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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003295
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】水中油型害虫忌避組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20241226BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241226BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20241226BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20241226BHJP
   A01N 55/10 20060101ALI20241226BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20241226BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20241226BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20241226BHJP
   A01N 27/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K8/06
A61Q17/00
A61K8/891
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/33
A61K8/34
A61K8/25
A61K8/894
A61K8/81
A61K8/73
A01P17/00
A01N25/04 101
A01N55/10 500
A01N59/00 Z
A01N59/00 B
A01N61/00 D
A01N37/02
A01N27/00
A01N61/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034488
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023101429
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーデマン ビアンカ モニカ
【テーマコード(参考)】
4C083
4H011
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB242
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC171
4C083AC351
4C083AC352
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD281
4C083AD282
4C083BB23
4C083CC20
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
4H011AC06
4H011BB01
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB16
4H011BB18
4H011BB20
4H011DA16
4H011DF03
4H011DG01
4H011DH02
4H011DH07
(57)【要約】
【課題】皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れ、さらには、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れる、水中油型の害虫忌避組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A)~(E)を含有する、水中油型の害虫忌避組成物。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(E)を含有する、水中油型の害虫忌避組成物。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
【請求項2】
成分(A)がシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油から選択される1種以上である、請求項1に記載の水中油型の害虫忌避組成物。
【請求項3】
成分(B)と成分(A)との質量比[(B)/(A)]が0.02以上0.7以下である、請求項1又は2に記載の水中油型の害虫忌避組成物。
【請求項4】
成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]が0.005以上0.1以下である、請求項1又は2に記載の水中油型の害虫忌避組成物。
【請求項5】
成分(C)と成分(B)との質量比[(C)/(B)]が0.01以上0.3以下である、請求項1又は2に記載の水中油型の害虫忌避組成物。
【請求項6】
水中油型の害虫忌避組成物の製造方法であって、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(E)を含む混合物と、下記成分(A)及び下記成分(D)を含む混合物とを混合する工程を有する、水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上
(D)増粘剤
(E)水
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。また、水中油型の害虫忌避組成物中、成分(A)の含有量は13質量%以上50質量%以下であり、成分(B)の含有量は0.5質量%以上35質量%以下であり、成分(C)の含有量は0.1質量%以上3質量%以下であり、成分(D)の含有量は0.05質量%以上3質量%以下であり、成分(E)の含有量は30質量%以上86.35質量%以下である。
【請求項7】
下記成分(A)~(E)を含有する水中油型の害虫忌避組成物を人の皮膚表面に塗布する、害虫の忌避方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
【請求項8】
下記成分(A)~(E)を含有する水中油型の害虫忌避組成物を害虫の脚に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐ、害虫の忌避方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型の害虫忌避組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫、例えば、蚊、ハエ等の飛翔害虫は、人等の動物に病原体を媒介して感染症を引き起こしたり、皮膚炎を引き起こしたりする要因となっている。特に、一部の蚊は、デング熱、ジカ熱、黄熱病、脳炎、マラリア等の病原体を媒介することから、衛生学的に非常に有害な昆虫である。
このような飛翔害虫から身を守るために、例えば、特許文献1には、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れる水中油型の害虫忌避組成物を提供することを目的として、(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下、(B)体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下、及び(C)水:30質量%以上86.5質量%以下を含有する、水中油型の害虫忌避組成物及び水中油型の害虫停留抑制組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-109075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の水中油型の害虫忌避組成物等は、皮膚に塗布した際の感触が良好であり、長期保存安定性も良好である。しかし、本発明者らの検討により、忌避持続効果については、さらに向上させる余地があることがわかった。
本発明は、皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れ、さらには、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れる、水中油型の害虫忌避組成物、水中油型の害虫忌避組成物の製造方法、及び害虫の忌避方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の不揮発性の液状油性成分、シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、特定の体積中位粒径を有する親水性無機物粒子、25℃で液体状である特定の変性シリコーン、増粘剤及び水をそれぞれ所定量含有する水中油型の害虫忌避組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]~[4]を提供する。
[1]下記成分(A)~(E)を含有する、水中油型の害虫忌避組成物。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
[2]水中油型の害虫忌避組成物の製造方法であって、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(E)を含む混合物と、下記成分(A)及び下記成分(D)を含む混合物とを混合する工程を有する、水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上
(D)増粘剤
(E)水
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。また、水中油型の害虫忌避組成物中、成分(A)の含有量は13質量%以上50質量%以下であり、成分(B)の含有量は0.5質量%以上35質量%以下であり、成分(C)の含有量は0.1質量%以上3質量%以下であり、成分(D)の含有量は0.05質量%以上3質量%以下であり、成分(E)の含有量は30質量%以上86.35質量%以下である。
[3]下記成分(A)~(E)を含有する水中油型の害虫忌避組成物を人の皮膚表面に塗布する、害虫の忌避方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
[4]下記成分(A)~(E)を含有する水中油型の害虫忌避組成物を害虫の脚に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐ、害虫の忌避方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れ、さらには、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れる水中油型の害虫忌避組成物、水中油型の害虫忌避組成物の製造方法、及び害虫の忌避方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、数値範囲の上限および下限は任意に組み合わせることができる。
【0008】
[害虫忌避組成物]
本発明の害虫忌避組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう)は、下記成分(A)~(E)を含有する水中油型の組成物である。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
【0009】
本発明の組成物は特定量の成分(A)~(E)を含有し、かつ皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れ、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れる水中油型の組成物である。
【0010】
本発明において「害虫に対する忌避効果」には、害虫が対象物へ接触しても停留せずに直ぐに離れていくこと(停留抑制効果)が含まれ、害虫を対象物へ寄せ付けないこと及び害虫を駆除することの1つ以上がさらに含まれてもよい。
本発明の組成物は、当該組成物が塗布又は付着された対象物に蚊等の害虫が降着しても、害虫がその場に停留せず、直ぐに立ち去ることにより、害虫を忌避する効果を少なくとも奏するものである。具体的には、蚊等の害虫が人などの動物の皮膚に降着した後、刺針を差し込むほどの時間、具体的には1秒間以上、皮膚表面の所定領域内に停留させないという停留抑制効果を奏する。かかる効果は、肌荒れ等の副作用がなく安全である。
