IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エコプロ ビーエム カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2025-32989二次電池用負極活物質、その製造方法、二次電池用負極およびこれを含むリチウム二次電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032989
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】二次電池用負極活物質、その製造方法、二次電池用負極およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20250305BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250305BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250305BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20250305BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20250305BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20250305BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/587
H01G11/86
H01G11/36
H01G11/32
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024138432
(22)【出願日】2024-08-20
(31)【優先権主張番号】10-2023-0112639
(32)【優先日】2023-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523204477
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ チョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンウク
(72)【発明者】
【氏名】チョン ミンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ テソン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA15
5E078BA18
5E078BA31
5E078BA44
5E078BA53
5E078BA62
5E078BA67
5E078FA12
5E078LA02
5H050AA13
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA03
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】炭素(黒鉛)のマイクロ波吸収能力を向上させることによって、炭素の表面に含浸したシリコン粒子の粗大化および薄膜化を抑制し、炭素の表面に全体的にシリコンナノ粒子を均一に形成させる。
【解決手段】本発明では、炭素系粒子上にシリコン系コーティング層が形成されたシリコン/炭素(Si/C)複合体を含み、前記Si/C複合体は、X線回折分析法によるピーク面積比A2/A1が0.2~3.0であることを特徴とする負極活物質並びに炭素系粒子を熱処理する前処理段階と、前記熱処理した炭素系粒子とシリコン系粒子とを混合し、マイクロ波を照射するマイクロ波焼成段階と、を含む二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系粒子上にシリコン系コーティング層が形成されたシリコン/炭素(Si/C)複合体を含み、
前記Si/C複合体は、X線回折分析法によるピーク面積比A2/A1が0.2~3.0であることを特徴とする負極活物質。
(前記A1は、X線回折分析法においてSiピークの面積、前記A2は、X線回折分析法においてSiCピークの面積)
【請求項2】
前記Si/C複合体は、X線回折分析法によるピーク面積比A2/A1が0.3~0.5である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
(前記A1は、X線回折分析法においてSiピークの面積、前記A2は、X線回折分析法においてSiCピークの面積)
【請求項3】
前記Si/C複合体は、X線回折分析法において、全体ピーク面積100%に対するSiピーク面積(A1)が2~7%であり、SiCピーク面積(A2)が0.5~5.5%である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記Si/C複合体は、BET比表面積(B2)が8m/g以上である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記Si/C複合体は、BET比表面積(B2)が8~23m/gである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記Si/C複合体は、BET比表面積の比B2/B1が1以上である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
(B1は、前記Si/C複合体でシリコン系コーティング層を形成する前の炭素系粒子のBET比表面積、B2は、前記Si/C複合体のBET比表面積)
【請求項7】
前記Si/C複合体は、BET比表面積の比B2/B1が1.2~2.5である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
(B1は、前記Si/C複合体においてシリコン系コーティング層を形成する前の炭素系粒子のBET比表面積、B2は、前記Si/C複合体のBET比表面積)
【請求項8】
前記Si/C複合体は、全体BET比表面積(B2)100%に対して、
前記炭素系粒子の比表面積寄与率(B2_C)が50~89.5%であり、前記シリコン系コーティング層の比表面積寄与率(B2_Si)が10.5~50%である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項9】
前記Si/C複合体は、全体BET比表面積(B2)100%に対して、
前記炭素系粒子のBET比表面積寄与率(B2_C)が60~80%であり、前記シリコン系コーティング層のBET比表面積寄与率(B2_Si)が20~40%である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項10】
