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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025033280
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/02 20060101AFI20250306BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20250306BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
B65H5/02 S
B65H5/06 F
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138894
(22)【出願日】2023-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 武士
【テーマコード(参考)】
2C056
3F049
【Fターム(参考)】
2C056EC12
2C056FA13
2C056HA12
2C056HA29
3F049AA10
3F049BB06
3F049BB07
3F049BB08
3F049CA33
3F049DA03
3F049DA12
3F049DB04
3F049LA07
3F049LB05
(57)【要約】
【課題】インクジェット印刷装置において、部分的に厚みが異なる媒体とインクジェットヘッドとのヘッドギャップの変動を抑制する。
【解決手段】インクジェット印刷装置1は、媒体M1(クラフト袋)をインクジェットヘッド11側へ付勢する複数の押し付けローラ21と、複数の押し付けローラ21に対向する位置に配置され、複数の押し付けローラ21によって付勢された媒体M1が突き当てられ、この媒体M1とインクジェットヘッド11との間にヘッドギャップGを形成する複数の突き当てローラ31とを備える。媒体M1の搬送方向D1に直交する媒体M1の幅方向D2においてインクジェットヘッド11の一方側(前方側)に位置する押し付けローラ21と、幅方向D2においてインクジェットヘッド11の他方側に位置する押し付けローラ21とは、それぞれ独立して、媒体M1をインクジェットヘッド11側へ付勢する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記媒体を前記インクジェットヘッド側へ付勢する複数の押し付けローラと、
前記複数の押し付けローラに対向する位置に配置され、当該複数の押し付けローラによって付勢された前記媒体が突き当てられ、当該媒体と前記インクジェットヘッドとの間にヘッドギャップを形成する複数の突き当てローラとを備え、
前記複数の押し付けローラ及び前記複数の突き当てローラは、前記媒体の搬送方向に直交する前記媒体の幅方向において前記インクジェットヘッドの一方側に位置する前記押し付けローラ及び前記突き当てローラと、前記幅方向において前記インクジェットヘッドの他方側に位置する前記押し付けローラ及び前記突き当てローラとを含み、
前記幅方向において前記インクジェットヘッドの一方側に位置する前記押し付けローラと、前記幅方向において前記インクジェットヘッドの他方側に位置する前記押し付けローラとは、それぞれ独立して、前記媒体を前記インクジェットヘッド側へ付勢する
ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記押し付けローラ及び前記突き当てローラは、前記媒体の前記搬送方向における位置が前記インクジェットヘッドと同一である
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記媒体を搬送するベルトを更に備え、
前記複数の押し付けローラは、前記ベルトを介して、前記媒体を前記インクジェットヘッド側へ付勢する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記媒体は、波状の中芯を有する段ボールであり、
前記媒体の前記幅方向における前記押し付けローラ及び前記突き当てローラの幅は、前記中芯の波形のピッチ以上である
ことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドと用紙とのヘッドギャップを適正に維持するために、用紙の搬送方向におけるインクジェットヘッドの上流側又は下流側に配置され、搬送ベルトに従動回転する中間ローラ対を備える搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-006952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、クラフト袋は、袋の端部の折り返し部分や、袋に取り付けられる紙紐などによって、部分的に厚みが異なる。また、製函前の段ボール箱は、端部同士の貼り合わせなどによって、部分的に厚みが異なる場合がある。このように部分的に厚みが異なる媒体は、インクジェットヘッドによりインクを吐出して印刷すると、部位によってヘッドギャップに差が出る。特に、媒体の搬送方向に直交する幅方向にかけて媒体の厚みが部分的に異なると、上述のようにインクジェットヘッドの上流側又は下流側に配置された中間ローラ対によってヘッドギャップの変動を抑制することができない。
【0005】
そして、ヘッドギャップを媒体の薄い部位に合わせて設定すると、媒体の部分的に厚い部位でヘッドギャップが狭くなり、媒体とインクジェットヘッドとの衝突のリスクが増える。一方、ヘッドギャップを媒体の厚い部位に合わせて設定すると、媒体の部分的に薄い部位でヘッドギャップが広くなり、ミストの多量飛散や画像劣化が発生する。
【0006】
本発明の目的は、部分的に厚みが異なる媒体とインクジェットヘッドとのヘッドギャップの変動を抑制することができるインクジェット印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、インクジェット印刷装置は、媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記媒体を前記インクジェットヘッド側へ付勢する複数の押し付けローラと、前記複数の押し付けローラに対向する位置に配置され、当該複数の押し付けローラによって付勢された前記媒体が突き当てられ、当該媒体と前記インクジェットヘッドとの間にヘッドギャップを形成する複数の突き当てローラとを備え、前記複数の押し付けローラ及び前記複数の突き当てローラは、前記媒体の搬送方向に直交する前記媒体の幅方向において前記インクジェットヘッドの一方側に位置する前記押し付けローラ及び前記突き当てローラと、前記幅方向において前記インクジェットヘッドの他方側に位置する前記押し付けローラ及び前記突き当てローラとを含み、前記幅方向において前記インクジェットヘッドの一方側に位置する前記押し付けローラと、前記幅方向において前記インクジェットヘッドの他方側に位置する前記押し付けローラとは、それぞれ独立して、前記媒体を前記インクジェットヘッド側へ付勢する。
【発明の効果】
【0008】
前記態様によれば、部分的に厚みが異なる媒体とインクジェットヘッドとのヘッドギャップの変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施の形態に係るインクジェット印刷装置を示す正面図である。
図2】一実施の形態におけるヘッドホルダの底面を示す斜視図である。
図3】一実施の形態における、幅方向にかけて部分的に厚みが異なる媒体、押し付けローラ、突き当てローラ等を示す左側面図である。
図4】一実施の形態における、搬送方向にかけて部分的に厚みが異なる媒体、押し付けローラ、突き当てローラ等を示す正面図である。
図5】一実施の形態の変形例における、幅方向にかけて部分的に厚みが異なる媒体、押し付けローラ、突き当てローラ等を示す左側面図である。
図6】一実施の形態の変形例における、媒体(段ボール)の内部構造、押し付けローラ、突き当てローラ等を示す拡大左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係るインクジェット印刷装置について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、インクジェット印刷装置1を示す正面図である。
【0012】
図2は、ヘッドホルダ12の底面12aを示す斜視図である。
【0013】
図3は、幅方向D2にかけて部分的に厚みが異なる媒体M1、押し付けローラ21、突き当てローラ31等を示す左側面図である。
【0014】
なお、図1図3及び後述する図4図6に示す上下、前後、左右の各方向に関して、インクジェット印刷装置1の構成に応じて媒体M1,M2の搬送方向D1及び幅方向D2の向きなどが適宜変更になるが、上下方向は鉛直方向であり、前後方向及び左右方向は水平方向である。
