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特開2025-3297薬物組成物を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法
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  • 特開-薬物組成物を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法 図1
  • 特開-薬物組成物を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003297
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】薬物組成物を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20241226BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G02C7/04
A61P27/02
A61P29/00
A61P37/08
A61K31/4402
A61K31/704
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035641
(22)【出願日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】112123539
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】512020327
【氏名又は名称】ペガヴィジョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PEGAVISION CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2F-1,No.5,SHING YEH ST.,GUISHAN DIST.,TAOYUAN CITY 333,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シウ-イ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シン-イ
(72)【発明者】
【氏名】コー,イェン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュン-ハン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ハン-イ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,テ-シェン
【テーマコード(参考)】
2H006
4C086
【Fターム(参考)】
2H006BB03
2H006BB06
2H006BC07
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA33
4C086ZB11
4C086ZB13
(57)【要約】
【課題】薬物組成物を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】コンタクトレンズは、レンズ本体及び薬物組成物を含む。レンズ本体は、レンズ材料を硬化させることによって形成され、レンジ材料は親水性ビニル系モノマー、架橋剤及び光開始剤を含み、親水性ビニル系モノマーはN-ビニルピロリドンを含まない。薬物組成物は、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含み、且つコンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせを含まない。別のコンタクトレンズは、レンズ本体及び薬物組成物を含む。レンズ本体は、レンズ材料を硬化させることによって形成され、レンジ材料は、親水性ビニル系モノマー、架橋剤、ロタキサン分子、及び光開始剤を含む。薬物組成物は、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ビニル系モノマー、架橋剤及び光開始剤を含むレンズ材料を硬化させることによって形成され、前記親水性ビニル系モノマーがN-ビニルピロリドンを含まないレンズ本体と、
抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含み、且つコンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせを含まず、前記抗ヒスタミン薬がクロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗炎症薬がグリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含み、前記レンズ本体に吸着する薬物組成物と、
を備える薬物組成物を含有するコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記コンタクトレンズにおいて、前記抗炎症薬の含有量が5μg~400μgである請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記親水性ビニル系モノマーが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-メチル-2-アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-エチル-N-メチルアセトアミド、又はそれらの組み合わせを含む請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記薬物組成物が、基本的に前記抗ヒスタミン薬及び前記抗炎症薬からなる請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記抗ヒスタミン薬が、マレイン酸クロルフェニラミンであり、前記抗炎症薬は、グリチルリチン酸ジカリウムである請求項1~4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記レンズ本体を薬物溶液に浸漬する工程を含み、
前記薬物溶液が、抗ヒスタミン薬成分、抗炎症薬成分又はそれらの組み合わせ、及び緩衝溶液を含み、前記抗ヒスタミン薬成分は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗炎症薬成分は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含み、前記薬物溶液は、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせを含まない、請求項1に記載の薬物組成物を含有するコンタクトレンズの製造方法。
【請求項7】
前記薬物溶液において、前記抗ヒスタミン薬成分の質量濃度が0.01%~0.3%である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記薬物溶液において、前記抗炎症薬成分の質量濃度が0.01%~1%である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記レンズ本体を前記薬物溶液に浸漬した後、前記薬物溶液における前記抗炎症薬成分を100wt%として、1wt%~20wt%の前記抗炎症薬成分が前記レンズ本体に吸着する請求項6に記載の方法。
【請求項10】
親水性ビニル系モノマー、架橋剤、ロタキサン分子、及び光開始剤を含むレンズ材料を硬化させることによって形成され、前記ロタキサン分子が少なくとも1つの環状分子、及び前記少なくとも1つの環状分子を串刺し状に貫通する少なくとも1つの直鎖状分子を含むレンズ本体と、
抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗ヒスタミン薬がクロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗炎症薬がグリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含み、前記レンズ本体に吸着する薬物組成物と、
を備える薬物組成物を含有するコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記コンタクトレンズにおいて、前記抗炎症薬の含有量が5μg~400μgである請求項10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記親水性ビニル系モノマーが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-メチル-2-アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-エチル-N-メチルアセトアミド、又はそれらの組み合わせを含む請求項10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの環状分子が、シクロデキストリン、その誘導体、又はそれらの組み合わせであり、前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、(2-ヒドロキシプロピル)-γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びメチル-β-シクロデキストリンからなる群から選択される少なくとも1つである請求項10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの環状分子が、クラウンエーテル、その誘導体、又はそれらの組み合わせであり、前記クラウンエーテルは、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、2-(ヒドロキシメチル)-12-クラウン-4-エーテル、2-(ヒドロキシメチル)-15-クラウン-5-エーテル、及び2-(ヒドロキシメチル)-18-クラウン-6-エーテルからなる群から選択される少なくとも1つである請求項10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの直鎖状分子が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つである請求項10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記抗ヒスタミン薬が、マレイン酸クロルフェニラミンであり、前記抗炎症薬は、グリチルリチン酸ジカリウムである請求項10~15のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記レンズ本体を薬物溶液に浸漬する工程を含み、
前記薬物溶液が、抗ヒスタミン薬成分、抗炎症薬成分又はそれらの組み合わせ、及び緩衝溶液を含み、前記抗ヒスタミン薬成分は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗炎症薬成分は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の薬物組成物を含有するコンタクトレンズの製造方法。
【請求項18】
前記薬物溶液において、前記抗ヒスタミン薬成分の質量濃度が0.01%~0.3%である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薬物溶液において、前記抗炎症薬成分の質量濃度が0.01%~1%である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記レンズ本体を前記薬物溶液に浸漬した後、前記薬物溶液における前記抗炎症薬成分を100wt%として、1wt%~20wt%の前記抗炎症薬成分が前記レンズ本体に吸着する請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物組成物を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法に関し、特に、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含有するコンタクトレンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数十年にわたって、眼科用薬又は眼科用活性成分をどのように効果的に送達するのは、科学者が取り組んできた目標であった。一般的に、眼薬を滴下する投与方法で人体の眼部を治療する。しかしながら、この投与方法では、人体の眼部に薬物が滴下されると、短時間で薬剤が希釈され、涙口から薬剤が排出されやすいという欠点がある。このため、人間の眼部内での薬剤の滞留時間が短いため、治療効率が低いという問題を引き起こしやすい。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、薬物組成物を含有するコンタクトレンズであって、レンジ材料が親水性ビニル系モノマー、架橋剤及び光開始剤を含むレンズ材料を硬化させることによって形成され、親水性ビニル系モノマーがN-ビニルピロリドンを含まないレンズ本体と、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含み、且つコンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせを含まず、抗ヒスタミン薬がクロルフェニラミン(chlorpheniramine)、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン(Diphenhydramine)、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン(Olopatadine)、オロパタジン塩類、エメダスチン(Emedastine)、エメダスチン塩類、レボカバスチン(Levocabastine)、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬がグリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム(Sodium azulene sulfonate)、乳酸亜鉛(Zinc lactate)、硫酸亜鉛(Zinc sulfate)、又はそれらの組み合わせを含み、レンズ本体に吸着する薬物組成物と、を備える薬物組成物を含有するコンタクトレンズを提供する。
【0004】
幾つかの実施形態では、コンタクトレンズにおいて、抗炎症薬の含有量は5μg~400μgである。
【0005】
幾つかの実施形態では、親水性ビニル系モノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethyl methacrylate;HEMA)、メタクリル酸(methacrylic acid;MAA)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate;MMA)、アクリル酸(acrylic acid;AAc)、N,N-ジメチルアクリルアミド(N,N-dimethyl acrylamide;DMA)、2-メチル-2-アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル(2,3-dihydroxypropyl methacrylate;GMMA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド(N,N-dimethyl methacrylamide;DMAA)、N-エチル-N-メチルアセトアミド(N-vinyl-N-methyl acetamide)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、薬物組成物は、基本的に抗ヒスタミン薬及び抗炎症薬からなる。
