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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003357
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】光学ガラスおよび光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20241226BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093464
(22)【出願日】2024-06-10
(31)【優先権主張番号】202310747832.9
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522503632
【氏名又は名称】豪雅光電科技(威海)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 奔
(72)【発明者】
【氏名】根岸 智明
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA03
4G062DA04
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4G062HH01
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4G062HH09
4G062HH11
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4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK04
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM02
4G062NN02
4G062NN03
4G062NN05
4G062NN32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低コスト化のためGdとTaとの合計含有量が少ない光学ガラスであって、屈折率が高い光学ガラスを提供する。
【解決手段】モル%表示の酸化物基準のガラス組成において、SiO含有量が1.00%以上30.00%以下、B含有量が1.00%以上40.00%以下、La含有量が5.00%以上40.00%以下、Gd含有量が0.00%以上3.50%以下、Y含有量が0.50%以上20.00%以下、TiO含有量が5.00%以上30.00%以下、ZrO含有量が0.00%以上20.00%以下、Nb含有量が0.00%以上20.00%以下、複数の特定成分の合計含有量についての組成割合が規定の範囲内、および2種類の特定成分の含有量モル比が規定の範囲内である、光学ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル%表示の酸化物基準のガラス組成において、
SiO含有量が1.00%以上30.00%以下、
含有量が1.00%以上40.00%以下、
La含有量が5.00%以上40.00%以下、
Gd含有量が0.00%以上3.50%以下、
含有量が0.50%以上20.00%以下、
TiO含有量が5.00%以上30.00%以下、
ZrO含有量が0.00%以上20.00%以下、
Nb含有量が0.00%以上20.00%以下、
GdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)が0.00%以上3.50%以下、
La、GdおよびYの合計含有量(La+Gd+Y)が26.50%以上、
TiO、ZrOおよびNbの合計含有量(TiO+ZrO+Nb)が23.00%以上36.00%以下、
アルカリ土類金属酸化物ROとアルカリ金属酸化物ROとの合計含有量(RO+RO)が3.50%以上、
SiO含有量に対するGd含有量のモル比(Gd/SiO)が0.00以上0.23以下、
SiO含有量に対するB含有量のモル比(B/SiO)が0.80以上1.56以下、
La含有量に対するSiO含有量のモル比(SiO/La)が0.87以下、
含有量に対するY含有量のモル比(Y/B)が0.15以上0.34以下、かつ
含有量に対するTiO含有量のモル比(TiO/B)が0.70以上1.10以下、
である光学ガラス。
【請求項2】
Al含有量が0.00%以上2.00%以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
Nb含有量が0.10%以上20.00%以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項4】
WO含有量が0.00%以上0.40%以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項5】
La、GdおよびYの合計含有量(La+Gd+Y)が26.50%以上35.00%以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項6】
アルカリ土類金属酸化物ROとアルカリ金属酸化物ROとの合計含有量(RO+RO)が3.50%以上10.50%以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項7】
含有量に対するY含有量のモル比(Y/B)が0.17以上0.34以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項8】
SiO含有量に対するB含有量のモル比(B/SiO)が1.20以上1.56以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項9】
La含有量に対するSiO含有量のモル比(SiO/La)が0.50以上0.87以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項10】
GdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)が0.00%以上2.50%以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項11】
Al含有量が0.00%以上2.00%以下であり、
Nb含有量が0.10%以上20.00%以下であり、
WO含有量が0.00%以上0.40%以下であり、
La、GdおよびYの合計含有量(La+Gd+Y)が26.50%以上35.00%以下であり、
