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特開2025-32976樹脂成形体と、その製造方法、及び製造装置。溶融樹脂の流動性の向上付与の手段。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032976
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】樹脂成形体と、その製造方法、及び製造装置。溶融樹脂の流動性の向上付与の手段。
(51)【国際特許分類】
B29C 45/57 20060101AFI20250305BHJP
【FI】
B29C45/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124611
(22)【出願日】2024-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2023138230
(32)【優先日】2023-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
2.iPhone
(71)【出願人】
【識別番号】711008836
【氏名又は名称】鈴木 康公
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康公
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA28
4F206AB02
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JM05
4F206JM13
4F206JN11
4F206JN21
4F206JN27
4F206JQ26
4F206JQ81
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明はエステル構造を含む樹脂の発泡成形に於いて物性の低下がなく/少なく、表面が綺麗で、平滑な発泡成形品を製造する手段を提供する。
【解決手段】成形機加熱筒内に熱可塑性樹脂を主成分とする成形材料を投入して、前記成形材料を溶融混練(可塑化、計量を含む。)する工程に於いて、前記成形材料の溶融混練の段階で、加熱筒内の成形樹脂に、液体を入れて、前記液体は加熱筒の温度、溶融樹脂の温度で、前記液体は気化して蒸気となり、前記液体の蒸気は、スクリュー回転などの物理的な力によって、加圧溶解、又/及び微分散させ、該溶融樹脂の流動性を上げる工程と、前記流動性を向上させた前記溶融樹脂を、キャビティ内に充填する工程とからなる樹脂成形品の製造方法。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機加熱筒内に熱可塑性樹脂を主成分とする成形材料を投入して、前記成形材料を溶融混練(可塑化、計量を含む。)する工程に於いて、
前記成形材料の溶融混練の段階で、加熱筒内の成形樹脂に、液体を入れて、
前記液体は加熱筒の温度、溶融樹脂の温度で、前記液体は気化して蒸気となり、
前記液体の蒸気は、スクリュー回転などの物理的な力によって、加圧溶解、又/及び微分散させ、該溶融樹脂の流動性を上げる工程と、
前記流動性を向上させた前記溶融樹脂を、キャビティ内に充填する工程とからなる樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記請求項1に於いて、キャビティ内に充填された該溶融樹脂に、溶融樹脂の充填の途中、充填後に、成形機スクリューを用いて樹脂保圧を掛けて、
キャビティ内に充填された溶融樹脂の密度を高める工程とからなる樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記請求項1、又は/及び前記請求項2に於いて、キャビティ内に充填された該溶融樹脂の内部(中に、内側に、)に、大気圧以上の大なる圧力のガスをノズル、又は/及びスプール・ランナー、又は/及び直接キャビティ内に充填された溶融樹脂の中に注入して、
前記ガスの圧力によって、成形品の内部から、溶融樹脂を加圧して、樹脂の密度を高める工程とからなる樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記請求項1、又は/及び前記請求項2に於いて、キャビティ内に充填された該溶融樹脂の外部(樹脂と金型との隙間、外に、外側に、)に、大気圧以上の大なる圧力のガスを入れて、
前記ガスの圧力によって、成形品の外部から、溶融樹脂を加圧して、金型への転写性を高める工程、樹脂の密度を高める工程とからなる樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記請求項1、又は/及び請求項4に於いて、シール金型を用い、予め金型内を大気圧以上に加圧した気体を用いて、気体によって加圧をした中に、
液体によって流動性を高めた溶融樹脂を充填する前記請求項1、又は/及び請求項4記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記請求項3於いて、シール金型を用い、予め金型内を大気圧以上に加圧したキャビティ内に、液体を用いて流動性を高めた樹脂を充填する請求項3記載の中空成形品の製造方法。
【請求項7】
前記請求項4於いて、シール金型を用い、予め金型内を大気圧以上に加圧したキャビティ内に、液体を用いて流動性を高めた樹脂を充填する請求項4記載の圧空成形品の製造方法。
【請求項8】
加熱溶融した加熱筒内へは、液体に、必要に応じて気体も入れて加熱筒内の溶融樹脂の流動性を高める。
【請求項9】
液体を注入して、加熱筒内の溶融樹脂の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる工程と、
前記液体によって粘度が下げられ、流動性が向上した前記溶融樹脂中に、別に設けた注入口から気体を注入する工程とからなる。
本発明で使用する溶融混錬のスクリューは、加熱筒の設けた液体を注入する口の後方に逆流防止のリングを設けた樹脂に液体、続いて気体を注入する溶融混練用のスクリュー。
【請求項10】
前記請求項1、乃至請求項9の何れかで使用する熱可塑性樹脂は、無機物、又は/及び有機物の樹脂添加剤が配合されている熱可塑性樹脂を主成分とした成形用加工用の成形材料。
【請求項11】
前記請求項1、乃至請求項9の何れかの加工法、成形材料を用いて成形加工された樹脂成形品。
【請求項12】
前記請求項1、乃至請求項9の何れかの加工法、成形材料を用いて成形加工を行う際に使用する金型装置。
【請求項13】
前記請求項1、乃至請求項9の何れかの加工法、成形材料を用いて成形加工を行う際に使用する成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、23℃でそれに掛かる圧力が1気圧、所謂NPTの雰囲気で、性状が気体(ガス)又は/及び(;本発明に於いて「又は/及び」は「少なくとも一つ以上」と読み替えも出来る。)、液体又は/及び、固体の発泡剤を用いて発泡成形を行う樹脂の射出発泡成形加工に於(お)いて、
金型構造が2枚型の構造、又は3枚型以上の構造の何れかで、キャビティ内に発泡性樹脂を充填させ、モールド・バック、又は/及びコア・バックして発泡倍率の高い発泡成形品を得る手段を提供する。「気体状、気状」とは気体の状態を言い、「液体状、液状」とは性状が液体を言い、「固体の状態」とは固体である事を示し、何れもNPTに於ける性状を示す。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂(プラスチック)と発泡剤とからなる成形材料をインサートが配置された型内に未充填部を残してショート・ショットし、発泡剤の発泡による膨張力で未充填部を充填する発泡成形方法が記載されている。樹脂は、母材樹脂と、母材樹脂と同種で母材樹脂より低分子量の低分子量樹脂とからなる。
特許文献2には、発泡成形に於いて表面に発生するスワール・マーク{(発泡縞模様)略号は「SM」}を抑える手段のガス・カウンター・プレッシャー(略号は「GCP」)法と、その金型構造が説明され、U字形状のOリング、加重式Oリングの使用が記載されている。
特許文献4には、液体を用いた発泡成形は記載され、十分な説明がなされているが、PC、PC系樹脂のポリマーアロイの発泡成形に用いる有用な発泡剤は水だけである事(こと)と、起泡核剤を用いての発泡セルの微細化は、実施例など(等)を用いて具体的には示されていない。
特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7には、エジェクターピンを荷重式Oリングを用いてシールする手段は記載されているが、スライド・コアの為の傾斜ピンを入子などを用い固定し、そ(其)の入子をボルトで更に固定して、傾斜コアのロットを荷重式Oリングでシールする具体的な手段は記載されていない。
特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7には、モールド・バック、コア・バックを用いての発泡倍率を高める手段の説明はあるが、3枚型以上の構造の金型ではPLを先に開かなければ発泡倍率を高める事は出来ない。PLにバネなどを用いて、配置して強制的にPLが先に開く事が必要な構造の記載はされていない。又先にストリッパー・プレートを開き、ピンゲートをカットしてから、PLを開きモールド・バック、コア・バックを実施(実行)する場合にストリッパー・プレートにも、そしてPLにもバネなどを入れPLも一定量(距離)を金型後退が可能な金型構造は示されていない。
特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7には、エジェクター・プレートを2セット用い、押出す軸体であるエジェクターピンを配置するプレートと、流体加圧前に後退する外筒が配されたエジェクター・プレートを持つ金型構造は、圧空成形での金型装置として示されている。圧空成形では成形品の中にガスが入りとダメ(No Good)で、金型と樹脂との隙間に加圧流体が入る様(よう)に、流体加圧前に外筒を後退させ、空間を作り、その中に加圧流体を入れる事で加圧流体の圧力が分散され中空とならない事は示されているが、加圧流体を成形品の中に入れ、中空部を作り、中空部の中から加圧する所謂中空成形で、十分加圧後に、中空部内部の加圧流体は不要、残圧を完全になくす目的で、ガス注入ピン(内部に中空部を形成させる流体加圧ピン、流体加圧の用いるピン)を後退させ、一気に排気する事で残圧をなくす手段は、中空成形での課題である膨れが簡単に、然も確実に解決する事は示されていない。
三菱ガス化学(株)の中空成形ではシンプレスノズルと言う油圧シリンダーを持たせたガス注入のノズルの構造(シンプレスノズル)が示されているが、油圧シリンダーが邪魔になって所望する場所での、ガス注入が出来ない。或いは複数の場所からのガス注入が必要な場合には、金型のエジェクターピンの設置が、前記が油圧シリンダーを持たせたガス注入ノズルが邪魔になって制約が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-103919号公報
【特許文献2】特開平11-216748号公報
【特許文献3】国際公開第2003/026357号公報
【特許文献4】国際出願番号PCT/JP2015/062611号公報
【特許文献5】国際出願番号PCT/JP2015/069216号公報
【特許文献6】国際出願番号PCT/JP2016/086380号公報
【特許文献7】国際出願番号PCT/JP2020/15536号公報
【発明の開示】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
本発明の課題は、高い発泡倍率の発泡成形品を得るには、キャビティに発泡性樹脂を充填後にモールド・バック、コア・バックをして、キャビティを開ける必要がある。
(課題を解決するための手段)
【0005】
モールド・バック、コア・バックをした時に金型のPLを強制的に開ける機構(先型開機構、金型開機構、型開機構)を、金型に組み込んだ。
【発明の構成、作用、効果】
【0006】
(構成)
記記載の第1発明は、成形機加熱筒内に樹脂を入れて、樹脂を溶融(加熱して融かす、)工程、溶融された樹脂(スクリューの溶融ゾーンの樹脂)に、圧縮され溶融樹脂の密度が上げられた樹脂(スクリューの圧縮ゾーンの樹脂)に、温度が23℃、圧力が1気圧(atm、76mmHg、1013ヘクトパスカル)の状態で液体を示す物質を、溶融樹脂の容量に対して、容量制御した量を入れ(加熱筒に注入し、)、加熱用の温度、樹脂の温度のよって気化させ、その蒸気(気体)を、スクリューの回転の力のよって溶融樹脂の中に加圧溶解させて、又は/及び微分散をさせると、溶融樹脂が粘度は下がり、流動性は向上する。
流動性が向上した溶融樹脂はキャビティ内への充填時の流動抵抗が下がり成形加工が容易(低い圧力で充填が出来る。)になる。液体を気化させた気体によって粘度が下げられ、流動性が向上された溶融樹脂を、スクリューにクッションの量を持たせてキャビティ内に充填(充填の後に樹脂保圧が掛けられる様にクッション量を持たせる。)し、充填後にスクリューを用いた樹脂保圧を掛けて、発泡層を、発泡セルを潰し、溶融樹脂の密度を高める。液体を用いるが、液体は特許文献4などで示した様に発泡剤として作用するので、発泡させない、発泡層を持たない、発泡層を、発泡セルをのない成形品を得るには樹脂保圧を用いる事は有効、それ以外には圧力の高いGCP、中空成形、圧空成形によっても発泡層を、発泡セルを潰され、発泡性ガス、、液体などは成形品の外に押し出される。この様にして得られた成形品は液体を用いないで成形した成形品とは重量の差は殆どない。流動性が上げられるので、樹脂保圧の伝達が十分でである。場合はより液体を用いない場合より重くなる場合もある。この様の重量は樹脂保圧によって変化する。
【0007】
場合によっては液体に、必要に応じて気体も併用して流動性は高めても良い。従来の射出発泡成形の成形(キャビティ内への充填)条件は、油圧機の場合は、保圧を用いないのでスクリューは前進端の一杯まで押し切るのが一般的であった。必要に応じて、充填時の反作用{キャビティ内に充填された溶融樹脂の圧力(反力)でスクリューが戻される。}を避ける為に押し切った後0.5秒程度の短い時間で、弱い保圧を掛けて、その場で一旦スクリューを止めて、キャビティ内への溶融樹脂の充填量を安定させ、発泡を安定にさせる。
電動機ではVP切り替え位置まで押し切り、その後に必要に応じて、前記スクリューを一旦止めて、充填量を安定させる。本発明では油圧機、電動機何れもスクリューを押し切らずに、従来の一般成形と同様に十分なクッション量、例えば製品重量の20%程度を設けて、キャビティ内に前記液体、気体を含む溶融樹脂を充填した後に、十分な圧力と時間との樹脂保圧を掛け、例えば外観の欠点であるヒケなどをなくす目的に液体を用いる事は、従来から射出発泡成形とに大きな違い(差違)がある。別言をすれば本発明は液体などを用いて流動性を大きく向上させ、溶融樹脂の粘度を下げた樹脂を用いての一般成形の加工である。
前記液体を用いて溶融樹脂の流動性を高める事を示したがそれ以外に、金型の表面、即ち溶融樹脂と接する面(意匠面の固定側に限らず、非意匠面の可動側にも、)に、細かなシボ加工、或いはTiN、CrN、WC、DLCなどのセラミックコーティングを施すだけでも流動性は伸びるので、前記液体、気体を用いる事と同時に行えば、相乗効果によって更に流動性は向上する。ノズルは洟垂れ防止を目的にシャット・オフ・ノズルを用いる事が好ましい。液体を加熱筒に入れる事を説明したが、ノズルに液体を注入する口を設け、溶融樹脂を射出の段階で液体を注入して、加圧溶融、微分散させて溶融樹脂の流動性を高める事も出来る。
【0008】
(発泡成形と一般成形との違い。)
熱可塑性樹脂を加熱筒内で加熱溶融すると溶融され流動性を持った状態になる。今これを「溶融状態」、或いは「流動性を持った、或いは持たせた状態」、「流動可能な状態」、「加熱溶融され、流動性を持った、或いは持たせた状態」などと言う。加熱筒内ではこの溶融状態の樹脂は加熱筒内では背圧などが掛かっているので、溶融樹脂の密度は幾分かは高くなっている。この加熱筒内の溶融樹脂をキャビティ内に射出(充填)始めると、キャビティ内に充填された溶融状態の樹脂は、充填の途中では溶融状態の樹脂に掛る、例えば加熱筒内での背圧、充填圧などの圧力は解放される。このまま溶融状態の樹脂をキャビティ一杯(;キャビティの体積と、溶融樹脂との体積とを同じにしたとすると、)に充填をして、そのままキャビティ内で冷却・固化させると、前記溶融状態の樹脂は、冷却され、固化した段階で、その体積はABSなどのスチレン系樹脂では約5%程度、PPなどのオレフィン系樹脂では約10%前後減少する。これが成形収縮であり、成形収縮の結果、成形品には「ヒケ」と呼ばれる外観の不具合が発生する。このヒケをなくし、表面が綺麗で、平滑なヒケが目立たない、ヒケがない成形品を得るには、一般的には樹脂保圧と言う、成形機のスクリューを用いて、キャビティ内に充填された以上の量(;体積収縮相当分の量、例えばABSでは5%以上を、)の溶融樹脂を充填し、樹脂の密度を上げて、このヒケのなくす工程(;これを「樹脂保圧」の工程)を行う。当然保圧の圧力は高い方が樹脂の密度が上がりヒケなどは少なくなるが、PLなどにバリが張る。樹脂保圧を掛けるとゲート近傍の樹脂の密度は高く、流動末端の樹脂の密度は低くなる。樹脂保圧の圧力を上げればこの差は大きく、結果成形品の内部応力が大きくなるので、成形品の反り・変形が大きくなる。以前発明者は自動車部品で100MPaもの高圧の樹脂保圧を用いた量産を見学した。ここまで圧力を上げないとリブなどの起因するヒケをなくす事は出来ない成形品もある。
【0009】
ならばゲート近傍と、流動末端との保圧効果を出来るだけ少なくするには樹脂の溶融温度を高めれば、流動性は上がる(向上する)ので保圧効果は流動末端にまで及ぶが、溶融樹脂の温度を上げると溶融状態の時の樹脂の密度はもっと低くなるので、結果ヒケは溶融樹脂の温度を上げる前の成形品と比べてもっと大きくなってしまう。又冷却・固化に要する時間が長くなるので、生産性は低下する。
【0010】
ならば樹脂温度を上げないで樹脂の流動性を高める手段として、後述する様に流動支援剤、流動改良剤、低分子に樹脂などを用いて樹脂の改良・改質を行なうが、この場合には、前記樹脂への添加剤を用いる事での樹脂単価のアップは避けられず、又添加剤などでの樹脂の改良・改質を行った結果、樹脂の物理的な、化学的な性質が低下するので、成形品の強度が低下する。
【0011】
(液体を用いての樹脂の流動性の向上の手段。)
発明者は、前に出願した液体を用いた発泡成形(;特許文献4などの国際出願番号PCT/JP2015/062611号公報) に技術内容に於いて、特許文献4に示す様に液体を発泡剤として用いる発泡成形ではなく、加熱筒内の溶融段階の樹脂、溶融樹脂の中に、揮発性の、気化性の、低沸点の液体を入れれば、前記液体は流動性向上剤として大きく作用する。溶融樹脂の温度を上げなくても、又添加剤などを用いなくても、溶融樹脂の流動性が大きく向上する事を見出した。然も前記液体は保圧を用いる事で、それ程高い圧力の保圧用いなくても、一般の成形時の保圧の圧力程度によって成形品の外に搾り出す事が出来る事を見出した。液体を用いる事で溶融温度を高めた際の前記課題、添加剤などを用いた際の経済的な課題、物性低下などの課題を解決した。
【0012】
特許文献4などにも液体を用いて発泡性を付与した射出成形加工で樹脂保圧の記載がある。これはキャビティ内に充填した発泡性樹脂の圧力によってスクリューが戻される危険性がある。キャビティ内に充填した発泡性樹脂の反作用{;キャビティ内に充填された発泡性樹脂の力(;充填された発泡性樹脂の発泡力、発泡性樹脂がスクリュー内の戻ろうとする反力など、)によって、}スクリューが戻されると、発泡成形品の重量のバラツキが大きくなり、結果ショート・モールド、オーバー・パックなどが生じる。発泡成形の場合はキャビティ一杯に発泡性樹脂の充填を完了(;充填圧、一時圧完了の段階)させた後、従来用いる樹脂保圧の30%程度、0.5秒程度の保圧を掛けると、スクリューは戻されないので、重量の安定した発泡成形品が得られる。本発明の様に一般成形と同様な高圧で、数秒、場合によっては数十秒の保圧を掛ければ液体のよって形成した発泡セはが潰(つぶ)れる。潰す事が目的なので、高圧(;樹脂の密度が上がる様な圧力)で、長い時間{;樹脂保圧の作用・効果をキャビティ内の溶融樹脂に十分に伝達(作用)させる。}行う。即ち保圧の目的と工程とに差違があり、此処に特許文献4などと本発明と差違である。本発明は液体と言う発泡剤を用いるが発泡成形させない事が特色である。特許文献4などではスクリューは前進端打ち切ると言っているが、本発明では充填の後樹脂保圧を掛けるのでクッション量を残しての充填をしている。
【0013】
特許文献4などではガス・カンター・プレッシャー法(GCP法、或いは単に「GCP」と言う。)の記載がある。これは発泡成形に於けるスワール・マークをなくし表面が綺麗で、平滑な発泡成形品を得る事(;手段、工程)が述べられている。本発明でも溶融樹脂の流動性向上を目的にした事で、液体に起因するスワール・マーク{;液体を用いた事でのシルバー(銀条)とも言える。これは後述する無乾燥のABSの場合とも似ている。)をなくし、表面に液体、及びその他の理由によるシルバーのない、表面が綺麗で、平滑な一般成形品を得るにはGCPを用いる必要がある。この場合のGCPの圧力によって内部発泡セルを潰ししても構わないので特許文献4、特許文献5などの実施例の1MPaよりもっと高くても構わない。圧空成形を併用する場合は、樹脂と金型との隙間に入れた高圧の気体で発泡セルは潰れ、ソリッド(発泡層を持たない。)になる。故に本発明のGCPと、特許文献4乃至特許文献7で示したGCPの工程、目的、及び作用・効果のも本発明とは差違がある。然しレイン・ドロップ現象回避の為にシボ加工を施す事の目的(;GCPの気体の巻き込み)は同じである
【0014】
液体によって流動性が高められれば、保圧の圧力は下げられ、成形品の内部応力は少なくなる。結果反り・変形の少ないが内部には発泡層を持たない、有さない一般の成形品が得られる。液体によって流動性が高められれば樹脂保圧(;スプール・ランナー、ゲートを介しての、)は下げられるので、ゲート近傍と、流動末端との保圧効果の差(;伝達される保圧の圧力の違い。)は小さくなる。結果ゲート近傍のPL、他のPLなどでのバリの発生は少なくなる。
液体を用い流動性を高めた樹脂では、キャビティ内への充填の抵抗が下がる。樹脂保圧も下げられるので、結果型締(閉)め力は下げられる。よって型締め力の小さな成形機で大きな成形品の加工が出来るので省エネルギーになる。
【0015】
上述した様に溶融樹脂中の液体は流動性向上の役目を終えれば(キャビティ内への溶融樹脂の充填が完了すれば、)樹脂保圧によって液体は搾り出され、成形品への残留はない。この様にして得られた一般成形品の強度は流動性向上の改質をしない場合の一般の樹脂を用いての一般成形品との強度の差はない。反対にそれ以上に樹脂の密度が高められるので強度の高い成形品も得られる。
これも特許文献4などの発泡成形との差違である。発泡成形の内部の発泡セルは実際に内部に発生させたヒケである。別言すれば発泡成形とはヒケを内部に移動させる成形法である。ABS、HIPSなどの発泡成形品に於いて、表面のスワール・マークがある場合は衝撃強度は60%乃至70%程度も低下する。GCP(ガス・カンター・プレッシャー法)を用いて表面にスキン層を形成させた場合でも30%程度衝撃強度は低下する。この様に液体を用いて発泡残渣が成形品の中残ららない発泡成形でも、発泡成形であるので、保圧を用いない分の軽量化(5wt.%の重量減)だけでも、物性の低下は著しい。樹脂保圧を用いた一般成形品と、流動性を液体を用いて高め、樹脂保圧を用いた発泡成形ではない、内部に発泡セルを有しない一般成形品とした成形品の強度は略同じである。これが本発明の液体を用いての流動性の向上の発明であり、特許文献4などとのこれ等(ら)の差違を発明者は本発明の新規性、進歩性を主張する。尚加熱筒内に注入して加熱筒内の溶融樹脂の流動性を上げる液体は、一種類でも良い。数種類のモノを混ぜ合わせても良い。
【0016】
液体だけでなく、気体を併用しても良い(本発明で気体を併用する場合は「液体に、必要に応じて気体を併用して」、「液体に、必要に応じて気体を用いる」、或いは簡単に「液体、及び気体」などと、液体に気体の併用が可能な事を本発明では主張するのでこの様に表現する。)。此処で溶融混錬の「段階」とは、成形材料が加熱筒に設けたヒーターなどの熱によって、溶融を開始する段階、例えば半分程度が溶融した段階、略溶融した段階、完全に溶融した段階の何れかを示す。「キャビティ内に充填する工程」とは、前記溶融樹脂をキャビティ(成形空間)内に充填する工程を言い、充填の開始、又は例えばキャビティ体積の80%程度を充填した段階、又は略充填が完了した段階、又は充填が完了した(例えば射出成形機では一次圧の完了など。)段階の何れかを示す。
【0017】
「樹脂の密度を上げる工程」とは一般的にはキャビティ内に溶融樹脂を充填の後に、スクリューを用いて樹脂保圧を掛ける事と、それ以外に大気圧以上の気体を用いて溶融樹脂の内部から加圧する手段の中空成形と、樹脂と金型との隙間に前記気体を入れて、樹脂の外部から、外側から加圧する圧空成形と、成形機の型締めの機構を用いての圧縮成形などがある。場合によってはこれ等を併用しても良い。
【0018】
発明者はこの樹脂保圧を安定させる為に、キャビティ内への溶融樹脂の充填の時間設定は、充填(一時圧)の時間(t1)と、樹脂保圧(二次圧、三次圧・・など)の時間(t2)とが其々独立をして、別々に設定が出来る仕様(プログラムの、)の成形機と、t=t1+t2と、t1、t2の合計時間を制御する仕様の成形機とがある。保圧の作用・効果を毎(ショット)回安定させるには前記t1、t2其々が別々に設定が出来る事が好ましい。勿論t=t1+t2の合計の時間制御の場合でも実施は可能である。
【0019】
(作用・効果)
樹脂の流動性が高まるので、キャビティ内への充填の抵抗は少なくなる。保圧効果も高められるので一般成形よりも低い圧力のキャビティ内への充填、樹脂保圧が可能、液体、気体などを用いない一般成形時の保圧効果より優れ、低い保圧でもヒケは少なく、PLなどのバリの発生は少なくなる。然も樹脂保圧の圧力の設定は低いので、得られる成形品は反り・変形は一般の成形品に比べて少ない。
充填抵抗が少なくなるので、樹脂保圧を下げる事が出来るので、型締め力は下げられ、結果型締め力の小さな(小型の)射出成形機で、投影面積の大きな成形品の加工が出来る。加工費の低減、省エネルギーなどの効果を奏す。スーパーエンプラ、無機フィラー含有した成形材料など流動性の低い成形樹脂に液体に、必要に応じて気体を用いて流動性を向上させた溶融樹脂では、成形条件の設定の巾が広がり成形加工が容易になる。
【0020】
(構成)
前記請求項2記載の第2発明は、液体などを用いて流動性を高めた溶融樹脂をキャビティ内に充填して、続いて樹脂保圧を掛けて樹脂の密度を高める工程を示している。
【0021】
(作用・効果)
前記請求項2記載の第2発明は、液体などを用いて粘度が下げられ、流動性が高められた溶融樹脂を、キャビティ内に充填し、前記溶融樹脂の流動性は、溶融温度を上げなくても、液体などによって高められているので、充填の後樹脂保圧を掛ける際に、樹脂保圧の伝達の作用が高まり、樹脂保圧の作用・効果は流動性を高めない場合に比べて高くなる。
ヒケをなくす目的で必要以上の樹脂保圧を用いると、反り変形の大きな成形品になる。高い保圧を用いるとPLにはバリの発生は多くなり金型の寿命を縮めてしまう。高い樹脂保圧を用いると、当然な事高い型締め力が必要であるので、より大きな成形機が必要になり経済的ではない。流動性を高めた樹脂を用いて加工された成形品は上記の加害が解決される。
【0022】
(構成)
前記記載の第3発明は、前記記載の第1発明の液体によって、必要に応じて気体も併用して、流動性が高められたキャビティ内に充填された溶融樹脂の中に、大なる圧力のガスを成形品に内部に入れてガスによって成形品の内部に中空部を作り、内部中空部から加圧する。更に同時に外部からの樹脂保圧とで、該溶融樹脂を加圧する場合もある。必要に応じて圧空成形も併用する。
【0023】
(作用・効果)
前記記載の第3発明は、中空成形品の製造を示した。中空成形の場合に、溶融樹脂の粘度が下がる(;流動性が向上する。流動性の高い溶融樹脂では、)と、注入するガスの圧力は下げられ、結果内部応力は低くなるので、反り・変形の少ない寸法精度の高い中空成形品が得られる。
【0024】
(構成)
前記記載の第4発明は、前記記載の第1発明の液体によって、必要に応じて気体も併用して、流動性が高められたキャビティ内に充填された溶融樹脂と、金型との隙間に、大なる圧力のガスを入れて、溶融樹脂の外部からガスによって加圧して樹脂の密度を高める。其の際に樹脂保圧も、中空成形も必要に於いては併用する。
【0025】
(作用・効果)
前記記載の第4発明は、圧空成形品の製造を示した。圧空成形の場合に、溶融樹脂の粘度が下がると、樹脂と金型の隙間には大なる圧力のガスは容易に入り込む。又キャビティ内の溶融樹脂の一方(一般には非衣装面の可動側になる。)から、他方の化粧面(一般に固定側になる。)への大なる圧力を持つガスの圧縮(圧空)の作用・効果が高くなるので金型への転写性は高まる。流動性の高い溶融樹脂を用いた場合は、圧空成形のガスの圧力が下げられるので、結果反り・変形の少ない圧空成形品が得られる。更に樹脂保圧も併用する事で転写性は更に向上する。必要に応じて中空成形を用いる場合もある。
【0026】
(構成)
請求項5記載の第5発明は、前記請求項1、乃至請求項4記載のこれ等の発明に、シール金型を用いて金型内を大気圧以上の圧気(与圧)をした中(;GCPの工程を付与して)に、液体に、必要に応じて気体も併用して流動性を高めた溶融樹脂を充填する。
【0027】
(作用・効果)
請求項5第5発明は、前記請求項1、乃至請求項4記載のこれ等の発明に、シール金型を用いて予め金型内を大気圧以上の圧気(与圧)をした、GCPの工程を用いた中に、液体に、必要に応じて気体も併用して流動性を高めた溶融樹脂を充填するので、液体が気化した蒸気、気体に起因するスワール・マーク(発泡縞模様)のない表面が綺麗で、平滑な一般の加工を行った成形品、中空成形品、圧空成形品が得られる。GCPは溶融樹脂の流動性が高い場合、低圧のGCP(;金型内の加圧、与圧)でもスワール・マークがより少ない、ない成形品の加工が可能になる。
【0028】
(構成)
請求項9記載の第9発明は、成形機加熱筒に設けたホッパーに近い側の注入口から先に液体を入れて、液体が気化した蒸気によって溶融樹脂の粘度が下げられ、前記液体の蒸気を含む溶融樹脂の中に、続いて別の注入口から気体を注入する。この順番は射出成形に限定されずに押出し成形機でも実施出来る。スクリューで液体の蒸気、気体がホッパー側に逃げてしまう事を防ぐ目的で、後部{液体を注入する注入口の後方、ホッパー側に、逃げる(リークする。)}に、逆流防止のリング(逆止弁)を設けたモノで、この構造は射出成形機のスクリューに限定されず、押出形機のスクリューでも実施は可能である。
【0029】
(作用・効果)
請求項9記載の第9発明は、加熱筒内の溶融樹脂に対して、初めに液体を注入して、気化した液体の蒸気は溶融樹脂の溶融粘度を下げる。この粘度の下がった溶融樹脂の中に気体を入れる。先に液体を入れる場合に比べて、溶融樹脂の粘度が下がっているので気体は容易に入り込み、粘度が低いので背圧によって、スクリューの回転の力によって気体は容易に溶融樹脂中に溶解し、又は微分散する。
【0030】
前記請求項9では、後方に逆流防止リングを設け、発泡性ガスが後方のホッパーから逃げる(リーク)させない事を示した。逆流防止のリングは、計量し可塑化された溶融樹脂はスクリューの前部に送り込まれ、射出の準備をする。発泡成形の場合は液体、気体、固体の何れかの発泡剤を用いて発泡性を付与(付加)しているので、この発泡力によって、再びスクリュー側に戻らない様(;計量中は背圧が掛かっているので戻る心配はないが、計量が完了し、充填開始の前、加熱筒の前に溜められている時は、発泡力によってスクリューへと戻る心配がある。)に、又射出時にスクリュー側にバックフローしない様にスクリューの後方とは別に、スクリューヘッド後部にも逆流防止のリングを設ける。このスクリューヘッド後部の逆流防止リングは可塑化、計量の最終の段階で、一旦スクリューを止めて、逆回転させて逆流防止のリングを完全に閉する事が望ましい。
【0031】
(作用・効果)
スクリューの後部に逆流防止のリング239、240を設ける事で、計量・可塑化の段階で加熱筒内に入れられ、加熱筒の温度、溶融樹脂の温度によって気化した前記液体の蒸気がホッパーに逃げていかないので、発泡力が安定する。特に気体の場合はホッパーに逃げて行き易いので、本逆止防止のリングは設けた方が良(よ)い。液体の場合は圧縮ゾーンで液体を入れるので、この圧縮ゾーンでは樹脂は溶融され、スクリューに巻き付いているので、このスクリューに巻き付いた溶融樹脂が前記逆流防止のリング239、240の働きをする。この逆流防止リングを設けても一向に構わない。本発明で気体と液体とを併用する場合は先に液体を注入しから気体を注入する。
【0032】
計量完了と同時に、少し遅延時間を取って、スクリューを少し逆回転させて前部の逆流防止のリング235を閉めると、スクリュー側に、前記液体、気体、固体の何れかによって発泡性を付与された、溶融樹脂が逆流しないので、成形品の重量が安定する。樹脂保圧の効果が安定するなどの作用・効果を奏する事は上述した。。
【0033】
(構成)
請求項10では、樹脂の物性の向上を目的に無機物、及び有機物のフィラー、パウダー、バルク(例えば紙パルプ、紙片など、)などの前記樹脂添加物が配合された成形用樹脂を成形しただけでは、前記樹脂添加物は成形品の表面に浮き出て、外観要求される成形品、部品では使用に耐えない。
流動性の高い樹脂に前記樹脂添加物を入れた場合は流動性の低い樹脂を使用した場合に比べ無機物、有機物は沈み込んでいる事を確認している。
液体に、必要に応じて気体も併用して流動性を向上させる事で、前記樹脂添加物の表面の浮きは抑える事が出来る。更にGCPを行なう(付加する)事で、前記樹脂添加物を成形品の中に抑え込み、表面には前記樹脂添加物の浮きがない、綺麗で、平滑な成形品が得られる。これは液体で、又は/及び気体で溶融樹脂の流動性を高めた結果で、溶融樹脂の流動性を高める事で、GCを付加する事で前記樹脂添加物を沈めると言う新たな作用・効果を発見した。前記樹脂添加物は起泡核剤として作用しているので、GCPによって無機物、有機物は沈み込む。
液体に、必要に応じて気体も用いる事によっての流動性の向上と、GCPとの相乗効果で成形品の表面は前記樹脂添加物の浮きのない、綺麗で、平滑な成形品になる。
【0034】
(作用・効果)
液体に、必要に応じて気体も溶融樹脂の中に入れる事は、溶融樹脂の流動性が高めるので、流動性の高い樹脂を用いた場合GCPの効果が増し、前記樹脂添加物の浮きがない事は上述した。発明者はタルク20wt.%入りのPPを用いて、発泡剤にエタノールを1.5wt.%、乃至(から、~)2.5wt.%の範囲内で用い、GCPを実施しない場合には、一般成形の場合よりは少ないが、それでも成形品表面にはタルクの浮きは確認された。圧力1MPaのエアー用いたGCPの場合はタルクの浮きは一切なく、表面は綺麗で、平滑であった。タルクの含有量を40wt.%、60wt.%と高めたがGCP効果は十分あり、何れの場合もタルクの浮きは一切ない。硝子繊維50wt.%含有のポリアミドでは、液体に市水を1wt.%用いた結果、やはり液体の流動性の向上と、GCPとで硝子繊維の表面の浮きの改善は認められた。
【0035】
前記樹脂添加物が十分に沈み込んだ成形品では塗膜の付着性は良くなり、SST(塩水噴霧試験)240時間でも前記樹脂添加物が表面のある事に起因する塗膜のブリスターなどの発生はない。
【0036】
この様に液体を、必要に応じて気体を併用して流動性を高め、GCPを用いての成形加工性の改善は大きな作用・効果がある事は確認出来た。
【0037】
同じ樹脂を用いて流動性が高い場合(;液体のよって流動性を高めていない樹脂)ではスワール・マークをなくし、表面が綺麗で、平滑な一般の成形品の、或いは発泡成形品を得る場合のGCPの圧力に対し、エタノール、プロパノールを2wt.%程度用いて流動性を高めた場合はGCPの圧力が大きく下げられる事を確認した。GCPは一般成形でのシルバー、発泡成形でのスワール・マークを抑えるには有効であるが、キャビティ内への溶融樹脂への充填の際には樹脂の変色・焼けの原因になるので邪魔モノ、よってGCPの圧力は低い方が良い。
【0038】
発明者は従来の射出成形機(押出し成形機でも可。)のスクリューヘッドと、スクリュー本体の間にダルメージ形状の高混練部品を別に加工し組み込んだ。それによってスクリューは長く(L/Dは大きくなる。)なるので、より液体を、必要に応じて気体を併用には都合が良い。然しそのままでは加熱筒には治まらないのは自明、発明者はノズルヘッドと加熱筒との間に、前記ダルメージ分が収(おさ)まる長さのスペーサー(;加熱筒を延長する部品、)を加工して、組み付けた。このスペーサーに穴を開けて其処から液体、気体を入れる事も出来るので、わざわざ加熱筒に穴加工の必要はない。
この様にスクリューの先端部にダルメージを組み込む事で、従来スクリューの一部にダルメージを組み込んだスクリューでは高混練、高圧縮による樹脂の変色・焼けが懸念されたが、スクリューの前部に組み込んだ事でこれらの問題をなくす事が出来る。
【0039】
保圧を掛けて発泡セルをなくす事が本発明の主たる内容の一つである。この場合に一般成形品の重量に対して液体、必要に応じて気体を用いた場合の重量の減少(Wight LOSS)は5wt.%以内が好ましい。この5wt.%は94ULの規格を参考とした。
【0040】
前記請求項に記載の「樹脂成形品」とは、熱可塑性樹脂と、これ等の熱可塑性樹脂に無機物、有機物などの強化剤、その他添加剤などを含有する熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂を用いた成形加工品。
「前記金型装置」とは本発明に記載したGCPを実施する為のシール金型、中空成形金型、圧空成形金型を言う。
「成形装置」とは本発明に記載した射出成形機、押出し成形機、及び中空成形、圧空正期に使用する、窒素ガスの分離装置、ガスの圧縮装置、ガスの注入装置、GCP装置などを言う。
【0041】
【発明を実施するための形態】
【0042】
(用語の定義)
まず、本発明に於いて用いる用語を定義する。
「工程」とは作業の流れ、プロセスを示す言葉で、一つの工程は複数の作業、手順から成り立っており、一般的には大きな枠組みを示す。別言すれば工程とは物事、仕事の進行や手順を段階的に分けて行く事を示す言葉で、ある目標を達成する為に必要な一連の作業を順番に行う過程である。又「工程」は仕事の順序、進み具合に意味も持つ。工程の「工」はものを作り出す仕事を示し、「程」は道(みち)のり、道筋(すじ)を示している。
【0043】
「金型キャビティ」とは、射出成形、ブロック成形、又は注型(形)成形に於いて、発泡性を持たせた樹脂、又は/及び非発泡性の樹脂で満たされる空間を言う。又「キャビティ内」とは、金型キャビティの内部、空間、又は体積を言う。
「キャビティ」とは「金型空間」と同義語である。実際は射出成形加工に於いて第1型(一般的には固定側の金型を示す。)と、第二型(一般的には可動側の金型を示す。)とが合わさると、第1型と、第2型とで画定される空間が出来る。この空間が「キャビティ」で発泡性樹脂、又は/及び非発泡性樹脂を充填する空間を示し、単に「キャビティ」と言う場合もある。押し出す軸体とは、主には第2型に設けられるエジェクターピンを示すが、それ以外にはスライド・コアの傾斜ピン、キッカーピンなども含まれる。
【0044】
本発明は、上記例示された射出成形以外にはダイの工夫によってはシート押出し(押し出し、押出)成形、異形押出し成形、ブロー成形などでも実施は可能である。
【0045】
「射出」とは、金型キャビティ内に発泡性を持たせた樹脂、又は/及び非発泡性の樹脂を充填する事、注入する事、又はその工程(プロセス)を言う。
「押出し」とは、加熱溶融された発泡性樹脂を、又は/及び非発泡性樹脂をダイを通じて連続的に押出し成形を行う事である。
非発泡性樹脂と、発泡性樹脂とを押出し機ノズル内で混ぜ合わせ(ミックスして、ミックスドとも言う。)、発泡性を付与する手段、又新保 實方式の様に押出し機ノズル内で液体を、必要に応じて気体を加熱溶融された樹脂に混ぜ合わせ発泡性を付与する手段も含まれる。勿論の事新保 實方式は射出発泡成形でも有効な手段である。
【0046】
「ブロー」とはパリソンの金型内に入れ、パリソンの中からエアー(空気)などの気体を用いて加圧して成形をする技法を言う。パリソンを発泡性樹脂とすると、発泡性樹脂を用いたブロー成形となる。
【0047】
「充填」とは、射出成形、ブロック成形などの加工に於いて、金型キャビティ内に発泡性を持たせた樹脂、又は/及び非発泡性の樹脂を満たす事を言う。金型キャビティ内の体積よりも少ない量の充填は、ショート・ショット、又はショート・モールドと、同等な量の充填は、フル・ショット、又はフル・パックと、体積よりも多い量の充填は、オーバー・ショット、又はオーバー・パックと言う。ヒケを少なくする、又は転写性を向上(アップ、UP、Up、)するため、フル・ショット後に成形機加熱筒から樹脂の保圧をかける場合は、保圧を使用した事を本発明では明示する。ブロック成形の場合の非加圧、加圧の区分けは、充填後は非加圧、充填後に加圧などと加圧の有無を明示する。「加圧」とは樹脂に大気圧以上に加圧した流体を作用させる事を言う。
【0048】
「加熱筒内の樹脂」とは、加熱溶融前のペレット、バルク、パウダーなど固体(固形)の状態、可塑化途中の段階、可塑化が完了して溶融状態にある熱可塑性樹脂を言う。
【0049】
「発泡剤」の性状は、気体(ガス)、液体(リキッド)、固体(ソリッド)の何れもがあり、大きくは物理発泡剤、化学発泡剤に分類され、其々(それぞれ、各各、各々)無機系、有機系の物(モノ)がある。ガスは窒素ガス、炭酸ガス(二酸化炭素、CO2)、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスに代表される不活性ガス、水素などの可燃性ガスが上げられ、これ等は単独で、又は混合ガス(混合した流体)として使用する。液体の発泡剤はNTP{Natural Temperature Pressure,Natural Temperature and Pressure,Normal Temperature Pressure,Normal Temperature and Pressure=温度が23℃、圧力が1気圧(1atm、760mmHg)}で性状が液体である物質を言い、エタノール(EtOH)、プロパノール(本発明では主にイソプロパノール、iso-PrOH)に代表される1価のアルコール、2価以上のアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類などと、蒸留水、イオン交換水、市水(水道水)、井戸水などの気化性の物質、これ等の物質を溶媒とした重曹水、クエン酸ナトリウム水などと、加圧と冷却とで液化させた液化炭酸ガス(液体の二酸化炭素)などを言う。固体は化学発泡剤の無機系の熱分解型では炭酸水素塩、炭酸塩、亜硝酸塩、水素化合物、カルボン酸、カルボン酸塩などがある。アドバンセル(商品名)などのミクロバルーン(マクロバルーン、マイクロバルーン)、構造水を含む硫酸銅{硫酸銅5水和物、(今は「結晶水」の概念ではなく「水和物」と言う。)を持っているので、勿論この5モルの構造水も加熱筒内で、加熱筒の温度、加熱溶融された溶融樹脂の温度で気化し、水蒸気は発泡性ガスとして作用する。}、水中に浸漬して含水させたシリカゲル、ABSを水中に長い時間、例えば6時間程度浸漬し、遠心分離などで表面の水分を除去し、含水させたモノ(ABS)、ABSと同様にPCを、及びPC系樹脂(この場合はPC/ABSとした。)を水中に浸漬し、含水させたモノも水分が、前記構造水と同様に加熱筒内で気化し発泡剤として機能するので発泡剤として使用出来る。これ等は水の場合を例示したが、水に限らずアルコールなどの有機溶剤でもよ (良)い。極端な例ではあるが、白米を水の中に浸漬して含水させたモノも発泡剤として使用出来る。勿論固体の炭酸ガス(ドライアイス)は固体の発泡剤である。ドライアイスの場合はペレットと混ぜ合わせてホッパー内に入れ、加熱筒内に入れると、ドライアイスは直ぐに気化して気化した炭酸ガスはホッパーから抜け出るので、可塑化、計量時にホッパーに栓(例えばバックメルターなど)を為て炭酸ガスが逃げない工夫をする。別には加熱筒に穴を開けて溶融樹脂中に、フィードスクリューなどの機構を用い定量して、一定量を安定して投入させる手段が好ましい。
【0050】
無機系の熱分解型の発泡剤には上述した様に炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム(Li)に代表される炭酸水素塩、炭酸塩などが例示され、有機系の熱分解型の発泡剤にはアゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジ化合物、ニトロソ化合物、トリアゾール化合物などがあり、反応型ではイソシアネート化合物がある。ADCA{アゾ・ジ(ダイ)・カルボン酸アミド}、HDCA(ヒドロ・ジ・カルボン酸アミド)、アゾ・ジ・カルボキシレート(ADCAのBa塩)、HDCAのBa塩、DPT(ジ・ニトロソ・ペンタメチレンテトラミン)、OBSH{P-P’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)}、AIBN(アゾ・ビス・イソブチロ・ニトリル)〕などがあ(上、挙)げられる。発泡剤、発泡成形の詳細は、株式会社技術情報協会1993年8月発行の各種高分子と発泡成形技術に記載されている。
炭酸塩、炭酸水素塩(アルカリ金属、又はアルカリ土類金属)の場合は当量(塩基性の炭酸塩、或いは炭酸水素塩との中和反応)の、弱酸性のクエン酸、クエン酸1水素2ナトリウムなどの弱酸性の物質とを併用する場合もある。
【0051】
液体を発泡剤として熱可塑性樹脂に用いる場合、成形品の重量(wt.)に対して最適な容量(vol.)を測定(計量)して、加熱筒内の熱可塑性樹脂に一気に、或いは連続して注入し、加熱筒と加熱筒内の温度、加熱筒内の溶融した熱可塑性樹脂の温度、又は/及びノズルの温度、又は/及び金型の温度によって気化して、又は/及び熱分解して、又は/及び化学反応をさせて、又は熱を必要としないで分解、又は/及び化学反応させて発泡成形に有用(有効)な発泡性ガスを発生させる。注入する液体の温度は常温であるが、必要に応じては加温して、気化までの時間を短くする場合もある。液体の圧力を加熱筒内に注入可能な圧力より更に高め、沸点を高め注入する場合もある。
【0052】
発生させた気体は、加熱筒内の熱可塑性樹脂中に計量の段階の物理的な力、充填の場合の物理的な力で溶融樹脂中に微分散又は/及び加圧溶解させ、加熱筒内の熱可塑性樹脂は、発泡性を有する熱可塑性樹脂となる。これを金型キャビティ内に充填して、発泡構造を有する成形品を製造する事が出来る。別言(述)すると、「発泡成形」とは、加熱筒内の樹脂に対して、発泡性ガスを分散又は/及び溶解(加圧溶解を含む。)などさせて発泡性を付与した樹脂を金型に充填して発泡構造体を得る事、及びその工程を言う。尚(なお)押出しの場合は金型ではなくダイである。
【0053】
「溶融樹脂への発泡性の付与」とは、気体{ガス(例えば窒素ガス)}の場合は大きな塊の発泡性ガス(窒素ガス)をスクリューの回転の力で分散し、背圧の圧力で加圧溶融、又は/及び溶融樹脂中に微分散させる事を言う。液体の場合は加熱筒内の温度、溶融樹脂の温度などによって、気化、熱分解などをして、発泡性ガスが発生し、発泡性ガスをスクリューの回転の力で分散し、背圧の圧力で加圧溶融、又は/及び溶(融)樹脂中に微分散させる事を言う。固体の発泡剤の場合は、化学反応によって発生した発泡性ガスをスクリューの回転の力で分散し、背圧の圧力で加圧溶融、又は/及び溶融樹脂中に微分散させる事を言う。ミクロ(マクロ、マイクロ)バルーンの場合も発生した発泡性ガスをスクリューの回転の力で分散し、背圧の圧力で加圧溶融、又は/及び溶融樹脂中に微分散させる事を言う。スクリューの回転トルクは高く、回転数も高い方が望ましい。背圧を高くすると混練性が上がり発泡性ガスの分散性は高くなる。ノズルに気体の発泡剤の注入口、液体の発泡剤の注入口、加熱溶融された発泡性を持たせた樹脂と非発泡性の樹脂とを混ぜ合わせる場合も含まれる。必要に応じてスクリューにダルメージなどを持たせても良(よ)い。
【0054】
液体の注入口はスクリューヘッドは含まずにスクリューの先端部から2D(;スクリューの直径の2倍の位置。)乃至6D(;スクリューの直径の6倍の位置。)程度の位置が好ましいが、それ以外の2D以下でも、反対に6Dよりも後ろでも液体を注入して、加熱筒内の溶融樹脂に発泡性の付与が出来る。又樹脂と液体との組み合わせによっては、ノズルに注入口を設けて射出時に液体を注入すれば、射出の圧力によって溶融樹脂中に入り込み、溶融樹脂に発泡性を付与する。この場合にはミキシングノズルなどを設け、ミキシングノズルの後部から液体を入れると良い(第53実施形態)。
【0055】
「起泡」とは、外部からの圧力、例えばGCP(;アウターGCP)、背圧、射出圧力などの力によって発泡性ガスが抑えられた状態(樹脂中に圧縮され体積が小さく微分散した状態又は/及び加圧溶解された状態)から、外部からの圧力が少なくなり、又はなくなり、樹脂中の発泡性ガスの体積が増す事、又は/及び加圧溶解されていた発泡性ガスが気体になる事を言う。又「起泡」には、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂が加熱筒から押出しされて発泡する場合、又は液体、又は固体の発泡剤の気化、熱分解、化学反応によって発泡性ガスが発生する工程も「起泡」と言う。
【0056】
「発泡」とは、発泡性ガスを溶融状態の熱可塑性樹脂中に微分散又は/及び加圧溶解させ、圧力を下げる事で、熱可塑性樹脂の内部、又は/及び表面で発泡セルが形成させる事{表面に発生した発泡セル(泡)がスワール・マークである。}を言う。熱硬化性樹脂の場合は、発泡剤を加熱する事で、発泡剤が気化、熱分解、化学反応して、発泡性ガスを発生し、熱硬化性樹脂の内部、又は/及び表面で発泡セルを形成させる事を言う。この様に発泡によって内部、又は外部に発泡層を持った成形品を発泡成形品又は発泡構造体と言う。
【0057】
「発泡性樹脂」とは、発泡成形に有用な発泡性ガスを微分散させた、又は/及び加圧溶解させた溶融状態の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を言う。別言すると、「発泡性樹脂」とは、気体の発泡剤、液体の発泡剤、固体の発泡剤を含んだ熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を言う。本発明では「溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂」、「発泡剤含有の熱可塑性樹脂、又は発泡剤含有の熱硬化性樹脂」と発泡性を持たせた事、気体の発泡剤、液体の発泡剤、固体の発泡剤を含有する事など樹脂の状態を出来るだけ正確に記す。尚発泡剤は性状が液体と、固体との併用、気体と固体との併用、気体だけでも書類を数種類使用しても良い。液体の場合はアルコールと水との混合物などでも良い。
【0058】
「発泡成形品」とは、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を成形加工した、内部に不連続な発泡セル(Cell)を持っている樹脂成形品を言う。発泡セルは、そのセルの大きさの平均が5,000μm{ミクロン(μ)、マイクロメーター(μm)}以下である。本発明では、発泡性樹脂を用いた中空成形で、中空部分と発泡セルとが混在する場合も発泡成形品とする。
【0059】
「併用」とは、それだけでなく、別のモノととも(共)に用いる事、組み合わせる事を言う。例えば成形加工法の1つでも効果があるが、別の方法との併用も可能で、相乗効果を求めたり、一方又は/及び両方の効果の向上が期待出来る。発泡剤も、単独ではなく数種類を併用する事もある。液体、気体、固体の発泡剤を併用する事もある。
【0060】
「発泡助剤」とは、発泡剤の分解温度を下げたり、発泡剤に分解を促進させる目的で使用する物質を言う。有機系発泡剤の発泡助剤は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、金属石鹸、尿素(ADCAの分解温度を下げる作用・効果がある。)、亜鉛華などが上られ、炭酸塩、炭酸水素塩の分解に用いる無機系、有機系(例えばクエン酸、クエン酸1水素ナトリウムなど)の酸も発泡助剤であるとも言える。然しPC系樹脂の場合は分解の危険性があるので、其々の物質の添加による物性の低下を事前に確認をする。特に塩基性酸化物(金属酸化物の別言)のCaO、BaO、Cs2OなどはPC系樹脂のPCを分解する危険性が大きい。
