(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003319
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】量子ビットデバイス、量子ビットデバイスを製造するための方法、及びその方法のためのコンタクト層
(51)【国際特許分類】
H10N 60/12 20230101AFI20241226BHJP
H10N 60/83 20230101ALI20241226BHJP
G06N 10/40 20220101ALI20241226BHJP
G06F 7/38 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H10N60/12 A
H10N60/83
G06N10/40
G06F7/38 510
G06F7/38 610
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077685
(22)【出願日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】23180640
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521124319
【氏名又は名称】テラ クアンタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TERRA QUANTUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ブロスコ・ヴァレンティナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィノコール・ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ポッチャ・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴール・ウリ
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AA06
4M113AA16
4M113AA23
4M113AC45
4M113AD66
4M113BA14
4M113BA15
4M113CA12
4M113CA13
4M113CA16
4M113CA17
4M113CA31
4M113CA42
4M113CA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】量子ビットデバイスの製造方法及び量子ビットデバイスを製造するためのコンタクト層を提供する。
【解決手段】量子ビットデバイス100は、第1、第2の香典導体材料を夫々含む第1、第2の超伝導体層102a、102bと、コンデンサ132と、第1、第2の相互接続部108a、108bと、を備える。第1の超伝導体材料は、共有結合した原子層126と、第1の超伝導体材料の共有結合した原子層に垂直な第1のc軸と、を有する第1の異方性層状材料である。第2の超伝導体層は、第1、第2の超伝導体材料の間にジョセフソン接合120を形成するために、第1の超伝導体層上に配置され、ジョセフソン接合において位置合わせされた第1、第2のc軸は、両方の超伝導体層と交差する。コンデンサは、第1、第2の電極130a、130bを備える。第1、第2の相互接続部は、夫々第1、第2の電極及び第1、第2の超伝導体層を電気的に接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ビットデバイス(100)であって、
第1の超伝導体材料を含む第1の超伝導体層(102a)であって、前記第1の超伝導体材料が、共有結合した原子層(126)と、前記第1の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に垂直な第1のc軸と、を有する第1の異方性層状材料である、第1の超伝導体層(102a)と、
第2の超伝導体材料を含む第2の超伝導体層(102b)であって、前記第2の超伝導体材料が、共有結合した原子層(126)と、前記第2の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に垂直な第2のc軸と、を有する第2の異方性層状材料である、第2の超伝導体層(102b)と
を備え、
前記第2の超伝導体層(102b)が、前記第1の超伝導体材料と前記第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合(120)を形成するために、前記第1の超伝導体層(102a)上に配置され、
前記第1のc軸及び前記第2のc軸が、前記ジョセフソン接合(120)において互いに位置合わせされ、
前記ジョセフソン接合(120)において前記位置合わせされた第1及び第2のc軸が、前記第1の超伝導体層(102a)と前記第2の超伝導体層(102b)との両方と交差し、
前記量子ビットデバイス(100)が、
第1の電極(130a)と、第2の電極(130b)と、を備えるコンデンサ(132)と、
前記第1の電極(130a)及び前記第1の超伝導体層(102a)を電気的に接続する第1の相互接続部(108a)と、
前記第2の電極(130b)及び前記第2の超伝導体層(102b)を電気的に接続する第2の相互接続部(108b)と
を更に備え、
前記コンデンサ(132)が、前記第1の超伝導体層(102a)と前記第2の超伝導体層(102b)との両方の垂直位置を超える垂直位置に配置される、
量子ビットデバイス(100)。
【請求項2】
電気絶縁要素(114)を更に備え、
前記電気絶縁要素(114)が、前記コンデンサ(132)の前記垂直位置と、前記第1の超伝導体層(102a)及び/又は前記第2の超伝導体層(102b)の前記垂直位置との間の垂直位置に配置され、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)が、前記第1の超伝導体層(102a)と前記第1の電極(130a)との間に配置され、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)が、前記第2の超伝導体層(102b)と前記第2の電極(130b)との間に配置され、並びに/あるいは、
前記第1の相互接続部(108a)の少なくとも一区画が、前記電気絶縁要素(114)内に配置され、並びに/あるいは、
前記第1の相互接続部(108a)が、前記電気絶縁要素(114)内に配置され、並びに/あるいは、
前記第2の相互接続部(108b)の少なくとも一区画が、前記電気絶縁要素(114)内に配置され、並びに/あるいは、
前記第2の相互接続部(108b)が、前記電気絶縁要素(114)内に配置され、並びに/あるいは、
前記第1の相互接続部(108a)及び/又は前記第2の相互接続部(108b)が、前記電気絶縁要素(114)を通って、任意選択で、前記電気絶縁要素(114)の底面から前記電気絶縁要素(114)の上面まで延在し、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、若しくはアモルファスシリコンを含むか、又は炭化ケイ素、窒化ケイ素、若しくはアモルファスシリコンから構成され、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)の横方向の延長部が、前記第1の超伝導体層(102a)の横方向の延長部、及び前記第2の超伝導体層(102b)の横方向の延長部を完全にカバーし、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)が、垂直方向に沿った厚みが300nm~600nmの範囲内である、
請求項1に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項3】
水密、防湿、酸素密、及び/又は気密封止材など、前記ジョセフソン接合(120)の封止材を更に備え、前記封止材が、前記電気絶縁要素(114)と、任意選択で、前記ジョセフソン接合(120)が配置される基材(140)と、を備える、
請求項2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項4】
前記第1の超伝導体材料が、前記第1の超伝導体材料の共有結合した原子層(126)に平行な第1の配向(118a,620)を含み、前記第2の超伝導体材料が、前記第2の超伝導体材料の共有結合した原子層(126)に平行な第2の配向(118b,622)を含み、前記ジョセフソン接合(120)において前記第1の超伝導体材料及び前記第2の超伝導体材料が、所定の角度に対応する、前記第1の配向(118a,620)と前記第2の配向(118b,622)との間の角度(θ)で配置される、
請求項1又は2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項5】
前記ジョセフソン接合(120)において前記第1の超伝導体材料及び前記第2の超伝導体材料が、前記第1の配向(118a,620)と前記第2の配向(118b,622)との間の角度(θ)が38~44.9°の範囲内に配置され、並びに/あるいは、
前記第1のc軸が、前記第1の超伝導体材料の基本格子ベクトルに対応し、前記第2のc軸が、前記第2の超伝導体材料の基本格子ベクトルに対応し、並びに/あるいは、
前記第1の配向(118a,620)が、前記第1のc軸に垂直な第1の基本格子ベクトルに、特に、前記第1のc軸に垂直な前記第1の基本格子ベクトルの方向に、対応し、並びに/あるいは、
前記第2の配向(118b,622)が、前記第2のc軸に垂直な第2の基本格子ベクトルに、特に、前記第1のc軸に垂直な前記第2の基本格子ベクトルの方向に、対応し、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)が、ファンデルワールスギャップ(128)によって分離され、並びに/あるいは、
前記第1の配向(118a,620)が、前記第1の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に平行な前記第1の超伝導体材料の格子ベクトルに対応し、前記第2の配向(118b,622)が、前記第2の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に平行な前記第2の超伝導体材料の対応する格子ベクトルに対応し、任意選択で、前記第1の超伝導体材料及び前記第2の超伝導体材料が、同じ結晶構造及び/又は同じ結晶単位胞を有する、並びに/あるいは同じ超伝導体材料である、
請求項4に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項6】
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、特に、少なくとも4K、又は少なくとも8K、又は少なくとも15K、又は少なくとも30K、又は少なくとも50K、又は少なくとも70K、又は少なくとも78Kの臨界温度を有する高温超伝導体材料であり、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、タイプIIの超伝導体材料であり、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、d波超伝導体材料であり、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、特に、少なくとも20原子%又は少なくとも30原子%までの酸素又はカルコゲナイドを含み、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、特に、n=1、又は2、又は3、又は4である化学組成Bi2Sr2Can-1CunO2n+4+xを含む、
請求項1又は2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項7】
マイクロ波共振器(138)を更に備え、
任意選択で、前記マイクロ波共振器(138)が、任意選択で、水平方向に沿って、前記コンデンサ(132)に容量結合され、並びに/あるいは、
任意選択で、前記マイクロ波共振器(138)が、前記第1の超伝導体層(102a)と前記第2の超伝導体層(102b)との両方の前記垂直位置を超える垂直位置に配置され、並びに/あるいは、
