(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003270
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】複合電極および製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20241226BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241226BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241226BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241226BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241226BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241226BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
H01M4/66 A
H01M4/1391
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023213424
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】112123273
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517232729
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 2-1, Singhua Rd., Taoyuan Dist., Taoyuan City,330,Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林元凱
(72)【発明者】
【氏名】謝瀚緯
(72)【発明者】
【氏名】黄振溢
(72)【発明者】
【氏名】李宜庭
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017EE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA24
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複合電極およびその製造方法を提供する。
【解決手段】複合電極は、複合正極材料層が電極板の載置面にコーティングして得られる。複合正極材料層は、複数の正極材料粒子と第1導電性カーボンとLi-Nafion材料とを含有する。複数の正極材料粒子は三元材料で構成され、組成がLi[Ni
xCo
yMn
z]O
2、且つx+y+z=1、0.8<x<1、0<y<0.2、0<z<0.2である。第1導電性カーボンは、乾式機械的混合法によって、複数の正極材料粒子の表面に予めコーティングされる。複数の正極材料粒子に対する第1導電性カーボンの重量パーセント範囲は1wt.%~5.5wt.%である。Li-Nafion材料は、複数の正極材料粒子の表面を覆い、且つ複数の正極材料粒子の表面間に粘着される。複数の正極材料粒子に対するLi-Nafion材料の重量パーセント範囲が10wt.%~20wt.%である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合電極であって、電極板と複合正極材料層とを備え、
前記電極板は、載置面を有し、
前記複合正極材料層は、前記電極板の前記載置面に塗布され、前記複合正極材料層は、複数の正極材料粒子と第1導電性カーボンとリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料を含有し、
前記複数の正極材料粒子は、三元材料で構成され、前記三元材料の組成がLi[NixCoyMnz]O2、且x+y+z=1、0.8<x<1、0<y<0.2、0<z<0.2であり、
前記第1導電性カーボンは、乾式機械的混合法によって前記複数の正極材料粒子の表面に予めコーティングし、前記複数の正極材料粒子に対する前記第1導電性カーボンの重量パーセントが1wt.%~5.5wt.%であり、
前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料は、前記複数の正極材料粒子の表面にコーティングし且つ前記複数の正極材料粒子の表面間に粘結され、前記複数の正極材料粒子に対する前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料の重量パーセントが10wt.%~20wt.%である、ことを特徴とする複合電極。
【請求項2】
前記乾式機械的混合法は、機械的溶融混合法であり、第1回転速度600rpmでの10分間混合と第2回転速度4200rpmでの30分間混合を含め、且つ動作温度が30℃~40℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合電極。
【請求項3】
前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料は、混合溶媒によりリチウム化パーフルオロカーボンポリマー溶液を形成した後、前記複数の正極材料粒子と前記第1導電性カーボンと混合し、前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)溶液の重量パーセント濃度が10wt.%であり、前記混合溶媒は、エタノールとn-ブタノールとから構成され、前記エタノール:前記n-ブタノールの重量比が1:2である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合電極。
【請求項4】
