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特開2025-33014電圧耐久特性に優れたポリイミドワニスおよびこれにより製造されるポリイミド被覆物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025033014
(43)【公開日】2025-03-12
(54)【発明の名称】電圧耐久特性に優れたポリイミドワニスおよびこれにより製造されるポリイミド被覆物
(51)【国際特許分類】
   C09D 179/08 20060101AFI20250305BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20250305BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20250305BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20250305BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C09D179/08 A
C09D7/62
C09C1/28
C09C3/12
H01B7/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024171894
(22)【出願日】2024-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2023-0112846
(32)【優先日】2023-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】524362493
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ギョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ロ、ギョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、セジュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、イクサン
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
5G309
【Fターム(参考)】
4J037AA17
4J037CB23
4J037DD05
4J037EE02
4J037EE43
4J038DJ021
4J038HA446
4J038JC32
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA09
4J038NA21
4J038PA11
4J038PA19
4J038PC03
5G309MA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、電圧耐久特性に優れたポリイミドワニスおよびこれにより製造されるポリイミド被覆物に関する。
【解決手段】本発明は、ポリアミック酸およびナノシリカを含むポリイミドワニスであって、前記ナノシリカは、前記ポリアミック酸の固形分に対して5~23重量%を含み、前記ポリイミドワニスは、ゼータ電位(zeta potential)の絶対値が1~30mVである、ポリイミドワニスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸およびナノシリカを含むポリイミドワニスであって、
前記ナノシリカは、前記ポリアミック酸の固形分に対して5~23重量%を含み、
前記ポリイミドワニスは、ゼータ電位(zeta potential)の絶対値が1~30mVである、ポリイミドワニス。
【請求項2】
前記ナノシリカは、有機シランで表面改質したナノシリカである、請求項1に記載のポリイミドワニス。
【請求項3】
有機シランで表面改質したナノシリカの前記有機シランは、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(メタクリルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-トリルトリエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ジイソプロピルエチルアミンフェニルトリメトキシシラン(N,N-Diisopropylethylamine phenyltrimethoxysilane)、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glycidoxypropyl trimethoxysilane:GPTMS)、アミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxy-silane:APTMS)、フェニルトリメトキシシラン(Phenyltrimethoxysilane:PTMS)およびフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(N-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilane:PAPTES)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項2に記載のポリイミドワニス。
【請求項4】
前記ナノシリカは、ゼータ電位の絶対値が10.0mV~40.0mVである、請求項1に記載のポリイミドワニス。
【請求項5】
前記ナノシリカは、平均粒子径が1~200nmである、請求項1に記載のポリイミドワニス。
【請求項6】
前記ポリアミック酸の固形分含有量が10~50重量%である、請求項1に記載のポリイミドワニス。
【請求項7】
前記ポリアミック酸が、二無水物単量体およびジアミン単量体を重合単位として含む、請求項1に記載のポリイミドワニス。
【請求項8】
