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  • 特開-美容方法、装着体及び美容器セット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003326
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】美容方法、装着体及び美容器セット
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A61F7/00 310J
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082574
(22)【出願日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2023102102
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023217279
(32)【優先日】2023-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】小島 英明
(72)【発明者】
【氏名】米谷 真紀
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA03
4C099CA05
4C099JA02
4C099NA02
4C099PA01
(57)【要約】
【課題】温冷刺激によるリフトアップ効果を良好に得ることができる美容方法、装着体及び美容器セットを提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、美容方法が提供される。この美容方法は、生体軟組織を重力に抗して持ち上げた状態で装着体により固定し、この状態を維持しつつ、生体軟組織に美容器により温冷刺激を付与してリフティング効果を生じさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容方法であって、
生体軟組織を重力に抗して持ち上げた状態で装着体により固定し、この状態を維持しつつ、前記生体軟組織に美容器により温冷刺激を付与してリフティング効果を生じさせる、美容方法。
【請求項2】
請求項1に記載の美容方法において、
前記温冷刺激による加温時の第1の温度と、冷却時の第2の温度との温度差は、10℃以上50℃以下である、美容方法。
【請求項3】
請求項2に記載の美容方法において、
前記第1の温度は、40±10℃であり、前記第2の温度は、10±10℃である、美容方法。
【請求項4】
請求項1に記載の美容方法において、
前記生体軟組織は、頭部、上腕部、大腿部又は臀部の筋組織である、美容方法。
【請求項5】
請求項1に記載の美容方法において、
前記美容器による前記温冷刺激は、前記装着体を介して前記生体軟組織に付与される、美容方法。
【請求項6】
生体に接触させて使用され、可撓性を有するシート状の装着体であって、
長尺の本体部と、前記本体部の長手方向の両端部からそれぞれ側方に突出して設けられた一対の固定部とを備え、
少なくとも前記本体部は、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されている、装着体。
【請求項7】
請求項6に記載の装着体において、
前記一対の固定部も、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されるとともに、加温により粘着性を発現し、互いに接触させることにより固定される、装着体。
【請求項8】
請求項6に記載の装着体において、
同じ温度において、前記本体部の伸縮率は、各前記固定部の伸縮率より大きい、装着体。
【請求項9】
請求項8に記載の装着体において、
前記本体部の23℃、引張応力6MPaでの伸び率をX[%]とし、各前記固定部の23℃、引張応力6MPaでの伸び率をY[%]としたとき、X/Yが5以上50以下なる関係を満足する、装着体。
【請求項10】
請求項6に記載の装着体において、
前記本体部の表面粗さは、各前記固定部の表面粗さより大きい、装着体。
【請求項11】
請求項6に記載の装着体において、
さらに、前記本体部の長手方向の途中からそれぞれ短手方向の同じ側に突出して設けられた一対の第2の固定部を備える、装着体。
【請求項12】
請求項11に記載の装着体において、
前記一対の第2の固定部も、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されるとともに、加温により粘着性を発現し、互いに接触させることにより固定される、装着体。
【請求項13】
請求項6に記載の装着体において、
