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  • 特開-フラボノイドの吸収促進剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032782
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】フラボノイドの吸収促進剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20250305BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20250305BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20250305BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20250305BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20250305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250305BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/105
A23L2/52
A23L2/00 F
A61K31/352
A61K31/353
A61P43/00 121
A61P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138256
(22)【出願日】2023-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春名 優希
(72)【発明者】
【氏名】八巻 礼訓
(72)【発明者】
【氏名】山家 雅之
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LE03
4B018MD08
4B018MD78
4B018ME04
4B018ME06
4B018MF01
4B018MF06
4B117LC04
4B117LK06
4B117LK17
4B117LP01
4B117LP03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA11
4C086ZC21
4C086ZC75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定の構造を有するフラボノイドの体内への吸収を促進することができる剤を提供する。
【解決手段】バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスを含む、フラボノイドの体内への吸収促進剤であって、フラボノイドが下記一般式(1)で表される化合物を含む群から選ばれる少なくとも一種である、吸収促進剤。

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、又はメトキシ基を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスを含む、フラボノイドの体内への吸収促進剤であって、フラボノイドが下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、吸収促進剤。
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、又はメトキシ基を示す。)
【化2】
(式中、R、R及びRは、前記と同じ)
【化3】
(式中、R、R及びRは、前記と同じ)
【請求項2】
前記フラボノイドが、ポプラ由来のフラボノイド、及び/又はポプラを基原とするプロポリス由来のフラボノイドである、請求項1に記載の吸収促進剤。
【請求項3】
前記フラボノイドが、クリシン、ガランギン、及びピノセンブリンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の吸収促進剤。
【請求項4】
前記バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスが、プロポリスエタノール抽出物である、請求項1に記載の吸収促進剤。
【請求項5】
飲食品、医薬品又は医薬部外品である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラボノイドの吸収促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
天然には抗酸化作用や血圧降下作用など人体に有益な生理活性を持つフラボノイドが数多く知られている。しかしながら、フラボノイドは難水溶性の成分が多いため人体への移行性が約0.1%と低く、生理活性の発現には生体利用性の高いフラボノイドの開発が課題とされている。
【0003】
フラボノイドは食品やサプリメントの有効成分として期待されるが、サプリメントの多量摂取は消費者の負担になるため、フラボノイドを効率よく体内に吸収できることが望まれる。
【0004】
フラボノイドの吸収促進の方法としては、乳化製剤化や粒子径の微細化、他素材との併用が多く用いられているが、加工によるフラボノイドの分解やコスト高が問題となり、それらを解決する吸収促進方法が求められる。
【0005】
特許文献1では、リンゴ由来又はシトラス由来であって、メチルエステル化度を50%以上とするHMペクチンを有効成分として含有する、経口摂取のケルセチン生体吸収促進剤が報告されている。そして、ヒト試験によってリンゴ由来のペクチンを投与した場合、非投与の場合に比べて70%程度の吸収の向上が見られることが記載されている。
【0006】
プロポリスはミツバチにより集められた樹木の樹液、植物の新芽や浸出物などがミツロウ等と混ざり合ってできた膠状の物質であり、抗菌作用、抗酸化作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用、抗アレルギー作用などが知られている。