アルカリ土類金属酸化物ROとアルカリ金属酸化物ROとの合計含有量(RO+RO)が3.50%以上10.50%以下であり、
含有量に対するY含有量のモル比(Y/B)が0.17以上0.34以下であり、
SiO含有量に対するB含有量のモル比(B/SiO)が1.20以上1.56以下であり、
La含有量に対するSiO含有量のモル比(SiO/La)が0.50以上0.87以下であり、かつ
GdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)が0.00%以上2.50%以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスおよび光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学素子用材料として、屈折率が高い光学ガラスが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2013/146378
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1(WO2013/146378)には、高屈折率を実現するガラス組成として、GdとTaとの合計含有量が多いガラス組成が開示されている(WO2013/146378の実施例参照)。しかし、GdおよびTaは近年単価が高騰している高価な成分であるため、ガラスの低コスト化のためには、GdとTaとの合計含有量が少ないガラスが望ましい。
【0005】
以上に鑑み、本発明の一態様は、GdとTaとの合計含有量が少ない光学ガラスであって、屈折率が高い光学ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]モル%表示の酸化物基準のガラス組成において、
SiO含有量が1.00%以上30.00%以下、
含有量が1.00%以上40.00%以下、
La含有量が5.00%以上40.00%以下、
Gd含有量が0.00%以上3.50%以下、
含有量が0.50%以上20.00%以下、
TiO含有量が5.00%以上30.00%以下、
ZrO含有量が0.00%以上20.00%以下、
Nb含有量が0.00%以上20.00%以下、
GdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)が0.00%以上3.50%以下、
La、GdおよびYの合計含有量(La+Gd+Y)が26.50%以上、
TiO、ZrOおよびNbの合計含有量(TiO+ZrO+Nb)が23.00%以上36.00%以下、
アルカリ土類金属酸化物ROとアルカリ金属酸化物ROとの合計含有量(RO+RO)が3.50%以上、
SiO含有量に対するGd含有量のモル比(Gd/SiO)が0.00以上0.23以下、
SiO含有量に対するB含有量のモル比(B/SiO)が0.80以上1.56以下、
La含有量に対するSiO含有量のモル比(SiO/La)が0.87以下、
含有量に対するY含有量のモル比(Y/B)が0.15以上0.34以下、かつ
含有量に対するTiO含有量のモル比(TiO/B)が0.70以上1.10以下、
である光学ガラス。
[2]Al含有量が0.00%以上2.00%以下である、[1]に記載の光学ガラス。
[3]Nb含有量が0.10%以上20.00%以下である、[1]または[2]に記載の光学ガラス。
[4]WO含有量が0.00%以上0.40%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の光学ガラス。
[5]La、GdおよびYの合計含有量(La+Gd+Y)が26.50%以上35.00%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の光学ガラス。
[6]アルカリ土類金属酸化物ROとアルカリ金属酸化物ROとの合計含有量(RO+RO)が3.50%以上10.50%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の光学ガラス。
[7]B含有量に対するY含有量のモル比(Y/B)が0.17以上0.34以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の光学ガラス。
[8]SiO含有量に対するB含有量のモル比(B/SiO)が1.20以上1.56以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の光学ガラス。
[9]La含有量に対するSiO含有量のモル比(SiO/La)が0.50以上0.87以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の光学ガラス。
[10]GdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)が0.00%以上2.50%以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の光学ガラス。
[11]Al含有量が0.00%以上2.00%以下であり、
Nb含有量が0.10%以上20.00%以下であり、
WO含有量が0.00%以上0.40%以下であり、
La、GdおよびYの合計含有量(La+Gd+Y)が26.50%以上35.00%以下であり、
アルカリ土類金属酸化物ROとアルカリ金属酸化物ROとの合計含有量(RO+RO)が3.50%以上10.50%以下であり、
含有量に対するY含有量のモル比(Y/B)が0.17以上0.34以下であり、
SiO含有量に対するB含有量のモル比(B/SiO)が1.20以上1.56以下であり、
La含有量に対するSiO含有量のモル比(SiO/La)が0.50以上0.87以下であり、かつ
GdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)が0.00%以上2.50%以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の光学ガラス。
[12][1]~[11]のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、GdとTaとの合計含有量が少ない光学ガラスであって、屈折率が高い光学ガラス、および、この光学ガラスからなる光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[光学ガラス]
