(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025033551
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】画像読取システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20250306BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20250306BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/12 Z
H04N1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139331
(22)【出願日】2023-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】君塚 大樹
【テーマコード(参考)】
5C072
【Fターム(参考)】
5C072AA01
5C072BA15
5C072CA02
5C072DA02
5C072DA04
5C072DA12
5C072EA05
5C072EA07
5C072RA16
5C072UA13
(57)【要約】
【課題】ノイズを相対的に減少させる処理を実行することなく、読取画像をそのまま出力する場合と比較し、画質の低下を抑制する。
【解決手段】画像読取部12は、第一光源72が出射した出射光を対象物に照射し対象物で反射した反射光を第一読取センサ82で受光し読み取った読取画像を生成する表面画像読取部42と、CPU184と、を有し、CPU184は表面画像読取部42が第一白基準板68を読み取った第一読取データを受け付け、第一読取データと第一基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行い処理画像として出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が出射した出射光を対象物に照射し前記対象物で反射した反射光を受光部で受光し読み取った読取画像を生成する読取部と、
プロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記読取部が白基準を読み取った読取データを受け付け、
前記読取データと基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、前記読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行い処理画像として出力する、
読取システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記読取データと前記基準データとの差が大きい場合は小さい場合よりも前記空間フィルタのエッジ強調処理の強度を大きくする、
請求項1に記載の読取システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記空間フィルタでエッジ強調処理を行う前に、前記読取画像に対してローパスフィルターで周波数フィルタリングを行う、
請求項1に記載の読取システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記読取データと前記基準データとの差が大きい場合は小さい場合よりも前記空間フィルタのエッジ強調処理の強度を大きくする共に前記ローパスフィルターの周波数を下げる、
請求項3に記載の読取システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記読取データと前記基準データとの差が前記設定値を超えるまで前記光源の出力を定格出力よりも下げる、
請求項1に記載の読取システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記受光部が密着光学方式である場合に、前記光源の出力を定格値よりも下げる、
請求項5に記載の読取システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記光源の出力が定格出力未満の場合、前記定格出力にしたのち前記読取データと前記基準データとの差が前記設定値を超えるまで前記光源の出力を定格値よりも下げる、
請求項5に記載の読取システム。
【請求項8】
光源が出射した出射光を対象物に照射し前記対象物で反射した反射光を受光部で受光し読み取った読取画像を出力する読取部と、プロセッサと、を有する読取システムのプログラムであって、
前記読取部が白基準を読み取った読取データを受け付け、
前記読取データと基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、前記読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行った処理画像を出力する、
処理を実行させるための読取システムのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像処理装置、画像処理システム及びプログラムに関する技術が開示されている。この先行技術では、画像の複写等の機能において、CCDイメージセンサから出力される原画像信号は増幅部にて、画像信号の基準強度に基づいて設定された増幅率で増幅される。これに対し、紙指紋処理部で使用する画像信号は、増幅部で増幅せず、CCDイメージセンサから出力される原画像信号に基づいて生成する。その際、制御部は、モータ駆動回路を制御して原稿読み取りの副走査方向の速度を低下させてCCDイメージセンサでの露光量を増幅率に応じた分増加させ、原画像信号を基準強度へ引き上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源から出射された出射光が原稿等の対象物で反射された反射光を受光部で受光して対象物の読取画像を生成する。光源の経時劣化によって光量が低下し、受光部の受光量が減少するとノイズの比率が増加し読取画像のSN比が小さくなり、読取画像の画質が低下する。しかし、ノイズの比率を減少させてSN比を大きくし読取画像の画質の低下を抑制する場合、例えば、光源の出力を定格値よりも上げる処理又は読取速度を通常よりも低下させる処理等が要求される。
【0005】
