(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032945
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】スチーム漏洩のないスチームトラップ装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F16T 1/00 20060101AFI20250305BHJP
F16T 1/12 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
F16T1/00 D
F16T1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023148814
(22)【出願日】2023-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】392028583
【氏名又は名称】小柏 猛
(71)【出願人】
【識別番号】523347383
【氏名又は名称】鈴木 直一
(71)【出願人】
【識別番号】523347394
【氏名又は名称】佐々木 克己
(71)【出願人】
【識別番号】523347682
【氏名又は名称】久枝 芳則
(71)【出願人】
【識別番号】523347408
【氏名又は名称】青沼 三郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克己
(72)【発明者】
【氏名】久枝 芳則
(72)【発明者】
【氏名】青沼 三郎
(72)【発明者】
【氏名】小柏 猛
(57)【要約】
【課題】スチーム漏洩又はその恐れ及び不本意なドレン滞留の過剰又はその恐れを解決する。
【解決手段】
ドレンを溜めるドレン収納容器であって、上部にドレン及び/又はスチームが流入する入口並びに下部にドレンが排出される出口を備えたドレン収納容器(1)、当該収納容器内のドレンの水位(W)を測定するレベルセンサ(2)、前記出口の先に設けられたオリフィス又はノズル(3)、当該オリフィス又はノズルの先に設けられたバッファ部(4)、当該バッファ部の先に設けられた連続的に開度変更可能な開閉弁(5)及び前記バッファ部内の圧力(P2)を測定する圧力センサ(6)を含むことを特徴とするスチームトラップ装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレンを溜めるドレン収納容器であって、上部にドレン及び/又はスチームが流入する入口並びに下部にドレンが排出される出口を備えたドレン収納容器(1)、当該収納容器内のドレンの水位(W)を測定するレベルセンサ(2)、前記出口の先に設けられたオリフィス又はノズル(3)、当該オリフィス又はノズルの先に設けられたバッファ部(4)、当該バッファ部の先に設けられた連続的に開度変更可能な開閉弁(5)及び前記バッファ部内の圧力(P2)を測定する圧力センサ(6)を含むことを特徴とするスチームトラップ装置。
【請求項2】
請求項1のスチームトラップ装置において、
前記レベルセンサ(2)で測定された水位(W)が第1目標値(SV1)より高い場合には下記第2目標値(SV2)の数値を下げ、水位(W)が第1目標値(SV1)と等しい場合には下記第2目標値(SV2)の数値を維持し、水位(W)が第1目標値(SV1)より低い場合には下記第2目標値(SV2)の数値を上げ、
前記圧力センサ(6)で測定された圧力(P2)が第2目標値(SV2)より高い場合には前記開閉弁(5)を開ける方向に作動させ、圧力(P2)が第2目標値(SV2)と等しい場合には前記開閉弁(5)を作動させずに維持し、圧力(P2)が第2目標値(SV2)より低い場合には前記開閉弁(5)を閉める方向に作動させることを特徴とするスチームトラップ装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1のスチームトラップ装置において、
前記レベルセンサ(2)で測定された水位(W)が第1目標値(SV1)より高い場合には下記第2目標値(SV2)の数値を下げ、水位(W)が第1目標値(SV1)と等しい場合には下記第2目標値(SV2)の数値を維持し、水位(W)が第1目標値(SV1)より低い場合には下記第2目標値(SV2)の数値を上げ、
前記ドレン収納容器(1)内部空間のスチーム圧力をP1とするとき、前記圧力センサ(6)で測定された圧力(P2)との圧力差(ΔP=P1―P2)が第2目標値(SV2)より高い場合には前記開閉弁(5)を閉める方向に作動させ、圧力差(ΔP)が第2目標値(SV2)と等しい場合には前記開閉弁(5)を作動させずに維持し、圧力差(ΔP)が第2目標値(SV2)より低い場合には前記開閉弁(5)を開ける方向に作動させることを特徴とするスチームトラップ装置の制御方法。
【請求項4】
ドレンを溜めるドレン収納容器であって、上部にドレン及び/又はスチームが流入する入口並びに下部にドレンが排出される出口を備えたドレン収納容器(1)、当該収納容器内のドレンの水位(W)を測定するレベルセンサ(2)、前記出口の先に設けられたn個(nは2以上の自然数)に分岐した分岐管(12)、当該分岐管の先にそれぞれ設けられたオリフィス又はノズル(3)、当該オリフィス又はノズル(3)の手前又は先にそれぞれ設けられた開閉弁(13)を含み、
