(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003349
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】信号処理装置および信号処理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241226BHJP
H02H 3/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02H3/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090821
(22)【出願日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2023102037
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉村 隆志
【テーマコード(参考)】
5G064
5G142
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AB03
5G064AC05
5G064CB06
5G064CB16
5G064DA02
5G064DA03
5G142BB02
5G142BD03
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる手法によってマージングユニットに電圧信号を供給する。
【解決手段】信号処理装置(1)は、電力設備(1000)内の測定対象物(ST)に生じる電気信号に対応する第1電圧信号を出力するセンサ(10)と、電力設備(1000)内のプロセスバス(PB)に接続可能なマージングユニット(30)と、センサ(10)とマージングユニット(30)との間に位置している信号変換ユニット(20)と、を備えている。信号変換ユニット(20)は、センサ(10)から取得した上記第1電圧信号を、上記第1電圧信号よりも大きい振幅を有する第2電圧信号へと変換し、上記第2電圧信号をマージングユニット(30)に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力設備内の測定対象物に生じる電気信号に対応する第1電圧信号を出力するセンサと、
上記電力設備内のプロセスバスに接続可能なマージングユニットと、
上記センサと上記マージングユニットとの間に位置している信号変換ユニットと、を備えており、
上記信号変換ユニットは、
上記センサから取得した上記第1電圧信号を、上記第1電圧信号よりも大きい振幅を有する第2電圧信号へと変換し、
上記第2電圧信号を上記マージングユニットに供給する、信号処理装置。
【請求項2】
上記信号変換ユニットは、
上記センサから取得した上記第1電圧信号を電流信号へと変換し、
上記電流信号を上記第2電圧信号へと変換する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
上記電流信号は、オフセットされた交流信号である、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
上記電流信号に基づいて、上記測定対象物における異常を検出する、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
上記センサは、ロゴスキーコイル方式のCTであり、
上記電気信号は、上記測定対象物に流れる電流である、請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
上記センサは、容量分圧方式のVTであり、
上記電気信号は、上記測定対象物に印加される電圧である、請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
上記センサと上記信号変換ユニットとの間の距離は、10cm以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
上記マージングユニットは、
アナログ信号としての上記第2電圧信号に対してAD変換を行うことにより、上記電気信号に対応するデジタル信号を生成し、
上記デジタル信号に対する信号処理を行うことにより、上記電気信号のサンプリングデータを生成し、
上記プロセスバスを介して、上記サンプリングデータを上記信号処理装置の外部に出力する、請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理装置と、