【0007】
プロポリスの成分はその材料となる基原植物の種類や配合率に影響されるため、採取された国又は地域によって、プロポリスに含まれる有効成分の種類や含有量とその生理活性が全く異なることが知られている。
【0008】
近年産地別プロポリスの含有成分に関する研究が進められている。例えば、バッカリス・ドゥラクンクリフォリアを主要な基原植物とするブラジル産プロポリスの主成分としては、p-クマル酸、アルテピリンC、ドルパニン、バッカリン等の桂皮酸誘導体が検出される。一方、ポプラを基原植物とする中国産、ヨーロッパ産及びオーストラリア産のプロポリスの主成分としては、クリシン、ガランギンなどのフラボノイド類が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5697834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特定の構造を有するフラボノイドの体内への吸収を促進することができる剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
プロポリスはミツバチが採取する植物を原料とするため、産地によって成分の違いが見られることから、産地により効果は異なることが予想される。そこで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行ったところ、フラボノイドを多く含むウルグアイ産プロポリス粉末にバッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリス粉末を混合した粉末を経口摂取させて、フラボノイドの血中動態をヒトで調査した結果、混合粉末は単一粉末と比べてフラボノイド(クリシン・ガランギン・ピノセンブリン)のAUCが約3.5、2.0、2.4倍に、Cmaxが約6.2、3.0、3.1倍に向上することが確認され、この結果から、バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスにフラボノイド吸収促進剤としての機能を見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]に関する。
[1]バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスを含む、フラボノイドの体内への吸収促進剤であって、フラボノイドが下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、吸収促進剤。
【0013】
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、又はメトキシ基を示す。)
【0014】
【化2】
(式中、R、R及びRは、前記と同じ)
【0015】
【化3】
(式中、R、R及びRは、前記と同じ)
[2]前記フラボノイドが、ポプラ由来のフラボノイド、及び/又はポプラを基原とするプロポリス由来のフラボノイドである、[1]に記載の吸収促進剤。
[3]前記フラボノイドが、クリシン、ガランギン、及びピノセンブリンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の吸収促進剤。
[4]前記バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスが、プロポリスエタノール抽出物である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の吸収促進剤。
[5]飲食品、医薬品又は医薬部外品である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の吸収促進剤。
【発明の効果】
【0016】
バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスは、優れた特定の構造を有するフラボノイドの体内への吸収促進作用を有しているので、吸収促進剤の有効成分として有用である。
【0017】
また、プロポリスは、従来から食品素材として用いられてきたものであるから、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】クリシン、ガランギン及びピノセンブリンのAUC(ng/mL・h)を示すグラフである。左:ウルグアイ産プロポリス粉末の単一粉末、右:ウルグアイ産プロポリス粉末+バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリス粉末の混合粉末、値は平均値±標準偏差
図2】クリシン、ガランギン及びピノセンブリンのCmax(ng/mL)を示すグラフである。左:ウルグアイ産プロポリス粉末の単一粉末、右:ウルグアイ産プロポリス粉末+バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリス粉末の混合粉末、値は平均値±標準偏差
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0021】
本発明の吸収促進剤は、フラボノイドの体内への吸収促進剤であって、バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスを含む。該フラボノイドは、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である(ここでのフラボノイドを、以下において「本発明におけるフラボノイド」と称することもある)。
【0022】
【化4】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、又はメトキシ基を示す。)
【0023】
【化5】
(式中、R、R及びRは、前記と同じ)
【0024】
【化6】
(式中、R、R及びRは、前記と同じ)
【0025】