【0007】
幾つかの実施形態では、抗ヒスタミン薬は、マレイン酸クロルフェニラミン(chlorpheniramine maleate;CPM)であり、抗炎症薬は、グリチルリチン酸ジカリウム(dipotassium glycyrrhetate;DG)である。
【0008】
本開示は、前述のいずれかの実施形態のコンタクトレンズの製造方法であって、レンズ本体を薬物溶液に浸漬する工程を含み、薬物溶液は、抗ヒスタミン薬成分、抗炎症薬成分又はそれらの組み合わせ、及び緩衝溶液を含み、抗ヒスタミン薬成分は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬成分は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含み、薬物溶液は、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせを含まない。
【0009】
幾つかの実施形態では、薬物溶液において、抗ヒスタミン薬成分の質量濃度は0.01%~0.3%である。
【0010】
幾つかの実施形態では、薬物溶液において、抗炎症薬成分の質量濃度は0.01%~1%である。
【0011】
幾つかの実施形態では、レンズ本体を薬物溶液に浸漬した後、薬物溶液における抗炎症薬成分を100wt%として、1wt%~20wt%の抗炎症薬成分がレンズ本体に吸着する。
【0012】
本開示は、薬物組成物を含有するコンタクトレンズであって、レンズ材料が親水性ビニル系モノマー、架橋剤、ロタキサン分子、及び光開始剤を含むレンズ材料を硬化させることによって形成され、ロタキサン分子が少なくとも1つの環状分子、及び少なくとも1つの環状分子を串刺し状に貫通する少なくとも1つの直鎖状分子を含むレンズ本体と、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含み、抗ヒスタミン薬がクロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬がグリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含み、レンズ本体に吸着する薬物組成物と、を備える薬物組成物を含有するコンタクトレンズを提供する。
【0013】
幾つかの実施形態では、コンタクトレンズにおいて、抗炎症薬の含有量は5μg~400μgである。
【0014】
幾つかの実施形態では、親水性ビニル系モノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MAA)、メチルメタクリレート(MMA)、アクリル酸(AAc)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-メチル-2-アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル(GMMA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド(DMAA)、N-エチル-N-メチルアセトアミド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0015】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの環状分子は、シクロデキストリン(cyclodextrin)、その誘導体、又はそれらの組み合わせであり、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン(α-cyclodextrin)、β-シクロデキストリン(β-cyclodextrin)、γ-シクロデキストリン(γ-cyclodextrin)、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(hydroxypropyl-β-cyclodextrin)、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン((2-hydroxypropyl)-γ-cyclodextrin)、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(sulfobutylether-β-cyclodextrin)、及びメチル-β-シクロデキストリン(methyl-β-cyclodextrin)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0016】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの環状分子は、クラウンエーテル(crown ether)、その誘導体、又はそれらの組み合わせであり、クラウンエーテルは、12-クラウン-4(12-crown-4)、15-クラウン-5(15-crown-5)、18-クラウン-6(18-crown-6)、ベンゾ-18-クラウン-6(benzo-18-crown-6)、ベンゾ-15-クラウン-5(benzo-15-crown-5)、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6(dicyclohexyl-18-crown-6)、2-(ヒドロキシメチル)-12-クラウン-4-エーテル(2-(hydroxymethyl)-12-crown-4-ether)、2-(ヒドロキシメチル)-15-クラウン-5-エーテル(2-(hydroxymethyl)-15-crown-5-ether)、及び2-(ヒドロキシメチル)-18-クラウン-6-エーテル(2-(hydroxymethyl)-18-crown-6-ether)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0017】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの直鎖状分子は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、及びポリプロピレングリコール(polypropylene glycol;PPG)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0018】
幾つかの実施形態では、抗ヒスタミン薬は、マレイン酸クロルフェニラミンであり、抗炎症薬は、グリチルリチン酸ジカリウムである。
【0019】
本開示は、前述のいずれかの実施形態のコンタクトレンズの製造方法であって、レンズ本体を薬物溶液に浸漬する工程を含み、薬物溶液は、抗ヒスタミン薬成分、抗炎症薬成分又はそれらの組み合わせ、及び緩衝溶液を含み、抗ヒスタミン薬成分は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬成分は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、薬物溶液において、抗ヒスタミン薬成分の質量濃度は0.01%~0.3%である。
【0021】
幾つかの実施形態では、薬物溶液において、抗炎症薬成分の質量濃度は0.01%~1%である。
【0022】
