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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025033266
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】浄水装置及び浄水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20250306BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20250306BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20250306BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/04
C02F1/44 D
C02F1/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138861
(22)【出願日】2023-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】523329194
【氏名又は名称】保科 壽治
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】保科 壽治
【テーマコード(参考)】
4D006
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006KA16
4D006KA72
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB14
4D006KE08P
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006KE24Q
4D006PA01
4D006PB06
4D624AA02
4D624BA02
4D624BA05
4D624BA17
4D624BC01
4D624CA14
4D624CA15
4D624CA16
4D624DB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装置再稼働時の逆浸透膜の初期透過水水質を向上させることができる浄水装置を提供する。
【解決手段】実施形態の浄水装置1は、逆浸透膜21に原水を供給する原水供給路11と、逆浸透膜21により原水から透過水と濃縮水とを分離生成し、透過水を供給する浄水部2と、逆浸透膜21からの透過水を、吐水口12aから外部に供給する透過水供給路12と、逆浸透膜21を透過できなかった濃縮水を排水する排水経路13と、透過水供給路12に設けられ、透過水を一時的に加圧状態で貯留する加圧式透過水タンク3と、透過水供給路12における加圧式透過水タンク3から吐水口12aの間に設けられた逆止弁B3と、透過水供給路12内の圧力が所定の圧力に達した場合には、原水供給路11を閉じ、透過水供給路12内の圧力が所定の圧力に満たない場合には、原水供給路11を開く開閉部5と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜に原水を供給する原水供給路と、
前記逆浸透膜により原水から透過水と濃縮水とを分離生成し、前記透過水を供給する浄水部と、
前記逆浸透膜からの前記透過水を、吐水口から外部に供給する透過水供給路と、
前記逆浸透膜を透過できなかった前記濃縮水を排水する排水経路と、
前記透過水供給路に設けられ、前記透過水を一時的に加圧状態で貯留する加圧式透過水タンクと、
前記透過水供給路における前記加圧式透過水タンクから前記吐水口の間に設けられた逆止弁と、
前記透過水供給路内の圧力が所定の圧力に達した場合には、前記原水供給路を閉じ、前記透過水供給路内の圧力が所定の圧力に満たない場合には、前記原水供給路を開く開閉部と、
を有することを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
前記加圧式透過水タンクは、前記透過水を一時的に貯留し、貯水量に応じて内部の圧力が可変に設けられた貯水部を有することを特徴とする請求項1記載の浄水装置。
【請求項3】
前記加圧式透過水タンクは、気体により前記貯水部に圧力を加える加圧部を有することを特徴とする請求項2記載の浄水装置。
【請求項4】
前記加圧式透過水タンクは、弾性体により構成された隔膜によって、前記貯水部と前記加圧部とに仕切られていることを特徴とする請求項3記載の浄水装置。
【請求項5】
前記加圧部の圧力を調整する調整部を有することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の浄水装置。
【請求項6】
前記調整部は、弾性体により構成された膜により、前記加圧部の容積を可変に設けられていることを特徴とする請求項5記載の浄水装置。
【請求項7】
前記開閉部は、一対の経路のうちの一方の経路が前記原水供給路が通る流路であり、他方の経路が前記透過水供給路が通る流路であるオートシャットオフバルブであることを特徴とする請求項1記載の浄水装置。
【請求項8】
前記吐水口と前記逆止弁との間に設けられた圧力センサを有し、
前記開閉部は、前記原水供給路に設けられ、前記吐水口を閉とした際に、前記圧力センサにより検出される圧力が所定の圧力に達した場合に、前記原水供給路を閉じ、前記吐水口を開とした際に、前記圧力センサにより検出される圧力が所定の圧力以下となった場合に、前記原水供給路を開く開閉弁であることを特徴とする請求項1記載の浄水装置。
【請求項9】
前記原水供給路に設けられ、原水側の圧力を高めるポンプと、