前記複合正極材料層は、第2導電性カーボンを含有し、前記第1導電性カーボンが予めコーティングした前記複数の正極材料粒子と、前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料とを混合し、前記複数の正極材料粒子に対する前記第2導電性カーボンの重量パーセントが5.5wt.%~15wt.%である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合電極。
【請求項5】
前記複合正極材料層の圧縮密度が3.1g/cm3~3.3g/cm3である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合電極。
【請求項6】
前記電極板はアルミニウム板である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合電極。
【請求項7】
前記複数の正極材料粒子は第1平均粒子径を有し、前記第1平均粒子径が10μm~20μmであり、前記第1導電性カーボンは第2平均粒子径を有し、前記第2平均粒子径が50nm~200nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の複合電極。
【請求項8】
複合電極の製造方法であって、
複数の正極材料粒子および第1導電性カーボンを低教し、前記複数の正極材料粒子が三元材料で構成され、前記三元材料の組成がLi[NixCoyMnz]O2、且つx+y+z=1、0.8<x<1、0<y<0.2、0<z<0.2である、ステップ(a)と、
乾式機械的混合法により、前記第1導電性カーボンが前記複数の正極材料粒子の表面に予めコーティングされ、前記複数の正極材料粒子に対する前記第1導電性カーボンの重量パーセントが1wt.%~5.5wt.%である、ステップ(b)と、
リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料を提供し、前記複数の正極材料粒子に対する前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料の重量パーセントが10wt.%~20wt.%である、ステップ(c)と、
前記第1導電性カーボンが予めコーティングした前記複数の正極材料粒子と前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料とを混合して複合正極材料スラリーを形成する、ステップ(d)と、
前記複合正極材料スラリーを電極板の載置面に塗布する、ステップ(e)と、
乾燥によって複合電極を形成し、前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料が前記複数の正極材料粒子の表面にコーティングされ且つ前記複数の正極材料粒子の表面間に粘結される、ステップ(f)と、を含むことを特徴とする複合電極の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(b)における前記乾式機械的混合法は、機械的溶融混合法であり、第1回転速度600rpmでの10分間混合と、第2回転速度4200rpmでの30分間混合を含み、且つ動作温度範囲が30℃~40℃である、ことを請求項8に記載の複合電極の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)では、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料が混合溶媒に溶解してリチウム化パーフルオロカーボンポリマー溶液を形成し、前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)溶液の重量パーセント濃度が10wt.%であり、前記混合溶媒は、エタノールとn-ブタノールとで構成され、前記エタノール:前記n-ブタノールの重量比が1:2である、ことを請求項8に記載の複合電極の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ(d)では、第2導電性カーボンを添加し、前記第2導電性カーボンと前記第1導電性カーボンが予めコーティングした前記複数の正極材料粒子と前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料とを混合し、前記複数の正極材料粒子に対する前記第2導電性カーボンの重量パーセントが5.5wt.%~15wt.%である、ことを請求項8に記載の複合電極の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(e)では、ブレード(doctor blade)方式により、前記複合正極材料スラリーを前記電極板の前記載置面に塗布し、前記複合正極材料スラリーの表面密度が9mg/cm2~12mg/cm2である、ことを請求項8に記載の複合電極の製造方法。
【請求項13】
前記複合正極材料スラリーを乾燥して形成された複合正極材料層の圧縮密度が3.1g/cm3~3.3g/cm3である、ことを請求項8に記載の複合電極の製造方法。
【請求項14】
前記電極板は、アルミニウム板である、ことを請求項8に記載の複合電極の製造方法。
【請求項15】
前記複数の正極材料粒子は第1平均粒子径を有し、前記第1平均粒子径が10μm~20μmであり、前記第1導電性カーボンは第2平均粒子径を有し、前記第2平均粒子径が50nm~200nmである、ことを請求項8に記載の複合電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の電極に関し、特に、二次電池に適用する複合電極およびその製造方法に関する。本発明は、導電性カーボン乾式混合による表面予処理を行ってからリチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料を混合して複合正極シートを形成し、高倍率の充電および放電の性能が向上し、電容量維持率の最適化を実現する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車や蓄電機器に対する性能要求はますます高まっており、それらに使用される二次電池にも高い性能が求められるになった。様々な種類の電池の中でも、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)の三元正極材料を用いたリチウムイオン電池は高容量という特徴があり、現在主流となっている。