本発明は、ノイズを相対的に減少させる処理を実行することなく、読取画像をそのまま出力する場合と比較し、画質の低下を抑制することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、光源が出射した出射光を対象物に照射し前記対象物で反射した反射光を受光部で受光し読み取った読取画像を出力する読取部と、プロセッサと、を有し、前記プロセッサは、前記読取部が白基準を読み取った読取データを受け付け、前記読取データと基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、前記読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行い処理画像として出力する、読取システムである。
【0007】
第二態様は、前記プロセッサは、前記読取データと前記基準データとの差が大きい場合は小さい場合よりも前記空間フィルタのエッジ強調処理の強度を大きくする、第一態様に記載の読取システムである。
【0008】
第三態様は、前記プロセッサは、前記空間フィルタでエッジ強調処理を行う前に、前記読取画像に対してローパスフィルターで周波数フィルタリングを行う、第一態様に記載の読取システムである。
【0009】
第四態様は、前記プロセッサは、前記読取データと前記基準データとの差が大きい場合は小さい場合よりも前記空間フィルタのエッジ強調処理の強度を大きくする共に前記ローパスフィルターの周波数を下げる、第三態様に記載の読取システムである。
【0010】
第五態様は、前記プロセッサは、前記読取データと前記基準データとの差が前記設定値を超えるまで前記光源の出力を定格出力よりも下げる、第一態様に記載の読取システムである。
【0011】
第六態様は、前記プロセッサは、前記受光部が密着光学方式である場合に、前記光源の出力を定格値よりも下げる、第五態様に記載の読取システムである。
【0012】
第七態様は、前記光源の出力が定格出力未満の場合、前記定格出力にしたのち前記読取データと前記基準データとの差が前記設定値を超えるまで前記光源の出力を定格値よりも下げる、第一五態様に記載の読取システム。
【0013】
第八態様は、光源が出射した出射光を対象物に照射し前記対象物で反射した反射光を受光部で受光し読み取った読取画像を出力する読取部と、プロセッサと、を有する読取システムのプログラムであって、前記読取部が白基準を読み取った読取データを受け付け、前記読取データと基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、前記読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行った処理画像を出力する、処理を実行させるための読取システムのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
第一態様の読取システムによれば、ノイズを相対的に減少させる処理を実行することなく、読取画像をそのまま出力する場合と比較し、画質の低下を抑制することができる。
【0015】
第二態様の読取システムによれば、空間フィルタのエッジ強調処理の強度が一定の場合と比較し、画質が向上する。
【0016】
第三態様の読取システムによれば、読取画像をそのまま空間フィルタでエッジ強調処理する場合と比較し、ノイズの強調が低減する。
【0017】
第四態様の読取システムによれば、ローパスフィルターの周波数が一定の場合と比較し、エッジ強調処理によるノイズの強調が低減する。
【0018】
第五態様の読取システムによれば、光源の出力が常に定格値以上の場合と比較し、光源の経時劣化が抑制される。
【0019】
第六態様の読取システムによれば、受光部が縮小光学方式の場合と比較し、エッジ強調処理によるノイズの強調が低減する。
【0020】
第七態様の読取システムによれば、光源の出力を下げたままの場合と比較し、画質の低下を抑制することができる。
【0021】
第八態様の読取システムのプログラムによれば、ノイズを相対的に減少させる処理を実行することなく、読取画像をそのまま出力する場合と比較し、画質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す画像読取部の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図1に示す裏面画像読取部の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図1に示す画像形成装置の電気系の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図1に示す画像読取部の電気系の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図1に示す画像読取部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図1に示す裏面画像読取部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図8】表面画像読取部が読み取った読取画像に対する画像処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】裏面画像読取部が読み取った読取画像に対する画像処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】表面画像読取部が読み取った読取画像に対する画像処理で使用するLUTを説明する説明図である。
【
図11】裏面画像読取部が読み取った読取画像に対する画像処理で使用するLUTを説明する説明図である。
【
図12】LUTを作成するための実験結果を説明するための説明図である。
【
図13】ノイズの悪化をエッジ強調処理で補間することを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<画像形成装置>
まず、本実施の形態に係る画像形成装置について説明する。なお、
図1に示す画像形成装置10における幅方向をX方向、高さ方向をZ方向及び奥行き方向をY方向とし、それぞれ矢印X、Y、Zで示す。
【0024】
(画像形成装置の概略構成)
図1は本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略斜視図である。
図1に示すように、画像形成装置10は、画像読取部12、画像形成部14、用紙供給部16及び操作パネル18等を備えている。
【0025】