前記二無水物単量体が、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンハイドライド(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンハイドライド、p-フェニレンビス(トリメリティックモノエステルアシッドアンハイドライド)、p-ビフェニレンビス(トリメリティックモノエステルアシッドアンハイドライド)、m-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンハイドライド、p-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンハイドライド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンハイドライド、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンジアンハイドライド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライドおよび4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンハイドライドからなる群から選択される1種以上を含む、請求項7に記載のポリイミドワニス。
【請求項9】
前記ジアミン単量体が、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、2,2-ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)、メタフェニレンジアミン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-tolidine)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよび2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項7に記載のポリイミドワニス。
【請求項10】
前記ポリアミック酸は、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)および4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を重合単位として含む、請求項1に記載のポリイミドワニス。
【請求項11】
前記ポリイミドワニスは、有機溶媒をさらに含み、
前記有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルプロパンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJCMPA)、p-クロロフェノール、o-クロロフェノール、γ-ブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)およびナフタレンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のポリイミドワニス。
【請求項12】
前記ポリイミドワニスは、ヘイズ(Haze)が1.5%以下である、請求項1に記載のポリイミドワニス。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のポリイミドワニスを硬化したポリイミド硬化物。
【請求項14】
前記ポリイミド硬化物は、IEC-60851-5に準じた所定の電圧による絶縁材料が耐えられる時間である電圧耐久特性が、300分以上である、請求項13に記載のポリイミド硬化物。
【請求項15】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のポリイミドワニスを含むポリイミド被覆物。
【請求項16】
請求項15に記載のポリイミド被覆物を含む電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドワニスおよびこれにより製造されるポリイミド被覆物に関し、より詳細には、電圧耐久特性に優れたポリイミドワニスおよびこれにより製造されるポリイミド被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリイミド(PI)樹脂とは、芳香族ジアンハイドライドと芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートを溶液重合してポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水し、イミド化して製造される高耐熱樹脂を称する。ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超高耐熱性樹脂として、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などに優れた特性を有しており、自動車材料、航空素材、宇宙線素材などの耐熱先端素材および絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT-LCDの電極保護膜など、電子材料に広範な分野にわたり用いられ、最近、光ファイバや液晶配向膜といった表示材料およびフィルム内に導電性フィラーを含有するか、表面にコーティングして、透明電極フィルムなどにも用いられている。
【0003】
特に、モータなどのコイル用巻線として用いられる絶縁電線において、導体を被覆する絶縁層(絶縁被膜)には、優れた絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度などが求められており、絶縁層を形成する樹脂としてポリイミドを用いている。
【0004】
ただし、絶縁層または被覆物の中には、適用電圧が高い電気機器、例えば、高電圧で用いられるモータなどには、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加されるが、このような高電圧に対応可能な電圧耐久特性に優れたポリイミドは、依然として開発が必要な状況である。