上記信号処理装置の外部に位置しているサブ信号変換ユニットと、を備えている信号処理システムであって、
上記サブ信号変換ユニットは、上記センサに対して、前記信号変換ユニットと並列に接続されており、
上記サブ信号変換ユニットは、上記センサから取得した上記第1電圧信号を、モニタ信号へと変換する、信号処理システム。
【請求項10】
上記サブ信号変換ユニットは、上記センサから取得した上記第1電圧信号を、上記第1電圧信号よりも大きい振幅を有する第2サブ電圧信号へと変換することにより、上記モニタ信号としての上記第2サブ電圧信号を生成する、請求項9に記載の信号処理システム。
【請求項11】
上記サブ信号変換ユニットは、
上記センサから取得した上記第1電圧信号をサブ電流信号へと変換し、
上記サブ電流信号を上記第2サブ電圧信号へと変換する、請求項10に記載の信号処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、マージングユニットを有する信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力設備に関する一部の技術規格では、当該電力設備における監視制御のために、マージングユニットを利用することが提案されている。下記の特許文献1には、マージングユニットを有する保護制御システムの構成例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様の目的は、従来とは異なる手法によってマージングユニットに電圧信号を供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る信号処理装置は、電力設備内の測定対象物に生じる電気信号に対応する第1電圧信号を出力するセンサと、上記電力設備内のプロセスバスに接続可能なマージングユニットと、上記センサと上記マージングユニットとの間に位置している信号変換ユニットと、を備えており、上記信号変換ユニットは、上記センサから取得した上記第1電圧信号を、上記第1電圧信号よりも大きい振幅を有する第2電圧信号へと変換し、上記第2電圧信号を上記マージングユニットに供給する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、従来とは異なる手法によってマージングユニットに電圧信号を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1における信号処理装置の構成例を示す。
【
図3】比較例としての信号処理装置の構成例を示す。
【
図4】実施形態2における信号処理装置の構成例を示す。
【
図5】実施形態3における信号処理システムの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、実施形態1の信号処理装置1について説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明したコンポーネント(構成要素)と同じ機能を有するコンポーネントについては、以降の各実施形態では同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。簡潔化のため、公知の技術事項についても説明を適宜省略する。
【0009】
本明細書において述べる各コンポーネントおよび各数値はいずれも、内容上矛盾のない限り、単なる例示である。それゆえ、内容上矛盾のない限り、例えば各コンポーネントの位置関係および接続関係は各図の例に限定されない。また、各図は必ずしもスケール通りに図示されていない。本明細書では、特に矛盾のない限り、2つの数AおよびBについての表記「A~B」は、「A以上かつB以下」を表す。
【0010】
(信号処理装置1の構成例)
図1は、信号処理装置1の構成例を示す。
図1には、信号処理装置1およびその周辺の構成が、ブロック図として概略的に示されている。
図1に示す通り、電力設備1000の内部には、信号処理装置1と測定対象物STと外部演算装置900とが位置している。電力設備1000は、例えばデジタル変電所であってよい。
【0011】
測定対象物STは、信号処理装置1(より具体的には、以下に述べるセンサ10)によって測定可能な電気信号SG0が生じる物体であればよい。一例として、測定対象物STは、電力設備1000内の任意の電気機器(例:スイッチギア)の電力線であってよい。外部演算装置900は、信号処理装置1の外部に位置している任意の演算装置であってよい。一例として、外部演算装置900は、IED(Intelligent Electronic Device)であってよい。