【0061】
(PC系樹脂用の起泡核剤、発泡核剤)
「起泡(発泡)核剤、気泡核剤」とは、微細な発泡セルを形成させる目的で、成形予定の樹脂、発泡剤に混ぜ合わせる物質である。起泡核剤は溶融樹脂と起泡核剤との比熱の差を利用して、溶融樹脂と起泡核剤との境界に小さなヒケ(空間)が作られ、そのヒケを核として発泡が開始(そのヒケ=小さな空間に発泡性ガスを集め、発泡ガスが集まり、起泡が始まるスタートの起点)とされ、発泡セルが形成される。この様に起泡核剤は温度差{(比熱の違い。昇温の速度の違い。冷却速度の違い。)、(起泡核剤は加熱され周りの溶融樹脂よりも温度が高くなる場合など、反対に低くなる場合などである。)}を利用して発泡セルを微細化する作用・効果を齎す。起泡核剤を例示すると、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、W(タングシテン)、Cr(クロム)などの金属粉、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などの非金属粉、及びこれ等の酸化物、窒化物、炭化物などがある。
【0062】
それ以外には難燃剤も起泡核剤になり、起泡核剤としての作用・効果を齎(もたら)す。臭素化エポキシなどの代表されるハロゲン系難燃剤、リン酸系難燃剤、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、非(ノン)ハロゲンリン酸エステル{DAIGUARD-1000(商品名)}に代表される非ハロゲンリン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル{CR-7335(商品名)}、芳香族縮合リン酸エステル{CR-741(商品名)}、芳香族縮合リン酸エステル{PX-200(商品名)}に代表される非ハロゲン系リン酸エステル、トリス(クロロプロピル)ホスフェート{TMCPP(商品名)}、トリス(トリブリモネオペンチル)ホスフェート{CR-900(商品名)}に代表される含ハロゲンリン酸エステル、{CR-504L(商品名)}、{CR-570(商品名)}、{DAIGUARD-540(商品名)}に代表される含ハロゲン縮合リン酸エステル、{DAIGUARD-580(商品名)}、{DAIGUARD-880(商品名)}、{DAIGUARD-850(商品名)}に代表される非ハロゲン縮合リン酸エステルなどが上げられる。
【0063】
又上記難燃剤と併用する、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化) (略号:PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(略号:PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)(略号:FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(略号:ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(2フッ化) (略号:PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化) (略号:PCTFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(略号:ECTFE)などのフッ素含有の樹脂の微粒子も起泡核剤として作用する。粒径がナノレベルの金属粒子も起泡核剤として作用する。
【0064】
例えば水を発泡剤に用いた場合で、ASとABSとではASに比べてABSの方が発泡セルは小さくなる。PSとHIPSではABS同様にHIPSの方が発泡セルは小さくなる。これは樹脂中に配合されているブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとをグラフト共重合させたゴム(グラフトゴム)がASの海に島に様に点在する海島構造を持ち、このグラフトゴムが起泡核剤の作用をした。
PC単体でなくPC/ABSの方が発泡セルは小さくなる事が確認されている。これは同じく互いのポリマーの比熱が異(違)なり界面、境界領域で微細な収縮が生じた結果、起泡核剤としての作用・効果を奏した。上記起泡核剤は単独でも使用も可能、必要に応じて2種類以上混ぜ合わせても良い。
【0065】
PC樹脂の発泡成形に有用な発泡剤は気体の窒素ガス、炭酸ガスに代表される気体を計量中に加熱筒に注入し加熱筒内の可塑化溶融された溶融樹脂に発泡性を付与させる、前記気体と同様に水を加熱筒内に入れ、加熱筒の熱(熱エネルギー、温度)、加熱溶融された溶融樹脂の熱(熱エネルギー、温度)の両方、又は何れかによって気化させ、加熱筒内の溶融樹脂中に微分散させ発泡性を付与する。
尚起泡核剤は単独での使用と、2種類以上を混ぜ合わせ使用する場合がある事は上述した。
【0066】
PC系樹脂の場合起泡核剤がPC系樹脂の分解を促進させる触媒として作用する物、起泡核剤自らがPC系樹脂を分解してしまう場合がある。特にPC樹脂の発泡に水を用いる場合PC系樹脂を加水分解させない物質が選ばれる。
【0067】
PC系樹脂の発泡成形に於(お)ける有用な起泡核剤は、PCを分解し物性低下をしない事から酸化銀、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、及び炭化ケイ素などの例えば光拡散剤などが例示される。本発明の起泡核剤に於ける成分の含有比率は、発明者らが鋭意検討を重ねた結果、酸化アルミニウムが40〜60重量部、酸化銀が20〜40重量部、二酸化ケイ素が1〜10重量部、炭化ケイ素が1〜10重量部である事が好ましい。酸化銀以外の成分の粒子径は、PC系樹脂に配合させるために、30μm以下である事が好ましい。30μmを超えると、樹脂に均一に分散する事が出来ず、又十分な光拡散効果が得られないため好ましくない。より好ましくは、100nm〜10μmである。これ等の成分は市販のモノを使用しても、任意の粒子径に合成しても良い。又粒子径が大きいモノを粉砕しても良い。合成方法は特に限定されるモノではない。
【0068】
酸化銀はPC系樹脂用の起泡核剤としては有用で酸化銀の代わりにCu2O、ZnO、Al2O3、MgO、TiO2、ZrO2、V2O3、V2O5、酸化タングステン、FeO、Fe2O3、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化In、インジューム(In)ティン(Ti)オキサイド、酸化Ge、酸化錫、酸化鉛、コランダム、カーボランダム、Al2O3・MgO(スピネル)、WC(タングステンカーバイト)、TiN(窒化チタン)、CrN(窒化クロム)なども有望である。
【0069】
一方例えば、炭酸カルシウム(Ca)、炭酸マグネシウム(Mg)、炭酸バリウム(Ba)などの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、有機酸のアルカリ金属塩、特にクエン酸2水素1ナトリウム塩、クエン酸2水素1カリウム塩などは有効な起泡核剤の作用をするがPCの分解が懸念される。ヘリカルD(白石カルシウム製のCa含有の無機フィラーである。)も起泡核剤の作用をする。上記の発泡助剤のステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、金属石鹸なども起泡核剤として作用はする。硝子繊維、硝子ビーズ、炭素繊維、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどの炭素の粉体、カーボンナノチューブ(CNT)なども起泡核剤の作用を持つ。更には金属の粉体でも良い。足立新産業(株)のナノマテリアルも起泡核剤になる。樹脂の添加剤、例えば顔料なども起泡核剤として作用する。
【0070】
{起泡核剤の粒子径(粒径)}
起泡核剤の粒径は微細であれば、樹脂中に均一に分散し、発泡セルを、発泡セルの大きさを均一にする事が出来る。使用する起泡核剤によって異なるが、一般的には250μm (マイクロメーター、ミクロン)以下、好ましくは100μm以下、均一な分散を考慮すれば50μm以下が好ましい。更に微細な100nm(ナノメーター)から10μm程度が良い。
【0071】
(起泡核剤の使用)
使用する起泡核剤は一種類(単一)でも良いが、2種類以上を混ぜ合わせて使用(複合使用)しても良い。粒径も単一でも良いが、単一の場合でも粒径の異なる物を使用しても良い。複合使用の場合には其々の起泡核剤の粒径は同じ物でも、異なる物を使用しても良い。
【0072】
(起泡核剤のマスター・バッチ)
PC系樹脂の発泡成形で使用する有用な起泡核剤は金属の酸化物、金属の炭化物などがあり、これ等の起泡核剤は、樹脂中に混ぜ合わせ(分散をさせて)使用するが、液体の発泡剤ならば、この液体に混ぜ合わせて使用する。発泡予定の樹脂のペレットの中に濃度(起泡核剤の含有量)の高いモノを製造し、マスター・バッチとして使用しても良い。起泡核剤が数種類に及ぶ場合は其々の単体(本発明では一種類の物質の意味)で起泡核剤のマスター・バッチ化して於いて、発泡成形予定の樹脂のペレットに其々の単体の起泡核剤のマスター・バッチを混ぜ合わせ使用する事もある。加熱溶融混錬(例えば押出し機を用いた溶融混錬、ペレタイザーを用いたペレット化する手段。)して起泡核剤のマスター・バッチを製造しても良いが、PCT/JP2020/15536に記載の発泡予定の樹脂のペレットの表面に担持する方法でも起泡核剤のマスター・バッチ製造は出来る。
【0073】
「混合比」とは、例えば起泡核剤のマスター・バッチの重量(wt.)、又は容量(vol.)、体積(vol.)を1とし、成形予定の樹脂の重量、又は容量との比で表す。発泡成形予定の樹脂中(一般的には重量を用いる。)に含まれる起泡核剤のマスター・バッチの割合(重量の割合)で表す。例えば、樹脂に対して2wt.(重量)%、2vol.(容量、体積)%などである。2:100(或いは1:50、或いは1/50)、又は2wt.%、2vol.%などと表現する。液体発泡剤を使用する場合も同様、樹脂の重量(wt.)又は体積に対しての容量(vol.)とする。
【0074】
(起泡核剤の添加量)
起泡核剤の添加量は、樹脂の物性に影響を与えない範囲内で、物性の低下が許容出来る範囲内で添加出来る。添加量は添加予定の発泡をさせる樹脂によって異なり、又発泡を付与する発泡性ガス(例えば窒素ガス、炭酸ガス其々を単独で使用する場合、其々の発泡性ガス、例えば窒素ガス、一酸化炭素、炭酸ガス、水蒸気などを混ぜ合わせ複合ガスとする場合とがある。)によって決められる。
発泡予定の樹脂に対する起泡核剤の配合量は、樹脂100重量部に対して起泡核剤を0.001から10重量部である。起泡核剤の配合量が0.001重量部未満では発泡セルの粒径が大きくなる。反対に起泡核剤の添加量が多いと発泡セルが微細になり、発泡力が大きくなるので、GCPで表面に発生するスワール・マークをなくし、表面が綺麗で、平滑な外観の発泡成形品を得るには、一般に使用する気体の種類と圧力(発明者は、経済的な事と、発泡成形の容易さを考慮して圧力が1.4MPaのエアーとしている。)を変更する。GCPの圧力を高めればスワール・マークを抑える事は可能、エアーではなく炭酸ガスを用いれば、金型内に充填された発泡性を付与した溶融樹脂の流動先端に炭酸ガスは溶け込み、スワール・マークが少なくなる。参考であるが炭酸ガスを用いたGCPは非発泡性の樹脂の場合も表面は綺麗になる。硝子繊維など複合材も硝子繊維を沈み込ませる作用・効果を持つ。
【0075】
〔ポリカーボネート系樹脂、ポリ炭酸エステル{ポリカーボネート(PC)}〕
本発明で使用するPCに付(つ)いて説明する。PCはビスフェノールAとホスゲン、若しくはジ(ダイ)フェニルカーボネートを原料として製造されるポリ炭酸エステルである。塩化カルボニルを用いる場合は界面縮重合でポリマー化される。ジフェニルカーボネートを用いる場合はエステル交換による重合で合成される。PCは特に限定されず、公知の樹脂を何れも使用出来る。例えば芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲン又は炭酸ジエステルとを溶融法又は溶液法で反応させて得られる樹脂が使用出来る。芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的な例として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド(スルフィド、Sulfide)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(スルフォン)などが上げられる。これ等の中でも特にビスフェノールAが好ましく、汎用されている。本発明では、汎用のPCであるビスフェノールA系のPC以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造したPCを使用する事が可能である。
【0076】
更に、以下に示す様な3価以上のフェノール化合物を混合使用しても良い。3価以上のフェノールとしては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−〔4,4−(4,4・−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが上げられる。
【0077】
本発明で使用されるPCの粘度平均分子量は、1,000〜100,000である。より好ましくは10,000〜50,000であり、か(掛)かるPCを製造するに際し、分子量調節剤、触媒などを必要に応じて使用する事が出来る。PC系樹脂は、単独で用いても良く、2種以上を適宜混合して使用しても良い。
【0078】
(PC系樹脂組成物の製造に付いて)
本発明の起泡核剤を混合したPC系樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではないが、本発明の樹脂組成物の好ましい製造方法は、二軸押出し機の如き多軸押出し機を用いて各成分を溶融混練する方法である。二軸押出し機の代表的な例としては、ZSK(WernerアンドPfleiderer社製、商品名)を上げる事が出来る。同様のタイプの具体例としてはTEX{(株)日本製鋼所製、商品名}、TEM{東芝機械(株)製、商品名}、KTX{(株)神戸製鋼所製、商品名}などを上げる事が出来る。その他、FCM(Farrel社製、商品名)、Ko−Kneader(Buss社製、商品名)、及びDSM(Krauss−Maffei社製、商品名)などの溶融混練機も具体例として上げる事が出来る。
【0079】
(PC系樹脂の発泡の目的と意味)
PCは衝撃強度に於いて肉厚依存性が大きい樹脂である。例えばソリッド(一般、一般の)成形品で肉厚が5mm、6mmの厚い成形品の衝撃強度はABSよりも低い。然し肉厚を薄く1mm、2mmとすると衝撃強度は極端に高くなる。0.2mmのPCを積層すれば大きな衝撃を加えても割れない事は確認されている。ならばPCの物性に影響を与えない水を発泡剤に用いて発泡させ、モールド・バック、コア・バックなどの拡張コアをさせ、発泡倍率を高め表面及び内部に肉厚の薄いPCの発泡セルを形成させれば衝撃強度が十分にあるPCの発泡構造体を得る事が出来る。これが本発明で述べているPC、及びPCを主成分とする樹脂の発泡成形の意味で目的である。PCは他の樹脂例えばABSとのポリマーアロイが多用されているが、この場合も同じ様にABS中でPCは薄い層を持つのでPC/ABSを、又PC/PS、PC/HIPSなどの発泡成形に水を発泡剤に用いる事は可能である。
【0080】
(PC系樹脂の発泡倍率を上げる手段)
発泡剤に水を用い、成形機加熱筒内で発泡性を付与した樹脂をキャビティに充填する。充填後に予め定めた距離だけ金型を後退(一般的には可動側の金型を後退させる事である。別言をすればPLを予め定められた距離を開く事である。)させる。以下詳細なプロセスを示す。金型が閉められ、キャビティに発泡性樹脂が充填される。充填と同時に、或いは充填から少し時間を遅延させて、予め定められた距離だけ金型を開く。この時に発泡性樹脂の発泡力によって成形品は拡張する。別に内部を中空(;インナーGCP){発泡性樹脂を用いた中空成形で、高圧の窒素ガスなどを成形機のノズルから、又は/及びランナーから、又は/及び成形品へ直接流体(例えば圧力を高めた気体、又は圧力を高めた液体、加熱水蒸気など)を注入して、}にしてその内部に流体の力で拡張させる場合{特に
図11、
図12、
図13、
図14に示すコア・バックは、PLが縦見切りなので、金型を大きく開けてもバリ発生は少ない。然し体積を2倍、5倍、10倍と発泡倍率を極端に大きくすると、発泡力だけでは、金型への転写性は乏しく、そのままでコア・バックをさせると金型から成形品は離れてしまい(しまうので)、}、結果型再現性は低下する。結果高倍率を持つ発泡成形品は得られない。アウターGCPを適用した発泡成形では更に型再現性は低下するので表面が綺麗で、平滑な高い発泡倍率の発泡成形品は得られない。この課題を解決する手段に発明者は発泡性樹脂を用いた中空成形(;インナーGCP)も実施し、型再現性が十分得られる事を確認した。又アウターGCPを用い、発泡性樹脂に中空成形(;インナーGCP)を行いモールド・バック、コア・バックすれば表面が綺麗で、平滑な高発泡倍率の発泡成形品が得られる事も確認をした。冷却・固化が完了し、成形品の内部に加圧流体(「高圧流体」、「圧縮流体」とも言う。一般的には大気圧以上に圧縮された、圧力を高めた気体を用いるが、液体でも構わない。気体の場合は主には空気(エアー)、窒素、炭酸ガス単体か複合ガスである。液体の場合は主には水であるが、例えば40℃、50℃、90℃と、そして100℃でも圧力が高いので液体を保ちながら可能、この様に温度をと高めて使用する場合もある。)を注入した場合は加圧流体を排気して、内部の圧力で膨れ、バースト(破裂)が発生しない圧力まで下げて、金型を開いて発泡成形品を取り出す。この時に3枚型構造の金型では予めPLが一定の距離開かれていれば、そのままPLを開けてもストリッパー・プレートが開かず、スプール・ランナーは払えないので、金型にはPLが先に開けられても、ストリッパー・プレートも後で開く機構を組み込む必要がある。
尚このモールド・バック、コア・バックをコントロールするソフトは外部にシーケンサー(PLC、PLCを用いたコントローラーボックス)を用い、成形機と信号の交換を行い実施する以外に、成形機に組み込んであるPLC(成形機の金型開閉、射出などを行うプログラムが書き込まれたPLC)にこれ等の動作をさせるソフトを付加{書き込んで於(お)く。}させる事も出来る。
【0081】
本発明の起泡核剤及びPC系樹脂の押出し機への供給方法は特に限定されないが、以下の方法が代表的に例示される。
(1)本発明の起泡核剤及びPC系樹脂を独立して押出し機中に供給する方法。
(2)本発明の起泡核剤及びPC系樹脂添加剤をスーパーミキサーなどの混合機を用いて予備混合した後、押出し機に供給する方法。
【0082】
上記の方法に限らず、起泡核剤を原料のPCに任意量混合した後、樹脂を製造しても良い。PC系樹脂組成物の製造方法は何ら限定されるものではない。本発明の起泡核剤を含有したPC系樹脂組成物は、押出し成形により各種異形押出し成形品、シート、及びフィルムなどの形での発泡成形にも使用する事が出来る。更に特定の延伸操作をかける事により熱収縮チューブとして成形する事も可能である。
更には回転成形やブロー成形により成形品とする事も出来る。難燃性を有するPC系樹脂組成物(難燃剤、難燃助剤を添加して難燃性を持たせた樹脂)、硝子繊維などのミネラルを添加して剛性などを高めた樹脂の成形品でも実施は可能である。この成形品には、塗装、鍍金などの各種表面処理を行う事も可能である。
【0083】
PC系樹脂の中でPCを主成分とするポリマーアロイ、ポリマーブレンドはPC/PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC/PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC/ABS(ブタジエンにアクリル・ニトリルとスチレンとをグラフト共重合させたアクリル・ニトリル・スチレン・グラフト三元共重合体と、AS(アクリル・ニトリルとスチレンとの共重合体)}、PC/AES、PC/AAS、PC/ASA、PC/PS(ポリスチレン)、PC/PP(ポリプロピレン、ポリメチル化ビニル)、PC/PE(ポリエチレン、ポリ水素化ビニル)、PC/塩化ビニル(ポリ塩化ビニル、PVC)、PC/PPOなどの発泡成形では、起泡核剤の選定を誤ると本来のPCの物性が発揮されない。
PC系樹脂の発泡成形に有用な発泡剤は水であるが、PCを主成分としたポリマーアロイ、ポリマーブレンドでPET、PBTを含む場合はPETなどのエステル系樹脂は分解し物性が著しく下がる。ポリアミド(PA)の場合は加水分解は殆どしない。
【0084】
「相溶性」とは、熱可塑性樹脂の場合に其々の樹脂が加熱溶融の段階で分子レベルで混ざり合う性質を言い、例えばABSに対しての、ASは相溶性がある、PPO(ポリフェニレンオキサイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)にはPS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)が相溶する。本発明でPPOとPPEとは同物質として取り扱い、「PPO」とする。HIPS又は/及びPS、その他PP、ABS、PAを用いて変性、変成(混ぜ合わせてブレンドポリマー、ポリマーアロイとした。)PPOを変成-PPO、変性-PPO、m-PPOと言う。
【0085】
「相容性」とは、相溶せず一方の樹脂中に他方の樹脂が分散し、海島構造、又はその他の構造を示す場合で、例えばABS中のBゴム{ブタジエンゴムにアクリロ・ニトリル(シアン化ビニル)とスチレン(フェニル化ビニル)とをグラフト共重合させた重合体(高分子)}はASに対して相容性を示す。相溶、相容する場合は物性低下はない、或いは少ない。
【0086】
{相容(溶)化剤}
PCを主成分とするPC/PET、PC/PBT、PC/AS、PC/ABS、PC/PS、PC/HIPSなどのポリマーアロイ、ポリマーブレンドを製造する場合、必要に応じて相容(溶)化剤を使用する。これ等に使用する相容(溶)化剤を例示すると日本油脂などから販売されている。相容(溶)化剤の添加量が少ないと、十分に相容(溶)しないので樹脂の物理的な性質、化学的な性質が十分に発揮出来ない。多い場合は物性の低下が著しいので、添加量はPCの重量に対して物性への影響が少ない範囲内である事が望ましい。
【0087】
(塗装適正)
PC系樹脂成形品の場合内部応力(内部の歪)が大きいと、塗料の溶剤(シンナー)によってマイクロクラックが入りPCの高い衝撃強度が発揮されない。本発明の発泡成形では、射出成形の場合は保圧を使用しない押し切り(打ち切り)の成形であるので、内部応力の存在は少ない。このままで塗装を施しても高い保圧を掛(か)け、内部応力の大きい成形品よりクラック発生による物性低下は少ない。更に2時間程度アニールをして、内部応力を除去すれば更にマイクロクラックによる物性低下(割れなど)は軽減される。
【0088】
(PC系樹脂の発泡成形の実施の形態)
PC系樹脂の発泡成形を実施するに当たり後述の比較例1(使用した発泡剤は炭酸水素ナトリウム)、比較例2(使用した発泡剤はADCA)、比較例3(使用した発泡剤はエタノール)で明らかな様にPCの発泡成形では全くPCとしての特性(衝撃強度が高い事=容易には割れない事)が発揮されない。然し実施例1に示した様に発泡剤を水(化学名は「酸化水素、一酸化二水素」、化学式は「H2O」)を使用すればPCの物性低下は少ない事を確認した。
【0089】
(アウターGCP)
発泡剤に水を用いて、文献PCT/JP2015/062611の
図1と
図4、
図5記載の液体の注入装置、加熱筒に設けた注入口で射出成形機加熱筒内に水を注入し発泡成形を実施した。発泡成形品の表面は発泡剤の水に起因するスワール・マークが発生する。文献PCT/JP2015/062611の
図20、乃至(ないし、から、カラ。~)
図22のノズルと、
図23、
図25記載のGCP用にシールがなされたシール金型、
図24記載のGCP装置を用いて、1.4MPaのエアーを用いGCPを行ったところ、表面のスワール・マークはなく綺麗で、平滑なスキン層を持ち、内部は微細な発泡層を持つ発泡成形品の生産が可能な事を確認した。
【0090】
(アンダーカットの処理)
成形品には
図17、
図18に示す様にアンダーカット(でっぱり部)形状を持つ場合は、スライド・コア(外側スライド・コア方式)、傾斜コア方式(傾斜ピン)、油圧、空圧、ラックアンドピニオン、ボールねじ(ネジ)などを用いた機械式のスライドを使用する。
図17は符番57がアンダーカット部分、符番58の矢印がスライド方向である。この場合はアンギュラ・ピンを用い、金型の開閉とスライドの開閉とを連動させる事でアンダーカットの処理(アンダーカット形状を持つ成形品の加工)は可能である。スライドの移動量はアンギュラピンの角度のよって決まるので、スライドが下がり過ぎない様に止めるスライド・ストッパーなどの部品を新たに設ける場合もある。
符番57で示すアンダーカット部(
図17では穴としている。)が長い場合は油圧などを用いたスライド・コアを用いる。符番55は製品の断面(キャビティの断面)を示し、61は金型のPL(パーティング面、パーティング部分、可動側の金型と固定側の金型とが合わさる面、固定側の金型と可動側の金型とが合わさり画定される空間が「キャビティ」である。)である。
【0091】
図18の場合の符番59のアンダーカットの処理は傾斜コア方式が主である。尚符番60はスライドの方向を示している。符番56は製品の断面を示し、符番61は金型のPLである。
【0092】
(シール金型)
先に本発明で用いる発泡成形で表面に発生するスワール・マークをなくし表面が平滑な発泡成形品を得る有効な手段であるGCPの為のシール金型の構造を説明する。金型をシールする手段は、シール金型の構造は、エジェクター機構をスペーサーブロックで囲い込むタイプ(金型構造)と、エジェクターピン其々をL字形状の、U字形状の加重式Oリング、U字(凹)形状のOリングでシールするタイプ(金型構造)の2通りがある。
図19スペーサーブロック(符番74)を日本語のカタカナの「ロ」字の様な一体の構造にして、中にエジェクター機構を収めてシールする仕様でエジェクター・ボックスを用いたシール金型の構造である。符番62はスプール・ブッシュで、符番64のOリングでシールされている。符番63は固定(キャビ)側の取付板で、固定側の型板(符番104)との間にはOリング65が組み込まれシールされている。符番89キャビティを形成するは固定側の入子、符番61はPLで、PLには符番69のOリングが配置(設けられて)されている。符番55、符番56は溶融樹脂が充填されるキャビティである。符番70は可動(コア)側の型板で、符番92の入子が組み込まれている。入子はボルト(図示せず。)などで固定されている。符番92の入子の隙間(合わさった面)からもキャビティ内の圧気の加圧流体の入りと出は行われる。符番87は受板(受け板)である。符番72は可動側の型板(符番70)と符番87との間をシールするOリング、符番73は符番87と符番74(エジェクター機構を囲い込みシールする為に日本語カタカナの「ロ」字の形の加工したスペーサーブロック)との隙間をシールするOリング、これによって符番75のエジェクター・ボックス構造(シール目的でエジェクター機構を空間でを囲い込んだ金型構造)が出来上がる。エジェクターピンは、エジェクター・ボックスによってシールされているので、符番67のエジェクターピン其々のシールは必要ない。符番76はエジェクターピンを固定するエジェクター・プレート(上)で、符番77はエジェクターピンを固定するエジェクター・プレート(下)である。符番80は可動側の取付板、符番79は符番80と符番74との隙間に設けられたOリングである。符番82はエジェクター・ロットの穴で、金型が閉じられエジェクター・プレートがリターンピン(図示せず。)などによって後退した時にシールする様に符番77の底には符番81で示すOリングが組み込まれている。
【0093】
符番64、符番65、符番69、符番72、符番73、符番79、符番81のOリングは市販の物でその材質はNBR(ニトリル・ブタジエン・ラバー)、シリコンゴム、ウレタンゴムなどを用いる。これ等Oリングは溝を掘り(ほり、彫り)溝の中にはめ込んで使用するが、符番69と符番81とのOリングは金型の開の時、成形品押出しの時にOリングを固定している面が離れ、結果Oリングが溝から出てしまう危険性があるので、発明者は符番69、符番81の溝はテーパーエンドミルを用いて蟻溝(断面で上の方が底より狭くなっている形状)として、プレート(板)が離れてもOリングが溝から離れない様に工夫した。
【0094】
次に金型内を圧気{主には大気以上に圧縮したエアーを用いるが、場合によっては窒素ガス、炭酸ガス、或いはこれ等を混合した気体などを用いる。}する為の気体回路を説明する。符番88は固定側の入子の底に圧気(ガス、広義の加圧流体)を入れ、固定側の入子(符番89)と符番104(固定側の型板)の隙間(図示せず。)からキャビティ55、56内を圧気する回路で発明者はこれをL3(固定側からのキャビティ内への圧気)と称している。キャビティ内に発泡性樹脂、又は非発泡性樹脂の充填の途中、充填完了後、充填完了してから一定時間経過した後、同じ回路を通じて金型内の圧気は大気中に排気される。符番66の矢印は金型内の圧気流れを示す矢印で、同じ回路で金型内の圧気と排気とが行われる事を示す為に、始め(始点)と終わり(終点)とが共に矢印として図示した。符番90はPLからキャビティ55、符番56を圧気する回路で、符番91は加圧流体(例えば気体)の流れ方向を示している。符番90、符番91をL2と称しPLからのキャビティへの圧気し、排気する加圧流体(例えば気体)回路である。符番95は符番74に穴を開け、符番75のエジェクター・ボックス内を圧気し、排気する圧気流体(気体)回路である。符番96はエジェクター・ボックス内の圧気流体(気体)の流れを示す矢印(L3と同じく始点、終点も矢印で表示している。)である。エジェクター・ボックス内を圧気するとエジェクター・ボックス内の例えば気体(圧気)はエジェクターピンの隙間、入子の隙間を通じてキャビティ(符番55、符番56)内を圧気する、本発明ではこれをL1と称する。溶融樹脂の充填後にエジェクター・ボックス内を排気すると、エジェクター・ボックス内の圧力が下がり、結果キャビティ内の圧力が下がる。
【0095】
エジェクター・ボックス構造はシールの手段は簡単で、シール効果も高いが、エジェクター・ボックスはキャビティに比べて体積が大きく、エジェクター・ボックス構造でシールした金型を圧気するには多量の圧気の為のエアーを必要とし、然も圧気に時間が掛かるので、圧気に掛かるエアー費用、圧気に掛かる時間が余分で、結果成形サイクルが長くなるなどの経済的問題がある。
【0096】
図20は
図19の課題を解決するエジェクターピンをシールする手段を説明する。
図19と、
図20との違(異、ちがい)いは符番74は「ロ」字形状でエジェクター機構を囲い込んでいるが、エジェクターピンを符番103の加重式Oリングでシールするので符番105のスペーサーブロックは通常の形状の物で構わない。結果符番79、符番81のOリングが必要はない。符番93は可動側入子の底、エジェクターピンの隙間を通じてキャビティ55,56を圧気する。符番94は圧気、排気の流体(気体)の流れを示す矢印で、
図19のL
1に相当する。符番101は符番103をはめ込み固定するシールプレートである。シールプレート101に直接溝を掘り込み符番103を埋め込んでも、符番103を埋め込む為に入子にして良い。
図24で示す傾斜ピンのシールは符番103の加重式Oリングを傾斜ピンと軸心を合わせ平行に設けなければならないので、入子にする方が良い。符番102は受板87とシールプレート101との隙間に組み込まれたOリングである。可動側は大きく異なるが、PLと固定側のシールなどは
図19と、
図20との違いは大きくはない。
【0097】
図21は
図17で示す符番57のアンダーカット形状をスライド・コアで処理する際の金型構造を示している。符番69はPLのOリングで、符番97のガイドピン、又はガイドポストで符番69の外に設ける。符番98は符番55,符番56内を圧気する為にPLに設けられた流体(気体)の回路、符番184は符番90L
2の圧気回路の圧気を吹き出す口で、
図22で示す様に符番98と繋がり符番90とも繋がっている。符番99は符番98の圧気と排気との流れを示す矢印である。符番68はスライド・コア、符番78はアンギュラピンが入り込む穴である。符番68のスライド・コアは必ず符番69のPLのOリング内に収めなければシール出来ない。スライドの合わせ面(スライドのPL面)にも符番69同様に製品形状の外側をOリングでシール(図示せず)をする必要がある。
図21は
図19、
図20のキャビティを正面から覗き込んだ図である。
【0098】
図22は
図19、
図20のキャビティの断面の図で、符番184はL
2回路、符番98は金型のPLに設けたL
2の流体(気体)回路(溝)で断面の形状は、発明者は例えば巾(幅、はば、ハバ)は5mmから10mm程度、深さは1mmから3mm程度としている。符番100はベントで、キャビティの55,56へ圧気をする、そして排気をする回路で、全周に設けるのではなく、櫛型の様に一定の間隔{20mmから50mmのピッチ間隔)}を取って設ける。巾は5mmから10mm程度、深さは溶融樹脂によって変わるが、PPの様に流動性の高い樹脂はバリ発生の危険性を鑑み0.03mm程度、ABSでは0.05mm~0.1mm程度、変性PPO、PCなどは流動性が大きくないのでバリ発生の危険性が少なく0.1mm以上でも構わない。
【0099】
図23は符番59のアンダーカットを処理する手段(型構造)を示している。この様な形状の場合は傾斜コアを用いる。符番107が傾斜コアである。符番70の可動側型板を含む可動側が後退、符番61のPLが開かれる。成形機に設けられたエジェクター・ロット(図示せず。)が押される事で符番77、符番78によって構成されているエジェクター・プレート(突出板)が前に押されると、符番70のエジェクターピン、符番108のシャフトも矢印(符番109、符番110)の様に押し出される。結果符番56内に充填された樹脂(冷却・固化が完了した成形品。)は押し出される。符番107の傾斜コアは符番111の矢印の方向(
図23では金型の開閉方向とは直角方向、)に動く。傾斜コア107に対して成形品は符番112の様に動いた事になり、符番59のアンダーカットは金型から抜けるので成形品は取り出せる。
図23は荷重式Oリング103、106はキャビティに向かって配置されているが、反対方向にすれば、キャビティ内を真空(大気圧以下の減圧にする意味)にして成形をする金型構造にする事が出来る。
【0100】
図24は傾斜コアが複数本あって、其々が近くで交差(クロス)している場合加重式Oリングが1枚のシールプレートだけで十分シールするのが困難な場合、シールプレートを複数枚(
図24では符番101と符番116の2枚使用を図示している。)を使用する事でシールが可能になる。
【0101】
アウターGCPに於いて金型(キャビティ、成形空間)内を「加圧する。」、「圧気する。」。「GCP加圧する」、「GCP圧気する。」、「GCPを掛ける。」などは溶融樹脂の充填の前に金型内の圧力を予め気体を用いて高めて於(お)く事と同義語である。又「排気する。」。「GCP排気する」などは溶融樹脂の充填の途中、充填完了後に金型内を加圧した気体を大気中に排気し、金型内の圧力を下げ、発泡をさせる事と同義語である。真空引きをする事もある。
【0102】
(中空成形)
エジェクターピン(
図27)とエジェクター・スリーブ・ピン(
図28)からなる加圧流体注入ピン(
図29)を用いて非発泡性樹脂の中空成形を行う場合の問題点は、成形品内の加圧流体の排気の速度である。注入は元々高い圧力で、キャビティ内の溶融樹脂の中に入れるので、注入の圧力は一定、注入速度はそれ程問題にはならない。排気の場合は
図27、
図28、
図29に示す様に狭い隙間(0.01mm~0.08mm程度)を通じて符番122に中空部内の加圧流体を排気しなくてはならず、排気が進むと成形品内の中空部の圧力が下がり排気しにくくなり、排気速度が遅くなる。中空部内の加圧流体の排気が十分に、完全に行われず金型を開くと中空部内部の残圧によって成形品の膨れ、バーストのトラブルになる。この問題を
図25は符番117と符番118からなるエジェクター・プレート(B)を配置した金型を使用する。樹脂の充填の前に段付きのエジェクター・ロットによってエジェクター・プレート(B)は前進をさせて於いて非発泡性樹脂、発泡性樹脂を充填させる。樹脂の充填の途中、充填完了後に符番121から加圧流体を入れ、符番120(
図27と
図28とで組み上げた、)に加圧流体注入ピンを通じて成形品内を中空にする。中空後に中空成形装置の排気弁を開き中空内に入れた加圧流体を排気し、圧力が下がった事を見計らいエジェクター・プレート(B)を後退{;エジェクター・ロットを下げる事で可能。エジェクター・プレート(B)にはバネ、ガス・スプリングなどは仕込まれ、エジェクター・ロットを下げれば、前記バネなどの力でエジェクター・プレート(B)は強制的に下がる仕組みになっている。}させ、加圧流体注入ピン120先端部が成形品の加圧流体注入ピン先端部を囲う符番123のボス(加圧流体を溶融樹脂内に導く事が目的で設けてある。)から離れ、空間が出来るので、一気に排気される。
図25で符番67エジェクターピンはエジェクター・プレート(B)を貫いている。
【0103】
発泡性樹脂を用いて発泡倍率の高い発泡成形品、樹脂の剛性が低い熱可塑性エラストマーの場合に有効な手段である。2倍、3倍、5倍など、更にはそれ以上の高い発泡倍率の発泡成形を成形する場合、液体、気体、固体の発泡剤(単独でも或いは複合使用でも構わない。)を用いて発泡性を付与した発泡性樹脂をキャビティ内に充填して、内部を中空とする。中空部に圧力を加えたままでモールド・バック、コア・バックさせ中空部の加圧流体を排気して、加圧流体加圧ピンを後退{エジェクター・プレート(B)を後退させる。}させると中空部内の圧力が一気に下がり内部に向かって発泡が始まる。
図11、
図12の様にモールド・バックの場合の発泡倍率は2倍程度でないとバリ発生の危険性がある。
図13、
図14に示すコア・バックの場合はバリ発生の危険性はない。尚アウターGCPを使用しても良い。
【0104】
(中空成形での膨れ、バーストなど不具合の回避の手段)
キャビティへの溶融樹脂の充填が開始(射出開始信号が出力)され、充填の途中、又は充填完了後直ぐに、或いは予め定められた遅延時間の経過後に、中空成形装置の注入弁を開けて、溶融樹脂内の中空を開始にする。予め定められた注入弁を開ける時間(本発明では「注入時間」と言う。)完了後に中空内に加圧流体を閉じ込める。これを本発明では「保持時間」と言う。保持時間完了後に中空成形装置の排気弁を開け中空部内の加圧流体を大気中に排気する。別に設けた排気開始をスタート(トリガー)としたタイマーのタイムアップ後にエジェクター・プレート(B)を後退させ中空内の加圧流体に起因する膨れ・バーストが発生しないまで下げた後、冷却・固化の完了後に金型を開けて成形品を取り出す。
図25の金型は、GCP仕様のシール金型を示しているが、非発泡性樹脂を用いた中空成形の場合はシールの必要はなく、
図36に示す様にPLなどをシールする必要はない。勿論
図25の金型を用いてGCPを用いないなら、金型の機能は
図36と変わらない。
【0105】
(圧空成形)
モールド・バック、コア・バックをするとその段階で金型から離れ型再現性が低下するので内部から加圧(中空成形にして、)し金型に十分に密着させた状態でモールド・バック、コア・バックをさせる。それとは別に溶融樹脂と金型との隙間に加圧流体を入れて加圧流体の圧力で流体加圧面の反対面に加圧しながらモールド・バック、コア・バックさせる手段を用いても型再現性の高い非発泡性樹脂を用いた、或いは発泡性樹脂を用いた成形品が得られる。尚中空成形と圧空成形とを併用しても構わない。この場合に中空成形を形成させる加圧流体の圧力(本発明では「H圧力」と言う。)と、圧空成形を実施する加圧流体の圧力(本発明では「P圧力」と言う。)とがP圧力>H圧力の場合と、P圧力=H圧力の場合と、P圧力<H圧力の場合とがあり、其々の場合で中空部形成の大きさが変わる。この中空成形と圧空成形とを併用すると中空成形だけでは難しかったPPの中空成形品での中空部の大きさの制御(コントロール)が可能となる。
【0106】
(圧空成形の金型構造)
図26に圧空成形に用いる金型構造を示した。符番125は加圧流体加圧ピン(
図32)でエジェクターピン(
図30)とエジェクター・スリーブ(
図31)の追加工で作られる。加圧流体加圧ピンは使用する圧力が高いので、エジェクターの間に設け、加圧流体を入れるとエジェクターの強度、エジェクター・プレートを組み上げているボルトの強度が持たない事が想定されるので、発明者は符番80の可動側取付板に符番133に板を設け、成形機のダイプレート(図示せず。)とスペーサーブロック105とで押さえ込んで十分な強度で固定、加圧流体の圧力を受圧しても耐えられる構造にした。符番127は荷重式Oリングで符番125と符番127との隙間をシールしている。符番128は符番127を設置(固定)する為のシールプレートで必要に応じて符番87と符番101の間に符番102のOリングを設ける。符番129エジェクター・プレート(上)と符番130エジェクター・プレート(下)に符番126(これもエジェクター・スリーブの追加工品である。)を収める。符番129と符番130とからなるエジェクター・プレート(C)は、符番130の矢印で示す様にエジェクター・ロットによって動く。樹脂の充填前にエジェクター・プレート(C)は前進した状態で、符番55,56内に樹脂が充填され充填完了後直ぐに、或いは少し遅延をしてエジェクター・プレート(C)を後退させると、符番126も後退し、符番135に小さな空間が作られる。この空間に符番132から加圧流体を入れ、加圧流体は符番125の外筒と芯体(内芯)との隙間を通り符番135達し、樹脂と金型との隙間に入り込み樹脂を加圧流体の圧力で加圧する。エジェクター・プレート(C)を後退させるのは上述した様に空間を作り圧力を分散させ樹脂の中に張り込んで中空とならない工夫である。圧空成形で中空とならなければこの機構設けなくても良い。図示していないが、符番135の先端部に、必要に応じてはその周りにも、更に圧空を行う面にシボ加工を施す事で、中空とならずに樹脂と金型との隙間に入り込んでシボによって楔効果を発揮させる工夫もされている。
圧空成形に用いる加圧流体の装置は中空成形の物を流用可能(元々同じ装置で中空成形と、圧空成形とが実施出来る。この装置を金型ではなく加熱筒の圧縮ゾーンに加圧(圧力は加熱筒内の溶融樹脂の圧力より高くして、)した窒素ガス、炭酸ガスを入れればミューセル(商品名?)、AMOTEC{アモテック(商品名?)}の実施も容易、この場合のプログラムも成形機のPLCに書き込んで於けば良い。)である。
【0107】
(モールド・バック、コア・バック、アウターGCP、インナーGCP)
本発明では
図26のシール金型を用い予め金型内を与圧するGCPを正確にはアウターGCPと称し、発泡性樹脂を用いた中空成形をインナー・GCPと称する。インナーGCPを用いると、コア・バック(モールド・バックではバリの問題、中に入れた加圧流体の外部への漏れ出しも問題などで実施は難しい。)を行う事で、キャビティの拡張を大きく出来て、モールド・バックより更に発泡倍率の高い発泡成形品が得られる。
インナーGCPを用いてのモールド・バック、コア・バックを行う場合は前記溶融樹脂の中に加圧流体の注入開始と同時に、或いは注入が開始され時間経過した後、或いは注入弁が閉じられ、中空成形(この場合はインナーGCPの事)のプログラムが保持時間となった時、或いは保持時間の途中、或いは保持時間が完了し排気弁が開き排気が開始された時の何れかのタイミングでモールド・バック、コア・バックを開始する。
【0108】
(GCP)
前記中空成形とモールド・バック、コア・バックとにGCPのプログラムを行う事で表面にスワール・マークがない表面が綺麗で、平滑な発泡倍率の大きな発泡成形品が作れる。GCPは金型が閉じられた事をGCP装置に指令を発し金型(
図25などで示したシール金型で、キャビティを含む金型全体を、)内を与圧する。与圧された状態で、発泡性を付与した発泡性樹脂をキャビティ内へ充填させる。充填の途中、或いは充填完了直後、充填完了後にGCP装置の圧気弁を閉じ、排気弁を開けて金型内の圧気を排気する。
【0109】
前記中空成形と、圧空成形と、モールド・バック、コア・バックとGCPとの装置を動かす成形のプログラムは別にコントローラー(PLCが組み込まれている。)を設けて、成形機からコントローラーに指令をする信号を取り出しコントローラーに指令する。又コントローラーから成形機への信号を出力するなど互いの交換(互いの信号で動作する事の意味。)するのが一般的であるが、元々成形機はPLC(シーケンサー)を持っているのでそのPLCの中でこれ等中空成形と、圧空成形と、GCPと、モールド・バックと、コア・バック及び液体の発泡剤を用いる場合は液体の注入装置へ計量開始の信号を送り加熱筒内への注入の開始、注入時間のタイムアップによる液体注入の中止、或いは計量完了による液体注入の中止、予め計量中に液体注入の位置を設定、その位置をスクリューが通過すれば液体注入の開始、予め設定した液体注入停止の位置をスクリューが通過すれば液体の注入を停止するなどのプログラムを書き込んで於けば厄介な信号の取り出し、外部のコントローラーなどと行う必要はない。
ホッパー内窒素封止(ホッパー内へ窒素ガスを入れ変色、焼けなどを防止する手段。)でも計量開始でホッパー内へ窒素ガスの注入を開始、計量停止で窒素ガスを停止するなどのプログラムを書き込んでも良い。成形機の画面上のスイッチの切り替えでホッパー内へ連続をして窒素ガスを入れても良い。計量開始で窒素封止開始、計量完了で窒素ガス封止などと計量と関係させて断続的な注入を行う事もある。
【0110】
本発明で説明した加圧された気体、加圧された液体に例示される加圧流体を用いた成形法は、GCP装置、中空成形装置、圧空成形装置、液体の注入機などを制御する場合、成形機の制御パネル内のPLC(シーケンサー)に其々のプログラムを書き込み其々の装置を動かす場合と、これ等の装置を動かす目的で別に外部に設置したコントローラーの中のPLCにプログラムを書き込み成形機の間で信号の交換を行い、これ等装置を動かす場合とがある。以下其々の場合を詳細に説明する。
【0111】
(液体の、必要に応じて気体の注入)
(成形機のPLCに書き込む場合)
気体、又は/及び液体を加熱筒内に注入して可塑化の段階の溶融樹脂に発泡性を付与させる為に成形機のソフトを説明する。初めに成形機のPLCのソフトに書き込むプログラムは、計量が開始され、0秒から一定に時間を経過した段階(遅延時間は任意に設定可能とする。)で外部に設けらえた液体、又は/及び気体の注入装置(
図35)の弁(符番161)を開け成形機加熱筒内の圧縮ゾーンの例えば初めの場所に注入される。液体は加熱筒の温度、溶融樹脂の温度で気化し、計量中の背圧、加熱筒内の溶融樹脂に掛かる圧力で加熱筒内の溶融された溶融樹脂内に加圧溶解、微分散される。気体(窒素ガス、炭酸ガスなど)はそのままで溶融樹脂内に加圧溶解、微分散される。
【0112】
注入の停止は、予め設定した任意に位置をスクリューが通過した事で注入を停止する。或いは予め注入を開始するスタートの時間を定め、注入の開始をゼロスタートとして、タイムアップ(終了)すれば注入を停止する。
注入の量は一定でも良いが、スクリューの回転数が変化すれば、当然可塑化される樹脂の量が変わるので、必要に応じて注入量(プランジャー・ポンプの吐出量)はスクリューの回転数と同期させる場合もある。
【0113】
(外部のコントローラーの場合)
成形機のPLCに気体、又は/及び液体を注入するプログラムを書き込まず、外部コントローラーを用いて実施する場合成形機とコントローラーとの信号を交換する。射出成形機は計量を開始した事を外部のコントローラーに信号を送信する。信号を受けたコントローラーは予め0秒から一定の遅延時間を任意に設定し、タイムアップのよって気体、又は/及び液体を加熱筒内へ注入を開始する。停止は成形機で任意に設定された停止位置をスクリューが通過した時点で、コントローラーへ信号を出力、その信号を受けてコントローラーは気体、又は/及び液体注入を停止する。この停止信号でプログラムはリセットされる。
【0114】
時間制御による注入の制御は注入開始の信号を受けたコントローラーは任意に設定可能なタイマーを持ち、任意の注入時間を設定し、注入時間のタイムアップ後に注入を停止する。
スクリューの回転数との同期はスクリューの回転数を連続信号としてコントローラーに出力し、その信号を受けてコントローラーは気体、又は/及び液体の注入装置を制御し注入量を変化させる。
【0115】
注入量の制御は液体の場合は、非圧縮性の物質(圧力による体積の変化量は少ない。)プランジャー・ポンプのピストンを押す速度、例えばラックピニオン機構のモーター、サーボモーターの回転数などを変化させれば容易に可能、気体の場合は圧縮性物質(圧力による体積の変化量は大きい。)なので自動開閉可能なニードル弁などを用いて注入量を制御する。注入機を複数使用する場合もあり成形機からの信号の出力と入力とを受ける事が出来る様に、コントローラーは注入機の台数分プログラムを設置する。
【0116】
(GCPでの圧気)
(成形機のPLCに書き込む場合)
図34はGCP措置の概要を示す模式図である。符番151が圧気弁、符番154が排気弁である。成形機にGCPのプログラムを書きこむ場合は型締め完了信号を受けて0秒から任意に設定した時間経過後に符番151を開けシール金型内を大気圧以上の圧力で圧気(与圧)する。金型内を圧気する時間は任意に設定したタイマーを用い、タイムアップ後に成形機はキャビティ内に発泡性樹脂、又は非発泡性樹脂の充填を開始する。金型内の圧気の圧力センサーを用いて測定し、予め設定した圧力に達すれば充填を開始する場合もある。
【0117】
(GCPでの圧気)
(外部のコントローラーの場合)
成形機のPLCにはGCPのプログラムを書き込まず、外部コントローラーを用いて
図34に示すGCP装置を制御する場合、成形機は型締め完了信号を外部コントローラーに出力する。この信号を受けてコントローラーは、GCP装置に符番151を開け金型内を圧気させる。コントローラーに予め定めた金型内の圧気時間のタイムアップ後にコントローラーは成形機へ射出開始の信号を出力し、この信号を受けて成形機はキャビティ内に溶融樹脂の充填を開始する。又は金型に設けた圧気の圧力を監視する圧力センサーが、予め設定した圧力に達した事をコントローラーが確認させればコントローラーは成形機に射出開始の信号を出力、その信号を受けて成形機は充填を開始する場合もある。
【0118】
(GCPの排気)
(成形機のPLCに書き込む場合)
金型内の圧気は充填の途中(スクリューの任意位置で、)、又は充填完了後、充填完了後に一定時間経過した後に排気する其々の場合がある。成形機の場合はPLCにスクリュー位置、又は0秒から任意に設定した時間経過後に排気弁154を開け金型内の圧気を排気する。
【0119】
(GCPの排気)
(外部のコントローラーの場合)
成形機内のPLCではなく、別に外部コントローラーで排気する場合、成形機からはコントローラーに排気信号を出力する。充填途中の排気は任意に設定した位置をスクリューが通過した時にコントローラーに排気の信号を出力、射出完了後の排気の場合は射出完了(一時圧完了、又は二次圧完了)信号を出力する。この信号を受けてコントローラーは内部のタイマーが起動させ、0秒から任意に設定した時間経過後に排気弁154を開け排気する。
【0120】
{モールド・バック、コア・バック(金型後退)}
(成形機のPLCに書き込む場合)
圧気の排気開始、排気途中、排気完了後0秒から任意に設定した時間経過後の何れかで金型(主には可動側の金型)を任意に設定した距離だけ後退させ発泡倍率を高める。成形機のPLCを用いる場合は、選択した排気開始、排気途中、排気完了後0秒から任意に設定した時間経過後の何れかで実施する。圧力で動作を行う場合は、金型の設けた圧力計が予め設定した圧力(設定した排気圧に、)に達した時に金型後退を開始する。
【0121】
{モールド・バック、コア・バック(金型後退)}
(外部のコントローラーを用いた場合)