【0015】
図1に示すインクジェット印刷装置1は、印刷部10と、複数の押し付けローラ21と、複数の突き当てローラ31と、ベルト搬送部40とを備える。
【0016】
印刷部10は、複数(例えば、図2に示す12個)のインクジェットヘッド11と、ヘッドホルダ12とを有する。
【0017】
印刷部10には、図2に示すように、媒体M1の搬送方向D1(副走査方向)に直交する媒体M1の幅方向D2(主走査方向)に沿って千鳥状に並べられた6個のインクジェットヘッド11が2組、計12個配置されている。すなわち、幅方向D2に沿って配列された1組6個のインクジェットヘッド11は、それぞれ搬送方向D1における位置を交互にずらして2列に配置されている。一例ではあるが、一方の組の6個のインクジェットヘッド11は、2色(例えば、ブラック(K)及びシアン(C))のインクを吐出し、他方の組の6個のインクジェットヘッド11は、上記一方の組とは異なる色の2色(例えば、マゼンタ(M)及びイエロー(Y))のインクを吐出する。
【0018】
なお、インクジェットヘッド11は、本実施の形態では、複数配置され、鉛直下方にインクを吐出するが、インクジェットヘッド11の数は1つ以上であればよく、また、インクジェットヘッド11が鉛直下方とは異なる向き(例えば、水平横向き)にインクを吐出してもよい。また、媒体M1は、例えばクラフト袋であるが、後述する変形例における媒体M2のように段ボールであってもよいし、或いは、その他の媒体であってもよい。
【0019】
ヘッドホルダ12は、例えば、直方体形状を呈し、複数のインクジェットヘッド11を保持する。図2に示すヘッドホルダ12の底面12aには、インクジェットヘッド11の一部が挿入される矩形のヘッド用孔12bが複数設けられている。また、ヘッドホルダ12の底面12aには、後述する突き当てローラ31の一部が挿入される矩形のローラ用孔12cも複数設けられている。なお、図2では、ヘッドホルダ12の底面12aの輪郭を2点鎖線(想像線)で表す。また、図2及び図3並びに後述する図4図6では、ヘッドホルダ12の図示を省略する。
【0020】
図1及び図3に示す複数の押し付けローラ21は、媒体M1をインクジェットヘッド11側(本実施の形態では上側)へ付勢する。押し付けローラ21は、例えばゴムローラである。複数の押し付けローラ21のそれぞれは、支持部23によって回転可能に支持された回転軸22を回転中心として、ベルト41によって搬送される媒体M1に接触して従動回転する。支持部23は、例えば、底面部分(下端部分)と、この底面部分から立ち上がり回転軸22を回転可能に支持する1対の側面部分とによって上側に開口したコの字形状(U字形状)を呈する。
【0021】
図3に示すように、支持部23は、弾性体24の弾性力によってインクジェットヘッド11側に付勢されている。これにより、回転軸22を介して支持部23によって支持される押し付けローラ21が、媒体M1をインクジェットヘッド11側に付勢する(図1では押し付けローラ21に矢印を付して弾性体24等の図示を省略)。このように、複数の押し付けローラ21のそれぞれは、個別に弾性体24の弾性力を受けるため、独立して媒体M1をインクジェットヘッド11側に付勢する。なお、弾性体24は、例えば、圧縮バネであり、下端において後述するベルト41内の図示しない移動不能な部材に固定されている。
【0022】
図3に示すように、複数の突き当てローラ31は、複数の押し付けローラ21に対向する位置に配置され、複数の押し付けローラ21によって付勢された媒体M1が突き当てられる。複数の突き当てローラ31のそれぞれは、複数の突き当てローラ31で共通の高さにおいて位置が固定されているため、媒体M1とインクジェットヘッド11との間にヘッドギャップGを形成する。突き当てローラ31は、例えばゴムローラである。
【0023】
複数の突き当てローラ31のそれぞれは、支持部33によって回転可能に支持された回転軸32を回転中心として、ベルト41によって搬送される媒体M1に接触して従動回転する。支持部33は、例えば、底面部分(上端部分)と、この底面部分から立ち上がり回転軸32を回転可能に支持する1対の側面部分とによって下側に開口したコの字形状(U字形状)を呈する。支持部33は、例えば、ヘッドホルダ12内の図示しない移動不能な部材に固定されている。なお、突き当てローラ31は、固定位置を高さ方向に調整可能に配置されているとよく、この場合、ヘッドギャップGを、媒体M1の種類やサイズ、印刷内容などに合わせて任意に調整可能となる。また、突き当てローラ31は、ヘッドホルダ12の底面12a(ローラ用孔12c)に配置されていることが望ましいが、ヘッドホルダ12とは幅方向D2に分離した位置に配置されていてもよい。
