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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003337
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】護身用着衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20241226BHJP
   A45C 9/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A41D13/05 131
A41D13/05 125
A41D13/05 118
A45C9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084524
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2023103791
(32)【優先日】2023-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513228340
【氏名又は名称】田村装備開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】田村 忠嗣
(72)【発明者】
【氏名】田村 武嗣
【テーマコード(参考)】
3B045
3B211
【Fターム(参考)】
3B045AA51
3B045CB01
3B045CB05
3B045CE10
3B045EA02
3B045FA01
3B045GA01
3B045GB02
3B045GC01
3B045GD01
3B045HA00
3B045HB04
3B211AA01
3B211AC04
3B211AC21
3B211AC22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収納袋として携帯することができ、かつ、何者かに襲われたときに、刃物による攻撃から身を守るために着用することができる護身用着衣を提供する。
【解決手段】護身用着衣は、収納袋の形態に折り畳むことができる護身用着衣であって、収納袋の状態では背面部と対面し、護身用着衣の着用時には外表面となる第1表面、及び、収納袋の状態では外表面となり、護身用着衣の着用時には着用者の身体と接触する第2表面を備え、背面部は、収納袋の状態では前面部と対面し、護身用着衣の着用時には外表面となる第1表面、及び、収納袋の状態では外表面となり、護身用着衣の着用時に着用者の身体と接触する第2表面を備え、前面部又は背面部のうちの一方は袋本体からなり、右脇部及び左脇部は背面部の左右に取り付けられており、前面部、背面部及び左右の脇部は、防刃能力を有する部材からなるか、又は、防刃能力を有する部材を付加することができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納袋の形態に折り畳むことができる護身用着衣であって、
着用者の身体の腹側、背中側及び左右の腋をそれぞれ保護する前面部、背面部及び左右の脇部、並びに、前記前面部の上端又はその近傍と前記背面部の上端又はその近傍を接続し、着用者の左右の肩それぞれの上に載る左右のショルダーベルトを備え、
前記前面部は、収納袋の形態では前記背面部と対面し、護身用着衣の着用時には外表面となる第1表面、及び、収納袋の形態では外表面となり、護身用着衣の着用時には着用者の身体と接触する第2表面を備え、
前記背面部は、収納袋の形態では前記前面部と対面し、護身用着衣の着用時には外表面となる第1表面、及び、収納袋の形態では外表面となり、護身用着衣の着用時に着用者の身体と接触する第2表面を備え、
前面部又は背面部のうちの一方は、前記第1表面を有する第1壁部及び前記第2表面を有する第2壁部を備え、少なくとも第1壁部及び第2壁部によって取り囲まれた袋状の内部空間を有する袋本体からなり、
前記前面部の第1表面、前記背面部の第1表面、又は、その両方に、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構が設けられており、
前記右脇部は着用者基準で背面部の右側に、及び、前記左脇部は着用者基準で背面部の左側に取り付けられており、
左右の脇部それぞれの表面かつ護身用着衣の着用時に前面部と対面し接触する領域、前面部の表面かつ護身用着衣の着用時に脇部の先端部又はその近傍と対面し接触する領域、又は、その両方に、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構が設けられており、
前記前面部、背面部及び左右の脇部は、防刃能力を有する部材からなるか、又は、防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材からなる、護身用着衣。
【請求項2】
前記前面部が前記袋本体からなる、請求項1に記載の護身用着衣。
【請求項3】
前記背面部が前記袋本体からなる、請求項1に記載の護身用着衣。
【請求項4】
前記袋本体は、前記第1壁部及び前記第2壁部それぞれの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手を備えている、請求項1に記載の護身用着衣。
【請求項5】
前記の防刃能力を有する部材は、防刃性を有する素材からなる部材であるか、又は、防刃性を有する素材を内側に配置又は外側に取り付けた部材である、請求項1に記載の護身用着衣。
【請求項6】
前記の防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材は、防刃性を有する素材を配置することができる内部空間を有する部材であるか、又は、防刃性を有する素材を取り付けることができる構造を外側に有する部材である、請求項1に記載の護身用着衣。
【請求項7】
前記背面部は、当該背面部の下端又はその近傍に、背面部を掴みやすくするハンドルを備えている、請求項1に記載の護身用着衣。
【請求項8】
前記左右の脇部は、当該脇部の先端又はその近傍に、脇部を掴みやすくするハンドルを備えている、請求項1に記載の護身用着衣。
【請求項9】
