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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032845
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/08 20060101AFI20250305BHJP
【FI】
A01K87/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138335
(22)【出願日】2023-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】林 陽葉莉
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA06
2B019AA09
(57)【要約】
【課題】グリップの先端に〆部を設けた釣竿において、〆部の表面にクラックが発生し難い釣竿を提供する。
【解決手段】本発明の釣竿は、元竿杆の基端側の外周面に装着され、グリップ10が設けられたグリップ保持部材12を有する。グリップ保持部材12は、グリップ10に対して軸方向に突出しており、グリップ10の先端縁10aから竿杆表面の先端側に向けて次第に薄肉厚化し、グリップ保持部材12の突出部12aを覆う〆部20を設けたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元竿杆の基端側の外周面に装着され、グリップが設けられたグリップ保持部材を有する釣竿であって、
前記グリップ保持部材は、前記グリップに対して軸方向に突出しており、
前記グリップの先端縁から竿杆表面の先端側に向けて次第に薄肉厚化し、前記グリップ保持部材の突出する部分を覆う〆部を設けたことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記グリップ保持部材の前記グリップに対する軸方向の突出量は、1~7mmの範囲内で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記元竿杆の基端側には、縮径部が形成されており、
前記グリップ保持部材は、前記縮径部の先端側端面に当て付けられて元竿杆の表面との間に段差が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記段差は、0.3~0.5mmの範囲内で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の釣竿。
【請求項5】
前記グリップ保持部材は、前記グリップの内面が軸方向全長に亘って取着される管状体で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項6】
前記グリップ保持部材の前記グリップに対する突出部の表面には、先端側に向けて縮径する傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリップ部分に特徴を備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣竿の基端側には、実釣時に握持されるグリップが取着されている。前記グリップは、様々な構成が知られており、へら鮒釣り使用される釣竿には、例えば、特許文献1に開示されているように、竿杆に取着されるグリップと竿杆表面との段差を無くすように段差解消層が設けられている。このような段差解消層は、〆部とも称されており、上記の特許文献1に開示されている段差解消層は、添付図面の図5(a)(b)の符号60で示すように、竿杆(元竿杆)50の基端側の外面に取着されたグリップ51の先端縁51aから、竿杆50の表面に軸方向に所定の長さで設けられている。また、そのような段差解消層60(以下、〆部60と称する)は、例えば、樹脂製の塗料を刷毛塗り等によって先端に移行するに従い、薄肉厚化するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-310111号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のグリップは、実釣時に曲げ応力が作用した際、〆部60とグリップ51の境界部分(図5(a)(b)の矢印Dで示す部分)に応力が集中し易く、〆部60の表面にクラックが生じ易いという問題がある。特に、〆部は、肉厚が薄いことから、釣竿が撓んだ際に生じたクラックが広がり易い。また、〆部にクラックが発生すると、〆部が破損する等、外観を損ねてしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、グリップの先端に〆部を設けた釣竿において、〆部の表面にクラックが発生し難い釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿は、元竿杆の基端側の外周面に装着され、グリップが設けられたグリップ保持部材を有し、前記グリップ保持部材は、前記グリップに対して軸方向に突出しており、前記グリップの先端縁から竿杆表面の先端側に向けて次第に薄肉厚化し、前記グリップ保持部材の突出する部分を覆う〆部を設けたことを特徴とする。
【0007】
