(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003275
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】流体密封容器
(51)【国際特許分類】
A61F 7/10 20060101AFI20241226BHJP
B65D 85/18 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61F7/10 300J
A61F7/10 310Z
B65D85/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005882
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023102974
(32)【優先日】2023-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】石井 智海
【テーマコード(参考)】
3E068
4C099
【Fターム(参考)】
3E068AA40
3E068AC02
3E068CC14
3E068CE03
3E068DE10
3E068EE15
3E068EE20
3E068EE24
3E068EE25
3E068EE26
4C099AA02
4C099CA01
4C099EA01
4C099EA05
4C099GA02
4C099HA01
4C099LA03
4C099NA00
(57)【要約】
【課題】低温における炭酸ガス透過性を保ちつつ、低温での身体への追従性および低温における耐久性がいずれも優れた、炭酸ガス含有冷水を内封して身体の冷却具として用いることが可能な流体密封容器を提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂により構成されているフィルムにより形成された本体部と、この本体部に接続された、開閉可能に構成されてこの本体部を密閉可能な注入口部と、を備え、この本体部を形成しているフィルムは、非透水性であり、ガラス転移点が0℃未満であり、JIS K 7126-2の附属書Bに準じて10℃の条件で測定される炭酸ガス透過度が5L/(m
2・24hr・atm)以上であり、さらに、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される引張強度が8N/10mm以上である流体密封容器により、前記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂により構成されているフィルムで形成された本体部と、前記本体部に接続された、開閉可能に構成されて前記本体部を密閉可能な注入口部と、を備え、
前記本体部を形成している前記フィルムは、非透水性であり、ガラス転移点が0℃未満であり、JIS K 7126-2の附属書Bに準じて10℃の条件で測定される炭酸ガス透過度が5L/(m2・24hr・atm)以上であり、さらに、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される引張強度が8N/10mm以上である、
流体密封容器。
【請求項2】
前記本体部を形成している前記フィルムが、熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されているフィルムである、請求項1に記載の流体密封容器。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されている前記フィルムは、デュロメーターのタイプAでJIS K 6253に準じて測定されるゴム硬度が50以上85以下である、請求項2に記載の流体密封容器。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーが、エーテル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマーである、請求項2または3に記載の流体密封容器。
【請求項5】
前記本体部を形成している前記フィルムは、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される0.98Nの荷重をかけた際の伸長率が2%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体密封容器。
【請求項6】
前記本体部を形成している前記フィルムは、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される100%伸長させた後の永久歪みが20%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体密封容器。
【請求項7】
前記本体部を形成している前記フィルムは、融点が120℃以上150℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体密封容器。
【請求項8】
前記本体部を形成している前記フィルムは、総厚さが50μm以上250μm未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体密封容器。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の流体密封容器に、温度が15℃以下であり且つ炭酸ガス濃度が300ppm以上である炭酸ガス含有冷水が内封された、冷却具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス含有冷水を内封して身体の冷却具として用いることが可能な流体密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、身体各部を冷却するための製品が広く使用されている。このような製品としては、例えば、冷却ジェルシートや、冷却剤や水などを密封包装した冷却具などが知られている。さらに、水などとともにあるいは水などに代えて二酸化炭素(炭酸ガス、ドライアイス等)を充填可能な冷却具なども知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、ドライアイスを充填可能で、一の面は、炭酸ガスが通過可能な多数の小孔を備え、他の面は、炭酸ガスが通過することができない断熱材で形成されていることを特徴とする冷却袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、冷却具により身体各部を冷却する際に、素早く低温(15℃以下)となるようにすると、その部分の血流が悪くなって、疲れやむくみの改善効果などが十分に得られない場合がある。また、その冷却効果が局所的となり易い。よって、この冷却と同時に炭酸ガスを透過、浸透させて、冷却作用とともに炭酸ガスの作用(血行維持または促進作用)が発揮されるのが望ましい。