前記シリコン系コーティング層は、1~100nmサイズのシリコンナノ粒子を含む、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項11】
前記シリコン系コーティング層は、前記Si/C複合体の全重量に対して5~50重量%で含まれる、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項12】
前記シリコン系コーティング層は、10~200nmの厚さで形成される、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項13】
前記炭素系粒子は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維およびハードカーボンから成る群から選択された少なくとも1つである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項14】
前記炭素系粒子は、色差計のL値が35以下である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項15】
炭素系粒子を熱処理する前処理段階と、
前記熱処理した炭素系粒子とシリコン系粒子とを混合し、マイクロ波を照射するマイクロ波焼成段階と、を含む二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記前処理段階は、前記炭素系粒子を400~900℃で1~10時間熱処理するものである、請求項15に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記マイクロ波焼成段階は、前記熱処理した炭素系粒子の表面をマイクロ波で急速に加熱させ、マイクロ波で加熱した炭素系粒子によって前記シリコン系粒子が溶融し、炭素系物質の表面にシリコン系コーティング層を形成するものである、請求項15に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項18】
前記マイクロ波加熱は、1~3kWの出力で10秒~10分間マイクロ波を照射するものであ、請求項15に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載の負極活物質を含む二次電池用負極。
【請求項20】
請求項19に記載の負極を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用負極活物質、その製造方法、二次電池用負極およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、モバイル機器など電子機器の需要が増加するにつれて、モバイル機器の技術開発が拡大している。このような電子機器の駆動用電源としてリチウム電池、リチウムイオン電池、およびリチウムイオンポリマー電池などのようなリチウム二次電池の需要が大きく増加している。また、全世界的に自動車燃費および排気ガス関連規制が強化される傾向に伴い、電気車市場の成長が加速化しており、これと共に電気車(EV)用二次電池、エネルギー貯蔵装置(ESS)用二次電池など中大型二次電池の需要が急騰すると予想されている。
【0003】
なお、最近では、中大型二次電池など次第に二次電池の高容量化が要求されるにつれて、二次電池の負極素材として優れた理論容量を有するシリコン系負極素材が研究されている。しかしながら、シリコン系負極素材は、リチウムの挿入/脱離時に大きい体積変化を引き起こし、シリコン粒子粉砕化(pulverization)により電気的に脱離したり、繰り返されるサイクル充放電中に可逆容量が失われる問題がある。
【0004】
シリコンの体積膨張と収縮による電極の機械的損傷とこれによる急速な寿命短縮問題とを解決するために、シリコンの体積膨張を緩衝できる異種材料との複合化方法とシリコンをナノ粒子に製造する方法を通した性能向上とが研究されている。特に、シリコン(ナノ)粒子と黒鉛との複合化工程のための技術の観点とシリコンナノ粒子製造工程費用を低減する商用化の観点とが活発に開発されている。
【0005】
本発明では、ナノサイズのシリコンと炭素系材料とが複合した複合負極材を単一工程で製造する方法に関し、マイクロ波を用いて炭素の表面にシリコンナノ粒子を形成するシリコン-炭素複合体製造方法を提供する。シリコンは、溶融点が1414℃であり、溶融すると、水のように固体のときより密度がさらに増加する。黒鉛(炭素系物質)は、構造中に存在するπ電子をマイクロ波(波長1m~1mm;周波数300MHz~300GHz)を用いて負(-)と正(+)に交互に誘導すると、急激に熱を発生する特性を示す。このような現象を応用して、黒鉛に比べて溶融点の低いシリコンを黒鉛の表面で溶融加工することができ、急激なエネルギー伝達により急激にエントロピーを増加させて、黒鉛の表面における比表面積が増加したシリコンナノ材料(ナノシリコンが複合した黒鉛)を製造することができる。
【0006】
マイクロ波を用いたシリコン-炭素複合体の製造方法は、炭素の表面にエネルギーを直接伝達する方式であり、炭素材料を担持する媒体に関係なく、マイクロ波が照射されると、炭素自体の温度のみが急激に上昇し、マイクロ波の照射が中止されると、急速に冷却が進行される。従来の加熱方式に比べて製造時間とエネルギー費用を減らすことができるという長所がある。
【0007】
しかしながら、マイクロ波が照射される部分にのみエネルギーが伝達されるので、炭素(黒鉛)の全表面にシリコンナノ粒子が均一に形成されないか、含浸したシリコン粒子が粗大化および薄膜化される問題がある。この場合、リチウムの挿入/脱離時にシリコン粒子の体積膨張を十分に緩衝しにくい。
【0008】
また、マイクロ波によって1400℃内外に急速加熱される炭素(黒鉛)の表面では、900℃以上の高温で合成されるシリコンカーバイド(SiC)が副産物として生成される。このようなシリコンカーバイドは、リチウムイオンに不活性であり、リチウムイオンがシリコン粒子に拡散することを妨害し、容量減少と効率低下につながる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許登録10-2133961 B1
【特許文献2】韓国特許登録10-1929413 B1
【特許文献3】韓国特許登録10-2063809 B1
【特許文献4】韓国特許登録10-1931143 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、マイクロ波を用いた焼成工程を通じて製造するSi/C複合体および製造方法を提供することにあり、前記方法は、シリコンナノ粒子を製造する工程と、シリコンと炭素系材料とを複合化(Si/C複合体)する工程とを単一工程で進めることに技術的特徴がある。
