(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025033293
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材の製造方法、接合方法及び接合構造
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20250306BHJP
B28B 7/28 20060101ALI20250306BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20250306BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20250306BHJP
E04B 1/21 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
E04C5/18 102
B28B7/28
E04G21/12 105E
E04B1/58 503E
E04B1/21 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138917
(22)【出願日】2023-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000186898
【氏名又は名称】昭和コンクリート工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000123549
【氏名又は名称】化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】岩山 健治
(72)【発明者】
【氏名】坂井 悟
(72)【発明者】
【氏名】稲田 亮太
【テーマコード(参考)】
2E125
2E164
4G053
【Fターム(参考)】
2E125AA01
2E125AA51
2E125AC02
2E125AE02
2E125AF01
2E125AG03
2E125AG13
2E125AG28
2E125AG41
2E125BA02
2E125BB08
2E125BB19
2E125BE07
2E125BF05
2E125CA82
2E125EA21
2E164BA02
2E164BA25
4G053AA14
4G053BC00
(57)【要約】
【課題】PCa部材の製造時には、止栓を取り外す手間を軽減し、コンクリートの跡穴を補修する手間を軽減する。PCa部材の接合時には、止栓を取り付け・取り外しの手間を軽減し、コンクリートの跡穴を後埋めする手間を軽減し、外観の悪化を軽減する。
【解決手段】排出管14に挿入されるシール部2と、頭部7と、頭部7よりも細い首部6と、シール部2から頭部7まで貫通した排出路9とを含む、高分子材料よりなる排出キャップ1を使用する。排出キャップ1を、シール部2の途中までが排出管14に挿入された状態で取り付け、型枠面が頭部7を押すことによりシール部2がさらに挿入されるようにし、コンクリートを打設して第1PCa部材を製造する。この第1PCa部材と別の第2PCa部材とを、各鉄筋の端部をスリーブ10の内部に配置し、グラウトを注入し排出キャップ1の開口から排出させて、接合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラウト充填鉄筋継手用のスリーブを埋設するプレキャストコンクリート部材の製造方法において、
スリーブのグラウト排出穴に接続された排出管に、排出管に挿入されるシール部と、排出管の外部に配される頭部と、シール部と頭部との間にあって頭部よりも細い首部と、シール部から頭部まで貫通した排出路とを含む、高分子材料よりなる排出キャップを、シール部の途中までが排出管に挿入された状態で取り付け、
スリーブの回りに型枠をセットし、このとき型枠面が頭部を押すことによりシール部がさらに排出管に挿入されるようにし、
型枠の内部にコンクリートを打設することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項2】
排出キャップは、シール部と首部との間にあって排出管の外径よりも大きい蓋部を含む請求項1記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項3】
シール部は、軸と、軸の外周面から突出したリング板状リブとを含む請求項1記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項4】
頭部は、中心へ向かって凹んだ端面を有し、該端面の周縁が外端である請求項1~3のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項5】