任意選択で、前記マイクロ波共振器(138)が、低温超伝導体材料などの超伝導体材料を、又はAl、Nb、NbN、若しくはTiNなどの元素若しくは窒化物超伝導体材料を、含むか、あるいは前記超伝導体材料又は前記元素若しくは窒化物超伝導体材料から、構成され、並びに/あるいは、
任意選択で、前記マイクロ波共振器(138)の共振周波数が、1GHz~15GHzの範囲内にある、
請求項1又は2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項8】
前記第1の電極(130a)、及び/又は前記第2の電極(130b)、及び/又は前記第1の相互接続部(108a)、及び/又は前記第2の相互接続部(108b)が、低温超伝導体材料などの超伝導体材料を、又はAl、Nb、NbN、若しくはTiNなどの元素若しくは窒化物超伝導体材料を、含むか、あるいは前記超伝導体材料又は前記元素若しくは窒化物超伝導体材料から、構成される、
請求項1又は2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項9】
量子ビットデバイス(100)を製造するための方法(400)であって、前記方法が、
第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合(120)を提供するステップ(402)と、
前記ジョセフソン接合(120)とは別のコンタクト層(104)を提供するステップ(404)であって、前記コンタクト層(104)が、
電気絶縁要素(114)と、
前記電気絶縁要素(114)を通って延在する第1の相互接続部(108a)と、
前記電気絶縁要素(114)を通って延在する第2の相互接続部(108b)と
を備える、ステップ(404)と、
前記第1の相互接続部(108a)と前記第1の超伝導体材料との間に電気コンタクトを形成し、前記第2の相互接続部(108b)と前記第2の超伝導体材料との間に電気コンタクトを形成するために、前記コンタクト層(104)を前記ジョセフソン接合(120)上に配置するステップ(406)とを含む、
方法。
【請求項10】
前記コンタクト層(104)が前記ジョセフソン接合(120)上に配置されている間に、前記ジョセフソン接合(120)を第1の温度より低い温度に冷却するステップ、を更に含み、前記第1の温度が、0°C、又は250K、又は230K、又は210K、又は190K、又は170K、又は150K、又は130Kである、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コンタクト層(104)を前記ジョセフソン接合(120)上に配置する前記ステップが、
転写デバイス(412)を前記コンタクト層(104)に取り付けるステップと、
前記転写デバイス(412)を前記コンタクト層(104)に取り付けるために、前記転写デバイス(412)を第2の温度より低い温度まで冷却するステップと
を含み、
前記転写デバイス(412)が、前記転写デバイス(412)の温度が前記第2の温度より低いときに強い接着をもたらし、前記転写デバイス(412)の前記温度が前記第2の温度より高いときに弱い接着をもたらすように適合され、並びに/あるいは、
前記転写デバイス(412)が、エラストマーを含むか、又は前記エラストマーから構成され、任意選択で、前記第2の温度が、前記エラストマーのガラス転移温度に対応し、及び/又は前記エラストマーが、PTFE若しくはPDMSであり、並びに/あるいは、
前記第2の温度が、前記第1の温度以下である、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記コンタクト層(104)を前記ジョセフソン接合(120)上に配置する前記ステップが、前記転写デバイス(412)を前記コンタクト層(104)から解放するステップ、を含み、前記転写デバイス(412)を前記コンタクト層(104)から解放する前記ステップが、前記転写デバイス(412)を前記第2の温度と前記第1の温度との間の温度に加熱するステップ、を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の超伝導体材料が、共有結合した原子層(126)と、前記第1の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に垂直な第1のc軸と、を有する第1の異方性層状材料であり、
前記第2の超伝導体材料が、共有結合した原子層(126)と、前記第2の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に垂直な第2のc軸と、を有する第2の異方性層状材料であり、
前記第1のc軸及び前記第2のc軸が前記ジョセフソン接合(120)において互いに位置合わせするように、並びに/あるいは前記ジョセフソン接合(120)において前記第1のc軸と前記第2のc軸との両方が前記第1の超伝導体材料と前記第2の超伝導体材料との両方と交差するように、前記ジョセフソン接合(120)が提供される、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の超伝導体材料と前記第2の超伝導体材料との間に前記ジョセフソン接合(120)を提供する前記ステップが、
前記第1の異方性層状材料の第1の超伝導体層(102a)を基材(140)上に配置するステップと、
前記ジョセフソン接合(120)を生成するために、前記第2の異方性層状材料の第2の超伝導体層(102b)を前記第1の超伝導体層(102a)上に配置するステップと、
任意選択で、前記第1の超伝導体層(102a)及び前記第2の超伝導体層(102b)を配置する前記ステップの前に、
前記第1の超伝導体層(102a)を生成するために前記第1の異方性層状材料を開裂するステップ、及び任意選択で、前記第1の異方性層状材料を開裂するステップの間に、前記第1の温度より低い温度に前記第1の異方性層状材料を保つステップ、並びに/あるいは、
前記第2の超伝導体層(102b)を生成するために前記第2の異方性層状材料を開裂するステップ、及び任意選択で、前記第2の異方性層状材料を開裂するステップの間に、前記第1の温度より低い温度に前記第2の異方性層状材料を保つステップ、
を含み、
任意選択で、前記第1の異方性層状材料を開裂する前記ステップ、及び/又は前記第2の異方性層状材料を開裂する前記ステップ、及び/又は前記第1の超伝導体層(102a)を前記基材(140)上に配置する前記ステップ、及び/又は前記第2の超伝導体層(102b)を前記第1の超伝導体層(102a)上に配置する前記ステップが、エラストマーを含むか、又は前記エラストマーから構成される転写デバイス(412)を使用して実施される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
量子ビットデバイス(100)を製造するためのコンタクト層(104)であって、前記コンタクト層(104)が、
電気絶縁要素(114)と、
前記電気絶縁要素(114)上に配置された第1の電極(130a)及び第2の電極(130b)を備えるコンデンサ(132)と、
前記第1の電極(130a)に電気的に接続され、前記電気絶縁要素(114)を通って、前記電気絶縁要素(114)の底面から前記電気絶縁要素(114)の上面まで延在する、第1の相互接続部(108a)と、
前記第2の電極(130b)に電気的に接続され、前記電気絶縁要素(114)を通って前記電気絶縁要素(114)の前記底面から前記電気絶縁要素(114)の前記上面まで延在する、第2の相互接続部(108b)と
を備え、
前記第1の電極(130a)、前記第2の電極(130b)、前記第1の相互接続部(108a)、及び前記第2の相互接続部(108b)の各々が、それぞれの超伝導体材料を含む、
コンタクト層(104)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、d波超伝導体などの高温超伝導体を用いる量子ビットデバイスに関し、特に、トランズモンタイプと同様の量子ビットデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現代のマイクロエレクトロニクス産業は、量子コンピューティングの基礎を提供する量子ビットの広範な使用に向かう傾向と共に急速な成長を経験している。量子コンピューティングは、超高速ファクタリング(super-fast factoring)の見込み及び量子動力学の効率的なシミュレーションの可能性のために、過去数年間にわたって大きな注目を集めてきた。量子ビットを実装するための様々な物理システムに基づく量子コンピュータには多くの異なるアーキテクチャがある。これらには、原子及びイオントラップ量子コンピューティング、超伝導電荷及び磁束量子ビット、核磁気共鳴、スピン及び電荷ベースの量子ドット、核スピン量子コンピューティング、並びに光量子コンピューティングが含まれる。これらのシステムはすべて、量子情報処理において独自の利点を有する。しかしながら、イオントラップ及び超伝導量子コンピューティングなどのいくつかの先駆者が現在存在し得るとしても、この時点で他のものより明確な優位性を有する物理的実装はないようである。
【0003】
従来の超伝導量子ビットデバイスは、Al又はNbなどの低温超伝導体材料間にジョセフソン接合を備える。量子ビットデバイスは、必要なパラメータに整合するように柔軟に設計することができる。その巨視的サイズは、強い結合を可能にし、ファストゲート(fast gate)及び測定をもたらす。トランズモン超伝導量子ビットは、量子技術の最も一般的なハードウェア実装であり、Google又はIBMによって開発されたものなどの従来の超伝導量子プロセッサで使用されている。トランズモンの主な欠点は、コンデンサ内の電界とのその結合であり、コヒーレンス時間が減少し、量子ビット間のクロストーク、つまり、計算の誤差を生じさせる。
【0004】
低温超伝導体材料間のジョセフソン接合を備えるそのような従来の超伝導体ベースの量子ビットのコヒーレンス時間は、1ミリ秒に近づいている。しかしながら、それらの高品質にもかかわらず、低温超伝導体に基づく量子ビットには固有の制限がある。例えば、これらの量子ビットは、その小さい超伝導ギャップなどの低温超伝導体の固有の超伝導特性、及び約1Kという極めて低い臨界温度のために、磁場の影響を強く受ける。
【0005】
高温超伝導体を使用する超伝導量子ビットは、これらの制限のいくつかを克服する可能性がある。しかしながら、高温超伝導体ジョセフソン接合を使用した量子ビットの実際の物理的実装は、Al又はNbなどの低温超伝導体とは異なり、これらの材料に関しては、リソグラフィ構造化又は堆積技術がこれまで利用可能ではないため、技術的に困難である。従来の量子ビットデバイスの製造に使用されるリソグラフィ構造化又は堆積技術が、高温超伝導体に適用されると、それらにより、その中に欠陥の著しい密度、及び高温超伝導体材料の分解を引き起こす。
【0006】
国際公開第2022/197482号明細書には、コンデンサの導電層がファンデルワールス材料から構成される、トランズモンタイプの量子ビットを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2022/197482号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術的問題を考慮して、改良された量子ビットが必要とされている。この問題は、請求項1に記載の量子ビットデバイス、請求項9に記載の量子ビットデバイスを製造するための方法、及び請求項15に記載の量子ビットデバイスを製造するためのコンタクト層によって解決される。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様では、量子ビットデバイスは、第1の超伝導体層と、第2の超伝導体層と、コンデンサと、第1の相互接続部と、第2の相互接続部と、を備える。第1の超伝導体層は、第1の超伝導体材料を含む。第1の超伝導体材料は、共有結合した原子層と、第1の超伝導体材料の共有結合した原子層に垂直な第1のc軸と、を有する第1の異方性層状材料である。第2の超伝導体層は、第2の超伝導体材料を含む。第2の超伝導体材料は、共有結合した原子層と、第2の超伝導体材料の共有結合した原子層に垂直な第2のc軸と、を有する第2の異方性層状材料である。第2の超伝導体層は、第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合を形成するために、第1の超伝導体層上に配置される。第1のc軸及び第2のc軸は、ジョセフソン接合において互いに位置合わせされる。ジョセフソン接合において位置合わせされた第1及び第2のc軸は、第1の超伝導体層と第2の超伝導体層との両方と交差する。コンデンサは、第1の電極と、第2の電極と、を備える。第1の相互接続部は、第1の電極及び第1の超伝導体層を電気的に接続する。第2の相互接続部は、第2の電極及び第2の超伝導体層を電気的に接続する。コンデンサは、第1の超伝導体層と第2の超伝導体層との両方の垂直位置を超える垂直位置に配置される。