【0011】
また、本発明では、炭素(黒鉛)のマイクロ波吸収能力を向上させることによって、炭素の表面に含浸したシリコン粒子の粗大化および薄膜化を抑制し、炭素の表面に全体的にシリコンナノ粒子を均一に形成させることにその目的がある。
また、本発明では、不活性物質であるシリコンカーバイド(SiC)の生成を抑制し、初期充・放電容量が向上したSi/C複合体を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一具現例は、炭素系粒子上にシリコン系コーティング層が形成されたシリコン/炭素(Si/C)複合体を含み、前記Si/C複合体は、X線回折分析法によるピーク面積比A2/A1が0.2~3.0であることを特徴とする負極活物質を提供する。前記A1は、X線回折分析法においてSiピークの面積、前記A2は、X線回折分析法においてSiCピークの面積であってもよい。
【0013】
前記Si/C複合体は、X線回折分析法によるピーク面積比A2/A1が0.3~0.5であってもよい。前記A1は、X線回折分析法においてSiピークの面積、前記A2は、X線回折分析法においてSiCピークの面積であってもよい。
【0014】
前記Si/C複合体は、X線回折分析法において、全体ピーク面積100%に対するSiピーク面積(A1)が2~7%であり、SiCピーク面積(A2)が0.5~5.5%であってもよい。
【0015】
前記Si/C複合体は、BET比表面積(B2)が8m/g以上であってもよい。
【0016】
前記Si/C複合体は、BET比表面積(B2)が8~23m/gであってもよい。
【0017】
前記Si/C複合体は、BET比表面積の比B2/B1が1以上であってもよい。前記B1は、前記Si/C複合体においてシリコン系コーティング層を形成する前の炭素系粒子のBET比表面積であってもよく、前記B2は、前記Si/C複合体のBET比表面積であってもよい。
【0018】
前記Si/C複合体は、BET比表面積の比B2/B1が1.2~2.5であってもよい。前記B1は、前記Si/C複合体においてシリコン系コーティング層を形成する前の炭素系粒子のBET比表面積であってもよく、前記B2は、前記Si/C複合体のBET比表面積であってもよい。
【0019】
前記Si/C複合体は、全体BET比表面積(B2)100%に対して、前記炭素系粒子の比表面積寄与率(B2_C)が50~89.5%であり、前記シリコン系コーティング層の比表面積寄与率(B2_Si)が10.5~50%であってもよい。
【0020】
前記Si/C複合体は、全体BET比表面積(B2)100%に対して、前記炭素系粒子のBET比表面積寄与率(B2_C)が60~80%であり、前記シリコン系コーティング層のBET比表面積寄与率(B2_Si)が20~40%であってもよい。
【0021】
前記シリコン系コーティング層は、1~100nmサイズのシリコンナノ粒子を含んでもよい。
【0022】
前記シリコン系コーティング層は、前記Si/C複合体の全重量に対して5~50重量%で含まれてもよい。
【0023】
前記シリコン系コーティング層は、10~200nmの厚さで形成されるものであってもよい。
【0024】
前記炭素系粒子は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維およびハードカーボンから成る群から選択された少なくとも1つであってもよい。
【0025】
前記炭素系粒子は、色差計のL値が35以下であってもよい。
【0026】
本発明の他の一具現例は、炭素系粒子を熱処理する前処理段階と、前記熱処理した炭素系粒子とシリコン系粒子を混合し、マイクロ波を照射するマイクロ波焼成段階と、を含む二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0027】
前記前処理段階は、前記炭素系粒子を400~900℃で1~10時間熱処理するものであってもよい。
【0028】
前記マイクロ波焼成段階は、前記熱処理した炭素系粒子の表面をマイクロ波で急速に加熱させ、マイクロ波で加熱した炭素系粒子によって前記シリコン系粒子が溶融し、炭素系物質の表面にシリコン系コーティング層を形成するものであってもよい。
【0029】
前記マイクロ波加熱は、1~3kWの出力で10秒~10分間マイクロ波を照射するものであってもよい。
【0030】
本発明の他の一具現例は、前記負極活物質を含む二次電池用負極を提供する。
【0031】
本発明の他の一具現例は、前記負極を含む二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、前処理した炭素系粒子を使用することによって、炭素系粒子の表面に形成された凹凸構造(defect)によってマイクロ波吸収能力を向上させることができる。炭素系粒子に全体的に均一な温度上昇と急速加熱/冷却とが可能なので、SiC合成反応が起こる温度範囲(約900℃)の滞留時間(維持時間)を減らすことができ、SiC合成量を減少させることができる。
【0033】
また、本発明では、前処理(熱処理)した炭素系粒子の表面の凹凸構造(defect)により、溶融したシリコンが炭素系粒子の表面に析出(含浸)する形態を制御することができ、シリコン粒子の粗大化現象と粒子間の連結(薄膜化)現象を防止することができる。
【0034】
また、Si/C複合体のBET比表面積を特定の範囲に制御することにより、シリコン粒子がナノサイズで炭素系粒子の表面に均一に分散して含浸することができる。これによって、シリコン粒子が粗大化するか、薄膜形態で含浸する現象を防止することができる。その結果として、過剰な比表面積の増加による電解液副反応の発生の問題を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】比較例1で製造されたSi/C複合体の表面SEMイメージである。
図1b】実施例1で製造されたSi/C複合体の表面SEMイメージである。
図1c】実施例2で製造されたSi/C複合体の表面SEMイメージである。
図1d】実施例3で製造されたSi/C複合体の表面SEMイメージである。
図1e】比較例2による前処理の前(左のSEMイメージ)と前処理の後(右のSEMイメージ)の黒鉛粒子のSEMイメージである。
図2a】比較例1で製造されたSi/C複合体のXRD(X-ray diffraction)グラフである。
図2b】実施例1で製造されたSi/C複合体のXRD(X-ray diffraction)グラフである。
図2c】実施例2で製造されたSi/C複合体のXRD(X-ray diffraction)グラフである。