さらに、前記本体部の長手方向の両端部のそれぞれに接続されるとともに、各前記固定部に重ねて設けられ、前記装着体による前記生体の締め付け力を高める一対の補助部を備える、装着体。
【請求項14】
請求項13に記載の装着体において、
前記一対の補助部も、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されるとともに、加温により粘着性を発現する、装着体。
【請求項15】
請求項6に記載の装着体において、
前記装着体は、頭部に使用され、
前記本体部を下顎及びその周囲に接触させ、前記一対の固定部を頭頂部に配置するように構成されている、装着体。
【請求項16】
請求項15に記載の装着体において、
前記本体部は、その長手方向の中央部にオトガイを挿入可能な第1の孔部と、前記第1の孔部と前記一対の固定部との間にそれぞれ耳を挿入可能な一対の第2の孔部とを有する、装着体。
【請求項17】
美容器セットであって、
請求項6~請求項16のいずれか1項に記載の装着体と、
前記生体に温冷刺激を付与する美容器とを備える、美容器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容方法、装着体及び美容器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面と裏面に温度差が現れるペルチェ素子を用いて、温感または冷感を肌面に与えて美容や治癒を促進させる効果を得られるようにした美容処理装置(美容器)が知られている(特許文献1参照)。
使用者には、このような効果をさらに良好に得たいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-190105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では上記事情に鑑み、温冷刺激によるリフトアップ効果を良好に得ることができる美容方法、装着体及び美容器セットを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、美容方法が提供される。この美容方法は、生体軟組織を重力に抗して持ち上げた状態で装着体により固定し、この状態を維持しつつ、生体軟組織に美容器により温冷刺激を付与してリフティング効果を生じさせる。
【0006】
このような態様によれば、温冷刺激によるリフトアップ効果を良好に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の美容方法で使用可能な装着体の一例を示す平面図である。
図2図1の装着体の使用状態を示す概略図である。
図3】本実施形態の美容方法で使用可能な美容器の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、美容方法、装着体及び美容器セットについて、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本実施形態で使用可能な装着体について説明する。
[装着体]
図1は、本実施形態の美容方法で使用可能な装着体の一例を示す平面図である。図2は、図1の装着体の使用状態を示す概略図である。
【0009】
図1に示す装着体1は、生体に接触させて使用され、可撓性を有するシート材である。この装着体1は、長尺の本体部2と、本体部2の長手方向の両端部からそれぞれ側方に突出して設けられた一対の固定部3とを備えている。
かかる装着体1において、少なくとも本体部2は、10℃以上50℃以下程度の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されている。このような構成によれば、生体の体温で本体部2が伸縮(変形)し得るので、生体の肌面の凹凸に追従して変形させることができる。このため、装着体1は、生体の種々の部位に巻回して、本体部2を肌面に高い密着性で装着可能である。また、本体部2により生体軟組織を重力に抗して持ち上げた状態として、この状態で本体部2を冷却すると、本体部2は、伸縮率が低下する。これにより、生体軟組織を持ち上げた状態で固定することができる。
【0010】
装着体1では、一対の固定部3も、10℃以上50℃以下程度の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されていることが好ましい。これにより、生体の体温で固定部3も、伸縮(変形)し得るので、生体の肌面の凹凸に追従して変形させることができる。
一対の固定部3の固定は、面ファスナー、スナップフィットにより行うように構成してもよいが、一対の固定部3が加温により粘着性を発現し、これらを互いに接触させることにより固定されるように構成することが好ましい。これにより、部品点数を削減しつつ、簡便に装着体1を生体に固定(装着)することができる。