前記持ち手の、前面部の上端から突出している部分の長さが60cm以上である、請求項1に記載の護身用着衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は護身用着衣に関し、詳しくは、持ち手がついた収納袋として利用することができ、かつ、暴漢等から身を守るために身体に着用することができる護身用着衣に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、人は外出時に、トートバッグ等の収納袋を携帯することが多い。もし人が外出中に暴漢等の危険者に襲われたとき、そのような収納袋が被害者の身を守る着衣として用いることができれば非常に便利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、外出時にトートバッグ等の収納袋として携帯することができ、かつ、外出中に何者かに襲われたときに、刃物による攻撃から被害者の身を守るために身体に着用することができる護身用着衣を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の護身用着衣は、収納袋の形態に折り畳むことができる護身用着衣であって、
着用者の身体の腹側、背中側及び左右の腋をそれぞれ保護する前面部、背面部及び左右の脇部、並びに、前記前面部の上端又はその近傍と前記背面部の上端又はその近傍を接続し、着用者の左右の肩それぞれの上に載る左右のショルダーベルトを備え、
前記前面部は、収納袋の形態では前記背面部と対面し、護身用着衣の着用時には外表面となる第1表面、及び、収納袋の形態では外表面となり、護身用着衣の着用時には着用者の身体と接触する第2表面を備え、
前記背面部は、収納袋の形態では前記前面部と対面し、護身用着衣の着用時には外表面となる第1表面、及び、収納袋の形態では外表面となり、護身用着衣の着用時に着用者の身体と接触する第2表面を備え、
前面部又は背面部のうちの一方は、前記第1表面を有する第1壁部及び前記第2表面を有する第2壁部を備え、少なくとも第1壁部及び第2壁部によって取り囲まれた袋状の内部空間を有する袋本体からなり、
前記前面部の第1表面、前記背面部の第1表面、又は、その両方に、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構が設けられており、
前記右脇部は着用者基準で背面部の右側に、及び、前記左脇部は着用者基準で背面部の左側に取り付けられており、
左右の脇部それぞれの表面かつ護身用着衣の着用時に前面部と対面し接触する領域、前面部の表面かつ護身用着衣の着用時に脇部の先端部又はその近傍と対面し接触する領域、又は、その両方に、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構が設けられており、
前記前面部、背面部及び左右の脇部は、防刃能力を有する部材からなるか、又は、防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の護身用着衣は、外出時にトートバッグ等の収納袋として携帯することができ、外出中に何者かに襲われたときに直ちに着用して身を守ることができ、かつ、着用中も収納袋として機能するため、きわめて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態(護身用着衣101)を、トートバッグの形態に折り畳んだ状態を示す写真である。
図2A図1の実施形態(護身用着衣101)を、護身用着衣として着用した状態(正面)を示す写真である。
図2B図1の実施形態(護身用着衣101)を、護身用着衣として着用した状態(右側面)を示す写真である。
図2C図1の実施形態(護身用着衣101)を、護身用着衣として着用した状態(左側面)を示す写真である。
図2D図1の実施形態(護身用着衣101)を、護身用着衣として着用した状態(背面)を示す写真である。
図3】トートバッグの形態に折り畳まれた護身用着衣101の背面部を、正面から見た写真である。
図4】トートバッグの形態に折り畳まれた護身用着衣101の背面部を、背面部の背後にある前面部から引きはがし、展開した状態を示す写真である。
図5】護身用着衣101を、図4の展開状態から、背面部に取り付けられた左右の脇部を、さらに展開した状態を示す写真である。
図6】護身用着衣101を、図5の展開状態から上下方向に反転することにより、着用者の肩にショルダーベルトを載せた装着途中の状態を仮想的に示す写真である。
図7】護身用着衣101を、図7に示した装着途中の状態から、左右の脇部を着用者の腹側に巻き込むことにより、装着を完了させた状態を仮想的に示す写真である。
図8】扁平形状の防刃素材を、背面部の内部ポケットに配置した状態を示す写真である。
図9】扁平形状の防刃素材を、脇部の内部ポケットに配置した状態を示す写真である。
図10図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図11図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図12図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図13図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図14図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図15図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図16図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図17図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図18図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、正面アングルで示す写真である。