型枠をセットする前に、頭部の端面の周縁にかからない部位に、排出路の開口を閉鎖する閉鎖シートを剥離可能に貼着する請求項4記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項6】
グラウト充填鉄筋継手用のスリーブが埋設された第1プレキャストコンクリート部材と、第2プレキャストコンクリート部材とを接合するプレキャストコンクリート部材の接合方法において、
スリーブのグラウト排出穴に接続された排出管に、排出管に挿入されたシール部と、第1プレキャストコンクリート部材の表面に外端が並ぶ頭部と、シール部と頭部との間にあって頭部よりも細い首部と、シール部から頭部まで貫通した排出路とを含む、高分子材料よりなる排出キャップが取り付けられており、
第1プレキャストコンクリート部材の内部の第1鉄筋の端部と第2プレキャストコンクリート部材の端面から突出した第2鉄筋の端部とをスリーブの内部に配置し、
グラウトを、スリーブの内部に注入して充填し、排出キャップの排出路の頭部での開口から排出させることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合方法。
【請求項7】
スリーブは列状に複数本配され、第1プレキャストコンクリート部材の端面と第2プレキャストコンクリート部材の端面との間に目地空間が形成され、各スリーブの端面の開口が目地空間に連通し、一部のスリーブからモルタルを注入し、目地空間を介してすべてのスリーブにモルタルを充填する請求項6記載のプレキャストコンクリート部材の接合方法。
【請求項8】
第1プレキャストコンクリート部材の内部の第1鉄筋の端部と第2プレキャストコンクリート部材の端面から突出した第2鉄筋の端部とが第1プレキャストコンクリート部材に埋設されたスリーブの内部で該内部に充填されたグラウトを介して固定されてなるグラウト充填鉄筋継手により、第1プレキャストコンクリート部材と第2プレキャストコンクリート部材とが接合されたプレキャストコンクリート部材の接合構造において、
スリーブのグラウト排出穴に接続された排出管に、排出管に挿入されたシール部と、第1プレキャストコンクリート部材の表面に外端が並ぶ頭部と、シール部と頭部との間にあって頭部よりも細い首部と、シール部から頭部まで貫通した排出路とを含む、高分子材料よりなる排出キャップが取り付けられていることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合構造。
【請求項9】
グラウト充填鉄筋継手用のスリーブのグラウト排出穴に接続された排出管に取り付ける排出キャップであって、
排出キャップは、排出管に挿入されるシール部と、排出管の外部に配される頭部と、シール部と頭部との間にあって頭部よりも細い首部と、シール部から頭部まで貫通した排出路とを含み、高分子材料よりなることを特徴とする排出キャップ。
【請求項10】
排出キャップは、シール部と首部との間にあって排出管の外径よりも大きい蓋部を含む請求項9記載の排出キャップ。
【請求項11】
シール部は、軸と、軸の外周面から突出したリング板状リブとを含む請求項9記載の排出キャップ。
【請求項12】
頭部は、中心へ向かって凹んだ端面を有し、該端面の周縁が外端である請求項9~11のいずれか一項に記載の排出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材の製造方法、接合方法及び接合構造に関するものである。以下、プレキャストコンクリートを「PCa」という。
【背景技術】
【0002】
第1PCa部材の内部の第1鉄筋の端部と第2PCa部材から突出した第2鉄筋の端部とを第1PCa部材に埋設したスリーブの内部で該内部に充填したモルタル等のグラウトを介して固定したグラウト充填鉄筋継手により、第1PCa部材と第2PCa部材とを接合した接合構造が知られている(特許文献1~3)。
【0003】
<1>止栓を使用するPCa部材の製造及び接合
止栓(特許文献1,2に記載のピストン体付ゴム栓や一般的なゴム栓)を使用して、上記PCa部材の製造及び接合を次の[x]及び[y]のように行うことが多い。
【0004】
[x]PCa部材の製造(工場内での作業)
[x1]
図13(a)に示すように、例えばスリーブ60を2列状に12本(=6本×2列)配し、スリーブ60の上開口から内部に第1鉄筋66の下部を挿入する。
スリーブ60のグラウト注入穴61に注入管62を挿入して接続し、注入管62の端部にゴム栓51を取り付ける。スリーブ60のグラウト排出穴63に排出管64を挿入して接続し、排出管64の端部にゴム栓51を取り付ける。下記[x3]でコンクリート68が注入管62と排出管64に入り込まないようにするためである。