【0005】
具体的には、高電圧が印加される被覆の表面には、部分放電(コロナ放電)が生じやすく、コロナ放電の発生によって局所的な温度上昇やオゾンまたはイオンの発生が引き起こされると、絶縁電線の被覆に劣化が生じることで早期に絶縁破壊を引き起こし、電気機器の寿命が短くなり得る。したがって、導体の被覆用物質、特に、高電圧が印加される被覆物としてポリイミドを用いるためには、絶縁破壊電圧性能やコロナ放電開始電圧といった電圧耐久特性の向上が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、所定の含有量の範囲のナノシリカを含み、ポリイミドワニスのゼータ電位の絶対値が高いポリイミドワニスを提供する。
【0007】
また、本発明は、電圧耐久特性およびヘイズのような物性に優れたポリイミドワニスを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記ポリイミドワニスを硬化したポリイミド硬化物を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記ポリイミドワニスを含むポリイミド被覆物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるため、特定の実施形態を例示し、詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物もしくは代替物を含むものと理解すべきである。
【0011】
本出願において用いられている用語は、単に、特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0012】
本明細書において、量、濃度、または他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値の列挙で与えられる場合、範囲が別に開示されるかに関係なく、任意の一対の任意の上の範囲の限界値または好ましい値および任意の下の範囲の限界値または好ましい値で形成されたすべての範囲を具体的に開示するものと理解すべきである。
【0013】
数値の値の範囲が本明細書において言及される場合、特に断りのない限り、その範囲は、その終点およびその範囲内の模本発明の範疇は、範囲を定義するときに言及される特定の値に限定されないものと意図される。
【0014】
本明細書において、「二無水物」は、その前駆体または誘導体を含むものと意図されるが、「二無水物酸」、「ジアンハイドライド(dianhydride)」または「酸二無水物」とも称することがある。これらは、技術的には二無水物ではない可能性があるが、それにもかかわらず、ジアミンと反応してポリアミック酸を形成し、このポリアミック酸は、またポリイミドに変換することができる。
【0015】
本明細書において、「ジアミン」は、その前駆体または誘導体を含むものと意図されるが、これらは、技術的にはジアミンではない可能性があるが、それにもかかわらず、二無水物酸と反応してポリアミック酸を形成し、このポリアミック酸は、またポリイミドに変換することができる。
【0016】
他に定義されない限り、技術的もしくは科学的な用語をはじめ、ここで用いられているすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に用いられている辞書に定義されているもののような用語は、関連技術の文脈上有している意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであり、本出願において明白に定義しない限り、理想的もしくは過剰に形式的な意味に解釈されない。前記発明の実現のための具体的な内容を下記のように説明する。
【0017】
ポリイミドワニス
本発明は、電圧耐久特性が向上し、導体被覆の用途に使用可能なポリイミドワニスに関する。
【0018】
本発明の一側面において、ポリアミック酸およびナノシリカを含むポリイミドワニスであって、前記ナノシリカは、前記ポリアミック酸の固形分に対して5~23重量%を含み、前記ポリイミドワニスは、ゼータ電位(zeta potential)の絶対値が1~30mVである、ポリイミドワニスを提供する。
【0019】
ここで、ゼータ電位(zeta potential)は、液体上に浮遊するコロイド粒子の電位差である。溶液に分散している粒子は、表面に電気的に負(-)または正(+)の電荷を帯びているが、(-)電荷を帯びているコロイド粒子の周りに(+)イオンの濃度が高くなって固定層(Stern Layer)をなす。固定層の外には拡散層(Diffuse Layer)があるため、(+)イオンの濃度が減少し、(-)、(+)イオンが互いにバランスを取る。拡散層の開始点と(-)、(+)イオンがバランスを取る点との電位差をゼータ電位といる。このゼータ電位は、分散液内で荷電した粒子間の反発力の強度などを示すことから、分散したゾルの安定性を評価する尺度として用いられる。(-)あるいは(+)のゼータ電位値が高いほど、粒子間の電気的な反発力が大きいため、粒子間の距離が離れて凝集現象なしに安定した状態をなす。ゼータ電位の値で分散安定性の尺度を確認することができる。すなわち、ゼータ電位の絶対値が大きいほど、分散性に優れることを意味する。また、溶媒、濃度、pH、官能基、粒子の表面特性に応じて互いに異なるゼータ電位値を有し得るため、安定性の尺度で比較することが好ましい。
【0020】
ナノシリカ
本発明のポリイミドワニスは、電圧耐久特性などの物性を改善するために、無機粒子を含むことができ、前記無機粒子は、平均粒子径が1000nm以下のナノサイズの二酸化ケイ素(SiO)微粒子であるナノシリカであり、その形態および形状は、特に制限されない。
【0021】