本発明および本明細書において、光学ガラスのガラス組成は、モル%表示の酸化物基準のガラス組成として表記される。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されてガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいうものとする。モル%表示のガラス組成では、ガラス組成はモル基準(モル%、モル比)で表示される。以下、モル%表示のガラス組成について、「モル%」を単に「%」とも記載する。
【0009】
本発明および本明細書において、構成成分の含有量が0%、0.0%もしくは0.00%または含まないもしくは導入しないとは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有量が不純物レベル程度以下であることを指す。不純物レベル程度以下とは、例えば、0.01%未満であることを意味する。「0%」は、例えば、「0.0%」または「0.00%」を意味することができる。ある成分の含有量が、「0%以上」、「0.0%以上」または「0.00%以上」であることは、その成分が任意成分であることを意味する。
【0010】
本発明および本明細書におけるガラス組成は、例えばICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)等の方法により求めることができる。例えば、定量分析は、ICP-AESを用いて各元素別に行われる。その後、分析値は酸化物表記に換算される。ICP-AESによる分析値は、例えば、分析値の±5%程度の測定誤差を含んでいることがある。したがって、分析値から換算された酸化物表記の値についても、同様に±5%程度の誤差を含んでいることがある。
【0011】
本発明および本明細書において、屈折率は、ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいう。
【0012】
本発明および本明細書において、アッベ数νdは、分散に関する性質を表す値として用いられるものであり、以下の式で表される。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
上記式中、nFは青色水素のF線(波長486.13nm)における屈折率であり、nCは赤色水素のC線(656.27nm)における屈折率である。
【0013】
以下、上記光学ガラス(単に「ガラス」と記載する場合がある。)について、更に詳細に説明する。
【0014】
<ガラス組成>
SiOは、ガラスネットワーク成分であり、その含有量が多くなるとガラスの粘性が高まるが、熔解性は低下する傾向がある。以上の観点から、SiO含有量は、1.00%以上30.00%以下である。
SiO含有量は、2.00%以上であることが好ましく、3.00%以上、4.00%以上、5.00%以上、6.00%以上、7.00%以上、8.00%以上、9.00%以上、10.00%以上、11.00%以上、12.00%以上、13.00%以上、13.50%以上、14.00%以上、14.50%以上の順により好ましい。
また、SiO含有量は、29.00%以下であることが好ましく、28.00%以下、27.00%以下、26.00%以下、25.00%以下、24.00%以下、23.00%以下、22.00%以下、21.00%以下、20.00%以下、19.00%以下、18.00%以下、17.50%以下、17.00%以下、16.50%以下の順により好ましい。
【0015】
は、ガラスネットワーク成分であり、熔融性を改善することに寄与する成分である。以上の観点から、B含有量は、1.00%以上であり、2.00%以上であることが好ましく、3.00%以上、4.00%以上、5.00%以上、6.00%以上、7.00%以上、8.00%以上、9.00%以上、10.00%以上、11.00%以上、12.00%以上、13.00%以上、14.00%以上、15.00%以上、16.00%以上、17.00%以上、17.50%以上、18.00%以上、18.50%以上、19.00%以上、19.50%以上の順により好ましい。
一方、Bは、その含有量が多くなると揮発の影響が大きくなる。したがって、光学特性制御の容易性の観点から、B含有量は、B含有量は、40.00%以下であり、39.00%以下であることが好ましく、38.00%以下、37.00%以下、36.00%以下、35.00%以下、34.00%以下、33.00%以下、32.00%以下、31.00%以下、30.00%以下、29.00%以下、28.00%以下、27.00%以下、26.00%以下、25.00%以下、24.00%以下、23.50%以下、23.00%以下、22.50%以下の順により好ましい。
【0016】
SiO含有量に対するB含有量のモル比(B/SiO)について、このモル比の値が小さくなるとガラスが高分散化する傾向があり、このモル比の値が大きくなるとガラスの屈折率が低下する傾向がある。以上の観点から、モル比(B/SiO)は、0.80以上1.56以下である。
モル比(B/SiO)は、0.85以上であることが好ましく、0.90以上、0.95以上、1.00以上、1.05以上、1.10以上、1.15以上、1.20以上、1.21以上、1.22以上、1.23以上の順により好ましい。
また、モル比(B/SiO)は、1.55以下であることが好ましく、1.54以下、1.53以下、1.52以下、1.51以下、1.50以下、1.49以下、1.48以下の順により好ましい。
【0017】
GdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)は、0.00%以上であり、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。GdおよびTaはガラスの屈折率を高める成分であるが、ガラスの低コスト化の観点から、GdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)は少ないほど好ましい。上記ガラスのGdとTaとの合計含有量(Gd+Ta)は、3.50%以下であり、3.00%以下であることが好ましく、2.50%以下、2.00%以下、1.50%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましく、0.00%であることが最も好ましい。
GdおよびTaの各含有量については後述する。
【0018】
Laは、ガラスの高屈折率化および低分散化に寄与する成分である。La含有量が少なくなると屈折率が低下する傾向があり、La含有量が多くなるとガラスが結晶化し易くなる傾向がある。以上の観点から、La含有量は、5.00%以上40.00%以下である。