図19図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図20図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図21図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図22図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図23図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図24図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図25図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図26図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図27図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図28図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図29図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図30図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図31図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図32図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図33図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図34図1の実施形態(護身用着衣101)を装着する別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図35図1の実施形態(護身用着衣101)を装着するさらに別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図36図1の実施形態(護身用着衣101)を装着するさらに別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図37図1の実施形態(護身用着衣101)を装着するさらに別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図38図1の実施形態(護身用着衣101)を装着するさらに別の手順の一段階を、側面アングルで示す写真である。
図39】トートバッグの形態に折り畳まれた本発明の他の実施形態(護身用着衣102)の背面部を、正面から見た写真である。
図40】トートバッグの形態に折り畳まれた護身用着衣102の背面部を、背面部の背後にある前面部から引きはがし、展開した状態を示す写真である。
図41】護身用着衣102を、図40の展開状態から、背面部に取り付けられた左右の脇部を、さらに展開した状態を示す写真である。
図42】護身用着衣101を、図41の展開状態から上下方向に反転することにより、着用者の肩にショルダーベルトを載せた装着途中の状態を仮想的に示す写真である。
図43】護身用着衣101を、図42に示した装着途中の状態から、左右の脇部を着用者の腹側に巻き込むことにより、装着を完了させた状態を仮想的に示す写真である。
図44】袋本体からなる前面部1を備えた本発明の護身用着衣を収納袋の形態に折り畳んだ状態を概略的に示す左側面図である。
図45】袋本体からなる前面部1を備えた本発明の護身用着衣を着用した状態を概略的に示す左側面図である。
図46】袋本体からなる背面部2を備えた本発明の護身用着衣を収納袋の形態に折り畳んだ状態を概略的に示す左側面図である。
図47】袋本体からなる背面部2を備えた本発明の護身用着衣を着用した状態を概略的に示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の護身用着衣は、収納袋の形態に折り畳むことができる護身用着衣であって、 着用者の身体の腹側、背中側及び左右の腋をそれぞれ保護する前面部、背面部及び左右の脇部、並びに、前記前面部の上端又はその近傍と前記背面部の上端又はその近傍を接続し、着用者の左右の肩それぞれの上に載る左右のショルダーベルトを備え、
前記前面部は、収納袋の状態では前記背面部と対面し、護身用着衣の着用時には外表面となる第1表面、及び、収納袋の状態では外表面となり、護身用着衣の着用時には着用者の身体と接触する第2表面を備え、
前記背面部は、収納袋の状態では前記前面部と対面し、護身用着衣の着用時には外表面となる第1表面、及び、収納袋の状態では外表面となり、護身用着衣の着用時に着用者の身体と接触する第2表面を備え、
前面部又は背面部のうちの一方は、前記第1表面を有する第1壁部及び前記第2表面を有する第2壁部を備え、少なくとも第1壁部及び第2壁部によって取り囲まれた袋状の内部空間を有する袋本体からなり、
前記前面部の第1表面、前記背面部の第1表面、又は、その両方に、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構が設けられており、
前記右脇部は着用者基準で背面部の右側に、及び、前記左脇部は着用者基準で背面部の左側に取り付けられており、
左右の脇部それぞれの表面かつ護身用着衣の着用時に前面部と対面し接触する領域、前面部の表面かつ護身用着衣の着用時に脇部の先端部又はその近傍と対面し接触する領域、又は、その両方に、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構が設けられており、
前記前面部、背面部及び左右の脇部は、防刃能力を有する部材からなるか、又は、防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の護身用着衣は、着用者の身体の腹側を保護する前面部、又は、背中側を保護する背面部のどちらが袋本体であってもよい。
【0009】
