とされるとともに、平滑面2cと傾斜面2dとの間に階段状反射面10で構成される分割反射部2fを有する点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0092】
射出部2bは、本実施形態では、上記第2実施形態と同様に、プリズム部3と平坦部6とが交互に繰り返し配列されてなり、プリズムピッチPP1が第2領域2bbよりも大きい構成となっている。第1領域2baは、本実施形態では、例えば
図17に示すように、平坦部6が入射光L2の一部を分割反射部2fに反射し、プリズム部3が入射光L2の残部を外部に射出する構成となっている。
【0093】
分割反射部2fは、複数の階段状反射面10が導光方向D2に沿って繰り返し配列されてなる。分割反射部2fは、例えば
図18に示すように、階段状反射面10が有する複数の反射面11~13で入射光L2を分割し、反射光L21~L23を射出部2bの第2領域2bb側に反射する。分割反射部2fは、導光方向D2における幅が第1領域2baの同方向における幅以下となっている。
【0094】
階段状反射面10は、例えば、平坦部6に対して略平行な第1反射面11、第2反射面12および第3反射面13と、隣接する反射面を繋ぐ段差部14とを有してなる。階段状反射面10は、第1反射面11、第2反射面12および第3反射面13の高さ位置がそれぞれ異なっている。反射面11~13は、例えば、終端面2e側に近いものほど高さ位置が上、すなわち導光体2から遠くなるように構成されている。例えば、反射面11~13は、第1反射面11が平滑面2cと同じ高さ位置とされ、第2反射面12が第1反射面11および平滑面2cから突出し、第3反射面13が第2反射面12よりも平滑面2cから突出した位置となる構成である。また、階段状反射面10は、例えば
図19に示すように、平面形状の段差部14の厚み方向D1に対する傾斜角度ηが入射光L2の導光角φ以下となっている。これにより、階段状反射面10は、第1領域2baで反射した入射光L2の一部が段差部14で遮られることなく、第1反射面11、第2反射面12および第3反射面13で無駄なく反射されることとなり、光線の損失を抑制することができる。
【0095】
なお、段差部14は、入射光L2のうち第2反射面12および第3反射面13に向かう光を妨げなければよく、平面形状に限られず、湾曲形状や平面部分と曲面部分とを有する複合形状などの他の形状にもされうる。
【0096】
ここで、
図18に示すように、反射面11~13における反射光をそれぞれ第1反射光L21、第2反射光L22、第3反射光L23として、反射光L21~L23の導光方向D2におけるピッチ間隔をそれぞれP31、P32、P33とする。なお、ピッチ間隔P31、P32とは、それぞれ、第1反射光L21と第2反射光L22とのピッチ間隔、第2反射光L22と第3反射光L23とのピッチ間隔である。また、ピッチ間隔P33とは、第3反射光L23と、当該第3反射光L23を生じさせる階段状反射面10に隣接する階段状反射面10による第1反射光L21とのピッチ間隔である。
【0097】
このとき、階段状反射面10は、隣接する階段状反射面10の導光方向D2におけるピッチ間隔をP3として、ピッチ間隔P31~P33がそれぞれピッチ間隔P3の半分以下となるように構成されている。また、階段状反射面10は、ピッチ間隔P3が第1領域2baにおけるプリズムピッチPP1以下、かつ第1領域2baにおける平坦部6の数と同数設けられる。これにより、本実施形態の光学部材1は、第1領域2baで反射した入射光L2がすべて分割反射部2fに入射し、第2領域2bbのプリズムピッチPP2とは大きく異なるピッチ間隔P31~P33の反射光L21~L23に分割されることとなる。このため、この光学部材1は、第2領域2bbにおけるモアレが低減される構成となっている。
【0098】
なお、反射光L21~L23のピッチ間隔P31~P33は、略同一である必要はないが、射出部2bでの射出光L3の光量の略均一化の観点から略同一であると好ましい。この場合、反射光L21~L23の導光方向D2における幅S31~S33や段差部14の傾斜角度ηおよび厚み方向D1の幅D51、D52は、上記第2実施形態と同様の設計とされる。
【0099】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、この光学部材1は、射出部2bの第1領域2baに傾斜角度ηの段差部を有しないため、射出部2b側の外光が導光体2の内部に入射することを抑制し、ゴースト像の発生を低減する効果も得られる。
【0100】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0101】
(1)光学部材1は、例えば
図20に示すように、入射面2aの配置および構成が変更されてもよい。具体的には、入射面2aは、平滑面2cに隣接し、かつ平滑面2cとともに射出部2bと対向するように配置されうる。この光学部材1は、入射面2aおよび平滑面2cと、射出部2bとが略平行に対向するとともに、終端面2eの反対側に位置し、入射面2aと射出部2bとを繋ぐ入射側面2gをさらに有する。この場合、入射面2aは、例えば、平滑面2cよりも突出し、断面視にて、三角形状の突起状の入射プリズム部15を複数有してなる。そして、入射面2aは、複数の入射プリズム部15のみで構成されるとともに、これらが導光方向D2に沿って繰り返し配列されてなる。なお、入射側面2gは、入射面2aからの入射光L2が射出部2bに入射することを妨げなければよく、面形状や傾斜については適宜変更されうるし、意図しない外光の入射を防ぐために図示しない遮光膜で覆われてもよい。