La含有量は、6.00%以上であることが好ましく、7.00%以上、8.00%以上、9.00%以上、10.00%以上、11.00%以上、12.00%以上、13.00%以上、14.00%以上、15.00%以上、16.00%以上、17.00%以上、18.00%以上、19.00%以上、20.00%以上、20.50%以上、21.00%以上、21.50%以上、22.00%以上、22.50%以上の順により好ましい。
また、La含有量は、39.00%以下であることが好ましく、38.00%以下、37.00%以下、36.00%以下、35.00%以下、34.00%以下、33.00%以下、32.00%以下、31.00%以下、30.00%以下、29.00%以下、28.00%以下、27.50%以下、27.00%以下、26.50%以下、26.00%以下、25.50%以下、25.00%以下、24.50%以下、24.00%以下、23.50%以下の順により好ましい。
【0019】
Gd含有量は、0.00%以上であり、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。Gdは、ガラスの高屈折率化および低分散化に寄与する成分である。但し、Gdは、単価が高い成分であり、比重を大きくし、ガラスを結晶化し易くし、かつガラスの熔解性を低下させる成分でもある。したがって、Gdをガラスに含有させる場合には、できるだけ少ない量で含有させることが好ましい。以上の観点から、Gd含有量は、3.50%以下であり、3.00%以下、2.50%以下、2.00%以下、1.50%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましく、0.00%であることが最も好ましい。
【0020】
は、ガラスの高屈折率化および低分散化に寄与する成分である。但し、Y含有量が多くなるとガラスが結晶化し易くなる傾向がある。以上の観点から、Y含有量は、0.50%以上20.00%以下である。
含有量は、1.00%以上であることが好ましく、2.00%以上、3.00%以上、3.50%以上、4.00%以上、4.50%以上、5.00%以上の順により好ましい。
また、Y含有量は、19.00%以下であることが好ましく、18.00%以下、17.00%以下、16.00%以下、15.00%以下、14.00%以下、13.00%以下、12.00%以下、11.00%以下、10.00%以下、9.00%以下、8.50%以下、8.00%以下、7.50%以下、7.00%以下、6.50%以下、6.00%以下、5.50%以下の順により好ましい。
【0021】
La、GdおよびYの合計含有量(La+Gd+Y)は、ガラスの屈折率を高める観点から、26.50%以上であり、27.00%以上であることが好ましく、27.50%以上、27.60%以上、27.70%以上、27.80%以上、27.90%以上、28.00%以上の順により好ましい。
ガラスの結晶化を抑制する観点からは、合計含有量(La+Gd+Y)は、40.00%以下であることが好ましく、35.00%以下、34.00%以下、33.00%以下、32.50%以下、32.00%以下、31.50%以下、31.00%以下、30.50%以下、30.00%以下、29.50%以下、29.00%以下の順により好ましい。
【0022】
SiO含有量に対するGd含有量のモル比(Gd/SiO)は、0.00以上であり、0.00、0.00以上または0.00超であることができる。ガラスの低比重化の観点から、モル比(Gd/SiO)は、0.23以下であり、0.22以下であることが好ましく、0.21以下、0.20以下、0.19以下、0.18以下、0.17以下、0.16以下、0.15以下、0.14以下、0.13以下、0.12以下、0.11以下、0.10以下、0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、0.05以下、0.04以下、0.03以下、0.02以下、0.01以下の順により好ましく、0.00であることが最も好ましい。
【0023】
La含有量に対するSiO含有量のモル比(SiO/La)は、ガラスの屈折率を高める観点から、0.87以下であり、0.85以下であることが好ましく、0.80以下、0.79以下、0.78以下、0.76以下、0.75以下、0.74以下、0.73以下、0.72以下、0.71以下の順により好ましい。
モル比(SiO/La)は、0.00超であることができ、ガラス安定性維持の観点からは、0.05以上であることが好ましく、0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.35以上、0.40以上、0.45以上、0.50以上、0.55以上、0.60以上の順により好ましい。
【0024】
含有量に対するY含有量のモル比(Y/B)について、このモル比の値が小さくなるとガラスの屈折率が低下する傾向があり、このモル比の値が大きくなるとガラスが結晶化し易くなる傾向がある。以上の観点から、モル比(Y/B)は、0.15以上0.34以下である。
モル比(Y/B)は、0.16以上であることが好ましく、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上の順により好ましい。
また、モル比(Y/B)は、0.33以下であることが好ましく、0.32以下、0.31以下、0.30以下、0.29以下、0.28以下の順により好ましい。
【0025】
TiOは、ガラスの屈折率を高める成分である。但し、TiOは、ガラスの透過率を下げる成分であり、その含有量が多くなるとガラスが結晶化し易くなる傾向がある。以上の観点から、TiO含有量は、5.00%以上30.00%以下である。
TiO含有量は、6.00%以上であることが好ましく、7.00%以上、8.00%以上、9.00%以上、10.00%以上、11.00%以上、12.00%以上、13.00%以上、14.00%以上、15.00%以上、15.50%以上、16.00%以上、16.50%以上、17.00%以上の順により好ましい。
また、TiO含有量は、29.00%以下であることが好ましく、28.00%以下、27.00%以下、26.00%以下、25.00%以下、24.00%以下、23.00%以下、22.50%以下、22.00%以下、21.50%以下、21.00%以下、20.50%以下の順により好ましい。
【0026】
ZrO含有量は、0.00%以上であり、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。ZrOは、ガラスの高屈折率化および低分散化に寄与する成分である。但し、ZrOは、ガラスの粘性を高める成分であり、その含有量が多くなるとガラスが失透し易くなる傾向がある。以上の観点から、ZrO含有量は、20.00%以下であり、19.00%以下であることが好ましく、18.00%以下、17.00%以下、16.00%以下、15.00%以下、14.00%以下、13.00%以下、12.00%以下、11.00%以下、10.00%以下、9.50%以下、9.00%以下、8.50%以下、8.00%以下、7.50%以下の順により好ましい。