前記レベルセンサ(2)で測定された水位(W)の高さに応じて、高い場合には、前記n個のうち全部又は適正な数の開閉弁(13)を開け、低い場合には前記n個のうち全部又は適正な数の開閉弁(13)を閉め、これにより水位(W)を所定値に維持することを特徴とするスチームトラップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチーム漏洩のないスチームトラップ装置特にオリフィス等を備えたスチームトラップ装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチームトラップ装置は、一般には単に「スチームトラップ」とも呼ばれ、メカニカル式、サーモスタチック式、サーモダイナミック式などに分類される。メカニカル式はスチーム漏洩が少ないと言われており、その中にオリフィス式又は単にオリフィスと呼ばれるものがある。オリフィスは、Lawrence L.Guzikが発明した〔特許文献1(‘870)〕と言われており、その特許のFIG.2Aに図示されている。それは、金属製円板に直径φが0.2~5mm程度、場合により0.5~15mm程度の孔を開けたものである。最近では、オリフィスを直列(スチームの流れ出る方向)に複数設けたものもある。例えば、特許文献2(‘734)や特許文献3(‘461)を参照されたい。なお、オリフィスとは、英語で“orifice”のことで、孔の意味であるが、当業者らは、孔を有する円板全体(即ちトラップ)をオリフィスと呼び、ここでも、これに倣うことにする。板状ではなく、特許文献3(‘461)の
図3の符合30(オリフィス部材)に示すような形状のオリフィス(コマと呼ぶこともある)もあり、「オリフィス板」と呼ぶと誤解を招く。
【0003】
その後、単なる孔の開いた円板ではなく、スチームの流れる方向に厚みを持たせたノズルも開発された。例えば、特許文献4(‘644)の
図1の「ノズル5」がそれである。本発明の説明では、オリフィス(孔の厚みが理論的にゼロ)とノズル(孔の厚みが有意)を合わせて、オリフィス等と総称することがある。
オリフィス等は、構造が簡単で、そのため、安価で耐久性もあり、実際に市販され多用されている。
オリフィス等は、時間当たりのドレン量に応じて、適正な孔径φのものを選択する必要がある。φが小さいと、ドレンが適正に排出されずにドレン滞留の過剰が起こり各種の問題が引き起こされる。逆にφが大きいと、スチーム漏洩が起きたり又は多くなりエネルギー損失が発生する。
昨今、地球温暖化の問題や省エネの観点から、このスチーム漏洩が問題視されている。
【0004】
しかるに、時間当たりのドレン量は変動する。スチームで加熱するジャケット釜で例えると、加熱開始時、定常時、釜内の被加熱物量が変化した時でドレン発生量即ちドレン量が異なる。また、釜にボイラーからスチームを送る配管途中では、外気温の変化で例えば朝、昼、晩、夏場、冬場、降雨、積雪などで配管内のドレン発生量即ちドレン量が異なる。即ち、ドレン量が変動するのである。
しかし、ドレン量の変動に応じて、その都度、適正なφのオリフィス等に交換することは実際的ではないし、コストアップにもなる。そこで、スチーム漏洩よりドレン滞留の過剰の方が問題が深刻なので、φの大きめなオリフィス等を取り付けることになる。そのため、スチーム漏洩が多くなる傾向は否めない。
オリフィス等は、最大ドレン排出量の4分の1程度以上のドレン排出量で使用することが適切で、ドレンを適切に排出できるドレン排出量の範囲が狭い。逆に言えば、最大ドレン排出量の4分の1程度以下のドレン量の場合、スチーム漏洩が多くなる。
そこで、φの大きめなオリフィス等の後にニードルバルブを設け、ドレン量が少ないときにはバルブを閉めることで、φの小さなオリフィス等と同じ働きをさせるスチームトラップが発明された。特許文献5(‘533)がそれである。ドレンを適切に排出できるドレン排出量の範囲が広くなるのである。
【0005】
特許文献5(‘533)の[0037]段落によれば、ドレン流入口5側に多くのドレンが存在すると温度Tが低下するので、ニードルバルブの開度を大きくして(外に排出する)ドレン流量を多くする。また、同文献5の[0038]段落によれば、オリフィス等(符合10)の前の圧力P1と後の圧力P2の差が小さい場合は、ドレン量に対してニードルバルブの開度が小さいと判断できるので、ニードルバルブの開度を大きくして(外に排出する)ドレン流量を多くする。
他方、同文献5には明記されていないが、(外に排出する)ドレン流量が多くなると圧力P2が低下するので、圧力P1と圧力P2の差は大きくなると解釈される。同文献5には明記されていないが、反対に解釈して、圧力P1と後の圧力P2の差が大きくなったら、ドレン量に対して開度が大きいと判断できるので、ニードルバルブの開度を小さくして(外に排出する)ドレン流量を少なくする。また、ドレン流入口5側に存在するドレンが少なくなり温度Tが上昇したら、ニードルバルブの開度を小さくして(外に排出する)ドレン流量を少なくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3715870号
【特許文献2】日本特許第6408734号
【特許文献3】特開2016-223461号
【特許文献4】日本特許第6340644号
【特許文献5】特開2022-33533号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5(‘533)の発明では、同文献5[0037]段落に「ドレイン流入口5側に多くのドレインが存在すると温度Tが低下するので、・・・・開度を大きくして第2のノズル20を通過するドレインの流量を多くする。」と記載されている。
しかし、温度では、多くのドレンが存在するか、つまりドレン滞留量を正確には測定できず、また温度とドレン滞留量の関係には時間差が生じる恐れがあるためオリフィス等の前でドレン滞留の過剰が発生する恐れや、ニードルバルブの開度制御を正確に行うことできずにスチーム漏洩が発生する恐れがある。ドレン滞留の過剰は、深刻な諸問題を引き起こすので、是非とも回避しなければならない。
本発明が解決しようとする課題は、スチーム漏洩又はその恐れ及び不本意なドレン滞留の過剰又はその恐れを解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1発明として、