図13(b)(c)に示すように、ゴム栓51は、注入管62に挿入する軸状シール部52と、注入管62の端面に当接しうる頭部53とからなる。上記例のように12本のスリーブ60を用いた場合には、このゴム栓51が24個(=12個×2列)必要である。
【0005】
[x2]
図14及び
図15に示すように、スリーブ60の回りに型枠67をセットし、このとき型枠面をゴム栓51の頭部53に当接させる。しかし、型枠面に対するスリーブ60ないしゴム栓51の距離及び角度の精度に限界があることから、この当接には、
図16の(a)のようにぴったり当接する場合、(b)のように当接せずに隙間ができる場合、(c)のように強圧する場合、(d)のように傾斜して当接し隙間ができる場合などがある。
【0006】
[x3]
図15に示すように、型枠67の内部にコンクリート68を打設する。このとき、ゴム栓51と型枠面との間には、
図16の(a)(c)の場合にはノロが入り込みにくいが、(b)(d)の場合にはノロが入り込む。
【0007】
[x4]
図17に示すように、注入管62と排出管64からゴム栓51をすべて取り外す。下記[y3]でモルタル77の充填及び確認を行うためである。コンクリート68には、ゴム栓51の頭部53が外れたことによる跡穴69ができる。上記例のように12本のスリーブ60を用いた場合には、この跡穴69が24個(=12個×2面)できることになる。
図16(b)(d)のようにノロが入り込んだ場合、そこにできる跡穴69は縁が割れる等して形が乱れるため、補修する必要がある。こうして、第1PCa部材65が出来上がる。
【0008】
[y]PCa部材の接合(施工現場での作業)
[y1]
図18に示すように、上記第1PCa部材65の下側に、別途作製した第2PCa部材72を合わせ、第2PCa部材72の上面から突き出た第2鉄筋73の上部を前記スリーブ60の下開口から内部に挿入する。
【0009】
[y2]
図18に示すように、排出管64の端部に特許文献2に記載されたピストン体付止栓55の栓体56を取り付け、ピストン体57の受圧体58を栓体56から離して排出管64の内奥に位置させる。上記例では12個(=6個×2面)のピストン体付止栓55を取り付ける必要があるため、手間がかかる。
【0010】
[y3]
図18及び
図19に示すように、いずれかのスリーブ60の注入管62にモルタルポンプ(図示略)に接続された注入ノズル76を差し込み、該スリーブ60の内部にモルタル77を注入する。モルタル77が排出管64に到達すると、受圧体58を押してピストン体57を外方へ変位させるので、モルタル77の充填を確認できる。注入ノズル76を注入管62から抜いて、
図20(a)に示すように、素速くその注入管62にピストン体付止栓55を取り付け、硬化前のモルタル77が流れ出さないようにする。
注入ノズル76を別の注入管62に差し替えて、スリーブ60一本毎にモルタル77注入を繰り返す(個別注入方式)。なお、モルタル77は、スリーブ60の下開口から、第1PCa部材65と第2PCa部材72との間に形成された目地空間75にも充填される。
【0011】
[y4]
図20(b)に示すように、モルタル77が硬化した後、ピストン体付止栓55を注入管62及び排出管64から取り外す。上記例では24個(=12個×2面)のピストン体付止栓55を取り外す必要があるため、手間がかかる。
【0012】
[y5]
図20(c)に示すように、コンクリート68の跡穴69から注入管62及び排出管64の端部までを、後埋め材78(例えばモルタル)で後埋めする。上記例のように跡穴69が24個(=12個×2面)と多いと、後埋めに手間がかかる。また、
図21及び
図22に示すように、後埋め材78は、その回りコンクリート68と色が異なることで目立つため、その数が多いと美観が悪化する。
【0013】
<2>フラップ付蓋を使用するPCa部材の製造及び接合
その他、特許文献3では、逆止弁機能を有するフラップ付蓋を使用して、上記PCa部材の製造及び接合を次のように行うことが提案されている。
【0014】
PCa部材の製造時には、あらかじめスリーブの注入穴及び排出穴にフラップ付蓋が外嵌固定されるため、フラップ付蓋はコンクリート部材に埋設される。しかし、フラップ付蓋はコンクリート部材のモルタルの注入口及び排気口よりも内奥にあるから、これらの注入口及び排気口を形成するために、別の止栓の取り付け及び取り外しが必要になる。
【0015】