【0024】
図4に示すように、押し付けローラ21及び突き当てローラ31は、媒体M1の搬送方向D1における位置がインクジェットヘッド11と同一である。また、押し付けローラ21及び突き当てローラ31は、4列のインクジェットヘッド11に合わせて幅方向D2におけるインクジェットヘッド11の一方側(前方側)の4つと他方側(後方側)の4つとで8個配置されている。そして、上述のようにインクジェットヘッド11が千鳥状に並べられていて列ごとにインクジェットヘッド11の幅方向D2の位置が異なり、押し付けローラ21及び突き当てローラ31は、幅方向D2においてインクジェットヘッド11の前方側と後方側とでインクジェットヘッド11に近接して位置する。そのため、押し付けローラ21及び突き当てローラ31も、インクジェットヘッド11の列ごとに幅方向D2の位置が異なる。
【0025】
なお、特に、後述する変形例の段ボールなどの剛性が高い(高さが保持されやすい)媒体M2では、押し付けローラ21及び突き当てローラ31は、インクジェットヘッド11よりも搬送方向D1の上流側又は下流側に少しずれた位置(搬送方向D1の位置が重複せず分離した位置)に配置されていてもよい。押し付けローラ21及び突き当てローラ31を、インクジェットヘッド11よりも搬送方向D1の上流側又は下流側にずらして配置する場合には、例えば、搬送方向D1における下流側端部のインクジェットヘッド11に対しては下流側にずれた位置に、搬送方向D1における上流側端部のインクジェットヘッド11に対しては上流側にずらして配置するとよい。また、押し付けローラ21及び突き当てローラ31は、幅方向D2において隣接する2つのインクジェットヘッド11の間に配置されていてもよい。
【0026】
図1に示すベルト搬送部40は、ベルト41と、複数のプーリ42とを有する。ベルト41は、無端帯状を呈し、複数のプーリ42に架け渡されている。複数のプーリ42のうちの1つのプーリ42は駆動プーリであり、その他のプーリ42は従動プーリである。そして、駆動プーリは、図示しない搬送駆動部(例えば、モータ等のアクチュエータ)の駆動によって回転し、プーリ42を回転させる。これにより、ベルト41は、回転しながら、媒体M1を搬送方向D1に搬送する。なお、ベルト41は、下側からプーリ42と突き当てローラ31とによって支持されているが、媒体M1の折り返し部分M1a(例えば、複数回折り返された部分)によってベルト41が下方に撓んで弾性体24が圧縮することが望ましいため、媒体M1の搬送部分の下側には、支えとなる部材が配置されていないことが望ましい。
【0027】
上述のインクジェット印刷装置1は、印刷部10に媒体M1を供給する供給部(積載台、供給ローラ、供給ベルト等)、印刷部10によって印刷が行われた媒体M1を排出する排出部(積載台、排出ローラ、排出ベルト等)、各種情報を表示するディスプレイ、ユーザの操作を受け付ける入力部などを更に備えるとよい。
【0028】
ここで、まず、図3に示すように、媒体M1の折り返し部分M1aが幅方向D2の一方側(前方側)に位置することによって、幅方向D2にかけて媒体M1の厚みが部分的に異なる場合について考える。この場合、前方側の押し付けローラ21は、媒体M1のうち相対的に厚みが厚い折り返し部分M1aによって弾性体24が大きく圧縮した状態で(長い下向き矢印)、折り返し部分M1aをインクジェットヘッド11側(突き当てローラ31側)である上側へ付勢する。一方、後方側の押し付けローラ21は、媒体M1のうち相対的に厚みが薄い部分(折り返し部分M1a以外の部分)によって弾性体24が少しだけ圧縮した状態で(短い下向き矢印)、媒体M1をインクジェットヘッド11側(突き当てローラ31側)である上側へ付勢する。
【0029】
これにより、折り返し部分M1aを有する媒体M1とインクジェットヘッド11とのヘッドギャップGを、幅方向D2に亘って、突き当てローラ31の下端とインクジェットヘッド11との間の長さに形成することができる。
【0030】