【0102】
入射プリズム部15は、例えば
図21に示すように、終端面2eとは反対側の面がプリズム部3の射出面3aに対して平行な入射部15aとなっている。入射プリズム部15は、入射部15aに隣接する終端面2e側の面が、厚み方向D1に対する傾斜角度がαの隣接面15bとなっている。入射プリズム部15は、例えば、入射部15aに入射する外景光L1の傾斜角度をθとし、入射部15aの厚み方向D1に対する傾斜角度をψとして、隣接面15bの傾斜角度αがθ<α<ψを満たすように設計される。これにより、外景光L1が隣接面15bに遮られることなく入射部15aに入射するとともに、入射プリズム部15間で入射光L2に隙間で生じることが抑制され、光線の損失を低減可能な入射面2aとなる。
【0103】
なお、上記の光学部材1の変形例は、上記第1実施形態に適用した例について示したが、これに限定されるものではなく、上記第1実施形態以外の実施形態およびその変形例についても適用可能である。
【0104】
(2)光学部材1は、例えば
図22に示すように、射出部2bが上記第2実施形態と同様の構成とされるとともに、導光体2内部の複数の屈折率差層7の配置が平滑面2cの近傍に変更されてもよい。この場合、屈折率差層7は、平滑面2cのうち傾斜面2d側の表面近傍であって、第1領域2baで反射した入射光L2が入射する所定領域に配置される。屈折率差層7は、例えば、入射面2a側から終端面2eに向かって、第1平坦面71、第2平坦面72、第3平坦面73の順に配置され、終端面2e側の平坦面ほど高さ位置が上、すなわち平滑面2cに近くなるように配置される。また、屈折率差層7は、複数配置されてもよいし、第1平坦面71、第2平坦面72、第3平坦面73がこの順で繰り返し配列された1つの層として構成されてもよい。
【0105】
本変形例によっても、上記第1実施形態と同様に、モアレ低減の効果が得られる光学部材1となる。つまり、光学部材1は、射出部2bの第1領域2baから第2領域2bbに到達するまでの間のいずれかの箇所において、入射光L2を第2領域2bbのプリズムピッチPP2とは大きく異なるピッチ間隔の複数の反射光に分割できる構成であればよい。
【0106】
(3)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0107】
(本開示の観点)
上記した本開示については、例えば以下に示す観点として把握することができる。
【0108】
[第1の観点]
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、前記入射面から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、前記射出部と対向する平滑面(2c)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、
前記射出部は、前記入射面に隣接する第1領域(2ba)と、前記第1領域に隣接する第2領域(2bb)とを有してなり、
前記第1領域は、段差部(5、51、52)を隔てて異なる高さに位置し、前記平滑面のなす面と対向する複数の平坦面(41~43)を有する複数の階段状反射面(4)と、複数の突起状のプリズム部(3)とを有し、前記階段状反射面と前記プリズム部とが交互に繰り返し配列されてなり、
前記第2領域は、複数の前記プリズム部と、1つの平坦面である複数の平坦部(6)とを有し、前記プリズム部と前記平坦部とが交互に繰り返し配列されてなり、
前記平坦面、前記平坦部および前記平滑面は、前記入射面から前記導光体の内部に入射した入射光(L2)の一部を全反射により反射し、
前記プリズム部は、前記入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有する、光学部材。
【0109】
[第2の観点]
前記平坦部に対する法線方向に沿って、前記平坦部と前記平滑面とを繋ぐ方向を厚み方向(D1)とし、前記厚み方向のうち前記平滑面から前記平坦部に向かう方向を下とし、複数の前記平坦面の前記厚み方向における位置を高さ位置として、
前記階段状反射面は、複数の前記平坦面のうち前記終端面に近い前記平坦面ほど前記高さ位置が下である、第1の観点に記載の光学部材。
【0110】
[第3の観点]
前記平坦部のなす平面上において、前記平坦部と前記プリズム部との配列方向に沿って、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)として、
前記第1領域は、複数の前記平坦面それぞれの前記導光方向における幅(S11~S13)が、隣接する前記プリズム部のピッチ間隔(PP1)の半分以下である、第1または第2の観点に記載の光学部材。
【0111】
[第4の観点]
