(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025033356
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/20 535
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139036
(22)【出願日】2023-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 大成
(72)【発明者】
【氏名】八木 基行
(72)【発明者】
【氏名】岸 憲明
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA25
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB39
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】加熱部材と保持部材に保持され周方向に離れて配置される2つのブロック状の加圧部材とで形成され且つ接触面が平面であるニップ部に記録媒体を搬送する場合と比較して、ニップ部の記録媒体の搬送方向の幅を広げることができる定着装置を得る。
【解決手段】定着装置10は、回転可能な加熱ロール66と、加熱ロール66との間に挟んだ記録媒体Pを搬送する無端ベルト72と、無端ベルト72を加熱ロール66に押し付ける第1加圧部112を備えた保持部材110と、保持部材110における第1加圧部112の搬送方向上流側に設けられ、第1加圧部112から加熱ロール66の反対側に後退し、かつ加熱ロール66の周面に沿った形状の湾曲面114Bを備えた切欠き部114と、切欠き部114に取り付けられ、第1加圧部112よりも弱い押し付け力で無端ベルト72を加熱ロール66に押し付ける第2加圧部130と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な加熱部材と、
前記加熱部材との間に挟んだ記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を前記加熱部材に押し付ける第1加圧部を備えた保持部材と、
前記保持部材における前記第1加圧部の搬送方向上流側に設けられ、前記第1加圧部から前記加熱部材の反対側に後退し、かつ前記加熱部材の周面に沿った形状の湾曲面を備えた切欠き部と、
前記切欠き部に取り付けられ、前記第1加圧部よりも弱い押し付け力で前記搬送部材を前記加熱部材に押し付ける第2加圧部と、
を有する定着装置。
【請求項2】
前記第1加圧部は、前記第2加圧部の硬さよりも硬い樹脂で形成されている請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第2加圧部は、発泡樹脂で形成されている請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2加圧部は、前記切欠き部における前記湾曲面に取り付けられた状態で、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって凸状に湾曲した形状とされている請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第2加圧部における前記湾曲面と交差する方向の厚みは、軸方向に沿って等しく、
前記湾曲面は、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって凸状に湾曲した形状とされている請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第1加圧部は、前記記録媒体の搬送方向の中央部が前記記録媒体の搬送方向の下流側及び上流側よりも前記加熱部材に向かって突出すると共に、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって突出した形状とされている請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第2加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さは、前記第1加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さよりも長い請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記第2加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さは、前記第1加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さの2倍以上8倍以下である請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記保持部材における前記第1加圧部を、前記搬送部材を介して前記加熱部材に押し付ける金属製の押付部材が設けられている請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
前記切欠き部は、前記第1加圧部から交差する方向に後退する壁部を備え、
前記第2加圧部が前記壁部に接した状態で前記切欠き部に取り付けられている請求項1に記載の定着装置。
【請求項11】
記録媒体にトナー像を形成する像形成部と、
前記記録媒体のトナー像を定着させる請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の定着装置と、
を有する画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定着装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、回転可能な加熱部材と、前記加熱部材の回転に従動して走行される無端ベルトと、前記加熱部材の反対側であって、前記無端ベルトの内側に設けられた保持部材と、前記保持部材の記録媒体が排出される出口側に設けられた第1加圧部材と、前記保持部材の記録媒体が挿入される入口側であって、前記加熱部材に沿って前記第1加圧部材に対して傾斜して設けられ、前記加熱部材に沿った形状の第2加圧部材と、を有する定着装置が開示されている。
【0003】