また、ZrO含有量は、1.00%以上であることが好ましく、2.00%以上、2.50%以上、3.00%以上、3.50%以上、4.00%以上、4.50%以上、5.00%以上、5.50%以上、6.00%以上、6.50%以上の順により好ましい。
【0027】
Nb含有量は、0.00%以上であり、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。Nbは、ガラスの高屈折率化および低分散化に寄与する成分である。Nb含有量は、ガラスの分散性を制御する観点から、20.00%以下であり、19.00%以下であることが好ましく、18.00%以下、17.00%以下、16.00%以下、15.00%以下、14.00%以下、13.00%以下、12.00%以下、11.00%以下、10.00%以下、9.00%以下、8.00%以下、7.00%以下、6.50%以下、6.00%以下、5.50%以下、5.00%以下、4.50%以下の順により好ましい。
また、Nb含有量は0.10%以上であることが好ましく、0.50%以上、1.00%以上、1.50%以上の順により好ましい。
【0028】
TiO、ZrOおよびNbの合計含有量(TiO+ZrO+Nb)は、ガラスの結晶化の抑制および高分散化の抑制の観点から、36.00%以下であり、34.00%以下であることが好ましく、33.50%以下、33.00%以下、32.50%以下、32.00%以下、31.50%以下、31.00%以下、30.50%以下、30.00%以下、29.50%以下の順により好ましい。
合計含有量(TiO+ZrO+Nb)は、ガラスの屈折率を高める観点から、23.00%以上であり、24.00%以上であることが好ましく、24.50%以上、25.00%以上、25.50%以上、26.00%以上、26.50%以上、27.00%以上、27.50%以上、28.00%以上、28.50%以上の順により好ましい。
【0029】
含有量に対するTiO含有量のモル比(TiO/B)について、このモル比の値が大きくなるとガラスが高分散化する傾向があり、このモル比の値が小さくなるとガラスの屈折率が低下する傾向がある。以上の観点から、モル比(TiO/B)は、0.70以上1.10以下である。
モル比(TiO/B)は、0.72以上であることが好ましく、0.74以上、0.75以上、0.76以上の順により好ましい。
また、モル比(TiO/B)は、1.09以下であることが好ましく、1.08以下、1.07以下、1.06以下、1.05以下、1.04以下、1.03以下の順により好ましい。
【0030】
アルカリ土類金属酸化物をROと表記し、アルカリ金属酸化物をROと表記すると、アルカリ土類金属酸化物ROとアルカリ金属酸化物ROとの合計含有量(RO+RO)は、ガラスの粘性を低下させる観点から、3.50%以上であり、3.60%以上であることが好ましく、3.70%以上、3.80%以上、3.90%以上、4.00%以上、4.10%以上、4.20%以上、4.30%以上、4.40%以上、4.50%以上、4.60%以上、4.70%以上、4.80%以上、4.90%以上、5.00%以上、5.10%以上、5.20%以上、5.30%以上、5.40%以上、5.50%以上、5.60%以上、5.70%以上の順により好ましい。
一方、ガラスの結晶化を抑制する観点からは、合計含有量(RO+RO)は、12.00%以下であることが好ましく、11.50%以下、11.00%以下、10.50%以下、10.00%以下、9.50%以下、9.00%以下、8.50%以下、8.00%以下、7.50%以下、7.40%以下、7.30%以下、7.20%以下、7.10%以下の順により好ましい。
【0031】
アルカリ金属酸化物ROの各成分の含有量について、LiO含有量は、0.00%以上であり、0.00%または0.00%超であることができる。ガラスの熱的安定性の更なる改善、ガラス転移温度の低下抑制(これによる機械加工性の改善)、化学的耐久性および耐候性の改善の観点から、LiO含有量は、5.00%以下であることが好ましく、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下の順により好ましい。
NaO、KO、RbOおよびCsOのそれぞれの含有量は、0.00%以上であり、0.00%または0.00%超であることができる。NaO、KO、RbOおよびCsOは、いずれも、ガラスの熔融性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性および機械加工性は低下傾向を示す。したがって、NaO、KO、RbOおよびCsOのそれぞれの含有量は、5.00%以下であることが好ましく、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下の順により好ましい。
RbOおよびCsOは高価な成分であり、LiO、NaOおよびKOと比較して、汎用的なガラスには適していない成分である。ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性および機械加工性を維持しつつ、ガラスの熔融性を改善し、ガラス転移温度Tgを低下させ、かつガラスの比重を低下させる観点から、上記ガラスに含まれるアルカリ金属酸化物ROは、LiO、NaOおよびKOからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0032】
上記ガラスに含まれるアルカリ土類金属酸化物ROは、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。MgO、CaO、SrOおよびBaOのそれぞれの含有量は、0.00%以上であり、0.00%または0.00%超であることができる。MgO、CaO、SrOおよびBaOのそれぞれの含有量は、ガラスの失透抑制および所望の光学特性を実現する観点から、8.00%以下であることが好ましく、7.00%以下であることがより好ましく、6.00%以下、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下の順に更に好ましい。
【0033】