【0012】
図1に示す通り、信号処理装置1は、センサ10と信号変換ユニット20とマージングユニット30とを備えている。センサ10は、測定対象物STに生じる電気信号SG0に対応する第1電圧信号SG1を出力する。実施形態1では、電気信号SG0は、アナログ交流信号であるものとする。電気信号SG0などの例については、後述の
図2を参照されたい。
【0013】
実施形態1では、電気信号SG0が、測定対象物STに流れる電流である場合を例示する。したがって、実施形態1におけるセンサ10は、電流センサであってよい。一例として、センサ10は、CT(Current Transformer)であってよい。
【0014】
実施形態1におけるセンサ10は、測定対象物STに流れる電流に対応する第1電圧信号SG1を出力する。一例として、センサ10は、ロゴスキーコイル方式のCTであってよい。当業者にとって既知の通り、ロゴスキーコイル方式のCTは、測定対象物STに流れる電流の微分波形を、第1電圧信号SG1として出力する。
【0015】
マージングユニット30は、電力設備1000内のプロセスバスPBに接続可能であればよい。したがって、
図1に示す通り、外部演算装置900は、プロセスバスPBを介して、マージングユニット30に接続されていてよい。
【0016】
信号処理装置1において、信号変換ユニット20は、センサ10とマージングユニット30との間に位置している。信号変換ユニット20は、センサ10から第1電圧信号SG1を取得する。そして、信号変換ユニット20は、第1電圧信号SG1を、当該第1電圧信号SG1よりも大きい振幅を有する第2電圧信号SG2へと変換する。(
図2も参照)。次いで、信号変換ユニット20は、第2電圧信号SG2をマージングユニット30に供給する。
【0017】
一例として、信号変換ユニット20は、第1電圧信号SG1を電流信号SGMに変換してよい。次いで、信号変換ユニット20は、電流信号SGMを第2電圧信号SG2へと変換してよい。
【0018】
したがって、例えば、信号変換ユニット20は、第1変換部21および第2変換部22を有していてよい。
図1の例では、第1変換部21は、センサ10から取得した第1電圧信号SG1を、電流信号SGMに変換する。第2変換部22は、第1変換部21から取得した電流信号SGMを、第2電圧信号SG2へと変換する。第2変換部22は、第2電圧信号SG2を、マージングユニット30に供給する。
【0019】
図2は、実施形態1における各信号波形の例を示す。
図2では、電気信号SG0、第1電圧信号SG1、電流信号SGM、および第2電圧信号SG2の波形の例が示されている。当業者であれば明らかである通り、電気信号SG0は、かなり大きい振幅を有しうる。
図2の例における電気信号SG0の振幅は、概ね1000Aである。
【0020】
一般的に、マージングユニット30の耐電圧および耐電流の性能はそれほど高くない。そこで、信号処理装置1では、センサ10によって、電気信号SG0は、より微弱な電気信号である第1電圧信号SG1へと変換される。一例として、第1電圧信号SG1の振幅は、数mV以上かつ数V以下であってよい。
【0021】
図2の例では、センサ10は、振幅1000Aの交流電流を、振幅10mVの交流電圧に変換するように構成されている。センサ10における、入力(例:電気信号SG0)から出力(第1電圧信号SG1)への変換倍率は、当該入力の振幅の定格値に応じて設定されていてよい。
【0022】
そして、信号処理装置1では、信号変換ユニット20によって、第1電圧信号SG1は、マージングユニット30への入力により適した第2電圧信号SG2へと変換される。マージングユニット30は、数V~数10V程度の振幅を有する電圧を受け付けるように設計されていることが一般的である。
【0023】
そこで、上述の通り、実施形態1では、第2電圧信号SG2の振幅は、第1電圧信号SG1の振幅よりも大きく設定されている。したがって、信号変換ユニット20は、任意の種類の増幅回路を含んでいてよい。一例として、第2電圧信号SG2の振幅は、数V以上かつ20V以下であってよい。
【0024】
上述の通り、第1電圧信号SG1は、電流信号SGMへの変換を介して、第2電圧信号SG2へと変換されてもよい。電流信号SGMへの変換を介して、第1電圧信号SG1を第2電圧信号SG2へと変換することにより、信号変換ユニット20内の信号伝送時におけるノイズの影響が低減された第2電圧信号SG2を得ることができる。