読取システムの一例としての画像読取部12は、原稿用紙を置く原稿台22、画像が読み取られた原稿用紙が排出される原稿排出部24、原稿台22に置かれた原稿用紙を搬送する搬送機構、原稿用紙等の画像を光学的に読み取る画像読取センサ及び原稿用紙を走査するための走査機構等を含んで構成されている。
【0026】
本実施形態の画像読取部12は、原稿用紙の表面画像と裏面画像とを1回の搬送で読み取る「両面読取装置」として構成されている。なお、ここでは、外観上の構成について説明し、搬送機構、画像読取センサ、走査機構等の画像読取部12の具体的な構成については後述する。
【0027】
原稿台22の上面には、原稿台22に置かれた原稿用紙が搬送される際に、原稿用紙を案内する一対のガイド26A、26Bが設けられている。一対のガイド26A、26Bは、少なくとも一方が原稿台22に置かれた原稿用紙の幅方向であるY方向に移動するように構成されている。一対のガイド26A、26Bは、原稿台22に置かれた原稿用紙の幅に応じて移動される。
【0028】
画像形成部14は、用紙供給部16から供給された用紙上に画像を形成する画像形成機構及び画像が形成された用紙を用紙排出部32に排出するための排出機構等を含んで構成されている。画像形成機構は、例えば電子写真方式により画像を形成する画像形成ユニット及び定着装置等を含んで構成される。画像形成ユニットには、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置及びクリーニング装置等を含んで構成される。画像形成部14は、上記構成により、用紙供給部16から供給された用紙上に画像を形成し、画像が形成された用紙を用紙排出部32に排出する。
【0029】
用紙供給部16は、用紙を収容する用紙収容部、用紙収容部から画像形成部14に用紙を供給する供給機構等を含んで構成されている。供給機構は、用紙収容部から用紙を取り出す取出ローラ、搬送ローラ等で構成されている。用紙の種類やサイズに応じて、複数の用紙収容部を備えていてもよい。用紙供給部16は、上記構成により、画像形成部14に用紙を供給する。
【0030】
操作パネル18は、設定画面等の各種画面を表示するためのタッチパネル34、スタートボタンやテンキー等の各種ボタン36などを含んで構成されている。操作パネル18は、上記構成により、ユーザの操作を受け付けると共に、ユーザに各種情報を表示するUI(ユーザ・インタフェース)として機能する。
【0031】
(画像読取部の構成)
次に画像読取部12の構成を説明する。
【0032】
図2は
図1に示す画像読取部12の構成の一例を示す概略断面図である。前述のように、画像読取部12は「両面読取装置」として構成されている。
【0033】
画像読取部12は、原稿台22に置かれた原稿を搬送する原稿搬送部40、原稿用紙の表面画像(おもてめんがぞう)を読み取る表面画像読取部42及び原稿用紙の裏面画像(うらめんがぞう)を読み取る裏面画像読取部66を備えている。裏面画像読取部66は、原稿搬送部40内に設けられている。また、裏面画像読取部66は、表面画像読取部42に対し、原稿用紙の搬送方向下流側に設けられている。
【0034】
原稿搬送部40は、原稿台22を昇降させる昇降機構44、昇降機構44により上昇された原稿台22に置かれた原稿用紙の束の最上面に接触して原稿用紙を一枚ずつ取り込む取込ローラ46、取込ローラ46により取り込まれた原稿用紙を搬送路48に供給する供給ローラ50及び搬送路48に沿って原稿用紙をさらに搬送方向下流側に搬送する種々の搬送ローラ52、54、56、58、60等を備えている。各ローラの回転軸は、原稿用紙の搬送方向と直交するY方向に延びている。
【0035】
また、原稿搬送部40は、搬送される原稿用紙のループ状態に応じて支点を中心として回転移動する案内機構62及び原稿用紙を原稿排出部24に排出する排出ローラ64を備えている。ここで、原稿用紙のループ状態とは、原稿用紙の搬送路48がループを形成するように曲げられており、原稿用紙が搬送路48に沿って湾曲した状態となることを意味する。
【0036】
読取部の一例としての表面画像読取部42は、透明な第一プラテンガラス70A、透明な第二プラテンガラス70B、原稿用紙に向けて照明光を照射する第一光源72、原稿用紙で反射された反射光の光路を折り曲げる反射ミラー74、76、78及び反射ミラー78で反射された反射光を結像させるレンズ80、レンズ80の結像位置に配置された第一画像読取センサ82等を備えている。なお「透明」とは、上記照明光及び反射光の各々を透過することを意味する。
【0037】
本実施形態の画像読取部12は、前述したように、原稿搬送部40によって搬送中の原稿用紙から、表裏両面の画像を読み取る「両面読取装置」として構成されている。しかしながら、原稿用紙の片面の画像を読み取る場合には、原稿搬送部40を用いずに、第一プラテンガラス70A上に原稿用紙を置いて、第一プラテンガラス70Aと対向する面の画像を読み取ってもよい。
【0038】
第一プラテンガラス70Aは、第一プラテンガラス70A上に置かれた原稿用紙の片面の画像を読み取るために、表面画像読取部42の上面の中央部に設けられている。表面画像読取部42の上面の周辺部、すなわち、第一プラテンガラス70Aの周囲には、照明光及び反射光を遮断するための図示されていない遮光部材が配置されている。
【0039】
一方、第二プラテンガラス70Bは、原稿搬送部40によって搬送中の原稿用紙の表面画像を読み取るために、前述の図示されていない遮光部材に形成された開口部である。したがって、第二プラテンガラス70Bは、表面画像読取部42の上面の周辺部の一部に設けられている。第二プラテンガラス70Bは、原稿搬送部40の搬送ローラ58と対向するように配置されている。即ち、搬送ローラ58が配置された位置で、原稿用紙の表面画像が読み取られる。以下、この位置を「表面画像の読取位置」という。
【0040】
第一光源72は、本実施形態では原稿用紙の搬送方向と直交するY方向に沿って複数のLED(Light Emitting Diode)が配列されたLEDアレイを用いている。第一光源72及び反射ミラー74はキャリッジ83Aに搭載され、反射ミラー76及び78はキャリッジ83Bに搭載されている。キャリッジ83A、83Bは後述する画像読取制御部92により制御されY方向に移動される。つまり、第一光源72、反射ミラー74、76、78の各々は、Y方向に移動される。
【0041】
受光部の一例としての第一画像読取センサ82は、本実施形態では原稿用紙の搬送方向と直交するY方向に沿って複数のCCD(Charge Coupled Device)が配列されたCCDラインセンサを用いている。つまり、第一画像読取センサ82は縮小光学方式の受光部となっている。
