(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003364
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】レーザー加工方法と装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/384 20140101AFI20241226BHJP
【FI】
B23K26/384
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024095707
(22)【出願日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】23181014
(32)【優先日】2023-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518144274
【氏名又は名称】アガトン・アクチエンゲゼルシャフト・マシーネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・シュトレール
(72)【発明者】
【氏名】ジョスカン・プファフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ブログレ
(72)【発明者】
【氏名】ユルク・マルティ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AD12
4E168AD13
4E168AD14
4E168AD15
4E168AD18
4E168CB01
4E168CB03
4E168CB04
4E168CB07
4E168JA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高品質部品において、ゼロ又は所定のテーパー角度で大きく深い穴及び切り抜きの一方又は両方を製造可能なレーザー加工方法及び装置を提供する。
【解決手段】被加工物(10)と走査軸線(34)との少なくとも一方を第1相対位置に位置決めすることと、レーザー光線(20)を表面領域内の加工体積に照射することと、被加工物とレーザー光線(20)との間の相対運動を引き起こすことと、レーザー光線(20)を第1切断経路に沿って走査することとをさらに備える。第1加工体積を除去し、レーザー光線(20)を第2加工体積に照射することと、レーザー光線(20)を第2切断経路に沿って走査することと、第2側壁を形成すべく第2加工体積(の少なくとも一部を除去することとをさらに備える。
【選択図】
図4a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 走査軸線(34)に沿って走査ユニット(4)内を伝播するレーザー光線(20)を生成することと、
- 保持部(11)に支持かつ保持されていて、かつ前記走査軸線(34)に対して相対的に位置決め可能である、被加工物(10)を提供することと、
を備えた、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工する方法(100)であって、前記方法(100)が、
a)表面域(30)及び深さ(d)を持つ前記被加工物(10)の加工体積(22)を決定するステップと、
b)前記加工体積(22)と前記走査軸線(34)との間の第1相対位置を決定し、前記第1相対位置において前記走査軸線(34)が前記加工体積(22)の表面(21)に対して略垂直に配向され、そして
前記被加工物(10)及び前記走査軸線(34)の一方又は両方を前記第1相対位置に位置決めするステップと、
c)前記レーザー光線(20)を前記表面域(30)内の前記加工体積(22)に照射し、前記被加工物(10)と前記レーザー光線(20)との間に相対運動を生じさせ、前記レーザー光線(20)を第1切断経路(29)に沿って走査するステップと、
d)第1テーパー特性(23)を持つ第1側壁(24)を持つ第1切り抜き(25)を形成すべく、前記加工体積(22)の少なくとも一部を除去するステップと、
e)前記第1側壁(24)を含み、予め定めた特性(28)を持つ第2側壁(27)によって一部制限された第2加工体積(26)を決定するステップと、
f)前記第2加工体積(26)と前記走査軸線(34)との間の第2相対位置を決定して、前記被加工物(10)及び前記走査軸線(34)の一方又は両方を前記第2相対位置に位置決めするステップと、
g)予め定めた傾斜角度(β)で前記被加工物(10)に対して前記走査軸線(34)を配向し、前記レーザー光線(20)を前記第2加工体積(26)に照射し、前記レーザー光線(20)を第2切断経路(36)に沿って走査し、第2側壁(27)を形成すべく前記第2加工体積(26)の少なくとも一部を除去するステップと
をさらに備える、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工する方法(100)。
【請求項2】
ステップe)では、前記第2加工体積(26)がm個の区画に分割され、mはm≧1であり、好ましくは1から4であり、
ステップf)では、前記m個の区画のうちの1区画と前記走査軸線(34)との間の相対位置が決定され、前記区画及び走査軸線の一方又は両方がこの相対位置に位置決めされ、
ステップg)では、前記走査軸線(34)が前記区画上に予め定めた傾斜角度(β)の下で配向され、前記第2切断経路(36)に沿って前記レーザー光線(20)を走査することで前記区画を照射し、前記区画の前記第2側壁(27)を形成すべく前記区画から材料を除去し、
前記第2加工体積(26)の前記材料が除去されるまでステップe)からステップg)を繰り返す、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
ステップa)で決められた、前記被加工物(10)の前記加工体積(22)が、n個の層に細分化され、
各層が、n>1のとき、外周部(31)によって制限された表面域(30)及び厚み(t)によって決定され、
前記n個の層のそれぞれが、ステップb)からステップd)にしたがって加工される層の個々の加工体積(22)を決め、
前記方法が、前記被加工物(10)の切り抜きが決められた形態に達するまで、ステップb)からステップg)を繰り返すことを含む、
請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記n個の層の少なくとも1層の前記厚み(t)が、材料の検出された変化によって決定される、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記被加工物(10)の前記決められた切り抜きが、止まり穴と、貫通穴と、貫通穴の一端又は両端に座ぐりを持つ貫通穴と、一定の断面又は異なる断面を持つ切り抜きとのうち、いずれかである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記予め定めた特性(28)に、正のテーパー特性と、ゼロテーパー特性と、負のテーパー特性とが含まれている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記n個の層のそれぞれの厚み(t)が0.5mmから2mmまでの間である、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記n個の層の各層からの材料が、0.1μmと25μmの間の走査間、前記走査軸線(34)の方向における軸方向のずれを伴う前記レーザー光線(20)の走査を繰り返すことで、除去される、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記第1切断経路(29)が、前記表面域(30)の外周部(31)から前記表面域(30)の中心部(32)につながるか互いに反対方向に延びるらせん形状を持つか、もしくは
前記第1切断経路(29)が、前記外周部(31)の少なくとも一部の一連のずらされた曲線である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記第1切断経路(29)が、複数本の線と、交差線間に横方向のずれを持つ複数本の交差線との一方又は両方のパターンである、請求項1から8に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記予め定めた傾斜角度(β)は、前記レーザー光線の発散角度よりも大きく、典型的には3°と15°の範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記予め定めた特性(28)が達成されるまで、前記第2加工体積(26)が、軸方向のずれを伴う前記レーザー光線(20)の複数の走査によって、層状に加工される、請求項1又は請求項3から11に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記第2加工体積(26)のm個の区画のそれぞれは、前記区画の予め定めた特性(28)が、前記m個の区画の次の区画が加工される前に達成されるまで、加工される、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項14】