図2d】実施例3で製造されたSi/C複合体のXRD(X-ray diffraction)グラフである。
図3図3は、マイクロ波照射を通した炭素系粒子の表面に形成されたホットスポットを示す写真(Microwave Chemical and Materials Processing Doi.org/10.1007/978-981-10-6466-1_4)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のメリットおよび特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例を参照すると明確になる。しかしながら、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で具現されるものであり、ただ本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0037】
他の定義がない場合、本明細書において使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解することができる意味で使用され得る。明細書全体において任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。また、単数型は、文句において特に言及しない限り、複数型も含む。
【0038】
本発明の一具現例は、炭素系粒子上にシリコン系コーティング層が形成されたシリコン/炭素(Si/C)複合体を含む負極活物質を提供する。本発明では、シリコンの体積膨張を緩衝できる炭素系粒子との複合化を通じてシリコンの体積膨張と収縮による電極の機械的損傷とこれによる急速な寿命短縮問題とを改善することができる。
【0039】
前記Si/C複合体は、X線回折分析法によるピーク面積比A2/A1が0.2~3.0であり、例えば、ピーク面積比A2/A1が0.2~2.5、0.2~2、0.2~1.5、0.2~1、0.2~0.8、0.2~0.7、0.2~0.6、0.2~0.6、0.3~0.6または0.3~0.5であってもよい。
【0040】
前記A1は、X線回折分析法においてSiピークに該当するすべての角度でのピーク面積であり、前記A2は、X線回折分析法においてSiCピークに該当するすべての角度でのピーク面積である。また、X線回折分析法においてSiピークに該当するすべての角度(2Theta)は、28.4±0.5°、47.3±0.5°、56.1±0.5°、69.1±0.5°、76.4±0.5°および88.0±0.5°であってもよく、それぞれの結晶面は、(111)、(202)、(311)、(400)、(313)および(422)であってもよく、SiCピークに該当するすべての角度(2Theta)は、35.6±0.5°、41.4±0.5°、59.9±0.5°、71.7±0.5°、75.5±0.5°および89.9±0.5°であってもよく、それぞれの結晶面は、(111)、(020)、(202)、(311)、(222)および(040)であってもよい。参照として、黒鉛ピークに該当するすべての角度(2Theta)は、26.5±0.5°、42.3±0.5°、44.5±0.5°、50.6±0.5°、54.6±0.5°、59.8±0.5°、71.4±0.5°および77.4±0.5°であってもよく、それぞれの結晶面は、(002)、(100)、(101)、(012)、(004)、(013)、(014)および(110)であってもよい。
【0041】
前記ピーク面積比が上限値以下の場合、不活性物質であるシリコンカーバイド(SiC)の生成を抑制し、炭素系粒子の表面に含浸したシリコンナノ粒子の割合が高くなることがある。前記ピーク面積比が下限値以上の場合、炭素系粒子と溶融前の固体状態のシリコンが分散して均一に混合されることにより、マイクロ波照射された炭素系粒子の表面で固体シリコンの溶融する割合が高く、未反応シリコンの割合が低くなり、全般的にSi/C複合体の製造効率が向上することを意味し得る。
【0042】
マイクロ波によって1400℃内外に急速加熱される炭素系粒子の表面では、900℃以上の高温で合成され、リチウムイオンに不活性であるシリコンカーバイド(SiC)を含浸させることができる。
【0043】
本発明では、前処理した炭素系粒子を使用することによって、表面の凹凸構造(defect)の形成を通じて炭素系粒子のマイクロ波吸収能力を向上させることができる。マイクロ波吸収および発熱性能の向上は、炭素系粒子の表面のホットスポット形成時間の減少から確認することができる。本発明では、ホットスポット形成時間が減少し、炭素系粒子に全体的に均一な温度上昇と急速加熱/冷却が可能なので、SiC合成反応が起こる高温範囲滞留時間を減らすことができる。また、前処理(熱処理)した炭素系粒子の表面の凹凸構造(defect)により溶融したシリコンの形態形成を制御することができ、シリコン粒子の粗大化と粒子間の連結(薄膜化)を防止することができる。これより、SiC合成反応が起こるシリコンと炭素系粒子の物理的接触面積を減らすことができるので、SiC合成量をさらに減らすことができる。
【0044】
なお、本発明において炭素系粒子のホットスポットとは、マイクロ波を炭素系粒子に照射すると、すべての位置で同じ時間内に均一な反応が起こるものではなく、特定の部分でまず反応が起こり、このような現象を「ホットスポット 」と定義することができる。炭素系粒子の表面に発生するホットスポットの場合、目視観察し、最初に反応が起ったときを基準として「ホットスポット時間 」を測定することができる。
【0045】
前記Si/C複合体は、X線回折分析法において、全体ピーク面積100%に対するSiピーク面積(A1)が2~7%であってもよく、例えば、2.5~7%、2.5~6.5%、2.5~6%、2.5~5.5%、2.5~5%または2.5~4%であってもよい。また、全体ピーク面積100%に対するSiCピーク面積(A2)が0.5~5.5%、0.5~5%、1~5%、2~5%、3~5%、3.5~5%、3.5~4.5%または4~4.5%であってもよい。これによって、前述の効果をさらに改善することができる。
【0046】
なお、全体ピーク面積100%は、Siピークに該当するすべての角度でのピーク面積(A1)、SiCピークに該当するすべての角度でのピーク面積(A2)、黒鉛ピークに該当するすべての角度でのピーク面積(A3)を合わせたピーク面積の総和を意味するものであってもよい。
【0047】
前記Si/C複合体は、BET比表面積(B2)が8m/g以上であってもよく、例えば8~23m/g、8~20m/g、8~17m/g、8~15m/g、8~14m/g、8~13m/g、9~13m/gまたは9~12m/gであってもよい。
【0048】