【0042】
図2における「表面画像の読取位置」のX方向左側には、第一白基準板150が設けられている。第一白基準板150は、主走査方向であるY方向に対して反射率が一様なプレートである。第一白基準板150は、第一画像読取センサ82が光学的に読み取り、シェーディング補正及び空間フィルタによるエッジ強調処理等の画像処理を行うための画像情報を取得するためのものである。
【0043】
読取部の一例としての裏面画像読取部66は、原稿搬送部40の搬送ローラ58と搬送ローラ60との間に配置されている。また、本実施の形態では、裏面画像読取部66の後述する第二画像読取センサ100は、原稿用紙に密着させて画像を読み取る密着型イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)を用いている。従って、裏面画像読取部66は、搬送路48に沿って搬送される原稿用紙の裏面に対向するように配置されている。即ち、裏面画像読取部66が配置された位置で、原稿用紙の裏面画像が読み取られる。以下、この位置を「裏面画像の読取位置」という。
【0044】
図3は
図1及び
図2に示す裏面画像読取部66の構成の一例を示す概略断面図である。
図3に示すように、裏面画像読取部66は、原稿搬送部40により搬送される原稿用紙の裏面又は第二白基準板68に向けて照明光を照射する第二光源101、原稿用紙の裏面又は第二白基準板68で反射された反射光を結像させるレンズ107及びレンズ107の結像位置に配置された第二画像読取センサ100等を備えている。第二光源101、レンズ107及び第二画像読取センサ100の各々は、筐体109内の予め定めた位置に固定されて、筐体109内に収納されている。
【0045】
第二光源101は、本実施形態ではLEDを使用した光源を用いている。また、受光部の一例としての第二画像読取センサ100は、本実施形態では前述したように原稿用紙に密着させて画像を読み取る密着型イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)を用いている。レンズ107は、原稿用紙の搬送方向と直交するY方向に沿って複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイとして構成されている。
【0046】
搬送路48を挟んで裏面画像読取部66に対向する位置には、第二白基準板68が設けられている。第二白基準板68は、主走査方向であるY方向に対して反射率が一様なプレートである。第二白基準板68は、第二画像読取センサ100が光学的に読み取り、シェーディング補正及び空間フィルタによるエッジ強調処理等の画像処理を行うための画像情報を取得するためのものである。
【0047】
(画像読取部の動作)
次に、画像読取部12の動作について説明する。画像読取部12は、後述する画像読取制御部92により制御されて以下の両面読取動作を行う。なお、各種動作の駆動は、画像読取制御部92の駆動部196(
図5参照)が行う。また、第一光源72、反射ミラー74、76、78の各々は、第一光源72及び反射ミラー74のキャリッジ83Aが、「表面画像の読取位置」の直下に位置するように画像読取制御部92が制御する。
【0048】
図2に示すように、原稿用紙が表面を上側にして原稿台22に置かれると、昇降機構44により原稿台22を上昇させる。原稿台22が予め定めた位置まで上昇して停止すると、取込ローラ46が原稿台22に置かれた原稿用紙の束の最上面に接触し、取込ローラ46により原稿用紙が一枚ずつ取り込まれる。供給ローラ50に到達した原稿用紙は、供給ローラ50により搬送路48に供給されて、原稿用紙の搬送が開始される。搬送ローラ52に到達した原稿用紙は、搬送ローラ52により搬送方向下流側に搬送される。
【0049】
搬送ローラ54に到達した原稿用紙は、搬送ローラ54により搬送方向下流側に搬送される。また、搬送された原稿用紙の先端が停止している搬送ローラ56に突き当てられて、原稿用紙が搬送路48に沿って湾曲したループ状態とされる。原稿用紙がループ状態になると、案内機構62が支点を中心として外側に開くように回転して、原稿用紙のループ状態を保持しながら原稿用紙を案内する。画像の読み取りの開始タイミングに合わせて、停止されていた搬送ローラ56が回転を開始する。
【0050】
搬送ローラ56に到達した原稿用紙は、搬送ローラ56により位置合わせされて、搬送方向下流側に搬送される。また、搬送ローラ56により、搬送ローラ58が配置された「表面画像の読取位置」に原稿用紙が供給される。表面画像の読取位置では、原稿用紙の表面が第二プラテンガラス70Bと対向する状態となる。搬送ローラ58に到達した原稿用紙は、搬送ローラ58により第二プラテンガラス70Bに押圧された状態で、搬送方向下流側に搬送される。表面画像読取部42により、第二プラテンガラス70Bを介して、搬送中の原稿用紙の表面画像が読み取られる。
【0051】
表面画像が読み取られた原稿用紙は、搬送方向下流側に搬送されて、裏面画像読取部66が配置された「裏面画像の読取位置」に供給される。裏面画像の読取位置では、原稿用紙の裏面が裏面画像読取部66と対向する状態となる。裏面画像読取部66により、搬送中の原稿用紙の裏面画像が読み取られる。裏面画像が読み取られた原稿用紙は、搬送ローラ60により搬送方向下流側に搬送される。排出ローラ64に到達した原稿用紙は、排出ローラ64により原稿排出部24に排出される。
【0052】
なお、前述したように、第一プラテンガラス70Aの上面に原稿用紙が置かれた場合には、以下のようにして表面画像読取部42により原稿用紙の片面の画像が読み取られる。
【0053】
Y方向の右側に第一光源72及び反射ミラー74、76、78を移動させながら、第一光源72から出射された照明光を原稿用紙に向けて照射する。即ち、原稿用紙の片面が照明光により走査される。照明光は、第一プラテンガラス70Aを通過して原稿用紙に照射され、原稿用紙により反射される。反射光は、第一プラテンガラス70Aを通過して、反射ミラー74、76、78により光路が折り曲げられて、レンズ80に入射する。レンズ80に入射した光は、レンズ80により第一画像読取センサ82に結像される。これにより、原稿用紙の片面の画像が読み取られる。
【0054】
なお、前述した第一白基準板150を読み取る場合は、第一光源72及び反射ミラー74のキャリッジ83Aが第一白基準板150の直下に位置するように画像読取制御部92が制御する。
【0055】