前記決められた切り抜きの加工が、前記決められた切り抜きの頂部から行われ、
そして次に前記決められた切り抜きの底部から、単一の切り抜きを形成すべく複数の前記切り抜きがつながる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を使って、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工するレーザー加工装置(1)であって、
走査軸線(34)に沿ってレーザー光線(20)を生成すべく、前記レーザー光線(20)を前記被加工物(10)上に、前記被加工物の表面(21)に略垂直な第1切断方向に配向すべく、かつ前記レーザー光線(20)を前記被加工物(10)上に、第2切断方向に配向すべく設定された、少なくとも1本の光学軸線及び少なくとも1本の機械軸線を備えて、走査ユニット(4)を持つレーザーシステムと、
前記レーザー加工装置(1)の駆動ユニットにより、少なくとも1本の回転軸線を中心に移動可能であること及び少なくとも1本の並進軸線に沿って移動可能であることの一方又は両方である、前記被加工物(10)を支持かつ保持する保持部(11)と
を備えるレーザー加工装置(1)において、
第2切断経路(36)に沿うこと及び前記レーザー加工装置(1)を少なくとも1本の機械軸線を制御することの一方又は両方で、前記決められた切り抜きを加工すべく前記被加工物(10)を動かす、
レーザー加工装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法及び装置に関し、特に、ゼロと所定のテーパー加工カットとの少なくとも一方を形成し、切り抜き(カットアウト)及び穴の一方又は両方を被加工物に形成する、レーザー加工方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼のような金属、チタン、マグネシウム、アルミニウムのような軽金属、もしくはセラミック、サーメット、炭化タングステン、ダイヤモンド焼結体(PCD)、CVDダイヤモンド(CVD成長法による人工ダイヤモンド)、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)のような、硬質と脆性との少なくとも一方の材料の被加工物を、コーティング有又はコーティング無で、加工することは困難なことが知られている。例えば、超硬材料からなる刃先交換式インサートに、インサートをツールホルダー(工具保持部)に固定する1つ又は2つの皿穴を備える又は備えないインサート穴配置の穴あけは困難である。このような被加工物を加工するのに、レーザー加工方法及び装置が一般に知られているが、走査ユニットを使って刃先交換式インサートにゼロテーパー穴を開けることはあまり知られていない。
【0003】
このような被加工物に、高精度のボア穴を含む穴あけ又は切断を行うのに、ドリル又は切断レーザーを使うことが知られている。レーザーによる穴あけ又は切断は、高速で柔軟性が高く、ボア穴だけでなく複雑な形状の穴あけも可能であり、又は高精度の切断も可能であるため有利である。ツイストドリルを持つ通常の穴あけ方法と比較すると、硬い材料と、加工される穴の直径が小さい場合との少なくとも一方の場合、レーザー穴あけ又は切断は、加工工具の摩耗やひび割れを避ける非接触加工により、より安価である。
【0004】
レーザー加工では、レーザー光線発生装置を光学系と組み合わせて使い、加工する被加工物にレーザー光線を照射する。被加工物へのレーザー光線の衝突は、被加工物の材料を局所的に、溶融と、気化と、アブレートとのうち少なくともいずれかを行い、被加工物に穴又は切れ目を形成又は延在させる。被加工物上の衝突点の位置は、レーザー光線及び被加工物の一方又は両方を互いに相対的に移動させることによって制御され得る。それによって穴又は切れ目の形状を制御し得る。穴のレーザー加工では、テーパー穴が形成されることが知られていて、このテーパー穴では入口直径が、穴の切り抜きの直径、又は貫通穴の場合には出口直径よりも大きくなる。
【0005】
高精度及び深穴のレーザー穴あけは、トレパン加工又はヘリカル加工によって実行可能である。トレパニング又はヘリカルドリリングは、レーザー光線の入射角度を変えられ、かつレーザー光線を高速で回転させられる、特殊な光学系を使う。被加工物は静止したままである。これらの加工はいずれも、穴のテーパー角度を制御する複雑な光学的セットアップを必要とする。そのため、これらの方法によるテーパー角度のないレーザー穴加工は、穴加工にしか使えないが、他のレーザー加工には使えない特殊で複雑な装置及び方法を含んでいる。これらの周知の方法は、一般に専用装置で実施されるので、走査ユニットを使う従来のレーザー加工装置では実施できない。
【0006】
未決定又は未選択のテーパーエッジを回避するための別のアプローチは、被加工物を物理的に移動させることであり、特に、レーザー光線を同じ入射角度に維持しながら、被加工物を支持する保持又はクランプ装置を移動させることである。この方法は、レーザー加工装置による被加工物の通常4軸又は5軸の、並進運動と回転運動との少なくとも一方に高い精度が必要であり、また、ゼロテーパーエッジ又は決められたテーパーエッジを達成するために高度な制御ソフトウェアが必要である。さらに追加的に又は代替的に、レーザー装置、特に走査ユニットを被加工物に対して相対的に移動させるようにしてよい。
【0007】
特許文献1から、被加工物の特徴を加工するレーザーシステム及び方法が知られている。特に、被加工物に形成された切り口又はカーフのテーパーを制御する光線調整が記載されている。光軸線に沿って伝搬される集光レーザー光線によって、切り口の側壁に望ましいテーパー特性を生成するために、光軸線の入射角度及び方位角度は、被加工物に対して相対的に移動させられる。切断加工中、被加工物及びビーム軸線は、レーザー光線が被加工物を積極的に加工している間、特に切断経路に沿って被加工物を照射している間、共に相対運動している。この文献によると、加工スポットは2つの直線軸を使って中心からずれた位置に移動され、これにより加工面への梁の入射角度が定められる。光軸線の速度に比べてこれらの軸線の速度が遅いこと、そして所望の入射角度を達成するのに被加工物を長い距離移動させる必要があることから、加工速度は遅い。
【0008】
特許文献2から、レーザー加工又はスクライビングによって生成される切り口のテーパーを低減する方法及び装置が知られている。この方法は、スクライブ又はカットのテーパーを低減する戦略的なレーザー位置決めに基づいている。したがって、この方法は、レーザー光線を基板の表面に第1切断方向に向け、及びレーザー光線を光線傾斜角度で傾斜させ、さらにレーザー光線を基板の表面に第1切断方向に垂直な第2方向に向け、そしてレーザー光線を傾斜角度で傾斜させることを備える。カットは、レーザー光線を基板の表面に適用しながらレーザー光線を照準して第1切断方向に切断し、レーザー光線を基板の表面に適用しながらレーザー光線を第2方向に照準して第1切断方向及び第1切断方向とは反対の第2切断方向の一方に切断することによって形成される。記載された方法は、光線を傾斜させる特定の装置を必要とするため、柔軟性が失われ、加工速度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/263212号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/132629号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、本発明の目的は、高品質部品において、ゼロテーパー角度及び所定のテーパー角度の一方又は両方で、特に負のテーパー角度で、明確な切り抜き、大きく深い穴及び切り抜きの一方又は両方を製造可能なレーザー加工方法及び装置を提供することである。レーザー加工装置は走査ユニットを使えるので、加工能力及びスループットが高い。別の目的は、レーザー加工方法及び装置を提供することであり、後加工及び洗浄作業を排除し、再現性と、信頼性と、速度と、精度とを向上させ、それにより製造費用を削減することである。さらに、このようなレーザー加工方法は、処理の柔軟性と、高い切断速度と、非接触操作とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点では、決められた切り抜きを被加工物にレーザー加工する方法であって、以下の