「ドレンを溜めるドレン収納容器であって、上部にドレン及び/又はスチームが流入する入口並びに下部にドレンが排出される出口を備えたドレン収納容器(1)、当該収納容器内のドレンの水位(W)を測定するレベルセンサ(2)、前記出口の先に設けられたオリフィス又はノズル(3)、当該オリフィス又はノズルの先に設けられたバッファ部(4)、当該バッファ部の先に設けられた連続的に開度変更可能な開閉弁(5)及び前記バッファ部内の圧力(P2)を測定する圧力センサ(6)を含むことを特徴とするスチームトラップ装置」
を提供する。
【0009】
また、本発明は、第2発明として、
「第1発明にかかるスチームトラップ装置において、
前記レベルセンサ(2)で測定された水位(W)が第1目標値(SV1)より高い場合には下記第2目標値(SV2)の数値を下げ、水位(W)が第1目標値(SV1)と等しい場合には下記第2目標値(SV2)の数値を維持し、水位(W)が第1目標値(SV1)より低い場合には下記第2目標値(SV2)の数値を上げ、前記圧力センサ(6)で測定された圧力(P2)が第2目標値(SV2)より高い場合には前記開閉弁(5)を開ける方向に作動させ、圧力(P2)が第2目標値(SV2)と等しい場合には前記開閉弁(5)を作動させずに維持し、圧力(P2)が第2目標値(SV2)より低い場合には前記開閉弁(5)を閉める方向に作動させることを特徴とするスチームトラップ装置の制御方法」
を提供する。
【0010】
更に、本発明は、第3発明として、
「第1発明にかかるスチームトラップ装置において、
前記レベルセンサ(2)で測定された水位(W)が第1目標値(SV1)より高い場合には下記第2目標値(SV2)の数値を下げ、水位(W)が第1目標値(SV1)と等しい場合には下記第2目標値(SV2)の数値を維持し、水位(W)が第1目標値(SV1)より低い場合には下記第2目標値(SV2)の数値を上げ、
前記ドレン収納容器(1)の内部空間の圧力をP1とするとき、前記圧力センサ(6)で測定された圧力(P2)との圧力差(ΔP=P1―P2)が第2目標値(SV2)より高い場合には前記開閉弁(5)を閉める方向に作動させ、圧力差(ΔP)が第2目標値(SV2)と等しい場合には前記開閉弁(5)を作動させずに維持し、圧力差(ΔP)が第2目標値(SV2)より低い場合には前記開閉弁(5)を開ける方向に作動させることを特徴とするスチームトラップ装置の制御方法」
を提供する。
更に、本発明は、別の観点から第4発明として、
「ドレンを溜めるドレン収納容器であって、上部にドレン及び/又はスチームが流入する入口並びに下部にドレンが排出される出口を備えたドレン収納容器(1)、当該収納容器内のドレンの水位(W)を測定するレベルセンサ(2)、前記出口の先に設けられたn個(nは2以上好ましくは3以上の自然数)に分岐した分岐管(12)、当該分岐管の先に設けられたオリフィス又はノズル(3)、当該オリフィス又はノズル(3)の手前又は先にそれぞれ設けられた開閉弁(13)を含み、
前記レベルセンサ(2)で測定された水位(W)の高さに応じて、高い場合には、前記n個のうち全部又は適正な数の開閉弁(13)を開け、低い場合には前記n個のうち全部又は適正な数の開閉弁(13)を閉め、これにより水位(W)を所定値に維持することを特徴とするスチームトラップ装置」
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、オリフィス等の上流に「ドレンを溜めるドレン収納容器」を設け、そこにレベルセンサを設けてドレン量(ドレン滞留)を正確に測定する。そして、ドレン量(ドレン滞留)に応じて、開閉弁の開度を制御する。そのため、ドレン排出の制御を正確に行うことができるので、オリフィス等の上流でのドレン滞留の過剰又はその恐れはない。また、ドレン収納容器には常に所定量のドレンが溜まっているので、スチーム漏洩又はその恐れもない。
また、従来、オリフィス等は、最大ドレン排出量の4分の1程度以上のドレン排出量で使用することが適切で、ドレンを適切に排出できるドレン量の範囲が狭いと言う問題を抱える。それに対し、オリフィス等を備える本発明の装置は、4分の1程度以下のドレン排出量でもスチーム漏洩なしに使用することができ、範囲が広い。
更に、開閉弁の開度制御をLIC及びPICの2段階とすることで変動するドレンの水位(W)の値を平準化させ制御を容易にすることができる。これも本発明(第1~第3発明)の効果の一つである。
【0012】
本発明(第1~第3発明)では、オリフィス等の先(下流)に連続可変可能な開閉弁(5)を設けているので、外に排出するドレン量(ドレン流量)をこの弁で制御又は調整でき、そのためオリフィス等として“孔径φの比較的大きなもの”を使用することができる。その結果、孔が異物等で詰まることが少なくなり、長期間の運転が可能となる。これも本発明の効果の一つである。
また、本発明(第1~第3発明)では、オリフィス等の先の圧力をいきなり大気圧等(下記※)にまでは下げず、バッファ部(4)を設けることでフラッシング現象による圧力の不規則変動を解消し安定した圧力(P2)を得て安定した圧力(P2)の測定による適格な制御を可能にした。これも本発明(第1~第3発明)の効果の一つである。
[※]オリフィス等の先(下流)は、通常、大気に開放されており、オリフィス等の先の圧力は大気圧であるが、場合によっては、オリフィス等の先に例えばドレン回収装置を設けることがあり、その場合には大気圧より高くなる。そこで、大気圧等と表現した。