外部のコントローラーを用いた場合は、排気開始させれば直ぐに成形機へ金型後退の信号を出力、金型後退させる(排気開始と同時に金型後退)。又は排気開始からタイマーがスタートし、タイマーがタイムアップすれば成形機へ金型後退の信号を出力、金型後退させる(排気途中の金型後退)。コントローラーの排気開始からタイマーがスタートし、排気が十分完了すれば成形機へ金型後退の信号を出力、金型後退させる(排気完了後の金型後退)場合がある。コントローラーにタイマーを持たせずに成形機PLCにタイマーを持たせる事も想定出来る。この場合は排気タイマーの開始の信号を出力する。圧力をモニターして金型後退させるには設定した圧力まで圧気が下がった時に成形機へ金型後退の信号を成形機に出力、その信号を受けて0秒から任意に設定した時間経過後に金型後退させる。
【0122】
前記GCP装置を制御するプログラムは1台の場合を例示したが、複数台(L1、L2、L3:L1=可動側の入子の下の空間、又はエジェクター・ボックスなどの空間、L2=キャビティ、L3=固定側の入子の下の空間)用いる場合はその台数分だけ成形機のPLCの場合も、コントローラーの場合も金型内の圧気と排気とのプログラムを準備する。1台のGCP装置でL1、L2、L3を排気する場合もある。圧力計を用いて圧気、排気を行う場合は主にキャビティの圧力とするがそれ以外でも構わない。尚金型後退はキャビティの体積を増し、発泡倍率を上げる手段である。
【0123】
(中空成形での加圧流体注入と、保持と、排気)
(成形機のPLCに書き込む場合)
中空成形(インナーGCPも含む。)は
図35に示す図の装置を用いてキャビティへ発泡性樹脂、又は非発泡性の樹脂の充填途中、又は充填完了後に、例えば符番120の加圧流体注入ピンを用いてキャビティ内の溶融樹脂の中に大気圧以上の圧力の気体(使用する例えば空気、窒素ガス、炭酸ガスなど)を入れて内部を中空とする成形法、高圧(大なる圧力)に加圧された液体(加温水など)を入れて内部を中空とする成形法である。成形機のPLCに書き込む中空成形のプログラムは予め任意に設定した位置をスクリューが通過した時に符番161加圧流体注入弁を開け加圧流体注入する場合(充填途中の加圧流体注入、充填中の加圧流体注入)と、充填完了直ぐに、又は0秒から任意に設定した時間経過後に加圧流体注入する場合(充填完了後の加圧流体注入)とがある。注入の圧力は符番165のレギュレーターを用いて設定する。注入は任意に時間設定(「注入時間」と言う。)をする。注入時間完了後注入弁161は閉じ、金型内へ加圧流体を閉じ込める時間(「保持時間」と言う。)を任意に設定する。保持時間完了後に排気弁163を開け中空内の加圧流体を大気中に排気する。中空成形で加圧流体の圧力を変動させる事は少ないが、例えば初めに高圧で注入し、一旦注入の加圧流体の圧力を下げ、再び上げるなど注入する加圧流体圧力のプロファイルを描かせる場合は注入する加圧流体の圧力を測定し、その圧力を成形機のPLCにフィードバックして、符番165を自動圧力調整が可能なニードル式のレギュレーター(圧力調整弁)を用い注入圧力のコントロールをする。
【0124】
符番120の後退は、大気放出の開始(タイマーのカウントがスタート)の時点、又はカウント開始から一定時間(この時間も任意に時間設定可能)経過した後、成形機は符番117、符番118からなるエジェクター・プレート(B)を後退させると、符番120も後退するので、中空部内の加圧流体は完全に排気され、残圧は残らず、金型を開けても膨れ、バーストの問題は解決する。尚次の樹脂の充填の前には必ず符番120は前進端にする必要がある。
【0125】
(中空成形での加圧流体注入と、保持と、排気)
(外部のコントローラーの場合)
外部コントローラーを用い、
図35装置を運転する場合は、この装置を制御するコントローラーを別に設け、成形機からは信号の出力、入力を行い、コントローラーとインタフェースを取って
図35の装置を動作させ中空成形をする。
加圧流体注入のタイミングは樹脂の充填の途中と、充填完了後であり、充填途中の場合は予め任意に定めた位置をスクリューが通過した時点で、成形機はコントローラーに加圧流体注入の指令の信号を出力する。コントローラーはこの信号を受けて符番161の注入弁を開け、溶融樹脂内に加圧流体の注入を開始する。加圧流体注入の時間はコントローラー内に設けたタイマーで設定され、タイムアップ後に符番161の弁は閉じられ、中空内へ加圧流体を閉じ込める。これを発明者は「保持時間」と称する。保持時間の長さは任意に設定可能なコントローラー内のPLCに設けられたタイマーによって設定される。保持タイマーのタイムアップ後に符番163の弁を開け中空内部の加圧流体を大気中に排気する。排気する時間(「解放時間」、「排気時間」などと言う。)は前記PLC内にタイマーを設け、任意に時間設定を可能とした。大気放出の開始(タイマーのカウントがスタート)の時点、又はカウント開始から一定時間(この時間も任意に時間設定可能)経過した後、又は大気放出のタイマーのカウントが終了した時点で成形機にエジェクター・プレート後退信号を送信し、その信号を受け成形機は符番117、符番118からなるエジェクター・プレート(B)を後退させると、符番120も後退するので、中空部内の加圧流体は完全に排気され、残圧は残らず、金型を開けても膨れ、バーストの問題は解決する。尚次の樹脂の充填の前には必ず符番120は前進端にする必要がある。
【0126】
(圧空成形)
(成形機のPLCに書き込む場合)
中空成形は加圧流体をキャビティ内に充填された樹脂の中に注入する。圧空成形はキャビティ内に充填された溶融樹脂と金型との隙間に入れ込み加圧流体の圧力(力)で反対面への転写性向上を図る。
使用する装置は
図35を使用し、金型は
図26を使用する。加圧流体を噴出させる時期は中空成形と同様に充填の途中、充填完了後、充填完了後少し時間経過後の何れか{
図35の装置を複数用いる場合は台数分のプログラムを準備し其々最良の加圧の時期(タイミング)を設定する。}であり、その後の保持時間、排気時間の設定は中空成形と略同じプログラムである。
【0127】
圧空成形は金型温度を高くすると冷却・固化の速度が遅くなるので加圧流体による転写効果は高くなるが、この場合に加圧流体が樹脂と金型との隙間に入らず溶融樹脂の中(内)に入ってしまい中空成形となる事を避ける目的で、樹脂の充填の途中、充填完了後の加圧流体噴出前に符番126を後退(符番129と符番130からなるエジェクター・プレート(C)を後退させる。)させ、加圧流体噴出の部分に小空間を作り、その中に加圧流体を噴出させる場合がある。符番126後退の時期はキャビティ内に溶融樹脂が充填され、0秒から一定に時間を経過した段階(時間は任意に設定可能とする。)とする。この動作は成形機内のPLCに書き込まれたプログラムによって動作する。
【0128】
(圧空成形)
(外部のコントローラーの場合)
圧空成形を成形機のPLCにプログラムを書き込まず外部コントローラーを使用する場合は、前記中空成形の場合と略同様である。符番126の後退は、成形機からコントローラーへ後退の信号を発し、コントローラー内のタイマーが起動0秒から一定に時間を経過した後に後退させる。前記タイマーがタイムアップした後に符番161を開き圧空成形を開始する。圧空の時間を経過した後弁161は閉じ、一旦加圧流体を閉じ込め保持して、保持タイマーが完了すれば排気タイマーカウント開始と共に符番163の排気弁を開け加圧流体を大気中に放出する。加圧流体放出が完了(大気放出のタイムアップ完了)すればコントローラーは成形機に対して金型開の許可信号を送り、成形機はこの信号を受け、冷却時間の完了などの諸条件が整えば金型を開き成形品を取りだす。成形機は金型開の信号などをコントローラーに送りコントローラーのプログラムをリセットさせる。尚次の樹脂の充填の前には必ず符番126が前進端にする必要がある。
【0129】
(手動)
液体の注入、停止、151の弁の開、154の弁の開、161の弁の開、163の弁開など一連の動作は手動で行う必要があるので、成形機のPLCに、及び外部のコントローラーを使用する場合には外部コントローラーに手動のスイッチを設ける。
外部のコントローラーを設ける場合、成形機のPLCと外部コントローラーのPLCとで信号の交換を行う必要があり、互いのプログラムが複雑になる。成形機のPLCにこれ等液体に、必要に応じて気体も用いる事での注入、GCP、中空成形、圧空成形などのプログラムを書き込んだ方が簡単に済み経済的である。更にこれ等のプログラムを複合動作として実施する場合は信号の交換が複雑なので、外部コントローラーを用いるより、成形機のPLCを用いる事を推奨する。
【0130】
以下には比較例、実施例と実施形態を用いて説明をする。
【比較例1】
【0131】
直鎖状芳香族PC系樹脂{帝人化成(株)製、パンライト−L1225WP}、色はナチュラルカラー(透明)を予め80℃で2時間の脱湿関乾燥を行ったペレットに、無機系の化学発泡剤の重曹{(炭酸水素ナトリウム、重炭酸曹達、NaHCO
3)は原末なので性状は白色の粉末}を0.7wt.%混ぜ合わせ、
図1、
図2に示す製品形状(天肉の板厚は2mm)金型を、東洋機械金属(株)製の180トン(Ton)の射出成形機で、GCPなしの発泡成形を行った。成形時の金型の表面温度は固定(キャビ)側、可動(コア)側ともに約45℃、溶融樹脂温度は260℃である。保圧を用いずに射出成形機にスクリューは前進端の打ち切り、ややショート・モールド気味{形状の欠け(ショート・モールド、ショート・ショット)などはなし。}で射出成形加工して、発泡剤に重曹を用いた発泡成形品を得た。
得られた発泡成形品の表面はGCPを実施していないのでスワール・マークが発生している。強度を確認する目的で、成形品を床に置き、上からゆっくりと体重が75kgの者が全体重を掛けて荷重した結果、本来のPCの強度は全くなく、海老煎餅の様に脆い事が確認され、重曹を発泡剤に用いたPCの発泡成形品は通常の使用に耐えない。PCの発泡成形には、発泡剤の重曹は不向きである。
【比較例2】
【0132】
比較例2は前記比較例1に於いて用いた発泡剤の重曹を、有機系化学発泡剤のADCA(原末なので性状は黄色の粉末)に変更した。添加量は重曹の0.7wt.%の半分の0.35wt.%とした。その他使用した金型、射出成形機、成形条件は同じである。得られた成形品を比較例1と同様に荷重して強度を確認したが、比較例1と同様に強度はなく、ADCAを発泡剤に用いたPC成形品は通常のPC成形品の様な使用に耐えない。PCの発泡成形には、発泡剤のADCAは不向きである。
【比較例3】
【0133】
文献PCT/JP2015/062611の
図1記載の液体の注入装置、加熱筒に設けた注入口(PCT/JP2015/062611の
図4、
図5に記載)を用い、加熱筒内のスクリューの圧縮ゾーンの初めに、成形品重量(1回の計量値)に対して1.5wt.%のエタノール(化学式はC
2H
5OH)を計量開始から計量の終了までの間に一定量を連続的に注入して、可塑化された溶融樹脂にエタノールを用いて発泡性を付与(加熱筒内で気化させエタノール蒸気を計量中の溶融混錬をした溶融樹脂中に加圧溶解、及び又は微分散をさせた。)し、前記比較例1、比較例2と同様にして発泡成形品を得た。比較例1と同様に荷重を掛け強度を確認したが、前記比較例1、比較例2と同様に強度はなく、エタノールを発泡剤に用いたPCの発泡成形品は使用に耐えない。PCの発泡成形には、発泡剤のエタノールは不向きである。エタノールの代(替、か)わりにイソ(iso)プロパノール(C
3H
7OH)でも同様でPCの発泡成形品の生産にはアルコールは使用には不向きである。
【0134】
前記エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)を用いたABSの発泡成形品、m-PPO(PS、又はHIPS変性の物、PA変性の物、PP変性の物)、PPの発泡成形品、6ナイロンの発泡成形品では前記PCの様に物性低下は殆ど見られない。加熱筒内で超臨界状態となった、エタノール、IPAの蒸気がアタックして、結果PCの分子構造が変わり(低分子化して、)物性低下が生じたと推測した。同様な理由でPET、PBTを用いたエタノール、IPAの発泡成形でも物性低下は著しい。
【比較例4】
【0135】
前記比較例1、比較例2、比較例3はGCPを掛けていない(用いていない)ので、何れの発泡成形品の表面はスワール・マークが発生している。文献PCT/JP2015/062611の
図20、乃至
図22のノズルと、
図23、
図25記載のGCP用にシールがなされたシール金型、
図24記載のGCP装置を用いGCPを掛けた(使用した気体はレシプロタイプのコンプレッサーで圧縮した1.4MPaのエアーである。本発明では
図20、
図21に示すシ-ル金型と、
図15のGCP装置。)発泡成形を行い、表面のスワール・マークのない綺麗で、平滑なスキン層を、内部は微細な発泡セル(発泡層)を持つ発泡成形品を得たが、比較例1、比較例2、比較例3と同様に強度を確認をした結果、比較例1,比較例2、比較例3同様に強度低下は著しい。
【実施例0136】
前記比較例1、乃至比較例4からPC系樹脂の発泡剤を模索する中、未乾燥のPC〔直鎖状芳香族PC系樹脂{帝人化成(株)製、パンライト−L1225WP}〕樹脂ペレット(吸水率は0.1wt.%程度)を比較例1で発泡剤の重曹を使用せずそのままで成形加工を行った結果、樹脂中の水分(元々吸湿していた水分)の起因した数個のボイドが、スプール・ランナーと、成形品に発生した。然しこの未乾燥のPCを用いた成形品は強度低下は起きていなかった。この事から発明者はPCの発泡成形には、水が使用出来るのではないかとの仮説を立て、予備実験の結果から水の可能性・有効性を見出し、鋭意研究を行い、PC系樹脂、広くはエステル系の樹脂の発泡成形には水が有効との事象を確認、本発明の完成に至った。
【0137】
比較例3に於いてエタノールの代わりに0.5wt.%の水(蒸留水、イオン交換水、水道水、市水)を用い発泡成形を行った結果、
図3に示す様に発泡セルは数mm(ミリメートル)と大きいが水を発泡剤として用いた場合は、エタノールの様には物性低下はなく、荷重しても割れはなく、PCの発泡成形品としての物性は十分に維持し、PC成形品として十分に使用可能な発泡成形品を得るには水は有効な発泡剤である。
【実施例0138】
(起泡核剤)
直鎖状芳香族PC系樹脂{帝人化成(株)製、パンライト−L1225WP}100重量部に対し、酸化アルミニウム5重量部をタンブラーを用いて均一に混合し、掛かる混合物をベント式二軸押出し機に投入してペレット状樹脂組成物を製造し起泡核剤の酸化アルミニウム5重量部含有のマスター・バッチのA001とした。
【0139】
同様に酸化アルミニウムの代わりに酸化銀を5重量部含有の起泡核剤のマスター・バッチB001を製造した。
【0140】
同様に酸化アルミニウムの代わりに二酸化ケイ素を5重量部含有の起泡核剤のマスター・バッチC001を製造した。
【0141】
同様に酸化アルミニウムの代わりに炭化ケイ素を5重量部含有の起泡核剤のマスター・バッチD001を製造した。
【実施例0142】
前記実施例1では起泡核剤を用いていないので発泡セルは大きく、粗かったが、実施例2では起泡核剤の酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素其々で、発泡セルを微細化出来るか作用・効果を確認した。
パンライト−L1225WPに起泡核剤のマスター・バッチA001、マスター・バッチB001、マスター・バッチC001、マスター・バッチD001其々を別々にPC樹脂ペレット100に対し5を混ぜ合わせ(混合比=100:5)、比較例1と同じ様に(条件で)加熱筒内に水(使用した水は蒸留水)を樹脂の容量に対して水の容量を0.4vol.%で注入、水を発泡剤に使用したPCの発泡成形品を得た。本実施例3で得られた射出発泡成形品は起泡核剤のA001、B001、C001、D001其々で起泡核剤の作用・効果によって微細な発泡セルを持った発泡構造体が得られた。実施例3の結果からPCに含有した起泡核剤のマスター・バッチA001、マスター・バッチB001、マスター・バッチC001、マスター・バッチD001に含有する発泡成形の発泡セルを微細にする其々の物質は、発泡セルを十分に微細化させた。得られた起泡核剤酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素含有の発泡成形品を比較例1などの場合と同様に荷重して強度を確かめた結果、起泡核剤の酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素が含有された事によるPCの物性の低下は殆どない。勿論の事発泡剤の水による物性低下の影響も殆ど確認されない。
【実施例0143】
前記実施例3で前記比較例4に記載したGCPを適用すると、表面はスワール・マークのない綺麗で、平滑なスキン層が、内部は約50μm以下の発泡セルを持った発泡成形品を得た。
【実施例0144】
前記実施例3、実施例4では起泡核剤のマスター・バッチA001、マスター・バッチB001、マスター・バッチC001、マスター・バッチD001を別々に、単独で用いたが、添加量を実施例の混合比の5を、A001を2.5とB001を2.5に、或いはA001を2.5とC001を2.5になどと2種類以上の起泡核剤のマスター・バッチ混ぜ合わせ使用した。A001、B001、C001と3種類の場合で混合比を5に、或いはA001、B001、C001、D001全てを用いた場合も其々の起泡核剤の作用・効果は十分に発揮され、発泡セルを微細化させる事は確認した。当然の事起泡核剤の添加量を多くすると発泡セルはより微細に、少なくすると発泡セルは粗くなる。マスター・バッチとしているので、添加量の多い、少ない添加量のコントロールで所望する発泡セルの大きさと、GCPを実施する場合には、表面のスワール・マーク発生の有無(起泡核剤を多く入れると発泡セルはより微細にはなるが、発泡力が高くなり、表面にスワール・マークが発生する。この場合はGCPの圧力を高める、或いはGCPに炭酸ガスを使用するなどでスワール・マークのない表面が綺麗で、平滑な発泡成形を製造出来る。)を確認して最適な添加量を見つけ出す。
【実施例0145】
本起泡核剤の酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素は、PC単独でなくPC系樹脂でも発泡セルの微細化は出来るか。水を発泡剤としての使用が有効(有用)かの有用(有効)性の確認をした結果、以下の示す成形材料の全てに於いて実施例2、乃至実施例4の手段でも同様に行い、有効との結果を得た。使用した樹脂はPC/ABS、PC/PS(ポリスチレン)、PC/PVC(塩化ビニル、ポリ塩化ビニル)、PC/ポリアミド(PA)などでも実施可能であった。PC系樹脂で水は発泡剤として使用する場合は、蒸留水が望ましく、イオン交換水でも良い。市水でも、井戸水でも使用可能であるが、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)が存在すると、PCの分解が促進されるので全硬度(カルシウムイオンとマグネシウムイオンの総和の濃度)が100ppm以下の物(水)が望ましく、更には35ppmの物が良い。PC/PET、PC/PBT、PC/PEN(ポリエチレンナフタレート)でも起泡核剤の作用・効果はあったが、上述した様にPET、PBT、PENではこれ等の樹脂が加水分解してしまい、結果物性の低下は著しい。
これ等の起泡核剤はPC系樹脂に限定されるものでなく、ABS、HIPSなどのスチレン系樹脂、PPの代表されるオレフィン系樹脂、ナイロン系樹脂、塩ビなどのビニル系樹脂にも起泡核剤として使用が出来る。
【実施例0146】
住化ポリカーボネート(株)製のPC{SDポリカ(商品名)301-15(グレード)}に可塑化、計量中に、
図1、
図2に示す成形品重量(加熱党内の溶融樹脂の重量)に対し、0.5wt.%のイオン交換水を、計量の開始から、計量終了まで注入し加熱筒内で気化させ、加熱溶融されたPC系樹脂に発泡性を付与させ、
図3の成形品を得た。得られた成形品は起泡核剤が混ぜ込まれていなかったので、発泡セルは2mm、乃至5mm程度と粗いく大きいが、重曹、ADCA、エタノールの様に物性の低下はなく、PC本来の物性を示した(
図3)。
【0147】
GCP排気後直ぐに、可動側の金型を1mm後退させて、板厚2mmからGCP排気後直ぐに1mmモールド・バックさせ発泡倍率を高めた。モールド・バックによって樹脂の、成形品に掛かる圧力が下がり結果発泡セルは10mm、場所によっては20mmに達するまで大きくなっている(
図4)。これだけ大きな発泡セルを持つ成形品にも関らず、
図15に示すGCP装置を使用して金型内を1MPaまで圧気して、与圧した中に水を用いて発泡性を付与した前記PC系樹脂成形品の表面にスワール・マークは全くなく、綺麗で、平滑である(
図4)。
尚
図4など成形品の表面にはGCP特有の不具合のレイン・ドロップ現象を避ける為に梨地のシボ加工を施した。
【0148】
圧力が1MPa、エアーでGCPを行い表面が綺麗で、平滑な発泡成形品を得たが、起泡核剤が配合されていなかったので、発泡セルは非常に大きな物{大きさ(直径)は5mm程度、場所によっては5mm以上となった。(
図3、
図4)
【実施例0149】
住化ポリカーボネート(株)製のPC{SDポリカ(商品名)SI8000L(グレード)}を同様にイオン交換水で発泡成形をしたところ、超微細な発泡セルが得られた。同様のエアーで圧力1MPaでGCPを行ったところ発泡力が強すぎて、表面のスワール・マークを押させる事は出来なかった。
前記実施例7は301-15だけであったので発泡セルは粗く大きかったが、SI8000Lを用いる(混ぜ合わせる。)事で発泡セルは微細化され、GCPによって表面のスワール・マークを幾らかは抑え込める事を確認した。301-15のペレットを70部、SI8000Lのペレットを30部混ぜ合わせ、SI8000L中の成分を起泡核剤に活用した結果で、
図3、
図4に比べると発泡セルは微細化され、1mm以下の発泡セルが成形品の内部に均一に分散されている事は目視確認した(
図5)。本実施例で使用した起泡核剤は光拡散剤である。
【実施例0150】
301-15のペレットを80部、SI8000Lのペレットを20部混ぜ合わせた混合樹脂を同じ様にイオン交換水を用いて発泡成形を実施した。実施例7、実施例8と同様にGCPを実施したが実施例8に比べて更に表面のスワール・マークは少なくなったが、スワール・マークのない綺麗で、平滑な発泡成形は得られなかった。
【実施例0151】
前記実施例9の混合比を変更したのが実施例10で、その混合比は301-15を90部、SI8000Lの混合比10部とした結果、1MPaのエアーを用いたGCP(使用した気体はコンプレッサーで圧縮した圧力が1から1.2MPa程度のエアー)で表面のスワール・マークはなくなり、表面が綺麗で、平滑な、発泡セルが微細で綺麗なPCの発泡成形品を得た。得られた発泡成形品の強度は十分にある事を確認した。
図5は本実施例8に於いてGCP排気後にコア側を0.5mm後退させて発泡倍率{(2mm+0.5mm(金型の後退量=金型を開けた距離)÷2mm(初めの板厚)=1.25(25vol.%の体積拡大)を高めた事を示したのが
図5(写真)で、発泡セルの直径は1mm程度、成形品全体に存在し、GCPの作用・効果によって成形品の表面にスワール・マークは全くなく、綺麗で、平滑である。
【実施例0152】
住化ポリカーボネート(株)製のPCとABSとのポリマーアロイ{SDポリカ(商品名)IM6011(グレード)}を前記実施例7と同様にイオン交換水を用いて発泡成形を行った。GCPはエアーで圧力は1MPaである。本実施例11に用いたPC/ABS(「PC/ABS」はPCとABSとのポリマーアロイの意味)の色は黒色、顔料が起泡核剤の作用をして、内部は微細な発泡層を持ち、表面はスワール・マークのない綺麗で、平滑な発泡成形品を得た。
比較例としてエタノールを用いた場合物性は低下した。この事からPC系のポリマーアロイでも発泡剤には水が有効と判断される。
【実施例0153】
実施例11に用いた樹脂を他社の物で確認したのが本実施例12である。IM6011の代わりに日本エイアンドエル(株)のPC/ABS{テクニエース(商品名)T-251T-15(グレード)}とした。得られた発泡成形品は実施例11と同様に表面は平滑で内部は微細な発泡セルを持った発泡成形品である。比較例としてエタノールを用いた場合物性は低下した。この事からPC系のポリマーアロイでも発泡剤には水が有効と判断される。
【実施例0154】
住化ポリカーボネート(株)製のPCとPET(ポリエチレンテレフタレート)とのポリマーアロイ{SDポリカ(商品名)IM401-18(グレード)}を用い前記実施例7同様にイオン交換水で発泡成形したが、PC/PETの物性は全く出ず、理由はPETの加水分解と推測をした。
化粧品の容器にはPETを用いている。この化粧品用のPET樹脂を用いてアルコールで発泡成形をしたところ、物性低下は確認されない。
【実施例0155】
図23、
図24に示す傾斜ピンを荷重式Oリングでシールして、荷重式Oリング106は入子113で固定したシール金型を、
図15に示すGCP装置で、気体はエアー、圧力は1.4MPa掛けて漏れがない事を確認した後に、本シール金型を用いて成形用樹脂がPPで、発泡剤はエタノールと水道水を4:6に混ぜ合わせた液体を用い発泡成形、スワール・マークがない表面が綺麗で、平滑な発泡成形品を得た。
尚GCPは一般的にはレシプロタイプ、又はスクリュータイプなどのコンプレッサーを用いたエアーであるが、エアーでは変色・焼けが生じる場合は窒素ガスを用いる。炭酸ガスを用いればキャビティ内に充填された溶融樹脂の先端から炭酸ガスが入り込み流動性が向上する。GCPに用いる気体は一種類でなくエアーと窒素ガス、エアーと炭酸ガス、エアーと窒素ガスと炭酸ガスなどと複合ガスとしても良い。GCPの圧力は、溶融樹脂に発泡性を付与さる発泡剤、発泡性ガスの種類と量、発泡性を付与させる樹脂、樹脂の温度などによって変わる。GCPは発泡を抑えスワール・マークをなくすには有用な手段であるが、金型内の気体は樹脂の充填では厄介な、邪魔モノ(物、者)なので、スワール・マークを押(抑)える事が可能ならば、邪魔モノのGCPの圧力は低い方が良い。本発明のGCPの圧力は大なる圧力、即ちスワール・マークを押さえ込む大気圧以上であれば良く、一般的な発泡成形の場合には、GCPの圧力は0.5MPa以上、2.5MPa以下の範囲が好ましく、0.5MPa以下ではスワール・マークを押さえ込み、表面が綺麗で、平滑には出来ない。2.5MPaの場合はGCPの圧力(;圧気の圧力)によって発泡セルが潰れてしまうので内部に発泡層が形成されないので好ましくはない。発泡成形の場合のGCPの圧力は0.5MPaから2.5MPa程度が良い。
無乾燥での材料を用いての一般成形でシルバーをなくす事が目的ならば0.5MPaでも可能な場合もある。
【0156】
発泡させないで液体の注入によって流動性を高める場合には、射出成形機からの樹脂保圧を掛け発泡セルを潰して、発泡させない(;発泡層を形成させない。)ので、GCPの圧力は成形品表面にスワール・マークの発生がなければ良い。溶融樹脂の充填に伴うショート・モールド、変色・焼けの発生さえしなければ良く、GCPの圧力の制約はない。必要に応じては2.5MPa以上の高圧にしても良いし、場合によっては0.5MPa以下の圧力でも良い。
【0157】
ABSでは約0.4wt.%、0.6wt.%程度が吸湿(吸水)している。タルク入りのPPなども0.2wt.%から0.8wt.%程度吸湿しているので、シルバー(シルバー・ストリーク、銀条)対策として成形の前には乾燥を必要とするが、シール金型を用い、金型内を1MPa程度のGCP(金型内を予め与圧する。圧気する。)を用いれば、前記ABS、タルク入りのPPでも乾燥なしでもシルバーのない表面が綺麗な成形品を得る事が出来る。GCPを用いる事でシルバー対策としてのABSの乾燥の必要はなく、省電力(省電気、省電気エネルギー、省エネ)の経済的な効果がある。GCPの圧力はシルバーの発生がしないならば必要以上に高める必要はない。上記乾燥なしの材料のシルバー対策は、ABSに限定されず、他の材料でも良い。
【実施例0158】
図23、
図24に示す傾斜ピンを荷重式Oリングでシールして、荷重式Oリング106は入子113で固定したシール金型を、
図35に示す中空成形、圧空成形装置を用い、圧力30MPaで圧空成形をした。傾斜コアのシャフト(符番108)からの加圧流体の漏れはなく、流体加圧での作用・効果は十分ある事を確認した。使用した成形材料はPPと、ABSである。
【実施例0159】
図25に示す金型で、樹脂はPP、発泡剤は実施例14に示す水とエタノール4:6の混合溶液で、実施例14のGCP(正確にはアウターGCP)を行い、表面のスワール・マークをなくした表面が綺麗で、平滑な発泡成形品で、内部からは圧力30MPaでインナーGCP(発泡性樹脂を用いた中空成形の事)を実施した。内部の加圧が十分である時点で、符番120のピンを後退、中空部内部の圧力を一気に下げ、内部に向かって発泡をさせた。冷却・固化が完了の後、金型を開けたが、膨れ、バーストは確認されない。本実施例16によって発泡性樹脂を用いたインナーGCPでも符番120後退の有効性は確認した。
【実施例0160】
図36に示す金型を用い、HIPSで
図35に示す注入装置を用いて中空成形した。中空部の残圧をなくす為、符番120のピンを後退、中空内部の圧力を一気に下げ、その後に金型を開けたが中空部残圧に起因する膨れ、バーストは確認されない。本実施例17によって非発泡性樹脂を用いた中空成形でも符番120後退の有効性は確認した。
【実施例0161】
図23に示す傾斜コア(符番10.7、符番108など)を、
図23の符番113に示す様に入子で荷重式Oリング106を押さえ込み、
図20、乃金型の中に入れた。この金型を用いて前記実施例1、乃至実施例15などを行い、傾斜コアのシールも
図23で十分可能と確認した。又実施例18の金型を用いて窒素ガスの圧力30MPaで圧空成形を行い、傾斜コアのシールに入子構図を用いた金型は圧空成形にも十分耐圧を持ち、シール性も十分である事を確認した。
【実施例0162】
実施例18は
図23の傾斜ピンをシールした金型であるが、本実施例19は
図24の様に複数本の傾斜コアと、エジェクターピンとを荷重式Oリング106でシールして、入子113で固定をしたシール金型で前記実施例18のGCPを用いた発泡成形と、圧空成形とで、十分に量産実施可能なシール金型であると確認した。
【実施例0163】
図7はφ4mm程度のピンゲート6点が製品面(符番4がICトレイのキャビティ)に落とされたICトレイの金型である。この場合に初めにPLを開くのではなく、符番8を開きピンゲートをカットしてからPLを開きモールド・バックして、発泡倍率を高めた。樹脂はABS、変性PPO(PPでPPOを変性した物)其々を用い発泡成形して、軽量化30%(発泡成形なので保圧を使用しない分を使用しない分の約10%と、モールド・バックによる金型拡張の約20%)程度の発泡成形品を得た。エアーで1.2MPaのGCPを行い表面が綺麗で、平滑なスワール・マークのない発泡成形が得られる事も確認した。
ICトレイは寸法精度の高い事、反り変形が少ない事が要求されるので、保圧を用いない、低保圧で成形を行う発泡成形、中空成形が良い。発泡成形の場合は発泡剤を使用するが、発泡剤は性状が液体、気体、固体のモノを使用するが、発泡成形したICトレイ内発泡残渣がICに影響を与える危険性を考えれば、発泡残渣のない窒素ガス、炭酸ガスなどを用いた気体、又はエタノール、IPAなどのアルコール類、水などが良い。発泡成形、中空成形も従来のソリッド成形に比べて型締め力が1/2以下に下げられるので、スタック・モールド以外に、同じPL面に成形品の形状を加工した多数個取り、異種多数個取りなども実施出来る。実際に
図7のICトレイ(
図10が
図7で加工されたICトレイ)は大きさは縦が135mm、横が315mm、厚さは8mmで通常成形では型締め力180トン(ton)の射出成形機を用い、1ヶ(コ、こ、個、子)取りで加工しているが、発泡成形では必要な型締め力が高くても80トンなので、1型に同じICトレイを2ヶ加工する2ヶ取りの加工、又は形状の異なるICトレイを2ヶ加工する、異種2ヶ取りで行い、反り・変形の少ない品質が満足するICトレイを得た。
【実施例0164】
図7のランナーにガス(気体)の注入ピンを固定側から立てて、窒素ガスを20MPaまで高め、キャビティ内に非発泡性樹脂を充填後、直ぐに5秒間気体注入して中空部を形成、10秒間中空部内に気体を閉じ込め(保持して)、排気、中空率(一般成形の重量の比較から)8%の中空成形品を得た。
【実施例0165】
前記実施例22はキャビティへ非発泡性樹脂を充填後の中空を形成させたが、本実施例22では高圧ガスを注入させながら、0.2mm金型後退(モールド・バック)させた結果、中空率は20%近くになった。尚実施例21、実施例22でエタノールを用い発泡性を付与した発泡性樹脂でも行い、発泡性樹脂を用いても中空成形が可能な事を検証した。
【実施例0166】
自動車の床に惹かれているマットはゴム製のモノと熱可塑性エラストマー(TPE)のモノとがあり、本実施例22はエラストマーを用いた発泡成形を行った。使用した発泡剤は中空気球のアドバンセル(商品名)、エキスパンセル(商品名)、オレフィン系エラストマー(TPV)の表面にADCAを20wt.%担持したマスター・バッチ、同じく重曹を20wt.%担持したマスター・バッチと、液体の発泡剤としてエタノールを用いた。何れの発泡剤を用いてもオレフィン系エラストマーを発泡させる事が可能である事を確認した。同じ様にTPS、TPUでも発泡は可能であった。エステル系のTPCは固体の、液体の発泡剤何れも物性低下が確認され、TPCの発泡は窒素ガスだけが加工である。
TPEは記TPVを含めTPA、TPC、TPO、TPS、TPU、TPV、TPZ大きくは7分類に分けられハードセグメントとソフトセグメントの違いで更に32に分類される。本実施例22は自動車用のマットを例にして説明したがTPEを用いた全ての成形品での発泡成形が可能であると類推される。
勿論発泡成形だけでは表面にスワール・マークが発生するので、GCPを圧力が1MPaのエアーでTPVとTPSとで実施、外観にはスワール・マークのない、内部は微細な発泡セルを持った発泡構造体が得られた。GCPのエアーを巻き込みGCPによってレイン・ドロップが起きる場合は、GCP排気後に金型を0.1mm、0.2mm程度開けて樹脂と金型との隙間の圧気をスムースに排気する。更に排気後に金型内を真空引きすればレイン・ドロップは更に少なく出来る。
【0167】
東洋機械金属(株)製の850トンの射出成形機を使用、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(以下材料「A」とする。)を用いて発泡成形を行った。使用した発泡剤は重曹と、ADCAとである。初めに重曹を用いた発泡成形の実施の結果を説明する。材料Aのペレット表面に重曹を20wt.%担持して発泡剤マスター・バッチを製造した。材料Aに対し重曹だけの含有量が0.5wt.%となる様に、ブレンドして、材料Aの溶融温度215℃で発泡成形した。得られた発泡成形品は表面にはスワール・マークはなく、内部には発泡層は確認されたが、重曹では発泡力は十分でなく、ヒケが発生している。重曹の代わりにADCAを用いADCA含有量が重曹の半分の0.25wt.%としたが、重曹の場合と同様GCPを用いなくてもスワール・マークのない表面が綺麗で、平滑な発泡成形品を得た。内部の発泡セルは微細なモノと粗い(大きい)モノとが混在していた。発泡セルが大きいのは発泡剤の不足と判断し、ADCAを0.5wt.%に増やした結果粗い発泡セルは少なくなったが、表面にスワール・マークは発生しない。成形品の初めの板厚は3mm、充填完了後に0.2mm金型をモールド・バックさせ発泡倍率を高めた。次に成形機加熱筒に液体注入が可能な場所{スクリューの圧縮ゾーン直近;液体を用いる発泡成形では、加熱筒内にアルコールなどを入れると一気に気化する。気化した蒸気がホッパー側に漏れない様に、スクリューには溶融樹脂が巻き付いて封止している方が良い。スクリューに溶融樹脂が巻き付いている処(ところ)の前(ノズルの方に、)に液体の注入口を設ける。}に穴を開け、其処からエタノールを入れ、気化、可塑化、計量の材料Aに発泡性を付与させ発泡成形した結果、前記重曹、ADCAの場合と異なり、表面にスワール・マークは発生した。このスワール・マーク発生に関する差は、化学発泡剤の場合は材料Aに発泡剤マスターバッチを混ぜ合わせホッパーから加熱筒内に投入すると、発泡剤の一部は直ぐに熱分解して、発泡性ガスを発生させる。熱可塑性樹脂のPP、ABSなど其処で発生した発泡性ガスの多くは樹脂中に微分散、溶解、少しだけがホッパー側に逃げて行くだけなので、キャビティ内に充填される発泡性樹脂は十分な発泡力を持っているので、表面にはスワール・マークが多く発生する。一方材料Aでは樹脂の可塑化溶融の速度が遅く、前記化学発泡剤の重曹、ADCAの場合は、化学発泡剤の分解速度の方が、材料Aの可塑化の速度より早く、発泡性ガスの多くがホッパーに逃げて行ってしまい、所望する発泡力を材料Aに与えられなかったので、発泡はそれ程はしていない(発泡ガスの方が、そして量が少ない。発泡力が弱い。)ので、スワール・マークの発生は略確認されない。一方アルコールでは溶融が完了した樹脂に圧縮ゾーン近傍(溶融された樹脂へ、)で発泡剤のエタノールを入れたのでスワール・マークが多く発生した。尚上記材料Aは起泡核剤として炭酸カルシウム5wt.%を配合させた。
【0168】
材料Aに用いた発泡剤は材料Aのペレット表面に担持したので、溶融混練して内部に発泡剤が含有された状態の発泡剤の方が良い。ホッパーから加熱筒に発泡剤マスター・バッチを含む材料を投入後に加熱筒に栓をして、ホッパー側に発泡性ガスが逃げない工夫をする方が良い。実施例23は自動車マットで説明したが、実施の形態はマットに限らずTPEで成形される全ての発泡成形品での実施可能である。
【0169】
実際に自動車のフロアーマットの金型を用い、発泡予定のTPEがTPV、発泡剤はTPVにマレイン酸変性のPPの溶液を用い、前記TPV表面に重曹を20wt.%担持した前記TPVをキャリア・レジンとした発泡剤マスター・バッチを使用した。成形を行った結果、ゲートを原点として約60%程度は微細な発泡セルが確認されるが、流動末端(成形品の端部)では発泡出来なかった。発泡セルは確認出来ない。これは重曹によって発生する発泡性ガス(炭酸ガス、水蒸気)が、ホッパーから逃げていったしまった結果である。
図53の符番239に様にスクリュー後部に逆止弁を設けホッパーから発泡性ガスが逃げない様にシールすると良い。実際に符番239を持った射出成形機(本実施例ではミューセル仕様のスクリューを持った成形機)を使用した。
【0170】
TPVなどのTPEの場合の発泡は、先に示した発泡剤マスター・バッチを用いる以外に、発泡予定のTPEのペレットに例えばマレイン酸変性のPPなどを用いて担持すると、発泡性ガスの分散が良くなり成形品の端までも均一な発泡セルが形成される。当然な事ADCAでも、又アルコールなどの液体を用いても、或いは前記発泡剤マスター・バッチなどと併用しても良く、符番239を持たせたスクリューを使用すれば良い。
【0171】
TPVの発泡成形の場合も圧力が1MPa程度のGCPを用いる事でスワール・マークのない表面が綺麗で、平滑なTPVの発泡成形品が得られる。重曹、ADCAなどの固体の発泡剤、水、アルコールなどの液体の発泡剤を用いた場合も、符番239を持たせたスクリューでは発泡性ガスはホッパーから逃げては行きにくい。押出し成形の場合も239に相当する構造のスクリュー用いても良い。符番239を持っていないスクリューでは樹脂中の水分、残留モノマーなどが気化したガスはホッパーから逃げるが、符番239を持っていると逃げにくいので、シルバーが発生する。この場合はスクリューを交換するか、或いはGCPを実施すれば良い。
【実施例0172】
実施例23では発泡予定の材料Aの表面にADCA、又は重曹を担持した発泡剤のマスター・バッチを使用した。本実施例24ではマスター・バッチを用いずに、材料Aの造粒(ペレット化)の工程(段階)で、予めADCAを0.25wt.含有させた材料Aのペレットを製造した。前記ADCAが含有したペレットを用い、前記実施例23で使用した射出成形機、金型を使用した。結果実施例23よりも更に発泡倍率が高い材料Aの発泡成形品を得た。
【0173】
ADCAの代わりに0.5wt.%の重曹を用いて同様に実施した結果やはり実施例23より発泡倍率が高くなる事が確認された。
実施例23の方法に比べて発泡倍率が高くなったのは、材料AのTPEは溶融させる場合、例えばABS、PPなどは溶融して早く粘度が下がり発泡性ガスの窒素ガス、炭酸ガス、水蒸気などを樹脂中に包含(溶融樹脂中に微分散、加圧溶解など)出来るが、材料Aの場合は溶融しても粘度がそれ程早く下がらないので、ADCA、重曹などの発泡剤が熱分解などして発生した発泡性ガスの多くはホッパーから外に逃げ出して行く。実施例24では材料Aの中に必要な量の発泡剤ADCA、重曹などを練り込んであるので、材料Aが溶融するとその時に初めて発泡剤に熱が加わり熱分解開始するので、材料A中に多くの発泡性ガスを包含しやすく、結果少ない量の発泡剤でも十分に発泡させる事が出来る。本実施例24ではADCA、重曹を示したが、DPT、他の炭酸水素塩(Li、Na、K、Rb、Ca、Mgなど)中空気球でも実施可能である。当然この場合にGCPを用いればスワール・マークを抑え込む事が出来る。当然混錬性を更に高めるにはダルメージを用いる事、フライトの形状を高混錬性のモノにする事などがある。
【実施例0174】
(流動性向上の確認。)
発明者はエタノールをPPに対いて1.5vol.%注入すれば流動性は2倍近く高くなる事を確認した。1,300トンの射出成形機を用い、実際3Dの量産型(第55実施形態で使用したOA機器の筐体。)PP樹脂はノバッテックBC03B{MFR(MI値)=30g/10分}にエタノールを1.5vol.%注入した場合、同じPPのBC06C(MFR=60g/10分)と略同じ流動性を示した。この結果はスチレン系樹脂のABSでも流動性が大きく向上する事は同じ金型を用いて確認した。
【実施例0175】
タルクが60重量%加えたPPにエタノールを1.5%用いて発泡成形を行い、圧力が1MPa程度でタルクは成形品の中に沈み込ませる事が出来、発泡成形品表面にはタルクの浮きは確認されない。この成形実験の際にアルコールを用いるとVPに切り替え位置が大きく変わり、エタノールでの流動性向上の作用・効果が大きい事が確認された。
発泡成形ではなくエタノールで流動性を高めた樹脂をキャビティ内に充填し、成形機のスクリューから十分な樹脂保圧を掛けた場合流動性向上の作用・効果は確認されたが、表面のスワール・マーク{;発泡成形の発泡縞模様ではなく、エタノールによって発生したシルバー(シルバー・ストリーク、銀条)の事。}は発生している。然も樹脂に添加されているタルクの浮きも確認された。タルクを沈め事はIPAでも可能である。
【0176】
この時に圧力1MPaのエアーを用いてGCPを実行(実施)した結果、シルバーのない、タルクの浮きはない表面が綺麗で、平滑な発泡成形品を得た。
スクリューから十分な保圧を掛けて、内部セルを潰し、一般成形品とした場合も、発泡成形の場合よりも流動性は高くなる(;スクリューからの保圧を用いているので当然な事)事と、GCPによってシルバーのない、タルクの浮きはない表面が綺麗で、平滑な一般成形品が得られた。
尚固体の発泡剤、例えばADCA、炭酸水素塩などを用いれば流動性は少しは向上するが液体程ではない。ミューセル、ソフィット(SOFIT)などの様に気体を用いた場合も流動性が向上する事は確認したが、この場合も液体程ではない。アモテックの場合は炭酸ガスを用いるので流動性の向上はある程度期待出来るが液体程ではない。炭酸ガスを扱う事で設備は複雑で高価、液体を用いた設備の方がイニシャルの価格、ランニングの価格からも優れている。
【0177】
本発明で使用可能なスクリューは一般成形が可能なスクリューで実施は可能であるが、ミューセルの様にダルメージを持ったモノ、ソフィットのスクリューの様に圧縮ゾーンの例えば2ヶ所もったモノ、L/Dが28,26などの長いモノでも実施は可能である。ミューセルなどの気体を用いた発泡成形では、気体がホッパー側に逃げない様にスクリュー後部に逆止弁を設けている。液体は溶融樹脂に注入するので、液体を入れる部分より後方の溶融樹脂に逆止弁の役割を持たせている。逆止弁を持たせたスクリューの場合は、ホッパー側に液体の蒸気が逃げて行かないので、半溶融の樹脂の中に液体を入れても良い。
【0178】
発泡成形の場合キャビティ内への溶融樹脂の充填の工程は、スクリューは前進端の一杯まで押し(打ち)切る。又打ち切らずに途中で停止しても良い。油圧機の場合は充填の重量を安定させる為に打ち切っていたが、電動機では打ち切らずに途中で止めても良い。又発泡性樹脂を充填させた後にスクリューを後退させて、或いは/及びダミー形状〔特許文献1乃至特許文献7に記載の図、及び{S&T出版(株) 2022年10月20日 第1版 第1刷「発泡成形・中空成形・圧空成形の量産に向けての準備と、環境負荷低減の具体的な手段の説明」鈴木 康公 新保 實著}出版の書籍を参照。〕を持たせてショート・モールドで充填させるなどをして、キャビティ内に溶融した樹脂の圧力を下げて発泡を容易にする。即ち発泡成形の場合はキャビティに充填された発泡成形性樹脂の圧力を出来るだけ一気に下げる工夫を要する。又発泡を容易にするには樹脂の温度、金型の温度は高めに設定すると、金型内での冷却・固化の速度が下がるので発泡は容易になる。樹脂の温度、金型の温度は高めに設定するとGCPを用いた場合は表面のスキン層は薄くなる。
【0179】
一方液体を用い流動性を高め、一般成形を行い場合の手段を説明する。流動性を高めるモノ(物質)は、上述した様に1気圧(atm)、23℃で性状が液体である物質で、発泡目的でないので、加熱筒内で気化しても、気化しなくても良い液体である。即ち沸点は発泡成形に場合とは異なり考慮する必要はない。
使い勝手から、より流動性向上を望むならば気化させ、溶融樹脂の中に加圧(計量時の背圧で、)溶解させ、或いは微分散をさせた方が良い。この様に発泡性を持たせて溶融樹脂をキャビティ内に充填させ、クッション量を持たせ、スクリューから一般成形と同じ様に樹脂保圧を掛ける事、或いは金型の一部、又は全部を圧縮して樹脂の密度を上げる事で発泡セルはその圧力で潰れ、発泡セルを形成させる目的の発泡性ガスはこれ等の樹脂保圧など圧力のよって溶融樹脂の外に搾り(しぼ、シボ、絞り)出す工程を持たせている。発泡セルを形成させないのでGCPの圧力は高くても構わない。GCPの圧力によって発泡セルが潰れても構わない。此処でGPCの目的はスワール・マークをなくす事、添加剤などを沈める事なので、発泡成形の様に内部の発泡セルの形成を邪魔しない圧力にバランスさせる必要は全くない。
流動性は樹脂によって異なるので、注入する液体の量、種類は異なる。GCPの圧力は必要以上に高める必要はなく、出来るだけ低い圧力の方が、溶融樹脂の充填にはショート・モールド、変色・焼けなどの原因となる邪魔モノにはならない。
当然液体によって流動性が高められれば、充填の圧力は下げられるので、大きな成形品を低圧で成形加工する事が出来るので、使用する成形機は小型のモノで良く経済的である。充填の圧力が下げられる事は成形品の内部の残留応力が下がるので、反り・変形の少ない成形品が得られる。流動性が高い樹脂の場合は金型への転写性は向上する。PPなどのオレフィン系樹脂など結晶性樹脂の場合は金型表面に触れた段階での冷却・固化速度が非結晶性のABS、HIPAなどの比べて早いので、GCPの圧力は低く設定が出来る。
【0180】
GCPに炭酸ガスを用いれば、流動の先端部から炭酸ガスが溶け込み更に流動性が向上する事を確認している。炭酸ガスを発泡剤として用いる事で流動性が高くなる事はアモテックから報告されているが、液体程の作用・効果はない。炭酸ガスと液体とを併用しても良い。アドバンセルなどの中空気球は有機溶剤を用いているので重曹、ADCAなどの場合に比べて流動性が高くなる事は実験から確認出来た。市販の中空気球の発泡剤のマスター・バッチは押出し機を用いて製造されている?が、マレイン酸変性のPPのワニス(溶液)、スチレン変性のアクリル樹脂ワニス(溶液)などを用いてPP、ABSなどに担持しても良い。
【0181】
別に流動性を向上させるには化粧面ではない非化粧面にもシボ加工を行うと良い。シボ加工以外にはTiN、CrN、DLCなどのコーティングを施しても良い。勿論の事シボと、コーティングとを併用しても良い。
【0182】
流動性の高い樹脂を用いる事は、中空成形(射出中空成形)での中空形成させるキャビティ内に充填された溶融樹脂の中に注入するガスの圧力が下げられる。流動性の高い溶融樹脂の場合はより低圧で中空部が形成されるので、結果反り・変形の少ない中空成形品が得られる。成形品の中に注入するガスの圧力が下げられる事で寸法精度の高い中空成形品が得られる。流動性の高い樹脂を用いる事で中空成形特有の不具合のヘジテーション・マークを少なく、或いはなくし表面が綺麗な中空成形品が得られる。
【0183】
流動性を高めた溶融樹脂を用いると圧空成形(射出圧空成形)の場合には、溶融粘度が下がるので金型への転写性は向上させる。圧空成形の場合は樹脂と金型との間に入れ込んだ高圧ガスによる金型への転写(;「ガス保圧」とも言う。)と、ガス保圧と樹脂保圧の併用による金型への転写性向上が出来る。この場合にも樹脂の設定温度は高く、金畑の設定温度も高くした方がガスの加圧効果は高い。ヒート・アンド・クール、高周波誘導加熱を用いたBSMなどでは更にガスの加圧効果は高くなる。圧空成形の場合は印刷したフイルムなどを先に金型に入れての成形転写の場合には大なる効果を発揮する。
【0184】
液体によって流動性の高めた樹脂の場合は一般成形でも金型への転写性を高める事が出来る。流動性が高い樹脂は金型への転写性は向上すると言う作用・効果を奏する。
【0185】
樹脂の流動性を高めるのは低分子の樹脂を混ぜ合わせる、他の樹脂とのポリマーアロイ、ポリマーブレンドにする。WAX、ステアリン酸、ステアリン酸塩などの流動性向上剤を用いるなどの手段が用いられているが、樹脂の単価が上がり経済的ではなく、これ等の添加剤によって樹脂の物性の低下は避けられない。
液体の場合は樹脂保圧などで成形品の外に出て行く(搾り出す。)ので樹脂の物性に影響を与えない。又使用する液体は決して高価なモノでないので樹脂単価を大きく上げてしまいなどの経済的問題も低い/ない。
OA機器などV0-5VA、又はBなどと高い難燃性が要求され、然も樹脂の使用量を下げる目的で薄肉化が進んでいる。この様な樹脂を用いた薄肉の成形品ではでは型締力の大きな成形機を用い、高圧で、高速での成形が行われているが、PLにバリが張るなどの問題、金型の寿命は短いなどの問題は発生している。又塗装予定の成形品ではヒケをなくす為により高い圧力、長い時間での保圧を行っている。この場合も液体を用い流動性を高めた樹脂を用いれば容易に解決がされるこれ等課題が一気に解決された。
【実施例0186】
液体を用いた場合溶融樹脂の流動性は大きく向上する事は示した。液体の注入量が多いと流動性は大きく向上するが、そのままで成形すると、幾ら樹脂保圧を高めても、金型温度を高めても、表面にはスワール・マークが出てしまい、表面が綺麗で、平滑な成形品は得られない。此処でGCPを用いるとスワール・マークはなくせる。金型内のGCPを、与圧の気体を一気に排気する事で、金型内に充填された流動性を高めた溶融樹脂を用いた場合、GCPを用いなかった場合に比べてショート・モールドが少なくなる現象を確認した。この事はGCPを一気に短時間で金型内が負圧となってショート・モールドが少なくなったと考えた。
図61は金型にアスピレーターを装着して、金型内の圧気の排気の工程を利用して金型内を負圧とする。附番279は
図20などで示したGCP用のシール金型を示し、圧気は弁280を開けて金型内を圧気する。281は金型内に入れられる圧気を、282は金型内に設けた圧気回路である。283は初めに金型内を圧気する気体の流れ方向を示し、金型内が圧気され、液体などで発泡性が付与された樹脂、流動性が高められた樹脂の充填の途中、又は/及び充填完了後に弁280は閉じ、逆止弁284が強制的に開かれる。284の中には285で示す。ボール・チェック弁は入れられ、285が内部に設けられたバネ(図示せず。)常時閉としてある。金型内の圧気開(排気)の信号を286の油圧、空圧のシリンダーに伝え、シリンダーに繋がるロット棒287を押すと、押し上げると285が押し上げられ、圧気はアスピレーター288から大気中に排気される。この附番289排気ガスの排気の流れによって、金型内の圧気の一部は293に引かれ金型内を負圧にする。290は排気される圧気の流れを示し、291はアスピレーター288の中を通り、負圧を作り出す圧気の一部を示し、292は288アスピレーターによって吸引される金型内の圧気に一部を示す。装置294はアスピレーターである。附番295から金型内圧気を通し、296から排気すると、294内で負圧が生じ、297から気体を294内に吸引する。吸引された気体は296と共に外に排気される。