また、前記ナノシリカは、前記ポリアミック酸の固形分に対して、5~23重量%を含むことができる。例えば、前記ナノシリカ含有量の下限は、5.5重量%、6.0重量%、6.5重量%、7.0重量%、8.0重量%、9.0重量%、10.0重量%または11.0重量%以上であることができる。また、前記ナノシリカ含有量の上限は、22.0重量%、21.5重量%、21.0重量%、20.5重量%、20.0重量%、19.0重量%、18.5重量%、18.0重量%、17.0重量%、16.0重量%、15.0重量%、14.0重量%、13.5重量%または13.0重量%以下であることができる。前記ナノシリカの含有量が5重量%未満である場合、電圧耐久特性の向上に効果的ではなく、23重量%を超える場合、物性の低下が現れ得るため、好ましくない。ここで、前記ポリアミック酸の固形分は、重合反応に用いられた二無水物単量体およびジアミン単量体の総量である。
【0022】
前記ナノシリカは、ゼータ電位の絶対値が、10.0mV~40.0mVであることができる。例えば、前記ナノシリカのゼータ電位の絶対値の下限は、10.5mV以上、11.0mV以上、11.5mV以上、12.0mV以上、12.5mV以上、13.0mV以上、13.5mV以上、14.0mV以上、14.5mV以上、15.0mV、16.0mVまたは17.0mV以上であることができ、上限は、38.0mV以下、35.0mV以下、32.0mV以下、30.0mV以下、28.0mV以下、27.0mV以下、26.0mV以下、25.0mV以下、24.0mV以下、23.5mV以下、23.0mV以下、22.5mV以下、22.0mV以下、21.0mV以下、20.0mV以下、19.0mVまたは18.0mV以下であることができる。前記ナノシリカのゼータ電位の絶対値の範囲を制御することにより、ポリイミドワニス内でナノシリカ間の絡み合い現象が発生することなく、高い分散性を維持することができ、これにより、電圧耐久特性(耐コロナ性)を向上させることができる。ここで、ゼータ電位は、有機溶媒に分散したナノシリカ(シリカゾル)のゼータ電位であり、ここで、前記シリカゾルのpHが、2~12であることができる。
【0023】
一実施形態において、有機溶媒に分散したナノシリカのゼータ電位(zeta potential)の測定のために、BettersizeのBenano180 zeta pro装備を用いて、装備に有機溶媒(分散媒)の屈折率、粘度、誘電定数を入力して測定した。前記有機溶媒として、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジエチルホルムアミド(DEF)からなる群から選択されるいずれか一つを用いることができる。
【0024】
前記有機溶媒は、例えば、25℃で、屈折率(Refractive index)が1.2~1.6であり、粘度(Viscosity)が0.5~2.0cPであり、誘電率(Dielectric constant)が30~40であることができる。好ましくは、25℃で、屈折率が1.3~1.5であり、粘度が0.7~1.7cPであり、誘電率が32~39であることができ、より好ましくは、25℃で、屈折率が1.35~1.47であり、粘度が0.8~1.0cPであり、誘電率が35~38.5であることができ、さらに好ましくは、25℃で、屈折率が1.4~1.45であり、粘度が0.85~0.95cPであり、誘電率が37~38であることができる。
【0025】
一実施形態において、ジメチルアセトアミドに分散したナノシリカ(ここで、シリカ固形分濃度30wt%)を用いることができる。
【0026】
また、前記ナノシリカは、平均粒子径が、1~200nm、具体的には、例えば、5~150nm、5~100nm、5~70nm、10~50nm、または10~30nmであることができる。前記平均粒子径は、BET、SEM、ゼータポテンシャル(zeta potential)などの装備により測定することができる。
【0027】
また、前記ナノシリカは、有機シランで表面改質されたナノシリカであることができる。
【0028】
また、有機シランで表面改質されたナノシリカの前記有機シランは、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(メタクリルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-トリルトリエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ジイソプロピルエチルアミンフェニルトリメトキシシラン(N,N-Diisopropylethylamine phenyltrimethoxysilane)、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glycidoxypropyl trimethoxysilane:GPTMS)、アミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxy-silane:APTMS)、フェニルトリメトキシシラン(Phenyltrimethoxysilane:PTMS)およびフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(N-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilane:PAPTES)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0029】
また、前記有機シランで表面改質されたナノシリカは、ナノシリカの表面の末端に少なくとも一つのフェニル基を含む化合物および末端に少なくとも一つのアミン基、ヒドロキシ基、チオール基またはエポキシド基を含む化合物が結合していてもよい。具体的には、末端に少なくとも一つのフェニル基を含む化合物は、フェニルトリメトキシシラン(Phenyltrimethoxysilane:PTMS)またはフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(N-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilane:PAPTES)であることができる。また、末端に少なくとも一つのアミン基、ヒドロキシ基、チオール基またはエポキシド基を含む化合物は、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glycidoxypropyl trimethoxysilane:GPTMS)またはアミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxy-silane:APTMS)であることができる。