幾つかの実施形態では、レンズ本体を薬物溶液に浸漬した後、薬物溶液における抗炎症薬成分を100wt%として、1wt%~20wt%の抗炎症薬成分がレンズ本体に吸着する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示の上記及び他の態様、特徴及び他の利点は、添付図面に合わせて明細書の内容を参照すれば、より明確に理解される。
図1】本開示の様々なの実施形態による薬物組成物を含有するコンタクトレンズの製造模式図である。
図2】実施例1-1及び実施例1-2のコンタクトレンズにおけるグリチルリチン酸ジカリウム(DG)放出率の経時変化の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示をより詳しく且つ完全に説明するために、以下、本開示の実施態様及び具体的な実施例について説明的に叙述したが、それは本開示の具体的な実施例を実施又は適用する唯一の形態ではない。以下に開示される各実施例は、有益な状況で互いに組み合わせ又は置換してもよく、幾つかの実施例に他の実施例を付加してもよく、更なる記載又は説明の必要がない。
【0025】
本明細書において、「1つの数値から他の数値」で表される範囲は、明細書において当該範囲内の全ての数値を一々列挙するのを避けるための概略的な表現である。したがって、特定の数値範囲の記載は、当該数値範囲内の任意の数値、及び当該数値範囲内の任意の数値によって規定される小さい数値範囲を本明細書に明示的に記載されているように含む。
【0026】
近年、化学品使用の増加、都市化、工業化、及び気候変動による汚染により、アレルギー性結膜炎が流行している。結膜炎は、目の充血、痒み、涙、及び灼熱感などの症状を引き起こすことがあり、また、多くのコンタクトレンズ装用者は、アレルギーのピーク時にコンタクトレンズの装用を停止する。アレルギー反応は、ヒスタミン等の炎症を引き起こす化学物質を放出し、組織を傷つけて赤腫の熱痛症状を引き起こす。一般的に、眼薬を滴下する投与方法で人体の眼部を治療するが、この投与方法では、人間の眼部内での薬剤の滞留時間が短いため、治療効率が低いという問題を引き起こしやすい。
【0027】
上記問題を解決するために、本開示は、コンタクトレンズを、薬物を輸送するキャリアとすることにより、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬又はそれらの組み合わせを担持するコンタクトレンズを提供する。抗ヒスタミン薬は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含む。抗ヒスタミン薬及び抗炎症薬はそれぞれ、アレルギー反応及び炎症反応を抑制することで、目の充血性熱痛の症状を緩和することができる。
【0028】
本開示のコンタクトレンズは、視力も矯正することができ、アレルギー性結膜炎を治療する良い効果を有する。よって、アレルギー性結膜炎にかかった患者は、このコンタクトレンズを装着することで、屈折異常の矯正、並びに抗アレルギー及び抗炎症の治療を行うことができる。また、本開示のコンタクトレンズは、薬物をゆっくりと人の目に放出させることができるため、優れた生体利用可能性を有し、且つ治療効果を向上させる。コンタクトレンズが抗ヒスタミン薬及び抗炎症薬を同時に担持する場合、抗ヒスタミン薬は抗炎症薬の放出率を減少させ、レンズ本体での抗炎症薬の担持量を向上させることができる。なお、本開示のレンズ材質は、抗ヒスタミン薬及び抗炎症薬と協働することができるため、優れた抗炎症薬徐放効果を有する。以下、本開示のコンタクトレンズ及びその製造方法を様々なの実施形態に基づいて更に説明する。
【0029】
本開示は、薬物組成物を含有するコンタクトレンズを提供し、それはレンズ本体及びレンズ本体に吸着する薬物組成物を含む。レンズ本体は、レンズ材料を硬化させることによって形成される。レンジ材料は、親水性ビニル系モノマー、架橋剤及び光開始剤を含み、親水性ビニル系モノマーは、N-ビニルピロリドンを含まない。薬物組成物は、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含む。抗ヒスタミン薬は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含み、薬物組成物は、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせを含まない。薬物組成物が抗ヒスタミン薬及び抗炎症薬を同時に含み、抗ヒスタミン薬は、抗炎症薬をレンズからゆっくり放出させることができ、レンズ本体での抗炎症薬の担持量を向上させることができる。幾つかの実施形態では、薬物組成物は、基本的に上記抗ヒスタミン薬及び上記抗炎症薬からなる。
【0030】
幾つかの実施形態では、クロルフェニラミン塩類は、マレイン酸クロルフェニラミン(CPM)を含む。幾つかの実施形態では、グリチルリチン酸塩は、グリチルリチン酸カリウム塩、グリチルリチン酸ナトリウム塩、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、抗ヒスタミン薬は、マレイン酸クロルフェニラミン(CPM)であり、抗炎症薬は、グリチルリチン酸ジカリウム(DG)である。コンタクトレンズにCPMとDGを同時に担持する場合、CPMはDGの放出率を減少させ、DGを徐放させ、レンズ本体でのDGの担持量も向上させることができる。DGは、レンズ本体でのCPMの担持量を向上させることもできる。幾つかの実施形態では、薬物組成物は、基本的にCPM及びDGからなる。幾つかの実施形態では、ジフェンヒドラミン塩類は、ジフェンヒドラミン塩酸塩(Diphenhydramine hydrochloride)を含む。幾つかの実施形態では、オロパタジン塩類は、オロパタジン塩酸塩(Olopatadine hydrochloride)を含む。幾つかの実施形態では、エメダスチン塩類は、エメダスチンジフマル酸塩(Emedastine difumarate)を含む。幾つかの実施形態では、レボカバスチン塩類は、レボカバスチン塩酸塩(Levocabastine hydrochloride)を含む。
【0031】
幾つかの実施形態では、コンタクトレンズにおいて、抗炎症薬の含有量は5μg~400μgであり、例えば5、10、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、又は400μgである。例えば、抗炎症薬はDGである。幾つかの実施形態では、抗ヒスタミン薬の含有量は1μg~400μgであり、例えば1、10、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、又は400μgである。例えば、抗ヒスタミン薬はCPMである。幾つかの実施形態では、抗炎症薬と抗ヒスタミン薬との重量比は、1:1~30:1であり、例えば、1:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、又は30:1である。抗炎症薬及び/又は抗ヒスタミン薬の含有量が上記範囲内にあるか、又は重量比が上記範囲内にある場合、コンタクトレンズは、十分で良好な抗アレルギー及び抗炎症の治療効果を有することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、親水性ビニル系モノマーは60重量部~99.85重量部であり、架橋剤は0.01重量部~2重量部であり、光開始剤は0.01重量部~2重量部である。
【0033】
幾つかの実施形態では、親水性ビニル系モノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MAA)、メチルメタクリレート(MMA)、アクリル酸(AAc)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-メチル-2-アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル(GMMA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド(DMAA)、N-エチル-N-メチルアセトアミド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0034】