下記特許文献2には、加熱されるエンドレスシート状の定着ベルトと、前記定着ベルトの内側に回転不能に固定配置されたニップ形成部材と、前記ニップ形成部材に対して前記定着ベルトを挟んで圧接され、前記定着ベルトとの接触部が定着ニップになっている回転駆動可能な加圧ローラとを備え、前記定着ベルトは前記加圧ローラが回転駆動されることによって前記ニップ形成部材上を摺動しつつ回転するベルト定着装置であって、前記定着ベルトは、基材上に弾性層が設けられているベルト定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-057528号公報
【特許文献2】特開2004-286931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、加熱部材と保持部材に保持され周方向に離れて配置される2つのブロック状の加圧部材とで形成され且つ接触面が平面であるニップ部に記録媒体を搬送する場合と比較して、ニップ部の記録媒体の搬送方向の幅を広げることができる定着装置及び画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に記載の定着装置は、回転可能な加熱部材と、前記加熱部材との間に挟んだ記録媒体を搬送する搬送部材と、前記搬送部材を前記加熱部材に押し付ける第1加圧部を備えた保持部材と、前記保持部材における前記第1加圧部の搬送方向上流側に設けられ、前記第1加圧部から前記加熱部材の反対側に後退し、かつ前記加熱部材の周面に沿った形状の湾曲面を備えた切欠き部と、前記切欠き部に取り付けられ、前記第1加圧部よりも弱い押し付け力で前記搬送部材を前記加熱部材に押し付ける第2加圧部と、を有する。
【0007】
第2態様に記載の定着装置は、第1態様に記載の定着装置において、前記第1加圧部は、前記第2加圧部の硬さよりも硬い樹脂で形成されている。
【0008】
第3態様に記載の定着装置は、第2態様に記載の定着装置において、前記第2加圧部は、発泡樹脂で形成されている。
【0009】
第4態様に記載の定着装置は、第1態様に記載の定着装置において、前記第2加圧部は、前記切欠き部における前記湾曲面に取り付けられた状態で、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって凸状に湾曲した形状とされている。
【0010】
第5態様に記載の定着装置は、第4態様に記載の定着装置において、前記第2加圧部における前記湾曲面と交差する方向の厚みは、軸方向に沿って等しく、前記湾曲面は、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって凸状に湾曲した形状とされている。
【0011】
第6態様に記載の定着装置は、第4態様に記載の定着装置において、前記第1加圧部は、前記記録媒体の搬送方向の中央部が前記記録媒体の搬送方向の下流側及び上流側よりも前記加熱部材に向かって突出すると共に、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって突出した形状とされている。
【0012】
第7態様に記載の定着装置は、第1態様に記載の定着装置において、前記第2加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さは、前記第1加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さよりも長い。
【0013】
第8態様に記載の定着装置は、第7態様に記載の定着装置において、前記第2加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さは、前記第1加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さの2倍以上8倍以下である。
【0014】
第9態様に記載の定着装置は、第1態様に記載の定着装置において、前記保持部材における前記第1加圧部を、前記搬送部材を介して前記加熱部材に押し付ける金属製の押付部材が設けられている。
【0015】
第10態様に記載の定着装置は、第1態様に記載の定着装置において、前記切欠き部は、前記第1加圧部から交差する方向に後退する壁部を備え、前記第2加圧部が前記壁部に接した状態で前記切欠き部に取り付けられている。
【0016】
第11態様に記載の画像形成システムは、記録媒体にトナー像を形成する像形成部と、
前記記録媒体のトナー像を定着させる第1態様から第10態様までのいずれか1つに記載の定着装置と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
第1態様に記載の定着装置によれば、加熱部材と保持部材に保持され周方向に離れて配置される2つのブロック状の加圧部材とで形成され且つ接触面が平面であるニップ部に記録媒体を搬送する場合と比較して、ニップ部の記録媒体の搬送方向の幅を広げることができる。
【0018】
第2態様に記載の定着装置によれば、第1加圧部と第2加圧部とが同等の硬さの樹脂により形成されている場合と比較して、簡単な構成により、第2加圧部が第1加圧部よりも弱い押し付け力で搬送部材を加熱部材に押し付けることができる。
【0019】
第3態様に記載の定着装置によれば、第2加圧部が発泡していない樹脂で形成されている場合と比較して、簡単な構成により、第2加圧部が第1加圧部よりも弱い押し付け力で搬送部材を加熱部材に押し付けることができる。
【0020】
第4態様に記載の定着装置によれば、第2加圧部が切欠き部における湾曲面に保持された状態で軸方向に均等な形状とされている場合と比較して、第2加圧部の押し付け力が軸方向の中央部で低下することが抑制される。
【0021】
第5態様に記載の定着装置によれば、第2加圧部の厚みが軸方向の両端部よりも軸方向の中央部を厚く形成する場合と比較して、製造が容易である。
【0022】
第6態様に記載の定着装置によれば、第1加圧部が記録媒体の搬送方向及び軸方向に均等な形状とされている場合と比較して、第1加圧部の押し付け力が軸方向の中央部で低下することが抑制される。
【0023】
第7態様に記載の定着装置によれば、第2加圧部と第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが同等の場合と比較して、搬送部材と加熱部材との間のニップ部の長さを確保しやすい。
【0024】
第8態様に記載の定着装置によれば、第2加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さの2倍より短い場合と比較して、搬送部材と加熱部材との間のニップ部の長さを確保しやすい。第2加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さの8倍より長い場合と比較して、記録媒体のトナー像の定着性能を維持しやすい。
【0025】