【0187】
例えばABSなどの成形材料はシルバーなどの外観不良を避ける為に80℃での時間程度乾燥するが、GCPを用いれは乾燥なしで、液体を用いた流動性を向上させずに一般材料の成形加工をしてもシルバーのない綺麗な成形品が得られる。発泡成形させない場合は、GCPの圧力によって発泡セルが潰れる事の懸念がないのでGCPは1MPaでも、2MPaでもそれ以上でもの高圧でも構わない。乾燥なしでの成形が可能な事は省電力で、炭酸ガスの削減にもなる。
【実施例0188】
液体を加熱筒に入れて気化させて加熱筒内を洗浄する手段を確認した。PPの黒色から白色への材料交換の場合、一般的にはアサクリーン(商品名)、Zクリーン(商品名)などのパージ材(洗浄剤)を用いるが、これ等パージ剤は高価な事などの経済的な問題、パージ剤が残留してしまう問題がある。パージ剤に少量の化学発泡剤、例えば重曹、ADCA、DPTなどを添加してその発泡力によって洗浄効果を高める事も知られているが発泡剤が、発泡剤の残渣が加熱筒内に残留する問題がある。
【0189】
実施例28は前記市販のパージ剤を使用せず、材料替え、色替えの時に少量の液体を用いる事で十分に、前記市販のパージ剤よりも洗浄効果がある(高い)事を確認した。計量時にアルコール、水などの液体を本発明の液体を用いた発泡成形時の液体の注入口から入れ、加熱筒の温度、溶融樹脂の温度によって気化させ、溶融樹脂の発泡性を持たせてパージする。この時に液体が気化した気体によって加熱筒内の圧力が上がるので洗浄の効果は高まる。同じ操作(;計量開始、液体注入、計量完了、液体注入停止、射出など、)を繰り返すと、高い洗浄効果を確認した。加熱筒の中にIPAと水とを1:1に混ぜ合わせた液体を計量樹脂の量に対して2wt.%用いた場合。前記PPの黒から白色への色替えは、次に成形予定の樹脂(白色のPP)だけを用いるより、白色のPPの使用量を1/2以下で済ませる事が出来た。液体だけの場合は重曹、ADCAなどと違い発泡残渣はないので、未分解の発泡剤、発泡残渣が加熱筒内、ノズル内の残留する問題はない。
【0190】
洗浄に用いる液体はエタノール、IPAなどのアルコールだけでも良いが、アルコールに水を加えたモノでも良い。アルコール、アルコールと水との混合物に少量の界面活性剤(イオン系、非イオン系、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系)、例えばアルキルベンゼン・スルフォン酸曹達(ソーダ)(略号は樹脂の場合と同じで「ABS」である。)、を加えると洗浄効果があった。更に重曹を加え、水に溶解させる事で洗浄の効果を更に高める事が出来た。この場合重曹は水に溶解させているので、加熱筒内、ノズルに重曹、重曹の分解生成物の炭酸曹達が残る事は少ない。
【0191】
勿論の事液体と前記市販のパージ剤とを併用しても良い。この場合市販のパージ材の使用量を少なく出来ると言う経済的な効果もある。
【0192】
パージなのでノズルはオープンノズルで洟垂れをしても構わない。ホット・ランナーの場合はマニホールド内、ノズル内の洗浄、その後の樹脂の置換には発泡剤残渣のない液体を用いた洗浄(パージ)が良い。液体だけの説明をしたが、発泡剤残渣がない気体でも良い。気体には窒素ガス、炭酸ガス、液化炭酸ガス、ドライアイスなどが良い。気体と液体との併用でも良い。更に洗浄効果を高めるには硝子繊維、タルクなどを加えた樹脂、例えばASの硝子繊維入りでも、粘度の高い樹脂、例えばPCなどと液体との併用で洗浄効果を高める方法もある。
【0193】
射出時にノズルに、ノズル内の溶融樹脂に液体を注入しノズルの熱で気化させればノズルの洗浄が簡単に出来る。勿論の事気体でも良い。只(ただ)気体よりも液体の方が洗浄効果は高い事を確認した。実施例28は射出成形機を用いて説明をしたが、射出成形機に限定されず、押出し機などのパージ、色替えでも実施出来る。
ホットランナー内の洗浄(パージ)は、マニホールドに液体、又は/及び気体の入り口(;構造は加熱筒に設ける注入口と同じ構造。)を設けれ、其処に液体、又は/及び気体を入れればホットランナーのパージが出来る。マニホールドから液体、又は/及び気体を入れパージする事とは別に、射出成形機のノズルから液体、又は/及び気体を入れパージすれば、マニホールドからの注入と作用・効果はそれ程変わらない。
又この様にホットランナーのマニホールドに直接液体、又は/及び気体を注入する事でも液体、又は/及び気体を用いたホットランナー内の洗浄が出来る。当然の事その樹脂をキャビティ内に充填すれば発泡成形が、保圧を用い、発泡セルを潰せば液体又は/及び気体を用いた溶融樹脂の流動性向上も期待出来た、一般成形になる。ホットランナー付きの金型の場合にマニホールドに液体又は/及び気体を入れる手段がある。
【実施例0194】
環境問題への関心が高まる中、樹脂加工でも省エネルギーへの要求が高まっている。本実施例29では無乾燥(乾燥レス、乾燥を一切せずにそのままで樹脂加工を行う事。)の樹脂を用いて、乾燥しない事、樹脂の表面、内部にある水分、樹脂の揮発性の成分(;樹脂の製造の段階で使用する溶剤、樹脂のモノマー、ダイマー、トリマーなど)などによって成形品の表面にはシルバーなどの外観不具合が発生する。適した圧力のGCPを用いる事で上記するシルバーの問題が解決される。
【0195】
一般成形(;本発明では、キャビティ内に溶融樹脂を充填の後に、冷却・固化よって減少する体積分を適する圧力で押し込む事を「樹脂保圧」と言い、この樹脂保圧を用いる成形加工法を一般成形、一般加工、一般成形、一般加工、ソリッド成形、ソリッド加工などと言う。)でも、GCPの用いれば前記水分、揮発成分などに起因するシルバーをなくし、成形品表面を綺麗で、平滑にする作用・効果を確認した。
本実施29はGCPを用いれが乾燥レスの成形材料であっても成形品表面にシルバーなどの不具合をなくせる事を示した。
【0196】
例えばABS{日本エイアンドエル(株)製のクララスチック GA501(商品名、及びグレード)}を無乾燥で成形加工を行うと、ABS樹脂ペレットが吸湿している水分によって成形加工をした成形粉の表面にはシルバーが発生するので、外観部品では使用に耐えない。塗装を施したと場合でも、成形品表面のシルバーによって塗膜の付着性は著しく低下する問題がある。
図1、
図2のシールをした金型(;シールの手段はエジェクターピンをシールする手段、又はエジェクター・ボックス構造とがある。
図1、
図2はエジェクター・ボックス仕様とている。)を用いGCPを実行すれば、乾燥をしなくてもシルバーのない外観が良好なABS成形品が得られる。
【0197】
材料の倉庫内で3か月程度保管した前記ABS(吸水している。)を用い
図1、
図2のGCP仕様シール金型を用いてGCPを行わずに、一般成形加工をした結果、成形品の表面はシルバーが多く発生して外観不良になってしまい客先要求には応じられなかった。
【0198】
次に金型内をコンプレッサーで圧縮したエアーを、
図15に示すGCP装置で金型内の圧力が0.8MPa程度に加圧(;与圧、圧気する。)したキャビティ中に、前記無乾燥のABSを充填し、充填完了と同時(;加熱筒から樹脂保圧を掛けるが、この場合は一次圧完了後にした。)に金型内の圧気(GCP)エアーを大気中に放出した。樹脂保圧は圧気エアーが排気された後にも掛続けた。この工程に得られたABS成形品の表面にはシルバーの発生は一切なく、成形品の表面は綺麗で、平滑で良好、客先要求を十分に満足した。
【0199】
次に前記ABSを水道水の中に12時間浸漬、ABS中に飽和になるまで吸水(;0.5wt%程度吸水する。)させた。吸水させたABSを掬(すく)い上げ、細かなネットに入れて脱水した。これによってABS中には約0.5wt%程度の水分を含んでいる。吸水させたABSを用いて同じ様に
図1、
図2の金型を用いて成形をすると、ABS内部に吸水したによって成形品表面には多くのシルバーが発生した。次に圧力が1MPaのGCPを実行した結果、成形品表面にはシルバーの発生は一切ない。この事(水中に浸漬して吸水させた材料を用いての一般成形加工は、)はGCP法を用いれば材料の乾燥をせずに(乾燥レスで、)、そのまま成形加工しても、外観には水分などに起因するシルバーなどの不具合はなく、シール金型、GCP法を用いれば成形材料は乾燥レスで成形加工が可能な事を本実施例29で実証した。
【0200】
ABS以外に乾燥しないHIPS{東洋スチレン(株)製のトーヨースチロール H450(商品名、及びグレード)}、変性PPO(E){SHPPジャパン合同会社(旧サビックジャパン合同会社)の NORYL SE90(商品名、及びグレード)}、PC{住化ポリカーボネート(株)製のSDポリカ 301-22(商品名、及びグレード)}、PCABS{日本エイアンドエル(株)製のテクニエース PAX-1439(商品名、及びグレード)}、PP{住友化学(株)製の住友ノーブレン AW564、及びZ744(何れも商品名、及びグレード)}でも、GCPによって(GCPを実行すれば、)得られた成形品の表面にはシルバーなどを不具合が一切なく、綺麗で、平滑になる(出来る。)事を確認をした。
【0201】
図示していないが
図44の金型には
図26で示す圧空成形が実施出来る仕様と、
図36の中空成形とが実施出来る仕様とが組み込んである。
図44の金型を用い前記ABS、HIPS、変性PPO(E)、PC、PC/ABS、PPの其々を乾燥しなくても、1MPaでGCPを実施し、中空成形を実施した。又圧空成形も実施した。更に中空成形と圧空成形とを同時に実施、シルバーがなくなる事を確認した。
【0202】
GCPは一般的にはエアーを用いるが、変色・焼けは発生する材料の場合は、圧気エアーの代わりに窒素ガス(;圧気エアー中の酸素濃度を例えば15vol%以下に下げるだけでも良い。)を用いると変色・焼けは防げる。GCPに炭酸ガス(;圧気エアー中と炭酸ガスとの混合ガスでも可。)を用いると、炭酸ガスは金型キャビティ内に充填された溶融樹脂の流動先端部から溶け込み、溶融樹脂の流動性が向上する事は確認した。
液体を用いて流動性を向上させたABS、HIPSでの中空成形を実施した。又圧空成形も実施した。更に中空成形と圧空成形との併用も実施した。
【0203】
(実施形態1)
比較例1、乃至比較例4と、実施例1、乃至実施例5から、PC系樹脂を用い、水を発泡剤として、酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素を起泡核剤として用いれば、射出成形機だけでなく押出し成形でも実施可能、ダイから出た(押出し出された)発泡性を有する樹脂を圧力が0.6MPa以上の気体(エアーでも、窒素ガスでも、炭酸ガスでも可)の中を通り、GCPの原理・手段を押出し成形でも実施すれば表面の発泡を抑え、スワール・マークのない押出し成形が可能である。
【0204】
(実施形態2)
実施例1、乃至実施例5、及び実施形態1では発泡剤に水を用いる事を述べたが、窒素ガス、炭酸ガスなどの気体を用いた発泡成形のミューセル、アモテック、ソフィット(商品名?)でも、本発明で例示した起泡核剤の酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素などは、PC系樹脂を用い、射出成形、押出し成形、ブロー成形での実施での起泡核剤の作用・効果は十分発揮させる。
【0205】
(実施形態3)
本発明では、本内容はPCT/JP2015/062611、PCT/JP2015/069216、PCT/JP2016/086380、PCT/JP2020/015536の内容の発泡成形に掛かる部分GCP装置、シール金型、成形機、及びシャット・オフ・ノズルなどの付帯設備)の全てを包含する事を本発明に加筆し、主張する。
【0206】
(実施形態4)
PC系樹脂の発泡成形に於いて本発明の実施例に用いた発泡剤は水であり、起泡核剤に酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素以外、PCを分解させなければ良く他にも使用可能な物は多々ある。未乾燥のPC(吸水したPC)と他の起泡核剤とを混ぜ合わせ(少量の水によってPC表面に展着させて)、射出成形機を用い、試験片を成形して物性の著しい低下の有無(PCの分解)を確認、著しい物性低下がなければ使用が可能な起泡核剤と判断しても良い。
【0207】
(実施形態5)
(発泡倍率を高める手段)
発泡成形に於いて発泡倍率を高める手段は、発泡剤の添加量を多くして、樹脂の発泡力を増す方法、キャビティへ発泡性樹脂を充填して、金型の一部を拡張して充填された発泡性樹脂の圧力を下げ発泡を容易にする方法、スクリューを下げて発泡性樹脂の圧力を下げ発泡を容易にする方法以外に、金型を開けて発泡倍率を高める方法がある。金型を開ける場合、金型の構造は、PL(パーティング)が平見切りの場合(
図11と
図12に記載の金型構造、可動側金型後退の動き)と縦見切りの場合(
図13と
図14に記載の金型構造と可動側金型後退の動き)とがある。前者をモールド・バック、後者をコア・バックと言い本発明では区別をする。モールド・バックは大きく金型を開くとPLにバリ発生の危険性があるのでそれ程大きくは開けない。コア・バックの場合はPLにバリ発生の危険性が少ないので発泡倍率の大きな成形品が得られる。
【0208】
(金型装置)
本実施形態5はモールド・バック、コア・バック何れでも実施可能である。射出成形の金型(金型の構造)は2枚型と3枚型とがある。2枚型でモールド・バック、コア・バックをさせる場合、射出成形機の可動側のダイプレートを予め定められた量(距離)後退させキャビティ(金型、キャビティ)を拡大させ発泡倍率を高める。一般の射出成形に於ける3枚型の型開きはPLが先に開くとストリッパー・プレート(スプール・ランナーの払い板)を開けるのが困難な場合があるので、PLにはPLロックの機構を持たせて、初めに固定の型板と、ストリッパー・プレートを開かせるのが一般的である。然しこの金型構造で射出成形機の可動側ダイプレートを後退しても、PLロックの為にストリッパー・プレートが開いてしまい、モールド・バック、コア・バックとはならない。この問題を解決する手段として発明者はPLロックを用いず、PLにバネ、ウレタンゴムなどをはめ込み、可動側のダイプレートを予め定められた距離を後退させれば前記のバネ、又はウレタンゴムなどによって必ず先にPLが開かれモールド・バック、コア・バックが出来る。バネ、ウレタンゴムなどの代わりに、ガス・スプリングでも構(かま)わない。油圧シリンダー、空圧シリンダーも使用出来る。これを発明者は「先金型開機構、先に金型の開の機構」と称した。モールド・バック、コア・バックして発泡倍率を高めて、金型内で冷却固化が完了してから、ダイプレートを下げて(後退をさせて、)発泡成形品を取り出すが、PLロックがないので、ストリッパー・プレートは動かずスプール・ランナーは金型から離れない。其処(そこ)で発明者は可動側の金型と、ストリッパー・プレートを引っ張りリング、引っ張りボルト(竿)、チェーン、鎖などを用いて、型開きを利用してストリッパー・プレートを動かして、スプール・ランナーを金型から外す(離型する)。引っ張りリング、チェーン、鎖などが型開きで壊れない、切れない様にする工夫(例えば引っ張りボルトにバネを仕込むなどの構造)をする。
可動側金型と、ストリッパー・プレートとを引っ張りリングなどで直接繋ぐ以外に、可動側の金型と固定側の金型とを引っ張りリングなどで繋ぎ、固定側の金型と、ストリッパー・プレートとを引っ張りリングなどで繋いでも良い。
図6、
図7は上述の引っ張りリングなどを用いる3枚型を示しているが、2枚型の場合もPLにバネ、ウレタンなどを設置しても良く、設置するとモールド・バック、コア・バックで金型の後退の補助が出来る。
【0209】
この型構造はGCPの場合でも実施可能である。背面取り構造(3枚型以上の金型構造)の(例えばスタック・モールドなど)金型でも有効で、3枚型と同じ様に其々の製品面のPLに同様にダイプレートの後退で必ず先に開く様にバネ、ウレタンゴムなどを設置すれば良い。この場合もシール金型を用いればGCPを行い表面にスワール・マークのない表面が綺麗で、平滑な発泡倍率の高いGCPを適用した発泡成形品を得られる。
PLを先に開く機構はホット・ランナーが組み込まれた金型での実施も可能、この場合に使用するホット・ランナーはバネ式、ニードル式などの開閉機構(弁)を持った物が好ましい。
【0210】
スタック・モールド実施の場合、一般には横型の射出成形機でも可能であるが、PLからの発泡性樹脂の射出を行う場合は、型締めの機構が縦型で、射出機構が横型の射出成形機(一般的には縦型の射出成形機と言う。)を用いる。この場合にPL射出のスタック・モールドの場合、バネ式、ニードル式などの開閉機構が組み込まれたシャット・オフ・ノズルを用いる。この様にスタック・モールドの適する発泡成形品には、発泡成形の加工には、例えば半導体の製造工場で半導体の運搬に用いるICトレイなどの平面形状(平板形状、平板に近い形状)では特に生産性を高めるのには有効な手段である。ICトレイの場合は、導電性が要求されるので、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどの導電性カーボン、カーボン・ナノ・チューブ(CNT)などを添加する。成形用樹脂は耐熱性の高いm-PPO、PC系樹脂を主成分としたポリマーアロイが使用される。PC系樹脂単独の場合もあり、耐熱性の要求が満たされれば樹脂の種類は問わない。
【0211】
通常発泡成形は保圧を用いない、或いは用いても短時間であるので、其々の成形品(キャビティ)への充填バランスを正確にする必要はなく、キャビティへ発泡性樹脂を略(ほぼ)一杯に、キャビティの体積を100として70以上充填させれば良い。モールド・バック、コア・バックをさせるのでショート・モールドでも構わない。100を越えてもモールド・バック、コア・バックするので最終は100を越える事はない。其々のキャビティに発泡性樹脂を充填させるには略同時(充填の条件は一つで)に行うが、シーケンシャル制御で別々の充填でも構わない。
【0212】
本実施形態5で実施する発泡成形は射出成形機を用いた発泡成形であり、樹脂に発泡性を付与する物質、所謂発泡剤の性状は、気体のモノ、例えばミューセル、アモテックの様に圧縮した気体、液化炭酸ガスを用いる技法、アルコール、水などのNPTで液体のモノを用いる技法、ミクロバルーン、マクロバルーン、マイクロバルーン、重曹などの炭酸水素塩、ADCAに代表されるアゾ化合物、DPTに代表されるニトロソ化合物を用いる発泡成形の技法の全てに適用される。
【0213】
ICトレイの場合は、化学発泡剤を用いると発泡性ガスが、発泡残渣がICに、ICの鍍金(メッキ)された足に悪影響を与える危険性があるので、十分に確認する必要がある。気体を用いた発泡成形、液体を用いた発泡成形では発泡残渣が成形品に混ざり込まないので問題はない。実際に発明者は
図10(写真)に示すICトレイの金型を用い、成形用樹脂にアセチレンブラックを含有させたm-PPOを用い、発泡剤に水、エタノール、プロパノール、エタノール40wt.%含有の水との混合物、プロパノール40wt.%含有の水との混合物、エタノールとプロパノールとの1:1で混ぜ合わせた混合物を用いて、樹脂(成形品)の重量に対し、1wt.%程度を加熱筒内に入れ、気化させ発泡性樹脂として、GCPなしの発泡成形を行い重量軽減が6~10%程度の結果を得た。GCPを実施した場合は5~8%程度の重量の軽減であった。其々の成形品の衝撃強度はソリッド(中実、一般、中実の、一般の)成形品を100とした場合、GCPなしが約70%低下、GCPありは約25%の低下に留まった。上記実施例はm-PPOで行っているが、PC系樹脂でも同様の結果が推測される。この場合に使用する発泡剤は水が好ましく最適である。
ICトレイに適する成形材料は耐熱温度と、価格からm-PPO、又はPC系樹脂を主成分とする導電性を付与した樹脂が好ましく、それ程耐熱性の要求が高くない場合は、ABSなどのスチレン系樹脂を主成分とする導電性を付与した樹脂でも良い。
【0214】
成形品の板厚(肉厚)に対し25%分をモールド・バックさせた結果、重量軽減25%程度の、GCPなしの場合の成形品と、ありの場合との成形品を得た。この場合の成形品の衝撃強度は更に低下したが、m-PPOに含まれるグラフトゴム(ブタジエンゴムにスチレンをグラフト共重合させた2元共重合体)を予め衝撃強度低下を想定して添加して於けば良い。ゴムの粒径を大きくして衝撃強度を高める事も可能で、この場合は粒径の異なるグラフトゴムを使用すると更に衝撃強度の向上になる。
モールド・バックさせた後に再び金型を少し締(閉)めて圧縮しても良い。この後の金型を開け成形品を可動側(エジェクターピンで押し出す側)に持って来る必要があるが、形状によっては固定側に取られる事もある。この場合は可動側金型の側面にアンダーカット、又はシボ加工して確実にバランス良く可動側の持って来る様にする。
【0215】
ブタジエンゴムの代わりにEPDM{エチレンゴム(エチレン・プロピレン・ジエンモノマー)}を用いると更に衝撃強度向上は図れる。EPDMはブタジエンゴムに比べ熱安定性が非常に高く、EPDMのグラフトゴムを用いたm-PPOはリサイクル性が高い(リサイクルを繰り返し、熱履歴が加えられても物理的な、機械的な物性低下は少ない。)。m-PPOを製造する場合、PPOと、PSをグラフト共重合さえたゴムとを溶融混練するが、PSの代わりに破棄された発泡スチロール(成分はPSで発泡残渣の残らないペンタンなどを用いて発泡させているので使用は可能である。)を減容化した物を使用すれば環境負荷の低減に寄与する事が出来る。必要に応じて一般の起泡核剤、本発明に記載したPC系樹脂の起泡核剤を使用しても構わない。ICトレイはm-PPOにアセチレンブラックなどの導電性材料を混ぜ込むので、アセチレンブラックも起泡核剤の作用をする。m-PPOの代わりにPC系樹脂でも構わない。
【0216】
図10の金型を用いて、m-PPOの代わりにPC{SDポリカ(商品名)301-15(グレード)に導電性を持たせた樹脂をイオン交換水を用いて発泡成形させ、前記m-PPOと同様に発泡成形可能、軽量化も可能である事を確認した。導電性を付与させるケッチェンブラック、アセチレンブラックなどの導電性カーボンは気泡核剤として作用した。
CNTでも試みた結果CNTも起泡核剤としての作用・効果を示す事から、ICトレイなど導電性が求められる成形品にはこれ等導電性を付与する導電性材料は起泡核剤には有効、十分使用は出来る。
【0217】
(実施形態6)
発泡を容易にする手段にモールド・バック、コア・バック以外にブリージング(拡張)・コア、ダミー形状を用いる。
初めに拡張コアに付いて説明する。
図37、
図38はシャッター付きのダミー形状(捨て形状、捨てキャビ)を例示した。形状はサブマリンゲートの逆である。符番4内に樹脂が充填され、符番172の一部、又は全部にも樹脂が充填される(
図37)と、直ぐに、又は一定時間経過の後、符番168の金型のエジェクター・プレートと繋がるロット棒が後退する(
図38)。その時に符番173が現れる。符番137は符番170のゲートからダミー形状171と繋がっているので、圧力(残圧)がある符番4内の溶融樹脂は符番172、符番173、符番170、を通じて符番171へ流れ込むので、結果符番4内の樹脂の圧力は下がり発泡が容易になる。符番168は例えばエジェクター・プレート(B)、(C)と同じ様にエジェクター・ロット(前進用)と金型に組み込まれたバネ(後退用)などによって動く機構となっている。エジェクター・プレート(B)、(C)を金型に組み込んでいるならば、符番168は新たにエジェクター・プレート(D)を設ける場合もある。エジェクター・プレート(D)は(B)、(C)同じ様に上下2枚の構造でも良いが単にピンを設けるだけなので一枚でも構(かま)わない。
図37、
図38はサブマリンゲートの逆の構造(初めは閉)を示したが、符番170はそれ以外の形状でも実施出来る。
【0218】
(実施形態7)
このロット棒を構造、機構を用いれば、保圧を使用しない発泡成形、中空成形、圧空成形での自動ゲートカットは容易に実施出来る。
図39、
図40、
図41は自動ゲートカットの構造を示している。符番175は符番4の成形品のゲートで形状は乗せゲートである(
図39)。符番4内に樹脂が充填され、直ぐに、又は一定時間経過の後、符番177の金型のエジェクター・プレートと繋がるロット棒が前進すると、符番175は符番4の成形品に押し込まれる(
図40)。結果スプール・ランナー、ゲートは成形品4と切り離させる(
図41)。この場合にゲートの高さ、ゲートの巾に制限はなく、巾が広いゲートの場合は符番177の先をゲート巾に合わせた、ゲート巾より広いプレートを用いれば良い。中空成形、圧空成形では自動ゲートカットするとスプールランナーへの注入された加圧流体の逆流がない。発泡成形、中空成形、圧空成形などで自動ゲートカットするにはゲート巾に制約がなく、成形条件の巾(ラチチュード)が大きく広がる。発泡成形、中空成形、圧空成形では保圧を使用しないので、使用しても短時間なので
図39、乃至
図41に示した自動ゲートカットは容易に実施出来る。
【0219】
次にシャッターなしのダミー形状(捨てキャビ)を用いた発泡成形に於けるキャビティ内に充填した溶融樹脂の圧力を下げ発泡を容易にする手段を示す。
図42で181、182で示す形状がダミー形状で符番180によって繋がっている。ダミー形状の一部に樹脂を充填(符番181)、符番182で示す部分は実充填、所謂ショート・モールドであるので、符番4内の充填された樹脂の圧力は下がり容易に発泡し、発泡倍率の高い発泡成形品が得られる。
【0220】
中空成形、圧空成形では符番183で示すダミー形状へはフル充填(183の空間一杯に樹脂を満たす。)をしないと、中空成形の場合成形品内部に入れた加圧流体は圧力の低い部分を目指し進むので、符番183が符番181、符番182の様にショート・モールドとなっていると其処から加圧流体が抜け出て十分な中空が形成出来ない。圧空成形では樹脂と金型との隙間に加圧流体を入れてその圧力で他方を加圧する成形法である。この場合も符番183がショート・モールドとなっているとショート・モールドの先から加圧流体が逃げていくので、十分な加圧効果は期待出来ない。符番181、符番182、符番183で示すダミー形状は冷却固化の時間が長い方が圧力を下げる目的には向いているので、この部分の肉厚は符番4の肉厚の2倍、3倍・・と厚くする事が多い。
【0221】
(実施形態8)
PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PES(ポリエーテルサルフォン)、PEI(ポリエーテルイミド)などのスーパーエンプラは溶融温度が高い、熱可塑性樹脂で、低沸点溶剤のエタノール(圧力が1atmでの発火点温度は約400℃)、iso-プロパノール、アルカンなどの炭化水素などを発泡剤として用いて発泡成形を実施する場合、これら液体の発火点が溶融樹脂温度よりも高い場合には、火災の危険性の他、樹脂の変色、焼けなどが想定される時は、ホッパー内の酸素濃度を下げる必要がある。即ちホッパー内窒素ガス置換を行う。又アウターGCPにエアーを用いるとやはり樹脂の温度は高く、断熱圧縮により更に温度が高くなると、樹脂の変色、焼けが懸念される場合、エアーの代わりに不活性な窒素ガスで圧気する。炭酸ガスで良い。
【0222】
(実施形態9)
水、アルコールに不溶な発泡剤、例えばADCAの粉末、HDCAの粉末は、そのまま水、アルコール類に入れただけでは、粘度が低いので沈殿(沈降)してしまう。少しでも沈降の速度を遅くする為には粘度を高めたワニスを併用する。発泡予定の樹脂がPPも場合は、マレイン酸変性のPPの溶剤系、又は水系のワニスを、発泡予定の樹脂がABSなどでは、例えばAS、ABSを溶剤(例えばn-ブタノンなど)を用いてワニスとした物、HIPSなどではPS、HIPSをAS、ABSと同様にワニスとした物を使用する。スチレン変性アクリル樹脂ワニスの場合は、ABS、HIPS共に使用出来る。低沸点溶剤を用いる場合は、実施形態8で示した様にホッパー内などを不活性な気体で置換する。
【0223】
(実施形態10)
本発明で用いる金型の水穴(冷却の回路)に付いて説明する。一般的に水穴はガンドリルを用いて開けるが、直線で曲線(9成形品からは不均一な距離となり、)なので、熱交換率はそれ程高くない。加熱接合{(株)ヤマテック 郵便番号190-1232 東京都西多摩郡瑞穂町3-3-5 TEL:042-557-5660}、加熱溶融接着を用いると、熱交換率の高い水回路を作る事が出来る。具体的には表面に例えばフライスで、放電加工などで最適な冷却回路を作る。これを第1入子とする。次に第1入子の被せる形状の入子を加工する。これを第2入子とし、第1入子に第2入子を被せ、加熱接合などを用いて面を接合すれば中に曲線の水回路が作られる。予めCADなどを用いて入子の形状と、同時に水穴の最適な流路を設計(計算)をする。入子の形状加工前の六面体の第1型、及び必要に応じて六面体の第2型でも水回路作り、加熱接合すれば中に水回路を持たせた六面体が作れる。この六面体を用い予めCADで設計した形状を従来の手段で加工すれば良い。第1入子と第2入子とを六面体としたのは接合面は(が)出来るだけ面精度(例えばフライス面ではなく研磨面の方が良い。)が高い方が接合の強度が高くなる事を考慮した。実施形態10では六面体としたが、形状はこれに限定はされない。
【0224】
(実施形態11)
(窒素ガスを発生する性状が液体の発泡剤)
発泡力の高い窒素ガスを発生させる化合物は、アジ化ナトリウム(NaN3)に代表されるアジ化物、ADCAに代表されるアゾ化合物、DPTに代表されるニトロソ化物などがある。無機系のアジ化ナトリウムは水溶性であるが、NaN3は水に溶解した段階で分解が始まるので、アジ化ナトリウムの水溶液は長期の保存が出来ないので液体の発泡剤としては向かない。アルコールに可溶なADCA誘導体には、ADCAのエステル、例えばADCAジエチル{DEAD(C6H10N2O4)がありDEADのアルコール溶液は液体の発泡剤として、使用は可能である。ADCAイソジプロピル(DIAD)もエタノールに可溶、DIADのアルコール溶液は前記DEADのアルコール溶液と同様に液体の発泡剤として使用出来る。単にADCA粉体をエタノールなどのアルコールに入れ、ミルなどを用いて微粉砕すると、スラリーになるので、ADCA含有の発泡性ガスに窒素ガスを発生する液体の発泡剤としての使用が出来る。
【0225】
ポリビニルアルコール(PVAL)は分子構造から見て、熱可塑性樹脂と相容(溶)性を持つ。ポリビニルブチラール(PVB)は、硝子、金属、セラミックなどと高い接着性を示す熱可塑性樹脂で、熱可塑性樹脂と相容(溶)性を持つ。何れ(PVAL、PVB)もアルコール、水を用いて粘度の高い液体が得られるので、これらの中にADCAの粉体を分散させれば、ADCA含有のスラリーとなり、液体の発泡剤になる。
【0226】
マレイン酸変性のPPワニスを増粘して、ADCAの粉体をサスペンジョン(分散)とするとPP用の液体の発泡剤に、スチレン変性アクリル樹脂ワニス中にADCAの粉体をサスペンジョンさせれば、HIPS、ABSなどのスチレン系樹脂用の液体の発泡剤になる。これ等ADCAをスラリーにさせたマレイン酸変性のPPの溶液、スチレン変性アクリル樹脂の増粘には、増粘剤のカルボキシ・メチル・セルロース(CMC)の使用も十分可能である。又ADCA以外に中空気球を分散させても良い。当然無機系の発泡剤の重曹などの炭酸水素塩も使用可能である。セルロースナノファイバー(CNF)を加えて増粘させても良い。又CNFは発泡成形では起泡核剤として作用する。
【0227】
ADCAの化学構造式から2分子の尿素を結合させる事が出来る。尿素を化合させると、この物質は尿素が水溶性なので、水溶性を示す可能性が考えられる。水溶性を示せば、当然液体の発泡剤として、使用可能、ADCA同様に熱分解して、発泡性ガスの窒素を発生させる。
【0228】
(実施形態12)
実施例20の2ヶ取り、ペアー取りでは、一気に其々もキャビティへ発泡性樹脂を充填する場合と、其々を別々に充填を行う場合とがある。ペアー取りの場合で、別々に充填をする場合に付いて充填する方法を説明する。今仮に成形品をAとBとにして、予めAとBとを充填する樹脂量を計量して於いて、初めに成形品Aに充填して、ゲートを切り替えBへ充填する。AとBとが冷却・固化が完了すれば金型を開き其々の成形品を同時に取り出す。初めに成形品Aの分だけ計量してAのキャビティへ充填する。充填完了後に、再び成形品B分の計量を行い、ゲートを切り替えBへ充填する。AとBとが冷却・固化が完了すれば金型を開き其々の成形品を同時に取り出す。この成形の手段を用いれは金型締め(型閉)、金型内の冷却、金型開、エジェクト(成形品の押出し、押出し)が共通なので結果成形サイクルはアップし、生産性は向上する。この手段は実施例21、実施例22の中空成形の場合でも実施は可能である。キャビティ内に発泡性樹脂、又は非発泡性を充填後に金型を閉じて圧縮してから、必要に応じてモールド・バック、コア・バックなどを行う場合もある。
前記ICトレイの様な形状は金型費削減を目的に成形機に金型を着床したままで成形品の入子を交換する所謂カセット金型とする事も出来る。この様にAとBとの切り替え成形を行う場合にゲートを切り替える機構以外、バルブ・ゲート式のホット・ランナーを用いバルブの開閉を其々行えば良い。このAB切り替えの充填は成形機のシーケンサー内のプログラムで実施される。
【0229】
本発明で説明をしたPC系樹脂の起泡核剤はPC系樹脂を用いた押出しの発泡成形に使用する。この場合に使用される発泡剤は液体の水が最適である。
【0230】
(実施形態13)
実施形態13はプラスチック・リサイクルの主たる課外とその解決の手段を示した。プラスチック・リサイクルの技術的な課題は多々あるが、主たるモノは、「色のリサイクル」と、「物性の回復、又は維持」と、「寸法の再現」と、そして「仕分け」である。初めに「色のリサイクル」のリサイクルに付いて説明する。プラスチックは機械的な強度は低いが、安価で大量生産が出来る事、着色が自由に出来る事が特色である。この着色が自由に出来る事は、言い換えれば様々な色のプラスチック製品が市場に提供されているので、この色の問題、即ち色の再現がプラスチック・リサイクルが進まない課題の一つである。この色のリサイクルの手段は2つあって、その一つの方法は、同色のモノ(成形品)だけを集めて来て、洗浄して、粉砕をして、粉砕した粉砕材に、バージンのペレット、又は粉末のモノを混ぜ合わせて、再ペレット化して、リサイクル材が一定の量(10wt.%から50wt.%程度)混ざり込んだ成形材料を得る。この様にして色を再現するが、定められた色のプラスチック成形品だけをリサイクルする手段である。
【0231】
(洗浄の手段)
市場から回収した成形品は、汚れが付いている事と、紫外線などのよって光劣化して、退色している。この様な場合は、ショット・ブラストなどで、光劣化した部分(主には表面)を除去する。洗浄は成形品を水などの中に入れて、手でこすって洗浄するか、或いは超音波振動子を入れて超音波洗浄する。
【0232】
粉砕機で成形品を粉砕をすると音が出る。この音を利用した粉砕機が湿式粉砕機で、水を注入しながら、又は水中で粉砕をすると音が出て(発生)、その音は水中に伝わり、成形品表面の汚れを、物理的な力(音波)で洗浄をする。
【0233】
(塗装を用いた色のリサイクル)
様々な色の成形品が存在する場合、色分けをせず、そのまま粉砕して、必要に応じてペレット化した成形材料は雑色、雑色のまま成形加工して得られた雑色の成形品の表面を塗装によって彩色する事で所望する色の成形品にリサイクルする事が出来る。
彩色(化粧塗装、カバーマーク塗装)を用いての塗料は、例えば成形品を構成する樹脂がABS、HIPS、変性PPOの場合は、成形品を構成する樹脂と相容(溶)性を持つスチレン変性アクリル樹脂を主成分とする塗料を用いて塗装をする。
前記相容(溶)性を用いた塗料を用い塗装をした塗膜付き成形品は、再リサイクル時、塗膜の分離・剥離をせず塗膜付きのままで、粉砕して、必要に応じてペレット化した成形材料を用い成形加工した成形品では、先の塗膜は、塗膜の主成分であるスチレン変性アクリル樹脂は、成形品を構成する樹脂と相容(溶)して、ペレット化の段階、又は/及び再成形加工の加熱溶融の段階で樹脂の中に融けるので、塗膜が混ざり合う事に起因する樹脂の物理的な物性低下は少なくなる。
【0234】
上記スチレン変性アクリル樹脂は熱可塑性を示す樹脂なので、この樹脂を用いた塗料は、耐薬品性は低く、例えばアルコールを用いたラビングテストなどでは塗膜は剥がれてしまう。
耐薬品性が求められる場合は、ウレタン樹脂を主成分とした塗料(塗膜のウレタン樹脂は熱硬化性を示し、一方スチレン変性アクリル樹脂は熱可塑性を示す。)が多用されるが、ウレタン樹脂を主成分とした塗料で塗装した塗装成形品は、塗膜の分離・剥離を行う事が良いが、塗膜の分離・剥離をせず塗膜付きのままで、粉砕し、2軸押出し機、ニーダーなどの強(高)混練が可能な押出し機などを用いて、塗膜を微細化(例えば平均粒径が1,000μm以下、望ましくは100μm以下)すれば、ウレタンの塗膜が成形樹脂に混ざり合っても、物理的な物性はそれ程は低下しない。場合によっては、熱可塑性のスチレン変性アクリル樹脂の場合より低下(:スチレン変性アクリル樹脂の場合は、塗膜中の染料・顔料が、ペレット化の段階、再成形の段階で共に融けて、樹脂中へ移行して、樹脂の物性を低下させるが、ウレタン樹脂の場合は、溶融しないので、塗膜中の染料・顔料は塗膜中に留まり、樹脂中に移行しないので、樹脂の物理的な物性の低下は少ない。)しない場合もある。
【0235】
強混錬を有する押出し機は単(1)軸でも良いが、望ましくは、多(2以上)軸押出し機で、ダルメージを1箇(カ、ヶ)所、乃至数箇所持たせたスクリューを使用する。スクリューの回転方向は同方向でも良いが、混練性を高め、ウレタン塗膜を微細化するのは、異方向の場合が良い。自動車部品ではPPを多用しているので、PPの成形品の塗装には、マレイン酸変性のPPを用いてプライマー処理してから、熱硬化性のウレタン樹脂を用いた塗料を使用する。
【0236】
(物性の回復)
ABS、HIPSなどのスチレン系樹脂では物理的な性質を高める目的で、配合予定の樹脂の成分をグラフト化させたゴムを配合する。ABSを用いて説明する。ABSはA(シアン化ビニル)とS(フェニル化ビニル)を共重合させたAS樹脂に、ブタジエンゴムにAとSとをグラフト共重合させたAとSとブタジエンゴムとの3元グラフト共重合体をブレンド(混ぜあわせた)したブレンドポリマーである。ABSを成形して、粉砕して、再成形すると、AとSとブタジエンゴムとの3元グラフト共重合体(ブラフトブタジエンゴム)の中のブタジエンゴムは熱劣化して、ゴムとしても性質が失われる。結果リサイクルを繰り返すと樹脂の物理的な性質の衝撃強度などは低下する。
低下した樹脂の物性を回復するのは、新しい前記グラフトブタジエンゴムを混ぜ合わせれば低下した物性の回復は出来る。ブラフトブタジエンゴムを入れると、樹脂の剛性などが下がる場合はAS樹脂を混ぜ合わせバランスを取ってリサイクルを行い使用する。
【0237】
(発泡剤の熱的な性質)
此処でリサイクルに適する発泡剤に付いて述べて於く。固体の発泡剤の内で無機系の発泡剤、例えば重曹などの代表される炭酸水素塩は加熱筒内で熱分解して、発泡性ガスを発生させる時は吸熱する。所謂吸熱反応である。これ等を本発明では「吸熱発泡剤」と言う。一方ADCA、DPTなどの代表される有機系発泡剤の熱分解は発熱反応で、これ等を「発熱発泡剤」と言う。水、アルコール、炭化水素などに代表される液体発泡剤の場合は加熱筒内で、加熱筒の熱、熱エネルギー、又は/及び溶融樹脂の温度(熱、熱エネルギー)によって、液体から気体へと気化する。これ等液体の発泡剤は「吸熱発泡剤」である。ミューセル、アモテック、ソフィットなど気体を用いた発泡成形では相変化はないので、吸熱発泡剤でも、発熱発泡剤の何れでもない。故に吸熱発泡剤は、加熱筒内の溶融樹脂へは熱的エネルギーを作用させないので、結果発泡剤の熱的な作用によって樹脂の物性の低下はない。発熱発泡剤では樹脂への熱的ダメージは大きいのは、DPTなどを用いた時の発泡成形品の変色・焼けが発生する事で自明である。
【0238】
故にプラスチック・リサイクルを繰り返す場合、溶融樹脂への熱的ダメージを考えれば発熱発泡剤より、吸熱発泡剤の方が良い。然し固体の発泡剤では、発泡成形品内の発泡剤の未分解の発泡剤、発泡剤の残渣の問題でプラチック・リサイクルには不向き、気体、及び液体の発泡剤は残渣がない事からプラスチック・リサイクルには適するが、圧力が1MPa程度のGCPで、表面が綺麗で、平滑な発泡成形品が得られるのは液体だけである。プラスチック・リサイクルでは液体が最適である。然も液体の場合は吸熱発泡剤なので溶融樹脂への熱的ダメージは与えない。
液体を用いれば流動性が向上する事を本発明で述べた。溶融樹脂の溶融温度(;加熱筒のヒーターの設定の温度など。)を下げ、より低い温度での発泡成形が出来るので、更に溶融樹脂の熱的なストレス、ダメージは避けられ、熱劣化を少なく出来ると言う作用・効果を奏する。別に溶融温度を下げても成形加工が出来る事は、当然炭酸ガスの削減にもなる。
【0239】
上記の内容は発泡成形に限定されず、本発明の液体を用いた流動性向上の事(技術内容)でも同じ事が言える。即ち液体は流動性が大きく向上出来る。成形品の中には液体に起因する残渣などは含まれない事などは上述した発泡成形とは同じで、成形時の樹脂温度が下げられる事などの作用・効果も期待が出来る。尚本内容は射出成形以外に、押出し成形、その他成形でも実施可能である。
【0240】
(物性の維持)
ABSはブタジエンゴムに起因する対候(光)性は低い。ブタジエンゴムの代わりに、アクリルゴム(AR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)を用いたAAS(ASA)、AESはリサイクルを繰り返しても、ABSの様な著しい物性の低下はない。リサイクル性を確認する簡単な手段として、発明者はシャット・オフ・ノズルを付帯した射出成形機を用い、全てのゾーン設定温度を220℃、溶融樹脂の温度を250℃になる様にして、樹脂を溶融混錬して、加熱筒内で30分から60分程度滞留させて、加熱筒内の溶融樹脂の熱ストレスを与え、所定の時間(例えば30分)経過した後、パージして、そのパージ塊を水中に没して冷却して、冷却が完了したパージ塊を粉砕して、その粉砕材を用いて、物性評価用の試験片を成形加工して、物理的な物性を評価(:この手段を本発明では「熱劣化試験」と言う。)した結果、AESの場合はアイゾット(izod)衝撃強度が0%~5%、AASでも10%以下であったが、ABSの場合は低下が著しく50%以上の低下が確認された。
【0241】
同様にPE(ポリエチレン)の場合の滞留の試験ではアイゾッド衝撃強度の低下は殆どなく、バージン材と略同じで著しい物性低下は確認されない。PEは熱安定性が高くリサイクルには適する樹脂であると言える。
【0242】
PP(ポリプロピレン)の場合は分子構造から、シンジオタクチックのPP、アイソタクチックのPP、アタックティックのPPがあり、更に重合時に使用する触媒に、チーグラ・ナッタ触媒と、メタロセン触媒とがありこれ等の其々のモノを同様に熱劣化試験を行なった結果、アイゾッド衝撃強度低下は何れのPPも5%程度に留まり、PPは耐熱性が高く、リサイクルには向く樹脂であるとの結果を得た。
【0243】
空気中の水分を吸って(吸湿して、)成形品表面がいつも濡れている様に、ポリエーテルエステルアミドをABSに混ぜ合わせた永久制電性樹脂{東レ(株)のパレル(商品名)}の場合の熱劣化試験では90%近くアイゾッド衝撃強度は低下するので、パレルはリサイクルには向かない樹脂と言える。
【0244】
(リサイクル助剤)
「リサイクル助剤」とは、リサイクル材を元の物性のモノの回復させる材料、添加剤をリサイクル助剤と称する。又別の性質を持たせる為に、改質を目的に添加する樹脂などもリサイクル助剤である。それ以外例えばABSはリサイクルを行うと衝撃強度が低下する。この際に同じABSを例えば半分加えれば、幾らかは物性の回復は図(はか)れる。このリサイクル材の影響を少なくさせる為に展開するABSも、前記ASもリサイクル助剤である。
AESは熱安定性が高いので、市場から回収して来たAESをリサイクルしたABSと混ぜ合わせればABSの物性を回復させる事が出来る。この場合のAESも広義のリサイクル助剤である、又EPSの改質に用いるHIPSもリサイクル助剤である。この様にリサイクル助剤とは元々の樹脂、樹脂の添加剤などを本発明ではリサイクル助剤と定義する。色を回復(:成形品を他の色へカバーマークなど)させる為の塗料もリサイクル助剤でもある。
【0245】
(寸法の維持)
リサイクル行った樹脂は、熱履歴を受けて一部の分子鎖は切れて、低分子化する。それ以外には物性の回復を目的にリサイクル助剤を添加したりすると溶融状態の樹脂の流動性は変化するので、射出成形加工では、一般の射出成形加工法(:キャビティ内に溶融樹脂を充填してから、ヒケなどの成形品の欠損をなくす為に保圧を掛けるなどの成形加工の工程を言う。)では寸法のバラツキ(:成形収縮率のバラツキ)が大きくバージン材を使用した場合の様に寸法は安定せず、リサイクル材の場合では寸法のバラツキは大きく安定はしない。この課題を解決するためには、保圧を用いない成形法の発泡成形(射出発泡成形)、中空成形(射出中空成形)、圧空成形(射出圧空成形)を用いると、成形予定の樹脂の主たる成分(分子構造が、)が同じ場合リサイクル材の成形収縮率はバージン材を用いて、発泡成形、中空成形、圧空成形を行った場合と成形収縮率略同じになるので、リサイクルを実施する場合には一般成形より発泡成形、中空成形、圧空成形を行った方が良い。
【0246】
リサイクル材(;成形加工の現場でのスプール・ランナー、成形不良品を粉砕し必要に応じてペレット化したモノ、市場から回収して来たプラスチック成形品を用いて製造されたプラスチック材料の何れか/又は両方を言う。)を混ぜれば流動性が変わり、一般成形では樹脂保圧の効果が変わる〔;リサイクル材を混ぜると流動性が高くなるので、バージン材に比べて同じ圧力での樹脂保圧でも効果が高く出る。反り・変形は大きく、成形収縮率も高くなるなどの差が出る。これはリサイクル材の混合率、リサイクルの履歴{リサイクルの回数(ターン数)}によって変化する〕。リサイクルを含む成形材料を用いる場合は、前記保圧効果の差を少なくせる為に、本発明で説明して様に液体を用いて、流動性高めれば、リサイクル材含有が多い、少ないに関係なく樹脂の保圧効果は少なく出来る(;流動性が高まれば樹脂保圧によって樹脂の分子鎖の長い、短いに関係なしに掛る圧力は略同じである。)ので、成形加工は安定する。
【0247】
(仕分け)
リサイクルを実施する場合に、リサイクル予定の成形品にはどの様な樹脂が使用され、その樹脂にはどの様な添加剤がどれだけの量が配合されているかを正確に、把握出来なければリサイクルは完全に実施は出来ない。
以下リサイクルに向けての事前に準備が必要な内容(;仕分け)を詳細に、具体的に説明する。
【0248】
初めは成形品の主成分である樹脂に付いてABSを例にして説明する。上述した様にABSはAとSとの共重合体にグラフトブタジエンゴムとを混ぜ合わせたブレンドポリマー、ポリマーアロイである。ここでASにはAとSとの重合の割合(AとS比)によって様々な比率の樹脂の製造が出来る。当然重合開始剤、重合停止剤によって分子量(例えば数平均分子量、平均分子量など)の異なる樹脂が製造され、分子量分布にも違いが生じる。ブタジエンゴムでもAとSとの比、グラフト化率などにも違いがある。ASに配合するグラフトブタジエンゴムの粒径も様々なモノ(バイモーダル・タイプ)を用いる。この様にABSだけでも様々な種類が製造出来る。
【0249】
(その他添加剤)
先に述べた様にABSには、着色を目的に染料・顔料を使用する。難燃性が要求される場合は、難燃剤(例えばハロゲンタイプ、又は非ハロゲンタイプなど)、難燃助剤を添加する。それ以外には樹脂には必要に応じて例えば「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品 改訂第二版 {(株)ラバーダイジェスト社 1993年10月30日 改訂第二版}」に記載されている老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、充填剤、強化剤、PVC用安定剤、滑剤、スリップ剤、内部離型剤、防曇剤、帯電防止剤、着色剤(上記の染料・顔料含む。)、カップリング剤、防腐剤、防黴(カビ)剤、相容(溶)化剤、改質剤、結晶核剤、分散剤、光拡散剤、発泡成形の場合の気泡核剤(「樹脂の添加剤」、或いは簡単に「添加剤」と言う。)などを使用する。
これ等添加剤は、これ等添加剤を含む成形品は成形加工して市場へ提供する段階では使用が可能でも、何年かの後市場から回収して、リサイクルを行う場合に混ざり込んではならない物質になっている場合もある。難燃剤を例にして説明する。以前は難燃剤はハロゲンの負触媒作用を用いたハロゲンの化合物、例えば臭素化エポキシ、TBBA(テトラ・ブロモ・ビスフェノールA誘導体)と、難燃助剤に三酸化アンチモンを用い難燃化するのが一般的であったが、現在は臭素化ダイオキシン、臭素化ベンゾフラン発生の問題から使用を控えている。三酸化アンチモンは劇物なので使用を躊躇っている。今日リサイクルを行う場合にはこの様にハロゲン化物が含有されている場合、別にリサイクルをする必要がある。
【0250】
然し成形品を見ただけでは上述した様にリサイクル(等価再生、上位再生)実施に必要な情報(樹脂の種類、添加剤など)を確実の把握する;事が出来ないので、結果リサイクルは下位の再生になってしまう。
【0251】
(表示)
上述した様にリサイクルに必要な膨大な情報を義務化されているリサイクルマークだけで把握するのは困難、発明者は一定の重量、例えば重量が100グラム(g)以上の成形品には、予め金型にバーコード{:通常のバーコード、二次元バーコード(QRコード)}を刻印して於(お)く。そのバーコードの中にリサイクルに必要な成形品の重量、ABSを例にして上述した様に成形品の主成分である樹脂関する情報、例えば分子量、AとSとの比、上述した添加剤に関する情報(種類と添加量)と、成形品の重量などの情報を入れて於く。有用な手段は、成形品にこれ等の情報を書き込み、市場から回収して、リサイクルの段階、例えば洗浄の前、或いは粉砕の前に読み込み、リサイクルの段階、今の時点で使用の禁止物質が含まれていない事を確認してから粉砕などをする。使用禁止の物質が含まれている成形品は粉砕などをせずに別の場所に避けて於く。
【0252】
その情報は膨大であるので、バーコード、好ましくはQRコード(2次元バーコード)として成形品其々に付与する。バーコードよりもQRコードの方が書き込む事が可能な情報量が多いのでQRコードの方が好ましい。QRコードを印刷したラベル(シール)を貼り付ける。或いは射出成形品では予め金型にQRコードを刻印して於けば、ラベル貼り付けの手間は省ける(
図44)。
以下本発明ではQRコードを用いて実施の形態を説明する。(
図48 符番206)
【0253】
QRコードの情報はバーコードリーダーで読み取り、粉砕をすると、その粉砕材には、粉砕が完了した粉砕材全体では、どの様な樹脂が、添加剤がどれだけ含まれているかを把握出来る。ここまで出来れば後はコンピューター、例えばAI(Artificial Intelligence)を用いて、必要な添加剤を、必要な量を添加して改質などは容易に出来る。この様にして得られたリサイクル材を用いて成形加工したモノ(成形品)にも次のリサイクルを考えて、先に述べたQRコードの表示を行う。これによってリサイクルを繰り返す〔リサイクルの世代{1回目(1ターン)、2回目(2ターン)、3回目(3ターン)・・・など}を繰り返す事の意味。〕事が出来る。勿論例えば1ターンのモノと、2ターンのモノとの含有量(混合に比など)も前記QRコードの情報には含んで於く。即ち将来のリサイクル実施に向けての準備として必要な情報を、必ず付加して於く。これによって将来のリサイクルは何ら問題はなく実施出来る。
【0254】
(秘密の保持)
QRコードの中には例えば樹脂メーカー名、商品名、グレード、樹脂の詳細な配合(例えば添加剤の種類と量など)が読み取れるので、そのままでは樹脂メーカーの秘密とする重要な内容が競合他社に漏れ出す危険性を含んでいるので、そのままでは好ましくはない。その為にはQRコードに含まれる内容の一部、又は全部を暗号化(例えば素数などを用いての数字、アルファベットの組み合わせなど、)して於く必要がある。暗号化された内容はAIの中だけで樹脂の種類、添加剤の種類と量、粉砕材の重量(:粉砕を行った成形品の重量の総和を、QRコード内に書き込まれた成形品の重量の情報、或いは一個一個其々の成形品の重量を自動に計量されAI中に取り込まれた内容の意味。)行われ、決して他には、他社には漏れ出さない様に必要なセキュリティをAIには、AIを操作する者(オペレーターなど)には課す必要がある。