(ハードウエア構成)
次に、画像形成装置10の電気的な構成について説明する。
【0056】
図4は
図1に示す画像形成装置10の電気系の要部構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、画像形成装置10は、メインコントローラ81、ハードディスク装置等の二次記憶装置(HDD)90、画像読取制御部92、画像形成制御部94、外部インタフェース96及び操作パネル18を備えている。
【0057】
メインコントローラ81は、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。メインコントローラ81は、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)84、ROM(Read Only Memory)86、及びRAM(Random Access Memory)88を備えている。CPU84は、ROM86又はHDD90に記憶されたプログラムを読み出し、RAM88をワークエリアとして使用してプログラムを実行する。
【0058】
画像読取制御部92は、画像読取部12内に配置され、画像読取処理の全体を制御する制御ユニットである。画像読取制御部92は、後述するように画像読取部12の各部の制御、各種演算及び画像処理等を行う。
【0059】
画像形成制御部94は、画像形成部14内に配置され、画像形成処理の全体を制御する制御ユニットである。画像形成制御部94は、図示が省略されたCPU、ROM及びRAM等を備えるコンピュータとして構成され、画像形成部14の各部の制御及び各種演算を行う。
【0060】
外部インタフェース96は、有線又は無線の通信回線を介して外部装置と通信を行うためのインタフェースである。例えば、LAN(Local Area Network)等のネットワークに接続されたコンピュータと通信を行うためのインタフェースとして機能する。HDD90には、ログデータ等の各種データ、装置全体を制御するための各種プログラム等が記憶される。
【0061】
CPU84、ROM86、RAM88、HDD90、画像読取制御部92、画像形成制御部94、外部インタフェース96及び操作パネル18の各々は、バス98を介して電気的に接続されている。メインコントローラ81は、バス98を介して、HDD90、画像読取制御部92、画像形成制御部94、及び操作パネル18の各々との間で情報の授受を行う。また、メインコントローラ81は、バス98及び外部インタフェース96を介して、外部装置との間で情報の授受を行う。
【0062】
次に、画像読取制御部92のハードウエア構成について説明する。
図5に示すように、画像読取制御部92は、表面画像読取部42、裏面画像読取部66、駆動部196、プロセッサの一例としてのCPU(中央処理装置; Central Processing Unit)184、ROM(Read Only Memory)186、RAM(Random Access Memory)188及びHDD190等を備え、画像読取部12の各部の制御、各種演算及び画像処理等を行う。
【0063】
プロセッサの一例としてのCPU184は、ROM186又はHDD190に記憶されたプログラムを読み出し、RAM188をワークエリアとして使用してプログラムを実行する。表面画像読取部42、裏面画像読取部66、駆動部196、CPU184、ROM186、RAM188及びHDD190は、バス198を介して電気的に接続されている。
【0064】
次に、画像読取制御部92の機能構成の一例について説明する。
【0065】
図6に示すように、画像読取制御部92は、受付部200と差分部202と比較部204と処理部206とを有して構成されている。
【0066】
受付部200は、第一白基準板150及び第二白基準板68を読み取った後述する第一読取データ及び第二読取データを受け付ける。差分部202は、受付部200が受け付けた第一読取データと第一基準データとの差、及び第二読取データと第二基準データとの差を求める。比較部204は差分部202が求めた差と設定値と比較する。処理部206は、比較部204で求めた差が設定値を超えると、表面画像読取部42及び裏面画像読取部66が読み取った読取画像に対してローパスフィルターで周波数フィルタリングを行うと共に空間フィルタでエッジ強調処理を行う。なお、第一読取データと第一基準データとの差及び第二読取データと第二基準データとの差についての説明は刻術する。
【0067】
<画像処理>
次に表面画像読取部42及び裏面画像読取部66が原稿を読み取った読取画像に対して、画像読取制御部92が行う画像処理について説明する。画像処理はCPU184(
図5参照)がROM186又はHDD190(
図5参照)に記憶されたプログラムを読み出し、RAM188(
図5参照)に展開して実行することにより行なわれる。
【0068】
なお、本処理で行う画像処理を行って出力される画像を処理画像とする。また、ここで説明する画像処理は、読取画像に対してローパスフィルターによる周波数フィルタリングを行ったのち空間フィルタによるエッジ強調処理を行う処理であるが、これ以外の画像処理を行ってもよい。
【0069】
また、画像処理の設定は、電源が入れられて起動した起動時及び電源が入れられたあと定期的に行われる。なお、定期的とは、例えば電源が入れられてから予め定められた時間が経過するごと又は予め定められた読取枚数ごとに行うことである。
【0070】
また、画像処理におけるローパスフィルターとは、画像に含まれる空間周波数成分のうち、周波数の低い成分を残し、周波数の高い成分を除去する低域透過フィルタのことである。そして、ローパスフィルターで周波数フィルタリングすることで、明るさの急激な変化がある部分は変化がなだらかになる。
【0071】
また、空間フィルタによる処理とは、読取画像に対して、注目している画素とその周囲の画素とから、注目している画素を変換する処理である。そして、空間フィルタによるエッジ強調処理とは、読取画像中のエッジが強調される処理である。
【0072】
次に空間フィルタによるエッジ強調処理について
図7を用いて簡単に説明する。
【0073】
図7(A)は読取画像の一部である。
図7(B)はエッジ強調処理を行う空間フィルタの例である。そして、
図7(C)は読取画像の一部に
図7(B)の空間フィルタでエッジ強調処理を行った後の処理画像である。このように
図7(A)の読取画像では図の右端の三列が数値100の画素となっているが、
図7(C)の処理後の処理画像は図の左端から一つ目と二つ目の二列が数値25の画素となっており、エッジが強調されていることが判る。なお、