【0030】
前記有機シランで表面改質されたナノシリカは、有機シランでナノシリカに表面処理を施すことで製造することができる。例えば、有機シランを酸性または塩基性の条件下で昇温し、約1~24時間表面処理を施すことで、ナノシリカを取得することができる。また、表面改質は、他の公知の方法により達成することができ、例えば、溶媒に有機シランを混合した後、10~100℃または20~60℃の温度で、1~10時間または1~5時間反応させることで、表面改質されたナノシリカを得ることができる。ナノシリカの表面に二つ以上の化合物を結合するためには、前記方法をそれぞれ行うことができる。
【0031】
本発明の有機シランで表面改質されたナノシリカにより、ポリイミドワニス内で無機粒子の凝集が防止され、化合物の官能基により固形分(ポリアミック酸)との相互作用を高めて、分散性および混和性を向上させることができる。
【0032】
ポリアミック酸
本発明において、前記ポリアミック酸が、二無水物単量体およびジアミン単量体を重合単位として含むことができる。
【0033】
前記二無水物単量体は、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンハイドライド(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンハイドライド、p-フェニレンビス(トリメリティックモノエステルアシッドアンハイドライド)、p-ビフェニレンビス(トリメリティックモノエステルアシッドアンハイドライド)、m-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンハイドライド、p-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンハイドライド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンハイドライド、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンジアンハイドライド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライドおよび4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンハイドライドからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0034】
具体的には、前記二無水物単量体は、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなる群から選択される1種以上を含むことができ、好ましくは、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)を含むことができる。
【0035】
また、前記ジアミン単量体は、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、2,2-ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)、メタフェニレンジアミン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-tolidine)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよび2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0036】
具体的には、前記ジアミン単量体は、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、2,2-ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)および1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)からなる群から選択される1種以上を含むことができ、好ましくは、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を含むことができる。
【0037】
前記ポリアミック酸は、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)および4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を重合単位として含むことができる。
【0038】
本発明において、全体の二無水物単量体のうち、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)が、50モル%以上の比率で含まれることができ、具体的には、60モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、99モル%以上または100モル%以上の比率で含まれることができる。
【0039】
また、全体のジアミン単量体のうち、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)が、50モル%以上の比率で含まれることができ、具体的には、60モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、99モル%以上または100モル%以上の比率で含まれることができる。
【0040】