前記吐水口と前記逆止弁との間に設けられた圧力センサと、
前記吐水口を閉とした際に、前記圧力センサにより検出される圧力が、所定の圧力に達したことを検知した場合に、前記ポンプを停止させ、前記吐水口を開とした際に、前記圧力センサにより検出される圧力が、所定の圧力以下となったことを検知した場合に、前記ポンプを作動させる圧力スイッチと、
を有することを特徴とする請求項1記載の浄水装置。
【請求項10】
前記加圧式透過水タンクに代えて、一時的に透過水を貯留し、重力により排水する貯留タンクが設けられていることを特徴とする請求項1記載の浄水装置。
【請求項11】
請求項1記載の浄水装置の浄水方法であって、
前記透過水供給路において、前記吐水口からの前記透過水の供給を停止した後、前記吐水口と前記逆止弁との間に設けられた圧力センサにより検知される水圧が所定の圧力に達するまで前記加圧式透過水タンクに前記透過水が供給され、前記加圧式透過水タンクが一時的に加圧状態で貯留していた前記透過水を前記逆浸透膜側に逆流させて、濃縮水排水側から排出することを特徴とする浄水方法。
【請求項12】
前記透過水供給路からの前記透過水の供給が停止した後、前記開閉部が、前記透過水供給路内の圧力が所定の圧力に達した場合に、前記原水供給路を閉じることを特徴とする請求項11記載の浄水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水装置及び浄水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の分野で水処理システムの研究、開発、応用が進展している。特に、浄水を目的とする水処理システムにおいては、水中に溶解した化学化合物の低減が重要である。この化学化合物を低減するための手段として、逆浸透膜を利用した水処理システムがある。逆浸透膜は、高分子膜間に超微細な隙間を有する半透膜で、高い浸透圧を持つ溶液に対して、浸透圧以上の高い圧力をかけて、水分子を強制的に半透膜を透過させることにより、溶解物質を低減するものである。逆浸透膜を用いることにより、水分子だけを選択的に透過させ、溶解物質を高い精度で低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、逆浸透膜を使用した水処理システムは、浄水の供給を一時停止してから、次に供給を再開するまでの間に、水質が低下する問題がある。特に、頻繁にシステムをオンオフする際にはこの水質低下は大きな課題となっている。
【0005】
すなわち、逆浸透膜による浄水は、濃度の低い溶液中の水分が、半透膜を境に、濃度の高い溶液側に透過流入し、浸透圧を一定に保つという原理(正浸透現象)を前提としている。そして、敢えて浸透圧以上の圧力を濃度の高い溶液に加えることにより、溶液中の水分を強制的に半透膜を透過させ、膜の持つ分離能力により無機物または有機物のほとんどが除かれた水(以下、透過水という)と、反対にそれらが濃縮された水(以下、濃縮水という)とに分離されることにより、透過水が得られる(逆浸透現象)。
【0006】
すると、一旦稼働を停止すると、加圧状態が解かれるために圧力差が小さいかほぼ無い状態になり、逆浸透現象が消失して、正浸透現象となるため、半透膜によって透過水と濃縮水とに分けられた水が、再度混合されてしまう(濃度差拡散現象)。濃度差拡散現象は、RОクリープ現象とも呼ばれ、この現象が起きると、一旦半透膜を透過した水と浸透膜内に残留した水とが混合してしまうので、再度、装置を稼働させたとき、透過水として吐水する最初の水質が原水水質に近づく。つまり、装置停止前に分離されて供給されるはずであった透過水の水質が、再稼働初期に低下してしまうことになる。
【0007】
この現象による透過水と浸透膜内残留水との混合は、逆浸透膜のエレメントの大きさが大きいほど混合された水容積が大きくなることとと、停止時間が長ければ更にRОクリープ現象が進み、再稼働時の初期吐水水質の低下を助長してしまう。また、昨今、単位時間当たりの透過水量を多く求められる状況にあるが、単位時間当たりの透過水量が大きい逆浸透膜を採用した場合、逆浸透膜を透過した透過水と、透過できずに排水される濃縮水の双方の量が大きくなる。すると、半透膜によって一旦排除され、その後、正浸透現象により、透過水側に移動する溶解物質の量が必然的に多くなる。
【0008】
このRОクリープ現象により、逆浸透膜の溶解性物質阻止率は一旦小さい値となる。再度圧力をかけ原水の透過速度を大きくすると、分離効果によって溶質は膜面で阻止され、阻止率は膜本来の値に近づく。しかし、装置再稼働初期には、目的とした水質に届かない低品質の水が多量に吐水されることとなるため、装置再稼働時の初期透過水を排水する経路を作り付属的な制御を行ったり、透過水水質をモニターする仕組みを作ったり、家庭用レベルの装置であってもしっかりした管理が必要となり、結果的にコストアップにつながることとなっていた。
【0009】
本発明の実施形態は、装置再稼働時の逆浸透膜の初期透過水水質を向上させることができる浄水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の浄水装置は、逆浸透膜に原水を供給する原水供給路と、前記逆浸透膜により原水から透過水と濃縮水とを分離生成し、前記透過水を供給する浄水部と、前記逆浸透膜からの前記透過水を、吐水口から外部に供給する透過水供給路と、前記逆浸透膜を透過できなかった濃縮水を排水する排水経路と、前記透過水供給路に設けられ、前記透過水を一時的に加圧状態で貯留する加圧式透過水タンクと、前記透過水供給路における前記加圧式透過水タンクから前記吐水口の間に設けられた逆止弁と、前記透過水供給路内の圧力が所定の圧力に達した場合には、前記原水供給路を閉じ、前記透過水供給路内の圧力が所定の圧力に満たない場合には、前記原水供給路を開く開閉部と、を有する。