PCa部材の接合時に、コンクリート部材の注入口にノズルを差し込み、モルタルポンプの圧力で注入されたモルタルは、注入口の内奥のフラップ付蓋を開いてスリーブ内に入り、排気口の内奥のフラップ付蓋を開いて排気口から流出するから、この流出で充填を確認できる。その後モルタルポンプを停止しノズルを引き抜くと、フラップ付蓋は弾性的に閉じて注入口及び排気口を封ずるから、その後に止栓を付けなくてもモルタルの外部流出は防止される。しかし、フラップ付蓋は注入口及び排気口よりも内奥にあるから、コンクリート部材の注入口及び排気口を後埋めする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9-209506号公報(特許第3277482号)
【特許文献2】特開2009-13735号公報(特許第4870624号)
【特許文献3】特開平11-343703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記<1>のように止栓を使用してPCa部材の製造及び接合を行う場合、PCa部材の製造時に、取り外す止栓の数が多いため手間がかかるとか、止栓を取り外した後に補修する跡穴の数が多いため手間がかかる、という問題がある。また、PCa部材の接合時に、取り付けたり取り外したりする止栓の数が多いため手間がかかるとか、後埋めする跡穴の数が多いため手間がかかり美観も悪化する、という問題がある。
【0018】
上記<2>のようにフラップ付蓋を使用してPCa部材の製造及び接合を行う場合、PCa部材の製造時に、フラップ蓋は残置されるため取り外す必要はないが、別の止栓の取り付け及び取り外しが必要になる、という問題がある。また、PCa部材の接合時に、後埋めするコンクリート部材の注入口及び排気口の数が多いため手間がかかり美観も悪化する、という問題がある。
【0019】
そこで、本発明の目的は、PCa部材の製造時には、止栓を取り外す手間を軽減し、コンクリートの跡穴を補修する手間を軽減することにある。また、PCa部材の接合時には、止栓を取り付けたり取り外したりする手間を軽減し、コンクリートの跡穴を後埋めする手間を軽減し、外観の悪化を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
[1]グラウト充填鉄筋継手用のスリーブを埋設するPCa部材の製造方法において、
スリーブのグラウト排出穴に接続された排出管に、排出管に挿入されるシール部と、排出管の外部に配される頭部と、シール部と頭部との間にあって頭部よりも細い首部と、シール部から頭部まで貫通した排出路とを含む、高分子材料よりなる排出キャップを、シール部の途中までが排出管に挿入された状態で取り付け、
スリーブの回りに型枠をセットし、このとき型枠面が頭部を押すことによりシール部がさらに排出管に挿入されるようにし、
型枠の内部にコンクリートを打設することを特徴とするPCa部材の製造方法。
【0021】
[2]グラウト充填鉄筋継手用のスリーブが埋設された第1PCa部材と、第2PCa部材とを接合するPCa部材の接合方法において、
スリーブのグラウト排出穴に接続された排出管に、排出管に挿入されたシール部と、第1PCa部材の表面に外端が並ぶ頭部と、シール部と頭部との間にあって頭部よりも細い首部と、シール部から頭部まで貫通した排出路とを含む、高分子材料よりなる排出キャップが取り付けられており、
第1PCa部材の内部の第1鉄筋の端部と第2PCa部材の端面から突出した第2鉄筋の端部とをスリーブの内部に配置し、
グラウトを、スリーブの内部に注入して充填し、排出キャップの排出路の頭部での開口から排出させることを特徴とするPCa部材の接合方法。
【0022】
上記[2]において、スリーブは列状に複数本配され、第1PCa部材の端面と第2PCa部材の端面との間に目地空間が形成され、各スリーブの端面の開口が目地空間に連通し、一部のスリーブからモルタルを注入し、目地空間を介してすべてのスリーブにモルタルを充填することが好ましい(一気注入方式)。
【0023】
[3]第1PCa部材の内部の第1鉄筋の端部と第2PCa部材の端面から突出した第2鉄筋の端部とが第1PCa部材に埋設されたスリーブの内部で該内部に充填されたグラウトを介して固定されてなるグラウト充填鉄筋継手により、第1PCa部材と第2PCa部材とが接合されたPCa部材の接合構造において、
スリーブのグラウト排出穴に接続された排出管に、排出管に挿入されたシール部と、第1PCa部材の表面に外端が並ぶ頭部と、シール部と頭部との間にあって頭部よりも細い首部と、シール部から頭部まで貫通した排出路とを含む、高分子材料よりなる排出キャップが取り付けられていることを特徴とするPCa部材の接合構造。
【0024】
[4]グラウト充填鉄筋継手用のスリーブのグラウト排出穴に接続された排出管に取り付ける排出キャップであって、