しかしながら、炭酸ガス含有冷水を内封して冷却具として用いる場合において、その容器は、低温における炭酸ガス透過性を維持しようとすると、低温での身体への追従性(フィット感)と耐久性(破れまたは割れが発生し難い性質)とを両立させることが難しいという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低温における炭酸ガス透過性を保ちつつ、低温での身体への追従性および低温における耐久性がいずれも優れた、炭酸ガス含有冷水を内封して身体の冷却具として用いることが可能な流体密封容器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂により構成されているフィルムで形成された本体部と、この本体部に接続された、開閉可能に構成されてこの本体部を密閉可能な注入口部と、を備え、この本体部を形成しているフィルムは、非透水性であり、ガラス転移点が0℃未満であり、JIS K 7126-2の附属書Bに準じて10℃の条件で測定される炭酸ガス透過度が5L/(m2・24hr・atm)以上であり、さらに、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される引張強度が8N/10mm以上である流体密封容器に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温における炭酸ガス透過性を保ちつつ、低温での身体への追従性および低温における耐久性がいずれも優れた、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封して身体の冷却具として用いることが可能な流体密封容器を提供することができる。そして、この流体密封容器に15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封して冷却具とすることにより、当接している部分のフィット感や血行を低下させることなく冷却および疲れ等の改善を行うことができ、その冷却効果が身体の広範囲で得られ易く、且つその使用時等における破れまたは割れが発生し難い冷却具となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る流体密封容器の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る流体密封容器に炭酸ガス含有冷水が内封されて得られた冷却具を示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係る流体密封容器に炭酸ガス含有冷水が内封されて得られた冷却具を足に掛けて用いた例の模式図である。
【
図4】
図2の冷却具を首に掛けて用いた例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、一部の図面については、便宜上、符号を付していない(省略している)箇所がある。さらに、図面に示された各部材の寸法比率等は、発明の理解を容易にするために、実際の寸法比率等とは異なる場合がある。
【0011】
〔全体構成〕
図1~4を用いて本実施形態に係る流体密封容器100の全体構成について説明する。なお、
図1は、内部に炭酸ガス含有冷水等が注入される前の本実施形態に係る流体密封容器100の一例を示す図であり、
図2は、本実施形態に係る流体密封容器100の変形例に炭酸ガス含有冷水が内封されて得られた冷却具を示す図である。また、
図3は、本実施形態に係る流体密封容器100に炭酸ガス含有冷水が内封されて得られた冷却具を足に掛けて用いた一例を示す模式図である。さらに、
図4は、本実施形態に係る流体密封容器100の変形例に炭酸ガス含有冷水が内封されて得られた冷却具を首に掛けて用いた一例を示す模式図である。
【0012】
本実施形態に係る流体密封容器100は、例えば
図1や
図2に示すような、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封して身体の冷却具として用いることが可能な流体密封容器であって、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂により構成されているフィルムで形成された本体部31と、本体部31に接続された、開閉可能に構成されて本体部31を密閉可能な注入口部21と、を備える。そして、この注入口部21から炭酸ガス含有冷水等を本体部31に注入して密封し、必要であればさらに冷却を行ってから、例えば
図3や
図4に示すようにして用いられる冷却具とすることができる。さらに、この冷却具に内封された炭酸ガス含有冷水等を注入口部21から交換して用いること、つまり冷却具として繰り返し使用することも可能である。
なお、
図2の実施形態では、本体部31が注入口部21の両側に向かって2股に分岐した2つの分岐部31-1を備え、湾曲または屈曲している(例えば湾曲内周の曲率半径が15cm以下となっている実施形態など)。これにより、使用者の首や足などに掛けて安定して密着させて用いるのにより適したものとなっている。
【0013】
<本体部>
まず、本体部31の構成について説明する。なお、本体部31を形成しているフィルムの構成については後述する。
【0014】
本体部31は、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封することができる内部空間を有する袋状などの部材であり、つまり冷却具などとしたときの本体となる部材である。なお、この本体部31は少なくとも15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封することが可能な構成であれば良く、例えば、ドライアイスなどの固体や気体も内封できる構成であっても良い。また、冷水以外の液体(炭酸ガス含有温水など)も内封できる構成であっても良い。ここで、「内封」とは、本体部31の内部空間に液体等を収容して封止することを意味するが、この場合において、後述するように、本体部31を形成しているフィルムから炭酸ガスは一定程度透過可能であって良い。
【0015】
そして、この本体部31は、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封した状態で内部空間の少なくとも1つの断面が円形または楕円形となる構成であるのが好ましく、特にこの内部空間の短手方向の断面の少なくとも一部が円形または楕円形となる構成であるのがより好ましい。身体各部に当接させて密着させ易いからである。ここで、この「円形」とは、略円形の意味であり、上記断面の形状が完全な円だけでなく、長径を短径で除した値が2以下、さらには1.5以下の円形である実施形態も包含される。また、「楕円形」も略楕円形の意味であり、長径を短径で除した値が2超10以下などであって良い。
しかしながら、この本体部31の形状等は上記に限定されるものではなく、例えば枕状や氷嚢状など、身体の少なくとも一部に当接させて使用することができ、且つ、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封することができる内部空間を有するものであれば他の形状等であっても構わない。
【0016】
なお、本体部31の大きさ等についても特段限定はされないが、冷却具として身体各部と当接させやすいことなどから、本体部31の内部空間(15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封可能な領域)の体積が1つの容器当たり50cm3(0.05L)以上2000cm3(2.0L)以下であるのが好ましい。この下限は100cm3(0.1L)以上であって良く、120cm3(0.12L)以上であっても良い。上限は、1500cm3(1.5L)以下であって良く、1200cm3(1.2L)以下であっても良い。
【0017】
<注入口部>