【0011】
本実施形態の浄水方法は、前記透過水供給路において、前記吐水口からの前記透過水の供給を停止した後、前記吐水口と前記逆止弁との間に設けられた圧力センサにより検知される水圧が所定の圧力に達するまで前記透過水タンクに前記透過水が供給され、前記加圧式透過水タンクが一時的に加圧状態で貯留していた前記透過水を前記逆浸透膜側に逆流させて、濃縮水排水側から排出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態は、装置再稼働時の逆浸透膜の初期透過水水質を装置の通常稼働状態と同様レベルまで向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の浄水装置の実施形態の構成を示す系統図である。
図2図1の実施形態の加圧式透過水タンクを示す断面図であり、透過水が空の状態(A)、透過水の供給中の状態(B)、透過水で満たされた状態(C)を示す。
図3】実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
図4図1の実施形態の透過水供給停止状態を示す系統図である。
図5図1の実施形態のRОクリープ水排水状態を示す系統図である。
図6】実施形態の浄水装置におけるオートシャットオフバルブの位置の変形例の構成を示す系統図である。
図7図6の実施形態の透過水供給停止状態を示す系統図である。
図8図6の実施形態のRОクリープ水排水状態を示す系統図である。
図9】実施形態の浄水装置におけるオートシャットオフバルブを開閉用電磁弁とした変形例の構成を示す系統図である。
図10図9の実施形態の透過水供給停止状態を示す系統図である。
図11図9の実施形態のRОクリープ水排水状態を示す系統図である。
図12】加圧部の圧力を調整する調整部の一例を示す断面図である。
図13】回収経路を設けた例を示す系統図である。
図14】加圧式透過水タンクに代えて貯留タンクを設けた例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態は、逆浸透膜を利用した水処理システムを、家庭用の浄水装置に適用したものである。
【0015】
[構成]
図1の系統図に示すように、本実施形態の浄水装置1は、逆浸透膜21による浄水部2を備える。
【0016】
(浄水部)
浄水部2は、逆浸透膜21により原水(本実施形態では水道水)から透過水と濃縮水とを分離生成し、透過水を供給する。逆浸透膜21は、膜エレメントを容器であるベッセルに内蔵したものである。膜エレメントは、上記の逆浸透の原理により、重金属類、化学物質類、溶解物質等を低減する。
【0017】
浄水部2には、原水供給路11、透過水供給路12、排水経路13が接続されている。原水供給路11は、浄水部2の逆浸透膜21に原水を供給する原水の供給路である。原水供給路11は、逆浸透膜21の原水供給側に接続されている。透過水供給路12は、浄水部2の逆浸透膜21からの透過水を、吐水口12aから外部に供給する経路である。透過水供給路12は、逆浸透膜21の透過水供給側に接続されている。なお、吐水口12aは、後述する水栓4の蛇口である。排水経路13は、浄水部2の逆浸透膜21を透過できなかった濃縮水を排水する経路である。排水経路13は、逆浸透膜21の濃縮水排水側に接続されている。
【0018】
(原水供給路)
原水供給路11には、ボールバルブB1、逆止弁B2、セディメントフィルタSF、活性炭フィルタCF、ポンプPが設けられている。ボールバルブB1は、開閉により原水の供給の有無を切り替える。逆止弁B2は、原水の逆流を防止する弁である。セディメントフィルタSFは、錆、砂、塵など、約5ミクロン以上の不純物を除去する繊維系のフィルタである。活性炭フィルタCFは、残留塩素などを除去することによりポリアミド系素材でできた逆浸透膜21を保護するフィルタである。ポンプPは、逆浸透膜21の原水側の圧力を高める加圧ポンプである。
【0019】
(透過水供給路)
透過水供給路12には、加圧式透過水タンク3、逆止弁B3、圧力センサPI、圧力スイッチSW、ポストフィルタPF、水栓4が設けられている。
【0020】
<加圧式透過水タンク>
加圧式透過水タンク3は、透過水を一時的に加圧状態で貯留する。加圧式透過水タンク3は、図2に示すように、容器31、隔膜32、貯水部33、加圧部34を有する。容器31は、円柱形状の上下が外方に膨らんだドーム形となっており、内部の空間に浄水を貯留可能となっている。容器31には、給排水口31aが設けられている。給排水口31aは、透過水供給路12に接続されている。
【0021】
隔膜32は、容器31の内部を気密に2つの領域に区切る部材である。隔膜32は、弾性体により構成されている。例えば、ブチルゴムのシートの周囲が、容器31の内側面に気密に取り付けられている。
【0022】
貯水部33は、図2(B)、(C)に示すように、透過水が貯留される領域である。貯水部33は、貯水量に応じて、内部の圧力が可変に設けられている。つまり、貯水部33は、貯水量が多くなるに従って内部の圧力が高くなり、貯水量が少なくなるに従って内部の圧力が低くなる。貯水部33は、隔膜32によって区切られた容器31内の一方の領域であり、給排水口31aが連通している。なお、図中、網掛けの部分が透過水である。
【0023】
加圧部34は、貯水部33に圧力を加える領域である。加圧部34は、隔膜32によって区切られた容器31内の他方の領域であり、図2(A)に示すように、内部の気体(本実施形態では空気)によって、貯水部33に対して圧力を与えている。なお、貯水されていない場合には、加圧部34の圧力によって、隔膜32が容器31内に接していて、貯水部33の容積はほぼ無い状態となっている。そして、図2(B)、図2(C)に示すように、給排水口31aから供給される浄水の貯水量の増加と共に、隔膜32が伸張して、貯水部33及び加圧部34の内圧が上昇する。