なお、本体部2及び固定部3において、伸縮率が変化する温度範囲は、12.5℃以上45℃以下程度であることがより好ましく、15℃以上40℃以下程度であることがさらに好ましい。この場合、温度に依存する本体部2及び固定部3の変形の程度を調整し易くなる。
【0011】
このような本体部2及び固定部3の構成材料は、オレフィン系樹脂を主成分(例えば、95質量%以上)として含有することが好ましい。オレフィン系樹脂を主成分として含有することにより、上記特性を装着体1全体(本体部2及び固定部3)に付与し易く、また高い撥水性を付与することもできる。
オレフィン系樹脂が多成分系オレフィンポリマー(例えば、プロピレン・エチレン・α-オレフィン)の場合、その温度に依存する伸縮率の調整は、各モノマー単位比、モノマーシーケンス分率、無水マレイン酸による変性の程度等により行うことができる。
また、装着体1全体としての温度に依存する伸縮率の調整は、多成分系オレフィンポリマーに混合する他のポリマーの種類、混合比等により行うことができる。他のポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(エテン重合物)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0012】
同じ温度において、本体部2の伸縮率は、各固定部3の伸縮率より大きいことが好ましい。これにより、本体部2の生体の肌面への密着性を高めつつ、固定部3により本体部2を生体に対してより確実に固定することができる。
具体的には、本体部2の23℃、引張応力6MPaでの伸び率をX[%]とし、各固定部3の23℃、引張応力6MPaでの伸び率をY[%]としたとき、X/Yが5以上50以下程度なる関係を満足することが好ましく、7.5以上40以下程度なる関係を満足することがより好ましく、10以上30以下程度なる関係を満足することがさらに好ましい。これにより、上記効果をより向上させることができる。
なお、伸び率(引張歪)は、例えば、次のようにして測定することができる。
まず、伸縮性を確認すべきシート材を、幅25mmの大きさの短冊状にカットして試験片とする。次に、試験片を長手方向にチャック間距離30mmで引張試験機により把持し、引張速度1000%/分で引っ張る。
伸び率(%)は、引張応力が6MPaとなったときの試験片の長さ(mm)-元の試験片の長さ(mm)/元の試験片の長さ(mm)×100で求めることができる。
【0013】
本体部2の表面粗さは、各固定部3の表面粗さより大きいことが好ましい。これにより、固定部3の本体部2に対する粘着性より、固定部3同士の粘着性を高めることができる。
なお、本明細書において、「表面粗さ」とは、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)を意味する。
本体部2の表面粗さを各固定部3の表面粗さより大きくする方法としては、例えば、本体部2を発泡シートで構成し、固定部3を緻密シートで構成する方法、本体部2の表面及び/又は固定部3の表面を物理的又は化学的に表面加工する方法、本体部2及び固定部3を形成する成形型の内面の凹凸の程度を変更する方法等が挙げられる。
【0014】
本体部2を構成する上記特性を有する発泡シート(素材)は、自製することができる他、例えば、α-オレフィン共重合体を97質量%超、ポリエチレン(エテン重合物)を3質量%未満で含有するHUMOFIT(登録商標)F10(三井化学株式会社製)のような市販品を使用することができる。
なお、本体部2を構成する発泡シート(素材)には、例えば、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを49質量%超、α-オレフィン共重合体を49質量%未満、ポリエチレン(エテン重合物)を2質量%未満で含有するHUMOFIT(登録商標)F20(三井化学株式会社製)のような市販品を使用することもできる。
一方、固定部3を構成する上記特性を有する緻密シート(素材)も、自製することができる他、例えば、α-オレフィン共重合体を99質量%超、その他の物質を1質量%未満で含有するHUMOFIT(登録商標)A11(三井化学株式会社製)のような市販品を使用することができる。
また、本体部2を構成する素材及び固定部3を構成する素材は、それぞれ形状記憶ポリマーを含有していてもよい。この場合、装着体1(本体部2及び固定部3)に対して、高い形状記憶特性を付与することができる。
【0015】
図1に示す装着体1は、頭部に使用される。具体的には、装着体1は、図2に示すように、本体部2を下顎及びその周囲に接触させ、一対の固定部3を頭頂部に配置するように構成されている。かかる構成によれば、頬の筋組織(生体軟組織)を持ち上げた状態で固定することができる。