本発明のポリアミック酸は、ジアミン単量体100モル%に対して、前記二無水物単量体が、95~105モル%であることができ、例えば、下限は、96モル%以上、97モル%以上、98モル%以上、99モル%以上または99.5モル%以上であることができ、上限は、104モル%以下、103モル%以下、102モル%以下、101モル%以下または100.5モル%以下であることができる。一実施形態において、ジアミン単量体と二無水物単量体が、実質的に等モルで反応することができる。
【0041】
また、前記二無水物単量体と前記ジアミン単量体のモル比が、6:4~4:6であることができ、好ましくは、5.5:4.5~4.5:6.5、より好ましくは、5:5であることができる。
【0042】
また、前記ポリアミック酸の固形分含有量が、10~50重量%であることができる。前記固形分含有量の下限は、例えば、13重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、23重量%以上または24重量%以上であることができ、上限は、例えば、48重量%以下、45重量%以下、43重量%以下、40重量%以下、38重量%以下、35重量%以下、33重量%以下、30重量%以下または27重量%以下であることができる。前記ポリアミック酸の固形分含有量を調節することにより、粘度の上昇を制御し、硬化過程で工程時間を短縮することができる。
【0043】
有機溶媒
本発明において、前記ポリイミドワニスは、有機溶媒をさらに含み、前記有機溶媒は、ポリアミック酸が溶解可能な有機溶媒であれば、特に限定されないが、一つの例として、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であることができる。
【0044】
具体的には、前記有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルプロパンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJCMPA)、p-クロロフェノール、o-クロロフェノール、γ-ブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)およびナフタレンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、N-メチル-ピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを用いることができる。
【0045】
また、前記有機溶媒は、ヒドロキシ基(OH)またはアミン基(NH)を含む改質剤をさらに含むことができ、前記ヒドロキシ基(OH)またはアミン基(NH)を含む改質剤の例として、エチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピロリジン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、フェノールなどが挙げられる。前記改質剤は、二無水物単量体と反応して、反応性を制御することができる。
【0046】
ポリイミドワニス
本発明において、前記ポリイミドワニスは、ゼータ電位(zeta potential)の絶対値が、1~30mVであることができる。例えば、前記ポリイミドワニスのゼータ電位の絶対値の下限は、1.5mV以上、2.0mV以上、3mV以上、4mV以上、4.3mV以上、5.0mV以上、6.0mV以上、6.5mV以上、7.0mV以上、8.0mV以上、8.5mV以上または9.0mV以上であることができ、上限は、29.5mV以下、29.0mV以下、28.0mV以下、27.0mV以下、26.0mV以下、25.0mV以下、24.0mV以下、23.0mV以下、22.0mV以下、21.5mV以下、21.0mV以下、20.0mV以下、19.0mV以下、18.0mV以下、17.0mV以下、16.0mV以下、15.0mV以下または14.0mV以下であることができる。
【0047】
前記ポリイミドワニスは、30℃の温度および1s-1のせん断速度(Shear rate)の条件で測定した粘度が、500~20,000cPの範囲内であることができる。例えば、上限は、20,000cP、15,000cP、または10,000cP以下であることができる。その下限は、特に限定されないが、1,000cP、1,200cP、1,500cPまたは1,800cP以上であることができる。前記粘度は、一実施形態において、Haake社製のRheostress 600を用いて測定したものであり得、1/sのせん断速度(Shear rate)、30℃の温度および1mmのプレートギャップの条件で測定したものであり得る。本発明は、前記粘度範囲を調節することにより、優れた工程性を有するポリイミドワニスを提供することができる。
【0048】
前記ポリイミドワニスは、ヘイズ(Haze)が、1.5%以下であることができる。例えば、前記ヘイズの上限は、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1%以下、0.9%以下または0.8%以下であることができ、下限は、特に限定されないが、0%超、0.05%以上、0.1%以上であることができる。前記ヘイズは、一実施形態において、HunterLab社製の装備を用いて、ASTM E308に準拠して測定した。
【0049】
また、本発明は、所定の範囲の高含有量のナノシリカを含み、ポリイミドワニスのゼータ電位の絶対値を高い水準で維持することにより、ポリイミドワニス内のナノシリカの凝集を防止し、優れた分散性を有することから、低い水準のヘイズを実現することができた。
【0050】
ポリイミドワニスの硬化物および被覆物
本発明の他の一側面において、前記ポリイミドワニスを硬化したポリイミド硬化物を提供し、前記ポリイミド硬化物は、ポリイミドフィルムであることができる。
【0051】
前記ポリイミド硬化物は、ヘイズ(Haze)が、1.5%以下であることができる。例えば、前記ヘイズの上限は、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下または0.5%以下であることができ、下限は、特に限定されないが、0%超、0.05%以上、または0.1%以上であることができる。前記ヘイズは、一実施形態において、HunterLab社製の装備を用いて、ASTM E308に準拠して測定しており、ここで、前記ポリイミド硬化物の厚さは、20±1.0μmである。