【0024】
このような加圧式透過水タンク3は、逆浸透膜21の容量及びRОクリープを発生させる水量に応じて、隔膜32が伸縮することにより、貯水部33の貯水量を調整できる。また、上記のように、貯水部33は、逆流させる水量・水圧に対応して、加圧部34の空気圧によって、内圧が可変となっている。
【0025】
<逆止弁>
逆止弁B3は、透過水の逆流を防止する弁である。逆止弁B3は、加圧式透過水タンク3と吐水口12aとの間に設けられ、加圧式透過水タンク3以降に流れた透過水の逆流を防止する。
【0026】
<圧力センサ>
圧力センサPIは、透過水供給路12の浄水の圧力を検出する。
【0027】
<圧力スイッチ>
圧力スイッチSWは、圧力センサPIにより検出された圧力に応じて、ポンプPをON/OFFさせる。
【0028】
<ポストフィルタ>
ポストフィルタPFは、逆浸透膜21を通過した透過水が一次貯留タンク内において、伸縮性素材から透過水に転写される可能性のある臭気を除去する活性炭や、微生物的安全性を高めるためのUF除菌フィルタ等を装備している。なお、活性炭の替わりにセラミックを装備したり、UF除菌フィルタの替わりにUV紫外線殺菌灯を装備し、除菌してもよい。また、実験用精製水とする場合には、アニオン・カチオン樹脂を混合させたミックスベットと呼ばれるイオン交換樹脂を装備してもよい。
【0029】
<水栓>
水栓4は、ユーザが操作して蛇口から給水を受ける栓である。水栓4は、例えば、レバー、ハンドル等の操作手段によって、浄水経路を開閉できる。この操作手段は、家庭のキッチン、洗面所等における蛇口若しくはその近傍に設けられている。蛇口は、上記のように浄水の吐水口12aを構成する。つまり、水栓4は、吐水口12aを開閉し、吐水口12aからの透過水の供給の開始、停止を切り替える。
【0030】
(排水経路)
排水経路13には、流量調整弁B4、逆止弁B5が設けられている。流量調整弁B4は、常時開放状態であり、膜エレメントの濃縮側から濃縮排水等を排水する。流量調整弁B4は、リストリクターとも呼ばれ、流量調整弁B4によって流量を抑制された原水は逆浸透膜21を透過する方向に流れる。逆止弁B5は、流量調整弁B4以降に設けられ、排水経路13の排水放流口からの逆流を防止する。
【0031】
(開閉部)
さらに、浄水装置1は開閉部5を有する。開閉部5は、透過水供給路12内の圧力が所定の圧力に達した場合に、原水供給路11を閉じ、透過水供給路12内の圧力が所定の圧力に満たない場合には、原水供給路11を開く。本実施形態の開閉部5は、オートシャットオフバルブ51である。
【0032】
オートシャットオフバルブ51は、一対の経路51a、51bを有し、一方の経路51bの圧力上昇により、他方の経路51aを開閉する。経路51aを閉じるための経路51bの所定の圧力は、経路51aと経路51bとの圧力差によって決まるため、必ずしも特定の値に決まるわけではないが、通常の使用状態であれば、ほぼ一定の圧力になる。本実施形態のオートシャットオフバルブ51は、一対の経路51a、51bのうちの一方の経路51aが、原水供給路11が通る流路であり、他方の経路51bが、透過水供給路12が通る流路である。経路51aは、ポンプPと浄水部2との間、経路51bは、逆止弁B3と吐水口12aとの間(本実施形態では圧力センサPIとの間)に設けられている。経路51aは、原水側から逆浸透膜21の方向へ一方通行であり、経路51bは両方向に流れ、加圧されることで経路51b内の伸縮弁が膨らみ、経路51aを塞ぐ構造となっている。
【0033】
[作用]
次に、上記のような構成からなる本実施形態の作用について、図3のフローチャート、図4図5の系統図を参照して説明する。
【0034】
(給水)
ユーザが逆浸透膜21による給水を受ける動作を説明する。水栓4の操作手段は止水状態にあり、原水と透過水との流路を開閉するオートシャットオフバルブ51も閉状態である。この状態で、ユーザが操作手段を操作して水栓4を開く(ステップS01)。すると、逆止弁B3から吐水口12aまでの透過水供給路12の内圧が一定の圧力よりも低下するので(ステップS02)、オートシャットオフバルブ51の経路51bの内膜膨張が解除されて経路51aが開く(ステップS03)。透過水供給路12の圧力が所定の圧力よりも低下したことを、圧力センサPIが検知すると(ステップS04)、圧力スイッチSWがポンプPを作動させる(ステップS05)。これにより、原水供給路11に流入した原水が、セディメントフィルタSF、活性炭フィルタCFを通過することにより不純物が除去され、塩素等が無害化される。
【0035】
さらに、原水は、原水水圧に加えて、ポンプPにより更なる圧力を付加されて逆浸透膜21を透過することにより、重金属類、化学物質類、溶解物質等が低減された透過水と、濃縮水とに分離される(ステップS06)。透過水は、透過水供給路12を水栓4に向かって流れて、ポストフィルタPFによって臭気等を除去したり、UF除菌フィルタ等により微生物的安全性を高められた後、吐水口12aから供給される水栓4より吐水される(ステップS07)。濃縮水は、排水経路13を通って、排水される。なお、回収率は、流量調整弁B4によって調整できる。回収率とは、逆浸透膜21と濃縮排水量を制御する流量調整弁B4とによって決定される、逆浸透膜21自体の透過水量と供給原水水量との生産比率である。
【0036】
(止水)