第4発明は、ドレン収納容器(1)、レベルセンサ(2)、オリフィス等(3)を共通にするものの第1~第3発明とは思想が異なる。第4発明は、従来、ドレン収納容器を備えたトラップ装置ではオリフィス等(3)が1個(n=1)であったところ、n=2以上とした。そのため、スチーム漏洩なくドレンを適切に排出できるドレン排出量の範囲が広くなるのである。これが第4発明の効果である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明(第1発明)を実施するための形態の一例にかかるスチームトラップ装置の構成を示す概念図である。図は正確な寸法比では描かれていない。
【
図2】制御方法Aの場合、
図1の制御部の構成を説明する概念図である。図は正確な寸法比では描かれていない。
【
図3】制御方法Bの場合、
図1の制御部の構成を説明する概念図である。図は正確な寸法比では描かれていない。
【
図4】本発明(第2発明)を実施するための形態の一例にかかる「スチームトラップ装置の制御方法」にかかる制御シーケンスを示すフローチャートである。
【
図5】
図1の装置にスケール除去装置を付加したものの構成を示す概念図である。図は正確な寸法比では描かれていない。
【
図6】本発明(第4発明)を実施するための形態の一例にかかるスチームトラップ装置の構成を示す概念図である。図は正確な寸法比では描かれていない。この図では分岐管の分岐の仕方が紙面の垂直方向に分岐しているが、水平方向又は任意方向に分岐していてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本形態の一例を
図1~
図4を引用しながら説明する。あくまで、一例である。
この一例にかかるスチームトラップ装置は、ドレンを溜めるドレン収納容器であって、上部にドレン及び/又はスチームが流入する入口(1a)並びに下部にドレンが排出される出口(1b)を備えたドレン収納容器(1)、収納容器内のドレンの水位(W)を測定するレベルセンサ(2)、出口の先(下流)に設けられたオリフィス等(3)、オリフィス等の先(下流)に設けられたバッファ部(4)バッファ部の先(下流)に設けられた連続的に開度変更可能な開閉弁(5)及びバッファ部内の圧力を測定する圧力センサ(6)で構成される。なお、図示していないが、ドレン収納容器(1)の内部空間の圧力(P1)を測定する場合には、別の圧力センサが容器(1)内の上部に設けられる。
ドレン収納容器(1)は、入口(1a)を介して最終的には上流にあるボイラーに配管を介してつながっている。従って、容器(1)に流入するスチーム及びドレンの圧力(P1相当)は、kPaG(ゲージ圧)で例えば100~2000程度と様々あり、容器(1)は、それら圧力に応じた金属製耐圧容器とする。大きさもスチーム圧、ドレン量に応じ、適宜の大きさとする。例えば、直径φ=50~300mm程度、高さh=100~800mm程度の円筒形が好ましい。
【0015】
なお、ドレン収納容器(1)内のドレンの温度が低下すると、ドレンに接触しているスチームの温度を低下させ余計なドレンを発生させるので、逆に言えばスチームが余計につまり無駄に消費されるので、容器(1)の周囲を受動的又は能動的保温手段で囲い容器(1)を保温することが好ましい。
他方、ドレン収納容器(1)は、下部にドレンが排出される出口(1b)を備えており、その先(下流)はオリフィス等(3)につながっている。
ドレン収納容器(1)には、ドレンの水位(W)を測定するレベルセンサ(2)が取り付けられている。レベルセンサ(2)は水位(W)を連続的に測定できるものが好ましいが、非連続的又は間欠的に測定するもの、極端には最高水位(H)、最低水位(L)及び中間水位の3点を測定するもの、又は最高水位(H)及び最低水位(L)の2点を測定するものでもよい。レベルセンサ(2)が測定した水位(W)の値は、有線又は無線で制御部に送られる。
レベルセンサ(2)の具体例としては、例えば、電極棒式、静電容量式、フロート式などが挙げられる。
【0016】
ドレン収納容器(1)に溜まったドレンは、出口(1b)からオリフィス等(3)に入る。オリフィス等(3)とは、オリフィス又はノズルである。いずれも直径φの小さな孔をもつ部材であり、この小さな孔を通してドレンが排出される。直径φの大きさは、従来と同じく0.2~5mm程度、場合により0.5~15mm程度である。ノズルの場合、長さは、従来と同じく10~40mm程度である。素材としては、ステンレス、鉄、銅合金等の金属が使われる。
オリフィス等(3)に入ったドレンは、バッファ部(4)に排出される。バッファ部(4)内の圧力(P2)は、ドレン収納容器(1)の内部空間の圧力(P1)に比べ通常は低い。そのため、オリフィス等(3)を通ったドレンは、圧力を開放され断熱膨張(減圧)するため、沸点低下により蒸発してスチームに変わることが多い。フラッシングと言う現象であり、この現象は排出下流の圧力の不規則な変動を誘発して排出下流の正確な圧力測定を困難にすると言う「問題」を引き起こす。
従来、オリフィス等(3)の先(下流)は、多くの場合、大気に開放されて、この「問題」を無視してきた訳であるが、本発明のように下流に開閉弁(5)を設けた場合には無視できない。
【0017】
そこで、本発明では、圧力をいきなり大気圧等の最終段圧力にまでは下げず、閉鎖空間(バッファ部)を設けることでフラッシング現象による圧力の不規則変動を解消し安定した圧力(P2)を得て安定した圧力(P2)の測定による適格な制御を行えるものとした。
その上で、バッファ部(4)の先に連続的に開度変更可能な開閉弁(5)を設けた。この意味で閉鎖空間(緩衝空間)を作るところをバッファ部(4)と呼ぶのである。所定の耐圧容器でバッファ部(4)を作成することになる。通常、「P1>P2>大気圧等」の関係になる。
バッファ部(4)の大きさ及び形状の一例を言えば、それは直径20~100mm程度、長さ50~150mm程度の円筒形である。容積で言えば、0.02~1リットル程度である。バッファ部(4)は容器(1)と同様に耐圧容器で作られる。
バッファ部(4)には圧力センサ(6)が取り付けてあり、内部空間の圧力(P2)を測定する。このP2の値は、有線又は無線で制御部に送られる。