【0003】
上述の正極材料中のニッケル含有量はエネルギー密度に比例し且つコバルト金属の価格は激しく変動するため、エネルギー密度を高め、正極材料中のニッケル含有量を増加させることは、現在の開発主流である。しかし、ニッケル高含有量の正極材料自体は、ニッケル含有量が高いため、電解質との副反応を起こしやすく、サイクル寿命が短くなる傾向がある。
【0004】
従来のニッケル高含有量の材料はほとんど、無機金属酸化物を使用して表面改質される。しかし、通常の製造方法では均一かつ完全なコーティングを得るのは困難である。また、液相法の金属酸化物コーティング方法を採用する場合、溶媒の選択と回収を評価する必要があり、さらに、多回の熱処理も必要とされるため、材料製造の過程およびコストが大幅に増加する。
【0005】
また、リチウムイオン二次電池正極材料を用いて電極を製造する過程では、バインダーは不可欠な材料である。バインダーの選択が不適切である場合、電極中の表面改質後の正極材料の性能に影響を与える可能性がある。
【0006】
このような観点から、二次電池に適用する複合電極およびその製造方法を提供する必要があると考える。これによって、導電性カーボン乾式法による表面予処理およびリチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料を組み合せて複合正極シートを形成することで、高倍率の充放電性能が向上し、電容量維持率を最適化でき、従来技術の欠点を解決することを期待できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、二次電池に適用する複合電極および製造方法を提供する。具体的に、まず、乾式機械的溶融混合法(mechanofusion method)によりニッケル高含有量の正極材料NCMの表面に導電性カーボン(conductive carbon)をコーティングし、ニッケル高含有量の正極材料NCMの表面疎水性質および後過程のリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料のコーティング性能が向上し、ニッケル高含有量の正極材料NCMの元の球状二次粒子の形態が効果的に維持されることができる。また、乾式機械的溶融混合法は高速であり、追加の溶媒およびガス保護を必要とせず、適切な量の導電性カーボンをニッケル高含有量の正極材料NCMの表面にコーティングすることができ、正極材料表面の疎水性質が向上し、ニッケル高含有量の正極材料NCM表面におけるリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料のコーティング性能が向上し、且つ正極材料NCMの形態に悪影響を与えない。さらに、従来の二次電池の製造過程に使用されるバインダー(PVDF、PAA、CMC-SBR...)の代わりに、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料を使用する場合、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料のイオン伝導率が優れるので、高倍率(6CC/6CD)条件下において複合正極シートが充電および放電するとき、より優れた電容量維持率が得られる。言い換えれば、導電性カーボンによって予備表面処理を行うことによって、機能性コーティングのリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料がニッケル高含有量の正極材料表面により均一にコーティングすることができ、急速充放電とサイクル寿命の性能が向上し、迅速かつ効果的な手段が提供され、得られた後、バインダーとしてすぐに使用でき、且つ均一にコーティング可能な機能性コーティング層を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、電極板と複合正極材料層とを備える複合電極を提供する。電極板は載置面を有する。複合正極材料層は電極板の載置面に塗布され、複合正極材料層は複数の正極材料粒子と第1導電性カーボンとリチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料とを含有する。複数の正極材料粒子は三元材料で構成され、三元材料の組成がLi[NixCoyMnz]O2、且つx+y+z=1、0.8<x<1、0<y<0.2、0<z<0.2である。第1導電性カーボンは乾式機械的混合法によって複数の正極材料粒子の表面に予めコーティングし、複数の正極材料粒子に対する第1導電性カーボンの重量パーセントが1wt.%~5.5wt.%である。リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料は複数の正極材料粒子の表面を覆い且つ複数の正極材料粒子の表面間に粘結され、複数の正極材料粒子に対するリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料の重量パーセントが10wt.%~20wt.%である。
【0009】
ある実施形態では、乾式機械的混合法は、機械的溶融混合法であり、第1回転速度600rpmでの10分間混合と第2回転速度4200rpmでの30分間混合を含め、且つ動作温度が30℃~40℃である。
【0010】
ある実施形態では、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料は、混合溶媒によりリチウム化パーフルオロカーボンポリマー溶液を形成したあと、複数の正極材料粒子と第1導電性カーボンと混合し、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)溶液の重量パーセント濃度が10wt.%であり、混合溶媒は、エタノールとn-ブタノールとから構成され、エタノール:n-ブタノールの重量比が1:2である。
【0011】