排出キャップは、排出管に挿入されるシール部と、排出管の外部に配される頭部と、シール部と頭部との間にあって頭部よりも細い首部と、シール部から頭部まで貫通した排出路とを含み、高分子材料よりなることを特徴とする排出キャップ。
【0025】
[5]上記[1]~[4]において、排出キャップは、シール部と首部との間にあって排出管の外径よりも大きい蓋部を含むことが好ましい。
【0026】
[6]上記[1]~[5]において、シール部は、軸と、軸の外周面から突出したリング板状リブとを含むことが好ましい。
【0027】
[7]上記[1]~[6]において、頭部は、中心へ向かって凹んだ端面を有し、該端面の周縁が外端であることが好ましい。
【0028】
[8]上記[7]において、型枠をセットする前に、頭部の端面の周縁にかからない部位に、排出路の開口を閉鎖する閉鎖シートを剥離可能に貼着することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、PCa部材の製造時には、止栓を取り外す手間を軽減し、コンクリートの跡穴を補修する手間を軽減することができる。また、PCa部材の接合時には、止栓を取り付けたり取り外したりする手間を軽減し、コンクリートの跡穴を後埋めする手間を軽減し、外観の悪化を軽減することことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は実施例におけるスリーブを二列に配設する工程を示し、(a)は斜視図、(b)は使用する排出キャップの斜視図、(c)は同排出キャップの断面図である。
【
図2】
図2は実施例における型枠配設工程を示し、(a)は斜視図、(b)は上部の横断面図、(c)は下部の横断面図である。
【
図3】
図3は実施例におけるコンクリート打設工程を示し、(a)は列間方向の縦断面図、(b)は列方向の縦断面図である。
【
図4】
図4は実施例における型枠配設工程及びコンクリート打設工程を示し、(a)~(d)は種々の場合の排出キャップを示す断面図である。
【
図5】
図5は実施例における第1PCa部材の脱型工程を示し、(a)は列間方向の縦断面図、(b)は列方向の縦断面図である。
【
図6】
図6は実施例における第1PCa部材と第2PCa部材を接近させるときの斜視図である。
【
図7】
図7は実施例における第1PCa部材と第2PCa部材を合わせたときの斜視図である。
【
図8】
図8は実施例におけるモルタル注入工程の途中を示し、(a)は列間方向の縦断面図、(b)は列方向の縦断面図である。
【
図9】
図9は実施例におけるモルタル注入工程の終了時を示し、(a)は列間方向の縦断面図、(b)は列方向の縦断面図である。
【
図10】
図10(a)は実施例におけるモルタル注入後の注入管に止栓を取り付けたときの縦断面図、(b)は止栓を取り外したときの縦断面図、(c)は跡穴を後埋め材で埋めたときの縦断面図である。
【
図11】
図11は実施例におけるボックスカルバートの接合部の斜視図である。
【
図12】
図12は実施例におけるボックスカルバートの全体の斜視図である。
【
図13】
図13は従来例におけるスリーブを二列に配設する工程を示し、(a)は使用するゴム栓の斜視図、(b)は同ゴム栓の断面図である。
【
図14】
図14は従来例における型枠配設工程を示し、(a)は斜視図、(b)は上部の横断面図、(c)は下部の横断面図である。
【
図15】
図15は従来例におけるコンクリート打設工程を示し、(a)は列間方向の縦断面図、(b)は列方向の縦断面図である。
【
図16】
図16は従来例における型枠配設工程及びコンクリート打設工程を示し、(a)~(d)は種々の場合のゴム栓を示す断面図である。
【
図17】
図17は従来例における第1PCa部材の脱型工程を示し、(a)は列間方向の縦断面図、(b)は列方向の縦断面図である。
【
図18】
図18は従来例におけるモルタル注入工程の途中を示し、(a)は列間方向の縦断面図、(b)は使用する止栓の断面図である。
【
図19】
図19は従来例におけるモルタル注入工程の終了時を示し、(a)は列間方向の縦断面図、(b)は列方向の縦断面図である。
【
図20】
図20(a)は従来例におけるモルタル注入後の注入管に止栓を取り付けたときの縦断面図、(b)は止栓を取り外したときの縦断面図、(c)は跡穴を後埋め材で埋めたときの縦断面図である。
【
図21】
図21は従来例におけるボックスカルバートの接合部の斜視図である。
【
図22】
図22は従来例におけるボックスカルバートの全体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.PCa部材
PCa部材としては、特に限定されないが、ボックスカルバート、シェッド、水路、擁壁等の各種土木構造物を構築するためのPCa部材を例示できる。