本発明において「害虫に対する忌避持続効果」とは、本発明の組成物を対象物に塗布後、時間が経過しても上記忌避効果が持続することを意味する。なお、以降の記載において、本発明における特に飛翔害虫に対する忌避持続効果を単に「忌避持続効果」と表記する。
【0011】
本発明の組成物は、成分(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分、成分(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子、成分(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上、成分(D)増粘剤、及び成分(E)水をそれぞれ特定の量含有する。
本発明の組成物は、皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れ、さらには、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
蚊等の飛翔害虫は、脚に濡れが生じた際に降着面から生じる引力を避けるため、脚が濡れる表面への停留を避ける性質を有する。成分(A)が塗布又は付着された皮膚表面に飛翔害虫が降着すると、脚に濡れが生じ、その際、降着面から生じる引力を避け、降着地点に停留せずに飛び去ると考えられる。また、組成物中、成分(C)の一部が成分(B)に吸着していることにより、成分(B)の皮膚への感触の良好さを向上させ、かつ、成分(C)の一部が成分(A)と混合していることにより、成分(A)にチキソトロピー性が付与され、成分(A)が重力では垂れず、飛翔害虫の降着による外力が働いたときに脚に濡れ広がるようになる。その結果、組成物を皮膚表面に塗布すると、組成物が皮膚表面に均一に塗布された状態が長時間維持されて、感触が良好で、忌避持続効果が向上すると考えられる。さらに、特定量の成分(D)を含有することなどが寄与して、本発明の組成物は長期保存安定性にも優れると考えられる。
なお、本発明における降着とは、蚊等の飛翔害虫が対象物に1秒未満の時間接触することを指す。また、本発明における停留とは、蚊等の飛翔害虫が対象物に1秒以上の時間接触しつづけることを指す。
【0012】
<成分(A):不揮発性液状油性成分>
本発明の組成物が含有する成分(A)は、(a)シリコーン油、(b)エステル油、(c)エーテル油、(d)炭化水素油、(e)脂肪族アルコール、及び(f)多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分である。
ただし、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
【0013】
成分(A)は、皮膚に施用し易くし、かつ、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは25℃で液状であり、より好ましくは20℃で液状であり、さらに好ましくは15℃で液状であり、さらに好ましくは10℃で液状である。
なお、液状油性成分の「液状」とは、B形回転粘度計による23℃における粘度が、120000mPa・s以下であることをいう。
成分(A)は、忌避持続効果を向上させる観点から、難水溶性又は非水溶性の成分であることが好ましく、具体的には、20℃における水100gに対する溶解量が、好ましくは1g以下、より好ましくは0.5g以下、さらに好ましくは0.1g以下であり、そして、よりさらに好ましくは実質0gである。
【0014】
本発明に用いる成分(A)の液状油性成分は、忌避持続効果を向上させる観点から、不揮発性の液状油性成分を用いる。ここで、本発明における不揮発性の液状油性成分とは、1気圧下、25℃、60分乾燥後の揮発率が、50%以下であるものをいい、好ましくは、1気圧下、25℃、120分乾燥後の揮発率が、50%以下であるものをいう。揮発率の評価は、ドイツ試験規格DIN53249に従って測定され、具体的には、下記の1~4の手順で行われる。
1.直径150mmの丸型ろ紙の重量(P(g))を測定する。
2.ピペットを用いて成分(A)0.3gのサンプルを丸型ろ紙に滴下し、直後にろ紙の重量(W(g))を測定する。
3.通気の無い中、25℃、5分間隔で、約0.001gの正確さによる重量測定で、ろ紙の重量を測定する。2を測定した後、60分経過後に測定したろ紙の重量をW60(g)とする。
4.計算式{((W-P)-(W60-P))/(W-P)}×100で導かれる値を揮発率(%)とする。
揮発率が低いほど、皮膚に塗布した際に、液状油性成分が長時間滞留するため、忌避持続効果が高いものとなる。
2種以上の液状油性成分を用いる場合、液状油性成分の揮発率とは、2種以上の液状油性成分の混合物としての揮発率を意味する。したがって当該混合物の揮発率が前記範囲となる限り、1気圧下、25℃で60分乾燥後の揮発率が50%超の液状油性成分を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
成分(A)の25℃における表面張力は、入手性の観点から、好ましくは15mN/m以上、より好ましくは17mN/m以上であり、そして、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは40mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下、さらに好ましくは28mN/m以下、よりさらに好ましくは25mN/m以下、よりさらに好ましくは23mN/m以下、よりさらに好ましくは21mN/m以下である。なお、表面張力の異なる2種以上の液状油性成分を用いる場合は、これら液状油性成分の混合物としての表面張力を意味する。
成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度は、1mPa・s以上400mPa・s以下であり、より好ましくは300mPa・s以下、さらに好ましくは210mPa・s以下、よりさらに好ましくは100mPa・s以下、よりさらに好ましくは60mPa・s以下、よりさらに好ましくは40mPa・s以下、よりさらに好ましくは30mPa・s以下である。なお、粘度の異なる2種以上の液状油性成分を用いる場合は、これら液状油性成分の混合物としての粘度を意味する。
成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度は、揮発性を抑え、忌避持続効果を向上させる観点から上記下限値以上であることが好ましく、長期保存安定性を確保する観点から上記上限値以下であることが好ましい。
なお、成分(A)の表面張力、B形回転粘度計による23℃における粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0016】
(a)シリコーン油
シリコーン油としては、忌避持続効果を向上させる観点から、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジメチコノール(末端にヒドロキシ基を有するジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンから選択される1種以上が好ましい。
変性シリコーンとしては、アミノ変性シリコーン(アミノ基を有するジメチルポリシロキサン)、アミノ誘導体シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0017】
シリコーン油の中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンから選択される1種以上が好ましく、ジメチルポリシロキサン、及びジメチコノールから選択される1種以上がより好ましく、ジメチルポリシロキサンがさらに好ましい。
【0018】
ジメチルポリシロキサンとしては、直鎖状ジメチルポリシロキサン及び環状ジメチルポリシロキサンから選択される1種以上が挙げられる。これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点から、直鎖状ジメチルポリシロキサンがより好ましい。
直鎖状ジメチルポリシロキサンの市販品例としては、信越化学工業(株)のKF-96シリーズ、東レ・ダウコーニング(株)のSH200Cシリーズ、「2-1184 Fluid」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社の「Silsoft DML」、「Element14 PDMS 5-JC」、「Element14 PDMS 10-JC」、「Element14 PDMS 20-JC」等が挙げられる。
【0019】
(b)エステル油
エステル油としては、忌避持続効果を向上させる観点から、下記一般式(1)~(3)のいずれかで表されるエステル油、及び下記一般式(4)で表されるジアルキルカーボネート化合物が好ましい。
【0020】
1-COO-R2 (1)
一般式(1)において、R1は、水酸基が置換していてもよく、炭素数7以上23以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族炭化水素基を示し、R2は炭素数1以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。
1がアルキル基の場合、忌避持続効果を向上させる観点から、炭素数は好ましくは7以上、より好ましくは9以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは21以下、より好ましくは17以下である。また、R1が芳香族炭化水素基の場合、忌避持続効果を向上させる観点から、炭素数は好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
2は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは炭素数が20以下、より好ましくは18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。また、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、R1又はR2の少なくとも一方が、分岐アルキル基であることが好ましい。
【0021】
一般式(1)で表されるエステル油としては、2-エチルヘキサン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、オクタン酸イソデシル、オクタン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸セテアリル、プロピルへプタン酸オクチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸イソブチル、エルカ酸オレイル、安息香酸アルキル(アルキルの炭素数12~15)、及びナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル等から選択される1種以上が挙げられる。
【0022】
(R3O)-CH2CH(OR4)-CH2(OR5) (2)
一般式(2)において、R3、R4及びR5は、各々独立に、水素原子、又は下記一般式(2-1)で示される基であって、全てが水素原子であることはない。
-CO-R6 (2-1)
(式中、R6は、水酸基が置換していてもよい炭素数7以上23以下、好ましくは17以下のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
一般式(2)で表されるエステル油としては、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリルから選択される1種以上が挙げられる。これらホホバ油、オリーブ油、ひまわり油、大豆油、落花生油、菜種油、アーモンド油、パーム油、ココヤシ油、ひまし油、小麦胚芽油、ぶどう種油、あざみ油、宵待草油、マカデミアナッツ油、とうもろこし胚芽油、及びアボカド油等の植物由来のエステル油であっても良い。
【0023】
7O-(AO)m-COR8 (3)
一般式(3)において、R7は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、R8は炭素数1以上23以下のアルキル基又はアルケニル基を示す。AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、mは1以上50以下の平均付加モル数を表す。
7は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは炭素数が6以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下の芳香族炭化水素基、さらに好ましくはベンジル基である。