ある実施形態では、複合正極材料層は、第2導電性カーボンを含有し、第1導電性カーボンが予めコーティングした複数の正極材料粒子と、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料とを混合し、複数の正極材料粒子に対する第2導電性カーボンの重量パーセントが5.5wt.%~15wt.%である。
【0012】
ある実施形態では、複合正極材料層の圧縮密度(プレス密度、加圧成形によって形成された見かけ密度)が3.1g/cm3~3.3g/cm3である。
【0013】
ある実施形態では、電極板がアルミニウム板である。
ある実施形態では、複数の正極材料粒子は第1平均粒子径を有し、第1平均粒子径が10μm~20μmであり、第1導電性カーボンは第2平均粒子径を有し、第2平均粒子径が50nm~200nmである。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は複合電極の製造方法を提供する。複数の正極材料粒子および第1導電性カーボンを低教し、複数の正極材料粒子が三元材料で構成され、三元材料の組成がLi[NixCoyMnz]O2、且つx+y+z=1、0.8<x<1、0<y<0.2、0<z<0.2である、ステップ(a)と、乾式機械的混合法により、第1導電性カーボンが複数の正極材料粒子の表面に予めコーティングされ、複数の正極材料粒子に対する第1導電性カーボンの重量パーセントが1wt.%~5.5wt.%である、ステップ(b)と、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料を提供し、複数の正極材料粒子に対するリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料の重量パーセントが10wt.%~20wt.%である、ステップ(c)と、第1導電性カーボンが予めコーティングした複数の正極材料粒子と前記リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料とを混合して複合正極材料スラリーを形成する、ステップ(d)と、複合正極材料スラリーを電極板の載置面に塗布する、ステップ(e)と、乾燥によって複合電極を形成し、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料が複数の正極材料粒子の表面にコーティングされ且つ複数の正極材料粒子の表面間に粘結される、ステップ(f)と、を含む。
【0015】
ある実施形態では、ステップ(b)における乾式機械的混合法は、機械的溶融混合法であり、第1回転速度600rpmでの10分間混合と、第2回転速度4200rpmでの30分間混合を含み、且つ動作温度範囲が30℃~40℃である。
【0016】
ある実施形態では、ステップ(c)では、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料が混合溶媒に溶解してリチウム化パーフルオロカーボンポリマー溶液を形成し、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)溶液の重量パーセント濃度が10wt.%であり、混合溶媒は、エタノールとn-ブタノールとで構成され、エタノール:n-ブタノールの重量比が1:2である。
【0017】
ある実施形態では、ステップ(d)では、第2導電性カーボンを添加し、第2導電性カーボンと第1導電性カーボンが予めコーティングした複数の正極材料粒子とリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料とを混合し、複数の正極材料粒子に対する第2導電性カーボンの重量パーセントが5.5wt.%~15wt.%である。
【0018】
ある実施形態では、ステップ(e)では、ブレード(doctor blade)方式により、複合正極材料スラリーを電極板の載置面に塗布し、複合正極材料スラリーの表面密度が9mg/cm2~12mg/cm2である。
【0019】
ある実施形態では、複合正極材料スラリーを乾燥して形成された複合正極材料層の圧縮密度が3.1g/cm3~3.3g/cm3である。
【0020】
ある実施形態では、電極板は、アルミニウム板である。
【0021】
ある実施形態では、複数の正極材料粒子は第1平均粒子径を有し、第1平均粒子径が10μm~20μmであり、第1導電性カーボンは第2平均粒子径を有し、前記第2平均粒子径が50nm~200nmである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態における複合電極の構造概念図である。
【
図3】第1導電性カーボンが予めコーティングした複数の正極材料粒子の構造概念図である。
【
図5】第1導電性カーボンが予めコーティングした複数の正極材料粒子のSEM画像である。
【
図6A】複数の正極材料粒子の粉末を圧縮成形(打錠・錠剤形状に形成する)した後の水滴接触角分析結果を示している。
【
図6B】第1導電性カーボンが予めコーティングした複数の正極材料粒子の粉末を圧縮成形(打錠・錠剤形状に形成する)した後の水滴接触角分析結果を示している。
【
図7】リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料の化学構造式である。
【
図8】本発明の実施形態における複合電極の製造方法のフローチャートである。
【
図10】本発明の実施例のSEM/EDS分析結果である。
【
図11A】0.1C/1C/3C/5C/6Cにおける比較例の充放電サイクル試験チャートである。
【
図11B】0.1C/1C/3C/5C/6Cにおける実施例の充放電サイクル試験チャートである。
【
図11C】比較例および実施例の3C充放電での比電容量比較図である。
【
図11D】比較例および実施例の6C充放電での比電容量比較図である。
【
図12】1CC/1CDサイクル試験条件で得られた比較例および実施例の充放電サイクル試験チャートである。
【
図13】6CC/6CDサイクル試験条件で得られた比較例および実施例の充放電サイクル試験チャートである。
【