- 走査軸線に沿って走査ユニット内を伝播するレーザー光線を生成することと、
- 保持部に支持かつ保持されていて、かつ走査軸線に対して相対的に位置決め可能な被加工物を提供することと、
を備える方法を提供する。この方法は以下の
a)表面域及び深さを持つ被加工物の加工体積を決定するステップと、
b)加工体積と走査軸線との間の第1相対位置を決定し、この第1相対位置において走査軸線が加工体積の表面に対して略垂直に配向され、そして被加工物及び走査軸線の一方又は両方を第1相対位置に位置決めするステップと、
c)レーザー光線を、表面域内の加工体積に照射し、被加工物とレーザー光線との間に相対運動を生じさせ、レーザー光線を第1切断経路に沿って走査するステップと、
d)第1テーパー特性を持つ第1側壁を持つ第1切り抜きを形成すべく、加工体積の少なくとも一部を除去するステップと、
e)第1側壁を含み、予め定めた特性を持つ第2側壁によって一部制限された第2加工体積を決定するステップと、
f)第2加工体積と走査軸線との間の第2相対位置を決定し、被加工物及び走査軸線の一方又は両方を前記第2相対位置に位置決めするステップと、
g)予め定めた傾斜角度βで被加工物に対して走査軸線を配向して、レーザー光線を第2加工体積に照射し、レーザー光線を第2切断経路に沿って走査し、第2側壁を形成すべく第2加工体積の少なくとも一部を除去するステップと
を備える。
【0012】
本発明では、この方法は、少なくとも2つの異なる加工ストラテジー(目標達成策)の組み合わせを使う。第1加工ストラテジーでは、レーザー光線は0°に近い入射角度で、すなわち加工される被加工物の表面、すなわち定義された加工体積の上面に垂直な入射角度で照射され、高い材料除去率をもたらすが、テーパー特性をもたらす。第2方法では、レーザー光線は大きな入射角度(通常80°超)を持って照射される。この高い入射角度では、材料除去率は第1ストラテジーよりも低くなる。しかしながら、高い表面品質を達成できて、そして第1ストラテジーから生じる望ましくないテーパー角度を除去できる。
【0013】
さらに、この方法は、走査ユニットを使ったレーザー加工に起因するテーパー角度の問題と、深い切り抜きを形成することによる比材料除去率の低下の問題とに対処している。深さ方向に複数のステップを使うことによって、この方法は、走査を繰り返すこと、又はレーザー光線のパスを繰り返すことによって、完全な材料除去用に、走査された切り抜きの特性を制御できるようにしている。
【0014】
走査ユニットを使った切断面の達成可能なテーパー角度は、通常5°超である。これは、傾斜したアブレーション面に投影する際のレーザー強度の低下によるもので、その結果、アブレーションは臨界角度で停止する。走査ユニットを使う従来のレーザー穴あけ方法とは異なり、本明細書で説明する方法は、所定のテーパー角度及び入口形状、研磨形状、又は出口形状、輪郭精度、表面特性といった品質変数を持つ切り抜きを形成できる。提案されたレーザー加工法を持つと、正円錐形、すなわち正テーパーの円筒形と負円錐形、すなわち負テーパーの穴、並びに漏斗状のボア、アワー型の形状の穴又はラバルノズル形状の穴を形成できる。
【0015】
レーザー加工方法は、硬質と、超硬質と、(例えば刃先交換式インサートに使うような)脆性材料とのうち少なくとも一種からなる被加工物、もしくは異なる材料と異なる高さとの少なくとも一方の複数の層を備える多層基板を含む被加工物をレーザー加工すべく、好ましくは構成されている。
【0016】
一実施形態では、被加工物における加工された切り抜き又は形成されるものは、止まり穴(ブラインド穴、ポケット)、貫通孔(スルーホール)、貫通孔の一端又は両端に座ぐり又は面取りを持つ貫通孔、もしくは断面が一定又は変化する切り抜きである。このような切り抜きの一例として、インサートを工具保持部に固定するインサート穴配置として、座ぐりを持つ又は持たない貫通穴がある。
【0017】
レーザー加工に使うレーザー光線は、光学系として走査ユニットを持つレーザーシステムによって、レーザー処理変数下で生成される。走査ユニットは、移動可能なユニットとして構成し得る。レーザー光線は、走査ユニットに到達する前に形状を整えるべく、一組の光学系を通過するようにしてよい。レーザー光線は、走査軸線に沿って走査ユニット内を延伸させてよい。レーザー光線は、通常、走査ユニット及び被加工物の間に配置された集束レンズによって被加工物の表面に集束される。
走査ユニットは、レーザー光線の焦点を、特に、2次元内又は好ましくは3次元内の一平面内で動かすことと、被加工物の所望の領域にわたって走査移動させることとの一方又は両方を行うべく構成されている。この場合、レーザー光線は、被加工物の表面上での移動を実現するために、走査ユニットの光学手段によって屈折と、回折と、反射とのうち少なくともいずれかがなされる。走査ユニットは、被加工物上、ひいては加工空間上に、レーザー光線の衝突点とレーザー光線の焦点との一方又は両方の、ほぼ自由な三次元配向を提供するように構成されてよい。
【0018】
さらに、この方法は、被加工物が保持部に支持及び保持され、走査軸線に対して位置決め可能であることを含む。走査ユニットによるレーザー梁の制御された移動に加えて又は代替的に、保持部は、支持された被加工物を、少なくとも1つの回転軸線についての相対移動及び少なくとも1つの並進軸線に沿った相対移動の一方又は両方を、制御された方法で走査軸線に対して行うように構成し得る。レーザー光線はスポットに集光されるので、被加工物を加工するには、レーザー光線と被加工物との間の相対運動が必要となる。
被加工物におけるレーザー光線の焦点位置は、レーザー光線及び被加工物の一方又は両方を相対的に移動させることによって制御されてよい。可動な走査ユニットによるレーザー光線の移動は、装置軸線による保持部の移動よりも速いので、材料除去中の相対運動は、好ましくは、走査ユニットを介したレーザー光線の制御された移動によって行われる。
【0019】
加工ステップ間に、被加工物は、並進方向及び回転方向の一方又は両方の動きを持つレーザー加工装置の駆動によって、新たに決められた相対位置に移動可能である。代替的に、レーザー光線が被加工物を走査しながら被加工物を順次移動させる、異なる動作の組み合わせ(ハイブリッドな動作)を使ってもよい。
【0020】
一実施形態では、被加工物は、レーザー加工装置の(回転A軸線と、B軸線と、並進Z軸線といった)複数の軸線について、決定された相対位置に制御された方法で移動される。走査ユニットは、好ましくはX軸線と、Y軸線と、Z軸線との3つの光軸線を含む。
【0021】
レーザー加工方法は、被加工物の加工体積を定めるステップa)を備える。加工体積は、表面域、特に入口周囲、底部又は接地部又は出口周囲、及び深さ又は高さのような1つ又はそれより多くの特性によって、もしくは入口周囲から底部又は出口周囲までの横方向表面によって決定されてよい。以下では、表面域は、円、楕円、長円、矩形、又は多角形、又は他の閉じた形を持つ外周によって制限される加工される被加工物の表面部分を特徴付ける。加工体積は、円筒形又は円錐形又は他の任意の適切な三次元形状を持ち得る。特に、加工体積は、深さにわたって変化する外周値及び形状の一方又は両方を持ち得る。表面域は、少なくとも部分的に加工される表面部分とみなせる。
【0022】
本発明では、加工体積と走査軸線との間の第1相対位置が決定される。好ましくは、このステップb)における走査軸線は、加工体積の表面に対して略垂直に、すなわち法線方向に配置される。相対運動によって、被加工物及び走査軸線の一方又は両方は、決定された第1相対位置にもたらされる。好ましくは、被加工物は、装置軸線の制御された作動によって第1相対位置に移動される。
【0023】
レーザー加工方法のステップc)では、レーザー光線は、走査軸線に沿って、表面域にほぼ垂直に、この表面域内の被加工物に照射される。レーザー光線及び被加工物の一方又は両方が互いに相対的に移動されることにより、レーザー光線が第1切断経路に沿って移動する。言い換えると、レーザー光線は、表面域内で第1切断経路に沿って走査される。第1切断経路は、相対運動の適切な制御によって、加工される表面部分がレーザー光線によって異なる方法で横断可能に構成され得る。例えば、レーザー光線は、らせん状の曲線に沿って走査し得る、もしくは規則的に間隔を空けた平行線に沿った経路で走査し得る。