かかる装着体1において、本体部2は、その長手方向の中央部に第1の孔部21と、第1の孔部21と一対の固定部3との間にそれぞれ一対の第2の孔部22とを有している。第1の孔部21及び各第2の孔部22は、いずれも長円形形状をなしており、第1の孔部21のサイズが各第2の孔部22のサイズより小さくなっている。
図2に示すように、第1の孔部21には、オトガイ(下顎の先端部)を挿入可能であり、各第2の孔部22には、耳を挿入可能である。かかる構成により、本体部2がオトガイ及び耳により顔に対して位置決めされるため、固定部3の頭頂部への装着操作が容易となる。
【0016】
2つの固定部3の中心線Oの交点Iは、第1の孔部21の内側に位置するように構成されている。また、第2の孔部22は、中心線Oを跨がないように配置されている。このような構成により、一対の固定部3を引っ張って、頭頂部で接触させて固定する際に、引張力を装着体1(本体部2)に付与し易い。
2つの中心線Oのなす角度θは、特に限定されないが、鈍角であることが好ましく、120°以上180°以下程度であることがより好ましく、130°以上170°以下程度であることがさらに好ましい。これにより、一対の固定部3を引っ張って、引張力をより確実に装着体1に付与することができる。
装着体1の自然状態(外力を付与しない状態)において、第1の孔部21及び2つの第2の孔部22の本体部2に占める割合は、特に限定されないが、5%以上30%以下程度であることが好ましく、10%以上20%以下程度であることがより好ましい。これにより、本体部2の機械的強度が低下するのを好適に防止することができる。
【0017】
第1の孔部21の開口面積は、特に限定されないが、300mm以上700mm以上程度であることが好ましく、400mm以上600mm以上程度であることがより好ましい。一方、第2の孔部22の開口面積も、特に限定されないが、1800mm以上2200mm以上程度であることが好ましく、1900mm以上2100mm以上程度であることがより好ましい。この場合、装着体1の位置決め操作及び装着操作をより円滑に行うことができる。
本体部2の長手方向の最大長さ(最大幅)W2は、特に限定されないが、350mm以上500mm以下程度であることが好ましく、400mm以上450mm以下程度であることがより好ましい。
また、本体部2の短手方向の最大長さL2も、特に限定されないが、75mm以上175mm以下程度であることが好ましく、100mm以上150mm以下程度であることがより好ましい。
【0018】
各固定部3の平均幅W3は、特に限定されないが、70mm以上100mm以下程度であることが好ましく、80mm以上90mm以下程度であることがより好ましい。
また、各固定部3の平均長さL3は、特に限定されないが、80mm以上110mm以下程度であることが好ましく、90mm以上100mm以下程度であることがより好ましい。
本体部2を構成するシートと各固定部3を構成するシートとは、例えば、融着(熱融着、超音波融着、高周波融着等)、接着剤による接着、及び縫製のうちの少なくとも1つにより形成された接合部23を介して接合されている。
接合部23の幅W23は、特に限定されないが、5mm以上20mm以下程度であることが好ましく、7.5mm以上15mm以下程度であることがより好ましい。
【0019】
図1に示す装着体1は、さらに、本体部2の長手方向の途中からそれぞれ短手方向の同じ側に突出して設けられた一対の第2の固定部4を備えている。
各第2の固定部4の特性は、各固定部3の特性と同様とすることができる。すなわち、一対の第2の固定部4も、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されるとともに、加温により粘着性を発現することが好ましい。
かかる装着体1は、図2に示すように、本体部2を下顎及びその周囲に接触させ、一対の固定部3を引っ張って頭頂部において互いに接触させることにより固定した後、一対の第2の固定部4を引っ張って後頭部において互いに接触させることにより固定する。これにより、装着体1を頭部により正確且つ確実に固定することができる。
【0020】
各第2の固定部4の平均幅W4は、特に限定されないが、30mm以上50mm以下程度であることが好ましく、35mm以上45mm以下程度であることがより好ましい。
また、各第2の固定部4の平均長さL4は、特に限定されないが、35mm以上50mm以下程度であることが好ましく、40mm以上45mm以下程度であることがより好ましい。
本体部2を構成するシートと各第2の固定部4を構成するシートとは、例えば、融着(熱融着、超音波融着、高周波融着等)、接着剤による接着、及び縫製のうちの少なくとも1つにより形成された接合部24を介して接合されている。
接合部24の幅W24は、特に限定されないが、5mm以上20mm以下程度であることが好ましく、7.5mm以上15mm以下程度であることがより好ましい。
【0021】