次に、図3の例とは異なり、図4に示すように、媒体M1の折り返し部分M1bが搬送方向D1の下流側(右側)に位置することによって、搬送方向D1にかけて媒体M1の厚みが部分的に異なる場合について考える。この場合、搬送方向D1の下流側の押し付けローラ21(図4では右から2番目の押し付けローラ21)は、媒体M1のうち相対的に厚みが厚い折り返し部分M1bによって弾性体24が大きく圧縮した状態で(長い下向き矢印)、折り返し部分M1bをインクジェットヘッド11側(突き当てローラ31側)である上側へ付勢する。一方、搬送方向D1の上流側の押し付けローラ21(図4では左から1,2番目の押し付けローラ21)は、媒体M1のうち相対的に厚みが薄い部分(折り返し部分M1b以外の部分)によって弾性体24が少しだけ圧縮した状態で(短い下向き矢印)、媒体M1をインクジェットヘッド11側(突き当てローラ31側)である上側へ付勢する。
【0031】
これにより、折り返し部分M1bを有する媒体M1とインクジェットヘッド11とのヘッドギャップGを、搬送方向D1に亘って、突き当てローラ31の下端とインクジェットヘッド11との間の長さに形成することができる。なお、搬送方向D1に並んで位置する押し付けローラ21(上述の幅方向D2における一方側又は他方側の押し付けローラ21)は、例えば、複数の支持部23が一体に固定され、一体に(独立せず)媒体M1をインクジェットヘッド11側へ付勢してもよい。但し、搬送方向D1にかけて部分的に厚みが異なる媒体M1を搬送するためには、インクジェットヘッド11の幅方向D2における前方側又は後方側において搬送方向D1に並ぶ押し付けローラ21は、それぞれ独立して、媒体M1をインクジェットヘッド11側へ付勢するとよい。
【0032】
図5は、本実施の形態の変形例における媒体M2、押し付けローラ21、突き当てローラ31等を示す左側面図である。
【0033】
図6は、媒体M2の内部構造、押し付けローラ21、突き当てローラ31等を示す拡大左側面図である。
【0034】
本変形例では、媒体M2が段ボールであるため剛性が高く、押し付けローラ21及び突き当てローラ31のニップによって、ベルト41を要さずに媒体M2の位置(高さ)を保持することができる。そのため、ベルト41(ベルト搬送部40)が省略されている。なお、ベルト41に代えて、ガイド板などで媒体M2をガイドすることもできるため、ベルト41は、媒体M2の種類によらずに省略可能である。
【0035】
ベルト搬送部40が省略されていることに伴い、媒体M2を搬送するために、押し付けローラ21と突き当てローラ31とのうち一方は駆動ローラであり、他方は従動ローラである。駆動ローラは、図示しない搬送駆動部(例えば、モータ等のアクチュエータ)の駆動によって回転し、媒体M2を搬送する。
【0036】
ここで、図6に示すように、媒体M2は、上下一対の平板状のライナM2cの間に波状の中芯M2bを有する。幅方向D2における押し付けローラ21及び突き当てローラ31の幅W,Wは、媒体M2の中芯M2bの波形のピッチP(ライナM2cとの接合部分間の間隔)以上であるとよい。これにより、押し付けローラ21や突き当てローラ31がライナM2cを凹ませてしまうのを回避できる。
【0037】
なお、インクジェット印刷装置1において印刷対象となる媒体M2が複数種類存在する場合には、押し付けローラ21及び突き当てローラ31の幅方向D2における幅Wは、ピッチPが最大となる種類の媒体M2のピッチPよりも長く形成されるとよい。例えば、媒体M2が段ボールである場合、中芯M2bの波形のピッチPは、例えば、最大で公差を入れて9.3mm前後である。また、図6の例では、押し付けローラ21の幅Wと突き当てローラ31の幅Wとが同一であるが、これらは異なっていてもよい。その場合でも、押し付けローラ21及び突き当てローラ31のそれぞれの幅Wは、中芯M2bの波形のピッチP以上であるとよい。
【0038】
図5に示すように、媒体M2の貼り合わせ部分M2aが幅方向D2の一方側(前方側)に位置することによって、幅方向D2にかけて媒体M2の厚みが部分的に異なる場合について考える。この場合、図3に示した例と同様に、前方側の押し付けローラ21は、媒体M2のうち相対的に厚みが厚い貼り合わせ部分M2aによって弾性体24が大きく圧縮した状態で(長い下向き矢印)、貼り合わせ部分M2aをインクジェットヘッド11側(突き当てローラ31側)である上側へ付勢する。一方、後方側の押し付けローラ21は、媒体M2のうち相対的に厚みが薄い部分(貼り合わせ部分M2a以外の部分)によって弾性体24が少しだけ圧縮した状態で(短い下向き矢印)、媒体M2をインクジェットヘッド11側(突き当てローラ31側)である上側へ付勢する。