代替的に、レーザー光線は、隣り合う経路間に特定のオフセットを持つ曲線又は一連の平行な曲線又は一連の同心円に沿って走査してよい。通常、穴加工の場合、表面域は閉曲線である外周によって制限され、円筒形の穴を加工する場合、このような外周曲線は円形である。本発明では、この曲線の形状は、自由に形成された外周の場合、不規則な形状を含んでいてもよい。この除去には、他の走査又は切断経路も可能である。決められた切り口及び加工のストラテジー(目標達成策)によっては、表面域の中央部分が加工されずに残るようにするだろう。
【0024】
第1切断経路及び第2切断経路の一方又は両方は、その形状、始点及び終点、並びにレーザー光線が表面部分を走査する方向によって決めてよい。切断経路を変化させることにより、特定の材料除去率を最適化して、高速な加工を保証できる。
【0025】
レーザー光線は、様々な走査運動を使って、切り抜きの表面域を横切って数回走査するようにすると、加工体積及びさらに除去可能な加工体積を層状に除去できる。レーザー光線の後続の各走査は、材料の除去に応じて、通常0.1μmと25μmの間の、走査間の軸方向のずれ(オフセット)を持つようにしてよいだろう。
レーザー光線の後続の各走査は、加えて横方向のずれを持つようにしてもよい。言い換えると、後続の走査によって走査される表面部分は、先の走査よりも小さくなる。横方向のずれは、加工される形成物の形状特性に依存する。走査速度と、レーザー出力と、切断経路の始点及び終点の一方又は両方といった他の変数とを制御することにより、任意の1回の走査における材料除去の深さを制御できる。
【0026】
ステップd)の結果、加工体積の切り欠きは第1テーパー特性を持つ。第1テーパー特性は、材料特性、加工変数、及び加工体積の影響を受け、通常5°超である。これは実験的に決められる。加工体積、ここでいう第1加工体積を決める際に、この決められるテーパー特性を考慮に入れることは、全体的な加工時間にとって有益である。
【0027】
本発明によるレーザー加工方法は、さらに、ステップe)第1テーパー特性を持つ第1側壁を備え、予め定めた特性を持つ第2側壁まで延在する第2加工体積を決めるステップを備える。第1切り抜きが穴である場合、第2加工体積は、ほぼ輪の形状を持つだろう。予め定めた特性は、正のテーパー特性と、ゼロのテーパー特性と、負のテーパー特性とを含んでよい。そのため、穴として構成された加工される、決められた切り抜きの入口直径は、切断直径として、又は貫通穴の場合の出口直径として、より大きく、等しく、又は小さくなり得る。
【0028】
決められた第2材料体積は、決定された第2相対位置におけるレーザー光線及び被加工物の一方又は両方の相対位置決めによって除去される。そのため、レーザー光線は、所定の傾斜角の下で第2加工体積上に向けられると、レーザー光線をその全体にわたって走査しながらこの第2加工体積を照射する。そのため、レーザー光線は、レーザー処理変数の下で、第2材料体積の表面部分に集光され、第2材料体積の少なくとも一部を除去して、予め定めた特性を持つ、決められた切り抜きを形成する。第2加工体積の加工は、走査間に軸方向及び半径方向の一方又は両方のずれを持つレーザー光線の複数回の走査により材料の層を連続して除去することで、行ってよい。
【0029】
被加工物の表面に対して垂直な第1方向に延在するレーザー光線による加工体積の除去を繰り返し、それから第1方向とは別の方向、特に予め定めた傾斜角度を持って配向されたレーザー光線による第2材料体積の除去を行うことにより、全体の加工速度を最適化できて、決められた切り抜きの側壁の予め定めた特性を確保する。
【0030】
好ましくは、予め定めた傾斜角度は、集光されたレーザー光線の半径方向のレーザー光線の発散角度よりも大きい。傾斜角度は、処理変数及び材料特性に依存し、実験により決められる。典型的には傾斜角度は、3°と15°の間、好ましくは5°と10°の間である。
【0031】
一実施形態では、レーザー加工方法は、ステップe)では、第2加工体積がm個の区画に分割されることを備え、mはm≧1である。好ましくは、mは1及び4の間である。ステップf)では、m個の区画のうちの1区画と走査軸線との間の相対位置が決定され、前記区画及び走査軸線の一方又は両方がこの相対位置に位置決めされる。ステップg)では、走査軸線が前記区画上に予め定めた光線傾斜角度の下で配向され、第2切断経路に沿ってレーザー光線を走査することで前記区画を照射し、前記区画の第2側壁を形成すべく前記区画から材料を除去する。
そのため、これらの各区画は、次の区画を加工する前に、この区画の予め定めた特性が達成されるまで加工される。このストラテジーでは、走査軸線と選択された区画との間の相対位置は、この区画の第2側壁が所定の形状を持つまで、以前に決定された相対位置に留まる。それから相対位置が新たに決定され、被加工物及び走査軸線の一方又は両方の相対運動により、m個の区画の別の区画が新たに決定された相対位置に配置されて加工される。この手順は、m個の区画それぞれが加工されて、予め定めた特性を持つ、決められた切り抜きが完成するまで、繰り返される。
【0032】
第2加工体積をm個の区画に分割することで、第2加工体積が除去されるまでm個の区画のそれぞれを別々に加工できるので、その結果、加工速度及び加工品質がさらに最適化されるであろう。適切な区画数を選択することで、各区画を適切な傾斜角度で加工できる。
【0033】
m個の区画のうち選択され位置決めされた区画は、第2特定のずれと共に1回又は複数回の走査で第2切断経路に沿ってレーザー光線を走査することにより加工される。第2切断経路は、ライン間の横方向のずれを持つ多数のレーザーの線及び第2切断パターンとの一方又は両方を備えてよい。好ましくは、第2切断経路又はパターンは、外周曲線又は外周曲線の一部を、各曲線間に一定のずれを持たせて複数回ずらすことによって生成してよく、そこでは除去すべき加工体積の表面が走査される。典型的には、穴加工の場合、このような経路が、穴の外周の一部で作られ、繰り返され、そして同心円状にずらされる。
【0034】
レーザー加工方法の別の実施形態では、ステップa)で決められた加工体積は、n個の層に細分され、各層は、表面域、すなわち、個々の外周及び厚さを持ち、n≧1であることによって制限された個々の表面域を持つ。n個の層のそれぞれは、説明した2段階の加工ストラテジーによって除去される個々の加工体積を決める。細分化された層の数であるnの値は、除去される加工体積の深さ又は高さに依存する。好ましくは、nは2及び10の間である。続いて加工されるn層での細分化は、材料除去率、それによる加工時間及び切り抜きの側壁の特性に関して、有利である。
【0035】
決められた第1加工体積のそれぞれは、レーザー加工変数がn層のそれぞれに対して個別に調整できるように、連続して加工される。代替的に、n層のそれぞれを同じレーザー加工変数の下で処理してもよい。n層の各層に対して調整可能な処理変数により、特に多層材料の場合、n層の各層を通して最適化された加工が保証される。第1加工体積の材料は、被加工物の上面から下に向かって、一連の加工ステップ(複数)で除去可能である。
【0036】
加工されるn層のそれぞれの厚さは、被加工物への深さの関数として減少する材料除去速度の制限を克服するように選択してよい。n層のそれぞれの厚さは、材料特性及び決められた切り抜きの形状特性の一方又は両方に応じて、典型的には0.1mmと2mmの間としてよい。
【0037】
被加工物が多層基板の場合、少なくとも1つの層又はn層の各層の厚さは、少なくとも1つの層又は個々の材料層の厚さに相当し得る。代替的に、n層のうちの少なくとも1層の厚さは、処理された材料の変化によって決められる。この場合、層の厚さは、例えば外部のインライン又はオフラインの処理制御システムによって、処理される材料の変化を検出することで、決定される。n個の層の各々について適切な厚さを選択すること及び検出可能な材料の変化に応じてレーザー加工変数を調整することの一方又は両方により、各材料を加工するための加工変数を最適化することで、材料除去率を加工中、最大に保てる。
【0038】
(本願の)レーザー加工法を使うことで、サイクル時間と、スループットと、柔軟性と、より高い加工品質とに関して、レーザー加工処理を最適化できる。特に、第1切断経路に沿って被加工物を横切ってレーザー光線を走査しながら、表面域に対してほぼ垂直又は垂直な第1方向に向けると、特定の高い除去率が得られる。とはいうものの、潜在的に望ましくないテーパー角度が生じるが、これは第2加工体積を加工することで調整できる。