圧力センサ(6)の具体例としては、例えばダイヤフラム式、ブルドン管式などが挙げられる。
【0018】
開閉弁(5)は、開度を最小0%から最大100%まで連続的に開度変更可能なものであり、例えば、ニードルバルブ、玉形弁、バタフライ弁、ダイヤフラム弁などが使用される。開閉弁(5)は背圧弁とも呼ばれる。開閉弁(5)は、手動で開度を変えてもよいが、電動で変える開閉弁(5)をニードルバルブを例として説明する。開閉弁(5)即ちニードルバルブは駆動部(例えば正逆回転モーター)を備えており、これによってニードル棒を回すことで開度(0~100%)を開ける方向又は閉める方向に変えることができる。
駆動部は、制御部からの指令(信号)を受けて作動する。制御部の機能即ち制御方法について
図2及び
図3を引用しながら説明する。
【0019】
[制御方法1(第2発明)]
≪1≫ まず、レベルセンサ(2)が、制御部の指示を受けて容器(1)内のドレン水位(W)を測定し、その値を制御部に送信する。(制御部の指示を受けずに常時測定でもよい。)
≪2≫ 制御部は、
図2に示すように大きくLICとPICに分かれており、送信された水位(W)の値はLICにおいて第1目標値(SV1)と比較される。
≪3a≫ LICは、水位(W)の値が第1目標値(SV1)より高い場合には、第2目標値(SV2)の数値を下げる。つまり、LICは、下げ所定量(-MV1)をPICに向けて出力する。この所定量(変更分)は、開閉弁(5)の開度が0%のときに相当するバッファ部(4)内の圧力(P2)を100%とし、開度が100%のときに相当する圧力(P2)を0%としたとき、例えば0.1%~5%である(以下同じ)。なお、
図3に示すように、LICの出力(-MV1)を変更分(制御方法A)ではなく、絶対値(変更後SV2=変更前SV2+変更分)を出力する制御方法Bでもよい。この場合には、LIC側から見ると出力名でMV1(変更後出力)と称しPIC側から見ると入力名でSV2(変更後入力)と称するが、信号(数値)としては同じになる。
【0020】
≪3b≫ LICは、水位(W)の値が第1目標値(SV1)と等しい場合には、第2目標値(SV2)の数値を維持する。つまり、MV1を出力しない。或いは、現SV2を維持せよとの出力をPICに向けて出力してもよい。
≪3c≫ LICは、水位(W)の値が第1目標値(SV1)より低い場合には、第2目標値(SV2)の数値を上げる。つまり、LICは、上げ所定量(+MV1)をPICに向けて出力する。この所定量(変更分)は上記の通り例えば0.1%~5%である。なお、
図3に示すように、LICの出力(+MV1)を変更分(制御方法A)ではなく、絶対値(変更後SV2=変更前SV2+変更分)を出力する制御方法Bでもよい。この場合には、LIC側から見ると出力名でMV1(変更後出力)と称しPIC側から見ると入力名でSV2(変更後入力)と称するが、信号(数値)としては同じになる。
≪4≫ 次に圧力センサ(6)が、制御部の指示を受けてバッファ部(4)内の圧力(P2)を測定し、その値を制御部(PIC)に送信する。(制御部の指示を受けずに常時測定でもよい。)
≪5≫ 送信された圧力(P2)の値はPICにおいて第2目標値(SV2)と比較される。この場合、PICは変更前SV2を記憶しており、第2目標値(SV2)は、LICからの所定量(変更分即ち±MV1)の信号を受けて既に変更後の第2目標値(変更後SV2)となっており、これと比較される。なお、制御方法Bの場合は、PICは直に圧力(P2)が第2目標値(変更後SV2)と比較される。
【0021】
≪6a≫ PICは、圧力(P2)が第2目標値(SV2)より高い場合には、開閉弁(5)を所定量(変更分)だけ開ける方向に作動させる信号(+MV2)を駆動部に向けて出力する。所定量(変更分)は開度で言えば例えば0.1%~5%である(以下、同じ)。なお、PICの出力(+MV2)を変更分(制御方法A)ではなく、絶対値(変更後開度=変更前開度+変更分)を出力する制御方法Bでもよい。
これを受けて開閉弁(5)は最終的には開度100%まで開くことになる。
≪6b≫ PICは、圧力(P2)が第2目標値(SV2)と等しい場合には、開閉弁(5)の開度を維持する。つまり、MV2を出力しない。或いは、現開度を維持せよとのMV2を駆動部に向けて出力してもよい。
≪6c≫ PICは、圧力(P2)が第2目標値(SV2)より低い場合には、開閉弁(5)を所定量(変更分)だけ閉める方向に作動させる信号(-MV2)を駆動部に向けて出力する。所定量(変更分)は上記の通り例えば0.1%~5%である。なお、PICの出力(-MV2)を変更分(制御方法A)ではなく、絶対値(変更後開度=変更前開度+変更分)を出力する制御方法Bでもよい。
これを受けて開閉弁(5)は最終的には開度0%又はローリミット(下記)まで閉まることになる。
【0022】
≪7≫ 駆動部は、制御部からの信号〔変更分又は変更後開度(絶対値)〕を受けて開閉弁(5)を(a)開ける方向に作動させるか、又は(b)その開度を維持するか、又は(c)閉める方向に作動させる。その結果、開閉弁(5)を通るドレンの排出量は、(a)増加又は(b)増減なし又は(c)減少する。これにより、ドレンの水位(W)は、(a)下がって第1目標値(SV1)に近づき、又は(b)変わらずに第1目標値(SV1)と同等に維持され、又は(c)新たなドレンが入口(1a)から入って来ることで上がって第1目標値(SV1)に近づく。
≪8≫ 次いで、≪1≫に戻り水位(W)が測定され≪1≫~≪7≫の動作が何度も繰り返される。
この制御方法はフィードバック制御を二重(WとP2)に組み合わせた制御方法で一般にカスケード制御と呼ばれるものに相当する。トラップのドレン排出速度は、容器(1)内のドレンの溜り具合(水位W)とバッファ部内の圧力(P2)によって制御される。
【0023】