【0010】
この構造は、コンデンサとは独立してジョセフソン接合を設計し、提供することを可能にし、その逆も可能にする。その結果、完全に最適化された量子ビットデバイスを提供する。低温超伝導体材料と比較して、異方性層状材料を含む超伝導体層は、製造中に(例えば、それらのサイズ又は形状に関して)変動する可能性がある。本明細書の量子ビットデバイスの利点は、超伝導体層(及び/又はそれぞれジョセフソン接合)の製造の変動がコンデンサの変動に変換されないことであり、逆に、それらを、コンデンサの調整された設計によって補償することができる。コンデンサは、従来のリソグラフィ構造化又は堆積技術を使用して製造することができ、高い構造精度を提供する。
【0011】
構造は、製造技術を実施すること、又は以下で詳細に説明するコンタクト層を設けること、のそれぞれの直接の結果である。結果として得られる構造、すなわち(第1及び第2の)超伝導体材料は、リソグラフィ構造化又は堆積技術を使用して製造される構造、又はその中の(臨界温度が高い)超伝導体材料よりも、それぞれ極めて低い欠陥密度を有する。
【0012】
ジョセフソン接合は、特に実施形態では、ファンデルワールスジョセフソン接合と呼ばれることがあり、第1及び/又は第2の超伝導体材料は、ファンデルワールス材料である。
【0013】
第1及び/又は第2の異方性層状材料は、接着テープを使用して開裂可能な材料などの開裂可能材料であってもよい。
【0014】
第1の超伝導体層は、第1の超伝導体材料から構成されてもよい。
【0015】
第2の超伝導体層は、第2の超伝導体材料から構成されてもよい。
【0016】
第1のc軸は、第1の超伝導体材料の固有の結晶軸を指してもよい。
【0017】
第2のc軸は、第2の超伝導体材料の固有の結晶軸を指してもよい。
【0018】
第1及び/又は第2の超伝導体材料は、層状原子構造及び/又は結晶構造を備えてもよい。第1の(及び/又は第2の)c軸は、共有結合した層に、並びに/あるいは第1の(及び/又は第2の)超伝導体材料の層状原子構造及び/又は結晶構造のファンデルワールスギャップに、垂直であり得る。
【0019】
第1及び/又は第2の超伝導体材料は、ファンデルワールス材料であってもよい。異方性層状材料のいずれも、例えば単結晶形態の場合、原子スケールで、並びに/あるいはその電子的、光学的、及び/又は機械的特性に関して、等方性であってもよい。
【0020】
コンデンサは、ジョセフソン接合上に配置されてもよい。
【0021】
垂直線は、第1の超伝導体層と第1の電極との両方と交差してもよい。
【0022】
垂直線は、第2の超伝導体層と第2の電極との両方と交差してもよい。
【0023】
量子ビットデバイスは、電気絶縁要素を更に備えてもよい。
【0024】
電気絶縁要素は、コンデンサの垂直位置と、第1の超伝導体層及び/又は第2の超伝導体層の垂直位置と、の間の垂直位置に配置されてもよい。
【0025】
それぞれの電気絶縁要素は、第2の超伝導体層と第1の電極とが互いに電気的に絶縁されること、及び/又は第1の超伝導体層と第2の電極とが互いに電気的に絶縁されること、を確保する。更に、電気絶縁要素は、第1及び/又は第2の相互接続部のためのマトリックスを提供する。
【0026】
電気絶縁要素は、第1の超伝導体層と第2の電極との間に配置されてもよい。
【0027】
電気絶縁要素は、第2の超伝導体層と第1の電極との間に配置されてもよい。
【0028】
電気絶縁要素は、第1の超伝導体層と第1の電極との間に配置されてもよい。
【0029】
電気絶縁要素は、第2の超伝導体層と第2の電極との間に配置されてもよい。
【0030】
第1の相互接続部の少なくとも一区画は、電気絶縁要素内に配置されてもよい。
【0031】
第1の相互接続部は、電気絶縁要素内に配置されてもよい。
【0032】
第2の相互接続部の少なくとも一区画は、電気絶縁要素内に配置されてもよい。
【0033】
第2の相互接続部は、電気絶縁要素内に配置されてもよい。
【0034】
第1の相互接続部及び/又は第2の相互接続部は、電気絶縁要素を通って、任意選択で、その底面から、その上面まで延在してもよい。
【0035】
電気絶縁要素は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、又はアモルファスシリコンを含むか、又はそれらから構成されてもよい。
【0036】
それぞれの材料は、十分な電気絶縁をもたらす。更に、それらは、十分に薄い層(例えば、600nm以下)として提供されるとき、機械的に可撓性であり、これは、それぞれの量子ビットデバイスの製造に有益である。
【0037】
電気絶縁要素の横方向の延長部は、第1の超伝導体層の横方向の延長部、及び第2の超伝導体層の横方向の延長部を完全にカバーしてもよい。
【0038】
それぞれの実施形態では、電気絶縁要素はまた、第1の超伝導体層及び/又は第2の超伝導体層の機械的保護を提供し、並びにいくつかの実施形態では、例えば、水分に、又は酸素などの反応性ガスに、対する封止を提供する。
【0039】
電気絶縁要素は、300nm~600nmの範囲内の垂直方向に沿った厚さを有してもよい。
【0040】
量子ビットデバイスは、水密、防湿、酸素密及び/又は気密封止材など、ジョセフソン接合の封止材を更に備えてもよく、その封止材は、電気絶縁要素と、任意選択で、ジョセフソン接合が配置される基材と、を備える。
【0041】
第1の超伝導体材料は、その共有結合した原子層に平行な第1の配向を含んでもよい。第2の超伝導体材料は、その共有結合した原子層に平行な第2の配向を含んでもよい。ジョセフソン接合において第1の超伝導体材料及び第2の超伝導体材料は、所定の角度に対応する第1の配向と第2の配向との間の角度で配置されてもよい。
【0042】
量子ビットデバイスのデバイスパラメータは、超伝導体材料の配向間の角度を使用して、特定のデバイス用途のニーズに合わせて調整してもよい。例えば、それぞれの角度を調整することによって、特に長いコヒーレンス時間を有する量子ビットデバイスを提供し得る。
【0043】
ジョセフソン接合において第1の超伝導体材料及び第2の超伝導体材料は、第1の配向と第2の配向との間の角度が38~44.9°の範囲内に配置されてもよい。
【0044】
それぞれの角度は、特に、BSCCO(すなわち、Bi2Sr2Can-1CunO2n+4+x)など、それらの水平基本格子ベクトル間で約90°の角度を有する超伝導体材料について、量子ビットデバイスのコヒーレンス時間を最大化する。
【0045】
第1のc軸は、第1の超伝導体材料の基本格子ベクトルに対応してもよい。
【0046】
第2のc軸は、第2の超伝導体材料の基本格子ベクトルに対応してもよい。
【0047】
第1の配向は、第1のc軸に垂直な第1の基本格子ベクトルに、特に、第1のc軸に垂直な第1の基本格子ベクトルの方向に、対応してもよい。
【0048】
第2の配向は、第2のc軸に垂直な第2の基本格子ベクトルに、特に、第1のc軸に垂直な第2の基本格子ベクトルの方向に、対応してもよい。
【0049】
第1の超伝導体材料及び/又は第2の超伝導体材料の共有結合した原子層は、ファンデルワールスギャップによって分離されてもよい。
【0050】
第1の配向は、第1の超伝導体材料の共有結合した原子層に平行な第1の超伝導体材料の格子ベクトルに対応してもよく、第2の配向は、第2の超伝導体材料の共有結合した原子層に平行な第2の超伝導体材料の対応する格子ベクトルに対応してもよい。
【0051】
第1の配向は、それぞれの超伝導体材料のd波電子スペクトルにおけるノードの方向を指してもよい。
【0052】
第1の超伝導体材料及び第2の超伝導体材料は、同じ結晶構造、及び/又は同じ結晶単位胞を有してもよく、並びに/あるいは同じ超伝導体材料であってもよい。
【0053】
第1の超伝導体材料及び/又は第2の超伝導体材料は、特に、少なくとも4K、又は少なくとも8K、又は少なくとも15K、又は少なくとも30K、又は少なくとも50K、又は少なくとも70K、又は少なくとも78Kの臨界温度を有する高温超伝導体材料であってもよい。
【0054】
第1の超伝導体材料及び/又は第2の超伝導体材料は、タイプIIの超伝導体材料であってもよい。
【0055】
第1の超伝導体材料及び/又は第2の超伝導体材料は、d波超伝導体材料であってもよい。
【0056】
第1の超伝導体材料及び/又は第2の超伝導体材料は、特に少なくとも20原子%又は少なくとも30原子%までの酸素又はカルコゲナイドを含んでもよい。
【0057】
第1の超伝導体材料及び/又は第2の超伝導体材料は、特にn=1、又は2、又は3、又は4である化学組成Bi2Sr2Can-1CunO2n+4+xを含んでもよい。
【0058】
ジョセフソン接合において第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間の距離は、少なくとも0.2nm、特に少なくとも0.25nm、特に少なくとも0.3nm、特に少なくとも0.35nm、特に少なくとも0.4nm、特に少なくとも0.45nm、又は少なくとも0.5nmであってもよい。
【0059】
ジョセフソン接合において第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間の距離は、最大で10nm、特に最大で8nm、特に最大で6nm、特に最大で4nm、特に最大で3nm、特に最大で2nm、特に最大で1nmであってもよい。
【0060】
スペーサ材料は、ジョセフソン接合において第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間に配置されてもよく、任意選択で、スペーサ材料は、異方性層状材料を含むか、又はそれから構成される。
【0061】
スペーサ材料は、ジョセフソン接合において超伝導体材料間の正しい距離を確保するために役立ち得る。
【0062】
ジョセフソン接合において第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間の重複領域の面積は、少なくとも0.1μm2、特に少なくとも0.3μm2、特に少なくとも0.5μm2、又は少なくとも1μm2であってもよい。
【0063】
ジョセフソン接合において第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との重複領域の面積は、最大50μm2、又は最大1μm2であってもよい。
【0064】
量子ビットデバイスは、マイクロ波共振器を更に備えてもよい。
【0065】
それぞれのマイクロ波共振器は、例えば、分散読み出しの形態で、量子ビットデバイスの読み出しを容易にする。
【0066】
マイクロ波共振器は、任意選択で、水平方向に沿って、コンデンサに容量結合されてもよい。
【0067】
マイクロ波共振器は、第1の超伝導体層と第2の超伝導体層との両方の垂直位置を超える垂直位置に配置されてもよい。
【0068】
それぞれの量子ビットデバイスを、数ステップで、したがって効率的で、経済的に製造し得るように、それぞれのマイクロ波共振器が、有益には、コンデンサと共に同じプロセスステップで製造され得る。
【0069】
マイクロ波共振器は、低温超伝導体材料などの超伝導体材料を、又はAl、Nb、NbN、若しくはTiNなどの元素若しくは窒化物超伝導体材料を、含むか、又はそれらから構成されてもよい。
【0070】
材料のそれぞれの選択は、従来のリソグラフィ構造化又は堆積技術を使用してそれぞれの構成要素の製造を容易にし、したがって、製造中の構造精度を改善する。
【0071】
マイクロ波共振器の共振周波数は、1GHz~10GHzの範囲内であってもよい。