次に、前述した本体部31に接続されている注入口部21の構成について説明する。
【0018】
注入口部21は、本体部31と接続され、ここから本体部31に炭酸ガス含有冷水等を注入して密封することができ、且つこの内封された炭酸ガス含有冷水等を排出できる構成である。つまり、注入口部21は、開閉可能に構成されており、且つ本体部31を密閉可能な構成である。したがって、このような構成を有する限り他は限定されないが、例えば
図1~4に示すような、注入口部21が着脱可能なキャップおよびキャップ装着部を備え、このキャップの内周およびキャップ装着部の外周に雄ネジ形状および雌ネジ形状(螺旋条部)が形成され、これらを螺合することにより着脱、密閉できる構成などが好適な例として示される。さらに、このキャップは、流体密封容器100から完全に脱離できる構成でも良く、あるいは、ヒンジ部などによってキャップ装着部などと連結している構成であっても良い。また、キャップ状の部材をスライドさせることにより開口部分を開閉する方式(スライド式)などの、着脱しない構成であっても良く、さらにはピンチ留め方式(樹脂製や金属製などのピンチによって密閉する方式)の構成であっても良い。
このような注入口部21と、後述するようなフィルムにより形成された本体部31と、を備えることにより、本実施形態に係る流体密封容器100は、本体部31に炭酸ガス含有冷水等を内封して冷却具とすることができるだけでなく、本体部31の内部の炭酸ガス含有冷水等を注入口部21から交換して、冷却具として繰り返し使用することが可能である。
【0019】
そして、本実施形態に係る流体密封容器100においては、本体部31のいずれかの領域に、上記したような注入口部21が内部空間と連通するように1以上接続されている構成である。なお、この注入口部21の接続領域は特段限定されないが、冷却具としたときに身体に接触し難い領域に接続されているのが好ましい。
【0020】
また、この注入口部21の大きさも限定されず、例えば注入口部21の開口径については、炭酸ガス含有冷水等が注入し易い大きさであれば良い。さらに、この注入口部21は、本実施形態に係る流体密封容器100に炭酸ガス含有冷水等を注入する際や、得られた冷却具を使用する際に把持部としても機能する大きさおよび材質であるのが好ましい。このような注入口部21の材質としては、樹脂製や金属製などが好適な例として示されるが、本実施形態に係る流体密封容器100の軽量化などの観点から、注入口部21は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂素材により構成されたものであることがより好ましい。前述したキャップを備える場合も同様である。
【0021】
以上のような本体部31および注入口部21を備える本実施形態に係る流体密封容器100に炭酸ガス含有冷水等を内封して冷却具とし、
図3または
図4に示すように、本体部31が身体各部と接触する(例えば身体各部の肌と直接接触する、あるいは炭酸ガスを透過可能な布や衣服等を介して身体各部と接触する)ようにして用いると非常に好適である。
【0022】
また、上記のように構成した冷却具を複数用い、これらを所定の位置に配置して着用具(着用冷却具)として用いても好適である。この複数の冷却具は、内封された炭酸ガス含有冷水がこれらを移動可能なようにチューブなどでこれらの内部空間が連通されていても良い。そして、この着用具の実施形態においても、冷却具が身体各部と接触(例えば肌と直接接触)するように用いると非常に好適である。
【0023】
〔本体部を形成しているフィルム〕
次に、本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成している、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂により構成されたフィルムについて詳細に説明する。
【0024】
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、前述したように、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂により構成され、非透水性であり、ガラス転移点が0℃未満であり、JIS K 7126-2の附属書Bに準じて10℃の条件で測定される炭酸ガス透過度が5L/(m2・24hr・atm)以上であり、さらに、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される引張強度が8N/10mm以上となっている。以下、これらについてそれぞれ詳細に説明する。
【0025】
<熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂により構成されている。つまりこれは、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂を主成分として含むフィルムである。なお、この「主成分として含む」とは質量%として80%以上含むことであり、90%以上含むのがより好ましく、95%以上含むのがさらに好ましく、100%(熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂からなるフィルム)であっても良い。
ここで、「熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomer、TPE)」とは、熱可塑性プラスチックの特性と、エラストマーの特性(弾性的性質)と、を合わせ持つ材料であり、上記のようなフィルムを構成可能な熱可塑性エラストマーである限り限定はされないが、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(Thermoplastic Polyurethane Elastomer、TPU)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(Thermoplastic Olefinic Elastomer、TPO)、熱可塑性ポリスチレンエラストマー(Thermoplastic Styrenic Elastomer、TPS)などが好ましいものとして示される。そして、上記フィルムは、これらからなる群から選ばれる1以上により構成されているのがより好ましい。
また、熱可塑性樹脂としては、上記した非透水性、ガラス転移点、炭酸ガス透過度、および引張強度を満たすフィルムを構成可能な材料および厚さである限り限定されないが、ポリエチレンなどのポリオレフィンにより構成されたフィルムが好ましいものとして示され、特に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)により構成されたフィルムがより好ましいものとして示される。
【0026】
なお、上記フィルムは、肌に直接接した時の感触などの観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたは熱可塑性ポリオレフィンエラストマーにより構成されているとより好ましい。特に、低温における炭酸ガス透過性を保ちつつ、低温での身体への追従性と低温における耐久性とを高度に両立させ易いことなども踏まえると、熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されているとさらに好ましい。また、この熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、エーテル系またはエステル系のいずれであっても良いが、エーテル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されたフィルムであると、低温での身体への追従性と低温における耐久性とを高度に両立させつつ、低温における炭酸ガス透過性も高く維持され、これに加えて耐水性も優れたものとすることができるためさらに好適である。さらに、耐摩耗性も優れたものとなる。