【0025】
図2に示す通り、電流信号SGMは、オフセットされた交流信号であってよい。したがって、第1変換部21は、任意の種類の電圧・電流変換回路を含んでいてよい。例えば、第1変換部21は、オフセットされた交流電流を、第1電圧信号SG1に基づいて生成できるように構成されていてよい。
【0026】
図2の例では、第1変換部21は、振幅10mVの交流電圧を、オフセット値12mAかつ振幅8mAの交流電流に変換するように構成されている。したがって、測定対象物STに振幅1000Aの電流が流れている場合、電流信号SGMは、理想的には4mA~20mAの値をとる。
【0027】
その一方、例えば、測定対象物STに異常が生じている場合には、電気信号SG0の絶対値が小さくなることが考えられる。この場合、電流信号SGMの値が4mAよりも小さくなりうる。別の例として、測定対象物STに異常が生じている場合には、電気信号SG0の絶対値が大きくなることも考えられる。この場合、電流信号SGMの値が20mAよりも大きくなりうる。
【0028】
したがって、電流信号SGMがオフセットされた交流信号である場合には、信号処理装置1は、当該電流信号SGMに基づいて、測定対象物STにおける異常を検出してよい。例えば、信号処理装置1は、電流信号SGMの値が所定の範囲内から逸脱した場合には、測定対象物STに異常が生じていると判定してよい。
【0029】
一例として、信号処理装置1は、電流信号SGMに基づいて測定対象物STにおける異常を検出する異常検出部(不図示)を、信号変換ユニット20の内部に有していてよい。別の例として、信号処理装置1は、当該異常検出部を信号変換ユニット20の外部に有していてもよい。
【0030】
第2変換部22は、任意の種類の電流・電圧変換回路を含んでいてよい。第2変換部22は、第2電圧信号SG2を、オフセットされた交流電流に基づいて生成できるように構成されていてよい。
図2の例では、第2変換部22は、振幅8mAの交流電流を、振幅10Vの交流電圧に変換するように構成されている。
【0031】
以上の通り、センサ10および信号変換ユニット20によれば、振幅1000Aの交流電流(例:電気信号SG0)に対応する信号として、振幅10Vの交流電圧(例:第2電圧信号SG2)が得られる。
【0032】
ところで、上述の通り、第1電圧信号SG1は、かなり微弱な電気信号となりうる。このため、第1電圧信号SG1に対するノイズの影響を低減するために、信号変換ユニット20をセンサ10の近傍に位置させることが好ましい。
【0033】
一例として、センサ10と信号変換ユニット20とは、スイッチギアの管路内に位置していてよい。センサ10と信号変換ユニット20との間の距離は、10cm以下であってよく、好ましくは数cm以下であってよい。
【0034】
図1を再び参照する。マージングユニット30は、AD(Analog-Digital)変換部31と信号処理部32と出力部33とを有していてよい。
図1の例では、プロセスバスPBを介して、出力部33と外部演算装置900とが接続されている。
【0035】
AD変換部31は、アナログ信号としての第2電圧信号SG2を、信号変換ユニット20から取得する。そして、AD変換部31は、第2電圧信号SG2に対してAD変換を行うことにより、当該第2電圧信号SG2をデジタル化する。本明細書では、第2電圧信号SG2がデジタル化された信号を、デジタル信号SG2Dと称する。このように、AD変換部31は、第2電圧信号SG2に対してAD変換を行うことにより、電気信号SG0に対応するデジタル信号(例:デジタル信号SG2D)を生成する。
【0036】
信号処理部32は、デジタル信号SG2Dを、AD変換部31から取得する。そして、信号処理部32は、デジタル信号SG2Dに対する信号処理を行うことにより、電気信号SG0のサンプリングデータSMPを生成する。信号処理部32における信号処理の手法は、所定の通信規格(例:IEC61850)に合致したフォーマットを有するサンプリングデータSMPを、デジタル信号SG2Dに基づいて生成できる限り、特に限定されない。
【0037】
一例として、信号処理部32は、デジタル信号SG2Dに対する信号処理として、積分演算および補正演算を行うことにより、サンプリングデータSMPを生成してよい。積分演算は、上述の微分波形から電気信号SG0を導出(復元)するための演算の例である。
【0038】