【0255】
(リサイクルの実施)
具体的にリサイクルを行う事、樹脂の改質を行うには全てAIの中で行う。AIはリサイクルを目的にした粉砕材の樹脂と添加剤などの係る情報を全て確認して把握しているので、AIには粉砕材をどの様な物性の樹脂に改質するかを指示すれば、AIは計算をして、リサイクルの必要な樹脂の種類と量、添加剤の種類と量(:リサイクル助剤の種類と量など)が算出される。予め前記粉砕材に、AIが算出した前記樹脂の種類と量、添加剤の種類と量を加えて、試験片などを成形加工して、物性の測定(:品質の管理)を行い、結果がAIが算出した内容(リサイクル材の予定の物性値)と合致しているか、一致しているかを確認する。結果が良ければ、リサイクルに必要な樹脂の種類と量、添加剤の種類と量を加えて、必要な手段(例えば単軸、スクリューが同方向、異方向回転の多軸押出し機、ニーダー加工などで溶融混錬、ペレット化など)リサイクル材を製造する。得られたリサイクル材はサンプリングを行い物性を測定し、生産前に予め確認をした物性値と比較して所望する物性値にリサイクルがなされ、完了したかを確認をする。
【0256】
(「等価再生」、「上位再生」、及び「下位再生」。)
例えばOA機器プリンターの筐体(成形品)を用いて、リサイクルをして同じOA機器プリンターの筐体へのリサイクルは同じ価値のあるモノ(プリンターの筐体)を用いて同じ価値のあるモノ(プリンターの筐体)へのリサイクル(再生)を「等価再生」と言う。
発泡スチロール(例えばEPS)の主成分はPS(GP)なので、減容化して粉砕したモノにブタジエンゴムにスチレンをグラフト共重合させたブタジエンゴムを混ぜ合わせ、ペレット化すればHIPS(高衝撃性ポリスチレン)に改質が出来る。この様にEPSと言う低級なモノを用い、HIPSで改質する事は、EPSより価値の高い、上位のHIPSにする事を「上位再生」と言う。このHIPSとPPO(ポリフェニレンオキサイド)を混ぜ合わせ、難燃剤を加えれば、ノリル(商品名)を同じ物をEPSを用いても製造出来る。
ところが現在は本発明で示したQRコードなどを用いて管理がなされていないので、成形品の中の樹脂、添加剤が判らないので、樹脂の種類も分けずにそのまま粉砕して、擬木、植木鉢などを加工する樹脂として用いる場合は「下位再生」と言う。
市場から回収された成形品は可燃物なので、セメント工場、製鉄所、火力発電所などで燃料と使用して熱エネルギー(エネルギーの種類としては下位のモノ)としてリサイクルする場合は下位の再生でこの場合は一回切り(ワンタイム)になってしまう。これも「下位再生」である。
【0257】
(リサイクルの手段のフロー)
実際に本発明を用いたプラスチック・リサイクルのフローを示す。バージンの樹脂を用いて成形加工し、必要に応じて塗装をする。QRコードで表示した成形品を市場に供給、役目が完了すれば回収する。成形品に示されたQRコードなどで、リサイクルが可能か、リサイクルの阻害物質などが含まれていないかを確認する。リサイクル可能な成形品は、必要に応じて洗浄する。或いはブラストなどを用いて表面の劣化した部分を除去する。
【0258】
同材質で同色のモノが集まれば、それだけを粉砕して、AIが計算をした必要なリサイクル助剤を添加し、均一にする目的でタンブラーなどをして、ペレット化してリサイクル材として再使用する。この場合にリサイクルを行った樹脂がどれだけの量が含まれ、其々の添加剤、リサイクル助剤の量などは将来再びリサイクルの対象になる成形品である事から、この成形品にもQRコードなどで成形品を構成する樹脂、添加剤などの情報を書き込んで於く。
【0259】
色分けをしないで、雑色・混色のままで粉砕をする場合も、同じ様にQRコードから、リサイクル実施可能かを判断した成形品だけ粉砕して、粉砕材に含まれる樹脂の種類と添加剤など種類と量をAIが確認し、同じ様にリサイクル助剤、その他添加剤などを加え、タンブラーした後、ペレット化して、再成形をする。得られた成形品は、混色・雑色、そのまま使用する場合は構わないが、彩色が必要な場合はカバーマークを目的に塗装する。勿論の事この成形品にはQRコードによって再リサイクルを前提にした、塗装を行った事を含め、リサイクル助剤、その他添加剤などの種類と量の情報を持たせたQRコードの刻印はしてある。
【0260】
この様に成形品にQRコードを用いてリサイクル実施に必要な情報を成形品に付与する事で、リサイクル実施は容易になる。再リサイクルを行う場合でも、成形品に付与したQRコードによってリサイクルが確実に行える様になる。真空成形など金型を用いない場合は成形品に刻印が出来ないので、例えばQRコードはシルク印刷、QRコードを印刷したシールなどを貼り付ける。尚シルク印刷に用いたインクなどの情報、シールの材質などの情報も勿論の事QRコードに書き込んで於く。
【0261】
(実施形態14)
近年環境問題への関心が高まる中、バイオマスプラスチックへの関心が高まって来た。実施形態14、乃至実施形態28では、自然界でバクテリアの力(作用)などによって生分解などをする、紫外線などによって光分解する、水などによって加水分解する環境分解性成分を含み、熱可視性、熱硬化性を主成分とする環境分解性成分含有の樹脂の加工に用いる樹脂ペレットの製造の具体的な手段・方法と、それ等の樹脂ペレットを用いての押出し成形加工、射出成形加工など、その他必要な装置、変色・焼けなどを防止する手段の詳細を示す。
【0262】
(混合装置)
本発明で其々の材料を混ぜ合わせる装置を「混合装置」と言う。混合装置の一般的なものはタンブラー、ヘンシェルミキサー、ロッキングミキサーなどが例示出来るが、其々の材料を混ぜ合わせる目的の装置ならば、何でも良い。手段、構造などは一切問わない。コンクリートミキサーでも使用は可能である。タンブラーを用いて混ぜ合わせる事を本発明では「タンブリング」と言う。
後記の実施形態で示す、バックメルター(商品名)の様な重量制御装置、重量制御フィーダー、重量フィーダーなどを使用する事が好ましい(
図45、
図46、符番187、符番188参照。)。
【0263】
(粉塵爆発)
セルロースパウダー、紙粉、小麦粉、ふすま、木粉などの環境分解性成分、環境分解性物質は可燃性の微粉末なので、粉塵爆発の危険性をはらんでいる。予め混合装置内を不活性な気体、例えば窒素ガスなどで置換をしてから、その中に其々の材料を入れて混ぜ合わせる。タンブラーを用いて具体的に説明をする。タンブラーの中に空気は窒素ガスによって置換し、その中にセルロースパウダー、熱可塑性樹脂、必要に応じてその他添加剤を入れて、タンブラーを回転させ混ぜ合わせる。
ヘンシェルミキサーの場合も同じでミキサー内を予め窒素ガスで置換をしてから其々の材料を入れて混ぜ合わせる。混ぜ合わせの段階でも、必要に応じては窒素ガスを入れ続ける。
本発明の環境分解性成分は1種類の使用でも良いが、必要に応じて数種類を混ぜ合わせて使用すると、品質の向上、経済的効果が期待出来る。
【0264】
(タンブラー)
ペレット化の前にタンブラーを用いて熱可塑性樹脂と環境分解性成分とを混ぜ合わせるのが一般的である。この混ぜ合わせたモノには当然空気を含んでいる。特に環境分解性成分は性状が粉体なので特に中には空気を含みやすい。当然空気の中には体積割合で約20%(重量の割合では約23%)の酸素を含む。このままニーダー(加圧ニーダーを含む。)、バンバリーミキサー、単軸押出し機、多軸押出し機を用いてペレット化したのでは先の酸素によって環境分解性成分、或いは環境分解性成分の中に一部の成分、例えばリグニンなどが酸化され、変色する。この課題を解決するためには、タンブラーの中に不活性な気体を入れ、酸素の濃度を下げる。
リグニンを除去するには、例えば、水又は/及び有機溶剤を用いて洗浄する、或いは先の水、又は/及び有機溶剤の温度を上げての湯煎する、又は水蒸気洗浄などをする事などある。水蒸気洗浄などをすると、環境分解性成分は含水などするので、体積を少なくさせる事が出来る。水洗をするとその場合も含水などをする。
この様にして体積を少なくさせる事で、タンブラーなど、溶融混錬などの作業が容易になる。
【0265】
(溶融混錬装置)
混ぜ合わせた先の材料の中で熱可塑性を示す材料を加熱溶融して、混錬する装置を本発明では「溶融混錬装置」と言う。単軸(1軸)の、多軸(例えば2軸)の押出し機、加熱が可能なニーダー、加熱が可能なバンバリーミキサー、加熱が可能なローラーなどが例示出来る。
然し溶融混錬装置へ投入される前の段階では、粉塵爆発に危険性があるので、窒素ガス置換などを講じる必要はある。
例えば回転が同方向の、異方向でも良いが2軸の押出し機を用いて溶融混錬をすると、粉塵爆発以外に、例えば白色の、所望する色に着色したセルロースパウダー(環境分解性成分を数種類混ぜ合わせても良い。)などは、熱可塑性樹脂と混ぜ合わせ溶融混錬をすると、環境分解性成分などは変色・焼けが生じ、所望する色が得られないなどの色の問題が発生する。着色した場合は予定の色に仕上がらない。これは押出し機加熱筒で熱可塑性樹脂を溶融混錬する場合、例えば使用する樹脂がPPであっても200℃近くに加熱する。この200℃の温度では、例えば環境分解性成分を用いた場合は、黄色く、又は褐色に変色する。場合によっては、溶融混錬の温度を高めれば黒く焼けてしまう。この変色、焼けの問題は空気中の酸素によって生じ、酸素が存在する雰囲気の中で変色などする。不活性なガス例えば窒素ガス、炭酸ガス、希ガスなどの中では変色は少ない。或いは全く変色しない。
【0266】
この変色の課題を解決する手段として発明者は、例えば押出し機を用いてのペレット化、シート成形などでは前記ホッパー内を窒素ガスで置換を行う。具体的にはホッパー内を窒素ガスでの置換と、押出し機のベント部分への窒素ガスの注入を行う事で加熱筒内へも窒素ガスが入り込み変色を防止する。
【0267】
中を窒素置換したモノ(隙間の空気を窒素ガスで置換した混合物001)をニーダー、バンバリーミキサー、単軸、多軸の押出し機を用いて溶融混錬する段階でも、酸素が入り込むと酸化によって変色の危険性がある。今単軸、又は多軸の押出し機を用いての溶融混錬を説明する。予め先に混合物を押出し機のホッパー内に入れる前にホッパー内の空気を窒素ガスで置換している事が好ましい。そのホッパーの中に、溶融混錬、ペレット化するモノ(タンブラーして、窒素置換したモノ)を入れ、ホッパー内には窒素ガスを連続的に入れて於く。本発明ではこれをホッパー内の窒素ガス封止と言う。
ホッパー内への窒素ガスの注入、封止は
図45、
図46に示す様にホッパーの下部、加熱筒の直前、ホッパーの中、好ましくは材料の中央部から窒素ガスが出る様にする。
ホッパー下の窒素ガス(符番187、符番188)はホッパーから加熱筒内へ前記の混合物001と一緒に送り込まれる。
【0268】
(変色・焼け)
環境分解性成分、熱可塑性樹脂などは常温では問題がないが、熱が高い場合、例えば200℃近くに加熱され、空気と触れると、空気中の酸素によって酸化され、黄色に、或いは褐色に変色する。又酸化が更に進むと焼けになる。本発明では変色、焼けを総称して「変色など」、又は「変色・焼け」と表現する。
【0269】
(成形装置)
「成形装置」とは、押出し機、シート押出し機、異形押出し機、射出成形機、ブロック成形機、注型機、カレンダー成形機、ブロー成形機などを言う。成形装置を用いて加工がなされたモノを「成形品、成形加工品、成形加工したモノ」と言う。原料のペレットも本発明では成形品に含む。
【0270】
(冷却装置)
「冷却装置」とは、押出し機にから出た熱可塑性樹脂のストランドを空冷する為にコンベアー、水冷する為の水槽などと、成形機の温度を制御(コントロール)する温調器、チラーなどを言う。シート成形の場合もシートを冷却するコンベアーなど、水槽などを言う。
【0271】
(金型装置)
「金型装置」とは、押出し機のダイ、注型加工用に金型、射出成形加工用の金型などの総称である。
【0272】
(成形加工法)
本発明で言う「成形加工法」とは、ストランド、又はシートを製造する押出し成形法、異形押出し成形法、注型成形法、射出成形法、ブロック成形法、カレンダー成形法などを言い、特に射出成形加工では、一般の成形加工法(一般成形法、通常成形法)に以外に、性状が固体、液体(;スラリーとしたモノ)の化学発泡剤を用いた射出発泡成形法、性状が固体、液体、気体の物理発泡剤を用いた射出発泡成形法(単に「発泡成形、又は発泡成形法」とも言う。)、前記発泡剤を用いての押出し成形、異形押出し成形、注型、ブロック成形、カレンダー成形なども含まれる。
シンプレス(商品名)、AGI(商品名)、エアーモールド(商品名)と、その応用技術のRFM、H2M成形法に例示される射出中空成形法(これ等を本発明では単に「中空成形、又は中空成形法」とも言う。)、溶融樹脂と金型とに隙間に大気圧以上の圧力を持つ気体を入れてその気体の圧力で加圧する射出圧空成形(単に「圧空成形、又は圧空成形法」とも言う。)を言うも本発明の環境分解性成分含有の樹脂を用いて実施出来る。
【0273】
(不活性ガス)
「不活性ガス」とは、環境分解性成分を含み、そして熱可塑性樹脂を含む成形材料の実際の温度が380℃の時に、温度の高い成形材料を酸化させない気体を言い、例えば窒素ガス、一酸化炭素、炭酸ガス、水素ガス、有機溶剤を気化させたガス、ヘリウム、ネオンなどの希ガスなどを言い、これ等のガスは単独で、或いは混ぜ合わせて複合ガスとして使用する。特に本発明で有用な気体は窒素ガスと、炭酸ガスである。特に窒素ガスは分離膜、PSAなどの分離装置を用いて安価に、多量に得る事が出来るので、本発明では多用する。尚本発明で言う酸化とは、酸素と結合する事、酸素によって分解される事以外に、酸化とは対象となる物質が電子を失う事を言う。
【0274】
(ガス置換)
「ガス置換」とは、装置内、又は/及び材料の隙間に入り込んだ酸素を含む空気を減圧して、脱気してから、減圧の状態で、不活性な気体例えば窒素ガス、炭酸ガスなどを入れて、再び大気圧下まで圧力を高めれば良い。
減圧をせずに、逆に不活性なガスを入れてから加圧しても良い。例えば大気圧以上の圧力を持った不活性なガスを入れ、空気と置換する。この方法は1回でも良いが数回繰り返せば十分に置換出来る。押出し機、射出成形機のホッパー内の空気は、又材料の隙間の空気は減圧、置換予定の気体を用いての加圧、減圧、置換予定の気体を用いての加圧を繰り返せば良い。この方法に最適な設備、例えばバックメルター{バックメルタ)(商品名)}が準備されているので簡単に気体置換出来る。(株)ハルナのエコマック(商品名)を用いて、真空引き(実際は減圧する事を意味する。)をしただけでも良(よ)い。真空引きの装置内に再び不活性な気体を入れても良い。本発明ではバックメルター、エコマックなどの機能を持った装置を総称して「バックメルター」と言う事にする
バックメルターで減圧をせずに大気圧以上に加圧して、大気圧まで戻し、再び大気圧以上に加圧して置換して良い。
【0275】
タンブラーで混ぜ合わせた環境分解性成分と熱可塑性樹脂との混合物を閉ざされた容器内に入れ、真空ポンプなどを用いて真空引きをして、減圧された中に不活性な窒素ガスを入れると、タンブラーされたモノに中の空気(特には酸素)は窒素ガスによって置換される。この空気を窒素ガスに置換する作業は1回でも多くの酸素を窒素ガスに置換出来るが、更に窒素ガスの置換を望むならば、複数回行う事が好ましい。
【0276】
(ガス封止)
「ガス封止」とは、例えば空気を追い出し、不活性な窒素ガスでガス置換した中に、再び空気が侵入するのを防ぐ為に連続的に、或いは断続で窒素ガスを装置、例えば押出し機のホッパー内、フィードスクリュー(サブスクリュー)の中に不活性なガスを送り込み先の装置内の中を不活性なガスだけの雰囲気にする事を意味する。
【0277】
{ガス・ウンター・プレッシャー(GCP)、GCP法、アウターGCP}
「アウターGCP」とは発泡成形に於いて、スワール・マークのない表面が綺麗で、平滑な発泡成形本を得る手段で、通常は大気圧以上の圧力に加圧したエアーを用いるが、先に述べた様に環境分解性成分を用いると変色・焼けが著しい。この課題を解決する手段として、GCPに用いる気体を、酸素を含んでいるエアーではなく、窒素ガス、炭酸ガスなどを使用する。
【0278】
PLなどをOリングで、エジェクターピンなどを荷重式Oリングで、或いはエジェクター・ボックスでシールした金型内を大気圧以上に気体(一般には空気)で加圧してから発泡性樹脂を充填し、発泡性樹脂の充填の途中、或いは充填完了後に金型内の気体を排気して表面が綺麗で、平滑な、内部に発泡層を持った発泡成形品を得る手段、所謂GCPに於いて、使用する気体がエアーの場合は変色・焼けが発生するが、予め金型内を加圧する(これを「与圧」と言う。「圧気」とも、「圧気する。」とも言う。)、与圧に用いる気体をエアー{;エアー(空気)の場合酸素が含有しているので、変色・焼けが発生する。}でなく、不活性な窒素ガスを使用すれば、変色・焼けなどは少なく出来る。
始めに前記シール金型内をエアーで圧気してから、エアーの圧力よりも高い圧力の窒素ガスをキャビティ内に入れて、始めのエアーを窒素ガスの圧力で追い出して置換する事もある。この場合が窒素ガスは主にキャビティ内を圧気し、金型の他の部分、例えば入子の底の空間、エジェクター・ボックス内などは安価なエアーで圧気すると、シールされた射出加工用の金型全てを窒素ガスで圧気するよりも経済的である。
真空引きをして初めの空気を抜いてから、再び窒素ガスで圧気する事もある。初めから窒素ガスを用いて圧気をしても良い。
GCPに付いてはPCT/JP2016/86380、PCT/JP2015/062611、PCT/JP2020/015536文献で説明をされており、本発明の発泡成形、GCP、中空成形、圧空成形の実施は前記文献の内容を使用する。
【0279】
(流動支援)
GCPに炭酸ガスを用いると変色・焼けの防止に加え、炭酸ガスはキャビティ内に充填された溶融樹脂の流動先端部から入り込み溶融樹脂の流動性を向上させる作用・効果がある。炭酸ガスは窒素ガスに比べて溶融樹脂との親和力が高く、炭酸ガスが溶け込むと、流動性が向上する。窒素ガスと炭酸ガスとの混合ガスでも良い。
【0280】
シール金型を用いなくても、金型が閉められ、溶融樹脂(発泡性樹脂でも非発泡性樹脂の何れでも可)の充填の前に大気圧以上の圧力を持つ窒素ガスをキャビティ内に入れて、始めのキャビティ内の空気を窒素ガスで置換してから、溶融樹脂を充填する工程に於いて、溶融樹脂の充填の前に窒素ガスの注入を止める場合と、充填が開始され、充填が完了するまで窒素ガスの注入を続ける場合とがある。
【0281】
(流動支援と、分散)
溶融樹脂の流動性を上げるには、流動性向上剤を用いるが、成形加工装置、押出し機と射出成形機とでは加熱筒に穴を開けて、其処から、加熱筒内の温度で気化する液体、例えば水、アルコール類、水とアルコールの混合物、その他有機溶剤などを入れて気化させると、溶融樹脂の流動性を著しく向上させる事が出来る。当然流動性を高める事が出来れば、環境分解性成分の熱可塑性樹脂中の分散性も高められる。この液体の中にアニオン系の、又はカチオン系の、又はノニオン系の界面活性剤を加えて(併用する。)も良い。市販の分散剤でも構わない。
【0282】
流動性を高めるのは先の液体以外に、窒素ガス、炭酸ガスなどの気体を溶融樹脂に入れて良い。炭酸ガスは窒素ガスに比べて溶融樹脂との親和性(混ざり易さ)が高いので、気体を用いる場合は炭酸ガスが良い。
固体発泡剤は、例えば重曹に代表される炭酸水素塩、ADCAに代表されるアゾ化合物、DPTに代表されるニトロソ化などの化学発泡剤、中空気球などの物理発泡剤も、加熱筒内の溶融樹脂の流動性を高める効果がある。
【0283】
環境分解性成分と熱可塑性樹脂との結合性を高めるには、熱可塑性樹脂がPPの場合には、PP樹脂と結合性の高いマレイン酸変性のPPを含むエマルジョン(溶剤系でも可)を前記液体の場合と同様に加熱筒内に入れ、環境分解性成分とPP樹脂との結着性(結着力)を高める。熱可塑性樹脂がABSなどのスチレン系樹脂の場合はスチレン変性アクリル樹脂をエマルジョンとした溶液、スチレン変性アクリル樹脂を溶剤を用いて溶解した溶液などを用いる。熱可塑性樹脂がポリアミドの場合はメトキシメチル化ポリアミドの溶液、又はエマルジョンとしたモノを同じ様に使用、加熱筒内へ入れれば良い。
当然これ等マレイン酸変性のPP、スチレン変性アクリル樹脂、メトキシメチル化ポリアミドの固体(粉体など)、ポリビニルアルコールを混ぜ合わせても良い。この場合に前記マレイン酸変性のPPなどの性状が固体の場合、タンブラー(タンブリング)の段階で混ぜ合わせてから、押出し機ホッパーなどへ投入する。
【0284】
液化した炭酸ガスをバレル内に注入して加熱筒の温度で気化させて、加熱筒内で炭酸ガスとして流動性向上剤として用いる事が出来る。固体の炭酸ガス(ドライアイス)をペレット状にして、バックメルターの様な機構の装置を押出し機、射出成形機、その他成形装置に設けて、ドライアイスを混ぜ合わせたドライアイス、環境分解性成分、熱可塑性樹脂の混合物を加熱筒内へ入れて、溶融させ、溶融時にドライアイスは昇華して炭酸ガスとなって、溶融樹脂中に溶け込む。結果加熱筒内の溶融樹脂は炭酸ガスが溶け込んでいるので流動性は向上する。ドライアイスは流動性向上剤として用いる事が出来る。
その他には、加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を付与する物質、例えば炭酸水素塩(Li、Na、Kなどのアルカリ金属の塩)、ADCAなどのアゾ化合物、DPTなどのニトロソ化物の流動性を向上させる。それ以外にはミューセル、アモテック、ソフィットなど気体を加熱筒内に入れ加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を付与させれば流動性は向上する。それ以外の手段として、当然流動性向上剤もある。
【0285】
加熱筒内の溶融樹脂中に液体を入れ、流動性が高まれば、GCPの圧力を下げられ。或いはGCPなし(大気圧と同圧。)でもスワール・マークのない発泡成形品、樹脂保圧を掛け発泡セルをなくし一般成形とした成形品とが得られる。この場合に液体は、例えば樹脂がPPではエタノールでなく、プロパノール、ブタノール、ヘキサノールなど炭素数が多いアルコールでは、溶融樹脂への溶解性が高まるので、GCPの圧力が低くても、或いは大気圧と同じ圧力でもスワール・マークの、シルバーのない発泡成形品、一般成形品が得られる。この作用・効果はアルコールだけでなくアルカンなどでも確認されている。
【0286】
(実施形態15)
(ペレットの製造)
本第15実施形態に用いる環境分解性成分の粒径は特に問わない。大きくても、小さくても構わない。粒径の大きいモノ、小さなモノとを混ぜ合わせて使用する場合もある。本発明の実施例に使用した日本製紙(株)製のセルロースパウダー(KCフロック W-100GK、W-50GK、W-400G)の平均粒子径は200μm以下であれば十分、分散性を高め均一性(均一な分散)を求める場合は20μm以上、50μm未満もモノを使用する。日本製紙(株)製のセルロースパウダーKCフロックは元々は障子紙の様に白色の粉体である。この白色の粉体(セルロースパウダー)を51wt.%と、自然色のPP樹脂{住友ノーブレン HX101A(商品名)}を49wt.%混ぜ合わせた混合物(本発明では「混合物001」とする。)を、加熱には電気式の棒ヒーターを使用したニーダー{(株)トーシン製の加圧式ンーダー}で加熱し、溶融混練をした。溶融温度は200℃以下に調整をしたが、前記セルロースパウダーと、PP樹脂とを溶融混錬したモノは褐色に変色(元々はセルロースパウダーもPP樹脂のペレットも共の白色であった。)していた。原因はセルロースパウダーが空気により酸化(空気中の酸素による酸化)され変色したと推測した。
【0287】
変色が空気中の酸素よって生じたモノかを確認をする為に、ニーダーの加熱部をビニル袋で囲い、中に不活性な窒素ガスを入れて{ニーダーで溶融混錬中には窒素ガスを連続的に入れ続け、空気との置換を行い、樹脂の溶融の環境(溶融混錬時の雰囲気)を窒素ガスで封止した。)同様に200℃で溶融加熱した結果、空気中で溶融混錬をしたモノと比較して、変色は殆ど認められない白色であった。これによって変色は空気中の酸素である事が判明した。僅かながら変色が認められたが、それはセルロースパウダー、PPのペレットの隙間に入り込んだ空気によるものと推測した。
【0288】
溶融混錬した前記セルロースパウダー含有のPP樹脂の塊を窒素ガスの雰囲気から空気中に出した時に、表面温度が溶融混錬時の200℃近くになっているので、空気中の酸素によって表面は褐色に変色した。
この実験からセルロースパウダーが酸化されやすく変色する。然し空気を不活性な窒素ガスなどで置換すればこの変色の問題は解決する事が確認出来た。
【0289】
従来の樹脂(例えばPP樹脂)のペレットはストランドを水中に入れて冷却してから、カットしてペレットにするが、環境分解性成分は吸水性が高いので、水中での冷却は好ましくはなく、空冷が望ましい。
先に溶融混錬をしたセルロースパウダー含有のPP樹脂の、冷却固化が完了していない、溶融状態の塊をプランジャー式の押出し機で押出し、ステンレスメッシュのコンベアー上で空気空冷(セルロースぱ吸水性が高いので、)して、ストランドを押出し、ペレタイザーを用いてカット(切断)してセルロースパウダー含有のPP樹脂ペレットを得たが、プランジャーで押出しストランドとした段階で、空気中での作業{ストランドカット、空気(エアー)冷却固化}であったので、ストランドの表面は酸化され、褐色に変色した。
【0290】
変色を防止する為にはニーダーの場合と同様に窒素ガス置換を行う事で防止出来る事を確認した。具体的にはコンベアーをトンネル構造として、囲い込んで、中に窒素ガスを入れて窒素ガスで置換する。ダイから押し出されたストランドの窒素ガスを吹きかけて冷却する。この様に溶融混錬の段階、ストランドを引いてペレット化の段階で空気を窒素ガスで置換する事でセルロースパウダーの酸化は防止出来て、変色のない白色のペレットを得る事が出来る。上記実施形態はセルロースだけを用いたが、セルロースパウダーと紙粉(製紙工場からのモノ、或いは市場から回収した紙を微粉化下元の何れでも可でも良い。又これ等を混ぜ合わせても良い。
【0291】
(実施形態16)
(酸化防止の手段=窒素ガス封止)
前記第3実施形態からセルロースパウダーの変色(酸化による。)は、空気中の酸素による事が確認出来た。
然し前記加圧式の加熱ニーダーはバッチ式の生産(製造)なので、生産性が低い。ペレットを得るには単軸、又は多軸の押出し機と、ペレタイザーを用いて連続的に生産をした方が生産コストが下がり、経済的である。
押出し機を用いて酸化させないで、変色のないペレットを得る手段を本第16実施形態に示す。混合物001を押出し機のホッパーに入れ、ホッパー内の空気を不活性な窒素ガスに置換する。実際にはホッパーの下部(加熱筒と繋がるパイプの部分が好ましい。)に細いホースで連続的に窒素ガスを入れ込めば良い。この時に窒素ガスは市販のボンベの購入して使用しても良いが、この場合窒素ガスのボンベは高価なので決して経済的ではない。発明者はPSA(Pressure Swing Adsorption)、或いは窒素ガス分離膜{UBE(株)から販売されている中空糸(N2セパレーター)}を使用して空気中から分離した窒素ガスを用いた。
【0292】
先に示した様にホッパー内を窒素ガス置換すれば酸素濃度が下がり、酸化による変色などは避けられる。
それ以上に変色などを避けるには例えば(株)名機製作所、(株)日本製鋼所が成形機に付帯し製造販売している加熱筒内高真空可塑化装置{バックメルター、バクメルター(商品名)}を用いる。ホッパー内を窒素置換した混合物001を加熱筒に入れ、溶融混錬の前に、バックメルターを用いて真空引きをして、セルロースパウダー、PP樹脂ペレットの隙間に入り込んでいる空気を外へ吸い出す。そのまま、加熱筒に入れて溶融混錬しても良い。
【0293】
必要に応じて真空引きをした後、バックメルター内に窒素ガスを入れれば、隙間の空気は略窒素ガスに置換される。より窒素ガスの置換効果を高めるのはバックメルターを1段ではなく、多段用いれば更に効果は高くなる。
【0294】
押出し機には先の空気が窒素ガス置換された混合物001を投入し溶融混錬するが、押出し機の場合、投入量を安定させる為に、加熱筒の上、ホッパーの下、加熱筒とホッパーの間に小さなサブスクリュー(フィードスクリュー)を設けて加熱筒内への投入量を安定させる。この場合サブスクリュー内も窒素ガス置換を行った方が良い。変色などの防止にはこれを行う必要があり、推奨する。
【0295】
押出し機は単軸(1軸)でも、強(高)混錬性の多軸(例えば2軸)の押出し機を用いる。多軸の押出し機の場合はスクリューの回転の方向は同回転でも、異方向回転でも良い。
押出し機の場合は加熱筒にベントが設けられている。このベントにも覆いをして中に窒素ガスを入れて窒素ガス封止(不活性な窒素ガスに空気を置換する事の意味。)を行う。
溶融混錬した後、ダイから押し出てストランドを作る。ステンレスメッシュのベルトコンベアーを用いて冷却・固化する。冷却・固化の段階でも、ストランド表面の酸化による変色を避ける為に先のニーダーを用いてペレットを得た場合に説明した様に、ダイから出たスリランドの酸化による表面の変色を避ける為に、同様に窒素ガス置換(空気を不活性な窒素ガスの置き換える事。空気中の酸素を窒素ガスに置き換える事。)する。冷却・固化が完了し、温度が下がりペレット化(コールドカット)する。
この様に空気中の酸素濃度を下げ略ゼロとする事で、セルロースパウダーが変色する事なく白色のペレットが得られる。
ペレットの製造の段階で、顔料・染料を入れ込めば様々な色のセロルースパウダー含有のペレットが得られる。
尚PPは溶融温度が200℃では酸化される事はない。故に200℃程度ではPPの変色・焼けはない事を確認している。
【0296】
押出し機のスクリューは混錬性を高める目的でダルメージを用いると、混錬性は高いので、環境分解性成分が熱可塑性樹脂中への分散性は高くなる。
溶融混錬した加熱筒内の溶融樹脂中に特許公報(PCT/JP2015/062611)で示した手段で気化性の液体を入れれば、前記特許公報PCT/JP2015/062611)の発泡目的ではなく、押出し機加熱筒内の溶融樹脂の溶融粘度を下げて、セルロースパウダーと、樹脂のPPとの混錬性を高め、分散性が上がる。
発泡目的でないので添加量は、例えばエタノールの場合には環境分解性成分を含む溶融樹脂100部に対して、1部以上、好ましくは3部以上添加すると良い。
気化性の液体はエタノール、プロパノールなどのアルコール類、水、水とアルコール類との混合物が良い。メタノールの使用出来るが毒性があるので推奨はしない。本発明では使用を中止する。
この液体の中の染料を入れればペレットに着色が出来る。液体注入は一か所に限らず、数箇所でも良く、アルコールなどと、染料・顔料を含んだ溶液を入れても良い。
セルロースパウダーとオレフィン系樹脂のPPとの結合力を高め、最終の成形品の強度を高める為に、セルロースとPPとの界面・境界領域の結合力を高める為にマレイン酸変性のPPのエマルジョンタイプの溶液〔ユイチカ(株)から販売されている型番がDB-4010{アローベース(商品名)}〕などを入れても良い。
当然な事酸化チタン、アルミナ、マグネシアなどの白色の無機物を加えればより白くさせる事も可能である。
必要に応じて可塑剤、防腐剤、防カビ剤、分散剤などを使用する。これ等の物質の性状が固体の場合は例えば混合物001に適量を混ぜ合わせ使用する。
アルコールなど有機溶剤を用いた溶液の場合は、先に述べた用の液体注入装置(特許公報 PCTPCT/JP2015/062611)の
図1、
図4、乃至
図19などの装置用いて加熱筒内へ注入すれば良い。
【0297】
(実施形態17)
(射出成形加工)
混合物001を用いて第3実施形態、第4実施形態で得られたセルロースパウダー含有のペレット001を用いて射出成形加工する場合のセルロースパウダーの酸化防止の手段を示す。
手段は前記ペレット001を用いた様に窒素置換、窒素封止で、射出成形加工時の変色、焼け防止は可能である。
初めに射出成形機のホッパー内を窒素ガスで置換する。置換の手段が前記ペレット製造で押出し機を用いてペレット001を製造した時のホッパー内の窒素置換の手段と同様である。
ホッパー内を窒素置換し、続いて射出成形機の加熱筒内で可塑化する。本第5実施形態の射出成形機には先に述べたバックメルターが付帯され、ホッパー内のペレット001は、ペレット隙間の空気の幾分かは窒素ガス置換され、次にバックメルター内に送り込まれる。バックメルター内を真空引きして、加熱筒内に送り込み溶融して可塑化して混錬する。
バックメルターを真空引きした後、もう一度窒素ガスをバックメルター内に入れても良い。当然バックメルターは、1段でも良いが複数段直列に用いれば更に窒素ガスの置換率を高める事が出来る。
この様にペレット001の隙間を窒素ガスで置換するので、可塑化、溶融混錬の段階で酸素の起因する変色・焼けは生じない。
【0298】
射出成形機加熱筒内で可塑化されたペレット001は次に金型内へ充填されるが、金型のキャビティ内に空気が、実際は空気中の酸素が存在すので、得られる成形品には変色・焼けの危険性がある。射出速度を上げると断熱圧縮で変色・焼けは多くなる。
この問題を解決するにはキャビティ内を不活性なガス、例えば窒素ガスで置換をする。キャビティ内の窒素ガス置換の手段を具体的に説明する。
使用する金型には固定側、又は可動側、又はスプールランナーの何れか(複数でも可)から、特許公報(PCT/JP2016/86380)に記載の
図52、
図53、
図54のガス注入ピン、ガス加圧ピンが設けられ、金型が閉じられて、金型内を特許公報(PCT/JP2016/86380)
図1の弁(符番14)を開けてキャビティ内へ窒素ガスを吹き込む。キャビティ内の空気が窒素ガスに置換された事を見計らい、前記ペレット001の溶融樹脂をキャビティ内に射出(充填)する、溶融樹脂の冷却・固化の完了が完了、金型を開けて成形品を取り出せば、混合物001を用いて製造したペレット001を用いて射出成形加工した変色・焼けのない白色の綺麗な射出成形品が得られる。
【0299】
(実施形態18)
ペレット001は51wt.%のセルロースパウダーを含むので、PP樹脂100%のモノよりも流動性は著しく低下する。その上セルロースパウダーの変色・焼けが懸念されるので、成形時の樹脂温度はそれ程高くは出来ない。其処で溶融樹脂の流動性を増し手段として特許公報(PCT/JP2015/062611)に記載されている液体を用いた発泡成形の手段の応用として、加熱筒内の溶融樹脂中にアルコール類、水、アルコール類と水との混合物を入れて溶融樹脂の流動性の向上を図る。添加量は発泡成形ではないので、発泡成形の数倍以上の量を入れ、流動性を上げて窒素ガス置換したキャビティ内に射出して、続いて樹脂保圧を掛けて前記液体を搾り出す。発泡剤を用い保圧を掛けて発泡させない手段である。
当然変色・焼けの危険性があるので、ホッパー内、キャビティ内の不活性ガスによる置換、不活性ガスでの封止を行う。
【0300】
先には液体を熱可塑性樹脂の流動性向上剤にアルコールなどの使用(加熱筒内への注入の手段)を示したが、アルコールに限定されずに、加熱筒内の溶融樹脂内へ注入出来る圧力まで圧力(;可塑化・溶融時の加熱筒内の溶融樹脂の背圧より高い圧力)を高めた気体の窒素ガス、炭酸ガスを用いても同じ様に流動支援効果は期待出来る。
アルコール類などの液体、窒素ガス、炭酸ガスなどの気体以外に、重曹(炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酸性炭酸ナトリウム)、ADCA(アゾ・ダイ・カルボン酸アミド)、DPT(ダイ・ニトロソ・ペンタメチテン・テトラミン)と、それ以外に中空気球のアドバンセル(商品名)、エキスパンセル(商品名)も同じ様に流動性支援効果は期待出来る。
【0301】
(発泡成形)
先には液体を用いた流動支援の作用・効果を説明したが、当然ペレット001を用いての発泡成形の実施も可能である。先の第6実施形態に於いてアルコール類は流動性向上剤として用いたが、添加量を少なくして、適量を用いればアルコール類も発泡剤として用いれば、発泡成形は可能である。
ペレット001中のセルロースパウダーは、起泡核剤として作用するが、必要に応じて起泡を目的に核剤として作用するタルク、金属酸化物、無機フィラーなどを加えても良い。
【0302】
{ガス・カウンター・プレッシャー(GCP)、主にアウターGCP}
当然特許公報(PCT/JP2016/86380)、文献{S&T出版(株) 2022年10月20日 第1版 第1刷「発泡成形・中空成形・圧空成形の量産に向けての準備と、環境負荷低減の具体的な手段の説明」鈴木 康公 新保 實著}に記載されているガス・カンター・プレッシャー(GCP)法、GCPの手段を用いれば、セルロースパウダーの表面での浮きを少なく出来る。GCPの圧力(金型内への与圧)を高める、金型温度を高めるなどを行えばGCPの効果によるセルロースパウダーの浮きは更に少なく出来る。
一般の樹脂、例えばABS、PPなどを用いたGCPに於いて、予め金型内を与圧する気体はエアーであるが、エアーであると、変色・焼けの問題があるので、不活性な窒素ガスを用いる場合もある。炭酸ガスを用いると、炭酸ガスは流動の先端部から溶融樹脂の中に溶け込み、溶融樹脂の流動性の向上、セルロースパウダーの浮きの低下(押さえ込み)の効果がある。
当然この発泡成形の場合も先の第4実施形態(押出し成形であるが射出成形でも略同じ)、第5実施形態で説明した様に、ホッパー内での窒素置換、バックメルターなどの装置を用いての窒素置換を行う必要はある。
【0303】
(実施形態19)
(押出し成形=シートの押出し成形)
ペレット001を用いて押出しの成形を行いシートの生産を実施する場合、前記射出成形の場合と同様に、ホッパー内を窒素封止し、窒素置換して、押出し機加熱筒上に、フィードスクリューが設けられている場合は、そのフィードスクリューの中の空気も窒素置換して、酸化による変色・焼けが生じない様にしてから加熱筒内に入れて可塑化し、シートを押し出す。射出成形機の場合も、押出し成形機の場合も同じであるが、加熱筒内へ酸素が入り込まなければ多少温度を高めても、変色・焼けの心配はない。
【0304】
然しシートが押出し機のダイから出た時は、冷却固化が進んではいなくて、高温であるので、空気と触れると当然な事表面は酸化され変色する。場合によっては焼けが発生する。表面の冷却・固化が完了し、酸化され変色しなくなる温度まで表面温度が下がる時間までは、窒素ガスの雰囲気にする必要がある。冷却固化が完了してからは所望する大きさにカットして圧空成形、真空成形の用いるシートとする。
【0305】
第19実施形態のシートを製造する押出し成形の場合も、先の第18実施形態の場合も、加熱筒にベントが設けられている場合は、其処から空気が加熱筒内へ入り込み、酸化され、変色・焼け発生の恐れがあるので、その部分{ベント部、ベント口(くち)など}からも窒素ガスを入れて、加熱筒内の溶融樹脂の酸化を防止する。
又別の口を設けて加熱溶融された熱可塑性樹脂の中に後述するスラリー状にした環境分解性成分を入れて混錬する。加熱溶融混錬の段階で、スラリーの製造に用いた水、有機溶剤などは、更に別のベント口から吸引し、加熱筒外へ逃がす。
スラリーの製造は、環境分解性成分に水、又は/及びアルコールなどの有機溶剤を加え、ヘンシュルミキサーなどを用いて製造する。製造されたスラリーは、単軸、又は多軸の押出し成形の場合は、熱可塑性樹脂がPPなどのオレフィン系樹脂の場合はマレイン酸変性のPP溶液(水系も含む。)、ABS、HIPSなどのスチレン系樹脂の場合は、スチレン変性アクリル樹脂の溶液(水系も含む。)を用いる。
スラリーは単軸、多軸の押出し機を用いて溶融混錬して、ペレットを製造する場合、スラリーはプランジャー・ポンプなどを用いて、加熱筒内の溶融樹脂に対して一定量を、連続的に注入して、溶融混錬をする。
射出成形加工の場合は、スラリーは計量の開始から、終わりまでの間に射出成形機の加熱筒内の溶融樹脂中に、加熱筒内の溶融樹脂に対して、一定量を注入する。これを容量制御と言う。射出成形機の場合は、文献{S$T出版(株) 2022年10月20日 第1版 第1刷「発泡成形・中空成形・圧空成形の量産に向けての準備と、環境負荷低減の具体的な手段の説明」鈴木 康公 新保 實著}に記載されている図(ページ36に記載の写真17)の液体注入装置が使用出来る。尚本書のページ66の
図32、写真24にはガス・GCP装置が示されている。
【0306】
(実施形態20)
先の実施形態などは樹脂(例えば、混合物001、ペレット001)にはオレフィン系樹脂のPPを用いたが、本発明では使用可能な樹脂は熱可塑性を示す樹脂なら構わない(使用可能である。)。PPの溶融温度を下げる目的でPEを加える事、例えばPP:PE=50:50などの混合樹脂(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド)が出来る。PEだけ(PEの単品)でも実施は出来る。
前記PPの性状はペレットであったので、セルロースパウダーと混ぜ合わせ、ペレット化してペレット001としたが、ABSの場合は性状がパウダーのモノが市販され、入手が可能なので、発明者はセルロースパウダーと、ABSパウダーとをタンブラー、ヘンシェルミキサーなどを用いて混ぜ合わせたABS含有のセルロースパウダーを、ペレット化せずに、粉体のままでホッパー内に入れてペレット化はせずに、粉体の混合物そのままで射出成形しても良い。
当然の事アルコール類を用いた発泡成形、GCPも実施可能である。ABS以外にはエステル系樹脂のPET、塩化ビニル、ポリスチレンなどでも構わない。生分解プラスチックのポリ乳酸などの使用も可能である。又これ等樹脂のポリマーアロイ、ポリマーブレンドとしても良い。
【0307】
樹脂の流動性を高める手段としてアルコール類などの液体を例示したが、それ以外に液化炭酸ガスでも良い。先に示したバックメルターを少し改造して、その中に固体の炭酸ガス(ドライアイス)を混ぜて、加熱筒内に入れれば、加熱筒の温度でドライアイスを昇華させ発泡性ガスとして、添加量を増やして流動性向上剤として、分散剤としての使用も可能である。
【0308】
本発明の実施形態14、乃至実施形態20などではセルロースパウダーを用いて発明の実施の手段を示したがセルロースパウダーに限定させるモノではない。本発明で示したセルロースパウダー以外の環境分解性成分も酸素のよって酸化され変色・焼けが生じやすいので、これ等の物質を用いる場合も不活性な窒素ガス封止、窒素ガス置換を行えば良い。
【0309】
(実施形態21)
(マレイン酸変性のPPなどによる担持)
セルロースパウダーなどの環境分解性成分と、PPとの結合力が低い場合には、環境分解性成分(例えばセルロースパウダー、紙粉など)の、例えば表面に、PPと強い結合力を持つ物質、例えばマレイン酸変性のPP、又塩素化PP、塩素化PEなどに例示されるハロゲン化ポリオレフィンを用いる。
【0310】
実施の具体的な初段を説明する。環境分解性成分に性状が粉体の場合、粉塵爆発の危険性をなくす為に、予めヘンシェルミキサー内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換した中に、環境分解性成分を入れ、続いてマレイン酸変性のPP(性状はマレイン酸変性のPPを乳化させたエマルジョンタイプ、溶剤の溶解した溶剤タイプ)などを入れてから、攪拌して環境分解性成分とマレイン酸変性のPPなどとを混ぜ合わせる。得られたマレイン酸変性のPPなどが含有した環境分解性成分の塊を、PP樹脂と溶融混錬可能な粒径(大きさ)に粉砕して、PPと混ぜ合わせてペレット化、或いはシート成形をする。
【0311】
PPでなくスチレン系樹脂のAS、ABS、PS、HIPSなどの場合は、マレイン酸変性のPPの代(変、替、か)わりに、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、酸変性のアクリル樹脂などを使用する。これ等の性状は先に示した様に、エマルジョンタイプ、溶剤タイプの共に入手出来るので、何れも使用可能である。
【0312】
ポバール(ポリビニルアルコール)を水、又は溶剤に溶解したモノも、環境分解性成分をバインダーの樹脂であるPPなど、ABS、HIPSなどと環境分解性成分との結合力を高める事は出来る。使用(実施)方法は先に示したマレイン酸変性のPPの溶液、スチレン変性アクリル樹脂の溶液の場合と同じである。
【0313】
マレイン酸変性のPP、スチレン変性のアクリル樹脂の溶液を、加熱筒内に注入して、環境分解性成分、PP、ABSなどのバインダー樹脂との溶融混錬の段階で混ぜ込む。溶液の水(エマルジョンの場合の水)、溶剤系のモノの有機溶剤などは流動性向上剤としても作用する。この場合に顔料・染料など、その他添加剤を同時に注入しても良い。樹脂に難燃性を付与させる場合は難燃剤を溶剤、水などを用いて液体として注入すれば良い。
【0314】
マレイン酸変性のPP、スチレン変性のアクリル樹脂が固体の場合は、環境分解性成分と、バインダー樹脂とを防爆処理(不活性ガスでの置換、不活性ガスを用いての封止)をしたタンブラーで混ぜ合わせ、押出し機を用いてのペレット化、シート(押出し)成形、或いは射出成形機のホッパー内に入れて直接に射出成形加工する。当然この場合に流動性向上剤のアルコールなどの併用・使用も可能で、これ等液体は加熱筒内の溶融樹脂中に液体注入装置を用いて注入する。
低分子のPE(WAX)、直鎖脂肪酸、ポリカプロラクトンでも、ポリ乳酸とポリカプロラクトンの共重合体(樹脂)をPPなど、或いはABSなどと混ぜ合わせても良い。この場合の溶融樹脂の粘度は大きく下がる。
【0315】
(実施形態22)
実施形態22は、単軸の押出し機を用いて、混合物001を用いて、ペレットを製造する具体的な手段を示す。単軸の押出し機の場合は、多軸(例えば2舳)の押出し機に比べて混練性が劣る。然し単軸の押出し機でもスクリューにダルメージを入れて混練性を高める事も出来る。又L(スクリューの長さ)/D(スクリューの直径)を大きくする事で混練性を高める事も出来る。又スクリューのフライトをダブルフライトにする事でも混練性は高められる。圧縮のゾーンを長くして混練性を高める事も可能である。
【0316】
(スクリュー形状)
本発明の環境分解成分と熱可塑性樹脂とからなる、樹脂のペレットを製造する場合、製造されたペレットは、半完成品(成形品を製造する原料・材料)、ペレットは射出成形、押出し成形などの段階で再び、加熱溶融され、混練されるので、前記ペレットは高混練性の2軸の押出し機を敢えて使用しなくても良い。ペレットは前記射出成形、押出し成形などの段階で、再び加熱溶融され、混練されるので、作業性を容易にする事を目的に、単にセルロースパウダーなど環境分解性成分が、例えば作業場の空気中に舞う事などが出来るだけない様に、ペレット化する。前記ペレットの中は何も環境分解性成分が均一に混ざり込んでいる必要はなく、ペレットの形状さえを保っていれば良い。
【0317】
押出し機のスクリュー形状は単軸のモノで十分、単純なフライトのスクリューでも良いが、少しでも混練性を高めたいならば、ダブルフライト(フライトの間に更にフライトを設ける。)としても良い。
高混練性を求めるならば、ダルメージ(例えばマッドタイプ)を環境分解性成分、熱可塑性樹脂の変色・焼けが発生する場合は、前記窒素ガス、炭酸ガスに例示される不活性なガスを用いて、ホッパー内、又は/及び加熱筒内を封止し、変色・焼けの原因となる示燃性ガス、助燃性ガス、例えば酸素を不活性なガスで置換すれば良い事は先の実施形態などで説明した。
【0318】
混練性を高めるには、例えば射出成形加工の場合は、シャット・オフ・ノズルを用いて、可塑化中、計量中の背圧を高める事で混錬性は高くなる。この時に射出成形機の製造・販売のメーカーの(株)名機製作所{(株)日本製鋼所の子会社}のダイナメルター(商品名)の機構を用いると、より混錬性は高くなる。
押出し成形の場合は、ダイの形状から、吐出量を少なくして、絞って、加熱筒内の背圧を高めれば、敢えて多軸の押出し機でなくても、先述した、サブフライトのスクリュー、ダルメメージ入りのスクリューを用いた単軸の押出し機で、ペレット化、或いはシート成形、異形押出し成形は十分に可能である。
【0319】
発明者の鈴木 康公(ヤスヒロ)は加熱筒内に発火点の低いアルコールを用いた射出発泡成形の特許を別出願(出願番号はPCT/JP2015/062611)している。この場合酸化しやすいアルコールもバレル内の温度(例えばABSの成形加工では230℃程度)程度では樹脂の変色・焼けの原因にはならない。成形品の変色・焼けは生じない。これは加熱筒内の加熱溶融した樹脂には空気(酸素)がない(入っていない。)からである。
【0320】
ところが本発明のセルロースパウダー、紙粉に代表されるモノは密度が低く、中に多くの空気(約21%の酸素を含む。)が含まれている。普通の押出し成形加工、射出成形加工などでは背圧を少し高めれば、空気はホッパーから逃げて行くが、環境分解性成分含有の場合はそうはいかない。その空気(実際には空気中の酸素)は環境分解性成分はその隙間に多量の空気が含まれている。そのまま熱可塑性樹脂と混ぜ合わせて、可塑化すれば変色・焼けが発生する。この問題を解決するには、その空気(酸素)を不活性なガスで置換する。置換にはこれら環境分解性成分を真空引きの装置の中に入れて、真空引きして空気を追い出し、続いて不活性なガス、例えば窒素ガスを入れて常圧(1atm,760mmHg)にすれば内部の空気は略不活性ガスに置換される。この工程は必要に応じて複数回実施しても良い。次にその中に必要な熱可塑性樹脂を入れ、混ぜ合わせて(例えばタンブラー,ミキサーなどを用いて、)る。その際に再び空気が入り込まない様に混合機(器)の中には不活性な、例えば窒素ガスで封止して於く。
【0321】
この材料を押出し機のホッパー内に入れる、そのホッパー内も変色・焼けの防止の為に予め不活性なガスの置換をして於く。
【0322】
先には真空引きをして環境分解性成分に入り込んだ空気を不活性なガスで置換をする事を示したが、別には例えば環境分解性成分の小麦粉と水とを混ぜ合わせスラリーとする事で、小麦粉内の空気を追い出す事が出来る。
この小麦粉のスラリーを成形機の押出し機に溶融混練を行う予定の熱可塑性樹脂を混ぜ合わせて、不活性ガスで置換したホッパー内に入れ、様湯混練すれば、予め入れた水は、押出し機の途中のベント口から引き出せ(一端には真空ポンプでの吸引が一般的)ば良い。
水以外にはエタノール、プロパノールなどのアルコールでも良い。更に前記アルコールと、水との混合物でも使用出来る。小麦粉でなくセルロースパウダー、紙粉などの環境分解性成分でも良く、これ等を混ぜ合わせて使用しても良い。
【0323】
ペレット化の段階で、押出し機の加熱筒内で混練性を高めるには圧縮比を高めれば良いが、この場合にも変色・焼けの問題はある。この場合も不活性ガスでの置換が有効である。
混練性を高める手段にスクリューにダルメージを設ける事は述べたが、この場合も不活性ガスで置換すれば変色・焼けの問題は解決する。
【0324】
(実施形態23)
次に押出し機を用いて溶融混練を高める手段を説明する。環境分解性成分と、熱可塑性樹脂とを混ぜ合わせて、単軸、又は2軸の押出し機で溶融混練をする場合に、加熱筒に穴を開けて、加熱筒内へ、加熱筒内の溶融樹脂への気化性物質{常温(23℃)で、常圧(1atm,760mmHg)で液体、例えば水、アルコールなど、}を入れて、加熱筒の温度、又は/及び加熱筒内の溶融樹脂の温度で気化して、気化した蒸気は、溶融樹脂内に融け込み、又は/及び微分散して、溶融樹脂の粘度を下げるので、加熱溶融した熱可塑性樹脂内に環境分解性成分の分散性は高まられる。
前記気化性物質以外に窒素ガスを入れても溶融樹脂の粘度は下がるので、環境分解性成分は熱可塑性樹脂中で分散は均一になる。窒素ガス以外に炭酸ガスでも良い。液化した炭酸ガスを用いても良い。更にこれ等を組み合わせても良い。
【0325】
加熱筒内の温度で熱分解して気体を発生させる物質例えば炭酸水素ナトリウム(重曹、酸性炭酸ナトリウム、NaHCO3)に代表される炭酸水素塩、ADCA(アゾ・ダイ・カルボン酸アミド)代表されるアゾ化合物、DCP(ダイ・ニトロソ・ペンタメチレンテトラミン)に代表されるニトロソ化物、アドバンセル(商品名)などの中空気球など、所謂固形の発泡剤を前記環境分解成分と熱可塑性樹脂とを混ぜ合わせたその中に前記前記発泡剤を使用しても良い。ドライアイス(固体の炭酸ガス)を環境分解成分と熱可塑性樹脂とを混ぜ合わせた中に入れても良い。ドライアイスを加熱筒に窓を開けてその中にフィードスクリューを用いて連続的に入れても良い。
【0326】
この様に気体の、液体の、固体の発泡剤を用いて発泡性を持たせた溶融樹脂は当然幾らかは発泡したペレット(内部に発泡セルを持つ、)であるが、次の段階の加工、例えば押出し成形、射出成形などでペレットは再溶融され、再混練されるので、始めのペレットでは環境分解性成分は均一に分散されている必要はない。ペレットの内部に発泡セルが存在していてもそれ程の問題はない。
【0327】