図7のエッジ強調フィルタの計算は、計算結果の絶対値を取っている。
【0074】
(表面画像読取部)
まず表面画像読取部42が読み取った読取画像に対する画像処理について説明する。
【0075】
図8のフローチャートに示すように、ステップS100で画像読取制御部92のCPU184(
図5参照)は、第一光源72及び反射ミラー74のキャリッジ83Aを第一白基準板150(
図2参照)の直下に位置するように移動させる。そして、第一光源72から出射した照射光を第一白基準板150に照射し、第一白基準板150で反射した反射光を第一画像読取センサ82(
図2参照)で受光して読みとり第一読取データを取得する。
【0076】
次にステップS102でCPU184は、取得した第一読取データとHDD190(
図5参照)等に保存されている第一基準データとの差を求める。なお、「第一読取データ」及び後述する「第二読取データ」は、具体的には白基準レベルのデータである。白基準レベルは、画像読取部12の入力範囲の最大出力レベルを規格化するためのデータである。
【0077】
次にステップS104でCPU184は第一読取データと第一基準データとの差分が予め設定した設定値を超えるか否かを判定する。この差分が予め設定した設定値を超えない場合(No)、つまり差が設定値以下の場合、処理を終了する。この場合、本説明の画像処理を行うことなく読取画像をそのまま出力する。この差が予め設定した設定値を超える場合(Yes)、ステップS106に進む。
【0078】
次にステップS106でCPU184は、差に応じて画像処理におけるエッジ強調処理の強度を設定する。なお、差に応じてエッジ強調処理の強度を設定する方法については後述する。
【0079】
次に、ステップS108でCPU184は、エッジ強調処理の強度に応じてローパスフィルターの周波数を設定する。具体的には、CPU184はエッジ強調処理の強度が大きいほどローパスフィルターの周波数を下げる。
【0080】
これより表面画像読取部42が読み取った読取画像に対して、周波数が設定されたローパスフィルター及びエッジ強調処理の強度の設定が設定された空間フィルタを通す画像処理が設定される。つまり、表面画像読取部42で読み取った読取画像に対して、ローパスフィルターで周波数フィルタリングを行ったのち空間フィルタによるエッジ強調処理を行う画像処理を行って処理画像として出力する。
【0081】
(裏面画像読取部)
次に裏面画像読取部66が読み取った読取画像に対する画像処理について説明する。
【0082】
図9のフローチャートに示すように、ステップS200で画像読取制御部92のCPU184(
図5参照)は、第二光源101(
図3参照)の出力が定格値未満であるかを判定する。なお、本実施形態では出力は第二光源101に供給する電流値である。定格値未満の場合(Yes)はステップS202に進み、定格値である場合(No)はステップS206に進む。ステップS202に進んだ場合は、CPU184は第二光源101の出力を定格値にする。
【0083】
次に、ステップS206でCPU184は、第二光源101から出射した照射光を第二白基準板68に照射し、第二白基準板68で反射した反射光を第二画像読取センサ100(
図3参照)で受光して読み取り第二読取データを取得する。
【0084】
次にステップS208でCPU184は、取得した第二読取データとHDD190(
図5参照)等に保存されている第二基準データとの差を求める。
【0085】
次にステップS210でCPU184は第二読取データと第二基準データとの差分が予め設定した設定値を超えるか否かを判定する。この差分が予め設定した設定値を超えない場合(No)、つまり差が設定値以下の場合はステップS204に進む。また、この差が予め設定した設定値を超える場合(Yes)は、ステップS212に進む。
【0086】
ステップS204でCP184は第二光源101の出力を予め定めた出力値分、下げてステップS206に戻り、ステップS206からステップS210を繰り返す。
【0087】
なお、再度ステップS210で再度差が予め設定した設定値を超えない場合(No)、CPU184は第二光源101の出力を更に下げてステップS206に戻る。つまり、第二読取データと第二基準データとの差が予め設定した設定値を超えるまでCPU184は第二光源101の出力を下げ続ける。
【0088】
前述したように、ステップS210で差が予め設定した設定値を超える場合(Yes)、ステップS212に進む。
【0089】
次にステップS212でCPU184は、差に応じて画像処理におけるエッジ強調処理の強度を設定する。なお、差に応じてエッジ強調処理の強度を設定する方法については後述する。
【0090】
次に、ステップS214でCPU184は、エッジ強調処理の強度に応じてローパスフィルターの周波数を設定する。具体的には、CPU184はエッジ強調処理の強度が大きいほどローパスフィルターの周波数を下げる。
【0091】
これより裏面画像読取部66が読み取った読取画像に対して、周波数が設定されたローパスフィルター及びエッジ強調処理の強度の設定が設定された空間フィルタを通す画像処理が設定される。つまり、裏面画像読取部66で読み取った読取画像に対して、ローパスフィルターで周波数フィルタリングを行ったのち空間フィルタによるエッジ強調処理を行う画像処理を行って処理画像として出力する。
【0092】
(エッジ強調処理の強度の設定)
次に空間フィルタのエッジ強調処理の設定の一例について説明する。
【0093】
図10は、HDD190等に保存されている表面画像読取部42に使用するLUT(Lookup Table)を模式的に示す図である。前述したステップS106でCPU184は、差をLUTによって空間フィルタの強度に変換する。
【0094】
図11は、HDD190等に保存されている裏面画像読取部66に使用するLUT(Lookup Table)を模式的に示す図である。前述したステップS212でCPU184は、差をLUTによって空間フィルタの強度に変換する。
【0095】
ここで、
図11の実線R1が裏面画像読取部66に使用するLUTであり、一点鎖線R2は
図10の表面画像読取部42に使用するLUTを比較参考のため図示したものであり、実際には使用しない。
【0096】
前述したように、表面画像読取部42の第一画像読取センサ82は縮小光学方式であり、裏面画像読取部66の第二画像読取センサ100は密着光学方式である。縮小光学方式の第一画像読取センサ82よりも密着光学方式の第二画像読取センサ100の方がCTF(Contrast Transfer Function)が高くなる。よって、差が同じでも強度を小さくできる。したがって、