図1に示す装着体1は、さらに、本体部2の長手方向の両端部のそれぞれに接続されるとともに、各固定部3に重ねて設けられた一対の補助部5を備えている。
各補助部5の特性は、各固定部3の特性と同様とすることができる。すなわち、一対の補助部5も、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されるとともに、加温により粘着性を発現することが好ましい。
かかる装着体1は、図2に示すように、本体部2を下顎及びその周囲に接触させ、一対の固定部3を引っ張って頭頂部において互いに接触させることにより固定した後、一対の補助部5を引っ張って頭頂部において各固定部3に接触させることにより固定する。これにより、装着体1による頬(生体)の締め付け力を高めることができる。
各補助部5は、長方形状(矩形状)をなし、その長手方向が中心線Oと略平行となるように配置されている。かかる構成により、装着体1による生体の締め付け力を高める操作を簡便に行い易い。
【0022】
各補助部5の平均幅W5は、特に限定されないが、25mm以上45mm以下程度であることが好ましく、30mm以上40mm以下程度であることがより好ましい。
また、各第2の固定部4の平均長さL5は、特に限定されないが、115mm以上155mm以下程度であることが好ましく、125mm以上145mm以下程度であることがより好ましい。
本体部2を構成するシートと各第2の固定部4を構成するシートとは、例えば、融着(熱融着、超音波融着、高周波融着等)、接着剤による接着、及び縫製のうちの少なくとも1つにより形成された接合部25を介して接合されている。
接合部25の幅W25は、特に限定されないが、5mm以上20mm以下程度であることが好ましく、7.5mm以上15mm以下程度であることがより好ましい。
【0023】
装着体1の平均厚さは、0.01mm以上5mm以下程度であることが好ましく、0.05mm以上2.5mm以下程度であることがより好ましく、0.1mm以上1.5mm以下程度であることがさらに好ましい。
本体部2の目付け(単位面積あたりの質量)は、50g/m以上1000g/m以下程度であることが好ましく、100g/m以上750g/m以下程度であることがより好ましく、150g/m以上500g/m以下程度であることがさらに好ましい。
【0024】
次に、本実施形態で使用可能な美容器について説明する。
[美容器]
図3は、本実施形態の美容方法で使用可能な美容器の一例を示す断面図である。
図3に示す美容器10は、生体に温冷刺激を付与する器具である。以下、説明の都合上、図3中の上側を「上」又は「上方」と言い、下側を「下」又は「下方」と言う。
この美容器10は、筐体20と、筐体20を上下側に区画する隔壁部30と、隔壁部30を貫通して配置されたペルチェ素子40及び電源部50と、制御基板60と、充電部70とを備えている。
かかる構成によれば、ペルチェ素子40の作用により、筐体20の一方の面を加温し、他方の面を冷却することができる。なお、隔壁部30は、筐体20を加温側と冷却側とに分離する(縁を切る)機能も有している。
【0025】
電源部50は、例えば、リチウム二次電池のような蓄電池で構成することができる。
また、充電部70は、例えば、無接点充電コイル、充電ケーブル等で構成することができる。
美容器10は、充電部70を介した電源部50への給電を終了すると、自動で電源がオンされ、給電を開始すると、自動で電源がオフされるように構成されていることが好ましい。かかる構成によれば、電源ボタンを省略することができる。
また、レベル調整ボタン、モード変更ボタンの他、表示部(LED素子)等も省略するようにすることが好ましい。これにより、美容器10の構成を極めて簡略化することができる。
【0026】
[美容器セット]
美容器セットの一実施形態は、上述したような装着体1及び美容器10を備えて構成することができる。
[美容方法]
美容方法は、例えば、このような美容器セットを使用して実施することができる。
本実施形態の美容方法は、生体軟組織を重力に抗して持ち上げた状態で装着体1により固定し、この状態を維持しつつ、生体軟組織に美容器10により温冷刺激を付与してリフティング効果を生じさせる方法である。
具体的には、まず、図2に示すように、装着体1を頭部に装着する。これにより、頭部の頬の筋組織である生体軟組織を持ち上げた状態(引き上げた状態)で固定する。
【0027】
次に、美容器10を作動させ、美容器10による温冷刺激を、装着体1(本体部2)を介して頬の筋組織(生体軟組織)に付与する。このように本体部2を介して、筋組織を加温及び冷却することにより、加温及び冷却時の温度を筋組織に緩徐に付与することができる。かかる効果は、上述したような発泡シートで本体部2を構成する場合に、特に良好に得られる。