第9態様に記載の定着装置によれば、保持部材における切欠き部の側が搬送部材を介して加熱部材に押し付けられる場合と比較して、第1加圧部が第2加圧部よりも強い押し付け力で搬送部材を加熱部材に押し付けるように構成しやすい。
【0026】
第10態様に記載の定着装置によれば、第1加圧部から後退する壁部と第2加圧部とが離れて配置されている場合と比較して、第1加圧部及び第2加圧部と加熱部材とで形成されるニップ部の記録媒体の搬送方向の幅を広げることができる。
【0027】
第11態様に記載の画像形成システムによれば、加熱部材と保持部材に保持され周方向に離れて配置される2つのブロック状の加圧部材とで形成され且つ接触面が平面であるニップ部に記録媒体を搬送する場合と比較して、定着温度を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る定着装置を備えた画像形成システムを示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る定着装置を示す部分拡大図である。
【
図4】第1実施形態に係る定着装置の加圧ユニットの一部を示す側面図であって、第1加圧部を備えた保持部材と、保持部材の切欠き部に取り付けられた第2加圧部と、を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る定着装置の加圧ユニットの一部を示す斜視図あって、第1加圧部を備えた保持部材と、保持部材の切欠き部に取り付けられた第2加圧部と、を示す図である。
【
図6】
図4中に示す加圧ユニットの6A-6A線に沿った断面図である。
【
図7】
図4中に示す加圧ユニットの7A-7A線に沿った断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る定着装置の記録媒体の通紙方向における押し付け力を示すグラフである。
【
図10】比較例に係る定着装置の記録媒体の通紙方向における押し付け力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。なお、各図に示す矢印Hは鉛直方向を示し、矢印Wは水平方向であって装置幅方向を示し、矢印Dは鉛直方向及び水平方向とそれぞれ直交する装置奥行き方向を示す。
【0030】
〔第1実施形態〕
以下に第1実施形態に係る画像形成システムについて説明する。
【0031】
<画像形成システムの構成>
図1は、画像形成システム10を正面側から見た構成を示す概略図である。
図1に示すように、画像形成システム10は、画像形成装置本体12を有し、この画像形成装置本体12の内部に、少なくとも1つの給紙ユニット18と、画像形成部14と、定着装置36とが搭載されている。また、画像形成システム10は、画像形成装置本体12の上部に配置された排出口34と、給紙ユニット18から送り出した記録媒体Pを画像形成部14と定着装置36とを通って排出口34に搬送する搬送路32と、を備えている。以下、各構成について説明する。
【0032】
(給紙ユニット)
給紙ユニット18は、給紙ユニット本体20と、記録媒体Pが収容される給紙カセット22と、を備えている。また、給紙ユニット18は、給紙カセット22に積載された記録媒体Pを引き出すピックアップロール24と、記録媒体Pを捌きながら送り出すフィードロール28及びリタードロール26と、を備えている。これらのピックアップロール24、フィードロール28及びリタードロール26の回転によって、給紙カセット22に積載された記録媒体Pが搬送路32に沿って後述するレジストロール38に搬送される。なお、給紙カセット22は、給紙ユニット本体20に対して着脱可能に装着されている。また、給紙ユニットの数は1つでもよく、また、複数設けられてもよいが、第1実施形態では、
図1に示すように、2つの給紙ユニット18が設けられている。
【0033】
(画像形成部)
画像形成部14は、像形成部の一例であり、電子写真方式により記録媒体Pにトナー像を形成する。一例として、画像形成部14は、感光体で構成された像保持体44と、像保持体44を一様に帯電する帯電装置(例えば、帯電ロール)56と、帯電装置56により帯電された像保持体44に、光により潜像を書き込む光書込み装置58と、を備えている。また、画像形成部14は、光書込み装置58により形成された像保持体44の潜像をトナーにより可視化する現像ロールを有する現像装置60と、現像装置60により形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する転写装置(例えば、転写ロール)42と、を備えている。さらに、画像形成部14は、像保持体44に残留するトナーを除去するためのクリーニングを行うクリーニング装置62と、を備えている。
【0034】
光書込み装置58は、例えば走査型のレーザ露光装置からなり、後述するプロセスカートリッジ64を横切り、像保持体44に潜像を形成する。なお、光書込み装置58は、他の実施例としてLEDや面発光レーザ等を用いることができる。
【0035】
プロセスカートリッジ64は、像保持体44、帯電装置56、現像装置60及びクリーニング装置62を一体化したものであり、これらを一体として交換できるようになっている。このプロセスカートリッジ64は、排出部16を開くことにより、画像形成装置本体12から取り出すことができる。
【0036】
転写装置42により転写された記録媒体P上のトナー像は、定着装置36により記録媒体Pに定着される。この定着装置36の構成については、後に説明する
【0037】
(搬送路)
搬送路32は、下部側の給紙ユニット18のピックアップロール24から画像形成装置本体12の上部の排出口34までを繋ぐ記録媒体Pの通路である。搬送路32は、画像形成装置本体12の内部にあって、下部側の給紙ユニット18のピックアップロール24から定着装置36まで鉛直方向に沿って形成されている部分を有する。
【0038】
搬送路32の記録媒体Pの搬送方向における定着装置36の上流側に転写装置42と像保持体44が配置され、さらに転写装置42と像保持体44の上流側にレジストロール38が配置されている。さらに、搬送路32の排出口34の近傍には排出ロール40が配置されている。
【0039】
<画像形成システムの動作>
ここで、画像形成システム10の動作について説明する。給紙ユニット18の給紙カセット22からピックアップロール24により送り出された記録媒体Pは、リタードロール26及びフィードロール28により捌かれて搬送路32に導かれ、レジストロール38により一次停止される。そして、レジストロール38によりタイミングをとって記録媒体Pが転写装置42と像保持体44との間に搬送されることで、像保持体44からトナー像が記録媒体Pに転写され、この転写されたトナー像が定着装置36により定着される。さらに、トナー像が定着された記録媒体Pは、排出ロール40により排出口34から排出部16へ排出される。