図14】1CC/1CDサイクル試験条件で得られたPVDFの第1比較例とPVDFの第2比較例の充放電サイクル試験チャートである。
【
図15】6CC/6CDサイクル試験条件で得られたPVDFの第1比較例とPVDFの第2比較例の充放電サイクル試験チャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴と利点を示すいくつかの典型的な実施形態について、後述の説明において詳細に記述する。本発明は異なる態様において様々な変更を加えることができ、いずれも本発明の範囲から逸脱することなく、かつその説明及び図面は本質的に説明するために用いられものであり、本発明を限定する意図はないことを理解されたい。例えば、本開示の以下の内容において、第1特徴を第2特徴の上または上方に設置することが記述される場合、設置された上記第1特徴が上記第2特徴と直接接触している実施形態を含み、追加の特徴を上記第1特徴と上記第2特徴との間に設置することで、上記第1特徴が上記第2特徴と直接接触していない実施形態も含むことを示す。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、特許請求の範囲において異なる構成要素を記述するために用いられることができるが、これらの構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではなく、実施形態において記述されたこれらの構成要素は異なる構成要素記号によって示されることを理解されたい。これらの用語は、異なる構成要素を区別するためのものである。例えば、第1構成要素は第2構成要素と称されることができ、同様に、第2構成要素も第1構成要素と称されることができ、実施形態の範囲から逸脱することがない。また、明細書の用語「および/または」とは、1つまたは複数の関連特徴のいずれ1つまたはその組合せを意味している。また、「約」という用語は、当業者によって一般に受け入れられる標準誤差範囲内の平均値を指す。操作/動作に関する実施形態において明確に定義しない限り、本明細書に記載されているすべての数値範囲、量、数値およびパーセントなど(例えば、角度、維持時間、温度、操作条件、割合及びそれに相当するパーセントなど)はいずれも、すべての実施形態において用語の「約」または「実質的に」に理解すべきである。また、内容に記載されない限り、本発明及び特許請求の範囲の数値はいずれも、必要に応じて変化しえる近似値に取ることができる。例えば、各パラメータは、少なくとも記載されている有効桁数に照らして、通常の丸めの原則を適用して解釈しても良い。また、本明細書での数値範囲は、一方の端点から他方の端点まで、または2つの端点の間の範囲として表することができる。本明細書に記載されているすべての範囲は、特に定義されていない限り、端点を含むことを留意されたい。
【0024】
図1は、本発明の実施形態における複合電極の構造概念図である。本発明の本実施形態では、従来のリチウム電池またはリチウム金属電池の正極に適する複合電極1を提供する。本実施形態では、複合電極1は、電極板2と複合正極材料層3とを備える。電極板2は、例えば、アルミニウム板で構成され、載置面21(carrying surface、担持面)を有する集電体である。複合正極材料層3は、本発明の複合正極の製造方法を用いて電極板2の載置面21に塗布される。本発明の複合正極の製造方法によって得られた複合正極材料層3は、複数の正極材料粒子10、第1導電性カーボン20、およびリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30を含有する。本実施形態では、複数の正極材料粒子10は、三元材料で構成され、その三元材料の組成が、Li[Ni
xCo
yMn
z]O
2、x+y+z=1、0.8<x<1、0<y<0.2、0<z<0.2であり、且つ高ニッケル含有量(ニッケル含有量>80%)である。なお、本実施形態では、第1導電性カーボン20は、例えば、機械的溶融混合法などの乾式機械的混合法によって、複数の正極材料粒子10の表面に予めにコーティングされ、複数の正極材料粒子10に対する第1導電性カーボン20の重量パーセント(wt.%)範囲は、1wt.%~5.5wt.%である。
図2は、複数の正極材料粒子の構造概念図である。
図3は、第1導電性カーボンがコーティングした複数の正極材料粒子の構造概念図である。機械的溶融混合法を利用して、第1導電性カーボン20が複数の正極材料粒子10の表面に予めコーティングすることで、第1導電性カーボン20が複数の正極材料粒子10の表面に点状(dot-like)に均一に分布することができ、電極製造過程において、電気的な性能に影響を与える導電性カーボンの不均一な分布を減少させるだけでなく、複数の正極材料粒子10の表面性質を変化することもできる。
【0025】
図4は、複数の正極材料粒子のSEM画像である。
図5は、第1導電性カーボンが予めコーティングした複数の正極材料粒子のSEM画像である。本実施形態では、複数の正極材料粒子10は、第1平均粒子径を有し、前記第1平均粒子径の範囲は10μm~20μmである。第1導電性カーボン20は、第2平均粒子径を有し、前記第2平均粒子径の範囲は、50nm~200nmである。複数の正極材料粒子10が機械的溶融混合法によって処理されることで、第1導電性カーボン20が複数の正極材料粒子10の表面に点状に均一に分布し、且つ複数の正極材料粒子10の形態および粒子径サイズは無変化である。
【0026】
図6Aは、複数の正極材料粒子の粉末を圧縮成形(打錠・錠剤形状に形成する)した後の水滴接触角分析結果を示している。
図6Bは、第1導電性カーボンが予めコーティングした複数の正極材料粒子の粉末を圧縮成形(打錠・錠剤形状に形成する)した後の水滴接触角分析結果を示している。複数の正極材料粒子10(構造が
図2に示されている)の粉末を圧縮成形(打錠・錠剤形状に形成する)した後の水滴接触角が10°である(
図6Aを参照)。第1導電性カーボン20が予めコーティングした複数の正極材料粒子10(構造が
図3に示されている)の粉末を圧縮成形(打錠・錠剤形状に形成する)した後の水滴接触角が27°である(