次に、ユーザが逆浸透膜21による浄水の供給を停止する場合を説明する。すなわち、ユーザが操作手段を操作して水栓4を閉じる(ステップS08)。一方、原水は供給され続けるので、透過水は、加圧式透過水タンク3への流入(貯水)を開始する(ステップS09)。加圧式透過水タンク3の貯水部33と加圧部34の圧力が均衡すると(ステップS10のYES)、加圧式透過水タンク3への透過水の流入は停止する(ステップS11)。図4に示すように、透過水供給路12(図中、透過水供給路12の太線となった部分)の内圧が上昇し(ステップS12)、所定の水圧に達したことが圧力センサPIに検出されると(ステップS13のYES)、圧力スイッチSWがポンプPを停止させる(ステップS14)。
【0037】
そして、オートシャットオフバルブ51の経路51bと水栓4との間の圧力が一定の圧力となると、オートシャットオフバルブ51の経路51bの内膜が押し下げられ、経路51aが閉じることにより(ステップS15)、原水の供給が断たれる(ステップS16)。このように、水栓4が閉となると、これに遅れて最終的に原水の流入が閉ざされる。原水の流入は、図中、原水供給路11の太線となった部分までとなる。また、透過水供給路12において、加圧式透過水タンク3以降に設置された逆止弁B3と水栓4との間は加圧状態が保持されたままとなる。
【0038】
すると、図5の網掛けの部分に示すように、逆浸透膜21の出口側と水栓4との間に設置され、一定の圧力を保持した加圧式透過水タンク3から、一時的に貯留された透過水が逆浸透膜21の出口側に逆流する。逆流した透過水は、逆浸透膜21を経過して、大気に解放状態の膜エレメントの濃縮側から、排水経路13を通って排水される(ステップS17)。
【0039】
これにより、逆止弁B3を最後尾として、加圧式透過水タンク3内の貯留水の全部、浄水部2内の既に逆浸透膜21を透過した透過水、一時的に滞留している未処理水、逆浸透膜21前で圧力の影響を受けない状態の水、それぞれの配管、継手内の水は、ほぼ全て濃縮水排水側から排水される。本実施形態では、加圧部34によって1気圧以上の空気圧が加わっていて、貯水部33に貯留された透過水は一気に排出される。
【0040】
このように、一旦、逆浸透膜21を透過した透過水が、RОクリープを解消するために戻ってきて、濃縮排水側から排水される現象を、従来にない概念として再還流(リフラックスウォーター:REFLUX WATER)と呼称し、単なる逆流と区別することができる。また、当該現象は、従来の海水淡水化などにみられるサックバック現象とは異なり、意図的に透過水の揺り戻し(パーミエートスイング:Permeate Swingと呼称)を利用するものであり、逆浸透膜21内に発生するRОクリープ現象を解消するための方法である。また、残存する濃縮水も排水させることから、透過水の戻りによる濃縮水との単なる混合とは異なる。
【0041】
なお、再度、ユーザが浄水を得る場合には、上記の給水と同様に、水栓4を開くと、透過水供給路12の圧力が低下して、これを圧力センサPIが検知し、同時にオートシャットオフバルブ51の経路51bにより閉じられていた経路51aは、経路51b内の内膜が戻ることにより原水供給路11が開いて原水の供給が開始する。その後の動作は、ステップS02以降と同様である。再稼働時には、RОクリープの原因となる水(RОクリープ水)は排出されているため、初期透過水水質は装置の通常稼働状態と同様レベルの水質まで向上し吐水される。
【0042】
[効果]
(1)本実施形態の浄水装置1は、逆浸透膜21に原水を供給する原水供給路11と、逆浸透膜21により原水から透過水と濃縮水とを分離生成し、透過水を供給する浄水部2と、逆浸透膜21からの透過水を、吐水口12aから外部に供給する透過水供給路12と、逆浸透膜21を透過できなかった濃縮水を排水する排水経路13と、透過水供給路12に設けられ、透過水を一時的に加圧状態で貯留する加圧式透過水タンク3と、透過水供給路12における加圧式透過水タンク3から吐水口12aの間に設けられた逆止弁B3と、透過水供給路12内の圧力が所定の圧力に達した場合には、原水供給路11を閉じ、透過水供給路12内の圧力が所定の圧力に満たない場合には、原水供給路11を開く開閉部5と、を有する。
【0043】
また、本実施形態の浄水装置1の浄水方法は、透過水供給路12において、吐水口12aからの透過水の供給を停止した後、圧力センサPIにより検知される水圧が所定の圧力に達するまで加圧式透過水タンク3に透過水が供給され、加圧式透過水タンク3が一時的に加圧状態で貯留していた透過水を逆浸透膜21側に逆流させて、濃縮水排水側から排出する。さらに、透過水供給路12からの透過水の供給が停止した後、開閉部5が、透過水供給路12内の圧力が所定の圧力に達した場合に、原水供給路11を閉じる。
【0044】
このように、浄水装置1の稼動停止、給水停止時に、一次的に加圧状態で透過水が貯留された加圧式透過水タンク3の水は、逆浸透膜21の透過水出口側から、再度流入し、大気に開放状態である逆浸透膜21の濃縮側から排水されるため、逆浸透膜21の膜エレメント内部に滞留していた濃縮水は、透過水と入れ替わることになり残留しない。つまり、再稼働した際に未透過水という低水質の水の影響を排除でき、安定した高品質の水を再稼働当初から供給できるため、水質を通常稼働状態と同様レベルまで向上させることができ、ROクリープの問題を解消できる。
【0045】
一般的に、逆浸透膜を使用した家庭用浄水器には、貯水タンク方式のものと、貯水タンク無しのダイレクト方式のものがある。貯水タンク方式は、貯水タンクを使うことで透過水量の不足を補っていた。しかし、逆浸透膜を透過し、貯水タンクに貯留されていた透過水は、供給の開始とともに一気に吐水口から供給されていたため、上記のROクリープの問題があったが、貯水された透過水をクリープ現象を起こしている水とが混合してしまうため、表面的にはRОクリープとして水質悪化が認識されることがなかった。また、透過水の供給量を確保するために大きな貯水タンクが必要となり、必要な設置スペースが大きくなっていた。さらに、透過水は、装置内の広範囲に亘って加圧状態で保持されていため、漏水が発生する可能性があり、発生した場合に止めることができなかった。