マイクロ波を用いてシリコン-炭素複合体を製造する場合、マイクロ波照射によって発熱した炭素系粒子の表面にのみシリコンが含浸するので、マイクロ波焼成反応によって溶融したシリコンが前処理した炭素系粒子の表面の凹凸構造、気孔構造を閉塞させないと分析される。マイクロ波焼成反応後に最終的に製造されるSi/C複合体は、BET比表面積を反応前と比較して相対的に高いレベルに調節することができることを確認した。なお、前記BET比表面積が前述の範囲に該当する場合、炭素系粒子の表面に均一にシリコン粒子がナノサイズで分散して含浸することを意味し得、下限値未満の場合、薄膜形態のシリコン粒子が含浸することを意味し、上限値超過の場合、粒子構造が崩壊し、黒鉛の基底面が露出し、そのため、過剰な比表面積の増加による電解液副反応が発生することがある。
【0049】
前記Si/C複合体は、BET比表面積の比B2/B1が1以上であってもよく、例えば1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上または1.5以上および2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下または2.0以下であってもよい。前記B1は、前記Si/C複合体においてシリコン系コーティング層を形成する前の炭素系粒子のBET比表面積であり、前記B2は、(前記シリコン系コーティング層を形成した後の)前記Si/C複合体のBET比表面積である。
【0050】
前記BET比表面積の比B2/B1が下限値以上の場合、マイクロ波照射された炭素系粒子の表面に溶融したシリコンがナノ粒子形態で含浸する割合が高くなり、シリコン粒子の粗大化と粒子間の連結(薄膜化)とを制御(防止)することを意味し得る。他方で、炭素系粒子の表面に含浸したシリコンの粒子サイズが増加するか、シリコン粒子が連結されて薄膜で形成される場合(ネットワーク形状)には、シリコンコーティング層によってBET比表面積を減少させることができる。また、前記BET比表面積の比B2/B1が上限値以下の場合、マイクロ波照射された炭素系粒子の表面で固体シリコンの溶融する割合が高く、未反応シリコンの割合が低くなり、全般的にSi/C複合体の製造効率が向上することを意味し得る。
【0051】
前記Si/C複合体は、全体BET比表面積(B2)100%に対して、前記炭素系粒子の比表面積寄与率(B2_C)が50~89.5%であってもよく、前記シリコン系コーティング層の比表面積寄与率(B2_Si)が10.5~50%であってもよい。ここで、前記炭素系粒子の比表面積寄与率(B2_C)は、Si粉末を使用しないことを除いて、同一にマイクロ波処理された黒鉛(前処理黒鉛)のBET比表面積を測定し、Si/C複合体のBET比表面積に対する百分率を計算したものである。前記シリコンコーティング層の比表面積寄与率(B2_Si)は、全体Si/C複合体のBET比表面積100%から前記炭素系粒子の比表面積の割合を引いた値である。
【0052】
例えば、前記Si/C複合体は、全体BET比表面積(B2)100%に対して、前記炭素系粒子の寄与率(B2_C)が50~85%、55~80%、60~80%または65~75%であってもよく、前記シリコンコーティング層の寄与率(B2_Si)が15~50%、20~45%、20~40%または25~35%であってもよい。
【0053】
前記シリコンコーティング層の寄与率(B2_Si)が増加し、前記炭素系粒子の寄与率(B2_C)が減少するほど、マイクロ波照射された炭素系粒子の表面に溶融したシリコンがナノ粒子形態で含浸する割合が高くなることがある。反対に、前記シリコンコーティング層の寄与率(B2_Si)が減少し、前記炭素系粒子の寄与率(B2_C)が増加するほど、全体BET比表面積の増加は、マイクロ波照射された炭素系粒子の表面のモルフォロジー変化に起因して未反応シリコンが増加することを意味し得る。
【0054】
前記炭素系粒子は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維およびハードカーボンから成る群から選択された少なくとも1つであってもよく、例えば、天然黒鉛または人造黒鉛である場合に好ましい。また、前記炭素系粒子は、単一粒子または複数の粒子が凝集した二次粒子であってもよい。
【0055】
また、前記炭素系粒子は、平均粒径(D50)が5~30μm、5~20μmまたは10~20μm、平均粒径(D10)が3~20μm、3~15μmまたは5~15μmおよび/または平均粒径(D90)が15~35μm、15~30μmまたは20~25μmであってもよい。
【0056】
また、前記炭素系粒子は、球状、板状および針状粒子であってもよく、板状および針状粒子のように材料の構造(Porous,hollow,core-shell,multi-layer and hierarchical)を調整すると、マイクロ波の伝播経路を拡張させて、マイクロウエーブ吸収体の吸収能力をさらに向上させることができる。
【0057】
マイクロ波を通した炭素系粒子の加熱を制御する条件は、炭素材料の種類、含有量および粒子形状などがあり、炭素系粒子の種類、平均粒径および形態などが前記本発明の範囲に該当する場合、マイクロ波吸収能力を向上させることができる。
【0058】
前記炭素系粒子は、色差計のL値が35以下であってもよく、例えば、色差計のL値が34以下、33以下、32以下であってもよい。下限値は、特に限定されないが、例えば、10以上、20以上、25以上または30以上であってもよい。
【0059】
本発明において使用された用語「色差計のL値」は、Lのような色度座標において、明度を示すL値を意味し得る。前記L値は、0から100まで表示され、0に近いほど黒色を示し、100に近いほど白色を示す値であってもよい。本発明では、熱処理した炭素系粒子は、表面の凹凸構造(defect)によって光の吸収が増加し、色差計のL値を減少させることができる。前記炭素系粒子の色差計のL値が設計範囲に該当する場合、熱処理した炭素系粒子の表面の凹凸構造(defect)の形成を通じて炭素系粒子の発熱性能が向上し、熱処理した炭素系粒子の表面の凹凸構造(defect)により溶融したシリコンの形態形成を制御することができ、シリコン粒子の粗大化とシリコン粒子間の連結(薄膜化)を防止することができる。
【0060】
なお、前記色差計の値を測定する装備には制限がないが、例えば、分光測色計、色彩色差計、カラーリーダーおよび色彩照度計などの装備を使用することができる。例えば、Chroma meter CR-410 KONIKA MINOLTA測定機を用いて前記色差計の値を測定することができる。
【0061】