【0072】
コンデンサの容量は、4フェムトファラッド~500フェムトファラッドの範囲内、又は4フェムトファラッド~400フェムトファラッドの範囲内、又は70フェムトファラッド~400フェムトファラッドの範囲内であってもよい。
【0073】
第1の電極及び/又は第2の電極、並びに/あるいは第1の相互接続部及び/又は第2の相互接続部は、低温超伝導体材料などの超伝導体材料を、又はAl、Nb、NbN、若しくはTiNなどの元素若しくは窒化物超伝導体材料を、含むか、又はそれらから構成されてもよい。
【0074】
第2の態様では、量子ビットデバイスを製造するための方法は、第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合を提供することと、ジョセフソン接合とは別のコンタクト層を提供することと、を含む。コンタクト層は、電気絶縁要素と、第1の相互接続部と、第2の相互接続部と、を備える。第1の相互接続部は、電気絶縁要素を通って延在する。第2の相互接続部は、電気絶縁要素を通って延在する。本方法は、第1の相互接続部と第1の超伝導体材料との間に電気コンタクトを形成し、第2の相互接続部と第2の超伝導体材料との間に電気コンタクトを形成するために、コンタクト層をジョセフソン接合上に配置すること、を更に含む。
【0075】
この製造方法は、コンタクト層をジョセフソン接合とは別個に提供し、後のステップでその上に配置することによって、製造中のジョセフソン接合への、又は第1及び第2の超伝導体材料への、損傷を最小限に抑えることを確保する。
【0076】
ジョセフソン接合とは別個に提供されたコンタクト層は、電気絶縁要素上に配置されたコンデンサを備えてもよい。対応する実施形態では、上記コンデンサは、第1の電極と、第2の電極と、備えてもよく、第1の相互接続部は、第1の電極に電気的に接続されてもよく、及び/又は第2の相互接続部は、第2の電極に電気的に接続されてもよい。
【0077】
ジョセフソン接合とは別個に提供されるコンタクト層は、電気絶縁要素上に配置されたマイクロ波共振器を備えてもよく、任意選択で、マイクロ波共振器は、コンデンサに容量結合される。
【0078】
本方法は、コンタクト層がジョセフソン接合上に配置されている間に、ジョセフソン接合を第1の温度より低い温度まで冷却すること、を更に含んでもよく、第1の温度は、0°C、又は250K、又は230K、又は210K、又は190K、又は170K、又は150K、又は130Kである。
【0079】
冷却することは、製造中のジョセフソン接合への、又は第1及び第2の超伝導体材料への、それぞれの損傷を更に低減する。
【0080】
コンタクト層をジョセフソン接合上に配置することは、転写デバイスをコンタクト層に取り付けることと、転写デバイスをコンタクト層に取り付けるために、転写デバイスを第2の温度より低い温度まで冷却することと、を含んでもよい。転写デバイスは、転写デバイスの温度が第2の温度より低いときに強い接着をもたらし、転写デバイスの温度が第2の温度より高い、又は第2の温度を超える第3の温度より高いときに弱い接着をもたらす、ように適合されてもよい。
【0081】
それぞれの転写デバイスは、コンタクト層を低下させた製造温度(すなわち、第1の温度未満)で確実にピックアップして配置することを可能にする。
【0082】
転写デバイスは、エラストマーを含んでも、又はそれから構成されてもよい。
【0083】
第2の温度及び/又は第3の温度は、エラストマーのガラス転移温度を超えてもよい。
【0084】
第3の温度は、エラストマーのガラス転移温度に対応してもよい。
【0085】
エラストマーは、PTFE又はPDMSであってもよい。
【0086】
第2の温度は、第1の温度以下であってもよい。
【0087】
コンタクト層をジョセフソン接合上に配置することは、転写デバイスをコンタクト層から解放すること、を含んでもよく、転写デバイスをコンタクト層から解放することは、転写デバイスを第2の温度と第1の温度との間の温度に加熱すること、を含む。それぞれの温度は、第3の温度を超えてもよく、第3の温度は、第1の温度と第2の温度との両方を超える。
【0088】
第1の超伝導体材料は、共有結合した原子層と、第1の超伝導体材料の共有結合した原子層に垂直な第1のc軸と、を有する第1の異方性層状材料であってもよい。第2の超伝導体材料は、共有結合した原子層と、第2の超伝導体材料の共有結合した原子層に垂直な第2のc軸と、を有する第2の異方性層状材料であってもよい。
【0089】
それぞれの実施形態において、ジョセフソン接合は、第1のc軸及び第2のc軸がジョセフソン接合において互いに位置合わせするように提供されてもよく、並びに/あるいはジョセフソン接合において第1のc軸と第2のc軸との両方が第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との両方と交差するように提供されてもよい。
【0090】
第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合を提供することは、第1の異方性層状材料の第1の超伝導体層を基材上に配置することと、ジョセフソン接合を生成するために、第2の異方性層状材料の第2の超伝導体層を第1の超伝導体層上に配置することと、を含んでもよい。
【0091】
第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合を提供することは、第1の超伝導体層及び第2の超伝導体層を配置することの前に、第1の超伝導体層を生成するために第1の異方性層状材料を開裂すること、及び/又は第2の超伝導体層を生成するために第2の異方性層状材料を開裂すること、並びに任意選択で、第1の異方性層状材料を開裂することの間に、第1の異方性層状材料を第1の温度より低い温度に保つこと、及び/又は第2の異方性層状材料を開裂することの間に、第2の異方性層状材料を第1の温度より低い温度に保つこと、を含んでもよい。
【0092】
第1の異方性層状材料を開裂すること、及び/又は第2の異方性層状材料を開裂すること、及び/又は第1の超伝導体層を基材上に配置すること、及び/又は第2の超伝導体層を第1の超伝導体層上に配置することは、エラストマーを含むか又はそれから構成される転写デバイスを使用して実施されてもよい。
【0093】
電気絶縁要素は、300nm~600nmの厚さなど、機械的に可撓性であって十分に薄い厚さで提供されてもよい。
【0094】
第3の態様によれば、量子ビットデバイスを製造するためのコンタクト層は、電気絶縁要素と、コンデンサと、第1の相互接続部と、第2の相互接続部と、を備える。コンデンサは、電気絶縁要素上に配置された第1の電極及び第2の電極を備える。第1の相互接続部は、第1の電極に電気的に接続され、電気絶縁要素を通って、その底面から、その上面まで延在する。第2の相互接続部は、第2の電極に電気的に接続され、電気絶縁要素を通って、その底面から、その上面まで延在する。第1の電極、第2の電極、第1の相互接続部、及び第2の相互接続部の各々は、それぞれの超伝導体材料を含む。
【0095】
電気絶縁要素は、300nm~600nmの厚さなど、機械的に可撓性であって十分に薄い厚さを備えてもよい。
【0096】
コンタクト層は、電気絶縁要素上に配置されたマイクロ波共振器を備えてもよく、任意選択で、マイクロ波共振器は、コンデンサに容量結合される。
【0097】
更なる態様によれば、量子ビットデバイスの状態を変化させるための方法は、第1のマイクロ波周波数を有する第1のマイクロ波を量子ビットデバイスに結合することであって、第1のマイクロ波周波数が、量子ビットデバイスの第3の励起状態と基底状態との間のエネルギー差に関連する、結合することと、第2のマイクロ波周波数を有する第2のマイクロ波を量子ビットデバイスに結合することであって、第2のマイクロ波周波数が、量子ビットデバイスの第3の励起状態と第2の励起状態との間のエネルギー差に関連する、結合することと、第3のマイクロ波周波数を有する第3のマイクロ波を量子ビットデバイスに結合することであって、第3のマイクロ波周波数が、量子ビットデバイスの第2の励起状態と第1の励起状態との間のエネルギー差に関連する、結合することと、を含む。
【0098】
本方法は、量子ビットデバイスの基底状態と第1の励起状態との間の遷移が極めて低い遷移確率を有する場合であっても、又は基底状態及び第1の励起状態が(ほぼ)縮退している場合であっても、量子ビットデバイスの状態を確実に変化させることを可能にする。
【0099】
一実施形態によれば、第1のマイクロ波周波数は、量子ビットデバイスの第3の励起状態と基底状態との間のエネルギー差に対し、例えば、少なくとも0.01%、最大で5%不整合である。代替的に、又は追加的に、第2のマイクロ波周波数は、量子ビットデバイスの第3の励起状態と第2の励起状態との間のエネルギー差に対し、例えば少なくとも0.01%、最大で5%不整合であり得る。代替的に、又は追加的に、第3のマイクロ波周波数は、量子ビットデバイスの第2の励起状態と第1の励起状態との間のエネルギー差に対し、例えば少なくとも0.01%、最大で5%不整合であり得る。対応する実施形態では、第1のマイクロ波、第2のマイクロ波、及び第3のマイクロ波は、同時に量子ビットデバイスに結合されてもよい。
【0100】
別の実施形態によれば、本方法は、まず、第1のマイクロ波及び第3のマイクロ波を量子ビットデバイスに結合することと(任意選択で、第1のマイクロ波及び第3のマイクロ波は、πパルスとして量子ビットデバイスに結合されてもよい)、次いで、第2のマイクロ波を量子ビットデバイスに結合することと(任意選択で、第2のマイクロ波は、基底状態と第1の励起状態との間の所定の位相差に従って量子ビットデバイスに結合されてもよい)、次いで、第1のマイクロ波及び第3のマイクロ波を量子ビットデバイスに結合することと(任意選択で、第1のマイクロ波及び第3のマイクロ波は、πパルスとして量子ビットデバイスに結合されてもよい)、を含む。対応する実施形態では、第1のマイクロ波周波数は、量子ビットデバイスの第3の励起状態と基底状態との間のエネルギー差に、例えば0.01%以内に、整合させてもよい。代替的に、又は追加的に、第2のマイクロ波周波数は、量子ビットデバイスの第3の励起状態と第2の励起状態との間のエネルギー差に、例えば0.01%以内に、整合させてもよい。代替的に、又は追加的に、第3のマイクロ波周波数は、量子ビットデバイスの第2の励起状態と第1の励起状態との間のエネルギー差に、例えば0.01%以内に、整合させてもよい。
【0101】
量子ビットデバイスは、上述の実施形態のいずれかによる量子ビットデバイスであってもよい。
【0102】
第1のマイクロ波周波数は、7GHz~15GHzの範囲内であってもよい。
【0103】
第2のマイクロ波周波数は、1GHz~2GHzの範囲内であってもよい。
【0104】
第3のマイクロ波周波数は、6GHz~13GHzの範囲内であってもよい。
【0105】
本方法は、分散読み出しを使用して量子ビットの変化した状態を分析することを更に含んでもよい。
【0106】
第1、第2、及び/又は第3のマイクロ波を量子ビットデバイスに結合すること、並びに/あるいは分散読み出しは、上述のマイクロ波共振器を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
本開示の技術及びそれに関連する利点は、添付の図面による典型的な実施形態の説明から好適に明らかになるであろう。
【
図1】一実施形態による、量子ビットデバイスの断面図である。
【
図2a】別の実施形態による、量子ビットデバイスの断面図である。
【
図2b】別の実施形態による、量子ビットデバイスの断面図である。
【
図2c】別の実施形態による、量子ビットデバイスの断面図である。
【
図3】別の実施形態による、量子ビットデバイスの上面図である。
【
図4a】別の実施形態による、量子ビットデバイスの斜視図である。
【
図4b】
図4aの量子ビットデバイスの断面図である。
【
図5a】ジョセフソン接合を形成するために第1の超伝導体層上に配置された第2の超伝導体層を示す斜視図である。
【
図5b】
図5aによる第1の超伝導体層上に配置された第2の超伝導体層を示す上面図である。
【
図6】量子ビットデバイスを形成するための方法を示す図である。
【
図7】コンタクト層を提供するためのプロセスステップを示す図である。