好ましくは、決められたn層の第1加工体積を加工して、n層の別の層を加工する前にn層のそれぞれの第2加工体積を除去することで、材料除去率をほぼ一定かつ高い水準に保つ。テーパーの材料を除去することで、より深い構造を加工する際のレーザーエネルギーの吸収につながらない。そのため、同じ方向でさらに下方に走査することによる材料除去率の低下が回避される。さらに、この方法を使うことで、熱影響を低減し、(レーザー)加工の品質及び再現性を向上できる。
【0039】
一実施形態では、決められた切り抜きの加工は、決められた切り抜きの上側から行われて、その後に、決められた切り抜きの下側から行われ、両側からの切り抜きが結合して、単一の貫通した切り抜きを形成する。両側から加工を行うこの方法によって、湾曲及びテーパー、円形又は自由に形成された壁構造の切り抜きを形成可能である。これにより、全体的な深さをさらに減らすことにより、もしくは第1切断経路をn層の各層に適合させることにより、加工速度を最適化できる。
【0040】
決められた切り抜き加工の最後に、レーザー加工によって切り抜きの第2側壁を仕上げるために、さらなるステップを実行し得る。この仕上げステップは、切り抜き深さ全体にわたって加工表面の全体的な品質を向上させる。レーザー加工方法の一実施形態では、この仕上げステップは、加工される表面を複数の区域に細分化し、決められた第2傾斜角度に方向付けられた走査軸線を使ってレーザー加工を行うことを含む。代替的に、レーザー加工は、走査軸線が別の決定可能な傾斜角度に配向された状態で行ってよい。
【0041】
さらに、本発明は、本発明による方法を使って、被加工物に決められた切り抜きをレーザー加工するレーザー加工装置に関し、このレーザー加工装置は、
レーザビームを少なくとも2つの座標方向に移動させるのに使う走査ユニットを持ち、走査軸線に沿ってレーザビームを生成し、レーザビームを表面域にほぼ垂直に被加工物上に向け、レーザビームを第2切断方向に被加工物上に向けるように構成されたレーザーシステムと、
レーザー加工装置の駆動ユニットにより、少なくとも1本の回転軸線を中心に移動可能であること及び少なくとも1本の並進軸線に沿って移動可能であることの一方又は両方である、被加工物を支持かつ保持する保持部と、
第1切り抜き経路及び第2切り抜き経路に沿ってレーザー光線を走査し、第1切り抜き経路に沿ってレーザー光線を走査することによって連続的に加工されるn個の層及び第2切り抜き経路に沿ってレーザー光線を走査することによって加工されるm個の区画を決定するとともに、決められた切り抜きを加工すべく被加工物を移動させるように駆動ユニットを制御するように構成された少なくとも1つの制御部と
を備える。
制御部は、システムのハードウェア及び処理を制御する設定用の適切な処理装置と、レーザー加工方法を実行するレーザー加工装置の動作用のソフトウェアと、記憶部とのうちいずれか一つを備え得る。
【0042】
レーザー加工装置は、被加工物に関連する機械軸線及び走査ユニットに関連する光軸線の移動を制御する1つの制御部を備えてよい。代替的に、レーザー加工装置は、機械軸に関して被加工物を移動させるように構成された1つの制御部と、レーザー光線が被加工物に向かって方向付けられ、被加工物の表面上で走査されるように、走査ユニットの光軸を移動させるように設けられた別の制御部とを備えてよい。さらに、加工中に被加工物を位置決めしたまま、機械軸線に沿って移動と、機械軸線を中心とした移動との一方又は両方をさせるように、レーザー加工装置の走査ユニットが構成されてもよい。代替的に、被加工物が機械軸線に沿って移動と、機械軸線について移動との一方又は両方の間、走査ユニットが、位置決めされたままであってもよい。さらに、レーザー加工装置の機械軸線は、本発明方法に従って被加工物をレーザー加工する走査ユニットと同様に被加工物を移動させるべく設けられてもよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明及びその有利点をより完全に理解するため、本発明の例示的な実施形態を、添付の図を参照して以下の説明においてより詳細に説明する。これらの図において、同様の参照文字は同様の部品を示し、以下の図において、同様の参照文字は同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、本発明によるレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置の一実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、レーザー光線と被加工物との間の相対位置を示す被加工物の第1中間形状を生成する第1加工段階の概略図である。
【
図3a】
図3aは、第1中間状態において層状に細分化された被加工物を示す概略図である。
【
図3b】
図3bは、第1加工段階において被加工物から除去された加工体積を示す概略図である。
【
図4a】
図4aは、レーザー光線と被加工物との間の相対位置を示す、第2加工段階で加工された被加工物の概略図である。
【
図4b】
図4bは、第2中間形状を持つ被加工物の概略図である。
【
図5】
図5は、第2加工体積の概略上面図であり、第2加工体積が分割されたm個の区画を示す。
【
図6】
図6は、別の中間状態の被加工物の概略図である。
【
図7a】
図7aは、第1タイプの第1切断経路を示す概略上面図である。
【
図7b】
図7bは、第2タイプの第1切断経路を示す概略上面図である。
【
図7c】
図7cは、第1切断経路の第3タイプを示す概略上面図である。
【
図8】
図8は、本発明によるレーザー加工方法の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明による方法の実施に使ってよいレーザー加工装置1で、
図7で詳細に説明したレーザー加工装置1を示している。レーザー加工装置1は、レーザー2を持ち、このレーザー2は、用途に応じて任意の適切なタイプとし得る。レーザー2は、決定されたレーザー変数に応じて、光学系3によって処理されるレーザー光線20を放出する。光学系3は、レンズと、フィルタと、ビームエキスパンダとを持つ光学部品とを持つ。光学系3は、時間的及び空間的ビームシャープニング光学系を持つ複雑な組立体さえも持つ光学部品を備え得る。そしてレーザー光線20は、走査ユニット4によって集光光学系5を通して被加工物10に照射される。被加工物10は、動作ステージ12に取り付けられた保持部11又はチャックに支持及び保持される。この実施形態では、動作ステージ12は制御部6によって制御され、そして並進軸線及び回転軸線の一方又は両方といった機械軸線に沿って移動可能である。
【0046】
一実施形態では、動作ステージ12は、被加工物を移動させるように構成されている。保持部11又はチャックに関連する動作ステージ12は、
A軸線と、B軸線との少なくとも一方として知られる回転軸を備えて提供されてよいこと、及び
被加工物を所定の位置に移動させること及びレーザー加工中に被加工物を移動させることの一方又は両方の、直線軸線を備え得ること
の一方又は両方とされる。
並進運動と、回転運動との少なくとも一方がレーザー加工装置1に備わるように、任意の数の既知の設計を動作ステージ12に使ってよい。
【0047】
図1に記載された配置に加えて、走査ユニット4と集束光学系5との一方又は両方は、X軸線及びY軸線といった並進軸線、また選択的にZ軸線及び回転軸線の一方又は両方に沿って移動可能なように、第2動作ステージ13に取り付けられた移動可能なユニットとして構成されてもよいだろう。それにより、走査ユニット4及び集光光学系5の一方又は両方と、保持部11とは、それぞれ並進方向及び回転軸線周りの一方又は両方に移動可能である。
【0048】
別の選択は、保持部11が、固定されている基部に取り付けられ、走査ユニット4及び集束光学系5の一方又は両方が、制御部6によって制御される、対応した動作ステージ13(図示せず)によって移動可能とすることである。
【0049】
図1では、1つの制御部6及び中央処理装置8(CPU8)が、動作ステージ12による被加工物の動作を制御し、走査ユニット4と、レーザー2及び光学系3の一方又は両方をも制御すべく設けられている。制御部6及びさらに任意の制御部7(図示せず)は、一般に、CPU8と、記憶部と、支援回路とを、一般的に備え得る。CPUは、装置のハードウェア及び処理の制御用に、レーザー加工装置で使われる任意のタイプのコンピュータプロセッサとしてよい。記憶部は、CPU8に接続されるものとしてよく、そしてランダムアクセスメモリ(RAM)と、リードオンリーメモリ(ROM)と、ローカル又はリモートの他の形態のデジタル記憶装置といった容易に入手可能なメモリとの中で、1種類又はそれより多い種類のものにし得る。ソフトウェア命令及びデータは、CPU8の命令用にコード化され、記憶部内に格納され得る。コマンド信号は、一般に、記憶部に記憶されたプログラミング命令に基づいて出力され、各プログラミング命令の機能は、CPU8のロジックによって実行される。レーザー加工装置の様々な要素には、通信経路に沿って主制御部との間でデータを伝送する独自の制御部が含まれてよいだろう。