出力部33は、サンプリングデータSMPを、信号処理部32から取得する。出力部33は、プロセスバスPBを介して、サンプリングデータSMPを信号処理装置1の外部に出力する。したがって、例えば、出力部33は、プロセスバスPBを介して、サンプリングデータSMPを外部演算装置900に出力してよい。出力部33は、上述の通信規格に合致するように設計されていてよい。これにより、出力部33は、当該通信規格に従って、プロセスバスPBを介して、サンプリングデータSMPを外部演算装置900に出力できる。
【0039】
以上の通り、電力設備1000では、測定対象物STに生じる電気信号SG0のサンプリングデータSMPが、信号処理装置1によって得られる。したがって、外部演算装置900は、信号処理装置1から供給されたサンプリングデータSMPに基づいて、測定対象物STの状態を監視できる。一例として、外部演算装置900は、サンプリングデータSMPに基づいて、測定対象物STにおける異常を検出してよい。
【0040】
(信号処理装置1の効果)
信号処理装置1の効果の説明に先立ち、比較例としての信号処理装置1rについて説明する。信号処理装置1rは、従来の信号処理装置(例:従来の電子式変成器)の一例である。
図3は、信号処理装置1rの構成例を示す。
図3は、
図1と対になる図である。
【0041】
図3に示す通り、信号処理装置1rは、センサ10とマージングユニット30との間に位置する信号変換ユニット20を有していない。このため、信号処理装置1rでは、センサ10からマージングユニット30へと第1電圧信号SG1が供給される。
【0042】
上述の通り、第1電圧信号SG1は、かなり微弱な電気信号となりうる。このため、信号処理装置1rでは、第1電圧信号SG1に対するノイズの影響を低減するために、マージングユニット30をセンサ10の近傍に位置させることが望まれる。このことから、信号処理装置1rでは、マージングユニット30の配置の自由度がそれほど高くない。
【0043】
また、信号処理装置1rにおける第1電圧信号SG1は、マージングユニット30が受け付け可能な電圧であることを要する。それゆえ、信号処理装置1rでは、センサ10の設計の自由度が、マージングユニット30の設計仕様によって制限される。このため、信号処理装置1rでは、センサ10の設計の自由度もそれほど高くない。
【0044】
その一方、信号処理装置1は、センサ10とマージングユニット30との間に位置する信号変換ユニット20を有している。それゆえ、第1電圧信号SG1よりも大きい振幅を有する第2電圧信号SG2が、信号処理装置1では、信号変換ユニット20からマージングユニット30へと供給される。このように、信号処理装置1によれば、従来とは異なる手法によってマージングユニットに電圧信号を供給できる。
【0045】
信号変換ユニット20は、センサ10とマージングユニット30との間に位置する中継装置としての役割を果たす。このため、信号処理装置1では、信号処理装置1rとは異なり、マージングユニット30をセンサ10の近傍に位置させなくともよい。したがって、信号処理装置1では、信号処理装置1rに比べ、マージングユニット30の配置の自由度が高い。
【0046】
また、信号処理装置1では、第2電圧信号SG2が、マージングユニット30が受け付け可能な電圧であればよい。このため、信号処理装置1における第1電圧信号SG1の大きさは、マージングユニット30の設計仕様によって制限されない。したがって、信号処理装置1では、信号処理装置1rに比べ、センサ10の設計の自由度も高い。
【0047】
〔実施形態2〕
図4は、実施形態2における信号処理装置1Aの構成例を示す。
図4に示す通り、信号処理装置1Aは、センサ10に替えて、センサ10Aを有している。実施形態2では、実施形態1とは異なり、電気信号SG0が、測定対象物STに印加される電圧である場合を例示する。したがって、センサ10Aは、電圧センサであってよい。一例として、センサ10Aは、VT(Voltage Transformer)であってよい。
【0048】
センサ10Aは、測定対象物STに印加される電圧に対応する第1電圧信号SG1を出力する。一例として、センサ10Aは、容量分圧方式のVTであってよい。容量分圧方式のVTは、CVT(Capacitor VT)とも称される。当業者にとって既知の通り、容量分圧方式のVTは、測定対象物STに印加される電圧の微分波形を、第1電圧信号SG1として出力する。
【0049】