8は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは炭素数が7以上、より好ましくは11以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは21以下、より好ましくは15以下であるアルキル基である。
AO基は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくはプロピレンオキシ基であり、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、mは好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下である。
一般式(3)で表されるエステル油としては、ベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とミリスチン酸のエステル(クローダ社「クロダモルSTS」)、ベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体と2-エチルヘキサン酸のエステル(クローダ社「クロダモルSFX」)から選択される1種以上が挙げられる。
【0024】
9-O-(CH2CH2O)v-CO-(OCH2CH2)w-OR10 (4)
一般式(4)において、R9及びR10は、各々独立に、炭素数6以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、v及びwは、各々独立に、0又は1以上50以下の平均付加モル数を示す。
9及びR10は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは炭素数8以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは18以下、より好ましくは12以下のアルキル基である。
v及びwは、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは0又は1以上5以下の数であり、より好ましくは0である。
一般式(4)で表されるジアルキルカーボネート化合物としては、ジオクチルカーボネート(コグニス社「セチオールCC」)等が挙げられる。
【0025】
上記以外のエステル油としては、多価カルボン酸とアルコールとのエステルや、グリセリンを除く多価アルコールと脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
その具体例としては、ダイマー酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、ジカプリン酸プロパンジオール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等から選択される1種以上が挙げられる。これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点から、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステルが好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール及びジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールから選択される1種以上がより好ましい。
上記の(b)エステル油の中では、一般式(1)で表されるエステル油、及びネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステルから選択される1種以上が好ましい。
【0026】
(c)エーテル油
エーテル油としては、忌避持続効果を向上させる観点から、下記一般式(5)で表されるジアルキルエーテル化合物、又は下記一般式(6)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物が好ましい。
【0027】
11-O-R12 (5)
一般式(5)において、R11及びR12は、各々独立に、炭素数6以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族炭化水素基を示す。
11及びR12は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくはアルキル基であり、その炭素数は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは8以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下である。
一般式(5)で表されるジアルキルエーテル化合物としては、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル(コグニス社「セチオールOE」)、ジカプリリルエーテル、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテル(花王(株)「ASE-166K」)等が挙げられる。
【0028】
13-O-(PO)r(EO)s-H (6)
一般式(6)において、R13は炭素数6以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示す。rは0.1以上15以下の平均付加モル数を示し、sは0以上10以下の平均付加モル数を示す。sが0でない場合、PO及びEOの付加形式は、ランダムであってもブロックであってもよい。
13の炭素数は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは8以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは12以下である。
平均付加モル数rは、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは13以下、より好ましくは10以下であり、平均付加モル数sは、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0である。
一般式(6)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物としては、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキシ基の平均付加モル数rが3以上10以下である、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル、及びポリオキシプロピレンラウリルエーテルから選択される1種以上が好ましい。
上記の(c)エーテル油の中では、忌避持続効果を向上させる観点から一般式(5)で表されるエーテル油が好ましい。
【0029】
(d)炭化水素油
炭化水素油としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、イソヘキサデカン、イソエイコサン、水添ポリイソブテン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、及びシクロパラフィン等が挙げられる。
これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、流動パラフィン、流動イソパラフィン、及びスクワランから選択される1種以上が好ましい。
【0030】
(e)脂肪族アルコール
脂肪族アルコールとしては、1価の鎖状又は環状脂肪族アルコールが挙げられ、忌避持続効果を向上させる観点から、1価の鎖状脂肪族アルコールが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは14以上、より好ましくは18以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは28以下、より好ましくは24以下、さらに好ましくは22以下である。
前記脂肪族アルコールは、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよく、飽和及び不飽和のいずれであってもよいが、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、分岐鎖の脂肪族飽和アルコールが好ましい。
直鎖脂肪族アルコールとしてはオレイルアルコール等が挙げられ、分岐鎖脂肪族飽和アルコールとしては、ブチルオクタノール、ブチルデカノール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、分岐鎖脂肪族飽和アルコールが好ましく、ヘキシルデカノール、及びオクチルドデカノールから選択される1種以上が好ましい。
【0031】
(f)多価アルコール
多価アルコールとしては、炭素数2以上の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、炭素数4以上の糖アルコール等が挙げられ、飽和及び不飽和のいずれであってもよいが、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、炭素数2以上10以下の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、及び炭素数4以上10以下の糖アルコールから選択される1種以上が好ましい。
多価アルコールのうち、炭素数2以上の脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール等の2価アルコール等が挙げられる。
また、前記糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、マンニトール等が挙げられる。
【0032】
前記の液状油性成分の中では、忌避持続効果を向上させる観点から、(a)シリコーン油、(b)エステル油、(c)エーテル油、及び(d)炭化水素油から選択される1種以上が好ましく、(a)シリコーン油、(b)エステル油、及び(d)炭化水素油から選択される1種以上がより好ましく、(a)シリコーン油及び(b)エステル油から選択される1種以上がさらに好ましく、(a)シリコーン油がよりさらに好ましい。(a)シリコーン油のうち、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンから選択される1種以上であり、より好ましくはジメチルポリシロキサン及びジメチコノールから選択される1種以上であり、さらに好ましくはジメチルポリシロキサンであり、よりさらに好ましくは直鎖状ジメチルポリシロキサンである。
【0033】
(成分(A)の含有量)
本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、忌避持続効果を向上させる観点から、13質量%以上、好ましくは18質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。また、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点、及び組成物の長期保存安定性を確保する観点から、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、13~50質量%、好ましくは18~40質量%、より好ましくは25~35質量%である。
【0034】
<成分(B):親水性無機物粒子>
本発明の組成物は、成分(B)として、シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子を含有する。本発明の組成物は、成分(B)を含有することで、成分(A)による忌避持続効果が向上し、かつ、組成物を皮膚に塗布した際に感触の良いものとなる。
【0035】
本明細書において「親水性無機物粒子」とは、23℃における粒子表面のぬれ張力が70mN/m以上である無機物粒子を意味する。
成分(B)の粒子が特定の粒径を有する親水性無機物粒子であることで、忌避持続効果が向上するとともに、皮膚に塗布した際に感触の良い組成物が得られる。本発明の組成物に用いる成分(B)としては、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、23℃におけるぬれ張力は、好ましくは70mN/m以上、より好ましくは73以上mN/m以上である。なお、上限は例えば100mN/m以下とすることができ、95mN/m以下であってもよい。粒子表面のぬれ張力は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0036】
成分(B)は、シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含む。