【0052】
前記ポリイミド硬化物は、IEC-60851-5に準じた所定の電圧による絶縁材料が耐えられる時間である電圧耐久特性が、300分以上であることができ、前記電圧耐久特性の下限は、例えば、400分以上,500分以上、550分以上、600分以上、650分以上、700分以上、750分以上、800分以上、850分以上、900分以上、950分以上、970分以上、980分以上、1000分以上、1100分以上、1200分以上、1300分以上、1400分以上、1500分以上または2000分以上であることができる。上限は、特に制限されないが、4,000分以下であることができる。前記電圧耐久特性は、ポリイミド被覆物を治具に連結し、AC 1.5kVの電圧(周波数60Hz)を印加し、5mA以上のリーク電流が検出されるまでの時間を測定した。ここで、前記ポリイミド硬化物の厚さは、26±1.0μmであることができる。
【0053】
また、本発明は、所定の範囲の高含有量のナノシリカを含み、ポリイミドワニスのゼータ電位の絶対値を高い水準で維持することにより、電圧耐久特性を向上させることができた。
【0054】
本発明の他の一側面において、前記ポリイミド硬化物を含むポリイミド被覆物を提供する。
【0055】
一実施形態において、前記ポリイミド被覆物の製造方法は、ポリイミドワニスを導体の表面にコーティングするステップと、前記導体の表面にコーティングされたポリイミドワニスをイミド化するステップとを含むことができる。
【0056】
前記導体は、銅または銅合金からなる銅線であることができるが、銀泉などの他の金属材料からなる導体や、アルミニウム、スズメッキ導線などの各種の金属メッキ線も導体として含まれることができる。前記導体と被覆物の厚さは、KS C 3107に準拠することができる。前記導体の直径は、0.3~3.2mmの範囲内であることができ、被覆物の標準被膜厚さ(最大被膜厚さと最小被膜厚さの平均値)は、0種が21~194μm、1種が14~169μm、2種が10~31μmであることができる。また、導体の断面の形状は、環線、平角線、六角線などであることができるが、これにのみ制限されるものではない。
【0057】
本発明の他の一側面において、前記ポリイミド被覆物を含む電線を提供する。
【0058】
具体的には、前記ポリイミドワニスを電線の表面にコーティングし、イミド化して製造されたポリイミド被覆物を含む被覆電線であることができる。一具体例において、前記被覆電線は、電線と、上述のポリイミドが前記電線の表面にコーティングされてイミド化した被覆物とを含むことができる。
【0059】
また、本発明は、前記被覆電線を含む電子装置を提供することができる。前記電子装置としては、例えば、電気モータが挙げられる。
【0060】
本発明の他の一側面において、ポリイミドワニスから形成された成形体を含む部品を提供する。
【0061】
具体的には、前記部品は、電子回路基板部材、半導体デバイス、リチウムイオン電池部材、太陽電池部材、燃料電池部材、モータ巻線、エンジン周辺部材、塗料、光学部品、放熱材、電磁波シールド材、サージ部品、歯科材、スライドコーティング、および静電チャックであることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明のポリイミドワニスは、所定の範囲のナノシリカを含み、高いポリイミドワニスのゼータ電位の絶対値を有することにより、電圧耐久特性に優れ、且つヘイズのような物性にも優れる効果がある。
【0063】
また、本発明は、電気車(EV、Electric Vehicle)用巻線に用いるための導体被覆用として優れた活用度を示す効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の理解に資するために、実施例を提示する。下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであって、実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0065】
<実施例>
製造例1.有機シランで表面処理されたナノシリカ
有機シランで表面処理されたナノシリカ1(ジメチルアセトアミド分散シリカゾル、シリカ固形分濃度30wt%、シリカ平均粒子径10~30nm、平均ゼータ電位(絶対値)17.86mV)を準備した。ここで、ゼータ電位は、BettersizeのBenano180 zeta pro装備を用いて、装備にジメチルアセトアミドの屈折率、粘度、誘電定数を入力して2回測定し、算術平均して得られた値である。
【0066】
製造比較例1.ナノシリカ
ナノシリカ(N-メチルピロリドン分散シリカゾル、シリカ固形分濃度30wt%、シリカ平均粒子径10~20nm、平均ゼータ電位(絶対値)8.42mV)を準備した。ここで、ゼータ電位は、BettersizeのBenano180 zeta pro装備を用いて、装備にN-メチルピロリドンの屈折率、粘度、誘電定数を入力して2回測定し、算術平均して得られた値である。
【0067】
実施例1.ポリイミドワニス
実施例1-1
窒素ガスで置換した反応容器の中にジメチルアセトアミド(DMAc)および改質剤(0~2モル%)を含む有機溶媒を投入し、製造例1による有機シランで表面処理されたナノシリカ(ポリイミド固形分に対して6重量%)と二無水物単量体としてピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)(92モル%)を混合し、40℃で30分間攪拌した。次に、ジアミン単量体として、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)(100モル%)とピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)(8モル%)を添加し、40℃で1時間程度攪拌および重合し、ポリイミドワニスを製造した(ポリイミド固形分25wt%)。