護身用着衣の袋本体は、前記第1壁部及び前記第2壁部それぞれの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手を備えていてもよい。袋本体の上端に持ち手を設けることにより、収納袋の携帯に折りたたんだ時にトートバッグ等の鞄として使用することができる。
【0010】
前記の防刃能力を有する部材は、防刃性を有する素材からなる部材、又は、防刃性を有する素材を内側に配置又は外側に取り付けた部材とすることができる。
また、防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材は、防刃性を有する素材を配置することができる内部空間を有する部材、又は、防刃性を有する素材を取り付けることができる構造を外側に有する部材とすることができる。
【0011】
前記背面部は、当該背面部の下端又はその近傍に、背面部を掴みやすくするハンドルを備えていてもよい。
また、前記左右の脇部は、当該脇部の先端又はその近傍に、脇部を掴みやすくするハンドルを備えていてもよい。
【0012】
本発明の護身用着衣を、図面を参照しつつ以下に詳しく説明する。図中、異なる実施形態間で共通する部分には、同じ符号を付す。
なお護身用着衣に関して「上」、「下」、「右」、「左」とは、着用者が護身用着衣を装着した状態で、着用者を中心として、つまり着用者から見て特定される上下左右の位置関係を意味するものである。
【0013】
図44及び図45は、袋本体からなる前面部1を備えた本発明の護身用着衣の構造を概略的に示す図である。図44は収納袋の形態に折り畳んだ状態を左側から見た図であり、図45は収納袋の形態から展開し、着用した状態を左側から見た図である。
この例の護身用着衣は、着用者の腹側を保護する前面部1、着用者の背中側を保護する背面部2、着用者の左右の腋を保護する左右の脇部3、及び、着用者の左右の肩の上に載る左右のショルダーベルト4を備えている。図44及び図45では、左右の脇部3のうち左の脇部3bのみ、及び、左右のショルダーベルト4のうち左のショルダーベルト4bのみが示されている。
【0014】
前面部1は、収納袋の形態では図44に示すように背面部2と対面し、護身用着衣の着用時には図45に示すように外表面となる第1表面を有する第1壁部1a、及び、収納袋の形態では図44に示すように外表面となり、護身用着衣の着用時には図45に示すように着用者の腹側と対面し接触する第2表面を有する第2壁部1bを備えており、さらに、第1壁部1a及び第2壁部1bそれぞれの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手5a、5bを備えている。
一方、背面部2は、収納袋の形態では図44に示すように前面部1と対面し、護身用着衣の着用時には図45に示すように外表面となる第1表面2a、及び、収納袋の形態では図44に示すように外表面となり、護身用着衣の着用時には図45に示すように着用者の背中と対面し接触する第2表面2bを備えており、さらに、背面部2の左右それぞれに右脇部3a及び左脇部3bが取り付けられている。
左右のショルダーベルト4a、4bは、図44及び図45に示すように、前面部1の上端又はその近傍と背面部2の上端又はその近傍を接続しており、着用者の頭を左右のショルダーベルト4a、4bの間に通すことができる。
【0015】
図44に示すように、脇部3及びショルダーベルト4は、護身用着衣を収納袋の形態に折り畳んだ状態では前面部1と背面部2の間の空間に収納されているため、収納袋として使用する際に支障がない。
図45に示すように、護身用着衣を収納袋の形態から展開して反転させ、背面部2を着用者の背中側に移動し、左右一対のショルダーベルト4a、4bを肩に載せることにより、前面部1と背面部2を肩で支えることができる。
そして、左右の脇部3a、3bを、着用者の腹側に引きつけ、着用者の左右の腋に巻き付けることにより、護身用着衣の装着が完了する。
【0016】
図46及び図47は、袋本体からなる背面部2を備えた本発明の護身用着衣の構造を概略的に示す図である。図46は収納袋の形態に折り畳んだ状態を左側から見た図であり、図47は収納袋の形態から展開し、着用した状態を左側から見た図である。
この例の護身用着衣も、着用者の腹側を保護する前面部1、着用者の背中側を保護する背面部2、着用者の左右の腋を保護する左右の脇部3、及び、着用者の左右の肩の上に載る左右のショルダーベルト4を備えている。図46及び図47においても、左右の脇部3のうち左の脇部3bのみ、及び、左右のショルダーベルト4のうち左のショルダーベルト4bのみが示されている。
【0017】
前面部1は、収納袋の形態では図46に示すように背面部2と対面し、護身用着衣の着用時には図47に示すように外表面となる第1表面1e、及び、収納袋の形態では図46に示すように外表面となり、護身用着衣の着用時には図47に示すように着用者の腹側と対面し接触する第2表面1fを備えている。
一方、背面部2は、収納袋の形態では図46に示すように前面部1と対面し、護身用着衣の着用時には図47に示すように外表面となる第1表面を有する第1壁部2d、及び、収納袋の形態では図46に示すように外表面となり、護身用着衣の着用時には図47に示すように着用者の背中と対面し接触する第2表面を有する第2壁部2eを備えており、さらに、第1壁部2d及び第2壁部2eそれぞれの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手5a、5bを備えている。さらに背面部2の左右それぞれに、右脇部3a及び左脇部3bが取り付けられている。
左右のショルダーベルト4a、4bは、図44及び図45に示すように、前面部1の上端又はその近傍と背面部2の上端又はその近傍を接続しており、着用者の頭を左右のショルダーベルト4a、4bの間に通すことができる。
【0018】
図46に示すように、脇部3及びショルダーベルト4は、護身用着衣を収納袋の形態に折り畳んだ状態では前面部1と背面部2の間の空間に収納されているため、収納袋として使用する際に支障がない。
図47に示すように、護身用着衣を収納袋の形態から展開して反転させ、背面部2を着用者の背中側に移動し、左右一対のショルダーベルト4a、4bを肩に載せることにより、前面部1と背面部2を肩で支えることができる。
そして、左右の脇部3a、3bを、着用者の腹側に引きつけ、着用者の左右の腋に巻き付けることにより、護身用着衣の装着が完了する。