アルコールの代わりに液化炭酸ガスを用いる手段もある。具体的には加熱筒内で溶融した樹脂に液化炭酸ガスを入れれば、溶融樹脂は発泡性が付与され、結果溶融樹脂の粘度が下がり、混練性は良くなる。液化炭酸ガスでなく、固体の炭酸ガス(ドライアイス)を入れても、ドライアイスは加熱筒内で昇華し、気体の炭酸ガスとなり、加熱筒内の溶融樹脂に発泡性が付与されると同様に混練性は高くなる。
【0328】
(実施形態24)
(担持によるペレットの製造の手段)
単軸、又は多軸の押出し機を用いての環境分解性成分含有のペレットの手段を述べたが、敢えて環境分解性成分と、熱可塑性樹脂とを溶融混錬をしてペレット化をする必要がない。熱可塑性樹脂のペレットの表面に環境分解性成分を担持すれば良い。尚「担持」とは、他の物質(本発明では熱可塑性樹脂のペレットとして於く。)の表面に何らかのバインダー、接着成分を用いてコーティングする事を言う。尚接着成分とは、熱可塑性樹脂と相容(溶)性を示す樹脂が好ましく、例えばオレフィン系樹脂のPPでは、塩素化PP、塩素化PEの代表されるハロゲン化ポリオレフィン、マレイン酸変性のPP、ポリビニルアルコールなどが例示出来る。ABSなどのスチレン系樹脂ならば、例えばAS、又はABSをn-ブタノン{メチル・エチル・ケトン(MEK)}、酢酸エチルなどを用いて溶解したドープセメントが使用出来る。HIPSならばPS、又はHIPSを同様に製造したドープセメントが使用出来る。
スチレン変性アクリル樹脂は、ABS、HIPS共に相容(溶)性を示すので、塗料の原料であるスチレン変性アクリル樹脂ワニスは溶剤系のモノ、水系(エマルジョン系)のモノ共に担持に使用するコーティング剤としても使用出来る。6-ナイロン(商品名)、6,6-ナイロン(商品名)などのポリアミド系樹脂ならば、メトキシメチル化ポリアミドのワニスが使用出来る。
【0329】
担持したモノは当然単軸、多軸の押出し機、ニーダー、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて製造されたペレットの様に、ペレットの中に環境分解性成分が入っているのではなく、表面にあるだけであるが、上述した様に射出成形、押出し成形(シート成形)の際に再溶融されるので、この段階で出来るだけ均一に分散させれば良い。例えば射出成形機に於いては従来のシングルフライトのスクリューではなく、ダブルフライトのスクリュー、圧縮ゾーンが長く圧縮率の高いスクリュー、或いは発泡成形のミューセルなどを実施するには高混錬性が要求されるので、射出成形機のスクリューにもダルメージを持たせている。尚ダルメージの次に一旦溶融樹脂の圧力を下げる為にスクリューはフライトを高くするなどの構造が組み込まれている。
【0330】
押出し機を用いてのシート成形の場合は多軸押出し機を用いれば高混錬性が得られるが、単軸の場合は上述した様にダルメージを設けるなどして高混錬性のスクリューを使用すれば良い。
【0331】
上述した様に高混錬性スクリューを用いれば、環境分解性物質の、又は/及び熱可塑性樹脂に変色・焼けが生じる場合は上述した様にホッパー内などを不活性なガスを用いた置換をすれば良い。
【0332】
尚先の述べた担持の手段で環境分解性成分と熱可塑性樹脂とコーティング剤だけでなく、酸化チタンなどの顔料、染料などを加えても良い。
【0333】
又この担持の手段を用いれば粉末冶金の材料の製造にも向く。金属粉末を熱可塑性樹脂ペレットの表面に担持して、射出成形用のペレットとして、このペレットを用いて射出成形加工をして形状を作り(造形)、不活性なガス、例えば窒素ガス雰囲気の中で焼成する。
金属粉末(粉体)の代わりにアルミナ、マグネシア、ジルコニアなどにすればセラミック(ファイン・セラミック)の粉体を材料とする事も出来る。前記粉末冶金と同様に熱可塑性樹脂の表面にセラミック粉(パウダー)を担持し、射出成形加工などをして成形(造形)し、窒素ガス雰囲気内で焼成する。
【0334】
金属粉末、セラミック粉末は必要に応じてそれらの表面に親水性ポリマー{例えばポリアクリル酸塩系の水溶性高分子 住友化学(株)製のスミカゲル L-5H(商品名、及びグレード)、或いはスチレン変性アクルル樹脂、マレイン酸変性のPPなど}を固着させ、保水性を持たせれば、水、アルコールなどとの濡れ性が高くなるので、射出成形の場合には、より成形加工が容易になる。
【0335】
前記熱可塑性樹脂表面に担持したペレットは成形加工前に、液体例えば分散剤を含む溶液内に含浸して、必要に応じて乾燥をしてから、押出し成形、射出成形可能などを行う場合もある。
【0336】
(実施形態25)
(減容化)
セルロースパウダー、紙粉、ふすまなどの環境分解性成分は性状が粉末、粉体で、然も密度が低く、嵩張(かさば)るので、そのまま押出し機のホッパーに入れても上手くは加熱筒の中に入っていかない。この問題を解決する為に、前記セルロースパウダーの少量の水、又はアルコールなどの溶剤を加えて、一旦スラリー状にしてから、プレスして、減容化して、密度を上げたからPPのペレットと混ぜ合わせて溶融混練をする。
スラリー状にした環境分解性成分は、押出し機を用いた場合には、ホッパーではなく、加熱筒に設けられた別の口から入れて、加熱筒内の溶融樹脂と混ぜ合わせ、混錬する。射出成形機の場合も前記押出し機と同様に加熱筒に設けた別の口から入れれば良い。これ等の場合は溶融樹脂に対して容量(;加える量)を制御して入れる。
【0337】
(実施形態26)
(シート成形)
本発明の環境分解性成分含有の樹脂のペレットを用いてシートを成形する場合には、押出し機を用いる。この場合の押出し機は単軸の押出し機でも良いが、多軸の、例えば回転方向が同方向の、或いは異(違う)なる方向の押出し機を用いた方が、環境分解性成分が熱可塑性樹脂中に均一に、そして微分散が出来る。この場合に変色・焼けの発生が懸念させる場合は先に述べた不活性ガスでの置換、例えばホッパー内などの窒素置換を行えば良い。溶融樹脂の粘度を下げるには、液体を加熱筒内の溶融樹脂中に入れれば流動性は向上し、混練性も上がる。
シートを成形する場合に多軸の押出し機を用いれば、先のペレット内の環境分解性成分はそれ程は均一に、微分散していなくても良い。単軸の押出し機を用いてペレット化すれば良い。この場合に単軸の押出し機のスクリューをダブルフライトに。ダルメージなどを設ければ単軸の押出し機でも環境分解性成分含有のペレットの製造は十分に出来る。
更に環境分解性成分の含有量を高めたい場合は、例えば初めに単軸で30wt.%程度の環境分解性成分含有のペレットを作成して、担持の手段で前記ペレット(環境分解性成分を30wt.%含有した、)のマレイン酸変性のPP、スチレン変性のアクリル樹脂、ポバールなどのワニスを用いて、例えば30wt.%担持すれば、ペレットの中に30wt.%が含有され、表面に30wt.%が担持された環境分解性成分が60%wt.含有するシート成形、射出成形の用いるペレットが製造出来る。
【0338】
(実施形態27)
図44は加熱筒内の溶融樹脂に環境分解性成分を混ぜ込み、溶融混練して、環境分解性成分含有の、熱可塑性樹脂を主成分とする、樹脂の原料、例えが射出成形加工に用いる樹脂ペレット、真空成形、圧空成形に用いるシートが製造される。
図45に於いて符番185は環境分解性成分、例えばパルプパウダー、脂粉などを入れるホッパーである。符番186は環境分解性成分を溶融混練する熱可塑性樹脂を入れるホッパーである。符番197、符番198サブスクリューが回転すると、一定量が押出し機の加熱筒192内に入る。符番198のサブスクリューが回転すると、環境分解性成分の一定量が押出し機の加熱筒192内に入る。符番185内の環境分解性成分と、符番186内の熱可塑性樹脂(性状はペレット、又はパウダー、バルクを粉砕した粉砕材など)とは符番192内に入り、符番193のスクリューの回転によって混練され、符番192に設けられたヒーター(図示せず。)によって加熱され、前記可塑性樹脂は、溶融するので、環境分解性成分は前記溶融した熱可塑性樹脂中に入り、スクリュー193の回転の力によって分散され、前方に押し出される。符番189の矢印は、サブスクリュー198の回転によって環境分解性成分が押し出される事を示している。符番196は符番192内の熱可塑性樹脂が、符番193の回転によって前方に進む事を意味している。何れも加熱筒内へ入れ込む量は其々のスクリュー196、197の回転数によって調整が可能で、この回転数によって、熱可塑性樹脂の中の環境分解性成分の含有量は定まる。これを重量制御装置、重量制御フィーダー、重量フィーダーなどと言う。
【0339】
(実施形態28)
図46は前記
図45のホッパー185、符番198などからなる装置を、先に溶融した溶融樹脂中に、環境分解性成分を入れ込む装置を示している。
図45と比較して、符番186のホッパーからは離れている。
図45、
図46に於いて符番194はベントを示している。符番187、188は環境分解性成分に変色・焼けを防止する目的で不活性なガスをホッパー内に入れ込む事を示している。
符番195は押出し機のダイで、此処からストランドが出て、ホット・カット(図示せず。)すれば環境分解性成分含有のペレットの製造が出来る。但しこの場合も不活性ガスによる変色・焼けの防止を図る事も必要である。
ホット・カットではなく、空冷をして、カットする事も可能、やはりこの場合も窒素ガスなどの不活性なガス雰囲気中での冷却・固化の後、カットしてペレトとする。
シートの場合のペレットと同様にダイから押出して、空冷して、必要に応じては不活性なガス中で冷却する事で、変色・焼けを防止する事が出来る。
【0340】
符番185内に入れる環境分解性成分は、そのままの粉体で使用しても良い。水、アルコールなどを加えて湿らせて使用しても良い。液体を多く加えてスラリーにしても良い。符番198は加熱筒内に気体、又は/及び液体を入れ、結果樹脂の溶融粘度を下げて、熱可塑性樹脂中に環境分解性成分が分散しやすい用にする事も出来る。
図45、
図46の符番197、符番198の要に小さなスクリュー(サブスクリュー,フィードスクリュー)を用いて安定した量を成形機の加熱筒内に入れ込む装置は、例えば(株)名機製作所のダイナメルター(商品名)などがその構造、機能などは近い。(株)西田技研のFCM装置(ファレル式連続混練機)を用いても良い。
【0341】
尚繰り返し説明をすると、「環境分解性成分」とは自然界で、ミミズなどの生物、バクテリアなどの微生物によって分解される物質を言う。光分解、熱的な分解、加水分解する事が可能な物資も環境分解性成分に含まれる。又主成分の熱可塑性樹脂とはPS、HIPA、ABSに例示されるスチレン系樹脂、PE、PPに代表されるオレフィン系樹脂、PETなどのエステル系樹脂、ポリアミド、塩化ビニルなど本発明では熱可塑性を示す樹脂ならば使用は可能である。
尚本発明で言う「主成分」とは、樹脂中に重量、又は体積で10%以上含有する事を言う。尚「主成分」と、「構成する」とは略同義語で、例えば「ペレットを構成する熱可塑性樹脂が・・・」とはペレット内に熱可塑性樹脂を10%以上含有する事を意味する。
【0342】
(実施形態29)
(最終処理)
環境分解性成分含有の熱可塑性樹脂を主成分とする複合材料から成形加工された成形品をどの様にして処分するかがもう一つの課題である。環境分解性成分含有の成形品の最終処分は、埋め立てるか、或いは焼却して熱エネルギーとして回収する。この時に埋め立て処理をする場合には、有害な物質が含まれていないか、焼却する場合は大気汚染をする気体の発生がないか、/燃焼した気体によって大気汚染はしないか?燃焼残渣(灰)に有害物質が含まれていないか?である。埋め立ての処理を行う場合には有害物質が含まれていないか?が重要である。然し今の成形品では成形品の主成分を示すリサイクル・マークしか表示はなく、これでは環境汚染が心配で、焼却も、埋め立ても出来ない。
【0343】
{上位再生、等価再生、下位への再生(下位再生)}
成形品の再生には例えば魚箱に使用されているEPS(発泡スチロール)を加熱溶解してGP(PS)に戻してから、再び魚箱の使用するリサイクルを同じ物から同じ物へ、同じ価値のあるモノへのリサイクルを「等価再生」と言う。先の魚箱を減容化して得られたPSにブタジエンゴムにスチレンを共重合させたブタジエンゴム含有のブタジエンゴムにスチレンをグラフト共重合させたグラフトゴムを20wt.%程度加えれば高襲撃性のPS{HIPS(ハイ・インパクト・ポリスチレン)}とする事が出来る。これは魚箱から、HIPSを製造して、例えば家電製品、OA機器などの成形品に用いる事が出来る・この様に樹脂の価値が上がる再生を「上位再生」と言う。一方成形品を燃やす事で熱エネルギーとして回収する再生など、或いは擬木などへの再生を「下位への再生」と言う。
上述した如何なる再生に於いても処分をする成形品の中に有害物質が含まれていないかが重要となる。化学発泡剤などを用いた発泡成形品の場合発泡剤残渣が入り込むのでリサイクルには適さない。発泡剤残渣のない気体を用いた、又は/及び液体を用いた発泡成形品は等価再生、上位再生などリサイクルに向いている。
【0344】
然し再生予定の成形品1ヶ1ヶ其々をGC-MASS,FT-IR,蛍光X線分析などの分析機器を用いて分析してから再生すのでは手間が掛る。実際は不可能である。発明者は一定の条件、例えば重量が100gr.(グラム、g)以上の成形品には、成形品の重量、成形品の樹脂の種類、樹脂の数平均分子量、分子量分布、難燃剤、難燃助剤の種類と量、顔料、染料の種類と量、又塗装が行われている場合塗膜の主成分となる塗膜用の樹脂(例えばウレタン系、1液ラッカー系など)の種類と量、塗膜中の顔料・染料の種類と量、その他添加剤などと成形品の中が、成形品を構成する全ての材料の種類と、量とが成形品を見ただけで簡単に把握出来る事が必要、発明者は成形品にバーコード、二次元バーコード、QRコード、アルファベット、アルファベットと数字との組み合わせなどを用いて、簡単に、確実に、そして瞬時に成形品のリサイクルを行う為に必要な情報を読み取る事が出来る様にした。
具体的には射出成形品の場合は金型に例えば数字とアルファベットとからなる記号、バーコード、QRコード(二次元バーコード)などを刻印する。このバーコードなどには、先に述べた成形品を構成する樹脂の添加剤の種類と量、樹脂の分子量分布、数平均分子量、グラフト共重合している場合はグラフト率、グラフトをしたモノマーの種類など、難燃かさせたモノは、難燃剤、難燃助剤の種類と量、成形品の重量などが書き込んである。
リサイクルの段階でこのバーコードなどを読み込み、コンピューターにその読み込んだデーターを入れた後に、粉砕をする。得られた粉砕材には、再生(リサイクル)に必要な情報が含まれているので、粉砕材にどれだけの量の樹脂、樹脂の添加剤などを加えれば、リサイクルを用いた新たな樹脂の製造が出来る。
この様に市場から回収して、成形品の重量とその成形品の中に含まれる樹脂の種類と量、添加剤の種類と量などが確実に、正確に把握出来るので、再生が、再生材を用いての樹脂の改良・改質が容易に、確実に出来る。
【0345】
先に述べた樹脂の種類、例えばAS樹脂でのAn(アクリロ・ニトリル)とスチレンとの比(An比)、グラフトゴムが添加されている場合は、ゴムの種類と量、大きさの分布など、添加剤の種類と量などは成形材料を製造し、販売をするメーカーの秘密であり、簡単には開示されない。再生に用いる樹脂は1社だけとは限らないので、これ等の情報は素数などを用いて暗号化し、決して部外者には漏れない工夫をする必要はある。再生材を用いた新しい樹脂に製造は、AIを用い、AIが所望する、新しい樹脂の配合を決定させる。当然AIが算出したこの新しい樹脂は、物理的な、化学的な物性が要求値を満足しているかは実際にダンベルなどの試験片を成形して確認する。
図44(写真)はリサイクル予定の実際の成形品に刻印(実際は金型に刻印)したQRコード206である。尚このQRコードは、iPhone(アイフォン)のカメラでスキャンした処、本成形品を製造した竜舞プラスチック(株)(群馬県太田市龍舞町535)のURL(ホームページ)が現れ、成形品に刻印したQRコードは実際に読み取れる事が確認出来た。
本実施形態29は詳細な説明が文献{S&T出版(株) 2022年10月20日 第1版 第1刷「発泡成形・中空成形・圧空成形の量産に向けての準備と、環境負荷低減の具体的な手段の説明」鈴木
康公 新保 實著の中に述べられている。
【0346】
(実施形態30)
{高圧のガスを用いる場合の押し出す軸体(エジェクターピン、傾斜コアなど)のシールの手段}
(バック・アップ・リング)
公知文献PCT/JP2016/86380には加重式Oリングを用いた金型のシールの手段が記載されている(先の文献の
図3、
図27、
図28など)が、高圧のガス、例えば圧力が35MPa、50MPaなどの圧力を持たせた(圧縮した)ガスを用いる場合は、例えば単にエジェクターピンを中にスプリング、ゴム製のOリングを組み込んだ加重式Oリング、一般の凹形状のリングなどだけでは完全にシール出来ない。其処で発明者は
図47に示す様に荷重式Oリング201の底部に例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などからなる樹脂製のバック・アップ・リング(符番200)を用いる。特に傾斜コア(
図17、
図18、
図20、
図23、
図25、
図26)の場合は有効である。尚加重式Oリングの詳細な説明は文献{S&T出版(株) 2022年10月20日 第1版 第1刷「発泡成形・中空成形・圧空成形の量産に向けての準備と、環境負荷低減の具体的な手段の説明」鈴木 康公 新保 實著}に記載されている。
高圧のガスを製造する手段はDCモーター、ACモーター、サーボモーター、或いは油圧ポンプ、パワーマイスター(商品名)、空圧のシリンダー(例えば米国ハスケルのガスブースターなど。)様々な手段がある。サーボモーターを用いる場合は設備が簡単、省エネルギーなど、メンテナンスが容易などの効果は大きい。然しハスケルのガスブースターの30/75(圧縮比)の場合を例のして説明する。ハスケルのバスブースターの中央のエアーシリンダーをサーボモーターとした場合には、サーボモーターの停止位置が途中ではなく、第一段のシリンダーが最後尾に下がった位置での停止、或いは二段圧縮のシリンダーが最後尾に到達した時点でサーボモーターを止める(停止する。)事の何れかが好ましく、この場合には一方のシリンダー内の高圧ガスの圧力によって、サーボモーターは停止した位置で留まる。必要の応じてサーボモーターを機械的なロック(例えば射出成形機のメカロックの様に、)を設ける場合もある。
【0347】
(実施形態31)
図19、
図20のシール金型を用い圧力が1.0MPaでエアーを用いてのGCPを行った。樹脂はABSを用い、発泡剤には水を用いての発泡成形を行った。その成形品にニッケル(Ni)メッキ(鍍金)、ニッケルメッキの上にクロム(Cr)メッキを行いう時に有用な発泡剤は、水が良い。エタノールを用いた発泡成形品ニッケルメッキの密着性が高く、マイクロクラックが生じない。発泡剤にエタノールを用いた場合はニッケルメッキ多くのクラックが認められる。
【0348】
(実施形態32)
実施例31は
図50、及び
図51に示し様に成形材料が成形機(射出成形機でも押出し成形機でも、又その他成形機でも可。)加熱筒への食い込みと可塑化とが安定する様に、成形材料の供給の口208をスクリュー210の中心位置から大きくずらし(偏心させて、)ホッパー207から加熱筒209内のスクリュー210への供給が安定する事を示している。スクリュー210と加熱筒207とに215で示す隙間を設けた。これを設ける事に寄って難可塑化の例えば金属粉、セラミック粉が多く含まれ、練る込まれ、ペレット化された複合材料の可塑化も容易に出来る。又環境分解性成分含有の難可塑化性の材料の可塑化も
図50の様な従来のホッパーを用いるよりも、
図51では加熱筒のシリンダーの温度が下げられので、材料の変色・焼けを少なく出来る。
【0349】
図51の食い込みの良い加熱筒への材料の供給の手段では、単に樹脂とペレットと溶融混合予定の金属粉、セラミック粉、セルロースパウダー(粉)、紙粉に様な環境分解性成分をタンブラーなどで混合して、その混合物を
図51の構造を持つホッパー207内に入れれば成形機加熱筒内で容易に混ざり合うので、これ等を含むペレットを製造しなくても良い。
【0350】
(実施形態33)
(担持の手段を用いた成形材料の製造)
MIM{メタル(金属粉、金属の)パウダー・インジェクション・モールドの略)、CIM(セラミックパウダー・インジェクション・モールドの略}、PIM(メタル、及びセラミックを混ぜ合わせたパウダー・インジェクション・モールドの略)に於いて本発明で説明をしている担持の方法を用いたMIM、CIM、PIM用の成形材料製造の方法を説明する。
メタル、又はセラミック・パウダー(本発明ではメタルのパウダーを「MP」、セラミック・パウダーを「CP」と略す。)を含む、樹脂が熱可塑性樹脂からなる成形材料の製造の手段は、例えば樹脂を予め加熱ニーダーの中で溶融させた中に、配合の予定の量のMP、又は/及びCPを溶融樹脂の中に入れて混錬し、混ぜ合わせ、混ぜ合わせたMP、CPが混錬された樹脂を、プランジャー、単軸、多軸の押出し機に入れて、ストランドを押出し、ホット・カット、或いは空冷、又は水冷したストランドをコールドカットしてMIM、CIM用の成形材料(性状はペレット)を製造する。
【0351】
製造したMIM、CIM、PIM用の成形材料は例えば射出成形機を用いて射出成形をして形状を作る。この場合にMIM、CIMの成形材料は、MP、CPの含有量が多いので、溶融状態での流動性は著しく低下する。この課題を解決をする為には発明者は文献;国際出願番号PCT/2015/062611号記載の液体を発泡剤として作用させる発泡成形の手段を用いた。溶融樹脂の中にアルコール、水などを加えれば溶融樹脂の流動性が向上する。溶融樹脂の流動性を向上させるには別に樹脂の温度を高めれば良い。発明者は樹脂の温度(射出成形機加熱筒のヒーターの設定の温度を高める。)を高めれば良い。この場合に、MIM、CIM中の樹脂、又は加熱筒内に入れる液体の発泡剤の酸化を防ぐ目的で、ホッパー内に窒素ガスを連続(可塑化、計量の時だけでも良い。)して入れて、窒素置換をして、加熱筒内へ空気中の酸素が入り込み、樹脂又は液体の発泡剤などの酸化を防止した。
【0352】
射出成形機によって形状加工したMIM、CIM、PIM用の成形材料を用いて成形加工した形状品をアルゴンガスの中で脱脂(脱樹脂)をして、窒素ガス雰囲気の中で焼成をして、所望するMP、CPを主成分とするMIM、CIM、PIMの成形品を得る。燒結が完了したMIM、CIM、PIMの成形品は必要に応じて穴開け、切削などの機械加工をして製品にする。
【0353】
先のMIM、CIM、PIMの製造の手段は溶融樹脂中に練り込む方法を説明したが、国際出願番号PCT/2020/015536号記載の担持の手段でも製造が出来る。例えばロッキングミキサーを用いて中に、予め低分子のPE(ポリエチレン)とPP(ポリプロピレン)とを溶融混錬して得られたPEとPPとのポリマーアロイ(本発明では「PE・PPペレット」と言う。)のペレット入れ、中のMP、又は/及びCPを必要量入れて、中のノズルから、マレイン酸変性のPPの溶液を噴霧し、PE・PPペレットの表面にMP、又は/及びCPを担持する。この様にして得られたMP、又は/及びMPが担持されたペレットを用いて先に示した様に射出成形機を用いて形状加工し上述した様に、脱脂、窒素ガスの雰囲気の中で焼成して、必要に応じて機械加工をする。
【0354】
前記担持の手段によって、MIM、CIM、PIM用の成形材料を製造する場合に、樹脂のペレットの表面にMP、CPを担持する目的での担持用の糊成分は、例えばPE・PPペレットの場合、PPとの結合性の高い、マレイン酸変性のPPの溶液が良いが、エチレン無水マレイン酸共重合体を主成分とした溶液でも良い。ポバールを用いた溶液でも良く、例えばPE・PPとの相容(溶)性は、最終の焼成の段階で有機物のPE,PP、マレイン酸変性のPPなどは、水と、炭酸ガスとになるので相容(溶)性はそれ程重要でなく、ペレットの表面のMP,CPが付着していて、射出成形が容易に出来る様であれば、何でも構わない。
MP、CPのパウダーを例えばグリセリンなどを用いてスラリー状、又は紙粘土の様にして、押出し機、射出成形機の中にそのスラリー状などのモノを入れて、加熱筒に設けた液体注入の口から、マレイン酸変性のPPの溶液、ポバール溶液、直鎖脂肪酸の溶液を入れてペレットを製造する、或いは直接射出成形する手段が考えられる。
【0355】
本発明に用いるMPは具体的には、Zn(亜鉛)、Sn(錫)、Ni(ニッケル),Co(コバルト)、Fe(鉄)、W(タングステン)などが例示出来る。CPはマグネシア(MgO)、アルミナ(Al2O3)、酸化ジルコン、スピネル(MgO・Al2O3)などの金属の酸化物、SiO2など非金属の酸化物、TiN、CrNの金属の窒化物、BN3などの非金属の窒化物、WC、SiCなどの金属、非金属の炭化物などが例示出来る。これ等CPは一種類だけを用いる場合と、数種類を混ぜ合わせ複合化して用いる場合とがある。CPは複合化する事で融点が下がる事も予測される。当然の事CPとMPとを混ぜ合わせても良い。
【0356】
ペレットとして使用可能な樹脂は先に示したPE・PP、POMなどが例示出来る。
【0357】
MIM、CIM、PIM成形用の樹脂のペレットを得るのは先に述べた樹脂のペレットと、MP,CP以外に少量の直鎖脂肪酸などの流動性向上剤などを添加して於くと、後のペレットに製造、及び成形加工が容易になる。
【0358】
勿論の事担持の手段で得られたMIM、CIM、PIM成形用のペレットを用いて射出成形加工する場合に先に述べた液体を加熱筒内に入れて、溶融樹脂の流動性を高め、流動性を高めた液体(加熱筒内では温度が高いので液体は気化している。)含有の溶融樹脂を金型内に充填(射出)し、必要に応じて射出成形機ノズルからの保圧を掛けて、内部の密度を高める。
液体の注入(入れる)の位置、即ち射出成形機(押出し成形機でも、)の加熱筒に穴を開けて其処に液体の注入する場所は、スクリューに溶融した樹脂が巻き付いていて、液体を入れて、加熱筒の温度、溶融樹脂の温度で気化させ、気化した蒸気がホッパーから外に出て行かない様な位置(発明者は圧縮ゾーンの始まり、又は圧縮ゾーンの範囲内が良い。)が良い。此処が従来技術のミューセルの気体を入れて発泡成形をする従来技術との大きな違いである。勿論の事ミューセルに用いている様に、スクリューの後部の逆止弁(チェックリング)を入れても良い。この時は更に後方(ホッパーに近い側)に穴を開けて液体を注入する事が出来る。
MIM、CIMの場合は液体を入れた場所から前(ノズルの方向から見て、)にダルメージを設けて、液体の蒸気がより微分散する様にして、MP、CPが均一に分散する様にする。
【0359】
発明者はホッパーから、MIM、CIMペレットの食い込みを容易にする為に
図51に示したホッパーの入口を偏心させている。この
図51の手段は先のMIM、CIM、PIMのペレット以外に、環境分解性成分含有のペレット、硝子繊維、硝子ビーズなど含有された複合材、プラマグの材料、単に熱可塑性樹脂のペレットの成形の場合でも有効である。射出成形に限らず、押出し成形の場合でも有効な手段である。
【0360】
又液体を注入下した後(ノズルの方向、)にダルメージを設ければ、液体の蒸気はより微細化され、樹脂中に微分散して、液体を用いた発泡成形の場合はより微細化された細かな発泡セルを持つ発泡成形品が得られる。
液体の注入口は一か所に限らず複数箇所でも良く、又ダルメージは一箇所でなく複数箇所用いても良い。液体だけでなく、気体と液体、液体と固体の化学発泡剤、中空気球などの発泡剤とを組み合わせても良い。
【0361】
本実施形態33は(株)アテクトの社長の大西 誠氏からの本願特許明細書内に実施形態33として記載する事の依頼(;将来のクレームアップ、又は競合他社の特許出願の阻止などが目的。)を受けて発明者の鈴木 康公が作成して、実施形態33として記載した。尚本実施形態32を作成するに当たり、必要な技術などの情報は先の(株)アテクトの両氏から提供を受けた。
【0362】
(実施形態34)
前記実施形態33などで、スクリューの高混練のダルメージを記したが、液体を注入(例えば圧縮ゾーンの始まり。)した場所から前(スクリューの前、ノズル側に)にダルメージを設けるとより液体の分散性は高くなり、結果溶融樹脂の流動性は高くなる。この場合にスクリューのL(長さ)/D(直径)は18以上が好ましく、20以上あれば液体、例えばエタノール、イソフロパノール、水、或いはアルコールと水との混合物(;この場合に共沸混合物となるが、液体を用いた発泡成形ではそれ程重要ではない。)を用いて発泡成形を行った場合に表面のスワール・マークを少なくする、又はなしにする事が出来る。市販のエタノールには数%の水を含んでいるので、水が含有したエタノールに場合より、無水エタノールを用いた方が発泡セルは微細になり、アルコールに水を加えて行くと発泡セルは大きくなる事を実験で確認した。。別に必要に応じてスクリュー後部に逆止弁を設けると、発泡性ガスはホッパーを通じて外には出て行かない。
【0363】
実際発明者は(株)東洋機械金属の明石本社に設置されている型締め力180トンのミューセル仕様(スクリューに気体を分散させる為のダルメージが配置されている。)射出成形機で、ホモのPPを用い、エタノールを1.5vol.%入れて発泡成形を行った処、発泡成形品氷面にスワール・マークが発生していない事を確認した。エタノール:水が6:4の混合溶液でも同様スワール・マークの発生は殆ど無かった。
【0364】
(実施形態35)
先の実施形態34で示した様にスクリューにダルメージを設けた成形機、例えば射出成形機を用いた射出発泡成形の加工に於いて、例えば樹脂がオレフィン系樹脂(ホモのPP樹脂)で、液体の発泡剤がエタノール、IPAに代表されるアルコール類、又は前記アルコール類と水とを混ぜ会わせた混合{例えばアルコール(エタノール、IPAなど):水=8:2、7:3、6:4・・2:8など}溶液を用いての発泡成形に於いてGCPを用いなくても、外観にはスワール・マークの発生は殆どない事が確認された。ダルメージを持たせたスクリュー以外には、ダブルフライトなどの強混練性のスクリューでもダルメージの場合と同じ作用・効果が期待出来る。この様に液体の場合は、例えばオレフィン系樹脂(ホモのPP、ブロックのPPなど)と、アルコールなどとの組み合わせでの発泡成形では、GCPなしで、或いはGCP(金型内の与圧、圧気)の圧力が、例えば工場エアー程度の0.6MPa、0.8MPaと低くてもスワール・マークのない、或いは少ない射出発泡成形品が得られる事が期待出来る。
炭酸ガスを用いたGCPの場合は炭酸ガスが流動の先端部から溶け込み、溶融樹脂の流動性を高める。
【0365】
樹脂の容量に対して圧力が17MPaの窒素ガスを0.3% (;NPTでは0.3%×17MPa=5.1%))程度の量を加熱筒に入れ発泡性を付与した樹脂を用いた場合は前記液体を用いた場合と異なり、1MPaの圧力のエアーを用いても表面のスワール・マークをなくす事が出来なかった。これは発泡剤としての気体の注入量が多すぎるので、1MPa程度のGCPの圧力ではスワール・マークはなくせない。もっと高圧の例えば5MPa程度に昇圧すればスワール・マークはなくせる。この結果から発泡成形に於いて表面にスワール・マークのない綺麗で、平滑な発泡成形品を得るにはアルコール、水などの液体の発泡剤、重曹、ADCAなどの固体の発泡剤が良い。
【0366】
別に一般のスクリュー(通常の成形に用いるスクリュー、)形状では、スクリューの後部(ホッパーの近くに、)逆止弁の構造がないので、気体を発泡剤として用いた場合は、気体がホッパー側に逃げてしまい、加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を付与する事は難しい。但し液体の発泡剤の場合、固体の発泡剤の場合は一般の形状(後方に逆止弁の様な機構がない。)のスクリューで十分である。液体の場合は注入の口の位置がスクリュー(樹脂)の圧縮ゾーンの始(初、はじ)まりで、この場所では樹脂は融けてスクリューに巻き付いているので、この巻き付いた樹脂が先の逆止(逆止弁)の役割を果たす。勿論の事逆止リングを用いれば、液体注入の口をホッパー近くにする事が出来る。
【0367】
液体を用いて、プラマグ(プラスチックマグネット)の成形を行う場合にフェライトを結着{フェライトだけでは成形が出来ないので熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂ならばその種類を問わないが、現在はEVA、6ナイロン等が主流である。)を用いる。}する、成形加工する場合に、射出成形加工でも、押出し成形加工でも液体を用いると溶融樹脂の流動性は向上し、結果磁場中成形に於いてフェライトの配向率が高まり磁力が高くなる。この場合に用いるフェライトの大きさは一種類でも良いが、大きさの異なるフェライトを混ぜ合わせて用いても良い。この場合は先に述べたPIMなど、後述の発泡させない発泡成形法に記載した様に十分な樹脂保圧を用いる。
【0368】
プラマグの成形は金型の鋼材にステンレス(磁性を帯びない。帯びにくい。)と、鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性体とからなる金型に、永久磁石、電磁石などを設けるた金型に磁場を掛けて前記鉄などの強磁性体を磁化させて、前記フェライトなどを射出すると前記金型に設けた磁石の磁力にってフェライトは配向する。フェライトの配合が多く、綺麗に配向した場合はプラマグの磁力は高くなり、磁力のターンもシャープになる。そのフェライト含有の射出成形用の樹脂を流動性に高めるには、元々流動性の高い例えば6-ナイロン(商品名)などのポリアミドを用い、更に溶融樹脂温度を高めて流動性を高めるのが今までの手段であった。
【0369】
前記フェライト含有の溶融樹脂の流動性を上げるのは、前記成形機加熱筒に設けられたヒーターの温度を高める以外に、本発明で説明している様に液体を、例えば水を、エタノール、IPAなどのアルコールを、炭化水素をフェライト含有の溶融樹脂内に加えれば当然溶融樹脂の流動性は高まるので、結果フェライトの配向率は高まり、プラマグ磁力を高められる。液体によって流動性が高まる事は、樹脂だけの場合よりも更にフェライトの配合量が高められるので、樹脂だけの場合よりも更に磁力の高いプラマグの生産が出来る。当然な事このプラマグの成形加工の場合は内部に液体による発泡セルがあると磁力は低下するんでで、樹脂保圧を掛け、或いは例えば射出圧縮成形などをして、発泡セルを潰して、液体をプラマグの外に搾り出す。
【0370】
この様に射出成形加工しただけのプラマグは磁力が安定をしない場合は、必要に応じて先のプラマグは一旦脱磁してから、再着磁してプラマグにする。
【0371】
(実施形態36)
実施形態36は、現在市場にある気体を用いた発泡成形法例えばミューセル、アモテック、ソフィットなどの場合、加熱筒に入れる気体は圧力が制御(一定)された気体を入れるが、加熱筒に気体を入れるとタンク内(実際にミューセル機の蓄圧タンクの容量は少ない。安定した圧力でガスを加熱筒内に入れる事を考えれば、成形品に重量、体積と同程度、或いはそれ以上の蓄圧タンクの容量が必要である。)の圧力が下がり、初めの高圧の時は入るが、圧力が下がった時は入る量が少なくなる。又加熱筒内の溶融樹脂は、様々な外乱(樹脂の流動性のバラツキ、含水率の違い、可塑化、計量時の成形機の運転のバラツキなど)を受けて、加熱筒に入る溶融樹脂に発泡性を付与する気体(窒素ガス、炭酸ガス、希ガスなどでこれ等は単体で、或いは混合ガスとして使用される。)が加熱筒内入る量のバラツク(;上述した蓄圧タンクの容量の問題で、)が生じ、結果発泡力の強さにバラツキが生じる。これが現在市販されているミューセル機などの課題であると発明者は判断した。尚気体を加熱筒内に入れての発泡成形では、ガスの装置の構造から全てが加熱筒に入れる気体は圧力制御である。これが圧力制御方式を用いた発泡成形の課題であり、欠点である。
【0372】
この圧力制御を用いた気体の発泡成形の欠点(圧力制御)を解決する為に発明者は
図52に示す容量制御方式のガス注入装置を用いる事を本発明でも提案する。窒素ガスボンベ、或いは窒素ガス分離膜、PSAなどで得られた窒素ガスを、一定の圧力に、例えば3MPa程度に加圧し符番227(入口)から、232、233の配管を通じて、シリンダー220と、ピストン219、或いはピストン218で画定される空間228に入れる。射出成形機の場合は、計量開始信号を受けて、必要に応じて、任意設定された遅延時間のタイムアップ後に、モーター222が回転して、ピストン219、218は前進して、228内に窒素ガスを成形機の加熱筒内に注入する。窒素ガスの注入によって加熱筒内の窒素ガスは可塑化、計量の力(スクリューの回転)によって溶融樹脂内に微分散し、或いは加圧溶解する。注入の停止は予め定めた注入時間が経過した時点(;タイマーのタイムアップで、)で注入が停止される。或いは計量の完了によって停止する。
図52の気体注入の装置を複数台用いれば、窒素ガス、炭酸ガスなどと複合した気体を用いる事が出来る。218の前進の速度を変える事で加熱筒内への気体注入の容量の制御(注入の速度、注入量の制御)が出来る。気体は圧縮性流体なので228に入れる圧力は高い方が圧縮されにくいので良い。通常は計量時の背圧の1/4以上、好ましくは1/2以上、更には同圧が良い。発泡に用いる気体は窒素ガスが一般的であるが、炭酸ガスでも、或いは樹脂の変色・焼けの問題さえなければ空気でも良い。気体であれば水素、希ガスでも良い。アルケン、アルカン、アルカジエンなどの炭化水素のガス(加温してガス化させても良い。)も使用出来る。勿論の事これ等の混合ガスも使用可能である。PPなどを発泡成形させるにはアルコールはエタノールが良く、エタノールより、プロパノールの方が親油性が高いのでPPの分子鎖の間に入り易いので、流動性を向上させるにはエタノール、プロパノールなど、ペンタン、ヘキサンなどが良い事が成形の実験(TRY)で確認した。。
【0373】
加熱筒内へガス(例えば窒素ガス)の注入が完了すると、222のモーターは逆転(逆回転)して、ピストン218は例えば219まで後退し、結果228内に次に加熱筒に注入されるガスがチャージされ、次の加熱筒内へのガス注入の準備をする。符番221は218、219と繋ぐロット棒で、このロット部には、例えばネジ(図示せず。)加工がなされ、222の正回(正回転)、逆回転(逆転)によって218、219は前後し、加熱筒内へのガスの注入、或いは228内へのガスの吸い込みが行われる。
【0374】
図52の装置は窒素ガスに限定されるモノでなく、気体の炭酸ガでも使用が出来る。但し炭酸ガスは臨界温度が31.2℃なので、通常の作業環境のNPTでは炭酸ガスは加圧すると液化する。この場合に炭酸ガスは簡単に超臨界状態になるので、シール部材をNBR(ニトリルゴム)などにする必要がある。炭酸ガスを気体として使用する場合は、臨界温度、臨界圧力を考慮する必要がある。
【0375】
液体の場合は非圧縮性の物質なので体積は温度にはそれ程は影響されないが、気体の場合は、圧縮性の物質で、ボイル・シャルルの法則{;圧力(P)×体積(V)=k(定数)T(絶対温度)}に依存するので、加熱筒内の溶融樹脂に対して入れるガス量を容量を制御して、安定した量を繰り返し入れる場合は。
図52の装置、及び配管232、233などを一定の温度に保った方が良い、
図52の装置は成形機の持っているPLCに運転のプログラムを組み込んで於く。別にコントローラーを設けて成形機との信号の交換(;やり取り)をしても構わない。
【0376】
(実施形態37)
ペットボトルを製造する際に、遮光性からプリホームを発泡させる報告がある。この場合に発泡に用いる発泡剤は気体(例えば窒素ガス、炭酸ガス)でも、液体でも構わない。但しブロー成形をして表面を綺麗にする必要があるので、プリフォームの射出発泡成形時のGCPを用いスワール・マークのないプリフォームとする事が好ましい。PET-G(G-PET)を用いての厚肉の成形に用いる発泡剤は液体(水、エタノール)、又は固体の発泡剤で良く、GCPの効果は十分発揮される。
【0377】
(PP)
オレフィン系樹脂のPPに付いて説明する。PPのホモポリマーは、プロピレンのみで重合したモノを言う。但し原料のプロピレンには少量のエチレンが含まれたり、重合開始時にエチレンを少量加える事もあるがこのエチレンはなかったものとして除外する。
ランダムPPとはプロピレンにエチレンを混ぜて重合したモノを言う。エチレンをどんどん増やしていけばゴムになる。
ブロックのプロピレンとエチレン-プロピレンゴムのブロックポリマーという意味で作られた言葉だが実態は、ホモポリプロピレンのマトリックスの中にゴムとエチレンで出来た粒子が分散している海島構造を持つ混合物でありブロックポリマーではない。
海外ではブロックポリプロピレンという言葉は存在せず日本のみ通用する。ホモのPPにゴムを加えたものはプロックPPではなく必ず重合で完結したモノを言う。
【0378】
(実施形態38)
図20に示すシール金型内を予めエアーを用いて1MPaに与圧(圧気)した中に、タルクが20wt.%含有したPPに水を用いて発泡性を付与した発泡性樹脂をキャビティに充填し、充填と完了と同時に金型内の圧気を大気中に放出した、得られたタルク20wt.%含有に発泡成形品に表面は、一般の成形品、GCPを用いない発泡成形品に比べて多少は少なくなったが、タルクを完全に樹脂の中に沈める事は出来なかった。
【0379】
水の代わりにエタノールを1.5wt.%用いた場合の発泡成形品の表面にはタルクの浮きは全く確認されずに、タルクの全てが樹脂の中に沈んでいる。
次にタルクの含有量を60wt.%まで高めた材料(PP)で、エタノールを2wt.%用いて射出成形を行った。GPCの圧力は金型内で1MPaとした。タルクの含有量を60wt.%まで高めたのも関わらず、成形品表面にはタルクの浮きはなく、全てが成形品の中に沈み込んでいる。
【0380】
この様にタルク含有にPP樹脂の成形にエタノールを用いる事で溶融樹脂の流動性は大きく高まる。それに1MPa程度の圧力のエアーのGCPを付与すればタルクを沈め、外観良好な発泡成形品が得られる。これは水よりエタノールの方がPPに対して溶解性が高いからである。
【0381】
圧気(GCP)にエアーの代わりに炭酸ガスを用いた場合は、キャビティ内の炭酸ガスは溶融樹脂の流動先端部から溶融樹脂内に入り込み、溶融(熔融)樹脂の流動性を向上させるので、GCPにエアーを用いたよりも、更にタルクは沈みやすくなる。
発明者はこの炭酸ガスを用いたGCPの結果から、圧気の気体にプロパンを1MPa程度を使用した。プロパンは可燃性に気体なので、空気と混ざると爆発の危険性があるので、キャビティ内を予め1MPaの窒素ガスで与圧して、大気中に一旦排気、金型内を窒素ガスで置換した。次に圧力が2MPaのプロパンを用いて金型内を与圧(圧気)した。この中にエタノール2wt.%で発泡性を付与した先のタルク60wt.%含有のPPを充填、充填完了と同時に金型内のプロパンを大気中に排気した。得られた成形品の表面はスワール・マークはなく、タルクの浮きはない綺麗で、平滑な発泡成形品であった。このプロパンをもちいたGCPの実施例はプロパンのGCP効果(;タルクを沈める事。)の確認を目的に実施したモノで、量産には発火、爆発の危険性がある事を述べて於く。
【0382】
先のタルク入りPP以外に本発明で記載した紙パルプなどの環境分解性成分含有のPP樹脂の場合も、同様に射出成形加工の場合、エタノールを用い、エアー、窒素ガスを用いたGCPでは環境分解性成分が表面に浮かずに、幾らかは沈める事が出来る。炭酸ガスを用いたGCPではその作用・効果は特に大きくなる。
発明者はPA-62ガラス繊維50%の材料を、GCPはエアーで1.2MPaで、発泡剤はエタノールと、水道水とを成形加工したところ、エタノールの場合は表面のガラス繊維の浮きは、水道水を用いたより大きい事を確認した。この事は先のPPタルクの場合と一致しない。発泡予定の樹脂と液体との組み合わせは使用する樹脂によって変える必要がある。
【0383】
(実施形態39)
前記の実施形態38で、液体を発泡剤として用いると、溶融樹脂の流動性が高くなる事が確認された。ならば液体を発泡剤ではなく、流動性向上剤として用いる事を示したのが実施形態39である。一般成形に於いて、流動性の低い樹脂の場合は、樹脂の保圧の効果はゲート近傍では高く、流動の末端では低い。別言をすればゲート近傍ではPLにバリが張り、流動末端ではヒケが大きく出る。成形収縮率はゲート近傍では小さく、流動末端では大きくなるので、寸法のバラツキが大きい。この様にゲート近傍に掛かる圧力(保圧効果と)と流動末端の圧力(保圧効果)に違いが生じ、成形品内部の歪み(応力)が大きく結果成形品には大きな反り・変形が発生する。
ところが溶融樹脂(可塑化、計量)中にアルコールなどを数wt.%、vol.%を混ぜ込むだけで、溶融樹脂の流動性は大きくなり、キャビティ内への充填が容易(容易く)なるので、先に示したバリ、ヒケ、成形収縮率の違いによる寸法のバラツキ、反り・変形などは低減させる。
【0384】
液体を用いての流動性向上の具体的な手段を説明する。
図20などに例示されるシール金型を用いてエアーなど、或いは窒素ガス、炭酸ガスを用いて、大気圧以上に金型内を与圧する。GCPを掛けておく。圧気しておく。その中に例えばアルコールなどを用いて流動性を高めた、発泡性を付与した樹脂を充填して、スワール・マークの発生がない、発生為ないギリギリのタイミングで、GCPを排気する。続いてゲートから、高い保圧を掛けて、内部のアルコール成分を成形品の外に出す。例えば雑巾を難く絞るが如くである。そうすれば内部発泡層は消えて一般のソリッド成形と同じ様な成形品が作られる。これは発泡をさせない発泡成形法と発明者は称し、アルコールなどの液体は溶融樹脂の流動性を向上させる目的で用いた。
【0385】
発泡成形の場合、中空成形も圧空成形も同じであるが、基本的には樹脂保圧を用いない。或いは用いても0.5秒などの短時間掛ける場合もあるがこの場合は一般の成形と同様に十分に保圧を掛けた。
【0386】
成形品表面のヒケは欠点として考えられ、例えば自動車部品ではこのヒケをなくす為に100MPa(1,000バール1,000kg/cm2)の高圧の樹脂での保圧を用いる。この場合に当然ヒケは少なくはなるが、保圧の高い部分でバリ発生は著しい。その為に型締め力の大きな成形機を用いる。この場合設備投資の金額も高くなり、当然使用する電力は多く、ランニング・コストも今日叫ばれている省エネルギーとは逆行する。発明者は液体を用いる事、液体と他の性状(気体、又は/及び固体)の発泡剤とを併用し、溶融樹脂の流動性向上させる事で先に示したバリ、ヒケ、省エネルギーなど課題の解決に至った。
【0387】
自動部品では耐熱性が要求させ、結果樹脂の流動性は低くなる。この様な場合でも液体などを用いての流動性向上の効果を狙って本発明に、実施形態39などに述べた手段を用いれば成形の加工が容易になる。耐熱性を上げるには耐熱性の高い樹脂を用いる以外に、先に述べたタルク、マイカ、ガラス繊維、ガラスビーズなどの無機フィラーを用いる場合、これ等の無機フィラーが表面に現れない手段として液体を用い、GCPを付加させれば良い事は述べた。実際に保圧に100MPaを掛けたPPの成形品と、エタノールを流動向上剤として3wt.%用い、1MPaのエアーでGCPを行い、保圧を35MPaとした成形品とのヒケの程度を比較したところ、エタノールを用いた方がヒケが少なく、エタノールの流動向上の作用・効果が確認された。
【0388】
表面に化粧目的の塗装を予定している例えばタルク入りのPPの成形品では、表面にタルクが浮き出ていると、タルクに起因する塗膜の付着性の低下が懸念される。この場合は発泡剤にエタノールなどを用い、GCPを付加してタルクを成形品の中に沈め、タルクに起因する塗膜の付着性低下をなくす事が出来る。実際に発明者はタルク20wt.%入りのPPを用い、一般成形品と、エタノールを用い、GCPを付加させた発泡成形品、及び樹脂保圧を掛けて発泡セルをなくした発泡させていない発泡成形品とのJISに準拠したSST(塩水噴霧試験、ソルト・スプレー・テスト)を480時間行い、一般成形品では塗膜にブリスターが確認されたが、エタノール、GCPを用いた他の発泡成形品2点ではブリスターは確認されなかった。
【0389】
(実施形態40)
加熱筒に穴を開けて液体を入れて、加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を付与する場合、液体だけでなく、気体を併用しても良い。この場合に初めに液体を注入して、加熱筒内の溶融樹脂の粘度を下げてから気体を注入すると、溶融樹脂中への気体の分散性は高くなる。この場合には加熱筒の穴は数箇所開けて、其々の穴(注入口、注入する口)から液体に、必要に応じて気体も入れれば良い。液体もエタノールだけでなく、エタノールを注入する口、水を注入する口と区別しても良い。気体の場合も窒素ガス、炭酸ガスなどを注入する口と区別しても良い。この様に固体の発泡剤も単品ではなく数種類を、液体も数種類を、気体も数種類用いる事でより均一な、安価な発泡成形が得られる。
化学発泡剤(;この場合は樹脂と混ぜてホッパーから加熱筒へ入れて、)と液体(;この場合は加熱筒に穴を開けて樹脂に入れ込む。)とを併用すると、高価な化学発泡剤の使用量が減らせて、然も液体によって溶融樹脂の流動性は高まるので、より微細は発泡セルを持つ、発泡が均一な発泡成形品が得られる。
【0390】
ノズルの方からホッパーに向けて注入の口をA、B、C、Dと4箇所仮に設けたとすると、Aにはアルコールを入れて、溶融樹脂の粘度を下げ、続いてBから窒素ガスを入れると、溶融樹脂の粘度が下がっているので、窒素ガスは溶融樹脂中に分散しやすくなる。Cの口には水を、或いはアルコールを入れる。Dの口には気体の炭酸ガスを、或いは液体の炭酸ガスを入れるなどの組み合わせが出来る。この様に複数の注入の口を加熱筒に設け、液体の、気体の組み合わせ、気体も窒素ガス、炭酸ガスの併用、例えば窒素ガス、炭酸ガスに限定されずに、水素、ヘリウムなど、プロパン、ブタン、ペンタンなどを加熱筒内の溶融樹脂の入れても良い。これ等を混ぜ合わせた複合(混合した)ガスでも良い。
液体も単体でなくエタノール、IPAの50:50の混合物、アルコールと水との40:60混合物でも良い。これ等の液体、必要に応じて気体を入れるには
図52に示す容量制御すると溶融樹脂の発泡力は安定する。
【0391】
勿論の事ホッパーからADCA、重曹などの固体の発泡剤を入れても良い。例えばAの口から起泡核剤を懸濁させたアルコール、又は水溶液を入れても良い。タルク、硝子繊維などを用いた複合材ではマレイン酸変性PPの溶液を入れると、タルクなどの前記無機フィラーとPPとの結合力が増し、結果成形品の物理的・化学的な物性の向上が期待出来る。ノズルから、気体の、又は液化した炭酸ガス、アルコールなどを入れる口(本発明では「E」とする。)を設け、先に述べたAからDの何れかで発泡性を付与した発泡性樹脂の射出の段階で更に発泡性を付与し、発泡性を高めても良い。
【0392】
(実施形態41)
実施形態38、実施形態39では液体を用いれば溶融樹脂の流動性が向上する事を述べた。ABS、HIPSに代表されるスチレン系樹脂、PCなどは溶融樹脂の粘度が低いと、より低圧での中空成形の実施が出来る。中空部を形成する圧力(;成形品内部に入れ込む、例えば窒素ガスの圧力。)が低いと、成形品の応力が低くなるので、寸法精度はより高くなる。当然この場合には外観が綺麗で、平滑な成形品を得るには、GCPを用いる。これ等は前記実施形態38、39などで説明した。この場合必要に応じて樹脂保圧を用いても良い。
【0393】
圧空成形の場合も溶融樹脂の流動性を高めれば、当然樹脂と金型との間に入れた大なる圧力のガスによる加圧効果は増す。先の中空成形の場合、圧空成形の場合、GCPに起因するレイン・ドロップが消える。当然先の実施形態38、39、40などでも十分な樹脂保圧を用い、キャビティ内の液体などによって流動性を向上させた樹脂でもレイン・ドロップのない綺麗で、平滑な発泡させない発泡成形品になる。この場合には敢えて金型表面をシボ加工はしなく、光沢面でも良い。この場合にモールド・バックをしてから再び金型を少し締める、所謂圧縮を行っても良い。モールド・バックはせずに圧縮を行っても良い。
【0394】
(実施形態42)
先の実施形態38、39、40などに於いて液体の発泡剤を用いて溶融樹脂の流動性向上を記載した。本実施形態42では具体的に液体を用いた流動向上の方法を説明する。
初めにスパイラルフローの金型を準備する。この金型でスパイラルフローの成形品巾は10mm、20mm、30mmと広くても良い。本実施形態42を作成するに当たり発明者は巾15mmを用いた。次にスパイラルフローの成形品に板厚であるが、これは成形予定の成形品に板厚と略同じ、出来るだけ近いモノを準備する。初めに成形予定の樹脂を用いてL/t(流動長/板厚)を測定する。続いて成形条件は変えずに、加熱筒内にアルコールなどを入れてL/tが30%以上向上する時の液体の添加量(;加熱筒内への注入の量)を発明者は流動性向上剤として効果が発揮される液体の量とした。
【0395】