【
図8】一実施形態による、コンタクト層の断面図である。
【
図9】ジョセフソン接合を形成するために第2の超伝導体層を第1の超伝導体層上に配置するプロセスステップを示す図である。
【
図10】一実施形態による、量子ビットデバイスの状態を変更するための方法を示す図である。
【
図11】別の実施形態による、量子ビットデバイスの状態を変更するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図1は、第1の実施形態による、量子ビットデバイス100の断面図である。
【0109】
量子ビットデバイス100は、第1の超伝導体層102aを備える。それは、ジョセフソン接合120を形成するために第1の超伝導体層102a上に配置された第2の超伝導体層102bを更に備える。
【0110】
第1の超伝導体層102a、及び第2の超伝導体層102bは、それぞれ超伝導体材料を含む。これらの超伝導体材料は、それぞれ、高温臨界超伝導体材料又はd波超伝導体材料に典型的であるように、異方性層状材料である。
【0111】
超伝導体層102a、102bの厚さは、通常、30nm~90nmの範囲内である。
【0112】
クローズアップ124’は、異方性層状材料を示す。これは、領域124内の第2の超伝導体層102bの構造のクローズアップである。クローズアップ124’における共有結合した原子層126間の距離は、特定の超伝導体材料に応じて、1~5nmに対応する。第2の超伝導体材料の共有結合した原子層126は、ファンデルワールスギャップ128によって互いに分離されている。軸cは、共有結合した原子層126に、又はファンデルワールスギャップ128に、それぞれ垂直である。
【0113】
クローズアップ124’には、第2の超伝導体層102bの第2の超伝導体材料の構造を示している。しかしながら、第1の超伝導体層102aの第1の超伝導体材料は、共有結合した原子層126、及びファンデルワールスギャップ128を有する同様の構造を有する。
【0114】
それぞれの異方性層状超伝導体材料の例は、BSCCO(すなわち、Bi2Sr2Can-1CunO2n+4+x、ここで、n=2、3、4)などの銅酸塩、又は鉄系高温超伝導体(例えば、FeSe、カリウムドープFeSe、FeSexTe1-x)である。
【0115】
また、第1及び第2の超伝導体層102a、102b上、すなわち第1及び第2の超伝導体層102a、102bのそれぞれの位置を超える垂直方向zに沿った位置に、コンデンサ132が配置される。
【0116】
コンデンサ132は、互いに近接して配置された2つの電極130a、130bを備える。
【0117】
図示の実施形態では、電極130a、130bは、水平に、すなわち電極130a、130b間の最小間隔で結合され、電極130a、130bの少なくとも一方又は各々の表面法線は、水平であり、電極130a、130bの他方を向いている。他の実施形態(例えば、
図2a)では、電極130a、130bは、垂直に結合される。
【0118】
第1の相互接続部108aは、第1の超伝導体層102a及び第1の電極130aを電気的に接続する。
【0119】
第2の相互接続部108bは、第2の超伝導体層102b及び第2の電極130bを電気的に接続する。
【0120】
好ましくは、電極130a、130b及び相互接続部108a、108bは、低温臨界超伝導体材料(例えば、Al、Nb、TiNなどの元素超伝導体又はそれらの窒化物)の、又は高温臨界超伝導体材料(例えば、上述の異方性層状超伝導体材料)の、いずれかのそれぞれの超伝導体材料で構成される。低温臨界超伝導体材料から作られた電極130a、130b及び相互接続部108a、108bは、高精度の製造を容易にする。
【0121】
図2aは、
図1のものと同様の実施形態による量子ビットデバイス100の断面図を示している。
【0122】
しかしながら、
図2aの実施形態では、電極130a、130bは、垂直に結合されており、すなわち、電極130a、130bがそれらの最小分離を示す場合、電極130a、130bの少なくとも一方又は各々の表面法線は、垂直であり、電極130a、130bの他方を向いている。
【0123】
図2bは、
図1のものと同様の実施形態による量子ビットデバイス100の断面図を示している。
【0124】
ただし、
図2bの相互接続部108a、108bは、垂直方向及び水平方向に沿って延在するのに対して、
図1の相互接続部108a、108bは、垂直方向に沿ってのみ延在する。
【0125】
その結果、
図1の相互接続部108a、108bは短くなり、これは一部の用途で有益である。一方、
図2aの電極130a、130bを、超伝導体層102a、102bとは独立してデバイス構成内に配置することができ、設計の柔軟性が向上し、一部の用途で有益である。
【0126】
図2cは、
図1のものと同様の実施形態による量子ビットデバイス100の断面図を示している。
【0127】
図2cの実施形態では、電気絶縁要素114が、超伝導体層102a、102bと、電極130a、130bとの間に配置されている。
【0128】
特に、電気絶縁要素114は、超伝導体層102bからの電極130aの、及び超伝導体層102aからの電極130bの、電気絶縁を確保する。
【0129】
電気絶縁要素114は、シリコン、又は窒化物、炭化物、若しくは酸化物材料で構成される。より具体的には、それを、炭化ケイ素、窒化ケイ素、又はアモルファスシリコンから作製することができる。
【0130】
電気絶縁要素114は、いくつかの実施形態では、特に、後述(
図6)する基材140と組み合わせて、超伝導体層102a、102bをキャップ又は封止するために使用される。そのような実施形態では、電気絶縁要素114及び基材140は共に、超伝導体層102a、102b(電気絶縁要素114と基材140との間に配置される)を水密又は防湿又は気密に囲む。
【0131】
更に、
図2cの実施形態では、スペーサ材料116が、第1及び第2の超伝導体層102a、102bの間に提供される。スペーサ材料116は、ジョセフソン接合120を形成するために、超伝導体層102a、102b間の適切な距離を確保する。いくつかの実施形態では、スペーサ材料116は、六方晶窒化ホウ素などの異方性層状材料で構成される。スペーサ材料を、他の実施形態のいずれかによる量子ビットデバイス100に提供しても差し支えない。
【0132】
図3は、いくつかの実施形態による、量子ビットデバイス100の上面図を示している。
【0133】
ライン134に沿った垂直(x-z)断面において、
図3の量子ビットデバイス100は、
図1又は
図2cの実施形態と同様である。言い換えると、
図3は、いくつかの実施形態による、
図1又は
図2cの量子ビットデバイス100の上面図を示している。
【0134】
図3は、水平なx、y平面におけるコンデンサ132の特定の形状を示している。代替的な形状が可能である。しかしながら、70~400フェムトファラッドの範囲内のコンデンサ132の容量が有益であることが判明している。
【0135】
結果として生じる容量エネルギーEC=e2/2C(ここで、eは電子電荷である)は、ジョセフソン接合120の典型的なジョセフソンエネルギーEJよりも100倍以上小さい。
【0136】
【0137】
図4a、
図4bは、別の実施形態による、量子ビットデバイス100を示している。
図4aは、斜視図である。ここで、領域136は、
図3の領域136に対応する。
図4bは、断面図であり、より具体的には、
図3に示すライン134による、
図3、
図4aの領域136の垂直(x-z)断面を示している。
【0138】
図4a、
図4bの量子ビットデバイス100は、コンデンサ132、すなわち電極130a、130bの一方に容量結合されたマイクロ波共振器138を備える。
【0139】
マイクロ波共振器138の共振周波数は、1~15GHzの範囲内である。
【0140】
マイクロ波共振器138は、量子ビットデバイス100の分散読み出しに適している。
【0141】
コンデンサ132及びマイクロ波共振器138は、40~80nmの範囲の厚さを有する。
【0142】
量子ビットデバイス100又は電気絶縁要素114の全体サイズ(水平方向に沿った長さ及び/又は幅)はそれぞれ、0.5~1mmの範囲内である。
【0143】
図5a、
図5bは、ジョセフソン接合120を形成するために、第1の超伝導体層102a上に配置された第2の超伝導体層102bを詳細に示している。
図5aは、超伝導体層102a,102b及びジョセフソン接合120の斜視図であり、
図5bは、上面図である。
図5a、
図5bの超伝導体層102a、102b及びジョセフソン接合120の詳細な説明は、上述した様々な実施形態のいずれかによる、量子ビットデバイス100の超伝導体層102a、102b及びジョセフソン接合120にも適用される。
【0144】
第1の超伝導体層102a及び第2の超伝導体層102bは、領域110において重複している。言い換えると、領域110は、(すなわち、超伝導体層102a、102bの)重複領域110を形成する。より具体的には、重複領域110において、第1の超伝導体層102aの第1の表面106aの第1の区画112aは、第2の超伝導体層102bの第2の表面106bの第2の区画112bと対向し、その逆も同様である。
【0145】
超伝導体層102a、102bは、距離dだけ、具体的には重複領域110において離隔している。
【0146】
第1の超伝導体材料、すなわち第1の超伝導体層102aの超伝導体材料は、第1の配向118aを有する。
図5a、
図5bにおいて、第1の配向118aは、水平面内で矢印118aによって表している。言い換えると、第1の配向118aは、第1の表面106aの第1の区画112aと平行である。
【0147】
第2の超伝導体材料、すなわち、第2の超伝導体層102bの超伝導体材料は、対応する第2の配向118bを有する。
【0148】
配向118a、118bを、以下の基準のいずれか又は任意の組合せによって画定することができる。
【0149】
第1の定義によれば、配向118a、118bは、それぞれの面内基本格子ベクトルなど、第1/第2の超伝導体材料の基本格子ベクトルに、又はそれぞれの(第1/第2)超伝導体材料の基本格子ベクトルの水平面への投影に、又は第1の表面106aへの投影に、又は第2の表面106bへの投影に、それぞれ対応する。
【0150】
あるいは、配向118a、118bは、第1/第2の超伝導体材料の結晶ファセットによって画定される。
【0151】
配向118a、118bは、代替的に、第1/第2の超伝導体材料の逆格子ベクトルによって、すなわち、面内逆格子ベクトルによって、あるいは逆格子ベクトルの水平面上への投影、又は第1の表面106a上への投影、又は第2の表面106b上への投影によって、それぞれ画定される。
【0152】
代替的に、配向118a、118bは、電子軌道114a、114bによって、又は第1/第2の超伝導体材料のブロッホ状態の結晶運動量によって、画定される。いくつかの実施形態によれば、第1/第2の超伝導体材料はそれぞれ、d波超伝導体、又はd波超伝導ギャップを有する超伝導体である。この場合、配向118a、118bは、d波電子スペクトル、特に、d波節点電子スペクトル114aに関連付けられてもよい。
【0153】
第1の配向118a及び第2の配向118bは、所定の角度に応じて角度θで配置される。
【0154】
特に、角度θが38~44.9°の範囲内では、単一クーパー対トンネリングEJ、すなわち、ジョセフソンエネルギーEJが抑制される。発明者らは、BSCCO、より具体的にはBi2Sr2CaCu2O8+xに関するシミュレーションを使用して、抑制されたジョセフソンエネルギーEJの発見を検証した。軸cに垂直な基本格子ベクトル間の角度が約90°の他のd波超伝導体(又はそれぞれ高臨界温度超伝導体、又はそれぞれ異方性層状超伝導体材料を含む超伝導体)についても同様に予想される。
【0155】
ジョセフソンエネルギーは、EJ=IcΦ0/2πとしてジョセフソン接合の臨界電流Icに直接関係し、ここで、Φ0=h/2eはフラックス量子である。
【0156】