【0019】
図1図2A図2Dは、本発明の一実施形態(護身用着衣101)を示す写真である。具体的には、図1は、護身用着衣101をトートバッグの形態に折り畳んだ状態を示す写真であり、図2Aは、護身用着衣101を着用した状態(正面)を示す写真であり、図2Bは、護身用着衣101を着用した状態(右側面)を示す写真であり、図2Cは、護身用着衣101を着用した状態(左側面)を示す写真であり、図2Dは、護身用着衣101を着用した状態(背面)を示す写真である。
【0020】
図1図2A図2Dに示す護身用着衣101は、持ち手がついた収納袋の形態に折り畳むことができる護身用着衣であって、特に、袋本体からなる前面部1を備えた護身用着衣である。
より具体的には、持ち手がついた収納袋の形態に折り畳むことができる護身用着衣であって、
着用者の身体の腹側、背中側及び左右の腋をそれぞれ保護する前面部、背面部及び左右の脇部、並びに、前記前面部の上端又はその近傍と前記背面部の上端又はその近傍を接続し、着用者の左右の肩それぞれの上に載る左右のショルダーベルトを備え、
前記前面部は、護身用着衣の着用時に前面部の外表面となる表面を有する第1壁部、及び、護身用着衣の着用時に着用者の腹側と対面し接触する表面を有する第2壁部、及び、当該第1壁部及び第2壁部それぞれの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手を備え、少なくとも第1壁部及び第2壁部によって取り囲まれた袋状の内部空間を有する袋本体からなり、
前記背面部は、護身用着衣の着用時に背面部の外表面となる第1表面、及び、護身用着衣の着用時に着用者の背中側と対面し接触する第2表面を備え、
前記前面部の第1壁部の表面であって護身用着衣の着用時に前面部の外表面となる側の表面、前記背面部の第1表面、又は、その両方に、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構が設けられており、
前記右脇部は着用者基準で背面部の右側に、及び、前記左脇部は着用者基準で背面部の左側に取り付けられており、
左右の脇部それぞれの表面かつ護身用着衣の着用時に前面部と対面し接触する領域、前面部の表面かつ護身用着衣の着用時に脇部の先端部又はその近傍と対面し接触する領域、又は、その両方に、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構が設けられており、
前記前面部の第1壁部及び第2壁部のうち少なくとも一方、背面部及び左右の脇部は、防刃能力を有する部材からなるか、又は、防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材からなることを特徴としている。
【0021】
本発明の護身用着衣は、折り畳んだ状態では、持ち手がついた収納袋として用いることができる。一例として挙げた護身用着衣101は、図1及び図3に示すように、側部と底部に袋の厚みを持たせるマチがついた縦長長方形のトートバッグとして用いられる。
図3は、折り畳んだ護身用着衣101の背面部を正面から見た写真である。図3においては、護身用着衣101がトートバッグの形態を有しており、正面中央の位置に背面部2、より詳しくは、護身用着衣の着用時に着用者の背中側と対面し接触する第2表面2b(すなわち、袋の形態に折り畳んだ状態で、外表面となる側の表面)が見えており、上部の位置に持ち手5、より詳しくは、前面部の第1壁部に取り付けた持ち手5a及び前面部の第2壁部に取り付けた持ち手5bが見えており、下部の位置に前面部の底部マチ1d 及び背面部のハンドル2cが見えている。
【0022】
図4は、トートバッグの形態に折り畳まれた護身用着衣101の背面部2を、背面部の下端又はその近傍に取り付けられたハンドル2cを掴んで引き上げることにより、背面部の背後にある前面部1から引きはがし、展開した状態を示す写真である。
図4においては、上部の位置に背面部2、より詳しくは、護身用着衣の着用時に背面部の外表面となる第1表面2a(すなわち、袋の形態に折り畳んだ状態で、前面部と対面する側の表面)が見えており、下部の位置に前面部1、より詳しくは、護身用着衣の着用時に前面部の外表面となる表面(すなわち、袋の形態に折り畳んだ状態で、背面部と対面する側の表面)を有する第1壁部1aが見えており、背面部2の上端又はその近傍と前面部1の上端又はその近傍は、ショルダーベルト4、より詳しくは、右のショルダーベルト4a、左のショルダーベルト4bにより接続されている。
前面部、背面部、左右の脇部の外皮素材としては、ナイロン、帆布、綿、デニム素材等、トートバッグ等の生地として通常用いられているものを用いることができる。
ショルダーベルトは、ナイロンテープ等、肩への荷重が分散する扁平な生地を用いて形成することが好ましい。
【0023】
前面部1は、護身用着衣の着用時に前面部の外表面となる表面(すなわち、袋の形態に折り畳んだ状態で、背面部と対面する側の表面)を有する第1壁部1a、及び、護身用着衣の着用時に着用者の腹側と対面し接触する表面(すなわち、袋の形態に折り畳んだ状態で外表面となる側の表面)を有する第2壁部1b、第1壁部1aの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手5a、及び、第2壁部1bの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手5bを備え、少なくとも第1壁部1a及び第2壁部1bによって取り囲まれた袋状の内部空間(収納空間)を有する袋本体からなる。
図示されている護身用着衣101の前面部1は、第1壁部1a及び第2壁部1bだけでなく、左右の側部マチ1c及び底部マチ1dを備えており、これらによって取り囲まれた袋状の内部空間(収納空間)が形成されている。
持ち手5aは、ひも等の変形自由な細長い素材の両端が、前面部1の第1壁部1aの上端部又はその近傍に接続してなる、変形自由な半環状の部材であり、当該持ち手5aと持ち手5aが接続している第1壁部1aの上端部又はその近傍の部分は、閉鎖環を形成する。同様に、持ち手5bも、当該持ち手5bと持ち手5bが接続している第2壁部1bの上端部又はその近傍の部分は、閉鎖環を形成する。