【0039】
これにより、貼り合わせ部分M2aを有する媒体M2とインクジェットヘッド11とのヘッドギャップGを、幅方向D2に亘って、突き当てローラ31の下端とインクジェットヘッド11との間の長さに形成することができる。
【0040】
なお、媒体M2の貼り合わせ部分M2aが搬送方向D1の下流側又は上流側に位置することによって、搬送方向D1にかけて媒体M2の厚みが部分的に異なる場合については、本変形例では図示しない。但し、図4に示す例と同様に、搬送方向D1の下流側と上流側とで押し付けローラ21の圧縮量が変動し、貼り合わせ部分M2aを有する媒体M2とインクジェットヘッド11とのヘッドギャップGを、搬送方向D1に亘って、突き当てローラ31の下端とインクジェットヘッド11との間の長さに形成することができる。
【0041】
以上説明した本実施の形態及びその変形例では、インクジェット印刷装置1は、インクジェットヘッド11と、複数の押し付けローラ21と、複数の突き当てローラ31とを備える。インクジェットヘッド11は、媒体M1,M2にインクを吐出する。複数の押し付けローラ21は、媒体M1,M2をインクジェットヘッド11側へ付勢する。複数の突き当てローラ31は、複数の押し付けローラ21に対向する位置に配置され、複数の押し付けローラ21によって付勢された媒体M1,M2が突き当てられ、媒体M1,M2とインクジェットヘッド11との間にヘッドギャップGを形成する。複数の押し付けローラ21及び複数の突き当てローラ31は、媒体M1,M2の搬送方向D1に直交する媒体M1,M2の幅方向D2においてインクジェットヘッド11の一方側(前方側)に位置する押し付けローラ21及び突き当てローラ31と、幅方向D2においてインクジェットヘッド11の他方側(後方側)に位置する押し付けローラ21及び突き当てローラ31とを含む。そして、幅方向D2においてインクジェットヘッド11の一方側に位置する押し付けローラ21と、幅方向D2においてインクジェットヘッド11の他方側に位置する押し付けローラ21とは、それぞれ独立して、媒体M1,M2をインクジェットヘッド11側へ付勢する。
【0042】
このように、幅方向D2においてインクジェットヘッド11の一方側に位置する押し付けローラ21と、幅方向D2においてインクジェットヘッド11の他方側に位置する押し付けローラ21とが、それぞれ独立して媒体M1,M2をインクジェットヘッド11側へ付勢することによって、媒体M1,M2の幅方向D2にかけて媒体M1,M2の厚みが部分的に異なっても、媒体M2とインクジェットヘッド11とのヘッドギャップGを、幅方向D2に亘って、突き当てローラ31の下端とインクジェットヘッド11との間の長さに形成することができる。よって、本実施の形態によれば、部分的に厚みが異なる媒体M1,M2とインクジェットヘッド11とのヘッドギャップGの変動を抑制することができる。ところで、本実施の形態とは異なり、ヘッドギャップGの変動を抑制することができない態様では、ヘッドギャップGを媒体M1,M2の薄い部位に合わせて設定すると、部分的に厚い部位でヘッドギャップGが狭くなり、媒体M1,M2とインクジェットヘッド11との衝突のリスクが増えるという問題や、ヘッドギャップGを媒体M1,M2の厚い部位に合わせて設定すると、媒体M1,M2の部分的に薄い部位でヘッドギャップGが広くなり、ミストの多量飛散や画像劣化が発生するという問題が生じる。それに対し、本実施の形態では、部分的に厚みが異なる媒体M1,M2とインクジェットヘッド11とのヘッドギャップGの変動を抑制することができるため、上記問題が生じるのを防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態及びその変形例では、押し付けローラ21及び突き当てローラ31は、媒体M1,M2の搬送方向D1における位置がインクジェットヘッド11と同一である。
【0044】
これにより、押し付けローラ21及び突き当てローラ31の媒体M1,M2の搬送方向D1における位置がインクジェットヘッド11の上流側又は下流側である場合と比較して、より一層、ヘッドギャップGの変動を抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、インクジェット印刷装置1は、媒体M1を搬送するベルト41を更に備え、複数の押し付けローラ21は、ベルト41を介して、媒体M1をインクジェットヘッド11側へ付勢する。