この状況では、2つのクーパー対トンネリングは依然として可能であり、2つのクーパー対トンネリングエネルギーEkは、ジョセフソンエネルギーEJと同様である。2つのクーパー対トンネリング項は、Eκcos(2φ)と書くことができ、ダブルウェルポテンシャルを形成する。好ましい実施形態では、対応する2つの最低エネルギー固有状態は、量子ビットデバイスの二準位系を提供するために使用される。二準位のそれぞれの固有状態間のエネルギー差は小さく、すなわち、最大2GHz、いくつかの実施形態では最大1GHzのエネルギー/周波数差内である。したがって、それぞれの固有状態は、準縮退と呼ばれる。
【0157】
縮退は、量子ビットデバイス間の(すなわち、それぞれの二準位系の量子力学的状態間で)誘電損失及びクロストークが劇的に低減される状況と連動しており、したがってその状況を示す。これらの誘電損失及びクロストークは、従来のトランズモン量子ビットの主な制限である。したがって、記載した量子ビットデバイスの緩和時間は、例えば、トランズモンタイプの従来の量子ビットデバイスにおける緩和時間と比較して大幅に改善される。本発明者らが実施したシミュレーションによれば、改善は、10.000倍に達し、コヒーレンス時間は最大1秒になる。
【0158】
図6は、量子ビットデバイス100を製造するための方法400を示している。
【0159】
ステップ402において、第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間のジョセフソン接合120を提供する。
【0160】
ステップ404において、コンタクト層104を、ジョセフソン接合120とは別個に提供する。
【0161】
コンタクト層104は、電気絶縁要素114と、第1の相互接続部108aと、第2の相互接続部108bと、を備える。第1の相互接続部108aは、電気絶縁要素114を通って延在する。第2の相互接続部108bは、電気絶縁要素114を通って延在する。
【0162】
いくつかの実施形態(図示せず)では、コンタクト層104には、電気絶縁要素114上に配置された第1の電極130a及び第2の電極130bを備えるコンデンサ132など、その上に配置される追加の任意選択の電気要素を、又は電気絶縁要素114上に配置されるマイクロ波共振器138を、提供する。コンデンサ132を有するいくつかの実施形態では、第1の相互接続部108aは、第1の電極130aに接続され、第2の相互接続部108bは、第2の電極130bに電気的に接続される。
【0163】
ステップ406において、第1の相互接続部108aと第1の超伝導体材料との間に電気コンタクトを形成し、第2の相互接続部108bと第2の超伝導体材料との間に電気コンタクトを形成するために、コンタクト層104は、ジョセフソン接合120上に配置される。
【0164】
いくつかの実施形態では、ステップ402において、基材140が提供される。
【0165】
いくつかの実施形態では、ステップ402で、第1(及び/又は第2)の超伝導体材料は、第1(及び/又は第2)の超伝導体層102a(102b)の形態で基材上に配置される。この目的のために、例えば、
図9の文脈で詳細に説明するように、予め準備した第1(及び/又は第2)の超伝導体層102a(102b)が基材140上に転写される。代替的に、第1(又は第2)の超伝導体材料は、気相から、又は化学気相成長法若しくは分子線エピタキシ法などの真空堆積技術を使用して、基材140上に(例えば、反応的に)堆積されてもよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、ステップ406において、コンタクト層104は、-85°C未満の温度(言い換えると、-85°Cの第2の温度未満)まで液体窒素で冷却され、その低温にある間にジョセフソン接合120上に配置される。この目的のために、コンタクト層104は、転写デバイス412として機能するPDMSスタンプ412上に配置される。コンタクト層104及び転写デバイス412は、第2の温度未満に冷却406される。第2の温度未満では、PDMSスタンプ412はコンタクト層104に強い接着をもたらす。
【0167】
次いで、配置されたPDMSスタンプ412及びコンタクト層104は、基材140及びその上のジョセフソン接合120上に配置され、それらと物理的に接触する。これにより、コンタクト層104は、ジョセフソン接合120上に配置406される。
【0168】
任意の追加のステップでは、PDMSスタンプ412は、コンタクト層104から除去される。この目的のために、PDMSスタンプ412は、第2の温度より高い温度、好ましくは-30°C未満の温度に加熱される。言い換えると、PDMSスタンプ412は、第2の温度より高く、好ましくは-30°Cの第3の温度より高く加熱される。これにより、PDMSスタンプ412の接着が低下する。その結果、ジョセフソン接合120の上に配置されたコンタクト層104を残して、PDMSスタンプを除去し得る。
【0169】
第1の層102aへの熱損傷を回避するために、その上にコンタクト層104が配置される間、第1の層102aの温度は、0°C(第1の温度)未満に保たれる。これは、PDMSスタンプ412が基材140及び/又はジョセフソン接合120と接触している間、PDMSスタンプ412の温度を第1の温度未満に保つことによって達成される。
【0170】
高温でのPDMSスタンプ412の接着性の低下(-85°Cの第2の温度と比較して)は、約-100°Cのガラス転移温度を有するPDMSの非晶質分子構造に関連する。その結果、第3の温度は、PDMSのガラス転移温度より高い。第2の温度は、少なくともPDMSのガラス転移温度に相当する。ガラス転移温度を超える温度では、弾性ポリマーの接着は、温度の上昇と共に低下する。言い換えると、そのガラス転移温度が第2の温度(及び第3の温度)を下回る限り、PDMSの代わりに、代替材料、特に弾性ポリマーを転写デバイス412に使用してもよい。
【0171】
図7は、一実施形態による、ジョセフソン接合120とは別個にコンタクト層104を提供するステップ404の詳細を示している。
【0172】
図示の実施形態によれば、電気絶縁要素114は、絶縁材料の層114を基材140から離れた第2の基材500上に堆積させることによって提供される。
【0173】
開口部508は、電気絶縁要素114を通ってエッチングされる。
【0174】
メタライゼーション層510が、開口部508上、及びその中に堆積される。これにより、相互接続部108a、108bが、開口部508を介して電気絶縁要素114の底面に達するまで形成される。
【0175】
いくつかの実施形態(図示せず)によれば、メタライゼーション層510はまた、コンデンサ132、又はそれぞれ第1及び第2の電極130a、130b、並びに/あるいはマイクロ波共振器138など、電気絶縁要素114上に追加の電気構成要素を形成するために使用される。
【0176】
次に、トレンチ514が、電気絶縁要素114内に形成される。トレンチ514はそれぞれ、電気絶縁要素114の底面まで達しているか、電気絶縁要素114を貫通している。トレンチ514は、アンカーポイント(テザー)として機能する電気絶縁要素114の絶縁材料の区画によって横方向に中断される。
【0177】
次いで、(トレンチ514よりも)深いトレンチ518が、第2の基材500に、及び/又は第2の基材500と電気絶縁要素114との間の任意の犠牲層(図示せず)に、達するように形成される。言い換えると、別個の犠牲層が存在しない場合、第2の基材500の(上部の)犠牲部分が、犠牲層として機能する。
【0178】
次いで、等方性エッチングを実施して、深いトレンチ518内の側方領域内で、電気絶縁要素114の下の第2の基材500の犠牲層及び/又は犠牲部分を除去する。その結果、結果として得られたコンタクト層104は、第2の基材500に対して自立している。結果として得られたコンタクト層104は、電気絶縁要素114が十分に薄い限り、機械的に可撓性である。300~600nmの範囲内の電気絶縁要素114の厚さは、この目的のために有益であることが判明している。
【0179】
等方性エッチングの前又は後に、PDMSスタンプ412は、開口部508(この時点でメタライゼーション層510で完全に充填されてもよい)を有する電気絶縁要素114に取り付けられる(転写される)。PDMSスタンプ412は、第2の温度より低い温度まで冷却され、その冷却は、開口部508を有する電気絶縁要素114上にPDMSスタンプ412を転写する前又は後に実施されてもよい。
【0180】
冷却されたPDMSスタンプ412は、冷却されつつ、第2の基材500から除去される。第2の温度未満に冷却されたPDMSは、強い接着をもたらす。その結果、第2の基材500からPDMSスタンプ412を除去すると、コンタクト層104がPDMSスタンプ412に強く接着するので、コンタクト層104が第2の基材500から持ち上がる。
【0181】
その結果、コンタクト層104は、
図7の最後のパネルに示すように、PDMSスタンプ412上に配置されたままであり、基材500から分離される。
【0182】
任意選択で、コンタクト層104は、例えば、エッチング、イオンミリングなどの湿式及び/又は乾式洗浄ステップを使用して、その底面(PDMSスタンプ412と反対の面)が洗浄される。適用される場合、洗浄ステップは、基材140上にコンタクト層104を配置する直前に実施されることが好ましい。
【0183】
図8は、
図6の方法400で使用され、
図7の方法404によって得られるコンタクト層104を示している。
【0184】
図8のコンタクト層104は、任意選択のコンデンサ132を用いて、及び任意選択のマイクロ波共振器138を用いて形成される。コンタクト層104の上面図は、
図3の上面図(ただし、ジョセフソン接合120並びに第1及び第2の超伝導体層102a、102bなし)に対応し、コンタクト層104の斜視図は、
図4の斜視図に対応する。
【0185】
代替的な実施形態(図示せず、
図7の文脈における説明を参照されたい)では、コンタクト層104は、コンデンサ132なしで、及び/又はマイクロ波共振器138なしで形成される。
【0186】
図9は、一実施形態による、第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合120を提供するためのプロセスステップ402を示している。
【0187】
この方法は、任意選択で、
図6の方法において、そのプロセスステップ402を拡張又は置換するために適用される。
【0188】
ステップ602において、超伝導体材料が、基材140上に超伝導体層102aの形態で提供される。超伝導体材料は、異方性層状材料である。
【0189】
超伝導体層102aの異方性層状材料は、結晶配向620を有する。結晶配向620は、
図1の文脈で説明したように、共有結合した原子層126に、又はファンデルワールスギャップ128に、それぞれ平行な方向に対応する。例えば、結晶配向620は、それぞれ、共有結合した原子層126に平行な、又はファンデルワールスギャップ128に平行な、基本格子ベクトルに対応し、あるいは、それぞれ、共有結合原子層126上への、又はファンデルワールスギャップ128上への、異方性層状材料の基本格子ベクトルの投影に対応する。
【0190】
ステップ604において、
図7のPDMSスタンプ412の電気絶縁要素114への取り付けの説明と同様に、PDMSスタンプ412の形態で転写デバイス412は、超伝導体層102a及び基材140に取り付けられる(転写される)。
【0191】
PDMSスタンプ412は、上述の第2の温度未満の温度に冷却され、その冷却は、PDMSスタンプ412を超伝導体層102a及び基材140上に転写する前又は後に実施されてもよい。
【0192】
ステップ606において、冷却されたPDMSスタンプ412は、冷却されつつ、基材140から除去される。第2の温度未満に冷却されたPDMSは、強い接着をもたらす。その結果、PDMSスタンプ412が基材140から除去されると、超伝導体層102aの一部分がPDMSスタンプ412に接着する。超伝導体層102aの他の部分は、基材140上に残される。言い換えると、超伝導体層102aを開裂する。
【0193】
異方性層状材料、したがって超伝導体層102aの開裂は、異方性層状材料の共有結合した原子層126間のファンデルワールスギャップ128に沿って通常起こる。その結果、開裂によって新たに調製された超伝導体層102a、102bの表面は、共有結合した原子層126に、及び/又は層状材料の結晶面に、それぞれ平行である。
【0194】
ステップ608において、基材140上に残された超伝導体層102aの部分は、第1の超伝導体層102aを形成する。以下では、この残された超伝導体層102aのみを第1の超伝導体層102aと称する。