上記した構成の釣竿のグリップは、元竿杆の外周面に装着されるグリップ保持部材に設けられており、前記グリップ保持部材は、前記グリップに対して軸方向に突出している。前記〆部は、前記グリップ保持部材の突出する部分を覆うように設けられるため、曲げ応力が作用した際、その応力は、グリップの先端縁、及び、グリップ保持部材の先端縁で分散され、〆部の表面にクラックが発生し難くなる。また、〆部は、先端側に向けて次第に薄肉厚化するように設けられるため、〆部の外観は綺麗に仕上げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グリップの先端に〆部を設けた釣竿において、〆部の表面にクラックが発生し難い構成の釣竿が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る釣竿のグリップ部分の一構成例を示す図。
図2】(a)は、図1に示すグリップ部分の中央縦断面図、(b)は、図(a)の主要部の拡大図。
図3】グリップ部分の第2の実施形態を示す中央縦断面図。
図4】グリップ部分の第3の実施形態を示す中央縦断面図。
図5】(a)は、従来のグリップ部分の中央断面図、(b)は、図(a)の主要部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1及び図2を参照して、本発明に係る釣竿の実施形態について説明する。
図1は、釣竿のグリップ部分を示す図であり、図2(a)及び(b)は、それぞれ図1に示すグリップ部分の中央縦断面図及び主要部の拡大図である。なお、以下で特定する先端側(先側)とは、釣竿として穂先側を意味しており、図1では上方が先端側となる。
【0011】
本実施形態に係る釣竿1は、元竿杆2,及び、元竿杆2の先側に順次継合される竿杆(先竿杆;図示せず)を備えている。この場合、先側の竿杆は、公知のように、振出式、並継式、インロー継ぎ式等によって継合可能であり、継本数等については限定されることはない。
【0012】
前記元竿杆2、及び、先側の竿杆は、合成樹脂に強化繊維を含浸した繊維強化樹脂材料(プリプレグ)を巻回することで管状に構成されている。各竿杆については、超弾性合金や超弾性樹脂等によって形成される中実構造を含んでいても良く、竹などの天然素材で形成されていても良い。
【0013】
前記元竿杆2の基端側には、後述するグリップ保持部材12を介在してグリップ10が固定されている。前記グリップ10は、例えば、本体10Aが発泡材やコルク等の軽量素材で形成され、その表面に、繊維体を糸巻き(ブレーディング)することで構成されている。また、前記グリップ10の先端縁10aは、元竿杆2の外周面との間に段差が生じるが、その段差部分には、〆部20が設けられて、段差が無いように面一状に仕上げられている。なお、本体10Aの構成素材については限定されることはなく、上記した素材以外にも、樹脂、FRP、軽量金属等の軽量素材で構成し、ブレーディングされない構成であっても良い。
【0014】
前記グリップ10は、竿杆とは別体(FRP、硬質プラスチック、軽金属など)で形成され、元竿杆2の基端側の外周面に装着されるグリップ保持部材12に接着等によって取着されている。本実施形態のグリップ保持部材12は、管状に形成されて元竿杆2の基端部まで延在しており、元竿杆2の基端側の外周面に接着等によって固定されている。すなわち、グリップ保持部材12は、グリップ10の内面が軸方向全長に亘って取着される管状体で構成されており、これにより、グリップ10は、安定した状態で元竿杆2の基端側に配設されている。なお、前記グリップ保持部材12の先端側は、取着されるグリップ10の先端縁10aから所定の長さ(突出量L)だけ軸方向に突出するように構成されている(突出部12aが形成される)。
【0015】
前記グリップ10の先端縁10aは、竿杆2の表面に対して段差(図2(b)に示すように、段差の高さはH+H2)を有しており、その段差部分には、先端側に向けて次第に薄肉厚化すると共に、前記グリップ保持部材12の突出部12aを覆う〆部20が設けられている。
【0016】
前記〆部20は、例えば、紫外線硬化型の樹脂(塗料)を刷毛塗りすることで構成することが可能である。このような紫外線硬化型の樹脂は、グリップ10を発泡性の素材で形成すると、浸潤し易くなりグリップとの間で密着性が良くなる。また、複数回塗り重ねることで、〆部20に肉厚を持たせ、外観を滑らかな表面にして綺麗に仕上げることが可能となる。
【0017】
本実施形態の元竿杆2の基端側には縮径部2aが形成されている。この縮径部2aは、例えば、元竿杆2をチャッキングして後端側をセンターレス加工することで形成することが可能であり、加工された縮径部2aに、前記管状に形成されたグリップ保持部材12が圧入、固定されている。
【0018】
前記元竿杆2に縮径部2aを形成したことで、前記グリップ保持部材12を縮径部2aに圧入した際、その先端側の端面(先端縁)12bが、前記縮径部2aの先端側の端面2bに当て付けられるので、グリップ保持部材12の位置決めが容易になると共に、安定した固定状態が得られる。また、元竿杆2の表面との間に段差Hが形成されるため、この部分(グリップ保持部材12の先端縁12bの位置)でも応力集中させることが可能となる。
【0019】
なお、前記グリップ保持部材12の肉厚Tについては、前記縮径部2aの窪み量H1よりも大きくすることで、段差Hを形成することができ、元竿杆に曲げ応力が作用した際、応力集中させることが可能となる。この場合、前記グリップ保持部材12の肉厚Tを元竿杆2の肉厚T1よりも厚く形成することで、前記段差Hを確実に形成することが可能となる。
【0020】
前記〆部20は、前記グリップ10の先端縁10aから竿杆2の表面にかけて設けられる。上記したように、前記〆部20は、紫外線硬化型の樹脂で構成されており、グリップ保持部材12の突出部12aを覆うように設けられる。この場合、前記〆部20は、前記グリップ10の先端縁10aから前側の段差を解消する役目を果たし、軸長方向で15mm以下にすることが製品上、美しいとされている。
【0021】