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)および平坦面である複数の平坦部(6)を有し、前記入射面から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、前記射出部と対向する平滑面(2c)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)と、
前記導光体の内部のうち前記射出部の近傍であって、少なくとも前記入射面から入射する入射光(L2)が直接入射する領域に配置され、段差部(8、81、82)を介してそれぞれ異なる高さに配置され、前記平滑面のなす平面と対向する複数の平坦面(71~73)を有し、前記導光体よりも低屈折率な複数の屈折率差層(7)と、を備え、
前記平坦面、前記平坦部および前記平滑面は、前記入射光の一部を全反射により反射し、
前記プリズム部は、前記入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有し、
複数の前記屈折率差層は、前記入射光のうち前記射出面に入射する光を遮らないように、互いに距離を隔てて配置されている、光学部材。
【0112】
[第5の観点]
前記平坦部に対する法線方向に沿って、前記平坦部と前記平滑面とを繋ぐ方向を厚み方向(D1)とし、前記厚み方向のうち前記平滑面から前記平坦部に向かう方向を下とし、複数の前記平坦面の前記厚み方向における位置を高さ位置として、
前記屈折率差層は、複数の前記平坦面のうち前記終端面に近い前記平坦面ほど前記高さ位置が下である、第4の観点に記載の光学部材。
【0113】
[第6の観点]
前記平坦部のなす平面上において、前記平坦部と前記プリズム部との配列方向に沿って、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)として、
前記屈折率差層は、複数の前記平坦面それぞれの前記導光方向における幅(S21~S23)が、隣接する前記屈折率差層のピッチ間隔(P2)の半分以下である、第4または第5の観点に記載の光学部材。
【0114】
[第7の観点]
前記屈折率差層は、空気層である、第4ないし第6の観点のいずれか1つに記載の光学部材。
【0115】
[第8の観点]
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)および平坦面である複数の平坦部(6)を有し、前記入射面から入射した光の一部を外部に射出する射出部(2b)と、前記射出部と対向する分割反射部(2f)および平滑面(2c)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、
前記分割反射部は、前記平滑面に隣接し、前記平滑面よりも前記入射面の側に位置するとともに、複数の前記平坦部のなす面と対向する複数の反射面(11~13)が段差部(14)を隔ててそれぞれ異なる高さに位置する複数の階段状反射面(10)が繰り返し配列されてなり、
前記反射面、前記平坦部および前記平滑面は、前記入射面から前記導光体の内部に入射した入射光(L2)の一部を全反射により反射し、
前記プリズム部は、前記入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)を有する、光学部材。
【0116】
[第9の観点]
前記平坦部に対する法線方向に沿って、前記平坦部と前記平滑面とを繋ぐ方向を厚み方向(D1)とし、前記厚み方向のうち前記平坦部から前記平滑部に向かう方向を上とし、複数の前記反射面の前記厚み方向における位置を高さ位置として、
前記階段状反射面は、複数の前記反射面のうち前記終端面に近い前記反射面ほど前記高さ位置が上である、第8の観点に記載の光学部材。
【0117】
[第10の観点]
前記平坦部のなす平面上において、前記平坦部と前記プリズム部との配列方向に沿って、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)として、
前記階段状反射面は、複数の前記反射面それぞれの前記導光方向における幅(S31~S33)が、隣接する前記階段状反射面のピッチ間隔(P3)の半分以下である、第8または第9の観点に記載の光学部材。
【0118】
[第11の観点]
前記平坦部のなす平面上において、前記平坦部と前記プリズム部との配列方向に沿って、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)として、
前記分割反射部の前記導光方向における幅は、前記射出部のうち前記入射面からの入射光(L2)が直接入射する領域(2ba)の前記導光方向における幅以下である、第8ないし第10の観点のいずれか1つに記載の光学部材。
【符号の説明】
【0119】
2…導光体、2a…入射面、2b…射出部、2ba…第1領域、2bb…第2領域
2c…平滑面、2e…終端面、2f…分割反射部、3…プリズム部、3a…射出面
4…階段状反射面、41~43…(階段状反射面の)平坦面
5、51、52…(階段状反射面の)段差部、6…平坦部、7…屈折率差層
71~73…(屈折率差層の)平坦面、8、81、82…(屈折率差層の)段差部
10…階段状反射面、11~13…反射面、14…段差部、D1…厚み方向
D2…導光方向、L1…外景光、L2…入射光、S11~S13…平坦面の幅
S21~S23…平坦面の幅、S31~S33…反射面の幅、
P2…屈折率差層のピッチ間隔、P3…階段状反射面のピッチ間隔
PP1、PP2…プリズム部のピッチ間隔