図6Bを参照)。得られた結果から、複数の正極材料粒子10が機械的溶融混合法によって第1導電性カーボン20を予めコーティングした場合、複数の正極材料粒子10表面の疎水性を高めたことが分かる。
図7は、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料の化学構造式を示している。図に示すように、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30の構造は、長鎖の疎水性セグメント(疎水性化学構造)31を含む。機械的溶融混合法によって第1導電性カーボン20が複数の正極材料粒子10の表面をコーティングすると、複数の正極材料粒子10の表面を改質し、より高い疎水性を示すことが分かる。これによって、複数の正極材料粒子10とリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30との結合がより好都合になる。もちろん、本発明の複合正極材料層3に使用される第1導電性カーボン20が予めコーティングした複数の正極材料粒子10および混合用のリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30の種類、組成比および材料特性はいずれも実際の応用に応じて調整することができ、本発明はこれに限定されない。以下、本発明の複合電極1の製造方法について説明する。
【0027】
図8は、本発明の実施形態における複合電極の製造方法のフローチャートである。本実施形態では、まず、ステップS1に示すように、複数の正極材料粒子10および第1導電性カーボン20を提供(用意)する。複数の正極材料粒子は、三元材料で構成され、組成がLi[Ni
xCo
yMn
z]O
2、x+y+z=1、0.8<x<1、0<y<0.2、0<z<0.2である。本実施形態では、複数の正極材料粒子10は、第1平均粒子径を有し、前記第1平均粒子径の範囲が10μm~20μmである。第1導電性カーボン20は、例えば、導電性カーボン(Super-P)であり、第2平均粒子径を有し、前記第2平均粒子径の範囲が50nm~200nmである。
【0028】
そして、ステップS2に示すように、特定比例の複数の正極材料粒子10と第1導電性カーボン20とを用いて、例えば、乾式機械的溶融混合法により、第1導電性カーボン20を複数の正極材料粒子10の表面にコーティングする。形成された構造は
図3に示されている。本実施形態では、複数の正極材料粒子10に対する第1導電性カーボン20の重量パーセント範囲は、1wt.%~5.5wt.%である。これにより、適切な量の第1導電性カーボン20が複数の正極材料粒子10の表面に点状(dot-like)に均一分布することができるので、複数の正極材料粒子10の表面改質を実現するとともに、複数の正極材料粒子10の形態および粒子径サイズは変化しない。なお、複数の正極材料粒子10に対する第1導電性カーボン20の重量パーセントが5.5wt.%未満である場合、第1導電性カーボン20が複数の正極材料粒子10の表面を過度的にコーティングすることを回避でき、後過程のリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30との混合コーティングへの悪影響を抑えることができる。また、機械的溶融混合法によって表面改質を行うとき、混合過程は、第1回転速度600rpm、10分間混合し、第2回転速度4200rpm、30分間混合し、動作温度範囲が30℃~40℃であることが好ましい。表面改質および予めコーティングの混合方法、動作温度、回転速度および時間を制御することによって、高温および粒子間の過度の摩擦によって引き起こされる構造欠陥を防止することができ、同時に、複数の正極材料粒子10に第1導電性カーボン20を予めコーティングして表面改質の効果を発揮することを実現できる。
【0029】
本実施形態では、ステップS3に示すように、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30を提供(用意)する。良好なコーティング効果を得るために、複数の正極材料粒子10に対するリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30の重量パーセント範囲が10wt.%~20wt.%に制御されるのが好ましい。また、本実施形態では、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料30は、溶媒と混合してリチウム化パーフルオロカーボンポリマー溶液を形成することができ、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)溶液の重量パーセント濃度が10wt.%である。混合用の溶媒は、エタノールとn-ブタノールで構成され、エタノール:n-ブタノールの重量比が1:2である。もちろん、本発明はこれに限定されない。
【0030】
ステップS4では、ステップS2で得られた第1導電性カーボン20で予めコーティングした複数の正極材料粒子10と、ステップS3で提供されたリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30とを混合して、複合正極材料スラリーを形成する。なお、ある実施形態では、複合電極1の複合正極材料層3には、ステップS2における第1導電性カーボン20の含有量を超えるより高い含有量の導電性カーボンを添加する必要がある。ここでは、追加の導電性カーボン含有量がステップS4に第2導電性カーボン40を添加することで加えることができ、第1導電性カーボン20が予めコーティングした複数の正極材料粒子10と、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30とに混合する。もちろん、複数の正極材料粒子10に対する第2導電性カーボン40の重量パーセントは、実際の需要に応じて変更することができ、その範囲は、5.5wt.%~15wt.%であることが好ましい。
【0031】