前記シリコン系コーティング層は、10~100nmサイズのシリコン(Si)粒子を含んでもよい。具体的には、前記シリコン系コーティング層に含まれたシリコンナノ粒子は、粒子サイズ(D50)が10~100nmまたは20~100nmであってもよい。本発明では、表面に凹凸構造(defect)が形成された前処理炭素系粒子を使用することによって、粒子の表面で溶融したシリコンの形態形成を制御することができる。その結果として、シリコン粒子の粗大化と粒子間の連結(薄膜化)を防止することができる。
【0062】
なお、前記シリコン(Si)粒子サイズは、累積体積で測定するサイズ(D50)を意味し得る。D50は、本明細書において別段の定義がない限り、粒度分布で累積体積が50体積%である気孔の直径を意味する平均サイズを意味する。平均サイズ(D50)の測定は、当業者に広く公知となった方法で測定することができ、例えば、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真または走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)写真で測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法(dynamic light-scattering)を用いた測定装置を用いて測定し、データ分析を実施して、それぞれの気孔サイズ範囲に対して気孔数をカウントした後、これから計算して、平均サイズ(D50)値を得ることができる。
【0063】
前記シリコン系コーティング層は、前記Si/C複合体の全重量に対して1~50重量%で含まれてもよく、例えば、1~40重量%、1~30重量%、5~30重量%または5~20重量%で含まれてもよい。また、前記シリコン系コーティング層は、10~200nmの厚さで形成されてもよく、例えば、10~180nm、10~160nm、10~150nmまたは10~130nmの厚さで形成されてもよい。
【0064】
前記Si/C複合体は、前記シリコンコーティング層上に位置する炭素コーティング層をさらに含んでもよい。シリコン系コーティング層のシリコンが電解液に直接に露出することを最小化して電解液副反応を減らすことができ、シリコン粒子の体積膨張をさらに緩衝することができ、電池の寿命特性を改善することができる。前記炭素コーティング層は、0.01μm以上の厚さで形成されてもよく、例えば、0.03μm以上または0.05μm以上および10μm以下、5μm以下または1μm以下の厚さで形成されてもよい。これによって、前述の効果をさらに改善することができる。
【0065】
以下、二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。前記製造方法は、本発明の一具現例による前記負極活物質の製造方法であってもよい。
【0066】
前記二次電池用負極活物質の製造方法は、炭素系粒子を熱処理する前処理段階と、前記熱処理した炭素系粒子とシリコン系粒子とを混合し、マイクロ波を照射するマイクロ波焼成段階と、を含む。
【0067】
前記前処理段階は、炭素系粒子を400~900℃で1~10時間熱処理する段階である。炭素系粒子の表面に凹凸構造(defect)の形成を通じてマイクロ波を照射する焼成段階で炭素系粒子の発熱性能を向上させるための目的である。熱処理した炭素系粒子の表面の凹凸構造(defect)の形成を通じて炭素系粒子の発熱性能を向上させることができる。前記前処理段階は、例えば、空気雰囲気で昇温速度1~10℃/minまたは2~7℃/min、反応炉の温度400~800℃、400~700℃または400~600℃で1~6時間、2~6時間または3~6時間熱処理を行うことができる。
【0068】
前記前処理段階は、炭素系粒子を熱処理する段階であり、熱処理前と後の炭素系粒子の重量減少率(熱処理後の炭素系粒子の重量/熱処理前の炭素系粒子の重量×100(%))が1重量%超過40重量%未満、5重量%超過30重量%未満、10重量%超過25重量%未満、14重量%超過25重量%未満または15重量%超過20重量%未満となるように熱処理することを特徴とする。
【0069】
前記焼成段階は、熱処理した炭素系粒子とシリコン系粒子とを混合し、炭素系粒子の表面にシリコン系粒子が分散した混合物を収得し、前記混合物のうち熱処理した炭素系粒子の表面をマイクロ波で急速に加熱させ、マイクロ波で加熱した炭素系粒子によってシリコン系粒子が溶融し、炭素系物質の表面にシリコン系コーティング層を形成する段階である。
【0070】
前記混合は、粒子混合機を用いて500~2000rpmまたは700~1500rpmで1~10分間行うことができ、前記粒子混合機としては、自転撹拌機、公転撹拌機、ブレードミキサー、または粒子融合機を使用することができるが、これに限定されない。
【0071】
また、前記混合は、炭素系粒子とシリコン系粒子とを99:1~60:40の重量比、99:1~70:30の重量比、95:5~70:30の重量比または95:5~80:20の重量比で混合することができる。
【0072】
前記炭素系粒子は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、ハードカーボンまたはこれらの組み合わせであってもよく、前記シリコン系粒子は、10nm~10μm、100nm~10μmまたは100nm~5μmサイズのシリコン粒子粉末であってもよい。
【0073】
前記マイクロ波加熱は、マイクロ波(波長、1m~1mm;周波数300MHz~300GHz)を1~3kWの出力で10秒~10分、30秒~2分、30秒~60秒間照射するものであってもよい。また、前記マイクロ波加熱は、1分以内に前記炭素系粒子の表面が1400℃以上で加熱されるものであってもよく、例えば、30秒以内または10秒以内に前記炭素系粒子の表面が1400℃以上で加熱されるものであってもよい。熱処理した炭素系粒子にマイクロ波を照射する場合、熱処理した炭素系粒子の表面に凹凸構造(defect)の形成を通じてマイクロ波吸収性能および発熱性能が向上することにより、粒子表面のホットスポット形成時間を短縮することができる。本発明では、ホットスポット形成時間を5~30秒、5~25秒、5~20秒、10~20秒または10~15秒に短縮することができる。なお、図3を参照すると、「ホットスポット」とは、マイクロ波(MW)の特性上、MW照射時にすべての部位で同一に反応が起こるものではなく、部分的に先に反応が起こる現象を言い、本発明では、最初に発熱が観察される現象を意味する。なお、ホットスポット時間を測定する方法は、図3のように目視で発熱部位が観察される瞬間を時間で測定した。本発明では、前処理した黒鉛の粒子表面に凹凸構造(defect)が形成されることにより、マイクロ波吸収能力が向上する。これによって、マイクロ波照射時に炭素体粒子の表面発熱特性が向上することにより、発熱現象が観察される時間を短縮させることができる。