幾つかの実施形態では、架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate;EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(diethylene glycol dimethacrylate)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol dimethacrylate)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(tetraethylene glycol dimethacrylate)、アリルメタクリレート(allyl methacrylate)、トリエチレングリコールジアリルエーテル(triethylene glycol dially ether)、テトラエチレングリコールジアリルエーテル(tetraethylene glycol dially ether)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(1,1,1-trimethylolpropane trimethacrylate;TMPTA)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0035】
幾つかの実施形態では、光開始剤は、ビス(1-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-ピロリル)チタノセン(bis(2,6-difluoro-3-(1-hydropyrro-1-yl)- phenyl)titanocene)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(phenylbis-(2,4,6-trimethylbenzoyl)- phosphine oxide)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(2-hydroxy-2-methyl-1-phenyl-1-porpanone)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0036】
幾つかの実施形態では、レンズ材料はシロキサン化合物を更に含む。より詳細には、レンズ本体は、レンズ材料を硬化させることによって形成され、レンジ材料は、親水性ビニル系モノマー、架橋剤、シロキサン化合物、及び光開始剤を含む。幾つかの実施形態では、シロキサン化合物は、シリコーンモノマー、シリコーンポリマー、シリコーンプレポリマー、又はそれらの組み合わせを含む。レンズ材料がシロキサン化合物を含む場合、コンタクトレンズはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである。別の実施形態では、レンズ材料はシロキサン化合物を含まず、コンタクトレンズはハイドロゲルコンタクトレンズである。
【0037】
幾つかの実施形態では、シリコーンモノマーは、以下の式(1)の構造を有する。
【化1】

【化2】
であり、Lは、C3~C7のアルキレン基又は
【化3】
であり、Rは、メチル基又は
【化4】
であり、*は、式(1)中の結合位置である。
【0038】
幾つかの実施形態では、シリコーンポリマーは、式(2)の構造を有する。
【化5】
は、C3~C10のアルキレン基、
【化6】
であり、Sは、
【化7】
であり、Rは、C3~C5のアルキル基であり、nは、3~20の整数であり、*は、式(2)中の結合位置である。
【0039】
幾つかの実施形態では、シリコーンプレポリマーは、式(3)の構造を有する。
【化8】

【化9】
であり、Lは、C2-C5のアルキレン基であり、mは、10~50の整数であり、*は、式(3)中の結合位置である。
【0040】
図1を参照する。図1は、本開示の様々なの実施形態による薬物組成物を含有するコンタクトレンズの製造模式図である。本開示は、前述のいずれかの実施形態のコンタクトレンズの製造方法を提供し、それは、レンズ本体110を、容器130内に収容されている薬物溶液120に浸漬する工程を含む。薬物溶液120は、抗ヒスタミン薬成分、抗炎症薬成分又はそれらの組み合わせ、及び緩衝溶液を含み、抗ヒスタミン薬成分は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬成分は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含み、薬物溶液は、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせを含まない。浸漬プロセスにおいて、薬物溶液120における抗ヒスタミン薬成分、抗炎症薬成分、又はそれらの組み合わせは、徐々にレンズ本体110に吸着する。幾つかの実施形態では、レンズ本体110を浸漬した後、レンズ本体110及び薬物溶液120を封止して、湿熱滅菌を行う。
【0041】
幾つかの実施形態では、薬物溶液において、抗ヒスタミン薬成分の質量濃度は0.01%~0.3%であり、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、又は0.3%である。幾つかの実施形態では、薬物溶液において、抗炎症薬成分の質量濃度は、0.01%~1%であり、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.5、又は1%である。幾つかの実施形態では、薬物溶液の浸透圧は250Osm/Kg~450Osm/Kgであり、例えば250、300、350、400、又は450Osm/Kgである。幾つかの実施形態では、薬物溶液のpH値は5.5~8.0であり、例えば5.5、6、6.5、7、7.5、又は8である。薬物溶液における抗ヒスタミン薬成分の質量濃度、抗炎症薬成分の質量濃度、浸透圧値及び/又はpH値が上記範囲内にある場合、抗ヒスタミン薬成分及び/又は抗炎症薬成分が効果的にレンズに吸着することができ、それによりレンズは十分且つ良好な抗アレルギー及び抗炎症の治療効果を有する。
【0042】
幾つかの実施形態では、レンズ本体を薬物溶液に浸漬した後、薬物溶液における抗炎症薬成分を100wt%として、1wt%~20wt%の抗炎症薬成分がレンズ本体に吸着し、例えば1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、又は20wt%である。幾つかの実施形態では、レンズ本体を薬物溶液に浸漬した後、薬物溶液における抗ヒスタミン薬成分を100wt%として、1wt%~55wt%の抗ヒスタミン薬成分がレンズ本体に吸着し、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55wt%である。浸漬時間を調整することで、上記薬物成分の吸着率を向上させることができる。また、抗ヒスタミン薬成分は、抗炎症薬成分のレンズ本体への吸着率を向上させることができ、抗炎症薬成分も、抗ヒスタミン薬成分のレンズ本体への吸着率を向上させることができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、緩衝溶液は、ホウ酸塩系緩衝溶液、リン酸塩系緩衝溶液、炭酸塩系緩衝溶液、又はクエン酸塩系緩衝溶液である。幾つかの実施形態では、ホウ酸塩系緩衝溶液は、水、塩化ナトリウム、ホウ酸及び/又はその塩類を含む。ホウ酸及び/又はその塩類は、ホウ酸、アルカリ金属ホウ酸塩、及びアルカリ土類金属ホウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の材料であり、好ましくはホウ酸及び/又は四ホウ酸ナトリウムである。幾つかの実施形態では、上記リン酸塩系緩衝溶液は、水、塩化ナトリウム、リン酸及び/又はその塩類を含む。リン酸及び/又はその塩類は、リン酸、アルカリ金属リン酸塩、及びアルカリ土類金属リン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の材料であり、好ましくは、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、及びリン酸二水素カリウムからなる群から選択される少なくとも一種の材料である。