Taは高価な成分である。ガラスの低コスト化の観点からは、Ta含有量は、2.50%以下であることが好ましく、2.00%以下、1.50%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましく、0.00%であることが最も好ましい。
【0034】
Al含有量は、0.00%以上であり、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。ガラスの結晶化を抑制する観点からは、Al含有量は、2.00%以下であることが好ましく、1.50%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましく、0.00%であることが最も好ましい。
【0035】
WO含有量は、0.00%以上であり、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。WOは、ガラスの高屈折率化および低分散化に寄与する成分であるが、その含有量が多くなるとガラスの透過率が低下する傾向がある。ガラスの透過率低下を抑制する観点から、WO含有量は、0.40%以下であることが好ましく、0.30%以下、0.20%以下、0.10以下の順により好ましく、0.00%であることが最も好ましい。
【0036】
Bi含有量は、0.00%以上であり、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。Biは、ガラスの高屈折率化および低分散化に寄与する成分であるが、その含有量が多くなるとガラスの透過率が低下する傾向がある。ガラスの透過率低下を抑制する観点から、Bi含有量は、0.40%以下であることが好ましく、0.30%以下、0.20%以下、0.10以下の順により好ましく、0.00%であることが最も好ましい。
【0037】
ZnO含有量は、0.00%以上であり、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。ZnOは、ガラスの熔解温度を低下させる成分であり、ガラス転移温度Tgを低下させる成分でもある。ZnO含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.50%以上、0.70%以上、0.90%以上、1.00%以上の順により好ましい。
一方、ガラスの結晶化を抑制する観点からは、ZnO含有量は、12.00%以下であることが好ましく、11.00%以下、10.00%以下、9.00%以下、8.00%以下の順により好ましい。
【0038】
その他のガラス成分に関して、環境影響に配慮すると、As含有量は、0.10%以下であることが好ましく,0.01%以下であることがより好ましく,0.00%であることが最も好ましい。また、環境影響に配慮すると、PbO含有量は、1,00%以下であることが好ましく.0.50%以下、0.10%以下の順により好ましく,0.00%であることが最も好ましい。
【0039】
Sbは、清澄剤として添加可能な成分である。少量の添加でFe等の不純物混入による光線透過率の低下を抑える働きをすることもできるが、Sbの添加量を多くすると、ガラスの着色が増加傾向を示す。したがって、Sbの添加量は、外割で0.00%以上0.10%以下であることが好ましく、より好ましくは0.00%以上0.08%以下、更に好ましくは0.00%以上0.05%以下である。外割によるSb含有量とは、Sb以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたときの質量%表示によるSbの含有量を意味する。
【0040】
SnOも清澄剤として添加可能であるが、外割りで1.00%を超えて添加するとガラスが着色したり、ガラスを加熱、軟化してプレス成形等の再成形をする際に、Snが結晶核生成の起点となって失透傾向が生じる。したがって、SnOの添加量を外割で0.00%以上1.00%以下とすることが好ましく、0.00%以上0.50%以下とすることがより好ましく、添加しないことが特に好ましい。外割によるSnO含有量とは、SnO以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたときの質量%表示によるSnOの含有量を意味する。
【0041】
<ガラス物性>
(屈折率nd)
上記ガラスは、上記ガラス組成を有することにより、高屈折率ガラスであることができる。光学素子用材料としての有用性の観点から、上記ガラスの屈折率ndは、1.9430以上であることが好ましく、1.9450以上、1.9500以上、1.9520以上の順により好ましい。
また、光学素子用材料としての有用性の観点から、上記ガラスの屈折率ndは、1.9800以下であることが好ましく、1.9790以下、1.9780以下、1.9770以下、1.9760以下、1.9750以下、1.9740以下、1.9730以下、1.9720以下、1.9710以下、1.9700以下、1.9690以下、1.9680以下、1.9670以下、1.9660以下、1.9650以下、1.9640以下、1.9630以下、1.9620以下、1.9610以下、1.9600以下、1.9590以下、1.9580以下、1.9570以下、1.9560以下、1.9550以下の順により好ましい。
【0042】
(アッベ数νd)
上記ガラスは、上記ガラス組成を有することにより、低分散性を示すことができる。
光学素子用材料としての有用性の観点から、上記ガラスのアッベ数νdは、30.00以上であることが好ましく、30.20以上、30.50以上、31.00以上、31.50以上、32.00以上、32.10以上であることがより好ましい。
また、光学素子用材料としての有用性の観点から、上記ガラスのアッベ数νdは、34.00以下であることが好ましく、33.50以下、33.00以下、32.50以下の順により好ましい。
【0043】
(比重)
光学系を構成する光学素子では、光学素子を構成するガラスの屈折率と光学素子の光学機能面(制御しようとする光線が入射、出射する面)の曲率によって、屈折力が決まる。光学機能面の曲率を大きくしようとすると、光学素子の厚みも増加する。その結果、光学素子が重くなる。これに対し、屈折率の高いガラスを使用すれば、光学機能面の曲率を大きくしなくても大きな屈折力を得ることができる。
以上より、ガラスの比重の増加を抑えつつ、屈折率を高めることができれば、一定の屈折力を有する光学素子の軽量化が可能となる。
以上の観点から、上記ガラスの比重は、5.50以下であることが好ましく、5.20以下、5.19以下、5.18以下、5.17以下、5.16以下、5.15以下、5.10以下、5.05以下、5.00以下の順により好ましい。