また、まず、美容器10の加温側を本体部2に押し付け、その伸縮率を上昇させつつアイロンのように伸ばすことにより、本体部2を顔形状に追従するように変形させることができる。次いで、美容器10の冷却側を本体部2に押し付け、その収縮率を低下させて固化させることにより、頬の筋組織を重力に抗して持ち上げた状態を記憶させることができる。これにより、筋組織を加圧して、リンパドレナージュを行うことができる。その後、美容器10による冷却を終了すると、生体の体温により本体部2の伸縮率が徐々に上昇して、筋組織の加圧が解除されることにより、リンパを開放することができる。
【0028】
温冷刺激による加温時の第1の温度と、冷却時の第2の温度との温度差は、10℃以上50℃以下程度であることが好ましく、15℃以上40℃以下程度であることがより好ましく、20℃以上35℃以下程度であることがさらに好ましい。この場合、本体部2の伸縮率の変化を十分に大きくすることができる。
具体的には、第1の温度は、40±10℃程度(特に、40±5℃程度、又は40±3℃程度)であり、第2の温度は、10±10℃程度(特に、10±5℃程度、又は10±3℃程度)であることが好ましい。この場合、上記効果をより良好に得ることができる。
上述したように、本体部2及び固定部3の構成材料がオレフィン系樹脂を主成分として含有することにより、本体部2及び固定部3に高い撥水性を付与することができる。このため、本体部2による肌面のラッピング作用を得ることができ、肌面と本体部2との間に美容成分(例えば、保湿成分)を介在させておけば、美容成分の高い浸透効果も期待できる。
【0029】
美容成分は、そのまま肌面と本体部2との間に介在させてもよく、又は吸収性基材に担持させた状態で肌面と本体部2との間に介在させてもよい。
美容成分としては、例えば、各種ビタミン類、セラミド、コラーゲン、美白剤等が挙げられる。
吸水性基材は、好ましくは、織布、不織布及びゲルシートのうちの少なくとも1つで構成することができる。
なお、美容成分を担持させた吸収性基材は、市販のシートマスクであってもよい。
また、美容成分を担持させた吸収性基材(第2の層)は、装着体1(第1の層)に対して、接合されていなくてもよく、例えば、融着(熱融着、超音波融着、高周波融着等)、接着剤による接着、及び縫製のうちの少なくとも1つにより接合されていてもよい。
【0030】
また、第2の層は、美容成分を担持させた吸収性基材に代えて、生体に対して電気刺激を付与する電極層であってもよい。
電極層は、例えば、導電性シリコーン、金属箔、金属繊維、導電性樹脂インク及び金属インクのうちの少なくとも1つで構成することが好ましい。
また、電極層は、樹脂製の基材と、この基材の装着体1と反対側に設けられた電極とを有することが好ましい。この場合、基材は、シリコーン系樹脂又はシリコーンゴムを主成分として構成することができる。
また、シリコーン系樹脂又はシリコーンゴムを主成分として構成される第2の層を本体部2に対応して設けることができる。
この場合、装着体1(第1の層)は、本体部2に対応して、さらに、第3の層を備えていてもよい。この第3の層は、装着体1(第1の層)の第2の層と反対側に設けられ、シリコーン系樹脂又はシリコーンゴムを主成分として構成することができる。
【0031】
装着体1を装着してリフティング効果を生じさせる温冷刺激を行う生体軟組織としては、頭部の筋組織に限らず、上腕部、大腿部又は臀部の筋組織であってもよい。
これらの場合、本体部2の形状及びサイズ、固定部3の位置、形状及びサイズ、第2の固定部4の有無、位置、形状及びサイズ、補助部5の有無、位置、形状及びサイズ等は、適宜設定すればよい。
また、装着体1を上腕部に使用する場合、肘を挿入する孔部を形成するのが好ましく、装着体1を大腿部に使用する場合、膝を挿入する孔部を形成するのが好ましい。
装着体1は、使用者の顔の全面又は下半分を覆うように構成されていてもよい。この場合、装着体1には、例えば、目、鼻、口にそれぞれ対応する開口部(孔部)又は凹部(切欠部)が設けられる。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0032】
(1)美容方法であって、生体軟組織を重力に抗して持ち上げた状態で装着体により固定し、この状態を維持しつつ、前記生体軟組織に美容器により温冷刺激を付与してリフティング効果を生じさせる、美容方法。
【0033】
(2)上記(1)に記載の美容方法において、前記温冷刺激による加温時の第1の温度と、冷却時の第2の温度との温度差は、10℃以上50℃以下である、美容方法。
【0034】
(3)上記(2)に記載の美容方法において、前記第1の温度は、40±10℃であり、前記第2の温度は、10±10℃である、美容方法。
【0035】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の美容方法において、前記生体軟組織は、頭部、上腕部、大腿部又は臀部の筋組織である、美容方法。