【0040】
<定着装置の構成>
次に、画像形成システム10に備えられた第1実施形態に係る定着装置36について説明する。
【0041】
図2に示すように、定着装置36は、加熱部材の一例としての加熱ロール66と、無端ベルト状に形成された無端ベルト72と、無端ベルト72を回転自在に案内するガイド部材74と、を備えている。無端ベルト72は、搬送部材の一例である。また、定着装置36は、無端ベルト72の内部に配置されて無端ベルト72を加熱ロール66に押し付ける加圧ユニット76を備えている。定着装置36は、後述するように、加圧ユニット76に硬度の異なる第1加圧部112と第2加圧部130が設けられたフリーベルトニップヒューザー(Free Belt Nip Fuser(FBNF))方式の構成を有している。なお、定着装置36では、無端ベルト72の内側に潤滑剤を供給する含浸パッド(図示省略)を備えていてもよい。
【0042】
(ガイド部材)
ガイド部材74は、無端ベルト72および加圧ユニット76の両端に配置されており、加圧ユニット76は、ガイド部材74に支持されている。なお、無端ベルト72と加圧ユニット76との間に、無端ベルト72と加圧ユニット76との摩擦を低減するための摺動シート(図示省略)を設けてもよい。
【0043】
(加熱ロール)
加熱ロール66は、円筒状のロール部84と、このロール部84内に配置されたヒータ86と、を有している。ロール部84は、図示しない加熱ロール用軸受けに回転可能に支持されており、矢印A方向に回転する。また、ロール部84は、例えば鉄、ステンレス、又はアルミニウム等の金属材料からなるコア88と、このコア88に被覆又は塗布された離型層90と、を備えている。一例として、ロール部84は、弾性層を有さない、いわゆるハードロールとなっている。コア88は、外形が例えば25mm、肉厚が例えば0.7mmである。離型層90は、絶縁性で離型性の優れた材料、例えばPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などのフッ素樹脂で形成され、膜厚が例えば20μmである。
【0044】
一例として、ロール部84には、複数(例えば5個)の剥離爪92が接触している。ヒータ86は、例えば2本のランプから構成されている。また、一例として、加熱ロール66の無端ベルト72とは反対側には、サーモスタット94が加熱ロール66に対向して設けられている。
【0045】
(無端ベルト)
無端ベルト72は、加熱ロール66と加圧ユニット76との間に設けられ、加熱ロール66の回転に従動して矢印C方向に走行する。無端ベルト72は、加熱ロール66との間に挟んだ記録媒体Pを搬送する。加熱ロール66と無端ベルト72とが加圧ユニット76によって加圧された状態で接触することによって、ニップ部102が形成されており、このニップ部102によって記録媒体Pにトナー像が定着される。無端ベルト72は、例えばポリイミド等の合成樹脂によって、例えば肉厚が75μmの無端ベルト状に形成されている。図示を省略するが、無端ベルト72の表面には、例えばPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などのフッ素樹脂で形成された離型層が設けられている。
【0046】
なお、ニップ部102の上流側には、導入側案内部96が設けられている。この導入側案内部96に、矢印B方向に搬送された記録媒体Pが案内され、記録媒体Pの先端がニップ部102に導かれるようになっている。また、ニップ部102の下流側には、図示を省略するが、記録媒体Pを案内する排出側案内部が設けられている。
【0047】
(加圧ユニット)
加圧ユニット76は、
図2及び
図3に示すように、第1加圧部112を備えた保持部材110と、保持部材110における第1加圧部112の搬送方向上流側に設けられた切欠き部114と、切欠き部114に取り付けられた第2加圧部130と、を備えている。また、加圧ユニット76は、保持部材110における第1加圧部112を加熱ロール66側に押し付ける押付部材140と、押付部材140を支持するハウジング142と、を有している。
【0048】
押付部材140は、保持部材110における第1加圧部112、及び保持部材110の切欠き部114に取り付けられた第2加圧部130を加熱ロール66側に押し付けるように支持されている。これにより、第1加圧部112及び第2加圧部130が無端ベルト72を介して加熱ロール66に押し付けられることで、無端ベルト72と加熱ロール66とが接触するニップ部102が形成されている。加圧ユニット76の各構成について以下に説明する。
【0049】
図3及び
図4に示すように、保持部材110は、上記のように、第1加圧部112と、第1加圧部112の搬送方向上流側で第1加圧部112から加熱ロール66の反対側に後退する切欠き部114と、を有している。切欠き部114は、第1加圧部112から交差する方向に後退する壁部114Aと、壁部114Aの後端部から加熱ロール66の周面に沿った形状に形成された湾曲面114Bと、を備えている。
【0050】
一例として、保持部材110は、加熱ロール66の軸方向の長さと同等の長さである。保持部材110(すなわち、第1加圧部112)は、例えば、ガラス入りのポリエチレンテレフタレート(PET)などの耐熱性のある樹脂で形成されている。一例として。第1加圧部112は、第2加圧部130の硬さよりも硬い樹脂で形成されている。すなわち、第1加圧部112の硬度は、第2加圧部130の硬度よりも高く、第1加圧部112に比べ第2加圧部130の方がやわらかくなっている。
【0051】
一例として、第1加圧部112のアスカーC硬度は70度以上75度以下であり、第2加圧部130のアスカーC硬度は30度以上35度以下である。アスカーC硬度は、以下のようにして求める。
表層における面内等間隔の80箇所について、高分子計器社製、デ・ファクトスタンダード アスカーC型硬度計で測定を行い、その平均値を、表層のアスカーC硬度とする。なお、測定は、温度23℃、湿度55%RH環境下で行う。
【0052】
第2加圧部130は、切欠き部114の壁部114Aに接した状態で少なくとも切欠き部114の湾曲面114Bに取り付けられている(
図4参照)。一例として、第2加圧部130は、湾曲面114Bに接着剤等により取り付けられている。そのとき、第2加圧部130は、壁部114Aに接着剤等で固着されていてもよい。第2加圧部130は、壁部114Aに接した状態で切欠き部114に取り付けられていることで、第2加圧部130と第1加圧部112が記録媒体Pの搬送方向(矢印B方向)に沿って連続して配置されている。すなわち、第2加圧部130と第1加圧部112との間に間隙は形成されておらず、第2加圧部130と第1加圧部112とは離れて配置されていない。