ここで、「エーテル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマー」とは熱可塑性ポリウレタンエラストマー分子の主鎖内にエーテル結合(-O-)を有するものであり、「エステル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマー」とは熱可塑性ポリウレタンエラストマー分子の主鎖内にエステル結合(-COO-)を有するものである。
【0027】
また、上記フィルムが熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されている場合において、デュロメーターのタイプA(例えば池田理化社製のデジタルデュロメーターEA760AS-11など)でJIS K 6253に準じて測定されるゴム硬度が50以上85以下のフィルムであるとより好ましい。低温での身体への追従性と低温における耐久性とを高度に両立させつつ、低温における炭酸ガス透過性も高く維持し易いからである。この上限は、低温における炭酸ガス透過性などの観点から、83以下であるのがさらに好ましく、80以下であるのがさらに好ましい。下限は、耐久性などの観点から、55以上であるのがさらに好ましく、60以上であるのがさらに好ましく、65以上であるのがさらに好ましく、70超であるのがさらに好ましく、75以上であるのがさらに好ましい。なお、エーテル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されたフィルムは、このゴム硬度を上記範囲内とし易いため好適である。
【0028】
<非透水性>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、全体として非透水性である。これにより、本実施形態に係る流体密封容器100に炭酸ガス含有冷水を内封して冷却具としたときに、使用時等における内封された冷水のロスが実質的にないものとなっている。なお、ここでいう非透水性とは、水などの液状のものを透過させないことを意味する。しかしながら、このフィルムは、後述する炭酸ガス透過性に加えて、気体である水蒸気の透過性を有していても良い。例えば、このフィルムのJIS K 7129に準じて25℃90%RHの条件で測定される水蒸気透過度は5g/(m2・24hr)以上200g/(m2・24hr)以下であって良い。
【0029】
<ガラス転移点>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、そのガラス転移点(Tg)が0℃未満となっている。これにより、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封して身体の冷却具として用いる際に、本体部31が過剰に硬くなってフィット感が低下したり破れまたは割れが発生し易くなったりし難い。なお、このガラス転移点は、-5℃以下であるのがより好ましく、-10℃以下であるのがさらに好ましく、-15℃以下であるのがさらに好ましく、-18℃以下であるのがさらに好ましい。この下限は、耐久性などの観点から、-120℃以上であるのが好ましく、-90℃以上であるのがより好ましく、-60℃以上であるのがさらに好ましく、-40℃以上であるのがさらに好ましい。
【0030】
<炭酸ガス透過度>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、JIS K 7126-2の附属書Bに準じて10℃の条件で測定される炭酸ガス透過度が5L/(m2・24hr・atm)以上となっている。つまり、JIS K 7126-2(ガス透過計測法、等圧法)の附属書B(ガスクロマトグラフ法による試験方法)に準じて、10℃の環境下で所定の機器により測定されるフィルムの炭酸ガス透過度が5L/(m2・24hr・atm)以上となっている。これにより、本実施形態に係る流体密封容器100に炭酸ガス含有冷水を内封して冷却具としたときに、本体部31を形成するフィルムが追従して当接している肌などに炭酸ガスが十分浸透して、この冷却している部位の血行を維持または促進することができる。そして、これによって、運動後等における疲れやむくみなどの改善効果も得られ、また、冷却効果が局所的ではなく全身に広がり易くなる。
【0031】
この炭酸ガス透過度は、耐久性との両立などの観点から、下限は、7L/(m2・24hr・atm)以上であるのがより好ましく、10L/(m2・24hr・atm)以上であるのがさらに好ましく、12L/(m2・24hr・atm)以上であるのがさらに好ましく、15L/(m2・24hr・atm)以上であるのがさらに好ましく、18L/(m2・24hr・atm)以上であるのがさらに好ましく、20L/(m2・24hr・atm)以上であるのがさらに好ましい。この上限は、100L/(m2・24hr・atm)以下であるのが好ましく、80L/(m2・24hr・atm)以下であるのがより好ましく、50L/(m2・24hr・atm)以下であるのがさらに好ましい。これにより、冷却具としたときに、炭酸ガス含有冷水等からフィルムを通じて肌などに炭酸ガスの移行が十分に行われて血行が維持または促進され、且つ耐久性も有するものとなり易い。
なお、この炭酸ガス透過度は、本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムの構成材料およびその総厚さにより調整することができる。
【0032】
<10℃での引張強度>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される引張強度が8N/10mm以上となっている。これにより、本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31の低温における耐久性が優れたものとなる。この下限は、10N/10mm以上であるのがより好ましく、15N/10mm以上であるのがさらに好ましく、20N/10mm以上であるのがさらに好ましく、30N/10mm以上であるのがさらに好ましく、40N/10mm以上であるのがさらに好ましい。この上限は、150N/10mm以下であって良く、130N/10mm以下であっても良く、100N/10mm以下であっても良く、80N/10mm以下であっても良く、60N/10mm以下であっても良い。
ここで、この「JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される引張強度」とは、JIS K 7161-1(プラスチック-引張特性の求め方-)に基づき測定される、低温使用下での割れ(高速・局所変形)への対応を考慮した物性であって、フィルムから幅10mm×長さ70mmの矩形に切り整えた試験片を作製して10℃環境下で1昼夜保管し、一方で、オリエンテック社製テンシロンUTC-100Wを、23℃環境下で、チャック間距離(試験片を伸長させる前の装着した状態での装着間距離)30mm、ヘッドスピード300mm/分(伸張させるスピード)、通常試験モードの計測条件で準備し、計測の度に10℃環境から試験片を取出して2分以内に上記したオリエンテック社製テンシロンUTC-100Wにて上記条件で引張試験を行い、破断強度(フィルムが破断した際の引張強度(引張強さ)、N/10mm)を測定し、この測定を3回行った平均値を意味する。