ケイ酸塩鉱物粒子は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、タルク粒子、マイカ粒子、セリサイト粒子、スメクタイト粒子、モンモリロナイト粒子、ベントナイト粒子及びカオリン粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、タルク粒子及びマイカ粒子から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、成分(B)は、シリカ粒子、タルク粒子及びマイカ粒子から選択される1種以上の粒子を含むことが好ましく、シリカ粒子を含むことがより好ましく、多孔質シリカ粒子を含むことがさらに好ましい。
【0037】
成分(B)の形状としては、例えば、球状、板状、扁平状、薄片状、不定形状等が挙げられる。これらの中でも、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、球状又は扁平状であることがより好ましい。
より具体的には、成分(B)がシリカ粒子である場合は球状であることがより好ましく、成分(B)がケイ酸塩鉱物粒子である場合は扁平状であることがより好ましい。
【0038】
成分(B)の体積中位粒径(D50)は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、そして、40μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、よりさらに好ましくは12μm以下である。
【0039】
(成分(B)の含有量)
また、本発明の組成物中の成分(B)の含有量は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点、及び長期保存安定性を確保する観点から、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。また、忌避持続効果を向上させる観点から、35質量%以下、好ましくは27質量%以下、より好ましくは16質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(B)の含有量は、0.5~35質量%、好ましくは1~27質量%、より好ましくは2~16質量%、さらに好ましくは4~8質量%である。
また、成分(B)中のシリカ粒子及びケイ酸塩鉱物粒子の合計含有量は、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、そして、100質量%以下、好ましくは100質量%である。
【0040】
<成分(C):変性シリコーン>
本発明の組成物は、成分(C)として、25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上の変性シリコーンを含有する。「25℃で液体状」とは、1気圧下、25℃の環境下、バルク状態において、流動性を有している状態をいう。具体的には、「25℃で液体状」とは、JIS Z8803:v2011「液体の粘度測定方法」に基づき、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定される粘度が、120000mPa・s以下であることをいう。
本発明の組成物中、成分(C)の一部は成分(B)に水素結合等を介して吸着して、成分(B)の一部又は全部を被覆することで、成分(A)による忌避持続効果が向上し、かつ、組成物を皮膚に塗布した際に感触の良いものとなる。忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、本発明の組成物が含有する成分(C)中、成分(B)に吸着する成分(C)の量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0041】
ポリエーテル変性シリコーンは、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端の炭化水素基がポリエーテル基で置換された構造を有するものである。
ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(トリメチレンオキシ基又はプロパン-1,2-ジイルオキシ基;PO)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基が好適であり、より好ましくはポリエチレンオキシ基である。ポリエーテル変性シリコーンとしては、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
【0042】
ポリエーテル変性シリコーンのHLB(親水性親油性バランス)は、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上であり、そして、好ましくは20.0以下、より好ましくは18.0以下、さらに好ましくは16.0以下、よりさらに好ましくは15.5以下、よりさらに好ましくは15.0以下である。
ここで、HLB値は、ポリエーテル変性シリコーンの水及び油への親和性を示す値であり、グリフィン法により次式から求めることができる。
HLB=20×[(ポリエーテル変性シリコーン中に含まれる親水基の分子量の総和)/(ポリエーテル変性シリコーンの分子量)]
上記親水基としては、ヒドロキシ基、エチレンオキシ基等が挙げられる。
【0043】
ポリエーテル変性シリコーンの25℃における粘度は、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは75mPa・s以上、さらに好ましくは100mPa・s以上であり、そして、120000以下であってもよく、10000以下であってもよく、4500mPa・s以下であってもよく、4000mPa・s以下であってもよく、3500mPa・s以下であってもよい。上記粘度は、JIS Z8803:2011「液体の粘度測定方法」に基づき、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定できる。
【0044】
ポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、PEG-3ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、PEG/PPG-30/10ジメチコン、ジメチルシリコーンユニットとポリエーテルユニットが交互に共重合した直鎖状のポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンの市販品例としては、例えば、信越化学工業株式会社のKFシリーズ(例えば、KF-6004、KF-6011、KF-6012、KF-6013、KF-6015、KF-6016、KF-6017、KF-6028、KF-6038、KF-6043、KF-6048)、ダウ・ケミカル日本株式会社製のDOWSILシリーズ(BY25-337、BY25-339、SH3775M、FZ-2203、ES-5300 Formulation Aid)等が挙げられる。
【0045】
ポリグリセリン変性シリコーンは、1価のポリグリセリル基を構造内に有するシリコーンをいい、例えば、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。ここで、本明細書において、ポリグリセリン変性シリコーンからは分岐型ポリグリセロール変性シリコーンは除かれる。
ポリグリセリン変性シリコーンの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKFシリーズ(例えば、KF-6100、KF-6104、KF-6106、KF-6105)等が挙げられる。
【0046】
ポリグリセリン変性シリコーンの25℃における粘度は、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1,000mPa・s以上、さらに好ましくは2,000mPa・s以上、よりさらに好ましくは3,000mPa・s以上であり、そして、好ましくは20,000mPa・s以下、より好ましくは10,000mPa・s以下、さらに好ましくは5,000mPa・s以下である。上記粘度は、JIS Z8803:2011「液体の粘度測定方法」に基づき、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定できる。
【0047】
分岐型ポリグリセロール変性シリコーンとしては、例えば、下記式(1)で表される、ジメチルポリシロキサンの両末端にオキシフェニレン基を含有する連結基を介して分岐型ポリグリセロール鎖が結合した構造を有する化合物が挙げられる。
【0048】
【化1】

(式(1)中、R12はそれぞれ独立に分岐型ポリグリセロール鎖を示し、mは0以上10000以下の整数を示す。)
【0049】
式(1)中、フェニレン基部分における酸素原子とトリメチレン基(-C-)の結合様式は特に限定されず、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。mは0以上10,000以下の整数を示し、好ましくは1以上300以下である。R12は分岐型ポリグリセロール鎖を示し、下記構造式(2)~(5)で示されるグリセロール単位から構成され、構造式(2)で示される分岐構造を有するグリセロール単位を少なくとも1つ有し、末端は構造式(5)で示されるグリセロール単位である。また分岐型ポリグリセロール鎖におけるグリセロール単位の平均結合総数は3以上200以下であり、好ましくは3以上30以下である。
【0050】
【化2】
【0051】
分岐型ポリグリセロール変性シリコーンの25℃における粘度は、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは10,000mPa・s以上、より好ましくは15,000mPa・s以上であり、そして、好ましくは500,000mPa・s以下、より好ましくは300,000mPa・s以下、さらに好ましくは150,000mPa・s以下である。上記粘度は、JIS Z8803:2011「液体の粘度測定方法」に基づき、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定できる。
【0052】
式(1)で表される分岐型ポリグリセロール変性シリコーンは、例えば、両末端にヒドロキシ基で置換されたフェニル基を有する変性シリコーンに、酸性又は塩基性触媒の存在下、2,3-エポキシ-1-プロパノールを添加してグラフト重合させて製造するという、特開2004-339244号公報に記載の方法、その他の一般に知られた方法により製造することができる。
また、分岐型ポリグリセロール変性シリコーンの市販品としては、例えば、ソフケアGS-G(花王株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
アルキルグリセリルエーテル変性シリコーンとしては、下記式(6)で表されるものが挙げられる。
【0054】
【化3】

〔式(6)中、Qは炭素数3以上20以下の二価の炭化水素基を示し、R~Rは同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上32以下の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基又はフェニル基を示し、R10及びR11は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1以上32以下の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を示し、同一分子内にある複数個のR10及びR11はそれぞれ異なるものであってもよい。pは1以上500以下の数を示し、qは1以上50以下の数を示す。なお、p及びqは分子中におけるアルキルグリセリルエーテル基[-Q-OCH-CH(OR10)-CH(OR11)]の含有量が1質量%以上50質量%以下となる数を示すのが好ましい。〕
【0055】
式(6)において、Qで示される炭素数3以上20以下の二価の炭化水素基としては、炭素数3以上20以下の直鎖又は分岐鎖アルキレン基が好ましい。より具体的には、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、テトラデカメチレン、ヘキサデカメチレン、オクタデカメチレン等の直鎖アルキレン基;プロピレン、2-メチルトリメチレン、2-メチルテトラメチレン、2-メチルペンタメチレン、3-メチルペンタメチレン等の分岐鎖アルキレン基等が挙げられる。
【0056】