【0044】
本開示は、薬物組成物を含有するコンタクトレンズを提供し、それはレンズ本体及びレンズ本体に吸着する薬物組成物を含む。レンズ本体は、レンズ材料を硬化させることによって形成される。レンジ材料は、親水性ビニル系モノマー、架橋剤、ロタキサン分子、及び光開始剤を含み、ロタキサン分子は、少なくとも1つの環状分子、及び少なくとも1つの環状分子を串刺し状に貫通する少なくとも1つの直鎖状分子を含む。薬物組成物は、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、又はそれらの組み合わせを含み、抗ヒスタミン薬は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、薬物組成物は、基本的に上記抗ヒスタミン薬及び上記抗炎症薬からなる。
【0045】
幾つかの実施形態では、クロルフェニラミン塩類は、マレイン酸クロルフェニラミン(CPM)を含む。幾つかの実施形態では、グリチルリチン酸塩は、グリチルリチン酸カリウム塩、グリチルリチン酸ナトリウム塩、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、抗ヒスタミン薬は、マレイン酸クロルフェニラミン(CPM)であり、抗炎症薬は、グリチルリチン酸ジカリウム(DG)である。コンタクトレンズにCPMとDGを同時に担持する場合、CPMはDGの放出率を減少させ、DGを徐放させ、レンズ本体でのDGの担持量も向上させることができる。幾つかの実施形態では、薬物組成物は、基本的にCPM及びDGからなる。
【0046】
幾つかの実施形態では、コンタクトレンズにおいて、抗炎症薬の含有量は5μg~400μgであり、例えば5、10、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、又は400μgである。例えば、抗炎症薬はDGである。幾つかの実施形態では、抗ヒスタミン薬の含有量は1μg~400μgであり、例えば1、10、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、又は400μgである。例えば、抗ヒスタミン薬はCPMである。幾つかの実施形態では、抗炎症薬と抗ヒスタミン薬との重量比は、1:1~30:1であり、例えば、1:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、又は30:1である。抗炎症薬及び/又は抗ヒスタミン薬の含有量が上記範囲内にあるか、又は重量比が上記範囲内にある場合、コンタクトレンズは十分且つ良好な抗アレルギー及び抗炎症の治療効果を有することができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、レンズ材料は、シロキサン化合物を更に含み、それによりシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを形成する。他の幾つかの実施形態において、レンズ用材料は、シロキサン化合物を含まず、それによりハイドロゲルコンタクトレンズを形成する。親水性ビニル系モノマー、架橋剤、光開始剤、及びシロキサン化合物の実施形態は、前述の実施形態を参照する。ここで繰り返して説明しない。
【0048】
幾つかの実施形態では、親水性ビニル系モノマーは60重量部~99.85重量部、架橋剤は0.01重量部~2重量部、光開始剤は0.01重量部~2重量部、ロタキサン分子は0.1重量部~15重量部である。
【0049】
幾つかの実施形態において、ロタキサン分子はポリロタキサンであり、詳細には、ロタキサン分子は複数の環状分子を含む。ロタキサン分子は薬物を担持できる特性を有し、環状分子及び直鎖状分子の間には薬物成分を担持するのに十分な空間がある。換言すれば、薬物成分が環状分子に取り込まれて安定した状態を呈することができるため、コンタクトレンズは薬物を担持してゆっくり放出させる効果を有する。ロタキサン分子をレンズ材料中に均一に分散させ、所望の効果を発揮させるために、幾つかの実施形態では、少なくとも1つの環状分子と少なくとも1つの直鎖状分子との重量比は、1:1~50:1であり、例えば、1:1、5:1、10:1、20:1、30:1、35:1、40:1、又は50:1である。重量比が上記範囲を超えると、ロタキサン分子が薬物成分を担持及び徐放する効果が不十分となるおそれがある。幾つかの実施形態では、ロタキサン分子と親水性ビニル系モノマーとの重量比は、1:6~1:99であり、例えば、1:6、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、又は1:99であるが、本開示はそれに限定されない。重量比が上記範囲の下限を下回ると、ハイドロゲル組成物においてロタキサン分子が均一に分散せず、レンズの屈折率や光透過率が悪くなるおそれがある。重量比が上記範囲の上限を超えると、ロタキサン分子がレンズにおいて、例えば薬物成分を効果的に担持及び徐放するという所望の効果を発揮することができないおそれがある。
【0050】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの環状分子は、シクロデキストリン、その誘導体、又はそれらの組み合わせである。シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、(2-ヒドロキシプロピル)-γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びメチル-β-シクロデキストリンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0051】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの環状分子は、クラウンエーテル(crown ether)、その誘導体、又はそれらの組み合わせである。クラウンエーテルは、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、2-(ヒドロキシメチル)-12-クラウン-4-エーテル、2-(ヒドロキシメチル)-15-クラウン-5-エーテル、及び2-(ヒドロキシメチル)-18-クラウン-6-エーテルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0052】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの直鎖状分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びポリプロピレングリコール(PPG)からなる群から選択される少なくとも1つである。幾つかの実施形態では、直鎖状分子の平均分子量は、200~20、000の間にあり、例えば、4000、8000、10000、又は15000である。平均分子量が上記区間にある場合、ロタキサン分子における直鎖状分子が十分に長いセグメントを有し、それにより環状分子は直鎖状分子上でスライドできる十分な空間があり、且つ直鎖状分子から容易に脱離しない。したがって、直鎖状分子の両端は、環状分子の脱離を防ぐための封鎖(slopper/capping)を必要としなくてもよい。