【0046】
これにより、ベルト41によって媒体M1の位置(高さ)を保持することができるため、より一層、ヘッドギャップGの変動を抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態の変形例では、媒体M2は、波状の中芯M2bを有する段ボールであり、媒体M2の幅方向D2における押し付けローラ21及び突き当てローラ31の幅W,Wは、中芯M2bの波形のピッチP以上である。
【0048】
これにより、媒体M2の幅方向D2にかけて媒体M2の中芯M2bが波形となる向きで媒体M2が搬送される場合に、押し付けローラ21や突き当てローラ31がライナM2cを凹ませてしまうのを回避することができる。そのため、媒体M2に搬送不良が生じるのを防止することもできる。
【0049】
また、本実施の形態では、複数の突き当てローラ31は、インクジェットヘッド11を保持するヘッドホルダ12の底面12a(ローラ用孔12c)に配置されている。
【0050】
これにより、インクジェットヘッド11の近傍で押し付けローラ21によって媒体M1,M2をインクジェットヘッド11側へ付勢することができる。そのため、より一層、ヘッドギャップGの変動を抑制することができる。
【0051】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の明細書に記載された一部の発明を付記する。
【0052】
[付記1]
媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記媒体を前記インクジェットヘッド側へ付勢する複数の押し付けローラと、
前記複数の押し付けローラに対向する位置に配置され、当該複数の押し付けローラによって付勢された前記媒体が突き当てられ、当該媒体と前記インクジェットヘッドとの間にヘッドギャップを形成する複数の突き当てローラとを備え、
前記複数の押し付けローラ及び前記複数の突き当てローラは、前記媒体の搬送方向に直交する前記媒体の幅方向において前記インクジェットヘッドの一方側に位置する前記押し付けローラ及び前記突き当てローラと、前記幅方向において前記インクジェットヘッドの他方側に位置する前記押し付けローラ及び前記突き当てローラとを含み、
前記幅方向において前記インクジェットヘッドの一方側に位置する前記押し付けローラと、前記幅方向において前記インクジェットヘッドの他方側に位置する前記押し付けローラとは、それぞれ独立して、前記媒体を前記インクジェットヘッド側へ付勢する
ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0053】
[付記2]
前記押し付けローラ及び前記突き当てローラは、前記媒体の前記搬送方向における位置が前記インクジェットヘッドと同一である
ことを特徴とする付記1記載のインクジェット印刷装置。
【0054】
[付記3]
前記媒体を搬送するベルトを更に備え、
前記複数の押し付けローラは、前記ベルトを介して、前記媒体を前記インクジェットヘッド側へ付勢する
ことを特徴とする付記1又は2記載のインクジェット印刷装置。
【0055】
[付記4]
前記媒体は、波状の中芯を有する段ボールであり、
前記媒体の前記幅方向における前記押し付けローラ及び前記突き当てローラの幅は、前記中芯の波形のピッチ以上である
ことを特徴とする付記1から3のいずれか記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0056】
1 インクジェット印刷装置
10 印刷部
11 インクジェットヘッド
12 ヘッドホルダ
12a 底面
12b ヘッド用孔
12c ローラ用孔
21 押し付けローラ
22 回転軸
23 支持部
24 弾性体
31 突き当てローラ
32 回転軸
33 支持部
40 ベルト搬送部
41 ベルト
42 プーリ
D1 搬送方向
D2 幅方向
G ヘッドギャップ
M1,M2 媒体
M1a,M1b 折り返し部分
M2a 貼り合わせ部分
M2b 中芯
M2c ライナ
P ピッチ
W 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6