次に成形機(射出成形機)を用いて液体の添加量を見極める手段を説明する。例えばノズルを穴径φ1mm、φ、2mm、φ3mmで、長さが150mmのモノと交換をして、一定の圧力と時間(圧力と時間とは、成形予定の樹脂のよって任意に変更し、決定する。)とを設定して射出される樹脂の量(容量、重量)を測定する。次に加熱筒内に液体を入れて射出量が30%以上向上する時の液体の添加量(;加熱筒内への注入の量)を発明者は流動性向上剤として効果が発揮される液体の量とする。これはMI(メルトインデックス)値を測定する機器の原理を成形機を用いて確認する手段である。この方法は押出し成形の場合も実施可能である。
【0396】
成形機のノズルに圧力センサーを設けてその圧力が下がる事で液体の添加量を決める事が出来る。最近の射出成形機、押出し成形機は、射出する、押出す樹脂をモニターに表示出来るのでそれでも液体の流動性向上の効果(例えば充填の圧力雅30%下げられた事など、)は十分に確認は出来る。ノズルなどに圧力センサーを設けて射出時にその値を確認しても良い。成形機のノズルに別の流路を設けて其処を流れる溶融樹脂の圧力、流量を測定するアイデアも考えられる。
【0397】
(実施形態43)
(中空成形、圧空成形などでの実施。)
液体を流動性向上剤として用いるこの手段は、上述した様に液体を用いて溶融樹脂の流動性を高め、キャビティ内に充填し、樹脂保圧などを用いて、キャビティ内に充填された前記液体を含む溶融樹脂に十分な保圧を掛けて発泡させない発泡成形品を得る方法を説明した。樹脂保圧以外には、成形品の中に大なる圧力のガスを入れ、中空部を形成する中空成形、樹脂と金型との隙間に大なる圧力のガスを入れてガスの圧力で溶融樹脂を加圧する圧空成形、金型の温度を高めて成形を行うHEAT&COOL、高周波誘導加熱を用いて金型表面の温度を高めるBSMなどの場合にも、液体を用い溶融樹脂の流動性が向上すればそれ等の作用・効果は更に高まる。
【0398】
(実施形態44)
(圧空成形での実施。)
キャビティに充填された溶融樹脂の粘度差を利用して中空部を形成させるが、注入するガスの圧力が高い(;溶融粘度が高い溶融樹脂をキャビティ内に充填する。中空部を形成させるにはこの充填の圧力より高いガスを用いなければ中空部は形成されない。)と得られる中空成形品に反り・変形が大きくなる。液体を用いて溶融樹脂の流動性を高める事で、キャビティ内に充填された溶融樹脂の羽だ下げられるので、其(そ)れの伴いガスの圧力が下げられ、反り・変形の少ない中空成形品が得られる。
又溶融樹脂の粘度が下げられれば、金型に触れる表面と、内部とに冷却・固化の時間差が十分に設けられるので、より薄肉での中空成形の実施が可能である。実際に発明者は
図1、
図2の成形品で上記の作用・効果をABS、及びPC(アルコールは不可、この場合は水を使用。)、変性PPO(アルコールも、水も共の可。)で確認した。
【0399】
(実施形態45)
(圧空成形での実施。)
圧空成形の場合には溶融樹脂の粘度が下がれば当然ガスによる加圧(圧空)効果が高まるので、金型への転写性が更に高められる作用・効果を奏する。発明者は
図1、
図2の成形品で上記の作用・効果をABS樹脂、及びPC(この場合は水を使用した。)、変性PPO(この場合は水と、エタノールとを使用した。)で確認した。
【0400】
(実施形態46)
(HEAT&COOLでの実施。)
中空成形の場合粘度の高い溶融樹脂の場合、中空成形特有の外観に不具合であるヘジテーション・マークが発生、外観部品として使用に耐えない。発明者は金型温度を高める事と、溶融樹脂の流動性を高める事(溶融樹脂の温度を高めに設定をする。)とヘジテーション・マークが少なくなる事の経験から、HEAT&COOLの成形に於いて液体を用い、流動性を高めればヘジテーション・マークを少なくする事、又はなくし綺麗な外観の中空成形品が得られる事を確認した。
【0401】
(実施形態47)
(スーパーエンプラでの実施。)
シンジオタクチックのPS、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、芳香族ナイロン(商品名)、12ナイロンなどに代表されるエンプラ、スーパーエンプラ、硝子繊維、カーボン繊維、無機物のウスカーなどが含有された複合樹脂の成形加工では、溶融樹脂の温度を上げて、流動性を高めて成形加工を実施しているが、液体を用いれば流動性が高められるので、成形加工が楽(;成形条件の設定の巾を広げる事が出来る。)になる。当然この場合には樹脂保圧、中空成形、圧空成形、HEAT&COOLなどとの併用も可能である。この様なスーパーエンプラは硝子繊維などの無機フィラーを含んでいるので、GCPによるスキン層形成が強度Upからも好ましい。
【0402】
(実施形態48)
実施例、乃至実施形態に於いて当然な事エアー、窒素ガス、炭酸ガス、これ等を含む複合ガスでのGCPを行う事も出来る。
【0403】
(実施形態49)
水の場合は其(そ)れ程の問題がないがアルコールの場合温度が高いと酸化する危険性が懸念される場合ホッパー内に不活性なガス、例えば窒素ガスを入れてホッパー内の窒素ガス封止、或いは置換を行う。必要に応じてキャビティ内を窒素ガスなどで置換すると樹脂の変色・焼けなどの防止になる。特に実施形態45などの場合には有効である。
【0404】
以下本発明に掛かる内容をMEMOとして明細書に記載をして於く。
(項1)
23℃でそれに掛(か)かる圧力が1気圧(NTP)の雰囲気で、性状が気体又は/及び、液体又は/及び、固体の発泡剤を用いて発泡成形を行う樹脂の射出発泡成形加工に於いて、金型構造が2枚型の構造、又は3枚型以上の金型構造の何れかで、発泡成形品の発泡倍率を高める事を目的に、モールド・バック、又は/及びコア・バックを予定する、前記2枚型、3枚型以上の金型に於いて、先にキャビティと接するパーティング面に金型後退に追従して開けられる型開機構を設けた発泡成形品の発泡成形加工に用いる金型装置。
【0405】
(項2)
前記項1記載の発泡成形加工を行う金型装置のパーティング面の固定側、又は/及び可動側に、スプリング(バネ)、ゴム、ガス・スプリング、GCPのOリング、油圧シリンダー、空圧シリンダー、機械的な機構の何れかの型開機構を設置した金型装置。
【0406】
(項3)
項1、乃至項2記載の発泡成形品の加工の用いる金型装置は、エジェクター機構をスペーサーブロックで囲い込んでシールした金型装置、又はエジェクターピンをU字形状の加重式Oリング、L字形状の加重式Oリング、U字形状のOリングを用いてシールし、パーティング(PL)面は、キャビティを、固定側、又は及び可動側にOリングを設置した、GCP用の金型装置。
【0407】
(項4)
前記項1、乃至項3に記載の金型装置を用いた発泡倍率を高めた発泡成形品。
【0408】
(項5)
前記項3記載のシール金型を用い、GCP装置を用いて予め前記項3記載のシール金型内を加圧流体で加圧した状態で、発泡剤を用いて発泡性を付与させ、発泡性を持たせた発泡性樹脂を充填し、充填の途中、又は充填の完了後に、予め金型内を加圧した気体を排気し、排気途中、排気完了後に金型を後退させ、キャビティに充填した、発泡性樹脂を拡張して、高発泡倍率の発泡成形品製造に用いる金型装置。
【0409】
(項6)
前記項1、乃至項5に用いる金型装置は、先に金型のパーティング面の設置された型開機構によって開かれ、モールド・バック、コア・バックによって発泡倍率が高められ、冷却・固化が完了した後、引っ張りリング、引っ張りボルト(棒)、チェーンの何れかはストリッパー・プレートに繋がれ、金型の開きの力(成形機のダイプレートの後退によって)を用いて、ストリッパー・プレートを引っ張り、スプール・ランナーをはらう機構を持たせた発泡成形用の金型装置。
【0410】
(項7)
前記項1、乃至項6に於いて、3枚型の場合には、PL以外に、固定型の型板と、ストリッパー・プレートの間にも型開機構を組み込んだ金型装置。
【0411】
(項8)
成形品にアンダーカットがある発泡成形品、非発泡成形品でアンダーカットの処理が押し出す軸体(例えばエジェクターピンなども含まれる。)の傾斜ピンを用いるスライドの機構に於いて、傾斜コアのシールは荷重式Oリングを用いシールし、荷重式Oリングは入子によって上又は下から固定されている、傾斜コアが組み込まれ、シールされた発泡成形品を加工する金型装置。
【0412】
(項9)
前記項1乃至項9の何(いず)れかを用いて発泡成形品を加工する成形装置。
【0413】
(前記の各項の構成)
項1、乃至項6に係る発明は、金型のPL面を必ず、真っ先に開ける型開機構を持たせた金型装置で、PLにはバネ、ウレタンゴムなど、ガス・スプリングなどで強制的に開けられる部品を配置された金型装置。更に前記金型装置には、スプール・ランナーを払いのけるストリッパー・プレートには、引っ張りリング、引っ張りボルト、チェーンなどによって払われる機構部品が用いられている。
ストリッパー・プレートは前記引っ張りロングだけでなく、固定側の型板などに油圧シリンダー、空圧シリンダーを用いてストリッパー・プレートを動かし、スプール・ランナーを払いのける事も出来る。
項7では固定型とストリッパー・プレートの間にも型開機構を設けた。項8では傾斜コアでの荷重式Oリングを用いたシールを入子によって押さえる事の具体的な手段を示した。
【0414】
(前記の各項の作用)
項1、乃至項6に係る発明は、PLが必ず先、或いは強制的に開かれる金型の構造なので、高い発泡倍率の発泡成形品が得られる。
GCPを用いる事で、表面はスワール・マークのない綺麗で、平滑なスキン層、内部はモールド・バック、コア・バックによって成された、発泡倍率の高い発泡層を持つ発泡成形品(発泡構造体)で、GCPを適用すればGCPによって作られた表面のスキン層は強度が高いので、GCPを用いずに、表面にスワール・マークのある発泡成形品より衝撃強度などは高い。
項7では、例えばピンゲートなどの場合は先に固定型の型板とストリッパー・プレートを開け、ピンゲートをカットしてから、PLを開け発泡倍率を高める事が出来る。
項8係る発明は、GCPを用いた発泡成形と、樹脂と金型との隙間に加圧流体を作用させる圧空成形に用いる金型装置で、流体加圧の加圧効果は十分発揮される。
【0415】
(前記の各項の効果)
項1、乃至項6に係る発明は、金型のPLに簡単な型開機構が設けれ、ストリッパー・プレートには引っ張りリングなどでスプール・ランナーを払いのける機構を持った金型装置を用いれば高発泡倍率の発泡成形品が得られる。上記の型開機構はGCPのPL、ストリッパー・プレートのシールの邪魔にはならないので、この機構を込み(組み)こんでも金型費はそれ程は高くならない。
PLを開いた時、成形品は可動側(エジェクターピン機構が設けてある側)へ持って来る様に、抜き勾配などを調整して、必要に応じてアンダーカットなどを設けるが、ピンゲート構造の3枚以上金型などでピンゲートを切る力が大きく必要な場合、固定側(エジェクターピン機構が設けてない側)へ取られる(持って行かれる。)危険性がある。ピンゲートの場合は、先にストリッパー・プレートを開け、ピンゲートをカットしてから、PLを更に必要な距離を開け、モールド・バック、コア・バック、コア・バックをして、成形空間を拡大し、出発泡倍率の発泡成形品を得る。固定側型板とストリッパー・プレートを先に十分に開けピンゲートカットをカットするには、固定側型板とストリッパー・プレートの間にも、PLとバネ、ウレタンゴムなどを仕込む必要はある。
【0416】
項7に掛かる発明は、先に固定型の型板とストリッパー・プレートを開け、ピンゲートをカットするので、後のPLを開け発泡倍率を高める時にピンゲートがカットされないままでは成形品が固定側型板に取られる危険性を含んでいるが、先にピンゲートをカットしているのでPL開の工程が安定する。
【0417】
項8記載に係る発明は、傾斜コアを持つ金型装置に於いて、エジェクターピンと、傾斜コアとを荷重式Oリングでシールしたシール金型で、GCPに於いては予めシール金型内を加圧流体で満たすが、軸体其々を荷重式Oリング、その他PLなどもOリングを用いているので、エジェクター・ボックス構造のシール金型を用いた場合より加圧流体の使用量が少なく、生産性も高く、経済的である。成形空間に発泡性樹脂、又は非発泡性樹脂を充填した後に、樹脂と金型との隙間に加圧流体を入れ、加圧流体と、必要に応じて成形機からの樹脂の保圧とで、金型への転写性を高める手段の圧空成形に於いても、加圧流体の使用料を少なく出来るので、エジェクター・ボックス構造では実施が困難であった大型の成形品での圧空成形の実施は容易に可能である。
【0418】
後述する様のピンゲートを用いた3枚型では、先にストリッパー・プレートと、固定側金型との間を開きピンゲートをカットしてから、PLを開く必要がある場合は、PLに設けたバネなどの強度(バネの反発力、バネ力)よりも、ストリッパー・プレートと、固定側型板との間のバネなどの方が強度(バネ力)を高める必要がある。
【0419】
(項目A)
射出成形機の加熱筒に熱可塑性樹脂を主成分とする成形材料を投入する工程と、
スクリューが回転し、計量が開始され、可塑化が始まる工程と同時に、
又は予め設定した遅延時間の経過後に、加熱筒に設けられた1ヶ所以上の注入口から、加熱筒の熱、加熱筒内の溶融混練された樹脂の持っている熱によって気化する液体を注入する工程と、
気化した前記液体の蒸気を加熱溶融した溶融樹脂内に加圧溶解、又は微分散して、溶融樹脂の溶融粘度を下げる工程と、
予め設定された時間の経過によって、又は/及びスクリューの回転が停止する事の何れかによって、加熱筒内への液体の注入が停止する工程と、
前記液体が気化した蒸気を含む溶融樹脂中をキャビティの体積一杯に充填する工程と、
成形機スクリューから更に樹脂をキャビティ内に注ぎ込み、樹脂保圧を掛ける工程と、
注ぎ込まれた溶融樹脂内の前記液体が気化した蒸気を、前記キャビティ体積以上に注ぎ込まれた、フル・パック、オーバー・パックして、樹脂保圧の圧力によって、キャビティ内に充填された溶融樹脂の外に、絞り出す工程とによって射出成形加工がなされた熱可塑性樹脂成形品。
【0420】
(項目Aの構成)
熱可塑性樹脂を主成分とする成形材料を射出成形機の加熱筒内に入れて、スクリューを回転させ、計量が開始して、計量開始と同時に、又は予めタイマーを設定して、設定したタイマーの時間が経過時に、加熱筒に設けた1ヶ所以上の注入口から成形機加熱筒の中の可塑化溶融が開始された溶融樹脂の中に液体と、必要に応じて気体とを入れて、前記液体は加熱筒の熱、溶融された樹脂の熱によって気化し、気化した前記液体の蒸気、入れられた気体とをスクリューの回転の力によって加熱筒内の溶融樹脂中に加圧溶解させ、或いは微分散をさせる。液体が気化した蒸気を含む加熱筒内の溶融樹脂は粘度が下がり、流動性は著しく向上する。
この場合により分散をさせるには背圧を高めに設定し、ダルメージ、ダブルフライトなどの強混練性のスクリューを用いる。当然な事一般のスクリューでも実施は可能である。溶融樹脂のはな垂れを防ぐ為にシャット・オフ・ノズルを装着する。
【0421】
流動性が向上した溶融樹脂をキャビティ内に充填して、ソリッド成形の場合と同様に十分に樹脂保圧を掛けて液体の蒸気、気体を成形品の外に絞り出し、内部には殆ど発泡セル存在しない、ソリッド成形品と略同じ熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂成形品である。
【0422】
(項目Aの作用・効果)
液体の蒸気のよって流動性は向上した溶融樹脂の流動性が上がるので、保圧効果が高くなり、ゲート近傍、流動末端での保圧効果の差が縮まる。結果保圧を下げ(;型締め力の小さな成形機)ても、ヒケの少ない、バリも少ない、反り・変形の少ない、ソリッド成形品(;フル・パック、オーバー・パックさせた成形品。)に近い泡成形させない射出発泡成形品が得られる。
【0423】
(項目B)
前記「項目A」記載の成形品の加工方法に於いて、エジェクターピンを荷重式Oリング、又は/及びエジェクターの機構を、スペーサーブロックで囲いシールした、シール金型を用いて金型内を予め大気圧以上の気体を用いて加圧(与圧、圧気)したキャビティ内に、液体が気化した蒸気、又は/及び気体を含有させる事によって流動性が高められた溶融樹脂を充填し、樹脂保圧を掛けて、充填の途中、充填完了後に金型内を与圧した気体を排気して得られるGCP付加の熱可塑性樹脂成形品。
【0424】
(項目Bの構成)
前記項目Aの構成に対して、シール金型を用い、予め金型内を与圧した、所謂GCPの工程を付加(プラス)した。
【0425】
(項目Bの作用・効果)
GCPを付加する事で、得られる成形品(射出成形品、発泡させない射出発泡成形)の表目には、スワール・マーク、スルバー・ストリークのない綺麗で、平滑な成形品なので、スワール・マーク、スルバー・ストリークに起因する塗膜の付着性の低下はない。
【0426】
タルクなどを含む複合材の場合は添加剤のタルクは、GCPによって成形品の中に沈められるで、タルクに起因する塗膜の付着性の低下はない。
【0427】
(項目C)
前記「項目A」、又は/及び「項目B」に於いて、前記溶融樹脂の充填の途中、又は/及び「充填完了後に、キャビティ内に充填された前記溶融樹脂の中に大なる圧力のガスを入れ、保持し、排気する事によって得られる樹脂成形品。
【0428】
(項目Cの構成)
液体によって流動性を高められた溶融樹脂を用いて中空成形を行う。この場合に当然樹脂保圧を併用する。
【0429】
(項目Cの作用・効果)
前記記載の「項目C」は内部からも大なる圧力のガスによってもガス保圧させるので、樹脂保圧だけの場合よりも金型への転写性が更に高まる効果を奏する。
【0430】
(項目D)
前記「項目A」、又は/及び「項目B」、又は/及び「項目C」に於いて、前記溶融樹脂の充填の途中、又は/及び「充填完了後に、キャビティ内に充填された前記溶融樹脂と金型との隙間に大なる圧力のガスを入れ、保持し、排気する事によって得られる樹脂成形品。
【0431】
(項目Dの構成)
液体によって流動性を高められた溶融樹脂を用いて圧空成形を行う。この場合に当然樹脂保圧を併用する。
【0432】
(項目Dの作用・効果)
前記記載の「項目C」は外部からも大なる圧力のガスによってもガス保圧させるので、樹脂保圧だけの場合よりも金型への転写性が更に高まる効果を奏する。
【0433】
前記項目A、乃至項目Dの実施に於いて、スクリューはフライトが一般の形状のモノでも良いが、強混練性を所望する場合は、ダルメージを組み込んだ、或いはダブルフライトなどの強混練性のスクリューの使用を推奨する。
【0434】
(実施形態50)
ホモのPP(起泡核剤は不使用)を用いてのミューセル(気体)と、エタノール(液体)を用いた其々の発泡成形品を比較したところ、ミューセルの場合は圧力が1.2MPaのエアーを用いたGCPではスワール・マークはなくせない(5MPa程度の高圧では可。)事を確認した。液体を用いた場合と、ミューセルとを比較すると、ミューセルの方が発泡セルは微細であった。この結果から発明者はエタノールの量を増やしていけば、発泡セルは微細になっていく事を確認した。この場合にエタノールの注入量を増やしていけば、発泡セルは微細化され、略ミューセルの場合と同じになるが、発泡力が増すので、1MPa程度の圧力ではスワール・マークをなくす事は難しい。GCPの圧力を高めていけばスワール・マークをなくす事は出来る。
【0435】
(実施形態51)
材料費の削減の為に成形品の薄肉化が進んでいる。例えばOA機器ではPC/ABSの難燃グレード(FR-PC/ABS)が多用されているが、この材料は流動性が乏しく、射出成形加工では厄介である。其処で発明者この厄介なFR{FIRE Resistance(難燃性)の略}-PC/ABSの成形加工を容易にする手段として、水を可塑化計量中に成形機加熱筒に入れれば、FR-PC/ABSの流動性を高められ、成形加工を容易に出来る事を発見した。この事は流動性が低い、成形加工が困難な、厄介な材料の成形加工性を容易にする効果を奏する。
【0436】
(実施形態52)
(モールド・ブレンド)
PCのペレットとABSのペレットと、必要に応じて相容(溶)化剤(秘密事項で開示不可。)と、難燃剤{例えばPX200(商品名)}とを予め混ぜ合わせ射出成形機の加熱筒に入れ可塑化する。その時に加熱筒内の溶融樹脂の粘度を下げる目的で水(実験の結果からアルコールは超臨界状態になり、PCを分解するので使用には向かない。)を加え溶融混練する。この時のスクリューはダルメージ、ダブルフライトなど強混練性を持つ形状である事が望ましい。この様にしてFR-PC/ABSをモールド・ブレンドして一気の成形加工する事で、ペレット化の費用をなくす経済的効果を奏する。
「モールド・ブレンド」とは、射出成形機加熱筒内でポリマー溶融混練してブレンドをして所望する成形材料(ポリマーアロイ、ポリマーブレンドなど)を製造し、そのまま一気にキャビティに充填して射出成形品を得る事を言う。これは先に述べたICトレイ用の材料(PPOとPPと、必要に応じてHIPSとのポリマーブレンド、アセチレンブラックなどを用いての導電性に付与。)の製造もこのモールド・ブレンドで一気にICトレイの成形品まで加工は出来る。この時はアルコール、水などを流動性向上剤として用い、樹脂保圧を掛けて発泡させなくても良い。発泡させても良い。
前記PX200は固体であるが、難燃剤には液体のモノがあるので、これ等は加熱筒に、加熱筒内の溶融樹脂中に直接入れて難燃性を付与しても良い。
【0437】
PPOと、HIPSとを混ぜ合わせ、そしてモールド・ブレンドする。この時に必要に応じて難燃剤・顔料・染料などを加えて、アルコール、水、水とアルコールの混合物などを用いて射出成形をする。この時はペレット化と言う前の工程が省けるので、成形材料の製造原価を下げる効果を奏する。
【0438】
この場合には押出し機を用いたペレット化の工程での熱履歴が避けられ、然もモールド・ブレンドでは液体によって流動性が大きく向上するので、場合によっては溶融樹脂の温度が下げられ、難燃剤の分解を少なく出来る。別言すれば、高価な難燃剤の添加量を下げる事が出来る。
【0439】
押出しの工程、ペレットを製造する工程でもこの溶融温度を下げられる事は有用で、溶融樹脂の温度が下げられれば難燃剤の分解が避けられる。この様に液体を用いれば溶融樹脂の粘度が下がる事、溶融樹脂の温度を下げられる事などの技術的、経済的な作用・効果を奏する。
【0440】
(実施形態53)
【0441】
本発明で液体の発泡剤の注入の位置は、スクリューの圧縮ゾーンの始まり(符番236)が良いと述べた。例えば発泡剤がエタノール、プロパノールなどのアルコール類で、発泡予定の樹脂がPPなどオレフィン系樹脂の場合、アルコールはPPとは高い溶解性を示すので、符番236の位置でなくて、もっとスクリューの前の位置例えば符番238の位置でも構わない。この場合に符番237の部分にダルメージを設ければ238で入れられたアルコール類は、237で示すAのゾーンで容易に樹脂中に入り込み、一部は溶解し、一部は微分散をして溶融樹脂にこのAゾーンで発泡を付与する。
この様にBゾーンにダルメージを設けずスクリューの前にだけのAゾーンにダルメージを設ける事は、可塑化計量の速度がダルメージによって遅くはならない効果を奏する。必要に応じて符番240に逆流防止リングを設けても良い。
【0442】
このダルメージを設けるAゾーンの長さは鋭意研究の結果からスクリューの直径(D)に対して、ダルメージに長さ(L)の比(L/D)は発泡予定の樹脂、及び無機フィラーなどの添加剤の量によって変わるが、大まかには2乃至10程度、好ましくは3乃至5程度あれば良い。
【0443】
ノズルの部分に例えば(株)東レ製のミキシングノズル(符番241)を設けて、射出時に符番242にアルコールなどの液体、液化炭酸ガス、少量の気体の炭酸ガスとアルコールなどを溶融樹脂の量に対して制御{容量制御して。添加(注入)量を量り取り、}入れても射出途中の溶融樹脂には十分に発泡性を付与する事は出来る。
【0444】
(第54実施形態)
本第54実施形態は、
図54に示した附番244、245の横壁、付番246の底板から成る箱形状の成形品を製作する手段を説明する。初めに第54実施形態に用いる樹脂を説明する。本実施形態では使用可能な樹脂は熱可塑性樹脂ならば全て使用可能であるが、特にPE、PPに代表されるオレフィン系樹脂、HIPS、ABSなどのスチレン系樹脂、PCなどのポリ炭酸エステル、ポリハロゲン化ビニルなどのビニル系樹脂が選ばれる。勿論の事これ等の樹脂を用いたポリマーアロイ、ポリマーブレンドも含まれ、必要に応じて染料、顔料などを加えて着色をする事、難燃剤を加えての難燃化などを行う場合もある。その他必要に応じて(株)ラバーダイジェスト社 住所は東京都世田谷区松原5-45-7 発行の便覧 ゴム・プラスチック配合薬品 改訂第二版 1993年10月30日発行に記載されている添加剤を用いる。
【0445】
次に本実施形態54での樹脂の加工法を説明する。熱可塑性樹脂の加工は射出成形機を用いた射出成形法である。肉厚が3.5mm以上の厚肉の場合は、一般の成形(一般成形、ソリッド成形)法より発泡成形を用いる方が成形品表面のヒケを抑え、反り・変形の少ない成形品が得られる。発泡成形には、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属の無機系のアジ化合物、ADCA、HDCAなどの有機系のアゾ化物、DPTなどのニトロソ化合物、ミクロ(マイクロ)バルーン(中空気球)などが使用可能な発泡剤である。液体の水、液体のアルコール、前記発泡剤の炭酸水素塩などの水溶液を計量中の可塑化の段階で、成形機加熱筒に入れて気化、熱分解をさせて加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を持たせる手段(特許文献4などに記載されている方法など。)、ミューセル、アモテック、リッチ・フォーム、ソフィット、三光合成のS(三光?)G(合成?)フォームなどの気体を用いる発泡成形の手段での実施も可能である。液体の炭酸ガス、固体の炭酸ガス(ドライアイス)を加熱筒内に入れて気化、昇華させた炭酸ガスを発泡性ガスとしても良い。尚これ等固体の発泡剤、液体の発泡剤、気体の発泡剤は単独でも良い。或いはこれ等を組み合わせての実施、例えば固体の発泡剤の炭酸水素Naとアルコールの液体の発泡剤の組み合わせ、液体の発泡剤と気体の発泡剤、固体と気体の発泡剤との組み合わせなどが可能である。
図54で示す箱形状の成形品は、上述した発泡剤、発泡の手段を用いれば容易に得る事が出来る。この場合は後述するGCP法の適用(実施)がなされていないので発泡成形品表面はスワール・マークが発生している。
【0446】
上述した方法だけでは発泡成形品の外観にスワール・マークが発生する場合は特許文献1、乃至特許文献7に記載のGCP法を用いればスワール・マークない表面が綺麗で、平滑な、内部には発泡セルからなる発泡層を持った発泡成形品が得られる。
【0447】
(発泡倍率を高める手段;モールド・バック、コア・バック)
本実施形態54の発泡成形品で発泡倍率を高めるには、モールド・バック、コア・バックなどを実施する。モールド・バックの場合は、PLは平見切りで構わない。例えば初めの板厚を2mmとして、発泡性樹脂をキャビティ内に発泡性樹脂を充填してから、金型を0.5mm程度後退させれば、2.5mm÷2m=1.25(;25%の重量軽減=1.25倍発泡)となる。然し後退の距離を大きくして発泡倍率を2倍、3倍と高めるとPLの隙間のバリ発生の危険性があるので、モールド・バックの場合の発泡倍率は1.5倍乃至2.5倍程度が好ましい。高い発泡倍率を望む場合はPL(附番246)を縦見切りとする事でのコア・バックを行う方が良く、この場合発泡倍率を高めてもPLにはバリ発生の危険性はない。
然し
図55に示すPLの端面の形状(附番256で示す寸法。)が薄いと発泡せずソリッド成形となってしまうので、ヒケなどが生じて型再現性が低下する。この課題を解決するのは附番256の寸法を2mm以上、好ましくは3mm以上とすると内部に発泡層が形成されるので、型再現性は向上する。附番256は金型後退距離によってもそれ以上厚くする場合も、薄くする場合もある。
【0448】
(256で示す部分の型再現性を高める手段。)
コア・バック前に附番256で示す部分251で示すガス注入ピンを設けて高圧ガスを入れて中空部を作り金型への転写性を高める。続いて金型を後退(コア・バック)させれば良い。尚高圧ガスはコア・バックの前、途中、完了後に排気する。
【0449】
(中空部を形成させて発泡倍率を高める手段)
附番252の部分にガス注入ピン(附番251)を立てて中空部257を形成させてから、金型を後退させる事で回りの部分(附番247、付番256寸法で示す形状。)は内部中空部のガスの圧力で金型への転写性は高まる。その後に金型を後退させ、金型後退開始の前、金型後退開開始と同時に、金型後退の途中で、金型後退完了後に251中空ピンをから中空部内の高圧ガスを排気する。
図58は発泡性樹脂を用いた中空成形(インナーGCP)を示している。
【0450】
金型に設けた付番251ガス注入ピン以外には成形機のノズルから、スプール・ランナーからガス注入しても良い。この様に内部から高圧ガスで加圧する事で、金型後退をさせて発泡倍率を高めても成形品は金型からは離れず、型再現性は十分に得られる。
【0451】
(内部にリブなどを形成させる手段)
この場合に得られる発泡成形品の内部には発泡層と、中空部とが混在する。強度アップが必要な場合は
図54、
図55に示す様にピン形状(250のエジェクターピンを金型で凸、成形品で凹として於いても良い。)などを、後退させない形状(;
図55、
図55では250エジェクターピン)を設けても良い。それ以外には
図55、
図56に示した様に後退する金型の中に、別に後退をする金型の形状(;附番249、付番252後退の後で後退するエジェクターピン以外のモノを言う。)を設けて内部にリブなどの形状を設ける手段(発泡性樹脂を用いてのH
2M成形品とする。)を用いても良い。
図57はエジェクターピン250を金型252後退の後に時間差を持たせて後退させ内部にリブ255を形成させた。
【0452】
発泡成形では金型表目にシボ加工を施すとGCPで発生するレイン・ドロップが少なくなる、或いはなくなる。特にモールド・バック、コア・バックを行い場合にはシボ加工を施した方が良い。溶融樹脂の流れ(キャビティ内への充填)によって、GCPの気体をスムースに逃がす(;GCPの気体が逃げずに樹脂と金型の間に入り込んでしまうとレイン・ドロップ現象になる。)シボは独立ではなく、連続した(繋がった)シボパターンの方がGCPの排気には良い。
独立したシボの場合はレイン・ドロップは生じやすいが、この場合にはレイン・ドロップの効果(GCPを巻き込んだ事でのレイン・ドロップ其々は高圧になるので、)反対側の化粧面はより転写性は向上する。コノ様に非化粧面にはレイン・ドロップが生じても良い場合もある。
本発明では液体のアルコールなど、炭酸ガス、液化炭酸ガス、ドライアイスなどを用いるとアルコール蒸気によって、炭酸ガスによって溶融樹脂の流動性が高まる事を述べた。この際に金型表面にシボ加工がなされていると溶融樹脂と金型との隙間にはシボによって微細な空気層が出来る。この空気層は断熱層として作用し溶融樹脂の流動性は高くなる。シボ以外に流動性を高めるには熱伝導性の高いDLCなど、熱伝導性の低いWC、TiN、CrNなどのコーティングよりも、シボ加工の方が発泡性を持たせた、或いは非発泡性の溶融樹脂の流動性が高められる。勿論シボ加工と、これ等コーティングとを併用しても良い。この様にシボ加工などによって溶融樹脂の流動性は高められる事は、逆言すれば冷却・固化が遅くなる事なので、成形品の残留応力が下がり、反り・変形の少ない成形品が得られる。シボ加工は主に衣装面(;例えば固定側)に施すが流動性向上を求めるならば、非衣装(化粧)面(;例えば可動側)も施す方が良い。尚モールド・バック、コア・バックを行う場合は独立したシボパターンでも良い。
【0453】
図54で示した箱形状の成形品は、本実施形態54で示した樹脂の加工によって得られる箱形状の成形品は、例えば具体的には遊技機のパチンコ、スロットルマシーンの裏箱など、コンテナなどの生産に適用される。この場合に
図54の附番254、付番255、付番256からなる箱を一体で成形加工しても良いが、一体での成形品を成形の現場から他の場所、地域に運ぶ為には大なる物流費が掛かり経済的ではないので、付番245と、付番255と、付番256とを別々にして成形品(部品)を加工してから、組み立ての現場に運んでから、其処でネジ止め、熱融着、振動融着などをして箱形状に組み立てれば物流費の低減が出来ると言う経済的な効果を奏する。
本実施形態54では発泡成形を用いての内容を記載したがが、
図54に例示される箱は中空成形(:この場合にはガスを導く為にリブ構造とする事、又、及び金型にヒーターを埋め込めば、冷却速度の差が生じて、ヒーターによって温度が高い部分には中空部が形成される。)でも量産は可能である。附番224、245、246全てを同じ手段で加工する必要はない。其々の部品を発泡成形、中空成形、或いは一般成形品としても良い。本実施形態54は箱の製造の手段であって、上述した遊戯機の裏箱、コンテナなどだけには限定されない。
【0454】
(第55実施形態)
IPFジャパン2023では、気体を用いた射出発泡成形の展示があった、(株)芝浦機械は5MPa程度に圧縮したエアー(空気)を用いての射出発泡成形(発泡成形)の「リッチ・フォーム」を実演していた。
図59がその時の成形品で、初めに1.5mm程度の板厚のキャビティ内に前記エアーを用いて(成形機の加熱筒内に注入して、)発泡性を付与した発泡性樹脂を充填して、充填の完了後に金型を1.5mmから2.5mm程度に後退させて、発泡倍率を高めていた。
図59の成形品を観察すると附番260で示す成形品の中央部は金型後退に追従して発泡倍率は高めっているが、付番261で示すPL部は先に冷却効果が始めるので、金型を拡大(モール・ドバック、コア・バックなど)をさせてもこの部分は発泡せず結果附番261にはヒケが確認される。PL部分は金型の後退に追従していない。
【0455】
(PLのヒケを解決する手段。)
このPLのヒケ問題を解決させるには、付番262の破線で示すPL近くの金型にヒーターなど、温度調整(温調)の回路などを埋め込み、温度を高めれば冷却・固化が進まず溶融状態なので金型後退をさせても、付番261に様なヒケが生じない。この場合の金型温度(金型の表面温度)を発泡性樹脂の硝子転移点温度(Tg)以上にして、前記発泡性樹脂を充填させて、金型後退させた後に金型内に別に作られた冷却回路(図示せず。)を用いて冷却をする事で附番261に例示する様にPL部にはヒケの問題は解決される。
【0456】
PLのヒケを解決する手段を説明したが、金型キャビティの固定側、又は/及び可動側の表面もTg以上に高い温度で発泡性樹脂(;発泡剤は気体でも、液体でも、固体でも良い。又これ等を組み合わせても良い。)をキャビティに充填して、金型後退させれば金型表面からの冷却・固化によって形成されるスキン層は薄く出来る。
【0457】
GCPを用いた場合にスキン層の厚さは金型の表面温度(金型温度)と、樹脂の温度によって決まる。金型温度が高い場合は冷却・固化の速度画遅いので、スキン層は薄くなる。樹脂温度を高めると冷却・固化の速度が遅くなるのでスキン層は薄くなる。但しこの場合にレイン・ドロップが生じる。
発泡層にボイドがある場合は発泡剤の添加量が少ないと判断される。当然発泡剤の添加量を増やすと、発泡セルは微細化するが、スワール・マークはGCPの圧力を高めないとなくせない、消せない。尚スワール・マークは金型温度と樹脂の温度には影響はされないが、キャビティ内への充填の速度がファクターとなる。
【0458】
図59の成形品はGCPが未実施なので表面にはスワール・マークが発生している。発明者は以前に実施したPPを用いた気体を用いた発泡成形のミューセルの成形ではGCPの圧力(金型内の与圧)が1MPa程度のエアーではスワール・マークをなくす事は出来なかった。GCPの圧力を5MPa程度の高めるとスワール・マークはなくす事は出来るが、5MPaもの高圧のGCPによって発泡成形品の内部の発泡セルが潰れてしまい上手く発泡成形出来ない問題がある。GCPの圧力を高めないとスワール・マークがなくならない事、それによって発泡セルが潰れてしまう事はアモテックでも確認された。ミューセル、アモテック、ソフィット、リッチ・フォーム、SGフォームなどの代表される気体を用いた発泡成形ではGCPの圧力が1MPa程度ではスワール・マークのない表面が綺麗で、平滑な発泡成形を得るのが困難である。これは発泡予定の樹脂に対しての発泡性ガスの添加量が多過ぎるからである。
【0459】
発泡剤にアルコールなどの溶剤を用いる事は発泡性が付与された溶融樹脂の流動性を向上させる作用・効果があると同時に、溶融樹脂の冷却・固化の速度を遅くする作用・効果もある。即ち発泡成形に場合の溶融樹脂の要求される特性は流動性が高い事と、冷却固化の速度が遅い事で微細な、綺麗な、均一な発泡セルが形成される。故に液体を用いた場合は前記の流動性向上、冷却・固化の遅延の作用を同時に持たせる事が出来るので、発泡成形では非常に有効な手段である。発泡成形では流動性の高い樹脂の方が向いている。
【0460】
発明者は液体の発泡剤に樹脂に対いて影響を与えない、作業環境を悪くしない、毒性のないなどから水、アルコールなどを提案したが、液体の発泡剤に於いては前記水、アルコールなど以外に成形機加熱筒内で、加熱筒の温度、加熱溶融の段階の樹脂、加熱溶融が完了した樹脂の温度(熱エネルギー)によって気化されるモノ(物質)では限定させず、例えばC5のペンタン(沸点は36.07℃)、C6のヘキサン(沸点は69℃)、C8のオクタン、C9のノナン、C10のデカン、C11、C12などの直鎖のアルカン、アルキン、アルカジエン、又はそれ等の異性体(構造異性体、立体異性体、光学異性体、官能基異性体などを含む。)を用いる事も出来る。流動性を向上させるだけならば、もっと高沸点のモノ(;加熱筒内で気化しなくても良い。)でも構わないが、一般の成形品の中の残留を考えれば、残留によっての物性低下、その他問題を考慮すれば、低沸点(;沸点が35℃から200℃程度のモノが好ましい。)の液体、加熱筒内で気化出来る液体が好ましい。
【0461】
水、アルコールの場合は発泡成形に、又は非発泡成形(保圧などを用いた一般成形)に適用する場合には、一部例外の樹脂(;加水分解しやすいPET、PBTなど)を除き、樹脂の物性にはそれ程は、或いは全く影響を与えない。然しアルカンなどの上記有機溶剤の場合は樹脂の物性を著しく低下させるので使用に当たっては事前の物性の確認を行う。
中空気球の発泡剤、例えばアドバンセル、エキスパンセル(何れも商品名)も有機溶剤が使用されている。発泡スチロールではブタン、ペンタンなどを含漬させたビーズを水蒸気などで加圧して気化させ発泡させている。尚PE、PPなどのオレフィン系樹脂の場合は有機溶剤には比較的に強い(;溶解などしない。)ので発泡剤として、或いは流動性向上剤として使用出来る。アルカンなどの代表される炭化水素系の有機溶剤は、PE、PPなどのオレフィン系樹脂との親和性が高いので、水、アルコールよりも流動性向上の作用・効果が大きく、発泡倍率の高い発泡成形品が得られる。当然一般成形の場合ではより流動性が著しく向上するので、より薄肉化の成形品が得られる。樹脂保圧などの作用・効果もより高められる。
【0462】
これら有機溶剤は水、アルルコールなどと併用して使用出来る。コノ場合に水系のエマルジョンとする、或いはアルコール、有機溶剤の混合物としても良い。当然な事アルコールなどを数種類と、有機溶剤も数種類を混ぜ合わせ使用する場合もある。有機溶剤は単品でも、種類の違うモノを混ぜ合わせて使用する場合もある。又それぞれを加熱筒内に別々に入れてから、加熱筒内で混ぜ合わせる事もある。液体だけでなく例えば気体、又は/及び固体の発泡剤を併用しても良い。
【0463】
(液体の注入の開始の時期。)
液体の注入の手段、方法と時期(タイミング)などに付いて示す。液体の注入は特許文献4など、(S&T出版(株)の書籍などに記載されている。注入は計量が開始されると直ぐに、或いは一定の時間経過(液体注入の遅延時間を設けて、)の後に注入が開始される。スクリューの回転数が一定の場合は、注入の速度(;注入量)も一定で良いが、今(現在)の射出成形機、押出し成形機などは主にサーボモーターのよってスクリューの回転数を定めているので、可塑化、計量時に、可塑化、計量中にスクリューの回転数を変化(可変)させる事は容易である。スクリューの回転数を変化させ、可塑化の量が変化した場合は、その変化量に応じて、注入量を加減する場合もある。
液体は非圧縮性の物質なので、本発明は液体の注入量は可塑化される樹脂の容量に対して、注入の量を制御して注入される。所謂容量制御である。注入の圧力は加熱筒内の樹脂の圧力(背圧)よりも高くなければ注入出来ないので、必要に応じて可塑化、計量中の加熱筒内の溶融樹脂の圧力を測定して、その圧力を液体の注入の装置にフィードバックして注入の圧力と量を制御する場合もある。
【0464】
(液体注入の停止の時期。)
液体注入の停止は、モードは、Aモード;可塑化、計量の停止の前に行う場合と、Bモード;可塑化、計量の停止と同時に行う場合と、Cモード;可塑化、計量が停止してから一定の時間を遅延させてから停止する場合と、Dモード;可塑化、計量の工程には関係なしに液体を入れ続ける場合とがある。この事(モードの選定は、)は発泡成形品の状態を確認して決定する。
【0465】
シール金型(特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び本発明の
図19、
図20など)に示すシール金型(エジェクター・ボックス仕様、又は荷重式Oリング、凹形状のOリングなどを用いてエジェクターピンをシールしたシール構造。)を用い、GCP(;圧力が1MPa程度のエアーで金型内を与圧、)を付与して表面を綺麗で、平滑にする場合は、液体の注入を可塑化、計量の完了まで液体を注入(前記Bモード)し、加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を付与した処(ところ)、実際に成形加工を行った結果、ゲート近傍はGCPの作用・効果によって表面が綺麗で、平滑であるが、流動末端ではスワール・マークをなくす事が出来なかった。その理由としては可塑化、計量の終了の段階まで液体を注入すると、計量の最終の部分(;成形品では流動末端に充填される樹脂。)には液体が過剰に注入され、結果発泡力が高い発泡性樹脂になってしまうので、上述した様な圧力1MPa程度ではの流動末端のスワール・マークをなくす事が出来なかった。
【0466】
そこ(其処)で発明者は2/3程度計量した段階(可塑化が完了した段階)で、液体の注入を停止した処、流動末端もスワール・マークのない表面が綺麗で、平滑な発泡成形品が得られた。この結果から発明者は液体の注入は途中で停止する、或いは、例えば計量が2/3程度完了した時をスタートとして徐々に液体の注入量を減らして行く事が良いと考えた。
【0467】
液体の注入を計量の開始から完了まで実施、即ち計量途中の2/3での加熱筒内への液体の注入の停止でなく、計量完了までの3/3=100%とする。次にこの液体を用い、発泡性を付与させた発泡性樹脂をキャビティ内に充填する。次に又計量して、計量開始から計量の完了(3/3)まで液体を注入する。これを繰り返して行くとする。其の時に加熱筒内の溶融樹脂は全てがキャビティ内に充填されれば良いが、どうしても一部は、加熱筒内(スクリューのフライト内に入り込んだ部分など、)に残ってしまう。この樹脂は液体によって既に発泡性が付与されている。それに更に液体を注入して、発泡性を持たせると、この部分の液体(;液体が気化した発泡性ガス)の含有量が多くなり、GCPを用いてもスワール・マークのない発泡成形品は得られない。
【0468】
計量途中で液体の注入を停止する意外に、液体の注入の開始を計量の開始から、少し遅延をさせて液体を注入しても良い。加熱筒に複数の液体の注入口を設けて、其々の液体の注入口から、注入量を変えて注入すれば、加熱筒内の溶融樹脂に平均して液体を用い、発泡力を程一定にして発泡性を付与させられる。この方法(;注入の開始のタイミング、時期、停止のタイミング、時期など、)は液体に限らずに気体を用いた発泡成形の場合でも良い。この場合に液体は種類を変える場合もある。
【0469】
この事は発泡成形に限定されず、一般成形に於いて液体を流動性向上剤として使用する場合も同様である。今回の成形品では2/3程度としたが、成形機のスクリューの形状、L/D、成形品の形状、樹脂の種類などで停止の時期は変更される。1/2程度でも可能である。本実施例、第55実施形態では1,300トンの射出成形機を用い、大型(約800mm×約800mm、高さ180mm)の成形品で、成形材料はPPを主成分とし、タルクを20重量%。衝撃強度を上げる為にEPDMが添加されている。アルコール(IPA変性のエタノール)を1.5vol.%を加熱筒内に入れて、圧力1MPaのエアーを用いたGCPでは、発泡成形品(本成形品を「A成形品」とする。の表面は、スワール・マークはなく、然もタルク、EPDMの浮きも一切確認されない。
前記アルコールで発泡性を付与した発泡性樹脂をキャビティ内に充填の後に樹脂保圧25MPaを5秒間掛けて、発泡させずに一般成形品とした場合の成形品(本成形品を「B成形品」とする。)の表面は、スワール・マークはなく、然もタルク、EPDMの浮きも一切確認されない。
比較例としてアルコールを用いずに、GCPも未実施で単に前記樹脂をキャビティ内に充填して同じ様に樹脂保圧25MPaを5秒間掛けた成形品(本成形品を「C成形品」とする。)では表面には若干のタルクの浮き、EPDMの起因する光沢斑がA成形品、B成形品と比べると明らかに多い。
【0470】
前記A成形品、B成形品、C成形品の表面をプライマー(;主成分はマレイン酸変性のPPから成るエマルジョン系のプライマー)処理し、それぞれを2液のウレタン塗装してJIS規格に準拠してSST(塩水噴霧試験)を240時間行った結果C成形品は多くのブリスター(;塗膜の膨れ)が発生したが、A成形品、B成形品ではブリスターの発生は全くない。
【0471】
次にアルコール単品ではなく、アルコール:水=1:1の混合物を液体の発泡剤として使用した。水が入った分発泡力が高くなるのでエアーの圧力1MPaでは加熱筒内への注入量が0.8vol.%以上ではスワール・マークがなくせない。本実施例、第55実施形態では、加熱筒内への注入量を0.5vol.%とし、2/3計量が終了した段階で前記アルコール:水=1:1の混合物の注入を停止した発泡成形品(本成形品を「D成形品」とする。)と、樹脂保圧25MPaを5秒間掛けた一般成形品(本成形品を「E成形品」とする。)でも、前記アルコールだけの場合と同様にタルク、EPDMの浮きはなく表面は綺麗で、平滑であった。これ等のD成形品、及びE成形品も同様に塗装してからSSTを行ってもブリスターの発生はない。この事からタルクなどの、EPDMなどの添加物の入った樹脂では、液体を用い、又GCPを用いれば、一般成形では解決出来なかったこれ等添加剤などを樹脂の中に沈み込ませる作用・効果があり、表面に浮き出ないので塗装に最適な成形品が得られる。
【0472】
(注入のプロファイル。)
図60の(A)から(F)には可塑化、計量時に液体を注入するプロファイルを示している。263は計量開始のスタート位置を示している。264は計量の終了を示している。265は計量時にスクリューが後退する事を示した矢印、266は計量の開始から液体注入開始の遅延時間を示す。267は液体が注入開始がなされるスクリュー位置を示し、268は液体注入が停止する位置を示している。269は可塑化、計量の途中で液体注入が停止された後でも可塑化、計量が行われている事を示している。270は液体の注入量を示し縦軸、附番271は可塑化、計量に伴うスクリュー位置を示す横軸、272は液体の注入量が開始された示す線で、273は液体注入が行われている事を示す線、274は液体注入が停止された事を示す線である。
【0473】
図60(A)は液体注入の説明の為の図で、実際は
図60(B)の様に272は、実際は275の様になる。274は装置内、配管内に少し残圧が残っているので267で示す様に斜めなプロファイルになる。液体注入の配管途中に停止弁を設ければ274の様にも出来る。発泡の状態によっては266はゼロ(附番263と同時に、)とする、或いは266の時間を調整をする。
液体は非圧縮性の物質なので注入量(;時間当たりの注入量、例えばmL/秒、mL/分などでこれが本発明で言う「容量制御」である。)を決めれば良く、加熱筒内に溶融樹脂の圧力(;可塑化、計量の溶融樹脂の圧力、)に勝る注入圧力を設定する。
【0474】
図60(D)は液体の注入を277の様に加熱筒内の溶融樹脂中に徐々に注入するプロファイルもある。反対に附番272の様に一気に、短時間で注入する事もある。
図60(E)は液体の注入を途中で少なくさせる(符番303)事を示している。
図60(F)は液体の注入を途中で一旦中止させ、一定の時間経過後に再び注入する(符番304)事を示している。
図30の(A)乃至(F)は1台の液体の注入装置の場合を示している。液体注入装置を2台以上、複数台用いれば更に注入のプロファイルを複雑に出来て、然も注入する液体の種類を別々にする事が出来る。
【0475】
先に述べた様に269は加熱筒内への液体中止の後でも計量を行う事を示し、269に時間は発泡の状態、GCPの作用・効果、スワール・マークの状態、表面の平滑性などから定められる。当然ゼロの設定(;可塑化計量の停止と同時に液体の注入を停止する。)の場合もある。278の様に注入量を徐々に減らして行くプロファイルの設定もある。
図60の(A)乃至(F)の場合は
図52に示すプランジャーの様に容量制御する装置を用い、228内に例えば可塑化、計量中の加熱筒内の溶融樹脂の圧力と略同圧に気体を入れてから注入を行えば気体でも幾らか容量制御が出来る。
【0476】
図62は(株)CKD(株)、SMC(株)などから販売されている急速排気弁(クイック・エキゾースト・バルブ)をGCP用のシール金型のL
1、L
2、L
3などの圧気回路に設けて、金型内の圧気の排気の時間を出来るだけ短くさせる、排気速度を上げる。それによって発泡成形の場合は一気に圧気が開放されるので、内部発泡セルの形成が早くなる。流動性向上を目的としての場合は、金型内の圧力が一気に開放されるので、GCPを用いない一般成形の場合よりも、GCPを付加して、金型内を与圧して、溶融樹脂の充填の途中、充填完了後などで一気に排気した場合はショート・モールドなどの充填が、前記GCPを用いない場合よりも充填が進んだ。この事は本発明の液体のよって発泡性を付与した樹脂、液体によって流動性を向上させた樹脂以外に、発泡性でもない一般の樹脂の場合でも、本作用・効果は確認した。
【0477】
図62の298は急速排気弁で、金型内の圧気281の加圧がなくなる、即ちGCP装置の排気弁が開になると、91、283、290などで示される金型内の圧気は符番299から急速に、一気に排気される。符番300は市販の急速排気弁の写真、301は圧気の入口で281が入る。302は圧気が排気される口を示し、299と同じである。
【0478】
(ホット・ランナー)
液体によって発泡性を持たせた樹脂、流動性向上を目的に液体を溶融樹脂中に混ぜ合わせた樹脂を用いて成形加工を行う場合のホット・ランナーは、ホット・ランナーからの洟(はな)垂れ防止の目的でバルブゲート方式のものが好ましい。成形機のノズルの場合はオープンノズルでも構わないが、ノズルタッチを離すと洟垂れするので、シャット・オフ・ノズルを用いる方が良い。
【0479】
(第56実施形態)
(ボトルの製造の手段)
飲料水などを入れる容器(ボトル)に遮光性を求める為に成形品のプレフォームを発泡成形してから、ブローしてボトルを加工する手段に注目が集まっている。業界でプレフォームを発泡させるのに、窒素ガスを用いている事の報告があるが、気体でなく液体を用いてのプレフォームの発泡成形は可能である。ボトル製造に用いる樹脂はPE、PP、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS、AS、PC、PET、PEN(ポリエチレンナフタレート)などの熱可塑性樹脂ならば実施可能、発泡に用いる液体は水、アルコール、アルケンなどの炭化水素類などが選ばれる。但しPC、PET、PENなどのエステル系樹脂では、アルコールなどを液体の発泡剤として用いる場合、加熱筒内の温度と圧力とで液相から超臨界状態になってしまい樹脂を劣化させる危険性がある。これ等のエステル系樹脂の発泡には超臨界状態にならない水などが適している。液体を用いる容器の製造はプレフォームに限らず、ブロー成形での実施も可能である。
【0480】
(第57実施形態)
(液体注入口)
加熱筒内に液体を入れると、加熱筒の温度、溶融樹脂の温度によって一気に気化する。加熱筒内に入れる場合に一気に入れるのではなく
図63に示した様に細かな泡の状態で加熱筒内に入れた方が良い。特許文献4などで記されているが外筒と内芯(芯体)とから画定されるスリットではなく先端部に焼結金属{
図64(C)}を用いて、
図63で示す様に微細にして加熱筒内に入れた方が良い。
【0481】
図64(A)乃至
図64(D)は加熱筒に設ける注入口を示している.