そして、この引張強度も、本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムの構成材料およびその総厚さにより調整することができる。
【0033】
<10℃で0.98Nの荷重をかけた際の伸長率>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、限定されるものではないが、低温での身体への追従性がより優れたものとなり易いことなどから、前述したようなものであり且つJIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される0.98N(100g重)の荷重をかけた際の伸長率が2%以上であるのがより好ましい。つまり、10℃における延性が一定以上であるのがより好ましい。この下限は、3%以上であるのがさらに好ましく、4%以上であるのがさらに好ましい。なお、耐久性などの観点から、この上限は、20%以下であるのがより好ましく、18%以下であるのがさらに好ましく、15%以下であるのがさらに好ましい。
ここで、この「JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される0.98Nの荷重をかけた際の伸長率」とは、JIS K 7161-1(プラスチック-引張特性の求め方-)に基づき測定される、低温使用下での割れへの対応(衝撃力に対する初期応答)を考慮した物性であって、フィルムから幅10mm×長さ150mmの矩形に切り整えた試験片を作製して10℃環境下で1昼夜保管し、一方で、オリエンテック社製テンシロンUTC-100Wを、23℃環境下で、チャック間距離100mm、ヘッドスピード300mm/分、サイクル試験モードの計測条件で準備し、計測の度に10℃環境から試験片を取出して2分以内に上記したオリエンテック社製テンシロンUTC-100Wにて上記条件で伸長方向(往路)に0.98Nの荷重をかけた際の伸長率(伸長前のフィルム長さを100%としたときの伸長した長さの割合)を測定し、この測定を3回行った平均値を意味する。つまり、これは低温でのフィルムの引き延ばし易さを示していると言える。
そして、この伸長率も、本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムの構成材料およびその総厚さにより調整することができる。
【0034】
<10℃で100%伸長させた後の永久歪み>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、限定されるものではないが、低温での身体への追従性や低温における耐久性がより優れたものとなり易いことから、前述したようなものであり且つJIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される100%伸長させた後の永久歪みが20%以下であるのがより好ましい。この上限は、15%以下であるのがさらに好ましく、13%以下であるのがさらに好ましく、10%以下であるのがさらに好ましい。なお、エーテル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されたフィルムは、この永久歪みも上記範囲内とし易いため好適である。
ここで、この「JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される100%伸長させた後の永久歪み」とは、JIS K 7161-1(プラスチック-引張特性の求め方-)に基づき測定される、低温使用下での繰り返し変形への対応(歪みに対する回復性)を考慮した物性であって、フィルムから幅10mm×長さ150mmの矩形に切り整えた試験片を作製して10℃環境下で1昼夜保管し、一方で、オリエンテック社製テンシロンUTC-100Wを、23℃環境下で、チャック間距離100mm、ヘッドスピード300mm/分、サイクル試験モードの計測条件で準備し、計測の度に10℃環境から試験片を取出して2分以内に上記したオリエンテック社製テンシロンUTC-100Wにて上記条件で100%伸長させた後、同じヘッドスピードで0%までヘッドを戻し、回復方向(復路)で伸長応力0Nとなるときの伸長率(伸長前のフィルム長さを100%としたときの伸長した長さの割合、つまり100%伸長させた後の永久歪み)を測定し、この測定を3回行った平均値を意味する。つまり、これは低温でフィルムが伸びた際の元への戻り易さを示していると言える。そして、この永久歪みも、本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムの構成材料およびその総厚さにより調整することができる。
なお、前述した伸長率の測定およびこの永久歪みの測定は、いずれも、上記のような装置(オリエンテック社製テンシロンUTC-100Wなど)を用い、前述した設定のサイクル試験で往路と復路の測定を行い、得られた測定結果からそれぞれの数値を読み取ることもできる。
【0035】
ここで、低温での所定の伸長率が大きいこと、ならびに低温での所定の永久歪みが小さいことは、冷却具の低温使用下において取り落とした際などでの割れにくさと、身体への追従性とを両立する上でより好ましい特性である。すなわち、冷却具に衝撃的な力が加わった場合に割れや破断などの破壊をきたさないためには、(1)破壊力に負けない強度があるか(例えばLLDPE100μmフィルムなどの非エラストマー厚膜フィルム)、(2)急速な変形応力に対して瞬時に変形追従が可能な弾性があるか、のいずれかの特性が必要であるが、(1)の場合、頑健ではあるが変形性に乏しく、身体への追従性が不足する。また(1)のようなフィルムは、繰り返し使用で部分的に負荷が集中した場合など、永久歪みを生じ、且つ蓄積し、簡単に破壊に至る危険がある。一方で、上記したように、低温での所定の伸長率が大きい、あるいは、低温での所定の永久歪みが小さいと、このような危険が極めて少なくなり易く、且つ身体への追従性も高いものとなり易い。
【0036】
<融点>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、限定されるものではないが、ヒートシール性に優れたものとなり易くなることから、その融点(Tm)が120℃以上150℃以下であるのがより好ましい。この下限は、125℃以上であるのがさらに好ましく、130℃超であるのがさらに好ましい。この上限は、145℃以下であるのがより好ましく、140℃以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
さらに、本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31が上記フィルムによりヒートシールを利用して形成されている場合、そのシール強度は、10N/10mm以上であるのがより好ましく、15N/10mm以上であるのがさらに好ましい。