【0050】
好ましくは、制御部6は、走査ユニット4と被加工物10との間に相対運動を与えるため動作ステージ12及び他の動作ステージ13の一方又は両方を制御し、レーザー光線の運動を制御するため走査ユニット4の軸線の動きを制御すべく適合される。別の実施形態では、走査ユニット4と被加工物10との相対的な位置決め用の制御と、走査ユニット4の軸線の動きの制御とは、別々とされている。さらなる制御部7は、レーザー光線の移動を制御するため走査ユニット4の軸線を制御すべく設けられてよい一方、制御部6は、動作ステージ12の一方のみ、追加的又は代替的に動作ステージ13を制御する。
【0051】
図2は、被加工物10の概略図である。被加工物10は、表面21から延在する(例えば5mmの)深さdを持つ。
図2は、例示的な被加工物10を示し、これは、レーザー光線20を第1切断経路29(図示せず)に沿った配向と走査とにより材料を除去して止まり穴又は第1切り抜き25を形成した後のものである。レーザー光線20は、走査ユニット4及び集光レンズ5によって、走査軸線34が表面21の法線又は法線に近い被走査面21に向けられる。レーザー光線20をらせん状に、又は平行な線の連続に、又は材料体積が層状に除去されるような別の走査経路に沿って走査することにより、加工体積が除去される。走査経路は、各走査間に軸線方向及び横方向のオフセット(ずれ、ずらし)を持ってもよいだろう。
【0052】
図2に示すように、第1切り抜き25又はこの場合の止まり穴は、第1切り抜き25の内壁と表面21に対する垂直との間の角度に対応するテーパー角度αを含む第1テーパー特性23を持つ。走査ユニット4を使ってこのような加工を行った結果得られるテーパー角度αは、典型的には5°から20°の間である。
【0053】
図3aに示す1例では、被加工物10の深さdはn個の層に細分され、n個の層の数は深さd及びレーザー加工の制約に依存する。
図3aの例では、nは4である。各層n1、n2、n3、n4は、0.1mmから2mmの範囲、典型的には約1mmの範囲の個々の厚さtを持ってよい。第1層n1の加工体積22(
図3bに示す)を加工した後、第1切り抜き25は、直線状か、くぼんでいるか、突出している形状の構造側壁24を含む第1テーパー特性23を持つ。第1テーパー特性23は、材料特性と、処理変数と、加工体積22との中の少なくともいずれか一つに応じて変化し得る。
図3aにハッチングの変化で示した第2加工体積26は、第1側壁24及び第2側壁27を備え、
図4aに示す次の加工処理で加工される。
【0054】
被加工物10に貫通孔を加工する場合、より高速な加工処理を持つため、レーザー光線20は、除去すべき加工体積の表面21全体にわたって走査する必要はない。貫通穴が完成したときに脱落することで除去される中心部分を残してよい。
【0055】
図3bは、例示的な被加工物10から第1加工段階で除去された第1層n1の除去された材料体積22を示す概略図である。
【0056】
図4aは、決められた第2加工体積26(図示せず)を除去する加工ステップを示す被加工物10の概略図である。第2加工体積26は、
図4bに示すように、第1テーパー特性23を持つ第1側壁24、又はこの第1側壁24を含む、そして予め定めた特性28を持つ所定の第2側壁27によって、決定できる。好ましくは、予め定めた特性28は、第2側壁27(図示せず)が被加工物10の表面21から垂直に延在するようなゼロテーパー角度を持つ。
【0057】
第2加工体積26は、レーザー光線20及び被加工物10の一方又は両方を所定の第2相対位置に相対位置決めして、除去できる。走査軸線34は、第2加工体積26を加工するため予め定めた傾斜角度βの下に配向され、そしてレーザー光線20をその全体にわたって走査しながら第2加工体積26を照射する。第1層n1を加工した後、
図4bに示すように、ゼロテーパーを持つ止まり穴が作られる。
【0058】
図5は、除去される第2加工体積26を概略上面図で示す。この図示された第2加工体積26は、この場合、第1テーパー特性23を持つ第1側壁24及び予め定めた特性28を持つ第2側壁27によって制限され又はそれを含み、加工体積22に延在し又は加工される層の厚さtに延在する。第2加工体積26はm個のセクションに細分される。第2加工体積26の形状と寸法との一方又は両方に応じて、個数「m」の数は1及び6の間で変えてよく、好ましくはおよそ4である。m個の各区画は、m個の区画のうちの1つと走査軸線34とを所定の相対位置に相対配置し、レーザー光線20を第2切断経路36に沿って走査してこの切片に照射することによりレーザー加工される。この実施形態では、第2切断経路36は平行な直線を持つが、他の構造を持ち得る。m個の区画それぞれは、m個の区画の別の区画を加工するため被加工物10と走査ユニット4の一方又は両方を再配置する前に、この区画の第2特性28が達成されるまで加工されてよい。代替的に、レーザー光線20は、第2加工体積26を層状に除去すべく、全てのm個の区画にわたって走査される。第2切断経路36の走査方向及び走査構造を変えてよい。
【0059】
図6は、別の中間形状を持つ被加工物10の概略図であり、第1層n1を加工した後、及びこの第2層n2の加工体積22が除去される第2層n2を加工する第1ステップを実行した後の被加工物10を示している。それにより、第2層n2は、第1テーパー特性23を持つ第1側壁24を備える。第2層n2の第1テーパー特性23は、別のテーパー角度αが形成されるように、第1層n1の第1テーパー特性23と異なってよい。
【0060】
図7a、
図7b及び
図7cはそれぞれ、被加工物10の上面図を示し、特に、レーザー光線20が加工される表面21上を走査される第1切断経路29を示している。
図7aに表した切り抜き25は、外周部31によって制限された円形の表面域30を持つ穴である。
図7aでは、レーザー光線20は、隣り合うループ間に特定の距離を持つらせん経路で加工される表面部分を横切って走査される。第1切断経路29は、走査速度と、レーザー出力と、他の変数(始点と終点の一方又は両方の位置と、走査方向といった他の変数)において、走査毎に変化し得る。
図7aに示すように、中央部分は加工後も未加工のままである。
【0061】
図7bは、各走査の始点と終点の一方又は両方を中心部32又は外周部31に持つらせん経路として形成される第1切断経路29の別の構造を示す。
図7bに示すように、加工後に未加工のまま残る中心部分はない。
【0062】
図7cは、平行な直線の繰り返しとして構成された別の第1切断経路29を示す。第1切断経路29は、材料除去率が最適化されるように設計し得る。この実施形態では、中央部分も同様に加工される。
【0063】
図8は、少なくとも1つの実施形態による、被加工物10に決められた切り抜きを形成する例示的なレーザー加工方法100を示す。例示的な方法は、保持部11に保持された被加工物10と、走査ユニット4及び集光光学系5を通って伝搬するレーザー光線20との相対位置決め102を含む。レーザー加工方法100は、操作104において、外周部31及び深さdによって制限される表面域30を備える被加工物の加工体積を決定すること、そして一実施形態に従い、加工体積をn個の層に細分化することをさらに備える。
各層は、個々の表面域30及び所定の厚さtによって決定され、加工体積22を決定する。一実施形態における加工体積の深さdに応じて、nは、加工体積22が層の加工体積に対応するように1としてよい。さらに、決められた切り抜き25の1つの特性又はそれより多くの特性、例えば、切り抜き開口に対応した頂部の外周部31、底部周囲、第1テーパー特性23などが決定されるようにしてよい。
例示的な方法100は、動作ステージ12と走査ユニット4の一方又は両方と、集束光学系5とによる被加工物10の制御された移動によって、加工されるn層のうちの1層(以下、「層n1」という。)と走査軸線34との間の第1相対位置を決定する操作106をさらに含む。この相対位置において、走査軸線34は、層n1の表面21に対してほぼ垂直に配向される。操作108において、レーザー加工変数下でレーザー2から放出されたレーザー光線20は、表面21に集光される。この操作108は、レーザー光線20が、層n1の外周部31によって制限される表面域30内で第1切断経路29に沿って走査されることを含む。この操作により、表面域30を横切るレーザー光線20の複数回の走査によって、この層の加工体積22を除去できる。各走査で、0.1μmから25μmの範囲の材料層が除去される。
【0064】