比重が低いほど光学素子の軽量化の観点から好ましいため、上記ガラスの比重について、下限は特に限定されない。一形態では、上記ガラスの比重は、例えば、4.80以上、4.85以上、4.90以上、4.92以上、4.93以上、4.94以上または4.95以上であることができる。
本発明および本明細書において、「比重」は、アルキメデス法によって測定される値とする。
【0044】
(着色度λ、λ70
ガラスの光線透過性、詳しくは、短波長側の光吸収端の長波長化が抑制されていることは、着色度λおよびλ70の1つ以上によって評価することができる。着色度λとは、紫外域から可視域にかけて、厚さ10±0.1mmのガラスの分光透過率(表面反射損失を含む)が5%となる波長を表す。λ70は、λについて記載した方法で測定される分光透過率が70%となる波長を表す。後掲の表に示すλおよびλ70は、250~700nmの波長域において測定された値である。本発明および本明細書におけるガラスの分光透過率T(%)は、光学研磨された2つの互いに平行な平面を有するガラス試料に対し、かかる平面のうちの一面に垂直に入射する光の強度をIinとし、ガラス試料を透過してもう一方の面から射出した光の強度をIoutとしたとき、
T(%)=Iout/Iin×100
で表される。
着色度λおよびλ70によれば、分光透過率の短波長側の吸収端を定量的に評価することができる。例えば、接合レンズ作製のためにレンズ同士を紫外線硬化型接着剤により接合する際等には、光学素子を通して接着剤に紫外線を照射し接着剤を硬化させることが行われる。効率よく紫外線硬化型接着剤の硬化を行う観点からは、分光透過率の短波長側の吸収端が短い波長域にあることが好ましい。この短波長側の吸収端を定量的に評価する指標として、着色度λおよびλ70の1つ以上を用いることができる。
上記ガラスのλは、好ましくは370nm以下のλを示すことができる。λは、369nm以下であることがより好ましく、368nm以下であることが更に好ましい。λは、短い波長ほどより好ましく、下限は特に限定されるものではない。一形態では、λは、340nm以上、341nm以上、342nm以上、343nm以上、344nm以上、345nm以上、346nm以上または347nm以上であることができる。
上記ガラスは、好ましくは440nm以下のλ70を示すことができる。λ70は、439nm以下、438nm以下、437nm以下、436nm以下、435nm以下、434nm以下、433nm以下、432nm以下、431nm以下、430nm以下、429nm以下、428nm以下、427nm以下の順により好ましい。λ70は、短い波長ほどより好ましく、下限は特に限定されるものではない。一形態では、λ70は、390nm以上、391nm以上、392nm以上、393nm以上または394nm以上であることができる。
【0045】
(ガラス転移温度Tg)
機械加工性の観点(詳しくは、切断、切削、研削、研磨等のガラスの機械加工を行う際に破損しにくいという観点)からは、上記ガラスのガラス転移温度Tgは、680℃以上であることが好ましく、685℃以上、686℃以上、687℃以上、688℃以上、690℃以上、691℃以上、692℃以上、693℃以上、694℃以上、695℃以上、696℃以上、697℃以上、698℃以上、699℃以上、700℃以上の順により好ましい。
一方、アニール炉や成形型への負担軽減の観点からは、上記ガラスのガラス転移温度Tgは、750℃以下であることが好ましく、750℃以下、745℃以下、744℃以下、743℃以下、742℃以下、741℃以下、740℃以下、735℃以下、730℃以下、725℃以下の順により好ましい。
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析装置によって昇温速度を10℃/分にして求められる。
【0046】
<光学ガラスの製造方法>
上記光学ガラスは、目的のガラス組成が得られるように、原料である酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物等を秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとし、熔融容器内で加熱、熔融し、脱泡、撹拌を行い均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作り、これを成形することによって得ることができる。具体的には公知の熔融法を用いて作ることができる。
【0047】
[プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、およびそれらの製造方法]
本発明の他の一態様は、
上記光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材;
上記光学ガラスからなる光学素子ブランク、
に関する。
【0048】
本発明の他の一態様によれば、
上記光学ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法;
上記光学ガラスプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法;
上記光学ガラスを光学素子ブランクに成形する工程を備える光学素子ブランクの製造方法、
も提供される。
【0049】
光学素子ブランクとは、目的とする光学素子の形状に近似し、光学素子の形状に研磨しろ(研磨により除去することになる表面層)、必要に応じて研削しろ(研削により除去することになる表面層)を加えた光学素子母材である。光学素子ブランクの表面を研削、研磨することにより、光学素子が仕上げられる。一形態では、上記ガラスを適量熔融して得た熔融ガラスをプレス成形する方法(ダイレクトプレス法と呼ばれる。)により、光学素子ブランクを作製することができる。他の一形態では、上記ガラスを適量熔融して得た熔融ガラスを固化することにより光学素子ブランクを作製することもできる。
【0050】
また、他の一形態では、プレス成形用ガラス素材を作製し、作製したプレス成形用ガラス素材をプレス成形することにより、光学素子ブランクを作製することができる。
【0051】
プレス成形用ガラス素材のプレス成形は、加熱して軟化した状態にあるプレス成形用ガラス素材をプレス成形型でプレスする公知の方法により行うことができる。加熱、プレス成形は、ともに大気中で行うことができる。プレス成形後にアニールしてガラス内部の歪を低減することにより、均質な光学素子ブランクを得ることができる。
【0052】