当業者であれば明らかである通り、実施形態2における電気信号SG0も、かなり大きい振幅を有しうる。一例として、実施形態2における電気信号SG0の振幅は、数万V程度である。実施形態2では、センサ10Aによって、当該電気信号SG0が、より微弱な電気信号である第1電圧信号SG1へと変換される。実施形態2における第1電圧信号SG1の振幅も、数mV以上かつ数V以下であってよい。
【0050】
以上の通り、本開示の一態様における測定対象物に生じる電気信号は、電流であってもよいし、あるいは電圧であってもよい。本開示の一態様に係るセンサは、当該電気信号に対応する第1電圧信号を出力できればよい。
【0051】
〔実施形態3〕
図5は、実施形態3における信号処理システム100の構成例を示す。信号処理システム100は、本発明の一態様に係る信号処理装置(例:信号処理装置1)と、当該信号処理装置の外部に位置しているサブ信号変換ユニット120とを備えている。
図5の例では、信号処理システム100は、表示装置190をさらに備えている。
【0052】
図5に示す通り、サブ信号変換ユニット120は、信号処理装置1のセンサ10に対して、当該信号処理装置1の信号変換ユニット20と並列に接続されている。したがって、サブ信号変換ユニット120は、センサ10から第1電圧信号SG1を取得できる。
【0053】
信号処理装置1におけるセンサ10は、パッシブなコンポーネントであるので、故障が生じるおそれは比較的低いと考えられる。その一方、信号処理装置1における信号変換ユニット20およびマージングユニット30の各部は、例えば電子部品などによって具現化されているので、故障が生じるおそれがセンサ10に比べて高いと考えられる。
【0054】
あるいは、信号処理装置1の各部に故障が生じていなくとも、マージングユニット30と外部演算装置900とを接続するプロセスバスPBに故障が生じることも考えられる。プロセスバスPBは、デジタル信号(例:上述のサンプリングデータSMP)を送信する信号線であるので、故障が生じるおそれが一般的なアナログ信号線に比べて高いと考えられる。さらに別の例として、信号処理装置1およびプロセスバスPBに故障が生じていなくとも、外部演算装置900に故障が生じることも考えられる。
【0055】
以上のことから、例えば
図1の構成例では、センサ10よりも下流に位置する一部のコンポーネントに故障が生じた場合、例えば電力設備1000における作業者に、外部演算装置900を通じて測定対象物STの状態を把握させることができなくなる。
図1の構成例において生じうるこのような不利益を踏まえ、
図5の例では、サブ信号変換ユニット120がさらに設けられている。
【0056】
図5の例におけるサブ信号変換ユニット120は、センサ10から取得した第1電圧信号SG1を、モニタ信号へと変換するように構成されていればよい。モニタ信号は、例えば表示装置190におけるモニタリングに適した信号であればよい。
【0057】
したがって、サブ信号変換ユニット120における、第1電圧信号SG1に対する変換の様式は、特に限定されない。サブ信号変換ユニット120は、信号変換ユニット20と同様の様式で第1電圧信号SG1を変換してもよいし、信号変換ユニット20とは別の様式で第1電圧信号SG1を変換してもよい。
【0058】
実施形態3では、サブ信号変換ユニット120が、信号変換ユニット20と同様の様式で第1電圧信号SG1を変換する場合を例示する。したがって、
図5の例におけるサブ信号変換ユニット120は、第1サブ変換部121と第2サブ変換部122とを備えている。
【0059】
図5に示す通り、第1サブ変換部121は、センサ10から第1電圧信号SG1を取得する。
図5の例における第1サブ変換部121は、実施形態1の信号変換ユニット20における第1変換部21と対になるコンポーネントである。
【0060】
したがって、一例として、第1サブ変換部121は、センサ10から取得した第1電圧信号SG1を、サブ電流信号SGM_SUBに変換する。例えば、第1サブ変換部121は、振幅10mVの交流電圧を、オフセット値12mAかつ振幅8mAの交流電流に変換するように構成されている(実施形態1における第1変換部21についての説明を参照)。このように、サブ電流信号SGM_SUBも、上述の電流信号SGMと同じく、オフセットされた交流信号でありうる。
【0061】