【0068】
実施例1-2~1-7
下記表1の記載のように、製造例1による有機シランで表面処理されたナノシリカを異なる含有量で使用する以外は、実施例1-1と同じ方法でポリイミドワニスを製造した。
【0069】
比較例1-1~1-2
製造例1による有機シランで表面処理されたナノシリカを使用する代わりに、製造比較例1によるナノシリカを使用し、下記表1の記載のように異なる含有量で使用する以外は、実施例1-1と同じ方法でポリイミドワニスを製造した。
【0070】
比較例1-3~1-4
下記表1の記載のように、製造例1による有機シランで表面処理されたナノシリカを異なる含有量で使用する以外は、実施例1-1と同じ方法でポリイミドワニスを製造した。
【0071】
下記表1に、実施例1-1~1-7および比較例1-1~1-4のポリアミック酸の組成、固形分、ナノシリカの種類および含有量を記載した。
【0072】
【表1】
実施例2.ポリイミド硬化物(ポリイミドフィルム)
実施例2-1
前記実施例1-1によって製造されたポリイミドワニスを2,000rpmの高速回転により気泡を除去した。次に、スピンコータを用いて、ガラス基板(230mm×230mm、厚さ:0.55mm)上に脱泡したポリイミドワニスを塗布した。
【0073】
次いで、窒素雰囲気下で、110℃(20分)→150℃(20分)→200℃(20分)→300℃(20分)の条件で硬化し、フィルム形態のポリイミド硬化物(厚さ20±1.0μmまたは26±1.0μm)を取得した。
【0074】
実施例2-2~2-7
実施例2-1で、実施例1-1によるポリイミドワニスを使用する代わりに、実施例1-2~1-7によるポリイミドワニスをそれぞれ使用する以外は、実施例2-1と同じ方法でポリイミド硬化物を製造した。
【0075】
比較例2-1~2-4
実施例2-1で、実施例1-1によるポリイミドワニスを使用する代わりに、比較例1-1~1-4によるポリイミドワニスをそれぞれ使用する以外は、実施例2-1と同じ方法でポリイミド硬化物を製造した。
【0076】
実施例3.ポリイミド被覆物
実施例3-1
コーティング硬化炉内で、実施例1-1によるポリイミドワニスを角線形態の銅線に20~28回コーティング、乾燥および硬化する過程を繰り返して行い、被覆厚さ110±10μmのポリイミド被覆物を含む電線を製造した。
【0077】
実施例3-2~3-7
実施例3-1で、実施例1-1によるポリイミドワニスを使用する代わりに、実施例1-2~1-7によるポリイミドワニスをそれぞれ使用する以外は、実施例3-1と同じ方法でポリイミド被覆物を含む電線を製造した。
【0078】
<実験例>
実験例1.ポリイミドワニスのゼータ電位の比較
BettersizeのBenano180 zeta pro装備を用いて、前記装備にジメチルアセトアミドの屈折率、粘度、誘電定数を入力して実施例および比較例によるポリイミドワニスのゼータ電位を2回測定し、算術平均して平均値を得た。下記表2に、算術平均して得られた平均値の絶対値を記載した。
【0079】
【表2】
【0080】
表2によると、比較例1-1および1-2のように、通常、ナノシリカの含有量が増加すると、ワニスのゼータ電位が減少する傾向を示す。しかし、実施例1-1~1-7の場合、ナノシリカの含有量が増加するにつれて、ワニスのゼータ電位も増加する傾向性を確認することができた。これは、本発明が、ゼータ電位の絶対値が大きいナノシリカを用いることから分散性が高くなり、ワニスに所定の範囲の高含有量のナノシリカを含んでも、ワニスのゼータ電位が減少せず、高く示されることが認められる。
【0081】
実験例2.ポリイミドの物性評価
(1)電圧耐久特性
実施例および比較例のポリイミドフィルム(厚さ26±1.0μm)を治具に連結し、AC 1.5kVの電圧(周波数60Hz)を印加し、5mA以上のリーク電流が検出されるまでの時間を測定し、IEC-60851-5に準じた電圧耐久特性を測定した。下記表3に結果を記載した。
【0082】
(2)ヘイズ(Haze)
HunterLab社製の装備を用いて、ASTM E308に準拠して、実施例および比較例のポリイミドフィルム(厚さ20±1.0μm)またはワニスのヘイズ(Haze)を測定し、その結果を下記表3または表4に示した。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
表3によると、ゼータ電位の絶対値が大きいナノシリカを使用することにより、本発明のポリイミドフィルムは、電圧耐久特性が、比較例2-1および2-2に比べて著しく優れていることが認められた。また、実施例2-1~2-7は、ポリイミド固形分に対してナノシリカを6~20重量%含むことにより、電圧耐久特性が著しく向上したが、前記含有量の範囲から逸脱した比較例2-3~2-4の場合、電圧耐久特性が300分未満と非常に低く示されるか、フィルム化せず、測定することができなかった。
【0086】
また、表3および表4によると、本発明のポリイミドワニスおよびそのフィルム形態の硬化物がいずれも低い水準のヘイズ特性を実現することができた。具体的には、実施例1-1~1-7によるワニスの場合、ヘイズが0.7%以下に確認され、実施例2-1~2-7によるフィルムの場合、ヘイズが0.8%以下に確認された。これは、ナノシリカが凝集せず、均一に分散していることを意味する。
【0087】
したがって、本発明は、所定の範囲の高含有量のナノシリカを含み、且つポリイミドワニスのゼータ電位の絶対値を高い水準で維持することができ、且つ優れた電圧耐久特性を実現し、ヘイズのような物性にも優れる効果がある。
【0088】
本明細書は、本発明の技術分野において通常の知識を有する者であれば、十分に認識し、類推することができる内容は、その詳細な記載を省略しており、本明細書に記載の具体的な例示以外に本発明の技術的思想や必須構成を変更しない範囲内で、より様々な変形が可能である。したがって、本発明は、本明細書において具体的に説明し、例示したものと異なる方式にも実施することができ、これは、本発明の技術分野において通常の知識を有する者であれば、理解することができる事項である。