ここで、この「シール強度」とは、本体部31を形成しているフィルムからシール部分を含む幅10mm×長さ70mm(シール部分の幅は1mm、つまりシール部分は10mm×1mm)の試験片を切り出し、試験片のサイズが異なる点以外はJIS K 6854-3の方法(T形剥離試験)に基づいて、オリエンテック社製テンシロンUTC-100Wを用いて、チャック間距離30mm、ヘッドスピード300mm/分、通常試験モードの計測条件でシール強度を測定し、この測定を3回行った平均値を意味する。
【0038】
<フィルムの総厚さ>
本実施形態に係る流体密封容器100の本体部31を形成しているフィルムは、上記した物性等を維持できるように構成材料等に応じてフィルムの総厚さを適宜設定すれば良いが、低温での身体への追従性、低温における耐久性、および低温における炭酸ガス透過性をいずれも高度に両立させ易いことから、その総厚さが50μm以上250μm未満であると好ましい。この下限は、80μm以上であるのがさらに好ましく、100μm以上であるのがさらに好ましく、120μm以上であるのがさらに好ましい。この上限は、230μm以下であるのがさらに好ましく、200μm以下であるのがさらに好ましい。
ここで、このフィルムの「総厚さ」とは、本体部を形成しているフィルムの厚み方向の全長であり、つまりフィルムを構成している全ての層の合計厚さである。したがって、コート層なども含めた複数の層が積層されたフィルムにおいては、その全ての層の厚さを合計した厚さである。
【0039】
そして、このような本実施形態に係る流体密封容器100は、単層あるいは複数積層させた複層の上記フィルムをヒートシールなどによって接合および成形して前述したような形状等の本体部31を形成し、さらにこの本体部31の所定の位置に前述した注入口部21を接続する方法等によって製造することができる。
【0040】
以上のような本実施形態に係る流体密封容器100は、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封して身体の冷却具として用いることが可能であり、低温における炭酸ガス透過性を所定以上有し、且つ低温での身体への追従性および低温における耐久性がいずれも優れたものである。したがって、この流体密封容器100に15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封して得られる冷却具を使用者の身体の一部、特に足や首などに掛けてその肌にこの冷却具を直接接触させて適用することによって(例えば
図3、
図4などのように適用して冷却することによって)、そのフィット感および炭酸ガス透過性から冷水の冷却機能と炭酸ガス浸透による機能が十分に発揮され、高い冷感作用、血行維持または促進作用などを得ることが可能となる。そして、その冷却効果は、冷却具を当接させた部分だけでなく身体の広範囲で得られ易い。さらに、この冷却具は、使用時等における破れまたは割れも起こり難い。
【0041】
例えば、本実施形態に係る流体密封容器100に、温度が15℃以下であり且つ炭酸ガス濃度が300ppm以上である炭酸ガス含有冷水が内封された冷却具とすると好適である。この冷水における炭酸ガスの濃度は、限定されるものではないが、400ppm以上であるのがより好ましく、500ppm以上であるのがさらに好ましく、700ppm以上であるのがさらに好ましい。この上限は、1500ppm以下であってよく、1200ppm以下であってもよく、1000ppm以下であっても良い。なお、この炭酸ガス濃度は、冷水の炭酸ガス飽和量を超える範囲については、冷水に溶解していると仮定した濃度である。また、水温も、15℃以下の水(0℃以上15℃以下)であれば良いが、例えば10℃以下であっても良い。
【0042】
なお、本実施形態に係る流体密封容器100は、上記したように15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封して冷却具として用いることが可能であるが、これは、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を充填して密封し冷却具とするだけでなく、炭酸ガス含有水を充填して密封した後にその容器全体を15℃以下の冷水や氷等で冷却することにより冷却具とする実施形態も包含される。したがって、冷却具として使用している際に、内封する炭酸ガス含有冷水の温度が上昇した場合には、これをそのまま冷水や氷等により冷却して、内封する炭酸ガス含有水の温度を低下させることも可能である。また、本実施形態に係る流体密封容器100に、冷水等とともに、冷水等に混合溶解させると炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生剤(例えば固形状、粉末状、顆粒状などの炭酸ガス発生剤)を内封して撹拌などをしても良い。また、これを上記したようにさらに冷却しても良い。
【0043】
さらに、本実施形態に係る流体密封容器100は、15℃以下の炭酸ガス含有冷水を内封して冷却具として用いることが可能であるだけでなく、他の用途で用いることもできる。例えば、この流体密封容器100に炭酸ガス含有温水を内封して温熱具として用いることもできる。そして、この温熱具を足や首などに掛けて用いることによって、温熱と炭酸ガス浸透により、高い温感作用および血行促進作用を得ることが可能となる。この場合でも、炭酸ガス含有温水の炭酸ガス濃度は、上記した炭酸ガス含有冷水と同じように300ppm以上とするのが好ましい。
【0044】
以下、本発明の実施例等について説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0045】
下記表1に示される材料で構成されたフィルムまたはシートで、ヒートシールを利用して
図2に示す形状の本体部を形成し、実施例1~8および比較例1~3の流体密封容器を作製した。そして、これらの流体密封容器に、温度が10℃であり且つ炭酸ガス濃度が1000ppmである炭酸ガス含有冷水を400g内封して、各種冷却具を作製した。
【0046】
なお、各フィルムまたはシートの詳細は以下の通りである。これらはいずれも非透水性である。
・実施例1~3:エーテル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(エラストラン1180A、BASF社製)からなるフィルム。
・実施例4~6:エステル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(エラストランC85A、BASF社製)からなるフィルム。
・実施例7:エステル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(エラストランC90A、BASF社製)からなるフィルム。
・実施例8:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなるフィルム(生産日本社製)。
・比較例1:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなるフィルム(トラスコ中山社製)。
・比較例2:4-メチル-1-ペンテン-αオレフィンコポリマー(アブソートマー、三井化学社製)からなるフィルム。
・比較例3:4-メチル-1-ペンテン-αオレフィンコポリマー(アブソートマー、三井化学社製)からなるフィルムを外層、ポリスチレン、ポリエチレン、およびポリブチレンのブロック共重合体であるスチレン系エラストマー(SEBS、セプトン2063、クラレ社製)からなるフィルムを中間層とした3層構造のシート。