方法100は、操作部108において形成された第1側壁24と、加工されるべき決定された切り抜きの側壁に少なくとも部分的に対応する所定の第2側壁27との間に第2加工体積26を決める操作110を、さらに含む。この操作110は、第2加工体積26が、その後に加工され得るm個の区画に仮想的に細分化されることを、含んでもよい。
【0065】
操作112は、第2加工体積26及び走査軸線34間の第2相対位置を決定し、その第2相対位置に被加工物10と走査軸線34の一方又は両方を再配置することを含む。操作112において、レーザー光線20は、第2加工体積上に予め定めた傾斜角度βの下で向けられ、そしてレーザー処理変数は、方法100の1つ又はそれより多くの特性に基づいて調整できる。いくつかの実施形態において、レーザー処理変数は、レーザー出力と、焦点ビーム直径と、焦点高さと、ビームスポットサイズと、先行する走査からのレーザー光線20のずれと、それらの組み合わせとの少なくともいずれかを含んでよい。
【0066】
方法100は、調整されたレーザー処理変数下で第2加工体積26の少なくとも一部が除去される操作114を含む。方法100によれば、第2加工体積26のm個の区画それぞれは、各区画の加工に最適なレーザー加工条件が達成されるように、被加工物10及び走査軸線34の再配置を含めて加工される。層n1の第2加工体積26が除去された後、方法100は、被加工物10の切り抜きが、決められている形状に達するまで、操作106から操作114を繰り返すことを含む。一実施形態では、方法100はさらに、切り抜きの形成された側壁を仕上げる別の操作116を含む。
【0067】
本発明は、記載された実施形態に限定されるものではなく、構造及び細部において様々な変更があり得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 走査軸線(34)に沿って走査ユニット(4)内を伝播するレーザー光線(20)を生成することと、
- 保持部(11)に支持かつ保持されていて、かつ前記走査軸線(34)に対して相対的に位置決め可能である、被加工物(10)を提供することと、
を備えた、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工する方法(100)であって、前記方法(100)が、
a)表面域(30)及び深さ(d)を持つ前記被加工物(10)の加工体積(22)を決定するステップと、
b)前記加工体積(22)と前記走査軸線(34)との間の第1相対位置を決定し、前記第1相対位置において前記走査軸線(34)が前記加工体積(22)の表面(21)に対して略垂直に配向され、そして
前記被加工物(10)及び前記走査軸線(34)の一方又は両方を前記第1相対位置に位置決めするステップと、
c)前記レーザー光線(20)を前記表面域(30)内の前記加工体積(22)に照射し、前記被加工物(10)と前記レーザー光線(20)との間に相対運動を生じさせ、前記レーザー光線(20)を第1切断経路(29)に沿って走査するステップと、
d)第1テーパー特性(23)を持つ第1側壁(24)を持つ第1切り抜き(25)を形成すべく、前記加工体積(22)の少なくとも一部を除去するステップと、
e)前記第1側壁(24)を含み、予め定めた特性(28)を持つ第2側壁(27)によって一部制限された第2加工体積(26)を決定するステップと、
f)前記第2加工体積(26)と前記走査軸線(34)との間の第2相対位置を決定して、前記被加工物(10)及び前記走査軸線(34)の一方又は両方を前記第2相対位置に位置決めするステップと、
g)予め定めた傾斜角度(β)で前記被加工物(10)に対して前記走査軸線(34)を配向し、前記レーザー光線(20)を前記第2加工体積(26)に照射し、前記レーザー光線(20)を第2切断経路(36)に沿って走査し、第2側壁(27)を形成すべく前記第2加工体積(26)の少なくとも一部を除去するステップと
をさらに備える、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工する方法(100)。
【請求項2】
ステップe)では、前記第2加工体積(26)がm個の区画に分割され、mはm≧1であり、好ましくは1から4であり、
ステップf)では、前記m個の区画のうちの1区画と前記走査軸線(34)との間の相対位置が決定され、前記区画及び走査軸線の一方又は両方がこの相対位置に位置決めされ、
ステップg)では、前記走査軸線(34)が前記区画上に予め定めた傾斜角度(β)の下で配向され、前記第2切断経路(36)に沿って前記レーザー光線(20)を走査することで前記区画を照射し、前記区画の前記第2側壁(27)を形成すべく前記区画から材料を除去し、
前記第2加工体積(26)の前記材料が除去されるまでステップe)からステップg)を繰り返す、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
ステップa)で決められた、前記被加工物(10)の前記加工体積(22)が、n個の層に細分化され、
各層が、n>1のとき、外周部(31)によって制限された表面域(30)及び厚み(t)によって決定され、
前記n個の層のそれぞれが、ステップb)からステップd)にしたがって加工される層の個々の加工体積(22)を決め、
前記方法が、前記被加工物(10)の切り抜きが決められた形態に達するまで、ステップb)からステップg)を繰り返すことを含む、
請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記n個の層の少なくとも1層の前記厚み(t)が、材料の検出された変化によって決定される、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記被加工物(10)の前記決められた切り抜きが、止まり穴と、貫通穴と、貫通穴の一端又は両端に座ぐりを持つ貫通穴と、一定の断面又は異なる断面を持つ切り抜きとのうち、いずれかである、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記予め定めた特性(28)に、正のテーパー特性と、ゼロテーパー特性と、負のテーパー特性とが含まれている、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記n個の層のそれぞれの厚み(t)が0.5mmから2mmまでの間である、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記n個の層の各層からの材料が、0.1μmと25μmの間の走査間、前記走査軸線(34)の方向における軸方向のずれを伴う前記レーザー光線(20)の走査を繰り返すことで、除去される、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記第1切断経路(29)が、前記表面域(30)の外周部(31)から前記表面域(30)の中心部(32)につながるか互いに反対方向に延びるらせん形状を持つか、もしくは
前記第1切断経路(29)が、前記外周部(31)の少なくとも一部の一連のずらされた曲線である、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記第1切断経路(29)が、複数本の線と、交差線間に横方向のずれを持つ複数本の交差線との一方又は両方のパターンである、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記予め定めた傾斜角度(β)は、前記レーザー光線の発散角度よりも大きく、典型的には3°と15°の範囲である、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記予め定めた特性(28)が達成されるまで、前記第2加工体積(26)が、軸方向のずれを伴う前記レーザー光線(20)の複数の走査によって、層状に加工される、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記第2加工体積(26)のm個の区画のそれぞれは、前記区画の予め定めた特性(28)が、前記m個の区画の次の区画が加工される前に達成されるまで、加工される、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項14】
前記決められた切り抜きの加工が、前記決められた切り抜きの頂部から行われ、
そして次に前記決められた切り抜きの底部から、単一の切り抜きを形成すべく複数の前記切り抜きがつながる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項15】