開閉弁(5)を閉めると圧力(P2)は容器(1)の内部空間の圧力(P1)に近づくべく上昇し[P1―P2]の差圧が減少してドレン排出速度は低下する。その結果、容器(1)内のドレン水位(W)は上昇する。これはドレン発生量が少ない時に、水位(W)を確保する要領であり、逆にドレン発生量が多い時は開閉弁(5)を開けてバッファ部内の圧力(P2)を下げる。これにより[P1―P2]の差圧が増加しドレン排出速度は増加する。その結果、ドレン水位(W)は低下する。
これにより、ドレンは容器(1)の最高水位Hを超えて過剰に溜まることはなく、反対に最低水位Lより下回ることはなく、ドレン水位(W)を所定の範囲内に保つことができ、そのためドレン発生量が少ない時のスチーム漏洩とドレン発生量が多い時のドレン滞留の過剰を防ぐことができる。これが本発明(第1~第3発明)の効果の一つである。
【0024】
LICとはレベル(L)指示(I)調節(C)を略称した制御系で、PICとは圧力(P)指示(I)調節(C)を略称した制御系である。
制御をLIC/PICの2段階とする理由は以下の通りである。直接に制御の最終目標であるドレン水位(W)のレベル制御(LIC)を行おうとすると、ドレン発生量は常時変動しているためドレン収納容器(1)の容量を極めて大きくしないと水位(W)の変動に制御が追いつかない。制御を2段階とすることで変動する水位(W)の値を平準化させ制御を容易にすることができる。
このような制御はスチームトラップ装置(スチームトラップ)として弁開閉式ではなく開口面積が固定されたオリフィス等を使用するトラップに有効なものである。従来の弁開閉式のトラップにおいてはドレン水位(W)の高低変化に応じて排出動作(ドレン排出/停止)を行う制御方法であり、本発明(第2~第3発明)の制御方法とは根本的に制御理論が異なる。
【0025】
[第1目標値(SV1)の決め方]
まず、ドレン収納容器(1)の実際の形状から、入口(1a)の位置より少し下の位置で最高水位(H)を決め、次に出口(1b)の位置より少し上の位置で最低水位(L)を決める。そのHとLとの距離を100%とするとき、L=0%、H=100%とし、0%~100%のどこか(両端を含む)の水位(W)を第1目標値(SV1)とする。安全理論からすれば、50%及びその近辺を第1目標値(SV1)とすることが最も好ましいが、10~90%の間のどこか(両端を含む)の水位(W)を第1目標値(SV1)に決めてもよく、より安全を見込んで20~80%の間のどこか(両端を含む)の水位(W)を第1目標値(SV1)に決めてもよく、より安全を見込んで30~70%の間のどこか(両端を含む)の水位(W)を第1目標値(SV1)に決めてもよく、更により安全を見込んで40~60%の間のどこか(両端を含む)の水位(W)を第1目標値(SV1)に決めてもよい。
【0026】
[第2目標値(SV2)の初期値の決め方]
第2目標値(SV2)はLICからの出力(MV1)によって決まる(変動する)もので、初期値について説明する。初期値は、制御を開始する時点で設定されるもので、開閉弁(5)の開度0%(全閉)~100%(全開)のどこか(両端を含む)の開度である。
通常、開度0%(全閉)又は100%(全開)を初期値とすることが好ましい。そのうち開度0%(全閉)に比べ開度100%(全開)が特に好ましい。その理由は次の通りである。開閉弁(5)には、一般にブレークポイント等と呼ばれる急激な変化を起こす開度領域があり、他の領域では、開度の変化に対する「弁を通る流量」の変化が滑らかであるところ、その領域では変化が急峻である。この急峻な変化が一般に[開⇒閉動作中]の方が[閉⇒開動作中]に比べ軽微である。また、初期に何らかのトラブルが発生したとき、初期値が開度0%(全閉)の場合には全閉なのでドレンが排出されずドレン滞留の過剰が起きる恐れがある。それに対し、初期値が開度100%(全開)の場合には、全開なのでドレンが排出されドレン滞留の過剰は回避される。従って、100%(全開)を初期値とすることが安全上特に好ましい。
なお、開度100%(全開)にしても、上流にオリフィス等(3)が存在するので、オリフィス効果によりスチーム漏洩〔何らかのトラブルでドレン収納容器(1)にドレンが溜まっていない場合に発生するスチーム漏洩〕を最小限に留められる。これも本発明の効果の一つである。
【0027】
スチームでジャケット釜などを加熱する加熱システムの途中及び/又は末端に本発明のスチームトラップ装置が取り付けられる。第2目標値(SV2)の初期値を決めて、この加熱システムの運転を始めると、第2目標値(SV2)は第1目標値を達成するためのLICにより適正な値に自動的に収束する。
つまり、SV2の初期値が第1目標値(SV1)を達成するために適正な値になっていなかった時はLICにより第2目標値(SV2)の変更(増減)指示が出され(例えば液位WがSV1より高い場合SV2を下げるよう指示が出る)、更に圧力値(P2)がSV2に近づくための制御(PIC)により開閉弁が開閉動作をするので、それらの結果、第1目標値(SV1)が達成され、その時点で第2目標値(SV2)は収束されていることになる。
言い換えれば、第1目標値(SV1)を達成しようとするLIC出力により第2目標値(SV2)が増減制御され、これに合わせて第2目標値(SV2)を達成しようとするPIC出力が増減制御される。これらのことを繰り返すことで制御開始時の第2目標値(SV2)の初期値はその時点のドレン発生量に適応した値に制御変更され収束することになる。
【0028】
通常、開閉弁(5)の開度の下限(最低開度)の初期値(時には通常制御時も)を開度0%ではなく0%より大きい値例えば5%程度(ローリミット)にする、つまり、全閉(開度0%)にしないで制御する制御方法が好ましい。この制御方法をローリミット法と呼ぶことにする。