【0053】
本開示は、前述のいずれかの実施形態のコンタクトレンズの別の製造方法を提供する。それは、レンズ本体を薬物溶液に浸漬する工程を含み、薬物溶液は、抗ヒスタミン薬成分、抗炎症薬成分又はそれらの組み合わせ、及び緩衝溶液を含み、抗ヒスタミン薬成分は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン塩類、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩類、オロパタジン、オロパタジン塩類、エメダスチン、エメダスチン塩類、レボカバスチン、レボカバスチン塩類、又はそれらの組み合わせを含み、抗炎症薬成分は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを含む。緩衝溶液の実施形態は、前述の実施形態を参照する。ここで繰り返して説明しない。浸漬プロセスにおいて、薬物溶液における抗ヒスタミン薬成分、抗炎症薬成分、又はそれらの組み合わせは、徐々にレンズ本体に吸着する。幾つかの実施形態では、レンズ本体を浸漬した後、レンズ本体及び薬物溶液を封止して、湿熱滅菌を行う。
【0054】
幾つかの実施形態では、薬物溶液において、抗ヒスタミン薬成分の質量濃度は0.01%~0.3%である。幾つかの実施形態では、薬物溶液において、抗炎症薬成分の質量濃度は0.01%~1%である。幾つかの実施形態では、薬物溶液の浸透圧は250Osm/Kg~450Osm/Kgである。幾つかの実施形態では、薬物溶液のpH値は5.5~8.0である。上記のこれらの実施形態の数値及び利点については、前述の実施形態を参照する。ここで繰り返して説明しない。
【0055】
幾つかの実施形態では、レンズ本体を薬物溶液に浸漬した後、薬物溶液における抗炎症薬成分を100wt%として、1wt%~20wt%の抗炎症薬成分がレンズ本体に吸着し、例えば1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、又は20wt%である。幾つかの実施形態では、レンズ本体を薬物溶液に浸漬した後、薬物溶液における抗ヒスタミン薬成分を100wt%として、1wt%~55wt%の抗ヒスタミン薬成分がレンズ本体に吸着し、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55wt%である。浸漬時間を調整することで、上記薬物成分の吸着率を向上させることができる。また、抗ヒスタミン薬成分は、抗炎症薬成分のレンズ本体への吸着率を向上させることができる。
【0056】
以下、実験例1~3を参照して、本開示の特徴をより具体的に説明する。以下の実施例を説明するが、使用される材料、その量、割合、処理詳細、処理手順等は、本発明を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。したがって、以下の実験例によって本開示を限定的に解釈するべきではない。
【0057】
実験例1:薬物組成物を含有するイオン性ハイドロゲルコンタクトレンズの製造及びその性質検出
【0058】
イオン性のハイドロゲルコンタクトレンズを製造するプロセスは、親水性ビニル系モノマー(2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及びメタクリル酸(MAA))、架橋剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTA)及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA))、及び光開始剤を混合し、上記成分をモールドで成形し、離型してレンズ本体を得る工程を含む。モールドで成形する際に、混合した上記成分に光を当てて重合硬化させる。
【0059】
実施例1-1、実施例1-2、及び実施例1-3の薬物溶液を製造する。実施例1-1の薬物溶液を調製するプロセスは、100gのホウ酸塩系緩衝溶液に100mgのDGを加え、pH値が6.8である実施例1-1の薬物溶液を得る工程を含み、ここでDGの質量濃度は0.1%である。実施例1-2の薬物溶液を調製するプロセスは、100gのホウ酸塩系緩衝溶液に100mgのDG及び60mgのCPMを加え、pH値が6.0である実施例1-2の薬物溶液を得る工程を含み、ここでDGの質量濃度は0.1%であり、CPMの質量濃度は0.06%である。薬物溶液の浸透圧は350Osm/Kgである。実施例1-3の薬物溶液を調製するプロセスは、100gのホウ酸塩系緩衝溶液に60mgのCPMを加え、pH値が6.0である実施例1-3の薬物溶液を得る工程を含む。
【0060】
レンズ本体を1.3mLの実施例1-1の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例1-1のコンタクトレンズを得る。レンズ本体を1.3mLの実施例1-2の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例1-2のコンタクトレンズを得る。1.3mLの薬物溶液は、1300μgのDG及び780μgのCPMを含む。レンズ本体を1.3mLの実施例1-3の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例1-3のコンタクトレンズを得る。
【0061】
上記実施例1-1、1-2及び1-3のコンタクトレンズのDG含有量、DG吸着率、CPM含有量、及びCPM吸着率を検出する。本明細書におけるDG吸着率とは、最初の薬物溶液におけるDGを100wt%として、レンズ本体が薬物溶液に浸漬された後、レンズ本体に吸着したDGの割合を指す。本明細書におけるCPM吸着率とは、最初の薬物溶液におけるCPMを100wt%として、レンズ本体が薬物溶液に浸漬された後、レンズ本体に吸着したCPMの割合を指す。レンズを拭き取った後、1mLのメタノールでレンズ中のCPM及びDGを抽出し、そして高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography;HPLC)で抽出液を分析することで、レンズ中のCPM及びDGの含有量、並びにCPM及びDGのレンズへの吸着率を知る。検出結果は以下の表1を参照する。nはレンズの数を表すため、表内の数字は平均値である。表1から分かるように、CPMはレンズでのDGの担持量を向上させることができ、CPMはDGの担持量を約3.6倍向上させることができる。また、DGは、レンズでのCPMの担持量も向上させることができる。
【表1】
【0062】
薬物放出実験を行う。上記実施例1-1、1-2及び1-3のコンタクトレンズをそれぞれ1mLの0.9wt%生理食塩水に浸漬し、そして恒温振とう機(35℃、50rpm)に入れ、コンタクトレンズ中の薬物を生理食塩水に放出させる。それぞれ1、2、4、8時間後にレンズを取り出し、レンズを拭き取った後、1mLのメタノールでレンズに残ったCPM及びDGを抽出し、そしてHPLCで抽出液を分析することで、レンズに残ったCPM及びDGの含有量を知る。したがって、異なる薬物放出時間でのDGの放出率(%)を算出することができる。検出結果は以下の表2及び図2を参照する。図2において、曲線210は実施例1-1の検出結果であり、曲線220は実施例1-2の検出結果である。また、異なる薬物放出時間でのCPMの放出率(%)を算出することができる。検出結果は以下の表3を参照する。
【表2】
【表3】
【0063】