プロポリスとは、ミツバチの巣の巣壁を構成する樹脂状又は蝋状の物質であり、ミツバチが採取してきた植物の新芽や樹脂と蜂の唾液を混ぜ合わせてできた物質である。プロポリスは、例えば、常法に従い養蜂産品として入手することができる。本発明で用いられるプロポリスの由来植物は、バッカリス・ドゥラクンクリフォリア(Baccharis dracunculifolia)である。
【0026】
本発明で用いられるプロポリスとしては、上記植物由来のものであれば特に限定されず、例えば、ブラジル、中国、台湾、ヨーロッパ諸国、ロシア、オセアニア、アメリカなどの、いずれの産地由来のものであってもよく、中でもブラジル産プロポリス(例えば、グリーンプロポリス)が好ましい。また、バッカリス・ドゥラクンクリフォリア以外の他の植物由来のプロポリスを組み合わせて使用してもよい。プロポリスは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
本発明におけるプロポリスは、例えば、プロポリス原塊であってもよく、プロポリス原塊に何らかの処理を施したプロポリス処理物であってもよい。プロポリス処理物は、例えば、プロポリス原塊に、粉砕、抽出、抽出物の濃縮又は粉末化、粉末の造粒等の処理が施されたものであってもよく、抽出後に残る抽出残渣であってもよい。すなわちプロポリス処理物は、例えば、プロポリスの粉砕物、抽出物、濃縮抽出物、抽出物粉末、抽出物顆粒、抽出残渣等であってよい。抽出は、例えば、水抽出、親水性有機溶媒抽出、超臨界抽出等であってよい。親水性有機溶媒としては、例えばエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。プロポリスの抽出物は、プロポリス原塊から抽出して得られたものであってもよく、抽出後の残渣から更に抽出して得られたものであってもよい。また、抽出溶媒は1種で使用することもできるし、2種以上を任意に組み合わせて混合溶媒として用いることができる。処理方法は1つであってよく、2つ以上を組み合わせてもよい。プロポリス処理物としては、プロポリス親水性有機溶媒抽出物が、短時間で効率的にバランスよくプロポリスの有効成分が抽出されたものであるため好ましい。プロポリス処理物はプロポリスエタノール抽出物であることが好ましい。
【0028】
プロポリスの抽出物としては、回収された抽出液(必要に応じて更に精製されたものも含む)、当該抽出液を濃縮した濃縮液、凍結乾燥、スプレードライ等により当該抽出液の溶媒が除去された固形物などが含まれる。ここで、抽出液の濃縮、凍結乾燥及びスプレードライは、常法に従って行うことができる。本発明におけるプロポリスの抽出物には、このような抽出物を粉末化した粉末、該粉末を造粒した顆粒形態なども含まれる。
【0029】
プロポリスは、市販されているものを用いてもよい。市販されているプロポリスの具体例としては、例えば、山田養蜂場社のプロポリス300、プロポリス液30(ブラジル産)、プロポリス粒、プロポリス顆粒APC、プロポリスマイルド、プロポリスドリンク等が挙げられる。
【0030】
本発明の吸収促進剤中のプロポリスの含量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されず、最終形態等に応じて適宜調整することができ、吸収促進剤中の、固形分全量に対して、例えば、0.00001質量%以上、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよく、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下であってもよい。
【0031】
本発明におけるフラボノイドの具体例としては、クリシン、アピゲニン、アカセチン、ルテオリン、テクトクリシン、ゲンクワニン、クリソエリオール、ジオスメチン、ガランギン、ケンフェライド、ケンフェロール、イソラムネチン、ケルセチン、ラムネチン、ピノセンブリン、エリオジクチオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、サクラネチン、イソサクラネチン、ステルビン等が挙げられる。各化合物における一般式(1)、(2)及び(3)中の置換基を表1~3に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
本発明におけるフラボノイドは、クリシン、ガランギン、及びピノセンブリンであることが好ましい。フラボノイドは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
本発明におけるフラボノイドは、フリーの状態又は塩の状態の両方を包含する。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩及びアンモニウム塩が挙げられる。当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。また、本発明におけるフラボノイドにはその水和物、溶媒和物、結晶多形なども含まれる。
【0037】
本発明におけるフラボノイドとしては、合成品であってもよく、又は本発明におけるフラボノイドを含む植物、プロポリス等の天然物をそのままで若しくはフラボノイドを精製して使用してもよい。本発明におけるフラボノイドを含む植物としては、特に限定されず、例えば、ポプラ(ヤナギ科ヤマナラシ属又はハコヤナギ属)が挙げられる。本発明におけるフラボノイドを含むプロポリスとしては、特に限定されず、例えば、ポプラを基原植物とする南米産、中国産、ヨーロッパ産、オーストラリア産プロポリスなどが挙げられる。
【0038】
本発明におけるフラボノイドは、ポプラ由来のフラボノイド、及び/又はポプラを基原とするプロポリス由来のフラボノイドであることが好ましい。ここでのポプラ由来及びプロポリス由来のフラボノイドは、単離又は精製されたフラボノイドだけではなく、本発明におけるフラボノイドを含むポプラ及びプロポリスの意味も含む。
【0039】