ステップS5では、前記複合正極材料スラリーを電極板2の載置面21に塗布する。複合正極材料スラリーは、ブレード(doctor blade)方法で、電極板2の載置面21に塗布されることができる。好ましくは、電極板2の載置面21に塗布する複合正極材料スラリーの表面密度が、9mg/cm2~12mg/cm2である。なお、本発明はこれに限定されない。
【0032】
最後に、ステップS6では、電極板2に塗布された複合正極材料スラリーを乾燥させて複合電極1を形成する。形成された構造は、
図1に示されており、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー材料30が複数の正極材料粒子10の表面をコーティングし(覆い)、且つ複数の正極材料粒子10の表面間に粘結(結合、接着、接合)している。
【0033】
ある実施例では、495g NCM材料を秤量して複数の正極材料粒子10とする。NCM材料の化学構造式は、Li[Ni
0.83Co
0.12Mn
0.05]O
2(Ni:Co:Mn = 83:12:5)であり、表面積は、BET = 0.32m2/gである。また、27.5g導電性カーボン(Super-P)を秤量して第1導電性カーボン20とし、複数の正極材料粒子10の表面改質の前駆体として使用する。495g NCM材料と27.5g導電性カーボン(Super-P)は、機械的溶融混合法によって処理され、まず、7.5%の低出力、すなわち、回転速度600rpmで10分間混合し、その後、80%の出力効率、すなわち、回転速度が約4200rpmで30分間混合する。高速混合により発生する高温がサンプルに悪影響を及ぼさないように、混合過程中は、装置の温度が30℃~40℃に制御して混合し、得られた表面改質後のサンプルは、
図5に示されており、以下、NCM@Cで表示する。
【0034】
リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料30は、溶液の形態で提供される。リチウム化パーフルオロカーボンポリマー溶液を調製する場合、まず、20.981gのLiOH・H2O粉末を秤量して500mLの定量瓶に投入し、300mL脱イオン水を加え、LiOH・H2Oが完全に溶解した後、脱イオン水を加えて500mLに希釈し、1N LiOH溶液を得る。次に、250mL丸底フラスコを取り、5%のH-Nafion溶液60gを丸底フラスコに加え、その後、上述した1N LiOH溶液に対し、pH=6になるまで、Li化滴定する。そして、滴定完成後のLi-Nafion溶液を60℃~80℃で減圧濃縮し、溶媒を完全に乾燥させる。最後、溶媒の除去が完了した後、Li-Nafionの重量パーセント濃度が10wt.%となるまで、エタノール:n-ブタノールの重量比が1:2である混合溶媒を添加し、完全に溶解した後、予めリチウム化のLi-Nafion溶液が得られる。
【0035】
後過程において複合電極1を製造するとき、NCM@C:Super-P(第2導電性カーボンとする):10wt.%Li-Nafion溶液=8.42g:0.58g:10gを秤量して混合瓶に入れ、遊星型回転ミキサーを使用して混合し、回転速度1200rpmの混合時間を10minに設定して、複合正極材料スラリーを得ることができる。前記複合正極材料スラリーは、ブレードコーターでAl箔に均一に塗布し、表面密度が9mg/cm2~12mg/cm2に制御される。塗布完了後の電極半製品を100℃で1hr乾燥させる。乾燥後の電極半製品は、ポールピース圧延機を用いて、圧縮密度が3.1g/cm3~3.3g/cm3に制御されるように圧延され、本発明の複合電極1の製造が完了する。完了された複合電極1は、ポールピース切断機を用いて直径1cmの円形電極に切断され、CR2032ボタン電池の電気化学分析を行う。
【0036】
ある比較例では、同じ正極材料を使用するが、表面改質を省略したNCM材料(NCMと呼ばれる)を使用している。比較例電極を製造するとき、NCM:Super-P(導電性カーボンとする):10wt.%Li-Nafion溶液=8g:1g:10gを秤量して混合瓶に入れ、遊星型回転ミキサーを使用して混合し、回転速度が1200rpm、混合時間が10minである。前記比較例スラリーは、ブレードコーターでAl箔に均一に塗布し、表面密度が9mg/cm2~12mg/cm2に制御される。塗布完了後の電極半製品を100℃で1hr乾燥させる。乾燥後の電極半製品は、ポールピース圧延機を用いて、圧縮密度が3.1g/cm3~3.3g/cm3に制御されるように圧延され、比較例電極の製造が完了する。完了された比較例電極は、ポールピース切断機を用いて直径1cmの円形電極に切断され、CR2032ボタン電池の電気化学分析を行う。
【0037】
まず、SEM/EDSを用いて、比較例および実施例のサンプルにおけるNi元素およびF元素の分布情報を分析する。
図9は、比較例のSEM/EDS分析結果である。図に示すように、比較例の電極板の断面図(cross section)では、F元素が主にLi-Nafion材料に由来し、Ni元素がNCM材料に由来しているが、図に示すように、F信号とNi信号が重ならない。これは、Li-Nafion材料がNCM材料の表面に均一にコーティングされていないことを意味している。
図10は、本発明の実施例のSEM/EDS分析結果である。図に示すように、F信号とNi信号とが重なっている。これは、Li-Nafion材料がNCM材料の表面に均一にコーティングされていることを意味している。これによって、本発明の機械的溶融混合法によって、導電性カーボンが先にNCM材料の表面改質をして得られたNCM@C材料は、その後の混合過程において、Li-Nafion材料と容易に結合できるので、Li-Nafion材料がNCM@C材料の表面に均一にコーティングされることができる。
【0038】
比較例および実施例で得られたCR2032ボタン電池について、例えば、0.1C、1C、3C、5C、6Cの異なる充放電レートで充放電性能を解析することができる。
図11Aは、0.1C/1C/3C/5C/6Cにおける比較例の充放電サイクル試験チャートである。
図11Bは、0.1C/1C/3C/5C/6Cにおける実施例の充放電サイクル試験チャートである。
図11Cは、比較例および実施例の3C充放電の比電容量の比較図である。