【0053】
第2加圧部130は、第1加圧部112よりも弱い押し付け力で無端ベルト72を加熱ロール66に押し付けている。一例として、第2加圧部130は、保持部材110の長手方向の長さと同等の長さである。第2加圧部130は、例えば、シリコーンスポンジなどの耐熱性のある発泡樹脂で形成されている。
【0054】
図6に示すように、第2加圧部130は切欠き部114の湾曲面114Bに取り付けられた状態で、第2加圧部130の軸方向の中央部130Aが軸方向の両側の端部130Bよりも加熱ロール66に向かって凸状に湾曲した形状とされている。
図6では、構成を分かりやすくするため、第2加圧部130を加熱ロール66に矢印D方向に押し付ける前の加熱ロール66を想像線で示している。また、
図6では、第2加圧部130が凸状に湾曲した形状が分かるように、実際よりも誇張した形状で示している。
【0055】
一例として、第2加圧部130における湾曲面114Bと交差する方向の厚みtは、軸方向に沿って等しく、湾曲面114Bは、軸方向の中央部121Aが軸方向の両側の端部121Bよりも加熱ロール66に向かって凸状に湾曲した形状とされている。第2加圧部130における湾曲面114Bと交差する方向の厚みtのバラツキは、例えば、5%以内であることが好ましい。これにより、湾曲面114Bに取り付けられた第2加圧部130は、軸方向の中央部130Aが軸方向の両側の端部130Bよりも加熱ロール66に向かって凸状に湾曲するようになっている。
【0056】
図7に示すように、第1加圧部112は、軸方向の中央部122Aが軸方向の両側の端部122Bよりも加熱ロール66に向かって突出した形状とされている。
図7では、構成を分かりやすくするため、第1加圧部112を加熱ロール66に矢印D方向に押し付ける前の加熱ロール66を想像線で示している。また、
図7では、第1加圧部112の中央部が突出した形状が分かるように、実際よりも誇張した形状で示している。
【0057】
図3及び
図4に示すように、第1加圧部112は、記録媒体Pの搬送方向(矢印B方向)の中央部124Aが記録媒体Pの搬送方向の上流側端部124B及び下流側端部124Cよりも加熱ロール66に向かって突出している。すなわち、第1加圧部112は、記録媒体Pの搬送方向(矢印B方向)に沿って中央部124Aが凸状に湾曲した形状である。
【0058】
第2加圧部130の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL1は、第1加圧部112の記録媒体の搬送方向に沿った長さL2よりも長い(
図4参照)。第2加圧部130の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL1は、第1加圧部112の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL2の2倍以上8倍以下であることが好ましい。例えば、第2加圧部130の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL1は、第1加圧部112の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL2の3.5倍程度に設定されている。
【0059】
押付部材140は、保持部材110を支持するとともに、押付部材140の両端がガイド部材74に支持されることで、保持部材110を加熱ロール66側に押し付けるようになっている。このとき、押付部材140の長手方向(すなわち、装置奥行き方向)の端部はガイド部材74を貫通しており、押付部材140の長手方向の端部は、スプリング等の付勢手段(図示せず)によって加熱ロール66側に付勢されている。
【0060】
押付部材140は、例えば、金属製である。一例として、押付部材140は、L字状の部材であり、長手方向の一端が保持部材110における第1加圧部112の内側に形成された凹部115に挿入されている(
図3参照)。押付部材140の長手方向は、第1加圧部112の表面と交差する方向に配置されている。
【0061】
ハウジング142は、例えばガラス入りのポリテトラフルオロエチレン(PET)などの合成樹脂によって形成されており、保持部材110、押付部材140及び無端ベルト72を支持している。
【0062】
<第1実施形態の作用>
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0063】
画像形成システム10の定着装置36では、画像形成部14によりトナー像が転写された記録媒体Pが、搬送路32を通り、加圧ユニット76により無端ベルト72と加熱ロール66とが加圧接触されるニップ部102に送り込まれる。加圧ユニット76は、保持部材110の第1加圧部112と、保持部材110の切欠き部114に取り付けられた第2加圧部130と、を備えている。そして、第1加圧部112及び第2加圧部130により無端ベルト72が加熱ロール66に押し付けられることで、ニップ部102が形成されている。
【0064】
このとき、加熱ロール66が回転駆動され、加熱ロール66に従動して無端ベルト72も加圧ユニット76の外周を周回移動することで、記録媒体Pがニップ部102に送り込まれる。送り込まれた記録媒体Pは、その先端が、加熱ロール66と無端ベルト72との間に挟み込まれて、まず、加熱ロール66と第2加圧部130とに押し付けられ、続いて加熱ロール66と第1加圧部112に押し付けられることで、トナー像が記録媒体Pに定着される。第2加圧部130は、第1加圧部112よりも弱い押し付け力で無端ベルト72を加熱ロール66に押し付けている。
【0065】
図8には、無端ベルト72と加熱ロール66との間の記録媒体Pの通紙方向(すなわち、搬送方向)に対するニップ部102の押し付け力(すなわち、圧力分布)が示されている。
図8に示すように、加熱ロール66と無端ベルト72とのニップ部102は、記録媒体Pの搬送方向上流側(すなわち、入口側)の第2加圧部130により形成されるプレニップ部102Aと、記録媒体Pの搬送方向下流側(すなわち、出口側)の第1加圧部112により形成されるメインニップ部102Bと、を備えている(
図3参照)。まず、記録媒体Pの搬送方向上流側(すなわち、入口側)のプレニップ部102Aでは、第2加圧部130により、第1加圧部112よりも弱い押し付け力で記録媒体Pが加熱ロール66側に押し付けられる。その後、記録媒体Pの搬送方向下流側(すなわち、出口側)のメインニップ部102Bでは、第1加圧部112により、第2加圧部130よりも強い押し付け力で記録媒体Pが加熱ロール66側に押し付けられる。