【0047】
そして、本体部を形成しているこれらのフィルムまたはシートについては、10℃での炭酸ガス透過度(L/(m2・24hr・atm))、10℃で0.98Nの荷重をかけた際の伸長率(%)、10℃で100%伸長させた後の永久歪み(%)、10℃での引張強度(N/10mm)、およびシール強度(N/10mm)を以下のようにして事前に確認した。
【0048】
<10℃での炭酸ガス透過度>
JIS K 7126-2(ガス透過計測法、等圧法)の附属書B(ガスクロマトグラフ法による試験方法)に準じて、10℃測定環境下での各フィルムまたはシートの炭酸ガス透過性を測定した。測定には、GTRテック社製ガス透過率測定機(GTR-10XFKS、ガスクロマトグラフ)を用いた。
【0049】
<10℃で0.98Nの荷重をかけた際の伸長率>
JIS K 7161-1(プラスチック-引張特性の求め方-)に基づいて、各フィルムまたはシートから幅10mm×長さ150mmの矩形に切り整えた試験片を複数作製し、10℃環境下で1昼夜保管した。さらに、オリエンテック社製テンシロンUTC-100Wを、23℃環境下で以下の計測条件で準備した。
・チャック間距離:100mm
・ヘッドスピード:300mm/分
・サイクル試験モード
そして、以下の数値を計測した。
・伸長方向(往路)0.98N荷重下の伸長率
なお、試験片は計測の度に10℃環境から取出し、2分以内に計測を実施した。また、測定結果はN=3平均とした。
【0050】
<10℃で100%伸長させた後の永久歪み>
JIS K 7161-1(プラスチック-引張特性の求め方-)に基づいて、上記の伸長率の試験において、上記試験片を上記条件(チャック間距離:100mm、ヘッドスピード:300mm/分、サイクル試験モード)で準備して100%伸長させた後、0%までヘッドを戻し(ヘッドスピード:300mm/分)、回復方向(復路)で伸長応力0Nとなるときの伸長率を10℃で100%伸長させた後の永久歪みとして計測した。また、測定結果はN=3平均とした。
【0051】
<10℃での引張強度>
JIS K 7161-1(プラスチック-引張特性の求め方-)に基づいて、幅10mm×長さ70mmの矩形に切り整えた試験片を、上記した伸長率測定と同様に調製し、オリエンテック社製テンシロンUTC-100Wにて以下の条件で引張試験を行い、破断強度(試験片が破断した際の引張強度)を測定した。
・チャック間距離:30mm
・ヘッドスピード:300mm/分
・通常試験モード
また、測定結果はN=3平均とした。
【0052】
<シール強度>
シール部分を含んだ幅10mm×長さ70mmの試験片を切り出し、試験片のサイズが異なる点以外はJIS K 6854-3に記載の方法に基づいて、以下の条件でシール強度を測定した(T形剥離試験)。
・装置:オリエンテック社製テンシロンUTC-100W
・試験片幅:10mm
・シール試験方向長さ:1mm(シール幅)
・チャック間距離:30mm
・ヘッドスピード:300mm/分
なお、測定結果はN=3平均とした。
【0053】
これらの結果を下記表1に示した。また、これらのフィルムまたはシートのガラス転移点(Tg:℃)、融点(Tm:℃)、デュロメーターのタイプA(デジタルデュロメーターEA760AS-11、池田理化社製)でJIS K 6253に準じて測定されるゴム硬度、および総厚さ(μm)も下記表1に示した。
【0054】
さらに、作製した各種冷却具について、使用者の首付近に当接させて装着した際の皮膚紅潮、冷たさ、頭の冷え感、フィット感、および全体的な使用感を以下のようにして評価した。なお、皮膚紅潮、冷たさ、および頭の冷え感は主に低温における炭酸ガス透過性および低温での追従性の評価であり、肌面に到達する炭酸ガスが十分あると血行促進作用により皮膚紅潮が生じ、冷却効果も頭などまで広がる。
【0055】
<皮膚紅潮>
モニター1名の首付近に冷却具を5分かけた後、当接部の皮膚を目視観察して、皮膚に赤みがあれば〇、赤みがなければ×とした。
【0056】
<冷たさ>
3名の専門パネラーにより、冷却具を肌に接するように直接首にかけて5分間使用し、以下の評価を行った。なお、評価環境は30℃60%RHで、事前に30分環境適応した上で評価を行った(N=3)。
5分間使用後の冷たさの感じとして、以下の3段階評価のうち最も近い評点を選び、この3名の平均値を算出した。平均値は四捨五入して整数で示した。
3 冷たさが首に集中せず、心地よく広がる/広い範囲でひんやりした実感がある。
2 首か冷たくて不快な感じを伴う。ひんやりした実感は首だけでなくやや広がる。
1 首の当接部位だけが冷たく、痛い。
【0057】
<頭の冷え感>
上記の冷たさと同様にして、以下の評価を行った。
5分間使用後、頭が冷える感じとして、以下の3段階評価のうち最も近い評点を選び、この3名の平均値を算出した。平均値は四捨五入して整数で示した。
3 装着直後から頭に冷え感が上ってくる感覚があり、5分間使用後に頭がひんやりする。
2 5分間使用後に頭がひんやりする感じがある。
1 頭がひんやりする感じがない。
【0058】
<フィット感>
上記の冷たさと同様にして、以下の評価を行った。
5分間使用の間に、装着した冷却具の柔らかさ、フィット感、首回りに密着する感じについて、以下の3段階評価のうち最も近い評点を選び、この3名の平均値を算出した。平均値は四捨五入して整数で示した。
3 装着直後でも柔らかく、首の曲面にフィットする。肌に密着する。装着中ずっとフィットし続ける。
2 多少ごわごわして肌密着感まではないが、首の曲面に一応フィットする。または一応フィットするがべたつくなど感触が悪い。
1 硬く、首にフィットしない。
【0059】
<全体的な使用感>
上記の冷たさと同様にして、以下の評価を行った。
5分間使用を通じての全体的使用感として、以下の3段階評価のうち最も近い評点を選び、この3名の平均値を算出した。平均値は四捨五入して整数で示した。
3 つけ心地の良さ(使用感の気持ちよさ)と、頭が冷える感じの両方で効果を感じる。
2 つけ心地の良さ(使用感の気持ちよさ)と、頭が冷える感じのどちらかで効果を感じる。
1 つけ心地の良さ(使用感の気持ちよさ)がなく、頭が冷える感じもない。
【0060】
さらに、作製した各種流体密封容器について10℃の水をそれぞれ400g注入して密封して冷却具とし、1分間静置して温度になじませた後、以下のようにして1.5mからの落下時の破裂性を確認した。
【0061】
<1.5mからの落下時の破裂性>
以下の条件で各冷却具を落下させ、破裂の有無を以下の1~3の基準で確認した。
・水を入れた部分以外、空隙(ヘッドスペース)がないように絞って、しっかりピンチ留めする。
・ステンレス製バットを敷いた床に、高さ1.5mから落下させる。
・落下させる向きは、冷却具のU字の両先端部が同時に着地するように落とし、傾いたり片側だけが先に着地したりした場合には、冷却具の準備から改めてやり直す。N=1で評価。
・環境温湿度は、25℃50%RHとした。
3 損傷がなく、水漏れを生じなかった。
2 フィルムは損傷ないが、シール部分が損傷し(ピンホールおよび/またはシール部裂け)、水漏れした。
1 フィルムが割れ、かつシール部も損傷し、水漏れした。
【0062】
これらの結果も下記表1下段に示した。