図5の例における第2サブ変換部122は、実施形態1の信号変換ユニット20における第2変換部22と対になるコンポーネントである。したがって、第2サブ変換部122は、第1サブ変換部121の下流に位置している。一例として、第2サブ変換部122は、第1サブ変換部121から取得したサブ電流信号SGM_SUBを、第2サブ電圧信号SG2_SUBへと変換する。例えば、第2サブ変換部122は、振幅8mAの交流電流を、振幅10Vの交流電圧に変換するように構成されている。(実施形態1における第2変換部22についての説明を参照)。
【0062】
以上の通り、
図5の例におけるサブ信号変換ユニット120は、センサ10から取得した第1電圧信号SG1を、当該第1電圧信号SG1よりも大きい振幅を有する第2サブ電圧信号SG2_SUBへと変換する。当該第2サブ電圧信号SG2_SUBは、上述のモニタ信号の一例である。このように、サブ信号変換ユニット120は、モニタ信号としての第2サブ電圧信号SG2_SUBを生成できる。
【0063】
実施形態1の例から理解できる通り、サブ電流信号SGM_SUBへの変換を介して、第1電圧信号SG1を第2サブ電圧信号SG2_SUBへと変換することにより、サブ信号変換ユニット120内の信号伝送時におけるノイズの影響が低減された第2サブ電圧信号SG2_SUBを得ることができる。
【0064】
第2サブ電圧信号SG2_SUBは、電気信号SG0に対応している。したがって、一例として、サブ信号変換ユニット120は、生成した第2サブ電圧信号SG2_SUBを、表示装置190に出力してよい。これにより、電力設備1000における作業者は、外部演算装置900を通じて測定対象物STの状態を把握することができなくなった場合であっても、表示装置190に表示された第2サブ電圧信号SG2_SUBを視認することにより、測定対象物STの状態を概略的に把握できる。
【0065】
このため、実施形態3では、信号変換ユニット20、マージングユニット30、プロセスバスPB、および外部演算装置900の少なくともいずれかに故障が生じた場合であっても、作業者に、表示装置190を通じて測定対象物STの状態を概略的に把握させた上で、電力設備1000における所定の作業(例:スイッチギアの操作)を行わせることができる。このように、実施形態3によれば、電力設備1000における作業の安全性を高めることができる。
【0066】
図5の例では、サブ信号変換ユニット120は、所定の信号の実効値を導出する実効値導出部123をさらに備えている。実施形態3において、実効値導出部123は、モニタ信号としての第2サブ電圧信号SG2_SUBを第2サブ変換部122から取得し、当該第2サブ電圧信号SG2_SUBの実効値を導出する。したがって、サブ信号変換ユニット120は、モニタ信号の実効値を出力することもできる。
【0067】
測定対象物STの状態を作業者に概略的に把握させるだけであれば、モニタ信号の波形を当該作業者に必ず提示しなくともよいと考えられる。そこで、例えば、サブ信号変換ユニット120は、モニタ信号の実効値を、表示装置190に出力してもよい。この場合、表示装置190は、当該実効値を表示する。表示装置190を通じて作業者に当該実効値を提示することにより、当該作業者に測定対象物STの状態をより端的に把握させることができる。
【0068】
ところで、上述の
図2の例との対応性から理解できる通り、実施形態3における第2サブ電圧信号SG2_SUBの波形は、電気信号SG0の微分波形に相当する。ただし、第2サブ電圧信号SG2_SUBの実効値を導出するだけであれば、第2サブ電圧信号SG2_SUBの波形から、電気信号SG0の波形を復元することは不要である。
【0069】
したがって、サブ信号変換ユニット120では、第2サブ電圧信号SG2_SUBの波形から、電気信号SG0の波形を復元するための所定の演算(例:積分)は不要である。このため、サブ信号変換ユニット120は、比較的単純な構成によって実現できる。
【0070】
以上の通り、実施形態3によれば、信号変換ユニット20、マージングユニット30、プロセスバスPB、および外部演算装置900の少なくともいずれかの故障に対するバックアップを、比較的単純な構成によって実現できる。
【0071】
〔ソフトウェアによる実現例〕