下限を開度0%(全閉)にしたくない理由は、次の通りである。最低開度から開度を上げる動作をしようとしたとき、全閉から上げようとするとバッファ部内の圧力(P2)の急激な変化が引き起こされることがあってハンチング現象(行ったり来たりの繰り返し)が起きる恐れがある。そこで、弁(5)を少し開いた状態(例えば開度5%程度=ローリミット)から開度を上げる動作にすれば、同現象の発生を避けてスムーズな流量制御を行うことができる。5%程度とする理由は、開閉弁の動作には機械的な“遊び”があり、2~3%程度を最低とした場合は実際にはほぼ全閉のままのことがあるからである。他方、下限を5%程度より相当に大きく例えば10%程度以上とすると、制御範囲(制御比:ターンダウンと呼ばれる)が狭まり、開閉弁としての価値評価が下がる。そこでこれらを勘案して下限を5%程度(4%~9%)とする。
【0029】
ただし、何らかの原因でドレン収納容器(1)の水位(W)が下がり過ぎた(通常制御では水位制御が追いつかない)場合には、一時的にローリミット法を解除し開閉弁(5)を全閉にする制御方法とする。
通常時は開閉弁(5)の開度を50%程度とする制御方法が好ましい。何故ならば、流入するドレン量が増えてドレン収納容器(1)の水位(W)が上がり始めたとき、弁の開度を上げてドレン排出量を増やさなければならないが、最大開度100%までに余裕があった方が安全である。
【0030】
[制御方法2(第3発明)]
制御方法2は、PICが異なるだけで他は制御方法1と同じである。
PICは、制御方法1では、圧力センサ(6)で測定された圧力(P2)を用いて、P2と第2目標値(SV2)を比較する。それに対し、制御方法2では、PICは、ドレン収納容器(1)の内部空間の圧力(P1)と圧力(P2)との圧力差(ΔP=P1―P2)を用い、圧力差ΔPと第2目標値(SV2)を比較する。
圧力差ΔPが第2目標値(SV2)より高い場合には開閉弁(5)を閉める方向(制御方法1とは逆)に作動させ、圧力差(ΔP)が第2目標値(SV2)と等しい場合には開閉弁(5)を作動させずに維持し、圧力差(ΔP)が第2目標値(SV2)より低い場合には開閉弁(5)を開ける方向(制御方法1とは逆)に作動させる。方向が逆だけで、具体的な作動は制御方法1の説明で説明した通りある。
【0031】
[ドレンを適切に排出できるドレン排出量の範囲を広くする]
オリフィス等が1個では、ドレンを適切に排出できるドレン排出量の範囲が狭い。そこで、広くするため、本発明(第1発明)においても、オリフィス等(3)を並列に複数設け、その先(下流)にそれぞれバッファ部(4)、開閉弁(5)、圧力センサ(6)、駆動部等を設け、各センサ(6)で測定された圧力P2を制御部に送る構成にしても良い。この場合、制御部はより複雑な制御をすることになる。
[異物除去装置]
本発明のスチームトラップ装置は、従来もそうであるが、オリフィス等を備えるため、スチームに含まれるゴミやスケール等の異物が孔の周囲に付着又は堆積して孔径φが小さくなったり塞がれて、ドレンの流れが悪くなったり、極端な場合、孔詰まりが発生しドレンが流れなくなることがある。
そこで、本発明(第1発明)の実施形態の一例にかかるスチームトラップ装置(
図1)に異物除去装置を付加した例を
図5を引用して説明する。
図5では、ドレン収納容器(1)の底部に新たな配管(7)が取り付けられており、その途中に開閉弁(8)が取り付けられ、その先(下流)は外(大気)に開放されている。開閉弁(8)はオン(開度100%)オフ(開度0%)の2者択一の弁でも良いし、開度を0%から100%まで連続的又は段階的に可変可能な開閉弁でも良い。他方、ドレン収納容器(1)の上流には、開閉弁(8)と同様な開閉弁(9)が設けられており、その更に上流には、スチーム配管から分岐された配管(10)が伸びてバッファ部(4)に通じている。そして、その配管(10)の途中には、開閉弁(8)と同様な開閉弁(11)が設けられている。
【0032】
オリフィス等(3)に異物が付着又は堆積していない場合、開閉弁(5)の開度を大きくすれば、ドレンの水位(W)は時間経過と共に下がってくるはずであるが、異物が付着又は堆積してくると、オリフィス等(3)の孔が狭くなり、水位(W)が下がらなくなる。そこで、開閉弁(5)の開度とドレンの水位(W)との関係を制御部において演算し、その演算結果を時間毎にモニターし、演算結果が所定値より変化した場合には、異物が付着又は堆積したと判断し、通常運転モードを異物除去モードに切り替える。
異物除去モードに入ると、まず、開閉弁(9)を閉じて、他方、開閉弁(11)及び開閉弁(8)を開ける。そうすると、ドレン収納容器(1)内のドレンは自重で配管(7)を通って開閉弁(8)に流れる。同時に、バッファ部(4)内の圧力P2は、ボイラーからのスチーム圧に相当する圧力P1へと高まる。そのため、ボイラーからのスチームはバッファ部(4)に流れ込み、オリフィス等(3)を通って、ドレン収納容器(1)の底部に入り、更に配管(7)を通って開閉弁(8)を通って外に排出される。圧力P1は、例えば100~2000kPaGと非常に高圧であるから、オリフィス等(3)を通るスチームは非常な高速であり、もし、そこに異物があれば、剥ぎ取られて吹き飛ばされ、異物はドレン収納容器(1)内に落ち配管(7)を通って外に排出され、こうして孔径φを小さくしたり塞いでいた異物は除去される。
所定時間、異物除去モードを実施したら、通常運転モードに戻す。まず、開閉弁(9)を開け、他方、開閉弁(11)及び開閉弁(8)を閉じる。これで通常運転モードに入る。
【0033】
[第4発明を実施するための形態]
本形態の一例を
図6を引用しながら説明する。あくまで、一例である。nは3以上が好ましく、ここではn=4とする。