【0195】
PDMSスタンプ412に接着した超伝導体層102aの部分は、第2の超伝導体層102bを形成する。図示の実施形態によれば、第2の超伝導体層102bは、第1の超伝導体層102aと同じ材料からなる。しかしながら、ステップ602,604,606の文脈で上述したプロセスを異なる超伝導体材料に適用することによって、異なる超伝導体材料からなる第2の超伝導体層102bを提供することができる。その後、それぞれのPDMSスタンプに接着した異なる超伝導体材料の部分は、第2の超伝導体層102bとして使用される。
【0196】
更にステップ608を参照すると、次いで、第2の超伝導体層102bが接着したPDMSスタンプ412が、基材140及び第1の超伝導体層102aに対して配向され、位置決めされる。
【0197】
図示の実施形態によれば、位置決め及び配向は、第2の超伝導体層102bに垂直な軸612の周りの回転610を含み、第1の超伝導体層102aの結晶配向620に対して第2の超伝導体層102bの結晶配向622を回転(ねじれ)させる。
【0198】
ステップ614を参照すると、第2の超伝導体層102bが接着したPDMSスタンプ412は、ステップ608の文脈で説明した位置及び配向に従って、第1の超伝導体層102a及び基材140上に転写される。
【0199】
特に、上述の重複領域110及び/又はジョセフソン接合120を形成するために、第1の超伝導体層102a及び第2の超伝導体層102bが重複するように、PDMSスタンプ412は、基材140上に転写される。
【0200】
ステップ616を参照すると、PDMSスタンプ412の接着を低下するために、PDMSスタンプ412は、第2の温度を超える、好ましくは上述の第3の温度を超える温度に加熱される。
【0201】
次いで、PDMSスタンプ412が基材140から除去される。
【0202】
第2の温度、好ましくは第3の温度を超える高温でのPDMSの接着の低下により、PDMSスタンプ412は、第1の超伝導体層102a及び第2の超伝導体層102bを解放する。第1の超伝導体層102a及び第2の超伝導体層102bは、基材140上に残っている。
【0203】
ステップ618において、ジョセフソン接合120の提供402が完了する。
【0204】
図10、
図11は、量子ビットデバイス100の状態を変更するための方法の2つの異なる実施形態を示している。
【0205】
個々の実施形態の詳細に入る前に、両方の実施形態に共通する特徴を説明する。
【0206】
一般に、量子ビットは、量子力学的二準位系を実装する。理想的には、量子力学的二準位系は、正確に2つの区別可能な量子状態をもたらす。実際には、量子力学的二準位系は、多くの区別可能な量子状態を通常有する。
【0207】
量子ビットデバイス100は、それぞれの量子力学的二準位系を実装する。
【0208】
図10、
図11には、量子力学的二準位系又は量子ビットデバイス100の4つの量子状態、すなわち基底状態|0>、第1の励起状態|1>、第2の励起状態|2>、及び第3の励起状態|3>をそれぞれ示している。
【0209】
量子ビットデバイス100の目標状態とは、基底状態|0>と、第1の励起状態|1>と、の重ね合わせを指す。
【0210】
量子ビットデバイスの状態を変化させるために、3つの異なる周波数を有するマイクロ波702,704,706が量子ビットデバイス100に結合される。
【0211】
第1のマイクロ波702の第1のマイクロ波周波数は、第3の励起状態|3>と、基底状態|0>との間のエネルギー差と関連する。第1のマイクロ波周波数は、7GHz~15GHzの範囲内である。
【0212】
第2のマイクロ波704の第2のマイクロ波周波数は、第3の励起状態|3>と、第2の励起状態|2>との間のエネルギー差に関連する。第2のマイクロ波周波数は、1GHz~2GHzの範囲内である。
【0213】
第3のマイクロ波706の第3のマイクロ波周波数は、第2の励起状態|2>と、第1の励起状態|1>との間のエネルギー差に関連する。第3のマイクロ波周波数は、6GHz~13GHzの範囲内である。
【0214】
マイクロ波702,704,706は、例えば、基底状態|0>から、基底状態|0>と第1の励起状態|1>との重ね合わせへの量子力学的二準位系の遷移を駆動する。遷移は、共振的に(
図10)、又は非共振的に(
図11)、第2の励起状態|2>及び第3の励起状態|3>への結合を介して起こる。
【0215】
量子力学的二準位系又は量子ビットデバイス100の状態をそれぞれ変更した後、変更された状態は、分散読み出しを使用して、例えば、上述のマイクロ波共振器138を使用して分析される。
【0216】
図10は、共振遷移を示している。この場合、第1、第2、及び第3のマイクロ波周波数の、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全部は、それぞれのエネルギー差、例えば、それぞれのエネルギー差の0.01%以内に整合する。
【0217】
図10の実施形態では、第1のマイクロ波702及び第3のマイクロ波706は、最初にπパルスとして量子ビットデバイスに結合され、したがって、基底状態|0>、及び第1の励起状態|1>の占有及び位相を、第2の励起状態|2>に、及び第3の励起状態|3>に移行する。その後、第2のマイクロ波704は、量子ビットデバイスを使用する用途によって必要とされる第2の励起状態|2>と第3の励起状態|3>との重ね合わせを定義するために、制御パルスとして量子ビットデバイスに結合される。その後、第1のマイクロ波702及び第3のマイクロ波706は、πパルスとして量子ビットデバイスに結合され、したがって、第2の励起状態|2>と第3の励起状態|3>との重ね合わせを基底状態|0>に、及び第1の励起状態|1>に移行する。
【0218】
図11は、非共鳴遷移708を示す。この場合、第1、第2、及び第3のマイクロ波周波数の、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全部は、それぞれのエネルギー差、例えば、それぞれのエネルギー差の少なくとも0.01%及び/又は最大5%不整合である。対応する実施形態では、マイクロ波702,704,706は、量子ビットデバイス100に同期して結合される。誘導された遷移は、一般に、共鳴の場合のものに対応するが、単一の非共鳴ラマン型多光子遷移である。マイクロ波702,704,706の強度は、一般に、
図10の共振の場合よりも
図11の非共振の場合の方が高い。
【符号の説明】
【0219】
100 量子ビットデバイス
102a,102b 第1、第2の超伝導体層
126 共有結合した原子層
128 ファンデルワールスギャップ
c c軸
120 ジョセフソン接合
132 コンデンサ
130a,130b 第1、第2の電極
124 領域
124’ 領域124のクローズアップ
108a,108b 第1、第2の相互接続部
2B 第1の固定要素
114 電気絶縁要素
140 基材
118a,118b 共有結合した原子層に平行な第1、第2の配向
114a,114b 電子d軌道
106a,116b 第1、第2の超伝導体材料の表面
110 重複領域
112a,112b ジョセフソン接合/重複領域において互いに反対側の第1、第2の超伝導体材料の表面
d ジョセフソン接合における第1及び第2の超伝導体材料間の距離
134 ライン/平面
136 領域
138 マイクロ波共振器
412 転写デバイス、PDMSスタンプ
602 基材上に第1の超伝導体材料を提供する
604 第1の超伝導体材料を有する基材にPDMSスタンプを取り付ける
606 第1の超伝導体層及び第1の超伝導体層を生成するために第1の超伝導体材料を開裂する
608 PDMSスタンプ上に配置された第2の超伝導体層を位置合わせし、位置決めする
610 回転
612 軸
614 PDMSスタンプ及びその上に配置された第2の超伝導体層を、第1の超伝導体層を有する基材に取り付ける
616 PDMSスタンプを除去する
618 第1及び第2の超伝導体層を有する基材
620,622 第1、第2の超伝導体材料の結晶配向
702,704,706 第1、第2、第3のマイクロ波
708 非共鳴/ラマン遷移
【手続補正書】
【提出日】2024-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ビットデバイス(100)であって、
第1の超伝導体材料を含む第1の超伝導体層(102a)であって、前記第1の超伝導体材料が、共有結合した原子層(126)と、前記第1の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に垂直な第1のc軸と、を有する第1の異方性層状材料である、第1の超伝導体層(102a)と、
第2の超伝導体材料を含む第2の超伝導体層(102b)であって、前記第2の超伝導体材料が、共有結合した原子層(126)と、前記第2の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に垂直な第2のc軸と、を有する第2の異方性層状材料である、第2の超伝導体層(102b)と
を備え、
前記第2の超伝導体層(102b)が、前記第1の超伝導体材料と前記第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合(120)を形成するために、前記第1の超伝導体層(102a)上に配置され、
前記第1のc軸及び前記第2のc軸が、前記ジョセフソン接合(120)において互いに位置合わせされ、
前記ジョセフソン接合(120)において前記位置合わせされた第1及び第2のc軸が、前記第1の超伝導体層(102a)と前記第2の超伝導体層(102b)との両方と交差し、
前記量子ビットデバイス(100)が、
第1の電極(130a)と、第2の電極(130b)と、を備えるコンデンサ(132)と、
前記第1の電極(130a)及び前記第1の超伝導体層(102a)を電気的に接続する第1の相互接続部(108a)と、
前記第2の電極(130b)及び前記第2の超伝導体層(102b)を電気的に接続する第2の相互接続部(108b)と
を更に備え、
前記コンデンサ(132)が、前記第1の超伝導体層(102a)と前記第2の超伝導体層(102b)との両方の垂直位置を超える垂直位置に配置される、
量子ビットデバイス(100)。
【請求項2】
電気絶縁要素(114)を更に備え、
前記電気絶縁要素(114)が、前記コンデンサ(132)の前記垂直位置と、前記第1の超伝導体層(102a)及び/又は前記第2の超伝導体層(102b)の前記垂直位置との間の垂直位置に配置され、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)が、前記第1の超伝導体層(102a)と前記第1の電極(130a)との間に配置され、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)が、前記第2の超伝導体層(102b)と前記第2の電極(130b)との間に配置され、並びに/あるいは、
前記第1の相互接続部(108a)の少なくとも一区画が、前記電気絶縁要素(114)内に配置され、並びに/あるいは、
前記第1の相互接続部(108a)が、前記電気絶縁要素(114)内に配置され、並びに/あるいは、
前記第2の相互接続部(108b)の少なくとも一区画が、前記電気絶縁要素(114)内に配置され、並びに/あるいは、
前記第2の相互接続部(108b)が、前記電気絶縁要素(114)内に配置され、並びに/あるいは、
前記第1の相互接続部(108a)及び/又は前記第2の相互接続部(108b)が、前記電気絶縁要素(114)を通って、任意選択で、前記電気絶縁要素(114)の底面から前記電気絶縁要素(114)の上面まで延在し、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、若しくはアモルファスシリコンを含むか、又は炭化ケイ素、窒化ケイ素、若しくはアモルファスシリコンから構成され、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)の横方向の延長部が、前記第1の超伝導体層(102a)の横方向の延長部、及び前記第2の超伝導体層(102b)の横方向の延長部を完全にカバーし、並びに/あるいは、