なお、図4においては、前面部1の第1壁部1a及び底部マチ1dが見えているが、前面部1の第2壁部1b及び左右の側部マチ1cは第1壁部の背後に隠れていて、全く見えない。図4においては、前面部1の第1壁部に取り付けられた持ち手5aは良く見えるが、前面部1の第2壁部に取り付けられた持ち手5bは、第1壁部の持ち手5aの背後に隠れていて、ほぼ見えない。
【0024】
図4に示すように、前面部1の第1壁部1aの表面であって護身用着衣の着用時に前面部の外表面となる側の表面の上端縁、左右の側縁及び下端縁には面ファスナー6、より詳しくは、上端縁の面ファスナー6a、左右の側縁の面ファスナー6b及び下端縁の面ファスナー6c、及び、下部中央領域に設けた面ファスナー6dが設けられている。
一方、背面部2の下端又はその近傍には、背面部を掴みやすくするためのハンドル2cが取り付けられている。背面部2の第1表面2aの下端側の約半分を占める領域の上には、左右の脇部3が積み重ねられている。背面部2の第1表面2aの上端縁、左右の側縁及び下端縁には面ファスナー7、より詳しくは、上端縁の面ファスナー7a、左右の側縁の面ファスナー7b、及び、下端縁の面ファスナー7cが設けられている。
前面部1の第1壁部1aの表面であって護身用着衣の着用時に前面部の外表面となる側の表面の上端縁、左右の側縁及び下端縁に設けられた面ファスナー6(6a、6b、6c)と、背面部2の第1表面2aの上端縁、左右の側縁及び下端縁に設けられた面ファスナー7(7a、7b、7c)は、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構を構成している。前面部1と背面部2は、本発明の護身用着衣がトートバッグの形態に折り畳まれた状態において、上記面ファスナー6と面ファスナー7からなる着脱自在機構により圧着するため、前面部1と背面部2の間に形成された空間がポケットとなり、左右の脇部3及び左右のショルダーベルト4が当該ポケットに収納される。
【0025】
図5は、護身用着衣101を、図4の展開状態から、背面部に取り付けられた左右の脇部を、さらに展開した状態を示す写真である。
図5においては、背面部2の第1表面2aの側縁よりもやや内側の位置であって、かつ、下端側の約半分を占める領域に、左右の脇部3、詳しくは、右の脇部3a及び左の脇部3bが取り付けられている状態が見える。左右の脇部3の先端又はその近傍には、脇部を掴みやすくするハンドル、詳しくは、右脇部のハンドル3c及び左脇部のハンドル3dが取り付けられている。さらに、左右の脇部3の先端又はその近傍の表面であって、護身用着衣の着用時に前面部2の外表面となる第1壁部1aと対面し接触する領域に、護身用着衣の脇部3を着用者の胴体に巻き付けるための面ファスナー、詳しくは、右脇部の面ファスナー3e及び左脇部の面ファスナー3fが設けられている。
右脇部に設けた面ファスナー3e及び左脇部に設けた面ファスナー3fと、前面部1の第1壁部の左右側縁に設けた面ファスナー6b及び前面部1の第1壁部の下部中央領域に設けた面ファスナー6dは、互いを着脱自在に接続する着脱自在機構を構成している。
【0026】
図6は、護身用着衣101を、図5の展開状態から上下方向に反転することにより、着用者の肩にショルダーベルトを載せた装着途中の状態を仮想的に示す写真である。
図6に示すように、着用者の頭部を、前面部1の第1壁部1aの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手5aにより形成された閉鎖環、及び、前面部1の第2壁部1bの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手5bにより形成された閉鎖環の中に通して、持ち手5a及び5bを着用者の首に掛け、さらに、背面部2を上下方向に反転して着用者の背中側に移動し、左右一対のショルダーベルト4a、4bを肩に載せる。
【0027】
図7は、護身用着衣101を、図6に示した装着途中の状態から、左右の脇部を前方に巻き込むことにより、装着を完了させた状態を仮想的に示す写真である。
図7に示すように、左右の脇部3(3a、3b)それぞれのハンドル3c、3dを掴み、着用者の腹側に引きつけ、着用者の左右の腋に巻き付け、左右の脇部3(3a、3b)それぞれに設けた面ファスナー3e、3fを、前面部1の第1壁部の左右側縁に設けた面ファスナー6b又は前面部1の第1壁部の下部中央領域に設けた面ファスナー6dと圧着することにより、左右の脇部3(3a、3b)と前面部1の第1壁部1aとが接続する。その結果、護身用着衣101の装着手順が完了する。
護身用着衣101は、ベストのような形態となって、着用者の胴部に装着される。装着状態において、護身用着衣の前面部1は着用者の身体の腹側を保護し、護身用着衣の背面部2は着用者の身体の背中側を保護し、護身用着衣の左右の脇部3a、3bは着用者の身体の左右の腋を保護する。
また、装着状態においても、前面部1は袋本体の形状及び構造を維持しているため、収納袋として機能する。
【0028】
本発明の護身用着衣は、着用時において、前面部1、背面部2及び左右の脇部3a、3bが防刃能力を備えていることが必要とされる。そのため、前面部1の第1壁部及び第2壁部のうち少なくとも一方、背面部及び左右の脇部は、防刃能力を有する部材からなるものであるか、又は、防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材からなるものである。
護身用着衣の前面部1、背面部2及び左右の脇部3a、3bのうち一部又は全てが、防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材からなる場合には、護身用着衣の着用前に、防刃能力を有する部材を付加しておく必要がある。
【0029】
前記の防刃能力を有する部材は、防刃性を有する素材を内側に配置又は外側に取り付けた部材とすることができる。例えば、前面部、背面部、左右の脇部としては、外皮を縫製するなどしてポケット状の内部空間が形成されており、当該内部空間に、防刃性能を有する素材を配置した部材を用いることができる。
防刃能力を有する素材としては、例えば、アラミド繊維防刃生地、高強度ポリエチレン繊維防刃生地等を用いることができる。