プレス成形用ガラス素材は、そのままの状態で光学素子ブランク作製のためのプレス成形に供されるプレス成形用ガラスゴブと呼ばれるものに加え、切断、研削、研磨等の機械加工を施してプレス成形用ガラスゴブを経てプレス成形に供されるものも含む。切断方法としては、ガラス板の表面の切断したい部分にスクライビングと呼ばれる方法で溝を形成し、溝が形成された面の裏面から溝の部分に局所的な圧力を加えて、溝の部分でガラス板を割る方法や、切断刃によってガラス板をカットする方法等がある。また、研削、研磨方法としてはバレル研磨等が挙げられる。
【0053】
プレス成形用ガラス素材は、例えば、熔融ガラスを鋳型に鋳込みガラス板に成形し、このガラス板を複数のガラス片に切断することにより作製することができる。または、適量の熔融ガラスを成形してプレス成形用ガラスゴブを作製することもできる。プレス成形用ガラスゴブを、再加熱、軟化してプレス成形して作製することにより、光学素子ブランクを作製することもできる。ガラスを再加熱、軟化してプレス成形して光学素子ブランクを作製する方法は、ダイレクトプレス法に対してリヒートプレス法と呼ばれる。
【0054】
[光学素子およびその製造方法]
本発明の他の一態様は、
上記光学ガラスからなる光学素子
に関する。
【0055】
上記光学素子は、上記光学ガラスを用いて作製される。上記光学素子において、ガラス表面には、例えば、反射防止膜等の多層膜等、一層以上のコーティングが形成されていてもよい。
【0056】
また、本発明の一態様によれば、
上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法、
も提供される。
【0057】
上記光学素子の製造方法において、研削、研磨等の機械加工は公知の方法を適用して行うことができ、加工後に光学素子表面を十分洗浄、乾燥させる等することにより、内部品質および表面品質の高い光学素子を得ることができる。このようにして、上記光学ガラスからなる光学素子を得ることができる。光学素子としては、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズ等の各種のレンズ、プリズム等を例示することができる。
【0058】
また、上記光学ガラスからなる光学素子は、接合光学素子を構成するレンズとしても好適である。接合光学素子としては、レンズ同士を接合したもの(接合レンズ)、レンズとプリズムを接合したもの等を例示することができる。例えば、接合光学素子は、接合する2つの光学素子の接合面を形状が反転形状となるように精密に加工(例えば、球面研磨加工)し、接合レンズの接着に使用される紫外線硬化型接着剤を塗布し、貼り合わせてからレンズを通して紫外線を照射し接着剤を硬化させることで作製することができる。このように接合光学素子を作製するために、上記光学ガラスは好ましい。接合する複数個の光学素子を、アッベ数νdが相違する複数種のガラスを用いてそれぞれ作製し、接合することにより、色収差の補正に好適な素子とすることができる。
【実施例0059】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
<No.001~118>
以下の表に示すガラス組成(単位:モル%)になるように、各成分を導入するための原料としてそれぞれ相当する硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸等を用い、原料を秤量し、十分に混合して調合原料とした。
この調合原料を白金製坩堝に入れ、1350℃に設定された炉内で加熱し2時間熔融した。熔融ガラスを撹拌して均質化した後、熔融ガラスを予熱した鋳型に流し込み、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラス転移温度程度の温度で約30分間保持した後、徐冷速度-30℃/時間で4時間徐冷し、その後炉内で室温まで放冷することにより、以下の表に示すNo.001~118の各光学ガラスを得た。
このようにして得られた光学ガラスの諸物性を以下の表に示す。
光学ガラスの諸物性は、以下に示す方法により測定した。
【0061】
<光学ガラスの物性評価>
(1)屈折率ndアッベ数νd
得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率ndおよびアッベ数νdを測定した。
【0062】
(2)ガラス転移温度Tg
ガラスを乳鉢で十分粉砕したものを試料とし、試料容器として白金製のセルを使用し、Rigaku社製の示差走査熱量分析装置(DSC8271)によって、昇温速度を10℃/分にしてガラス転移温度Tgを測定した。
【0063】
(3)比重
アルキメデス法により比重を測定した。
【0064】
(4)着色度λ、λ70
互いに対向する2つの光学研磨された平面を有する厚さ10±0.1mmのガラス試料を用い、分光光度計により、分光透過率T(%)を測定した。Tが5%になる波長(nm)をλとし、Tが70%になる波長(nm)をλ70とした。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【0075】
【表11】
【0076】
【表12】
【0077】
[実施例2]
実施例1で得られた各種ガラスを使用し、プレス成形用ガラス塊(ガラスゴブ)を作製した。このガラス塊を大気中で加熱、軟化し、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
【0078】
[実施例3]
実施例1において作製した熔融ガラスを所望量、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
【0079】
[実施例4]
実施例1において作製した熔融ガラスを固化して作製したガラス塊(光学素子ブランク)アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
【0080】
[実施例5]
実施例2~4において作製した球面レンズを、他種のガラスからなる球面レンズと貼り合せ、接合レンズを作製した。実施例2~4において作製した球面レンズの接合面は凸面、他種のガラスからなる球面レンズの接合面は凹面であった。上記2つの接合面は、互いに曲率半径の絶対値が等しくなるように作製した。接合面に光学素子接合用の紫外線硬化型接着剤を塗布し、2つのレンズを接合面同士で貼り合せた。その後、実施例2~4において作製した球面レンズを通して、接合面に塗布した接着剤に紫外線を照射し、接着剤を固化させた。
上記のようにして接合レンズを作製した。接合レンズの接合強度は十分高く、光学性能も十分なレベルのものであった。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを得ることができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。