前記電気絶縁要素(114)が、垂直方向に沿った厚みが300nm~600nmの範囲内である、
請求項1に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項3】
水密、防湿、酸素密、及び/又は気密封止材など、前記ジョセフソン接合(120)の封止材を更に備え、前記封止材が、前記電気絶縁要素(114)と、任意選択で、前記ジョセフソン接合(120)が配置される基材(140)と、を備える、
請求項2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項4】
前記第1の超伝導体材料が、前記第1の超伝導体材料の共有結合した原子層(126)に平行な第1の配向(118a,620)を含み、前記第2の超伝導体材料が、前記第2の超伝導体材料の共有結合した原子層(126)に平行な第2の配向(118b,622)を含み、前記ジョセフソン接合(120)において前記第1の超伝導体材料及び前記第2の超伝導体材料が、所定の角度に対応する、前記第1の配向(118a,620)と前記第2の配向(118b,622)との間の角度(θ)で配置される、
請求項1又は2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項5】
前記ジョセフソン接合(120)において前記第1の超伝導体材料及び前記第2の超伝導体材料が、前記第1の配向(118a,620)と前記第2の配向(118b,622)との間の角度(θ)が38~44.9°の範囲内に配置され、並びに/あるいは、
前記第1のc軸が、前記第1の超伝導体材料の基本格子ベクトルに対応し、前記第2のc軸が、前記第2の超伝導体材料の基本格子ベクトルに対応し、並びに/あるいは、
前記第1の配向(118a,620)が、前記第1のc軸に垂直な第1の基本格子ベクトルに、特に、前記第1のc軸に垂直な前記第1の基本格子ベクトルの方向に、対応し、並びに/あるいは、
前記第2の配向(118b,622)が、前記第2のc軸に垂直な第2の基本格子ベクトルに、特に、前記第1のc軸に垂直な前記第2の基本格子ベクトルの方向に、対応し、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)が、ファンデルワールスギャップ(128)によって分離され、並びに/あるいは、
前記第1の配向(118a,620)が、前記第1の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に平行な前記第1の超伝導体材料の格子ベクトルに対応し、前記第2の配向(118b,622)が、前記第2の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に平行な前記第2の超伝導体材料の対応する格子ベクトルに対応し、任意選択で、前記第1の超伝導体材料及び前記第2の超伝導体材料が、同じ結晶構造及び/又は同じ結晶単位胞を有する、並びに/あるいは同じ超伝導体材料である、
請求項4に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項6】
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、特に、少なくとも4K、又は少なくとも8K、又は少なくとも15K、又は少なくとも30K、又は少なくとも50K、又は少なくとも70K、又は少なくとも78Kの臨界温度を有する高温超伝導体材料であり、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、タイプIIの超伝導体材料であり、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、d波超伝導体材料であり、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、特に、少なくとも20原子%又は少なくとも30原子%までの酸素又はカルコゲナイドを含み、並びに/あるいは、
前記第1の超伝導体材料及び/又は前記第2の超伝導体材料が、特に、n=1、又は2、又は3、又は4である化学組成Bi2Sr2Can-1CunO2n+4+xを含む、
請求項1又は2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項7】
マイクロ波共振器(138)を更に備え、
任意選択で、前記マイクロ波共振器(138)が、任意選択で、水平方向に沿って、前記コンデンサ(132)に容量結合され、並びに/あるいは、
任意選択で、前記マイクロ波共振器(138)が、前記第1の超伝導体層(102a)と前記第2の超伝導体層(102b)との両方の前記垂直位置を超える垂直位置に配置され、並びに/あるいは、
任意選択で、前記マイクロ波共振器(138)が、低温超伝導体材料などの超伝導体材料を、又はAl、Nb、NbN、若しくはTiNなどの元素若しくは窒化物超伝導体材料を、含むか、あるいは前記超伝導体材料又は前記元素若しくは窒化物超伝導体材料から、構成され、並びに/あるいは、
任意選択で、前記マイクロ波共振器(138)の共振周波数が、1GHz~15GHzの範囲内にある、
請求項1又は2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項8】
前記第1の電極(130a)、及び/又は前記第2の電極(130b)、及び/又は前記第1の相互接続部(108a)、及び/又は前記第2の相互接続部(108b)が、低温超伝導体材料などの超伝導体材料を、又はAl、Nb、NbN、若しくはTiNなどの元素若しくは窒化物超伝導体材料を、含むか、あるいは前記超伝導体材料又は前記元素若しくは窒化物超伝導体材料から、構成される、
請求項1又は2に記載の量子ビットデバイス(100)。
【請求項9】
量子ビットデバイス(100)を製造するための方法(400)であって、前記方法が、
第1の超伝導体材料と第2の超伝導体材料との間にジョセフソン接合(120)を提供するステップ(402)と、
前記ジョセフソン接合(120)とは別のコンタクト層(104)を提供するステップ(404)であって、前記コンタクト層(104)が、
電気絶縁要素(114)と、
前記電気絶縁要素(114)を通って延在する第1の相互接続部(108a)と、
前記電気絶縁要素(114)を通って延在する第2の相互接続部(108b)と
を備える、ステップ(404)と、
前記第1の相互接続部(108a)と前記第1の超伝導体材料との間に電気コンタクトを形成し、前記第2の相互接続部(108b)と前記第2の超伝導体材料との間に電気コンタクトを形成するために、前記コンタクト層(104)を前記ジョセフソン接合(120)上に配置するステップ(406)とを含む、
方法。
【請求項10】
前記コンタクト層(104)が前記ジョセフソン接合(120)上に配置されている間に、前記ジョセフソン接合(120)を第1の温度より低い温度に冷却するステップ、を更に含み、前記第1の温度が、0°C、又は250K、又は230K、又は210K、又は190K、又は170K、又は150K、又は130Kである、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コンタクト層(104)を前記ジョセフソン接合(120)上に配置する前記ステップが、
転写デバイス(412)を前記コンタクト層(104)に取り付けるステップと、
前記転写デバイス(412)を前記コンタクト層(104)に取り付けるために、前記転写デバイス(412)を第2の温度より低い温度まで冷却するステップと
を含み、
前記転写デバイス(412)が、前記転写デバイス(412)の温度が前記第2の温度より低いときに強い接着をもたらし、前記転写デバイス(412)の前記温度が前記第2の温度より高いときに弱い接着をもたらすように適合され、並びに/あるいは、
前記転写デバイス(412)が、エラストマーを含むか、又は前記エラストマーから構成され、任意選択で、前記第2の温度が、前記エラストマーのガラス転移温度に対応し、及び/又は前記エラストマーが、PTFE若しくはPDMSであり、並びに/あるいは、
前記第2の温度が、前記第1の温度以下である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コンタクト層(104)を前記ジョセフソン接合(120)上に配置する前記ステップが、前記転写デバイス(412)を前記コンタクト層(104)から解放するステップ、を含み、前記転写デバイス(412)を前記コンタクト層(104)から解放する前記ステップが、前記転写デバイス(412)を前記第2の温度と前記第1の温度との間の温度に加熱するステップ、を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の超伝導体材料が、共有結合した原子層(126)と、前記第1の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に垂直な第1のc軸と、を有する第1の異方性層状材料であり、
前記第2の超伝導体材料が、共有結合した原子層(126)と、前記第2の超伝導体材料の前記共有結合した原子層(126)に垂直な第2のc軸と、を有する第2の異方性層状材料であり、
前記第1のc軸及び前記第2のc軸が前記ジョセフソン接合(120)において互いに位置合わせするように、並びに/あるいは前記ジョセフソン接合(120)において前記第1のc軸と前記第2のc軸との両方が前記第1の超伝導体材料と前記第2の超伝導体材料との両方と交差するように、前記ジョセフソン接合(120)が提供される、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の超伝導体材料と前記第2の超伝導体材料との間に前記ジョセフソン接合(120)を提供する前記ステップが、
前記第1の異方性層状材料の第1の超伝導体層(102a)を基材(140)上に配置するステップと、
前記ジョセフソン接合(120)を生成するために、前記第2の異方性層状材料の第2の超伝導体層(102b)を前記第1の超伝導体層(102a)上に配置するステップと、
任意選択で、前記第1の超伝導体層(102a)及び前記第2の超伝導体層(102b)を配置する前記ステップの前に、
前記第1の超伝導体層(102a)を生成するために前記第1の異方性層状材料を開裂するステップ、及び任意選択で、前記第1の異方性層状材料を開裂するステップの間に、前記第1の温度より低い温度に前記第1の異方性層状材料を保つステップ、並びに/あるいは、
前記第2の超伝導体層(102b)を生成するために前記第2の異方性層状材料を開裂するステップ、及び任意選択で、前記第2の異方性層状材料を開裂するステップの間に、前記第1の温度より低い温度に前記第2の異方性層状材料を保つステップ、
を含み、
任意選択で、前記第1の異方性層状材料を開裂する前記ステップ、及び/又は前記第2の異方性層状材料を開裂する前記ステップ、及び/又は前記第1の超伝導体層(102a)を前記基材(140)上に配置する前記ステップ、及び/又は前記第2の超伝導体層(102b)を前記第1の超伝導体層(102a)上に配置する前記ステップが、エラストマーを含むか、又は前記エラストマーから構成される転写デバイス(412)を使用して実施される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
量子ビットデバイス(100)を製造するためのコンタクト層(104)であって、前記コンタクト層(104)が、
電気絶縁要素(114)と、
前記電気絶縁要素(114)上に配置された第1の電極(130a)及び第2の電極(130b)を備えるコンデンサ(132)と、
前記第1の電極(130a)に電気的に接続され、前記電気絶縁要素(114)を通って、前記電気絶縁要素(114)の底面から前記電気絶縁要素(114)の上面まで延在する、第1の相互接続部(108a)と、
前記第2の電極(130b)に電気的に接続され、前記電気絶縁要素(114)を通って前記電気絶縁要素(114)の前記底面から前記電気絶縁要素(114)の前記上面まで延在する、第2の相互接続部(108b)と
を備え、
前記第1の電極(130a)、前記第2の電極(130b)、前記第1の相互接続部(108a)、及び前記第2の相互接続部(108b)の各々が、それぞれの超伝導体材料を含む、
コンタクト層(104)。
【外国語明細書】