アルミニウム板や樹脂板も、1.0mm~2.0mm程度の厚さを有するものであれば、十分な防刃能力を期待することができるので、防刃素材として用いることができる。
本やノート等の紙製品も、単体で厚みのあるものや重ねて合わせて厚みを増したものであれば、ある程度の防刃性能を得ることができるので、防刃素材として用いることができる。
【0030】
防刃性能を有する素材は、刃物による攻撃を受けたときに身体の広範囲を防護するために、前面部、背面部、左右の脇部の大部分をカバーできる大面積の扁平形状であることが好ましい。
図8は、扁平形状の防刃素材9を、護身用着衣101の背面部2の内部ポケットに配置した状態を示す写真である。図9は、扁平形状の防刃素材9を、護身用着衣101の脇部3の内部ポケットに配置した状態を示す写真である。図8及び図9においては、背面部2及び脇部3の内部ポケットに、それらの部材の外寸形状の投影像から算出される面積の90%以上の面積を有する扁平な防刃素材を配置したことにより、十分な防刃能力を期待することができる。
【0031】
また、前記の防刃能力を有する部材は、上記のような防刃性を有する素材そのものからなる部材とすることができる。特に、防刃性を有する素材そのものからなる部材とする場合には、アラミド繊維防刃生地、高強度ポリエチレン繊維防刃生地等の柔軟な生地が好適である。
【0032】
また、防刃能力を有する部材を付加することができる手段を備えた部材は、防刃性を有する素材を配置することができる内部空間を有する部材、又は、防刃性を有する素材を取り付けることができる構造を外側に有する部材とすることができる。
【0033】
次に、本発明の護身用着衣の装着手順について説明する。装着手順は、特に限定されないが、例えば、折り畳まれている護身用着衣の持ち手を首に掛けて吊るした状態で、両手を使って護身用着衣を展開し、身体に装着する方法や、折り畳まれている護身用着衣の持ち手を口にくわえて吊るした状態で、両手を使って護身用着衣を展開し、身体に装着する方法や、折り畳まれている護身用着衣の持ち手を首に掛けた状態或いは口にくわえて吊した状態にすることなく、両手を使って護身用着衣を展開し、身体に装着する方法などがあげられる。
(1)持ち手を首に掛けて装着する方法
図10から図18は、図1の実施形態(護身用着衣101)の持ち手を首に掛けて吊るした状態で身体に装着する手順に含まれる幾つかの段階を、正面アングルで示す写真である。また、図19から図29は、同様の手順を、側面アングルで示す写真である。
図10及び図19は、開始直前の準備段階である。先ず、図11及び図20に示すように、着用者の頭部を、前面部1の第1壁部1aの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手5a、及び、前面部1の第2壁部1bの上端部又はその近傍に取り付けられた持ち手5bにより形成された閉鎖環の中に通し、持ち手5a及び5bを着用者の首に掛ける。
次に、図12及び図21から図22に示すように、背面部2の下端又はその近傍に取り付けられたハンドル2cを掴んで引き上げることにより、背面部2を、当該背面部の背後にある前面部1から引きはがし、図13及び図23に示すように、前面部1と背面部2を分離する。
次に、図14及び図24から図25に示すように、背面部2を背中側に移動させる。この段階において、一対の持ち手5a、5bが首に掛かり、一対のショルダーベルト4a、4bが着用者の肩に載り、袋本体からなる前面部1が着用者の腹側に吊り下げられ、背面部2が着用者の背中側に吊り下げられた状態となる。
次に、図15から図17及び図26から図28に示すように、左右の脇部3(3a、3b)それぞれのハンドル3c、3dを掴み、着用者の腹側に引きつけ、左右の脇部3(3a、3b)を着用者の左右の腋に巻き付け、左右の脇部3(3a、3b)それぞれに設けた面ファスナー3e、3fを、前面部1の第1壁部の左右側縁に設けた面ファスナー6b又は前面部1の第1壁部の下部中央領域に設けた面ファスナー6dと圧着することにより、左右の脇部3(3a、3b)と前面部1の第1壁部1aとを接続する。
以上の段階を経て、図18及び図29に示すように、護身用着衣101が着用者の胴体に装着される。
この手順は、装着途中の動作が安定し、かつ両手を自由に使えることから、容易かつ迅速に装着を行うことができる。
この手順による場合、持ち手5a及び持ち手5bは、持ち手によって形成される閉鎖環の中に着用者の頭部を通すことができる寸法に形成される。日本人の成人を基準として考えると、通常、持ち手5a、5bの、前面部1の上端、より詳しくは、第1壁部又は第2壁部の上端から突出している部分の長さが60cm以上であれば、持ち手によって形成される閉鎖環の中に着用者の頭部を通すことができる。
【0034】
(2)持ち手を口にくわえて装着する方法
図30から図34は、図1の実施形態(護身用着衣101)の持ち手を、口にくわえて吊るした状態で身体に装着する手順に含まれる幾つかの段階を示す写真である。
この手順による場合、着用時に護身用着衣の持ち手によって形成される閉鎖環の中に着用者の頭部を通す必要がないため、装着状態において、持ち手を着用者の首に掛けない状態とすることができる。
【0035】
(3)持ち手を首に掛けた状態或いは口にくわえて吊した状態にすることなく装着する方法
図35から図38は、図1の実施形態(護身用着衣101)の持ち手を、首に掛けた状態或いは口にくわえて吊るした状態にすることなく身体に装着する手順に含まれる幾つかの段階を示す写真である。
【0036】
図39乃至図43は、本発明の他の実施形態(護身用着衣2)を示す写真である。具体的には、図39は、折り畳んだ護身用着衣102の背面部を正面から見た写真である。図40は、トートバッグの形態に折り畳まれた護身用着衣102の背面部2を、背面部の下端又はその近傍に取り付けられたハンドル2cを掴んで引き上げることにより、背面部の背後にある前面部1から引きはがし、展開した状態を示す写真である。図41は、護身用着衣102を、図40の展開状態から、背面部に取り付けられた左右の脇部を、さらに展開した状態を示す写真である。図42は、護身用着衣102を、図41の展開状態から上下方向に反転することにより、着用者の肩にショルダーベルトを載せた装着途中の状態を仮想的に示す写真である。図43は、護身用着衣102を、図42に示した装着途中の状態から、左右の脇部を前方に巻き込むことにより、装着を完了させた状態を仮想的に示す写真である。