また、R~R11の定義中、炭素数1以上32以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドエイコシル、テトラエイコシル、ヘキサエイコシル、オクタエイコシル、トリアコンチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、1-ヘプチルデシル等の分岐鎖アルキル基等が挙げられる。本明細書において、R~Rは炭素数1以上25以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(ただし、一部が水素原子であってもよい)が好ましく、炭素数1以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(ただし、一部が水素原子であってもよい)がより好ましい。また、R10、R11は水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0057】
更に、p及びqは、アルキルグリセリルエーテル基[-Q-OCH-CH(OR10)-CH(OR11)]の含有量が1質量%以上50質量%以下となる数が好ましく、5質量%以上40質量%以下となる数がより好ましく、10質量%以上30質量%以下となる数が更に好ましい。具体的には、原料となるオルガノポリシロキサンの入手のしやすさ、製造時の操作性等の点から、pは1以上500以下の範囲であり、10以上30以下の範囲が好ましく、qは1以上50以下の範囲であり、1以上30以下の範囲が好ましい。
【0058】
アルキルグリセリルエーテル変性シリコーンの25℃における粘度は、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは1,000mPa・s以上、より好ましくは2,000mPa・s以上、さらに好ましくは3,000mPa・s以上であり、そして、好ましくは20,000mPa・s以下、より好ましくは15,000mPa・s以下、さらに好ましくは10,000mPa・s以下である。上記粘度は、JIS Z8803:2011「液体の粘度測定方法」に基づき、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定できる。
【0059】
このようなアルキルグリセリルエーテル変性シリコーンは、特開平4-134013号公報や特開2005-194523号公報記載の方法に従って、少なくとも1個のケイ素-水素結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに、対応するアルケニルグリセリルエーテルを反応させることにより製造することができる。
また、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーンの市販品としては、例えば、SI-UGE、ソフケアRS-U(以上、花王株式会社製)等が挙げられる。
【0060】
カルボキシ変性シリコーンとしては、例えば、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端にカルボキシ基が結合した構造を有する化合物が挙げられる。シリコーンオイルの主鎖とカルボシキ基は連結基を介して結合していてもよい。カルボキシ変性シリコーンの具体例として、カルボキシデシルジメチコン、カルボキシデシルトリシロキサン、ビスカルボキシデシルジメチコン等が挙げられる。
カルボキシ変性シリコーンの25℃における粘度は、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1,000mPa・s以上、さらに好ましくは1,500mPa・s以上であり、そして、好ましくは3,500mPa・s以下、より好ましくは3,000mPa・s以下、さらに好ましくは2,500mPa・s以下である。上記粘度は、JIS Z8803:2011「液体の粘度測定方法」に基づき、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定できる。
カルボキシ変性シリコーンは合成品及び市販品のいずれも用いることができる。
カルボキシ変性シリコーンの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のX-22-3701E、X-22-3710、X-22-162C、ダウ・ケミカル日本株式会社製のDOWSIL BY 16-880 Fluid、DOWSIL ES-5800 Formulation Aid等が挙げられる。
【0061】
これらの変性シリコーンは1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよく、2種組み合わせて用いることが好ましい。
【0062】
(成分(C)の含有量)
また、本発明の組成物中の成分(C)の含有量は、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、長期保存安定性を確保する観点から、3質量%以下、好ましくは2.3質量%以下、より好ましくは1.6質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(C)の含有量は0.1~3質量%、好ましくは0.2~2.3質量%、より好ましくは0.3~1.6質量%、さらに好ましくは0.4~1.0質量%である。
【0063】
本発明の組成物において、成分(B)と成分(A)との質量比[(B)/(A)]は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点、及び長期保存安定性を確保する観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.06以上、さらに好ましくは0.1以上であり、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0064】
また本発明の組成物において、成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]は、忌避持続効果を向上させる観点、及び長期保存安定性を確保する観点から、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.015以上であり、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.08以下、さらに好ましくは0.04以下である。
【0065】
また本発明の組成物において、成分(C)と成分(B)との質量比[(C)/(B)]は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上、よりさらに好ましくは0.1以上であり、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点、及び長期保存安定性を確保する観点から、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下、よりさらに好ましくは0.3以下である。
【0066】
<成分(D):増粘剤>
本発明の組成物は、成分(D)として増粘剤を含有する。皮膚への塗布後の流動性を調整することにより忌避持続効果を向上させる観点、各成分を良好に分散又は溶解させて皮膚への優れた塗布性を確保できる観点、及び組成物の長期保存安定性を確保する観点から、当該増粘剤としては、適度な乳化能(すなわち、界面活性能)を有するものが好ましい。本発明において、乳化能及び増粘効果を有する剤は増粘剤とする。具体的には、成分(D)は、水溶性のカチオン性高分子、アニオン性高分子、ノニオン性高分子、及び、両性高分子又は双極性高分子が挙げられる。
【0067】
カチオン性高分子としては、具体的には、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]基を有するヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-10)、ビニルピロリドン-ジメチルアミノメチルエチルメタクリレート共重合体ジエチル硫酸塩(ポリクオタニウム-11)、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
【0068】
アニオン性高分子としては、具体的には、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カラゲーナン、キサンタンガム、ポリスチレンスルホネート、寒天、ガッチガム、カラヤガム、ペクチン、アルギネート塩、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリルアミド、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-C30))クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、ポリアクリレート-13、ポリアクリレートクロスポリマー-6、ポリ(アクリル酸)のアルカリ金属塩、ヒアルロン酸又はそのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0069】
ノニオン性高分子としては、具体的には、セルロースエーテル(ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル等)、プロピレングリコールアルギネート、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルグアーゴム、ローカストビーンゴム、アミロース、ヒドロキシエチルアミロース、澱粉及び澱粉誘導体並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0070】
両性高分子又は双極性高分子としては、具体的には、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリクオタニウム-47、ポリクオタニウム-43等が挙げられる。
【0071】
成分(D)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
皮膚への塗布後の流動性を調整することにより害虫忌避効果の持続性を向上させる観点、各成分を良好に分散又は溶解させて皮膚への優れた塗布性を確保できる観点、及び組成物の長期保存安定性を確保する観点から、成分(D)としては、アニオン性高分子及びノニオン性高分子から選択される1種以上が好ましく、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、及び(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-C30))クロスポリマーから選択される1種以上が好ましく、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、及び(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-C30))クロスポリマーから選択される1種以上がより好ましい。
成分(D)の市販品としては、例えば、Lubrizol Advanced Materials社の「カーボポール(CARBOPOL)980」、「カーボポール981」、「カーボポール1342」、「カーボポールETD2020」、「ペムレン(PEMULEN)TR-1」、「ペムレン(PEMULEN)TR-2」、ダウ・ケミカル社の「アキュリン(Aculyn)22」、Clariant Iberica Production S.A.の「アリストフレックス(Aristoflex)AVC」、「アリストフレックス HMB」、「アリストフレックス Velvet」、大同化成工業社の「サンジェロース 60L」等を用いることができる。なお、増粘剤は分散媒に分散された分散液としても配合できる。
【0072】
本発明の組成物中の成分(D)の含有量は、上記効果を得る観点から、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、同様の観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(D)の含有量は0.05~3質量%、好ましくは0.1~2質量%、より好ましくは0.2~1.5質量%である。
なお、本発明の組成物が界面活性能を有する増粘剤を含有する場合、それ以外の界面活性剤の含有量は、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0073】
<成分(E):水>