【0066】
また、弾性層を有さない加熱ロール66を用いる場合では、ニップ部102で押し付け力を十分に得るために記録媒体Pの搬送方向のニップ部102の幅を広く取る必要がある。第1実施形態では、保持部材110の切欠き部114は、第1加圧部112から加熱ロール66の反対側に後退し、かつ加熱ロール66の周面に沿った形状の湾曲面114Bを備えており、切欠き部114の湾曲面114Bに第2加圧部130が取り付けられている。このため、
図8に示すグラフにおいて、第1加圧部112及び第2加圧部130によるニップ部102の幅(記録媒体Pの搬送方向の幅)が広くなる。第1加圧部112及び第2加圧部130によるニップ部102の幅(記録媒体Pの搬送方向の幅)を広くすることで、加熱ロール66による定着温度を下げることができる。一例として、ニップ部102の記録媒体Pの搬送方向の長さは、14mm程度である。また、一例として、加熱ロール66と無端ベルト72とのニップ部102における定着温度は、104℃である。
【0067】
以上のように、定着装置36では、保持部材110の第1加圧部112から加熱ロール66の反対側に後退し、かつ加熱ロール66の周面に沿った形状の湾曲面114Bを備えた切欠き部114に第2加圧部130が取り付けられている。このため、定着装置36では、加熱ロールと保持部材に保持され周方向に離れて配置される2つのブロック状の加圧部材とで形成され且つ接触面が平面であるニップ部に記録媒体Pを搬送する場合と比較して、ニップ部102の記録媒体Pの搬送方向の幅を広げることができる。
【0068】
また、保持部材110の第1加圧部112から後退した加熱ロール66の周面に沿った形状の湾曲面114Bを備えた切欠き部114に第2加圧部130が取り付けられていることで、定着装置36が経時的に使用されても、第1加圧部112及び第2加圧部130の弾性力が減少する、いわゆるへたりが生じにくくなる。このため、
図8に示すグラフにおいて、第1加圧部112と第2加圧部130との間の押し付け力が弱くなる圧力の谷が発生しにくくなる。
【0069】
図9には、比較例の定着装置200が示されている。
図9に示すように、比較例の定着装置200は、無端ベルト202と、ガイド部材204と、無端ベルト202の内部に配置された加圧ユニット206と、を備えている。定着装置200では、記録媒体Pは水平方向に沿った搬送方向(矢印B方向)に搬送され、無端ベルト202と加熱ロール66とが接触するニップ部222に送り込まれる。
【0070】
加圧ユニット206は、第1加圧部212を備えた保持部材210と、保持部材210における第1加圧部212の搬送方向上流側に設けられた切欠き部214と、切欠き部214に板材215を介して取り付けられた第2加圧部230と、を備えている。また、加圧ユニット206は、保持部材210を無端ベルト202を介して加熱ロール66に押し付ける押付部材240と、押付部材240を支持するハウジング242と、を有している。切欠き部214は、加熱ロール66の反対側に窪んだ平面状の接触面214Aを備えており、接触面214Aに配置された平面状の板材215を介して第2加圧部230が取り付けられている。接触面214Aは、加熱ロール66の軸方向に沿った方向から見た状態で、加熱ロール66の軸方向と交差する方向に延びている。
【0071】
第1加圧部212を備えた保持部材210は、第2加圧部230よりも硬い樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど)で形成されている。第2加圧部230は、発泡樹脂(例えば、シリコーンスポンジなど)で形成されている。
【0072】
図9及び
図10に示すように、加熱ロール66と無端ベルト202とのニップ部222は、記録媒体Pの搬送方向上流側(すなわち、入口側)の第2加圧部230によるプレニップ部222Aと、記録媒体Pの搬送方向下流側(すなわち、出口側)の第1加圧部212によるメインニップ部222Bと、を備えている。まず、記録媒体Pの搬送方向上流側(すなわち、入口側)のプレニップ部222Aでは、第2加圧部230により、第1加圧部212よりも弱い押し付け力で記録媒体Pが加熱ロール66側に押し付けられる。その後、記録媒体Pの搬送方向下流側(すなわち、出口側)のメインニップ部222Bでは、第1加圧部212により、第2加圧部230よりも強い押し付け力で記録媒体Pが加熱ロール66側に押し付けられる。
【0073】
比較例の定着装置200では、保持部材210の切欠き部214は、平面状の接触面214Aを備えており、接触面214Aに配置された平面状の板材215を介して第2加圧部230が取り付けられている。このため、第2加圧部230によるプレニップ部222Aの記録媒体Pの搬送方向に沿った長さは、第1実施形態のように保持部材110の切欠き部114に取り付けられた第2加圧部130によるプレニップ部102Aの記録媒体Pの搬送方向に沿った長さよりも短くなる(
図9及び
図10参照)。一例として、プレニップ部102Aとメインニップ部222Bとを合計したニップ部222の記録媒体Pの搬送方向の長さは、6mm程度である。また、ニップ部222の記録媒体Pの搬送方向の長さが短くなることで、記録媒体P上のトナー像を定着するための定着温度が高くなる。一例として、加熱ロール66と無端ベルト202とのニップ部222における定着温度は、125℃である。
【0074】
これに対して、第1実施形態の定着装置36では、保持部材110の切欠き部114は、加熱ロール66の周面に沿った形状の湾曲面114Bを備えている。このため、切欠き部114に取り付けられた第2加圧部130の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さは、比較例の定着装置200の切欠き部214の平面状に接触面214Aに板材215を介して取り付けられた第2加圧部230の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さよりも長くすることができる。
【0075】
また、定着装置36では、第1加圧部112は、第2加圧部130の硬さよりも硬い樹脂で形成されている。このため、定着装置36では、第1加圧部と第2加圧部とが同等の硬さの樹脂により形成されている場合と比較して、簡単な構成により、第2加圧部130が第1加圧部112よりも弱い押し付け力で無端ベルト72を加熱ロール66に押し付けることができる。
【0076】
また、定着装置36では、第2加圧部130は、発泡樹脂で形成されている。このため、定着装置36では、第2加圧部が発泡していない樹脂で形成されている場合と比較して、簡単な構成により、第2加圧部130が第1加圧部112よりも弱い押し付け力で無端ベルト72を加熱ロール66に押し付けることができる。