表2及び図2から分かるように、CPMの存在により、DGの放出率が低下し、1時間目に放出率が50%、2時間目に放出率が48%、4時間目に放出率が42%、8時間目に放出率が29%低下した。8時間目に、実施例1-2のレンズの放出率はわずか65%であり、これは、CPMがDGのレンズからの放出を確実に低減できることを意味する。表3から分かるように、CPMの1時間目の放出率は約50%であり、2時間目から8時間目までの放出率は50%~60%であり、これにより、CPMはすぐに生理食塩水に放出され、すぐに平衡状態に達することが分かる。レンズがDGを含むか否かは、CPMの放出に大きな影響を与えない。
【0064】
実験例2:薬物組成物を含有する中性ハイドロゲルコンタクトレンズの製造及びその性質検出
【0065】
中性(非イオン性)ハイドロゲルコンタクトレンズを製造するプロセスは、親水性ビニル系モノマー(2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及び2-メチル-2-アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル(GMMA))、架橋剤(エチレングリコールジメタクリレート)、及び光開始剤を混合し、上記成分をモールドで成形し、離型した後、レンズ本体を得る工程を含む。モールドで成形する際に、混合した上記成分に光を照射して重合硬化させる。
【0066】
実施例2-1、実施例2-2、及び実施例2-3の薬物溶液を製造する。実施例2-1の薬物溶液は実施例1-1の薬物溶液の製造方法と同じであり、実施例2-2の薬物溶液は実施例1-2の薬物溶液の製造方法と同じであり、実施例2-3の薬物溶液は実施例1-3の薬物溶液の製造方法と同じであるため、繰り返して説明しない。
【0067】
レンズ本体を1.3mLの実施例2-1の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例2-1のコンタクトレンズを得る。レンズ本体を1.3mLの実施例2-2の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例2-2のコンタクトレンズを得る。レンズ本体を1.3mLの実施例2-3の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例2-3のコンタクトレンズを得る。
【0068】
実験例1におけるレンズのDG含有量、DG吸着率、CPM含有量、及びCPM吸着率の検出プロセス及び実験条件を参照して、実施例2-1、2-2及び2-3のレンズに検出を行う。検出結果は以下の表4を参照する。表4から分かるように、CPMはレンズでのDGの担持量を向上させることができる。また、DGは、レンズでのCPMの担持量も向上させることができる。
【表4】
【0069】
実験例1における薬物放出実験のプロセス及び実験条件を参照して、実施例2-1、2-2及び2-3のレンズに検出を行うが、実験例2において、コンタクトレンズは0.9wt%の生理食塩水ではなく、1mLの中性ホウ酸系塩水に浸漬して薬物放出を行う。異なる薬物放出時間におけるDGの放出率(%)の検出結果は以下の表5を参照する。異なる薬物放出時間におけるCPMの放出率(%)の検出結果は以下の表6を参照する。
【表5】
【表6】
【0070】
表5から分かるように、薬物放出時間が異なる場合、CPMはレンズからのDG放出を遅らせることができる。表6から分かるように、CPMの1時間目から8時間目までの放出率は70%~80%の間であり、これにより、CPMはすぐに生理食塩水に放出され、すぐに平衡状態に達したことが分かる。レンズがDGを含むか否かは、CPMの放出に大きな影響を与えない。
【0071】
実験例3:ロタキサン分子を含有するハイドロゲルコンタクトレンズの製造及びその性質検出
【0072】
ロタキサン分子を含有するハイドロゲルコンタクトレンズを製造するプロセスは、親水性ビニル系モノマー(2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及び2-メチル-2-アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル(GMMA))、2.5wt%ロタキサン分子(環状分子がγ-シクロデキストリン、直鎖状分子がPEG、γ-シクロデキストリンとPEGの重量比が3.6:1)、架橋剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTA))、及び光開始剤を混合し、上記成分をモールドで成形し、離型した後、レンズ本体を得る工程を含む。モールドで成形する際に、混合した上記成分に光を照射して重合硬化させる。
【0073】
実施例3-1、実施例3-2、及び実施例3-3の薬物溶液を製造する。実施例3-1の薬物溶液は実施例1-1の薬物溶液の製造方法と同じであり、実施例3-2の薬物溶液は実施例1-2の薬物溶液の製造方法と同じであり、実施例3-3の薬物溶液は実施例1-3の薬物溶液の製造方法と同じであるため、繰り返して説明しない。
【0074】
レンズ本体を1.3mLの実施例3-1の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例3-1のコンタクトレンズを得る。レンズ本体を1.3mLの実施例3-2の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例3-2のコンタクトレンズを得る。レンズ本体を1.3mLの実施例3-3の薬物溶液に浸漬し、両者を封止してから湿熱滅菌を行うことにより、実施例3-3のコンタクトレンズを得る。
【0075】
実験例1におけるレンズのDG含有量、DG吸着率、CPM含有量、及びCPM吸着率の検出プロセス及び実験条件を参照して、実施例3-1、3-2及び3-3のレンズに検出を行う。検出結果は以下の表7を参照する。表7から分かるように、CPMはレンズでのDGの担持量を向上させることができる。また、DGは、レンズでのCPMの担持量も向上させることができる。
【表7】
【0076】
実験例1における薬物放出実験のプロセス及び実験条件を参照して、実施例3-1、3-2及び3-3のレンズに検出を行う。異なる薬物放出時間におけるDGの放出率(%)の検出結果は以下の表8を参照する。異なる薬物放出時間におけるCPMの放出率(%)の検出結果は以下の表9を参照する。
【表8】
【表9】
【0077】
表8から分かるように、薬物放出時間が異なる場合、CPMはレンズからのDG放出を遅らせることができる。表9から分かるように、CPMの1時間目から8時間目までの放出率は50%~65%の間であり、これにより、CPMはすぐに生理食塩水に放出され、すぐに平衡状態に達したことが分かる。
【0078】
以上より、本開示の提供する薬物組成物を含有するコンタクトレンズは、視力を矯正することができ、アレルギー性結膜炎を治療する良い効果を有する。コンタクトレンズが抗ヒスタミン薬及び抗炎症薬を同時に担持する場合、抗ヒスタミン薬は抗炎症薬をゆっくり放出させることができ、レンズ本体での抗炎症薬の担持量を向上させることができ、抗炎症薬も抗ヒスタミン薬の担持量を向上させることができる。したがって、コンタクトレンズは、優れた生物学的利用性を有し、アレルギー性結膜炎を治療する良い効果を有することができる。
【0079】
幾つかの実施形態を参照して本開示をかなり詳細に説明したが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0080】
当然ながら、当業者であれば、本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本開示の構成に対して様々な修正や変更を行うことができる。上記内容に鑑み、本開示は、添付の特許請求の範囲に落ちる本開示の修正や変更をカバーすることを意図する。
【符号の説明】
【0081】
110 レンズ本体
120 薬物溶液
130 容器
210、220 曲線
図1
図2