図11に示すように、裏面画像読取部66に使用するLUTの方が、同じ差でも強度が小さくなっている。
【0097】
(LUTの作成方法)
次にLUTの作成方法の一例について説明する。
【0098】
図12は、ノイズ(SN比)とCTF(Contrast Transfer Function)との関係を模式的に示すグラフである。ノイズ(SN比)は、スキャナの白基準が一定であることから、ノイズの絶対量を表す値である。また、CTFは解像力の指標となる値である。
【0099】
ラインKは、ノイズ(SN比)とCTFとを変えた複数の画像を作成して画質を判定してOKとNGと境界のラインである。また、CTFが低いとスキャナの解像力が劣化し、粗い読み取り画像となるので、一定の値以上が必要である。本例では、CTFの25%以上をOKした。よって、ラインKの上方且つCTF25%以上の斜線を引いた範囲がOKの範囲となる。
【0100】
そして、LUTのエッジ強調の強度は、
図12の斜線のOKの範囲になるように設定する。
【0101】
<作用>
次に本実施形態の作用について説明する。
【0102】
画像形成装置10の画像読取部12の表面画像読取部42の第一光源72及び裏面画像読取部66の第二光源101が経時劣化によって光量が低下すると、第一画像読取センサ82及び第二画像読取センサ100の受光量が減少する。そして、第一画像読取センサ82及び第二画像読取センサ100の受光量が減少すると読取画像のノイズの比率が増加しSN比が小さくなり、読取画像の画質が低下する。
【0103】
しかし、ノイズの比率を減少させてSN比を大きくし読取画像の画質の低下を抑制する場合、例えば、第一光源72及び第二光源101の出力を上げて対応すると第一光源72及び第二光源101の寿命が低下し、或いは読取速度を遅くして受光量を増加させて対応すると生産性が低下する。
【0104】
これらに対して本実施形態の画像形成装置10の画像読取部12は、表面画像読取部42の第一光源72の経時劣化で光量が低下し、第一白基準板150を読み取った読取データと第一基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行い処理画像として出力する。
【0105】
同様に画像読取部12は、裏面画像読取部66の第二光源101の経時劣化で光量が低下し、第二白基準板68を読み取った読取データと第二基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行い処理画像として出力する。
【0106】
したがって、ノイズを相対的に減少させる処理を実行することなく、読取画像をそのまま出力する場合と比較し、画質の低下を抑制することができる。
【0107】
別の観点から説明すると、第一光源72及び第二光源101の経時劣化で光量が低下することによる読取画像のSN比の低下を、空間フィルタを用いてエッジ強調処理を行って解像力を上げることで、画質の低下を抑制している。
【0108】
次に
図13を用いて本実施形態の制御手法について説明する。
【0109】
図13は、
図12のノイズ(SN比)とCTF(Contrast Transfer Function)との関係を模式的に示すグラフに本実施形態の制御手法の説明を加えた図である。
【0110】
図中の〇(丸)印M1及び□(四角)印N1は、第一光源72及び第二光源101の経時劣化で光量が低下することで読取画像のSN比が低下し、画質が低下した状態を示している。そして、矢印L1、L2は、空間フィルタを用いてエッジ強調処理を行って解像力を上げることで、画質を上げることを表している。このように本制御は、第一光源72及び第二光源101の経時劣化による画質の低下を、空間フィルタを用いてエッジ強調処理を行って解像力を上げて画質を上げるものである。なお、□(四角)印N2及び矢印L3についての説明は後述する。
【0111】
ここで、空間フィルタでエッジ強調処理を行うと読取画像のノイズが強調される場合がある。よって、本実施形態では、空間フィルタでエッジ強調処理を行う前に読取画像に対してローパスフィルターで周波数フィルタリングすることでノイズの強調を抑制している。つまり、読取画像をそのまま空間フィルタでエッジ強調処理する場合と比較し、ノイズの強調が低減し画質が向上する。
【0112】
また、本実施形態では、LUTを用いて空間フィルタのエッジ強調処理の強度を第一読取データ及び第二読取データと第一基準データ及び第二基準データとの差が大きい場合は小さい場合よりも空間フィルタのエッジ強調処理の強度を大きくしている。よって、エッジ強調処理の強度が一定の場合と比較し画質が向上する。
【0113】
また、本実施形態では、空間フィルタのエッジ強調処理の強度を大きい場合は小さい場合よりもローパスフィルターの周波数を下げている。よって、ローパスフィルターの周波数が一定の場合と比較し、エッジ強調処理によるノイズの強調が低減する。
【0114】
また、本実施形態では、密着光学方式である裏面画像読取部66の第二読取データと第二基準データとの差が設定値を超えなかった場合、設定値を超えるまで第二光源101の出力を定格出力よりも下げる。そして、空間フィルタのエッジ強調処理を行う。
【0115】
このように、第二光源101の出力を定格値よりも下げることで、第二光源101の経時劣化が抑制される。よって、第二光源101の出力が常に定格値以上の場合と比較し、第二光源101の経時劣化が抑制される。また、第二光源101の出力を定格値よりも下げることで第二光源101の発熱量が低下するので、第二画像読取センサ100の温度上昇に伴う感度低下が抑制される。
【0116】
また、前述したように、表面画像読取部42の第一画像読取センサ82は縮小光学方式であり、裏面画像読取部66の第二画像読取センサ100は密着光学方式である。縮小光学方式の第一画像読取センサ82よりも密着光学方式の第二画像読取センサ100の方がCTF(Contrast Transfer Function)が高くなる。よって、差が同じでも強度を小さくできる。したがって、密着光学方式の裏面画像読取部66の第二光源101の出力を低下させることによるエッジ強調処理によるノイズの強調が低減する。
【0117】
また、本実施形態では、第二光源101の出力を下げた場合、第二光源101の出力を定格値に戻して再度設定値を超えるまで第二光源101の出力を定格出力よりも下げる。よって、第二光源101の経時劣化に応じて出力を下げられるので、第二光源101の出力を下げたままの場合と比較し、画質の低下を抑制することができる。