これらの結果から、本体部を形成している非透水性フィルムのガラス転移点が-20℃以下であり、JIS K 7126-2の附属書Bに準じて10℃の条件で測定される炭酸ガス透過度が7L/(m2・24hr・atm)以上であり、さらに、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される引張強度が8.38N/10mm以上である実施例1~8は、低温における炭酸ガス透過性を保ちつつ、低温での身体への追従性および低温における耐久性がいずれも優れた、炭酸ガス含有冷水を内封して身体の冷却具として用いることが可能な流体密封容器であることが示された。そして、これらは当接部分以外にも冷却効果が得られるものであることが示された。特に、熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる所定のゴム硬度が85以下のフィルムにより形成された実施例1~6は、低温における耐久性が高度に維持され且つ低温における炭酸ガス透過性と低温での身体への追従性がより高くなって冷却特性がより好ましいものであり、エーテル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるフィルムにより形成された実施例1~3はこれらに加えて所定の永久歪みが低く、低温での身体への追従性や低温における耐久性がより優れていることが示唆された。
一方で、低温における炭酸ガス透過性が十分でないフィルムにより形成された比較例1は冷却時の血行維持または促進作用などが発揮されず(局所的な冷却効果が得られるのみであり)、ガラス転移点が高いフィルムにより形成された比較例2~3は、低温での身体への追従性および低温における耐久性がいずれも低かった。
【0063】
【0064】
なお、上記実施形態は、以下の技術思想を包含する。
<1>熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂により構成されているフィルムで形成された本体部と、前記本体部に接続された、開閉可能に構成されて前記本体部を密閉可能な注入口部と、を備え、
前記本体部を形成している前記フィルムは、非透水性であり、ガラス転移点が0℃未満であり、JIS K 7126-2の附属書Bに準じて10℃の条件で測定される炭酸ガス透過度が5L/(m2・24hr・atm)以上であり、さらに、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される引張強度が8N/10mm以上である、
流体密封容器。
<2>前記本体部を形成している前記フィルムが、熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されているフィルムである、<1>に記載の流体密封容器。
<3>前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーにより構成されている前記フィルムは、デュロメーターのタイプAでJIS K 6253に準じて測定されるゴム硬度が50以上85以下、より好ましくは60以上83以下、さらに好ましくは65以上80以下である、<2>に記載の流体密封容器。
<4>前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーが、エーテル系の熱可塑性ポリウレタンエラストマーである、<2>または<3>に記載の流体密封容器。
<5>前記本体部を形成している前記フィルムは、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される0.98Nの荷重をかけた際の伸長率が2%以上、より好ましくは3%以上20%以下、さらに好ましくは4%以上18%以下、さらに好ましくは4%以上15%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の流体密封容器。
<6>前記本体部を形成している前記フィルムは、JIS K 7161-1に準じて10℃の条件で測定される100%伸長させた後の永久歪みが20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは13%以下、さらに好ましくは10%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の流体密封容器。
<7>前記本体部を形成している前記フィルムは、融点が120℃以上150℃以下、より好ましくは125℃以上145℃以下、さらに好ましくは130℃超140℃以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の流体密封容器。
<8>前記本体部を形成している前記フィルムは、総厚さが50μm以上250μm未満、より好ましくは80μm以上230μm以下、さらに好ましくは100μm以上200μm以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の流体密封容器。
<9>前記本体部を形成している前記フィルムの前記ガラス転移点が-5℃以下、より好ましくは-90℃以上-10℃以下、さらに好ましくは-60℃以上-15℃以下、さらに好ましくは-40℃以上-18℃以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の流体密封容器。
<10>前記本体部を形成している前記フィルムの前記炭酸ガス透過度が10L/(m2・24hr・atm)以上、より好ましくは12L/(m2・24hr・atm)以上、さらに好ましくは15L/(m2・24hr・atm)以上100L/(m2・24hr・atm)以下、さらに好ましくは18L/(m2・24hr・atm)以上80L/(m2・24hr・atm)以下、さらに好ましくは20L/(m2・24hr・atm)以上50L/(m2・24hr・atm)以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の流体密封容器。
<11>前記本体部を形成している前記フィルムの前記引張強度が10N/10mm以上、より好ましくは15N/10mm以上150N/10mm以下、さらに好ましくは20N/10mm以上130N/10mm以下、さらに好ましくは30N/10mm以上100N/10mm以下、さらに好ましくは40N/10mm以上80N/10mm以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の流体密封容器。
<12>前記本体部を形成している前記フィルムの前記ガラス転移点が-40℃以上-18℃以下であり、前記炭酸ガス透過度が15L/(m2・24hr・atm)以上50L/(m2・24hr・atm)以下であり、さらに、前記引張強度が20N/10mm以上130N/10mm以下である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の流体密封容器。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載の流体密封容器に、温度が15℃以下であり且つ炭酸ガス濃度が300ppm以上である炭酸ガス含有冷水が内封された、冷却具。
<14><13>に記載の冷却具を使用者の身体の一部、より好ましくは足または首の一部に接触させて使用する(冷却する)ことを特徴とする、冷却具の使用方法(身体の冷却方法)。
<15>前記冷却具を前記使用者の前記身体の一部の肌に直接接触させて使用することを特徴とする、<14>に記載の冷却具の使用方法。