【0046】
ダイレクト方式のものは、逆浸透膜の面積を大幅に増やして直接透過水を供給するものである。利点は、蛇口で原水給水を停止できる機構を持っているものもあり、原水の流入側で装置への流入水を止水する構造のため、漏水事故が起きにくく、貯水タンクを使わないため、全体のサイズが大幅に小さくなる、貯水タンク内からの不純物の溶出や水質汚染のリスクが無く、必要な水量をダイレクトに供給できるため、利用者のストレスを大幅に軽減できる。しかし、ダイレクト方式であっても、装置停止後、再稼働時のROクリープ現象の問題は発生しており、逆浸透膜の容積が大きくなるということは、ROクリープを起こしている水量も増大しているということになるので、逆浸透膜による水浄水を必要とする近未来においては、逆浸透膜浄水装置として未解決の最重要課題であった。
【0047】
従来のタンク方式では、逆浸透膜の透過水量が少ない小型の膜が採用されているものが殆どであり、浄化し吐水する水を「貯水」することを目的としてタンクを備えている。本実施形態の加圧式透過水タンク3は「透過水の貯水」ではなく、一時的「貯水状態」及び一時的「貯圧状態」であり、逆浸透膜21内の「RОクリープの原因となる水の排出」を目的とした構造である点で、従来のタンク方式と大きく相違する。また一次貯水された透過水を21逆浸透膜の透過水出口側から逆流させるという構造は従来行われておらず、画期的な発想となっている。透過水として利用する目的で貯水されているのではないので、装置停止後に、加圧式透過水タンク3には、「貯水」状態が維持されている必要は無く、停止後、加圧式透過水タンク3内の水は、逆浸透膜21内の「RОクリープの原因となる水の排出」に使われるので、以降、透過水供給路12に逆止弁B2から手前側は、加圧式透過水タンク3も含めて全て空になる。
【0048】
つまり、透過水を加圧状態で一時的に貯留する加圧式透過水タンク3が設けられ、稼動停止時及び吐水停止時に、加圧式透過水タンク3から透過水を逆流させることができる。これにより、逆浸透膜21内に滞留しているRОクリープの原因となる濃度拡散の元となる水を透過水で入れ替えることができるので、再稼働時には、新たに透過水となった水を最初から吐水することができる。逆浸透膜21の膜エレメント容積内の水は、再稼働直後からほぼ透過水水質となり、高い水質が確保される。ROクリープを起こす原因となる逆浸透膜21内の未処理水が排除されることにより、ROクリープ現象自体が無くなる。
【0049】
このように、一次的に貯留された透過水は、全てROクリープ解消に利用され、一切飲用側からは吐水されない。一時的な貯留状態は、装置停止後、僅か数秒程度であり、従来の貯水タンクにおける貯留という概念とは相違する。これにより、従来の貯水タンク方式とダイレクト方式の弱点が克服されることとなり、安心安全な水を装置の再稼働の最初から供給できることになる。
【0050】
また、装置停止時、原水は開閉部5によって止水される。このため、加圧状態となっているのは、逆止弁B3から吐水口12aまでの短い透過水供給路12における少量の水、ボールバルブB1から開閉部5までの原水供給路11における少量の水だけとなるので、装置からの漏水に影響を及ぼす部品類が最小となり、漏水リスクは極めて低い。
【0051】
つまり、従来のタンク方式では、装置停止時に、原水供給元から吐水口までのほとんどが常に加圧状態となっていたため、部品類のトラブル時における漏水のリスクがあった。本実施形態では、加圧式透過水タンク3及びそれ以降に設置された逆止弁B2までに存在する透過水が濃縮側へと排出されるので、加圧式透過水タンク3から吐水口12aまでには、加圧状態の部品類が存在せず、漏水の危険性が低い構造となっている。たとえ内部の加圧状態が続き、漏水事故が発生した場合でも、漏水の量や持続性についてのリスクは比較にならない程低く抑えることができる。
【0052】
さらに、加圧式透過水タンク3は、従来のように、小型の逆浸透膜による透過水製造能力をカバーする目的で設置されているわけではなく、ROクリープの原因となる未処理水を排水するだけの貯水量があればよいため、装置全体は極めて小型化できる。
【0053】
より具体的には、逆浸透膜21内において、膜エレメントの構造上、透過水として存在しRОクリープ現象の影響を受ける可能性がある水量は、膜エレメント全容積の約40%である。膜エレメントの全容積に対し、未処理水の容積を、可能な限り全て透過水を利用して濃縮水側から流下させれば、RОクリープ自体の存在が無くなることとなる。
【0054】
家庭用の逆浸透膜21において、ダイレクト型の小型の膜エレメントとして主流となっているものは、直径3インチ、長さ12インチの3012型と呼ばれ、全容積が約1,300mlであるので、ROクリープの存在をなくすためのタンク貯水容量は1300mlの40%=約420mlである。加圧式透過水タンク3は、従来の貯水タンクのように透過水水量をなるべく多く貯留することを目的としていないため、RОクリープを無くすために必要な容積があれば良い。
【0055】
従って、加圧式貯水タンクとしては、例えば、従来の貯水タンクの容量3ガロン:約12Lなどの大きさは不要であり、今回は約0.5L貯留・貯圧するタンクで済む。つまり、例えば、加圧式透過水タンク3(貯水部33)の容積は、誤差範囲を考慮しても逆浸透膜21の容積の約40~50%あればよい。これにより、装置の小型化に繋がる。
【0056】
(2)加圧式透過水タンク3は、透過水を一時的に貯留し、貯水量に応じて内部の圧力が可変に設けられた貯水部33を有する。このため、貯水量が増えるに従って、内部の圧力が上昇して、排出圧力を得ることができる。つまり、逆浸透膜21内の未処理水(RОクリープの原因となる水)の水量に応じて、加圧式透過水タンク3の貯水量を柔軟に変更できる。