【0077】
また、定着装置36では、第2加圧部130は、切欠き部114における湾曲面114Bに取り付けられた状態で、軸方向の中央部130Aが軸方向の両端の端部130Bよりも加熱ロール66に向かって凸状に湾曲した形状とされている(
図6参照)。このため、定着装置36では、第2加圧部が切欠き部における湾曲面に保持された状態で軸方向に均等な形状とされている場合と比較して、第2加圧部130の押し付け力が軸方向の中央部130Aで低下することが抑制される。
【0078】
また、定着装置36では、第2加圧部130における湾曲面114Bと交差する方向の厚みは、軸方向に沿って等しく、湾曲面114Bは、軸方向の中央部121Aが軸方向の両側の端部121Bよりも加熱ロール66に向かって凸状に湾曲した形状とされている(
図6参照)。このため、定着装置36では、第2加圧部の厚みが軸方向の両端部よりも軸方向の中央部を厚く形成する場合と比較して、製造が容易である。
【0079】
また、定着装置36では、第1加圧部112は、記録媒体Pの搬送方向の中央部124Aが記録媒体Pの搬送方向の上流側端部124B及び下流側端部124Cよりも加熱ロール66に向かって突出した形状とされている(
図3参照)。さらに、第1加圧部112は、軸方向の中央部122Aが軸方向の両端の端部122Bよりも加熱ロール66に向かって突出した形状とされている(
図7参照)。このため、定着装置36では、第1加圧部が記録媒体の搬送方向及び軸方向に均等な形状とされている場合と比較して、第1加圧部112の押し付け力が軸方向の中央部124Aで低下することが抑制される。
【0080】
また、定着装置36では、第2加圧部130の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL1は、第1加圧部112の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL2よりも長い(
図4参照)。このため、定着装置36では、第2加圧部と第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが同等の場合と比較して、無端ベルト72と加熱ロール66との間のニップ部102の長さを確保しやすい。
【0081】
また、定着装置36では、第2加圧部130の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL1は、第1加圧部112の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さL2の2倍以上8倍以下である。このため、定着装置36では、第2加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さの2倍より短い場合と比較して、無端ベルト72と加熱ロール66との間のニップ部102の長さを確保しやすい。また、第2加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さの8倍より長い場合と比較して、記録媒体Pのトナー像の定着性能を維持しやすい。
【0082】
また、定着装置36では、保持部材110における第1加圧部112を、無端ベルト72を介して加熱ロール66に押し付ける金属製の押付部材140が設けられている。このため、定着装置36では、保持部材における切欠き部の側が無端ベルトを介して加熱ロールに押し付けられる場合と比較して、第1加圧部112が第2加圧部130よりも強い押し付け力で無端ベルト72を加熱ロール66に押し付けるように構成しやすい。
【0083】
また、定着装置36では、切欠き部114は、第1加圧部112から交差する方向に後退する壁部114Aを備え、第2加圧部130が壁部114Aに接した状態で切欠き部114に取り付けられている。このため、定着装置36では、第1加圧部から後退する壁部と第2加圧部とが離れて配置されている場合と比較して、第1加圧部112及び第2加圧部130と加熱ロール66とで形成されるニップ部102の記録媒体Pの搬送方向の幅を広げることができる。
【0084】
また、定着装置36を備えた画像形成システム10では、記録媒体Pにトナー像を形成する画像形成部14と、記録媒体Pのトナー像を定着させる定着装置36と、を有する。定着装置36により、第1加圧部112及び第2加圧部130と加熱ロール66とで形成されるニップ部102の記録媒体Pの搬送方向の幅を確保しやすくなる。このため、画像形成システム10では、加熱ロールと保持部材に保持され周方向に離れて配置される2つのブロック状の加圧部材とで形成され且つ接触面が平面であるニップ部に記録媒体を搬送する場合と比較して、定着温度を下げることができる。
【0085】
〔補足説明〕
第1実施形態では、無端ベルト72を備えているが、本開示はこの構成に限定されるものではなく、記録媒体Pを搬送可能であれば、他の構成に変更可能である。
【0086】
第1実施形態では、第2加圧部130は、発泡樹脂で形成されているが、本開示はこの構成に限定されるものではない。例えば、第2加圧部は、第1加圧部の硬さよりも柔らかい部材であれば、発泡樹脂以外の樹脂で形成されていてもよい。
【0087】
第1実施形態では、第1加圧部112の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さと第2加圧部130の記録媒体Pの搬送方向に沿った長さとの比は、変更可能である。また、加圧ユニット76を構成する部材は、本開示に限定されるものではなく、適宜に変更することが可能である。
【0088】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0089】
〔付記〕
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0090】
(((1)))
回転可能な加熱部材と、
前記加熱部材との間に挟んだ記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を前記加熱部材に押し付ける第1加圧部を備えた保持部材と、
前記保持部材における前記第1加圧部の搬送方向上流側に設けられ、前記第1加圧部から前記加熱部材の反対側に後退し、かつ前記加熱部材の周面に沿った形状の湾曲面を備えた切欠き部と、
前記切欠き部に取り付けられ、前記第1加圧部よりも弱い押し付け力で前記搬送部材を前記加熱部材に押し付ける第2加圧部と、
を有する定着装置。
【0091】
(((2)))
前記第1加圧部は、前記第2加圧部の硬さよりも硬い樹脂で形成されている(((1)))に記載の定着装置。
【0092】
(((3)))