電力設備1000(以下では、便宜的に「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0072】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0073】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0074】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の一態様の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0075】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0076】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る信号処理装置は、電力設備内の測定対象物に生じる電気信号に対応する第1電圧信号を出力するセンサと、上記電力設備内のプロセスバスに接続可能なマージングユニットと、上記センサと上記マージングユニットとの間に位置している信号変換ユニットと、を備えており、上記信号変換ユニットは、上記センサから取得した上記第1電圧信号を、上記第1電圧信号よりも大きい振幅を有する第2電圧信号へと変換し、上記第2電圧信号を上記マージングユニットに供給する。
【0077】
本発明の態様2に係る信号処理装置では、上記態様1において、上記信号変換ユニットは、上記センサから取得した上記第1電圧信号を電流信号へと変換してよく、上記電流信号を上記第2電圧信号へと変換してよい。
【0078】
本発明の態様3に係る信号処理装置では、上記態様2において、上記電流信号は、オフセットされた交流信号であってよい。
【0079】
本発明の態様4に係る信号処理装置は、上記態様3において、上記電流信号に基づいて、上記測定対象物における異常を検出してよい。
【0080】
本発明の態様5に係る信号処理装置では、上記態様1から4のいずれか1つにおいて、上記センサは、ロゴスキーコイル方式のCTであってよく、上記電気信号は、上記測定対象物に流れる電流であってよい。
【0081】
本発明の態様6に係る信号処理装置では、上記態様1から4のいずれか1つにおいて、上記センサは、分圧方式のVTであってよく、上記電気信号は、上記測定対象物に印加される電圧であってよい。
【0082】
本発明の態様7に係る信号処理装置では、上記態様1から6のいずれか1つにおいて、上記センサと上記信号変換ユニットとの間の距離は、10cm以下であってよい。
【0083】
本発明の態様8に係る信号処理装置では、上記態様1から7のいずれか1つにおいて、上記マージングユニットは、アナログ信号としての上記第2電圧信号に対してAD変換を行うことにより、上記電気信号に対応するデジタル信号を生成してよく、上記デジタル信号に対する信号処理を行うことにより、上記電気信号のサンプリングデータを生成してよく、上記プロセスバスを介して、上記サンプリングデータを上記信号処理装置の外部に出力してよい。
【0084】
本発明の態様9に係る信号処理システムは、請求項1から8のいずれか1つに係る信号処理装置と、上記信号処理装置の外部に位置しているサブ信号変換ユニットと、を備えていてよく、上記サブ信号変換ユニットは、上記センサに対して、前記信号変換ユニットと並列に接続されていてよく、上記サブ信号変換ユニットは、上記センサから取得した上記第1電圧信号を、モニタ信号へと変換してよい。
【0085】
本発明の態様10に係る信号処理システムでは、上記態様9において、上記サブ信号変換ユニットは、上記センサから取得した上記第1電圧信号を、上記第1電圧信号よりも大きい振幅を有する第2サブ電圧信号へと変換することにより、上記モニタ信号としての上記第2サブ電圧信号を生成してよい。
【0086】
本発明の態様11に係る信号処理システムでは、上記態様10において、上記サブ信号変換ユニットは、上記センサから取得した上記第1電圧信号をサブ電流信号へと変換してよく、上記サブ電流信号を上記第2サブ電圧信号へと変換してよい。
【0087】
〔付記事項〕
本発明の一態様は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一態様の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1、1A 信号処理装置
10 センサ(ロゴスキーコイル方式のCT)
10A センサ(容量分圧方式のVT)
20 信号変換ユニット
21 第1変換部
22 第2変換部
30 マージングユニット
31 AD変換部
32 信号処理部
33 出力部
100 信号処理システム
120 サブ信号変換ユニット
121 第1サブ変換部
122 第2サブ変換部
900 外部演算装置
1000 電力設備
SG0 電気信号
SG1 第1電圧信号
SG2 第2電圧信号
SGM 電流信号(オフセットされた交流信号)
ST 測定対象物
PB プロセスバス