図11Dは、比較例および実施例の6C充放電の比電容量の比較図である。表1は、3C/5C/6C充放電レートにおける比較例および実施例の分析結果を示している。
図11A~
図11Dおよび表1に示す結果より、高倍率(3C以上)の充放電レート下で、実施例のLi-Nafion材料がNCM@C材料の表面に均一にコーティングされており、より良好な充放電性能を示している。
【0039】
図12は、1CC/1CDのサイクル試験条件で得られた比較例および実施例の充放電サイクル試験チャートである。1CC/1CDのサイクル試験条件下で、比較例の100回サイクル後の電容量維持率が88%であったのに対し、実施例の100回サイクル後の電容量維持率が91%であった。比較例におけるLi-Nafion材料が直接にNCM材料をコーティングすると異なり、本発明は、機械的溶融混合法によって、導電性カーボンとNCM材料とを予め混合して得られたNCM@C材料により、Li-Nafion材料が正極材料粒子表面にコーティングする均一性が向上しているので、高倍率の充放電性能を得るとともに、充放電サイクルの寿命も延ばすことができる。
【0040】
図13は、6CC/6CDサイクル試験条件で得られた比較例および実施例の充放電サイクル試験チャートである。6CC/6CDのサイクル試験条件下で、比較例の100回サイクル後の電容量維持率が74%であったのに対し、実施例の100回サイクル後の電容量維持率が84%であった。比較例と比較して、実施例の急速充放電のサイクル寿命は大幅に向上している。言い換えれば、本発明では、機械的溶融混合法を利用して導電性カーボンを先に混合し、Li-Nafion材料が正極材料にコーティングする均一性を向上させることで、イオン伝導率が向上するだけでなく、正極材料の静電容量の低下が大幅に遅くなる。
【0041】
なお、本発明では、乾式機械的溶融混合法を利用して導電性カーボンを混合して正極材料粒子の表面改質の予処理を行うのは、長鎖の疎水性セグメントのLi-Nafion材料のためであることを留意されたい。同様の製造条件で、前記比較例で使用したバインダーLi-Nafion材料をPVDFに置き換えて、PVDFの第1比較例を得ることができる。さらに、導電性カーボンとNCM材料とを機械的溶融混合法にて予め混合して得られたNCM@C材料に、Li-Nafion材料を置き換えてバインダーとしてPVDFを使用し、得られたPVDFコーティングのNCM@C材料サンプル(PVDFの第2比較例)を得ることができる。
図14は、1CC/1CDサイクル試験条件で得られたPVDFの第1比較例とPVDFの第2比較例の充放電サイクル試験チャートである。
図15は、6CC/6CDサイクル試験条件下で得られたPVDFの第1比較例およびPVDFの第2比較例の充放電サイクル試験チャートである。
図13~
図15から、Li-Nafion材料をPVDFに置き換えてバインダーとして使用する場合、乾式機械的溶融混合法によって導電性カーボンを混合して正極材料粒子の表面改質の予処理を行っても、高倍率の充放電レートで得られた複合電極のサイクル寿命の改善が見られなかった。言い換えれば、乾式機械的溶融混合法によって導電性カーボンを混合して正極材料粒子の表面改質の予処理を行うのは、Li-Nafion材料の場合に適用する。もちろん、Li-Nafion材料は、他の長鎖の疎水性セグメントの高分子材料のバインダーに置き換えることもできるが、ここでは、その詳細を省略する。
【0042】
上述したように、本発明は、二次電池に適用する複合電極および製造方法を提供している。このうち、まず、乾式機械的溶融混合法(mechanofusion method)によりニッケル高含有量の正極材料NCMの表面に導電性カーボン(conductive carbon)をコーティングし、ニッケル高含有量の正極材料NCMの表面疎水性質および後過程のリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料のコーティング性能が向上し、ニッケル高含有量の正極材料NCMの元の球状二次粒子の形態が効果的に維持されることができる。乾式機械的溶融混合法は高速であり、且つ追加の溶媒およびガス保護を必要とせず、適切な量の導電性カーボンをニッケル高含有量の正極材料NCMの表面にコーティングすることができ、正極材料表面の疎水性質が向上し、ニッケル高含有量の正極材料NCM表面におけるリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料のコーティング性能が向上し、且つ正極材料NCMの形態に悪影響を与えない。また、従来の二次電池製造過程に使用されるバインダー(PVDF、PAA、CMC-SBR...)の代わりに、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料を使用する場合、リチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料のイオン伝導率が優れるので、高倍率(6CC/6CD)条件下において複合正極シートが充電および放電するとき、より優れた電容量維持率が得られる。言い換えれば、導電性カーボンによって予備表面処理を行うことによって、機能性コーティングリチウム化パーフルオロカーボンポリマー(Li-Nafion)材料がニッケル高含有量の正極材料表面により均一にコーティングすることができ、急速充放電とサイクル寿命の性能が向上し、迅速かつ効果的な手段が提供され、得られた後、バインダーとしてすぐに使用でき、且つ均一にコーティング可能な機能性コーティング層を得ることができる。
【0043】
本発明は、当業者なら様々な修正を加えることができるが、特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することはない。
【符号の説明】
【0044】
1:複合電極
2:電極板
3:複合正極材料層
10:正極材料粒子
20:第1導電性カーボン
21:載置面
30:Li-Nafion材料
31:長鎖の疎水性セグメント
40:第2導電性カーボン
S1~S6:ステップ
【外国語明細書】