本発明の組成物は、成分(E)として水を含有する。組成物中の成分(E)の含有量は、水中油型の組成物とする観点で、30質量%以上であり、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは32質量%以上、より好ましくは36質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。また、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、86.35質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。組成物中の成分(E)の含有量の具体的範囲は、30~86.35質量%であり、好ましくは32~80質量%、より好ましくは36~75質量%であり、さらに好ましくは40~70質量%である。
【0074】
(界面活性剤)
本発明の組成物は、さらに、水中油型の組成物にする観点から、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、公知のものが使用でき、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の何れでも用いることができる。これらは単独で用いても2種類以上併用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合には、本発明の組成物中の界面活性剤の含有量は、水中油型の組成物にする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0075】
<その他の成分>
本発明の組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の成分、例えば、有機溶媒、防腐剤、着色剤、保湿剤、香料、pH調整剤、ビタミン類、血行促進剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の薬効成分や生理活性成分を含有することもできる。これらの各成分は他の用途としても使用することができ、例えば、香料を殺菌剤とし使用することも可能である。
【0076】
本発明の組成物が含有する成分(A)~(E)及び本発明の組成物が含有し得る成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
本発明の組成物は、害虫忌避に対して、成分(A)を忌避有効成分として含有し、それ以外の害虫忌避剤を有効量含まないことが、使用者のアレルギーや肌荒れを防止するといった観点から好ましい。
本発明の組成物は、後述する既存の害虫忌避剤を有効量含まなくても、忌避持続効果を有する。言い換えれば、本発明の組成物が、成分(A)以外の害虫忌避剤を有効量下限値未満で含有する場合であっても、害虫が、降着してもその場に停留しない停留抑制効果が発現されていれば、本発明の停留抑制効果が発現されていることになる。すなわち、本発明の組成物は、成分(A)以外の害虫忌避剤を実質的に含有しなくてもよい。
【0078】
ここで、成分(A)以外の害虫忌避剤を「有効量含まない」とは、一般的には、成分(A)以外の既存の害虫忌避剤の含有量が、本発明の組成物中、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは4質量%以下、よりさらに好ましくは3質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下であることを意味する。
既存の害虫忌避剤の有効量は、例えば、各忌避剤製品の製造会社等により公表されている最小有効量等を参考にすることができる。
より具体的には、後述する既存の害虫忌避剤であるDEET:N,N-ジエチルトルアミドの有効量は、4質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、イカリジン:1-メチルプロピル-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートの有効量は4質量%以上、IR3535:3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステルの有効量は4質量%以上、シトロネラ油の有効量は10質量%以上である。
【0079】
また、既存の害虫忌避剤の有効量は、以下に記載する忌避評価試験で測定することもできる。
(忌避評価試験)
メッシュで囲われたプラスチックケージ(30×30×30cm:BugDorm-1ケージ)に、交尾済みのメス蚊(ヒトスジシマカ)100匹を入れる。クアラテックスーパーロング手袋(50cm)(アズワン(株)、Catalog number:3-6432-02)に縦10cm×横3cm長方形型の切り込みを入れたものに、腕を挿入する。蚊の活性化のために、ケージに息を5秒間吹きかけた。切り込みからの露出部に何も塗布しない状態で、27℃、相対湿度(RH)60%の条件下、ケージに腕を挿入し、2分間以内に、肌露出部で2か所、蚊に降着された後、1秒間以上停留されることを確認する。1秒間以上停留されない場合は、新しく蚊を用意する。以下、1秒以上の停留を単に停留と表現する。害虫忌避剤の溶液である評価サンプルの試験は、肌露出部(10cm×3cm)に、該評価サンプルを3.3mg/cmで塗布できるようにエタノールで濃度を調整して行う。露出部にピペットマンを用いて、濃度を調整した液を乗せ、肌露出部全体に行き渡るように塗布する。その後3分間静置し、試験を開始する。
試験は、該評価サンプルを塗布した腕をケージに2分間挿入し、停留数をカウントすることで行う。トータルで2回停留された時点で試験を終了とし、試験終了まで30分間毎に2分間ずつ腕を挿入する試験を行う。30分目に2回目の停留がされた場合は、忌避効果持続時間を0分間と判定し、60分目で2回目の停留がされた場合は30分間の忌避効果持続時間と判定する。試験は3人の被験者にて行い、平均の忌避効果持続時間を算出する。
本試験において、平均2時間以上の忌避効果持続時間を示す害虫忌避剤の濃度を、その害虫忌避剤の有効濃度(有効量)とすることができる。
また、本発明の組成物は、既存の害虫忌避剤を有効量含まなくても、忌避持続効果を有すること、及び安全性の観点から、むしろ、成分(A)以外の害虫忌避剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明の組成物中、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、よりさらに好ましくは実質0質量%である。
【0080】
成分(A)以外の既存の害虫忌避剤としては、DEET、イカリジン、ジメチルフタレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、カラン-3,4-ジオール、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、シトロネロール、ユーカリプトール、α-ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、2-ウンデカノン等の公知の害虫忌避化合物の他、シトロネラ油、レモングラス油等の忌避精油等が挙げられる。「忌避精油」とは、植物に含まれる成分を抽出、蒸留、又は圧搾等により得られる精油(エッセンシャルオイル)のうち害虫忌避効果を有するものを意味する。
【0081】
なお、環境適合性の観点から、本発明の組成物は、ぬれ張力が70mN/m以下の有機粒子を実質的に含有しないことが好ましい。「ぬれ張力が70mN/m以下の有機粒子を実質的に含有しない」とは、本発明の組成物中の当該有機粒子の含有量が1.0質量%未満であることを意味し、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0082】
本発明の組成物が忌避対象とする害虫に特に制限はないが、飛翔害虫に対してより効果的である。
「飛翔害虫」とは、飛行しながら人等の動物に近づき、その皮膚から吸血する害虫、吸血はしなくても飛翔しながら病原細菌等を媒介する害虫、飛行すること自体が人間に対し不快感を与える害虫等をいう。
飛翔害虫の具体例としては、アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、シナハマダラカ、トウゴウヤブカ、ガンビエハマダラカ、ステフェンスハマダラカ等の蚊;セスジユスリカ、アカムシユスリカ等のユスリカ;クロオオブユ、キアシオオブユ、アオキツメトゲブユ等のブユ;イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ、クロバエ、ニクバエ、タネバエ、タマネギバエ、ミバエ、ショウジョウバエ、チョウバエ、チェチェバエ、サシバエ等のハエ;シクロアブ、ウシアブ、メクラアブ、ゴマフアブ等のアブ;トクナガクロヌカカ、オオシマヌカカ、ニワトリヌカカ等のヌカカ;キイロスズメバチ、セグロアシナガバチ、ミツバチ等のハチ等が挙げられる。
本発明の組成物は、これらの中でも、特に蚊に対する忌避持続効果が優れている。前述した蚊の中でも、アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカに対する忌避持続効果に優れる。
【0083】
[害虫忌避組成物の製造方法]
本発明の組成物は、成分(A)~(E)を混合することにより得ることができる。
水中油型の混合物が得られる限り、成分(A)~(E)の混合順は特に制限されないが、例えば、成分(C)の少なくとも一部を成分(B)の表面に吸着させる観点から、成分(B)、成分(C)、及び成分(E)を含む混合物(以下、「混合物(1)」と称する。)と、成分(A)及び成分(D)を含む混合物(以下、「混合物(2)」)とを混合する工程を有することが好ましい。
混合物(1)は、成分(B)、成分(C)、及び成分(E)を混合する工程により得ることができる。成分(B)、成分(C)、及び成分(E)の混合順は特に制限されないが、成分(B)及び成分(E)を混合した後に、成分(B)及び成分(E)と成分(C)とを混合することが好ましい。成分(B)表面に、成分(C)を均一に吸着させる観点から、成分(B)及び成分(E)を混合した後に、成分(B)及び成分(E)と、溶媒に溶解させた成分(C)とを混合することがより好ましい。
前記溶媒としては、水及び有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコールを用いることができる。当該アルコールの中でも、エタノール及び2-プロパノールから選択される少なくとも1種がより好ましく、エタノールが更に好ましい。
混合溶媒中の有機溶媒の濃度は、成分(B)、成分(C)、及び成分(E)を均一に混合させる観点から、好ましくは70V/V%以上、より好ましくは80V/V%以上、さらに好ましくは90V/V%以上であり、そして、好ましくは99V/V%以下、より好ましくは98V/V%以下である。
【0084】
成分(B)、成分(C)、及び成分(E)を混合する際の温度は、成分(B)に成分(C)を効率よく吸着させる観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、そして、溶媒の揮発を抑止する観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下である。
また、成分(B)、成分(C)、及び成分(E)の混合時間は、成分(B)に成分(C)を充分に吸着させる観点から、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上であり、そして、製造効率の観点から、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。
【0085】
混合物(2)は、成分(A)及び成分(D)を混合する工程により得ることができる。
成分(A)及び成分(D)を混合する際の温度は、成分(A)及び成分(D)を均一に混合させる観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下である。
また、成分(A)及び成分(D)の混合時間は、成分(A)及び成分(D)を均一に混合させる観点から、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。
【0086】
混合物(1)と混合物(2)とを混合する際の温度は、水相中に油相を均一に分散させる観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下である。
また、混合物(1)と混合物(2)との混合時間は、水相中に油相を均一に分散させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上であり、そして、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下である。
【0087】
混合物(1)と混合物(2)との混合に用いる撹拌装置の回転数は、水相中に油相を均一に分散させる観点から、好ましくは3,000rpm以上、より好ましくは4,000rpm以上であり、そして、好ましくは20,000rpm以下、より好ましくは15,000rpm以下である。
【0088】