【0057】
(3)加圧式透過水タンク3は、気体により貯水部33に圧力を加える加圧部34を有する。このため、気体の圧力で加圧できるので、特別な駆動機構等を不要として、加圧式透過水タンク3を、簡素且つ安価で小型に構成できる。
【0058】
(4)加圧式透過水タンク3は、弾性体により構成された隔膜32によって、貯水部33と加圧部34とに仕切られている。このため、弾性体の伸縮によって貯水部33への圧力を調整できるので、より簡素且つ安価で小型の加圧式透過水タンク3を構成できる。
【0059】
(5)開閉部5は、一対の経路51a、51bのうちの一方の経路51aが原水供給路11が通る流路であり、他方の経路51bが透過水供給路12が通る流路であるオートシャットオフバルブ51である。このため、原水供給路11の開閉のためのセンサ等を不要として、透過水供給路12の圧力上昇に応じて、原水供給路11を閉じることができる。
【0060】
(6)原水供給路11に設けられ、原水側の圧力を高めるポンプPと、吐水口12aと逆止弁B3との間に設けられた圧力センサPIと、吐水口12aを閉とした際に、圧力センサPIにより検出される圧力が所定の圧力に達した場合に、ポンプPを停止させ、吐水口12aを開とした際に、圧力センサPIにより検出される圧力が所定の圧力以下となった場合に、ポンプPを作動させる圧力スイッチSWと、を有する。このため、吐水口12aを閉じた時から遅れて、ポンプPの作動を停止させ、吐水口12aを開いた時から遅れて、ポンプPを作動させることができる。
【0061】
[変形例]
(1)本実施形態は、上記のような態様には限定されない。例えば、図6図8に示すように、浄水部2と逆止弁B3との間にポストフィルタPFを配置するなど、浄水部2から開閉部5(オートシャットオフバルブ51)までの透過水供給路12の配管の長さを長くしてもよい。これにより、図8の網掛けの経路に示すように、リフラックスウォーターの水量を増加させることができる。また、浄水部2から開閉部5(オートシャットオフバルブ51)までの間にセディメントフィルタSF、活性炭フィルタCFを配置するなど、開閉部5の上流の原水供給路11を短くしてもよい。これにより、図7の太線の経路に示すように、装置の停止時における透過水供給路12、原水供給路11の加圧状態となる区間をより短くすることでき、漏水のリスクを低減できる。
【0062】
(2)開閉部5は、オートシャットオフバルブ51には限定されない。図9図11に示すように、開閉部5が、原水供給路11に設けられた開閉弁52であってもよい。開閉弁52は、原水供給路11に設けられ、吐水口12aを閉とした際に、圧力センサPIにより検出される圧力が所定の圧力に達した場合に、原水供給路11を閉じ、吐水口12aを開とした際に、圧力センサPIにより検出される圧力が所定の圧力以下となった場合に、原水供給路11を開く。開閉弁52としては電磁弁を用いる。
【0063】
圧力センサPIの検知によりポンプPの稼働停止が制御されるが、ポンプPの種類、加圧式透過水タンク3の構造等により、稼働停止の時間を微調整する必要が生まれる可能性がある。その際には、圧力センサPIからの信号を受け、ポンプPの稼働停止時間を調整できる遅延タイマを併設することができる。この遅延タイマにより、圧力センサPIの検知で即時停止するのではなく、例えば数秒若しくは1秒未満の時間、ポンプPの停止時間を遅延させることにより、加圧式透過水タンク3内の一時貯留水量や貯圧量を微調整できる。
【0064】
このように、オートシャットオフバルブ51の代りに開閉弁52を用いる場合は、未処理水の排水水量を確保するために、加圧式透過水タンク3の直後に設置された逆止弁B3を圧力スイッチSWの直前に設置することにより、ROクリープの原因となる水量の排水に、さらに有効に働く。この場合にも、図11の網掛けの経路に示すように、リフラックスウォーターの水量を増加させることが好ましい。また、図10の太線の経路に示すように、装置の停止時における透過水供給路12、原水供給路11の加圧状態となる区間をより短くして、漏水のリスクを低減することが好ましい。
【0065】
(3)加圧式透過水タンク3の容量は、様々な逆浸透膜21の大きさに対応するための実験を通し、それぞれのROクリープの原因となる水量を計測し、ROクリープ現象を無くすための容量を選択することができる。なお、加圧式透過水タンク3は、加圧部34の圧力を低く設定すれば、貯留される水量は増加し、常に一定量の透過水を残すこともできる。この場合、例えば、一定量の透過水が流入して初めて大気圧と同等とすることができるが、加圧式透過水タンク3を小型化できる。つまり、容器31を小型化しても、加圧式透過水タンク3の内圧を、貯水された水が素早く再環流される最低限まで下げることにより、一次的に貯圧・貯留する容積を最大限大きくすることができる。
【0066】
(4)隔膜32は、上記の態様では、ブチルゴムを用いたが、弾性、伸縮性を有する他の材料で構成してもよい。さらに、加圧式透過水タンク3内に、隔膜32を可変機構により移動可能に設けることにより、加圧部34の容積を増減させて、圧力を調整可能に設けてもよい。また、加圧部34の圧力を調整する調整部を設けてもよい。例えば、図12(A)に示すように、調整部35を、膜35a、調節具35bにより構成してもよい。膜35aは、弾性、伸縮性を有する部材であり、加圧部34の底部を封止する。膜35aは、隔膜32と同様の材料で構成することができる。例えば、加圧式透過水タンク3の加圧部34の外郭の一部を、隔膜32と同等若しくは同等以上の硬度を持つ弾性素材により構成された膜35aとする。
【0067】