【0074】
前記マイクロ波焼成段階後に、前記炭素系粒子に残留する熱エネルギーによって表面に含浸したシリコン系物質の結晶性が増加しないように冷却する段階をさらに含んでもよい。前記冷却段階は、常温または-10~10℃の温度と常圧条件で進行することができ、好ましくは、窒素ガスが注入される冷却炉(cooled reactor)で進行することができる。
【0075】
本発明の他の具現例は、前記負極活物質を含む二次電池用負極および二次電池を提供する。
【0076】
前記負極は、負極集電体と、負極集電体上に位置する負極活物質層と、を含み、本発明の一態様による負極活物質は、負極活物質層に存在する。
【0077】
負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。また、負極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、集電体の表面上に微細な凹凸を形成して負極活物質の接着力を高めることもできる。このような負極集電体は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などのように様々な形態で提供することができる。
【0078】
負極活物質層は、前述の負極活物質と共に導電材およびバインダーを含む層であってもよい。
【0079】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、負極活物質の化学的変化を引き起こすことなく、導電性を有するものであれは、特別な制限なしで使用可能である。導電材の非制限的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質、;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、;酸化チタンなどの導電性金属酸化物、;ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などがある。導電材は、通常、負極活物質層の総重量を基準として1重量%~30重量%で含まれてもよい。
【0080】
前記バインダーは、負極活物質粒子間の付着および負極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする物質である。バインダーの非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などがある。バインダーは、通常、負極活物質層の総重量を基準として1重量%~30重量%で含まれてもよい。
【0081】
本発明の一具現例による負極は、前述の負極活物質を使用することを除いて、通常の二次電池用負極の製造方法により製造することができる。例えば、負極活物質、、バインダーおよび導電材を含む負極活物質層形成用スラリーを選択的に負極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することによって、負極を製造することができる。他の例によれば、負極活物質層形成用スラリーを別途の支持体上にキャストした後、支持体から負極活物質層を剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネートして、負極を製造することができる。
【0082】
本発明のさらに他の態様によれば、前述の負極を含む電気化学素子を提供する。ここで、電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0083】
二次電池は、負極、負極と対向して位置する正極、負極と正極の間に介在するセパレーターおよび電解質(電解液)を含む。また、リチウム二次電池は、正極、負極およびセパレーターを含む電極組立体を収納する電池容器(ケース)および電池容器を封止する封止部材を含んでもよい。
【0084】
この際、電池容器(ケース)の形状によって、リチウム二次電池は、電極組立体が金属缶に内蔵された缶タイプのリチウム二次電池と、電極組立体がアルミニウムラミネートのようなシートからなるポーチに内蔵されたポーチタイプのリチウム二次電池に分類することができる。
【0085】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これらは、本発明をより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例
製造例1.Si/C複合体負極活物質の製造
<実施例1~3および比較例1>
段階1:黒鉛前処理
天然黒鉛(D50:15μm)20gをルツボに計量後、チューブ炉に装入した。昇温速度5℃/minおよび空気雰囲気の条件560℃で1~5時間熱処理して、前処理した黒鉛を得た。前処理前の黒鉛に対する前処理後の黒鉛の重量減少率は、下記表1の通りである。
(熱処理時間=実施例1:1時間、実施例2:4時間、実施例3:5時間、比較例1:熱処理なし、比較例2:7時間)
【0086】
段階2:マイクロ波照射を通したSi/C複合化
前処理した天然黒鉛と板状Si粒子(D50:400nm)粉末とを9:1の重量比でスーパーミキサーに装入し、1000rpmで10分間混合した。次に、2450MHzのマイクロ波を出力1kWの条件で60秒間照射した。この際、ホットスポット形成時間は、下記表1の通りである。
【0087】
次に、-5℃/分で冷却を進行して、前処理した天然黒鉛上にシリコンコーティング層が形成されたSi/C複合体負極活物質を製造した。
ここで、ホットスポット形成時間は、炭素系粒子の表面に最初に反応(ホットスポット)が起こったときの時間を測定したものであり、図3のように目視で観察した結果を反映した。
【表1】
【0088】
製造例2.リチウム二次電池の製造
製造された負極活物質96wt%、カーボンブラック1wt%、SBRバインダー1.5wt%およびカルボキシメチルセルロース1.5wt%を蒸留水に30g分散させて、負極スラリーを製造した。製造された負極スラリーをCu薄膜に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用負極を製造した。
【0089】
LiNi0.9Co0.1Mn0.1(NCM911、エコプロBM)94wt%、カーボンブラック3wt%およびPVdFバインダー3wt%をN-メチル-2-ピロリドンで混合して、正極スラリーを製造した。製造された正極スラリーをAl薄膜に均一に塗布し、135℃で真空乾燥した後、これを圧延して、リチウム二次電池用正極を製作した。
【0090】