使用するポプラの部位としては、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、花、果実、葉、芽、木部、根、樹皮、樹液、これらの混合物などが挙げられる。ポプラは、採取して得られたポプラそのもの又はポプラの処理物のいずれであってもよい。ポプラの処理物としては、例えば、ポプラの乾燥物、粉砕物、破砕物、粉末、抽出物等が挙げられる。ポプラの乾燥は、例えば、天日乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等によって行うことができる。粉砕及び破砕は、例えば、それぞれ粉砕機、破砕機等を用いて行うことができる。ポプラの抽出物は、植物の抽出に一般的に使用されている方法により作製することができる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料であるポプラの抽出部位を投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除くことにより作製することができる。ポプラの抽出物としては、ポプラから抽出して得られた抽出液をそのまま用いてもよく、更なる処理(例えば、希釈、濃縮、乾燥、ろ過、精製等)を行ったものを用いてもよい。
【0040】
吸収促進剤は、フラボノイドとともに投与されてもよく、吸収促進剤を投与してから一定時間以内、例えば1時間以内、又は30分以内にフラボノイドを投与してもよい。
【0041】
本発明の吸収促進剤は、バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスに加えて、本発明におけるフラボノイドを更に含んでいてもよい。吸収促進剤がバッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスと本発明におけるプロポリスとを併せて含むことにより、バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスとフラボノイドとを同時に、かつ適切な比率で投与することが容易であるため好ましい。
【0042】
吸収促進剤が本発明におけるフラボノイドを含む場合、吸収促進剤に含まれる上記一般式(1)、(2)若しくは(3)で表される各フラボノイドの量、又はその合計量は、固形分量として、吸収促進剤の全量に対して、例えば、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、4質量%以上又は5質量%以上であってよく、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下又は0.01質量%以下であってよい。
【0043】
本発明の吸収促進剤中のバッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスと本発明におけるフラボノイドの配合比率は特に限定されない。本発明におけるフラボノイドがプロポリスである場合、吸収促進剤に含まれるバッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスとフラボノイドを含むプロポリスとの配合比率(乾燥質量)は、例えば、1:0.01~100、1:0.1~10、1:0.5~5などであってよい。
【0044】
本発明の吸収促進剤は、例えば、体内でのフラボノイドの吸収を促進させるためにヒトに投与することもできる。本発明の吸収促進剤は、経口投与に適している。
【0045】
また、本発明の吸収促進剤が経口投与される場合の投与量は、有効成分、組成物、の形態及び適用方法・適用量によって異なり得るが、例えば、体重60kgの成人一日当たり、有効成分であるプロポリスの乾燥固形分換算で1mg~1,000mgの用量で用いることができ、100mg~500mgの用量で用いることが好ましく、200mg~500mgの用量で用いることがより好ましく、300mg~400mgの用量で用いることが更に好ましい。当該投与量は、摂取する人の健康状態、投与方法、有効成分の種類及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、適宜増減することができる。
【0046】
本発明の吸収促進剤は、一日当たりの有効投与量が上述した範囲内にあれば、一日一回投与されてもよいし、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。本発明の吸収促進剤は、投与してすぐ効果が得られるが、1~4週間又は1か月以上、6か月以上、1年以上の継続的な投与は、効果をより持続できるため、好ましい。
【0047】
本発明の吸収促進剤は、飲食品(特に、保健、健康維持、増進等を目的とする飲食品(例えば、健康食品、機能性食品、栄養組成物(nutritional composition)、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は機能性表示食品))、医薬部外品、医薬品などとして使用することができる。また、本発明の吸収促進剤は、フラボノイドの吸収促進作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。
【0048】
本発明の吸収促進剤を一成分として含む飲食品、医薬部外品、又は医薬品は、例えば、これら製品の製造工程における中間製品に、本発明の吸収促進剤を添加することにより製造することができる。
【0049】
上記の飲食品には、上記プロポリスをそのまま使用することもでき、必要に応じて、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定剤、ゲル化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することもできる。
【0050】