調節具35bは、膜35aを伸縮させる部材であり、容器31の底部に設けられている。調節具35bは、接触部35c、軸部35d、摘み部35eを有する。接触部35cは、容器31内において膜35aに接する部材である。軸部35dは、一端に接触部35cが設けられた部材であり、外周にねじが切られ、容器31の底部のねじ穴に貫通するようにねじ込まれている。摘み部35eは、容器31外に露出した軸部35dの他端に設けられた板体である。
【0068】
摘み部35eを回動させると、ネジにより接触部35cを進退させることができるので、図12(B)に示すように、接触部35cが膜35aを付勢して伸張させた場合、加圧部34の容積が減少して圧力を高めることができる。加圧式透過水タンク3は、密閉状態の加圧部34の設定圧力により、一時的に貯留される透過水の水量及び貯水時の内圧が可変であるが、隔膜32の位置を変化させる可変機構を設けたり、膜35aを伸張させる調節機構(調節具35b)を設けることにより、加圧部34の容積を可変として、圧力を可変とすることができる。なお、加圧のために用いる気体は、空気には限定されず、窒素など他の気体を充填してもよい。
【0069】
(5)所定又は一定の圧力(水圧を含む)等の設定も自由であり、所定の又は一定の圧力に達したかを当該圧力以上として判断しても、当該圧力よりも大きい、超えるとして判断してもよく、所定の圧力以下を、所定の圧力よりも小さい、未満として判断しても同等である。
【0070】
(6)ポンプPを省略して、一般の水道の圧力のみで通水させる装置であってもよい。活性炭フィルタCF、セディメントフィルタSF、ポストフィルタPFのいずれかを省略してもよく、これらのフィルタを全て省略する等により、逆浸透膜21のみの浄水装置1としてもよい。
【0071】
(7)吐水口12aを開閉させる操作手段は、レバー若しくはハンドルが一般的であるが、他の構造であってもよい。例えば、電磁弁や電動弁のように、ボタンスイッチの操作や、センサによる対象検知に応じて、開閉する開閉手段を採用してもよい。
【0072】
(8)流量調整弁B4を、逆浸透膜21の種類に応じて、適宜、排水される流量を調整可能に設けてもよい。流量調整弁B4に、無段階(例えば、ネジ式など)で、流量を手動で調整できる機能を持たせてもよい。透過水供給路12に流量計を設置して、流量計により測定される透過水量との比率に応じて、流量調整弁B4が無段階で排水流量を調整できるようにしてもよい。
【0073】
(9)排水経路13に、回収経路を設けてもよい。原水は、浄水部2内に突入した後、逆浸透膜21を透過して透過水となる一方、圧損の少ない排水経路13側に排水として流れ出る。排水経路13には流量調整弁B4があるため、流量を調整された一定流量以外は逆浸透膜21の透過側に流れて透過水となる。しかし、逆浸透膜21への突入水量が更に多い場合、若しくは、逆浸透膜21の膜面積が少ない場合、逆浸透膜21へ向かう水量が余ってしまう可能性がある。そこで、このように余ってしまう水量を利用する目的で、回収経路を設けてもよい。
【0074】
例えば、図13に示すように、排水経路13から分岐して、ポンプPの上流に接続された回収経路14を設ける。この回収経路14にも、流量調整弁B6が設けられる。排水経路13よりも回収経路14の流量が少なくなるように流量調整弁B4、B6を調整して、排水経路13へ優先して排水が流れるように設定する。また、逆浸透膜21にかかる水圧よりも、回収経路14にかかる水圧を高くすることにより、逆浸透膜21の透過水が設定通りの水量となるようにする。余剰水量が発生した場合には、回収経路14を流れてポンプPの上流に合流するため、再利用が可能となる。
【0075】
(10)加圧式透過水タンク3に代えて、図14に示すように、一時的に透過水を貯留し、重力により排水する貯留タンク6が設けられていてもよい。この貯留タンク6は、本体である容器61の下部に給排水口62が設けられ、この給排水口62が透過水供給路12に接続されている。これにより、水栓4を閉じると、貯留タンク6へ透過水が流入して一時的な加圧状態となるが、原水の流入が閉ざされると、重力が作用して貯留タンク6内の透過水が流下するので、加圧状態が一気に解消される。つまり、貯留タンク6内の透過水が重力により落下して、逆浸透膜21内を通過して排水されるため、上記の態様と同様の効果が得られる。
【0076】
(11)浄水部2に用いる逆浸透膜21の容量、構造については、特定のものには限定されない。また、浄水部2としては、例えば、家庭用逆浸透膜浄水器の規格であるJIS-S3242の「4 種類 表1」に記載された逆浸透膜浄水器のいずれも使用することができ、浄水装置1としては、例えば、同規格の図1-逆浸透膜浄水器の例(ブロック図)に示すいずれの例にも適用可能である。つまり、本発明は、特定の逆浸透膜浄水器及びこれを用いた浄水装置への適用を排除するものではない。
【0077】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 浄水装置
2 浄水部
3 加圧式透過水タンク
4 水栓
5 開閉部
11 原水供給路
12 透過水供給路
12a 吐水口
13 排水経路
14 回収経路
21 逆浸透膜
31 容器
31a 給排水口
32 隔膜
33 貯水部
34 加圧部
35 調整部
35a 膜
35b 調節具
35c 接触部
35d 軸部
35e 摘み部
51 オートシャットオフバルブ
51a、51b 経路
52 開閉弁
6 貯留タンク
61 容器
62 給排水口
B1 ボールバル
B2 逆止弁
B3 逆止弁
B4 流量調整弁
B5 逆止弁
B6 流量調整弁
CF 活性炭フィルタ
P ポンプ
PF ポストカーボンフィルタ
PI 圧力センサ
SF セディメントフィルタ
SW 圧力スイッチ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14