【0037】
護身用着衣2の構成は、前記した護身用着衣1とほぼ同じであるが、面ファスナーの幅が広いこと、持ち手5とショルダーベルト4の長さを調節することができること、及び、袋本体の上部収納口にホック10が設けられていることが異なる。以下に、護身用着衣1と相違する部分のみ説明する。
図42に示すとおり、護身用着衣2の各所に設けられた面ファスナーの幅は、護身用着衣1と比べて広い。面ファスナーの設置面積を大きくすることによって、護身用着衣が広範囲の身体寸法に適合して着用者の胴部と適度に密着し、かつ、面ファスナーの接続部分が剥がれにくくなるため、小柄な着用者から大柄な着用者まで、着用者の体格を問わず護身用着衣2の防護性能を向上させることができる。
【0038】
面ファスナーの設置面積を大きくすることによって、着用者の体格を問わず護身用着衣の防護性能を向上させるという上記の観点から、前面部1の第1壁部の下部中央領域の面ファスナーは、少なくとも、前面部1の第1壁部の両側縁の中間点を結ぶ線で表される位置(図42中、直線L1で表される位置)から、第1壁部の側縁長さの3分の1に相当する距離だけ下方へ移動した位置(図42中、直線L2で表される位置)に挟まれた領域内に設けることが好ましく、さらに下側の領域も含む広い範囲に設けることがより好ましく、第1壁部の中間点を結ぶ線で表される位置(図42中、直線L1で表される位置)から下端までに亘る領域(すなわち第1壁部の下側半分の領域)に設けることが特に好ましい。
面ファスナーは、前面部1の第1壁部の両側縁の中間点を結ぶ線で表される位置(図42中、直線L1で表される位置)から下方に広がる領域内の全体に亘り隙間なく設ける必要はなく、断続的に設けることもできるが、当該領域における面ファスナーの面積占有率を、ある程度大きくすることが好ましい。
具体的には、前面部1の第1壁部の両側縁の中間点を結ぶ線で表される位置(図42中、直線L1で表される位置)から、第1壁部の側縁長さの3分の1に相当する距離だけ下方へ移動した位置(図42中、直線L2で表される位置)に挟まれた領域、又は、前面部1の第1壁部の両側縁の中間点を結ぶ線で表される位置(図42中、直線L1で表される位置)から、第1壁部の下端までの領域の面積を100%としたときに、対応する領域内において左右側縁部の面ファスナー6b及び下部中央領域の面ファスナー6dが設置された面積の合計は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0039】
左右の脇部3a、3bの先端又はその近傍に設けられる面ファスナー3e、3fとしては、前面部1の第1壁部の下部中央領域に設けられた面ファスナー6dにしっかりと接合させる観点から、脇部先端の辺縁と平行に、幅3.0cm~6.0cmの面ファスナーを設けることが好ましい。
【0040】
図40に示すとおり、護身用着衣2の前面部と背面部を接続する左右のショルダーベルト4a、4bは、ショルダーベルト長さ調節具4cを備えている。また、図39に示すとおり、護身用着衣2の前面部の第1壁部及び第2壁部に取り付けた持ち手5a、5bは、持ち手長さ調節具5cを備えている。
ショルダーベルト4a、4bの長さは、護身用着衣の身体への密着性に影響する。また、着用時に着用者の頭部を持ち手により形成された閉鎖環の中に通し、持ち手を着用者の首に掛ける場合には、持ち手5a及び5bの長さも、護身用着衣を着用したときの身体への密着性に影響する。
ショルダーベルト長さ調節具4c及び持ち手長さ調節具5cを設けることによって、護身用着衣が広範囲の身体寸法に適合して着用者の胴部と適度に密着するため、着用者の体格を問わず護身用着衣2の防護性能を向上させることができる。
【0041】
図40に示すとおり、護身用着衣2は、前面部の第1壁部及び第2壁部の上端中央部に、袋本体の上部収納口を開閉するための機構としてホック10が設けられている。この例では、第1壁部の上端中央部に取り付けた係合リング10aと、図面上は視認できない第2壁部の上端中央部に取り付けた係合鉤10bが対となってホック10が構成される。開閉機構はホックに限定されず、ファスナーのように収納口を完全に閉止できるものであってもよく、袋の開閉機構として一般的に知られるものを適宜採用することができる。
袋本体の上部収納口に開閉機構を設けることによって、護身用着衣を急いで着用する時でも袋本体の内容物が意図せずに飛び出すことが防止されるため、迅速かつ確実に防護用着衣を着用することができ、危機回避性能が向上する。
【符号の説明】
【0042】
101:護身用着衣
1:前面部
1a:前面部の第1壁部
1b:前面部の第2壁部
1c:左右の側部マチ
1d:底部マチ
1e:前面部の第1表面
1f:前面部の第2表面
2:背面部
2a:背面部の第1表面
2b:背面部の第2表面
2c:背面部のハンドル
2d:背面部の第1壁部
2e:背面部の第2壁部
3:左右の脇部
3a:右の脇部
3b:左の脇部
3c:右脇部のハンドル
3d:左脇部のハンドル
3e:右脇部に設けた面ファスナー
3f:左脇部に設けた面ファスナー
4:ショルダーベルト
4a:右のショルダーベルト
4b:左のショルダーベルト
4c:ショルダーベルト長さ調節具
5:持ち手
5a:前面部の第1壁部に取り付けた持ち手
5b:前面部の第2壁部に取り付けた持ち手
5c:持ち手長さ調節具
6:前面部に設けた面ファスナー
6a:前面部の第1壁部の上端縁に設けた面ファスナー
6b:前面部の第1壁部の側縁に設けた面ファスナー
6c:前面部の第1壁部の下端縁に設けた面ファスナー
6d:前面部の第1壁部の下部中央領域に設けた面ファスナー
7:背面部に設けた面ファスナー
7a:背面部の第1表面の上端縁に設けた面ファスナー
7b:背面部の第1表面の側縁に設けた面ファスナー
7c:背面部の第1表面の下端縁に設けた面ファスナー
8:左右の脇部に設けた面ファスナー
9:防刃素材
10:ホック
10a:係合リング
10b:係合鉤
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47