図64(Aは)外筒で附番306は
図64(B)内芯と、
図64(C)の燒結部が収まる空間を示している。附番312は附番307が収まり、
図64(C)が圧力で飛び出さない様に308と、313とを設けている。
図64(D)は
図64(A)、
図64(B)、
図64(C)を組み込んだ組み立て(ASSY)図である。
図64を加熱筒に組み込み314から液体を入れる。液体311を通り
図64(C)の燒結部で微細化され315から加熱筒内に注入される。尚315部は成形機スクリューと干渉しない様に、スクリューの形状に合わせたR加工(図示せず。)をする。
図64(C)には回り止めの加工(図示せず。)が施してある。
図64(D)は加熱筒にはボルトを用いて固定する。隙間には気体、又は及び液体が漏れない様に耐熱のOリング(図示せず。)を使用ししている。
図64は液体の注入に用いるが、気体の注入でも良い。ミューセル、ソフィットなどの注入口では機器的に開閉する弁方式を用いているが、弁では一気に気体が加熱筒内に入るので微分散をさせるにはL/Dが28の、且つダルメージを用いた強混錬のスクリューを必要とするが、
図64の注入口を用いればL/Dが20程度のモノで、ダルメージなし、気体を入れて加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を付与する事が出来る。
【0482】
1,300トンの射出成形機の加熱筒に
図64の注入口を付帯した。重量が約2,100gr.で、板厚2.5mmのPPの成形品の金型を用い、圧力15MPaの窒素ガスを計量の開始から2秒遅延の後、5秒間注入して発泡性を付与させた樹脂を用いて発泡成形した。同じ金型を用いてミューセルの開閉の弁口構造と同じ機構の注入口で、同じ様に2秒間の遅延、圧力15MPaの窒素ガスを5秒間注入をして発泡成形を行った。得られた成形品を比較した結果
図64の場合は窒素ガスは十分分散して発泡性ガス(=加熱筒内に入れた窒素ガス。)の分散不良による膨れ、バーストはない。一方ミューセル仕様の場合は流動末端などに数箇所の膨れが発生、窒素ガスの分散性が低い事を確認した。
【0483】
上記比較の結果から
図64(C)の様な燒結材料を用いた方がミューセルの機構より簡単で、安価でガス分散の作用・効果は高い。本実験の結果から気体を用いた発泡成形の場合には
図64(A)乃至
図64(D)の様な注入口が良い。勿論の事
図64の注入口は先に述べた様に液体の場合の使用は出来る。尚気体の場合は圧力制御(この場合ゆっくりと加熱筒内に入れた方が良いので、流量調整弁を設けると良い。)でも良いが、
図52の気体の容量制御注入装置の方が好ましい。気体の注入制御は実施形態36に示した。
【0484】
(第58実施形態)
(他の成形法での流動性向上。)
加熱筒内に液体を入れて流動性を向上させる事は射出成形以外に、押出し成形の場合でも流動性を高める事が出来る。
射出成形に限らず、他の成形加工押出し成形、ブロー成形などに於いて加熱筒内に液体を入れる事で溶融樹脂の粘度が下がるので、例えば顔料・染料のマスター・バッチを用いた場合には、分散性が向上すると言う効果を奏する。
液体を用いれば前記染料・顔料以外に、他の添加剤、例えば難燃剤、難燃助剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光拡散剤、帯電防止剤(界面活性剤、ポリ・エーテル・エステル・アミド)、防腐剤、防カビ剤などの溶融樹脂内への分散性も高まる。液体によって流動性を高めれば、樹脂中への分散性が高まるので、これ等高額な添加剤の添加量を削減が出来ると言う事が十分に期待出来る。
液体を用いる事での発泡成形の手段が特許文献4乃至特許文献7に述べられている。液体を用いる事で溶融樹脂の流動性が高まるので、固体の化学発泡剤、例えば無機系の炭酸水素塩、クエン酸塩、有機系のアゾ化合物、ニトロソ化物を併用すれば、より発泡性ガスの分散性が高まり微細な発泡セル持った発泡成形品が得られる。
【0485】
液体を用いる事(;加熱筒内に液体を入れる手段、)で流動性が向上すれば、充填の抵抗が下がるので低圧で充填が可能、別言すれば射出成形では型締め力が下げられ、大きな成形品がより小さな射出成形機を用いて加工が出来る。溶融樹脂の流動性が上がれば当然樹脂保圧が下げられる。金型への点差性も向上する。流動性を上げた樹脂を用いる事で中空成形では成形品内部に入れるガスの圧力が下げられるので、反り・変形の少ない寸法精度の高い中空成形品が得られる。
中空部形成を目的に内部に入れた高圧ガスは、高圧ガスと接している部分(樹脂の面)が今だ冷却・固化が完了していない段階で排気すると、内部中空部の一部、又は全部に発泡層が形成され、冷却・固化が完了してから排気すると中空部のままになる。
【0486】
圧空成形に於いても粘度を下がった溶融樹脂を用いれば、ガスによる圧縮の効果がより高まり、金型への転写性は向上する。
当然の事射出発泡成形の於いても流動性を上げられれば、発泡成形が容易、成形条件のラチチュード(成形条件の設定の巾)を広める事が出来る。
樹脂の内部が今だ冷却・固化が完了していない段階で金型と樹脂の隙間に入れたガスを排気すると、内部中空部の一部、又は全部に発泡層が形成され、冷却・固化が完了してから排気すると発泡層、中空層のないソリッドのままになる。
【0487】
液体によって流動性が高められれば、加熱筒の付帯されているヒーターの設定の温度が下げられるので、省エネルギーに繋がる。液体を溶融樹脂の温度が下げられるので、例えばABSのペレットと、PCのペレットとを混ぜ合わせて射出成形機の加熱党内で溶融混錬(モールド・ブレンド)して、)PC/ABSのポリマーアロイの製造が可能になる。難燃剤のPX200(商品名)を同様にモールド・ブレンドすれば難燃性を持ったPC/ABSの製造が出来る。変性PPO(E)とPPのモールド・ブレンドも行った。ABS/PPでもモールド・ブレンドは可能であった。当然の事これ等の手段では必要に応じてはGCPを実施する場合もある。
【0488】
(第59実施形態)
(追記。)
PCT/JP/2020/15536には、発泡剤マスター・バッチの製法に担持と言う手段を用いる事が述べられている。前記PCT/JP/2020/15536に記載のマレイン酸変性のPP樹脂同様、PPに相溶する樹脂として、アクリル酸変性PP樹脂(酸価、極性大小有)も上市されている。PEに相溶する変性樹脂としてマレイン酸変性PE樹脂ワニスがある。これ等を用いてPP、PE用の発泡剤マスター・バッチの製造が出来る。
【0489】
上述の実施例、実施形態は説明のために例示したモノで、本発明としてそれに限定されるモノではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び図面の記載から当事者が認識する事が出来る本発明の技術的思想に反しない限り、変更、及び付(附、符)加が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0490】
PC系樹脂の発泡成形品の、特に外観に発生するスワール・マークのない外観が綺麗で、平滑な、発泡倍率が高い発泡成形品の製造に適用される。PC系樹脂の発泡成形には水が最適な発泡剤である。
【0491】
モールド・バック、コア・バックを実施する金型のPLを優先的に開けて発泡倍率を高める金型構造を提供する。モールド・バック、コア・バックを用いてより生産性を向上する手段として、発泡成形を用いた場合に、横型の、又は縦型の射出成形機を用いてのスタック・モールドの提案をする。ICトレイなどのスタック・モールドを実施する場合、縦型成形機では
図8、符番37の様に洟垂れ防止をする。通常の横型の成形機でスタック・モールド行う場合は、其々のPLはバルブ・ゲート方式のホット・ランナーで繋ぎ、金型を開いた時にも洟垂れしない様にする。エジェクター(押出し、押出す軸体)は金型、金型の外部に引っ張りリングなどを設け金型を開く力で行うのが一般的である。外部に油圧シリンダーなどを配置して金型を開けてからエジェクターしても良い。
成形機加熱筒内に液体、又は/及び気体を入れれば、加熱筒内の溶融樹脂は発泡性を持ち、且つ流動性を高められる。キャビティ内に充填をして、キャビティ内の溶融樹脂の圧力を高めない、下げるなどの発泡しやすい環境を作れば発泡成形に、反対にキャビティ内の溶融樹脂の圧力を上げて、成形品の中から液体、又は及び気体を外に搾り出せば、一般成形(中空成形、圧空成形を含む。)になる。本発明での発泡成形と、一般成形との差異(;キャビティ何に充填された溶融樹脂の圧力を高めない事、下げる事が発泡成形で、圧力を高め、樹脂の密度を上げる事が一般成形である。)を正確に此処に述べて於く。
【0492】
本発明で使用する金型の構造図、GCP装置の構造図、実施した結果を示す図(写真を含む。)、塗装などの結果を記した図(表)などを示した。
【符号の説明】
【0493】
1.可動側の取付(取付け、取り付け)板で、エジェクター・ロットの穴は図示せず。
2.エジェクター・プレートで、エジェクターピン、スペーサーブロックは図示せず。
3.可動側の型板を示し、多くの金型は入子(入れ子)構造とするが、入子などは図示せず。
4.キャビティ(成形空間、溶融樹脂が充填させる空間)を示す。
5.符番4に設けた引っ張りリングを止めるボルトなどで、引っ張りリングは自由に可働(動ける様に)出来る様に、引っ張りリングは固定せず、締め付けずにクリアランス(余裕、遊び)を持たせてある。
6.引っ張りリングで可動の型板(符番3)と、ストリッパー・プレート(符番8)とは繋げられ、金型の後退(開き完了)の完了の時点で、ストリッパー・プレートは開けられ、スプール・ランナーをはらう。符番8にはランナーロックピンは図示していないが、ランナーロックピンは必要に応じて設ける。
7.符番8に設けた引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
8.ストリッパー・プレートでスプール・ランナー(図示せず。)が掘(ほ)り込まれている。
9.固定側の取り付け板で、スプール・ブッシュなどは図示せず。
10.モールド・バック、コア・バックさせる場合にPLが先に開く様にPLに填(は)め込まれたバネである。このバネによってモールド・バック、コア・バック(金型後退)させた場合、必ず先に、或いは確実にPLは開き、キャビティは拡張され、中に充填された発泡性樹脂は、発泡力によって膨らみ、結果発泡倍率の高い発泡成形品が得られる。
11.
図6は符番3と、符番8とを符番8によって開ける事が出来る金型の構造を示したが、
図7は引っ張りリング(符番13、符番14)を別々に設けた金型の構造で、符番11は固定側の型板の設けた引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
12.可動側の型板の設けた引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
13.可動側型板と固定側型板とを繋ぐ引っ張りリングで、可動側の金型が後退し、引っ張りリング(符番13)によって符番15は引っ張られ、続いて符番14に引っ張られ符番8は開き、スプール・ランナーをはらう
14.符番8と符番15との間の引っ張りリングである。
15.固定側の型板を示す。
16.ホッパー。
17.成形機に加熱筒で、液体の発泡剤、気体を発泡剤として使用する場合は、此(この)場所(例えば圧縮ゾーンの始まり)に穴を開け注入する。好ましくはこの穴の後方(ホッパー側)にはスクリューに溶融樹脂は巻き付いて、発泡性ガスをホッパー側に逃がす事を防ぐ。
18.成形機のノズル。
19.分枝させたノズルで符番24のキャビティに樹脂をPLから射出(パーティング射出)する。
20.分枝させたノズルで符番25のキャビティに樹脂をPLから射出(パーティング射出)する。
21.成形機の射出装置。
22.符番24へPLから射出している(パーティング射出)事を示している。
23.符番25へPLから射出している(パーティング射出)事を示している。
24.キャビティ。
25.キャビティ。
26.モールド・バック、コア・バックさせ、符番24を拡張させる時、PLを先に開く目的でPLに組み込まれた機構で、縦の型締め(符番36)の場合は、ウレタンより力の強いガス・スプリング、油圧シリンダーの方が良い。
27.モールド・バック、コア・バックさせ、符番25を拡張させる時、PLを先に開く目的でPLに組み込まれた機構で、縦の型締め(符番36)の場合は、ウレタンより力の強いガス・スプリング、油圧シリンダーの方が良い。
28.符番32の引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
29.符番32の引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
30.符番33の引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
31.符番33の引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
32.引っ張りリングを示す。
33.引っ張りリングを示す。
34.下側(横型の場合の固定型に相当する。)の金型の取付板を示す。但し符番36の金型開閉の機構が下側の場合もあり、その場合はこの取り付け板の方が可動する事になる。
35.上側(横型の場合の固定型に相当する。)の金型の取付板を示す。
36.金型を開閉する機構が上側にあり。符番35に付けられた金型を持ち上げる事を示す矢印で、
図8はスタック・モールド(符番24と符番25との背面でのセット取り)を示している。符番36は下側としても構わない。
37.分枝したノズルを示している。符番19、符番20の先端は発泡成形での洟垂(ハナタ)れを防止する為に内部には、バネで、油圧で、空圧で、機械的な機構で開閉するニードルなどの弁の機能が組み込まれている。ホット・ランナーを用いる場合は洟垂れ防止にバルブ・ゲート式の物が良い。ノズルはオープンノズルでも良いが、バネ式、油圧式、空圧式、機械式などのノズルを併用した方が洟垂れしなくて良い。
38.発泡成形が可能なスタック・モールドの金型装置を示す模式図で、エジェクターピンを例えば荷重式Oリング、U字形状、凹字形状のOリングなどを用いてシールし、その他スプール・ブッシュ、型板と取り付け板の間、PL、型板の合わせ面などをOリングでシールしたGCP実施可能なシール金型、エジェクターピンのシールをエジェクター・ボックス構造でシールしたGCP実施可能なシール金型装置を示している。尚符番38の金型装置は、シールをせずに、GCPを行わずに発泡成形しても良い。
39.
図9は符番32などの引っ張りリングの代わりを果たす引っ張りボルトを示している。符番39は引っ張りボルトの竿(本体)である。
40.引っ張りボルトの鍔部である。
41.引っ張りボルトの鍔部である。符番40、又は符番41をボルトとして、符番39に組み込む。
42.金型を後退し過ぎた時に符番40、符番41の鍔が破損するのを防ぐ目的で符番39に組み込まれたバネを示す。
43.固定側の金型。
44.可動側の金型
45.キャビティ{附(付)番4}へ充填された発泡性樹脂。
46.可動側の金型を後退(モールド・バック)させた事で、キャビティ(符番4)が拡大する事で、キャビティ内に充填された発泡性樹脂(符番45)は拡張(拡大)しているがPLの隙間が発生している事を示す。
47.モールド・バックさせた事で、キャビティ(符番4)内に充填された発泡性樹脂(符番45)が拡張され発泡倍率が高くなった事を示す発泡成形品。
48.キャビティ(符番4)へ充填された発泡性樹脂。キャビティ(符番4)は初めは符番50のコア・バックの金型部分が入り込んでいる事を示している。
49.固定の金型と、可動の金型(符番50に示すコア・バックの金型部分)は縦見切りとしているが、其々の金型が接する事で金型同士(符番43と符番50とが、)が擦れる。擦れる事を防止する為に符番49の隙間を持たせ、樹脂が流れ込む空間を作り、金属同士が擦れない様にしている。
50.コア・バックさせる前にキャビティへ入り込んだ可動側の金型を示す。
51.コア・バックさせた事で、符番44は後退する。符番44に組み込まれた符番50も同じ様に後退して、符番48を拡張させた。
52.コア・バックさせた事で、キャビティ(符番4)内に充填された発泡性樹脂(符番48)が拡張され発泡倍率が高くなった事を示す発泡成形品。
53.発泡倍率を高める目的でコア・バックさせた事でPLは大きな隙間が生じる事を示している。但しコア・バックの場合、金型は縦見切りして、可動側の金型(符番44)の後退によって符番50が符番51まで後退する。符番49に示す樹脂の部分が存在するので、PLにバリが張る事は少ない。
図11と
図12はキャビティの拡張モールド・バックを、
図13と
図14はキャビティの拡張コア・バックを示した。形状が3次元の物で開口部などがある場合は、其々の場所(形状)でモールド・バック、コア・バックとする事もある。
54.コア・バックによって拡張させたキャビティを示す。
55.製品の断面を示し、樹脂が充填されるキャビティである。
56.製品の断面を示し、樹脂が充填されるキャビティである。
57.アンダーカット形状を示し、スライド・コアで処理する。
58.スライド・コアのスライド方向である。
59.アンダーカット形状を示し、傾斜ピンで処理する。
60.傾斜ピンのスライドの方向を示している。
61.金型のPLである。
62.スプール・ブッシュ。
63.固定側の取付板。
64.Oリング。
65.Oリング。
66.金型内の圧気流れを示す矢印。
67.エジェクターピン
68.スライド・コア。
69.Oリング。
70.可動側の型板。
72.Oリング。
73.Oリング。
74.エジェクター機構を囲い込みシールする「ロ」字形状のスペーサーブロック。
75.エジェクター・ボックス。
76.エジェクター・プレート(上)。
77.エジェクター・プレート(下)。尚符番76と符番177からなる物をエジェクター・プレート(A)と言う。
78.アンギュラピンが入り込む穴。
79.Oリング。
80.可動側の取付板。
81.Oリング。
82.エジェクター・プレートを押すエジェクター・ロットの穴。
87.受板。
88.圧気(ガス)回路のL
3。
89.キャビティを形成するは固定側の入子。
90.圧気(ガス)回路のL
2。
91.金型内の圧気流れを示す矢印。
92.可動側の入子。
93.加重式Oリングでエジェクターピンをシールしたシール金型の圧気(ガス)回路のL
1。
94.金型内の圧気流れを示す矢印。
95.エジェクター・ボックス構造でシールしたシール金型の圧気(ガス)回路のL
1。
96.金型内L
1の圧気流れを示す矢印。
97.ガイドピン。
98.L
2の圧気(ガス)回路。PLに設けたL
2の圧気(ガス)回路(溝)で断面の形状。
99.金型内の圧気と排気との流れを示す矢印。
100. 圧気の入りと出との回路、又初めからキャビティ内にある空気、圧気などを樹脂の充填(キャビティ内に充填される事)の力で、キャビティ外へガスを押出すベント。巾は5mmから20mm程度、長さは5mmから10mm程度で、深さは0.03mmから0.1mm(気体は流れるが、溶融樹脂は流さない事と、バリが張らない程度の形状で、溶融樹脂の粘度が高くバリさえ張らなければ0.1mm以上でも構わない。)で、前記形状は例えば50mmピッチに櫛形に設ける。
101.シールプレート。
102.Oリング。
103.加重式Oリング。
104.固定側の型板。
105.スペーサーブロック。
106.加重式Oリング。
107.傾斜コア。
108.シャフト。
109.エジェクターピンの押し(突き)出し方向を示した矢印。
110.シャフトの押し上げ方向を示す矢印。
111.傾斜コアが移動する方向を示す矢印。
112.符番111の傾斜コアが移動する事で成形品が反対方向に移動、アンダーカット部が抜ける事を示した矢印。
113.符番106を固定する目的の入子。
114.スライド・ユニット。
115.スライド・ユニットを止めているボルト。
116.シールプレート。
117.エジェクター・プレート(加圧流体プレート、ガスプレート)(上)。
118.エジェクター・プレート(加圧流体プレート、ガスプレート)(下)。尚符番117と符番118からなる物をエジェクター・プレート(B)と言う。
119.符番76、符番77からなるエジェクター・プレートの設けられたエジェクター・ロット穴で、前の符番117と符番118からなるエジェクター・プレート(B)を押す。
120.加圧流体注入ピン。
121.加圧流体の回路。
122.中空部。
123.ボス。
124.エジェクター・プレート(B)は樹脂の充填の前では前進、加圧流体の排気時には後退する事を示した矢印。
125.加圧流体加圧ピン。
126.加圧流体加圧ピンの外筒。
127.流体加圧ピンの外筒126と、流体加圧ピン125との隙間からのガス漏れを防止する荷重式Oリング。
128.シールプレート。
129.エジェクター・プレート(加圧流体プレート、ガスプレート)(上)。
130.エジェクター・プレート(加圧流体プレート、ガスプレート)(下)。尚符番129と符番130からなる物をエジェクター・プレート(C)と言う。
131.エジェクター・プレート(C)は樹脂の充填の前では前進、流体の加圧時には後退する事を示した矢印{流体加圧時には前進する。前進は射出成形機のエジェクター・ロットを前進さて行う。後退はエジェクター・ロットを後退させるだけでは不十分で、ガススプリング、バネ、ウレタンスプリング(図示せず。)を設け、強制的にエジェクター・プレート(C)を後退させる。}
132.加圧流体の流路。
133.バック・アップのプレートで、加圧ピン(
図32)を支えている。このプレ-トに加圧流体の回路132の加工してある。
134.加圧流体注入ピンのシール(Oリング)。
135.流体加圧される面。
136.市販のエジェクターピンを追加工、先端部を尖らせた尖った先端部は、樹脂の温度によって容易に温度が上がりスキン祖は薄くなるので、注入する流体の圧力が下げられる。
137.加圧流体が通る回路の為のDカットを施した。
138.エジェクターピンの鍔(ツバ)でDカット139が施してある。図示していないがU溝加工され符番137へ通じている。
139.鍔部のDカット。
140.内芯;市販のエジェクターピンの追加工。
141.先端部5mm程度はDカット137を行わず符番142との隙間(0.02mm程度)から加圧流体が噴出する。
142.市販のエジェクター・スリーブ・ピンで、加重式Oリングなどをはめ込む場合は段付き物(段付エジェクターピン、段付エジェクター・スリーブ・ピン)を推奨する。
143.加圧流体噴出の場所。
144.芯体(
図30)と外筒(
図31)との隙間を加圧流体が通る。
145.高圧の加圧流体(ガス)の入口。
146.シールの為のゴムワッシャーでOリングでも可。
147.圧空成形で加圧流体(ガス)が噴出し、樹脂と金型との隙間に入り込んで行く。
148.GCPの圧気(ガス)の入口を示す矢印。一般には1MPa程度の圧縮したエアーを使用する。樹脂の焼け防止の為の窒素ガスでも、流動性を向上させる炭酸ガスでも構わない。
149.GCP装置の中の金型内を圧気する流体(ガス)の流れを示す矢印。
150.シール金型内への圧気する加圧流体の流れを示す矢印。
151.金型内を圧気する圧気弁。
152.金型内の圧気を同じ回路を用いて戻して排気する事を意味する矢印。
153.金型内を圧気した加圧流体の排気を示す矢印。
154.金型内の圧気を、排気をする排気弁。
155.大気中に排気された圧気流体。
156.圧気の加圧下流体(ガス)を蓄えるタンクで、
図20に示す構造の金型を使用した場合、キャビティ内に溶融樹脂が充填される力で金型の外に押し出され、押し出された圧気を一旦蓄える。
157.中空成形、圧空成形の加圧流体の入口を示す矢印。一般には大気圧以上に圧縮した窒素ガスを使用する。樹脂の種類と成形品の形状によってはエアーでも、炭酸ガスでも構わない。
158.
図35内の流体(気体)の流れを示す矢印。
159.中空成形、圧空成形の加圧流体の流れを示す矢印。
160.中空成形、圧空成形の加圧流体の回路を用いて戻して排気する事を意味する矢印。
161.中空成形、圧空成形の加圧流体注入弁。
162.中空成形、圧空成形の加圧流体の排気を示す矢印。
163.中空成形、圧空成形の加圧流体の排気弁。
164.大気中に排気された加圧流体。
165.レギュレーター。
166.中空成形、圧空成形で符番165で圧力調整された流体(気体)を蓄えるタンクで、樹脂に出来るだけ早く加圧流体を作用させる目的で符番161の直近の設置されている。
167.
図29の146と同じ目的のシールで、
図29は鍔の上部に設置しているが、符番167は鍔の下部に設けてある。上でも下でもシールさえ出来れば構わない。146、167の両方でも良い。
168.金型のエジェクター・プレートに繋がったロット棒。
169.符番4から符番172、符番173、符番170を通り符番171への樹脂の流れ(移動)示した矢印。
170.符番171と繋がるゲート。
171.樹脂が流れ込むダミー形状。
172.ダミーの形状と繋がる形状(ダミー形状へのゲート)。
173.符番168後退のよって現れた空間。
174.符番168が前後(前進、後退)する事を示した矢印。
175.乗せゲート。
176.樹脂を流すランナー。
177.自動ゲートカットを目的で金型内に設けられたロット棒で、樹脂の充填など成形機のPLCからの信号で動作する。
178.符番177が前後(前進、後退)する事を示した矢印。
179.成形品(符番4)から符番176が切り離された事を示す模式図。
180.ダミー形状181、182,183と繋がる形状
181.ダミー形状内に溶融樹脂が充填された部分を示し、ショート・モールドである事を意味する。
182.ダミー形状内に溶融樹脂が未充填である事を示す。
183.ダミー形状内に溶融樹脂が完全に、一杯に充填された事を示す。
184.PLの設けた穴で、圧気のL
2が此処から噴出し、キャビティ内を圧気する。排気もこの穴を用いて行う。
185.ホッパー。
186.ホッパー。
187.ホッパー185内へ不活性ガス(例えば窒素ガス)を送り込み、熱可塑性樹脂、環境分解性成分の変色・焼けが少なく出来る事を示した。
188.ホッパー186内へ不活性ガス(例えば窒素ガス)を送り込み、熱可塑性樹脂、環境分解性成分の変色・焼けが少なく出来る事を示した。
189.フィードスクリュー198の回転によって、材料が送られる事を示した矢印。
190.フィードスクリュー197の回転によって、材料が送られる事を示した矢印。
191.加熱筒192の上部に設けた前記フィードスクリュー197、198から押し出された其々の材料を符番192内へ入れる回路で内部は仕切られ、符番185内の材料と、符番186内の材料とは別々に送り込まれる。仕切りはなくこの191内で混合しても良い。
192.押出し機の加熱筒。
193.押出し機の加熱筒内のスクリュー。
194.加熱筒192内で発生するガスを抜くベント口。この部分から不活性ガスを入れても良い。
195.押出し機の金型装置(ダイ)。
196.溶融混錬された加熱筒191内の樹脂が押し出される方向を示した矢印。
197.フィードスクリュー。
198.フィードスクリュー。
199.符番192の加熱筒内へ気体、又は/及び液体を入れ込んで、溶融樹脂の粘度を下げて、混練性を高める事が出来る様にしてある。
200.バック・アップ・リング
201.荷重式Oリング。
202.厚さを調整するスペーサー。
203.エジェクターピン、又は傾斜コアピン。
204.金型、或いは金型の入子。
205.金型、或いは金型の入子。
206.成形品に刻まれたQRコードで、リサイクル実施に必要な情報・内容の多くを、全てを含ませる様にする。
207.ホッパー
208.スクリューへ供給される成形材料(例えばペレット)の入口で、
図50の場合はスクリューの真上になっている。
図51では偏心させている。
209.射出成形機、押出し機の加熱筒(バレル)を示す。
210.スクリュー。
211.スクリュー210の回転方向を示す矢印。
212.スクリュー210へ成形材料が供給される口で、従来はスクリュー210の真上にしている。
213. スクリュー210へ成形材料が供給される口を偏心させた事を示す。偏心させると成形材料の食い込み(スクリュー210への供給が安定する。)
214.成形材料の供給口がスクリュー210から偏心させている事を示す模式図である。
215.ホッパー207に投入された成形材料は208から209加熱筒内へ送り込まれるがこの時に204で示す様に偏心させいると、成形材料の食い込みは良く、可塑化が安定する。符番215はスクリュー210と加熱筒209とに隙間を持たせ成形材料のスクリューへの食い込みが容易に出来る事を示している。215の隙間(加熱筒とスクリューとの隙間)はペレットの直径、或いはペレットの長さより少し(10%から50%程度、好ましくは10%から20%程度である。)長ければ良い。発明者は215の巾をペレットの平均の長さの20%長くしてその作用・効果を確認した。215の最終の形は成形材料がスクリューに確実に巻き込まれる要に最後はスクリューに反った形状に近づけた。
216.215の巾を調整する事を目的に、入子構造とした。
217.216が入子でする事を示す入子線である。
218.気体、又は液体を吸い込み、又は押出すピストン。
219.218のピストンが後退した事を示している。
220.シリンダー。
221.218のピストンと、220のモーターを繋ぐロット棒。
222.218のピストンを前進、後退させる為のモーターで、サーボモーター、ステッピングモーターなどがその代表例である。
223.218のピストンが前進する事で空間228内の気体、又は液体が押出され、流れる事を示した矢印。=矢印は気体、又は液体の流れの方向を示している。
224. 218のピストンが後退する事で空間228内に気体、又は液体が吸引される事を示した矢印。
225.気体、又は液体の供給口(入口)227から、218のピストンが後退した時に符番228内に吸引される事を示した矢印。=矢印は気体、又は液体の流れの方向を示している。
226.228内にチャージされた気体、又は液体が218ピストンの前進によって223から226と成形機(射出成形機、押出し成形機など)の加熱筒内、又は金型キャビティ内に充填された溶融樹脂の中(中空成形)、又は溶融樹脂と金型と隙間(圧空成形)に注入される事を示す矢印。=矢印は気体、又は液体の流れの方向を示している。
227.気体、又は液体の供給口(入口)。
228.気体、又は液体の容量を計り取る220と218とで画定される空間。;この空間の容量(体積)は218のピストンの後退する距離によって定まり、218の後退の距離は222のモーターによって定められる.
229.218の設けたシールの為のピストンリング。
230.逆止弁。
231.逆止弁。
232.配管。
233.配管。
234.ピストン218、219が前後の動く事を示した矢印。
235.射出時の溶融樹脂の逆流をさせない防止リング。
236.スクリューの圧縮ゾーン始まりを示す。
237.ダルメージを入れる位置を示す。
238.水、アルコールなどの液体の、又は窒素ガス、炭酸ガス(液化炭酸ガスでも可。)などの気体の発泡剤を入れる位置を示している。
239.必要に応じて逆流防止のリングを入れる位置を示している。気体を発泡剤として用いる場合はこの位置に逆流防止のリングなどの構造を必要とする。液体の場合はこの位置では樹脂の一部は溶融して、スクリュー243に巻き付いているので、逆流防止リングを用いなくても良い。用いても良い。
240.逆流防止のリングを設ける位置を示している。
241.ミキシングノズル。
242.ミキシングノズルに液体に、必要に応じて気体などの発泡剤も入れる事を示している。液化炭酸ガスを入れても良い。
243.スクリュー。
244.箱形状の立壁(立て板)を示す。
245.箱形状の立壁(立て板)を示す。
246.箱形状の底板を示す。
247.キャビティ(成形空間)。
248.固定側の金型。
249.可動側の金型で、前進・後退が可能な様になっている。
図55の附番249は前進させてある。
250.エジェクターピンを示し、
図55では前進させている。
251.中空を行う為の、インナーGCPの為に成形品内部に高圧のガスを入れるガス注入ピンを示す。
252.可動側の金型で、前進・後退が可能な様になっている。
図56の附番252は後退させてある。
253.金型を後退させ、内部に発泡層が形成された事を示す。但し
図56では250は後退させていない事を図示している。
図57では250は後退している。
254.冷却・固化が先に進み表面には非発泡のスキン層が形成されている事を示している。尚GCPを用いた場合は綺麗で、平滑なスキン層になる。
255.250によって冷却・固化されるので発泡せずスキン層である事を示している。尚GCPを用いた場合は綺麗で、平滑なスキン層になる。
256.コア・バック金型の於いて周囲の板厚を示す寸法である。発泡成形の場合は1.5mm、2mm以上、GCPを実施する場合は2mmから3mm以上が好ましい。
257.ガスピン251によって形成された中空部を示す。
258.エジェクターピン後退によって内に形成された成形品内部のリブを示す。
図57などではエジェクターピンで例示したが、この機能は別の形状でも構わない。エジェクターピンの前進・後退は射出成形機のエジェクターピン機構を用いて行うのが良い。/別には金型に油圧シリンダーなどを設置しても良い。
259.金型のPLを示した。
図55乃至
図58ではコア・バックの為にPLは縦見切りとしている。モールド・バックの場合は図示していない。モールド・バックの場合にPLは一般の平見切りで十分である。尚この場合でもエジェクターピン250の後退、付番251を用いてのガス注入の実施も出来る。
260.リッチ・フォーム成形品の表面を示す符番。
261.リッチ・フォーム成形品のPLを示す符番。
262.ヒーターを埋め込み部分を示した符番。
263.計量開始のスタート位置。
264.計量の終了。
265.計量時にスクリューが後退する事を示した矢印。
266.計量の開始から液体注入開始までの遅延時間。
267.液体注入開始されるスクリュー位置。
268.液体注入が停止するスクリュー位置。
269.可塑化、計量の途中で液体注入が停止された後でも可塑化、計量が行われている事を示している。
270.液体の注入量を示す縦軸、注入量を示す。
271.可塑化、計量に伴うスクリュー位置を示す横軸、時間軸を示す。
272.液体の注入量が開始された事示す。
273.液体注入が行われている事を示す。
274.液体注入が停止された事を示す。
275.液体の注入のプロファイル。
276.液体の注入のプロファイル。
277.徐々に注入する際のプロファイル。
278.液体の注入のプロファイル。
279.GCP用のシール金型の一部を示した図。
280.金型内を圧気する弁で、開閉だけの2方向弁とした。3方向弁では排気も出来るので構わない。
281.金型内入れられる圧気(;例えばコンプレッサーエアーなどで圧縮された気体。)。
282.金型内に設けた圧気回路。
283.初めに金型内を圧気する気体の流れ方向を示す矢印。
284.逆止弁。
285.気体を止める為のボールチェック弁。
286.油圧、空圧のシリンダー。
287.285を押し上げ「開」するロット棒。
288.アスピレーター。
289.288を通じて排気される圧気。
290.圧気され、同じ回路から排気される圧気を示す矢印。
291.288の中を通り排気される圧気で、この排気によって負圧が生じる。
292.291によって生じた負圧によって吸引される圧気。
293.288の吸引の回路で、附番297と同じ。
294.アスピレーター(吸引装置)。
295.附番291で示される排気される圧気。
296.288から排気される圧気。
297.296によって生じる吸引の口で、金型内を負圧に出来る。
298.急速排気弁。
299.急速排気弁から一気に排気される金型内の圧気を示している。
300.市販の急速排気弁の写真。
301.圧気の入口。
302.圧気が排気される口(排気口)。
303.液体の注入を途中で少なくさせる(符番303)事を示している。
304.液体の注入を途中で一旦中止(停止)させ、一定の時間経過後に再び注入する事を示している。
305.焼結金属によって気体が細かくされている事を示す写真。液体の場合は焼結金属内で気化するので同じ様になる。
306.
図64(B)の芯体を収める部分。
307.
図64(C)の焼結金属部品を収める部分。
308.先端部を段付にする事で
図64(C)が気体、又は/及び液体の圧力で飛び出さない様にしている。
309.外筒。
310.内芯
311.気体、又は/及び液体の通路。
312.気体、又は/及び液体を細かくして加熱筒内に入れる例えば焼結金属で作られた部品である。細かく出来れば焼結金属に限定しない。注入の圧力によって外れない工夫がなされていれば、例えばガストース(商品名)の様な構造でも構わない。
313.
図64(C)は焼結金属を旋盤加工など、放電加工などで凸形状のして圧力によって飛び出さない様にした。
314.
図64(A)乃至
図64(D)から成る注入口に気体、又は/及び液体を入れる事を示している。
315.気体、又は/及び液体が
図64(C)の部品によって細かくされ、此処から噴出する事を示している。
【図面の簡単な説明】
【0494】
【
図1】比較例、実施例に用いた成形品の模式図(キャビ側の図)である。本成形品の金型は、文献PCT/JP2016/86380中の
図2、
図3に示すGCP用にシールした金型構造とした。
【
図2】比較例、実施例に用いた成形品の模式図(コア側の図)である。
【
図3】PC樹脂{SDポリカ(商品名)301-15(グレード)に全硬度18ppmの市水を用いた発泡成形品で、市水が発泡剤と作用している事は2mm、乃至5mm程度の粗い発泡セルが確認される。実施例7のモールド・バック前の発泡成形品の図(写真)である。発泡セルが粗いのは起泡核剤を用いていないからである。
図3はGCPを実施していないので、表面にはスワール・マークが確認される。
【
図4】
図3の成形品をGCP排気後直ぐに、可動側の金型を1mm後退させて、板厚2mmからGCP排気後直ぐに1mmモールド・バックさせ発泡倍率を高めている。モールド・バックによって樹脂の、成形品の圧力が下がり結果発泡セルは10mm、場所によっては20mmに達するまで大きくなっている。これだけ大きな発泡セルを持つ成形品にも関らず、
図15に示すGCP装置を使用して金型内を1MPaまで圧気して、与圧した中に水を用いて発泡性を付与した前記PC成形品の表面にスワール・マークは全くなく、綺麗で、平滑である。
【
図5】実施例10の発泡成形品の写真である。301-15のペレットを90部、SI8000Lのペレット{光拡散剤(気泡核剤)入り}を10部混ぜ合わせ、SI8000L中の成分を起泡核剤(気泡核剤)に活用した結果で、
図3、
図4に比べると発泡セルは微細化され、1mm以下の発泡セルが成形品の内部に均一に分散されている事は目視確認した。発泡セルの直径は1mm程度、成形品全体に存在し、GCPの作用・効果によって成形品の表面にスワール・マークは全くなく、綺麗で、平滑である。
【
図6】モールド・バック、コア・バックさせる時に先にPLが開かなければならないので、PLが先に開く機構を金型に組み込んだ事を示す模式図。
図6、
図7、
図8中の「PL」は固定側と可動側の金型面が合わさった部分のパーティングの略号である。
【
図7】モールド・バック、コア・バックさせる時に先にPLが開かなければならないので、PLが先に開く機構を金型に組み込んだ事を示す模式図。
【
図8】金型の開閉が縦方向で、射出ユニット(射出装置)を横に配置し、PL射出をして、スタック・モールドを行う事を示した模式図。
【
図11】モールド・バック(PLは平見切り。)のプロセスを示した模式図である。金型を閉めた状態で、キャビティ(符番45)へ発泡性樹脂が充填された状態を示し、可動側(符番44)の金型は後退はさせていない。
【
図12】
図11から、符番44を後退させ、符番45のキャビティを拡張させ、発泡倍率を高めた事を示す模式図である。PLはモールド・バックさせた。符番44はキャビティが拡張し、発泡倍率が高まった状態を示している。符番45はPLに隙間(符番46)が発生した事を示し、符番45を大きくするとバリ発生が懸念されるので、それ程は大きく後退は出来ない。
【
図13】コア・バック(PLは縦見切り。)のプロセスを示した模式図である。金型を閉めた状態で、キャビティ(符番48)へ発泡性樹脂が充填された状態を示し、可動側(符番44)の金型は
図13では後退はさせていない。符番50は前進している。
【
図14】可動側の金型を後退させ、キャビティの拡張をさせた事を示す模式図で、符番53のPLに隙間は大きく開いても金型(金型のPL)は縦見切り(符番49の樹脂部と、符番50の金型)としているのでバリ発生の問題はない。PLの開き(開く)量(後退をさせる距離)は大きくても符番49の部分を持たせているのでバリ発生の問題は低減される。高い発泡倍率の発泡成形品を得る目的で、後退の距離を大きくしてしまうと、発泡剤を用いただけの発泡力では、符番54の拡張の速度よりも、キャビティ(符番54)に充填された発泡性樹脂の拡大(拡張)の速度が遅いと、金型から離れてしまい、転写性が低下する。特に高発泡倍率の発泡成形品を求める場合この金型の転写性低下の問題を解決するには成形品の内部に、成形機のノズルから、又は/及びスプール・ランナーから、又は/及び成形品へ直接に加圧流体を入れ、内部を一旦中空として、その中空の高圧の流体(気体)の圧力で金型への転写性を維持しながら、符番54を拡張させる。拡張の完了前に、拡張の完了後、拡張の完了後遅延時間を取ってから、成形品内部へ注入した加圧流体の圧力を下げれば良い。この方法では数倍、十倍を超える高い発泡倍率を持つ発泡成形品が得られる。
【
図15】金型内を予め圧気して、与圧をする、発泡性樹脂を充填後に圧気を排気する機能を持たせたGCP装置で、本GCP装置の制御(圧気と排気の弁の開閉)は成形機に組み込まれているシーケンサー(PLC)にプログラムされている。
【
図16】実施例10の発泡成形品にリペレ#1100{(株)トウペの商品名)}を塗装して、塗膜の付着性などを示した図(表)。
【
図17】スライド・コアによって処理可能なアンダーカット(符番57)を示した模式図である。このシールはGCP以外に、国際出願番号PCT/JP2015/069216号公報、国際出願番号PCT/JP2016/086380号公報、国際出願番号PCT/JP2020/15536号公報(この3件を「先に示した国際出願番号公報」と言う。)に記載の圧空成形を実施する金型でも使用される。
【
図18】傾斜コア(傾斜コアスライド、傾斜スライド、傾斜ピン)によって処理可能なアンダーカット(符番59)を示した模式図である。このシールはGCP以外に、先に示した国際出願番号公報に記載の圧空成形を実施する金型でも使用される。
【
図19】発泡成形に用いるGCPに用いるシール金型でエジェクター機構をスペーサーブロックで囲い込んでシールした金型構造図(エジェクター・ボックスのシール金型構造)である。
【
図20】発泡成形に用いるGCPに用いるシール金型でエジェクターピン其々を加重式Oリング、凹形状のOリングなどでシールした金型構造図である。
図19と、
図20とはGCP以外に金型と樹脂とに隙間に高圧{大気圧(1atm、1気圧、760mmHg)以上の大なる圧力}の流体{ガス(気体)、又は液体}を用い加圧流体の力で樹脂を加圧する圧空成形にも使用出来る。圧空成形の場合
図19のエジェクター・ボックス構造の金型では多量の加圧流体(この場合は液体では困難)を用いるので経済的には有利ではない。
図20のエジェクターピンをシールする型構造に場合は使用する加圧流体の量が少なくて済むので経済的である。
【
図21】GCPに於いて予めキャビティ55、56へ与圧する場合、金型のPL(符番61)に圧気の回路を設け圧気する。金型内の圧気は、符番55、符番56へ溶融樹脂が充填された時に充填の力(圧力)で、金型内を与圧した回路を通じて移動させる。そして排気される事を示した金型の構造図である。
【
図22】キャビティ55、56へ圧気する際に圧気の流体(気体)は通るが、樹脂は隙間(符番100)が薄いのでここで止められる事を示した模式図である。キャビティ55、56への圧気(L
2)の回路(符番92、符番98、符番100)も示した。
【
図23】GCPと圧空成形に於いて傾斜コアを加重式Oリングでシールする手段を示した。符番108と、符番106とは軸心を一致させる必要があるので、入子113を用いて斜めに設置する事を示した模式図である。符番106を収める溝は符番113に加工しても、符番87に加工しても良い。
図23では符番103、106を符番87に設置しているが設置の位置は限定されず、符番101でも良い。金型を組み上げる際に符番70、符番108の内側(シール面)を傷つけない様に70、108が段付きの物{例えば段付きエジェクターピンなどを使用して、符番103、106の内面と段付きのエジェクターピン、段付きのシャフトの特に段の部分にクライトックス(商品名)などを塗って回しながらゆっくりと入れ込む。}を使用する。このシールの手段はGCP以外に、先に示した国際出願番号公報に記載の圧空成形を実施する金型でも使用される。 符番106は符番113の入子で,符番106の上から固定されているが、入子113を用いての符番106の固定は、下からの固定でも構わない。
【
図24】傾斜ピンが複数本ある場合、複数本の傾斜ピンを加重式Oリングでシールする構造(シールプレートの数を増やして、)を示した模式図である。このシールの手段は、GCP以外に、先に示した国際出願番号PCT/JP2015/069216号公報、国際出願番号PCT/JP2016/086380号公報、国際出願番号PCT/JP2020/15536号公報などに記載の圧空成形を実施する金型でも使用される。
図23で説明した様に、符番106を、符番113を用いての固定は上からだけには限定されず、下からの固定でも良い。必要に応じて上からと、下からとを混在させても良い。シール性を高めるには1本の押し出す軸体に複数の符番106を用いても良い。更にシール性を高めたいなら、上と下とにWで加重式Oリングを用いても良い。
【
図25】発泡性樹脂、非発泡性樹脂を用いての中空成形に適する金型構造を示した模式図である。
【
図26】圧空成形の金型構造を示しした模式図である。
【
図27】中空成形に用いる加圧流体注入ピンの内芯を示した図である。
【
図28】中空成形に用いる加圧流体注入ピンの外筒を示した図である。
【
図30】圧空成形に用いる加圧流体注入ピンの内芯を示した図である。
【
図31】圧空成形に用いる加圧流体注入ピンの外筒を示した図である。
【
図34】GCP装置(
図15参照。)を示す模式図で、圧力計、その他接続のカプラ、金型へ圧気をする(接続をする)、ホースなどは図示せず。
【
図35】中空成形、圧空成形を行う装置を示す模式図で、圧力計、安全弁、逆止弁、その他接続のカプラ、金型へ加圧流体を導くホースなどは図示せず。
【
図36】中空成形で、成形品内部に中空部が形成された後、117,118からなるプレートを後退させ、122内に加圧流体を一気に放出し、122内の圧力を外部と同じにする機構を示した模式図で、符番55,56内へ溶融樹脂が充填される時には、成形機のエジェクター・ロットは前進し、結果符番120は前進端に位置している。
【
図37】シャッター付きのダミー形状への構造を示した模式図(シャッター閉の場合)。
【
図38】シャッター付きのダミー形状への構造を示した模式図(シャッター開の場合)。
【
図39】自動ゲートカットの機構を示した模式図(カット前)。
【
図40】自動ゲートカットの機構を示した模式図(カット後)。
【
図41】ゲートカットされた成形品4とランナー176を示した模式図。
【
図42】キャビティ内に充填された溶融樹脂の圧力を下げる目的で設置したダミー形状(ショート・モールドの場合で主には発泡成形で実施する。)。
【
図43】キャビティ内に充填された溶融樹脂の圧力を下げる目的で設置したダミー形状(フル・パックの場合で主には中空成形、圧空成形で実施する。)。
【
図44】成形品にリサイクルに必要な情報を書き込んだQRコード(符番206)を金型に刻印して、その金型を用いて成形加工した射出成形品で、QRコードをバーコードリーダーで読み込めばリサイクル実施に必要な情報(成形品に重量、成形品の生産に用いた樹脂のメーカー名、商品名、グレード、樹脂の種類、添加剤の種類と量、塗装が行われていれば、塗料に関するリサイクルに必要な情報など)を確実に読み取る;事が出来る。
図44はQRコードを刻印した射出成用金型で成形した環境分解性成分が20wt.%含み、熱可塑性樹脂のPPを主成分とした射出成形品。このQRコードを読み取りPCなどへ送り込み、データベースと照合する事で容易にリサイクルが出来る。環境分解性成分の含有量が判りので、燃焼させて熱エネルギーとしての回収、樹脂のリサイクル材製造の原料として使用は可能かの判断などはQRコードを読み取る事で容易に、簡単に、短時間で出来る。206は金型のQRコードが転写された射出成形に示された、リサイクルを行う為に必要な情報を入れ込んだ成形品のQRコード。
【
図45】重量フィーダーを設置した、押出し機の模式図である。符番185、符番198などからなる装置。重量フィーダーは符番198のフィードスクリューの回転数のよって、加熱筒192内へ送り組む量が制御出来る。
図45は符番192へ入れる前に其々の材料の量を計量し、符番192内へ送り込む仕様である。其々を192内へ送り込み、混合は符番193の回転・混合の力による。
【
図46】重量フィーダーを設置した押出し機の模式図で、
図45との違いは溶融混錬した192内の溶融樹脂に混合予定のモノ(材料)を入れる事が出来る装置の模式図である。前記
図45の同様に符番198にフィードスクリューの回転に取って投入量がコントロールされる。溶融樹脂へ投入するモノは本発明で説明する環境分解性物質の粉体、ペレットなど以外にセラミックの粉体(パウダー)、金属粉などを入れてこれ等含有にペレットの製造にも使用は出来る。 この様に
図45、
図46で示す装置を用いて、熱可塑性樹脂中に、前記環境分解性成分、又はセラミック・パウダー、又は金属粉を混ぜ合わせ、ペレット化したペレットの其々の材料(環境分解性成分、又はセラミック・パウダー、又は金属粉など)の含有量を高める手段として前記製造したペレットに、環境分解性成分、又はセラミック・パウダー、又は金属粉などを担持すれば、ペレットの1粒1粒内に含有する環境分解性成分、又はセラミック・パウダー、又は金属粉などの含有量(広義の意味での濃度)を高める事が出来る。
【
図47】エジェクターピン、傾斜コアピンなどをシールする部品(符番199のバック・アップ・リング、符番200の荷重式Oリング、符番201のスペーサー)其々の写真。(第18実施形態)
図20、
図23、
図25、
図26は加重式Oリング、凹形状のOリングを用いてエジェクターピン、傾斜コアピンのシール手段を示したが、気体の圧力が高くなると、より厳密なシールが必要である。 シール効果(シール性)を高めるには
図46に示すバック・アップ・リング(符番200)を用いると良い。符番201は荷重式Oリングで、符番202は厚さを調整するスペーサーである。
図47は符番201の荷重式Oリング、200のバック・アップ・リング、202のスペーサーの組み合わせを示したASSY(組み立て)図である。この組み合わせによってシール効果はより高められ、高圧ガスのシールが十分に出来る。
【
図48】前記
図47の其々の部品の組み合わせを示した写真。
図48は荷重式Oリング201を金型への組み込みシールをする手段を示した模式図である。符番202はエジェクターピン、傾斜コアピンを示し。符番203は金型、或いは金型の入子を、符番204も金型、或いは金型の入子を示している。
【
図49】
図46、
図47を金型に組み込み、エジェクターピン、傾斜コアピンなどをシールした事を示す模式図である。
【
図50】従来のホッパーの加熱筒との接続の形状を示した模式図(断面図で示してある。)である。加熱筒内への成形時料の供給はスクリューの真上からである事を示している。
【
図51】スクリューへの食い込みを良くする事が出来るホッパーの加熱筒との接続部の形状を示した模式図である。加熱筒内への成形材料の供給口208を偏心(
図51では大きく左にずらしている。)させ、スクリューへの供給が行われので、スクリューへの食い込みが用意であり、最後のスクリューに寄って圧縮がなされる事を示している。
【
図52】気体を用いた発泡成形に於いて、容量制御を行い、加熱筒内へ気体を加熱筒内の溶融樹脂に対して容量を制御して注入する事が可能な、可変容量容器の構造を示した模式図である。尚装置は気体でなく、液体を加熱筒に注入する場合の装置でもある。
【
図53】性状が液体、気体の発泡剤を注入する位置を示したスクリューの模式図である。
【
図54】箱形状の成形品を示した概念図、模式図である。
【
図55】成形品を軽量化させる為に、コア・バックの工程の初めの金型を示した模式図である。附番249に示す可動側の金型は前進している事が示されている。
【
図56】
図55で附番249を後退(リセス、リセッション)させてキャビティ(成形空間)247を拡張させた事を示している。この時に附番250で示すエジェクターピンは後退させていないので、エジェクターピンの周りには発泡しない、非発泡のスキン層(附番255)が形成されている。
【
図57】前記
図55に於いて附番249、附番252の後退の後に、時間を遅らせてエジェクターピン250を後退させる事で250によって成形品の内部にリブが生成され、成形品の強度を高める事が出来る事を示している。
【
図58】附番251から成形品の内部に高圧のガスを入れて内部に中空部257を形成させている。
図58で示す成形品は発泡層252と、中空部257とが混在している。
【
図60】(A)乃至(D)は金型内に液体などを入れる場合に、注入の代表的なパターンなどを示す図。
【
図61】金型にアスピレーターを装着して、金型内の圧気を排気工程を利用して金型内を負圧とする手段を示した模式図である。これによってショート・モールドなどが少なく、なくす事が出来る。
【
図62】急速排気弁を設置したGCP用のシール金型の模式図。
【
図63】初めから微細化した気体を加熱筒内に入れれば良い事を説明した概念図。焼結金属によって気体が細かくされている。
【
図64】加熱筒内に
図63の様に気体、又は/及び液体を注入する注入口を示した模式図。(A)は外筒を、(B)は燒結部品の(C)を(A)内に固定する内芯で、気体、又は/及び液体は311から燒結部の(C)に達し、加熱筒内に予め分散された状態で注入出来る。
図64(D)の吸入口は加熱筒には、複数本設けても良い。
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