請求項1に記載の方法を使って、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工するレーザー加工装置(1)であって、
走査軸線(34)に沿ってレーザー光線(20)を生成すべく、前記レーザー光線(20)を前記被加工物(10)上に、前記被加工物の表面(21)に略垂直な第1切断方向に配向すべく、かつ前記レーザー光線(20)を前記被加工物(10)上に、第2切断方向に配向すべく設定された、少なくとも1本の光学軸線及び少なくとも1本の機械軸線を備えて、走査ユニット(4)を持つレーザーシステムと、
前記レーザー加工装置(1)の駆動ユニットにより、少なくとも1本の回転軸線を中心に移動可能であること及び少なくとも1本の並進軸線に沿って移動可能であることの一方又は両方である、前記被加工物(10)を支持かつ保持する保持部(11)と
を備えるレーザー加工装置(1)において、
第2切断経路(36)に沿うこと及び前記レーザー加工装置(1)を少なくとも1本の機械軸線を制御することの一方又は両方で、前記決められた切り抜きを加工すべく前記被加工物(10)を動かす、
レーザー加工装置(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
本発明は、記載された実施形態に限定されるものではなく、構造及び細部において様々な変更があり得る。
本願は例えば次の観点を提供する。
[観点1]
- 走査軸線(34)に沿って走査ユニット(4)内を伝播するレーザー光線(20)を生成することと、
- 保持部(11)に支持かつ保持されていて、かつ前記走査軸線(34)に対して相対的に位置決め可能である、被加工物(10)を提供することと、
を備えた、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工する方法(100)であって、前記方法(100)が、
a)表面域(30)及び深さ(d)を持つ前記被加工物(10)の加工体積(22)を決定するステップと、
b)前記加工体積(22)と前記走査軸線(34)との間の第1相対位置を決定し、前記第1相対位置において前記走査軸線(34)が前記加工体積(22)の表面(21)に対して略垂直に配向され、そして
前記被加工物(10)及び前記走査軸線(34)の一方又は両方を前記第1相対位置に位置決めするステップと、
c)前記レーザー光線(20)を前記表面域(30)内の前記加工体積(22)に照射し、前記被加工物(10)と前記レーザー光線(20)との間に相対運動を生じさせ、前記レーザー光線(20)を第1切断経路(29)に沿って走査するステップと、
d)第1テーパー特性(23)を持つ第1側壁(24)を持つ第1切り抜き(25)を形成すべく、前記加工体積(22)の少なくとも一部を除去するステップと、
e)前記第1側壁(24)を含み、予め定めた特性(28)を持つ第2側壁(27)によって一部制限された第2加工体積(26)を決定するステップと、
f)前記第2加工体積(26)と前記走査軸線(34)との間の第2相対位置を決定して、前記被加工物(10)及び前記走査軸線(34)の一方又は両方を前記第2相対位置に位置決めするステップと、
g)予め定めた傾斜角度(β)で前記被加工物(10)に対して前記走査軸線(34)を配向し、前記レーザー光線(20)を前記第2加工体積(26)に照射し、前記レーザー光線(20)を第2切断経路(36)に沿って走査し、第2側壁(27)を形成すべく前記第2加工体積(26)の少なくとも一部を除去するステップと
をさらに備える、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工する方法(100)。
[観点2]
ステップe)では、前記第2加工体積(26)がm個の区画に分割され、mはm≧1であり、好ましくは1から4であり、
ステップf)では、前記m個の区画のうちの1区画と前記走査軸線(34)との間の相対位置が決定され、前記区画及び走査軸線の一方又は両方がこの相対位置に位置決めされ、
ステップg)では、前記走査軸線(34)が前記区画上に予め定めた傾斜角度(β)の下で配向され、前記第2切断経路(36)に沿って前記レーザー光線(20)を走査することで前記区画を照射し、前記区画の前記第2側壁(27)を形成すべく前記区画から材料を除去し、
前記第2加工体積(26)の前記材料が除去されるまでステップe)からステップg)を繰り返す、
観点1に記載の方法(100)。
[観点3]
ステップa)で決められた、前記被加工物(10)の前記加工体積(22)が、n個の層に細分化され、
各層が、n>1のとき、外周部(31)によって制限された表面域(30)及び厚み(t)によって決定され、
前記n個の層のそれぞれが、ステップb)からステップd)にしたがって加工される層の個々の加工体積(22)を決め、
前記方法が、前記被加工物(10)の切り抜きが決められた形態に達するまで、ステップb)からステップg)を繰り返すことを含む、
観点1又は2に記載の方法(100)。
[観点4]
前記n個の層の少なくとも1層の前記厚み(t)が、材料の検出された変化によって決定される、観点3に記載の方法(100)。
[観点5]
前記被加工物(10)の前記決められた切り抜きが、止まり穴と、貫通穴と、貫通穴の一端又は両端に座ぐりを持つ貫通穴と、一定の断面又は異なる断面を持つ切り抜きとのうち、いずれかである、観点1から4のいずれか一つに記載の方法(100)。
[観点6]
前記予め定めた特性(28)に、正のテーパー特性と、ゼロテーパー特性と、負のテーパー特性とが含まれている、観点1から5のいずれか一つに記載の方法(100)。
[観点7]
前記n個の層のそれぞれの厚み(t)が0.5mmから2mmまでの間である、観点3から6のいずれか一つに記載の方法(100)。
[観点8]
前記n個の層の各層からの材料が、0.1μmと25μmの間の走査間、前記走査軸線(34)の方向における軸方向のずれを伴う前記レーザー光線(20)の走査を繰り返すことで、除去される、観点3から7のいずれか一つに記載の方法(100)。
[観点9]
前記第1切断経路(29)が、前記表面域(30)の外周部(31)から前記表面域(30)の中心部(32)につながるか互いに反対方向に延びるらせん形状を持つか、もしくは
前記第1切断経路(29)が、前記外周部(31)の少なくとも一部の一連のずらされた曲線である、観点1から8のいずれか一つに記載の方法(100)。
[観点10]
前記第1切断経路(29)が、複数本の線と、交差線間に横方向のずれを持つ複数本の交差線との一方又は両方のパターンである、観点1から8に記載の方法(100)。
[観点11]
前記予め定めた傾斜角度(β)は、前記レーザー光線の発散角度よりも大きく、典型的には3°と15°の範囲である、観点1から10のいずれか一つに記載の方法(100)。
[観点12]
前記予め定めた特性(28)が達成されるまで、前記第2加工体積(26)が、軸方向のずれを伴う前記レーザー光線(20)の複数の走査によって、層状に加工される、観点1又は観点3から11に記載の方法(100)。
[観点13]
前記第2加工体積(26)のm個の区画のそれぞれは、前記区画の予め定めた特性(28)が、前記m個の区画の次の区画が加工される前に達成されるまで、加工される、観点2から11のいずれか一つに記載の方法(100)。
[観点14]
前記決められた切り抜きの加工が、前記決められた切り抜きの頂部から行われ、
そして次に前記決められた切り抜きの底部から、単一の切り抜きを形成すべく複数の前記切り抜きがつながる、観点1から13のいずれか一つに記載の方法(100)。
[観点15]
観点1から14のいずれか一つに記載の方法を使って、決められた切り抜きを被加工物(10)にレーザー加工するレーザー加工装置(1)であって、
走査軸線(34)に沿ってレーザー光線(20)を生成すべく、前記レーザー光線(20)を前記被加工物(10)上に、前記被加工物の表面(21)に略垂直な第1切断方向に配向すべく、かつ前記レーザー光線(20)を前記被加工物(10)上に、第2切断方向に配向すべく設定された、少なくとも1本の光学軸線及び少なくとも1本の機械軸線を備えて、走査ユニット(4)を持つレーザーシステムと、
前記レーザー加工装置(1)の駆動ユニットにより、少なくとも1本の回転軸線を中心に移動可能であること及び少なくとも1本の並進軸線に沿って移動可能であることの一方又は両方である、前記被加工物(10)を支持かつ保持する保持部(11)と
を備えるレーザー加工装置(1)において、
第2切断経路(36)に沿うこと及び前記レーザー加工装置(1)を少なくとも1本の機械軸線を制御することの一方又は両方で、前記決められた切り抜きを加工すべく前記被加工物(10)を動かす、
レーザー加工装置(1)。
【外国語明細書】