本形態のトラップ装置は、ドレンを溜めるドレン収納容器(1)、当該収納容器内のドレンの水位(W)を測定するレベルセンサ(2)、前記出口の先に設けられた4個に分岐した分岐管(12)、当該分岐管の先にそれぞれ設けられた合計4個のオリフィス等(3)並びに当該オリフィス等(3)の手前又は先にそれぞれ設けられた合計4個の開閉弁(13)から構成されている。
開閉弁(13)は、ここでは電磁弁であり、駆動部(14)はソレノイドである。制御部からの信号を受けてソレノイドが作用し弁をオン(開度100%)オフ(開度0%)する。場合により、開度を0%から100%まで連続的又は段階的に可変可能な開閉弁でも良い。この場合には、制御部はより細かな信号を出す必要がある。
前記レベルセンサ(2)で測定された水位(W)の高さに応じて、高い場合には、前記4個のうち全部又は適正な数の開閉弁(13)を開け、低い場合は前記4個のうち全部又は適正な数の開閉弁(13)を閉め、これにより水位(W)を所定値に維持する。ドレン収納容器(1)に流入するドレン量が多くなればなるほど水位(W)は上昇するので、ドレン排出能力を高め、即ち、開ける開閉弁(13)の数を増やして上昇を抑え水位(W)を所定値(
図6ではM位)に維持できる状態に見合う数が「適正な数」である。逆にドレン収納容器(1)に流入するドレン量が少なくなればなるほど水位(W)は低下するので、ドレン排出能力を低め、即ち、開ける開閉弁(13)の数を減らして低下を抑え水位(W)を所定値(
図6ではM位)に維持できる状態に見合う数が「適正な数」である。
【0034】
図6において、4個の開閉弁(13)を上から第1、第2、第3、第4と名付ける。この場合、開閉弁(13)の上流にある4個のオリフィス等(3)の孔径φは同一とする。
ドレン収納容器(1)に流入するドレンの量が一定に推移している場合、第1及び第2の開閉弁(13)を開けた状態、残り第3及び第4の2個の開閉弁(13)を閉めた状態で、水位(W)がMで維持されているとする。
この状態で時間が過ぎ流入するドレンの量が増え、水位(W)がMから上位のHレベルになったことが測定された場合には、この測定信号を受け、制御部は開ける弁(13)を1個増やして3個とするべく、第3の開閉弁(13)を開けるよう信号を出力する。それでも水位(W)がHからより上位のHHレベルになったことが測定された場合には、この測定信号を受け、制御部は開ける弁(13)をさらに1個増やして4個とするべく、第4の開閉弁(13)を開けるよう信号を出力する。これにより、水位(W)はHHから下がってHからMに至る。
逆に、時間が過ぎドレン収納容器(1)に流入するドレンの量が減り、水位(W)がMから下位のLレベルになったことが測定された場合には、この測定信号を受け、制御部は開ける弁(13)を1個減らして1個とするべく、第2の開閉弁(13)を閉めるよう信号を出力する。それでも水位(W)がLからより下位のLLレベルになったことが測定された場合には、この測定信号を受け、制御部は開ける弁(13)をさらに1個減らして0個とするべく、第1の開閉弁(13)を閉めるよう号を出力する。これにより、水位(W)は上がってLからMに至る。
【0035】
ここまで4個のオリフィス等(3)の孔径φが4個とも同一である場合を説明した。
しかし、第1から第4に向かって連続的又は段階的に孔径φを大きくしても良い。例えば、オリフィス等(3)をドレン及び/又はスチームが通過又は透過する時間当たりの最大容量(ドレン排出能力)を1容量とするとき、下記[表1]の通り、オリフィス等の第1を1容量となる孔径φ、第2を4容量となる孔径φ、第3を16容量となる孔径φ、第4を64容量となる孔径φとする。合計で85容量となる。例えば、時間当たりの1容量を50kg/hr.とすると、合計で50×85=4250kg/hr.となる。
【表1】
【0036】
上記の[表1]は、第1~第4の4個のオリフィス等の開け(○)閉め(×)の選択の仕方(モード)を全部挙げたものである。4個なので理論上のモードは16通りある。例えば、モード1では全部のオリフィス等を閉めた(×)状態であり合計容量は0である。モード8では第1~第3の3個のオリフィス等を開けた(○)状態、第4のオリフィス等を閉めた(×)状態であり合計容量は21となる。
全16モードを使うのを止めて、例えば、モードNo.1、2、3、5、9、16の6つのモードだけを使う制御でもよい。そうすれば、制御部の設計及び製作が容易になる。
一般にオリフィス等は、余りドレン量が少ないとスチーム漏洩が多くなるので、最大容量の4分の1(0.25)から4分の4(1.00)までの範囲で使用することが好ましいと言われている。この範囲を上記具体例に当てはめると、50×0.25=12.5であるから、上記具体例は12.5~4250kg/hr.の範囲で「ドレン及び/又はスチーム」の量が変動しても、スチーム漏洩を起こさずに、かつドレン滞留の過剰を起こさずに、トラップ装置の運転が可能となる計算である。
【0037】
[ストレーナ]
上記[異物除去装置]の項で説明した通り、スチーム及び/又はドレンにはゴミやボイラーに由来するスケール(罐石、湯垢)等の異物が含まれていることがあり、これがそのままオリフィス等の孔を詰まらせることがある。そこで、オリフィス等の前(上流)にストレーナ(フィルター、篩(ふるい)とも呼ばれる)を設けることが好ましい。具体的には、
図1では、入口(1a)、出口(1b)にストレーナを設けることが好ましい。
図6でもドレン収納容器(1)に流入するドレンの入口、出口、分岐管(12)の前(上流)、各オリフィス等(3)の前(上流)などにストレーナを設けることが好ましい。
【符号の説明】
1・・・・・ドレン収納容器
2・・・・・レベルセンサ
3・・・・・オリフィス又はノズル(オリフィス等)
4・・・・・バッファ部
5・・・・・連続的に開度変更可能な開閉弁
6・・・・・圧力センサ
7・・・・・配管
8・・・・・開閉弁
9・・・・・開閉弁
10・・・・配管
11・・・・開閉弁
12・・・・分岐管
13・・・・開閉弁
14・・・・駆動部