【0118】
次に
図13を用いて本実施形態の第二光源101の出力を下げる制御手法について説明する。
【0119】
図中の□(四角)印N2は、第二光源101の光量が十分である場合、つまり差が設定値を超えていない画質がまだOKの範囲にある状態を示している。
【0120】
図中の矢印L3は、差が設定値を超えるまで第二光源101の光量を意図的に下げて画質を低下させた状態(□(四角)印N1)にすることを表している。そして、前述したように、矢印L2は、空間フィルタを用いてエッジ強調処理を行って解像力を上げることで、画質を上げることを表している。このように本制御は、第二光源101が経時劣化していない状態であっても、あえて第二光源101の出力を下げて画質を低下させたうえで空間フィルタを用いてエッジ強調処理を行って解像力を上げて画質を上げるものである。
【0121】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0122】
例えば、上記実施形態では、裏面画像読取部66の第二読取データと第二基準データとの差が設定値を超えなかった場合、設定値を超えるまで第二光源101の出力を定格出力よりも下げたが、これに限定されるものではない。第二光源101の出力を定格出力のまま使用してもよい。また、裏面画像読取部66の第一読取データと第一基準データとの差が設定値を超えなかった場合、設定値を超えるまで第一光源72の出力を定格出力よりも下げてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、複合機である画像形成装置10の画像読取部12に本発明を適用したが、これに限定されるものではない。単体の画像読取装置に本発明を適用してもよい。
【0124】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【0125】
<付記>
(((1)))
光源が出射した出射光を対象物に照射し前記対象物で反射した反射光を受光部で受光し読み取った読取画像を生成する読取部と、
プロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記読取部が白基準を読み取った読取データを受け付け、
前記読取データと基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、前記読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行い処理画像として出力する、
読取システム。
【0126】
(((2)))
前記プロセッサは、
前記読取データと前記基準データとの差が大きい場合は小さい場合よりも前記空間フィルタのエッジ強調処理の強度を大きくする、
(((1)))に記載の読取システム。
【0127】
(((3)))
前記プロセッサは、
前記空間フィルタでエッジ強調処理を行う前に、前記読取画像に対してローパスフィルターで周波数フィルタリングを行う、
(((1)))又は(((2)))に記載の読取システム。
【0128】
(((4)))
前記プロセッサは、
前記読取データと前記基準データとの差が大きい場合は小さい場合よりも前記空間フィルタのエッジ強調処理の強度を大きくする共に前記ローパスフィルターの周波数を下げる、
(((1)))~(((3)))のいずれか一つに記載の読取システム。
【0129】
(((5)))
前記プロセッサは、
前記読取データと前記基準データとの差が前記設定値を超えるまで前記光源の出力を定格出力よりも下げる、
(((1)))~(((4)))のいずれか一つに記載の読取システム。
【0130】
(((6)))
前記プロセッサは、
前記受光部が密着光学方式である場合に、前記光源の出力を定格値よりも下げる、
(((5)))に記載の読取システム。
【0131】
(((7)))
前記プロセッサは、
前記光源の出力が定格出力未満の場合、前記定格出力にしたのち前記読取データと前記基準データとの差が前記設定値を超えるまで前記光源の出力を定格値よりも下げる、
(((5)))又は(((6)))に記載の読取システム。
【0132】
(((8)))
光源が出射した出射光を対象物に照射し前記対象物で反射した反射光を受光部で受光し読み取った読取画像を出力する読取部と、プロセッサと、を有する読取システムのプログラムであって、
前記読取部が白基準を読み取った読取データを受け付け、
前記読取データと基準データとの差が予め設定した設定値を超えると、前記読取画像に対して空間フィルタでエッジ強調処理を行った処理画像を出力する、
処理を実行させるための読取システムのプログラム。
【0133】
(((1)))の読取システムによれば、ノイズを相対的に減少させる処理を実行することなく、読取画像をそのまま出力する場合と比較し、画質の低下を抑制することができる。
【0134】
(((2)))の読取システムによれば、空間フィルタのエッジ強調処理の強度が一定の場合と比較し、画質が向上する。
【0135】
(((3)))の読取システムによれば、読取画像をそのまま空間フィルタでエッジ強調処理する場合と比較し、ノイズの強調が低減する。
【0136】
(((4)))の読取システムによれば、ローパスフィルターの周波数が一定の場合と比較し、エッジ強調処理によるノイズの強調が低減する。
【0137】
(((5)))の読取システムによれば、光源の出力が常に定格値以上の場合と比較し、光源の経時劣化が抑制される。
【0138】
(((6)))の読取システムによれば、受光部が縮小光学方式の場合と比較し、エッジ強調処理によるノイズの強調が低減する。
【0139】
(((7)))の読取システムによれば、光源の出力を下げたままの場合と比較し、画質の低下を抑制することができる。
【0140】
(((8)))の読取システムのプログラムによれば、ノイズを相対的に減少させる処理を実行することなく、読取画像をそのまま出力する場合と比較し、画質の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0141】
10 画像形成装置
12 画像読取部(読取システムの一例)
42 表面画像読取部(読取部の一例)
66 裏面画像読取部(読取部の一例)
68 第二白基準板
72 第一光源
82 第一画像読取センサ(受光部の一例)
100 第二画像読取センサ(受光部の一例)
101 第二光源
150 第一白基準板
184 CPU(プロセッサの一例)