【0036】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の美容方法において、前記美容器による前記温冷刺激は、前記装着体を介して前記生体軟組織に付与される、美容方法。
【0037】
(6)生体に接触させて使用され、可撓性を有するシート状の装着体であって、長尺の本体部と、前記本体部の長手方向の両端部からそれぞれ側方に突出して設けられた一対の固定部とを備え、少なくとも前記本体部は、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されている、装着体。
【0038】
(7)上記(6)に記載の装着体において、前記一対の固定部も、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されるとともに、加温により粘着性を発現し、互いに接触させることにより固定される、装着体。
【0039】
(8)上記(6)又は(7)に記載の装着体において、同じ温度において、前記本体部の伸縮率は、各前記固定部の伸縮率より大きい、装着体。
【0040】
(9)上記(8)に記載の装着体において、前記本体部の23℃、引張応力6MPaでの伸び率をX[%]とし、各前記固定部の23℃、引張応力6MPaでの伸び率をY[%]としたとき、X/Yが5以上50以下なる関係を満足する、装着体。
【0041】
(10)上記(6)~(9)のいずれか1つに記載の装着体において、前記本体部の表面粗さは、各前記固定部の表面粗さより大きい、装着体。
【0042】
(11)上記(6)~(10)のいずれか1つに記載の装着体において、さらに、前記本体部の長手方向の途中からそれぞれ短手方向の同じ側に突出して設けられた一対の第2の固定部を備える、装着体。
【0043】
(12)上記(11)に記載の装着体において、前記一対の第2の固定部も、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されるとともに、加温により粘着性を発現し、互いに接触させることにより固定される、装着体。
【0044】
(13)上記(6)~(12)のいずれか1つに記載の装着体において、さらに、前記本体部の長手方向の両端部のそれぞれに接続されるとともに、各前記固定部に重ねて設けられ、前記装着体による前記生体の締め付け力を高める一対の補助部を備える、装着体。
【0045】
(14)上記(13)に記載の装着体において、前記一対の補助部も、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成されるとともに、加温により粘着性を発現する、装着体。
【0046】
(15)上記(6)~(14)のいずれか1つに記載の装着体において、前記装着体は、頭部に使用され、前記本体部を下顎及びその周囲に接触させ、前記一対の固定部を頭頂部に配置するように構成されている、装着体。
【0047】
(16)上記(15)に記載の装着体において、前記本体部は、その長手方向の中央部にオトガイを挿入可能な第1の孔部と、前記第1の孔部と前記一対の固定部との間にそれぞれ耳を挿入可能な一対の第2の孔部とを有する、装着体。
【0048】
(17)美容器セットであって、上記(6)~(16)のいずれか1つに記載の装着体と、前記生体に温冷刺激を付与する美容器とを備える、美容器セット。
もちろん、この限りではない。
【0049】
(101)生体に接触させて使用され、可撓性を有するシート材であって、第1の層と、第2の層とを備え、前記第1の層は、10℃以上50℃以下の温度範囲において、温度に依存して伸縮率が変化するように構成され、前記第2の層は、前記生体に接触させるように構成され、前記第1の層は、前記第2の層に重ねた状態で使用される、シート材。
【0050】
(102)上記(101)に記載のシート材において、前記第1の層と前記第2の層とは、熱、接着剤又は縫製により接合されている、シート材。
【0051】
(103)上記(101)又は(102)に記載のシート材において、前記第1の層は、オレフィン系樹脂を主成分として構成されている、シート材。
【0052】
(104)上記(101)~(103)のいずれか1つに記載のシート材において、前記第1の層は、形状記憶ポリマーを含有している、シート材。
【0053】
(105)上記(101)~(104)のいずれか1つに記載のシート材において、前記第2の層は、前記生体に接触することにより前記生体に対して所定の美容効果を付与するように構成されている、シート材。
【0054】
(106)上記(105)に記載のシート材において、前記第2の層は、吸水性基材と、美容成分とを有し、前記美容成分は、前記吸水性基材に担持されている、シート材。
【0055】