製造された正極および負極と多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)分離膜を電池容器に投入し、EC:EMCが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で存在する電解液を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0091】
実験例
実験例1:SEMイメージ分析による炭素粒子表面のシリコンコーティング層の形状の確認
図1a~図1dは、図1a~図1dの順に、それぞれ比較例1、実施例1、実施例2、実施例3で製造されたSi/C複合体粒子の表面SEMイメージである。
図1a~図1dを参照すると、実施例1~3で製造されたSi/C複合体は、黒鉛の表面に1~100nmのサイズのSiナノ粒子が均一に含浸したことを確認することができた。特に、黒鉛の重量減少率と黒鉛の熱処理時間が好ましい範囲で増加するほど黒鉛の表面で球状形態のSiナノ粒子の蒸着割合が増加することが分かった。他方で、比較例1の場合、Si粒子サイズの粗大化および粒子間の連結された構造(ネットワーク構造)によってシリコン蒸着形態とそのサイズが均一でないことが確認される。
【0092】
実験例2:炭素系粒子の熱処理条件による炭素系粒子の特性およびSi/C複合体の表面特性の評価
比較例1、2および実施例1~3で製造されたSi/C複合体についてBET法を用いてBET比表面積を測定し、その結果を下記表2に整理した。
下記表2で、「前処理黒鉛(B1)」は、段階1で製造された前処理黒鉛(Si/C複合体においてシリコン系コーティング層を形成する前の黒鉛)のBET比表面積の値である。「Si/C複合体(B2)」は、段階2で製造されたSi/C複合体のBET比表面積の値である。「マイクロ波処理黒鉛(R)」は、Si粉末を使用しないことを除いて段階2(マイクロ波照射)と同一で進行して製造したマイクロ波処理した(前処理)黒鉛のBET比表面積の値である。
【0093】
比表面積の比(B2/B1)は、シリコン系コーティング層を形成する前の炭素系粒子のBET比表面積(B1)に対するシリコン系コーティング層を形成した後の前記Si/C複合体のBET比表面積(B2)を計算した値である。
【0094】
比表面積の比(B2/R)は、Si粉末を使用しないことを除いて段階2(マイクロ波照射)と同一で進行して製造したマイクロ波処理した(前処理)黒鉛のBET比表面積(R)に対するシリコン系コーティング層を形成した後の前記Si/C複合体のBET比表面積(B2)を計算した値である。
【0095】
比表面積寄与率(B2_C)は、Si粉末を使用しないことを除いて同一でマイクロ波処理した黒鉛(前処理黒鉛)のBET比表面積を測定し、Si/C複合体のBET比表面積に対する百分率を計算したものであり、具体的には、Si/C複合体のBET比表面積(B2)に対するマイクロ波処理黒鉛のBET比表面積(R)の百分率を計算した値である。
【0096】
【表2】
表2を参照すると、すべての実施例で製造されたSi/C複合体は、BET比表面積(B2)が、比較例1と比較して、9.5m/g以上に上昇し、黒鉛の重量減少率と黒鉛の熱処理時間とが好ましい範囲で増加するほど、BET比表面積が増加する傾向性を示した。
【0097】
比表面積の比(B2/B1)の場合、比較例1において2.7m/gと最も高く、黒鉛の重量減少率が増加するほど(実施例1→比較例2)減少する傾向を示した。
比表面積寄与率(B2_C)の場合、比較例1および2において相対的に高く、実施例では、黒鉛の重量減少率が増加するほど(実施例1→実施例3)減少する傾向性を示し、特に実施例2~3では、比較例1、2および実施例1に比べて炭素の比表面積寄与率(B2_C)が大幅に減少することを確認した。
【0098】
前処理しない黒鉛を使用する場合(比較例1)、マイクロ波焼成による比表面積の増加のうち黒鉛の表面モルフォロジー変化による割合が実施例に比べて高いので、比較例1では、未反応シリコンが相対的に増加すると分析される。また、Si/C複合体の全体BET比表面積(B2)が比較例1において実施例に比べて顕著に小さいので、シリコン粒子の粗大化と粒子間が連結した形態で含浸する割合が高いと分析される。
【0099】
反対に、前処理した黒鉛を使用する場合(実施例1~3)、炭素系粒子の表面の凹凸構造(defect)を通した発熱性能の向上およびシリコン溶融物の形態形成の制御が可能で、シリコンがナノ粒子形態で含浸する割合が高くなると分析される。このような分析結果は、図1a~図1dのSEMイメージと一致する。
【0100】
なお、図1eは、比較例2による前処理の前(左のSEMイメージ)と前処理の後(右のSEMイメージ)の黒鉛粒子のSEMイメージである。図1eおよび表2を参照すると、前処理した黒鉛の重量減少率が40%に達する場合、粒子構造が崩壊し、発熱性能が過度に向上するのであり、SiC結晶相が増加し、薄膜形態で蒸着されるSiの割合が増加し、BET上昇率が減少すると分析される。
【0101】
実験例3:Si/C複合体のXRD分析およびリチウム二次電池の電気化学的特性の評価
XRD分析は、Bruker社のD8 ADVANCE A25を使用し、45kVの電圧で30mAの電流を印加して測定した。各相の分析は、COD No.4104917(Si)、1011031(SiC)、9011577(黒鉛)で比較した。得られた結果は、各結晶相に該当するすべてのピーク位置を確認した。各結晶相のピーク情報は、下記表3の通りである。
【0102】
このように得られたピーク(図2a~図2d)をデコンボリューションして、Siに該当するピーク面積A1(%)と、SiCに該当するピーク面積A2(%)をそれぞれ求めた。測定結果を下記表4に示した。
【0103】
電気化学的特性の分析は、電気化学分析装置(Shincorp,Toscat-3100)を用いて25℃、電圧範囲0.005V~1.5V、0.1C~0.5CのCレートを適用した充放電実験を通じて初期充電容量、初期放電容量および初期効率(ICE)を測定した。測定結果を下記表4に示した。
【0104】
【表3】
【表4】
【0105】
表4を参照すると、実施例1~3で製造されたリチウム二次電池の場合、熱処理黒鉛適用時に不活性物質SiCの生成を抑制し、充・放電容量および初期効率が向上することを確認することができた。
【0106】
なお、比較例2の場合、過剰に前処理した黒鉛を使用する場合、粒子構造が崩壊し、黒鉛の基底面が露出し、そのため、過剰な電解液の露出によって初期クーロン効率が低くなると分析される。
【0107】
以上のように、本発明は、特定の実施例に関連して図示し説明したが、以下の特許請求範囲によって提供される本発明の技術的思想を逸脱しない限度内で、本発明が多様に改良および変化することができることは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図3