前記第2加圧部は、発泡樹脂で形成されている(((1)))又は(((2)))に記載の定着装置。
【0093】
(((4)))
前記第2加圧部は、前記切欠き部における前記湾曲面に取り付けられた状態で、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって凸状に湾曲した形状とされている(((1)))から(((3)))までのいずれか1つに記載の定着装置。
【0094】
(((5)))
前記第2加圧部における前記湾曲面と交差する方向の厚みは、軸方向に沿って等しく、
前記湾曲面は、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって凸状に湾曲した形状とされている(((4)))に記載の定着装置。
【0095】
(((6)))
前記第1加圧部は、前記記録媒体の搬送方向の中央部が前記記録媒体の搬送方向の下流側及び上流側よりも前記加熱部材に向かって突出すると共に、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも前記加熱部材に向かって突出した形状とされている(((1)))から(((5)))までのいずれか1つに記載の定着装置。
【0096】
(((7)))
前記第2加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さは、前記第1加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さよりも長い(((1)))から(((6)))までのいずか1つに記載の定着装置。
【0097】
(((8)))
前記第2加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さは、前記第1加圧部の前記記録媒体の搬送方向に沿った長さの2倍以上8倍以下である(((7)))に記載の定着装置。
【0098】
(((9)))
前記保持部材における前記第1加圧部を、前記搬送部材を介して前記加熱部材に押し付ける金属製の押付部材が設けられている(((1)))から(((8)))までのいずれか1つに記載の定着装置。
【0099】
(((10)))
前記切欠き部は、前記第1加圧部から交差する方向に後退する壁部を備え、
前記第2加圧部が前記壁部に接した状態で前記切欠き部に取り付けられている(((1)))から(((9)))までのいずれか1つに記載の定着装置。
【0100】
(((11)))
記録媒体にトナー像を形成する像形成部と、
前記記録媒体のトナー像を定着させる(((1)))から(((10)))までのいずれか1つに記載の定着装置と、
を有する画像形成システム。
【0101】
(((1)))に記載の定着装置によれば、加熱部材と保持部材に保持され周方向に離れて配置される2つのブロック状の加圧部材とで形成され且つ接触面が平面であるニップ部に記録媒体を搬送する場合と比較して、ニップ部の記録媒体の搬送方向の幅を広げることができる。
【0102】
(((2)))に記載の定着装置によれば、第1加圧部と第2加圧部とが同等の硬さの樹脂により形成されている場合と比較して、簡単な構成により、第2加圧部が第1加圧部よりも弱い押し付け力で搬送部材を加熱部材に押し付けることができる。
【0103】
(((3)))に記載の定着装置によれば、第2加圧部が発泡していない樹脂で形成されている場合と比較して、簡単な構成により、第2加圧部が第1加圧部よりも弱い押し付け力で搬送部材を加熱部材に押し付けることができる。
【0104】
(((4)))に記載の定着装置によれば、第2加圧部が切欠き部における湾曲面に保持された状態で軸方向に均等な形状とされている場合と比較して、第2加圧部の押し付け力が軸方向の中央部で低下することが抑制される。
【0105】
(((5)))に記載の定着装置によれば、第2加圧部の厚みが軸方向の両端部よりも軸方向の中央部を厚く形成する場合と比較して、製造が容易である。
【0106】
(((6)))に記載の定着装置によれば、第1加圧部が記録媒体の搬送方向及び軸方向に均等な形状とされている場合と比較して、第1加圧部の押し付け力が軸方向の中央部で低下することが抑制される。
【0107】
(((7)))に記載の定着装置によれば、第2加圧部と第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが同等の場合と比較して、搬送部材と加熱部材との間のニップ部の長さを確保しやすい。
【0108】
(((8)))に記載の定着装置によれば、第2加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さの2倍より短い場合と比較して、搬送部材と加熱部材との間のニップ部の長さを確保しやすい。第2加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さが第1加圧部の記録媒体の搬送方向に沿った長さの8倍より長い場合と比較して、記録媒体のトナー像の定着性能を維持しやすい。
【0109】
(((9)))に記載の定着装置によれば、保持部材における切欠き部の側が搬送部材を介して加熱部材に押し付けられる場合と比較して、第1加圧部が第2加圧部よりも強い押し付け力で搬送部材を加熱部材に押し付けるように構成しやすい。
【0110】
(((10)))に記載の定着装置によれば、第1加圧部から後退する壁部と第2加圧部とが離れて配置されている場合と比較して、第1加圧部及び第2加圧部と加熱部材とで形成されるニップ部の記録媒体の搬送方向の幅を広げることができる。
【0111】
(((11)))に記載の画像形成システムによれば、加熱部材と保持部材に保持され周方向に離れて配置される2つのブロック状の加圧部材とで形成され且つ接触面が平面であるニップ部に記録媒体を搬送する場合と比較して、定着温度を下げることができる。
【符号の説明】
【0112】
10 画像形成システム
14 画像形成部(像形成部の一例)
36 定着装置
66 加熱ロール(加熱部材の一例)
72 無端ベルト(搬送部材の一例)
76 加圧ユニット
84 ロール部
110 保持部材
112 第1加圧部
114 切欠き部
114A 壁部
114B 湾曲面
121A 中央部(湾曲面の軸方向の中央部の一例)
121B 端部(湾曲面の軸方向の両端部の一例)
122A 中央部(軸方向の中央部の一例)
122B 端部(軸方向の両端部の一例)
124A 中央部(記録媒体の搬送方向の中央部の一例)
124B 上流側端部(記録媒体の搬送方向上流側の一例)
124C 下流側端部(記録媒体の搬送方向下流側の一例)
130 第2加圧部
130A 中央部(軸方向の中央部の一例)
130B 端部(軸方向の両端部の一例)
P 記録媒体