(107)上記(106)に記載のシート材において、前記吸水性基材は、織布、不織布及びゲルシートのうちの少なくとも1つで構成されている、シート材。
【0056】
(108)上記(107)に記載のシート材において、前記第2の層は、前記生体に対して電気刺激を付与する電極層である、シート材。
【0057】
(109)上記(108)に記載のシート材において、前記電極層は、導電性シリコーン、金属箔、金属繊維、導電性樹脂インク及び金属インクのうちの少なくとも1つで構成されている、シート材。
【0058】
(110)上記(108)に記載のシート材において、前記電極層は、樹脂製の基材と、電極とを有し、前記電極は、前記基材の前記第1の層と反対側に設けられている、シート材。
【0059】
(111)上記(110)に記載のシート材において、前記基材は、シリコーン系樹脂又はシリコーンゴムを主成分として構成されている、シート材。
【0060】
(112)上記(101)~(111)のいずれか1つに記載のシート材において、前記第2の層は、シリコーン系樹脂又はシリコーンゴムを主成分として構成されている、シート材。
【0061】
(113)上記(112)に記載のシート材において、さらに、第3の層を備え、前記第3の層は、前記第1の層の他方の面側に設けられ、シリコーン系樹脂又はシリコーンゴムを主成分として構成されている、シート材。
【0062】
(114)上記(113)に記載のシート材において、前記生体に巻回して装着可能な装着体を構成している、シート材。
【0063】
(115)生体に接触させて使用される美容器であって、上記(101)~(111)のいずれか1つに記載のシート材と、固定部材とを備え、前記固定部材は、前記第2の層を前記生体に接触させた状態で、前記シート材を前記生体に対して固定するように構成されている、美容器。
【0064】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0065】
以下、美容方法について以下の実施例を用いてより詳細に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
10名の被験者(女性:23歳~51歳)に参加してもらった。そして、10名の被験者に、装着体1を単独で使用したテストIと、装着体1を装着した状態で美容器10により温冷刺激を与えたテストIIとのいずれにおいて、むくみの改善が感じられたか、及びリフトアップが感じられたかを回答してもらった。
【0067】
装着体1には、以下の仕様のものを使用した。
・本体部2
材質:HUMOFIT(登録商標)F10(三井化学株式会社製)
厚さ:0.5mm
・固定部3、第2の固定部4及び補助部5
材質:HUMOFIT(登録商標)A11(三井化学株式会社製)
厚さ:0.4mm
【0068】
まず、10名の被験者を5名ずつのX及びYの2つのグループに分けた。
グループXに属する被験者は、クレンジングでメイクを落とした後、テストIを実施し、30分間の休憩を挟んで、テストIIを実施した。
一方、グループYに属する被験者は、クレンジングでメイクを落とした後、テストIIを実施した後、30分間の休憩を挟んで、テストIを実施した。
【0069】
テストIでは、まず、装着体1の第1の孔部21にオトガイを挿入し、固定部3を引っ張って、フェイスラインに沿ってゆっくりと引き上げた後、第2の孔部22に耳を挿入するとともに、頭頂部で固定部3を固定した。次に、第2の固定部4を引っ張って、引き上げた後、後頭部で固定し、さらに補助部5を引っ張って、頭頂部において固定部3に固定した。なお、喉元が苦しくなり過ぎないように調整した。そして、この状態を6分間維持した。
一方、テストIIでは、テストIと同様に装着体1を装着した状態で、美容器10の加温面(42℃)で3分間加温した後、冷却面(12℃)で3分間冷却した。
【0070】
これらの結果を、以下の表1に示す。
【表1】
【0071】
本テストにおいて、10名中10名が、装着体1と温冷刺激とを併用した方が効果を感じたという結果が得られた。このことから、温冷刺激を併用することにより、装着体1の温度依存性の特徴を生かし、むくみがとれて顔周りをスッキリさせたり、肌を持ち上げる等の美容効果を得られるということが示された。
【符号の説明】
【0072】
1 :装着体
2 :本体部
3 :固定部
4 :第2の固定部
5 :補助部
10 :美容器
20 :筐体
21 :第1の孔部
22 :第2の孔部
23 :接合部
24 :接合部
25 :接合部
30 :隔壁部
40 :ペルチェ素子
50 :電源部
60 :制御基板
70 :充電部
I :交点
O :中心線
L2 :最大長さ
L3 :平均長さ
L4 :平均長さ
L5 :平均長さ
W2 :最大長さ
W3 :平均幅
W4 :平均幅
W5 :平均幅
W23:幅
W24:幅
W25:幅
θ :角度
図1
図2
図3