成分(B)、成分(C)、及び成分(E)を混合する工程、成分(A)及び成分(D)を混合する工程、混合物(1)と混合物(2)とを混合する工程においては、公知の攪拌装置を用いることができる。
【0089】
[害虫の忌避方法]
本発明の害虫の忌避方法は、本発明の害虫忌避組成物を、人の皮膚表面に塗布することにより行われる。
また、本発明の別の害虫の忌避方法は、本発明の害虫忌避組成物を、害虫、特に飛翔害虫の脚に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐものである。以下、これらの方法を総称して「本発明の方法」ともいう。
【0090】
ここで、「皮膚表面に塗布する」とは、皮膚表面に手などで組成物を直接塗布することだけでなく、噴霧等により組成物を皮膚表面に付着させることを含む。
皮膚表面に塗布する組成物の量は、忌避持続効果を向上させる観点から、1cmあたり、好ましくは0.1mg以上であり、より好ましくは0.2mg以上、さらに好ましくは0.25mg以上である。また、塗布量の上限は、べたつき抑制及び経済性の観点から、1cmあたり、好ましくは10mg以下、より好ましくは8mg以下、さらに好ましくは5mg以下である。
【0091】
上述の実施形態に関し、本発明はさらに以下の実施態様を開示する。
<1>
下記成分(A)~(E)を含有する、水中油型の害虫忌避組成物。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
<2>
成分(A)がシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油から選択される1種以上である、<1>に記載の水中油型の害虫忌避組成物。
<3>
成分(B)と成分(A)との質量比[(B)/(A)]が0.02以上0.7以下である、<1>又は<2>に記載の水中油型の害虫忌避組成物。
<4>
成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]が0.005以上0.1以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物。
<5>
成分(B)の体積中位粒径が、2μm以上、好ましくは3μm以上であり、そして、30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物。
<6>
成分(B)の含有量が、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、そして、27質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは8質量%以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物。
<7>
成分(C)の含有量が、0.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、そして、2.3質量%以下、好ましくは1.6質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物。
<8>
成分(C)と成分(B)との質量比[(C)/(B)]が0.01以上0.9以下であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.1以上であり、そして、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である、<1>~<7>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物。
【0092】
<9>
水中油型の害虫忌避組成物の製造方法であって、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(E)を含む混合物と、下記成分(A)及び下記成分(D)を含む混合物とを混合する工程を有する、水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上
(D)増粘剤
(E)水
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
また、水中油型の害虫忌避組成物中、成分(A)の含有量は13質量%以上50質量%以下であり、成分(B)の含有量は0.5質量%以上35質量%以下であり、成分(C)の含有量は0.1質量%以上3質量%以下であり、成分(D)の含有量は0.05質量%以上3質量%以下であり、成分(E)の含有量は30質量%以上86.35質量%以下である。
<10>
成分(A)がシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油から選択される1種以上である、<9>に記載の水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
<11>
成分(B)と成分(A)との質量比[(B)/(A)]が0.02以上0.7以下である、<9>又は<10>に記載の水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
<12>
成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]が0.005以上0.1以下である、<9>~<11>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
<13>
成分(B)の体積中位粒径が、2μm以上、好ましくは3μm以上であり、そして、30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下である、<9>~<12>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
<14>
成分(B)の含有量が、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、そして、27質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは8質量%以下である、<9>~<13>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
<15>
成分(C)の含有量が、0.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、そして、2.3質量%以下、好ましくは1.6質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である、<9>~<14>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
<16>
成分(C)と成分(B)との質量比[(C)/(B)]が0.01以上0.9以下であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.1以上であり、そして、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である、<9>~<15>のいずれかに記載の水中油型の害虫忌避組成物の製造方法。
【0093】
<17>
下記成分(A)~(E)を含有する水中油型の害虫忌避組成物を人の皮膚表面に塗布する、害虫の忌避方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
<18>
成分(A)がシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油から選択される1種以上である、<17>に記載の害虫の忌避方法。
<19>
成分(B)と成分(A)との質量比[(B)/(A)]が0.02以上0.7以下である、<17>又は<18>に記載の害虫の忌避方法。
<20>
成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]が0.005以上0.1以下である、<17>~<19>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
<21>
成分(B)の体積中位粒径が、2μm以上、好ましくは3μm以上であり、そして、30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下である、<17>~<20>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
<22>
成分(B)の含有量が、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、そして、27質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは8質量%以下である、<17>~<21>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
<23>
成分(C)の含有量が、0.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、そして、2.3質量%以下、好ましくは1.6質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である、<17>~<22>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
<24>
成分(C)と成分(B)との質量比[(C)/(B)]が0.01以上0.9以下であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.1以上であり、そして、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である、<17>~<23>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
【0094】
<25>
下記成分(A)~(E)を含有する水中油型の害虫忌避組成物を害虫の脚に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐ、害虫の忌避方法。
(A)シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールから選択される1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリカ粒子及び/又はケイ酸塩鉱物粒子を含み、体積中位粒径が1μm以上40μm以下の親水性無機物粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)25℃で液体状である、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリグリセロール変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、及びカルボキシ変性シリコーンから選択される1種以上:0.1質量%以上3質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
(E)水:30質量%以上86.35質量%以下
ただし、成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上400mPa・s以下であり、成分(A)のシリコーン油には、成分(C)は含まれない。
<26>
成分(A)がシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油から選択される1種以上である、<25>に記載の害虫の忌避方法。
<27>
成分(B)と成分(A)との質量比[(B)/(A)]が0.02以上0.7以下である、<25>又は<26>に記載の害虫の忌避方法。
<28>
成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]が0.005以上0.1以下である、<25>~<27>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
<29>
成分(B)の体積中位粒径が、2μm以上、好ましくは3μm以上であり、そして、30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下である、<25>~<28>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
<30>