【0032】
2.スリーブ
スリーブとしては、特に限定されないが、市販の各種スリーブ(例えば日本スプライススリーブ社の「スプライススリーブ」)を用いることができる。
【0033】
3.グラウト
グラウトとしては、特に限定されないが、コンクリートとの付着性や取扱性の良さから、モルタルが好ましく、特に無収縮モルタルが好ましい。
【0034】
4.排出キャップ
排出キャップの高分子材料としては、特に限定されないが、合成樹脂、ゴム、エラストマー等を例示できる。熱可塑性エラストマーは、リング板状リブと首部に適度な弾性を与えるための弾力性を得やすい。特にオレフィン系熱可塑性エラストマー又はポリエステル系熱可塑性エラストマーは、コンクリート硬化熱で変形しない耐熱性、紫外線を長年受ける環境下で使用できる耐候性を備えるためより好ましい。
排出キャップの色は、特に限定されないが、PCa部材のコンクリートの色(実質的に同色)ないし白色が好ましい。外に露出する頭部が目立ちにくいからである。
【0035】
頭部の正面形状は、特に限定されないが、円形が好ましい。その周縁が型枠面に均等な力で当接しやすいからである。
頭部の前記端面の凹みは、特に限定されないが、0.5~2mmが好ましい。閉鎖シートを貼着でき、吸盤作用が生じ、且つ、頭部を弱くしないからである。
頭部の外端の(外部に露出する)外直径は、特に限定されないが、10~28mmが好ましく、15~24mmがより好ましい。この外直径が小さいと、外部に露出しても目立ちにくいからである。
頭部の内端の外直径は、外端の外直径と同じでもよいし、外端の外直径よりも拡径していてもよい。
頭部の厚さは、特に限定されないが、4~8mmが好ましい。型枠に収まりやすく、且つ、頭部が曲がりにくいからである。
【0036】
首部の外直径は、特に限定されないが、7~12mmが好ましく、8~11mmがより好ましい。たわみやすく、且つ、排出路の内径を保つ強さがあるからである。
首部の長さは、特に限定されないが、3~8mmが好ましく、4~7mmがより好ましい。たわみやすく、長さ方向に圧縮されやすく、且つ、型枠に収まりやすいからである。
高分子材料にもよるが、首部と外直径と長さがこの程度であると、適度な可撓性を得やすいからである。
【0037】
蓋部の外直径は、特に限定されないが、排出管の外径よりも1~5mm大きいことが好ましい。蓋部を摘みやすく、且つ、型枠に収まりやすいからである。
蓋部の厚さは、特に限定されないが、3~7mmが好ましい。蓋部が曲がりにくく、且つ、型枠に収まりやすいからである。
【0038】
リング板状リブの数は、特に限定されないが、シール部のシール性と姿勢安定性から複数が好ましく、3つ~5つがより好ましい。
【0039】
排出路の頭部での開口の内直径は、特に限定されないが、1.5~5mmが好ましく、2~4mmがより好ましい。この内直径が1.5mm未満であるとモルタルの骨材が詰まりやすくなり、5mmを超えるとモルタルが排出されすぎる傾向となる。もっとも、モルタルが排出されすぎるときは、該開口よりも細い軸体を該開口に挿すなどして調整可能であるから問題はない。
排出路のシール部での内直径は、前記開口よりも拡径していることが好ましい。モルタルが流動しやすいからである。
【実施例0040】
次に、本発明をボックスカルバートを構成するPCa部材の接合構造に具体化した実施例について、
図1~
図12を参照して説明する。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0041】
ボックスカルバートは、
図12に示すように、側壁の中間部で二分割された上側の第1PCa部材15と下側の第2PCa部材22とを接合し、その接合した複数体をカルバート長方向に連結して構築するものである。実施例では、第1PCa部材15を製造し、その第1PCa部材15に別途製造した第2PCa部材22を接合する。まず、実施例で使用する、公知のスリーブ10と新規の排出キャップ1について説明する。
【0042】
[スリーブ]
スリーブ10は、
図1(a)、
図3等に示すように、鋼製の筒状体であって、下端面に下開口を有し、上端面に上開口を有し、筒壁の下端付近にグラウト注入穴11が形成され、筒壁の上端付近にグラウト排出穴13が形成されている。スリーブ10はPCa部材の表面から所定の距離をおいた内奥に配置されるため、グラウト注入穴11には所定長さの注入管12が挿入等により接続され、グラウト排出穴13にも所定長さの排出管14が挿入等により接続される。注入管12及び排出管14には、例えば塩化ビニル等の高分子材料よりなるものが一般的に用いられる。
【0043】
[排出キャップ]
排出キャップ1は、