飲食品には、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる飲食品が含まれる。飲食品の種類は、特に限定されず、例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト等);飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、グミ、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0051】
飲食品の製法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。
【0052】
サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択でき、例えば、チュアブル、トローチなどの錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤、シロップ、ペースト、ドリンク、グミ等が挙げられる。
【0053】
上記の医薬品には、上記プロポリスのみを使用することもでき、ビタミン、生薬など日本薬局方に記載の他の医薬成分と混合して使用することもできる。
【0054】
本発明の吸収促進剤を、医薬品として調製する場合、上記プロポリスを、医薬品において許容される成分とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペーストなどの形態に調製して、医薬用の製剤にすることが可能である。医薬品の投与は、経口投与が適している。
【0055】
本発明の医薬品には、プロポリス以外にも、必要に応じて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、懸濁化剤、増粘剤、抗酸化剤、吸収促進剤、pH調整剤、保存剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤、甘味剤、矯味剤、香料等の薬学的に許容される成分を適宜配合することができる。
【0056】
なお、本発明の医薬品には、医薬部外品も包含される。
【0057】
以上説明した本発明の吸収促進剤は、ヒトを含む哺乳動物(好ましくはヒト)に対して適用されるものである。
【0058】
本発明の吸収促進剤が有効成分として含有するバッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来のプロポリスは、後述する実施例で示されているように、特定の構造を有するフラボノイドの体内への吸収促進作用を有しているので、吸収促進剤の有効成分として有用である。
【0059】
また、本発明の吸収促進剤は、従来から食品素材として用いられてきたプロポリスを使用するものであるから、安全性が高い。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
実施例1(プロポリス粉末の調製)
○プロポリスエタノール抽出物の調製
バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリスエタノール抽出物:ブラジル産プロポリス原塊に96%エタノールを加えて攪拌させた溶液を濾過し、残渣を取り除いた。その後、ろ液中の固形分が80%になるように濃縮した。
ウルグアイ産プロポリスエタノール抽出物:ウルグアイ産プロポリス原塊に80%エタノールを加えて攪拌させた溶液を濾過し、残渣を取り除いた。その後、ろ液中の固形分が67.5%になるように濃縮した。
○プロポリス粉末の調製
バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリス粉末:バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリスエタノール抽出物にアルギニン、精製水を加えて攪拌した。その後、凍結乾燥し、バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリス粉末を調製した。
ウルグアイ産プロポリス粉末:ウルグアイ産プロポリスエタノール抽出物にアルギニン、デキストリン、精製水を加えて攪拌した。その後、凍結乾燥し、ウルグアイ産プロポリス粉末を調製した。
○試験食の調製
粉末をすり鉢ですりつぶし、均一に混ざったのを目視で確認し、ハードカプセルに充填した。
【0062】
試験例1
<投与>
○被験者数
成人男女3名
○飲用量
・単一粉末:ウルグアイ産プロポリス粉末363mg
・混合粉末:ウルグアイ産プロポリス粉末181.5mg+バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリス粉末181.5mg
○飲用方法
常温の水と一緒に飲用
<採血>
○採血時間:飲用前、飲用後0.5,1,1.5,3,6,9,24時間後
<試験方法>
〇血漿の採取
採血管(栄研 E-DS1)を用いて血液約100μLを指先からの穿刺により採取した後、遠心器(栄研 M-4L08)により遠心分離を行って、血漿を採取した。
〇クリシン、ガランギン、ピノセンブリンの定量
得られた血漿中のクリシン、ガランギン、ピノセンブリンの濃度をLC(Thermo ultimate3000)、MS(Thermo Q Exactive Focus)にて定量した。
〇最高血中濃度(Cmax)及び曲線下面積(AUC)の算出
Cmaxは、投与後の時間における血漿中の各成分濃度の最高値とし、AUCは、線形台形法により算出した。統計解析は、対応のあるt検定により行った。
【0063】
<結果>
得られたAUCを図1に、Cmaxを図2に示す。ウルグアイ産プロポリスは、ポプラを基原とするプロポリスであり、クリシン、ガランギン、ピノセンブリンなどのフラボノイドを含んでいる。ウルグアイ産プロポリス粉末の単独投与と比較して、バッカリス・ドゥラクンクリフォリア由来プロポリス粉末とウルグアイ産プロポリス粉末とを混合させて投与した場合に、クリシン、ガランギン、ピノセンブリンのCmaxはそれぞれ6.23、2.96、3.1倍に、AUCはそれぞれ3.49、2.03、2.37倍に向上した。また、ガランギン、ピノセンブリンのAUCは、有意差をもって吸収性の向上が確認された。
図1
図2