成分(B)の含有量が、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、そして、27質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは8質量%以下である、<25>~<29>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
<31>
成分(C)の含有量が、0.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、そして、2.3質量%以下、好ましくは1.6質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である、<25>~<30>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
<32>
成分(C)と成分(B)との質量比[(C)/(B)]が0.01以上0.9以下であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.1以上であり、そして、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である、<25>~<31>のいずれかに記載の害虫の忌避方法。
【実施例0095】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0096】
(液状油性成分の表面張力)
液状油性成分の表面張力は、自動表面張力計「Tensiometer K100」(KRUSS社)を使用し、白金プレートを用いたウィルヘルミー法にて、25℃の環境下で測定される表面張力である。
【0097】
(液状油性成分の粘度)
JIS K7117-1:1999によるB形回転粘度計として、東機産業(株)「Viscometer TVB-10」を使用した。被測定成分は、それぞれの試料ごとに粘度の値が大きく異なるため、一つの測定条件で全てを正確に測定するのは困難である。そこで、2種類のローターを使用して測定した。粘度は、まず、ローターM2を使用して23℃環境下で、回転速度12rpmで測定した。このとき、2500mPa・s以上の粘度を持つ成分は回転速度6rpmで再度測定し、粘度の値を得た。
一方、20mPa・s以下の粘度を持つ成分は、低粘度用ローターであるLアダプターを使用して、23℃環境下で、回転速度を30rpmに設定して再度測定し、粘度の値を得た。
【0098】
(粒子表面のぬれ張力)
富士フイルム和光純薬(株)のぬれ張力試験用混合液を用いて、以下のように測定した。
23℃環境下で、ぬれ張力試験用混合液No.70(表面張力70mN/m)を0.2mL、容器に計量した。その後、測定対象の粒子0.01gを、静かに前記混合液に投入した。
粒子を投入後30秒してから、粒子が前記混合液に濡れたかどうかを目視で確認し、No.70(表面張力70mN/m)の混合液に濡れた場合は粒子表面のぬれ張力が70mN/m以上であると判定した。後述のNo.70(表面張力70mN/m)の混合液に濡れれば粒子表面のぬれ張力が70mN/m以上であり親水性と判断した。
粒子表面が前記混合液に濡れるとは、粒子に混合液が浸透することを意味する。粒子が混合液に濡れない状態とは、粒子と混合液を混合しても、粒子が混合液と分離する(あるいは、はじかれる)ことを意味する。
なお、各粒子表面のぬれ張力は、下記ぬれ張力試験用混合液を用いて上述の試験をすることで測定した。例えば、粒子表面の表面張力が23mN/mであるとは、上述の試験で、ぬれ張力試験用混合液としてNo.25.4(表面張力25.4mN/m)を用いたときは、粒子表面が該混合液に濡れず、ぬれ張力試験用混合液としてNo.22.6(表面張力22.6mN/m)を用いたときは、粒子表面が該混合液に濡れたことを意味する。
<富士フイルム和光純薬(株)のぬれ張力試験用混合液>
No.73(表面張力73mN/m)、No.70(表面張力70mN/m)、No.67(表面張力67mN/m)、No.64(表面張力64mN/m)、No.62(表面張力62mN/m)、No.60(表面張力60mN/m)、No.58(表面張力58mN/m)、No.56(表面張力56mN/m)、No.54(表面張力54mN/m)、No.52(表面張力52mN/m)、No.32(表面張力32mN/m)、No.30(表面張力30mN/m)、No.27.3(表面張力27.3mN/m)、No.25.4(表面張力25.4mN/m)、No.22.6(表面張力22.6mN/m)
【0099】
(親水性無機物粒子の体積中位粒径(D50))
(株)堀場製作所「レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-960」を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で親水性無機物粒子の粒径分布をそれぞれ測定し、得られた粒径分布から親水性無機物粒子の体積中位粒径(D50)を算出した。
【0100】
(害虫に対する忌避持続効果の評価)
(I)ヒトスジシマカの準備
ヒトスジシマカは、住友テクノサービス(株)より購入したヒトスジシマカ卵を27℃、相対湿度(RH)60%の条件下ケージ内で飼育し、成長させて成虫としたものを使用した。
透明なプラスチックパンに水を1cm程度張り、購入した卵が産み付けられているろ紙を入れ、蛹へと孵化させた。その後、孵化させた蛹に対して、日々、幼虫用餌として熱帯魚用エサ(テトラミン)を与えた。1週間後、蛹をスポイトで回収し、20mL用プラスチックカップに移し、網を張ったケージに移した。蛹に対して、成虫用の餌として、10質量%スクロースを25mLプラスチックチューブに入れたものを与えた。羽化後、5日間オスとメスを同じケージで飼育することで交尾を行わせた。飼育5日後、成虫を吸虫管を用いて集め、氷上で5分間麻酔後に目視下でオスとメスを分け、メスのみを回収し、評価に用いた。
【0101】
(II)忌避効果持続時間の測定
メッシュで囲われたプラスチックケージ(30×30×30cm:BugDorm-1ケージ)に、交尾済みのメス蚊(ヒトスジシマカ)100匹を入れた。クアラテックスーパーロング手袋(50cm)(アズワン(株)、Catalog number:3-6432-02)に縦10cm×横3cm長方形型の切り込みを入れたものに、腕を挿入した。蚊の活性化のために、ケージに息を5秒間吹きかけた。切り込みからの露出部に何も塗布しない状態で、27℃、相対湿度(RH)60%の条件下、ケージに腕を挿入し、2分間以内に、肌露出部で2か所、蚊に降着された後、1秒間以上停留されることを確認した。1秒間以上停留されない場合は、新しく蚊を用意した。以下、1秒以上の停留を単に停留と表現する。害虫忌避剤の溶液である評価サンプルの試験は、肌露出部(10cm×3cm)に、該評価サンプルを3.3mg/cmとなるように均一に塗布した。
試験は、該評価サンプルを塗布した腕をケージに2分間挿入し、停留数をカウントすることで行った。
トータルで2回停留された時点で試験を終了とし、試験終了まで30分間毎に2分間ずつ腕を挿入する試験を行った。30分目に2回目の停留がされた場合は、忌避効果持続時間を0分間と判定し、60分目で2回目の停留がされた場合は30分間の忌避効果持続時間と判定する。試験は3人の被験者にて行い、平均の忌避効果持続時間を算出した。
【0102】
(感触(皮膚塗布時のさらさら感)の評価)
専門パネラー3名が、前腕内側部に直径3cm円に各例の組成物を0.02mL塗布し、25℃、相対湿度(RH)57%条件下で1分間かけて均一に塗り延ばした。乾き際から乾燥後のさらさら感に対して、下記基準により5段階評価で官能評価を行い、3名の平均スコアを表に示した。なお、No.(4)の評価結果を「1」とした。
5:べたつき感がまったくなく、良好なさらさらとした感触がある。
4:わずかにべたつきを感じるが、さらさらとした感触がある。
3:多少のべたつきを感じるが、さらさらとした感触の方が強い。
2:べたつきを感じ、さらさらとした感触が弱い。
1:べたつきを感じ、さらさらとした感触がない。
【0103】
(長期保存安定性評価)
100mLのガラス瓶に、各例の組成物80mLを入れ、密閉して、50℃で1か月間保存した後、組成物中の油相の分離の有無を、目視により確認し、下記基準で示した。
A:変化なし。
B:油によって接触したガラス瓶表面に組成物が残らない。
C:油相が合一し、乳化物から表面へのしみ出しが多少見られる。
D:油相の分離が見られる。
【0104】
(組成物の製造及び評価)
No.1
ガラスビーカーに成分(B1)、成分(E)を入れ、スターラーで撹拌しながら水とエタノールの混合溶媒(エタノール濃度:95V/V%)に溶解させた成分(C1)を加え、1時間撹拌することで水相を調製した。別のガラスビーカーに成分(A1)、成分(D1)及び(D2)を加え、T.K.ロボミックス(特殊機化工業(株))の撹拌部をT.K.ホモディスパー 2.5型に替えたものを用いて10分間撹拌し油相を調製した。水相に油相を徐々に加えながらプロペラ撹拌で予備乳化した後、T.K.ロボミックス(特殊機化工業(株))の撹拌部をT.K.ホモミキサーMARKII 2.5型に替えたものを用いて8,000rpmで3分間撹拌し水中油型組成物を得た。得られた組成物を用いて、前記方法により各種評価を行った。結果を表に示す。なお、組成物の製造及び評価は常温(25~28℃)で行った。
【0105】
No.2~55、No.(1)~(14)
No.1の組成物の製造において、組成を表に記載の通りに変更したこと以外は、No.1の組成物と同様にして、No.2~55、No.(1)~(14)の組成物を製造した。得られた組成物を用いて、前記方法により各種評価を行った。結果を表に示す。なお、組成物の製造及び評価は常温(25~28℃)で行った。
【0106】
なお、表に記載の通り、No.1~55の組成物において、成分(C)中、成分(B)に吸着する成分(C)の量が2~12質量%であった。
【0107】
No.(15)
成分(E)を入れたガラスビーカーに、スターラーで撹拌しながらエタノール(95V/V%)を加え水相を調製した。ガラスビーカーに成分(A1)、成分(b1)、成分(D1)及び(D2)を加え、T.K.ロボミックス(特殊機化工業(株))の撹拌部をT.K.ホモディスパー2.5型に替えたものを用いて混合し油相を調製した。
水相に油相を徐々に加えながらプロペラ撹拌で予備乳化したのち、T.K.ロボミックス(特殊機化工業(株))の撹拌部をT.K.ホモミキサーMARKII 2.5型に替えたものを用いて8,000rpmで3分間撹拌する工程を経て水中油型組成物を得た。得られた組成物を用いて、前記方法により各種評価を行った。結果を表に示す。なお、組成物の製造及び評価は常温(25~28℃)で行った。
【0108】
表に記載したNo.1~55の組成物が本発明の組成物であり、No.(1)~(15)の組成物が本発明の範囲外の組成物である。
表に記載した(A)~(E)の表記は、それぞれ本明細書における成分(A)~(E)に対応し、(a)、(b)、(c)の表記は、それぞれ本明細書における成分(A)の範囲外の液状油性成分、成分(B)の範囲外の粒子、成分(C)の範囲外の変性シリコーンに対応する。表中、成分(a)~(c)について、便宜上、成分(A)~(C)に対応させて、物性値や組成物中の含有量を記載している。
表2~8における使用成分を表1に示す。各表に記載した配合量は各成分の有効成分量(質量%)である。
No.27の組成物の成分(C3)の行に記載された含有量について、括弧書きで、組成物中のPEG/PPG-19/19ジメチコンの含有量(成分(C)の含有量)を示す。No.37、38、42、44、(7)~(9)についても同様に、括弧書きで、組成物中の(成分(C)又は成分(C)の範囲外の成分の含有量)を示す。
「O/W」は水中油型組成物であることを意味し、「W/O」は油中水型組成物であることを意味する。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
【表6】
【0115】
【表7】
【0116】
【表8】
【0117】
表2~8より、成分(A)~(E)をそれぞれ所定量含有する本発明の組成物は、皮膚に塗布した際にさらさらとした良好な感触を有し、かつ長期保存安定性に優れ、さらには、忌避持続効果を2時間以上もの長時間保つことができることがわかる。また、例えば、No.1~14、21~44の組成物と、No.(15)の組成物とを比較すると、No.(15)の組成物に用いた疎水性の有機粒子(ポリメタクリル酸メチル)に代えて、本発明で規定する成分(B)に成分(C)を組み合わせて用いることにより、忌避持続効果をより長時間保てることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によれば、皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れる水中油型の害虫忌避組成物、及び害虫の忌避方法を提供することができる。