図1(b)(c)に示すように、排出管14に挿入されるシール部2と、排出管14の外部に配される頭部7と、シール部2と頭部7との間にあって頭部7よりも細い首部6と、シール部2と首部6との間にあって排出管14の外径よりも大きい蓋部5と、シール部2から頭部7まで貫通した排出路9とを含む、高分子材料(本例では熱可塑性エラストマー)よりなるものである。
【0044】
頭部7は、円錐台形状をなし、外直径が先端で19~21mm、後端で23~26mmであり、厚さが5~7mmである。頭部7は中心へ向かって0.8~1.2mm凹んだ端面を有し、該端面の周縁が外端であるため、次の作用がある。
・頭部7の端面の周縁にかからない部位に、排出路9の開口を閉鎖する閉鎖シート8を剥離可能に貼着することができ、コンクリート打設時のノロの排出路9への浸入を防止できる。
・頭部7の周縁の型枠面への当接圧力が大きくなるとともに、凹んだ端面による吸盤作用も加わるため、コンクリート打設時のノロの端面への入り込みを防止できる。
【0045】
首部6は、頭部7よりも細い円柱形状をなし、外直径が9~10mm、長さが4~6mmであり、たわみやすく、長さ方向に圧縮されやすい。このため、後述するように頭部7の周縁全体(外端)を型枠面に当接させる作用がある。
【0046】
蓋部5は、排出管14の外径よりも大きい円板形状をなし、直径が排出管14の外直径よりも4mm大きく、厚さが4~6mmであり、つまみやすく、つまんだときに曲がりにくい。
【0047】
シール部2は、軸3と、軸3の外周面から突出した3つのリング板状リブ4とを含む。軸3の外直径は排出管14の内直径よりも小さく、リング板状リブ4の外直径は排出管14の内直径よりも大きいため、リング板状リブ4は排出管14に挿入されたときに反挿入方向にたわんで排出管14の内面を押圧した状態になる(
図1(c))。この押圧したリング板状リブ4が3つあることで、排出管14から抜け出しにくい状態となる。
【0048】
さて、実施例では、のPCa部材の製造及び接合は、上記の排出キャップ1と一般的なゴム栓を使用して、次の[X]及び[Y]のように行う。
【0049】
[X]PCa部材の製造(工場内での作業)
[X1]
図1に示すように、例えばスリーブ10を2列状に12本(=6本×2列)配し、スリーブ10の上開口から内部に第1鉄筋16の下部を挿入する。
図1(a)及び
図2(c)に示すように、各列両端の2本のスリーブ10のグラウト注入穴11には所定長さの注入管12を挿入して接続し、他の4本のスリーブ10の注入穴には相対的に短い注入管12を挿入して接続する。各注入管12の端部に、前述した
図13(b)の一般的なゴム栓51を取り付ける。下記[X3]でコンクリート18が注入管12に入り込まないようにするためである。上記例のように12本のスリーブ10を用いた場合には、このゴム栓51が12個(=6個×2列)必要である。
【0050】
図1(a)~(c)及び
図2(b)に示すように、スリーブ10のグラウト排出穴13に所定長さの排出管14を挿入して接続し、排出管14の端部に排出キャップ1を取り付ける。排出キャップ1の端面には、閉鎖シート8を貼着して排出路9の開口を閉鎖しておく。下記[X3]でコンクリート18が排出管14に入り込まないようにするとともに、(閉鎖シート8を剥離して)下記[Y3]でモルタル27の充填確認を行うためである。排出キャップ1は、シール部2の途中までが排出管14に挿入された状態で取り付ける。同状態としては、2つのリング板状リブ4が排出管14に挿入され、残り1つのリング板状リブ4が排出管14から出ている状態を例示できる。上記例のように12本のスリーブ10を用いた場合には、この排出キャップ1が12個(=6個×2列)必要である。
【0051】
[X2]
図2に示すように、スリーブ10の回りに型枠17をセットする。
このとき、
図2(b)及び
図3に示すように、型枠面が排出キャップ1の頭部7を押すことによりシール部2がさらに排出管14に挿入されるようにする。型枠面に対するスリーブ10ないし排出キャップ1の距離及び角度の精度に限界があることから、
図4の(a)のように蓋部5が排出管14に当接すると同時に頭部7の外縁が型枠面に当接する場合、(b)のように蓋部5が排出管14に当接しないで、頭部7の外縁が型枠面に当接する場合、(c)のように蓋部5が排出管14に当接し、首部6が圧縮されて頭部7の外縁が型枠面に当接する場合、(d)のように傾斜し首部6がたわんで、頭部7の外縁が型枠面に当接する場合などがある。しかし、いずれの場合でも、頭部7の外縁が型枠面に隙間なくぴったり当接する。
【0052】
またこのとき、
図2(c)及び