このため、グリップ保持部材12の先端の突出量Lについては、約半分となる7mm以下に設定することが好ましい。すなわち、突出部12aが7mmを超えると、図に示したように、先端側に向けて〆部20を薄肉厚化するように形成した際、15mmを超え易くなり、外観が低下してしまう。また、突出量Lを0mmにすると、従来と同様、前記グリップ保持部材12の先端縁12bで生じる応力集中を分散できなくなり、〆部20の表面にクラックが発生し易くなる。
【0022】
なお、突出量Lの下限値については、クラックが生じ難くなる(軸方向に応力集中を分散させる)ように、最低でも1mm以上確保することが好ましく、2mm以上、更には、3mm以上、確保することがより好ましい。すなわち、突出量Lについては、1mm≦L≦7mm、好ましくは、2mm≦L≦7mm、より好ましくは、3mm≦L≦7mmとなるように設定される。
【0023】
このように、突出量Lをある程度確保することで、曲げ応力が作用した際の力の作用点(D1,D2の位置)を十分な距離をもって離すことができ、従来のように、1点に作用する応力集中(図5(b)のDの位置)を分散させてクラックの発生を抑制することができる。
【0024】
前記段差Hについては、高くし過ぎるとグリップ保持部材12の先端縁での樹脂が薄くなってクラックが生じ易くなる。これに対して低くし過ぎると応力集中の分散効果が弱まり、クラックが生じ易くなってしまう。また、前記段差Hを低くすると、〆部20を構成する塗料の付着性(アンカー効果)も低下してしまい、剥がれ等の損傷が生じ易くなってしまう。このため、前記段差Hについては、0.3~0.5mmの範囲内で形成することが好ましい。
【0025】
なお、前記段差Hと、グリップ10の先端縁10aにおける段差H2については、略同程度、具体的には、0.8H≦H2≦1.2H程度に設定しておくことで、バランス良く樹脂を付着することができ、視覚的、触覚的に一体感を向上して仕上がりを綺麗にすることができ、応力集中も分散させることが可能となる。
【0026】
上記した構成の釣竿のグリップ構造によれば、グリップ10が取着されたグリップ保持部材12が、グリップ10の先端縁10aに対して軸方向に突出している。この状態で、〆部20が突出部12aを覆うように設けられるため、曲げ応力が作用した際、その応力は、軸方向に距離をおいてグリップの先端縁10a(D1)、及び、グリップ保持部材12の先端縁12b(D2)で分散させることができ、〆部20の表面にクラックが発生し難くなる。また、〆部20は、先端に向けて次第に薄肉厚化するように設けられるため、〆部20の外観が綺麗に仕上げられる。
【0027】
次に、グリップ部分の別の実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、上記した実施形態と同一の部分については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0028】
図3は、グリップ部分の第2の実施形態を示す中央縦断面図である。
この実施形態では、グリップ保持部材12Aを、前記グリップ保持部材12よりも短く形成してグリップ10の先端縁10aから突出するように構成されている。すなわち、グリップ保持部材12Aは、グリップ10の本体10Aの先端側の内面を取着してグリップ10を保持している。
【0029】
このようなグリップ保持部材12Aの構成においても、元竿杆2に曲げ応力が作用した際、その応力は、軸方向に距離をおいてグリップ10の先端縁10a(D1)、及び、グリップ保持部材12Aの先端縁12b(D2)で分散することができ、〆部20の表面にクラックが発生し難くなる。また、グリップ保持部材12Aを、上記した実施形態のように長く形成する必要がないため、グリップ部分の軽量化が図れるようになる。
【0030】
図4は、グリップ部分の第3の実施形態を示す中央縦断面図である。
この実施形態では、グリップ保持部材12Bを、前記グリップ保持部材12よりも短く形成してグリップ10の先端縁10aから突出させるように構成されている。すなわち、グリップ保持部材12Bは、グリップ10の本体10Aの先端側の内面を取着してグリップ10を保持している。
【0031】
また、突出部12aの表面には、先端側に向けて縮径する傾斜部12dが形成されている。
このように、突出部12aの表面に傾斜部12dを形成することで、その部分での〆部20の肉厚を薄くすることができ、樹脂を塗布する際に、樹脂が膨らむことや窪むことが防止でき、クラックの発生を効果的に抑制して仕上げを綺麗にすることが可能となる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記したグリップ10の本体10Aの構造については限定されることはなく、複数の材料で構成しても良い。例えば、表面を樹脂材料とし、内部に軽量材を充填する等、握った際の硬度を調整したり、表面の破損が防止されるように複合材で構成しても良い。また、前記グリップ保持部材12については、グリップ10を保持するものであれば良く、管状体で構成されていなくても良い。また、元竿杆2に細径部2aを形成することなく、元竿杆2に嵌合されていても良い。
【0033】
また、前記グリップ保持部材は、その先端側がグリップ10の先端縁10aから軸方向先端側に突出し、その部分に〆部20が被着されていれば良く、その構造については適宜変形することが可能である。さらに、〆部20については、透明な樹脂、或いは、透明な樹脂に色彩が付されたものであっても良く、その取付方法については適宜、変形することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 釣竿
2 元竿杆
10 グリップ
10A 本体
12,12A,12B グリップ保持部材
12a 突出部
20 〆部
図1
図2
図3
図4
図5