図3に示すように、型枠面が、各列両端の2本のスリーブ10の注入管12に取り付けたゴム栓51の頭部53に当接する。このゴム栓51については、前述した
図16(b)(d)のように型枠面にぴったり当接せずに隙間ができる場合がある。しかし、他の4本のスリーブ10の注入管12に取り付けたゴム栓51については、後述するように跡穴19を形成しないため。意図的に型枠面に当接させないようにする。
【0053】
[X3]
図3に示すように、型枠17の内部にコンクリート18を打設する。このとき、
図4(a)~(d)のいずれの場合でも、排出キャップ1の頭部7と型枠面との間にノロが入り込みにくい。各列両端のゴム栓51については、上記のとおり型枠面との間に隙間ができた場合にはノロが入り込む。
【0054】
[X4]
図5に示すように、各列両端の注入管12からゴム栓51を取り外す。下記[Y3]でモルタル27の充填を行うためである。コンクリート18には、ゴム栓51の頭部53が外れたことによる跡穴19ができる。上記のようにノロが入り込んだ場合、そこにできる跡穴19は縁が割れる等して形が乱れるため、補修する必要がある。しかし、上記例のように12本のスリーブ10を用いた場合、跡穴19は4個(=2個×2面)しかできないため、補修の手間は軽減される。
【0055】
一方、排出キャップ1は取り外すことなく残置する。こうして、第1PCa部材15が出来上がる。排出キャップ1の頭部7の端面は外に露出し、該端面の周縁(外端)は第1PCa部材15の表面に並び、該端面の回りのコンクリート18の形は乱れないので、跡穴19の補修の手間はかからない。
なお、第1PCa部材15の下端面には、後述する目地空間25を形成するための第1凹所20が形成され、第1凹所20にスリーブ10の下開口が連通する。
【0056】
[Y]PCa部材の接合(施工現場での作業)
[Y1]
図6~
図8に示すように、上記第1PCa部材15の下側に、別途作製した第2PCa部材22を合わせ、第2PCa部材22の上面から突き出た第2鉄筋23の上部を前記スリーブ10の下開口から内部に挿入する。第2PCa部材22の上端面には第2凹所24が形成されており、第1凹所20と第2凹所24とで目地空間25が形成される。
【0057】
[Y2]
図8に示すように、排出キャップ1の端面から閉鎖シート8を剥離して、排出路9の開口を開ける。排出キャップ1は残置したままでよいので、従来のように、止栓(上記ピストン体付止栓など)を取り付ける必要がなく、手間がかからない。
【0058】
[Y3]
図8及び
図9に示すように、各列両端の注入管12にモルタルポンプ(図示略)に接続された注入ノズル26を差し込み、該スリーブ10の内部にモルタル27を注入する。モルタル27は、各列両端のスリーブ10の内部を流動し、目地空間25を流動し、他の4本のスリーブ10の内部にも流動し、これらを埋めていく。モルタル27は、排出管14に到達すると排出キャップ1の排出路9を流動し、頭部7における排出路9の開口から外部に排出されるので、モルタル27の充填を確認できる。同モルタル27の排出は、
図9(b)に示すように、まず各列両端で起こり、続いてその隣りで起こる。排出されたモルタルは取り除かれる。
【0059】
注入ノズル26を注入管12から抜いて、
図10(a)に示すように、素速くその注入管12に止栓(上記ピストン体付止栓55など)を取り付け、硬化前のモルタル27が流れ出さないようにする。上記例では4個(=2個×2面)の止栓を取り付ければよいため、手間がかからない。
本実施例は、上記のとおり一部(上記例では各列両端)のスリーブ10の注入管12からモルタル27を注入し、目地空間25を介して、すべてのスリーブ10にモルタル27を充填する(一気注入方式)。そのため、前述した個別注入方式と比べて、注入ノズル26を別の注入管12に差し替える手間が軽減され、ピストン体付止栓を取り付ける手間も軽減され、また、注入管12を露出させるためのコンクリート18の跡穴19が少なくなる。
【0060】
[Y4]
図10(b)に示すように、モルタル27が硬化した後、止栓(55)を注入管12から取り外す。上記例では4個(=2個×2面)の止栓を取り外せばよいため、手間がかからない。
【0061】
[Y5]
図10(c)に示すように、コンクリート18の跡穴19から注入管12の端部までを、後埋め材28(例えばモルタル)で後埋めする。上記例では跡穴19が4個(=12個×2面)と少ないため、後埋めに手間がかからない。また、
図11及び
図12に示すように、後埋め材28は、その回りのコンクリート18と色が異なることで目立つとしても、その数が少ないため美観はあまり悪化しない。
【0062】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。